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JP2007500183A - 3,5−二置換インダゾール化合物、医薬組成物、および細胞増殖を仲介又は阻害する方法 - Google Patents

3,5−二置換インダゾール化合物、医薬組成物、および細胞増殖を仲介又は阻害する方法 Download PDF

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Abstract

細胞増殖、例えばプロテインキナーゼの活性を調節および/または阻害する3,5-二置換インダゾール化合物を記載する。これらの化合物およびこれらを含有する医薬組成物は、CDK依存性疾患を仲介することができ、望ましくない細胞増殖を調節および/または阻害することができる。さらに本発明は、係る化合物を含有する医薬組成物の治療的または予防的使用、ならびに、係る化合物の有効量を投与することによる、癌ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖に随伴するその他の疾患、例えば糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、関節リウマチ、および乾癬を処置する方法に関する。

Description

発明の分野
本発明は、プロテインキナーゼの活性によって、とりわけCDK1、CDK2、CDK4、およびCDK6といったサイクリン依存性キナーゼの仲介によって細胞増殖を仲介および/または阻害する、3位に置換ベンズアミダゾールを有する3,5-二置換インダゾール類に関する。さらに本発明は、当該化合物および組成物を含有する医薬組成物、ならびに、係る化合物の有効量を投与することにより、癌、ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖に随伴するその他の病態を治療する方法にも関する。
発明の背景
細胞増殖は様々な刺激に応答して起こり、細胞が増加し分裂するプロセスである細胞分裂周期(または細胞周期)の脱調節から起こり得る。癌を包含する過剰増殖病態は、例えば細胞周期の進行を直接または間接的に調節する遺伝子に対する損傷のため、細胞が制御不能の勢いで激しく細胞周期を巡ることを特徴としている。したがって、細胞周期、よって過剰増殖を調節する物質は、制御不能のまたは望ましくない細胞増殖に伴う様々な病態の処置に使用することができる。
細胞増殖のメカニズムは細胞および分子レベルで活発に研究されている。細胞レベルでは、シグナル伝達経路の脱調節、細胞周期制御の喪失、脱抑制された血管新生または炎症経路の刺激が精査中であり、一方分子レベルでは、これらのプロセスが種々の蛋白によって調節されており、中でもプロテインキナーゼが極めて疑わしい。全体的な増殖の減退は、プログラムされた細胞死、またはアポトーシスによってもたらされることもあり、これもまた数多くの経路で調節され、その幾つかは蛋白分解酵素蛋白を含んでいる。候補となっている調節蛋白のうち、プロテインキナーゼは、蛋白の中の特定のチロシン、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシ基の燐酸化を触媒する酵素の一ファミリーである。典型的には、このような燐酸化は蛋白の機能を著しく混乱させ、よってプロテインキナーゼは多岐にわたる細胞プロセスの調節の中枢にある。例えば、特定の理論に拘束されることを望む訳ではないが、例えばサイクリン依存性キナーゼ(「CDK」)のようなプロテインキナーゼのインヒビターとして、本発明物質は細胞のRNAおよびDNA合成のレベルを調節でき、故に、HIV、ヒト乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、アデノウイルス、シンドビスウイルス、ポックスウイルス等のようなウイルス感染の処置に有用であると予想される(Schang, et al, J. Virol. 74, 2107-2120(2000)を参照されたい)。加えて、CDK5はタウ蛋白の燐酸化に関わっており、アルツハイマー病の潜在的処置または予防方法を示唆している(Hosoi, et al, J. Biochem.(Tokyo), 117, 741-749(1995))。CDKは、異なる相の細胞周期の間の転移、例えばG1(有糸分裂と、新たな回の細胞分裂のためのDNA複製開始の間の間隙)の静止期からS(活発なDNA合成の期間)への進行、または、G2から活発な有糸分裂および細胞分裂が起こるM期への進行、の調節に重要な役割を果たすセリン-スレオニンプロテインキナーゼである。CDK複合体は、調節サイクリンサブユニット(例えばサイクリンA、B1、B2、D1、D2、D3、およびE)および触媒キナーゼサブユニット(例えばCDK1、CDK2、CDK4、CDK5、およびCDK6)の結合で形成される。その名称が意味するように、CDKはそれらの標的基質を燐酸化するためにサイクリンサブユニットへの絶対的依存を示し、異なるキナーゼ/サイクリンの対は、特定の細胞周期相の間の進行を調節する機能を有している。
これまでに幾つかのインダゾール誘導体が治療薬としての可能性を有するとして同定されてきた:GB2345486は、チロシンキナーゼインヒビターとしてのインダゾール誘導体を開示しており、EP0518805は、シグマレセプター活性を有するピペリジンで置換されたインダゾールを特定しており;WO89/43969は、HIVプロテアーゼインヒビターとして有用な環状尿素のインダゾールを開示しており;US4415569は、気管支拡張作用を持つピラゾロインダゾール誘導体を特定しており;US5208248は、片頭痛の処置のためのインダゾールを開示している。インダゾール誘導体についてのその他の治療適用が、WO96/20192、EP04994774、JP60/004184、EP0023633、US4051145、JP59/228248、GB1/376600、US4978603、EP0904769およびDe Lucca et al, Journal of Medicinal Chemistry, 42, 135-52(1999)なる文献に記載されている。インダゾール誘導体製造のための一般的合成反応式が、Wentrup et al, Journal of Organic Chemistry, 43, 2037-41(1978);Fugimura et al, Chemical Abbstracts, 1070, 749(1987)に開示されている。より詳細には、3,5-置換インダゾールがプロテインキナーゼインヒビターとして特定されている:WIPO国際公開No.01/85726は、1,1-ジオキソイソチアゾリジンで置換されたインダゾール化合物をCDKインヒビターとして開示しており;WO02/10137は、3,5-置換インダゾールをJun N-ターミナルキナーゼインヒビターのインヒビターとして開示しており;そして米国特許第6555539号およびWO03/004488は、3位にベンズイミダゾールを有する3,5-置換インダゾールを開示している。
しかしながら、より強力なCDKのインヒビター、特に標的CDKキナーゼに対する高い親和性とその他のプロテインキナーゼと比較した時の高い選択性の両者を有するCDKインヒビターへの必要性が、依然として存在する。本発明化合物は一般に、過去の刊行物に記載の化合物よりもCDKインヒビターについての選択性が高い。
発明の要約
本発明の目的は、強力且つ選択的なCDKのインヒビターを提供することである。したがって、本発明の一つの目的は、CDK活性を阻害する化合物および医薬組成物、またはそのサイクリン複合体を取得することである。さらなる目的は、CDK阻害により癌適応を処置する有効な方法を提供することである。別の目的は、増殖相への癌細胞の推移を遮断するのに有効な化合物を含有する医薬組成物を作り上げることである。下記の詳細な説明に照らして明らかになるであろう本発明のこれらおよびその他の利点は、下に記載の本発明に係る細胞周期制御物質の使用によって達成できる。
これらの目的に従い、本発明に従って、以下の式I:
Figure 2007500183
[式中、R1、R2、R3およびR4は、H、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アジド、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、C1-C10アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-C(O)R5、-C(O)OR5、-OC(O)R5、-NR5C(O)R6、-C(O)NR5R6、-(C R5R6)NR7R8、-C R5R6NR7R8、-NR5OR6、-SO2N R5R6、-S(O)j(C1-C6アルキル)[式中、jは0〜2の整数である]、-(CR5R6)t(C6-C10アリール)、-(CR5R6)t(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)t(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)qC(O)(CR7R8)t(C6-C10アリール)、-(C R5R6)qC(O)(CR7R8)t(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)qC(O)(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(C6-C10アリール)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(C6-C10アリール)、-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(C3-C10シクロアルキル)、および-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、qおよびtは各々個別に0〜5の整数であり、前記R1、R2、R3またはR4基のシクロアルキルまたはヘテロ環部分の1または2個の環上炭素原子は所望によりオキソ(=O)部分で置換されていてもよく、R5、R6、R7およびR8の各々は個別にH、C1-C6アルキルから選ばれ;そして、R1、R2、R3およびR4は同時にHであることはない]より成る群から選ばれる]
で示される化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物が提供される。
或る態様では、R1は-(CR5R6)NR7R8であり、そしてR2、R3およびR4は個別にHまたはFから選ばれる。
或る態様では、R1はエチルアミノメチルであり、R3はHであり、そしてR2およびR4はFである。
別の態様では、R1はエチルアミノメチルであり、R2およびR4はHであり、そしてR3はFである。
さらなる態様では、本発明は、以下の:
Figure 2007500183
から選ばれる化合物を目的とする。
本発明はさらに、式Iの化合物を製造する方法に関する。
本発明によれば、キナーゼの阻害により仲介される疾患または異常を処置するための細胞周期制御物質として化合物を使用する方法であって、それを必要とする患者に式Iの化合物または式Iの化合物の薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法がさらに提供される。
