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JP2007525031A - 合成量子ドット構造体 - Google Patents

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Abstract

合成量子ドット構造体4は、量子ドット2のような電荷キャリア閉じこめ領域と、バリア5と、導電性物質層3とを備える。この構造体では、導電性物質層3の大きさが領域2の大きさに実質的に依存しないようにして、導電性物質層3の大きさを自身が確実に堆積できる十分な大きさとしつつ、所望の光学特性が得られるように、領域2の大きさを決定することができる。また、クラッディング層7(図4)を含むようにして、バリア5と導電性物質層3との間における化学親和力の不足を補償するようにしてもよい。そのような構造体の集合体では、量子ドット1の半径は異なっているが、導電性物質層3の大きさおよび構造体の全体の大きさは、例えば、様々な波長の光を増幅するアンプに用いるために、実質的に同じである。
【選択図】図3、図4

Description

本発明は、導電性物質の層でコーティングされた量子ドットを備えた量子ドット構造体に関する。
量子ドットは、アンプ、レーザ、発光ダイオード、変調器やスイッチなどの光電子装置において、幅広い用途の可能性がある。量子ドットの魅力は、熱振動に起因する非効率性を減じる、電子エネルギースペクトルが分離しているという性質、および、電子エネルギースペクトルが化学成分とサイズによって設計することができるという事実にある。
コロイド化学によって作られる量子ドットは、界面活性剤やリンカー分子を使用することによって、ホスト物質に組み込むことができるという利点をさらに有する。分子は、その外部端に、量子ドットをポリマーやガラスなどのような選ばれたホスト物質に溶解させる官能基を有するものが選ばれる。
1世紀ほどさかのぼると、合成物の中の金属領域の存在に起因する電磁界の歪みに関する従来技術が多数存在する。特に、BirnboimとNeeves(US 5023139)は、金属ナノ粒子や金属層に覆われたナノ粒子、そしてそれらの変種がナノ粒子の中または周辺の電界をどのように変更するのか、また、その効果を光電子装置で効果的に使用することができると述べている。電界の変化は、プラズマ共鳴の存在と密接に関係がある。ライス大学の研究グループであるHouston(Science 302 419 (2003), 10月17日)の最近の論文では、シリカ−金−シリカ−金のナノ粒子を作り、そのプラズマ共鳴の周波数を測定したことを報告している。この論文は、分子軌道理論に関するものであるが、標準的な電磁界理論を金属層を含むナノ構造の設計に適用する方法に対する現在の理解の一例を示すものである。この標準理論は、MieとDebye(例えば、Born & Worf 1980, ‘光の法則’,Pergamon、Bohren&Huffman 1983, ‘小粒子による光の吸収と拡散’Wiley)によるものである。
しかしながら、この従来技術では、原子の粒状性を無視して、物質が連続的なものとして検討を行っており、内部原子または分子の間隔の整数倍となる場合にのみ、任意の厚さの物質層を作ることが少なくとも原理的には可能となると考えている。しかし、このことは、ナノ粒子や量子ドットを使用する従来の光電子装置で実施するには、大きな障害となる。例えば、光学ゲインやポンプ光の効能を増大させるため、量子ドット内部の電界を最大化するために従来技術を使用することを仮定すると、図1に示すような簡単な例を考えつくであろう。この例では、粒子ドット構造体1は、金属シェルを形成するための貴金属(銅、銀、または金)のような金属層3によって覆われた量子ドット2によって構成されている。また、上述した標準的な電磁界理論を、量子ドットの上に投射される平面電磁波の存在に起因して量子ドットの内側に作られる電界を計算するために用いるダイポール近似に使用することも考えつくであろう。
従来の量子ドット構造体1における量子ドット2は、例えば、テルル化水銀やサルファイド等のIII−VまたはII−VI化合物のような半導体または絶縁体によって、作ることができるかもしれない。図1に示すような構造は、初めにコロイド溶液の中で量子ドット2を作り、次に金属層を形成するための反応物を導入することによって作ることができる。もし、量子ドット2が、例えばテルル化水銀によって作られているならば、テルル化金の層を形成するために、金塩およびテルル化水素を導入し、続いて、テルル化金の層を金に変えるための還元剤を導入する。
図2では、金属層3が存在しない場合に対して、金属層3が存在する場合における量子ドット2内部の電界の割合の2乗を表す増強係数がデルタ関数としてプロットされている。デルタは、量子ドット2の半径に対する金属層3の幅の割合を表している。
