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JP2007291238A - 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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JP2007291238A JP2006120707A JP2006120707A JP2007291238A JP 2007291238 A JP2007291238 A JP 2007291238A JP 2006120707 A JP2006120707 A JP 2006120707A JP 2006120707 A JP2006120707 A JP 2006120707A JP 2007291238 A JP2007291238 A JP 2007291238A
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Abstract

【課題】プリプレグ用のマトリックス樹脂として、自己接着強度の向上に必要な靭性を向上し、かつ、プリプレグの生産性及び保存安定性を向上するようにした繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン又は芳香族ポリアミンから選ばれるアミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)、融点が150℃以上の有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び常温で固形の熱硬化性樹脂(E)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)が粒子状に分散していることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、ハニカムパネルの面板用自己接着性プリプレグのマトリックス樹脂として好適なエポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂にする繊維強化複合材料は、その優れた力学物性などから、航空機、自動車、産業用途に幅広く使用されている。特に航空機用構造材料や内装材においては、軽量化の観点から、ハニカムパネルの面板として繊維強化複合材料を用いるケースが増加している。この場合、ハニカムパネルをさらに軽量化し、成形コスト低減のため繊維強化複合材料のプリプレグをハニカムコアに接合するのにフィルム接着剤を使用せず、直接接着させる自己接着技術が求められている。
しかし、フィルム接着剤を使用しないようにするためには、プリプレグのマトリックス樹脂による自己接着強度の向上が必要であり、自己接着強度を向上させるためにはハニカムコアとプリプレグの接合面に形成されるフィレットの形状及び強度を向上することが重要である。フィレットの強度はマトリックス樹脂の硬化物の靭性に左右され、フィレットの形状は加熱硬化時におけるマトリックス樹脂の粘度との関係が深く、最低粘度が高いほど良好な形状が得られる。すなわち、樹脂硬化物の靭性及び加熱硬化時の樹脂粘度が適正でないとフィレットによる十分な接着強度が得られない。
一方、プリプレグの加熱硬化前では、マトリックス樹脂の粘度は低い方が好ましい。プリプレグを取り扱う常温領域の樹脂粘度が低ければ、タック性・ドレープ性を良好に維持することができ、またプリプレグ含浸前の樹脂フィルム作製工程において、温度60〜90℃くらいの範囲で樹脂粘度が低ければ、プリプレグの生産効率を向上することができるからである。
特許文献1は、マトリックス樹脂となるエポキシ樹脂組成物の硬化剤としてアミン系硬化剤と共にジシアンジアミドを使用することにより、ハニカムコアに直接接着させるとき強度の良好なフィレットを形成し、接着強度を向上することができるとしている。しかし、ジシアンジアミドを添加すると、エポキシ樹脂との反応活性が高くなるため、若干の温度上昇でもエポキシ樹脂との硬化反応を起こしやすく、例えば樹脂フィルム作製時に樹脂粘度が連続的に上昇するためプリプレグの生産効率を低下させていた。また、プリプレグを、作業環境で保管している間に硬化反応が進み、プリプレグのタック性・ドレープ性が失われやすいという問題があった。
また、このマトリックス樹脂は、樹脂硬化物の靭性をある程度改良するもののハニカムとプリプレグとを直接接着させる場合に形成されるフィレットの強度を向上するための靭性向上には必ずしも十分ではなく機械的特性が不足していた。
特開昭58−83022号公報
本発明の目的は、プリプレグ用のマトリックス樹脂として、自己接着強度の更なる向上を図ると共に、プリプレグの生産性及び保存安定性を向上するようにした繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン又は芳香族ポリアミンから選ばれるアミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)、融点が150℃以上の有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び常温で固形の熱硬化性樹脂(E)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)が粒子状に分散していることを特徴とする。
