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JP2007169224A - 歯面前処理材組成物 - Google Patents

歯面前処理材組成物 Download PDF

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JP2007169224A
JP2007169224A JP2005369918A JP2005369918A JP2007169224A JP 2007169224 A JP2007169224 A JP 2007169224A JP 2005369918 A JP2005369918 A JP 2005369918A JP 2005369918 A JP2005369918 A JP 2005369918A JP 2007169224 A JP2007169224 A JP 2007169224A
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Akihito Kanematsu
昭仁 兼松
Shigemichi Honda
成道 本田
Takashi Yamamoto
隆司 山本
Harumi Tanaka
晴美 田中
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Abstract

【課題】従来技術では漂白処理された歯質に対し、歯科用接着材を適用しても高い接着強さを得ることができないことがあるとの問題を解消する歯面前処理材を提供すること。
【解決手段】有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で漂白処置された歯面の接着力を回復させるための、還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、スルフィン酸類、無機亜硫酸類、アミン系化合物およびアンミン錯塩よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、漂白後の接着用歯面前処理材組成物。
【選択図】なし

Description

漂白後の歯牙に対して簡単な操作で接着できる接着用歯面前処理材組成物に関する。さらに詳しくは、歯牙などの表面コーティング材として、もしくはPMMA系レジン、レジンセメント、コンポジットレジンなどの歯科用修復レジンとの接着剤として有利に用いられる接着用歯面前処理材組成物に関する。
近年、口腔内の審美性に関する意識の向上により、変色歯や着色歯の審美性改善を求める患者が増大している。従来、これらの審美性改善のためには、歯質を一定量削除し、歯冠補綴やラミネートベニア等のテクニックを用いて人工物で置き換える治療が主に行われてきた。
しかしながら、これらの治療法では、審美的な理由のみで多くの歯質を削除することになり、歯牙は再生できない組織でもあることから、近年の歯科治療のトレンドであるミニマルインターベンション(最小限の侵襲)という概念とも相容れない。
その様な状況の中で、全く歯牙を削除しない審美性回復手段として、歯牙漂白法が多く用いられるようになってきた。
しかしながら、漂白剤を適用すると、接着強さの低下を招来する虞があった。こうした歯質の表面を処理するための前処理剤として、特許文献1には、(A)硫黄を含有する還元性無機化合物および(B)水系溶媒からなる歯質表面への処理剤が開示されている。また、特許文献2には、(A)重合性単量体、(B)硫黄を含有する還元性無機化合物および(C)水系溶媒を含有する歯質に対する接着性プライマー組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、還元性化合物とエッチング材とからなる歯面前処理材セットが開示されている。
上記公報には、このように硫黄系の還元剤で処理された歯質表面に接着することにより、接着強度が高くなることが示されている。そして、これらの公報には、硫黄系還元剤は、エッチング後に適用することが好ましいと記載されている。一方、次亜塩素酸ナトリウムの溶液あるいは過酸化水素等の酸化性化合物で予備処理された歯質表面に歯科用接着材を適用すると、接着強度の低下を招来する虜があるとの知見を既に得ており、こうして酸化性化合物で処理された歯質表面を、酸化性でない状態に調整することにより、こうした表面に歯科用接着材を適用した場合に、接着強度が低下しにくいことが示されている。
漂白したエナメル質への接着に関しては、非特許文献1の、「漂白した牛歯エナメル質へコンポジットレジンの接着」と題する発表に、漂白後の歯面へのボンディング処理にアスコルビン酸を併用することにより接着力が回復したとの記載がある。
漂白剤としては、過酸化水素とペルオキソほう酸ナトリウム四水和物の1対1混和液にて漂白し、ボンディング材としてカンファーキノン、アミン系重合開始剤であるMega-bondが用いられている。このように、この発表では、カンファーキノンとアミン系併用による重合開始剤に限られており、開始剤トリブチルホウ素の部分酸化物(TBB−O/サンメディカル(株)製)やカンファーキノンとスルフィン酸とアミン系併用による3元系重合開始剤や過酸化ベンゾイルとアミン系併用による重合開始剤や過酸化ベンゾイルとアミン系とスルフィン酸併用による3元系重合開始剤についてはなんら発表されていなかった。
本発明者は、漂白処置後の歯質表面に接着材を適用すると、接着強度の低下を招来する虞があるとの知見を既に得ており、こうして歯牙漂白剤で処理された歯質表面を、酸化性でない状態に調整することにより、こうした表面に歯科用接着材を適用した場合に、接着強度が低下しにくいことを究明し本発明を完成するに至った。
特開平6−40835号公報 特開平6−40838号公報 特開2000−186010号公報 日本補綴歯科学会雑誌 第114回 学術大会抄録集81頁
それ故、本発明の目的は、従来技術では漂白処理された歯質に対し、歯科用接着材を適用しても高い接着強さを得ることができないことがあるとの問題を解消する歯面前処理材を提供することにある。
