JP2007210383A - 車両用ステアリングシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】実用性の高い独立操作型のステアリングシステムを提供する。
【解決手段】互いに独立して操作可能とされる1対の操作部材14を備え、それら1対の操作部材14の各々の操作量に応じた車輪の転舵量となるように転舵装置が制御されるステアリングシステムであって、1対の操作部材14の各々に転舵における互いに逆方向への操作が行われた場合に、それら操作部材14の操作を制限することを特徴とする。具体的には、右側ハンドル14Rを反時計回りに、左側ハンドル14Lを時計回りに操作が入力された場合に、それらハンドル14の各々のその入力された向きへの位置変動を制限するように軌道方向力付与装置70の各々のモータ60を制御する。本システムによれば、互いに逆方向への操作が行われた場合に、それら操作部材14の各々の操作を制限できるため、適切な操舵を担保することが可能となる。
【選択図】図6
【解決手段】互いに独立して操作可能とされる1対の操作部材14を備え、それら1対の操作部材14の各々の操作量に応じた車輪の転舵量となるように転舵装置が制御されるステアリングシステムであって、1対の操作部材14の各々に転舵における互いに逆方向への操作が行われた場合に、それら操作部材14の操作を制限することを特徴とする。具体的には、右側ハンドル14Rを反時計回りに、左側ハンドル14Lを時計回りに操作が入力された場合に、それらハンドル14の各々のその入力された向きへの位置変動を制限するように軌道方向力付与装置70の各々のモータ60を制御する。本システムによれば、互いに逆方向への操作が行われた場合に、それら操作部材14の各々の操作を制限できるため、適切な操舵を担保することが可能となる。
【選択図】図6
Description
本発明は、車両に配備されるステアリングシステムに関し、詳しくは、互いに独立して操作可能とされる1対の操作部材を有して、それらの操作に応じた車輪の転舵を実現するシステムに関する。
今日では、車両が備えるステアリングシステムとして、運転者の操作力によらず、転舵装置が備える駆動源を操作部材の操作に応じて電気的に制御することで、運転者の操作に応じた車輪の転舵を実現するシステム、つまり、ステアバイワイヤ型のステアリングシステムが検討されている。このシステムでは、操作入力装置が操作部材に加えられた操作力を転舵装置に伝達する必要がなく、言い換えれば、操作部材と転舵装置とを機械的に連結するという構造上の制約がないため、バリエーションに富んだ種々のシステムが採用可能とされている。その一例として、下記特許文献1,2には、1対の操作部材を有してそれらが互いに独立して操作可能に設けられたシステム、いわゆる独立操作型のシステムが記載されている。
特開2004−244022号公報
特開平9−301193号公報
独立操作型のステアリングシステムは、ユニークなシステムであり、操作の自由度が高いという利点を有する。ところが、未だ開発途上にあるため、例えば、1対の操作部材の各々が互いに逆方向に車輪を転舵させるような不自然な操作が出来てしまうといった問題を始め種々の問題を抱えており、実用性を向上させるための改良の余地を多分に残すものとなっている。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い独立操作型のステアリングシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のステアリングシステムは、互いに独立して操作可能とされる1対の操作部材を備え、それら1対の操作部材の各々の操作量に応じた車輪の転舵量となるように転舵装置が制御されるステアリングシステムであって、前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する操作制限装置を備えたことを特徴とする。
本発明のステアリングシステムによれば、1対の操作部材に互いに逆方向の操作が入力された場合に、上記操作制限装置によって、それら操作部材の各々の操作を制限できるため、適切な操舵を担保することが可能となる。つまり、そのような利点を有することで、本発明の車両用ステアリングシステムは、実用性の高いシステムとなる。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項2に、請求項2に(5)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれかに(6)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項4に、それぞれ相当する。
(1)それぞれが、設定された軌道に沿って互いに独立して操作可能とされるとともに、車両が右旋回する方向の車輪の転舵に対応する第1方向と左旋回する方向の車輪の転舵に対応する第2方向とに操作可能とされた1対の操作部材と、
車輪を転舵する転舵装置と、
前記1対の操作部材の各々のその各々に対応する前記軌道上に設定された基準操作位置からの操作量に基づいて車輪の目標転舵量を決定するとともに車輪の転舵量が目標転舵量となるように前記転舵装置を制御する転舵制御部を有する制御装置と
を備えた車両用ステアリングシステムであって、
前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する操作制限装置を備えた車両用ステアリングシステム。
車輪を転舵する転舵装置と、
前記1対の操作部材の各々のその各々に対応する前記軌道上に設定された基準操作位置からの操作量に基づいて車輪の目標転舵量を決定するとともに車輪の転舵量が目標転舵量となるように前記転舵装置を制御する転舵制御部を有する制御装置と
を備えた車両用ステアリングシステムであって、
前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する操作制限装置を備えた車両用ステアリングシステム。
