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JP2007002342A - 機能性皮革様シート - Google Patents

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JP2007002342A JP2005180594A JP2005180594A JP2007002342A JP 2007002342 A JP2007002342 A JP 2007002342A JP 2005180594 A JP2005180594 A JP 2005180594A JP 2005180594 A JP2005180594 A JP 2005180594A JP 2007002342 A JP2007002342 A JP 2007002342A
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勝 牧村
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Abstract

【課題】機能性を有し、好適な皮革様シートを提供する。
【解決手段】 繊維質基体層1、その少なくとも片面に形成された多孔質被覆層2、および機能性微粒子3からなる機能性皮革様シートにおいて、機能性微粒子は多孔質被覆層の孔内部に多孔質被覆層を構成する樹脂内部へ含まれることなく存在し、かつ表面に平均直径1〜100μmの開孔部4を有することを特徴とする機能性皮革様シートである。
【選択図】図1

Description

本発明は、抗菌・消臭等で代表される機能性微粒子を表面多孔層に含有してなる機能性皮革様シートに関するものである。
従来、抗菌性や消臭性等の機能性を有する皮革様シートとして種々の方法が提案されてきた。繊維立毛を有するスエード調皮革様シートであれば、機能性微粒子を繊維立毛やシート構造を形成する繊維、樹脂等の内部へ含有させる方法が一般的である。一方、繊維質基体層と樹脂被覆層とからなる銀付き調皮革様シートであれば、機能性微粒子を含有させる部位は繊維質基体層ではなく樹脂被覆層が一般的である。これは微粒子が表面に極力近い部位に存在せねば機能性が有効に発揮できないからであるが、一方で被覆層へ異物である微粒子を存在させるので、外観や風合い、表面強度への悪影響が問題点として挙げられる。そのような問題点を解決するための具体的な提案としては、表面に複層構造の樹脂層が形成された皮革様シートの最表皮層以外の樹脂層へ消臭剤を含有させ、かつ皮革様シートに針で貫通孔を設ける方法(例えば、特許文献1を参照。)や、表面被覆層の表面に抗菌剤を含有させた樹脂をスポット状に塗布する方法(例えば、特許文献2を参照。)などが挙げられる。しかしながら、前者の方法では、針で開孔させるので外観への悪影響や意匠への大きな制約がある上、樹脂内部へ存在する消臭剤は開孔の内部という狭い表面積において露出するものが外気と接触できるだけなので本来の消臭能の一部しか発揮できない傾向にあり、また消臭剤が含有する樹脂層において消臭剤はやはり異物なので物性の低下や風合いへの悪化は避けられない。また、後者の方法では、スポット状とはいえ塗布された抗菌剤による表面の外観や触感への悪影響は避けられず、何より表面強度に劣る上、使用中に磨耗により抗菌剤が脱落することで抗菌効果が大きく低下してしまうという重大な欠点を有している。
特開平9―31863号公報(第2−4頁) 特開2002―88661号公報(第2−4頁)
本発明は、前記したような従来の方法では解決できなかった、機能性微粒子使用による皮革様シートとしての外観や風合いなどの感性面、および表面強度や屈曲性などの物性面への悪影響をことごとく無くし、さらには機能性微粒子が本来有する性能を大きく損なうことなく、最大限に発揮させた機能性皮革様シートを提供するものである。
前述の課題を達成するために本発明者らは鋭意研究を行い、その結果、多孔質被覆層に形成された多数の孔の中に抗菌・消臭等の機能性微粒子を存在させることにより、微粒子が本来有する性能を損なうことなく、また外観や風合い、表面強度などへ悪影響を与えることなく機能性を付与した皮革様シートを得ることが可能であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、詳細には以下の機能性皮革様シート、および機能性皮革様シートの製造方法を提供するものである。
