以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
図1に示すように本発明の実施の形態に係る無線通信システム10は、無線通信装置100と、無線通信装置200とを有し、例えばMIMO通信方式などにより、空間多重信号を送受信する。同図には、無線通信装置100、無線通信装置200ともに、4本ずつのアンテナを有し、無線通信装置100が4本のアンテナを用いて空間多重信号を送信し、無線通信装置200が4本のアンテナを用いて空間多重信号を受信する場合を示している。すなわち、無線通信装置100は各アンテナから送信信号を送信し、この送信信号は無線通信装置200に到達するまでに空間多重される。無線通信装置200は、各アンテナにて異なる伝搬路を介して伝播されてきた空間多重信号を受信する。
図2は、無線通信装置100および無線通信装置200の主要構成を示す図である。同図に示すように、無線通信装置100は、データ生成部110と、送信信号構成部120と、送信部130と、複数のアンテナ140−1〜N(ここでは、N=4)とを有する。また、無線通信装置200は、複数のアンテナ210−1〜M(M≧N、ここではM=4)と、受信部220と、第1信号分離部230と、第2信号分離部240と、受信信号処理部250とを有する。
データ生成部110は、送信データを生成し、送信信号構成部120に出力する。
送信信号構成部120は、データ生成部110で生成された1系統の送信データから、アンテナ140の本数に対応するN個の送信信号を生成する。
送信部130は、送信信号構成部120にて生成されたN個の送信信号のそれぞれに、所定の無線送信処理(D/A変換、アップコンバートなど)を施して、無線送信処理後の送信信号をそれぞれ異なるアンテナ140を介して送信する。
受信部220は、互いに異なる伝送信号(無線端末装置100の送信信号)が、空間多重された多重数Nの空間多重信号を複数の伝搬路を介して受信する。受信部220は、アンテナ210のそれぞれにて受信する空間多重信号ごとに、無線受信処理(ダウンコンバート、A/D変換など)を施して、無線受信処理後の空間多重信号を第1の信号分離部230に出力する。
第1信号分離部230は、無線受信処理後の空間多重信号に、所定の線形演算により粗い分離処理である第1の分離処理を施す。
第2信号分離部240は、第1の分離処理後の信号に、精密な分離処理である第2の分離処理を施して、無線通信装置100から送信された送信信号に対応する、N個の受信信号を取得する。
受信信号処理部250は、第2の信号分離部240からの受信信号のそれぞれに受信信号処理を施して、受信データを出力する。
ここで、通常、空間多重信号を分離する場合には、1段階の分離処理で受信信号に分離するが、本発明では、まず第1段階として粗い分離処理を行い、第2段階として精密な分離処理を行う。こうして従来1段階で行っていた分離処理を、後の段階に進むに連れ精密となる複数の段階に分けることにより、無線通信装置(100、200)のアンテナ数が増えても、すなわち空間多重信号の多重数が増えても、1つの段階の処理量が減り、各段階に従来の分離装置を用いることができるので、開発コストを削減することができる。特に、1段階の分離処理で受信信号を分離する場合には、空間多重信号の多重数が増えるに従って、分離装置が複雑となり、ハードウェアの規模も大きくなってしまうが、分離処理を複数段に分けることにより、ハードウェアの規模も相対的に小さくすることができる。
図3は、無線通信装置100の詳細な構成を示す図である。同図に示すように、送信信号構成部120は、符号化部121と、S/P変換部122と、インターリーバ123−1〜4と、変調部124−1〜4とを有する。送信部130は、送信部131−1〜4を有する。
符号化部121は、データ生成部110で生成された送信データ(データ系列z(n))を入力し、所定の符号化率で誤り訂正符号化を施して、誤り訂正符号化後の送信データ(符号化データ系列c(n))をS/P変換部122に出力する。
S/P変換部122は、誤り訂正符号化後の送信データを入力し、直並列変換を施して並列データ系列を生成する。ここでは、4本のアンテナ140−1〜4からそれぞれ異なる送信信号を送信するので、4つの並列データ系列が生成される。本実施の形態では、この並列データ系列(送信系列xn(k)、n=1〜4)が送信信号となる。S/P変換部122は、生成した4つの並列データ系列をそれぞれ異なるインターリーバ123−1〜4に出力する。
インターリーバ123は、入力される並列データ系列ごとにインターリーブし、インターリーブ後の並列データ系列を変調部124に出力する。
変調部124−1〜4は、入力されるインターリーブ後の並列データ系列に変調処理、すなわち所定の多値変調を用いてビット列をIQ平面上の変調シンボルにマッピングしたベースバンド信号にする処理を行い、変調処理後の並列データ系列を送信信号として送信部130に出力する。
送信部130は、送信信号構成部120にて生成された送信信号のそれぞれに、所定の無線送信処理(D/A変換、アップコンバートなど)を施して、無線送信処理後の送信信号をそれぞれ異なるアンテナ140を介して送信する。
図4は、無線通信装置200の詳細な構成を示す図である。同図に示すように、受信部220は、受信部221−1〜4を有する。第2信号分離部240は、2つの信号分離部241−1と、信号分離部241−2とを有する。受信信号処理部250は、復調部251−1〜4と、デインターリーバ252−1〜4と、P/S変換部253と、復号化部254とを有する。
受信部221−1〜4は、それぞれ対応するアンテナ210を介して受信する空間多重信号に、無線受信処理(ダウンコンバート、A/D変換など)を施して、無線受信処理後の空間多重信号を第1信号分離部230に出力する。
第1信号分離部230は、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、多重数Nより小さい数の伝送信号(無線通信装置100の送信信号)からなる空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部240に出力する。
第2信号分離部240は、第1信号分離部230にて分離された空間多重信号のグループを入力し、各グループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。ここでは、第2信号分離部240は、第1信号分離部230にて分けられるグループ数に対応する数の信号分離部241(本実施の形態では、信号分離部241−1、2の2つ)を有しており、各信号分離部241が1つのグループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。
復調部251は、第2信号分離部240にて分離された伝送信号(無線通信装置100の送信信号)ごとに、無線通信装置100での変調方式に対応する復調処理を行う。
デインターリーバ252は、復調処理後の伝送信号ごとに、無線通信装置100でのインターリーブパターンに対応するパターンでデインターリーブする。
P/S変換部253は、デインターリーブ後の伝送信号を、無線通信装置100での直並列変換とは逆に並直列変換し、直列データ系列を出力する。
復号化部254は、直列データ系列に、無線通信装置100での符号化方式に対応する復号化処理を施して、無線通信装置100の送信データに対応する受信データを出力する。
次に、上記構成を有する通信システム10における無線通信装置100および無線通信装置200の動作について説明する。
データ生成部110は、無線通信装置200へ送信する送信データであるデータ系列z(n)を生成する。符号化部121は、データ系列z(n)を所定の符号化率で誤り訂正符号化し、符号化データ系列c(n)を生成する。
S/P変換部122は、符号化データ系列c(n)を、4個の並列データ系列である送信系列xn(k)(n=1〜4)に変換する。ここで、送信系列xn(k)の4個の要素を持つ列ベクトルを、x(k)と表記する。
そして、送信系列xn(k)(n=1〜4)は、系列ごとに、インターリーバ123でインターリーブされ、変調部124で変調処理が施されてベースバンド信号とされる。ベースバンド信号とされた送信系列xn(k)は、送信部130で、周波数変換され帯域制限処理が加えられ、増幅後に高周波信号である送信信号として各アンテナ140から送信される。
なお、送信系列よりも多くのアンテナ数を用いて送信することも可能であり、その場合には、所望の指向性を形成する指向性ウェイトを送信系列に対し乗算する方法、または、STBC(Space Time Block coding)のような時空間符号化を施す方法により実現できる。ここでは、無線通信装置100で送信に用いられるアンテナ数と、送信系列の数とが同数である場合について説明している。
アンテナ210のそれぞれで受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として第1信号分離部230に出力される。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。
ここで、y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)、すなわち無線通信装置100からの送信系列x
n(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号は、式(1)のように表される。
式(1)中のH(k)は、無線通信装置100の送信系列xn(k)が受ける伝搬路変動を示し、(無線通信装置200の受信アンテナ数:4)行×(無線通信装置100の送信アンテナ数:4)列からなる行列である。n(k)は、無線通信装置200のアンテナ210で受信時に付加される4つの要素をもつ雑音ベクトルを示す。
式(1)を詳細に記載すると、式(2)のようになる。
H(k)のi行j列の行列要素h
ijは、無線通信装置100の第j番目のアンテナ140から送信された信号が、無線通信装置200の第i番目のアンテナ210で受信される場合の伝搬路での伝搬路変動を示す。
第1信号分離部230は、無線通信装置100から送信される既知のパイロット信号などを利用して推定される伝搬路変動Hに対する伝搬路変動推定値Bを用いて、受信信号y(k)に対し線形演算を行うことにより、式(2)を式(3)に変換する。
第1信号分離部230は、式(2)を式(3)に変換する任意の線形演算を用いることができる。以下に、第1信号分離部230が実行する線形演算の一例を示す。
まず、ステップ1として、
を行う。その結果、式(4)が得られる。
ステップ2として、
を行う。その結果、式(5)が得られる。
ステップ3として、
を行う。その結果、式(6)が得られる。
ステップ4として、
を行う。その結果、式(7)が得られる。
このように第1信号分離部230は、上記ステップ1〜4の線形演算を行うことで、式(3)に表される式を得る。ここで、送信系列x1、x2を第1グループと、x3、x4を第2グループと定義すると、式(3)のv1、v2は、第1グループの成分(伝送信号)のみを含んでおり、v3、v4は、第2グループの成分(伝送信号)のみを含んでいることがわかる。つまり、第1信号分離部230は、多重数4の空間多重信号に対し、2つのグループ間の干渉を除去するZF(Zero Forcing)演算を行い、2つの多重数2の空間多重信号からなるグループに分離している。因みに、上記ステップ1〜4の線形演算は、ZF(Zero Forcing)演算であるが、通常行うように空間多重信号に含まれるすべての伝送信号を分離する最終段階までは演算を行わず、その手前で演算を止めている。
第1信号分離部230にて分離された空間多重信号のグループは、第2信号分離部240に入力される。第2信号分離部240では、各グループの空間多重信号が当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離される。具体的には、第1グループのv1(k)、v2(k)は信号分離部241−1に入力され、信号分離部241−1でx1(k)、x2(k)に分離される。第2グループのv3(k)、v4(k)は、信号分離部241−2で同様に処理される。
第2信号分離部240では、空間多重信号の各グループからそれに含まれる伝送信号を分離するアルゴリズムとしては、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Detection)などを利用することができる。MLDによる分離手法を利用することにより、ダイバーシチ利得(但し、送信側および受信側のアンテナが、2本ずつの空間多重伝送(2×2の空間多重伝送)にて得られるダイバーシチ利得に相当)を得ることができる。
ここで、4×4の空間多重伝送において、MLDによる1段階の分離処理ですべての伝送信号を分離しようとしても、演算量が非常に多くなるため、処理時間が長くなり、また、ハードウェアも現実的な規模で実現することが難しい。しかしながら、上述のとおり分離処理を2段階に分けることにより、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。すなわち、第1段階の分離処理を行う第1信号分離部230では、空間多重信号に線形演算を施して、空間多重信号の多重数Nより小さい数の伝送信号からなる空間多重信号のグループに分離され、グループ間の干渉が除去される。
そして、第2段階の分離処理を行う第2信号分離部240では、他のグループからの干渉信号が、第1信号分離部230にて除去された信号を用いて、分離処理を行うので、第2段階の信号分離にMLDを利用しても、MLDの際の信号点候補を削減することができるため、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。さらに、分離処理を2段階に分けることにより、4×4の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得には及ばないが、2×2の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得を得ることができる。
第2信号分離部240にて分離された各伝送信号は、復調部251で復調され、デインターリーバ252でデインターリーブされてP/S変換部253に入力される。具体的には、第1グループの信号系列x1(k)、x2(k)は、それぞれ復調部251−1、2で所定の変調方式によるシンボルデータ列からビットデータ列に変換される。復調部251−1、2で得られたビットデータ列は、デインターリーバ252−1、2において、送信側で施されたインターリーブと逆の動作によりビット順が復元される。第2グループの信号系列x3(k)、x4(k)についても同様の処理が行われる。