独立操作型のステアリングシステムでは、1対の操作部材の各々が、相反する向きに車輪を転舵させるような互いに逆方向への操作(以下、「相反操作」と呼ぶ場合がある)が行われてしまう虞がある。その相反操作は、1対の操作部材が位置変動しても、車輪はあまり転舵しないという異常な事態が生じる。本項に記載の態様のステアリングシステムは、独立操作型のシステムに、1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態においてそれらの操作を制限する装置が設けられており、相反操作が行われた場合に、それら1対の操作部材の操作が制限されるため、1対の操作部材の不自然な位置変動を回避することが可能となる。
また、独立操作型のシステムでは、急加速,急減速の際に、運転者の車両後方側あるいは前方側への移動に伴って、1対の操作部材の両者を後方あるいは前方へ位置変動させる虞がある。その操作部材の両者の位置変動が、上記相反操作の動作となるような場合には、本項の態様のシステムは、それら1対の操作部材の操作を制限できるため、1対の操作部材の不用意な位置変動を回避することが可能である。つまり、本項の態様は、急加速,急減速に対して、特に有効な態様となる。
さらに、独立操作型のシステムでは、車輪をある転舵位置で維持するために、1対の操作部材の両者を所定の操作量となる位置において安定して保持すること、いわゆる保舵することが望ましい。また、この独立操作型のシステムが、ステアバイワイヤ型のシステムとされ、小さな操作量に対して大きく車輪を転舵させることが可能とされる場合には、前記相反操作の影響は大きなものとなる。本項の態様によれば、1対の操作部材に互いに逆方向の操作を入力することによって、1対の操作部材の位置変動を抑制して、保舵を担保できることとなる。本項に記載の態様は、以上のような利点を有することから、実用性の高いステアリングシステムとなる。
本項の態様における「1対の操作部材」は、例えば、それぞれが左右の手の各々で操作されるようなものを採用でき、その形状,構造が特に限定されるものではない。具体的には、例えば、いわゆるハンドルと呼ばれるような形状で、それぞれが直線状あるいは曲線(例えば、円弧状)の「軌道」に沿って操作可能とされるものや、また、いわゆるジョイスティック,レバーと呼ばれるような形状で、それぞれが左右方向あるいは前後方向に傾倒することで、円弧状の「軌道」に沿って操作可能とされるものを採用することが可能である。また、「転舵装置」も、その構成が特に限定されるものではなく、既に検討されている種々の構成のものを採用することが可能である。例えば、駆動源として電動モータを採用し、そのモータの駆動力によって車輪に連結された転舵ロッドを左右に移動させるような装置とすることができる。その場合、転舵ロッドを移動させる機構として、例えば、ラックピニオン機構,ボールねじ機構等を採用することが可能である。
本項の態様における「制御装置」は、例えば、コンピュータを主体とし、必要に応じて駆動源,動力源の駆動回路等を含んで構成される電子制御ユニットを採用することが可能である。この制御装置の有する「転舵制御部」は、例えば、上記1対の操作部材の各々の基準操作位置からの操作量の和,それらの平均等に基づいて目標転舵量を決定するように構成することが可能である。なお、本項に記載の「基準操作位置」は、例えば、操作部材に、外部や後述する軌道方向力付与装置等から力が作用していない状態において位置させられる操作部材の位置(以下、「操作中立位置」あるいは単に「中立位置」という場合がある)とすることが可能であり、その場合、例えば、1対の操作部材の両者がそれぞれの基準操作位置に位置している状態において、車輪の転舵位置が、車両直進状態における転舵位置(以下、「転舵中立位置」あるいは単に「中立位置」という場合がある)となるように構成することが可能である。
本項にいう「互いに逆方向に操作された状態」とは、1対の操作部材の一方が車両が右旋回する方向である第1方向に操作され、かつ、それらの他方が車両が左旋回する方向である第2方向に操作されたことを意味する。なお、操作部材が第2方向(第1方向)に操作された状態において基準操作位置側に戻すように操作されたことも、第1方向(第2方向)に操作されたことに含まれる。また、1対の操作部材の基準操作位置から操作された位置の各々が互いに逆方向の操作となる位置に位置していることを意味するのではなく、例えば、1対の操作部材の各々の操作位置が互いに逆方向へ変動したこと、1対の操作部材の各々に互いに逆方向への力が加わったこと等を意味する。
本項に記載の態様は、1対の操作部材が上記「互いに逆方向に操作された状態」である場合において、それらの操作に対して大きな操作力が必要とされる状態とする、操作可能な操作量を小さくする、あるいは、操作部材を固定する態様等が含まれる。本項の態様における「操作制限装置」は、その構成が特に限定されるものではなく、1対の操作部材の各々の前記相反操作の方向への操作のみを制限するものであってもよく、両方向への操作を制限するものであってもよい。具体的には、例えば、操作部材の操作された方向への移動を制限する向きの力を付与するような構成,ロック装置等のように操作部材を係止することでそれの移動を禁止するような構成とすることが可能である。
(2)当該ステアリングシステムが、
それぞれが、動力源を有し、その動力源が制御されることによって前記1対の操作部材の各々に対して、その各々について設定された軌道に沿った方向の力である軌道方向力を付与する1対の軌道方向力付与装置を備え、
前記制御装置が、前記1対の軌道方向力付与装置の各々の動力源を制御することで軌道方向力を制御する軌道方向力制御部を有する(1)項に記載の車両用ステアリングシステム。
それぞれが、動力源を有し、その動力源が制御されることによって前記1対の操作部材の各々に対して、その各々について設定された軌道に沿った方向の力である軌道方向力を付与する1対の軌道方向力付与装置を備え、
前記制御装置が、前記1対の軌道方向力付与装置の各々の動力源を制御することで軌道方向力を制御する軌道方向力制御部を有する(1)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の「軌道方向力」は、軌道に沿った方向の力であれば、いずれの向きの力であってもよい。例えば、軌道方向力を、運転者によってなされた操作に対して反力として作用させてもよく、その操作をアシストするように作用させてもよい。本項に記載の態様によれば、その軌道方向力の向きや大きさを変更可能なシステムが実現し、1対の操作部材の各々に対して適切な軌道方向力を付与することが可能となる。なお、「動力源」は、種々のものを採用可能であるが、例えば、動力源として電動モータを採用すれば、電動モータはそれの動力の制御が容易であるため、軌道方向力を容易に制御することが可能となる。