本発明はさらに、式Iの化合物または式Iの化合物の薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物の有効量を、係る処置を必要とする患者に投与することを含む、真菌感染症、悪性腫瘍または癌、ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖に随伴するその他の病態を処置する方法を提供する。
本発明はさらに、式Iの化合物または式Iの化合物の薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を、係る処置を必要とする患者に投与することによりCDKキナーゼ活性を選択的に阻害する方法を提供する。
本発明によれば、式Iの化合物または式Iの化合物の薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を含有する医薬組成物、ならびに、キナーゼ活性により仲介される疾病、例えば癌、ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖に随伴するその他の病態、例えば糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、関節リウマチ、および乾癬、の処置における該組成物の治療的使用もまた提供される。
本発明物質および係る物質を含有する組成物は、制御不能または望ましくない細胞増殖に随伴する種々の疾患または病態、例えば癌、自己免疫疾患、ウイルス疾患、真菌疾患、神経変性疾患、および心血管疾患、の処置に有用となり得る。したがって、本発明は本発明物質の有効量を投与することによる、このような疾患の処置方法をも目的とする。
以下の詳細な説明から、本発明のその他の側面、利点、および特徴が明らかになるであろう。
本発明に係る化合物および組成物は、抗増殖物質として、そして哺乳動物のキナーゼ複合体、昆虫のキナーゼまたは真菌のキナーゼ複合体のインヒビターとして有用である。例えばCDK複合体を阻害することができる。このような化合物および組成物は、増殖、分化、および/またはアポトーシスの制御にも有用である。
別途指摘の無い限り、本明細書で使用する「ハロ」という語はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。好ましいハロ基はフルオロ、クロロおよびブロモである。
別途指摘の無い限り、本明細書で使用する「アルキル」という語は、直線または分枝部分を有する飽和一価炭化水素基を包含する。「C1-C6アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直線または分枝状アルキル部分を指す、等々である。
「アルケニル」という語は、鎖中に2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル基を指す。アルケニル基の例は、プロパ-2-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、2-メチルプロパ-2-2ニル、ヘキサ-2-2ニル、エテニル、ペンテニル、等を包含する。
「アルキニル」という語は、鎖中に2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキニル基を指す。アルキニル基の例は、プロパ-2-イニル、ブタ-2-イニル、ブタ-3-イニル、2-メチルブタ-2-イニル、ヘキサ-2-イニル、エチニル、プロピニル、ペンチニル等を包含する。
「シクロアルキル」という語は、1環あたり3ないし12個の環上原子を有する飽和または部分飽和単環または融合もしくはスピロ多環炭素環を指す。シクロアルキル基の例は以下の部分:
Figure 2007500183
等を包含する。
本明細書で使用する「アリール」という語は、別途指摘の無い限り、芳香族炭化水素から1個の水素を除去することにより誘導される有機基、例えばフェニルまたはナフチルを包含する。
本明細書で使用する「4-10員環ヘテロ環」という語は、別途指摘の無い限り、各々がO、SおよびNから選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含む芳香族および非芳香族ヘテロ環式基[ここで、各ヘテロ環式基はその環系に4-10個の原子を有するが、但しこの基の環は隣接する2個のOまたはS原子を含むことはない]を包含する。非芳香族ヘテロ環式基は、その環系に4個の原子を有するに過ぎないが、芳香族ヘテロ環式基はその環系に少なくとも5個の原子を持たねばならない。ヘテロ環式基はベンゾ融合環系を包含する。4員環ヘテロ環式基の例はアゼチジニル(アゼチジンから誘導される)である。5員環ヘテロ環式基の例はチアゾリルであり、10員環ヘテロ環式基の例はキノリニルである。非芳香族ヘテロ環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼビニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリルおよびキノリジニルである。
芳香族ヘテロ環式基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。上に列挙した基から誘導される前記の基は、可能ならばC-結合またはN-結合していてもよい。例えば、ピロールから誘導される基はピロール-1-イル(N-結合している)またはピロール3-イル(C結合している)であってよい。さらに、イミダゾールから誘導される基はイミダゾール-1-イル(N-結合している)またはイミダゾール-3-イル(C-結合している)であってよい。4-10員環ヘテロ環は所望により、任意の環上炭素、硫黄、または窒素原子(群)において、1環あたり1〜2個のオキソで置換されていてもよい。2個の環上炭素原子がオキソ部分で置換されているヘテロ環式基の例は1,1-ジオキソ-チオモルホリニルである。その他の4-10員環ヘテロ環の例は以下のものから誘導できるが、これらに限定される訳ではない。
Figure 2007500183
別途指摘の無い限り、「oxo」という語は =Oを指す。
「アミド」という語は基-C(O)N(R')(R'')[式中、R'およびR''は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、-OH、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、上の定義によるアリールから各々個別に選ばれ;または、R'およびR''は、窒素と共に環化して上の定義によるヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成する]を指す。
「置換された」という語は、明記した基または部分が1またはそれ以上の置換基を有することを意味する。「非置換」という語は、明記された基が置換基を持たないことを意味する。
本発明の中では、式Iの化合物は互変異性現象を示し得る事、そして本明細書中のこの式の図は、可能な互変異性型のうち一方だけを表しているという事は言うまでもない。本発明は、キナーゼ活性を調節および/または阻害する任意の互変異性型を包含し、式の図の中に使用されている一つの互変異性型のみに限定される訳ではない事を理解されたい。
本発明化合物の幾つかは、単一の立体異性体(即ち、本質的に他の立体異性体が無い)、ラセミ体、および/またはエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物として存在し得る。このような単一の立体異性体、ラセミ体およびその混合物は全て本発明の範囲内にあることを意図している。好ましくは、光学活性な本発明化合物は光学的に純粋な形で使用する。
当業者には一般に理解できることであるが、1個のキラル中心(即ち1個の不斉炭素原子)を持つ光学的に純粋な化合物は、本質的に2種類の可能なエナンチオマーのうちの一方で構成される(即ち、エナンチオマー的に純粋である)化合物であり、1以上のキラル中心を持つ光学的に純粋な化合物は、ジアステレオマー的に純粋且つエナンチオマー的に純粋な化合物である。好ましくは、本発明化合物は少なくとも90%光学的に純粋な形、即ち、少なくとも90%(80%エナンチオマー過剰(e.e.)またはジアステレオマー過剰(d.e.))、より好ましくは少なくとも95%(90% e.e.またはd.e.)、より好ましくは少なくとも97.5%(95% e.e.またはd.e.)、そして最も好ましくは少なくとも99%(98% e.e.またはd.e.)の単一異性体を含む形で使用する。
加えて、式IおよびIIは、特定されている構造の溶媒和型および非溶媒和型を包含することを意図している。例えば、式IおよびIIは、特定されている構造の化合物の水和型と非水和型の両者を包含する。溶媒和物のその他の例には、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンと結合した構造がある。
「薬学上許容し得る塩」とは、特定されている化合物の遊離酸および塩基の生物学的有効性を保持し、且つ生物学的にまたはその他の点で有害でない塩を意味することを意図している。本発明化合物は充分に酸性の官能基、充分に塩基性の官能基、または両方の官能基を持つことができ、したがって、幾つかの無機または有機塩基、および無機および有機酸のうちいずれかと反応して薬学上許容し得る塩を形成することができる。薬学上許容し得る塩の例には、本発明化合物と鉱酸もしくは有機酸または無機塩基との反応により製造される塩類、例えば硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、燐酸塩、一水素燐酸塩、二水素燐酸塩、メタ燐酸塩、ピロ燐酸塩、塩化物、臭化物、沃化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、蟻酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、蓚酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオール酸塩、ヘキシン-1,6-ジオール酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホナート、キシレンスルホナート、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩を包含する塩類がある。
本発明化合物が塩基である場合、所望の薬学上許容し得る塩は、当分野で利用できる任意の適当な方法、例えば無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸等)、または有機酸(例えば酢酸、マレイン酸、琥珀酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、pyrovic acid、蓚酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸またはガラクチュロン酸、α-ヒドロキシ酸、例えばクエン酸または酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸または桂皮酸、スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸等)による遊離塩基の処理によって製造できる。