デインターリーバ252においてビット順が復元されたビットデータ列は、P/S変換部253で並直列変換され、直列データ系列として出力される。復号化部254では、直列データ系列に、無線通信装置100における符号化方式に対応する復号化処理が施され、無線通信装置100の送信データに対応する受信データを出力する。
なお、第2信号分離部240の各信号分離部241−1、241−2における分離アルゴリズムは、信号分離部241−1、241−2間で同じでもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数などに応じて固定的または適応的にそれぞれ変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合にはMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合には、MMSEなどの線形手法の適用が考えられる。
このように本実施の形態によれば、無線通信装置100から送信された伝送信号を複数のアンテナを介して受信する無線通信装置200において、各アンテナで受信した空間多重信号を複数のグループに分け、そのグループを一つの単位として、第1信号分離部230がグループ間干渉を除去するZF演算による信号分離を行う。その後に、第2信号分離部240が各グループに含まれる伝送信号に分離する。これにより、第1信号分離部230の後続の処理には、例えば、多重数2の空間多重信号を分離するために構成された従来の回路をそのまま使用することができる。
その結果、複数の多重数の空間多重信号の受信に対応した無線通信装置において、受信回路を異なる多重数で一部共用化することができ、無線通信装置のハードウェア規模を削減できる。また、複数の多重数の受信に対応させるために新規に開発する回路が少なくなり、ハードウェアの開発コストを削減できる。
また、第1信号分離部230の後続の処理は、グループ個別に受信復号処理を適用することが可能となるため、送信系列が複数である場合、最終的にパラレルデータを直列データに変換する必要がある。しかし、本実施の形態では、グループ毎に受信復号処理を同時並列に行える構成である。このため、並直列変換部253への入力データがウェイトされることなく、また、新たに入力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもない。このため、データ処理遅延を小さくし、またメモリ増によるハードウェア増加を抑えることができる。
また、受信特性は、空間多重信号をZF、MMSEなどにより1段階で、前記空間多重信号を伝送信号に分離するよりも、良好な特性を得ることができる。なぜなら、空間多重信号は、ZF、MMSEなどの線形処理で信号分離を行うと、複数アンテナで受信したことによるダイバーシチ利得がなくなってしまうが、本構成を用いると、第1信号分離部230で各グループに分離した後に、グループ毎にMLDを使用することができるので、2ブランチ分のダイバーシチ利得を得ることができるためである。
ここで、4×4の空間多重伝送において、多重数4の信号を直接MLDで分離すれば、4ブランチ分のダイバーシチ利得が得られるが、16QAMや64QAMなどの信号点の多い変調方式を用いる場合は、信号点の数が飛躍的に増大するため、現実的なハードウェア規模で実装が困難になってしまう。
また、チャネル行列の特異値分解や、チャネル行列とそのエルミート転置行列との積からなる行列の固有値分解等に基づいた送信ウェイトを乗算して送信すれば、受信側でMLDを用いることなく最適な受信特性を得ることができるが、送信側へのチャネル行列のフィードバック並びに、特異値分解や固有値分解の演算が必要になってくるため、実装が難しくなってしまう。
これに対して、本実施の形態では、第2信号分離部240が信号分離部241を2つ備える構成とし、第1信号分離部230の後段に第1グループ用と第2グループ用に信号分離部241、復調部251、デインターリーバ252から構成される多重数2の空間多重信号を受信する受信系統を独立に備える構成とした。
なお、これに限定されるものではなく、図5に示すように、信号分離部241、復調部251、デインターリーバ252を1つの系で構成し、第1信号分離部230に図示しない信号を蓄積するメモリ部を備えることにより、1つの多重数2の空間多重信号を受信する受信系統を第1グループと第2グループとで時分割して使用する構成にしてもよい。
上記構成にすることで、多重数2の空間多重信号を受信する回路構成に、第1信号分離部230を追加することで、多重数4の空間多重信号を受信する回路構成を実現できる。また、この場合、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を第1信号分離後のグループ毎に設定して、逐次的に第2信号分離部241への入力を切り替える構成も可能である。これにより、無線通信装置200の構成を簡易化する効果が得られる。
また、第1のグループの空間多重信号に対する処理と第2のグループの空間多重信号に対する処理は、上述のように一方のグループの空間多重信号に対する処理が終了した後に、他方のグループの空間多重信号に対する処理を行う方法の他、一定時間毎に交互に処理をする空間多重信号のグループを切り替えて行ってもよい。
また、本実施の形態では、第1信号分離部230は、x1(k)とx2(k)とを第1グループ、x3(k)とx4(k)とを第2グループとして信号分離を行う構成としたが、グループに含まれる送信系列xn(k)の組は異なっていてもよい。例えば、QoSが等しい又は近い2つの送信系列を同じグループとし、送信系列のQoSに基づき適当な信号分離部241を用いる構成とすれば、QoSが高い送信系列からなるグループの信号分離部241にはMLD、QoSが低い送信系列のグループの信号分離部241にはMMSEを使うことができる。
また、第1信号分離部230において、グループを構成する送信系列xnの組を決定する評価基準としては、以下の方法1)、2)もある。なお、複数の方法を組合せたものを評価指標としてもよい。
1)受信品質による評価基準
第n番目の送信アンテナから送信される送信系列x
n(k)に対する受信SNRまたは受信SIRを評価基準Qnとする。このような場合、下記の式(8)に示す評価基準Qnにより受信SNRによる評価基準とすることができる。ただし、trace(X)は、行列Xの固有和を算出する演算子である。SIR評価の場合は、チャネル推定時に用いるパイロット信号の、推定値に対する分散を評価する手法の適用が可能である。
2)QoSに基づく評価基準
第n番目の送信アンテナから送信される送信系列xn(k)に対するQoSに基づき、適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を送信系列毎に設定し、伝送遅延に対する許容遅延量を評価基準とする。
また、本実施の形態では、第1信号分離部230は、x1(k)とx2(k)とを第1グループ、x3(k)とx4(k)とを第2グループとして信号分離を行う構成としたが、空間的に距離の離れた送信アンテナ140で送信された送信系列を、同じグループになるようにグループ分けをして信号分離してもよい。また、第1信号分離部230は、空間的に距離の近いアンテナ140から送信された信号系列は、同じグループにならないようにグループ分けして信号分離する構成としてもよい。このようにすることで、第2信号分離部240において、信号分離を行う送信系列間の空間相関を低くできるため、空間相関がある場合の信号分離処理の性能を向上することができる。
また、本実施の形態では、第1信号分離部230は、x1(k)とx2(k)とを第1グループとし、x3(k)とx4(k)とを第2グループとして信号分離を行う構成とした。ここで、他のグループ分けとしては、無線通信装置100が複数の変調方式で変調された送信系列を送信する場合、同じ変調方式で変調された送信系列が、同じグループになるようにグループ分けをして信号分離をしてもよい。このようにすることで、第2信号分離部240にMLDを用いる場合、変調方式を統一することができる。
また、本実施の形態では、第1信号分離部は、x1(k)とx2(k)を第一グループとし、x3(k)とx4(k)を第二グループとして信号分離を行う構成とした。ここで、他のグループ分けとしては、無線通信装置1が複数の変調方式で変調された送信系列を送信する場合、異なる変調方式で変調された送信系列が、同じグループになるようにグループ分けをして信号分離をしてもよい。例えば、無線通信装置100が16QAMで変調された送信系列の2つと、QPSKで変調された送信系列の2つとを同時に送信する場合には、16QAMで変調された送信系列1つとQPSKで変調された送信系列1つからなるグループ分けをする。このようにすることで、第2信号分離部240でMLDを行う場合、候補信号点の数をそれぞれ64個にすることができる。これに対し、16QAM同士、QPSK同士でグループ分けをした場合は、候補信号点が256個のMLDと候補信号点が16個のMLDが必要になる。
また、本実施の形態では、多重数4の空間多重伝送を行う無線通信装置について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、図6に示すように、任意の多重数Nの空間多重伝送を行う無線通信装置に適用することができる。この場合、第1信号分離部230は、多重数Nの空間多重信号をL個の空間多重信号に分離する。このとき、L個の空間多重信号の多重数は、それぞれM1、M2、…、MLで表される。
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る無線通信装置300の構成を示す図である。同図に示すように、受信側である無線通信装置300は、受信信号処理後の信号、具体的には復号したデータ系列から、送信側(無線通信装置100)の送信信号のレプリカを作成し、この送信信号のレプリカに伝搬路変動を乗算して、受信時の伝送信号のレプリカを作成するレプリカ生成部360と、その受信時の伝送信号のレプリカを、実際の受信信号からキャンセルする干渉キャンセラ370とを備える。さらに、無線通信装置300は、干渉キャンセラ370の出力側に受信信号処理部250(同図では、受信信号処理部250B)を有している。
図8に示すようにレプリカ生成部360は、送信側の無線通信装置100と同様の送信信号構成部120と、伝搬路乗算部361とを有する。伝搬路乗算部361は、送信側の無線通信装置100から送信される送信信号ごとに、伝搬路変動を乗算する伝搬路乗算部362−1〜4を有する。
伝搬路乗算部362は、送信信号構成部120が、受信信号処理部250Aにおいて受信信号処理された後の信号を基に作成した送信信号のレプリカに伝搬路変動を乗算し、受信時の伝送信号のレプリカを作成する。同図における、伝搬路乗算部362の出力Rmnは、送信側の無線通信装置100の第n番目のアンテナから送信され、受信側の無線通信装置300の第m番目のアンテナで受信される伝送信号の受信時のレプリカである。
図9に示すように干渉キャンセラ370は、レプリカ減算部371と、ダイバーシチ合成部373とを有する。図10に示すようにレプリカ減算部371は、減算器372を有する。
レプリカ減算部371は、各アンテナ210にて受信された空間多重信号(同図におけるy1(k)〜y4(k))から、1つの伝送信号以外の伝送信号の受信時のレプリカを減算することにより、前記1つの伝送信号を取得する。レプリカ減算部371は、各伝送信号を取得するためのレプリカ減算部371−1〜4を有している。例えば、レプリカ減算部371−1は、各アンテナ210にて受信された空間多重信号(同図におけるy1(k)〜y4(k))から、送信側の第1番目のアンテナにて送信された伝送信号のみを取得する。
ここでは、無線通信装置300に4本のアンテナがあるため、第1番目のアンテナにて送信された伝送信号が4つ得られる。図10に示す減算器372−1は、無線通信装置300の第1番目のアンテナにて受信された空間多重信号から、送信側の第1番目のアンテナ以外から送信され受信側の第1番目のアンテナにより受信されるときの伝送信号の受信時のレプリカを減算し、送信側の第1番目のアンテナから送信され受信側の第1番目のアンテナにて受信された伝送信号を、ダイバーシチ合成部373に出力する。減算器372−2〜4は、それぞれ送信側の第1番目のアンテナから送信され、受信側の第2番目、第3番目、第4番目のアンテナにより受信される伝送信号のみを出力する。
ダイバーシチ合成部373は、伝送信号(無線通信装置100の送信信号)毎にダイバーシチ合成を行い、ダイバーシチ合成後の伝送信号を受信信号処理部250Bに出力する。受信信号処理部250Bでは、受信信号処理部250Aと同様の処理が行われ、受信データが出力される。
次に上記構成を有する無線通信装置300の動作について説明する。
無線通信装置300において、受信部220は、複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)を出力する。この受信信号y(k)が、第1信号分離部230、第2信号分離部240、および受信信号処理部250Aでなされる処理は、実施の形態1と同様である。本実施の形態では、受信信号処理部250Aの出力を受信データとして、そのまま利用せずに、レプリカ生成部360に出力する。
レプリカ生成部360では、受信信号処理部250Aの出力から、伝送信号の受信時のレプリカを作成する。具体的には、受信信号処理部250Aの出力を送信データとして扱い、送信信号構成部120で無線通信装置100の送信信号のレプリカを生成する。図8における、S
n(k)(n=1〜4)が送信信号のレプリカである。伝送路乗算部361では、送信信号のレプリカに伝搬路応答の推定値Bが乗算され、伝送信号の受信時のレプリカR
mn(k)が生成される。レプリカR
mn(k)は、以下の式(9)〜式(12)で表される。
干渉キャンセラ370は、受信系列y(k)および伝送信号の受信時のレプリカRmn(k)を用いて、干渉キャンセルを行う。具体的には、レプリカ減算部371−1は、減算器372−1〜4で受信系列y(k)から、送信系列x1(k)に関するもの以外の伝送信号の受信時のレプリカ信号をそれぞれ減算する。ダイバーシチ合成部373−1は、減算器372−1〜4の出力をダイバーシチ合成する。ダイバーシチ合成アルゴリズムとしては、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR:Signal-to-Noise power Ratio)を最大にする最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)や、ダイバーシチ合成後の信号対干渉雑音電力比(SINR:Signal-to-Noise plus Interference power Ratio)を、最大化するMMSE合成を用いることができる。このとき、レプリカRmn(k)に誤りがない状態で干渉キャンセルが行われれば、4ブランチ分のダイバーシチ利得が得られる。レプリカ減算部371−2〜4、ダイバーシチ合成部373−2〜4についても同様の処理が行われる。
