上述したように、従来の半導体装置では、1枚の半導体基板上にパワー用の半導体素子や制御用の半導体素子が形成されている。そして、半導体基板はGND電位として用いられるため、グランド抵抗を小さくするため、半導体基板は、例えば、2〜4(Ω・cm)の比抵抗値を有するものが使用されている。この場合、P型の半導体基板の不純物濃度が比較的高濃度となり、N型の埋込拡散層を深く形成するためには、高不純物濃度のN型の埋込拡散層を形成する必要がある。そのため、N型の埋込拡散層に、シート抵抗値を低減するため深いP型の埋込拡散層を形成するためには、高不純物濃度のP型の埋込拡散層を形成する必要がある。その結果、高不純物濃度のPN接合領域が形成され、耐圧特性を調整し難い等の問題が起こり、所望の素子特性を有する半導体素子が形成し難いという問題がある。
また、従来の半導体装置では、例えば、パワー用の縦型PNPトランジスタと制御用のNPNトランジスタがモノリシックに形成されている。そして、縦型PNPトランジスタでは、その耐圧特性を向上させるためには、N型のエピタキシャル層を厚くする必要がある。一方、制御用のNPNトランジスタでは、エピタキシャル層の膜厚を厚くすることで、分離領域の横方向拡散が広がり、デバイスサイズを縮小し難いという問題がある。つまり、パワー用の縦型PNPトランジスタと制御用のNPNトランジスタとをモノリシックに形成することで、パワー用の縦型PNPトランジスタの耐圧特性と制御用のNPNトランジスタのデバイスサイズの縮小とがトレードオフの関係になるという問題がある。
また、従来の半導体装置の製造方法では、例えば、2〜4(Ω・cm)の比抵抗値を有する半導体基板にパワー用の縦型PNPトランジスタを形成する場合、コレクタ領域と基板とをPN接合分離するN型の埋込拡散層の拡散深さを深くし難いという問題がある。そのため、コレクタ領域として用いるP型の埋込拡散層を半導体基板深部へと拡散させることができず、コレクタ抵抗を低減し難いという問題がる。
また、従来の半導体装置の製造方法では、P型の半導体基板上に2層のエピタキシャル層を形成する。1層目と2層目のエピタキシャル層に渡り、コレクタ領域として用いるP型の埋込拡散層を形成する。そして、2層目のエピタキシャル層表面に形成されたシリコン窒化膜の形成領域により、P型の埋込拡散層の這い上がりを部分的に抑制している。しかしながら、シリコン窒化膜下方に位置するP型の埋込拡散層においても、酸素の回り込み等により、部分的にその這い上がりを抑制することが難しいという問題がある。具体的には、P型の埋込拡散層の這い上がりを抑制する領域では、這い上がらせる領域から0.5(μm)程度しか、その這い上がり量を抑制することができない。そのため、所望の耐圧特性を満たすため、エピタキシャル層を2層構造とする必要があり、製造コストが嵩むという問題がある。
また、従来の半導体装置の製造方法では、2層目のエピタキシャル層表面にLOCOS酸化膜を形成した後、LOCOS酸化膜を除去し、エピタキシャル層表面に凹凸を形成する。そして、凹部が形成されたエピタキシャル層表面からコレクタ領域として用いるP型の拡散層を形成し、P型の拡散層とP型の埋込拡散層の這い上がった領域とを連結させる。しかしながら、エピタキシャル層上に形成したシリコン窒化膜を選択的に除去する際のマスクずれ等により、P型の埋込拡散層上方の所望の領域にシリコン窒化膜が形成されない場合がある。この場合には、P型の拡散層とP型の埋込拡散層との重畳領域が低減し、コレクタ抵抗を低減できない。つまり、個々の工程でのマスクずれにより素子特性が変動し、高精度な位置合わせが必要とされ、製造工程が煩雑となるという問題がある。
また、従来の半導体装置の製造方法では、半導体基板上にエピタキシャル層を形成するために、例えば、縦型の反応炉を用いた気相エピタキシャル成長装置を用いる。そして、エピタキシャル層を形成する際、半導体基板に拡散させたP型不純物であるホウ素(B)がオートドープし易いという問題がある。特に、埋込拡散層でのシート抵抗値を低減するために不純物の導入量を増大させた場合には、オートドープ量が増大する。