増強係数を計算するためには、誘電定数の一般的な値が使われてきた。ホスト媒体の誘電定数としては、ガラスやポリマーホストとして一般的な値である3が用いられてきた。量子ドット物質には、半導体として一般的な誘電定数12が用いられてきた。金属層3の誘電定数としては、通信波長(1300−1500nm)において、貴金属の一般的な値である(-90+7.5i)が用いられてきた。しかしながら、正確な値は重要ではない。なぜなら、デルタ=0.1近辺において鋭角的な最大値を取るという曲線の主特徴は、パラメータ変化に強いからである。
ここで、ライフタイム効果等によって、準位の拡大が無い状態での離散エネルギー準位(実際には、見かけ上離散しているだけであるが)のように、量子ドットが持つ望ましい特性を得るために、量子ドットの半径は、一般的に5nmあるいはそれ以下である必要がある。このことは、従来技術に基づく上記結果によれば、金属層は、たった0.5nmあるいはそれ以下である必要があることを示している。一般的に、貴金属の原子間隔は、約0.25nmである。従って、0.5nmの厚さの層は、原子2つ分に相応する。もし、半径が2.5nmから5nmの量子ドットの集合体によって生み出されるゲインを最適化するなら、金属の1つの単分子層が半径2.5nmの量子ドットにおける電界を最大化するが、残りの集合体には行われないであろう。ゲインの最適化は、ITUの低密度波長分割多重規格における全波長(約400nmの範囲)を同時に増幅する量子ドット増幅器のために行うことが望まれるであろう。同様に、もし、2つの原子層が全ての量子ドットに堆積するなら、半径5nmの量子ドットは最適なゲインを示すが、集合体における他の全ての量子ドットは最適化されないであろう。従って、そのような薄い層によって量子ドットの集合体を最適化することは不可能である。そのような薄い層では、従来技術で仮定していた設計上の重要な柔軟性が損なわれる。これは、例え原理的に可能であっても、正確な数の単分子層と同じ層を得る難しさ、特に、製造上の難しさを考慮していない。
この問題の解決方法としては、金属層3の半径を大きくして、共鳴条件、一般的には上述した例において、金属層3の幅の約10倍に相当する金属層の内部半径を、原子がもはや問題にならないほどの層の厚さに対応させる。しかし、量子ドット2の大きさを例えば10倍に増大するだけの方法は、量子ドット2のエネルギー準位における価値ある量子化が失われるので、選択肢とはならない。
金属層3の利点を得つつ、量子ドット構造体の価値ある特性を維持するという課題は、本発明によって解決される。
本発明の第1の態様によれば、合成量子ドット構造体は、第1の物質にて形成される電荷キャリア閉じこめ領域と、第1の物質以外の第2の物質で形成され、電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアと、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアによって囲まれる導電性物質の層とを備える。
例えば、量子ドット構造体は、第2の物質の層で形成されるバリアによって囲まれ、量子ドットの形の電荷キャリア閉じこめ領域を備えるようにして、バリアによって、電荷キャリア閉じこめ領域から電子および/またはホールが逃げないようにしてもよい。あるいは、量子ドット構造体は、電荷キャリア閉じこめ領域によって囲まれる、コアの形のバリアを備えるようにしてもよい。
合成量子ドット構造体は、導電性物質による層の内側および外側の半径が電荷キャリア閉じこめ領域の半径に実質的に依存しないようにする。これにより、確実に堆積する厚さを有する導電性物質による層を使用しつつ、所望の光学特性が得られるように、電荷キャリア閉じこめ領域の大きさを選択することができる。
合成量子ドット構造体により、構造の集合体を作ることもできる。この集合体では、導電性物質による層の厚さおよび集合体の構造全体の大きさが実質的に同じとなるように、電荷キャリア閉じこめ領域の大きさおよびバリアの大きさが構造体間において異なっている。そのような集合体は、様々な波長の光を増幅する量子ドットアンプに用いることができる。
第1の物質および/または第2の物質は、半導体としてもよい。
第1および第2の物質が半導体である場合、第2の物質は、第1の物質のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有することができる。
第1の物質および/または第2の物質は、絶縁体としてもよい。
第1の物質および/または第2の物質は、半絶縁体としてもよい。
導電性物質による層の内周に隣接する位置にクラッディング層を設けるようにしてもよい。クラッディング層は、導電性物質と隣接する物質、換言すると、電荷キャリア閉じこめ領域とバリアのどちらが導電性物質に隣接しているかに応じて、第1の物質と第2の物質との間における化学親和力の不足を補償することができる。クラッディング層は、半導体性物質、絶縁性物質、あるいは、半絶縁性物質により形成することができる。少なくとも2つのクラッディング層が異なる物質で形成される複数のクラッディング層を設けるようにしてもよい。
導電性物質は、貴金属のような金属とすることができる。
量子ドット構造体は、実質的に球対称とすることができる。電荷キャリア閉じこめ領域が量子ドットであって、バリアによって囲まれている場合、導電性物質による層の内側半径は、量子ドットの半径の約10倍とすることができる。