本発明の他の目的は、既に漂白処理が行われており、その表面が酸化性状態にある歯質表面に対して、より高い接着強度で接着を行うための歯面前処理材を提供することにある。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で漂白処置された歯面の接着力を回復させるための、還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、スルフィン酸類、無機亜硫酸類、アミン系化合物およびアンミン錯塩よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、漂白後の接着用歯面前処理材組成物によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で歯牙漂白処置された歯面の接着力を回復させるための、還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、アスコルビン酸系化合物であることを特徴とする漂白後の接着用歯面前処理材組成物によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、本発明の漂白後の接着用歯面の前処理材組成物と歯牙漂白剤とからなるキットによって達成される。
本発明の接着用歯面前処理材組成物によれば、酸化性化合物で処理された歯質表面を還元性化合物で処理して、歯質表面における酸化性化合物の影響を取り除いた後に、歯科用接着剤を用いて接着を行っているので、酸化性化合物による接着性の低下等の悪影響が発現しにくい。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明は、上記の如く歯牙漂白処置後の歯質表面に対して、より高い接着強度で接着する歯面前処理材である。
本発明において使用される還元性化合物は、例えば過酸化水素、過酸化尿素や過酸化物の如き酸化性化合物を還元する能力のある還元性化合物であり、具体的には、有機還元性化合物および無機還元性化合物がある。
第一の本発明は、有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物、および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する歯牙漂白剤で漂白処置された歯面の接着力を回復させるための還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、スルフィン酸類、無機亜硫酸類、アミン系化合物およびアンミン錯塩類よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、漂白後の接着用歯面前処理材組成物である。
前記還元性化合物として使用されるスルフィン酸類としては、例えばベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩類を挙げることができる。
前記還元性化合物として使用される無機亜硫酸類の例としては、亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩、チオ硫酸ナトリウムなど、硫黄を含有する無機還元性化合物またはその塩類を挙げることができる。
前記還元性化合物として使用されるアミン系化合物の例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチル−p−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMABAd)などの芳香族アミン類;N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N,N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)などを挙げることができる。
前記還元性化合物として使用されるアンミン錯塩の例として以下に示す式で表わされる化合物を挙げることができる。各式において「X」は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子および/またはフッ素原子を表わし、Rは、それぞれ独立に有機基を表わす。
[M(NH)]X M=Au,Cu
[M(NH]X M=Li,Na,K,Cu,Ag,Au
[MII(NH)]XII=Hg,Cu
[M(NH]X M=Cu,Ag,Au
[MII(NH]XII=Be,Cu,Ca,Ba,Pd,Pt
[MIV(NH]XIV=Ti
[MII(NH] MII=Pd,Pt
[MII(NHX]X MII=Pd,Pt
R[MII(NH] MII=Pd,Pt
[M(NH]X M=Li,Na
[MII(NH]XII=Be,Mg,Ca,Zn,Cd,Cu,Mn,Fe,Co,Ni
[MIII(NH]XIII=Al,Ge,Tl,Ti,Cr,Co.Ru,Rh,Ir
[MIV(NH]XIV=Ti,Th,Ge,Pd,Pt
[MIII(NHX]XIII=Cr,Co,Ru,Rh,Ir
[MIV(NHX]XIV=Pt,Pd
[MIII(NH]X MIII=Cr,Co,Ru,Rh,Ir
[MIV(NH] XIV=Pt,Pd
[MIII(NH] MIII=In,Bi,Cr,Co,Rh,As
R[MIII(NH] MIII=Co,Cr
[MIII(NH)X] MIII=Co,Cr
[MII(NH)X] MII=Fe
[MIV(NH] MIV=Pt,Pd
[MIV(NH] MIV=Pt
[MII(NH] XII=Ca,Sr
[MIV(NH] XIV=Zr
これらのアンミン錯塩の中でも、Mが銀(Ag)、鉄(Fe)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)等の金属原子であり、Xが、フッ素、塩素等のハロゲン原子である化合物が好ましく、これらの中でもフッ化ジアンミン銀、ジフッ化テトラアンミンカルシウムが特に好ましい。
また、前記歯牙漂白剤として使用される有機過酸化物としては、例えば
過酸化尿素、ペルオキシ−t−ブトキシド、過安息香酸等の有機過酸またはその塩類を挙げることができる。
前記歯牙漂白剤として使用される水溶液中で過酸化水素を発生する化合物としては、例えば、過酸化水素、過ほう酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過酸化尿素、ケイ酸ナトリウムの過酸化水素付加物、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムの如き無機過酸化物を挙げることができる。
