JP2007032671A - 針状ころ軸受および軸受構造 - Google Patents

Abstract

【課題】 ハウジングに組込むと、ハウジングの内径面に沿った適正な形状となる外輪部材を備える針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】 針状ころ軸受１１は、軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された２つの外輪部材１２を有する外輪１３と、外輪１３の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころ１４と、針状ころ１４を保持する保持器１５とを備える。そして、外輪部材１２の曲率半径ｒ_１と、保持器１５の外径の曲率半径ｒ_２とは、１＜ｒ_１／ｒ_２＜１．３の関係を満たす。
【選択図】 図１

Description

この発明は、自動車エンジン用クランクシャフト、カムシャフト、バランスシャフト、およびロッカーシャフト等を支持する針状ころ軸受および軸受構造に関するものである。

従来、図６に示すような自動車のクランクシャフト１等を支持する軸受としては、一般的に分割型の滑り軸受が使用されている。滑り軸受は負荷容量が高いので、高負荷環境下で使用される軸受として好適である。

しかし、近年では、環境への配慮から省燃費の自動車が求められるようになったことに伴い、滑り軸受に代えて針状ころ軸受が用いられることがある。針状ころ軸受は、滑り軸受と比較すると負荷容量は低いが、回転時の摩擦抵抗が小さいので支持部分の給油量を減らすことが可能となる。

ただし、クランクシャフト１のクランクピン２を支持する針状ころ軸受は、軸方向に圧入して組み込むことができない。そこで、このような場所に使用される針状ころ軸受が、例えば、米国特許第１９２１４８８号公報（特許文献１）に記載されている。

同公報によると、外輪と、外輪の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころと、針状ころを保持する保持器とを備える針状ころ軸受が記載されている。なお、外輪は、図７に示すように軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割した外輪部材４ａ，４ｂとすることにより、クランクピン２に組み込むことが可能となる。なお、これは保持器についても同様である。
米国特許第１９２１４８８号公報

上記のような針状ころ軸受と、針状ころ軸受の外輪を受け入れるハウジングとは、通常、別々に製造される。その結果、外輪の曲率半径とハウジング内径の曲率半径に誤差が生じる可能性がある。

外輪の曲率半径がハウジング内径の曲率半径と比較して小さい場合、外輪とハウジングの間に隙間を生じる。一方、外輪の曲率半径がハウジング内径の曲率半径と比較して大きすぎる場合、無理に組み込むと、外輪の軌道面が波打ったり破損する恐れがある。

上記のいずれの場合も、針状ころの円滑な回転を妨げるので、軸受回転時の振動や異音が発生する原因となる。また、外輪部材の突合部で剥離が発生する恐れがある。

そこで、この発明の目的は、ハウジングに組込むと、ハウジングの内径面に沿った適正な形状となる外輪部材を備える針状ころ軸受を提供することである。また、そのような針状ころ軸受を備える軸受構造を提供することを目的とする。

この発明に係る針状ころ軸受は、軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された複数の外輪部材を有する外輪と、外輪の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころと、複数の針状ころを保持する保持器とを備える。そして、外輪部材の曲率半径ｒ₁と、保持器外径の曲率半径ｒ₂とは、１＜ｒ_１／ｒ_２＜１．３０の関係を有する。

上記構成の針状ころ軸受をハウジングに組込むと、外輪部材が弾性変形してハウジングの内径面に沿った適正な形状となる。これにより、針状ころの円滑な回転を維持可能な針状ころ軸受を得ることができる。

好ましくは、外輪部材は、その円周方向中央からずれた位置に、ハウジングと係合して位置決めを行うための位置決め係合部を有する。上記構成のように、位置決め係合部を外輪部材に設けることによって、外輪の円周方向への回転を防止することができる。これにより、外輪部材の境界が負荷領域に移動することが無くなるので、針状ころの回転不良や外輪部材の破損等のトラブルを回避することができる。

好ましくは、複数の針状ころを保持する保持器を備え、外輪部材は、その幅方向端部に径方向内側に突出して保持器の軸方向への移動を規制する係合爪を有する。上記構成のように、外輪部材の幅方向端部に係合爪を設けることにより、軸等の周辺構造に加工を施すことなく保持器の軸方向の移動を規制することが可能となる。

この発明に係る軸受構造は、軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された複数の外輪部材を有する外輪、外輪の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころ、および複数の針状ころを保持する保持器を備える針状ころ軸受と、針状ころ軸受の外輪を受け入れるハウジングとを備える。そして、外輪部材の曲率半径ｒ_１と、ハウジング内径の曲率半径ｒ_３とは、１＜ｒ_１／ｒ_３＜１．３０の関係を有する。

