JP2007147824A - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性基体上に、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含有する感光層を備える電子写真感光体であって、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を、結着樹脂100重量部に対して、100〜150重量部の範囲内の値とするとともに、正孔輸送剤が、分子量が700〜1200の範囲内の値である正孔輸送剤を含む。
【選択図】図4
Description
このような有機感光体に用いられる画像形成装置には、感光体表面を帯電させるための帯電手段と、この帯電した表面に対して光照射し潜像形成するための露光手段と、この潜像をトナー現像してトナー像を形成するための現像手段と、このトナー像を印刷紙に転写するための転写手段と、を順次配置した画像形成プロセスが採用されている。
この画像形成プロセスにおいて、転写後の感光体表面に残留した残留電荷を消去するために、光照射して除電する除電手段が設けられている。これにより、繰り返し使用した場合であっても、前周回までに残留した電位をリセットして、いわゆる転写メモリや露光メモリの発生を抑制することができる。
しかしながら、このような方法を用いた場合であっても、感光体内部には空間電荷が発生し、繰り返し使用した場合には、この空間電荷が感光体内に蓄積され、一定の画像特性が得られなくなるという問題が見られた。
また、感光層中に、添加剤としてビフェニル誘導体を含有させることで、正帯電における電気特性の繰り返し安定性を向上させた電子写真感光体が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
すなわち、本発明は、長期に渡り良好な画像特性を維持することができるとともに、耐汚染性、耐クラック性にも優れた電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
すなわち、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を所定量とすることで、感光体における電荷輸送能を維持しつつ、更に、所定分子量の正孔輸送剤を含有させることで、電荷輸送剤を所定量添加することに伴う、耐クラック性の低下を防止することができる。
したがって、このような帯電特性及び耐汚染性に優れた感光体であれば、長期に渡り良好な画像特性を維持できるとともに、露光メモリの発生も抑制することができることから、除電レスシステムを採用して装置の小型化に資することができる。
このように構成することにより、第1の正孔輸送剤により汚染成分への溶出を抑制しつつ、第2の正孔輸送剤により、感光層内における分散性を向上させ、露光メモリの発生を抑制することができる。
したがって、分子量を大きくすることにより得られる耐クラック性と、分子量を小さくすることにより得られる分散性の向上、すなわち露光メモリの抑制と、をそれぞれ効果的に発揮することができる。
このように構成することにより、正孔輸送剤の汚染成分への溶出量を所定範囲内の量に制御することができ、耐汚染性及び耐クラック性に優れる感光層を形成することができる。
このように構成することにより、正孔輸送剤と電子輸送剤との含有バランスを所定範囲内に維持することができ、感光層の電荷輸送能を効果的に高めることができる。
(一般式(1)中、R1〜R10はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアラルキル基、置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基であり、Rは、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキレン基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
このように構成することにより、感光層内に生じる応力を、更に有効に緩和させることができ、耐クラック性を向上させることができる。
このように構成することにより、正孔輸送剤の溶出量に対応させて、添加剤の添加量を調整することができ、クラックの発生を有効に防止することができる。
また、添加剤の添加量が多くなると、感光層のガラス転移点が低下してしまう場合があることから、このような範囲内の値に制御することで、ガラス転移点が制御でき、耐摩耗性を維持させることもできる。
このように構成することにより、正負いずれの帯電型においても適用可能となるとともに、簡易な層構成となることから、生産性を向上させることができる。
すなわち、所定分子量の正孔輸送剤を含有させるとともに、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を所定範囲内の値に規定した感光体を、除電レスシステムを備えた画像形成装置に対して適用することにより、露光メモリの発生を抑制したまま、耐クラック性、耐摩耗性に優れた画像形成装置を提供することができる。したがって、画像形成装置を小型化することができるとともに、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる。
本発明における第1の実施形態は、導電性基体上に、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含有する感光層を備える電子写真感光体であって、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を、結着樹脂100重量部に対して、100〜150重量部の範囲内の値とするとともに、正孔輸送剤が、分子量が700〜1200の範囲内の値である正孔輸送剤を含むことを特徴とする電子写真感光体である。
以下、本発明の第1の実施形態である単層型の電子写真感光体について具体的に説明する。
図1(a)に示すように、単層型電子写真感光体10は、導電性基体12上に単一の感光層14を設けたものである。
この感光層14は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、正孔輸送剤と、結着樹脂と、添加剤と、を所定の溶媒に溶解又は分散させた塗布液を、導電性基体12上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。
このような単層型感光体10は、正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、感光層を形成する際の被膜欠陥を抑制できることから、生産性に優れている。また、層間の界面が少ないことから、光学的特性を向上させることができる。
なお、図1(b)に例示するように、この感光層14と、導電性基体12と、の間に、中間層16を形成した単層型感光体10´とすることもできる。