本発明の半導体装置は、上述した各事情に鑑みて成されたものであり、一導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された逆導電型のエピタキシャル層と、少なくとも前記半導体基板に形成された一導電型の第1の埋込拡散層と、前記半導体基板と前記エピタキシャル層とに渡り形成され、コレクタ領域として用いられる一導電型の第2の埋込拡散層と、前記半導体基板と前記エピタキシャル層とに渡り形成され、前記半導体基板と前記一導電型の第2の埋込拡散層とを接合分離する逆導電型の第1の埋込拡散層と、前記一導電型の第2の埋込拡散層とその形成領域を重畳させ、少なくとも前記一導電型の第2の埋込拡散層の上面から這い上がる逆導電型の第2の埋込拡散層と、前記エピタキシャル層表面から形成され、ベース領域として用いられる逆導電型の拡散層と、前記エピタキシャル層表面から形成され、コレクタ領域として用いられる一導電型の第1の拡散層と、前記逆導電型の拡散層に形成され、エミッタ領域として用いられる一導電型の第2の拡散層とを有することを特徴とする。従って、本発明では、コレクタ領域として用いられる一導電型の第2の埋込拡散層は、その這い上がりが抑制されるが、基板深部へと這い下がることで、コレクタ抵抗を低減することができる。
また、本発明の半導体装置は、前記半導体基板及び前記エピタキシャル層を複数の素子形成領域に区画する分離領域とを有し、前記一導電型の第1の埋込拡散層は、前記複数の素子形成領域に渡り形成されていることを特徴とする。従って、本発明では、一導電型の第1の埋込拡散層により半導体基板の比抵抗値を調整することができる。
また、本発明の半導体装置は、前記半導体基板の比抵抗値は、40〜60(Ω・cm)であることを特徴とする。従って、本発明では、低不純物濃度の半導体基板を用いることで、逆導電型の第1の埋込拡散層及び一導電型の第2の埋込拡散層を基板深部まで拡散させることができる。
また、本発明の半導体装置は、前記第1の一導電型の埋込拡散層は、前記半導体基板表面から15〜20(μm)まで拡散していることを特徴とする。従って、本発明では、第1の一導電型の埋込拡散層により、グランド抵抗値が高くなることを防ぐことができる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、一導電型の半導体基板を準備し、前記半導体基板に逆導電型の第1の埋込拡散層を形成した後、前記半導体基板の前記逆導電型の第1の埋込拡散層よりも広い領域に渡り、一導電型の第1の埋込拡散層を形成する工程と、前記逆導電型の第1の埋込拡散層とその形成領域を重畳させるように、前記半導体基板に一導電型の第2の埋込拡散層を形成する工程と、前記一導電型の第2の埋込拡散層が形成された領域に逆導電型の不純物をイオン注入し、逆導電型の第2の埋込拡散層を形成する工程と、前記半導体基板上に逆導電型のエピタキシャル層を形成し、前記エピタキシャル層表面からコレクタ領域として用いる一導電型の第1の拡散層と、ベース領域として用いる逆導電型の拡散層と、エミッタ領域として用いる一導電型の第2の拡散層とを形成する工程とを有することを特徴とする。従って、本発明では、低不純物濃度の半導体基板に逆導電型の第1の埋込拡散層を形成した後に一導電型の第1の埋込拡散層を形成することで、基板深部まで逆導電型の第1の埋込拡散層を形成することができる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記一導電型の第1の埋込拡散層を形成する工程では、前記半導体基板全面に前記一導電型の第1の埋込拡散層を形成することを特徴とする。従って、本発明では、半導体基板に形成される複数の素子形成領域においても、グランド抵抗の増大を防止できる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記逆導電型の第2の埋込拡散層を形成する不純物をイオン注入する工程前に、前記半導体基板に対し熱酸化工程を行うことを特徴とする。従って、本発明では、前記一導電型の第2の埋込拡散層の表面及びその近傍領域の不純物濃度を低下させた状態で、逆導電型の不純物をイオン注入する。この製造方法により、一導電型の第2の埋込拡散層の這い上がりを抑制することができる。また、エピタキシャル層を形成する際、一導電型の不純物のオートドープ量を低減することができる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記熱酸化工程と前記逆導電型の第2の埋込拡散層を形成する不純物をイオン注入する工程との間には、非酸化性雰囲気中での熱処理工程を行わないことを特徴とする。従って、本発明では、一導電型の不純物濃度が低くなった領域に逆導電型の不純物をイオン注入することで、効率的に逆導電型の第2の埋込拡散層を形成できる。
本発明では、低不純物濃度の半導体基板にパワー用の縦型PNPトランジスタが形成されている。この構造により、コレクタ領域として用いられる埋込拡散層を半導体基板の深部まで形成でき、コレクタ抵抗を低減することができる。
また、本発明では、半導体基板全面にP型の埋込拡散層が形成されている。この構造により、複数の素子形成領域において、グランド抵抗の増大を防止することができる。