1. 繊維質基体層、その少なくとも片面に形成された多孔質被覆層、および機能性微粒子からなる機能性皮革様シートにおいて、機能性微粒子が多孔質被覆層の孔内部に多孔質被覆層を構成する樹脂内部へ含まれることなく存在し、かつ機能性皮革様シートの表面に平均直径1〜100μmの開孔部を有することを特徴とする機能性皮革様シート。
2. 繊維質基体層が平均繊度0.3デシテックス以下の極細繊維を主体とする繊維または繊維束からなる不織布とその内部に付与された高分子弾性体からなる前記1.の機能性皮革様シート。
3. 多孔質被覆層表面に多孔フィルム層が積層されている前記1.または2.の機能性皮革様シート。
4. 繊維質基体層の少なくとも片面に平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層を形成し、該多孔質被覆層を形成する樹脂の非溶剤に機能性微粒子を分散させた処理液を多孔質被覆層の開孔部より孔内部へ投入し、次いで該非溶剤を除去することを特徴とする機能性皮革様シートの製造方法。
5. 繊維質基体層の少なくとも片面に積層された多孔質被覆層の表面部を除去し、平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層を形成する前記4.記載の機能性皮革様シートの製造方法。
6. 平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層の表面に、さらに平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔フィルム層を積層する前記4または5.記載の機能性皮革様シートの製造方法。
本発明の機能性皮革様シートは、抗菌・消臭等で代表される機能性を有する微粒子が本来有する機能性を大きく損うことなく、その機能性を十分に発揮し、表面の外観および物性に優れた皮革様シートである。
本発明に用いる繊維質基体層としては、織物、編物、不織布、あるいはそれらを組み合わせて複合一体化した繊維質シート、さらにはそれらの繊維質シートの内部あるいは表面部に各種の樹脂や処理剤などを付与したもの等が挙げられる。それらの中でも、より天然の皮革に近い風合い、質感を表現できるものとして、不織布を用いたものが好ましく、最も好ましいのは極細繊維を主体とする繊維または繊維束からなる不織布を用い、その内部に高分子弾性体を付与したものである。極細繊維とは、一般的には繊度が1デシテックス以下の繊維を指すこともよくあるが、本発明において好ましい極細繊維は平均繊度が0.3デシテックス以下のものである。このような極細繊維を用いることによって、太い繊維では到底表現できないよりソフトで天然の皮革により近い風合い、質感が表現できるのである。
極細繊維の製造方法としては、溶融紡糸により直接極細繊維を得る方法、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸することにより得た複合繊維を機械的応力や収縮率の差異を利用して分割したり、少なくとも一種の成分を溶解あるいは分解することにより除去したりして極細繊維からなる繊維束を得る方法などが用いられる。
前者の方法だと繊維質基体層を製造する初期段階から繊維質シートを構成する繊維が極細繊維の状態なので、その後の工程での加工上の制約が大きいので、一般的に好まれるのは加工性が良好な後者の方法である。後者の方法による複合繊維の中でも代表的な繊維の形態は、少なくとも一種の成分からなる繊維断面の中に、少なくとも一種の他成分が点在した海島型断面を有する、いわゆる海島型繊維と呼ばれるものであり、一般的には海に相当する領域を形成しているポリマー成分を除去することにより、島に相当するポリマー成分からなる極細繊維を得る。
海島型繊維の島成分を形成しうるポリマーとしては、溶融紡糸可能で、強度等の繊維物性を十分に発揮するポリマーであって、紡糸条件下で海成分ポリマーより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が大きいポリマーが好ましく、例えばナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体、ポリエチレンテレフタート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体等が好適に用いられる。
また、海成分を形成しうるポリマーとしては、島成分ポリマーよりも溶融粘度が低く、島成分との溶解性、または分解性を異にし、海成分ポリマーの溶解、または除去に用いられる溶剤、または分解剤等による溶解性、または分解性が大きく、島成分ポリマーとの相溶性が小さなポリマーが好ましく、例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