電荷キャリア閉じこめ領域が量子ドットであって、バリアによって囲まれており、実質的に球対称となっている構造体では、量子ドットの半径は、5nmあるいはそれ以下とすることができる。
この第1の態様によれば、上述した量子ドット構造体を1つまたは2つ以上備える光アンプ、レーザ、発光ダイオード、光スイッチも提供することができる。
本発明の第2の態様によれば、量子ドット構造体の製造方法は、第1の物質にて形成される電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップと、第1の物質以外の第2の物質で形成され、電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを作るステップと、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアによって囲まれる、導電性物質の層を作るステップとを備える。
この製造方法において、導電性物質による層に隣接する1または2以上のクラッディング層を作るステップを備えるようにしてもよい。複数のクラッディング層を設ける場合には、少なくとも2つのクラッディング層が異なる物質で形成されるようにしてもよい。
量子ドット構造体の製造方法ではさらに、量子ドット構造体をホスト物質に組み込むステップを備えることもできる。
量子ドット構造体の製造方法は、電荷キャリア閉じこめ領域の集合体を、サブ集合体に物理的に分割し、電荷キャリア閉じこめ領域の集合体を再構築することによって、量子ドット構造体の集合体を作るのに用いることもできる。この製造方法において、バリアを作るステップおよび導電性物質の層を作るステップは、複数の電荷キャリア閉じこめ領域を再構築するステップの前に、電荷キャリア閉じこめ領域のサブ集合体で行われる。集合体は、サイズ分画法を用いて、サブ集合体に分割することができる。サブ集合体内において、バリアの上に1または2以上のクラッディング層を設けるステップを備えるようにしてもよい。
あるいは、量子ドット構造体の製造方法は、バリアの集合体を、サブ集合体に物理的に分割し、バリアの集合体を再構築することによって、量子ドット構造体の集合体を作るのに用いることもできる。この製造方法において、電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップおよび導電性物質の層を作るステップは、複数のバリアを再構築するステップの前に、バリアのサブ集合体で行われる。集合体は、サイズ分画法を用いて、サブ集合体に分割することができる。サブ集合体内において、電荷キャリア閉じこめ領域の上に1または2以上のクラッディング層を設けるステップを備えるようにしてもよい。
本発明の第3の態様によれば、量子ドット構造体の集合体は、第1の量子ドット構造体と第2の量子ドット構造体とを備える。第1の量子ドット構造体は、第1の物質にて形成されて第1の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域、および、第1の物質とは異なる第2の物質にて形成されて第2の大きさを有し、電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを備え、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの一方が電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの他方を取り囲んでいる。第2の量子ドット構造体は、第1の物質によって形成されて第3の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域、および、第2の物質にて形成されて第4の大きさを有し、電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを備え、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの一方が電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの他方を取り囲み、第3の大きさは第1の大きさとは異なり、第4の大きさは第2の大きさとは異なる。第1および第2の量子ドット構造体の各々は、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの一方を取り囲む導電性物質の層を備え、第1および第2の量子ドット構造体における導電性物質の層の大きさは、実質的に同じである
第1および第2の量子ドット構造体のうちの少なくとも一方は、導電性物質の層と、バリアまたは電荷キャリア閉じこめ領域のどちらかとの間に配置されるクラッディング層を備えることができる。
上述した第3の態様では、上述した量子ドット構造体の集合体を備える光アンプ、レーザ、および、発光ダイオードも提供することができる。