(3)前記軌道方向力制御部が、それら1対の軌道方向力付与装置の各々の軌道方向力を、前記1対の操作部材の各々の操作量が減少する向きの力となるように制御する基準位置方向力付与制御部を有する(2)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、言い換えれば、操作部材に対してそれを前記操作基準位置に戻す力を付与するものであり、本項の態様によれば、例えば、操作部材が中立位置から離れる方向の操作、換言すれば、操作量が増大する方向の操作(以下、「切増操作」という場合がある)に対して操作反力を付与すること、つまり、運転者に適切なステアリング操作の操作感を与えることが可能である。
(4)前記基準位置方向力付与制御部が、前記1対の軌道方向力付与装置の各々の軌道方向力を、前記1対の操作部材の各々の操作量に応じた大きさの力となるように制御するものである(3)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、例えば、操作量が大きくなるほどその操作の方向とは反対の方向の軌道方向力を大きくすることが可能であり、そのような場合には、操作部材を切り増すほど操作反力が大きくなるため、従来の操作部材と転舵装置とが機械的に連結されたステアリングシステムに似た操作感を運転者に与えることも可能である。
(5)前記制御装置が、前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、前記1対の軌道方向力付与装置の各々が有する動力源を制御することで、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する逆方向操作制限部を有し、
前記操作制限装置が、前記1対の軌道方向力付与装置と前記逆方向操作制限部とを含んで構成された(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
前記操作制限装置が、前記1対の軌道方向力付与装置と前記逆方向操作制限部とを含んで構成された(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、前述の軌道方向力付与装置によって1対の操作部材の操作を制限する態様であり、例えば、それら軌道方向力付与装置の動力源を、1対の操作部材の各々に対してそれらの逆方向の操作に対する反力を付与するように制御する態様、あるいは、1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態となった位置においてそれらの各々の位置を維持するように制御する態様等を採用することが可能である。本項に記載の態様によれば、軌道方向力付与装置とは別に操作制限装置を設ける必要がないため、構成が単純化されたステアリングシステムが実現することとなる。
(6)当該ステアリングシステムが、
前記1対の操作部材の各々に対して設けられてそれら1対の操作部材の各々に加わる操作力の方向を検知する1対の操作力方向検知器を備え、前記操作制限装置が、それら1対の操作力方向検知器の検知結果に基づいて前記1対の操作部材の逆方向の操作を制限するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
前記1対の操作部材の各々に対して設けられてそれら1対の操作部材の各々に加わる操作力の方向を検知する1対の操作力方向検知器を備え、前記操作制限装置が、それら1対の操作力方向検知器の検知結果に基づいて前記1対の操作部材の逆方向の操作を制限するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様によれば、操作力方向検知器によって、効果的に操作制限装置を作動させることが可能である。なお、本項の態様における「操作力方向検知器」は、その構成が特に限定されるものではなく、操作部材の構成に合わせて既に公知の種々の構成のものを採用可能である。
(7)前記転舵制御部が、前記1対の操作部材の各々の操作量に基づく転舵量成分の和に基づいて目標転舵量を決定するものである(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、互いに独立して操作可能とされた1対の操作部材を備えたシステムに好適な態様であり、そのシステムにおける車輪の転舵量を適切なものとすることが可能である。ちなみに、1対の操作部材の各々の操作量の和あるいは平均に基づいて目標転舵量を決定する態様も、本項の態様に含まれる。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<第1実施例>
1.ステアリングシステムの構成
図1に、第1実施例のステアリングシステムの全体構成を模式的に示す。当該ステアリングシステムは、いわゆるステアバイワイヤ型のステアリングシステムであり、操作装置10と、転舵装置12とが機械的に分離され、それぞれが操作部材である1対のハンドル14R,14L(以下、「ハンドル14」と総称する場合がある)に加えられる操作力によらずに、転舵装置12に設けられた駆動源の駆動力によって車輪16を転舵するステアリングシステムである。また、本ステアリングシステムは、1対のハンドル14が互いに独立して操作可能とされた独立操作型のシステムである。
1.ステアリングシステムの構成
図1に、第1実施例のステアリングシステムの全体構成を模式的に示す。当該ステアリングシステムは、いわゆるステアバイワイヤ型のステアリングシステムであり、操作装置10と、転舵装置12とが機械的に分離され、それぞれが操作部材である1対のハンドル14R,14L(以下、「ハンドル14」と総称する場合がある)に加えられる操作力によらずに、転舵装置12に設けられた駆動源の駆動力によって車輪16を転舵するステアリングシステムである。また、本ステアリングシステムは、1対のハンドル14が互いに独立して操作可能とされた独立操作型のシステムである。
操作装置10は、上記1対のハンドル14を含んで構成され、車体の一部、詳しくは、インストゥルメントパネルのリインフォースメントに固定されている。操作装置10は、それら1対のハンドル14の各々を概ね円弧状の軌道に沿って移動可能に保持し、1対のハンドル14の各々にそれの軌道方向への力を付与する機能を有するものである。それらについては、後に詳しく説明する。