ダイバーシチ合成後の信号系列、すなわち各伝送信号は、受信信号処理部250Bで受信信号処理され、受信データとして出力される。
なお、上記説明においては、干渉キャンセル処理を一度だけ行う構成で説明を行ったが、干渉キャンセル処理によって得られた受信データ系列から再度レプリカを生成し、複数回干渉キャンセル処理を行うという構成にしてもよい。このようにすることで、干渉キャンセル処理の回を重ねるにつれて、レプリカRmn(k)の信頼性を向上することができ、結果的に受信データ系列が誤る確率が低下する。
また、上記説明においては、受信信号処理部250Aの他に受信信号処理部250Bを設けたが、受信信号処理部250Bを設けずに、干渉キャンセラ370の出力を受信信号処理部250Aにフィードバックする構成としてもよい。
このように本実施の形態によれば、無線通信装置100から送信された多重数4の空間多重信号を、干渉キャンセラを用いる構成で受信できる。これにより、多重数4の空間多重信号に対するMLDを使うことなく、現実的なハードウェア規模でフルダイバーシチ利得に近い受信特性を得ることができる。
なお、多重数4の空間多重信号を直接ZFやMMSE分離した後干渉キャンセラを用いる従来の構成でも、干渉キャンセル処理を繰り返し行うことで受信特性を改善できる。しかし、本実施の形態によれば、第1信号分離部230でグループ間干渉を除去し、第2信号分離部240でMLDを用いることで、2段目の信号分離の時点で2ブランチ分のダイバーシチ利得が得られるため、従来の構成に比べてレプリカの信頼性を向上できる。その結果、干渉キャンセラの反復回数が同じ場合、従来の構成に比べ良好な受信特性を得ることができるという効果がある。また、所望の受信特性を得るために必要な反復回数を、従来の構成に比べて減少できるという効果がある。また、受信回路の多くは、多重数2の空間多重信号の受信回路と共通の要素が多いので、回路規模の削減、開発コストの削減といった効果がある。
なお、本実施の形態に係る無線通信装置300は図7に示す構成を採ったが、図11に示す構成としてもよい。同図に示す無線通信装置300Aは、レプリカ生成部380と、干渉キャンセラ385とを有する。干渉キャンセラ385は、干渉キャンセラ370と異なり、第1信号分離部230の出力v(k)からレプリカ信号を減算する。
図12に示すように、レプリカ生成部380は、伝搬路乗算部381を有する。伝搬路乗算部381は、送信側の無線通信装置100から送信される送信信号ごとに、伝搬路変動を乗算する伝搬路乗算部382−1〜4を有する。ここで、無線通信装置300Aでは、上述のとおり、干渉キャンセラ385が第1信号分離部230の出力v(k)、すなわちグループに分離された空間多重信号からレプリカ信号を減算するので、伝搬路乗算部322−1〜4からは、前記空間多重信号のグループに含まれる伝送信号の受信時のレプリカのみが出力されている。
図13に示すように干渉キャンセラ385は、レプリカ減算部386と、ダイバーシチ合成部388とを有する。図14に示すようにレプリカ減算部386は、減算器387を有する。
レプリカ減算部386は、第1信号分離部230にてグループに分離された空間多重信号から、1つの伝送信号以外の伝送信号の受信時のレプリカを減算することにより、前記1つの伝送信号を取得する。干渉キャンセラ385は、各伝送信号を取得するためのレプリカ減算部386−1〜4を有している。例えば、レプリカ減算部386−1は、第1信号分離部230にて分離された第1グループの空間多重信号(同図におけるv1(k)、v2(k))から、送信側の第1番目のアンテナにて送信された伝送信号のみを取得する。ここでは、第1グループに2つの空間多重信号が含まれているため、第1番目のアンテナにて送信された伝送信号が2つ得られる。
図14に示す減算器378−1は、第1グループに属する空間多重信号であって、第1グループに対応する送信側のアンテナ(ここでは、送信側の第1および第2番目のアンテナ)から送信され、無線通信装置300Aの第1番目のアンテナを用いて受信された空間多重信号から、第1グループに対応する送信側のアンテナで第1番目のアンテナ以外から送信され受信側の第1番目のアンテナで受信されるときの伝送信号の受信時のレプリカ(R12(k))を減算し、送信側の第1番目のアンテナから送信され、受信側の第1番目のアンテナを用いて受信された伝送信号を、ダイバーシチ合成部388に出力する。減算器387−2は、送信側の第1番目のアンテナから送信され、受信側の第2番目のアンテナを用いて受信される伝送信号のみを出力する。
ダイバーシチ合成部388は、伝送信号(無線通信装置100の送信信号)毎にダイバーシチ合成を行い、ダイバーシチ合成後の伝送信号を受信信号処理部250Bに出力する。
次に上記構成を有する無線通信装置300Aの動作について説明する。
レプリカ生成部380では、受信信号処理部250Aの出力から、伝送信号の受信時のレプリカを作成する。具体的には、受信信号処理部250Aの出力を送信データとして扱い、無線通信装置100の送信信号のレプリカを生成する。図8における、S
n(k)(n=1〜4)が送信信号のレプリカである。伝送路乗算部381では、送信信号のレプリカに第1信号分離後の変換伝搬路応答Gの推定値Dが乗算され、伝送信号の受信時のレプリカR
mn(k)が生成される。レプリカR
mn(k)は、以下の式(13)〜式(16)で表される。
干渉キャンセラ385は、受信系列v(k)、即ち第1信号分離部230において、グループに分離された空間多重信号、および、レプリカRmn(k)を用いて、干渉キャンセルを行う。具体的には、レプリカ減算部386−1は、減算器387−1、2において、受信系列v1(k)、v2(k)から、送信側の第2番目のアンテナから送信され、第1グループに対応する無線通信装置300Aのアンテナにおいて受信される伝送信号のレプリカ信号を減算する。ダイバーシチ合成部388−1は、減算器387−1、2の出力をダイバーシチ合成する。
ダイバーシチ合成アルゴリズムとしては、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR:Signal-to-Noise power Ratio)を最大にする最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)ダイバーシチや、ダイバーシチ合成後の信号対干渉雑音電力比(SINR:Signal-to-Noise plus Interference power Ratio)を最大にするMMSE合成ダイバーシチや、最も信頼度の高いブランチを選択して出力する選択合成ダイバーシチ等を用いることができる。このとき、レプリカRmn(k)に誤りがない状態で干渉キャンセルが行われれば、2ブランチ分のダイバーシチ利得が得られる。レプリカ減算部386−2〜4、ダイバーシチ合成部388−2〜4についても同様の処理が行われる。
ダイバーシチ合成後の信号系列、すなわち各伝送信号は、受信信号処理部250Bで受信信号処理され、受信データとして出力される。
このようにすることで、図7に示される構成の無線通信装置300を用いた場合に比べて、干渉キャンセル後に得られるダイバーシチ利得は減ってしまうが、1)作成するレプリカの数が少ないため、演算量、回路規模を削減可能、2)多重数2の空間多重信号に対する干渉キャンセラの構成をそのまま用いることができる、という効果がある。
またなお、本実施の形態に係る無線通信装置300は、図7に示す構成を採ったが、図15に示す構成としてもよい。同図に示す無線通信装置300Bは、レプリカ生成部390と、干渉キャンセラ395と、第2信号分離部240Bとを有する。無線通信装置300Bは、干渉キャンセラ395によって空間多重信号の多重数を第1信号分離部230と同様に減少(ここでは、多重数4から2へ減少される)し、その後第2信号分離部240Bで信号分離を行うように構成されている。
図16に示すようにレプリカ生成部390は、伝搬路乗算部391を有する。伝搬路乗算部391は、送信側の無線通信装置100から送信される送信信号ごとに、伝搬路変動を乗算する伝搬路乗算部392−1〜4を有する。ここで、無線通信装置300Bでは、干渉キャンセラ395の出力を第1信号分離部230の出力と同様の組み合わせの伝送信号を含む空間多重信号とするので、第1信号分離部230で除去される伝送信号の受信時のレプリカのみが出力されている。
図17に示すように干渉キャンセラ395は、レプリカ減算部396を有する。図18に示すようにレプリカ減算部396は、減算器397を有する。
レプリカ減算部396は、各アンテナ210にて受信された空間多重信号(同図におけるy1(k)〜y4(k))から、検出したい伝送信号のグループと異なるグループに属する伝送信号が,アンテナ210を用いて受信された時のレプリカを減算することにより、第1信号分離部230の出力と同様の組み合わせの伝送信号を含む空間多重信号(同図におけるv1(k)〜v4(k))を、取得する。例えば、レプリカ減算部396−1は、無線通信装置300Bの第1番目のアンテナを用いて受信された空間多重信号(y1(k))から、この空間多重信号と異なるグループ(ここでは、第2グループ)に属する空間多重信号(y3(k)、y4(k))が受信されるアンテナ(第3および第4番目のアンテナであるアンテナ210−3、4)を用いて受信される伝送信号のレプリカ(R13、R14)を減算し、v1(k)を出力する。
次に上記構成を有する無線通信装置300Bの動作について説明する。
レプリカ生成部390では、受信信号処理部250Aの出力から、伝送信号の受信時のレプリカを作成する。具体的には、受信信号処理部250Aの出力を送信データとして扱い、無線通信装置100の送信信号のレプリカを生成する。図16における、S
n(k)(n=1〜4)が送信信号のレプリカである。伝送路乗算部391では、送信信号のレプリカに伝搬路応答の推定値Bが乗算され、伝送信号の受信時のレプリカR
mn(k)が生成される。レプリカR
mn(k)は、以下の式(17)〜式(20)で表される。
干渉キャンセラ395は、受信系列y(k)および伝送信号の受信時のレプリカRmn(k)を用いて、干渉キャンセルを行う。具体的には、レプリカ減算部396−1は、減算器397で受信系列y1(k)から、第2グループに含まれる伝送信号(送信系列)の受信時のレプリカ信号をそれぞれ減算し、その結果をv1(k)として出力する。
第2信号分離部240Bでは、干渉キャンセラ395の出力(v1(k)〜v4(k))に対して、第2信号分離部240Aと同様の処理がなされる。
なお、上記説明においては、無線通信装置300Bに、第2信号分離部240Aの他に第2信号分離部240Bを設けたが、第2信号分離部240Bを設けずに、干渉キャンセラ395の出力を、第2信号分離部240Aにフィードバックする構成としてもよい。
またなお、本実施の形態では、送信側の無線通信装置100のインターリーバ123−1〜4間でインターリーブパターンが同じであることを前提として説明を行ったが、異なるパターンを用いてもよく、グループ毎に異なるインターリーブパターンを用いることができる。例えば、インターリーバ123−1およびインターリーバ123−2をパターンAとし、インターリーバ123−3およびインターリーバ123−4をパターンBとする。これに対して、受信側の無線通信装置300(無線通信装置300A、Bも含む)のデインターリーバ252−1〜4のデインターリーブパターンもインターリーバのパターンに対応したパターンを用いる。
この場合、干渉キャンセラ370では、異なるインターリーブパターンのグループを除去するように干渉キャンセルを行う。その後、第2信号分離部240でグループに含まれる伝送信号(送信系列)の分離を行う。このようにインターリーブのパターンを変えることで、無線通信装置300は、干渉キャンセラ370による干渉除去時に、干渉除去する信号と、干渉が除去される信号間の相関が高く、バースト的に干渉キャンセル誤りが発生する場合でも、異なるインターリーブパターンを用いることで干渉キャンセル誤りをランダマイズでき、復号化部254の干渉キャンセル誤りを訂正する能力を向上できる。また、インターリーブパターンが同じ伝送信号(送信系列)は第2信号分離部240で分離することで、バースト的な干渉キャンセル誤りの発生を防ぐことができる。
その結果、受信特性が改善されるという効果が得られる。なお、インターリーブパターンを変えることによるバースト的な干渉キャンセル誤り低減効果の詳細は、文献(村上、小林、折橋、松岡著、MIMOシステムにおける信号点削減を用いた反復復号のインターリーブ適用に関する検討 −レイリーフェージング環境下におけるBER特性−、電子情報通信学会、信学技報RCS2004−8、pp41−46,2004年4月)で明らかにされている。
また、無線通信装置300Bにおいては、インターリーブパターンは、グループ内の伝送信号(送信系列)で異なるようにしてもよい。例えば、第1グループでは、x1はパターンA、x2はパターンBを用いてインターリーブし、第2グループでは、x3はパターンA、x4はパターンBを用いてインターリーブする。このようにして、第2信号分離部240Aでは、同じグループの信号の分離を行い、干渉キャンセラ395では、異なるインターリーブパターンの伝送信号(送信系列)を除去し、2回目の第2信号分離部240Bでは、同じインターリーブパターンの伝送信号(送信系列の信号)を分離する。このようにすることで、第2信号分離部240Aと第2信号分離部240Bとで行われる1回目と2回目との信号分離において、伝送信号(送信系列)の組が異なるため、干渉キャンセル誤り伝搬の影響を低減することができる。
(実施の形態3)
図19に示すように、実施の形態3の無線通信システム10は、無線通信装置400と、無線通信装置500とを有する。無線通信装置400は、実施の形態1の無線通信装置100と同様に、各アンテナから送信信号を送信する。ただし、無線通信装置100から送信される送信信号の各々は、1系統の送信データが直並列変換された並列データ系列に対応するものであるが、無線通信装置400から送信される送信信号には、1系統の送信データの並列データ系列が、さらに時空間符号化されて生成される複数の時空間符号化系列に対応する送信信号が含まれる。
同図に示すように無線通信装置400は、送信信号構成部420を有する。この送信信号構成部420は、S/P変換部422と、時空間符号化部425とを有する。
S/P変換部422は、誤り訂正符号化後の送信データを入力し、直並列変換を施して並列データ系列を生成する。ただし、無線通信装置100のS/P変換部122と異なり、S/P変換部422は、その後段に、1つの情報系列を2つの時空間符号化系列に符号化する時空間符号化部425が配設されているため、2つの並列データ系列を生成する。