本発明の第4の態様によれば、量子ドット構造体の集合体の製造方法は、第1の物質にて形成される複数の電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップであって、複数の電荷キャリア閉じこめ領域のうちの少なくとも第1の電荷キャリア閉じこめ領域は第1の大きさを有しており、複数の電荷キャリア閉じこめ領域のうちの少なくとも第2の電荷キャリア閉じこめ領域は、第1の大きさとは異なる第2の大きさを有しているステップと、複数のバリアを作るステップであって、複数のバリアの各々は、複数の電荷キャリア閉じこめ領域の各々に電荷キャリアを閉じこめるように配置されており、バリアは、第1の物質とは異なる第2の物質で形成されているステップと、複数の導電性物質の層を作るステップとを備える。この製造方法において、各量子ドット構造体では、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの一方が電荷キャリア閉じこめ領域およびバリアのうちの他方を取り囲み、各導電性物質の層は、バリアおよび電荷キャリア閉じこめ領域のそれぞれを取り囲み、第1、第2、第3、第4の大きさは、導電性物質の層の大きさが実質的に同じとなる値が選択される。
第1および第2の量子ドット構造体の少なくとも一方は、導電性物質の層と、バリアまたは電荷キャリア閉じこめ領域との間に配置されるクラッディング層を備えるようにしてもよい。
図3を参照すると、本発明の第1の実施の形態における量子ドット構造体4は、量子ドット2と金属層3の間に設けられたバリア層5を備えており、「スコッチエッグ」タイプの構造となっている。バリア層5は、電荷キャリア、言い換えると、電子および/またはホールが量子ドット2から出て行くのを防ぐ。
本発明では、特定の波長における吸収/ゲインのように、必要とされ、かつ望ましい光電子特性を示すように、量子ドット2の半径が選ばれる。前述したように、量子ドット2の半径は、一般的に5nmあるいはそれ以下である。バリア層5の外側の半径は、一般的に量子ドット2の半径の10倍以上大きくしてもよく、量子ドット2内の電界が最大になるように決定されることが好ましい。また、バリア層5の外側の半径は、同時に、必要とされる幅を有する金属層3が安定的に堆積するのに十分な大きさである必要がある。
そのような量子ドット構造体4の集合において、金属層3に必要とされる幅は、全ての量子ドット2に対して、実質的に同じ大きさとしてよい。なぜなら、バリア層5が作られる際に、金属層3の外側の半径は、量子ドット半径に実質的に依存しないからである。もしこのことが事実でなければ、量子ドット2のサブ集合を作るために、サイズ分画を行うことができる。この場合、サブ集合における量子ドット2は、実質的に同じ大きさである。また、サブ集合から元の集合を再構築する前に、各サブ集合を最適化するために、各サブ集合におけるバリア層5と金属層3を別々に成長させることができる。
この例では、バリア層5は、半導体物質から形成される。量子ドット2は、上述したように、一般的な5nmあるいはそれ以下の半径を有している。バリア層5の外側の半径、すなわち、金属層3の内側の半径は、7.5nmである。金属層3は、銅、金、または銀などのような貴金属の3つの原子層から成り立っており、このため0.75nmの厚さを有する。そのような量子ドット構造体4の集合では、量子ドット構造体4ごとに量子ドット2の半径が異なるようにしてもよい。各量子ドット構造体4のバリア層5は、所定の外周半径7.5nmとなるように構成される。集合体における各量子ドット構造体4は、同じ厚さの金属層3を備えているので、各量子ドット構造体4の全体の大きさは同じである。
もし必要なら、量子ドット2およびバリア層5の両方とも、半導体材料により形成する。この場合、バリア層5は、一般的には、量子ドット2を構成する半導体のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する半導体によって構成して、電子とホールが量子ドット2に閉じこめられるようにする。これにより、例えば、量子ドット2がテルル化水銀によって構成されていれば、バリア層5として、テルル化カドミウムを使用することができる。ほとんどの半導体は、光学領域において同じような誘電定数を有するので、量子ドット2およびバリア物質の誘電定数が異なっていても、量子ドット半径およびバリア層5の厚さに関して、通常、全体の設計に重大な影響はない。誘電定数が異なる場合には、この相違を考慮に入れて計算することにより、量子ドット2の電界を最大化する最適な構造を得ることができる。
もし必要なら、量子ドット2は、半導体物質の代わりに、絶縁性、または半絶縁性物質によって構成してもよいし、バリア層5を半導体性、絶縁性、または半絶縁性物質によって構成してもよい。例えば、量子ドット構造体は、量子ドット2が絶縁体または半絶縁体であり、バリア層5が半導体となるように構成することができる。そのような変形構成は、伝導帯または価電子帯の一方で起こる、量子ドット2内部の電子励起を伴うユニポーラであるかもしれない。この場合、バリア層5は、電荷キャリアの1つ、すなわち、必要に応じて、電子またはホールのバリアとして機能しなければならない。
