JP2007114253A - 導波路型光分岐素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長、偏光、入力ポートによらず一定の分岐比を有する入出力2×2の導波路型光分岐素子を提供する。
【解決手段】2つの入力ポート12,13及び2つの出力ポート14,15を形成し、入力ポート12,13及び出力ポート14,15からの光導波路25,26を徐々に接近させて結合部17を形成した導波路型光分岐素子において、入力ポートから結合部17の出力端33にかけて、一方の入力ポート12から光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポート13から光入力した場合には略奇モードのみを励起し、結合部17の導波路25,26のコアの高さ方向の中央の幅W1’,W2’をコアの高さ方向の上面の幅W1,W2より大きくした。
【選択図】図1
【解決手段】2つの入力ポート12,13及び2つの出力ポート14,15を形成し、入力ポート12,13及び出力ポート14,15からの光導波路25,26を徐々に接近させて結合部17を形成した導波路型光分岐素子において、入力ポートから結合部17の出力端33にかけて、一方の入力ポート12から光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポート13から光入力した場合には略奇モードのみを励起し、結合部17の導波路25,26のコアの高さ方向の中央の幅W1’,W2’をコアの高さ方向の上面の幅W1,W2より大きくした。
【選択図】図1
Description
本発明は、導波路型光分岐素子に係り、特に、所定の分岐比で光を分岐させるX分岐型光回路を有する導波路型光分岐素子に関するものである。
光通信システムのアクセス系ネットワークにおいて、2本の入力側光ファイバから入射した波長1.25〜1.65μmの光を、波長、偏光、入力ポートによらず、一定の分岐比で複数の出力側光ファイバに分岐するための光分岐素子(2×Nカプラ)が不可欠な構成要素となっている。
2×Nカプラは、通常、一定の分岐比を有する2入力2出力の光分岐素子(2×2カプラ)と、その2×2カプラの各出力ポートにそれぞれ縦続接続される2個の1入力M出力の光分岐素子(1×Mカプラ、ただしM=N/2)とで構成される。
一般的に、2×2カプラの光学特性は、1×Mカプラの光学特性に比べて悪いため、2×Nカプラの光学特性は、主に2×2カプラの光学特性によって制限されることになる。したがって、高性能、低価格な2×Nカプラを実現するためには、波長、偏光、入力ポートによらず一定の分岐比を有する2×2カプラの実現が重要な技術課題となる。
また、2×2カプラは、導波路型光分岐素子の最も基本的な構成要素の一つであるため、波長等の条件によらず一定の分岐比を有する2×2カプラが実現されれば、アクセス系ネットワーク以外の光通信用部品や、光通信以外の分野で使用される光導波路部品にも適用することができ、非常に有用となる。
分岐比が波長、偏光、入力ポートに依存しない2×2カプラを実現する技術としては、融着・延伸した光ファイバを用いた融着カプラ、マッハツェンダー干渉計を用いた導波路型波長無依存カプラ(MZI−WINC)、非対称X分岐型光回路を用いた導波路型光分岐素子(導波路型カプラ)、及び方向性結合器型の光回路を用いた導波路型光分岐素子が知られている。
図12に示すように、方向性結合器型光回路を用いた導波路型光分岐素子90は、2つの入力ポート91a,91bと2つの出力ポートと92a,92bを有し、各入力ポート91a,91bと各出力ポート92a,92bとがそれぞれ光導波路93,94で接続されている。2つの光導波路93,94は互いに徐々に接近し、2本の光導波路93,94が平行に近接してなる結合部95を形成している。図13に示すように、2本の光導波路93,94は、基板96上に形成され光伝搬方向断面が矩形状のコア97と、そのコア97を覆うクラッド98とからなる。なお、図中のGは、結合部95における2つのコア97間のギャップの長さである。
導波路型光分岐素子90の一方の入力ポート91aから入力された光信号は、結合部95でモード変換されて光電力比で略1対1に分岐されて2つの出力ポート92a,92bから出力される(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