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に配合した有機酸ジヒドラジド化合物(D)は融点が150℃以上で、ジシアンジアミド(C)やアミン系硬化剤(B)よりも高融点であり、これが粒子状に非溶解で分散しているため、加熱硬化の前にはジシアンジアミド(C)とエポキシ樹脂(A)との硬化反応を阻害し、このため、プリプレグ含浸前の樹脂フィルム作製の生産性を向上することができ、またプリプレグの常温における保存安定性を向上することができる。
また、プリプレグの加熱硬化の際に高温度で加熱するときは、有機酸ジヒドラジド化合物(D)が溶解し、アミン系硬化剤(B)及びジシアンジアミド(C)が、エポキシ樹脂(A)と硬化反応を開始すると共に、粒子状の熱硬化性樹脂(E)も溶解するので、樹脂の最低粘度を増加させ良好な形状のフィレットを得ることができ、同時に樹脂硬化物の靭性を向上させることができる。このため、プリプレグのマトリックス樹脂に使用すると、プリプレグの自己接着強度をジシアンジアミドだけの場合よりも更に向上することができる。
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)は、特に限定されるものではなく、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等を使用することができ、また、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキド変性エポキシ樹脂等を用いてもよい。これらの中でも、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂又はグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の官能基の数は、特に限定されるものではないが、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個がよい。
このようなエポキシ樹脂は、具体的に、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂等が好ましく挙げられ、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン樹脂、テトラグリシジルm−キシリレンアミン樹脂、N,N−ジアミノクレゾール樹脂及びその他各種変性エポキシ樹脂や結晶性エポキシ樹脂等が好ましく挙げられる。これらのエポキシ樹脂を、単独又は2種以上を組み合わせて使用することにより、マトリックス樹脂に要求される靭性、耐熱性等の機械的特性を確保しながら、プリプレグのタック性・ドレープ性を調整することができる。
アミン系硬化剤(B)は、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン又は芳香族ポリアミンから選ばれるものであり、好ましくは芳香族ポリアミンがよい。芳香族ポリアミンとしては、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が好ましく、とりわけジアミノジフェニルスルホンが硬化物の耐熱性を高める点から好ましく、なかでも3,3′ジアミノジフェニルスルホン及び4,4′ジアミノジフェニルスルホンが特に好ましい。これらのアミン系硬化剤(B)は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ジシアンジアミド(C)は、反応活性が高く、硬化後の物性に優れるため、プリプレグ用のエポキシ樹脂組成物の硬化剤として好適に用いられる。しかし、加熱硬化を行う前に硬化反応が進みやすいので、有機酸ジヒドラジド化合物(D)の粒子を共存させて、加熱前の硬化反応を抑制するようにしている。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、融点が150℃以上、好ましくは160℃〜200℃の有機酸ジヒドラジド化合物(D)を粒子状にして配合するものである。融点を150℃以上にすることにより、加熱硬化前にジシアンジアミド(C)の硬化反応を阻害する性質に優れ、加熱硬化前に硬化反応の進行を抑制し樹脂粘度が上昇するのを抑制し、プリプレグを常温保存したときのタック性の低下を抑制することができる。例えば、塗工作業時に樹脂温度60〜90℃の状態に長時間さらされても、樹脂粘度の増加を抑制することができ、供給タンクやコーターロールの樹脂ダムに1〜2時間おかれても、樹脂粘度の増加を低く抑え、供給タンクからの排出を容易にし、かつコーターロールの運転条件を大幅に変更することなく樹脂フィルムを作製することができる。