過ほう酸塩としては、例えば、過ほう酸ナトリウム等が挙げられる。過炭酸塩としては、例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられる。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。過リン酸塩としては、例えば、過リン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、過酸化水素、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウムが好ましく、更には、過酸化水素、過酸化尿素が特に好ましい。
水溶液中で過酸化水素を発生する化合物が供給可能な過酸化水素の量は、該組成物に対して、好ましくは、0.5〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。前記数値範囲の下限値を下回ると漂白効果が低くなり、上限値を上回ると生体への為害性が懸念されるため、好ましくない。
又、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物が供給する過酸化水素の量を、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%にして歯牙漂白に用いられる。前記数値範囲の下限値を下回ると漂白効果が低くなり、上限値を上回ると生体への為害性が懸念されるため、好ましくない。
なお、前記の水溶液中で過酸化水素を供給し得る化合物が供給可能な過酸化水素の量乃至は供給する過酸化水素の量とは、閉鎖系において所定濃度の前記過酸化水素を供給する化合物が理論的に供給し得る過酸化水素によって達成される過酸化水素濃度である。
前記歯牙用漂白剤は、さらに二酸化チタンを含有するものであってもよい。その際、光触媒を、さらに含有することができる。二酸化チタンとしては、光照射により光触媒作用を生じる二酸化チタンであればその形態、性状を問わずいかなるものも使用することができる。好ましくは、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のいずれかであり、特にルチル型が好ましい。また、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型の二酸化チタンの表面にリン酸カルシウムをコーティングすることによって、歯牙表面との親和性を改良したものを用いることもできる。前記コーティングは、平均膜厚0.1〜500nmであることが好ましい。
二酸化チタンは微粒子状であることが好適であり、その平均粒径は好ましくは0.1〜500nm、より好ましくは0.5〜200nm、さらに好ましくは1〜100nmである。更に、光触媒作用を起こす光としては、その波長が380nm以下の紫外線だけでなく450nm以上の可視光を使用することもできる。
なお、平均粒径は、エタノール溶媒中でレーザー回折散乱法(測定条件:懸濁用液体250ml、測定試料20mg、試料投下から測定完了まで5分以内)を用いて測定した。
二酸化チタンは歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.00001〜10重量%、より好ましくは0.00001〜5重量%、さらに好ましくは0.0001〜2重量%含まれる。
歯牙用漂白剤としては、例えば、過酸化水素を含む溶液/ペースト、二酸化チタンと水溶液中で過酸化水素を発生する化合物を含有する組成物(光照射することにより生ずる光触媒作用に基づき歯牙を漂白する)、光照射により光触媒作用を生じる二酸化チタンと、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物及び増粘剤を含有する組成物、
ならびに光照射により光触媒作用を生じる二酸化チタンと、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物、増粘剤、リン酸および縮合リン酸塩を含有する組成物を挙げることができる。
また、歯牙用漂白剤である上記の如き酸化性化合物に加えて、本発明の組成物は、前記歯牙漂白活性化剤として酸性有機化合物またはその塩類を使用することができる。より具体的には、
(i)下記式(a)及び(b):
Figure 2007169224
(式中、Rは炭素数2〜19の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは水素イオンであり、nは1または2であり、Mがアルカリ金属イオンもしくは水素イオンのときはn=1であり、Mがアルカリ土類金属イオンのときは、n=2である。)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。
また、前記成分(i)の酸性有機化合物またはその塩としては下記式(c):
Figure 2007169224
(式中、mは炭素数7〜13の整数を表す。)で表される化合物および下記式(d):
Figure 2007169224
(式中、kは炭素数7〜13の整数を表す。)で表される化合物が好ましい。
上記成分(i)の式(a)で表わされる化合物としては、例えばプロパノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び、これらのカリウム塩などが挙げられる。その中では、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び、これらのカリウム塩が好ましい。とりわけ、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
上記成分(i)の式(b)で表わされる化合物としては、例えばプロパノイルオキシ安息香酸、ブタノイルオキシ安息香酸、ペンタノイルオキシ安息香酸、ヘキサノイルオキシ安息香酸、ヘプタノイルオキシ安息香酸、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ウンデカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸、トリデカノイルオキシ安息香酸、テトラデカノイルオキシ安息香酸、ペンタデカノイルオキシ安息香酸、ヘキサデカノイルオキシ安息香酸、ヘプタデカノイルオキシ安息香酸、オクタデカノイルオキシ安息香酸、及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。その中では、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ウンデカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸、トリデカノイルオキシ安息香酸が好ましい。とりわけ、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸が特に好ましい。