転舵装置12は、車体(詳しくは、シャーシ)に固定されたハウジング20と、そのハウジング20に軸方向(車両の左右方向)に移動可能に設けられた転舵ロッド22とを含んで構成されている。また、転舵装置12は、内部の図示は省略するが、転舵ロッド22と同軸的に設けられた駆動源としての転舵モータ24を備えており、転舵ロッド22に形成されたボールねじに噛合するボールナットをその転舵モータ24によって回転駆動することにより、転舵ロッド22が軸方向に移動させられる構造とされている。転舵ロッド22の両端の各々は、ボールジョイント26を介して、タイロッド28に連結され、タイロッド28の他端部は、もう一種のボールジョイント30を介して、車輪16を回転可能に保持するステアリングナックル32の一部分であるナックルアーム34に連結されている。このような連結構造により、転舵ロッド22が軸方向に移動させられることで、車輪16が転舵されるのである。
転舵装置20には、車輪16の転舵量を取得するための転舵量センサ40が設けられている。その転舵量センサ40は、転舵ロッド22に形成されたラックギヤに噛み合うピニオンギヤの回転量、詳しくは、車両が直進する状態におけるピニオンギヤの位置である中立位置からの回転量を検出するものである。つまり、転舵量センサ40は、転舵ロッド22の軸線方向への移動に伴うピニオンギヤの回転量を取得することで、転舵ロッド22の移動によって転舵させられる車輪16の転舵量を間接的に取得するものとされている。
操作装置10の構造について、図2〜図4をも参照しつつ説明する。図2は、操作装置10の正面図(運転席側から眺めた図)を、図3は、それを上方から眺めた図を、図4は、それの車両左側から眺めた側面図を、それぞれ示している。
操作装置10を構成する1対のハンドル14は、側面から見た形状が概ねL字形状をなす棒状の部材であり、上方に向かって延びる部分が運転者によって把持されるグリップ部50とされている。そのグリップ部50は、それの下部が運転者側に位置するように傾斜して配設されている。また、1対のハンドル14の各々は、インストゥルメントパネル(以下、「インパネ」と略す場合がある)のパネル材52に設けられた1対のガイド穴54に沿って移動可能に配設されている。詳しくは、1対のハンドル14は、パネル材52の内部から突出したハンドルロッド56と一体的に設けられており、そのハンドルロッド56の各々が、1対のガイド穴54に沿って移動可能とされている。
なお、1対のハンドル14の各々は、車輪が転舵中立位置に位置する状態において、1対のガイド穴54の各々によって規定される軌道上の基準操作位置(図2における位置)に位置させられており、その基準操作位置から、1対のハンドル14の一方あるいは両方を時計回りに操作すれば車両が右旋回し、逆に、1対のハンドル14の一方あるいは両方を反時計回りに操作すれば左旋回する。ちなみに、1対のハンドル14の基準操作位置は、水平位置より僅かに上方に位置している。本実施例においては、時計回りに回動する方向が第1方向であり、反時計回りに回動する方向が第2方向である。また。1対のガイド穴54の各々は、概ね円弧状のものであるが、下方に向かうほど円弧から徐々に外側に広げられた形状とされており、本ステアリングシステムは、操作部材を円弧状に回動するものに比較して、運転者が自身の体付近で行う操作の操作性が向上させられている。
1対のハンドル14に一体的に設けられた前記ハンドルロッド56の各々は、インパネの内部において、電動モータ60によって回転させられるアーム62に接続されている。それら1対のモータ60は、概ね円弧状の1対のガイド穴54の各々の中心に位置するように、インパネリインフォースメントに固定され、そのモータ60の出力軸にアーム62の一端部が連結されている。そのアーム62は、インパネのパネル材52に平行に延び、それの他端部がハンドルロッド56に接続されている。そのような構造により、1対のハンドル14の各々は、車体の一部に保持されることとなる。また、アーム62とハンドルロッド56との接続部について詳しく説明すれば、アーム62には、それの軸線方向に延びる長穴64と、その長穴64に沿ってスライド可能なスライダ66とが設けられており、そのスライダ66にハンドルロッド56が固定されている。このような構造から、1対のハンドル14は、モータ60からの径方向の距離が変わるガイド穴54の各々に沿って移動可能とされている。ちなみに、スライダ66が、アーム62に対して相対回転不能とされているため、ハンドル14も、アーム62に対して相対回転不能とされている。なお、以下の説明において、右側のハンドル14Rに対応するモータ60をモータ60Rと呼び、左側のハンドル14Lに対応するモータ60をモータ60Lと呼ぶ場合がある。
上記モータ60は、減速機付のモータであり、1対のハンドル14の各々にガイド穴54の方向に沿った力である軌道方向力FSを付与することが可能とされている。つまり、本ステアリングシステムにおいては、モータ60,アーム62等を含んで、1対のハンドル14の各々に対応する1対の軌道方向力付与装置70が構成され、そのモータ60の各々が、それら1対の軌道方向力付与装置70の動力源として機能するものとなっている。本ステアリングシステムにおいては、そのモータ60を制御することによって、軌道方向力の大きさや向きを任意に変更することが可能となっている。また、詳細な説明は省略するが、モータ60R,60Lは、それぞれが、ハンドル14R,14Lの基準操作位置からの操作量である操作角δR,δLを検出可能な操作角センサ72R,72Lを備えている。この操作角センサ72R,72Lは、エンコーダを主体としてモータ軸の回転角度を検出する回転角センサであり、ハンドル14R,14Lの基準操作位置に対応して設定されたモータ軸の回転基準位置からの回転量を検出することで、操作角δR,δLを検出するものである。ちなみに、操作角δR,δLは、ハンドル14が基準操作位置から反時計回りに回動した場合の角度を正とし、軌道方向力FSは、ハンドル14を反時計回りに回動させる方向の力を正とする。