極細繊維を発生させる複合繊維において、極細繊維成分とそれ以外の成分との好適な体積比率は極細繊維成分:それ以外の成分=30/70〜70/30の範囲である。それ以外の成分の比率が30%未満だと、除去される成分が少ないので無駄な成分が少ない点では優れているが、除去された成分が占めていた体積が空間になり、繊維質基体自体の見かけ密度が下がると共に極細繊維に自由度が付与されることで、得られる繊維質基体、ひいては皮革様シートの柔軟性を十分に発現させることができない。一方、それ以外の成分の比率が70%を超えると、それ以外の成分を除去した後に残った成分、即ち極細繊維の絶対量が少なすぎるので、繊維質基体、ひいては皮革様シートの物性において、必要とするレベルが確保できず、また除去する成分が多い点でも環境や生産性の観点から不適切な比率である。
本発明における極細繊維の平均繊度は好ましくは0.3デシテックス以下であり、より好ましくは0.1デシテックス以下、さらに好ましくは0.05デシテックス以下である。極細繊維の繊度が0.3デシテックスを超えると、繊維質基体層の柔軟性が損なわれゴワゴワとした触感となりやすくなる。極細繊維の平均繊度の下限は、本発明が目的とする効果を得る上では特に限定されるものではないが、皮革様シートとしての物性面や生産性の観点からは、0.0001デシテックスが一応の目安である。なお、極細繊維の平均繊度は、皮革様シートを電子顕微鏡等により観察し、極細繊維の平均径を測定して計算により求めることができる。
極細繊維発生型複合繊維は、採用する繊維質シートの形態に応じて、ステープル状、フィラメント状などの種々の形態で製造する必要があるが、本発明において採用できる方法は特に限定されるものではなく、従来公知の何れの方法も採用可能である。例えば、ステープルであれば、従来公知の以下の方法によって、延伸、捲縮、熱固定、カット等の処理を経て、所望の形態のステープルを得ることができる。
極細繊維発生型複合繊維には、紡糸から繊維質シート化までの何れかの段階で、各種油剤を一種または複数種、一工程または複数工程で付与してもよい。付与する油剤の種類としては、繊維間の摩擦を下げる効果のあるポリオルガノシロキサンや各種の変性されたシリコーン系の油剤、および繊維間をまとめて対金属間の摩擦係数を下げる効果のある鉱物油系の油剤、その他帯電防止効果のある油剤等の公知の油剤を繊維の特質を考慮しながら、好ましくは複数種をブレンドしてできるだけ一工程で付与する。付与する工程としては、複合繊維が例えばステープルであれば、複合繊維の捲縮前、捲縮後、あるいは複数種の複合繊維を使用する場合や複合繊維と他の繊維を併用する場合であれば繊維混綿時などいずれの工程でもよい。ステープル形態の極細繊維発生型複合繊維を繊維質シート化する方法としては、カード、ウェバーを経由してウェブとし、所定重量にウェブを積層した後、ニードルパンチなどの絡合工程を経て不織布とするのが一般的であるが、複合繊維は特にカード工程やニードルパンチ工程での巻き付きや繊維割れなどのトラブルが起きやすいので、複合繊維に摩擦係数を軽減する油剤を重点的に付与するのが好ましい。
本発明のニードルパンチ工程において、従来公知のフェルト針が何れもその目的に応じて使用可能であり、太さや長さ、バーブの数や位置、形状など種々の要因を適宜調節したフェルト針を用いればよいが、例えば積層したウェブを構成する繊維を厚さ方向へ効率よく絡合させるためには、繊維切れの起きにくい1バーブのフェルト針が好適に用いられる。また、不織布の厚さ方向の見かけ密度において、表面部の密度が中層部の密度より高いものとするためには、3バーブ、6バーブ、9バーブ等の多バーブのフェルト針が好適に使用できる。従って、目的によってこれらのフェルト針を適宜組み合わせて使用しても良い。
ニードルパンチ工程におけるパンチ数は、使用する針の形状や、処理するウェブの厚さや重量により異なるが、大凡200〜2500パンチ/cmの範囲で設定される。一般的に極細繊維発生型複合繊維のニードルパンチ工程においては、ニードルパンチ条件が強すぎる場合には極細繊維発生型複合繊維の切断や繊維割れがおこり、絡合状態が向上せず、またニードルパンチ条件が弱すぎる場合には厚さ方向に配向して積層したウェブ間の剥離強力を向上させる繊維数の不足をまねく上、品質や物性のバラツキも生じやすくなる傾向にある。