基本的には、式(a)、(b)に示された基本骨格を有していることが肝要であり、式(a)、(b)中の芳香環や置換基Rに発明の効果を実質上妨げないような置換基(たとえば低級アルキル基等)が存在することができる。通常は存在しない方が好ましい。また、芳香環上の配置はパラ位が好ましいが、オルト、メタ位あってもよい。これらなどを勘案すると、式(a)、(b)で示される化合物は、上記の如く、それぞれ式(c)、(d)で示される化合物であることが好ましい。
成分(i)は歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%含まれる。
この酸性有機化合物(i)を用いる歯牙漂白剤としては、成分(i)に加えて、
(ii)過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物および有機過酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の過酸化物および
(iii)水
を含有するのが好ましい。
また、前記漂白活性化剤として使用される、マンガン錯体としては、例えばマンガン基配位錯体またはその塩類を挙げることができる。
本発明において使用されるマンガン基配位錯体としては、複数のマンガン原子と複数のリガンドとから成り、マンガン中心が酸化状態IVであり、Mn(IV)中心が反強磁性的に結合されたマンガン(IV)ベースの配位錯体を挙げることができる。反強磁性結合の程度は、一般に、交換結合パラメータとして表される。このパラメータは反強磁性相互作用にはマイナスに影響する(遷移金属イオンの反強磁性結合は、例えばR.S.Dragoによって、「Physical Methods in Chemistry」,1977,Chapter 11,pp.427以後に記載されており、酸化状態(IV)のマンガンについては、K.Weighardt他によって、「The Journal of the American Chemical Society」,1988,Vol.110,pp.7398〜7411に記載されている)。
マンガン基配位錯体は、例えば、下記式(I):
[LMn (I)
〔式中、MnはIV−酸化状態のマンガンを示し、n及びmは、それぞれ2〜8のいずれかの整数を示し、Xは配位種または架橋種であって、例えばHO、OH、O 2−、O2−、HO 、SH、S2−、>SO、NR 、R−COO、NR(RはHまたは置換もしくは未置換のアルキルもしくはアリール)、Cl、N 、SCN、N3−、または、その組み合わせを示し、pは0〜32、好ましくは3〜6のいずれかの整数を示し、Yは錯体の電荷zに基づく性質の対イオンを示し、zは錯体の電荷を示す正または負の整数であり、zが正のとき、Yはアニオン、例えばCl、Br、I、NO 、ClO 、NCS、PF 、RSO 、RSO 、CFSO 、BPh 、OAcであり、zが負のとき、Yは普通のカチオン、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属または(アルキル)アンモニウムを示し、qはz/〔Yの電荷〕を示し、Lは、複数のヘテロ原子(例えばN、P、O及びSなど)を含み、そのヘテロ原子及び/または炭素原子の全部またはいくつかを介して、1つまたは反強磁性結合した複数のMn(IV)中心に配位された有機分子から成るリガンドであり、複数あるX同士は、構造が同一であってもよいし、異なるものであってもよく、それは、L同士、Y同士についても同様である〕
で示される。反強磁性結合|J|の程度は、好ましくは200cm−1より大きく、より好ましくは400cm−1より大きい。本発明では、上記マンガン基配位錯体に代えて、あるいはそれと一緒に、当該マンガン基配位錯体の前駆体を使用することができる。かかる前駆体としては、容易に前記マンガン基配位錯体に変異し得る成分であり、例えば、水溶液中乃至は唾液中等の環境下、過酸化水素を供給し得る化合物やその他の成分、場合によっては歯牙乃至は口腔中の成分と接触、反応することにより、常温常圧条件にて、本発明を実施するのに差し支えない程度の短時間にて、前記式(I)のマンガン基配位錯体に変換され得るマンガンを含む化合物でもよい。前駆体分子は必ずしも酸化状態IVのマンガンを含有しなくてもよく、またマンガン中心が必ずしも反強磁性結合していなくてもよい。好ましいマンガン基配位錯体は、m=2、n=2及びp=3でマンガン(IV)中心が反強磁性結合したマンガン錯体である。
これらは式(I’):
Figure 2007169224
〔式中、Xの各々は個別に式(I)中で配位イオンとして記載された架橋種のいずれかを示し、L、Y、q及びzは前記と同義である〕
を有する2核(dinuclear)マンガン(IV)−錯体化合物である。適当な架橋種または配位イオンは通常はドナー原子を有し好ましくは小さい分子である。
より好ましいマンガン基配位錯体は、式(I’’):
[LMnIV(μ−O)MnIVL] (I’’)
〔式中、L、Y、q及びzは前記と同義である〕で示されるX=02−の2核マンガン(IV)−錯体である。
リガンドLは複数のヘテロ原子(例えばN、P、O及びSなど)を有し、そのヘテロ原子及び/または炭素原子の全部またはいくつかを介してMn(IV)中心に配位する有機分子である。好ましいリガンドLは、3つのヘテロ原子を介して、反強磁性結合したマンガン(IV)中心に配位する多座リガンド、好ましくは、3つの窒素原子を介してマンガン(IV)中心の各1つに配位する多座リガンドである。窒素原子は第三アミン基、第二アミン基もしくは第一アミン基の一部でもよく、またはピリジン、ピラゾールなどの芳香環系の一部でもよく、またはその組み合わせでもよい。しかしながら、3つの窒素原子を介してMn(IV)中心の1つに配位するリガンドが必ずしも、[LMnIV(μ−O)MnIVL]錯体を形成するとは限らない。ある種のリガンドは2個以外のマンガン(IV)中心を含む錯体を形成する。特定の空間充填特性を有するリガンドだけが、有効な2核Mn(IV)−錯体類を形成する。これは、より好ましいマンガン基配位錯体[LMnIV(μ−O)MnIVL]の定義において、リガンドLの空間充填特性も重要であることを意味する。