さらに、アーム62の各々には、自身に加わる操作トルクを検出可能な操作トルクセンサ80が設けられている。それら1対の操作トルクセンサ80は、それぞれが1対の歪みゲージ82,84を有し、モータ60の動力と運転者によって加えられる力との相互作用によって生じるアーム62のたわみの方向と変形量とを検出可能とされている。そのアーム62のたわみの方向と変形量とに基づいて、ハンドル14に加わる操作力FHの方向が推定されるのである。ちなみに、操作力FHは、ハンドル14を反時計回りに回動させる方向の力を正とする。このように、本ステアリングシステムは、1対のハンドル14の各々に対して、1対の操作力方向検知器を備えるものとされている。なお、以下の説明において、右側のハンドル14Rに対応する操作トルクセンサ80を80Rと呼び、左側のハンドル14Lに対応する操作トルクセンサ80を80Lと呼ぶ場合がある。
2.ECUによる制御
以上のように説明した構造の本ステアリングシステムは、制御装置としてのステアリング電子制御ユニット100(以下、「ECU100」と呼ぶ場合がある)によって制御される。ECU100は、コンピュータ102を主体とするものであり、先に述べた転舵量センサ40,1対の操作角センサ72、1対の歪みゲージ80等の各種センサが接続されている。また、ECU100は、転舵装置12の転舵モータ24,操作装置10が備える1対の軌道方向力付与装置70の各々のモータ60が、自身の有する駆動回路(ドライバ)に接続されており、それらの動作の制御を行うものとされている。ECU100のコンピュータには、後に説明する軌道方向力制御プログラム、転舵制御プログラム、ステアリングシステムの制御に関する各種のデータ等が記憶されている。
以上のように説明した構造の本ステアリングシステムは、制御装置としてのステアリング電子制御ユニット100(以下、「ECU100」と呼ぶ場合がある)によって制御される。ECU100は、コンピュータ102を主体とするものであり、先に述べた転舵量センサ40,1対の操作角センサ72、1対の歪みゲージ80等の各種センサが接続されている。また、ECU100は、転舵装置12の転舵モータ24,操作装置10が備える1対の軌道方向力付与装置70の各々のモータ60が、自身の有する駆動回路(ドライバ)に接続されており、それらの動作の制御を行うものとされている。ECU100のコンピュータには、後に説明する軌道方向力制御プログラム、転舵制御プログラム、ステアリングシステムの制御に関する各種のデータ等が記憶されている。
ECU100は、主に、軌道方向力制御と転舵制御との2つの制御を行う。その1つである軌道方向力制御は、前述した1対の軌道方向力付与装置70に関する制御であり、詳しくは、1対のモータ60の制御である。この制御では、通常、1対のハンドル14の各々にそれらの操作量が減少する向きの力を付与する基準位置方向力付与制御が実行される。この制御を右側のハンドル14Rについて説明すれば、操作角センサ72Rの検出信号に基づいてハンドル14Rの操作角δRが取得され、その取得されたδRに応じた大きさの力で、かつ、ハンドル14Rの操作量が減少する向き力となるように軌道方向力FSRが決定される。詳しくは、図5に示した操作角と軌道方向力との関係から解るように、軌道方向力FSRは、操作角δRが大きくなるほどその操作の方向とは反対の方向への大きな反力とされる。そして、その決定された軌道方向力FSRを発揮するように、モータ60Rへの供給電流IHRが決定されるのである。また、左側のハンドル14Lに対しても同様の制御が行われ、操作角センサ72Lによって検出されたδLに基づいて軌道方向力FSLが決定され、その軌道方向力FSLを発揮するように、モータ60Lへの供給電流IHLが決定される。ちなみに、本実施例においては、軌道方向力に応じた電力が決定されるのであり、モータを定電圧で制御するため、ECU100は、モータへの供給電流が決定されるようになっている。そして、その決定された供給電流IHR,IHLに関する指令が駆動回路であるインバータに送信され、そのインバータによってその電流IHR,IHLが、モータ60R,60Lに供給される。
ECU100におけるもう1つの制御である転舵制御は、前述した転舵装置12に関する制御であり、詳しくは、転舵モータ24の制御である。この制御では、1対の操作角センサ72の検出信号に基づいて1対のハンドル14の操作角δR,δLが取得され、それら取得されたδR,δLに基づいて目標転舵量θ*すなわちピニオンギヤの回転位置である転舵量の目標となる値が決定される。詳しくは、操作角δR,δLに基づく転舵量成分の和に基づいて決定されるのであり、次式に従って決定される。
θ*=G0・(GSR・δR+GSL・δL)
ここで、GSR,GSLはハンドル14の各々の操作ゲイン(重み付けのためのゲイン)であり、その操作ゲインに操作角を乗じたものがハンドル14の各々に対応する転舵量成分である。なお、それら操作ゲインGSR,GSLは、通常状態において等しい値(=1)とされ、1対のハンドル14の左右にバランスのとれた操舵を実現するようにされている。また、G0は、操作角から転舵量に換算するためのゲインである。次いで、転舵量センサ40の検出信号に基づいて実際の転舵量θが取得され、目標転舵量θ*と実転舵量θとの転舵量偏差Δθ(=θ*−θ)が認定され、その転舵量偏差Δθが0となるように、転舵モータ24への供給電流ISが決定される。そして、その決定された供給電流ISに関する指令が駆動回路であるインバータに送信され、そのインバータによってその電流ISが、転舵モータ24に供給される。
θ*=G0・(GSR・δR+GSL・δL)
ここで、GSR,GSLはハンドル14の各々の操作ゲイン(重み付けのためのゲイン)であり、その操作ゲインに操作角を乗じたものがハンドル14の各々に対応する転舵量成分である。なお、それら操作ゲインGSR,GSLは、通常状態において等しい値(=1)とされ、1対のハンドル14の左右にバランスのとれた操舵を実現するようにされている。また、G0は、操作角から転舵量に換算するためのゲインである。次いで、転舵量センサ40の検出信号に基づいて実際の転舵量θが取得され、目標転舵量θ*と実転舵量θとの転舵量偏差Δθ(=θ*−θ)が認定され、その転舵量偏差Δθが0となるように、転舵モータ24への供給電流ISが決定される。そして、その決定された供給電流ISに関する指令が駆動回路であるインバータに送信され、そのインバータによってその電流ISが、転舵モータ24に供給される。