本発明化合物が酸である場合、所望の薬学上許容し得る塩は、当分野で利用できる任意の適当な方法、例えば無機または有機塩基、例えばアミン(第一、第二または第三)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物等による遊離酸の処理によって製造できる。好適な塩の例は、アミノ酸、例えばグリシンおよびアルギニン、アンモニア、第一、第二、および第三アミン、ならびに環状アミン、例えばピペリジン、モルホリンおよびピペラジンから誘導される有機塩基、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムから誘導される無機塩基を包含する。
固体である物質の場合、本発明化合物および塩は異なった結晶または多形型で存在できることが当業者には理解でき、これらは全て本発明および明記した式の範囲内にあることを意図している。
本発明に係る細胞周期制御物質は、生体組織の望ましくない増殖を特徴とする、哺乳動物、特に人間における増殖性疾患を処置する医薬として有用である。式Iの化合物は、過度の細胞増殖に随伴する疾患、例えば癌、乾癬、白血球の望ましくない増殖を含む免疫疾患、ならびに再狭窄およびその他の平滑筋疾患に罹患している対象の処置に有用となり得る。さらに、係る化合物は有糸分裂後組織および/または細胞の脱分化を防止するのに使用できる。
制御不能のまたは異常な細胞増殖に随伴する疾患または異常は以下を包含するがこれらに限定される訳ではない:
− 癌腫、リンパ系統の造血系腫瘍、骨髄系統の造血系腫瘍、間葉起源の腫瘍、中枢および末梢神経系の腫瘍を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)種々の癌ならびにメラノーマ、セミノーマおよびカポジ肉腫等を包含するその他の腫瘍。
− 異常な細胞増殖を特徴とする疾患プロセス、例えば良性前立腺肥大、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、糸球体腎炎、血管形成術または血管手術後の再狭窄、過形成性瘢痕形成、炎症性腸疾患、移植拒絶、エンドトキシンショック、および真菌感染症。
− 不完全なアポトーシス関連状態、例えば癌(上に述べた種類のものを包含するがそれらに限定されない)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルスを包含するがこれらに限定されない)、HIV感染した個体におけるAIDS発症の防止、自己免疫疾患(全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、乾癬、自己免疫仲介糸球体腎炎、炎症性腸疾患および自己免疫性真性糖尿病を包含するがこれらに限定されない)、神経変性疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、パーキンソン病、AIDS関連認知症、脊髄性筋萎縮および小脳変性を包含するがこれらに限定されない)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、心筋梗塞、卒中および再潅流障害に伴う虚血性損傷、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発性またはアルコール関連肝疾患、血液疾患(慢性貧血および再生不良性貧血を包含するがこれらに限定されない)、筋骨格系の変性疾患(骨粗鬆症および関節炎を包含するがこれらに限定されない)、アスピリン感受性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌の疼痛。
本発明に係る活性物質は、浸潤癌の発現、腫瘍の血管新生および転移の阻害に有用となり得る。
さらに、例えばCDKのインヒビターとしての本発明に係る活性物質は、細胞のRNAおよびDNA合成レベルを調節することができ、故にHIV、ヒト乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、アデノウイルス、シンドビスウイルス、ポックスウイルス等のようなウイルス感染症の処置に有用であると予想される。
本発明に係る化合物および組成物は、例えば細胞周期のG0またはG1期で活性なCDK/サイクリン複合体、例えばCDK2、CDK4および/またはCDK6複合体のキナーゼ活性、を阻害する。
治療または阻害効果を得るために投与する細胞周期制御物質の具体的投与量は、例えば投与される特定の物質、投与経路、処置しようとする状態、および処置される対象または宿主を包含する、症例を取り巻く具体的な状況に応じて当分野で知られる方法により決定できる。一回または複数回投与で投与できる細胞周期制御物質の総日用量の一例は、約0.01mg/kg(体重)ないし約50mg/kg(体重)の用量レベルを含有する。
本発明に係る細胞周期制御物質は、種々の適当な経路、例えば経口、直腸内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、または鼻腔内のいずれかにより投与できる。この細胞周期制御物質は、好ましくは投与前に所望の経路にとって好適な組成物に調合する。
本発明に係る医薬組成物または製剤は、有効量の細胞周期制御物質、所望により1またはそれ以上のその他の活性物質、および薬学上許容し得る担体、例えば該物質のための希釈剤もしくは賦形剤を含み;担体が希釈剤として働く場合には、これは、媒質、賦形剤、または活性成分のための媒質として働く固体、半固体、または液体材料であってよい。本発明に係る組成物は、活性成分を担体と混合し、またはこれを担体で希釈し、または、これを担体内に閉じ込めまたはカプセル化するが、これはカプセル、サシェー剤、紙容器などの形態であってよい。1またはそれ以上の細胞周期制御物質およびその他の活性成分に加える成分の例は、アビセル(微結晶性セルロース)、澱粉、乳糖、硫酸カルシウム二水和物、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、落花生油、オリーブ油、モノステアリン酸グリセリン、トゥイーン80(ポリソルベート80)、1,3-ブタンジオール、カカオ脂、蜜蝋、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、および水を包含する。
この組成物は所望の投与方法に適した様々な剤型のいずれかに製造することができる。例えば、薬用組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ドロップ、サシェー剤、カシェー剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳濁剤、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体としてまたは液体媒質中で)、軟膏(例えば細胞周期制御物質を重量で10%まで含有する)、軟および硬カプセル、坐剤、無菌注射溶液、無菌包装散剤等の剤型に製造できる。
同様に、担体または希釈剤は、当分野で既知の時間遅延または持続放出材料、例えばモノステアリン酸グリセリンもしくはジステアリン酸グリセリンを単独で、またはロウ、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリラート等と共に含み得る。
様々な剤型を使用できる。したがって、固体担体を使用する場合、製品を錠剤化したり、粉末もしくはペレットとして硬ゼラチンカプセルに入れたり、またトローチもしくはドロップの剤型にすることができる。固体担体の量は様々であるが、一般には約25mgから約1gまでとなる。液体担体を使用する場合、製品は、シロップ剤、乳濁剤、軟ゼラチンカプセル、アンプルもしくはバイアル入りの無菌注射溶液もしくは懸濁剤または非水性液体懸濁剤の剤型とすることができる。
安定な水溶性投与型を得るためには、本発明物質の薬学上許容し得る塩を有機または無機酸の水溶液、例えば琥珀酸またはクエン酸の0.3M溶液に溶解する。可溶性塩の形態が利用できない場合は、該物質を適当な共存溶媒または共存溶媒の組み合わせに溶解してもよい。好適な共存溶媒の例は、総容量の0-60%の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリン等を包含するが、これらに限定される訳ではない。式Iの化合物はDMSOに溶解し水で希釈できる。該組成物は、水または等張生理食塩水もしくはデキストロース溶液といった適当な水性媒質に入れた活性成分の塩型の溶液の形態とすることもできる。
本発明に係る組成物は薬用組成物の製造のために一般に知られている方法、例えば混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、微粒子化、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥のような常套技術を用いて製造することができる。薬用組成物は、1またはそれ以上の生理学的に許容し得る担体(これは、賦形剤、および活性化合物を薬学的に使用できる製品に加工し易くする補助物質から選択できる)を用いて常法で製剤化できる。
適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。注射のためには、本発明物質を、好ましくは生理的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル液または生理食塩水に入れた水溶液に調合する。経粘膜投与のためには、浸透させようとする障壁に対して適当な浸透物質をその製剤に使用する。そのような浸透物質は一般に当分野で知られている。
経口投与のためには、活性化合物を当分野で既知の薬学上許容し得る担体と合することにより、該化合物を容易に製剤化できる。このような担体は、製剤化すべき本発明化合物を、処置しようとする患者が経口摂取するための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤等に製剤化する事を可能にする。経口使用のための医薬調合品は、固体賦形剤を活性成分(物質)と混合し、得られた混合物を所望により粉砕し、所望によりこの顆粒混合物を、適当な補助物質を添加した後に加工して錠剤または糖衣錠の核を得ることにより、取得できる。好適な賦形剤は、糖のような増量剤、例えば乳糖、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;およびセルロース製品、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、ゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、またはポリビニルピロリドン(PVP)を包含する。所望により崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加できる。