ニードルパンチなどにより絡合処理された不織布は、表面を平滑化したり、あるいは厚みや見掛け密度を調節したりすることなどを目的として、厚さ方向にプレスしてもよい。プレスの方法は、加圧した複数の加熱ロール間に不織布を通す方法、予熱した不織布を加圧した冷却ロール間に通す方法等、従来公知の方法が何れも利用でき、方法は特に限定されるものではないが、極細繊維発生型複合繊維において、繊維表面を主体的に構成する成分または低融点成分を溶融して圧着させる方法が好ましい。例えば、海成分がポリエチレン、島成分がナイロン6の海島型繊維であれば、ポリエチレンの融点以上でかつナイロン6の融点未満の温度で前記の何れかのプレス処理することによって、より平滑で均一な厚みの不織布を得ることができる。なお、プレス工程の際に、テンションによる意図しない形態変化やプレスによる過剰な潰れなどを抑制する目的で、ポリビニルアルコールやデンプン、樹脂エマルジョン等の後工程で除去可能な接着剤を付与してもよい。
次いで、絡合処理し、必要に応じてプレス処理した不織布の内部へ、高分子弾性体を付与する。付与方法としては、従来公知の方法、即ち高分子弾性体の有機溶剤溶液を含浸または塗布した後、湿式法でスポンジ状(多孔質状)に凝固させる方法や、高分子弾性体の水分散液を含浸または塗布した後、乾式法で凝固させる方法などが挙げられる。高分子弾性体の溶液または分散液には、必要に応じて、界面活性剤、感熱ゲル化剤、可塑剤、硬化剤、顔料、染料、マイカ、タルク、コットンパウダー、防燃剤、発泡剤など、従来公知の処理剤、着色剤、機能性付与剤などの各種添加剤を配合してもよい。高分子弾性体としては、従来から皮革様シートの製造に用いられている樹脂であれば、何れも好適に用いることができる。すなわち、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコーン系樹脂、およびこれらの共重合物や混合物等が好適な例である。中でもポリウレタン系樹脂が、天然皮革様の風合い、触感等が得られ、かつ耐久性にも優れることから本発明において最も好ましい高分子弾性体である。
不織布を構成する繊維が極細繊維でなく極細繊維発生型複合繊維の場合には、高分子弾性体を付与する前、または後の工程として、極細繊維発生型複合繊維を極細化する工程を実施する。極細化する方法は、複合繊維が海島型であれば海成分を適当な溶剤または分解剤で処理して除去する方法であり、除去する成分を含まない複合繊維であれば異成分間の界面に亀裂が入るように揉み処理して剥離分割させる方法などがあり、本発明において特に制限はない。このようにして、本発明において好適な0.3デシッテクス以下の極細繊維を主体とする繊維または繊維束からなる不織布とその内部に付与された高分子弾性体からなる繊維質基体層を得ることができる。
繊維質基体層の厚みは、用途に応じて任意に選択でき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.3〜3mmである。また繊維質基体層における不織布と高分子弾性体との比率は、質量比で35/65〜85/15が好ましい。この範囲にすることによって、不織布と高分子弾性体とが複合された繊維質基体層において風合いのバランスが良好となり、これを用いた本発明の皮革様シートは、本発明が目的とする用途において好適な充実感や柔軟性が得られやすくなる。
繊維質基体層の少なくとも片面に機能性微粒子を担持するための多孔質被覆層を形成する方法は、従来公知の方法が何れも採用可能であり、特に限定されるものではないが、繊維質基体層の少なくとも片面上にロールコーターやナイフコーターなどにより一定のクリアランスを設け、溶液や分散液、融液などの液状で塗布した高分子弾性体を多孔質状態で凝固させる方法、あるいは繊維質基体層とは別の基材上に前記と同様の方法により予め形成させた多孔質層を繊維質基体層の少なくとも片面に貼り合わせる方法の何れかが好ましい。前者の方法は、繊維質基体層を形成した後に実施してもよいが、繊維質基体層を形成する途中、例えば不織布絡合後、高分子弾性体含浸後の段階で実施するのも好ましい。高分子弾性体を多孔質状態で凝固させる方法としては、溶液を湿式凝固させる方法、分散液を機械的に発泡させた状態で乾式凝固させる方法、処理液へ発泡剤を混合して凝固過程で発泡させる方法、凝固後に抽出可能な微粒子や微細繊維を添加した処理液を使用する方法などが挙げられ、何れも使用可能だが、中でも微細で縦長の孔を多数形成可能である点で、高分子弾性体溶液を湿式凝固させる方法が好ましい。なお、縦長の孔を多数形成する方法は、特に限定することはなく、公知の湿式凝固方法が適応される。