図3の例において、金属層3は、貴金属により構成されている。しかしながら、この金属層3を形成するために、電界を変更するのに適した特性を有する他の金属や、他の導電性物質を代わりに用いることもできる。
本発明の他の実施の形態では、バリア層と金属シェルとの間に、1または2以上のクラッディング層を設けるようにしてもよい。例えば、量子ドット構造体が1または2以上のクラッディング層を備えるようにして、バリア層5を形成するために用いられる物質と金属層3を形成するために用いられる物質との間における化学親和力の不足を補償するようにしてもよい。そのようなクラッディング層7を1つ備えた量子ドット構造体6の一例を図4に示す。
前述した例のように、量子ドット2は、絶縁性、半絶縁性、または半導体性物質によって構成することができる。バリア層5は、絶縁体、量子ドット1を形成するために用いられる物質のバンドギャップより広いバンドギャップを有する半導体、または半絶縁体物質によって形成されることが好ましい。クラッディング層7、または、複数のクラッディング層は、半導体性、半絶縁性、または絶縁性物質を用いて形成することができる。
本願発明の開示により得られる知識無しに、図3や図4に示す構造、および複数のクラッディング層を備える構造体を試してみることは、当業者にとって自明のことではない。すなわち、強い動機無しに、ナノ構造の製造プロセスに、他のすぐれた手法を導入しようとは思わない。
図3や図4に示す量子ドット構造体4,6において、キャリアは、量子ドット2により形成されるコア部分に閉じこめられる。しかしながら、コアがバリア層5の役割を果たし、電荷キャリアが周囲領域に閉じこめられて、量子ドット2の役割を果たすことによって、同じような量子ドット構造体を作り出すこともできる。そのような量子ドット構造体の例を図5および図6に示す。
図5は、本発明の第3の実施の形態における量子ドット構造体8を示す。この量子ドット構造体8は、電荷キャリア閉じこめ領域2および金属層3によって囲まれたバリア層5を備えている。電荷キャリアがバリア層5に侵入するのを防ぐために、バリア層5は、電荷キャリア閉じこめ領域2を形成するために用いられる物質のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する物質によって形成される。金属層3も、完全にまたは実質的に、電荷キャリアを電荷キャリア閉じこめ領域2に閉じこめる役割を果たす。
図6は、本発明の第4の実施の形態における量子ドット構造体9を示す。図5に示す量子ドット構造体8と同様に、量子ドット構造体9は、電荷キャリア閉じこめ領域2によって囲まれたバリア5を備えている。電荷キャリア閉じこめ領域2と金属層3との間における化学親和力の不足を補償するために、電荷キャリア閉じこめ領域2と金属層3との間に、1または2以上のクラッディング層7を設けている。クラッディング層7および金属層3も、完全にまたは実質的に、電荷キャリアを電荷キャリア閉じこめ領域2に閉じこめる役割を果たす。
第1の実施の形態において説明したように、量子ドット構造が望まれる光学特性を発揮するように、電荷キャリア閉じこめ領域2の大きさが選択される。一方、電荷キャリア閉じこめ領域およびバリア5が結合した大きさが、金属層3に必要とされる幅が確実に堆積するために十分な大きさとなるように、バリア5の大きさが選択される。
合成量子ドット構造体は、導電性物質による層の内側および外側の半径が電荷キャリア閉じこめ領域の半径に実質的に依存しないようにする。これにより、確実に堆積する厚さを有する導電性物質による層を使用しつつ、所望の光学特性が得られるように、電荷キャリア閉じこめ領域の大きさを選択することができる。

第1の実施の形態において説明したように、量子ドット2の半径は異なっているが、導電性物質層3の厚さおよび構造体4,6の全体の大きさは、実質的に同じである量子ドット構造体の集合体を作ることもできる。図7は、量子ドット構造体4a−4eの集合を示している。この例では、量子ドット構造体4a−4eは、図3に示す第1の実施の形態の構造体に対応している。これらの構造における量子ドット2a,2b,2c,2d,2eの半径は異なっている。しかしながら、各バリア層5a−5e、および、設けられている場合におけるクラッディング層7b,7eは、集合体において、金属層3a−3eの内側半径が実質的に同一となるように設計されている。量子ドット構造体4a−4eの金属層3a−3eの厚さは、集合体において、実質的に同じであるので、量子ドット構造体4a−4eの全体の大きさは、実質的に同じである。そのような集合体は、上述したサイズ分画を行うことによって作り出してもよい。
そのような集合体は、図3から図6に示す量子ドット構造体のいずれか一つを用いて作ることができるし、図3から図6に示す異なる量子ドット構造体4,6,8,9のうち、2以上の組み合わせによって作ることもできる。
量子ドット構造体の集合体をガラスやポリマーのようなホスト媒体10の中で浮遊させて、アンプに使用してもよい。図8および図9は、ホスト媒体10の中で浮遊し、基板12の中または上に配置される集合体4a-4eを備えたアンプ11,18の例を示している。
