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JP2007273093A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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優子 阿部
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栄一 北爪
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肇 横井
Akira Shoda
亮 正田
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Abstract

【課題】湿式法を用いて大気中で有機発光媒体層を成膜した際に生じる有機発光媒体層を構成する各層表面の変質による有機EL素子の輝度および寿命の低下を改善し、より性能のよい有機EL素子を得ることを目的とする。
【解決手段】第一電極と、有機発光媒体層と、第二電極を備え、有機発光媒体層は少なくとも有機発光層を有する単層又は複数層から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子であって、有機発光媒体層を構成する少なくとも1層は、大気中において、当該層を構成する材料を溶媒に溶解又は分散させて調整された塗布液を用い、湿式成膜法により成膜する工程と、成膜後の当該層の最表面を取り除く工程とを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とする)の有機発光媒体層のうち、少なくとも一層を湿式法によって成膜される有機発光媒体層を有する有機EL素子の製造方法およびこの製造方法を用いて製造した有機EL素子に関するものである。
有機EL素子は導電性の有機発光媒体層に電圧を印加することにより、注入された電子と正孔を再結合させ、この再結合の際に有機発光層を構成する有機発光材料を発光させるものである。有機発光層へ電圧を印加すると共に光を外部へ取り出すために、前記有機発光層の両側には第一電極と第二電極を設けて構成される。有機EL素子の構成の一例を挙げると、透明基板上に、第一電極、有機発光層、第二電極を順次積層して構成され、基板上に形成される第一電極は陽極、有機発光層上に形成される第二電極は陰極とし、第一電極を透光性として利用されるものを挙げることができる。
更に有機発光層の発光効率を増大するなどの目的から、陽極と有機発光層の間に正孔輸送層、正孔注入層を、あるいは有機発光層と陰極の間に電子輸送層、電子注入層が適宜選択して設けられ、有機EL素子として構成されることが多い。そして、有機発光層と正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層を合わせて有機発光媒体層と呼ばれている。
有機発光媒体層の例としては,正孔注入層に銅フタロシアニン、正孔輸送層にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、蛍光体層にトリス(8−キノリノール)アルミニウムをそれぞれ用いたものが挙げられる。これら有機発光媒体層を構成し機能する物質(発光媒体材料)はいずれも低分子の化合物であり、各層は1〜100nm程度の厚みで抵抗加熱方式などの真空蒸着法などによって積層される。このため、低分子材料を用いる有機薄膜EL素子の製造のためには、複数の蒸着釜を連結した真空蒸着装置を必要とし、生産性が低く製造コストが高いなどの問題点があった(例えば特許文献1参照)。
これに対し、有機発光媒体層を構成する有機発光材料あるいは発光媒体材料として高分子材料を用いた有機EL素子がある。この場合、例えば有機発光材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子中に低分子の蛍光色素を溶解させたものや、ポリフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリアルキルフルオレン誘導体(PAF)等の有機発光材料が用いられる。これら高分子材料は、溶剤に溶解または分散することで塗布法や印刷法と言った湿式法により成膜することができるため、前述の低分子材料を用いた有機EL素子と比較して、大気圧下での成膜が可能であり設備コストが安い、という利点がある(例えば特許文献2及び3参照)。
特許第3149991号明細書 特許第3249971号明細書 特許第3239991号明細書
しかしながら、大気中での成膜は水分、酸素、オゾン等の影響やコンタミなどのよる劣化の原因に成りうる。特に、大気中で成膜した各層の最表面(すなわち層界面)の変質はキャリアの注入や、キャリア輸送能に大きな影響を与え発光輝度の低下や効率、寿命の劣化といった問題を引き起こすことが懸念されていた。
そこで本発明では湿式法を用いて大気中で有機発光媒体層を成膜した際に生じる有機発光媒体層を構成する各層表面の変質による有機EL素子の輝度および寿命の低下を改善し、より性能のよい有機EL素子を得ることを目的とする。