多孔質被覆層を形成する樹脂としては、繊維質基体層に好適な高分子弾性体と同様のものが何れも採用可能であり、被覆層に求められる表面強度や造膜性、繊維質基体層とのバランスなどに応じて適宜選択すればよいが、中でも弾性、ソフト性、耐摩耗性、多孔質層の易形成性などの点で、ポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。好適なポリウレタン系樹脂としては、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートと炭素数2〜6の低級アルキレングリコールを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタン、あるいは両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと脂肪族または脂環族ジイソシアネートと有機ジアミンあるいは有機酸ジヒドラジドを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタンなどがあげられる。ソフト性、耐久性、加工性、多孔質層の易形成性などをより好適な範囲へ調節する目的で、これらポリウレタンの共重合物、混合物なども好適に用いられる。
両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系グリコールや、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールで代表されるポリカーボネート系グリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテル系グリコールの単独またはこれらの混合物が使用されるが、耐久性を重視するとポリエステル系グリコールとポリカーボネート系グリコールの混合物やポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールとポリエーテル系グリコールとの混合物などが好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが、また脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネートなどが挙げられる。有機ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエタノールアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、有機酸ジヒドラジドとしてはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
炭素数2〜6の低級アルキレングリコールの代表例としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがあり、中でもエチレングリコールが良好な型押し性が得られる点で好ましい。型押し性については後述する。
繊維質基体層の少なくとも片面に形成した多孔質被覆層の表面には、平均直径1〜100μmの開孔部を形成させる。開孔部の形成方法としては、特に限定することはないが、前記により形成した多孔質被覆層表面の開孔部が必要な径より小さい場合は、サンドペーパーなどによりバフィングする方法、多孔質被覆層を形成する樹脂の溶剤を含む処理液を塗布、乾燥する方法が好ましく用いられ、開孔部が必要な径より大きい場合は、高分子弾性体の溶液や分散液をグラビアコーター、スプレーコーターなどにより塗布、乾燥する方法が好ましく用いられる。もちろん、前記した多孔質被覆層を形成する方法において、条件を調節して多孔質被覆層を形成するのと同時に必要な径の開孔部をも形成させるのも好ましい方法である。また、上記方法により開孔部の平均直径を必要な大きさに調節するのは、後述する方法によって多孔質被覆層に機能性微粒子を投入した後に実施してもよい。その他、型押しにより平均直径1〜100μmの開孔部を形成することも可能である。
抗菌剤や消臭剤等の機能性微粒子を多孔質被覆層表面の開孔部から投入することで、多孔質被覆層の孔内部に多孔質被覆層を構成する樹脂内部へ含まれることなく機能性微粒子を存在させる。投入する方法としては、多孔質被覆層が溶解されない分散媒、好ましくは水系の分散媒に機能性微粒子を分散させた分散液を、開孔部を有する多孔質被覆層表面に塗布し、分散媒を乾燥する方法が好ましい。例えばこのような方法によって機能性微粒子を開孔部から投入することで、機能性微粒子はその一部あるいは全体が多孔質被覆層を構成する樹脂によって被覆、即ち遮蔽されてしまうことなく、投入された孔の内部に存在することができるので、機能性微粒子がその性能を最大限に発揮することができるのである。
