JP2007208110A - 結晶化装置、結晶化装置の振動評価方法、および結晶化装置の光学ベース設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶化装置において、サブミクロンの高い精度の位置決めを行、さらに、除振装置の振動を低減し、光学ベース部の剛性を高める。
【解決手段】基板ステージを支持する定盤を基板ステージの駆動に合わせてフィードフォワード制御することによって、除振装置の振動を低減する。また基板ステージを駆動した際の定盤の動きと同じ動きで光学ベース部を動かしたときの変位を求めることで光学ベース部を評価し、この評価に基づく光学ベース部の設計を繰り返すことで、光学ベース部の剛性を高める。結晶化装置1は、光学系を支持する光学ベース部4と、基板ステージ3及び光学ベース部4を支持し固定する定盤5と、この定盤5を支持する除振装置6とを備え、基板ステージ3の動作時においてこの基板ステージの動作に基づいて除振装置6をフィードフォワード制御することによって、除振装置6による振動低減を向上させる。
【選択図】図1
【解決手段】基板ステージを支持する定盤を基板ステージの駆動に合わせてフィードフォワード制御することによって、除振装置の振動を低減する。また基板ステージを駆動した際の定盤の動きと同じ動きで光学ベース部を動かしたときの変位を求めることで光学ベース部を評価し、この評価に基づく光学ベース部の設計を繰り返すことで、光学ベース部の剛性を高める。結晶化装置1は、光学系を支持する光学ベース部4と、基板ステージ3及び光学ベース部4を支持し固定する定盤5と、この定盤5を支持する除振装置6とを備え、基板ステージ3の動作時においてこの基板ステージの動作に基づいて除振装置6をフィードフォワード制御することによって、除振装置6による振動低減を向上させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、非晶質もしくは多結晶半導体薄膜に光線を用いて溶融し結晶化させる結晶化装置、およびこの結晶化装置の振動を抑制するための結晶化装置の振動評価方法、および結晶化装置の光学ベース設計方法に関する。
ガラス基板等の絶縁体上に形成された非結晶半導体層を結晶化させて結晶質半導体層を得、この結晶質半導体層を活性層とした薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)を形成する技術が知られている。
例えば、アクティブマトリックス型液晶表示装置では、シリコン膜等の半導体膜を設けガラス基板上に薄膜トランジスタを形成し、この薄膜トランジスタを切換え表示を行うためのスイッチング素子として用いている。
薄膜トランジスタの形成は、非晶質又は多結晶などの非単結晶半導体薄膜の結晶化工程を含んでいる。この結晶化技術として、例えば、大エネルギーの短パルス・レーザー光を用いて非単結晶半導体薄膜の照射領域を溶融して、結晶化するレーザー結晶化技術が知られている。
現在、生産に供されているレーザー結晶化装置では、長尺ビーム(例えば、500μm×300mm)形状で均一な強度分布のレーザー光を非晶質シリコンに照射する手法を採用している。しかしながら、この手法では、得られた半導体膜の結晶粒径が0.5μm以下と小さい。そのため、TFTのチャネル領域に結晶粒界が存在することになり、TFTの特性が抑制されるなど性能に限界がある。
このTFTの性能を向上させるために、大きな結晶粒を有する高品質な半導体膜を製造する技術が要求されている。この要求を満足させる結晶化法として、各種のレーザー結晶化技術の中で、特に、位相変調して形成した逆ピークパターン状の光強度分布を有するエキシマ・レーザー光を非単結晶半導体薄膜に照射して結晶化する技術(Phase Modulated Excimer Laser Annealing:PMELA)が注目されている。
PMELA技術は、所定の光強度分布を持つエキシマ・レーザー光を、非単結晶半導体薄膜に照射し、この半導体膜の照射部を溶融して、結晶化する方法である。所定の光強度分布を持つエキシマ・レーザー光は、位相変調素子、例えば位相シフタ等の位相変調素子により入射レーザー光を位相変調させることにより得られる。非単結晶半導体薄膜は、例えば、ガラス基板上に形成した非晶質シリコン若しくは多結晶シリコンの薄膜である。