請求項1に係る第1の発明は、第一電極と、有機発光媒体層と、第二電極を備え、有機発光媒体層は少なくとも有機発光層を有する単層又は複数層から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子であって、有機発光媒体層を構成する少なくとも1層は、大気中において、当該層を構成する材料を溶媒に溶解又は分散させて調整された塗布液を用い、湿式成膜法により成膜する工程と、成膜後の当該層の最表面を取り除く工程とを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項2に係る第2の発明は、前記成膜後の当該層の最表面を取り除く工程は、当該層を構成する材料が溶解可能な溶媒により当該層の最表面をすすぐ工程であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項3に係る第3の発明は、前記当該層を構成する材料の溶媒に対する溶解度は、当該層の成膜のために調整された塗布液に含まれる溶媒に対しての溶解度よりも、当該層の最表面をすすぐために用いられた溶媒に対しての溶解度の方が小さいことを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項4に係る第4の発明は、前記当該層を構成する材料の溶媒の溶解度パラメーターは、当該層の成膜のために調整された塗布液に含まれる溶媒の溶解度パラメーターをA(cal/cm1/2とすると、A+0.5(cal/cm1/2以上A+1.0(cal/cm1/2以下またはA−1.0(cal/cm1/2以上A−0.5(cal/cm1/2以下の範囲であることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項4に係る第4の発明は、前記成膜後の当該層の最表面を取り除く工程を不活性ガス環境下で行うことを特徴とする請求項1乃至3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項5に係る第5の発明は、請求項1乃至4記載の方法で製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明によれば、湿式法を用いて大気中で有機発光媒体層を成膜した際に生じる有機発光媒体層を構成する各層表面の変質による有機EL素子の輝度及び寿命の低下を防止することができるので、より優れた性能の有機EL素子を得ることができる。
本発明における有機EL素子の一例を図1に基づいて説明する
本発明で用いることのできる基板101としては、基板に積層される電極や有機発光媒体層を支持することができればよい。基板には、さらに、有機発光媒体層や電極の劣化を防ぐために、水分や酸素の透過率の低い材料や、透過を防ぐ処理を施してあることが好ましい。また、第一電極側から光を取り出す、いわゆるボトムエミッションタイプの有機EL素子とする場合には、透光性を備えている基板を用いる。
用いることのできる基板としては、具体的にはガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。0.2〜1mmの薄いガラス基板を用いれば、水分や酸素に対するバリア性が非常に高い薄型の有機EL素子を作製することができる。
また、可撓性のあるプラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより連続的に有機EL素子の製造が可能であり、安価に素子を提供することができる。基板として用いることのできるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等を用いることができる。また、第一電極102を製膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層すれば、よりバリア性が向上し、寿命の長い有機EL素子とすることができる。
基板上には第一電極102が積層される。第一電極としては、均一な薄膜として形成できる導電性物質であればよい。第一電極を有機EL素子の陽極として用いる場合には、仕事関数の大きい材料が好ましい。また、ボトムエミッションタイプの有機EL素子とする場合には、基板とあわせて透明または半透明であり、透光性を備えている必要がある。具体的には、インジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)を好ましく用いることができる。ITOは、前記基板101上に蒸着またはスパッタリング法により製膜することができる。また、第一電極は、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体を基板上に塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法等により形成することもできる。あるいは、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものを用いることができる。あるいはポリアニリン等の有機半導体も用いることができる。
上記、第一電極102は、必要に応じてエッチングによりパターニングを行ったり、UV処理、プラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよい。