また、図14に示すように、非対称X分岐型光回路を用いた導波路型光分岐素子100は、図示されない基板上に2つの入力ポート101a,101bと2つの出力ポート102a,102bが形成され、入力ポート101a,101b及び出力ポート102a,102bからの光導波路103,104,105,106をX字状に結合させた結合部107が形成されたものである。入力ポート101a,101b側の2本の光導波路103,104はそのコア幅が等しいのに対し、出力ポート102a,102b側の2本光導波路105,106は、一方の光導波路105のコア幅が大きく、他方の光導波路106のコア幅が小さく形成されている。
図14の導波路型光分岐素子100においても、一方の入力ポート101aから入力された光信号は、結合部107で略1対1に分岐されて2つの出力ポート102a,102bから出力される(例えば、非特許文献2参照)。
しかしながら、融着カプラ、或いはMZI−WINCを用いた2×2カプラでは、それぞれ、製造方法及び光回路の設計原理が原因となって、作製される光分岐素子に製造誤差が生じ易く、分岐比が入力波長と入力ポートによって変化しやすいという問題がある。
このため、融着カプラ或いはMZI−WINCを用いた2×2カプラは、分岐比を全使用波長、全入力ポートに対して一定に保持することが難しいといった問題が生じてくる。
また、これらの2×2カプラは、製造誤差の影響によって容易に光学特性が変化するため、安定して、安価に製造することも困難であった。
さらに、従来の非対称X分岐型光回路を用いた導波路型光分岐素子、或いは方向性結合器型光回路を用いた光分岐素子では、分岐比が非対称である場合(例えば、1:4以上)では有効性が確認されているものの、現実的な製造条件下で、分岐比が1:1の導波路型光分岐素子を作製すると、入力波長と入力ポートに依存して分岐比が大きく変動してしまい、光通信システムの要求性能を満足できないという問題があった。
そのため、図12及び図13で説明した導波路型光分岐素子90では、入力波長や入力ポートによらず分岐比を一定とするために、結合部95の長さ(結合長)を長くする、或いは結合部95での光結合を強くする必要がある。
非対称X分岐型光回路及び方向性結合器型光回路では、光の伝搬方向に構造が変化する(コアの断面形状が変化する)系の波動伝搬について述べた断熱定理によると、結合長を十分に長くすることによって、上記光回路の分岐比を波長と入力ポートによらず一定にできることが知られているが、現実には、製造装置や製造コストの制約があるため、光回路の長さを一定以上の値にすることは難しい。また、結合長を長く形成するために、導波路型光分岐素子のサイズが大きくなるのは好ましくない。
結合部95の長さを長くすることなく一定分岐比の非対称X分岐光回路を実現するためには、結合部95のギャップGを狭くして、2つの光導波路間の光結合を強くすることが必要であるが、結合部95のギャップGは微小なものであり、慣用の製造方法では、露光・エッチング技術の制約のために、結合部95のギャップGを一定値以下にすることが困難であった。
以上の理由により、慣用の製造方法では、現実的な光回路のサイズを大きくすることなく一定分岐比の非対称光回路を実現することが困難であった。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、波長、偏光、入力ポートによらず一定の分岐比を有する入出力2×2の導波路型光分岐素子を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、2つの入力ポート及び2つの出力ポートを形成し、上記入力ポート及び上記出力ポートからの光導波路を徐々に接近させて結合部を形成した導波路型光分岐素子において、上記入力ポートから上記結合部の出力端にかけて、一方の入力ポートから光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポートから光入力した場合には主として奇モードを励起すると共に、上記結合部の導波路のコアの高さ方向の中央の幅をコアの高さ方向の上面の幅より大きくした導波路型光分岐素子である。
請求項2の発明は、2つの入力ポート及び2つの出力ポートを形成し、2つの入力ポートにそれぞれ接続される入力導波路を形成し、両入力導波路にそれぞれ接続され互いに徐々に接近する結合用導波路を形成し、上記2つの出力ポートにそれぞれ接続される出力導波路を形成し、両出力導波路にそれぞれ接続され互いに徐々に接近する分岐用導波路を形成し、上記結合用導波路と上記分岐用導波路を1つの接続用導波路を介して接続した導波路型光分岐素子において、上記入力ポートから上記結合用導波路の出力端にかけて、一方の入力ポートから光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポートから光入力した場合には主として奇モードを励起すると共に、上記結合用導波路のコアの高さ方向の中央の幅をコアの高さ方向の上面の幅より大きくした導波路型光分岐素子である。
