JP2008049404A - ボールエンドミル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ボールエンドミルにおいて、少なくとも、ボール刃の刃径50%以下の刃直交断面におけるすくい面が、2つのすくい面から構成され、ボール刃稜線に最も近い第1すくい面における第1すくい角R1(度)は、−10≦R1≦0であり、第2すくい面における第2すくい角R2(度)は、0<R2≦15、としたことを特徴とするボールエンドミルである。
【選択図】 図1
Description
そこで本願発明は、ボール刃強度を損なわず、ボール刃に生じる欠損及び摩耗の発生を抑えて、工具寿命の長いボールエンドミルを提供することである。
ボールエンドミルにおいて、少なくとも、ボール刃の刃径50%以下の刃直交断面におけるすくい面が、2つのすくい面から構成され、ボール刃稜線に最も近い第1すくい面における第1すくい角R1(度)は、−10≦R1≦0であり、第2すくい面における第2すくい角R2(度)は、0<R2≦15、としたことを特徴とするボールエンドミルである。上記の構成を採用することによって、ボール刃強度を損なわず、ボール刃に生じる欠損及び摩耗の発生を抑えて、工具寿命の長いボールエンドミルを提供することができる。
図3及び図4は、本願発明に係るボールエンドミルの先端部の構成を説明する図である。工具本体1の先端には上記切り屑排出溝2の工具回転方向を向く各壁面にあたるすくい面3と、工具先端側を向く外周逃げ面4との交差稜線部に、上記各ボール刃5に連なり、工具本体1の先端外周側から工具本体1先端の工具軸線上の工具回転中心部Cに向かうように、夫々ボール刃5が底刃を形成している。これらのボール刃5は工具本体1の軸線に対する径方向からの側面視に略1/4円弧状をなすように形成されており、その軸線回りに半球状の回転軌跡をなすように形成されている。
図5は、図2のA−A線に沿った刃直交断面を示す概略構成説明図である。本願発明ボールエンドミルのボール刃の刃直交断面におけるすくい面形状を示す要部拡大断面図である。図3に示す工具回転中心部Cから任意の位置におけるボール刃5に直交する方向にA−A線をとっている。
本願発明のボールエンドミルは、軸線回りに回転する工具本体の先端部に少なくとも2つの円弧状のボール刃を有するボールエンドミルにおいて、該ボール刃の刃直交断面におけるすくい面が、すくい角の異なる2つの面3a、3bから構成され、ボール刃稜線に最も近い第1すくい面における第1すくい角R1は、図2に記載されている略1/4円弧状のボール刃で構成される円弧の中心Pとボール刃5を通る線と第1すくい面3aとが形成する角度と定義して、R1(度)を−10≦R1≦0、と設定する。第2すくい面における第2すくい角R2は、Pとボール刃5を通る線と第2すくい面3bがなす円弧の接線とが形成する角度と定義して、R2(度)を0<R2≦15、と設定する。R1<R2であることが好ましい。ボール刃稜線から最も近い角R1値が0度を超える値、つまり正角のボール刃になると、高硬度材の切削加工時にはボール刃強度が不足してボール刃の耐欠損性が低下し、R1値が−10度未満であると切れ味が悪くなり切削抵抗が増大してしまうために、R1値は、−10≦R1≦0、に設定した。R2値が0度以下であると、形成されるすくい面は負角の連続したフォームとなり、十分なチップポケットが確保できず、切り屑排出性が悪化し、切り屑の噛み込みによる仕上げ面の面粗度の悪化に繋がるばかりだけでなく、すくい面と切り屑との接触面積が小さくならないために、これらの間で生じる摩擦を小さくすることができず、結果溶着を抑えることができなくなってしまう。R2値が15度を超えると、ボール刃の肉厚が減少し、ボール刃全体の強度が低下してしまうために、R2値は、0<R2≦15、に設定した。本願発明のボールエンドミルは、ボール刃の刃直交断面におけるすくい面が負角から正角に変化する少なくとも2段の面から形成されるので、すくい面と切り屑との接触面積が小さくなる。つまり、切り屑接触長さが短くなり切削抵抗を軽減して切り屑排出に十分なチップポケットを確保しつつ、R1値は負角であるために十分なボール刃強度を確保したボールエンドミルを実現できる。また、すくい面と切り屑との接触面積が小さくなるので、これらの間に生じる摩擦は小さくすることができ、高硬度材および難削材といった被削材を加工する際に切り屑がすくい面に溶着しにくくなって、ボール刃の切れ味を長時間持続させることが出来る。R1値がR2値より大きいと、ボール刃を構成する刃物角が極端に鋭角になってしまい、ボール刃強度を確保できないために、R1<R2に設定することが好ましい。