現在開発されているPMELA技術では、1回の照射で数mm角程度の大きさの領域を溶融・結晶化させる。この結晶化非単結晶半導体薄膜処理により、数μmから10μm程度の大きさで比較的一様な結晶粒を有する品質の優れた結晶化シリコン薄膜が形成されている(例えば、非特許文献1参照)。この手法で形成した結晶化シリコン薄膜に作成されたTFTは、優れた電気特性を有することが示されている。
このPMELA結晶化技術は、レーザー光の使用効率が高く、大粒径の結晶が得られるという優れた特徴を有する。しかしながら、安定した電気特性を得るためには、結晶粒の位置決めが必要であり、大面積の半導体膜を結晶化させるには、いわゆるステップ・アンド・リピート照射方式と呼ばれる、非単結晶半導体膜にレーザー光を照射後、次の照射位置までガラス基板を移動させ停止させた後再びレーザー光を照射する工程を繰り返す照射方式が用いられている。
井上弘毅、中田充、松村正清;電子情報通信学会論文誌 Vol.J85-C,No.8, pp.624-629, 2002、「シリコン薄膜の振幅・位相制御エキシマ・レーザー溶融再結晶化方法−新しい2−D位置制御大結晶粒形成法−」
井上弘毅、中田充、松村正清;電子情報通信学会論文誌 Vol.J85-C,No.8, pp.624-629, 2002、「シリコン薄膜の振幅・位相制御エキシマ・レーザー溶融再結晶化方法−新しい2−D位置制御大結晶粒形成法−」
PMLA結晶化装置は、被処理基板を支持すると共にXY方向に移動自在な基板ステージを備え、この基板ステージによってレーザー光を基板上で二次元走査させている。基板ステージは、連続かつ往復動作を繰り返すことによって走査を行うため、この走査を安定させるために重量のある定盤上に載置されている。しかしながら、基板ステージは、数百kgの重量を有し、かつ、高速で(例えば、500mm/sec)で連続して往復移動するため、この基板ステージを支持する定盤や、この定盤上に設けられた光学ベース部などの結晶化装置全体は、この基板ステージの動きと反対方向の抗力を受けて変位することになる。なお、ここで、光学ベース部は、前記したレーザー光を照射する光学系を支持する構造部材である。
図9は、結晶化装置の概略構成を説明するための図である。図9において、定盤5上には基板ステージ3及び光学ベース部4が設けられ、光学ベース部4に設けられた光学系によって、基板ステージ3上に載置された被処理基板(図示していない)にレーザー光を走査しながら照射し、これによって被処理基板の半導体薄膜を結晶化する。
上記したように、基板ステージ3が高速で往復運動を連続して繰り返すと、定盤5及び光学ベース部4はこの基板ステージ3からの抗力を受けて変位する。光学ベース部4が変位すると、この光学ベース部4上に設けられた光学系と基板ステージ3との間に変位が生じ、レーザー光の照射位置に誤差が生じる要因となる。
そのため、定盤5の振動を抑制するために、定盤5と床面との間に除振装置6を設けられている。
基板ステージが連続送りされることで発生する振動は、この基板ステージを支持する定盤を介して除振装置に伝わる。この基板ステージから伝わる振動は、除振装置にとっては外乱と見なせる。
図10は、除振装置を備える結晶化装置の振動状態を説明するための図である。なお、図10では、振動のみについて示している。図10において、定盤5上に基板ステージ3及び光学ベース部(門型)4が設けられ、この定盤5は除振装置3によって支持されている。
基板ステージ3に駆動信号を入力すると、基板ステージ3が有する伝達関数Gstageに応じた振動が発生する。この振動は定盤5に伝達され、さらに除振装置6に伝達される。この基板ステージ3から伝達された振動は、除振装置6にとって外乱要素となる。なお、ここでは、基板ステージ3から定盤5を経て除振装置6に至る経路の伝達関数は省略している。
除振装置6では、基板ステージ3からの外乱を受け、除振装置6が有する伝達関数Gabsに応じた振動が発生する。この除振装置6で発生した振動は、再び定盤5を伝達され、さらに、定盤5上に設置した光学ベース部(門型)4に伝達される。光学ベース部4は、この振動を受けて変位する。