上記構成の針状ころ軸受をハウジングに組込むと、外輪部材が弾性変形してハウジングの内径面に沿った適正な形状となる。これにより、針状ころの円滑な回転を維持可能な軸受構造を得ることができる。

ハウジングの内径面に沿った適正な形状に弾性変形する外輪部材とすることにより、針状ころの円滑な回転を維持可能な針状ころ軸受、および軸受構造を得ることができる。

図１〜図３を参照して、この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受１１を説明する。

針状ころ軸受１１は、図１（ａ）および（ｂ）に示すように、軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された２つの外輪部材１２を有する外輪１３と、外輪１３の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころ１４と、針状ころ１４を保持する保持器１５とを備える。なお、外輪１３の分割線は、外輪１３を径方向に分割できればよく、厳密に軸方向と一致していなくてもよいものとする。

そして、外輪部材１２の曲率半径ｒ_１と、保持器１５の外径の曲率半径ｒ_２とは、１＜ｒ_１／ｒ_２＜αの関係を満たす。そして、αは、外輪部材１２の板厚ｔによって表１に示す値となる。この場合において、針状ころ１４の外接円と外輪部材１２の内径面とが、外輪部材１２の左右対称軸線上で一致したとき、外輪部材１２の曲率中心ｏ_１と保持器１５の曲率中心ｏ_２とは、互いに異なる場所に位置することとなる。

外輪部材１２の曲率半径ｒ_１が保持器１５の外径の曲率半径ｒ_２と比較して小さい場合、外輪１３とハウジングとの間に隙間を生じる。また、外輪部材１２が保持器１５を締め付けることとなるので、針状ころ１４の円滑な回転を阻害する。そのため、常に、１＜ｒ_１／ｒ_２を満たす必要がある。

一方、外輪部材１２の曲率半径ｒ_１が保持器１５の外径の曲率半径ｒ_２と比較して大きすぎる場合、無理に組み込むと、外輪部材１２の軌道面が波打ったり破損する恐れがある。そこで、ｒ_１／ｒ_２＜αを満たすαの値は、外輪部材１２の板厚ｔによって表１のようになる。ここで、板厚ｔが小さい程αの値が大きくなるのは、板厚が薄い程弾性変形能が高くなるからである。

上記構成とすることにより、針状ころ軸受１１をハウジングに組込んだ時、外輪部材１２が弾性変形してハウジングに沿う形状となるので、針状ころ１４の円滑な回転を維持可能な針状ころ軸受１１を得ることができる。

上記の関係は、分割外輪を有するあらゆる針状ころ軸受に適用可能である。本実施形態では、図２（ａ）に示すように、外輪部材１２の円周方向中央からずれた位置にハウジングと係合して位置決めを行う位置決め係合部としての突起１２ａと、外輪部材１２の幅方向端部から径方向内側に突出し、保持器１５の軸方向への移動を規制する係合爪１２ｂとを有する。

また、図２（ｂ）および（ｃ）に示すように、外輪部材１２の円周方向の一方側端部は凸形状で他方側端部は凹形状であり、２つの外輪部材１２の凹凸を組み合わせることによって、円筒状の外輪１３を形成する。

上記構成の針状ころ軸受１１は、外輪１３および保持器１５の一部が切断されているので、自動車のクランクシャフト、カムシャフト、バランスシャフト、およびロッカーシャフト等の軸方向に圧入できない箇所を支持する軸受として使用することができる。

また、外輪部材１２に突起１２ａを設けることによって、外輪１３の円周方向への回転を防止し、かつ、係合爪１２ｂを設けることによって、保持器１５の軸方向への移動を規制することができる。

保持器１５は樹脂材料で形成され、図３（ａ）に示すように、円周上の複数個所に針状ころ１４を収容するポケットを有する。また、図３（ｂ）に示すように、円周上の一箇所で軸線方向に切断した切断面を突合させた突合部に、凸部１５ａと凹部１５ｂとからなる嵌合部を有する。そして、保持器１５を弾性変形させて軸へ組み込んだ後、切断部分の凸部１５ａと凹部１５ｂとを嵌合させて、突合部の軸方向へのずれを防止する。

上記構成の保持器１５は、凸部１５ａと凹部１５ｂとからなる嵌合部によって、切断面の一方が軸方向にずれるのを抑制することができる。

上記の実施形態において、一つの凸部１５ａと一つの凹部１５ｂとからなる嵌合部の例を示したが、これに限ることなく、複数の凸部と凹部とを組み合わせた嵌合部としてもよい。

上記の実施形態において、外輪１３は、径方向に二分割された外輪部材１２で構成される例を示したが、これに限ることなく、任意の数に分割することとしてもよい。

上記の実施形態においては、各外輪部材１２に一箇所ずつ突起１２ａおよび係合爪１２ｂを配置する例を示したが、これに限ることなく、外輪１３の全周で一箇所にのみ配置してもよいし、各外輪部材１２の複数個所に配置することとしてもよい。

