以下に、本発明の被膜フィルムの製造方法を説明する。本発明では、基材フィルムの少なくとも片面への、被膜溶液の塗工工程(1)を施し、次いで乾燥工程(2)を施して被膜層を形成する。乾燥工程(2)では、乾燥オーブンを採用し、乾燥オーブン中における前記基材フィルムの温度を、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境における結露点以上であり、かつ被膜溶液中の溶剤の沸点以下の温度に制御する。
本発明により製造される被膜フィルムとしては、例えば、粘着型光学フィルム、光学機能性フィルムがあげられる。粘着型光学フィルムの製法にあたり、基材フィルムとして光学フィルムを用いる場合には、光学フィルムに対して、粘着剤溶液による塗工工程(1)が施され、乾燥工程(2)を経て、粘着剤層が形成される。ここで形成された粘着剤層には、離型フィルムを貼り合わせることができる。一方、基材フィルムとして、離型フィルムを用いる場合には、離型フィルムに、粘着剤溶液による塗工工程(1)が施され、乾燥工程(2)を経て粘着剤層が形成され、当該粘着剤層は、光学フィルムに転写する工程(3)により、光学フィルム上に転写される。
光学機能性フィルムは、通常、透明な基材フィルムに、光学機能材料の溶液による塗工工程(1)が施され、乾燥工程(2)を経て、光学機能層が形成される。
塗工工程(1)における、基材フィルムへの被膜溶液の塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。たとえば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、ディップ法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。
基材フィルム上に塗工される被膜溶液の量は、被膜溶液の種類によって適宜に決定される。例えば、被膜溶液が粘着剤溶液の場合には、当該溶液量を基準として、50〜500g/m2程度の範囲とするのが好ましい。また、乾燥後の粘着剤層の厚みが、3〜50μm、さらには10〜30μmとなるように粘着剤溶液を塗工するのが好ましい。
一方、被膜溶液が、光学機能性材料の溶液の場合には、各材料に応じて、塗工量、層厚みが決定される。例えば、光学機能性材料として、液晶材料を用いて光学補償層を形成する場合には、塗工量は5〜100g/m2程度、光学補償層の厚みは0.3〜10μm程度である。例えば、光学機能性材料として、ハードコート材料を用いる場合には、塗工量は5〜1000g/m2程度、ハードコート層の厚みは1〜100μm程度である。
乾燥工程(2)、すなわち乾燥オーブン中における基材フィルムの温度制御は、乾燥オーブン中における前記基材フィルムの温度を、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境における結露点以上であり、かつ被膜溶液中の溶剤の沸点以下の温度に制御することにより行う。基材フィルムの温度を、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境における結露点以上とすることで、乾燥工程(2)における塗膜上への結露の発生を防止することができる。結露点温度は、水の飽和蒸気圧曲線より、雰囲気環境(乾燥オーブンへの取り込み空気)の温度と湿度から、飽和蒸気圧に到達する温度を求めたものである。被膜溶液中の溶剤の沸点も、前記雰囲気環境(温度、湿度)における沸点である。溶剤が混合溶剤の場合には、混合溶剤の沸点である。基材フィルムの温度が溶剤の沸点を超えると、急激な溶剤の蒸発により、発泡などの不具合を生じ易い。
本発明の製造方法は、乾燥工程(2)における、乾燥オーブン中での結露の発生を防止することを目的とするものであるから、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境に雰囲気環境が、結露を生じやすい場合に有用である。例えば、温度15〜40℃、特に20〜40℃、相対湿度60〜90%、特に70〜90%の場合において、本発明の製造方法は好適に適用できる。
なお、乾燥オーブン中における、基材フィルムの温度は、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境温度よりも、通常、少なくとも5℃を超えて高い温度に設定するのが好ましい。さらには、7℃以上高いことが好ましい。また、基材フィルムの温度の上限は、100℃以下、さらには90℃以下が好ましい。かかる温度設定は、例えば、被膜材料として粘着剤を用いる場合において、粘着剤中の架橋剤として、イソシアネート化合物のような水と反応性を有する化合物を用いた場合に、当該化合物の変質を抑えられること、また溶剤の急激な蒸発に伴う発泡などの外観欠陥を抑えることにおいて、良好な結果が得られる。
乾燥オーブンは、乾燥オーブン中における基材フィルムの温度が、乾燥オーブンに取り込まれる空気の雰囲気環境における結露点以上であり、かつ被膜溶液中の溶剤の沸点以下の温度になるように制御する。温度条件は、基材フィルムに塗工された被膜溶液の種類、被膜層の膜厚、フィルムの搬送速度等に応じて、適宜に設置される。乾燥条件は、通常、50〜120℃程度、さらには60〜110℃の熱処理を施し、溶剤を揮発させる。熱処理時間は、通常、10〜90秒間程度、さらには30〜80秒間程度で行うことができる。なお、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)が終了するまでの時間は、基材フィルム上の粘着剤溶液に、加温ロールや乾燥オーブン等で熱が効率的に伝達させるため、また乾燥面の均一性を保つために、少なくとも10秒間以上の時間をかけて被膜溶液から溶媒を蒸発させることが好ましい。
塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)までの間、すなわち、基材フィルム上の被膜溶液(塗膜)の風乾ゾーンにおいて、結露が生じないようにするための手段として各種手段を採用できる。風乾ゾーンの結露防止は、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)までの間の風乾時間を短くすることにより行うことができる。風乾時間等は、被膜溶液の種類に応じて適宜に決定される。
例えば、被膜溶液が粘着剤溶液の場合には、風乾時間を15秒間以下、さらには10秒間以下とすることで、結露を防止できる。風乾時間の短縮は、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)までの距離を短くする方法、また、搬送速度を速くする方法により行うことができる。
被膜溶液が光学機能材料の溶液の場合には、風乾時間を35秒間以下、通常、8〜35秒間程度、好ましくは20秒間以下、とすることで、結露を防止できる。風乾時間の短縮は、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)までの距離を短くする方法、また、搬送速度を速くする方法により行うことができる。
また、風乾ゾーンにおいては、基材フィルムの温度を、当該基材フィルムが置かれている雰囲気環境下における結露点以上であり、かつ粘着剤溶液中の溶剤の沸点以下の温度に制御することで、結露を防止することができる。基材フィルムの温度を、結露点以上とすることで、風乾ゾーン、乾燥工程における塗膜上への結露の発生を防止することができる。結露点温度は、水の飽和蒸気圧曲線より、風乾ゾーンにおける雰囲気環境の温度と湿度から、飽和蒸気圧に到達する温度を求めたものである。被膜溶液中の溶剤の沸点も、風乾ゾーンにおける雰囲気環境(温度、湿度)における沸点である。溶剤が混合溶剤の場合には、混合溶剤の沸点である。基材フィルムの温度が溶剤の沸点を超えると、急激な溶剤の蒸発により、発泡などの不具合を生じ易い。
風乾ゾーンにおける結露の発生を防止することを目的とするものであるから、風乾ゾーンの雰囲気環境が、結露を生じやすい場合に有用である。例えば、温度15〜40℃、特に20〜40℃、相対湿度60〜90%、特に70〜90%の場合において、本発明の製造方法は好適に適用できる。
風乾ゾーンにおいて、前記基材フィルムの温度を前記範囲に制御する手段としては、例えば、加温ロールを設置して、基材フィルム側から加熱することで、塗膜温度を結露点以上に制御する方法があげられる。その他に、風乾ゾーンに、加温ゾーン(加温槽等)を設けて基材フィルムの温度を前記範囲に制御する方法、粘着剤溶液を予熱した後に塗工して、塗膜温度(基材フィルム温度)を結露点以上に制御する方法、があげられる。これら方法は組み合わせて採用することができる。また、結露の防止を抑えるには、雰囲気環境中の水分を除去(除湿)して結露点温度を下げたりする方法、粘着剤溶液の溶剤組成を変化させて、急激な塗膜温度の低下を防いだりする方法ある。これらの方法は、前記の方法(基材フィルムの温度を制御する方法)に加えて、採用することができる。
なお、基材フィルムの温度の制御は、雰囲気環境温度よりも、通常、少なくとも5℃を超えて高い温度に設定するのが好ましい。さらには、7℃以上高いことが好ましい。また前記基材フィルムの温度は、結露点よりも10℃以上高い温度に設定することが好ましい。また基材フィルムの温度の上限は100℃以下、さらには90℃以下が好ましい。かかる温度設定は、粘着剤中の架橋剤として、イソシアネート化合物のような水と反応性を有する化合物を用いた場合に、当該化合物の変質を抑えられること、また溶剤の急激な蒸発に伴う発泡などの外観欠陥を抑えることにおいて、良好な結果が得られる。
図1では、基材フィルムとして離型フィルム1を用い、その片面に粘着剤溶液21により粘着剤層2を形成する粘着型光学フィルムの製造方法を示す。図1では、連続して走行している離型フィルム1に、塗工工程(1)として、ダイコーター11により、粘着剤溶液2が塗工されている。乾燥工程(2)で形成された粘着剤層2は、転写工程(3)として、一対の転写ロール14により光学フィルム3に転写され、粘着型光学フィルムAが製造される。なお、図1において、基材フィルムとして、光学フィルムを用いた場合には、転写工程(3)は特に設ける必要はない。また、被膜フィルムとして、光学機能性フィルムを製造する場合にも、転写工程(3)は特に設ける必要はない。
なお、図1では、風乾ゾーンにおいて、基材フィルムの温度を制御し、結露の発生を防止するために、加温ロール13が設けられているが、これは任意である。加温ロール13の設置位置は、基材フィルム1上に塗工された被膜溶液(塗膜)21に、結露が生じないように設けられる。加温ロール13の設置位置は、風乾ゾーンの雰囲気環境である、塗工工程(1)から乾燥工程(2)までの長さ、搬送速度等により決定されるが、通常は、塗工工程(1)から乾燥工程(2)までの長さの中間点あたりとするのが好ましい。
乾燥工程(2)は、乾燥オーブン12により行われている。乾燥オーブン12は、空気取り込み口aと排気口bを有する。空気取り込み口aから、外気が乾燥オーブン中に取り込まれ、排気口bから排気される。基材フィルム1に塗工された被膜溶液21は、乾燥オーブン12中で、脱溶剤され、被膜層2を形成され、かつ通過する。乾燥オーブン12中おける前記基材フィルム1の温度は、外気(乾燥オーブン12に取り込まれる空気)の雰囲気環境における結露点以上であり、かつ被膜溶液12中の溶剤の沸点以下の温度に制御される。