リガンドの空間充填特性は分子模型及び/または分子製図如き公知の方法によって知ることができる。例えば、LMn単核化合物を生じるリガンドは(空間充填特性が不十分、即ちこれらのリガンドが小さ過ぎるので)あまり適当でなく、LMnX単核化合物を生じるリガンドは(空間充填特性が過剰、即ちこれらのリガンドが大き過ぎるので)あまり適当でない。その他のあまり適当でないリガンドは、トリ−N−座リガンドであっても、4核LMnクラスターを生じるリガンドである(その理由は、空間充填特性が完全に十分でなく、クラスターが若干小さ過ぎるからである)。結局、LMnIV(μ−O)MnIVLクラスターを形成する有効な空間充填特性を有するリガンドが最も好ましい。従って、最も好ましいマンガン基配位錯体は、式(I’’)においてマンガンIV中心が反強磁性結合し、Lが3つ以上の窒素原子を含み、3つの窒素原子がMn(IV)中心の各1つに配位した2核マンガン(IV)−錯体である。このマンガン基配位錯体の代表は、式(I’’’):
[(L’N)MnIV(μ−O)MnIV(NL’)] (I’’’)
〔式中、L’N(及びNL’)は3つ以上の窒素原子を含むリガンドを示す〕の錯体である。Yは前記に定義したいかなる対イオンでもよいが、より好ましい対イオンYは、吸湿性に対して安定な固体を形成させるイオンである。これは、該イオンの格子充填特性がマンガンクラスターの格子充填特性と適合性であることを意味する。より好ましいマンガンクラスターと対イオンYとの組み合わせは通常、より大きい対イオン、例えばClO 、PF 、RSO 、RSO 、BPh 、OOCR(Rは置換もしくは未置換のアルキル、アリールなど)の使用を意味する。適当なリガンドLのいくつかの例を最も簡単な形で示す:(i)1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,8−トリメチル−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,5,9−トリメチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、(ii)トリス(ピリジン−2−イル)メタン、トリス(ピラゾール−1−イル)メタン、トリス(イミダゾール−2−イル)メタン、トリス(トリアゾール−1−イル)メタン、(iii)トリス(ピリジン−2−イル)ボレート、トリス(トリアゾール−1−イル)ボレート、トリス(ピラゾール−1−イル)ボレート、トリス(イミダゾール−2−イル)ホスフィン、トリス(イミダゾール−2−イル)ボレート、(iv)1,3,5−トリスアミノ−シクロヘキサン、1,1,1−トリス(メチルアミノ)エタン、(v)ビス(ピリジン−2−イル−メチル)アミン、ビス(ピラゾール−1−イル−メチル)アミン、ビス(トリアゾール−1−イル−メチル)アミン、ビス(イミダゾール−2−イル−メチル)アミン。
これらのすべてのリガンドは、アミンの窒素原子及び/またはCHの炭素原子及び/または芳香環が任意に置換されてもよい。
好ましいリガンドの例は:
Figure 2007169224
〔式中、RはC〜Cのアルキル基〕、または、
Figure 2007169224
〔式中、Rの各々は、H、置換もしくは未置換のアルキルもしくはアリールである〕である。
最も好ましいマンガン基配位錯体の例は:
Figure 2007169224
(Rは少なくとも水素原子を含み、炭素原子を0個以上含む置換基であり、複数あるR同士は、構造が同一であっても良いし、異なるものであっても良い。Rは好ましくは水素原子又はメチル基である。)
であり、より具体的には、R=H又はCHである、
Figure 2007169224
である。これらの触媒の反強磁性結合Jの値は〜−780cm−1である。
マンガン基配位錯体の前駆体の例は:
Figure 2007169224
である。双方の前駆体は水溶液中で過酸化水素を供給し得る化合物の存在下に変換され、以下の活性カチオン(5)を形成する:
Figure 2007169224
これらの錯体はいずれも、予め形成されているかまたは漂白工程中にその場で形成されたかにかかわりなく、より低い温度で多くの種類の汚れに対するペルオキシ化合物の漂白活性化を従来公知のマンガンベース及びコバルトベースのいかなる触媒よりもはるかに有効に行なう触媒である。更に、これらの触媒は、加水分解及び酸化に逆らう高い安定性を有する。触媒活性が[LMnコア錯体だけによって決定され、Yの存在は触媒活性に対してほとんど影響がないことに注目されたい。本発明に記載されたいくつかの錯体はこれまでにも、例えば天然マンガン−タンパク質複合体のモデルとして化学的及び実験的な探求のために調製されたが、その実用化が考慮されたことはない(K.Wieghardt他, Journal of American Chemical Society,1988,110,pp.7398及び該文献で引用された参考文献、並びに、K.Wieghardt他,Journal of the Chemical Society−Chemical Communications,1988,p.1145)。
Mn基配位錯体の有効量は、マンガン含量換算で、該組成物に対して、好ましくは、0.00001〜0.1重量%である。前記数値範囲の下限値を下回ると漂白効果が低くなり、好ましくない。
また、Mn基配位錯体の有効量は、マンガン含量換算で、好ましくは0.00001〜0.1重量%にて、より好ましくは0.0002〜0.01重量%にて、歯牙漂白に用いられるものである。
光照射を必ずしも必要としないが、光照射を行ってもかまわない。
本発明の組成物は、その他に、必要に応じて、無機増粘剤として、例えばサポナイト、モンモリロナイト、スチブンサイト、ヘラトライト、スメクナイト、ネクタイト及びセピオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機粘土鉱物を含有することもできる。
また、過酸化物の活性や漂白効果をより高めるためのpH調整剤、歯面への塗布性を高めるための増粘剤、塗布範囲を明確にするための着色剤、上記化合物の保存安定性を向上させるための安定剤等を含有することができる。
上記の組成物には、すべての成分が速やかに混和できるように水混和性溶媒を添加することができる。その溶剤としては、具体的には、エチルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。その中ではエチルアルコール、アセトン、グリセリンが好ましく、さらには、エチルアルコールが特に好ましい。