時空間符号化部425は、並列データ系列を入力し、時空間符号化処理を施して時空間符号化系列を生成する。ここでは、変調部124によってIQ平面上にマッピングされたベースバンド信号を、B. Vucetic and J. Yuan, ‘ Space-Time Coding’, Wileyに開示されているSTBCのようなブロック符号化が適用されるものとし、1つの情報系列を2つの時空間符号化系列に符号化するSTBCが用いられるものとする。時空間符号化された信号のそれぞれは、送信部130おいて、ベースバンド信号から周波数変換され、帯域制限処理され、増幅後に高周波信号として各アンテナ140から送信される。
図19に示すように無線通信装置500は、第2信号分離部540と、受信信号処理部550とを有する。第2信号分離部540は、時空間復号化部541を有する。
無線通信装置500の第1信号分離部230は、送信側において、同じ情報系列に基づいて時空間符号化された時空間符号化系列に対応する伝送信号を含む空間多重信号のグループに分離する。本実施の形態では、送信側の無線通信装置400が、2系統で時空間符号化しているので、第1信号分離部230は、送信側の無線通信装置400の2系統に対応する伝送信号からなる空間多重信号のグループに分離する。
第2信号分離部540は、グループ数に対応する数の時空間復号化部541を有しており、第1信号分離部230にて分離された各グループの空間多重信号を、当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離し、各グループの伝送信号に時空間復号化処理を施して、送信側の並列データ系列に対応する信号を受信信号処理部550に出力する。
受信信号処理部550は、時空間復号化された複数系統の信号のそれぞれに、復調処理、デインターリーブを施して、P/S変換部553にて並直列変換して、直列データ系列を得る。
次に上記構成を有する無線通信装置400および無線通信装置500の動作について説明する。
無線通信装置400においては、1系統の送信データの並列データ系列が、さらに時空間符号化されて生成される複数の時空間符号化系列(ここでは、4つの時空間符号化系列)に対応する送信信号が、それぞれ異なるアンテナ140から送信される。
無線通信装置500では、アンテナ210のそれぞれを用いて受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として、第1信号分離部230に出力される。
ここで、y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を、要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)、すなわち無線通信装置400からの送信系列xn(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号は、実施の形態1と同様に式(1)のように表される。
第1信号分離部230は、式(3)における、v1とv2とに、時空間符号化部425−1により符号化された送信系列に対応する伝送信号のみが含まれ、v3とv4とに時空間符号化部425−2により符号化された送信系列に対応する伝送信号のみが含まれるように、線形演算を行って、空間多重信号のグループに分離する。
時空間復号化部541−1、2は、それぞれ時空間符号化部425−1、2で符号化された符号化系列を復号化する。
受信信号処理部550では、時空間復号化された複数系統の信号のそれぞれに、復調処理、デインターリーブが施され、P/S変換部553にて並直列変換されて、直列データ系列が得られる。
このように本実施の形態によれば、伝送レートは低下するが、時空間のダイバーシチ効果を得ることができ、受信品質の改善に寄与する。また、現実的なハードウェア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。
すなわち、第1信号分離部230に代わり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、空間多重された信号を分離受信する受信ウェイトを形成する性質から、ダイバーシチ利得(アンテナ自由度)を信号分離のために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。
一方、本実施の形態では、異なる時空間符号化のグループからの干渉を排除した信号を用いることで、時空間復号が可能であるために、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。なお、時空間符号化部425は、連続するシンボルデータに対して(時間軸)時空間符号化を施してもよいが、マルチキャリア伝送を行う場合は、隣接するサブキャリア間で、周波数―空間符号化を施しても同様な効果が得られる。
また、本実施の形態によれば、4×4のSTBC−MIMOシステムであっても、2×2のSTBC−MIMOシステムと共通の時空間符号化手段、時空間復号化手段を用いることができ、回路規模や開発コストが削減される。
また、本実施の形態によれば、フルレートの時空間符号化である2ブランチSTBCを適用し、さらに無線通信装置500での第1信号分離部230を使った受信方式により、ダイバーシチ利得、符号化利得を得ることができる。因みに、4本の送信アンテナを使って時空間符号化を行う場合、一つの時空間符号化手段で4つの符号化系列を作る4ブランチSTBCを適用できるが、フルレートとなる時空間符号化を行えないため、伝送レートが低下してしまう。
なお、本実施の形態では、無線通信装置400では、S/P変換部422で直並列変換される前に送信データに対して符号化する構成、すなわちS/P変換部422の前段に符号化部121を配設する構成としたが、S/P変換部422の前段ではなく後段に、各並列データ系列を符号化する符号化部を設けてもよい。
また、本実施の形態では、STBCのようなブロック符号による時空間復号化を用いる構成としたが、STTC(Space-Time Trellis Coding)、STTTC(Space-Time Turbo Trellis Coding)のような時空間符号化を使う構成としても同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1の無線通信システム10にマルチキャリア通信方式を適用したものである。
図20に示すように実施の形態4の無線通信装置600は、送信信号構成部120と、送信部130との間にOFDM変調部620を有する。
OFDM変調部620は、送信信号構成部120にて生成されたN個の送信信号のそれぞれに、直並列変換、IFFT変換、並直列変換、ガードインターバル(GI)挿入を含むOFDM変調を施す。OFDM変調部620は、各送信信号にOFDM変調を施すためのN個(ここでは、N=4)のOFDM変調部621を有している。このように本実施の形態の各送信信号は、OFDM信号となっている。
図21に示すように実施の形態4の無線通信装置700は、OFDM復調部720と、第1信号分離部730と、第2信号分離部740とを有する。
OFDM復調部720は、GI除去手段、FFT手段、直列並列変換手段を備えており、アンテナ210のそれぞれにおいて受信され、受信部220で無線受信処理された後の空間多重信号ごとに、OFDM復調処理を施して、OFDM復調後の空間多重信号を出力する。
具体的には、OFDM復調部720は、アンテナ210のそれぞれにおいて受信され、受信部220で無線受信処理された後の空間多重信号ごとに、OFDM復調処理を施して、各アンテナ210で受信された空間多重信号の各サブキャリアに重畳されたシンボル(周波数および時間により特定される)ごとに出力する。
例えば、OFDM復調部721−1は、アンテナ210−1で受信された空間多重信号にOFDM復調処理を施す。アンテナ210−1で受信された空間多重信号には、送信側の無線通信装置600のアンテナ140−1〜4のそれぞれから送信された伝送信号が含まれている。各伝送信号はOFDM信号であり、各シンボルに着目しても無線通信装置600のアンテナ140−1〜4のそれぞれから送信されたシンボルが空間多重されている。
第1信号分離部730は、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、多重数Nより小さい数の伝送信号(無線通信装置100の送信信号)からなる空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部740に出力する。具体的には、第1信号分離部730は、OFDM復調部から受け取るシンボルごとに線形演算を施し、多重数Nより小さい数のシンボルからなる、空間多重シンボルのグループ(空間多重信号のグループに対応)に分離して、第2信号分離部740に出力する。
第2信号分離部740は、第1信号分離部230にて分離された空間多重信号のグループを入力し、各グループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。具体的には、第2信号分離部740は、空間多重シンボルのグループを入力し、各グループの空間多重シンボルに含まれる各シンボルに分離する。分離された各シンボルは、復調部251で復調されてビットデータとなる。
次に上記構成を有する無線通信装置600および無線通信装置700の動作について説明する。
無線通信装置600において、データ生成部110は、無線通信装置700へ送信するデータ系列znを生成する。符号化部121は、データ系列znを所定の符号化率で誤り訂正符号化する。
S/P変換部122は、符号化データ系列を、4個の並列データ系列である送信系列xn(k)(n=1〜4)に変換する。ここで、送信系列xn(k)の4個の要素をもつ列ベクトルをx(k)と表記する。
そして、送信系列xn(k)(n=1〜4)は、系列ごとに、インターリーバ123でインターリーブされ、変調部124で変調処理が施されてベースバンド信号とされる。ベースバンド信号とされた送信系列xn(k)とは、OFDM変調部620において、直並列変換、IFFT変換、並直列変換、ガードインターバル(GI)挿入を含むOFDM変調が施される。ここで、OFDM変調および復調方法に関しては、文献(尾知、“OFDMシステム技術とMATLABシミュレーション解説“、トリケップス刊)に情報開示されており、ここではその説明を省略する。
OFDM変調処理が施された送信系列xn(k)は、送信部130で、周波数変換され帯域制限処理が加えられ、増幅後に高周波信号である送信信号として各アンテナ140から送信される。
アンテナ210のそれぞれで受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)としてOFDM復調部720に出力される。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。y(k)は各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。
OFDM復調部720は、OFDM復調を施し、Nc個のサブキャリア毎のシンボルデータ系列を出力する。ここで、離散時刻kにおける第fs番目のサブキャリア毎のシンボルデータ系列をY(k、fs)と表記する。Y(k、fs)は各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。ただし、fs=1〜Ncである。
第1信号分離部730には、4個のアンテナ数のOFDM復調部721―1〜4からの異なるサブキャリア毎のシンボルデータ系列が入力される。ここで、無線通信装置600からの各送信信号(送信系列)における第fs番目のサブキャリアデータ系列X
n(k、fs)と表記すると、伝搬路におけるマルチパスの先行波からの相対的な遅延時間がガードインターバル(GI)範囲内であれば、周波数選択性フェージング環境をフラットフェージング伝搬環境と等価に扱うことができるため、無線通信装置700で受信される受信信号(サブキャリアデータ系列)Y(k、fs)は、式(21)のように示される。
式(21)中のH
n(k、fs)は、第n番目の送信アンテナの第fs番目のサブキャリアのシンボルデータ系列X
n(k、fs)が受ける伝搬路変動を示し、(無線通信装置600のアンテナ数:4)行×(無線通信装置700の送信アンテナ数:4)列からなる行列である。H
n(k、fs)のi行j列の行列要素h
ijは、無線通信装置600の第j番目のアンテナ140から送信された信号が、無線通信装置700の第i番目のアンテナ210で受信される場合の第fs番目のサブキャリア信号の伝搬路による伝搬路変動を示す。また、n(k、fs)は無線通信装置700のアンテナ210で受信時に付加される4つの要素をもつ雑音ベクトルを示す。
第1信号分離部730は、無線通信装置600から送信される既知のパイロット信号などを利用して推定される、第fs番目のサブキャリア群の伝搬路変動H
n(k、fs)に対する伝搬路変動推定値B
n(k、fs)を用いて、第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対し線形演算を行うことにより、式(21)を式(22)に変換する。
このように線形演算を行うことで、4つの多重数4の空間多重信号を、2組のグループの空間多重信号に分離できる。
第1信号分離部730にて分離された空間多重信号のグループは、第2信号分離部240に入力される。第2信号分離部740では、各グループの空間多重信号が当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離される。具体的には、サブキャリア毎に得られた2つの第1グループの送信系列からなる空間多重信号v1(k、fs)、v2(k、fs)は信号分離部741−1に入力され、は、信号分離部741−1でx1(k、fs)、x2(k、fs)に分離される。第2グループのv3(k、fs)、v4(k、fs)は、信号分離部741−2で同様に処理される。
第2信号分離部740では、空間多重信号の各グループに含まれる伝送信号を分離するアルゴリズムとしては、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Detection)などの手法を利用することができる。MLDによる分離手法を利用することにより、ダイバーシチ利得(但し、送信側および受信側のアンテナが2本ずつの空間多重伝送(2×2の空間多重伝送)にて得られるダイバーシチ利得に相当)を得ることができる。