糖衣錠の核は適当に被覆して提供する。この目的のため、糖濃縮液を使用することができ、これは所望によりアラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでいてよい。識別のため、または異なる活性物質の組み合わせを示すため、染料または顔料を錠剤または糖衣錠の被覆剤に添加できる。
経口使用できる医薬製品は、ゼラチン製はめ込みカプセル剤、ならびに、グリセロールまたはソルビトールのような可塑剤およびゼラチンでできたシールされた軟カプセル剤を包含する。はめ込みカプセル剤は、活性成分を、乳糖のような増量剤、澱粉のような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ならびに所望により安定剤と混合して含有させることができる。軟カプセル剤では、活性物質を適当な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁させることができる。さらに安定剤を添加できる。経口投与用製剤は全て係る投与に適した投薬量とすべきである。バッカル投与のためには、該組成物は、常法で製剤化した錠剤またはドロップの剤型をとることができる。
鼻腔内または吸入による投与のためには、本発明に従って使用するための化合物は、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適当な気体を使用して、加圧容器またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態でデリバリーするのが好都合である。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量をデリバリーするバルブを取り付けることにより決定できる。吸入器または注入器等に使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、該化合物と、乳糖または澱粉のような適当な粉末基剤の粉末混合物を含むよう製剤化できる。
該化合物は、注射、例えばボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化できる。注射用製剤は、単位投薬型、例えば添加した保存剤と共にアンプルまたは多用量容器に入れて提供できる。該組成物は、油性または水性媒質中の懸濁剤、溶液または乳剤といった剤型をとることができ、また、懸濁化剤、安定剤および/または分散化剤といった製剤化用物質を含有させることができる。
非経口投与用薬用製剤は、水溶性の形態の活性化合物水溶液を包含する。さらに、活性物質の懸濁剤を、適当な油性注射用懸濁剤として製造できる。好適な親油性溶媒または媒質は、胡麻油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを包含する。水性注射用懸濁剤は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有できる。所望によりこの懸濁剤は、安定剤、または該化合物の溶解度を上げて高濃縮液の製造を可能にする物質を含有することができる。
眼への投与のためには、活性物質を薬学上許容し得る眼用媒質に入れてデリバリーするが、その結果、該化合物は、角膜および眼の内部領域(例えば、前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/網様体、水晶体、脈絡膜/網膜および強膜を包含する)に化合物が浸透するに充分な時間、眼の表面に接触し続ける。薬学上許容し得る眼用媒質は、軟膏、植物油、またはカプセル形成材料であってよい。本発明化合物は硝子体液および房水中に直接注射することもできる。
或いは、活性成分を、適当な媒質、例えば無菌無発熱物質水を用いて使用前に構成するために、粉末形態とすることができる。該化合物はさらに、例えば常套的坐剤用基剤、例えばカカオ脂またはその他のグリセリドを含有する坐剤または停留物浣腸といった直腸用組成物に製剤化することもできる。
該化合物はさらにデポ製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用製剤は、埋め込み(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与できる。したがって、例えば該化合物は、適当なポリマーもしくは親水性材料(例えば許容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
疎水性化合物のための薬用担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む共存溶媒系である。共存溶媒系はVPD共存溶媒系であってよい。VPDは、無水エタノールで所定の容量とした、3%w/vベンジルアルコール、8%w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65%w/vポリエチレングリコール300の溶液である。VPD共存溶媒系(VPD:5W)は、5%デキストロース水溶液で1:1に希釈したVPDを含有する。この共存溶媒系は疎水性化合物を良好に溶解させ、全身投与した時に自身が低毒性である。共存溶媒系の比率は当然、その溶解度と毒性に関する性質を破壊することなく、少なからず変化させることができる。さらに、共存溶媒構成成分を変えることができる。例えば、ポリソルベート80の代わりに他の低毒性非極性界面活性剤を使用でき;ポリエチレングリコールの割合を変えることができ;ポリエチレングリコールに代えて他の生物適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを使用でき;そしてデキストロースの代わりに他の糖類または多糖類を使用できる。
これとは別に、疎水性薬用化合物のためにその他のデリバリー系が利用できる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物のデリバリー媒質または担体の例として知られている。通常、毒性が高くなるという犠牲はあるが、ジメチルスルホキシドのような或る種の有機溶媒もまた利用できる。また、該化合物を、持続放出系、例えば治療物質を含有する疎水性固体ポリマーの半透性マトリックスを用いてデリバリーすることもできる。種々の持続放出材料が確立されており、当業者に知られている。持続放出カプセル剤は、それらの化学的性質に応じて、該化合物を数週間〜100日間にわたって放出できる。治療薬の化学的性質と生物学的安定性に応じて、蛋白安定化のためのさらなる戦略が利用できる。
医薬組成物はまた、適当な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含むことができる。このような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーがある。
本発明化合物の幾つかは薬学上適合し得る対イオンとの塩として提供できる。薬学上適合し得る塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸等を包含する多くの酸によって形成され得る。塩類は、対応する遊離塩基型よりも、水性溶媒またはその他のプロトン性溶媒中で溶解度がより高くなる傾向がある。
本発明に係る薬用組成物は、細胞周期制御物質と、所望により1またはそれ以上の活性成分、例えばその細胞周期制御物質と共存でき、処置されるべき適応にとって好適な既知の抗増殖物質を含む。
該化合物は、抗血管新生物質として、そしてプロテインキナーゼの活性を調節および/または阻害する物質として有用であり、したがって、癌またはプロテインキナーゼにより仲介される細胞増殖に随伴するその他の疾患の処置を提供する。
本発明物質の治療有効量を使用して、プロテインキナーゼの調節または調整により仲介される疾患を処置できる。「有効量」とは、係る処置を必要とする哺乳動物に投与する時、1またはそれ以上のキナーゼの活性により仲介される疾患の処置を奏功するに充分な或る物質の量を意味することを意図している。したがって、例えば式Iの化合物、その塩、活性代謝産物またはプロドラッグの治療有効量とは、1またはそれ以上のキナーゼの活性を調節、調整、または阻害して、その活性により仲介される病態を縮小または緩和するに充分な量である。
「処置する」とは、1またはそれ以上のキナーゼの活性により罹患(少なくとも部分的に)している哺乳動物、例えば人間の病態の、少なくとも軽減を意味することを意図しており、特に哺乳動物がその病態に罹患し易い事が判明しているが未だ罹患しているとの診断がなされていない場合に、その病態が発現することを防止し;その病態を調節および/または阻害し;そして/またはその病態を緩和する、事を包含する。
本明細書に記載の本発明方法のうち特別の態様では、この異常な細胞増殖は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピーオ管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸管の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎細胞癌腫、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または前記の1またはそれ以上の癌の組み合わせを包含する癌であるが、これらに限定される訳ではない。前記の方法の別の態様では、この異常細胞増殖は、乾癬、良性前立腺肥大または再狭窄を包含する(但しこれらに限定されない)良性増殖性疾患である。
本明細書に記載の本発明方法のさらなる特別な態様では、この方法はさらに、抗腫瘍物質、抗血管新生物質、シグナル伝達インヒビター、および抗増殖物質から選ばれる1またはそれ以上の物質の或る量を哺乳動物に投与することを含み、その量は前記の異常な細胞増殖の処置に有効である。本発明化合物は他の抗腫瘍物質と組み合わせることができ、その方法は、WO038716、WO038717、WO038715、WO038730、WO038718、WO038665、WO037107、WO038786、WO038719に開示されており、その内容は引用によりその全体を本明細書の一部とする。抗腫瘍物質の例は、有糸分裂インヒビター、例えばビンカアルカロイド誘導体、例えばビンブラスチン、ビンオレルビン、ビンデシンおよびビンクリスチン;colchines allochochine、ハリコンドリン、N-ベンゾイルトリメチル-メチルエーテル コルヒチン酸、ドラスタチン10、メイスタンシン、リゾキシン、タキサン類、例えばタキソール(パクリタキセル)、ドセタキセル(Taxotere)、2'-N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]グルタラマート(タキソール誘導体)、チオコルヒチン、トリチルシステイン、テニポシド、メソトレキサート、アザチオプリン、フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、2'2'-ジフルオロデオキシシチジン(ゲンシタビン)、アドリアマイシンおよびミタマイシンを包含する。アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキシプラチン、イプロプラチン、N-アセチル-DL-サルコシル-L-ロイシンのエチルエステル(AsaleyまたはAsalex)、1,4-シクロヘキサジエン-1,4-ジカルバミン酸、2,5-ビス(1-アジルジニル)-3,6-ジオキソ-、ジエチルエステル(ジアジクオン)、1,4-ビス(メタンスルホニルオキシ)ブタン(ビスルファンまたはロイコスルファン)クロロゾトシン、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、ジアンヒドログラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファン、マイトマイシンC、ヒカンテオンマイトマイシンC、ミトゾラミド、1-(2-クロロエチル)-4-(3-クロロプロピル)-ピペラジンジヒドロクロリド、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、ビス(3-メシルオキシプロピル)アミン ヒドロクロリド、マイトマイシン、ニトロソウレア物質、例えばシクロヘキシル-クロロエチルニトロソウレア、メチルシクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア、1-(2-クロロエチル)-3-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジル)-1-ニトロソウレア、ビス(2-クロロエチル)ニトロソウレア、