レーザ15は、量子ドット2の中で、電子−ホールの対を励起するためのポンプ光を放射する。レーザは、一般的にエルビウムドープファイバーアンプをポンプするために用いられるポンプレーザのような半導体レーザとしてもよい。
図8に示すアンプ11において、ポンプ光は、導波管16を介して量子ドット構造体4a−4eに加えられる。余分なポンプ光は、第2の導波管17を介して放出してもよい。
図9に示すアンプ18において、導波管16は光ファイバー13と結ばれており、光ファイバー13を通って入力される光は、ホスト媒体10に導かれる。
どちらの例でも、光ファイバー13から入力される光がホスト媒体10に導かれるように、基板12の設計が行われる。光は、量子ドット構造体4a−4e内において、量子ドット2との相互作用により増幅される。増幅された光は、第2の光ファイバー14から出力される。これらの例において、量子ドット構造体4a−4eにおける量子ドット2の半径は異なっているので、アンプは、様々な波長の光を同時に増幅することができる。
図3,4,5,6に示す量子ドット構造体は、本発明において考え得る実施の形態の例に過ぎない。例えば、図3,4,5,6および上述した内容は、理想的な構造、この場合、球対称の構造に基づいたものである。しかし、光理論および電磁界理論における知識によって、本発明の主な特徴、すなわち、電磁界に対する応答性を決定する金属層の厚さおよび金属層によって閉じこめられる領域の大きさの重要性は、理想的な球面形状に依存しないことが分かるであろう。また、電界の増大は、実質的に金属層内の電子の移動によって生じ、そのような電界の増大は、球対称の形状に左右されないことが分かるであろう。例えば、量子ドットの形状を、楕円形構造、円筒形構造、または、他の形の構造としてもよい。実験的な試行錯誤や正確な数学的モデリング、あるいは、それらをたくみに組み合わせる手法により、あらゆる状況下における最適な設計を行いうるであろう。
図1は、従来の量子ドット構造体を表している。 図2は、図1に示す従来の量子ドット構造体について、デルタと増強係数との関係を示すグラフである。 図3は、本発明の第1の実施の形態における量子ドット構造体を表している。 図4は、本発明の第2の実施の形態における量子ドット構造体を表している。 図5は、本発明の第3の実施の形態における量子ドット構造体を表している。 図6は、本発明の第4の実施の形態における量子ドット構造体を表している。 本発明による量子ドット構造体の集合体を表している。 図8は、図7に示す量子ドット構造体の集合体を備えたアンプの模式図である。 図9は、図7に示す量子ドット構造体の集合体を備えた他のアンプの模式図である。
符号の説明
2…量子ドット
3…金属層
4…量子ドット構造体
5…バリア層
7…クラッディング層

Claims (42)

  1. 第1の物質にて形成される電荷キャリア閉じこめ領域と、
    前記第1の物質以外の第2の物質で形成され、前記電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアと、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアによって囲まれる導電性物質の層とを備える合成量子ドット構造体。
  2. 請求項1における量子ドット構造体において、
    前記第1の物質は、半導体である。
  3. 請求項1または2における量子ドット構造体において、
    前記第2の物質は、半導体である。
  4. 請求項2に従属する請求項3における量子ドット構造体において、
    前記第2の物質は、前記第1の物質のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する。
  5. 請求項1または3における量子ドット構造体において、
    前記第1の物質は、絶縁体である。
  6. 請求項1または2、または、請求項1に従属する請求項5における量子ドット構造体において、
    前記第2の物質は、絶縁体である。
  7. 請求項1または3、または、請求項1に従属する請求項6における量子ドット構造体において、
    前記第1の物質は、半絶縁体である。
  8. 請求項1または2、または、請求項1に従属する請求項7における量子ドット構造体において、
    前記第2の物質は、半絶縁体である。
  9. 請求項1における量子ドット構造体において、
    前記第1の物質は絶縁体であり、前記第2の物質は、半絶縁体である。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の量子ドット構造体において、
    前記バリアは、前記電荷キャリア閉じこめ領域を取り囲んでいる。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の量子ドット構造体において、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域は、前記バリアを取り囲んでいる。