ここで、4×4の空間多重伝送において、MLDによる1段階の分離処理において、すべての伝送信号を分離しようとしても、演算量が非常に多くなるため、処理時間が長くなり、また、ハードウェアも現実的な規模で実現することが難しい。しかしながら、上述のとおり分離処理を2段階に分けることにより、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。すなわち、第1段階の分離処理を行う第1信号分離部730では、空間多重信号に線形演算を施して、空間多重信号の多重数Nより小さい数の伝送信号からなる空間多重信号のグループに分離され、グループ間の干渉が除去される。そして、第2段階の分離処理を行う第2信号分離部740では、第1信号分離部730により、他のグループからの干渉信号が除去された信号を用いて分離処理を行うので、第2段階の信号分離にMLDを利用してもMLDの際の信号点候補を削減することができるため、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。さらに、分離処理を2段階に分けることにより、4×4の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得には及ばないが、2×2の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得を得ることができる。
第2信号分離部740にて分離された各伝送信号は、復調部251で復調され、デインターリーバ252でデインターリーブされてP/S変換部253に入力される。具体的には、第1グループの信号系列x1(k、fs)、x2(k、fs)は、それぞれ復調部251−1、2で所定の変調方式によるシンボルデータ列からビットデータ列に変換される。復調部251−1、2で得られたビットデータ列は、デインターリーバ252−1、2において、送信側で施されたインターリーブと逆の動作によりビット順が復元される。第2グループの信号系列x3(k、fs)、x4(k、fs)についても同様の処理が行われる。
なお、第2信号分離部740の信号分離部741における分離アルゴリズムは、信号分離部741間で同じでもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数などに応じて固定的または適応的にそれぞれ変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合にはMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合には、MMSEなどの線形手法の適用が考えられる。
このように本実施の形態によれば、無線通信装置600からの伝送信号が複数である場合、サブキャリア毎に、それを一つの単位として、第1信号分離部730と、第2信号分離部740で2段階に信号分離を行うことが可能となる。これにより、周波数選択制フェージング環境下においても、実施の形態1の効果を得ることができる。
また、受信特性としても、現実的なハードウェア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。
因みに、第1信号分離部730に代わり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いても、無線通信装置600の送信系列(伝送信号)を取り出すことは可能であるが、STBC、STCといった時空間符号を施している場合、同じ無線通信装置600からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウェイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。
また、マルチキャリア伝送を利用して、異なるサブキャリアと異なる送信アンテナを用いてSFBC(Space frequency block coding)といった周波数―空間符号の適用も可能であるが、この場合も同様に、従来のZF、MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、それらを分離受信する受信ウェイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。
また、第1信号分離部730に代わり、従来のMLDに基づく一括分離処理を導入することも可能である。
しかし、本実施の形態よりも受信特性は優れるが、全ての送信アンテナからの送信系列に対してのMLD処理量は、送信系列数と送信系列の変調多値数に対し、指数関数的に増大するため、現実的なハードウェアの実現が困難となる。
なお、本実施の形態では、第2信号分離部740を多重数2の空間多重信号の組の数だけ設けているが、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を組毎に設定し、逐次的に第2信号分離部740への入力を切り替える構成でも可能である。この場合、信号分離部741を、多重数2の空間多重信号の組より少ない数にできる。この場合、組によっては、伝送データを復元するまでの処理遅延が大きくなるが、無線通信装置700の構成を簡易化する効果が得られる。さらに、このようにすることで、多重数2の空間多重信号を復元する受信回路に、第1信号分離部730を追加するだけで、多重数4の空間多重信号を復元する受信回路を構成することができる。
(実施の形態5)
実施の形態1においては、送信側の無線通信装置100において、1系統の送信データに符号化を施して、符号化された送信データを直並列変換し、アンテナ数と同じN個の並列データ系列を生成した。これに対して、実施の形態5においては、送信側の無線通信装置において、1系統の送信データを、アンテナ数Nよりも小さい数の並列送信データに直並列変換し、並列送信データごとに符号化を施して、符号化された並列送信データごとに直並列変換を施し、全体としてアンテナ数と同じN個の並列データ系列を生成する。
図22に示すように実施の形態5の無線通信装置800は、送信信号構成部820を有する。この送信信号構成部820は、符号化部821−1、2と、S/P変換部822−1、2と、S/P変換部826とを有する。
S/P変換部826は、データ生成部110で生成された、1系統の送信データを入力し、送信データを直並列変換して、アンテナ数Nよりも小さい数の並列送信データを生成する。ここでは、2つの並列送信データが生成されている。
符号化部821は、並列送信データごとに、所定の符号化率を用いて誤り訂正符号化を施して、誤り訂正符号化後の並列送信データをS/P変換部822に出力する。
S/P変換部822は、符号化処理後の各並列送信データをさらに直並列変換して、全体としてアンテナ数と同数の並列データ系列を生成する。ここでは、2つの並列送信データのそれぞれが、さらに2つの並列データ系列に直並列変換されて、全体として4つの並列データ系列が生成される。そして、各送信データ系列は、インターリーバ123に入力される。
送信側の無線通信装置800が上述のような構成を有することに伴い、受信側の無線通信装置900は、受信信号処理部950を有する。この受信信号処理部950は、P/S変換部953−1、2と、復号化部954−1、2と、P/S変換部956とを有する。
第1信号分離部230は、実施の形態1と同様の機能を有しているが、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、同じ並列送信データから構成される伝送信号からなる空間多重信号のグループに分離する。すなわち、第1信号分離部230は、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、符号化単位ごとで、空間多重信号のグループに分離する。
P/S変換部953は、デインターリーブ後の伝送信号を並直列変換し、符号化単位ごとの直列データ系列を出力する。
復号化部954は、P/S変換部953からの、符号化単位ごとの直列データ系列を復号化処理する。
P/S変換部956は、復号化部954において復号化処理された、符号化単位ごとの直列データ系列をさらに並直列変換して、無線通信装置100の送信データに対応する受信データを出力する。
上記構成を有する無線通信装置800および無線通信装置900の動作について説明する。
S/P変換部826では、データ生成部110で生成された1系統の送信データが、2つの並列送信データに分けられる。並列送信データはそれぞれ、符号化部821−1、821−2で、所定の符号化率で誤り訂正符号化される。
S/P変換部822−1、822−2では、各符号化データ系列がさらに2つの系列に分けられる。そして、系列毎に実施の形態1の無線通信装置100と同様の手順で、送信信号が生成される。
第1信号分離部230では、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算が施され、符号化単位ごとで、空間多重信号のグループに分離される。
第2信号分離部240では、各グループの空間多重信号が、当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離される。
P/S変換部953では、同じ符号化単位の伝送信号が、符号化単位の直列データ系列に並直列変換される。各直列データ系列は、復号化部954−1、954−2で、それぞれ誤り訂正復号化処理が施される。誤り訂正後の直列データ系列は、P/S変換部956で、一つの系列に結合されて1系統の受信データとして出力される。
このように符号化単位を複数用意することにより、通信路符号化の実行時間を符号化部の数に比例して短縮できるため、高ビットレートを要求するデータ系列の送信の際に有利である。なお、さらに多くの符号化単位を用意するために、符号化単位をアンテナと同数だけ設けてもよい。この場合の無線通信装置の構成例を図23に示す。
図23に示すように送信側の無線通信装置1000は、送信信号構成部1020を有する。この送信信号構成部1020は、符号化部1021−1〜4と、S/P変換部1022とを有する。S/P変換部1022は、データ生成部110で生成された1系統の送信データに直並列変換を施して並列データ系列を生成する。符号化部1021は、並列データ系列ごとに、すなわちそれぞれの並列データ系列を符号化単位として、符号化処理を施す。
また、符号化単位が複数用意される場合としては、図24に示すような場合が考えられる。すなわち、複数系統の送信データが存在し、各系統の送信データごとに符号化が施される場合である。図24に示すように無線通信装置1200は、データ生成部110−1と、データ生成部110−2と、送信信号構成部1220−1と、送信信号構成部1220−2とを有する。すなわち、無線通信装置1200は、複数の送信系統(図24では、2つの送信系統(送信装置1260−1、2))を有しており、複数系統の送信データから送信信号を構成して送信する。各送信信号構成部1220は、符号化部121を有している。このようにすることで、複数系統の送信データを同時に伝送することができる。なお、送信装置1260−1、2をそれぞれ独立の無線通信装置とし、両無線通信装置が同時に信号を送信する空間分割多元接続(SDMA)されていてもよい。
また、図24に示すように無線通信装置1300は、受信信号処理部1350−1と、受信信号処理部1350−2とを有する。第1信号分離部230は、実施の形態1と同様の機能を有するが、送信系統単位で、空間多重信号のグループに分離する。受信信号処理部1350は、送信側の無線通信装置1200の送信系統に対応する伝送信号ごとに、受信信号処理を行う。このようにすることで、送信データのQoSに応じて、変調部124、インターリーバ123、第2信号分離部240の信号分離部241を変更することで、効率の良い無線伝送が可能となる。
また、符号化単位が複数用意される場合としては、図25に示すような場合も考えられる。すなわち、アンテナ数と同数の系統の送信データが存在し、各系統の送信データごとに符号化が施される場合である。同図に示すように無線通信装置1400は、データ生成部110−1〜4と、送信信号構成部1420−1〜4とを有する。すなわち、無線通信装置1400は、アンテナ数と同数の複数の送信系統(同図では、4つの送信系統(送信装置1460−1〜4))を有しており、複数系統の送信データから送信信号を構成して送信する。各送信信号構成部1420は、符号化部121を有している。なお、送信装置1460−1〜4をそれぞれ独立の無線通信装置とし、当該無線通信装置が同時に信号を送信する空間分割多元接続(SDMA)されていてもよい。また、同図に示すように無線通信装置1500は、受信信号処理部1550−1〜4を有する。
なお、本実施の形態では、シングルキャリア伝送を用いているが、実施の形態4と同様にマルチキャリア伝送への適用が可能である。
また、上記無線通信装置900、1100、1300、1500は、干渉キャンセラを用いない構成としたが、実施の形態2で説明した干渉キャンセラを備えた構成をとってもよい。
また、上記無線通信装置800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500は、時空間符号化を行わない構成をとしたが、実施の形態3で説明した時空間符号化部を備える構成としてもよい。
また、本実施の形態では、送信側の無線通信装置800における符号化部821−1と符号化部821−2とは、同じ構成であることを前提として説明を行ったが、異なる構成を用いても良く、例えばそれぞれ異なるパンクチャパターンを用いることができる。このときの符号化部821−1と符号化部821−2との構成を図34に示す。なお、無線通信装置1200における符号化部121−1と符号化部121−2とでも同様であり、以下では説明を省略する。
符号化部821−1は、符号化器8211とパンクチャパターンAでパンクチャを行うパンクチャ部8213とを備える。符号化部821−2は、符号化器8212とパンクチャパターンBでパンクチャを行うパンクチャ部8214とを備える。
これに対して、受信側の無線通信装置900の復号化部954−1、954−2のデパンクチャパターンも、パンクチャパターンに対応したパターンを用いる。なお、無線通信装置1300における復号化部254−1と符号化部254−2とでも同様であり、以下では説明を省略する。
この場合、第1信号分離部230では、異なるパンクチャパターンのグループを除去するように、すなわち、同じパンクチャパターンの送信系列を同じグループにするように信号分離を行う。その後、第2信号分離部240でグループに含まれる伝送信号(送信系列)の分離を行う。このようにパンクチャパターンをグループ内で同一にすることで、信号分離部240以降、P/S変換部956までをグループ毎に独立に構成し、信号分離部240以降、P/S変換部956までの各処理をグループ毎に独立に実行することができる。
また、無線通信装置900においては、パンクチャパターンがグループ内の伝送信号(送信系列)で異なるように、第一信号分離をしてもよい。例えば、第1グループでは、x1をパターンA、x2をパターンBでパンクチャした送信系列に分割し、第2グループでは、x3をパターンA、x4をパターンBでパンクチャした送信系列に分割する。この場合の無線通信装置900における受信信号処理部950の別の構成、受信信号処理部950Aを図35に示す。