プロカルバジン、ダカルバジン、ナイトロジェンマスタード関連化合物、例えばメクロエタミン、シクロヘスファミド、イフォサミド、メルファラン、クロラムブシル、燐酸エストラムスチンナトリウム、ストルプトゾイン、およびテモゾラミド。DNA抗代謝剤、例えば5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、2-[(3-ヒドロキシ-2-ピリノジニル)メチレン]-ヒドラジンカルボチオアミド、デオキシフルオロウリジン、5-ヒドロキシ-2-ホルミルピリジン チオセミカルバゾン、α-2'-デオキシ-6-チオグアノシン、アフィジコリン グリシナート、5-アザデオキシシチジン、β-チオグアニン デオキシリボシド、シクロシチジン、グアナゾール、イノシン グリコジアルデヒド、マクベシンII、ピラゾールイミダゾール、クラドリビン、ペントスタチン、チオグアニン、メルカプトプリン、ブレオマイシン、2-クロロデオキシアデノシン、チミジラートシンターゼのインヒビター、例えばラルチトレキシドおよびペメトレキシド二ナトリウム、クロファラビン、フロクスリジンおよびフルダラビン。DNA/RNA抗代謝剤、例えばL-アラノシン、5-アザシチジン、アシビシン、アミノプテリンおよびその誘導体、例えばN-[2-クロロ-5-[[(2,4-ジアミノ-5-メチル-6-キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]-L-アスパラギン酸、N-[4-[[(2,4-ジアミノ-5-エチル-6-キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]-L-アスパラギン酸、N-[2-クロロ-4-[[(2,4-ジアミノプテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]-L-アスパラギン酸、可溶性Baker's antifol、ジクロロアリルローソン、ブレキナール、フトラフ、ジヒドロ-5-アザシチジン、メソトレキサート、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸テトラナトリウム塩、ピラゾフラン、トリメトレキサート、プリカマイシン、アクチノマイシンD、クリプトフィシン、およびクリプトフィシン-52のような類似体、または例えば欧州特許出願No.239362に開示の好ましい抗代謝剤の一つ、例えばN-(5-[N-(3,4-ジヒドロ-2-メチル-4-オキソキナゾリン-6-イルメチル)-N-メチルアミノ]-2-テノイル)-L-グルタミン酸;成長因子インヒビター;細胞周期インヒビター;
挿入抗生物質、例えばアドリアマイシンおよびブレオマイシン;蛋白、例えばインターフェロン;および抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン、例えばNorvadex(登録商標)(タモキシフェン)または例えば抗アンドロゲン、例えばCasodex(登録商標)(4'-シアノ-3-(4-フルオロフェニルスルホニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3'-(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)。このような共同処置は、本処置に係る個々の成分を同時に、連続して、または別々に投与することにより達成できる。
抗血管新生物質は、MMP-2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)インヒビター、MMP-9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)インヒビター、およびCOX-II(シクロオキシゲナーゼII)インヒビターを包含する。有用なCOX-IIインヒビターの例は、CELEBREX(登録商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブ、およびロフェコキシブを包含する。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼインヒビターの例はWO96/33172(1996年10月24日公開)、WO96/27583(1996年3月7日公開)、欧州特許出願No.97304971.1(1997年7月8日出願)、欧州特許出願No.99308617.2(1999年10月29日出願)、WO98/07697(1998年2月26日公開)、WO98/03516(1998年1月29日公開)、WO98/34918(1998年8月13日公開)、WO98/34915(1998年8月13日公開)、WO98/33768(1998年8月6日公開)、WO98/30566(1998年7月16日公開)、欧州特許公開606046(1994年7月13日公開)、欧州特許公開931788(1999年7月28日公開)、WO90/05719(1990年5月331日公開)、WO99/52910(1999年10月21日公開)、WO99/52889(1999年10月21日公開)、WO99/29667(1999年6月17日公開)、PCT国際出願No.PCT/IB98/01113(1998年7月21日出願)、欧州特許出願No.99302232.1(1999年3月25日出願)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日出願)、米国仮出願No.60/148464(1999年8月12日出願)、米国特許5863949(1999年1月26日登録)、米国特許5861510(1999年1月19日登録)、および欧州特許公開780386(1997年6月25日公開)に記載されており、これらは全て引用によりその全体を本明細書の一部とする。好ましいMMP-2およびMMP-9インヒビターは、MMP-1を阻害する活性を殆どまたは全く持たないインヒビターである。他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(即ちMMP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12、およびMMP-13)に比較して選択的にMMP-2および/またはMMP-9を阻害するインヒビターがより好ましい。
シグナル伝達インヒビターの例は、EGFR(表皮成長因子レセプター)反応を阻害できる物質、例えばEGFR抗体、EGF抗体、およびEGFRインヒビターである分子;VEGF(血管内皮成長因子)インヒビター;ならびにerbB2レセプターインヒビター、例えばerbB2レセプターに結合する有機分子または抗体、例えばHERCEPTIN(登録商標)(Genentech,Inc.、South San Francisco, California, USA)を包含する。
EGFRインヒビターは、例えばWO95/19970(1995年7月27日公開)、WO98/14451(1998年4月9日公開)、WO98/02434(1998年1月22日公開)および米国特許5747498(1998年5月5日登録)に記載されている。EGFRを阻害する物質は、モノクローナル抗体C225および抗EGFR 22Mab(ImClone Systems Incorporated of New York, New York, USA)、化合物ZD-1839(AstraZeneca)、BIBX-1382(Boehringer Ingelheim)、MDX-447(Medarex Inc. of Annandale, New Jersey, USA)、およびOLX-103(Merck & Co. of Whitehouse Station, New Jersey, USA)、VRCTC-310(Ventech Research)およびEGF融合毒素(Seragen Inc. of Hopkinton, Massachusettes)を包含するがこれらに限定される訳ではない。VEGFインヒビター、例えばSU-5416およびSU-6668(Sugen Inc. of South San Francisco, California, USA)は式1の化合物と合し、または同時投与することもできる。VEGFインヒビターは、例えばWO99/24440(1999年5月20日公開)、PCT国際出願PCT/IB99/00797(1999年5月3日出願)、WO95/21613(1995年8月17日公開)、WO99/61422(1999年12月2日公開)、米国特許5834504(1998年11月10日登録)、WO98/50356(1998年11月12日公開)米国特許5883113(1999年3月16日公開)、米国特許5886020(1999年3月23日公開)米国特許5792783(1998年8月11日登録)、WO99/10349(1999年3月4日公開)、WO97/32856(1997年9月12日公開)、WO97/22596(1997年6月26日公開)、WO98/54093(1998年12月3日公開)、WO98/02438(1998年1月22日公開)、WO99/16755(1999年8月8日公開)およびWO98/02437(1998年1月22日公開)に記載されており、これらは全て引用によりその全体を本明細書の一部とする。幾つかの具体的なVEGFインヒビターのその他の例は、IM862(Cytran Inc. of Kirkland, Washington, USA);Genentech, Inc. of South San Francisco, Californiaの抗VEGFモノクローナル抗体;およびアンギオザイム、Ribozyme(Boulder, Colorado)およびChiron(Emeryville, California)製の合成リボザイムである。