また、加熱硬化時に有機酸ジヒドラジド化合物(D)が溶解し始めると、アミン系硬化剤(B)及びジシアンジアミド(C)が、エポキシ樹脂(A)と、硬化反応を開始するため、加熱硬化時の樹脂組成物の最低粘度を増加させフィレットの形状を良好にすると共に、樹脂硬化物の靭性を向上させることが可能となる。このため、有機酸ジヒドラジド化合物(D)は、粒子状のものを使用することが好ましく、加熱硬化時に昇温しやすく、所定の温度になるとエポキシ樹脂に容易に溶解することができる。有機酸ジヒドラジド化合物の粒子は、平均粒子径が、好ましくは100μm以下、より好ましくは5〜50μmがよい。平均粒子径を100μm以下にすると、硬化時に昇温しやすくかつ溶解しやすくなり好ましい。平均粒子径100μm以下の微細粒子は、市販品の中から適宜、入手することができる。さらに、微細な粒子を得るためには、衝撃粉砕法、噴霧乾燥法により微細化することが好ましい。なお、本発明において、「平均粒子径」とは、粉砕後の粒子の粒径と度数分布を測定し、それらの値を重量平均として算出する値をいう。
有機酸ジヒドラジド化合物(D)は、下式(I)に示すカルボン酸ジヒドラジド化合物であることが好ましい。
Figure 2007291238
式(I)において、Xは、フェニル基又は炭素数2〜18の脂肪族炭化水素基を表す。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素からなる基であり、また直鎖状、側鎖状又は脂環式のいずれであってもよい。
このような有機酸ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド及びオクタデカジエン−ジカルボヒドラジド等を好ましく挙げることができる。
なかでも、有機酸ジヒドラジド化合物(D)は、下式(II)に示すカルボン酸ジヒドラジド化合物であることが好ましい。
Figure 2007291238
本発明のエポキシ樹脂組成物は常温で固形の熱硬化性樹脂(E)を粒子状に分散させて、加熱硬化時に所定の温度に達しないと完全に溶解しないようにしている。熱硬化性樹脂(E)の粒子は、所定の温度になると、均一に溶解しエポキシ樹脂組成物の粘度を適正化し、良好なフィレットを形成するようにしている。また、熱硬化性樹脂(E)の粒子を添加することにより、熱可塑性樹脂(F)の配合量を低減することができるので、加熱硬化工程前には、樹脂の粘度を低くしてプリプレグのタック性及びドレープ性を向上させ、優れた作業性を得ることができる。さらに、熱硬化性樹脂(E)の粒子を添加すると、熱可塑性樹脂の粒子を溶解させないようにして配合した場合に比べて、エポキシ樹脂組成物の靭性を向上させる効果に優れているのでフィレットの強度を改善し、ハニカムコアとの接着強度をさらに強くして自己接着性を向上させることができる。
常温で固形の熱硬化性樹脂(E)の粒子は、エポキシ樹脂(A)に好ましくは温度90℃未満、より好ましくは60℃〜90℃で完全に溶解せず、かつ軟化点が好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃〜160℃であるとよい。なお、軟化点は、JIS K−7234に準拠して測定する値である。
本発明において、熱硬化性樹脂(E)の粒子の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、常温で固形のエポキシ樹脂、ビスマレイミド系、イソシアネート系樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂が好ましく、特に常温で固形のエポキシ樹脂、ビスマレイミド系又はイソシアネート系樹脂が好ましい。常温で固形のエポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を精製し純度を高めると共にその分子量を高くすることにより調製することができ、常温で結晶性を有する固形になり、軟化点が高くプリプレグの作業性を改善すると共に、ポロシティを改善する効果があり好ましい。
また、熱硬化性樹脂(E)の粒子は、その粒子径が、好ましくは100μm以下、より好ましくは5〜50μmであるとよい。熱硬化性樹脂(E)の粒子の粒子径をこのような範囲内にすることで、加熱硬化工程で所定の温度になると均一に溶解するため、エポキシ樹脂組成物の粘度を適正に調整することができる。なお、熱硬化性樹脂(E)の粒子の調製方法及び粒子径の測定方法は、前述した有機酸ジヒドラジド化合物(D)の粒子と同様にして、調製及び測定するものとする。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、熱可塑性樹脂(F)を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂(F)をエポキシ樹脂(A)に溶解させることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度を調整し、加熱硬化時の樹脂組成物の最低粘度を増加させ良好な形状のフィレットを形成すると共に、樹脂硬化物の靭性を向上することができるからである。このため、熱可塑性樹脂(F)は、エポキシ樹脂(A)に、好ましくは温度90℃以上、より好ましくは95℃〜150℃で溶解するとよい。このような温度範囲で溶解することにより、容易かつ均一に溶解させ撹拌・混合することができる。
熱可塑性樹脂(F)の種類は、特に限定されるものではないが、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂(F)は、とりわけポリエーテルスルホン樹脂又はポリエーテルイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂成分との相溶性又は親和性が、他の熱可塑性樹脂と比べて高く、樹脂硬化物の靭性を向上する効果が大きい。