本発明における有機EL素子は、第一電極102と第二電極との間に有機発光媒体層103を備えている。有機発光媒体層103は少なくとも有機発光層を備えている。有機発光層は有機発光材料を含み、直流電流の印加によって発光する層である。有機発光媒体層は、このような有機発光層のみならず、正孔輸送層103aと有機発光層103bの2層構造(図1)でも、これらにさらに電子輸送層や絶縁層等を設けた多層構造とすることもできる。例えば有機発光層が正孔輸送能も備えるなど、一つの層で複数の機能を備えていてもよい。
このように、有機発光媒体層103は単数又は複数の層により構成されている。そして、有機発光媒体層を構成する層のうち少なくとも1層を、有機発光材料、あるいは正孔輸送材料や電子輸送材料などの発光媒体材料を含むインク状に調整された塗布液を用いて、スピンコート法、スリットコート法、バーコート法、ロールコート法等により形成する。塗布液による層の形成は、凹版印刷法、凸版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法等を用いて必要があればパターン状に行ってもよい。
有機発光媒体層は正孔輸送層を備えていてもよい。正孔輸送層103aに用いることのできる正孔輸送材料としては、一般に正孔輸送材料として用いられているものであれば良く、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系などの低分子も用いることができるが、中でもポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の有機材料が、塗布や印刷などの湿式法による成膜が可能でありより好ましい。
これら正孔輸送材料はトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて正孔輸送塗布液とし、湿式法により成膜できる。
有機発光媒体層は有機発光層を備えている。有機発光層103bにはさまざまな蛍光材料・りん光材料を用いることがでる。一般に有機発光材料として用いられているものであれば良く、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させたものや、PPV系やPAF系、ポリパラフェニレン系等の高分子発光体を用いることができる。
これら有機発光材料はトルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、メシチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて有機発光塗布液とし、湿式法により成膜できる。特にトルエン、キシレン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン等の芳香族系溶媒は高分子発光材料の溶解性が良く、また大気圧中での沸点が180℃以下であることから扱いも容易であり、有機発光層成膜後の溶媒除去の点で好ましい。
また有機発光媒体層の各層を形成する塗布液は必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤等を添加しても良い。
このようにして大気中で湿式法により成膜された有機発光媒体層を構成する各層の表面は空気中の水分や酸素、オゾンなどの影響を受け変質している可能性がある。また、大気中の成分が膜表面に吸着するなどのコンタミが発生している可能性がある。この様な膜表面の変質又はコンタミを改善するには劣化部分である層の最表面だけを除く方法がある。層の最表面を取り除く方法としては、溶媒によるリンス(すすぎ)やプラズマ処理等が挙げられるが、装置や扱いが簡易である点から溶媒ですすぐ方法が適している。
層の最表面をすすぐために用いる溶媒としては、最表面の除去を行う対象の層を構成する材料が可溶なものを選択する必要がある。さらに、溶解度の小さいものであると、層の膜厚調整が容易であり好ましい。層の最表面だけ除く方法としては、層を形成した基板ごとすすぎ用の溶媒中に浸漬するディッピングや、層を形成した基板を回転させながら、層上に溶媒を滴下するスピンコート法と同様の方法を用いることができる。これらの方法によってすすぎ時間や溶媒の浸透量を調整することで、過剰に層の表面を取り除き過ぎないように調整できる。特に溶媒量の調整が容易であるため、回転する基板にすすぎ用溶媒を滴下する方法をとることが好ましい。
すすぎに用いることのできる溶媒としては、具体的には有機発光媒体層の各層を成膜する際に用いる溶媒の溶解度パラメーターをAと定義した場合にA+0.5からA+1.0またはA−0.5からA−1.0の範囲に収まる溶媒、より好ましくはA+0.5からA+0.75またはA+0.5からA−0.5からA−0.75の範囲に収まる溶媒の中から選択し、単独または混合溶媒として適宜用いることができる。また、有機発光媒体層各層の成膜のための塗布液に用いた溶媒と、上記範囲の溶解度パラメータで規定した溶媒との混合溶媒を用いることもできる。
例えば成膜する際の溶媒にキシレン(溶解度パラメーター8.8(cal/cm1/2)を用いた際に、すすぎ工程に使用する溶媒としてはn−デカン(溶解度パラメーター7.8(cal/cm1/2)、n−テトラデカン(溶解度パラメーター8.0(cal/cm1/2)等分子量の大きい脂肪族炭化水素や、1,2−ジクロロエタン(溶解度パラメーター9.8(cal/cm1/2)、塩化t−ブチル(溶解度パラメーター7.9(cal/cm1/2)等のハロゲン化炭化水素、アセトン(溶解度パラメーター10.0(cal/cm1/2)、メチルエチルケトン(溶解度パラメーター9.3(cal/cm1/2)当のケトン類、テトラヒドロフラン(溶解度パラメーター9.9(cal/cm1/2)、ジオキサン(溶解度パラメーター10.0(cal/cm1/2)等のエーテル類などを用いることができる。