ErbB2レセプターインヒビター、例えばGW-282974(Glaxo Wellcome plc)、およびモノクローナル抗体AR-209(Aronex Pharmaceuticals Inc. of The Woodlands, Texas, USA)および2B-1(Chiron)は、式1の化合物と組み合わせて投与できる。このようなerbB2インヒビターは、WO98/02434(1998年1月22日公開)、WO99/35146(1999年7月15日公開)、WO99/35132(1999年7月15日公開)、WO98/02437(1998年1月22日公開)、WO97/13760(1997年4月17日公開)、WO95/19970(1995年7月27日公開)、米国特許5587458(1996年12月24日登録)、および米国特許5877305(1999年3月2日登録)に記載されているものを包含し、これらはそれぞれ引用によりその全体を本明細書の一部とする。本発明において有用なErbB2レセプターインヒビターはさらに、1999年1月27日出願の米国仮出願No.60/117341、および1999年1月27日出願の米国仮出願No.60/117346にも記載されており、これらはいずれも引用によりその全体を本明細書の一部とする。
使用できるその他の抗増殖物質は、以下の米国特許出願:09/221946(1998年12月28日出願);09/454058(1999年12月2日出願);09/501163(2000年2月9日出願);09/539930(2000年3月31日出願);09/202796(1997年5月22日出願);09/384339(1999年8月26日出願);および09/383755(1999年8月26日出願)を包含する、酵素ファルネシル蛋白トランスフェラーゼのインヒビターおよびレセプターチロシンキナーゼPDGFrのインヒビター;ならびに以下の米国特許仮出願:60/168207(1999年11月30日出願);60/170119(1999年12月10日出願);60/177718(2000年1月21日出願);60/168217(1999年11月30日出願)、および60/200834(2000年5月1日出願)に開示および特許請求されている化合物を包含する。上記の特許出願および特許仮出願は引用によりその全体を本明細書の一部とする。
式1の化合物は、異常な細胞増殖または癌の処置に有用な他の物質と共に使用することもできるがこれらには、抗腫瘍免疫反応を増強できる物質、例えばCTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体、およびCTLA4を遮断できるその他の物質;ならびに抗増殖物質、例えば他のファルネシル蛋白トランスフェラーゼインヒビターが包含される(但しこれらに限定されない)。本発明に使用できる具体的CTLA4抗体は、米国仮出願60/113647(1998年12月23日出願)に記載されているものを包含し、これは引用によりその全体を本明細書の一部とする。
発明の詳細な説明および好ましい態様
本発明物質は、容易に入手できる出発材料を使用し、当分野で利用可能な技術を利用して、下記のような反応経路および合成反応式を用いて製造できる。
本発明に係る具体的な好ましい化合物の製造を以下の実施例で詳細に説明する。当業者は、記載の化学反応を、他の幾つかの本発明に係るキナーゼインヒビターの製造のために容易に適合させ得ることが理解できるであろう。例えば、例示されていない本発明化合物の合成を、当業者にとって明らかな改変、例えば干渉基を適宜保護することにより、または当分野で既知の他の適当な試薬に変更することにより、または反応条件に常套的改変を施すことにより、成功裏に遂行することができる。或いは、本明細書に開示の、または当分野で既知の、その他の反応が、本発明に係る他の化合物を製造するための適応性を有すると理解できるであろう。
下記の実施例では、別途指摘の無い限り、温度は全て摂氏で開示し、部およびパーセントは全て重量による。試薬はAldrich Chemical CompanyまたはLancaster Synthesis Ltd.のような商業的供給者から購入し、別途指摘の無い限り、さらに精製することなく使用した。水素化カルシウムから蒸留したテトラヒドロフラン(THF)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)はAldrichからSure seal瓶で購入し、そのまま使用した。別途指摘の無い限り、溶媒は全て当業者が容易に理解できる標準法を用いて精製した。
下に開示した反応は、一般にアルゴン陽圧下に、または乾燥管を用いて、周囲温度(別途記載の無い限り)、無水溶媒中で行い、反応フラスコには、基質と試薬を注射筒から導入するためのゴム隔膜を取り付けた。ガラス器具は乾熱器で乾燥し、そして/または熱乾燥した。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)はガラスで裏打ちしたシリカゲル60F254プレートAnaltech(0.25mm)上で実施し、適当な溶媒比(v/v)で溶離し、適宜表示した。反応をTLCで検定し、出発材料の消費によって判断して終了した。
p-アニスアルデヒドスプレー試薬またはホスホモリブジン酸試薬(エタノール中Aldrich Chemical 20 wt%)を用いてTLCプレートの視覚化を行い、熱で活性化した。典型的には反応溶媒または抽出溶媒で反応容量を二倍にし、次いで別途指摘の無い限り、記載の水溶液で抽出容量の25%(容量)を用いて洗浄することにより後処理を行った。生成物の溶液を無水Na2SO4またはMgSO4で乾燥した後、濾過し、ロータリーエバポレーター上で溶媒を減圧蒸発させ、溶媒を減圧除去すると記載した。別途記載の無い限りBaker等級フラッシュシリカゲル(47-61μm)および約20:1〜50:1のシリカゲル:粗製物質比(別途記載の無い限り)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(Still et al., J. Org. Chem., 43, 2923(1978))を実施した。水素化は実施例に記載の圧力または周囲圧力で行った。
1H-NMRスペクトルは300MHzまたは500MHzで稼働させるBruker機器で記録し、13C-NMRスペクトルは75MHzで稼働させて記録した。NMRスペクトルはレファランス標準(7.25ppmおよび77.00ppm)としてクロロホルムまたはCD3OD(3.4ppmおよび4.8ppmおよび49.3ppm)、または内部テトラメチルシラン(0.00ppm)を適宜使用しCDCl3溶液として取得した(ppmで記載)。必要に応じて他のNMR溶媒を使用した。ピーク多重性を記載する場合、以下の略語を使用する:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、m(多重線)、br(広幅)、dd(二重線の二重線)、dt(三重線の二重線)。結合定数を記載する場合はHertz(Hz)で記載する。
赤外(IR)スペクトルは純粋な油状物として、またはKBrペレットとしてPerkin-Elmer FT-IR分光計で記録し、記載する場合は波数(cm-1)で記載する。質量スペクトルはLSIMSまたはエレクトロスプレーを用いて取得した。融点(mp)は全て未補正である。
実施例で使用する出発材料は商業的に入手でき、そして/または当分野で既知の技術で製造できる。
実施例1:{5-[3-(4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-エチル-アミン
Figure 2007500183
(a) 中間体1a − (5-ブロモ-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル)-エチル-アミン
5-ブロモ-4-メチル-ピリジン-3-カルボアルデヒド(6.74g、33.7mmol)[この化合物の製造については、Reich, S. R.;Bleckman, T. M.;Kephart, S. E.;Romines, W. H.;Wallace, M. B., 米国特許6555539、2003年4月29日を参照されたい]を、窒素雰囲気下でメタノール(290mL)に溶解した。エチルアミンのメタノール溶液(2.0M、90ml、180mmol)を30分間かけて滴下した。室温でさらに30分間攪拌を続けた。
別のフラスコで水素化シアノ硼素ナトリウム(2.33g、37.1mmol)をメタノール(150mL)に溶解した。無水塩化亜鉛(2.53g、18.5mmol)を加え、室温で攪拌を20分間続けた。次にこの溶液(亜鉛/水素化シアノ硼素)を、上のアルデヒド/エチルアミン溶液に徐々に加えた。反応溶液をメタノール(120mL)中の2.0M HClでpH4に酸性化し、次いで室温で18時間攪拌した。
ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルと10%水性炭酸ナトリウムに分配した。有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して橙色油状物の粗製アミン1a(7.36g、95%)を得、これをさらに精製することなく次工程に使用した:1H NMR(CDCl3)δ 8.53(s, 1H)、8.31(s, 1H)、3.77(s,2H)、2.67(q, J=7.0Hz, 2H)、2.42(s, 3H)、1,11(t, J=7.0Hz, 3H)。
(b) 中間体1b − (5-ブロモ-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル)-エチル-カルバミン酸tert-ブチルエステル
粗製アミン1a(7.36g、32.1mmol)のTHF(400mL)溶液にジ-tert-ブチル ジカルボナート(10.43g、47.8mmol)を加え、次いで水酸化ナトリウム水溶液(1.0M、101mL)を加えた。この二相溶液を室温で20時間激しく攪拌した。この溶液を水と酢酸エチルに分配し、有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。このようにして得られた粗製黄色油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中10%〜30%酢酸エチルの勾配で溶離)で精製すると黄色油状物のブロモピリジン1b(5.37g、51%)が得られた。
Figure 2007500183
(c) 中間体1c − 5-ヨード-1-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-3-カルボン酸 メトキシ-メチル-アミド
5-ヨード-1H-インダゾール-3-カルボン酸 メトキシ-メチル-アミド[この化合物の製造については、Reich, S. R.;Bleckman, T. M.;Kephart, S. E.;Romines, W. H.;Wallace, M. B., 米国特許6555539 B2、2003年4月29日を参照されたい]を、Sun, et.al.の方法[Sun, J. -H.;Teleha, C. A.;Yan, J. -S.;Rogers, J. D.;and Nugiel, D. A., J. Org. Chem. 1997, 62, 5627]に従ってジヒドロピランでアルキル化し、オフホワイト色粉末のアミド1c(典型的には>90%)を得た。
Figure 2007500183