また、本発明では、パワー用の縦型PNPトランジスタのコレクタ領域として用いられる埋込拡散層の這い上がり幅が部分的に抑制される。この構造により、耐圧特性を維持しつつ、エピタキシャル層の膜厚を薄くすることができる。
また、本発明では、制御用の縦型NPNトランジスタにおいて、エピタキシャル層の膜厚が薄くなることで、分離領域の横方向拡散が抑制される。この構造により、縦型NPNトランジスタのデバイスサイズが縮小される。
また、本発明では、縦型PNPトランジスタのコレクタ領域として用いられる埋込拡散層は、這い上がっている領域を有する。そして、這い上がった領域の不純物濃度を高くし、コレクタ領域の連結領域として用いることで、コレクタ抵抗を低減することができる。
また、本発明では、低不純物濃度のP型の半導体基板にN型の埋込拡散層を形成した後に、半導体基板全面にP型の埋込拡散層を形成する。この製造方法により、半導体基板の深部までN型の埋込拡散層を形成することができる。
また、本発明では、縦型PNPトランジスタのコレクタ領域として用いられるP型の埋込拡散層の表面及びその近傍領域の不純物濃度を低下させた状態で、N型の埋込拡散層を形成する。この製造方法により、P型の埋込拡散層の這い上がりを抑制できる。
また、本発明では、縦型PNPトランジスタのコレクタ領域として用いられるP型の埋込拡散層と重畳してN型の埋込拡散層を形成した状態で、エピタキシャル層を堆積する。この製造方法より、基板表面のP型不純物濃度を低減させ、オートドープ量を低減することができる。
また、本発明では、P型不純物、例えば、ホウ素(B)を加速電圧100(keV)、導入量8.0×1012(/cm2)程度でイオン注入することで、半導体基板全面にP型の埋込拡散層を形成する場合に半導体基板の比抵抗値が40〜60(Ω・cm)であっても縦型NPNトランジスタ及び縦型PNPトランジスタのコレクタ抵抗が上昇すること無く、比抵抗値が2〜4(Ω・cm)のグランド抵抗約2kΩとほぼ同様のグランド抵抗が得られる。
以下に、本発明の一実施の形態である半導体装置について、図1〜図4を参照し、詳細に説明する。図1は、本実施の形態における半導体装置を説明するための断面図である。図2(A)は、本実施の形態における縦型PNPトランジスタを説明するための断面図である。図2(B)は、本実施の形態における縦型PNPトランジスタを説明するための断面図である。図3は、本実施の形態における縦型PNPトランジスタの濃度プロファイルを説明するための図である。図4(A)は、本実施の形態における半導体装置の埋込拡散層のシート抵抗値及び這い上がり幅を説明するための図である。図4(B)は、本実施の形態における半導体装置の耐圧特性を説明するための図である。
図1に示す如く、縦型PNPトランジスタ1と縦型NPNトランジスタ2とがP型の単結晶シリコン基板3にモノリシックに形成されている。例えば、縦型PNPトランジスタ1はパワー用半導体素子として用いられ、縦型NPNトランジスタ2は制御用半導体素子として用いられる。尚、その他の素子形成領域には、パワー用半導体素子として大面積のNPNパワートランジスタ等が形成され、制御用半導体素子として小面積のNPNトランジスタ等が形成されている。そして、縦型PNPトランジスタ1は、主に、P型の単結晶シリコン基板3と、N型のエピタキシャル層4と、N型の埋込拡散層5と、P型の埋込拡散層6と、コレクタ領域として用いられるP型の埋込拡散層7、8、9と、N型の埋込拡散層10、11、12と、ベース領域として用いられるN型の拡散層13、14と、エミッタ領域として用いられるP型の拡散層15と、コレクタ領域として用いられるP型の拡散層16、17と、N型の拡散層18、19とから構成されている。
N型のエピタキシャル層4は、P型の単結晶シリコン基板3上に形成されている。尚、基板3の比抵抗値は、40〜60(Ω・cm)程度であり、P型不純物濃度としては、1.0×1014程度のものが使用されている。
N型の埋込拡散層5は、基板3とエピタキシャル層4とに渡り形成されている。N型の埋込拡散層5は、P型の埋込拡散層7よりも基板3の深部まで形成されている。そして、N型の埋込拡散層5は、基板3とP型の埋込拡散層7のそれぞれとPN接合領域を形成し、基板3とP型の埋込拡散層7とをPN接合分離している。尚、本実施の形態でのN型の埋込拡散層5が本発明の「逆導電型の第1の埋込拡散層」に対応する。
P型の埋込拡散層6が、縦型PNPトランジスタ1が形成される領域全面に形成され、例えば、基板3表面から15〜20(μm)程度の深さまで形成されている。P型の埋込拡散層6は、P型不純物、例えば、ホウ素(B)を導入量1.0×1012〜1.0×1014(/cm2)でイオン注入し、形成されている。そのため、P型の埋込拡散層6は、低不純物濃度の拡散領域であり、N型の拡散領域と重畳する領域では、重畳領域はN型領域となる。そして、基板3にP型の埋込拡散層6を形成することでグランド抵抗の増大を防ぎ、ラッチアップ等の問題を解決している。P型の埋込拡散層6の不純物濃度は、所望のグランド抵抗値となるように、種々の設計変更が可能である。尚、本実施の形態でのP型の埋込拡散層6が本発明の「一導電型の第1の埋込拡散層」に対応する。