また、該マンガン基配位錯体および/またはその前駆体は、それ以外の成分の少なくとも1種とは隔離して保存されており、使用の際に混合して用いられることも好ましい。本発明の組成物において、水溶液中で過酸化水素を供給し得る化合物と漂白活性化剤であるMn錯体を、溶液状態にて共存させて長期間保存すると、反応が進んで、用いる際には既に失活する恐れがあるので、水溶液中で過酸化水素を供給する化合物を含有する本発明の組成物とは、別途、隔離してMn錯体を保存することが好ましい。
第二の本発明は、有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物、および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で漂白処置された歯面の接着力を回復させるための還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、アスコルビン酸系化合物であることを特徴とする漂白後の接着用歯面前処理材組成物である。
前記還元性化合物として使用されるアスコルビン酸素化合物としては、例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸金属塩を挙げることができる。
前記歯牙漂白剤および/または漂白活性化剤として用いられる有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンとしては、前記第一の本発明と同様のものと使用することが出来る。また、ここに特に記載しないその他の成分および事項については、特にことわりのない限り、第一の本発明に記載したものと同様の成分および事項がそのままあるいは当業者に自明の変更を加えて適用されると理解されるべきである。
以上の第一、二の本発明には、以下の態様を共通して適用することが出来る。
まず、還元性化合物は通常は水溶液として用いられる。還元性化合物を水溶液として使用する場合、水溶液の濃度は特に限定されないが、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜20重量%である。また処理時間においても特に限定はされないが、好ましくは1〜600秒間、より好ましくは10〜120秒間である。還元性化合物の水溶液には、水に加えて、アセトン、エタノールなどの水溶性溶媒を混合して用いることができる。これらの水溶性溶媒の使用量には特に制限はないが、通常は水に対して1〜50重量%である。
本発明においては、エッチング材を用いてもかまわない。
エッチング材として好適に使用される化合物の例としては、エチレンジアミン4酢酸金属塩、リン酸、クエン酸等を挙げることができ、これらの化合物を水性媒体に溶解もしくは分散させて使用する。また、これらの化合物は、単独であるいは組合わせて使用することができる。
エッチング材を水溶液として使用する場合、その水溶液中における上記エッチング成分の濃度に特に限定はないが、例えばエッチング材としてエチレンジアミン4酢酸金属塩を使用する場合には、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、リン酸を使用する場合には、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%のリン酸と0.1〜10重量%のリン酸鉄とを含有する水溶液、5〜20重量%のクエン酸と1〜10重量%の塩化第二鉄とを含有する水溶液が好ましく使用される。特に本発明では、このエッチング材として、10重量%クエン酸と3重量%塩化第2鉄との水溶液からなる所謂10-3エッチング液を使用することが好ましい。
本発明において、エッチング材は上述のように水性媒体溶液として使用することができ、この場合において、水とともに使用される水溶性溶媒の例としては、アセトン、エタノールなどの水溶性溶媒を挙げることができる。これらの水溶性媒体の使用量には特に制限はないが、水に対して通常、1〜50重量%である。
また、本発明において、上述した還元性化合物の水溶液、エッチング材の水溶液および酸化性化合物の水溶液には、粘度を調整するために、必要に応じてポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物、高分散シリカなどの粘度調整剤を配合することができる。本発明で使用する酸化性化合物は、これらを配合してゲル状の形態にして使用することもできる。さらに、この酸化性化合物は、着色剤とともに使用することも可能である。これらの粘度調整剤、着色剤の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%である。
本発明ではプライマーを用いてもかまわない。プライマーは漂白処置した後であって、硬化物を歯質上に配置(接着)する前に、処置された歯質表面に対して使用される。すなわち、プライマーは、還元性化合物を含む水溶液で処理する前後、あるいは、歯面処理剤で処理する前後のいずれにおいても用いることができる。また、このプライマーは、複数回用いてもかまわない。
本発明において使用することができるプライマーに特に制限はないが、例えば重合性有機酸または酸性基を有するモノマーと、脱灰した歯質を改質し接着材の歯質への拡散を促進する成分とを含有する水溶液などを挙げることができる。ここで言う「歯質を改質し接着材の歯質への拡散を促進する成分」としては、例えば(ポリ)アルキレングリコール、あるいは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは1,3-ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレートなど水酸基を有するモノマーおよびポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
本発明において使用することができる接着剤に特に制限はないが、例えば重合開始剤と重合性単量体とからなる。上記重合開始剤の例としては、有機過酸化物、無機過酸化物、アルキルボラン、アルキルボランの部分酸化物、α−ジケトン化合物、有機アミン化合物、有機スルフィン酸、有機スルフィン酸塩、無機硫黄化合物およびバルビツール酸類を挙げることができる。これらは1種または2種以上用いることができる。