あるいはアニソール(溶解度パラメーター9.8(cal/cm1/2)を成膜時の溶媒として用いた場合には四塩化炭素(溶解度パラメーター8.6cal/cm1/2)、テトラクロロエタン(溶解度パラメーター10.4(cal/cm1/2)、トリクロロエチレン(溶解度パラメーター9.2(cal/cm1/2)、ベンズアルデヒド(溶解度パラメーター10.8(cal/cm1/2)、ジエチルケトン(溶解度パラメーター8.8(cal/cm1/2)等の溶媒を用いることができる。
また、このほかの溶媒であっても、溶解度パラメーター値に応じて適宜選択して用いても良く、必要に応じて混合溶媒を用いることができる。
なお溶解度パラメーターSPは、モル蒸発熱ΔH、モル体積Vの液体の絶対温度Tにおいて、
SP={(ΔH−RT)/V}1/2
で定義される。ただし上記式中、SPは溶解度パラメーターで(単位:(cal/cm1/2)であり、ΔHはモル蒸発熱(単位:(cal/molm)であり、Rは気体定数(単位:cal/(mol・K))であり。Tは絶対温度(単位:K)であり、Vはモル体積(単位:cm)である。
層の最表面を取り除く工程は、有機発光媒体層を構成し、大気中で湿式成膜法により形成された少なくとも1層以上の有機層に対して行う。特に、有機発光層の劣化は素子の発光効率及び寿命に大きく関ることから、有機発光層に対してこの最表面の除去工程を行うことが好ましい。最表面除去工程で除去する膜厚は対象となる層全体の厚みの1〜20%程度、より好ましくは2〜10%程度であるが、層の機能を発揮できる程度の厚みは残すことが好ましい。除く膜厚が多すぎる場合には本来除く必要のない箇所まで除去してしまうことになり、有機EL素子のショートや発光ムラ、発光効率の低下等を招き、本来の有機EL素子の特性を得られなくなる恐れがある。また、除去が十分に行われない場合には劣化した箇所を残したままの有機EL素子を得ることになる。例えば有機発光層を除去の対象とする場合、5nm以上を除去し、少なくとも50nm〜150nmは残すように最表面除去工程を施すことが好ましい。また、除去する厚みは2nm以上有ったほうが、劣化部分を確実に除去でき好ましい。そのため、有機発光媒体層各層を、予め除去工程における除去分を考慮にいれて厚膜に成膜し、最終的に目的の膜厚に調整してもよい。
次に第二電極104として第一電極に対向する電極を形成する。第二電極を陰極とする場合、導電性の均一薄膜であることに加えて仕事関数が小さい方が好ましく、例えばMg,Al,Yb等の金属単体を用いることができる。あるいは、有機発光媒体層と接する界面にLiやLiF等の化合物を1nm程度挟んで、劣化しにくく導電性の高いAl、Cu等を積層して用いる。または、電子注入効率と安定性を両立させる為の、仕事関数の低い金属と安定な金属との合金、例えばMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。第二電極の形成方法は必要に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法を用いることができる。第二電極の厚さは10〜100nm程度が望ましい。
そして、電極や有機発光媒体層などを外部の酸素や水分から保護する為に、例えばガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止する封止工程を経て、本発明の有機EL素子を得ることができる。また、可とう性を有する材料を基板として用い、可とう性を備えた有機EL素子とする場合には、封止にも可とう性フィルムを用いて密封することができる。
こうして本発明の有機EL素子を製造することができる。本発明の課題を解決し、効果を得ることができるかぎり、他の構成要素は任意に置き換えが可能である。
有機EL素子としては、単一の第一電極と第二電極を対向するように配置し、全面を発光させる単純な構造の他、情報表示可能なディスプレイ用途に向く駆動方式として、第一電極と第二電極を互いに直交するストライプ状に形成し、交点への電流の印加によって発光させるパッシブマトリクス型の有機EL素子とすることも、一方の電極を複数の画素に区画し、それぞれの画素にトランジスタを形成し個別に電流のオン−オフが可能としたアクティブマトリクス型の有機EL素子とすることもできる。
さらに、画素からの引出し配線の絶縁や、第二電極のパターニング、有機発光媒体層の確実な配置のために、単数または複数の画素を区画する絶縁性の枠(隔壁)を形成することもできる。
また、本明細書では光の取り出し方向が基板側であるボトムエミッションタイプの有機EL素子について主に説明したが、第二電極及び封止方法を透光性のものとし、基板と刃反対側から光を取り出すトップエミッション構造とすることもできる。また、第一電極を陰極とし、第二電極を陽極とし、有機発光媒体層の積層順を逆とすることもできる。
<実施例>
以下、本発明の有機EL素子を製造する一例を実施例にて説明する。実施例における有機EL素子の説明図を図2に示した。