ここで、上述のとおり第1の信号分離においてパンクチャパタンーンの異なる送信系列を含むグループに分けている。一方、送信側では、パンクチャパターン毎にS/P変換部822にて並列データ系列が形成されている。そのため、受信側では、同じパンクチャパターンの並列データ系列に対して、P/S変換および復号化を施す必要があるため、図35に示すように、P/S変換部には同じパンクチャパターンの並列データ系列毎に入力されている。
(実施の形態6)
本実施の形態では、干渉キャンセラを使用せずにダイバーシチ利得を向上させる。
図26に示すように実施の形態6の無線通信装置1600は、第1信号分離部1630と、第2信号分離部1640と、ダイバーシチ合成部1660とを有する。
第1信号分離部1630は、受信部220からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、多重数Nより小さい数の伝送信号(無線通信装置100の送信信号)からなる空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部1640に出力する。特に、第1信号分離部1630は、伝送信号のすべての組み合わせに係る空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部1640に出力する。
第2信号分離部1640は、第1信号分離部1630にて分離された空間多重信号のグループを入力し、各グループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。ここでは、第2信号分離部1640は、第1信号分離部1630にて分けられるグループ数に対応する数の信号分離部1641(本実施の形態では、信号分離部241−1〜6の6つ)を有しており、各信号分離部1641が1つのグループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。
ダイバーシチ合成部1660は、第2信号分離部1640からの出力である伝送信号毎にダイバーシチ合成する。ここでは、4つの伝送信号があるため、4つのダイバーシチ合成部1661−1〜4が用意されている。
次に上記構成を有する無線通信装置1600の動作について説明する。
アンテナ210のそれぞれで受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として、第1信号分離部1630に出力される。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。
ここで、y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)、すなわち無線通信装置100からの送信系列xn(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号は、式(1)のように表される。
第1信号分離部1630は、無線通信装置100から送信される既知のパイロット信号などを利用して推定される、伝搬路変動Hに対する伝搬路変動推定値Bを用いて、受信信号y(k)に対し線形演算を行うことにより、式(2)を式(23)〜(25)に変換する。
第1信号分離部1630は、式(2)を式(23)〜(25)に変換する任意の線形演算を用いることができる。例えば、実施の形態1で示した方法を、式(2)の行を入れ替えて3回行うことで変換できる。ここで、式(23)から、v11、v12はx1、x2の成分のみ、v13、v14はx3、x4の成分のみ、v21、v22はx1、x3の成分のみ、v23、v24はx2、x4の成分のみ、v31、v32はx1、x4の成分のみ、v33、v34はx2、x3の成分のみを含んでいることがわかる。すなわち、第1信号分離部1630は、多重数4の空間多重信号を、適切な線形演算によりグループを構成する伝送信号(送信系列)が異なる3種類のグループ分けに基づいて、信号分離を行う機能を提供する。
第1信号分離部1630にて分離された空間多重信号のグループは、第2信号分離部1640に入力される。第2信号分離部1640では、各グループの空間多重信号が当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離される。具体的には、第1グループのv11とv12とは、信号分離部1641−1でx11、x21に分離される。第2グループのv13とv14とは、信号分離部1641−2でx31、x41に分離される。第3グループのv21とv22とは、信号分離部1641−3でx12、x32に分離される。第4グループのv23とv24とは、信号分離部1641−2でx22、x42に分離される。第5グループのv31とv32とは、信号分離部1641−2でx13、x43に分離される。第6グループのv33とv34とは、信号分離部1641−2でx23、x33に分離される。
第2信号分離部1640において、空間多重信号の各グループに含まれる伝送信号を分離するアルゴリズムとしては、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Detection)などを利用することができる。ただし、MLDによる分離手法を利用することにより、ダイバーシチ利得(但し、送信側および受信側のアンテナが2本ずつの空間多重伝送(2×2の空間多重伝送)にて得られるダイバーシチ利得に相当)を得ることができる。
ダイバーシチ合成部1660では、第2信号分離部1640からの出力である伝送信号ごとにダイバーシチ合成する。具体的には、ダイバーシチ合成部1661−1は、x11とx12とx13とを用いてダイバーシチ合成を行う。また、ダイバーシチ合成部1661−2は、x21とx22とx23とを用いてダイバーシチ合成を行う。ダイバーシチ合成部1661−3は、x31とx32とx33とを用いてダイバーシチ合成を行う。ダイバーシチ合成部1661−4は、x41とx42とx43とを用いてダイバーシチ合成を行う。ダイバーシチ合成アルゴリズムとしては、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR:Signal-to-Noise power Ratio)を最大にする最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)ダイバーシチや、ダイバーシチ合成後の信号対干渉雑音電力比(SINR:Signal-to-Noise plus Interference power Ratio)を最大にするMMSE合成ダイバーシチや、最も信頼度の高いブランチを選択して出力する選択合成ダイバーシチ等を用いることができる。
ダイバーシチ合成後の信号系列、すなわち各伝送信号は、受信信号処理部250で受信信号処理され、受信データとして出力される。
このように本実施の形態によれば、多重数4の空間多重信号を、第1信号分離部1630で6つの多重数2の空間多重信号の組に分離し、その後それぞれを第2信号分離部1640で信号分離を行う。さらに、同じ送信系列に対する第2信号分離部1640の出力をダイバーシチ合成する。これにより、多重されている他の送信信号が、異なる3つの第2信号分離部1640の出力を合成することによるダイバーシチ利得が得られる。その結果、実施の形態2で示した干渉キャンセル手段を用いる構成とは別の構成で、実施の形態1の構成を用いた場合よりも、高いダイバーシチ利得を得る無線通信装置を構成することができる。
なお、本実施の形態では、第2信号分離部1640から出力されるIQ平面上の信号を用いてダイバーシチ合成を行う構成としたが、復調部でIQ平面上の信号を復調した後に得られるビット毎の尤度情報を用いてダイバーシチ合成を行ってもよい。この場合の無線通信装置の構成例を図27に示す。同図に示すように無線通信装置1700は、受信信号処理部1750を有する。受信信号処理部1750は、復調部251−1〜12と、ダイバーシチ合成部1755−1〜4を有する。このような構成にすることで、ビット毎に異なる重み係数を用いてダイバーシチ合成を行えるため、受信特性が良くなるという効果が得られる。
また、本実施の形態では、第2信号分離部1640から出力されるIQ平面上の信号を用いてダイバーシチ合成を行う構成としたが、図28に示すような無線通信装置1800のような構成でもよい。無線通信装置1800は、受信信号処理部1850を有する。無線通信装置1800は、無線通信装置1600の復調手段をユークリッド距離算出部1851と尤度算出部1857と置き換え、ユークリッド距離算出部1851によって算出されたユークリッド距離を用いて、ダイバーシチ合成部1855においてダイバーシチ合成を行った後に、尤度算出部1857において尤度情報を算出する構成となっている。このようにすることで、対象となるビットが1である場合のユークリッド距離と、0である場合のユークリッド距離とのそれぞれを用いて、詳細にダイバーシチ合成を行えるため、受信特性が良くなるという効果が得られる。
(実施の形態7)
本実施の形態においては、受信信号処理を行った後のデータ系列を用いて候補点削減を行う。
図29に示すように実施の形態7の無線通信装置1900は、候補点削減信号分離部1970を有する。
候補点削減信号分離部1970は、受信信号処理部250Aにおける受信信号処理後の信号、具体的には一度復号された受信データを用いて、受信系列の候補点削減を行う。候補点削減の方法は、文献(村上、小林、折橋、松岡著、MIMOシステムにおける部分ビット判定を利用した尤度判定方法の検討、電子情報通信学会、信学技報IT2003−90、ISEC2003−130、WBS2003−208、pp97−102,2004年3月)で明らかにされている。
候補点削減信号分離部1970―1は、各アンテナ210にて受信された空間多重信号から、第2グループの伝送信号(送信系列)に対応する復号データを用いて候補点削減を行い、その後MLDを用いて信号分離を行う。また、候補点削減信号分離部1970−2は、各アンテナ210にて受信された空間多重信号から、第1グループの伝送信号(送信系列)に対応する復号データを用いて候補点削減を行う。
次に上記構成を有する無線通信装置1900の動作について説明する。
アンテナ210のそれぞれで受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として第1信号分離部230に出力される。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。
ここで、y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)は、すなわち無線通信装置100からの送信系列xn(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号として、式(1)のように表される。
候補点削減信号分離部1970では、受信信号処理部250Aにおける受信信号処理後の信号、すなわち一度復号された受信データを用いて、受信系列の候補点削減が行われる。具体的には、候補点削減信号分離部1970―1では、受信系列から、第2グループの伝送信号(送信系列)に対応する復号データを用いて候補点削減が行われ、その後MLDを用いて信号分離が行われる。このようにすることで、例えば変調方式に16QAMを用いる場合、候補信号点が65536から256に削減されるため、現実的なハードウェア規模でMLDを実現できる。
また、候補点削減信号分離部1970−2では、受信系列から、第1グループの伝送信号(送信系列)に対応する復号データを用いて候補点削減が行われ、その後MLDを用いて信号分離が行われる。受信信号処理部250Bでは、候補点削減信号分離部1970で分離された伝送信号(信号系列)に、受信信号処理部250Aと同様の処理が行われ、受信データが出力される。このようにすることで、MLDの演算規模の削減と、受信品質の改善を実現することができる。
上記説明においては、受信信号処理部250Aの他に受信信号処理部250Bを設けたが、受信信号処理部250Bを設けずに、候補点削減信号分離部1970の出力を受信信号処理部250Aにフィードバックする構成としてもよい。
なお、本実施の形態では、候補点削減信号分離部1970―1は、受信系列からx3、x4に対応する復号データを用いて候補点削減を行い、その後、MLDを用いて信号分離を行い、候補点削減信号分離部1970−2は、受信系列から第1グループの送信系列に対応する復号データを用いて候補点削減を行う構成としたが、送信系列の多値変調を構成するビットの一部を削減するという構成にしてもよい。このようにすることでも、MLDの演算規模の削減と、受信品質の改善を実現することができる。
(実施の形態8)
実施の形態8では、第1信号分離部における線形演算を、伝搬路応答行列の特異値分解から得られるウェイトを乗算することにより実現する。
図30に示すように実施の形態8の無線通信装置2000は、第1信号分離部2030を有する。
第1信号分離部2030は、受信部220からの空間多重信号(多重数N、同図ではN=4)に線形演算を施し、多重数Nより小さい数の伝送信号(無線通信装置100の送信信号)からなる空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部240に出力する。具体的には、第1信号分離部2030は、その線形演算を、伝搬路応答行列の特異値分解から得られるウェイトを乗算することにより行う。
次に上記構成を有する無線通信装置2000の動作について説明する。
無線通信装置100の、Ns個のアンテナからそれぞれ送信信号が送信される。ここで、Ns個のアンテナを、M(n)個のアンテナずつNt個のグループに分けて説明をする。送信系列xn(k)は、第n番目のグループから無線端末装置2000へ送信する離散時刻kにおける送信系列を示す。ここで、nはNt以下の自然数であり、複数のアンテナ(M(n)≧1)を用いて、複数M(n)個の送信系列xn(k)を並列的に送信する場合、送信系列xn(k)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
以下では、無線端末装置100で送信に用いられるアンテナ数と送信系列の数とが、同数である場合を説明する。また、送信系列よりも多くのアンテナ数を用いて送信することも可能であり、その場合は、所望の指向性を形成する指向性ウェイトを送信系列に対し、乗算する方法、または、STBC(Space Time Block coding)のような時空間符号化を施す方法で実現できる。