また、上述した軌道方向力制御では、1対のハンドル14の各々に互いに逆方向の操作(相反操作)がされた場合、例えば、1対のハンドルの一方が時計回りに操作されるとともに、それらの他方が反時計回りに操作された場合等には、それらハンドル14の操作を制限する制御、具体的には、それらハンドル14の逆方向の位置変動を制限するように1対の軌道方向力付与装置70の各々のモータ60を制御する逆方向操作制限制御が実行される。この制御について、図6を参照しつつ、以下に詳しく説明する。
例えば、図6に示すように、1対のハンドル14が切られている状態において、右側ハンドル14Rが切り増す操作がされ、左側ハンドル14Lが操作基準位置に戻す操作がされた場合、つまり、右側ハンドル14Rに対応する操作トルクセンサ80Rによって反時計回りの操作力FHRが検出されるとともに、左側ハンドル14Lに対応する操作トルクセンサ80Lによって時計回りの操作力FHLが検出された場合には、逆方向操作制限制御が行われる。ちなみに、左側ハンドル14Lが、手放されて、あるいは、左手に力をほとんど入れていない状態で軌道方向力FSLのみによって基準操作位置に戻される場合には、操作トルクセンサ80Lによって検出される操作力FHLは0あるいは略0であり、その逆方向操作制限制御は行われない。この逆方向操作制限制御では、右側ハンドル14Rの反時計回りの位置変動と、左側ハンドル14Lの時計回りの位置変動とを制限するようにモータ60R,60Lがを制御される。詳しくは、図5に示すように、それらハンドル14に付与する軌道方向力FSR,FSLが、前記相反操作の向きと反対向きの力で、大きさが大きな力である操作制限力FS0あるいは−FS0(図における二点鎖線)とされる。なお、その操作制限力FS0(あるいは−FS0)は、通常、操作部材に加えられる操作力に対して位置変動を抑制できる程度に充分な大きさの力とされている。そして、その操作制限力FS0(あるいは−FS0)を発揮するように、モータ60R,60Lへの供給電流IHR,IHLが決定される。
なお、1対のハンドル14の少なくとも一方が、例えば、上記操作制限力FS0(あるいは−FS0)や運転者により加えられた操作力によって、前記相反操作の向きとは反対の向きに位置変動させられた場合には、上記逆方向操作制限制御による制御を解除して、通常の基準位置方向力付与制御に戻される。
3.制御プログラム
本ステアリングシステムの制御は、図7にフローチャートを示す軌道方向力制御プログラムと、図8にフローチャートを示す転舵制御プログラムとが実行されることによって行われる。それらの制御プログラムは、ECU100が有するコンピュータ102に格納されており、イグニッションスイッチがON状態とされた後、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいて繰り返し実行される。以下に、それらの制御の流れを、フローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。
本ステアリングシステムの制御は、図7にフローチャートを示す軌道方向力制御プログラムと、図8にフローチャートを示す転舵制御プログラムとが実行されることによって行われる。それらの制御プログラムは、ECU100が有するコンピュータ102に格納されており、イグニッションスイッチがON状態とされた後、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいて繰り返し実行される。以下に、それらの制御の流れを、フローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。
軌道方向力制御では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)およびS2において、1対のハンドル14の各々の操作角δR,δLと、それに加わる操作力FHR,FHLとが取得される。次いで、S3において、逆方向操作フラグfがセットされているか否かが判定される。この逆方向操作フラグfは、1対のハンドル14の各々に前記相反操作が行われた場合に0から1にセットされるものである。
1対のハンドル14の各々に相反操作が行われたか否かは、S4において判定される。具体的には、S2において取得された操作力FHR,FHLが逆方向の力である場合、つまり、それらを乗じた値が負である場合には、1対のハンドル14の各々に相反操作が行われたと判定される。その相反操作が行われていない場合には、通常の制御、つまり、先に詳しく説明した基準位置方向力付与制御が実行される。具体的には、S1において取得された操作角δR,δLに基づいて、S5において、1対のハンドル14の各々に付与する軌道方向力FSR,FSLが決定され、S6において、その軌道方向力FSR,FSLを発揮するように、モータ60R,60Lへの供給電流IHR,IHLが決定される。この決定された供給電流IHR,IHLに関する指令が、モータ60R,60Lに送信され、軌道方向力制御プログラムの1回の実行が終了する。
一方、相反操作が行われたと判定された場合には、S7において、軌道方向力FSR,FSLが、操作力FHR,FHLの方向に応じて、操作制限力FS0あるいは−FS0とされる。また、それとともに、S8において逆方向操作フラグfが1とされる。そして、S6において、その操作制限力FS0(あるいは−FS0)を発揮するように、モータ60R,60Lへの供給電流IHR,IHLが決定される。この決定された供給電流IHR,IHLに関する指令が、モータ60R,60Lに送信され、軌道方向力制御プログラムの1回の実行が終了する。
上述のように1対のハンドル14の各々に相反操作が行われたと判定され、その次の軌道方向力制御プログラムの実行の際には、S3においてYESと判定され、S9以降が実行されることとなる。S9以降においては、上記の相反操作の向きの操作を制限する制御、つまり、先に説明した逆方向操作制限制御を継続するか、あるいは、通常の基準位置方向力付与制御に戻すかが判定される。まず、S9において、1回前のプログラム実行時の操作角に対する操作角の変化量である操作角変化量ΔδR,ΔδLが取得される。次いで、S10において、1対のハンドル14の各々において、前記相反操作の向きとは反対向きに位置変動させられたか否かが判定される。詳しくは、1対のハンドル14の一方が、操作制限力FS0(あるいは−FS0)が作用する方向に位置変動したか否かによって判定され、その方向に位置変動した場合に基準位置方向力付与制御に戻される。さらに、具体的に説明すれば、操作制限力FS0(あるいは−FS0)に設定された軌道方向力FSR,FSLとS9において取得された操作角変化量ΔδR,ΔδLとの積を求め、その積が0(操作角変化量が0である)あるいは負である場合には、ハンドル14が位置変動していない、あるいは、操作制限力に対向して位置変動させた場合であるため、逆方向操作制限制御が継続される。つまり、軌道方向力FSR,FSLが操作制限力FS0(あるいは−FS0)とされたままS6が実行される。また、その積が正である場合には、ハンドル14が操作制限力と同方向に位置変動したため、基準位置方向力付与制御に戻される。この場合、S11において逆方向操作フラグfが0にリセットされて、S5以降が実行される。