除振装置6の伝達関数Gabsは、除振装置が有するバネ定数等によって定まり、振動はこの定数に応じて変化する。しかしながら、連続走査では基板ステージが加減速されるため、除振装置6によっても完全な除振は困難であり、0.1mm程度の振動が発生する。半導体薄膜の結晶化ではサブミクロンオーダーの位置精度が求められるが、除振装置6による受動的な制振では0.1mm程度の振動が残るため、サブミクロンオーダーの位置精度を実現することはできず、定盤の振動をさらに小さくすることが求められる。
また、光学ベース部4は定盤5上に設けられているため、光学ベース部4がこの定盤5に対して追随して変位した場合には、基板に対するレーザー光の照射位置の位置ずれを低減させることができる。しかしながら、光学ベース部4の剛性が低い場合には、定盤5の変位に対する光学ベース部4の追従性が不十分となり、結局、基板に対するレーザー光の照射位置に位置ずれが生じることになる。
そこで、光学系を支持する光学ベース部は、例えば、0.1μm以下のサブミクロンオーダーで追随する高剛性が求められ、この高剛性が得ることができる構造となるにように設計することが求められる。
従来、結晶化装置が備える光学ベース部(門型)の設計では、例えば、その光学ベース部の振動振幅を低くすることを設計上の指標として行っている。図11は、光学ベース部の振動数と振動強度との関係を概略的に示している。光学ベース部はその構造に依存して定まる固有振動数を持ち、この固有振動数において最も大きな振幅を表す。この固有振動数における振動振幅が低いほど剛性が高いと推定されるが、振動振幅は加振する振幅によっても変化するため、単なる目安にしかならず、光学ベース部の剛性を評価するものではない。そのため、設計内容と得られる剛性との関係を確認することができず、例えば、材料や寸法や形状を選択することで光学ベース部の剛性を高めることができるが、得られる剛性が必要以上のものとなり産業上の経済性を欠くおそれがあるといった問題がある。
したがって、上記したように、サブミクロンの高い精度の位置決めを行うために、除振装置の振動を低減すること、光学ベース部の剛性を高めることが求められる。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、結晶化装置において、サブミクロンの高い精度の位置決めを行うことを目的とする。
さらに、高い位置決め精度を得るために除振装置の振動を低減することを目的とし、また、高い位置決め精度を得るために光学ベース部の剛性を高めることを目的とする、
本発明は、基板ステージを支持する定盤を基板ステージの駆動に合わせてフィードフォワード制御することによって、除振装置の振動を低減する。また、本発明は、基板ステージを駆動した際の定盤の動きと同じ動きで光学ベース部を動かしたときの変位を求めることで光学ベース部を評価し、この評価に基づく光学ベース部の設計を繰り返すことで、光学ベース部の剛性を高めることができる。
本発明の結晶化装置は、レーザー光を照射する照明光学系と、このレーザー光を所定の光強度分布の光線に変調する光変調素子と、この光変調素子の変調光を基板上に結像させる結像光学系を含む光学系と、基板を支持する基板ステージとを備え、基板に設けられた薄膜を変調光により溶融して結晶化させる結晶化装置である。この結晶化装置は、光学系を支持する光学ベース部と、基板ステージ及び光学ベース部を支持し固定する定盤と、この定盤を支持する除振装置とを備え、基板ステージの動作時においてこの基板ステージの動作に基づいて除振装置をフィードフォワード制御することによって、除振装置による振動低減を向上させる。
定盤を介して基板ステージから伝達される振動は、除振装置にとって外乱要素として働く。本発明では、除振装置を基板ステージと同様の駆動パターンで同時に駆動することでフィードフォワード制御を行い、このフィードフォワード制御によって外乱要素を相殺し、除振装置での振動を低減する。
また、本発明の振動評価方法は、前記したと同様に結晶化装置において、光学系を支持する光学ベース部と基板ステージとを支持し固定する定盤を、基板ステージの動作に基づいてフィードフォワード制御し、このフィードフォワード制御によってシミュレートして定盤の運動を取得する。
本発明の振動評価方法は、シミュレーションで得られた定盤の運動を振動条件とし、この振動条件を用いたシミュレーションによって光学ベース部を振動させることで光学ベース部の運動を取得する。