基板201として、100mm四方のガラス基板を用い、これに800μmピッチ(L/S=700/100)の透明なITOラインを第一電極202として設けた。その後、逆テーパー形状の第二電極分離用隔壁205を透明電極と直交するように設けた。続いてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSS)との1wt%水分散液を正孔輸送層用塗布液としてスリットコート法により厚さ70nmに成膜し、200℃で10分間減圧加熱乾燥を行い、正孔輸送層203aを得た。
続いて有機発光層用途布液として、重量比で、有機発光材料であるPPV系高分子材料を1に対してキシレン(溶解度パラメーター8.8(cal/cm1/2)を84、アニソール(溶解度パラメーター9.8(cal/cm1/2)を15の割合で調整した塗布液をインクとし、第二電極分離用隔壁205の非形成部に対応するストライプ状のパターンを備えた樹脂凸版を用いた凸版印刷法により正孔輸送層上に印刷、130℃で1時間減圧乾燥し厚み120nmの有機発光層203bを得た。
続いて、有機発光層までを成膜した基板を、グローブボックス内においてシクロヘキサン(溶解度パラメーター8.2(cal/cm1/2)へ1秒間浸漬することで、有機発光層の最表面を除去した。シクロヘキサンへの浸漬後、130℃で30分間減圧乾燥を行い、厚み100nmの有機発光層を得た。
次いで第二電極204である陰極層としてMgAgを2元蒸着法により150nmの厚みでパターン形成し、最後にガラスキャップを接着剤を用いて貼りつけて陰極までを覆い、密閉封止することでパッシブマトリクス型、ボトムエミッション方式の有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子は、3Vの印加で発光を開始し、5Vの印加で100cd/mの発光を示した。また初期輝度400cd/mにおける輝度半減時間は2000時間であった。
(比較例1)
比較例1においてはテトラクロロエタン(溶解度パラメーター8.6(cal/cm1/2)を用いて1秒間の浸漬を行うことで、有機発光層の最表面の除去処理を行った以外は実施例1と同様とした。最表面除去処理後の有機発光層の厚みは80nm±20nmであった。
得られた有機EL素子には発光ムラや、非発光箇所が数多く似られた。また、端部は正孔輸送層が露出していた。これは浸漬過程において有機発光層が溶解し、最表面のみならず内部まで除去されてしまったために有機発光層膜厚にムラが生じた為だと考えられる。発光に欠陥が多いため、初期輝度半減寿命の測定は困難であった。
(比較例2)
比較例2においては有機発光層の最表面を取り除く処理を行わずに素子を作製した。
得られた有機EL素子の発光開始電圧は6Vと実施例と比較して高電圧側にシフトしていた。8Vの印加で100cd/mの発光を示し、初期輝度400cd/mにおける輝度半減時間は800時間であった。
本発明における有機EL素子の説明断面図である 本実施例における有機EL素子の説明断面図である
符号の説明
101:基板
102:第一電極
103:有機発光媒体層
103a:正孔輸送層
103b:有機発光層
104:第二電極
201:基板
202:第一電極
203:有機発光媒体層
203a:正孔輸送層
203b:有機発光層
204:第二電極
205:第二電極分離用隔壁

Claims (6)

  1. 第一電極と、有機発光媒体層と、第二電極を備え、有機発光媒体層は少なくとも有機発光層を有する単層又は複数層から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    有機発光媒体層を構成する少なくとも1層は、
    大気中において、当該層を構成する材料を溶媒に溶解又は分散させて調整された塗布液を用い、湿式成膜法により成膜する工程と、
    成膜後の当該層の最表面を取り除く工程とを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記成膜後の当該層の最表面を取り除く工程は、当該層を構成する材料が溶解可能な溶媒により当該層の最表面をすすぐ工程であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記当該層を構成する材料の溶媒に対する溶解度は、当該層の成膜のために調整された塗布液に含まれる溶媒に対しての溶解度よりも、当該層の最表面をすすぐために用いられた溶媒に対しての溶解度の方が小さいことを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記当該層を構成する材料の溶媒の溶解度パラメーターは、当該層の成膜のために調整された塗布液に含まれる溶媒の溶解度パラメーターをA(cal/cm1/2とすると、A+0.5(cal/cm1/2以上A+1.0(cal/cm1/2以下またはA−1.0(cal/cm1/2以上A−0.5(cal/cm1/2以下の範囲であることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 前記成膜後の当該層の最表面を取り除く工程を不活性ガス環境下で行うことを特徴とする請求項1乃至4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  6. 請求項1乃至5記載の方法で製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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