次に、図8にフローチャートを示す転舵制御について説明すれば、この制御では、S21において取得された1対のハンドル14の操作角δR,δLに基づいて、S22において、先に説明したように目標転舵量θ*が決定される。なお、1対のハンドル14の各々に前記相反操作が行われた場合には、上述した軌道方向力制御プログラムによって、その相反操作の向きへの操作が制限されるため、1対のハンドル14の各々の操作角δの変動は小さく、目標転舵量θ*の変動も小さい。次に、目標転舵量θ*とS23において取得した実転舵量θとの偏差である転舵量偏差Δθが、S24において認定される。そして、S25において、その転舵量偏差Δθに基づいて、転舵モータ24への供給電流ISが決定されるのである。この決定された供給電流ISに関する指令が、インバータから転舵モータ24に送信され、転舵制御プログラムの1回の実行が終了する。
以上説明した軌道方向力プログラムおよび転舵制御プログラムが、イグニッションスイッチがOFFとされるまで、繰り返し実行されるのである。上述したECU100の機能を、模式的に示した機能ブロック図が、図9である。上記機能に基づけば、ECU100のコンピュータ102は、軌道方向力制御を行う軌道方向力制御部120と、転舵制御を行う転舵制御部122とを備えている。また、その軌道方向力制御部120は、1対のハンドル14の各々が互いに逆方向に操作されたか否かを判定する逆方向操作判定部130と、1対のハンドル14の各々にそれらの操作量に応じた大きさで、かつ、それらの操作量が減少する向きの力を付与する基準位置方向力付与制御部132と、1対のハンドルの各々に互いに逆方向に操作された状態において、それらの操作を制限する逆方向操作制限部134とを備えている。なお、軌道方向力制御部120において決定されたFSおよび転舵制御部122において決定された転舵量偏差Δθは、コンピュータ102からECU100が有する供給電流決定部150に出力され、それらに基づく1対の軌道方向力付与装置70のモータ60R,60Lへの供給電流IHR,IHLおよび転舵装置12の転舵モータ24への供給電流ISが決定される。それら供給電流IHR,IHL,ISは、それぞれ駆動回路であるインバータ152R,152L,154を介して、モータ60R,60L,転舵モータ24に供給される。また、ECU100が上記のような機能を有することから、本実施例においては、前記1対の軌道方向力付与装置70と上記逆方向操作制限部134とを含んで、1対のハンドル14の操作を制限する操作制限装置が構成されているのである。
ちなみに、本ステアリングシステムのECU100においては、軌道方向力制御プログラムのS1,S5,S6の処理を実行する部分を含んで基準位置方向力付与制御部132が構成され、S6,S7の処理を実行する部分を含んで逆方向操作制限部134が構成されている。
以上説明したように、本ステアリングシステムによれば、例えば、車両が急発進させられた場合における運転者の後方への移動、あるいは、車両に急ブレーキがかけられた場合における運転者の前方への移動に伴って、1対のハンドル14に操作が入力された場合であっても、上記操作制限装置によって1対のハンドル14は略動かされず、それらの操作位置の変動を回避することが可能である。本ステアリングシステムは、そのような場合に限らず、転舵における互いに逆方向の操作された場合に、ハンドル14の各々の操作を制限するため、適切な操舵を担保することが可能となる。
<第2実施例>
第2実施例の車両用ステアリングシステムは、そのハード構成が、1対の操作方向力検知器としての操作トルクセンサ80を備えていないことを除いて、第1実施例のシステムと同様の構成であるため、本実施例の説明においては、第1実施例のシステムと同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するものとする。本実施例のシステムは、第1実施例のシステムとはECUによる制御が異なるものであるため、本実施例のECUによる制御ついて、以下に説明する。
第2実施例の車両用ステアリングシステムは、そのハード構成が、1対の操作方向力検知器としての操作トルクセンサ80を備えていないことを除いて、第1実施例のシステムと同様の構成であるため、本実施例の説明においては、第1実施例のシステムと同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するものとする。本実施例のシステムは、第1実施例のシステムとはECUによる制御が異なるものであるため、本実施例のECUによる制御ついて、以下に説明する。
本実施例は、1対のハンドル14の各々が互いに逆方向に操作されたか否かを判定する方法が、第1実施例の判定方法とは相違する。本実施例においては、1対のハンドル14の各々に逆方向への変動があったか否かで判定されるのであり、具体的には、右側ハンドル14Rの操作角変化量ΔδRおよび左側ハンドル14Lの操作角変化量ΔδLに基づいて判定されるのである。より詳しく説明すれば、操作角変化量ΔδR,ΔδLは、反時計回りに操作された場合に正の値となり、時計回りに操作された場合に負の値となるため、それらの積が負である場合に1対のハンドル14の各々が互いに逆方向に操作されたと判定される。そのような場合には、第1実施例と同様に、それらハンドル14に付与する軌道方向力FSR,FSLが、操作制限力FS0あるいは−FS0(図における二点鎖線)とされ、その操作制限力FS0(あるいは−FS0)を発揮するように、モータ60R,60Lへの供給電流IHR,IHLが決定される。