上記重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類のどちらか一方の(メタ)アクリロイル基がメチル基およびエチル基などの置換されたモノ(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加物などのウレタン結合を有する(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAにオキシエチレンを付加させた生成物にさらに(メタ)アクリル酸を縮合させた2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン類;スチレン、4−メチルスチレン、4−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体類;酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性単量体は単独でもしくは組合わせて使用できる。
同様に使用できる重合性単量体として、分子内に酸性基を含有する重合性単量体がある。重合性基として、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽和基を挙げることができる。重合性単量体は1分子内に上記の重合性基から選択される基を少なくとも1個含有していればよい。
漂白後に還元性化合物を含む水溶液を通常1μリットル/mm2〜50μリットル/mm2の量で歯面に塗布する。塗布して4〜300秒間経過した後、エアブローなどによって乾燥させる。この際、水洗は行わなくてもかまわない。還元性化合物を含む水溶液によって処理された歯牙部分に、エッチング材を塗布し5〜60秒間経過した後、水洗し歯面を乾燥させてもかまわない。また、エッチング材は前処理材を塗布する前に歯面を処置してもかまわない。
以下に本発明について実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
実施例1
生理食塩水中に保存したヒト抜去歯を#600耐水研磨紙を用いて流水下にて直径3mm以上の象牙質被着面が得られるように研磨した後、漂白剤Hi−Lite(松風(株)製)を取扱説明書指示に従い、象牙質表面に塗布し、光照射を行った。漂白剤を水洗除去後、再度漂白剤を塗布してこれを3回繰り返した。
漂白面に、直径3mmの孔の空いた両面テープを貼り、この平面を、濃度3重量%のp-トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液20μリットルによって5秒間処理した。処理した後、エアブローにて乾燥させた。次に、処理面をエッチング材(グリーン、サンメディカル(株)製品)0.3gを塗布して30秒間静置後、十分に水洗いし、エアブローにて乾燥させた。
ここに4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4-META)を5重量%含有するメチルメタクリレート(MMA)、とトリブチルホウ素の部分酸化物(TBB−O/サンメディカル(株)製)とポリメチルメタクリレートのパウダー(PMMA/サンメディカル(株)製)とを重量比10/1/10で混合した硬化性組成物にてSUS棒を植立して15分間静置し硬化させ、その後24時間37℃の水中に静置した。
その後、接着試験に供した。接着試験はクロスヘッドスピード2mm/minの引っ張り試験を行った。測定結果を表1に示す。
実施例2
生理食塩水中に保存したヒト抜去歯を漂白前に歯面研磨を行った後、漂白剤Hi−Lite(松風(株)製)を取扱説明書指示に従い、エナメル質表面に塗布し、光照射を行った。漂白剤を水洗除去後、再度漂白剤を塗布してこれを3回繰り返した。
漂白面に、直径3mmの孔の空いた両面テープを貼り、この平面を、濃度3重量%のp-トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液20μリットルによって5秒間処理した。処理した後、エアブローにて乾燥させた。
30gの4−META、30gのMMA、30gの2.6E(ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1モルと2モルのメタクリル酸の縮合物(エチレンオキシドの付加連鎖数m+n≧2.6))、0.1gのd,l−カンファキノン(CQ)、30gのアセトンおよび10gの蒸留水を混合して溶解した。この液体を滴下式ボトル(ボトル1)に入れ、溶液2滴(0.05g)とキャタスポンジ(サンメディカル(株)製)1個をダッペンディッシュ中で5秒間激しく攪拌して、そのままスポンジを用いて面積規定した歯質に多量(約0.015g)に塗布して30秒間静置した。軽くエアブローしながら余分な液を吹き飛ばした後、可視光照射器(Translux CL,Kulzer)にて20秒間光照射して硬化させた。片面に粘着材のついた内径3.0mm円孔を持つ厚さ1mmの厚紙を規定面がみえるように置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(メタフィルC,サンメディカル(株))を充填して、厚さ50μmのポリエステルフィルムで覆った。このフィルムの上から可視光照射器(Translux CL,Kulzer)にて40秒間光照射してコンポジットレジンを硬化させた後、フィルムを剥がし、スパーボンドC&B(サンメディカル(株))にてSUS棒を植立して15分間静置した。37℃水中に一日浸漬後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行った。
測定結果を表1に示す。
実施例3
生理食塩水中に保存したヒト抜去歯を漂白前に歯面研磨を行った後、漂白剤Nite ホワイト・エクセル(Discus Dental,Inc製)を取扱説明書指示に従い、エナメル質表面に塗布し、2時間後、漂白剤を水洗除去した。この操作を14日間行った。
漂白面に、直径3mmの孔の空いた両面テープを貼り、この平面を、濃度3重量%のp-トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液20μリットルによって5秒間処理した。処理した後、エアブローにて乾燥させた。