また、この感光層14の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
図1に例示する導電性基体12としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、支持基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、支持基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。ドラム状の場合は、導電性基体の直径が10〜60mm、より好ましくは10〜27mmが装置の小型化の面で好ましい。
なお、導電性基体に対して陽極酸化等を実施した場合、非導電性や半導体特性となる場合があるが、そのような場合であっても所定の効果が得られる限り、導電性基体の中に含むことができる。
また、図1(b)に示すように、支持基体12上に、所定の結着樹脂を含有する中間層16を設けてもよい。
この理由は、導電性基体と感光層との密着性を向上させるとともに、この中間層内に所定の微粉末を添加することで、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制することができるためである。この微粉末としては、光散乱性、分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等を用いることができる。
したがって、中間層の膜厚としては、0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明における電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料等の従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
より具体的には、下記式(8)〜(11)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
この理由は、光源として半導体レーザを備えたレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置に使用する場合には、600〜800nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるためである。
その一方で、ハロゲンランプ等の白色の光源を備えた静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置に使用する場合には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばペリレン系顔料やビスアゾ顔料等を好適に用いることができる。
(1)第1の正孔輸送剤
また、本発明に用いられる正孔輸送剤は、分子量が700〜1200の範囲内の値である正孔輸送剤を含むことを特徴とする。以下、分子量が700〜1200の範囲内の値である正孔輸送剤を第1の正孔輸送剤として説明していく。
ここで、図3及び図4を参照して、第1の正孔輸送剤の分子量が、耐クラック性及び画像特性に与える影響について説明する。
まず、図3は、第1の正孔輸送剤の分子量と、耐クラック性と、の関係を示す特性図である。この特性図は、横軸に、第1の正孔輸送剤の分子量を採り、縦軸に、耐クラック性の指標である、クラック成長速度を採って示してある。
かかる特性図から理解できるように、第1の正孔輸送剤の分子量が大きくなるほど、クラック成長速度は低下し、耐クラック性は改善されると言える。しかしながら、かかる分子量を大きくしすぎたような場合には、感光層内での正孔輸送剤の分散性が低下して、露光メモリを発生させる要因となり得る。
したがって、第1の正孔輸送剤の分子量の範囲としては、800〜1100とすることが好ましく、900〜1000とすることがより好ましい。
なお、この特性図におけるクラック成長速度の測定方法の一例としては、人体起因の汚染成分と挙動が類似しているオレイン酸トリグリセリドに対して、後述する実施例1に記載された条件で感光層を所定時間浸漬させ、当該感光層表面に発生するクラック長さ(mm)を測定して成長速度(mm/min)を求める方法がある。
かかる特性図から理解できるように、第1の正孔輸送剤の分子量と露光メモリとの間には二次曲線的な相関関係があり、所定範囲内の分子量を有する第1の正孔輸送剤を用いることで露光メモリが改善されていると言える。
これは、第1の正孔輸送剤の分子量が大きくなると、分散性が低下して、感光層内部で正孔輸送剤が局在し、露光メモリの発生を増大させるためと考えられる。
また逆に、分子量が小さくなると、分子末端数が過度に増加して電荷輸送能を低下させ、露光メモリが発生しやすくなるためと考えられる。
したがって、かかる第1の正孔輸送剤の分子量の範囲としては、800〜1100とすることが好ましく、900〜1000とすることがより好ましい。
なお、正孔輸送剤の分子量は、構造式に基づいて算出した値を用いてもよく、GPC法等を用いて求めることもできる。
本発明に用いられる第1の正孔輸送剤としては、上述した分子量の条件を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニレンジアミン系化合物の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
また、第1の正孔輸送剤の具体例としては、下記一般式(12)〜(16)で表される化合物(HTM−1〜5)が挙げられる。
また、第1の正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して30〜130重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が30重量部未満の値となると、感光層の正孔輸送能が極端に低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。しかしながら、添加量が130重量部を超える値となると、分散性が低下し、結晶化しやすくなるという問題が生じる場合がある。
したがって、第1の正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、35〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましく、40〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明に用いられる正孔輸送剤は、上述した第1の正孔輸送剤に加え、分子量が700未満の値である第2の正孔輸送剤を含むことが好ましい。
この理由は、第1の正孔輸送剤に加え、比較的低分子量である第2の正孔輸送剤を含有させることにより、汚染成分への溶出を抑制しつつ、分散性を向上させることができるためである。
しかしながら、この第2の正孔輸送剤の分子量を過度に小さくした場合には、汚染成分が溶出しやすくなって、耐クラック性が低下してしまう場合がある。