P型の埋込拡散層7、8、9は、基板3とエピタキシャル層4に渡り形成されている。P型の埋込拡散層8、9は、P型の埋込拡散層7の端部近傍に配置され、P型の埋込拡散層8、9とP型の埋込拡散層7とは連結している。P型の埋込拡散層8、9は、P型の埋込拡散層7の端部近傍に一環状に形成されている場合や、コレクタ領域として引き出す領域にのみ形成されている場合でも良い。尚、本実施の形態でのP型の埋込拡散層7が本発明の「一導電型の第2の埋込拡散層」に対応する。
N型の埋込拡散層10は、少なくともP型の埋込拡散層7の上面からエピタキシャル層4表面側へと這い上がっている。一方、N型の埋込拡散層11、12は、基板3とエピタキシャル層4に渡り形成されている。N型の埋込拡散層11、12は、P型の埋込拡散層7、8、9を取り囲むように配置されている。尚、本実施の形態でのN型の埋込拡散層10が本発明の「逆導電型の第2の埋込拡散層」に対応する。
N型の拡散層13が、エピタキシャル層4に形成されている。N型の拡散層13には、N型の拡散層14が形成されている。N型の拡散層14は、ベース引き出し領域として用いられる。尚、本実施の形態でのN型の拡散層13が本発明の「逆導電型の拡散層」に対応する。
P型の拡散層15が、N型の拡散層13に形成されている。尚、本実施の形態でのP型の拡散層15が本発明の「一導電型の第2の拡散層」に対応する。
P型の拡散層16、17が、エピタキシャル層4に形成されている。P型の拡散層16、17は、N型の拡散層13を取り囲むように配置され、P型の拡散層16とP型の埋込拡散層7、8とは連結し、P型の拡散層17とP型の埋込拡散層7、9とは連結している。P型の拡散層16、17は、N型の拡散層13を取り囲むように一環状に形成されている場合や、コレクタ領域として引き出す領域にのみ形成されている場合でも良い。尚、本実施の形態でのP型の拡散層16、17が本発明の「一導電型の第1の拡散層」に対応する。
N型の拡散層18、19は、エピタキシャル層4に形成されている。N型の拡散層18、19は、P型の拡散層16、17を取り囲むように一環状に形成されている。N型の拡散層18とN型の埋込拡散層5、11とは連結し、N型の拡散層19とN型の埋込拡散層5、12とは連結している。つまり、N型の拡散層18、19が、コレクタ領域であるP型の拡散層16、17の外周を囲むように配置されることで、エピタキシャル層4表面が反転し、コレクタ電流が分離領域を介して基板3へと流れることを防止する。
絶縁層20が、エピタキシャル層4上面に形成されている。絶縁層20は、PSG(Phospho Silicate Glass)膜等により、形成されている。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、例えば、CHF3+O2系のガスを用いたドライエッチングにより、絶縁層20にコンタクトホール21、22、23が形成されている。
コンタクトホール21、22、23には、アルミ合金、例えば、Al−Si膜24が選択的に形成され、コレクタ電極25、エミッタ電極26及びベース電極27が形成されている。
一方、縦型NPNトランジスタ2は、主に、P型の単結晶シリコン基板3と、N型のエピタキシャル層4と、P型の埋込拡散層6と、コレクタ領域として用いられるN型の埋込拡散層28、29と、コレクタ領域として用いられるN型の拡散層30と、ベース領域として用いられるP型の拡散層31と、エミッタ領域として用いられるN型の拡散層32とから構成されている。
N型のエピタキシャル層4は、P型の単結晶シリコン基板3上に形成されている。
N型の埋込拡散層28は、基板3とエピタキシャル層4に渡り形成されている。
N型の埋込拡散層29は、N型の埋込拡散層28とその形成領域を重畳させるように形成されている。そして、N型の埋込拡散層29は、N型の埋込拡散層28よりエピタキシャル層4表面側へと這い上がっている。N型の埋込拡散層29を形成することで、コレクタ領域の抵抗を低減することができる。N型の埋込拡散層29を形成することで、コレクタ領域の抵抗を低減することができる。
N型の拡散層30は、N型のエピタキシャル層4に形成されている。N型の拡散層30は、N型の埋込拡散層29と連結し、コレクタ領域として用いられる。そして、N型の拡散層30とN型の埋込拡散層29とが連結することで、N型の拡散層30の横方向拡散量が低減し、縦型NPNトランジスタ2のデバイスサイズを縮小することができる。