ここで、光学ベース部の剛性が低い場合には、定盤の変位は光学ベース部の変位から大きくずれることになり、一方、光学ベース部の剛性が高い場合には、定盤の変位と光学ベース部の変位とは近いものとなる。したがって、光学ベース部の剛性は、このシミュレーションで得られた光学ベース部の変位を定盤の変位と比較することで行うことができ、定盤と光学ベース部の変位の相対変位量を求めることで、光学ベース部を評価することができる。
この評価によれば、シミュレーションで得られた定盤の運動を共通の振動条件としているため、種々の設計による光学ベース部の剛性を同一基準で評価することができる。
また、本発明は上記した振動評価方法を光学ベース部の設計に適応することができる。
本発明によれば、除振装置の振動を低減することができ、これによってサブミクロンの高い位置決め精度を得ることができる。
また、本発明によれば、光学ベース部の剛性を高めることができ、これによってサブミクロンの高い位置決め精度を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1を用いて本発明の結晶化装置の一構成例について説明する。
本発明の結晶化装置1は、レーザー光を照射する照明光学系2bと、照明光学系2bで照射されたレーザー光を所定の光強度分布の光線に変調する光変調素子2cと、光変調素子2cの変調光を基板(被処理基板20)上に結像させる結像光学系2dと、基板(被処理基板20)を支持すると共に基板(被処理基板20)上の二次元位置を定める基板ステージ3とを備える。結像光学系2dを介して基板(被処理基板20)に照射された変調光は、基板に設けられた薄膜を溶融して結晶化させる。
照明光学系2b、光変調素子2c、及び結像光学系2dは光学系2を構成する。また、照明光学系2bはエキシマ照明光学系を構成し、光変調素子2cを照明する結晶化用レザー光を射出、調整する。照明光学系2bは、レーザー光源2aから出射されたエキシマ・レーザー光のビームを拡大するビーム・エキスパンダや、面内の光強度を均一化するホモジナイザを備えることができる。なお、図では、ビーム・エキスパンダ及びホモジナイザは示していない。
光変調素子2cは位相シフタを用いることができ、結晶化用レーザー光を位相変調して所望の光強度分布、例えば、逆ピーク・パターンの光強度分布を有する光に変調する。
結像光学系2dは、光変調素子2cにより位相変調された結晶化用レーザー光を結晶化させる非単結晶半導体薄膜に縮小照射する。図1では、光変調素子2cを照明光学系2bと結像光学系2dとの間に設置したプロジェクション方式を示しているが、光変調素子2cを被処理基板20に近接して設置するプロキシミティ方式とすることもできる。
レーザー光源2aは、被処理基板20に設けられた非単結晶半導体膜、例えば、非晶質若しくは多結晶半導体膜を溶融するために充分なエネルギー、例えば、非単結晶半導体膜上で1J/cm2を有する光を出力する。レーザー光源2aは、例えば、エキシマ・レーザー光源であり、短パルス、例えば、半値幅が約25から30nsecのパルス・レーザー光を出力する。レーザー光は、例えば、波長248nmのKrFエキシマ・レーザー光、波長308nmのXeClエキシマ・レーザー光が好ましい。
エキシマ・レーザー光源は、例えば、発振周波数が例えば100Hzから300Hzのパルス発振型である。
ビーム・エキスパンダは、入射されたレーザー光を拡大するもので、例えば、拡大する凹レンズと平行光にする凸レンズとにより構成することができる。また、ホモジナイザは、入射したレーザー光のXY断面方向の寸法を決定し、かつ決定した形状内の光強度分布を均一にする機能を有する。例えば、X方向シリンドリカル・レンズをY方向に複数個並べ、Y方向に並んだ複数の光束を形成し、X方向コンデンサ・レンズで各光束をY方向に重ね合わせて再分布させる。同様に、Y方向シリンドリカル・レンズをX方向に複数並べ、X方向に並んだ複数の光束を形成し、Y方向コンデンサ・レンズで各光束をX方向に重ね合わせて再分布させる。ホモジナイザによりエキシマ・レーザー光は、所定の角度広がりをもち断面内の光強度が均一化された照明光に調光される。
位相シフタは、位相変調素子11の一例であり、例えば、石英ガラス基板に段差をつけたものである。この段差の境界でレーザー光の回折と干渉をおこさせ、レーザー光強度に周期的な空間分布を付与し、例えば、左右で180°の位相差を付ける。左右で180°の位相差を付けた位相シフタは、入射光を左右対称な逆ピーク状光強度分布に位相変調する。