上述した軌道方向力制御は、図10にフローチャートを示す軌道方向力制御プログラムが実行されることによって行われる。本実施例の軌道方向力制御プログラムは、図7に示した第1実施例の軌道方向力制御プログラムと類似するものであるが、S44において、S42で取得された操作角変化量ΔδR,ΔδLの積に基づいて判定されるようになっている。逆方向に操作されたと判定された場合には、S47において、軌道方向力FSR,FSLが、操作力FHR,FHLの方向に応じて操作制限力FS0あるいは−FS0とされ、S48において逆方向操作フラグfが1とされる。また、このS48においては、1回前のプログラム実行時の操作角が、基準操作角δR0,δL0とされるようになっている。これら基準操作角δR0,δL0は、S49における逆方向操作制限制御を継続するか否かの判定に用いられるものであり、互いに逆方向に操作された1対のハンドル14の少なくとも一方が、基準操作角δR0,δL0となる位置まで戻された場合に、逆方向操作制限制御から基準位置方向力付与制御に戻されるようになっている。
10:操作装置 12:転舵装置 14,14R,14L:ハンドル(操作部材) 24:転舵モータ 40:転舵量センサ 60,60R,60L:電動モータ(動力源) 70,70R,70L:軌道方向力付与装置 72,72R,72L:操作角センサ 80,80R,80L:操作トルクセンサ(操作方向力検知器) 100:ステアリング電子制御ユニット(ECU,制御装置) 120:軌道方向力制御部 122:転舵制御部 132:基準位置方向力付与制御部 134:逆方向操作制限部
Claims (4)
- それぞれが、設定された軌道に沿って互いに独立して操作可能とされるとともに、車両が右旋回する方向の車輪の転舵に対応する第1方向と左旋回する方向の車輪の転舵に対応する第2方向とに操作可能とされた1対の操作部材と、
車輪を転舵する転舵装置と、
前記1対の操作部材の各々のその各々に対応する前記軌道上に設定された基準操作位置からの操作量に基づいて車輪の目標転舵量を決定するとともに車輪の転舵量が目標転舵量となるように前記転舵装置を制御する転舵制御部を有する制御装置と
を備えた車両用ステアリングシステムであって、
前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する操作制限装置を備えた車両用ステアリングシステム。 - 当該ステアリングシステムが、
それぞれが、動力源を備え、その動力源が制御されることによって前記1対の操作部材の各々に対して、その各々について設定された軌道に沿った方向の力である軌道方向力を付与する1対の軌道方向力付与装置を備え、
前記制御装置が、前記1対の軌道方向力付与装置の各々の動力源を制御することで軌道方向力を制御する軌道方向力制御部を有する請求項1に記載の車両用ステアリングシステム。 - 前記軌道方向力制御部が、前記1対の操作部材が互いに逆方向に操作された状態において、前記1対の軌道方向力付与装置の各々が有する動力源を制御することで、それら1対の操作部材の各々の操作を制限する逆方向操作制限部を有し、
前記操作制限装置が、前記1対の軌道方向力付与装置と前記逆方向操作制限部とを含んで構成された請求項2に記載の車両用ステアリングシステム。 - 当該ステアリングシステムが、
前記1対の操作部材の各々に対して設けられてそれら1対の操作部材の各々に加わる操作力の方向を検知する1対の操作力方向検知器を備え、前記操作制限装置が、それら1対の操作力方向検知器の検知結果に基づいて前記1対の操作部材の逆方向の操作を制限するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006030735A JP2007210383A (ja) | 2006-02-08 | 2006-02-08 | 車両用ステアリングシステム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006030735A JP2007210383A (ja) | 2006-02-08 | 2006-02-08 | 車両用ステアリングシステム |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102021003987A1 (de) | 2021-08-03 | 2021-09-23 | Daimler Ag | Lenkhandhabe für einen Kraftwagen |
US20220315091A1 (en) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | Toyoda Gosei Co., Ltd. | Steering wheel |
US20230093177A1 (en) * | 2020-03-05 | 2023-03-23 | Kabushiki Kaisha Tokai-Rika-Denki-Seisakusho | Operation device |
-
2006
- 2006-02-08 JP JP2006030735A patent/JP2007210383A/ja not_active Withdrawn
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US20230093177A1 (en) * | 2020-03-05 | 2023-03-23 | Kabushiki Kaisha Tokai-Rika-Denki-Seisakusho | Operation device |
US20220315091A1 (en) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | Toyoda Gosei Co., Ltd. | Steering wheel |
US11608103B2 (en) * | 2021-03-30 | 2023-03-21 | Toyoda Gosei Co., Ltd. | Steering wheel |
DE102021003987A1 (de) | 2021-08-03 | 2021-09-23 | Daimler Ag | Lenkhandhabe für einen Kraftwagen |
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