本発明例1は、軸線回りに回転する工具本体の先端部に少なくとも2つの円弧状のボール刃を有するボールエンドミルである。本発明例1において、ボール刃稜線に最も近いR1値を−5度、R2値を5度、RL値を外径の1%、ε値を80度とした。工具母材は超微粒子超硬合金を使用し、ボール径10mm、刃数が2枚刃、外周ねじれ角を30度、ボール刃部には耐摩耗性を向上させるため(TiAl)N系硬質皮膜を3μm被覆した。従来のボールエンドミルと比較するために、従来例15のすくい角を−5度、従来例16は0度、従来例17は5度、に設定したこと以外は本発明例1と同寸法で作製し、同コーティングを被覆し、切削テストを行った。切削テストの条件を以下に示す。
(切削テストの条件)
切削方法 :底面仕上げ切削
被削材 :マルテンサイト系ステンレス鋼(JIS規格のSUS420J2相当)の焼入れ鋼、硬さHRC52
回転数 :10000min−1、
送り速度 :4m/min
切り込み :軸方向、0.4mm、径方向、0.2mm
切削油 :水溶性クーラントを用いた湿式
評価方法は、切削長400m時の工具摩耗状態及び加工面の状態を観察した。400m切削時における切り屑排出性の判定基準は、◎が、工具への溶着が見られずに切り屑が一方向へ安定して排出されている場合、○は、工具への溶着は見られないが切り屑の飛散状態が安定していない場合、△は、工具へ微小な溶着が認められた場合、×は、工具への溶着が激しい場合、とした。耐欠損性の判定基準は、◎が、チッピング及び欠けは観察されず、且つ摩耗形態も安定している場合、○は、チッピング及び欠けは観察されない場合、△は、微小なチッピングの発生が観察される場合、×は、大きな欠けを伴う場合、とした。加工面性状の判定基準は、○が、ムシレが見られず、カッターマークも加工面に転写されており且つ光沢がある場合、△は、ムシレは見られないが加工面に光沢が無い場合、×は、ムシレの発生を伴い加工面性状が非常に悪化している場合とした。テストの判定結果を表1に示す。
本願発明におけるR1値の影響を明らかにするため、比較例10のR1値を−15度、比較例11として5度と設定したほかは実施例1のものと同様の切削テストを行った。その結果、本発明例1は、安定した切削状態であり、ボール刃への溶着、欠損は認められず、均一な摩耗形態であり、加工面の状態は良好で、まだまだ切削可能であった。それに対し、比較例10は、耐欠損性は良好なものの、切り屑排出性が悪く、切り屑詰まりによるボール刃への溶着が認められ、それに伴い加工面の状態も悪化していた。また比較例11は、一連のすくい面のフォームが正角に形成されてしまうため、切削初期の切れ味は良好なものの、次第に刃先に負担が掛かり、刃先強度が低下して切削中期には欠損により工具寿命に至ってしまった。本発明例1と比較しても摩耗量が大きく、加工面の状態も悪い事が観察された。この理由は、比較例10はR1値が大きな負角であるために、切り屑排出がうまくいかず、加工面悪化に寄与してしまったためである。比較例11はR1値自体が正角になるため、ボール刃強度が低下し、耐欠損性が悪くなってしまったのに対して、本発明例1の2段すくい面ボールエンドミルは、刃先強度を保ちながら、切り屑排出を良好にしているためである。
本発明例2は、R1値を−7度、R2値を8度、RL値を外径の1%とし、ε値を70度とした。本願発明におけるR2値の影響を明らかにするため、比較例12のR2値を20度、比較例13を−5度と設定したほかは実施例1のものと同様の切削テストを行った。その結果、本発明例2は、安定した切削状態であり、ボール刃への溶着、欠損は認められず、均一な摩耗形態であり、加工面の状態は良好で、まだまだ切削可能であった。それに対し、比較例12は、R2値が20度であるため、刃先強度が極端に低下し、チッピング先行型の摩耗になり、不安定な摩耗形態であった。また比較例13は、一連のすくい面のフォームが負角に形成されてしまうため、耐欠損性には優れるものの、切り屑排出性が悪化し、切り屑の噛み込みによる仕上げ面の面粗度の悪化に繋がるばかりだけでなく、すくい面と切り屑との接触面積が小さくならないために、これらの間で生じる摩擦を小さくすることができず、結果溶着を抑えることができなくなってしまうものと考えられる。
本発明例3は、R1値を−10度、R2値を5度、RL値を外径の2%とし、ε値を60度とした。R1値がR2値よりも負角側にする影響を明らかにするため、比較例14のR1値を10度、R2値を−5度と設定したほかは実施例1のものと同様の切削テストを行った。その結果、R1値がR2値より大きいと、ボール刃を構成する刃物角が極端に鋭角になってしまい、ボール刃強度を確保できないために、比較例14はチッピング先行型の摩耗進行により、400m切削時では欠損に至った。このことから、本願発明の2段すくい面ボールエンドミルにおいては、R1値をR2値より小さく設定するのが好ましい事が判る。