したがって、かかる分子量の範囲としては、100〜600の範囲内の値とすることが好ましく、200〜500の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明に用いられる第2の正孔輸送剤は、分子量が700未満であって、分子構造が異なる複数の正孔輸送剤を混合させて用いることも好ましい。
この理由は、分子量が700未満の正孔輸送剤を複数用いることにより、後述する電子輸送剤との組み合わせを適宜選択することにより、高い電荷輸送能を効果的に得ることができるためである。
本発明に用いられる第2の正孔輸送剤としては、上述した溶解度の条件を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニレンジアミン系化合物の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
また、第2の正孔輸送剤の具体例としては、下記一般式(17)〜(23)で表される化合物(HTM−6〜12)が挙げられる。
また、第2の正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、20〜50重量部以下とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が50重量部を超える値となると、分散性は向上するものの、汚染成分が付着した場合に、正孔輸送剤が溶出しやすくなり、耐クラック性を低下させる場合があるためである。また逆に、かかる添加量が20重量部未満となる場合には、正孔輸送剤の分散性が低下するためである。
したがって、かかる第2の正孔輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して、25〜45重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜40重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
本発明に用いられる電子輸送剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ジナフトキノン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系化合物、フルオレノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
また、電子輸送剤の具体例としては、下記一般式(24)〜(29)で表される化合物(ETM−1〜6)が挙げられる。
また、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、20〜60重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電子輸送剤の添加量が20重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる電子輸送剤の添加量が60重量部を超える値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる電子輸送剤の添加量としては、30〜45重量部の範囲内の値とすることが好ましく、35〜40重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、このような電子輸送剤において、分子構造の異なる複数の電子輸送剤を、それぞれ所定の割合で混合させて用いることも好ましい。
この理由は、化学的構造の異なる電子輸送剤を複数用いることで、上述した正孔輸送剤との組み合わせにおいて、好適な電荷輸送能を発揮することができるためである。
また、本発明は、上述した正孔輸送剤と電子輸送剤との添加量の合計を、結着樹脂100重量部に対して、100〜150重量部とすることを特徴とする。
ここで、図5及び図6を参照して、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量が、耐クラック性及び画像特性に与える影響について説明する。
まず、図5は、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量と、耐クラック性との関係を示す特性図である。この特性図は、横軸に、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を採り、縦軸に、耐クラック性の指標である、クラック成長速度を採って示してある。
かかる特性図から理解できるように、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量が少なくなるほど、クラック成長速度は低下し、耐クラック性は改善されると言える。しかしながら、かかる添加量を少なくしすぎたような場合には、感光層の電荷輸送能が著しく低下し、露光メモリを発生させる要因となり得る。
したがって、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量の範囲としては、100〜140重量部の範囲内の値とすることが好ましく、105〜120の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、この特性図におけるクラック成長速度の測定方法の一例としては、人体起因の汚染成分と挙動が類似しているオレイン酸トリグリセリドに対して、後述する実施例1に記載された条件で感光層を所定時間浸漬させ、当該感光層表面に発生するクラック長さ(mm)を測定して成長速度(mm/min)を求める方法がある。
かかる特性図から理解できるように、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量が多くなるほど、露光メモリ電位が小さくなり、画像特性が向上していると言える。
これは、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量、すなわち電荷輸送剤の添加量が多くなることにより、感光層における電荷輸送能が向上して、感光体表面上の残留電荷が減少したためと考えられる。
しかしながら、このように電荷輸送剤の添加量を増加させた場合には、感光体表面に汚染成分が付着したような場合に、その汚染成分に対して、感光層中のモノマー成分である電荷輸送剤が溶出してクラック発生の原因となり得る。
したがって、かかる正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量の範囲としては、100〜140重量部の範囲内の値とすることが好ましく、105〜120の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明においては、感光層が、所定の添加剤を含有することが好ましい。
この理由は、感光体表面に汚染成分が付着して感光層内部に空孔が形成された場合に、この空孔に対して添加剤が作用して局所的な応力を開放し、クラックの発生を抑制することができるためである。