30gの4−META、30gのMMA、30gの2.6E(ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1モルと2モルのメタクリル酸の縮合物(エチレンオキシドの付加連鎖数m+n≧2.6))、0.1gのd,l−カンファキノン(CQ)、30gのアセトンおよび10gの蒸留水を混合して溶解した。この液体を滴下式ボトル(ボトル1)に入れ、溶液2滴(0.05g)とキャタスポンジ(サンメディカル(株)製)1個をダッペンディッシュ中で5秒間激しく攪拌して、そのままスポンジを用いて面積規定した歯質に多量(約0.015g)に塗布して30秒間静置した。軽くエアブローしながら余分な液を吹き飛ばした後、可視光照射器(Translux CL,Kulzer)にて20秒間光照射して硬化させた。片面に粘着材のついた内径3.0mm円孔を持つ厚さ1mmの厚紙を規定面がみえるように置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(メタフィルC,サンメディカル(株))を充填して、厚さ50μmのポリエステルフィルムで覆った。このフィルムの上から可視光照射器(Translux CL,Kulzer)にて40秒間光照射してコンポジットレジンを硬化させた後、フィルムを剥がし、スパーボンドC&B(サンメディカル(株))にてSUS棒を植立して15分間静置した。37℃水中に一日浸漬後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行った。
測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液による処理を行わずに接着し、その後接着試験に供した。接着試験はクロスヘッドスピード2mm/minの引張り試験を行った。測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例2において、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液による処理を行わずに接着し、その後接着試験に供した。接着試験はクロスヘッドスピード2mm/minの引張り試験を行った。測定結果を表1に示す。
比較例3
実施例3において、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム水溶液による処理を行わずに接着し、その後接着試験に供した。接着試験はクロスヘッドスピード2mm/minの引張り試験を行った。測定結果を表1に示す。
Figure 2007169224

Claims (14)

  1. 有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で漂白処置された歯面の接着力を回復させるための、還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、スルフィン酸類、無機亜硫酸類、アミン系化合物およびアンミン錯塩よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、漂白後の接着用歯面前処理材組成物。
  2. 有機過酸化物、水溶液中で過酸化水素を発生する化合物および二酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する歯牙漂白剤で歯牙漂白処置された歯面の接着力を回復させるための、還元性化合物を含有する接着用歯面前処理材組成物であって、前記還元性化合物は、アスコルビン酸系化合物であることを特徴とする漂白後の接着用歯面前処理材組成物。
  3. 歯牙漂白剤が、二酸化チタンおよび水溶液中で過酸化水素を発生する化合物を含有する請求項1または2記載の歯面前処理材組成物。
  4. 歯牙漂白剤が、酸性有機化合物、その塩およびマンガン錯体よりなる群から選ばれる漂白活性化剤をさらに含有する請求項1記載の歯面前処理材組成物。
  5. 酸性有機化合物およびその塩が下記式(a)および(b):
    Figure 2007169224
    (式中、Rは炭素数2〜19の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは水素イオンを表わし、nは1または2であり、Mがアルカリ金属イオンもしくは水素イオンのときn=1であり、Mがアルカリ土類金属イオンのときは、n=2である。)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種からなる請求項4記載の歯面前処理材組成物。
  6. 前記酸性有機化合物の塩が下記式(c):
    Figure 2007169224
    (式中、mは炭素数7〜13の整数を表す。)で表される請求項4に記載の歯面前処理材組成物。
  7. 前記酸性有機化合物が下記式(d):
    Figure 2007169224
    (式中、kは炭素数7〜13の整数を表す。)で表される請求項4に記載の歯面前処理材組成物。
  8. 歯牙漂白剤が(i)酸性有機化合物、
    (ii)過酸化水素水溶液中で過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物および有機過酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の過酸化物ならびに
    (iii)水
    を含有する請求項4〜8のいずれかに記載の歯面前処理材組成物。
  9. 水溶液中で過酸化水素を発生する化合物が、過ほう酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムおよび過酸化尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の過酸化物である請求項1または2に記載の歯面前処理材組成物。
  10. 歯牙漂白剤は、マンガン錯体と水溶液中で過酸化水素を発生する化合物とを含有する請求項1または2記載の歯面前処理材組成物。
  11. 歯牙漂白剤が増粘剤をさらに含有する請求項1または2記載の歯面前処理材組成物。
  12. 歯牙漂白剤がリン酸および縮合リン酸塩をさらに含有する請求項1または2記載の歯面前処理材組成物。
  13. 還元性化合物が、チオ硫酸ナトリウムおよびp−トルエンスルフィン酸ナトリウムおよびアンミン錯塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1記載の歯面前処理材組成物。
  14. 請求項1または2記載の歯牙漂白剤と歯牙漂白後の接着用歯面前処理材組成物よりなるキット。
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