(d) 中間体1d − 5-ヨード-1-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-3-カルボアルデヒド
アミド1c(1.0当量)の冷却(<5℃)THF溶液に水素化アルミニウムリチウム(1.2当量)を少量ずつ加えた。反応が完結するまで、典型的には30分間<5℃で攪拌を続けた。<5℃で酢酸エチルを徐々に添加して反応を停止させ、全混合物を0.4N NaHSO4に注いだ。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製すると、オフホワイト色粉末のアルデヒド1d(典型的には〜70%)が得られた。
Figure 2007500183
(e) 中間体1e − エチル-{5-[3-ホルミル-1-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}カルバミン酸 tert-ブチルエステル
ヨードインダゾール1d(3.56g、10.0mmol)、ビス(ピナコラート)ジボラン(2.79g、11mmol)、酢酸カリウム(2.74g、30mmol)およびジクロロメタンと[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン]ジクロロパラジウム(II)の複合体(245mg、0.3mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(60mL)に溶解した。この溶液を吸引して脱気し(溶媒が泡立つまで)アルゴンでパージし(3周期)、次いで80℃の油浴で2時間加熱した。少し冷却(〜50℃に)した後、ブロモピリジン1b(3.62g、11mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(40mL)溶液を加え、引き続き脱イオン水(10mL)および燐酸カリウム(3.18g、15mmol)を加えた。この溶液を脱気し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(347mg、0.3mmol)を加え、再度脱気した。混合物を90℃の油浴で4.5時間攪拌した。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、脱イオン水(150mL)および飽和塩化ナトリウム(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して粗製の赤黒色油状物(9.43g)を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中50-100%酢酸エチルで溶離)で精製して、橙色油状物の結合した生成物1e(2.9462g)を得た。この生成物の1H NMRは、これが〜1当量のピナコールで汚染されていることを示した。ヘキサンから磨砕すると、細かい黄色粉末の純粋な1e(2.0853g、44%)が得られた。
Figure 2007500183
(f) 中間体1f − {5-[3-(4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-エチル-カルバミン酸 tert-ブチルエステル
アルデヒド1e(2.05g、4.28mmol)、1,2-ジアミノ-3,5-ジフルオロベンゼン(617mg、4.28mmol)および重亜硫酸ナトリウム(891mg、8.57mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(43mL)に溶解し、120℃の油浴で21時間加熱した。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、半飽和塩化ナトリウム水溶液(75mL、脱イオン水と飽和塩化ナトリウム水溶液の1:1混合物)で洗浄した。水層を酢酸エチル(2 x 100mL)で逆抽出した。全有機抽出物を合し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して茶色のタール(3.39g)を得た。この粗製物質をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中70%〜100%酢酸エチルの勾配で溶離)で精製すると、茶褐色泡状物のベンゾイミダゾール生成物1f(2.11g、81%)が得られた。
Figure 2007500183
(g) 中間体1g − {5-[3-(4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-エチル-アミン
1f(2.02g、3.36mmol)のジクロロメタン(12.9mL)溶液に、トリエチルシラン(976mg、8.40mmol)およびトリフルオロ酢酸(12.9mL、168mmol)を加えた。混合物を室温で3.5時間攪拌した。揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残留物をシクロヘキサン(10mL)と水性水酸化アンモニウム(2N、20mL)で処理した。15分間激しく攪拌した後、桃色の沈殿が生成し、これを吸引濾過により集めた。濾液を酢酸エチル(3 x 50mL)で抽出した。合した有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると橙色固体(〜0.4g)が得られた。この固体を上で得られた桃色沈殿に加え、カラムクロマトグラフィー(1%濃水酸化アンモニウムから19%無水エタノール、80%ジクロロメタンに至る混合物で溶離)で精製した。このようにして得られた生成物(1.23gのオフホワイト色固体)をシクロヘキサンからの磨砕によりさらに精製して、オフホワイト色固体の純粋な1(1.09g、74%)を得た。
Figure 2007500183
実施例2:エチル-{5-[3-(5-フルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-アミン
Figure 2007500183
(a) 中間体2a − エチル-{5-[3-(5-フルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル
中間体1fの合成に使用した方法と同じ方法により、アルデヒド1e(2.06g、4.29mmol)、および4-フルオロ-1,2-フェニレンジアミン(542mg、4.29mmol)を重亜硫酸ナトリウム(894mg、8.59mmol)の存在下で縮合し、橙色泡状物のベンゾイミダゾール2a(2.04g、78%)を得た。
Figure 2007500183
(b) 実施例2 − エチル-{5-[3-(5-フルオロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-4-メチル-ピリジン-3-イルメチル}-アミン
1fの脱保護と同じ方法で、中間体2a(1.95g、3.34mmol)をオフホワイト色固体の標題化合物2(1.04g、74%)に変換した。
Figure 2007500183
生化学的および生物学的評価
[32P]ATPまたは[33P]ATP由来の放射性燐酸塩の、酵素で触媒され時間に依存する蛋白基質中への取り込みを定量することにより、サイクリン依存性キナーゼ活性を測定した。別途記載の無い限り、検定は、96ウェルプレート中総容量50μL、反応あたり10mM HEPES(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペリジン-N'-[2-エタンスルホン酸])(pH7.4)、10mM MgCl2、25μMアデノシン三燐酸(ATP)、1mg/mL卵アルブミン、5μg/mLロイペプチン、1mMジチオトレイトール、10mMβ-グリセロホスファート、0.1mMバナジン酸ナトリウム、1mM弗化ナトリウム、2.5mMエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルethKer)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、2%(v/v)ジメチルスルホキシド、および0.03-0.4μCi[32/33P]ATPの存在下で実施した。酵素で反応を開始し、30℃でインキュベートし、20分後にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を250mMまで添加することにより反応停止させた。次にこの燐酸化された基質を96ウェル濾過マニホールドを用いてニトロセルロースまたはホスホセルロース膜上に捕捉し、0.85%燐酸で反復洗浄することにより、取り込まれなかった放射能を除去した。乾燥した膜をホスホイメージャーに暴露することにより放射能を定量した。
異なる濃度のインヒビター化合物の存在下で酵素活性を検定し、酵素の不在下で測定したバックグラウンド放射能を差し引くことにより、見掛けのKi値を測定した。阻害データを、Kaleidagraph(Synergy Software)を用いて競合的阻害の式に当てはめ、または、ソフトウェアKineTic(BioKin, Ltd.)を用いて競合的緊密結合阻害の式に当てはめた。
CDK4/サイクリンD網膜芽腫キナーゼ活性の阻害
ヒトCDK4とサイクリンD3の複合体、またはヒトCDK4と遺伝子末端切除した(1-264)サイクリンD3の複合体を、対応するバキュロウイルス発現ベクターに重感染した昆虫細胞から、常套的生化学的クロマトグラフィー技術を用いて精製した(例えばMeijer and Kim, "Chemical Inhibitors of Cyclin-Dependent Kinases", Methods in Enzymol., vol.283(1997), pp.113-128を参照されたい)。酵素複合体(5または50nM)を、精製した組換え網膜芽腫蛋白フラグメント(Rb)0.3-0.5μgを基質として検定した。作製したRbフラグメント(天然の網膜芽腫蛋白の残基386-928;62.3kDa)は、天然の106kDa蛋白に見出される燐酸化部位の大半、および、精製を容易にするための6個のヒスチジン残基より成るタグを含んでいる。燐酸化されたRb基質をニトロセルロース膜上での精密濾過で捕捉し、上述のようにホスホイメージャーを用いて定量した。緊密結合インヒビターを測定するため、酵素複合体濃度を5nMまで下げ、検定時間を60分間に延長したが、この間の生成物形成の時間依存性は直線状であった。
CDK2/サイクリンA網膜芽腫キナーゼ活性の阻害
CDK2を、バキュロウイルス発現ベクターに感染した昆虫細胞から、公開されている方法を用いて精製した(Rosenblatt et al., "Purification and Crystallization of Human Cyclin-dependent Kinase 2", J. Mol. Biol., vol.230, 1993, pp.1317-1319)。完全長組換えサイクリンAを発現するE. coli細胞からサイクリンAを精製し、限定蛋白分解によって末端切除サイクリンA組み立て物を作製し、過去の記載に従って精製した(Jeffrey et al., "Mechanism of CDK activation revealed by the structure of a cyclin A-CDK2 complex", Nature, vol.376(27 July 1995), pp.313-320)。CDK2と蛋白分解したサイクリンAの複合体を作製し、ゲル濾過により精製した。この検定の基質はCDK4検定に使用したものと同じRb基質フラグメントであり、CDK2/サイクリンAとCDK4/サイクリンD3検定の方法は、CDK2を150nMまたは5nM存在させること以外は本質的に同一とした。Ki値を上記のように測定した。