段差(厚み分布)dは、レーザー光の波長をλ、位相シフタの透明基板の屈折率nとしたとき、d=λ/2(n−1)で求められる。この関係から、位相シフタは、例えば、石英ガラス基板に所定の位相差に対応する段差dを形成することにより製造することができる。例えば、石英基板の屈折率を1.46とすると、KrFエキシマ・レーザー光の波長が248nmであるから、180°の位相差を付けるための段差は269.6nmになる。石英ガラス基板の段差は、選択エッチングやFIB(Focused Ion Beam)加工により形成することができる。位相シフタは、例えば、入射光を位相変調して逆ピーク状光強度分布を形成するように段差が形成されており、エキシマ・レーザー光の位相を変調する。この結果、半導体膜を照射するレーザー光は、位相のシフト部(段差)に対応した箇所が強度変調された逆ピーク・パターンの光強度分布となる。この方法によれば、他の方法で用いられるようなメタル・パターンによるエキシマ・レーザー光の遮蔽なしに所定の光強度分布を実現できる。
位相シフタを透過したレーザー光は、収差補正されたエキシマ結像光学系2dにより位相シフタ(光変調素子2c)と共役な位置に設置された被処理基板20上に、所定の光強度分布で結像する。エキシマ結像光学系2dは、例えば、複数枚のフッ化カルシウム(CaF2)レンズ及ぴ合成石英レンズからなるレンズ群により構成される。エキシマ結像光学系12は、例えば、縮小率:1/5、N.A.:0.13、解像力:2μm、焦点深度:±10μm、焦点距離:30mmから70mmの作動距離を有する片側あるいは両側テレセントリックレンズである。
また、結晶化の処理を受ける被処理基板20は、一般に、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の絶縁基板、シリコン等の半導体基板(ウェーハ)等の保持基板に絶縁膜を介して非単結晶半導体膜(例えば、非晶質シリコン膜、多結晶シリコン膜、スパッタされたシリコン膜、シリコン・ゲルマニウム膜、若しくは脱水素処理をした非晶質シリコン膜)を形成し、この非単結晶半導体膜上にキャップ膜として絶縁膜を設けたものである。
非単結晶半導体膜の膜厚は、例えば脱水素処理をした非晶質シリコン膜の場合には30nmから300nmであり、例えば、50nmである。絶縁膜は、非単結晶半導体膜を結晶化する際に、保持基板から好ましくない不純物が非単結晶半導体膜に拡散することを防止するために、あるいは、レーザー照射によって生じるジュール熱を蓄積させる目的で設けられた膜である。
キャップ絶縁膜は、レーザー光に対するキャップ絶縁膜の透過特性及び光吸収特性を利用して、結晶化のために非単結晶半導体膜が受光して溶融したときの熱を蓄える機能を有する。キャップ絶縁膜の蓄熱効果は、非単結晶半導体膜の溶融領域に大粒径(5μm以上)の結晶化を可能にする。キャップ絶縁膜は、結晶化の効率を高めるためのものであるが、省賂することができる。
基板ステージ3は、X方向に移動自在のX軸ステージ3aとY方向に移動自在のY軸ステージ3bとを備え、XYステージコントローラ11によって駆動制御される。この基板ステージ3は、定盤5上に固定して設けられる。また、この定盤5上には、前記した光学系2を支持する光学ベース部4が固定して設けられる。光学ベース部4は、その形状から門型と呼ばれることがある。
さらに、定盤5は除振装置6によって床面(図示していない)上に取り付けられる。除振装置6はバネ要素やゲイン要素を備え、除振装置制御コントローラ12によって駆動され、定盤5及びその定盤5上に設けた基板ステージ3や光学ベース部4が、床面等の基準面に対して振動しないように制御する。なお、XYステージコントローラ11や除振装置制御コントローラ12は、上位の制御PC10によって制御することができる。
はじめに、図2,図3を用いて本発明の結晶化装置における除振装置のフィードフォワード制御について説明する。
本発明の結晶化装置は、基板ステージ及び定盤を支持する除振装置をフィードフォワード制御することによって、基板ステージ及び定盤の振動を抑制する。
図2は、結晶化装置が備える除振装置のフィードフォワード制御を説明するための図である。なお、図2は、前記した図10の制御ブロック図と対比するものであり、フィードフォワード制御点を特徴としている。また、図2は図10と同様に振動のみを示している。