アンテナ210−1〜Nrのそれぞれで受信された多重数Nsの空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜4において、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として第1信号分離部2030に出力される。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。
ここで、受信信号y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)、すなわち無線通信装置100からの送信系列x
n(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号は、式(26)のように表される。
式(26)中のHnは、第n番目のグループにおける送信系列xn(k)が受ける伝搬路変動を示し、(無線基地局アンテナ数Nr)行×(第n番目のグループにおける送信アンテナ数M(n))列からなる行列である。n(k)は、無線通信装置2000のアンテナ210で受信時に付加されるNr個の要素をもつ雑音ベクトルを示す。H(k)のi行j列の行列要素hijは、無線通信装置100の第j番目のアンテナから送信された信号が、無線通信装置2000の第i番目のアンテナ210で受信される場合の伝搬路での伝搬路変動を示す。
第1信号分離部2030は、無線通信装置100から送信される既知のパイロット信号などを利用して、推定された伝搬路変動Hnに対する伝搬路変動推定値Bnを用いて、異なるグループからの信号を分離するグループ分離ウェイトを生成し、受信信号y(k)に対し乗算演算を行う。
ここで所望の第n番目のグループに対するグループ分離ウェイトW
nは、式(27)に示すように、所望の第n番目のグループを除く伝搬路変動推定値B
jから構成される行列G(n)に対し(ただし、j≠n)、特異値分解を用いて生成する。
式(27)中のHは、複素共役転置を行う演算子である。すなわち、送信系列がトータルでMs個であり、受信アンテナ数Nrとする場合に、伝搬路変動推定値G(n)の左特異行列Uを構成する列ベクトル(左特異ベクトル)u
jのうち、所望の第n番目を除くグループjが、j=(Ms+1)、...、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルu
jを選択する。式(28)のように、選択された左特異ベクトルu
jを用いてグループ分離ウェイト行列Wnとする。
選択された各左特異ベクトルu
jは、所望の第n番目のグループからの送信系列x
n(k)を除く送信信号に、指向性ヌルを向けるウェイトとなる。なお、グループ分離ウェイトを生成するためには、(無線通信装置1からの全ての送信系列数)≦(無線通信装置のアンテナ数Nr)の条件を満たす必要がある。
このように生成されたグループ分離ウェイトWnを用いて、無線通信装置2000での受信信号y(k)に対し、式(29)に示すように乗算することで、他のグループからの干渉信号成分を低減した信号yn(k)を得ることができる。
ここで、nはNt以下の自然数である。また、チャネル推定が理想的に行われた場合、式(29)のような関係が得られるため、式(30)は、式(31)に示すように変形することができ、yn(k)は他の無線端末装置100からの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。
第2信号分離部240では、グループ分離信号yn(k)に対し、信号分離処理が行われる。グループ分離信号yn(k)は、信号分離処理により、個別の伝送信号(送信系列)に分離される。この場合の第n番目のグループの送信系列x
n(k)に対する受信信号の分離は、式(32)に示すチャネル推定値B
nにユーザ間分離ウェイトWnを乗算した結果得られる、ユーザ間分離ウェイト乗算後のチャネル推定値Fnに基づいて行われる。
第2信号分離部240では、空間多重信号の各グループから、伝送信号を分離するアルゴリズムとしては、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Detection)などを利用することができる。ここで、MLDによる分離手法を使う場合は、グループ毎に、他のグループからの干渉信号が除去された信号を用いることから、MLDの際の信号点候補を削減することができ、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。
また、分離アルゴリズムは、一つの手法を固定的に使用してもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数等に応じて適応的に変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合はMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合は、MMSE等の線形手法の適用が考えられる。
無線通信装置2000は、個別の伝送信号(送信系列)に分離された各信号に対し、復調処理、デインターリーブ処理、復号化処理を実施し、受信データを再生する。
このように本実施の形態によれば、無線通信装置100からの伝送信号を複数のアンテナを介して受信する無線通信装置2000において、各アンテナで受信した空間多重信号を複数のグループに分け、そのグループを一つの単位として、他グループの干渉を除去した信号として抽出する。これにより、第1信号分離部2030の後続の処理は、グループ個別に受信復号処理を適用することが可能となる。従って、送信系列が複数である場合、最終的にパラレルデータを直列データに変換する必要がある。
しかし、本実施の形態では、グループ毎に受信復号処理が同時並列に行えるため、並直列変換手段への入力データがウェイトされることない。また、本実施の形態では、新たに入力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもないため、データ処理遅延を小さくし、またメモリ増によるハードウェア増加を抑えることができる。
また、受信特性としても、現実的なハードウェア規模でもって、従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。因みに、第1信号分離部2030に代わり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、送信系列を取り出すことが可能である。しかし、STBC(Space Time Block Coding)、STTC(Space Time Trellis Coding)といった時空間符号を施している場合や、同じグループからの複数の送信系列が含まれる場合は、それらを分離受信する受信ウェイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用してしまい、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。
また、第1信号分離部2030に代わり、従来のMLDに基づく一括分離処理を導入することも可能である。しかし、その場合、本実施の形態よりも受信特性は優れるが、全ての送信アンテナからの送信系列に対しMLD処理を行うと、MLDによる処理量は、送信系列数とその変調多値数とに対し指数関数的に増大するため、現実的なハードウェアの実現が困難となる。
なお、本実施の形態では、信号分離部241をグループ数Ntと同じ数だけ設けているが、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度をグループ毎に設定して、逐次的に第2信号分離部240への入力を切り替える構成としてもよい。これにより、信号分離部241を、グループ数より少ない数にでき、ユーザによっては、伝送データを復元するまでの処理遅延が大きくなるが、無線通信装置2000の構成を簡易化する効果が得られる。
また、本実施の形態の無線通信装置2000は、実施の形態2で説明した干渉キャンセラの構成をとってもよい。
また、本実施の形態の無線通信装置2000は、時空間符号化を行わない構成をとっているが、実施の形態3で説明した時空間符号化部を備える構成としてもよい。これにより、多重数Nsの空間多重信号に対するMLDを使うことなく、現実的なハードウェア規模でフルダイバーシチ利得に近い受信特性を得ることができる。また、受信回路の多くは、Nsより小さい多重数M(n)の空間多重信号の受信回路と共通の要素が多いので、回路規模の削減、開発コストの削減といった効果がある。
また、本実施の形態における無線通信装置100は、図19で示されるように、同じ時空間符号化部において、符号化された送信系列を一つのグループにまとめてもよい。このようにすることで、グループ間干渉除去と時空間復号化とを独立に行えるため、時空間符号化による符号化利得、ダイバーシチ利得を得ることができる。
(実施の形態9)
実施の形態9では、時空間符号化した複数の送信信号(信号系列)を、空間的に距離が離れた複数のアンテナを用いて送信することを特徴とする。
図31に示すように、実施の形態9の無線通信装置2100は、送信信号構成部2120を有する。送信信号構成部2120は、時空間符号化部2125を有する。
時空間符号化部2125は、並列データ系列を入力し、時空間符号化処理を施して時空間符号化系列を生成する。時空間符号化部2125は、時空間符号化系列を、隣接していないアンテナ、すなわち空間的に距離が離れたアンテナに送信信号として送出する。ここでは、変調部124によって、IQ平面上にマッピングされたベースバンド信号を、B. Vucetic and J. Yuan, ‘ Space-Time Coding’, Wileyに開示されているSTBCのようなブロック符号化が適用されるものとし、1つの情報系列を2つの時空間符号化系列に符号化するSTBCが用いられるものとする。
送信アンテナ140−1〜4は、直線上に140−1、140−2、140−3、140−4の順番で配置されている。また、時空間符号化部2125−1から出力される2つの時空間符号化された信号は、それぞれ送信部131―1、131−3に送られ、送信アンテナ140−1、140−3から送信する。一方、時空間符号化2125−2から出力される2つの時空間符号化された信号は、それぞれ送信部131―2、131−4に送られ、送信アンテナ140−2、140−4から送信する。
本構成を用いることで、同じ時空間符号化部2125で時空間符号化された送信系列間の空間相関を低くできるため、受信側での時空間復号時に大きなダイバーシチ利得を得ることができる。
なお、本実施の形態において、無線通信装置2100の送信アンテナ140は、直線上に配置されるという構成を採ったが、各送信アンテナ140を、多角形の頂点や円の円周上、多角形の辺上に配置する構成にしてもよい。このような形状でも空間的に距離の離れた送信アンテナを選択してグループ分けをすることで空間相関を低くすることができる。
また、本実施の形態では、送信ストリーム数が2、送信アンテナ数が4の場合(2×4時空間符号化)の構成を示したが、他の時空間符号化の構成でもよい。例えば、送信ストリーム数が2、送信アンテナ数が3の場合は、図32に示す様な構成とすることができる。図32に示すように、無線通信装置2200は、送信信号構成部2220を有する。送信信号構成部2220は、時空間符号化部2125を有し、1系統の送信データから生成される並列データ系列のうち、一部の並列データ系列に時空間符号化を施して、送信信号を生成する。
時空間符号化部2125は、時空間符号化系列を、隣接していないアンテナ、すなわち空間的に距離が離れたアンテナに送信信号として送出する。図32では、送信アンテナ140−1と送信アンテナ140−3との距離が最も離れるように配置されており、時空間符号化部2125から出力される2つの送信系列は、それぞれ空間的に距離の離れた送信アンテナから送信される。
また、図32に示すように受信側の無線通信装置2300は、第1信号分離部2330と、第2信号分離部2340とを有する。第2信号分離部2340は、時空間復号化部541を有する。第1信号分離部2330は、受信信号系列を時空間符号化された送信系列の組と、時空間符号化されていない送信系列に分離する。その後、時空間復号化部541は、時空間符号化された送信系列の復号を行う。このようにすることで、時空間符号化された送信系列間の空間相関を下げることができ、時空間符号化利得を高めることができる。
また、送信ストリーム数3、送信アンテナ数4の場合は、図33に示す様な構成とすることができる。同図に示すように無線通信装置2400は、送信信号構成部2420を有する。時空間符号化部2125で時空間符号化された送信系列は、送信アンテナ140−1および140−4から送信される。このようにすることで、時空間符号化された送信系列間の空間相関を下げることができ、時空間符号化利得を高めることができる。また、受信側の無線通信装置2500は、第1信号分離部2530と、第2信号分離部2540とを有する。第1信号分離部2530は、受信信号系列を時空間符号化された送信系列の組と、時空間符号化されていない送信系列に分離する。第2信号分離部2540は、時空間復号化部541と、信号分離部241とを有しており、時空間復号化部541で時空間符号化された送信系列の組を分離し、信号分離部241で時空間符号化されていない送信系列を分離する。
なお、時空間符号化部2125において時空間符号化された送信系列を、送信アンテナ140−1および送信アンテナ140−3、時空間符号化されていない2つの送信系列を送信アンテナ140−2および送信アンテナ140−3を用いて送信してもよい。このようにすることで、時空間復号化部541、信号分離部241のそれぞれにおいて、空間相関の低い状態で処理を実施できるため、受信特性を改善できる。
(実施の形態10)
実施の形態10では、受信側の無線通信装置の受信アンテナ数が、送信側の無線通信装置の送信アンテナ数より多い場合の構成を開示する。以下では、一例として送信側の無線通信装置の送信アンテナ数を4、受信側の無線通信装置の受信アンテナ数を6として説明を行う。
図36は、受信側の無線通信装置2600の構成を示す図である。同図に示すように、無線通信装置2600は、受信部2620と、第1信号分離部2630と、第2信号分離部2640と、受信信号処理部250とを有する。受信部2620は、受信部221−1〜6を有する。第2信号分離部2640は、2つの信号分離部2641−1と、信号分離部2641−2とを有する。受信信号処理部250は、復調部251−1〜4と、デインターリーバ252−1〜4と、P/S変換部253と、復号化部254とを有する。
受信部221−1〜6は、それぞれ対応するアンテナ210を介して受信する空間多重信号に、無線受信処理(ダウンコンバート、A/D変換など)を施して、無線受信処理後の空間多重信号を第1信号分離部2630に出力する。