請求項3の発明は、2つの結合用導波路のコアの幅を非対称に変化させると共に、両結合用導波路の間隔を徐々に小さくした請求項2記載の導波路型光分岐素子である。
請求項4の発明は、入力ポートから出力ポートへの分岐比が、4:1〜1:4の範囲にある請求項2または3いずれかに記載の導波路型光分岐素子である。
請求項5の発明は、上記コアは、石英または不純物がドープされた石英を用いて形成される請求項1〜4いずれかに記載の導波路型光分岐素子である。
本発明によれば、波長、偏光、入力ポートによらず一定の分岐比で入力光を分岐させることができるといった優れた効果を発揮する。
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る導波路型光分岐素子の好適な実施の形態を示した平面図である。
図1に示すように、本実施の形態の導波路型光分岐素子10は、基板11上に、コアとコアを覆うクラッドとからなる光導波路で構成され、2つの入力ポート12,13と2つの出力ポート14,15とが互いに基板11の反対側の端面に形成される。入力ポート12,13及び及び出力ポート14,15は外部との光入出力に用いられる。
2つの入力ポート12,13には、それぞれ入力導波路21,22が接続され、2つの出力ポート14,15にはそれぞれ出力導波路23,24が接続される。2本の入力導波路21,22にはそれぞれ互いに徐々に接近する結合用導波路25,26が接続され、2本の出力導波路23,24にはそれぞれ互いに徐々に接近する分岐用導波路27,28が接続され、結合用導波路25,26と分岐用導波路27,28は1つの接続用導波路29を介して接続されている。
図2に示すように、本実施の形態では、基板11は石英またはSiで形成され、基板11の上面に純粋石英または不純物をドープした石英からなる下部クラッド層41が形成され、下部クラッド層41の上面には純粋石英または不純物をドープした石英からなるコア42が形成され、コア42及び下部クラッド層41を覆うように純粋石英または不純物をドープした石英からなる上部クラッド層43が堆積される。コアとクラッド層間の比屈折率差Δは0.3〜0.4%、コア42の膜厚は7.0〜8.0μmである。
なお、基板11が石英で形成される場合には、下部クラッド層41は設けなくともよい。
図1に戻り、導波路型光分岐素子10のうち、2本入力導波路21,22によってなる箇所を入力側ピッチ変換部16、互いに近接した2本の結合用導波路25,26によってなる箇所を結合部17、接続用導波路29によってなる箇所を接続部18、互いに近接した2本の分岐導波路27,28によってなる箇所を分岐部19、2本の出力導波路23,24によってなる箇所を出力側ピッチ変換部20とする。
入力側ピッチ変換部16では、入力導波路21,22に曲げを形成し、光結合が生じる直前まで2本の入力導波路21,22間の間隔を接近させておくことにより、結合部17が必要以上に長くなることを防ぐ役割を有する。
結合部17は、導波路型光分岐素子10を実現する上で最も重要な部分であり、2本の導波路が微小な間隔を有して並行して形成され、結合用導波路25,26間の光結合力が弱く、結合部17を伝搬する光には2つのスーパーモードが存在する。
具体的には、結合部17として、一方の結合用導波路(図中上側)25がコア幅が出力端33に向けて徐々に大きくなるように形成され、他方の結合用導波路(図中下側)26がコア幅が出力端33に向けて徐々に小さくなるように形成され、さらに、両結合導波路25,26間の距離が出力端33に向かって徐々に小さくなるように形成されている。
結合部17は、一方の入力端31から入力された光が、結合部17の出力端33においてほぼ偶対称性をもつスーパーモード(偶モード)のみを励起し、他方の入力端32から入力された光が、結合部17の出力端33において、ほぼ奇対称性をもつスーパーモード(奇モード)のみを励起するように、光の電界成分の振幅分布・位相分布を制御する役割を担う。
このために、結合部17は、
(A)「出力端33において、2本の結合用導波路25,26が異なるコア幅W1、W2を持つ」
(B)「2本の結合用導波路25,26間の距離が、入力端31,32から出力端33に向けて徐々に小さくなる」
といった2つの条件を満たす構造を有する。
(A)「出力端33において、2本の結合用導波路25,26が異なるコア幅W1、W2を持つ」
(B)「2本の結合用導波路25,26間の距離が、入力端31,32から出力端33に向けて徐々に小さくなる」
といった2つの条件を満たす構造を有する。