熱可塑性樹脂(F)は、粒子状のものを使用することが好ましく、より好ましくはその粒子径を200μm以下、さらに5〜100μmにすることが好ましい。このような粒子径を有する微細粒子の熱可塑性樹脂を使用することにより、エポキシ樹脂に配合するときに大きな粒子が解け残ることを防止して素早く均一に溶解するため、樹脂組成物の粘度特性及び靭性を向上させることができる。すなわち、微細粒子の粒子径を、200μm以下にすると、エポキシ樹脂(A)へ均一に溶解し樹脂組成物の物性、特に靭性を向上する効果が得られる。熱可塑性樹脂(F)の粒子の調製方法及び粒子径の測定方法は、前述した有機酸ジヒドラジド化合物(D)の粒子と同様にして、粉砕調製及び測定するものとする。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、アミン系硬化剤(B)を25〜50重量部、好ましくは30〜45重量部、ジシアンジアミド(C)を1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部、有機酸ジヒドラジド化合物(D)を1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部、熱硬化性樹脂(E)を2〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の配合割合で含むとよい。
アミン系硬化剤(B)の配合量が、25〜50重量部の範囲内にすることにより、樹脂硬化物の機械的特性、特に強度、靭性、耐熱性などの物性を確保することが可能になる。ジシアンジアミド(C)の配合量が、1重量部以上にすることにより樹脂硬化物の機械的特性の向上効果が十分に得られ、5重量部以下にすることにより熱硬化工程の前の硬化反応を起こり難くする。有機酸ジヒドラジド化合物(D)の配合量が、1重量部以上にすることにより樹脂硬化物の機械的特性を向上する効果を十分に得られ、20重量部以下にすることにより熱硬化の際にエポキシ樹脂に完全に溶解し、加熱硬化時の最低粘度を適正化することができ好ましい。熱硬化性樹脂(E)を2重量部以上にすることによりエポキシ樹脂組成物の粘度を適正に調整して樹脂硬化物の靭性向上効果が得られ、20重量部以下にすることによりプリプレグを適度な硬さにしてタック性及びドレープ性を向上することができ好ましい。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、熱可塑性樹脂(F)を好ましくは20〜60重量部、より好ましくは30〜50重量部の配合割合で含むとよい。熱可塑性樹脂(F)の配合量を20〜60重量部の範囲内にすることによりエポキシ樹脂組成物の粘度を適正に調整することができ、60重量部以下にしてタック性及びドレープ性を向上することができる。
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分を必須とし、好ましくは(F)成分を配合するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて上記(A)〜(F)成分以外の公知の硬化剤、熱硬化性樹脂の粒子、粘度調整剤、充填剤、安定剤、難燃剤、顔料等の各種添加剤を配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、昇温速度2℃/分における動的粘弾性測定による最低粘度が、好ましくは10〜150Pa・s、より好ましくは20〜150Pa・sであるとよい。動的粘弾性測定の最低粘度を上記の範囲内にすることは、プリプレグの生産性及び自己接着性を向上する上で重要であり、10Pa・s以上にすると良好なフィレットを形成することができ自己接着性が向上し、150Pa・s以下にするとフィレットの形成性を保ちつつ、プリプレグ製造時に強化繊維に樹脂組成物を容易に含浸させることができる。なお、本発明において動的粘弾性測定による最低粘度は、温度25℃から200℃までの間で、昇温速度2℃/秒、周波数10rad/秒、ひずみ1%の動的粘弾性測定における複素粘性率の最低値をいうものとする。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化した樹脂硬化物の破壊靭性値が、ASTM D5045−91に準拠して測定する破壊靭性値で、好ましくは1.8MPa・√m以上、より好ましくは1.8〜2.5MPa・√mであるとよい。樹脂硬化物の破壊靭性値が、1.8MPa・√m以上であると、フィレット部分の強度を高くして、面板(プリプレグ)とハニカムコアの接着後の剥離試験において、ハニカムコアの材料破断が部分的に生じ始めるほど、剥離強度を向上することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂フィルムを作製する塗工作業の際に60〜90℃の樹脂温度の状態に長時間おいても、樹脂粘度の変化が少ないことが特徴である。例えば、樹脂温度75℃の状態に2時間おかれた場合の粘度変化量が、好ましくは150Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下であるとよい。粘度変化量が、150Pa・s以下であると、供給タンクやコーターロールの樹脂ダムに長時間滞留した場合にも、その後の供給タンクからの排出を容易にしコーターロールの運転条件を大幅に変更することなく樹脂フィルムを作製することができる。