本発明例4は、R1値を−10度、R2値を10度、RL値を外径の3%とし、ε値を100度とした。RL値の影響を明らかにするため、本発明例6のRL値を0.05%、本発明例7を5%と設定したほかは実施例1のものと同様の切削テストを行った。その結果、本発明例4は、安定した切削状態であり、ボール刃への溶着、欠損は認められず、均一な摩耗形態であり、加工面の状態は良好で、まだまだ切削可能であった。それに対し、本発明例6は、RL値が0.05%であるため、第1すくい面は負角側に形成されているが、長さが小さく、刃先強度が十分に確保されていないため切削途中から微小なチッピングの発生が確認されされた。また本発明例7は、工具外径に対して5%の第1すくい面長さになり、耐欠損性には大きく寄与するものの、工具へ微小な溶着が認められ切り屑排出性が劣った。切り屑の噛み込みによる仕上げ面は、ムシレは見られないが加工面に光沢が無い状態となった。このことから、本願発明の2段すくい面ボールエンドミルは、RL値を0.1%〜3%に設定するのが好ましい事が判る。
本発明例5は、R1値を−5度、R2値を5度、RL値を外径の1%とし、ε値を80度とした。ε値の影響を明らかにするため、本発明例8のε値が50度、本発明例9は105度と設定したほかは実施例1のものと同様の切削テストを行った。その結果、本発明例5は、安定した切削状態であり、刃先強度を保ちながら切り屑排出性も良好で、切削後の加工面状態も良好であった。それに対し、本発明例8は、本発明例5のように2段すくい面ボールエンドミルの形状になっているが、刃物角が50度であるため刃先強度は劣り、切削途中から微小なチッピングの発生が観察された。加工面性状はムシレは見られないが加工面に光沢が無い状態であった。また本発明例9は、逆に刃物角が105度と刃先強度は大きく確保しているものの、実際には工具設計上で逃げ角が小さいために良好な切削とはならず、全ての評価結果は△となった。このことから、本発明の2段すくい面ボールエンドミルのε値は、60≦ε≦100、に設定するのが好ましい。
次に、耐摩耗性を向上させるために本発明例1には(TiAl)N系硬質皮膜を3μm被覆していたが、更に耐摩耗性を向上させた(TiSi)N系硬質皮膜、潤滑性を向上させたCrN系硬質皮膜を夫々(TiAl)N系硬質皮膜の上層に成膜して、実施例1と同様の切削テストを行った。その結果、(TiSi)N系硬質皮膜のボールエンドミルは非常に耐摩耗性に優れ、更に安定した切削状態を示した。摩耗形態が安定していることから、加工面の状態も更に良好になり、工具寿命も2倍の切削距離が得られた。またCrN系硬質皮膜のボールエンドミルは、潤滑性に富むことから、切り屑排出性が更に良好になり、刃先強度も確保されたまま、切り屑詰まりも起こりにくくなり、工具寿命も1.7倍の切削距離が得られた。
2:切り屑排出溝
3:すくい面
3a:第1すくい面
3b:第2すくい面
4:逃げ面
5:ボール刃
6:第1すくい角R1
7:第2すくい角R2
8:第1すくい面長さRL
9:刃物角ε
C:工具回転中心部
P:ボール刃が構成する円弧中心
Claims (4)
- ボールエンドミルにおいて、少なくとも、ボール刃の刃径50%以下の刃直交断面におけるすくい面が、2つのすくい面から構成され、ボール刃稜線に最も近い第1すくい面における第1すくい角R1(度)は、−10≦R1≦0であり、第2すくい面における第2すくい角R2(度)は、0<R2≦15、としたことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1記載のボールエンドミルにおいて、該第1すくい面の長さRLは、外径の0.1〜3%、としたことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1、2に記載のボールエンドミルにおいて、該ボール刃を構成する刃物角ε(度)は、60≦ε≦100、としたことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1記載のボールエンドミルにおいて、該R1値は、−5≦R1≦0であり、該R2値は、0<R2≦5、としたことを特徴とするボールエンドミル。
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