接続部18は、結合部17の出力端33と分岐部19の入力端34を接続する1本の接続用導波路29を備える。接続用導波路29は、結合部17で生じたスーパーモード以外の不要電場成分の相対位相を調節することにより、分岐比の入力ポート依存性を小さくする役割を担う。
接続用導波路29は、伝搬方向に垂直な導波路断面内で光電場分布が、結合部17の出力端33から分岐部19の入力端34まで、できるだけ変化しないように設計される。接続部18は完全に省略して、結合部17の出力端33と分岐部19の入力端34とを直接接続してもよい。
分岐部19及び出力側ピッチ変換部20は、分岐部19の入力端34に入射した偶対称性をもつスーパーモード(偶モード)と奇対称性をもつスーパーモード(奇モード)のパワーを、一定の分岐比で、所定間隔だけ離れた出力ポート14,15に分配し、外部出力する役割を担う。分岐部19では、2本の分岐用光導波路27,28が分岐比を1:1にすべく対称Y分岐に形成されているが、他に、非対称Y分岐、2本のテーパー付きサインカーブパターン、テーパーパターン、オフセット付き円弧パターン、または2本のテーパ付き直線パターンを有する形状に形成されたものもある。
ここで、結合部17における光結合のメカニズムを説明する。
図3に示すように、波長、偏光、入力ポートによらず一定の分岐比を有する非対称X分岐回路を実現するためには、波長、偏光、入力ポートによらず、出力導波路23,24への入力光の電場分布を、分岐用導波路27,28の入力端34における基本(0次)モード(図中a)及び高次(1次)モード(図中b)に一致させる必要がある。
図4に示すように、結合部17のコアが太径の結合用導波路25から入力された光を、徐々にコアが細径の結合用導波路26に結合させて、結合部17の出力端33における電場分布が、分岐導波路27,28の入力端34における基本モード(図3中a)と一致するようにし、かつ、図5に示すように、光が結合部17のコアが細径の結合用導波路26から入力された場合には、コアが細径の結合用導波路26から、光を徐々にコアが太径の結合用導波路25に結合させて、結合部17の出力端33における電場分布が、分岐用導波路27,28の入力端34における高次モード(図3中b)と一致するように、2本の結合用導波路25,26の形状、等価屈折率を決定する。
結合用導波路25,26は、結合部17の出力端33において、入力ポート12から入力された光が、ほぼ偶対称性をもつスーパーモード(偶モード)だけを励起し、入力ポート13から入力された光が、結合部17の出力端33において、ほぼ奇対称性をもつスーパーモード(奇モード)だけを励起する構造であればよく、図1に示される形状に限られない。
ただし、上述の2種類の要件(A),(B)を同時に満たしうる結合部17の光回路パターンは複数考えられるが、一般に、光回路のパターンの形状に限らず、結合導波路長(2本の結合用導波路25,26が光電力のやりとりを可能にする程互いに近接した領域)を十分長くするか、2つの結合用導波路25,26間の距離(ギャップ)を十分小さくしなければ、上記の要件を満たすことができないということが経験的に知られている。
さて、本実施の形態の導波路型光分岐素子10は、コア上面のギャップGよりも、導波路コア中央部のギャップG’を小さくすることが重要であることに着目し、コアの高さ方向の中央部の幅W1’,W2’をコアの高さ方向の上面の幅W1,W2より大きくしたことに特徴を有する(図2参照)。
本導波路型光分岐素子10の結合部17では、2本の結合用導波路25,26のコア側面44,45を斜面に形成し、各結合用導波路25,26のコアの中央部の幅W1’、W2’を、コア上面の幅W1、W2より大きくしている。これにより、コア中央部間のギャップG’がコア上面のギャップGより狭く形成されている。
結合部17において、2本の結合用導波路25,26は、光の伝搬方向に対してコア幅が直線的に変化する直線テーパ状、或いは曲線的に変化する曲線テーパ状に形成されている。出力端33におけるコア幅については、一方の結合用導波路25の上面のコア幅W1が7.0〜9.0μm、他方の結合用導波路26の上面のコア幅W2が2.0〜3.0μmである。接続部18の長さは1μmとした。分岐部19の分岐用導波路27,28は、分岐比を1:1にすべく、互いにコア幅を等しく形成した。結合部17の入力端31,32から分岐部19の出力端35までの長さLは、8〜10μmとした。
導波路型光分岐素子10は、フォトリソグラフィ及びエッチング等で光回路のパターンを形成して作製されるが、コアの側壁44,45を斜めにすることにより、コア中央部のギャップG’を露光精度の限界によって決定されるコア上面のギャップGより小さくすることができる。従って、従来より用いられている製造方法を用いて挟ギャップ、すなわち強い光結合を実現することができる導波路型光分岐素子を形成することができ、非対称X分岐光回路の分岐特性を大幅に改善することができる。