なお、粘度の変化は、動的粘弾性測定において、温度75℃の一定条件で、周波数10rad/秒、ひずみ1%の複素粘性率の経時変化を測定し、粘度の変化量を求めるものとする。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱硬化時の反応開始温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110〜145℃と高く、加熱硬化前の熱的安定性に優れ、硬化反応に伴う樹脂粘度の増加を抑制することができる。具体的に、示差走査熱量測定(DSC)により測定した反応開始温度が高く、通常の塗工作業時の樹脂温度(60〜90℃)や常温での保管時に硬化反応が進むことを抑制することができる。なお、加熱硬化時の反応開始温度は、DSCにより昇温速度10℃/分で測定した反応開始温度、すなわち発熱ピークの立ち上がりとベースラインとの交点の温度とする。
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂(A)を、好ましくは温度95〜150℃、より好ましくは温度100〜125℃で混合・撹拌し混合樹脂にする。このとき、熱可塑性樹脂(F)を添加し溶解させて、混合樹脂にすることが好ましい。この後、混合樹脂を好ましくは温度60〜90℃、より好ましくは温度70〜80℃に冷却してから、この混合樹脂にアミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)並びに有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)の粒子を添加し均一に分散させるようにして製造するものである。
具体的には、エポキシ樹脂(A)と、好ましくは熱可塑性樹脂(F)とを、温度95〜150℃に設定したプラネタリミキサを用いて、均一に確実に溶解するまで約0.5〜3時間、撹拌・混合するとよい。その後、この混合樹脂を温度60〜90℃まで冷却し、アミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)並びに有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)の粒子を加え、均一に分散・混合して調製することが好ましい。
本発明の繊維強化プリプレグは、上述した繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とし、このマトリックス樹脂を強化繊維と複合させたものである。強化繊維は、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を好ましく挙げることができ、なかでも炭素繊維織物が特に好ましい。
繊維強化プリプレグは、マトリックス樹脂の含有量が、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%にするとよい。繊維強化プリプレグにおけるマトリックス樹脂の割合がこのような範囲内であれば、プリプレグの自己接着性を向上すると共に作業性及び外観品質を向上させ、さらに炭素繊維強化複合材料の機械的特性を十分に発揮させることができる。
繊維強化プリプレグを製造する方法は、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙の上に薄いフィルム状に塗布した樹脂フィルムを作製し、強化繊維の上下に積層して、加熱及び加圧することでエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させるホットメルト法が好ましい。このようにして得られたプリプレグは、作業環境や常温雰囲気に長期間おいても保存安定性に優れ、タック性及びドレープ性が低下しない。
このようにして得られた繊維強化プリプレグをハニカムコアの両面に積層して、通常のオートクレーブ成形又はホットプレス成形等の熱硬化成形することにより、繊維強化複合材料を製造することができる。得られた繊維強化複合材料は、良好なフィレットを有し接着強度が高いばかりでなく、優れた機械的性能を有する。
本発明に使用するハニカムコアは、好ましくはアラミドハニカム、アルミハニカム、ペーパーハニカム、ガラスハニカムから選ばれるいずれかであるとよく、中でもアラミドハニカムが好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜2及び比較例1〜3〕
常温で液状のエポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)、有機酸ジヒドラジド化合物(D)、熱硬化性樹脂(E)及び熱可塑性樹脂(F)を下記に列記されたものを使用し、それぞれ表1の実施例1〜2、比較例1〜3に記載する配合割合において、エポキシ樹脂組成物を調製した。先ずエポキシ樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(F)の全量を、温度125℃に設定したプラネタリミキサを用いて、均一な溶液になるまで75分間、撹拌・混合した。その後、このプラネタリミキサの温度を70℃に設定し、樹脂温度が均一になったところで、アミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)、有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)の粒子の全量をこの樹脂溶液中に加え、撹拌・混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。