本発明に用いられる、被膜溶液としては、例えば、粘着剤溶液が用いられる。粘着剤溶液としては、従来より用いられているものを用いることができる。粘着剤としては、特に制限されず、例えばアクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。粘着剤は、前記ベースポリマーおよび架橋剤を含有するものが、好ましく用いられる。特に、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとして、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
アクリル系粘着剤は、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーが共重合により導入される。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
また、窒素含有ビニルモノマーがあげられる。例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例としてあげられる。
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
これらの中でも、光学フィルム用途として液晶セルへの接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、重量比率において、0.1〜10%程度であるのが好ましい。
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレンーブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレンーイソプレンースチレン系ゴム、スチレンーブタジエンースチレン系ゴム等があげられる。シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられ、これらベースポリマーもカルボキシル基等の官能基が導入されたものを使用することができる。
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤などがあげられる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
これら架橋剤のなかでも、接着特性や、光学フィルムへの投錨性、粘着剤層の凝集性などの点からイソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類や、トリメチロールプロパン等の各種ポリオールで変性したジイソシアネート付加物、イソシアヌレート環やビューレット体やアロファネート体を形成させたポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.01〜6重量部程度が好ましく、さらには0.1〜3重量部程度が好ましい。
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
また前記粘着剤溶液に用いる溶剤成分としては、ベースポリマーに応じて、各種の溶剤を用いることができる。前記溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素溶剤;ヘキサン、ヘプタン、ペンタンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤などがあげられる。これらのなかでも、ベースポリマーに対する溶解性やコーティング時の塗工性、乾燥性の点で、トルエン、酢酸エチルまたはこれらの混合物が有用である。特に、前記溶剤として、水との溶解度が低い溶剤、例えば、トルエン、酢酸エチルを用いる場合に本発明は好適である。これらの溶剤は、水との溶解度が低く、結露が生じた場合には、粘着剤溶液(塗膜)表面に留まり、塗膜表面の架橋剤と反応して、不具合を生じやすく、また、乾燥前の塗膜表面に水の層が形成されて、これにより外観の不具合を生じやすい。本発明は、このような溶剤を用いた場合にも、結露を防止することができる、前記不具合の発生が抑えられる。
粘着剤溶液において、当該溶液中のベースポリマーの濃度は、塗工性、乾燥性、外観などの点から設定されるが、通常は、3〜20重量%程度、好ましくは7〜15重量%である。
被膜材料として、粘着剤溶液を用いる場合には、基材フィルムとして、離型フィルムまたは光学フィルムが用いられる。
離型フィルムの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。離型シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。特に、5〜200μmが好ましい。
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)はほぼ解消することができる。厚み方向位相差(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いても良く、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いても良い。
前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
液晶ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコチック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