図2において、定盤5上に基板ステージ3及び光学ベース部(門型)4が設けられ、この定盤5は除振装置3によって支持されている。
基板ステージ3に駆動信号を入力すると、基板ステージ3が有する伝達関数Gstageに応じた振動が発生する。この振動は定盤5に伝達され、さらに除振装置6に伝達される。この基板ステージ3から伝達された振動は、除振装置6にとって外乱要素となる。なお、ここでは、基板ステージ3から定盤5を経て除振装置6に至る経路の伝達関数は省略している。
一方、除振装置6では、基板ステージ3からの振動を外乱要素として受ける。また、除振装置6は、基板ステージ3に入力する駆動信号と同信号を入力して駆動する。この駆動信号によって、除振装置6は駆動系が有する伝達関数Gdriveに応じた振動を生成し、基板ステージ3からの振動と重畳される。このとき生成される振動は、フィードフォワード要素として加えられる。したがって、除振装置6では、外乱要素にフィードフォワード要素が重畳された振動が発生することになる。
このとき、フィードフォワード制御により、外乱要素はフィードフォワード要素で相殺され、除振装置6で発生する振動は低減される。
この除振装置6で低減された振動は、再び定盤5に伝達され、定盤5上に設置した光学ベース部(門型)4に伝達される。光学ベース部4はこの振動を受けて変位する。
除振装置6の伝達関数Gdriveは、除振装置が有するバネ定数やゲイン定数等によって定まり、これらの定数を調整することによって振動の減少の程度を調整する。
図3のフローチャートを用いて本発明の結晶化装置におけるにフィードフォワード制御の動作例について説明する。
はじめに、除振装置が有するバネ定数やゲイン定数を初期値に初期設定し(S1)、基板ステージを駆動する駆動プログラムを生成する。この駆動プログラムは、基板ステージの有効領域時間を定める等速送り領域、走査間隔を定める送りピッチ、等速送り速度、等速送り速度の前後において加減速する際の加速度等を基板ステージに指示するためのプログラムである(S3)。
制御PC10は、この駆動プログラムは、内の記憶手段に格納しておき、動作時に駆動プログラムを読み出して、XYステージコントローラ11及び除振装置制御コントローラ12に同時に入力する(S4)。
XYステージコントローラ11は、この駆動プログラムに基づいて駆動信号を生成し、基板ステージ3を駆動する。また、除振装置制御コントローラ12も同様に、駆動プログラムに基づいて駆動信号を生成し、除振装置6を駆動する。除振装置6は基板ステージ3と同様の駆動パターンに従って動作し、フィードフォワード要素を生成する。
基板ステージ3及び定盤5は共に除振装置6上に置かれた構成であり、基板ステージ3及び定盤5を剛体と仮定すると、基板ステージ3及び定盤5はフィードフォワード制御にされ、基板ステージ3が振動することにより変位を低減させることができる(S5)。
ここで、基板ステージ及び定盤5の変位を測定する。この変位は、床面(図示していない)等の基準面に対する変位である(S6)。
測定した変位が予め設定した変位量(例えば、0.1mm)と比較し(S6)、変位が設定量を超えている場合には、除振装置のバネ定数やゲイン定数を変更して(S6)、前記したS2〜S7の工程を繰り返す。
S6の工程において、測定した変位が設定量以下となった場合には、除振装置のバネ定数及びゲイン定数をそのときの値で設定する。
次に、図4〜図8を用いて本発明の結晶化装置における光学ベース部の評価方法及び設計方法について説明する。
図4は、本発明の結晶化装置における光学ベース部の評価及び設計を説明するための概略図である。図4(a)は、本発明の結晶化装置の概略構成を示している。図4(a)において、定盤5上には基板ステージ3及び光学ベース部4が設けられ、光学ベース部4の設けられた光学系によって、基板ステージ3上に載置された被処理基板(図示していない)にレーザー光を走査しながら照射し、これによって被処理基板の半導体薄膜を結晶化する。
本発明による光学ベース部の評価及び設計では、基板ステージ3に駆動信号を入力して駆動させて、この駆動による運動で得られる基板ステージ3及び定盤5の変位Aと(図4(b))、その基板ステージ3の運動と同じ運動を光学ベース部4に加え、この運動の付加で得られる光学ベース部4の変位Bと(図4(c),(d))を用い、この変位Aと変位Bから得られる相対変位量Cを評価量として、光学ベース部の剛性を評価し、所定の剛性が得られるように光学ベース部を設計する。