・エポキシ樹脂(A)
樹脂A−1:N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール樹脂(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製MY−0510)
樹脂A−2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコート−806)
・アミン系硬化剤(B)
硬化剤B:3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製ARADUR9719−1)
・ジシアンジアミド(C)
硬化剤C:ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン社製エピキュアDICY 15)
・有機酸ジヒドラジド化合物(D)
硬化剤D−1:ドデカン二酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製N−12)融点185〜190℃、平均粒子径9μm
硬化剤D−2:7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(味の素ファインテクノ社製UDH)融点150〜165℃、平均粒子径20μm
硬化剤D−3:1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ社製VDH)融点118〜124℃、平均粒子径10μm
・熱硬化性樹脂(E)
樹脂F:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製YDF−020N)、軟化点135℃〜150℃、衝撃粉砕により粒子径100μm以下の微細粒子。
・熱可塑性樹脂(F)
樹脂E:ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学社製スミカエクセルPES5003P)衝撃粉砕により、粒子径100μm以下の微細粒子
得られた5種類のエポキシ樹脂組成物(実施例1〜2、比較例1〜3)について、それぞれ下記に示す方法で、エポキシ樹脂組成物の粘度変化量、反応開始温度、熱硬化時の最低粘度、プリプレグのタック性、硬化物の破壊靱性値及びハニカムパネルの剥離強度を評価し、その測定結果を表1に示す。
〔エポキシ樹脂組成物の粘度変化量〕
エポキシ樹脂組成物の温度75℃における粘度の経時変化を2時間測定し、初期の粘度に対する2時間後の粘度の変化量を測定した。なお、エポキシ樹脂組成物の粘度は、温度75℃で一定にした条件で、周波数10rad/秒、ひずみ1%の動的粘弾性測定における複素粘性率を測定した。
〔エポキシ樹脂組成物の反応開始温度〕
エポキシ樹脂組成物の約5mgを試料にして、温度20℃から350℃まで、昇温速度10℃/分の温度条件で、窒素雰囲気下において、示差走査熱量測定(DSC、ティー・エイ・インスツルメント社製DSC−2920)により熱分析を行った。発熱ピークの立ち上がりの延長線とベースラインとの交点の温度を、反応開始温度として測定した。
〔エポキシ樹脂組成物の最低粘度〕
得られたエポキシ樹脂組成物を試料にして、温度25℃から200℃までの間で、昇温速度2℃/秒、周波数10rad/秒、ひずみ1%の条件の動的粘弾性測定における複素粘性率の最低値を測定した。
〔プリプレグのタック性〕
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて離型紙上に樹脂フィルムを形成し、このフィルムを炭素繊維平織織物(東レ社製T−300−3K)に、樹脂含有量が41重量%となるように加熱加圧して転写し、プリプレグを得た。
作製直後及び室温に10日間暴露した後のプリプレグのタック性を、以下の三段階基準で触手により評価した。
○: 十分な粘着性が感じられたもの
△: やや粘着性が感じられたもの
×: ほぼ粘着性が感じられなかったもの
〔硬化物の破壊靱性〕
得られたエポキシ樹脂組成物を使用して、プログラムオーブンにて温度180℃で、2時間硬化し、樹脂硬化物を作製した。
得られた樹脂硬化物を、ASTM D5045−91に準拠して、試験サンプルを作製し、23℃(乾燥状態)における破壊靭性値(MPa・√m)を測定した。
〔ハニカムパネルの剥離強度〕
得られたプリプレグを2枚積層し、これをハニカムコア(昭和飛行機工業社製ノーメックスハニカムSAH−1/8−8.0)の両面に配置した後、バッグに入れ、これをオ−トクレ−ブ内で温度180℃、2時間(昇温速度2.8℃/分)加熱し、硬化させてハニカムパネルを作製した。この間、オ−トクレ−ブ内を圧空で0.32MPaに加圧した。
得られたハニカムパネルを、ASTM D1781に準拠して、加熱硬化工程にハニカムコアの上側及び下側に配置された面板をそれぞれ所定の寸法に加工し温度23℃(乾燥状態)における上側面板及び下側面板の試験片の剥離強度(lb−in/3in)を測定した。