ここで、結合用導波路25,26のコア側壁が垂直に形成され、他の光回路パターンが図1の導波路型光分岐素子10と同じく形成された導波路型光分岐素子(G=G’)の透過損失を図6に示し、本実施の形態の結合用導波路25,26のコアの側壁44,45が斜面に形成された図1の導波路型光分岐素子10(G>G’)の透過損失を図7に示す。図6及び図7において、縦軸は透過損失を表し、横軸は素子番号(A〜D)と各素子の入出力ポート番号を表している。例えば、図6では、同形状同条件で作製した導波路型光分岐素子を4つ(素子A〜素子D)について、入出力ポートの組合せと測定波長を変えて透過損失を測定した結果を示している。ポート番号は入力−出力を表しており、例えば1−1は入力1(図1参照)から入力して出力1から出力された光の透過損失を表している。特性線51,53は入力波長が1.31μmの場合を表し、特性線52,54は入力波長が1.55μmの場合を表している。
図6に示すように、結合用導波路25,26のコア側壁が垂直に形成された導波路型光分岐素子では、入力波長と入力ポートによって1.5dB程度の透過損失のばらつきがあるのに対して、図7に示すように、本実施の形態の導波路型光分岐素子10(結合用導波路25,26のコアの側壁44,45が斜めの場合)では、入力波長と入力ポートによる透過損失のばらつきを0.5dB以下に抑えることができ、実用上十分な特性が得られている。
図6及び図7に示された導波路型光分岐素子の特性結果では、結合用導波路25,26の側壁角以外は同一の試作条件を用いているため、コアの側壁を斜めにすることによって、波長と入力ポートによらず分岐比が一定となる非対称X分岐光回路が実現できることを示している。
また、図8に示すように、本実施の形態の導波路型光分岐素子の偏波依存損失(PDL)では、波長、入力ポートによるばらつきが0.05dB以下に抑えられており、透過損失の偏光依存性も小さくすることができる。
図9に示すように、波長1.25〜1.65μmでの透過損失のばらつきは、0.3dB以下であり、透過損失の波長依存性は殆どない。
このように、結合用導波路25,26の側壁形状をG−G’>0となるように選択すれば、実効的なギャップを小さくできて、非対称X分岐の分岐比特性を改善することができ、波長、偏光、入力ポートによってほとんど分岐比が変化しない、理想的な2×2カプラを実現することができる。
本実施の形態では、結合用導波路25,26のコア側壁44,45のみを斜面に形成したが、基板上の全ての光導波路(入力導波路21,22、出力導波路23,24、分岐用導波路27,28、接続用導波路29)のコア側面を斜面に形成してもよい。全ての光導波路のコアを斜面に形成することで、露光、エッチング等の製造工程数を低減するといったメリットがある。
以上、本実施の形態では、出力側の分岐比が1:1の導波路型光分岐素子について説明してきたが、他に、分岐比が1:4〜4:1程度の2×2カプラを容易に実現することができる。
次に、本発明の好適な第2の実施形態を図10に基づいて説明する。
基本的な構成部分は、上述した図1の導波路型光分岐素子10とほぼ同様であり、同一構成部分には、図1の場合と同一の符号を付してあるが、分岐部71において、2本の分岐導波路を非対称に形成することにより、1:1以外の分岐比を実現している点で異なる。
図10に示すように、本実施の形態の導波路型光分岐素子70は、分岐部71の入力端34において、一方(図中、上側)の分岐用導波路72の幅が、他方(図中、下側)の分岐用導波路73の幅よりも大きく形成され、分岐用導波路72は、出力導波路23に向かって徐々にコアの幅を小さくして形成され、分岐用導波路73は、出力導波路24に向かって徐々にコアの幅を大きくして形成され、共に出力導波路23,24とはコア幅を等しくして接続されている。
図11に示すように、好適な第3の実施形態の導波路型光分岐素子80は、図1の導波路型光分岐素子10と分岐部81及び出力側ピッチ変換部82が異なるものである。導波路型光分岐素子80は、分岐部81の入力端34において、両分岐用導波路83,84が、そのコア幅が互いに等しく形成され、一方の分岐導波路(図中、上側)83が、出力導波路23に向かってコア幅が一定に形成されており、他方の分岐用導波路84が、出力導波路85に向かって徐々にコア幅を小さくして形成され、その分岐用導波路84に接続される出力導波路85も、他方の出力導波路23に対してそのコア幅が小さく形成されている。