なお、上記した基板ステージ3の動作において、前記したように除振装置に対しても同様の駆動信号を入力するフィードフォワード制御を行うことができる。
図4(c)と図4(d)は異なる設計による光学ベース部における変位を示している。図4(c)の光学ベース部4Aでは、図4(b)で得られる基板ステージ3の運動と同じ運動を印加したとき変位量B1が得られる。この変位量B1と基板ステージ3の運動による変位量Aとの相対変位量はC1で表される。また、図4(d)の光学ベース部4Bでは、図4(b)で得られる基板ステージ3の運動と同じ運動を印加したとき変位量B2が得られる。この変位量B2と基板ステージ3の運動による変位量Aとの相対変位量はC2で表される。
光学ベース部4Aと光学ベース部4Bとは、求めた相対変位量C1とC2とによって剛性を比較することができる。両相対変位量C1とC2は、同じ運動に基づいて行う比較であるため、同じ比較基準で比較することができる。
また、予め光学ベース部に設計基準として相対変位量Cを定め、この相対変位量Cを比較基準とすることで、複数の光学ベース部の剛性を同一の基準で評価することができる。
図5のフローチャートを用いて本発明の結晶化装置におけるに光学ベース部の評価及び設計の動作例について説明する。
前記した駆動プログラムを実行して駆動信号を生成し(S11)、生成した駆動信号を基板ステージ及び除振装置に入力してフィードフォワード制御を行う(S12)。このフィードフォワード制御による動作によって、基板ステージ及び定盤の運動をシミュレートする(S13)。このシミュレーションで得られた基板ステージ及び定盤の基準面(例えば、床面)に対する変位量Aを求めておく(S14)。
光学ベース部を初期設計し(S15)、前記S13で得られた基板ステージ及び定盤の運動に基づいて、S14で設計した光学ベース部の運動をシミュレートする(S16)。このシミュレーションで得られた振動結果に基づいて光学ベース部の振動解析を行う。この振動解析は、振動の時間変化を表す時刻歴応答を解析してその変位を求めるものである(S17)。
解析結果から光学ベース部の基準面(例えば、床面)に対する変位量Bを求める(S18)。S14の工程で求めておいた変位量AとS18で求めた変位量Bとを用いて、基板ステージ及び定盤に対する光学ベース部の相対変位量Cを解析する(S19)。
相対変位量Cを設定値と比較し(S20)、相対変位量が設定値内でない場合には、S15の工程に戻って光学ベース部を設計し、S16〜s20の工程を繰り返す。
図6は、前記したS12〜S14の工程による変位量Aの測定を説明するための図である。図6において、制御PC10は、駆動プロクラムを基板ステージコントローラ11と除振装置制御コントローラ12に送る。各コントローラ11,12は、同じ駆動パターンの駆動信号をそれぞれ基板ステージ3と除振装置6に出力し、同じ駆動パターンで駆動させ、フィードフォワード制御を行う。そして、このフィードフォワード制御による基板ステージ3及び定盤5の運動による変位量Aを基準面に対して求める。
また、図7は、前記したS16〜S18の工程による変位量Bの測定を説明するための図である。ここでは、光学ベース部4の運動をシミュレートする。この光学ベース部4のシミュレーションは、図6に示したフィードフォワード制御による基板ステージ3及び定盤5の運動と同じ運動を行わせる。そして、この運動による光学ベース部4の運動による変位量Bを基準面に対して求める。
図8は、各動作における時間変化を示している。なお、図8(a)〜図8(c)は基板ステージの運動を示し、図8(d)は定盤及び基板ステージの変位を示し、図8(e)は光学ベース部の変位を示し、図8(f)は定盤と光学ベース部との相対誤差を示している。
図8(a)は基板ステージに対する加速度入力を示している。この加速度入力により、基板ステージは図8(b)に示す速度で移動し、図8(c)に示すように位置となる。なお、図中の破線で挟まれる領域は、基板ステージの等速領域を表している。
この基板ステージの運動により、定盤は図8(d)に示す変位変化を示し、光学ベース部は図8(e)に示す変位変化を示す。ここで、変位は、理想的な位置からのずれ量を示している。光学ベース部の変位量は、定盤の変位量に光学ベース部の剛性特性により生じる変位量が加算されたものとして現れる。