Figure 2007291238

Claims (18)

  1. エポキシ樹脂(A)、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン又は芳香族ポリアミンから選ばれるアミン系硬化剤(B)、ジシアンジアミド(C)、融点が150℃以上の有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び常温で固形の熱硬化性樹脂(E)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)及び熱硬化性樹脂(E)が粒子状に分散している繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  2. さらに、熱可塑性樹脂(F)を含む請求項1に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)が、下式(I)に示すカルボン酸ジヒドラジド化合物である請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007291238
    (式中、Xは、フェニル基又は炭素数2〜18の脂肪族炭化水素基を表す。)
  4. 前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)が、下式(II)に示すカルボン酸ジヒドラジド化合物である請求項1、2又は3に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007291238
  5. 前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)の平均粒子径が、100μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  6. 前記熱硬化性樹脂(E)が、前記エポキシ樹脂に温度90℃以下で完全に溶解しない常温で固形のエポキシ樹脂、ビスマレイミド系樹脂及びイソシアネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  7. 前記アミン系硬化剤(B)が、3,3′ジアミノジフェニルスルホン及び/又は4,4′ジアミノジフェニルスルホンである請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂(F)が、ポリエーテルスルホン樹脂又はポリエーテルイミド樹脂である請求項2〜7のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  9. 前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、前記アミン系硬化剤(B)を25〜50重量部、前記ジシアンジアミド(C)を1〜5重量部、前記有機酸ジヒドラジド化合物(D)を1〜20重量部、前記熱硬化性樹脂(E)を1〜20重量部の配合割合で含む請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  10. 前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、前記熱可塑性樹脂(F)を20〜60重量部の配合割合で含む請求項2〜9のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  11. 前記エポキシ樹脂組成物の昇温速度2℃/分における動的粘弾性測定による最低粘度が10〜150Pa・sである請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  12. 前記エポキシ樹脂組成物の硬化後に、ASTM D5045−91に準拠して測定される破壊靭性値が、1.8MPa・√m以上である請求項1〜11のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  13. 請求項2〜12のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、前記エポキシ樹脂(A)に、前記熱可塑性樹脂(F)を95〜150℃で溶解させ混合樹脂にした後、60〜90℃に冷却し、該混合樹脂中に前記アミン系硬化剤(B)、有機酸ジヒドラジド化合物(D)及びジシアンジアミド(C)を添加する繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として、強化繊維と複合させた繊維強化プリプレグ。
  15. 前記マトリックス樹脂の含有量が30〜50重量%である請求項14に記載の繊維強化プリプレグ。
  16. 前記強化繊維が炭素繊維である請求項14又は15に記載の繊維強化プリプレグ。
  17. 請求項14、15又は16に記載の繊維強化プリプレグとハニカムコアとを積層したハニカムサンドイッチパネル。
  18. 前記ハニカムコアが、アラミドハニカム、アルミハニカム、ペーパーハニカム、ガラスハニカムから選ばれるいずれかである請求項17に記載のハニカムサンドイッチパネル。
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