また、添加剤の具体例としては、下記一般式(2)〜(7)で表される化合物(BP−1〜6)が挙げられる。
本発明における添加剤の添加量としては、感光層の固形分に対して、5〜15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる添加量が15重量%を超えると、感光層のガラス転移点が低下して、耐摩耗性が低下してしまう場合があるためである。また、結着樹脂内での分散性が低下して、結晶化する場合が見られるためである。
しかしながら、この添加量を5重量%未満となると、上述したような応力緩和作用が十分に発揮することができず、クラック発生を十分防止することができなくなる。
したがって、かかる添加量の範囲としては、6〜13重量%とすることが好ましく、7〜10重量%とすることがより好ましい。
なお、感光層の固形分とは、溶媒を除く感光層の構成成分を意味しており、本発明においては、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、添加剤と、を合わせたものを意味している。
また、かかる添加剤の分子量を150〜350の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、分子量が150未満の値となると、空孔近傍の応力を十分開放することができない場合があるためである。
また逆に、分子量が350を超える値となると、結着樹脂内での分散性が低下して、空孔との相互作用が十分発揮できなくなるためである。
したがって、かかる分子量の範囲を、200〜300の範囲内の値とすることが好ましく、230〜270の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、かかる添加剤の分子量は、例えば、構造式をもとに算出することもできるし、あるいは、質量分析計で得られたマススペクトルを用いて測定することができる。
(1) 種類
本発明の電子写真感光体に使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂をはじめ、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
また、この結着樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されるものではないが、本発明においては、所定分子量の正孔輸送剤を用いるとともに、正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を所定範囲内の値とすることにより、耐クラック性を維持できることから、比較的低分子量の結着樹脂を用いた場合であっても、その耐クラック性、耐摩耗性を低下させることなく、画像特性を維持することができる。しかしながら、重量平均分子量が低すぎる場合には、やはり耐クラック性を低下させてしまう場合がある。
したがって、かかる重量平均分子量の範囲を、70000以下とすることが好ましく、20000〜55000の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、結着樹脂の重量平均分子量は、GPC法等を用いて求めることができる。
また、結着樹脂の具体例としては、下記一般式(48)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(BD−1)であるが挙げられる。
また、本発明の電子写真感光体において、感光層のガラス転移点(Tg)を60℃以上の値とすることが好ましい。
この理由は、上述したように、添加剤を含有させた場合には、感光層のガラス転移点が変化し、耐摩耗性に影響を与える場合があるためである。
すなわち、添加剤を過剰に含有させて、ガラス転移点を所定値以下としてしまうと、耐圧性が低下して、繰り返し使用した場合に、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。その一方で、ガラス転移点が高くなりすぎると、感光体表面が過剰に硬化して、クラックが発生しやすくなるという問題が生じる。
したがって、かかるガラス転移点(Tg)の値を、60〜90℃の範囲内の値とすることが好ましく、65〜80℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、ガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。測定装置としては、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。
より具体的には、感光体を構成する材料である、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、添加剤、結着樹脂からなる測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定を行い、得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
単層型電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えばブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、支持基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
また、本発明の湿式現像用電子写真感光体として、図2(a)に示すような積層型電子写真感光体を用いることも好ましい。この積層型感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電子輸送剤と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上記構造とは逆に、図2(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図2(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
また、単層型感光体の場合と同様に、導電性基体上に中間層25を形成することも好ましい。
この積層型感光層20において、感光層の厚さは、特に限定されないが、電荷発生層が、好ましくは、0.01〜5μm、より好ましくは、0.1〜3μmであり、電荷輸送層が、好ましくは、2〜100μm、より好ましくは、5〜50μmである。
第2の実施形態は、第1の実施形態である電子写真感光体を備えるとともに、当該電子写真感光体の周囲に、帯電手段を実施するための帯電器、露光手段を実施するための露光光源、現像手段を実施するための現像器、および転写手段を実施するための転写器を配置するとともに、除電手段を省略した除電レスタイプであることを特徴とする画像形成装置である。
なお、以下の画像形成装置の説明では、電子写真感光体として、単層型感光体を用いた場合を例に採って説明する。