第1信号分離部2630は、受信部2620からの空間多重信号(多重数N)に線形演算を施し、多重数Nより小さい数の伝送信号(無線通信装置100の送信信号)からなる空間多重信号のグループに分離して、第2信号分離部2640に出力する。
第2信号分離部2640は、第1信号分離部2630にて分離された空間多重信号のグループを入力し、各グループの空間多重信号を当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。ここでは、第2信号分離部2640は、第1信号分離部2630にて分けられるグループ数に対応する数の信号分離部2641(本実施の形態では、信号分離部2641−1、2の2つ)を有している。各信号分離部2641が、1つのグループの空間多重信号を、当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離する。
復調部251は、第2信号分離部2640にて分離された伝送信号(無線通信装置100の送信信号)ごとに、無線通信装置100での変調方式に対応する復調処理を行う。
デインターリーバ252は、復調処理後の伝送信号ごとに、無線通信装置100でのインターリーブパターンに対応するパターンでデインターリーブする。
P/S変換部253は、デインターリーブ後の伝送信号を、無線通信装置100での直並列変換とは逆に並直列変換し、直列データ系列を出力する。
復号化部254は、直列データ系列に、無線通信装置100での符号化方式に対応する復号化処理を施して、無線通信装置100の送信データに対応する受信データを出力する。
次に、無線通信装置2600の動作について説明する。送信側の動作は実施の形態1での無線通信装置100の説明と同様なので省略する。
無線通信装置2600において、6本のアンテナ210で受信された多重数N(N=4)の空間多重信号は、それぞれ受信部221―1〜6にて、増幅および周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換される。さらに、A/D変換器は、ベースバンド信号を、複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として、第1信号分離部2630に出力する。なお、ここでは、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立がなされていることを前提として説明している。
ここで、受信信号y(k)は、各アンテナ210を介して受信された受信信号を要素として含む列ベクトルである。この受信信号y(k)、すなわち無線通信装置100からの送信系列xn(k)に対応する、フラットフェージング伝搬環境下で得られる離散時刻kにおける受信信号は、式(33)のように表される。
式(33)中のH(k)は、無線通信装置100の送信系列xn(k)が受ける伝搬路変動を示し、(無線通信装置2600の受信アンテナ数:6)行×(無線通信装置100の送信アンテナ数:4)列からなる行列である。n(k)は、無線通信装置2600のアンテナ210で受信時に付加される6つの要素をもつ雑音ベクトルを示す。
式(33)を詳細に記載すると、式(34)のようになる。
H(k)のi行j列の行列要素h
ijは、無線通信装置100の第j番目のアンテナ140から送信された信号が、無線通信装置2600の第i番目のアンテナ210で受信される場合の伝搬路での伝搬路変動を示す。
第1信号分離部2630は、無線通信装置100から送信される既知のパイロット信号などを利用して推定される、伝搬路変動Hに対する伝搬路変動推定値Bを用いて、受信信号y(k)に対し線形演算を行うことにより、式(34)を式(35)に変換する。
第1信号分離部2630は、式(34)を式(35)に変換する任意の線形演算を用いることができる。以下に、第1信号分離部2630が実行する線形演算の一例を示す。
まず、ステップ1として、
を行う。その結果、式(36)が得られる。
ステップ2として、
を行う。その結果、式(37)が得られる。
ステップ3として、
を行う。その結果、式(38)が得られる。
ステップ4として、
を行う。その結果、式(39)が得られる。
このように第1信号分離部2630は、上記ステップ1〜4の線形演算を行うことで、式(35)に表される式を得る。ここで、送信系列x1、x2を第1グループと、x3、x4を第2グループと定義すると、式(35)のv1、v2、v3は、第1グループの成分(伝送信号)のみを含んでおり、v4、v5、v6は、第2グループの成分(伝送信号)のみを含んでいることがわかる。つまり、第1信号分離部2630は、多重数4の空間多重信号に対し、2つのグループ間の干渉を除去するZF(Zero Forcing)演算を行い、2つの多重数2の空間多重信号からなるグループに分離している。因みに、上記ステップ1〜4の線形演算は、ZF(Zero Forcing)演算であるが、通常行うように空間多重信号に含まれる全ての伝送信号を、分離する最終段階までは演算を行わず、その手前で演算を止めている。
第1信号分離部2630にて分離された空間多重信号のグループは、第2信号分離部2640に入力される。第2信号分離部2640では、各グループの空間多重信号が当該空間多重信号に含まれる各伝送信号に分離される。具体的には、第1グループのv1(k)、v2(k)、v3(k)は信号分離部241−1に入力され、信号分離部2641−1でx1(k)、x2(k)に分離される。第2グループのv4(k)、v5(k)、v6(k)は、信号分離部2641−2で同様に処理される。
第2信号分離部2640において、空間多重信号の各グループから伝送信号を分離するアルゴリズムとしては、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Detection)などを利用することができる。ただし、MLDによる分離手法を利用することにより、ダイバーシチ利得(但し、送信側のアンテナ数が2,受信側のアンテナが3本の空間多重伝送(2×3の空間多重伝送)にて得られるダイバーシチ利得に相当)を得ることができる。
ここで、4×6の空間多重伝送において、MLDによる1段階の分離処理を用いて、全ての伝送信号を分離しようとしても、演算量が非常に多くなるため、処理時間が長くなり、また、ハードウェアも現実的な規模で実現することが難しい。しかしながら、上述のとおり分離処理を2段階に分けることにより、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。
すなわち、第1段階の分離処理を行う第1信号分離部2630では、空間多重信号に線形演算を施して、空間多重信号の多重数Nより小さい数の伝送信号からなる空間多重信号のグループに分離され、グループ間の干渉が除去される。そして、第2段階の分離処理を行う第2信号分離部2640では、第1信号分離部2630において他のグループからの干渉信号が除去された信号を用いて分離処理を行う。このため、第2段階の信号分離にMLDを利用しても、MLDの際の信号点候補を削減することができるため、現実的なハードウェアでの実現が可能となる。さらに、分離処理を2段階に分けることにより、4×6の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得には及ばないが、2×3の空間多重伝送にて得られるダイバーシチ利得を得ることができる。
第2信号分離部2640において分離された各伝送信号は、復調部251において復調され、デインターリーバ252においてデインターリーブされて、P/S変換部253に入力される。具体的には、第1グループの信号系列x1(k)、x2(k)は、それぞれ復調部251−1、2において、所定の変調方式によるシンボルデータ列からビットデータ列に変換される。復調部251−1、2において得られたビットデータ列は、デインターリーバ252−1、2において、送信側で施されたインターリーブと逆の動作によりビット順が復元される。第2グループの信号系列x3(k)、x4(k)についても、同様の処理が行われる。
デインターリーバ252においてビット順が復元されたビットデータ列は、P/S変換部253で並直列変換され、直列データ系列として出力される。復号化部254では、直列データ系列に対して、無線通信装置100での符号化方式に対応する復号化処理が施され、無線通信装置100の送信データに対応する受信データを出力する。
なお、第2信号分離部2640の信号分離部2641における分離アルゴリズムは、信号分離部2641間で同じでもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数などに応じて固定的または適応的にそれぞれ変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合にはMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合には、MMSEなどの線形手法の適用が考えられる。
このように本実施の形態によれば、無線通信装置100から送信された伝送信号を複数のアンテナを介して受信する無線通信装置2600において、各アンテナで受信した空間多重信号を複数のグループに分ける。次に、第1信号分離部2630が、グループを一つの単位として、グループ間干渉を除去するZF演算による信号分離を行う。その後に、第2信号分離部2640が、各グループに含まれる伝送信号に分離する。
これにより、第1信号分離部2630の後続の処理には、例えば、多重数の2の空間多重信号を3つの受信系列を用いて分離するために構成された、従来の回路(2×3MIMOの受信回路)を、そのまま使用することができる。その結果、複数の多重数の空間多重信号の受信に対応した無線通信装置において、受信回路を異なる多重数で一部共用化することができ、無線通信装置のハードウェア規模を削減できる。また、複数の多重数の受信に対応させるために新規に開発する回路が少なくなり、ハードウェアの開発コストを削減できる。
また、第1信号分離部2630の後続の処理は、グループ個別に受信復号処理を適用することが可能となるため、送信系列が複数である場合、最終的にパラレルデータを直列データに変換する必要がある。しかし、本実施の形態では、グループ毎に受信復号処理が同時並列に行えるため、並直列変換部253への入力データがウェイトされることなく、また、新たに入力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもないため、データ処理遅延を小さくし、またメモリ増によるハードウェア増加を抑えることができる。
また、受信特性としても、空間多重信号をZF、MMSEなどにより、1段階で前記空間多重信号を伝送信号に分離するよりも、良好な特性を得ることができる。なぜなら、ZF、MMSEなどの線形処理を用いて信号分離を行うと、複数アンテナで受信したことによるダイバーシチ利得がなくなってしまう。しかし、本構成を用いると、第1信号分離部2630で各グループに分離した後に、グループ毎にMLDを使用することができるので、2ブランチ分のダイバーシチ利得を得ることができるためである。
ここで、4×6の空間多重伝送において、多重数4の信号を直接MLDで分離すれば、6ブランチ分のダイバーシチ利得が得られるが、16QAMや64QAMなどの信号点の多い変調方式を用いる場合は、信号点の数が飛躍的に増大するため、現実的なハードウェア規模での実装は困難になってしまう。
また、チャネル行列の特異値分解や、チャネル行列とそのエルミート転置行列との積からなる行列の固有値分解等に基づいた送信ウェイトを乗算して送信すれば、受信側でMLDを用いることなく最適な受信特性を得ることができるが、送信側へのチャネル行列のフィードバック並びに、特異値分解や固有値分解の演算が必要になってくるため、実装が難しくなってしまう。
これに対して、本実施の形態では、第2信号分離部2640が信号分離部2641を2つ備える構成とし、第1信号分離部2630の後段に第1グループ用と第2グループ用に信号分離部2641、復調部251、デインターリーバ252から構成される多重数2の空間多重信号を受信する受信系統(2×3MIMOの受信系統)を独立に備える構成とした。なお、これに限定されるものではなく、1つの2×3MIMOの受信系統を第1グループと第2グループで時分割して使用する構成にしてもよい。
上記の構成にすることで、2×3MIMOの受信系統に、第1信号分離部230を追加することで、多重数4の空間多重信号を受信する回路構成(4×6MIMOの受信回路)を実現できる。また、この場合、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を第1信号分離後のグループ毎に設定して、逐次的に第2信号分離部2640への入力を切り替える構成も可能である。これにより、無線通信装置2600の構成を簡易化する効果が得られる。
また、本実施の形態では、第1信号分離部2630は、x1(k)とx2(k)とを第1グループ、x3(k)とx4(k)とを第2グループとして信号分離を行う構成としたが、グループに含まれる送信系列xn(k)の組は異なっていてもよい。例えば、QoSが等しい又は近い2つの送信系列を同じグループとし、送信系列のQoSに基づき適当な信号分離部2641を用いる構成とすれば、QoSが高い送信系列からなるグループの信号分離部2641にはMLD、QoSが低い送信系列のグループの信号分離部2641にはMMSEを使うことができる。
また、第1信号分離部2630において、グループを構成する送信系列xnの組を決定する評価基準としては、既に実施の形態1で述べた方法を用いても良い。
また、本実施の形態では、図36の構成を用いて説明を行ったが、受信機の構成はこれに限るものではない。実施の形態2で述べたような干渉キャンセラを用いる構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態3および実施の形態9で述べたような時空間符号化を用いる構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態4で述べたようなマルチキャリア通信方式を適用した構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態5で述べたような符号化器の数が異なる構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態6で述べたようなダイバーシチ合成を行う構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態7で述べたような信号点削減を行う構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。実施の形態8で述べたようなウェイト乗算による構成における、第1信号分離部にも同様に適用することができる。