P型の拡散層31は、エピタキシャル層4に形成されている。
N型の拡散層32は、P型の拡散層31に形成されている。
絶縁層20が、エピタキシャル層4上面に形成されている。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、例えば、CHF3+O2系のガスを用いたドライエッチングにより、絶縁層20にコンタクトホール33、34、35が形成されている。
コンタクトホール33、34、35には、アルミ合金、例えば、Al−Si膜36が選択的に形成され、エミッタ電極37、ベース電極38及びコレクタ電極39が形成されている。
図2(A)に示す如く、P型の埋込拡散層7、8、9及びP型の拡散層16、17は、縦型PNPトランジスタ1のコレクタ領域である。N型の埋込拡散層10、N型のエピタキシャル層4及びN型の拡散層13、14は、縦型PNPトランジスタ1のベース領域である。P型の拡散層15は、縦型PNPトランジスタ1のエミッタ領域である。P型不純物、例えば、ホウ素(B)により形成されているP型の埋込拡散層7上に、N型不純物、例えば、リン(P)により形成されているN型の埋込拡散層10が形成されている。そして、P型の埋込拡散層7がエピタキシャル層4表面側へと這い上がることが抑制されている。具体的には、P型の埋込拡散層7の基板3表面からの這い上がり幅W1は、2.0〜4.0(μm)程度である。N型の埋込拡散層10を形成しない場合には、通常、P型の埋込拡散層7は基板3表面から5.5(μm)程度這い上がる。つまり、P型の埋込拡散層7上にN型の埋込拡散層10を形成することで、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅は、1.5〜3.5(μm)程度抑制される。
この構造により、縦型PNPトランジスタ1では、所望のベース領域幅W2を確保した場合でも、エピタキシャル層4の膜厚を薄くすることができる。例えば、エピタキシャル層4の膜厚は、6.5〜7.5(μm)程度となる。その結果、パワー用半導体素子としての縦型PNPトランジスタ1では、エピタキシャル層4の膜厚が薄くなるが、その耐圧特性を悪化させることを防止できる。一方、制御用半導体素子としての縦型NPNトランジスタ2では、エピタキシャル層4の膜厚が薄くなることで、分離領域の横方向拡散が低減し、デバイスサイズが縮小される。つまり、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1を抑制し、エピタキシャル層4の膜厚を薄く形成することで、所望の耐圧特性を有するパワー用半導体素子とデバイスサイズが縮小化された制御用半導体素子とがモノリシックに形成される。
また、図示したように、N型の埋込拡散層5は基板3表面から30(μm)程度まで形成されている。P型の埋込拡散層7は基板3表面から20(μm)程度まで形成されている。そして、P型の埋込拡散層6は基板3表面から15〜20(μm)程度まで形成されている。この構造により、基板2を利用することで所望の幅W3を確保し、コレクタ抵抗を低減させている。この構造は、詳細は半導体装置の製造方法で後述するが、低不純物濃度の基板3の状態でN型の埋込拡散層5を形成することで、PN接合分離用のN型の埋込拡散層5を深部まで形成できることで実現される。一方、上述したように、基板3には、P型の埋込拡散層6が基板3表面から15〜20(μm)程度まで形成されることで、グランド抵抗値を所望の範囲に調整することができる。
ここで、図2(B)に示す如く、P型の埋込拡散層7では、その上面にN型の埋込拡散層10が形成されている領域L1では、P型の埋込拡散層7の這い上がりは抑制されている。一方、N型の埋込拡散層10は、P型の埋込拡散層7より内側の領域に形成されている。そのため、N型の埋込拡散層10が形成されていない領域L2、L3では、P型の埋込拡散層7は、エピタキシャル層4表面側へと這い上がっている。そして、領域L2、L3では、P型の埋込拡散層7が、N型の埋込拡散層10の周囲を囲むように形成されている。コレクタ領域として用いられるP型の拡散層16、17は、領域L2、L3において、P型の埋込拡散層7と連結している。P型の拡散層16、17は、P型の埋込拡散層7の這い上がっている領域と連結することで、コレクタ抵抗を低減することができる。
そして、図2(A)に示すように、N型の埋込拡散層10が形成されていない領域L2、L3では、P型の埋込拡散層8、9が、P型の埋込拡散層7と重畳して形成されている。上述したように、P型の拡散層16はP型の埋込拡散層7、8と連結し、P型の拡散層17はP型の埋込拡散層7、9と連結し、コレクタ領域を形成している。この構造により、更に、縦型PNPトランジスタ1のコレクタ抵抗を低減することができる。