第2及び第3の実施の形態の導波路型光分岐素子70,80は、分岐部71,81の導波路の形状(入力端と出力端でのコア幅、テーパ形状、回路形状)に大きな任意性があり、ビーム伝搬法(Beam Propagation Method)等の数値計算的手法によって、形状、長さ、比屈折率差等のパラメータを適宜選択して形成することにより所望の分岐比で光を分岐させることができる。
図10及び図11に示される導波路型光分岐素子70,80も、図1の導波路型光分岐素子10と同様に、少なくとも結合部17において、コア中央の幅がコア上面の幅より大きくしたことにより、光結合力を強くし、非対称X分岐光回路の分岐特性を改善することができる。
本発明の有効範囲は、上述のパラメータ範囲に拘束されるものではない。コアの側壁を斜めにして非対称X分岐光回路の分岐特性を改善するという本発明の手法は、種々の導波路材料、比屈折率差、コア膜厚、結合部の回路パターン及び分岐部の光回路パターンに対して適用可能である。
第1〜第3の実施形態の導波路型光分岐素子10,70,80は、干渉計内部の分岐素子として使用することができる。各種干渉計(マッハツェンダー、マイケルソン、ジャイレス・トゥールモア等)の入出力部では、波長、偏光、入力ポート依存性の小さい分岐回路が必要とされている。このため、本実施の形態の導波路型光分岐素子10は、干渉計の動作波長の広帯域化のために有用である。
特に、マッハツェンダー干渉計に導波路型光分岐素子10を使用すると、波長スプリッタ、VOA(可変光減衰器)、1×2光スイッチ、2×2光スイッチを従来に比べて広帯域化することが可能となり有用である。
導波路型光分岐素子10,70,80は、光強度モニタ用の分岐素子として使用することができ、また、動作波長帯が広く、製造誤差による特性変動が小さいため、広帯域の光強度モニタ用としても有用である(ラマン増幅システムのパワーモニタ、計測・加工用等)。
さらに、導波路型光分岐素子10,70,80は、波長400〜700nmにわたる広範囲の波長を取り扱う必要がある可視光用のデバイスや、差周波混合、第二高調波発生、4光波混合、パラメトリック増幅、パラメトリック発振といった複数波長の光を必要とする非線形光学デバイス等、X分岐の広帯域性が必要とされるデバイスに適用することができる。
10 導波路型光分岐素子
16 入力側ピッチ変換部
17 結合部
18 接続部
19 分岐部
20 出力側ピッチ変換部
21,22 入力導波路
23,24 出力導波路
25,26 結合用導波路
27,28 分岐用導波路
29 接続用導波路
16 入力側ピッチ変換部
17 結合部
18 接続部
19 分岐部
20 出力側ピッチ変換部
21,22 入力導波路
23,24 出力導波路
25,26 結合用導波路
27,28 分岐用導波路
29 接続用導波路
Claims (5)
- 2つの入力ポート及び2つの出力ポートを形成し、上記入力ポート及び上記出力ポートからの光導波路を徐々に接近させて結合部を形成した導波路型光分岐素子において、
上記入力ポートから上記結合部の出力端にかけて、一方の入力ポートから光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポートから光入力した場合には主として奇モードを励起すると共に、上記結合部の導波路のコアの高さ方向の中央の幅をコアの高さ方向の上面の幅より大きくしたことを特徴とする導波路型光分岐素子。 - 2つの入力ポート及び2つの出力ポートを形成し、2つの入力ポートにそれぞれ接続される入力導波路を形成し、両入力導波路にそれぞれ接続され互いに徐々に接近する結合用導波路を形成し、上記2つの出力ポートにそれぞれ接続される出力導波路を形成し、両出力導波路にそれぞれ接続され互いに徐々に接近する分岐用導波路を形成し、上記結合用導波路と上記分岐用導波路を1つの接続用導波路を介して接続した導波路型光分岐素子において、
上記入力ポートから上記結合用導波路の出力端にかけて、一方の入力ポートから光入力した場合には主として偶モードを励起し、他方の入力ポートから光入力した場合には主として奇モードを励起すると共に、上記結合用導波路のコアの高さ方向の中央の幅をコアの高さ方向の上面の幅より大きくしたことを特徴とする導波路型光分岐素子。 - 2つの結合用導波路のコアの幅を非対称に変化させると共に、両結合用導波路の間隔を徐々に小さくした請求項2記載の導波路型光分岐素子。
- 入力ポートから出力ポートへの分岐比が、4:1〜1:4の範囲にある請求項2または3いずれかに記載の導波路型光分岐素子。
- 上記コアは、石英または不純物がドープされた石英を用いて形成される請求項1〜4いずれかに記載の導波路型光分岐素子。
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