また、本発明に用いられる、被膜溶液としては、例えば、光学機能材料の溶液が用いられる。光学機能層としては、偏光層、円偏光層、光学補償層、位相差層、ハードコート層、反射防止層、拡散層などが挙げられる。これら光学機能層は、前記光学フィルムの説明において説明しているが、本発明の光学機能材料の溶液としては、これら光学機能層の形成を、これら材料の溶液を用いる場合が相当する。なお、当該溶液には、用途に応じて、各種の添加剤を含有させることができる。
なお、これら光学機能材料の溶液が塗工され、光学機能層が形成される基材フィルムとしては、前記光学フィルムにおいて、偏光子の透明保護フィルムとして例示されたものと同様のものが用いられる。
前記偏光層、円偏光層を形成する材料としては、当該材料の溶液を、基材フィルムに塗工、乾燥後に、基材フィルム上で配向し、偏光性、円偏光性を発現するものである。かかる化合物としては、二色性染料化合物、液晶系化合物があげられる。
前記光学補償層、位相差層の形成には、液晶材料があがられる。液晶材料としては、例えば、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーが用いられる。前記重合性液晶モノマーとしては、たとえば、ネマチック液晶性モノマーがあげられる。重合性液晶モノマーを含有する場合には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。
ネマチック液晶性モノマーとしては、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性官能基を有し、これに環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。また重合性官能基として、アクリロイル基、メタアクリロイル基等を2つ以上有するものを用いて架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーがあげられる。メソゲン基となる前記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものがあげられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
前記重合性液晶モノマー、液晶ポリマーのいずれのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサ部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサ部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
前記ネマチック液晶性モノマー、液晶性ポリマーには、液晶状態においてコレステリック相を呈するように、コレステリック液晶性モノマーやカイラル剤を配合することができる。またコレステリック液晶性ポリマーを用いることができる。得られたコレステリック液晶相は選択反射フィルムとして用いられる。カイラル剤としては、光学活性基を有し、ネマチック液晶性モノマー等の配向を乱さないものであれば特に制限されない。カイラル剤は液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよいが、コレステリック液晶性を示すものを好ましく使用できる。カイラル剤は反応性基を有するもの、有しないもののいずれも使用できるが、硬化して得られるコレステリック液晶配向フィルムの耐熱性、耐溶剤性の点では反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、たとえば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アジド基、エポキシ基などがあげられる。
またディスコチック液晶の傾斜配向層からなる光学的異方性層が光学補償位相差相として用いられる。ディスコチック液晶としては、特開平8−94836号公報等に記載のものを例示できる。
なお、前記液晶モノマー、液晶ポリマーは、配向膜上に展開させることができる。配向膜としては、従来より知られている各種のものを使用でき、たとえば、透明な基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの、透明なフィルムを延伸処理した延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマーまたはポリイミドに偏光紫外線を照射したもの等を用いることができる。
ハードコート層を形成する材料としては、ハードコート性に優れ(JIS K5400の鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すもの)、十分な強度を持ち、光線透過率の優れたものであれば特に制限はない。例えば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
ハードコート層には、前述の通り、導電性微粒子粒子を配合することで、屈折率を調整することができ、無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーを分散含有させて、その表面を微細凹凸構造にして、光拡散による防眩性を付与することができる。光拡散性の付与は反射率を低減するうえでも好ましい。
反射防止層の形成材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物が用いられる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。ゾル−ゲル系材料は部分縮合して用いることができる。