図3では、縦型PNPトランジスタ1の基板3での濃度プロファイルを示している。点線は、基板3の不純物濃度を示し、一点鎖線はP型の埋込拡散層7の不純物濃度を示し、二点鎖線はP型の埋込拡散層6の不純物濃度を示している。実線は、N型の埋込拡散層5の不純物濃度を示している。図示の如く、一点鎖線と実線を比較すると、基板3表面から20(μm)程度まではP型の埋込拡散層7であり、20(μm)から30(μm)までがN型の埋込拡散層5であることがわかる。一方、二点鎖線が示すように、P型の埋込拡散層6は低不純物濃度領域であり、少なくともN型の埋込拡散層5またはP型の埋込拡散層7の一方が形成されている領域では、相殺されてしまう。
図4(A)に示す如く、横軸にN型の埋込拡散層10の不純物導入量を示している。縦軸(紙面左側)にP型の埋込拡散層7のシート抵抗値を示している。縦軸(紙面右側)にP型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1(図2参照)を示している。そして、実線は、N型の埋込拡散層10の不純物導入量とP型の埋込拡散層7のシート抵抗値の関係を示している。点線は、N型の埋込拡散層10の不純物導入量とP型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1の関係を示している。
実線で示すように、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が増大する程、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値も増大している。一方、点線で示すように、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が増大する程、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1が減少している。そして、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が増大する程、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1は減少するが、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値が増大する。一方、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が減少する程、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値は減少するが、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1は増大する。つまり、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値と這い上がり幅W1とは、N型の埋込拡散層10の不純物導入量に対し、トレードオフの関係にある。その結果、N型の埋込拡散層10の不純物導入量は、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値と這い上がり幅W1との関係により、所望の導入量が設定される。
図4(B)に示す如く、横軸にN型の埋込拡散層10の不純物導入量を示している。縦軸に縦型PNPトランジスタ1の耐圧(VCBO)を示している。実線で示すように、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が増大する程、耐圧(VCBO)が低減している。これは、高不純物濃度のP型の埋込拡散層7と高不純物濃度のN型の埋込拡散層10とで形成されるPN接合領域が、縦型PNPトランジスタ1の耐圧(VCBO)を決定しているからである。図4(A)に示したように、N型の埋込拡散層10の不純物導入量が増大する程、P型の埋込拡散層7の這い上がり幅W1が減少するが、縦型PNPトランジスタ1の耐圧(VCBO)が低減してしまう。つまり、N型の埋込拡散層10の不純物導入量は、縦型PNPトランジスタ1の耐圧(VCBO)、P型の埋込拡散層7のシート抵抗値、及びその這い上がり幅W1との関係により、その導入量が決定される。
尚、図示したようにN型の拡散層13とN型の埋込拡散層10とは、連結しない構造である必要はない。例えば、N型の拡散層13とN型の埋込拡散層10とが連結する構造の場合でも良い。この場合には、N型の埋込拡散層10の不純物濃度が高濃度となり、上述したように、P型の埋込拡散層7とN型の埋込拡散層10とのPN接合領域における耐圧特性が考慮され、N型の拡散層13及びN型の埋込拡散層10の不純物濃度が設定される。