VEGFおよびその他のような成長因子による細胞増殖の刺激は、それら各々のレセプターのチロシンキナーゼの自己燐酸化の誘導に依存する。故に、プロテインキナーゼインヒビターがそれらの成長因子により誘導される細胞増殖を遮断する能力は、レセプターの自己燐酸化を遮断する能力に直接相関している。該化合物のプロテインキナーゼ阻害活性を測定するため、以下の組み立て物を使用した。
細胞増殖の阻害:細胞毒性の評価
細胞増殖の阻害はテトラゾリウム塩検定を用いて測定するが、これは、生存細胞が3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-[2H]-ジフェニルテトラゾリウム ブロミド(MTT)をホルマザンに還元する能力に基づくものである(Mossman, Journal of Immunological Methods, vol.65(1983), pp.55-58)。次いで水不溶性の紫色のホルマザン生成物を分光光学的に検出した。HCT116セルラインは96ウェルプレートで増殖させた。細胞を、McCoy 5A培地中135μl/ウェルの容量で適当な培地に撒いた。プレートを4時間インキュベートした後インヒビター化合物を加えた。0.5%(v/v)ジメチルスルホキシドに入れた異なる濃度のインヒビター化合物(15μL/ウェル)を加え、細胞を37℃(5%CO2)で4ないし6日間(細胞型による)インキュベートした。インキュベート終了時にMTTを最終濃度0.2mg/mLとなるように加え、細胞を37℃でさらに4時間インキュベートした。プレートを遠心分離して培地を除去した後、ホルマザンの吸光度(ジメチルスルホキシドに溶解)を540nmで測定した。増殖の50%阻害を惹起するインヒビター化合物の濃度を、インヒビター濃度対阻害パーセントの半対数プロットのうち直線部分から決定した。全ての結果を、0.5%(v/v)ジメチルスルホキシドのみで処理した対照細胞と比較した。
プロテインキナーゼのパネル
本発明化合物をプロテインキナーゼの多数のパネルに対してスクリーニングし、種々のプロテインキナーゼに対するCDKについての阻害活性を決定した。この検定は、Davies, S et al. Specificity and Mechanism of Action of Some Commonly Used Protein Kinase Inhibitors, Biochem J. 351, 95-105(2000)(この内容は引用により本明細書の一部とする)により記載された方法および材料を用いて実施した。この化合物をプロテインキナーゼのパネルに対してスクリーニングしたが、そのパネルは、AMP-活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、チェックポイントキナーゼ(CHK1)、カゼインキナーゼ1および2(CK1およびCK2)、細胞質チロシンキナーゼ(CSK)、二重セリン/スレオニン/チロシンキナーゼ(DYRK1A)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3B)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、リンパ球キナーゼ(LCK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ2、K-1a、K2(MAPK2、MAPKAP-K1a、およびMAPKAP-K2)、MAPKキナーゼ(MKK1、MEKとも呼ばれる)、マイトジェンおよびストレス活性化プロテインキナーゼ1(MSK1)、never-in-mitosisキナーゼ6(NEK6)、p70リボソーム蛋白S6キナーゼ(P70s6K1)、3-ホスホイノシチド依存プロテインキナーゼ1(PDK1)、ホスホリラーゼキナーゼ(PHK)、プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼB(PKB、Aktとも呼ばれる)、プロテインキナーゼC(PKCa)、p38-調節/活性化キナーゼ(PRAK)、Rho-依存プロテインキナーゼ(ROCK-II)、ストレス活性化プロテインキナーゼ2a、2b、3および4(それぞれSAPK-2Aまたはp38、SAPK-2bまたはp38β2、SAPK3またはp38y、SAPK4またはp38δ)、ならびに血清-およびグルココルチコイド-誘導性キナーゼ(SGK)を包含していた。化合物の活性を、弱い(<50%)、中程度(50-75%)および強い(>75%)阻害という範疇にグループ分けした。下の表1に示すように、本発明化合物は強力なCDKインヒビターであり、意外なことに米国特許No.6555539由来の3,5-置換インダゾール類に比べて、より選択的なCDKインヒビターである。
Figure 2007500183
他のキナーゼ複合体、即ちVEGFまたはFGFR(線維芽細胞増殖因子レセプター)に対するCDKについての式1の化合物の選択性を決定するためのさらなる検定を容易に実施することができる。このような検定は米国特許No.6555539およびWO03/004488に記載されており、当分野で既知である。
上記の例示化合物は、以下の一般的実施例に従い医薬組成物に調合することができる。
非経口組成物
注射による投与に好適な非経口薬用組成物を製造するため、式Iの化合物の水溶性塩100mgをDMSOに溶解し、次いで0.9%滅菌生理食塩水10mLと混合する。この混合物を、注射による投与に好適な単位投薬型に配合する。
経口組成物
経口デリバリーのための薬用組成物を製造するため、式Iの化合物100mgを乳糖750mgと混合する。この混合物を、経口投与に好適な、経口投薬単位、例えば硬ゼラチンカプセル中に組み入れる。
本発明を具体的且つ好ましい態様に言及して説明してきたが、当業者は、本発明に係る常套的な実験および実施を通じて、変化および改変を施せるという事が理解できるであろう。したがって、本発明は前記の説明に限定されるのではなく、付記した請求項およびそれらの等価物により規定されるという事を意図している。

Claims (9)

  1. 以下の式I:
    Figure 2007500183
    [式中、R1、R2、R3およびR4は、H、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アジド、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、C1-C10アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-C(O)R5、-C(O)OR5、-OC(O)R5、-NR5C(O)R6、-C(O)NR5R6、-(C R5R6)NR7R8、-C R5R6NR7R8、-NR5OR6、-SO2N R5R6、-S(O)j(C1-C6アルキル)[式中、jは0〜2の整数である]、-(CR5R6)t(C6-C10アリール)、-(CR5R6)t(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)t(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)qC(O)(CR7R8)t(C6-C10アリール)、-(C R5R6)qC(O)(CR7R8)t(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)qC(O)(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(C6-C10アリール)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(C3-C10シクロアルキル)、-(CR5R6)tO(CR7R8)q(4-10員環ヘテロ環)、-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(C6-C10アリール)、-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(C3-C10シクロアルキル)、および-(CR5R6)qSO2(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、qおよびtは各々個別に0〜5の整数であり、前記R1、R2、R3またはR4基のシクロアルキルまたはヘテロ環部分の1または2個の環上炭素原子は所望によりオキソ(=O)部分で置換されていてもよく、R5、R6、R7およびR8の各々は個別にH、C1-C6アルキルから選ばれ;そして、R1、R2、R3およびR4は同時にHであることはない]より成る群から選ばれる]で示される化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物。
  2. R1が-(CR5R6)NR7R8であり、そしてR2、R3およびR4が個別にHまたはFから選ばれる、請求項1に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物。
  3. R1がエチルアミノメチルであり、R3がHであり、そしてR2およびR4がFである、請求項1に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物。
  4. R1がエチルアミノメチルであり、R2およびR4がHであり、そしてR3がFである、請求項1に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物。
  5. 以下の:
    Figure 2007500183
    から選ばれる化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物。
  6. キナーゼの阻害により仲介される疾患又は障害の治療を必要とする患者に請求項5に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、当該疾患又は障害の治療方法。
  7. 請求項5に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、真菌感染症、悪性腫瘍または癌ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖に関連するその他の病態の治療方法。
  8. 請求項5に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を投与することによりCDKキナーゼ活性を選択的に阻害する方法。
  9. 請求項5に記載の化合物または薬学上許容し得る塩もしくは溶媒和物を含有する医薬組成物。
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