ここで、基板ステージは定盤上に設けられ、基板ステージと定盤の剛性が高いと見なせる場合には、定盤の変位と基板ステージの変位は同じと見なすことができる。
図8(f)は光学ベース部の変位と定盤(基板ステージ)の変位との差を表している。この変位の相対誤差は、光学ベース部の剛性特性を表すものと見ることができる。
したがって、この相対誤差が小さい場合には光学ベース部の剛性は高く、相対誤差が大きい場合には光学ベース部の剛性は低いと見ることができる。
結晶化装置では、レーザー光の光学系に対する位置ずれを0.1mm以下に抑制することで、光変調素子に入射する主光線の傾き(ヨーイング)による誤差を十分に許容する範囲内とすることができる。
また、基板ステージの連続動作中において、定盤に対する光学ベース部の相対変位は、レーザー光の基板への照射時の結像光学系の位置精度に相当する。したがって、定盤に対する光学ベース部の相対変位を0.1μm以下に抑えることで、数μmサイズの結晶粒をサブミクロンの位置精度で基板上に形成することができる。
また、サブミクロンで位置決めされた疑似単結晶粒の上にトランジスタを形成することによって、高い応答性を有する回路やデバイス(例えば、液晶表示デバイス)の形成が期待される。
本発明の振動制御は、結晶化装置に限らず、基板を高速・高精度に位置決めすることが求められる装置に適用することができ、半導体基板に所定に処理を施す半導体処理装置や、処理済みの半導体基板を測定する半導体基板測定装置にも適用することができる。
1…結晶化装置、2…光学系、2a…エキシマ・レーザー、2b…照明光学系、2c…光変調素子、2d…結像光学系、3…基板ステージ、3a…X軸ステージ、3b…Y軸ステージ、4…光学ベース部、5…定盤、6…除振装置、10…制御PC、11…基板ステージコントローラ、12…除振装置制御コントローラ。
Claims (4)
- レーザー光を照射する照明光学系と、
前記レーザー光を所定の光強度分布の光線に変調する光変調素子と、
前記光変調素子の変調光を基板上に結像させる結像光学系を含む光学系と、
基板を支持する基板ステージとを備え、
基板に設けられた薄膜を変調光により溶融して結晶化させる結晶化装置において、
前記光学系を支持する光学ベース部と、
前記基板ステージ及び光学ベース部を支持し固定する定盤と、
前記定盤を支持する除振装置とを備え、
前記基板ステージの動作時において、前記除振装置を当該基板ステージの動作に基づいてフィードフォワード制御することを特徴とする結晶化装置。 - 前記フィードフォワード制御は、除振装置を基板ステージと同じ駆動パターンで基板ステージと同時に駆動することを特徴とする、請求項1に記載の結晶化装置。
- レーザー光を照射する照明光学系と、
前記レーザー光を所定の光強度分布の光線に変調する光変調素子と、
前記光変調素子の変調光を基板上に結像させる結像光学系を含む光学系と、
基板を支持する基板ステージとを備え、
基板に設けられた薄膜を変調光により溶融して結晶化させる結晶化装置において、
前記光学系を支持する光学ベース部と前記基板ステージとを支持し固定する定盤を、基板ステージの動作に基づいてフィードフォワード制御して定盤の運動をシミュレートし、
前記定盤の運動に基づいて前記光学ベース部の振動をシミュレートし、
前記定盤に対する前記光学ベース部の相対変位量を求め、
当該相対変位量に基づいて光学ベース部を評価することを特徴とする、結晶化装置の振動評価方法。 - レーザー光を照射する照明光学系と、
前記レーザー光を所定の光強度分布の光線に変調する光変調素子と、
前記光変調素子の変調光を基板上に結像させる結像光学系を含む光学系と、
基板を支持する基板ステージとを備え、
基板に設けられた薄膜を変調光により溶融して結晶化させる結晶化装置において、
前記光学系を支持する光学ベース部と前記基板ステージとを支持し固定する定盤を、基板ステージの動作に基づいてフィードフォワード制御して定盤の運動をシミュレートし、
前記定盤の運動に基づいて前記光学ベース部の振動をシミュレートし、
前記定盤に対する前記光学ベース部の相対変位量を求め、
当該相対変位量を評価値として光学ベース部を設計することを特徴とする、結晶化装置の光学ベース設計方法。
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