次に、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法について、図5から図11を参照し、詳細に説明する。図5から図11は、本実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
先ず、図5に示す如く、例えば、比抵抗値が40〜60(Ω・cm)程度のP型の単結晶シリコン基板3を準備する。基板3上にシリコン酸化膜(図示せず)を形成し、シリコン酸化膜をマスクとして用い、基板3の表面からN型不純物、例えば、リン(P)を加速電圧90〜110(keV)、導入量1.0×1013〜1.0×1015(/cm2)でイオン注入する。その後、熱拡散し、N型の埋込拡散層5を形成した後、シリコン酸化膜を除去する。
次に、基板3上全面にシリコン酸化膜40を、例えば、450(Å)程度堆積する。そして、基板3の表面から全面に、P型不純物、例えば、ホウ素(B)を加速電圧90〜110(keV)、導入量1.0×1012〜1.0×1014(/cm2)でイオン注入する。
次に、図6に示す如く、シリコン酸化膜40上にフォトレジスト41を形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、P型の埋込拡散層7が形成される領域上のフォトレジスト41に開口部を形成する。その後、基板3の表面から、P型不純物、例えば、ホウ素(B)を加速電圧90〜110(keV)、導入量1.0×1014〜1.0×1016(/cm2)でイオン注入する。そして、フォトレジスト41を除去し、熱拡散し、P型の埋込拡散層6、7を同時形成する。このとき、基板3表面を熱酸化し、基板3表面にシリコン酸化膜42(図7参照)を形成する。そして、本実施の形態では、不純物濃度が、例えば、1.0×1014〜1.0×1015(/cm2)程度の基板3に、N型の埋込拡散層5を形成した後に、P型の埋込拡散層6を形成する。この製造方法により、N型の埋込拡散層5を形成する際の導入量を増大させることなく、基板3深部までN型の埋込拡散層5を形成することができる。その結果、低不純物濃度に形成されたN型の埋込拡散層5にP型の埋込拡散層7を形成できるので、P型の埋込拡散層7でのシート抵抗値を低減することができる。
次に、図7に示す如く、N型の埋込拡散層11、12、28の形成領域上に開口部が形成されるように、シリコン酸化膜42を選択的に除去する。そして、シリコン酸化膜42をマスクとして用い、基板3の表面にN型不純物、例えば、アンチモン(Sb)を含む液体ソース43を回転塗布法により塗布する。その後、アンチモン(Sb)を熱拡散し、N型の埋込拡散層11、12、28を形成する。
ここで、基板3上にシリコン酸化膜42を堆積した状態で、基板3を1200〜1250(℃)の酸化性雰囲気中に1時間程度置き、熱酸化処理を行う。この熱酸化処理により、P型の埋込拡散層7の表面及びその近傍領域(例えば、エピタキシャル層4表面から3.5(μm)程度まで)のホウ素(B)はシリコン酸化膜42へと拡散する。その結果、P型の埋込拡散層7の表面及びその近傍領域のホウ素(B)の濃度は、その深さによって異なるが、熱酸化処理前の半分程度まで低減する。その後、シリコン酸化膜42を除去する。
尚、この熱酸化処理では、少なくとも1000(℃)以上では基板3が酸化性雰囲気中に置かれるようにすることで、基板3の深い領域に存在するホウ素(B)が、基板3表面へと拡散することを防ぐことができる。また、熱酸化処理が終了するまで、基板3が酸化性雰囲気中に置かれるようにする場合でもよい。そして、この熱酸化処理により、シリコン酸化膜42は、6000〜7000(Å)程度から10000(Å)程度まで成長する。
次に、図8に示す如く、基板3上にシリコン酸化膜44を、例えば、100〜450Å程度堆積する。次に、シリコン酸化膜44上にフォトレジスト45を形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、N型の埋込拡散層10、29、46、47が形成される領域上のフォトレジスト45に開口部を形成する。その後、基板3の表面から、N型不純物、例えば、リン(P)を加速電圧30〜110(keV)、導入量1.0×1013〜1.5×1015(/cm2)でイオン注入し、N型の埋込拡散層10、29、46、47を形成する。その後、フォトレジスト45を除去する。