前記光学機能材料の溶液に用いる溶剤成分としては、材料の種類に応じて各種の溶剤を用いることができる。溶剤としては、粘着剤溶液に用いたものと同様のものを例示できる。また、粘着剤溶液と同様に溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンであるのが好ましい。
光学機能材料の溶液において、当該溶液中の光学機能材料の濃度は、塗工性、乾燥性、外観などの点から設定されるが、通常は、0.1〜30重量%程度、好ましくは1〜25重量%である。
なお、本発明の粘着剤付き光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
本発明の粘着剤付き光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤付き光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの片側又は両側に粘着剤付き光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
実施例1
(光学フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを40℃のヨウ素水溶液中で5倍に延伸したのち50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。この偏光子の両側にトリアセチルセルロースフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて接着し、偏光板を得た。
(粘着剤溶液の調製)
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルアクリレート=100:5:0.1(重量比)の共重合体からなる重量平均分子量200万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分24%,溶剤成分は酢酸エチル,沸点77℃)を用いた。上記アクリル系ポリマー溶液にイソシアネート系多官能性化合物である日本ポリウレタン社製コロネートLをポリマー固形分100部に対して3.2部、及び添加剤(KBM−403,信越シリコーン社製)を0.6部、粘度調整のための希釈溶剤(トルエン,沸点110℃)を加え、粘着剤溶液(アクリル系ポリマーの固形分11%)を調製した。
(粘着型光学フィルムの作製)
上記粘着剤溶液を、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材:ダイヤホイルMRF38、三菱化学ポリエステル製)上に、コンマコーターを用いて塗工厚み250μmで塗工した後、連続して、温度を75℃に設定した乾燥オーブン中で乾燥させ、厚み20μmの粘着剤層を形成した。
コンマコーターから乾燥オーブンまでの距離は0.5m、塗工速度は2m/分とした。コンマコーターから乾燥オーブンまでの、雰囲気環境は、25℃、70%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は20℃である。コンマコーターから乾燥オーブンまでに結露は生じなかった。
乾燥オーブンとしては、図2に例示の乾燥オーブン(長さは4.5m)を用いた。乾燥オーブンに取り込まれた空気の雰囲気環境は、31℃、86%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は28℃である。乾燥オーブン中の入り口から50cmの位置で、離型フィルムの温度を測定したところ、35.4℃であった。
光学フィルムとして上記偏光板を用い、オーブン乾燥後に、離型フィルム上に形成した粘着剤層を、当該偏光板とラミネータロールで貼り合わせて粘着型偏光板を得た。
実施例2
実施例1において、コンマコーターから乾燥オーブンまでの距離を1mとしたこと、乾燥オーブンの入り口の手前50cmの位置に40℃の温水を通した加温ロールを設置し、離型フィルムの塗工面に対して背面を、当該加温ロールに接触させて加温したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。なお、コンマコーターから乾燥オーブンまでに結露は生じなかった。乾燥オーブンの手前20cmの位置で、離型フィルムの温度を測定したところ、32.1℃であった。
実施例3
実施例1において、粘着剤溶液を45℃に加温して塗工したこと、乾燥オーブンの温度を45℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。なお、コンマコーターから乾燥オーブンまでに結露は生じなかった。乾燥オーブンの手前20cmの位置で、離型フィルムの温度を測定したところ、38℃であった。
比較例1
実施例1において、乾燥オーブンの温度を50℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
実施例4
(光学補償層の塗工溶液の調製)
下記化1で表されるネマチック液晶性化合物90部、下記化2で表されるカイラル剤10部、および光重合開示剤(イルガキュア907,チバスペシャリフィケミカルズ社製)5部を、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)300部に均一に混合して、液晶材料の塗工溶液を調製した。
(光学補償フィルムの作製)
上記液晶材料の塗工溶液を、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材フィルム)の上に、ダイココーターを用いて塗工厚み20μmで塗工した後、連続して、温度を75℃に設定した乾燥オーブン中で乾燥させ、塗膜を形成した。