  12. 請求項10における量子ドット構造体において、
    前記バリアと前記導電性物質の層との間に配置されるクラッディング層をさらに備える。
  13. 請求項11における量子ドット構造体において、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域と前記導電性物質の層との間に配置されるクラッディング層をさらに備える。
  14. 請求項12または13における量子ドット構造体において、
    前記クラッディング層は、半導体性物質によって形成されている。
  15. 請求項12または13における量子ドット構造体において、
    前記クラッディング層は、絶縁性物質によって形成されている。
  16. 請求項12または13における量子ドット構造体において、
    前記クラッディング層は、半絶縁性物質によって形成されている。
  17. 請求項12から16のいずれかに記載の量子ドット構造体において、
    前記クラッディング層は複数あり、その中の少なくとも二つのクラッディング層は、異なる物質によって形成されている。
  18. 請求項1から17のいずれかに記載の量子ドット構造体において、
    前記導電性物質は、金属である。
  19. 請求項18における量子ドット構造体において、
    前記金属は、貴金属である。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載の量子ドット構造体において、
    量子ドット構造体は、実質的に球対称である。
  21. 請求項10に従属する請求項20に記載の量子ドット構造体において、
    前記バリアの外側半径は、前記電荷キャリア閉じこめ領域の半径の約10倍である。
  22. 請求項10に従属する請求項20または請求項21に記載の量子ドット構造体において、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域の半径は、5nmあるいはそれ以下である。
  23. 請求項1から19のいずれかに記載の量子ドット構造体を1つ、あるいは2つ以上備えた光アンプ。
  24. 請求項1から23のいずれかに記載の量子ドット構造体を1つ、あるいは2つ以上備えたレーザ。
  25. 請求項1から23のいずれかに記載の量子ドット構造体を1つ、あるいは2つ以上備えた発光ダイオード。
  26. 請求項1から23のいずれかに記載の量子ドット構造体を1つ、あるいは2つ以上備えた光スイッチ。
  27. 請求項1から22のいずれか一項に記載の量子ドット構造体の集合体であって、
    前記量子ドット構造体のうちの少なくとも第1の量子ドット構造体は、第1の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域と、第2の大きさを有するバリアを備え、
    前記量子ドット構造体のうちの少なくとも第2の量子ドット構造体は、前記第1の大きさとは異なる第3の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域と、前記第2の大きさとは異なる第4の大きさを有するバリアを備え、
    前記第1および第2の量子ドット構造体における導電性物質の層は、実質的に同じ大きさである量子ドット構造体の集合体。
  28. 第1の物質にて形成される電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップと、
    前記第1の物質以外の第2の物質で形成され、前記電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを作るステップと、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアによって囲まれる導電性物質の層を作るステップとを備える量子ドット構造体の製造方法。
  29. 請求項28に記載の製造方法において、
    前記バリアを作るステップには、前記バリアで前記電荷キャリア閉じこめ領域を取り囲むことが含まれる。
  30. 請求項29に記載の製造方法において、
    前記バリアと前記導電性物質の層との間に少なくとも1つのクラッディング層を設けるステップを備える。
  31. 請求項28に記載の製造方法において、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップには、前記電荷キャリア閉じこめ領域で前記バリアを取り囲むことが含まれる。
  32. 請求項31に記載の製造方法において、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域と前記導電性物質の層との間に少なくとも1つのクラッディング層を設けるステップを備える。
  33. 請求項30または32に記載の製造方法において、
    少なくとも1つのクラッディング層を設けるステップでは、複数のクラッディング層を設け、その中の少なくとも二つのクラッディング層は、異なる物質によって形成される。