このとき、図7を用いて上述したように、P型の埋込拡散層7の表面及びその近傍領域のホウ素(B)の濃度は低減しているため、リン(P)とホウ素(B)が相殺する量が低減し、リン(P)の導入量を低減することができる。更に、基板3上にシリコン酸化膜44を形成する熱酸化処理においても、P型の埋込拡散層7の表面及びその近傍領域のホウ素(B)はシリコン酸化膜44へと拡散する。
また、フォトレジスト45に開口部を形成する際、P型の埋込拡散層7を形成するときに用いるアライメントマークと同一のアライメントマークを用いる。この製造方法により、N型の埋込拡散層10は、P型の埋込拡散層7に対し位置精度良く形成できるので、P型の埋込拡散層7の所望の領域の這い上がりを抑制することができる。
尚、図8以降では、N型の埋込拡散層46はN型の埋込拡散層11と一体に図示し、N型の埋込拡散層47はN型の埋込拡散層12と一体に図示する。
次に、図9に示す如く、シリコン酸化膜44上にフォトレジスト48を形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、P型の埋込拡散層8、9、49、50、51が形成される領域上のフォトレジスト48に開口部を形成する。その後、基板3の表面から、P型不純物、例えば、ホウ素(B)を加速電圧90〜180(keV)、導入量0.5×1014〜1.0×1016(/cm2)でイオン注入する。そして、フォトレジスト48を除去する。
次に、図10に示す如く、基板3を気相エピタキシャル成長装置のサセプタ上に配置し、基板3上にエピタキシャル層4を形成する。気相エピタキシャル成長装置は、主に、ガス供給系、反応炉、排気系、制御系から構成されている。本実施の形態では、縦型の反応炉を用いることで、エピタキシャル層の膜厚均一性を向上させることができる。その一方で、図7及び図8を用いて上述したように、P型の埋込拡散層7の表面及びその近傍領域のホウ素(B)の濃度は、熱酸化処理により低減されている。また、P型の埋込拡散層7にはN型の埋込拡散層10が重畳して形成されている。そのため、基板3上にエピタキシャル層4を形成する際に、ホウ素(B)のオートドーピング量を低減することができる。
次に、エピタキシャル層4上にシリコン酸化膜52を、例えば、450(Å)程度堆積する。次に、シリコン酸化膜52上にフォトレジスト53を形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、N型の拡散層12が形成される領域上のフォトレジスト53に開口部を形成する。フォトレジスト53をマスクとして用い、エピタキシャル層4の表面からN型不純物、例えば、リン(P)を加速電圧90〜110(keV)、導入量1.0×1013〜1.0×1015(/cm2)でイオン注入する。その後、リン(P)を熱拡散し、N型の拡散層13を形成するとともに、熱酸化膜を形成させる。
次に、図11に示す如く、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、所望の形成方法及び順序により、P型の拡散層15、16、17、31、54、55、56及びN型の拡散層14、18、19、30、32を形成する。尚、P型の拡散層15とP型の拡散層16、17、54、55、56とは、同一工程で形成する場合でも、別工程で形成する場合でもよい。
その後、エピタキシャル層4上に絶縁層20として、例えば、PSG膜等を堆積する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、例えば、CHF3+O2系のガスを用いたドライエッチングで、絶縁層20にコンタクトホール21、22、23、33、34、35を形成する。コンタクトホール21、22、23、33、34、35には、アルミ合金、例えば、Al−Si膜を選択的に形成し、コレクタ電極25、39、エミッタ電極26、37及びベース電極27、38を形成する。
尚、本実施の形態では、基板3全面にP型の埋込拡散層6を形成する場合について説明したがこの場合に限定するものではない。例えば、グランド抵抗を低減したい領域にのみP型の埋込拡散層6を形成する場合でもよい。また、P型の埋込拡散層6は、基板3表面から15〜20(μm)程度まで形成される場合について説明したがこの場合に限定するものではない。例えば、所望のグランド抵抗値に応じて拡散深さを設計変更する場合でもよい。更に、各素子形成領域毎に、P型の埋込拡散層6の拡散深さを変えて形成する場合でもよい。また、P型の埋込拡散層7の這い上がりを抑制するN型の埋込拡散層10は、リン(P)をイオン注入して形成する場合について説明したがこの場合に限定するものではない。例えば、N型不純物としてはヒ素(As)等も用いる場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。