また、上記の実施形態においては、外輪部材１２の軸方向端部の一部に係合爪１２ｂを設けた例を示したが、外輪部材１２の軸方向端部全域に係合爪１２ｂを設けることとしてもよい。

さらには、保持器１５は、樹脂に限らず金属材料をプレス加工等によって形成することとしてもよいし、保持器１５を必要としない総ころ軸受であってもよい。

次に、図４および図５を参照して、図１に示した針状ころ軸受１１と針状ころ軸受１１を受け入れるハウジング２０との関係を説明する。

外輪部材１２の曲率半径ｒ_１と、ハウジング２０の内径の曲率半径ｒ_３とは、１＜ｒ_１／ｒ_３＜βの関係を満たす。そして、βは、外輪部材１２の板厚ｔによって表２に示す値となる。

外輪部材１２の曲率半径ｒ_１がハウジング２０の内径の曲率半径ｒ_３と比較して小さい場合、外輪１３とハウジング２０との間に隙間を生じる。その結果、針状ころ１４の円滑な回転を阻害する。そのため、常に、１＜ｒ_１／ｒ_３を満たす必要がある。

一方、外輪部材１２の曲率半径ｒ_１がハウジング２０の内径の曲率半径ｒ_３と比較して大きすぎる場合、無理に組み込むと、外輪部材１２の軌道面が波打ったり破損する恐れがある。そこで、ｒ_１／ｒ_３＜βを満たすβの値は、外輪部材１２の板厚ｔによって表２のようになる。ここで、板厚ｔが小さい程βの値が大きくなるのは、板厚が薄い程弾性変形能が高くなるからである。

そして、回転軸２１を支持する針状ころ軸受１１をハウジング２０に組込むと、図５に示すように、外輪部材１２が弾性変形してハウジング２０に沿った形状となるので、針状ころ１４の円滑な回転を維持可能な軸受構造を得ることができる。

以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。

この発明は、自動車のクランクシャフト、カムシャフト、バランスシャフト、およびロッカーシャフト等を支持する針状ころ軸受に有利に利用される。

この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受を示す図であって、（ａ）は正面図、（ｂ）はＡ−Ａ´における断面図である。 この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受の外輪部材を示す図であって、（ａ）は縦断面図、（ｂ）は（ａ）をＢ方向から見た図、（ｃ）は（ａ）をＣ方向から見た図である。 この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受の保持器を示す図であって、（ａ）は正面図、（ｂ）は（ａ）のＤ−Ｄ´における断面図である。 針状ころ軸受の組込み前における、外輪部材とハウジングとの曲率半径の関係を示す図である。 針状ころ軸受をハウジングに組込んだ後の状態を示す図である。 自動車のクランクシャフトを示す図である。 針状ころ軸受に使用する外輪であって、径方向に分割可能な外輪を示す概略図である。

符号の説明

１ クランクシャフト、２ クランクピン、３，６，１１ 針状ころ軸受、４ａ，４ｂ，１２ 外輪部材、４ｃ 境界、１３ 外輪、１４ 針状ころ、１５ 保持器、１２ａ 突起、１２ｂ 係合爪、１５ａ 凸部、１５ｂ 凹部，２０ ハウジング、２１ 回転軸。

Claims (4)

1. 軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された複数の外輪部材を有する外輪と、
   前記外輪の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころと、
   前記複数の針状ころを保持する保持器とを備え、
   前記外輪部材の曲率半径ｒ₁と、前記保持器外径の曲率半径ｒ₂とは、
   １＜ｒ_１／ｒ_２＜１．３０
   の関係を有する、針状ころ軸受。
2. 前記外輪部材は、その円周方向中央からずれた位置に、ハウジングと係合して位置決めを行うための位置決め係合部を有する、請求項１に記載の針状ころ軸受。
3. 前記複数の針状ころの間隔を保持する保持器を備え、
   前記外輪部材は、その幅方向端部に径方向内側に突出して前記保持器の軸方向への移動を規制する係合爪を有する、請求項１または２に記載の針状ころ軸受。
4. 軸受の軸線方向に延びる分割線によって分割された複数の外輪部材を有する外輪、
   前記外輪の軌道面上に転動自在に配置される複数の針状ころ、
   および、前記複数の針状ころを保持する保持器を備える針状ころ軸受と、
   前記針状ころ軸受の前記外輪を受け入れるハウジングとを備える軸受構造であって、
   前記外輪部材の曲率半径ｒ_１と、前記ハウジング内径の曲率半径ｒ_３とは、
   １＜ｒ_１／ｒ_３＜１．３０
   の関係を有する、軸受構造。
   

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