また、感光体31は、矢印の方向に一定速度で回転しており、感光体31の表面で、次の順に電子写真プロセスが行われることになる。より詳細には、帯電器32により、感光体31が全面的に帯電され、次いで、露光光源33によって、印字パターンが露光される。
次いで、現像器34によって、印字パターンに対応して、トナー現像され、さらに、転写器35によって、転写材(紙)36へのトナーの転写が行われる。
ここで、トナーが分散された現像剤34aは、現像ローラ34bによって運ばれ、所定の現像バイアスを印加することで、感光体31の表面上にトナーが引き付けられて、感光体31上に現像されることになる。
すなわち、感光体31として本発明の電子写真感光体を用いた場合には、汚染成分に起因したクラック性が改善されるとともに、長期に渡って露光メモリの発生を抑制することができることから、画像形成プロセスとして、除電手段を省略した除電レスシステムを備えた画像形成装置を採用することができる。
(1)電子写真感光体の製造
表1に示すように、電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン(CGM−A)4重量部と、第1の正孔輸送剤として(HTM−1)(分子量:777)60重量部と、電子輸送剤として(ETM−1)40重量部と、結着樹脂として、Z型ポリカーボネート樹脂(BD−1)(重量平均分子量:35000)100重量部と、添加剤として(BP−1)を感光層の固形分に対する添加剤の割合が5重量%となるように加えて、テトラヒドロフラン800重量部とともに、ボールミルにて50時間混合分散し、感光層塗布液を作成した。
次いで、得られた塗布液を円筒状のアルミニウム素管(直径φ30mm、長さ254mm)上に塗布して、100℃で40分間熱風乾燥することにより、膜厚30μmの単層型感光層を備える感光ドラムを得た。
得られた電子写真感光体を、温度20℃湿度60%の条件下でオレイン酸トリグリセリドに120分間浸漬させた後、感光体表面に発生したクラックを計測し、クラック成長速度(mm/min)として評価した。
すなわち、光学顕微鏡を用いて感光層表面を観察し、発生したクラック長さの総和(mm)を、浸漬時間120(min)で割ることによって得られた値をクラック成長速度とし、下記基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
○:クラック成長速度が、1(mm/min)未満の値である。
△:クラック成長速度が、1(mm/min)以上かつ2.5(mm/min)未満の値である。
×:クラック成長速度が、2.5(mm/min)以上の値である。
得られた電子写真感光体を、除電手段を省略した京セラミタ製マルチファンクションプリンタ(Antico40)に搭載し、未露光部分の表面電位、及び露光部分の帯電手段後の表面電位を測定し、その差を露光メモリ電位として、下記基準に準じて評価した。
○:メモリ電位が90(V)未満の値である。
△:メモリ電位が90(V)以上かつ100(V)未満の値である。
×:メモリ電位が100(V)を超える値である。
実施例2〜10においては、表1に示すように、正孔輸送剤の種類及び添加量、電子輸送剤の種類及び添加量、添加剤の種類及び添加量をそれぞれ変えた他は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成して評価した。得られた結果を表2に示す。
また、この実施例2〜10で用いられた第1の正孔輸送剤の分子量は、それぞれHTM−2が749、HTM−3が957、HTM−4が927、HTM−5が1029である。
また、この実施例2〜10で用いられた第2の正孔輸送剤の分子量は、それぞれHTM−6が673、HTM−7が416である。
比較例1〜3、6においては、表1に示すように、正孔輸送剤の種類及び添加量、電子輸送剤の種類及び添加量、添加剤の種類及び添加量をそれぞれ変えた他は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成して評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例4においては、正孔輸送剤として下記式(49)で表される化合物(HTM−13)(分子量1216)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成して評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例5においては、正孔輸送剤として下記式(50)で表される化合物(HTM−14)(分子量1268)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成して評価した。得られた結果を表2に示す。
したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における高耐久性化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
Claims (9)
- 導電性基体上に、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含有する感光層を備える電子写真感光体であって、
前記正孔輸送剤及び電子輸送剤の合計添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、100〜150重量部の範囲内の値とするとともに、
前記正孔輸送剤が、分子量が700〜1200の範囲内の値である正孔輸送剤を含むことを特徴とする電子写真感光体。 - 前記正孔輸送剤を第1の正孔輸送剤としたとき、更に、分子量が700未満の値である第2の正孔輸送剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記第1の正孔輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して30〜130重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して20〜60重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記添加剤の添加量を、前記感光層の固形分に対して5〜15重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、単層型であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備える画像形成装置であって、
前記電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置するとともに、除電手段を省略した除電レスタイプであることを特徴とする画像形成装置。
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