ダイコーターから乾燥オーブンまでの距離は0.5m、塗工速度は2m/分とした。ダイコーターから乾燥オーブンまでの、雰囲気環境は、25℃、70%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は20℃である。ダイコーターから乾燥オーブンまでに結露は生じなかった。
乾燥オーブンとしては、図2に例示の乾燥オーブン(長さは4.5m)を用いた。乾燥オーブンに取り込まれた空気の雰囲気環境は、31℃、86%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は28℃である。乾燥オーブン中の入り口から50cmの位置で、基材フィルムの温度を測定したところ、38.1℃であった。
次いで、上記塗膜に、紫外線照射を行い(20mJ/cm2,波長365nm)、厚み2μmのカイラルネマチック(コレステリック)液晶層からなる光学補償層を形成し、光学補償フィルムを得た。なお、この光学補償層における、面内位相差は0nm、厚み方向位相差は110nmであった。
比較例2
実施例4において、乾燥オーブンの温度を35℃に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、光学補償フィルムを作製した。
比較例3
実施例4において、乾燥オーブンの温度を90℃に変えたこと、塗工速度を0.5m/分に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、光学補償フィルムを作製した。
実施例5
(ハードコート層の塗工溶液の調製)
ウレタンアクリル型紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製,商品名ユニフィック17‐806)100部、および光重合開示剤(イルガキュア907,チバスペシャリフィケミカルズ社製)3部を、固形分が25%になるように計量されたトルエンと混合して、塗工溶液を調製した。
(ハードコートフィルムの作製)
上記塗工溶液を、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(基材フィルム)上に、ダイココーターを用いて塗工した後、連続して、温度を80℃に設定した乾燥オーブン中で乾燥させ、塗膜を形成した。
ダイコーターから乾燥オーブンまでの距離は0.5m、塗工速度は2m/分とした。ダイコーターから乾燥オーブンまでの、雰囲気環境は、25℃、70%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は20℃である。ダイコーターから乾燥オーブンまでに結露は生じなかった。
乾燥オーブンとしては、図2に例示の乾燥オーブン(長さは4.5m)を用いた。乾燥オーブンに取り込まれた空気の雰囲気環境は、31℃、86%RHであった。当該雰囲気環境における結露点温度は28℃である。乾燥オーブン中の入り口から50cmの位置で、基材フィルムの温度を測定したところ、36.1℃であった。
次いで、上記塗膜に、紫外線照射を行い(20mJ/cm2,波長365nm)、厚み5μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
比較例4
実施例5において、乾燥オーブンの温度を60℃に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
上記実施例および比較例で得られた被膜フィルム(粘着型偏光板、光学補償フィルムまたはハードコートフィルム)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、各例における、乾燥オーブン中の入り口から50cmの位置で測定した、基材フィルムの温度についても表1に示す。なお、基材フィルム、離型フィルムの温度測定は、基材フィルムの背面に対して、接触式フィルム温度計(LINE精機社製のTc‐700)を用いて行った。
(外観評価)
得られた粘着型偏光板または粘着型位相差板の外観を、透明または白濁で目視評価した。実施例では、乾燥工程(乾燥オーブン中)で、基材フィルム上の被膜溶液(塗膜)に結露は認められなかった。一方、比較例1、2、4では結露が認められた。なお、比較例3では、基材フィルムの温度が、被膜溶液中の溶剤の沸点よりも高く、発泡は生じた。
(ヘイズ)
JIS K7136(1981年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHM150型(商品名、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
(投錨性)
作製された粘着型偏光板または粘着型位相差板を25mm幅×50mm長さに切断した。これの粘着剤層面と50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム表面にインジウム−酸化錫を蒸着ざせた蒸着フィルムの蒸着面とが接するように貼り合わせた後、20分間以上、23℃/60%RHの環境下に放置した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部を手で剥離し、粘着剤がポリエチレンテレフタレートフィルム側に付着しているのを確認してから、引張試験機(島津製作所社製,オートグラフAG−1)を用いて、180°剥離、引張速度300mm/minにて室温雰囲気下(25℃)にて、光学フィルムと粘着剤層との密着性(N/25mm)を測定した。各サンプルについて、3点の測定を行いそれらの平均値とした。