  34. 請求項28から33のいずれかに記載の製造方法において、
    前記量子ドット構造体をホスト物質に組み込むステップを含む。
  35. 請求項29または30に記載の製造方法において、
    電荷キャリア閉じこめ領域の集合体を、複数のサブ集合体に物理的に分割するステップと、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域の集合体を再構築するステップとを備え、
    前記バリアを作るステップおよび前記導電性物質の層を作るステップは、前記複数の電荷キャリア閉じこめ領域を再構築するステップの前に、電荷キャリア閉じこめ領域のサブ集合体で行われる。
  36. 請求項31または32に記載の製造方法において、
    バリアの集合体を、複数のサブ集合体に物理的に分割するステップと、
    前記バリアの集合体を再構築するステップとを備え、
    前記電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップおよび前記導電性物質の層を作るステップは、前記複数のバリアを再構築するステップの前に、バリアのサブ集合体で行われる。
  37. 請求項35または36に記載の製造方法において、
    前記集合体の物理的分割は、サイズ分画法を用いて行う。
  38. 第1の物質にて形成されて第1の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域、および、第2の物質にて形成されて第2の大きさを有し、前記電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを備え、前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの一方が前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの他方を取り囲み、前記第1の物質は前記第2の物質とは異なる第1の量子ドット構造体と、
    前記第1の物質によって形成されて第3の大きさを有する電荷キャリア閉じこめ領域、および、前記第2の物質にて形成されて第4の大きさを有し、前記電荷キャリア閉じこめ領域内に電荷キャリアを閉じこめるように配置されるバリアを備え、前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの一方が前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの他方を取り囲み、前記第3の大きさは前記第1の大きさとは異なり、前記第4の大きさは前記第2の大きさとは異なる第2の量子ドット構造体とを備え、
    前記第1および第2の量子ドット構造体の各々は、前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの一方を取り囲む導電性物質の層を備え、前記第1および第2の量子ドット構造体における前記導電性物質の層の大きさは、実質的に同じである量子ドット構造体の集合体。
  39. 請求項38に記載の集合体において、
    前記第1および第2の量子ドット構造体のうちの少なくとも一方は、前記導電性物質の層と、前記バリアまたは前記電荷キャリア閉じこめ領域のどちらかとの間に配置されるクラッディング層を備える。
  40. 請求項38または39に記載の量子ドット構造体の集合体を備える光アンプ。
  41. 第1の物質にて形成される複数の電荷キャリア閉じこめ領域を作るステップであって、前記複数の電荷キャリア閉じこめ領域のうちの少なくとも第1の電荷キャリア閉じこめ領域は第1の大きさを有しており、前記複数の電荷キャリア閉じこめ領域のうちの少なくとも第2の電荷キャリア閉じこめ領域は、前記第1の大きさとは異なる第2の大きさを有しているステップと、
    複数のバリアを作るステップであって、複数のバリアの各々は、前記複数の電荷キャリア閉じこめ領域の各々に電荷キャリアを閉じこめるように配置されており、バリアは、前記第1の物質とは異なる第2の物質で形成されているステップと、
    複数の導電性物質の層を作るステップとを備え、
    各量子ドット構造体において、前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの一方が前記電荷キャリア閉じこめ領域および前記バリアのうちの他方を取り囲み、前記導電性物質の層は、前記バリアおよび前記電荷キャリア閉じこめ領域の一方を取り囲み、
    前記第1、第2、第3、第4の大きさは、前記導電性物質の層の大きさが実質的に同じとなるように決定される量子ドット構造体の集合体の製造方法。
  42. 請求項40に記載の製造方法において、
    前記第1および第2の量子ドット構造体の少なくとも一方は、前記導電性物質の層と、前記バリアまたは前記電荷キャリア閉じこめ領域のうちのいずれか一方との間に配置されるクラッディング層を少なくとも1つ備える。
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