機能性微粒子を投入した後、表面の意匠性や触感、耐磨耗性などの改良を目的として、多孔質被覆層の表面に多孔フィルム層を積層するのも好ましい。多孔フィルム層として好適に用いられるものは、多孔質被覆層に好適なものと同様のポリウレタン系樹脂などの高分子弾性体からなるものが挙げられる。形成方法としては、予め多孔フィルムを準備してこれを多孔質被覆層表面へ積層する方法と、多孔質被覆層表面へ多孔フィルムではないものを積層した後で多孔フィルム化する方法とがあり、目的に応じて何れも採用可能である。前者の方法としては、溶液や分散液、融液などの液状で離型紙やベースフィルムなどの上に高分子弾性体を塗布し、前記したような方法により多孔質状態で凝固させて必要に応じて積層前または後でその両面をバフィング等で研削して開孔させたもの、あるいは塗布した高分子弾性体を非多孔質状態で凝固させて針等でパンチ処理して貫通孔を開けたものを、接着層を介して多孔質被覆層表面に積層して一体化させる方法が挙げられる。また、後者の方法としては、メルトブローン方式あるいはスパンボンド方式で形成させた高分子弾性体からなる不織シートを多孔質被覆層表面に積層した後、高分子弾性体の軟化温度以上に加熱したエンボスロールなどで型押しする方法などが挙げられる。不織シートを積層する方法としては、予め準備した不織シートを多孔質被覆層表面に接着層を介して積層して一体化させるか、あるいは多孔質被覆層表面に不織シートを直接形成させ、必要に応じて高分子弾性体が半溶融状態にある間に圧着させる方法が挙げられる。多孔フィルムや不織シートを多孔質被覆層表面に積層する際に接着層を介する場合には、多孔質被覆層表面の開孔部を著しく塞いでしまわないように、接着剤を多孔フィルムや不織シート側または多孔質被覆層側へドット状やストライプ状などの非連続な状態で塗布するのが好ましい。接着剤としては、高分子弾性体同士を十分に接着する効果があるものであれば特に制限はないが、ポリウレタン系接着剤やポリアミド系接着剤などが好適に使用可能である。
本発明では、機能性微粒子の種類は特に限定されず、銀、銅等を含む金属系あるいは有機化合物を主体とする抗菌剤、活性炭、あるいは酸化金属を主体とする消臭剤、マイナスイオン発生剤であるトルマリン、吸湿剤、遠赤外線を発生させるセラミック等を多孔質被覆層の孔内部へ投入可能な粒径の微粉末状にしたものが何れも使用可能である。機能性微粒子は、平均粒子径をより小さくすることで、単位質量当たりの全表面積、即ち比表面積をより大きくすることができるので、機能性微粒子単体で見るとより高効率に機能を発揮しうる形態である。従って、目的とする機能性の発揮効率に応じて、機能性微粒子の平均粒子径の上限を適宜設定すればよいので、本発明においては特に平均粒子径の絶対値としての上限はないが、目安としては5μm未満の機能性微粒子を採用することにより、種々の機能性に対して実用一般において求められる発揮効率が得られ易いので好ましく、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。発揮効率の得られ易さにおいて、機能性微粒子の平均粒子径の下限は特に設定されるものではなく、本発明においても特に限定されるものではないが、あまり小さくしすぎても結果的には凝集してしまい易く、目安としては0.001μm以上が好ましい。但し、前記した方法により多孔質被覆層へ投入する際に安定的に存在している形態での大きさ、即ち一般的には凝集後の大きさである二次粒径が、投入する多孔質被覆層の開孔部の大きさより相対的には十分に小さくなくてはならないので、目安として開孔部の平均直径に対して平均粒子径が5分の1以下の機能性微粒子を用いるのが好ましく、より好ましくは10分の1以下である。言い換えると、目的とする機能性の発揮効率に応じて設定された機能性微粒子の平均粒子径に対して、5倍以上大きな平均直径の開孔部を、投入する際の多孔質被覆層表面に設けるのが好ましく、より好ましくは10倍以上である。
上記のようにして得られた多孔質被覆層の表面、または多孔フィルム層の表面を、さらに必要に応じて以下の方法で仕上げることで、種々の天然皮革調や幾何学模様調など種々の外観を有する機能性皮革様シートとすることができる。
仕上げ処理としては、高分子弾性体、必要に応じて顔料、染料等の着色剤、および溶媒または分散媒とからなる無着色用、または着色用のインクを、グラビアコーター、リバースロールコーター、スクリーンコーター等を利用して仕上げ処理面に転写して、目的とするクリア層、または着色層を形成する塗装仕上げがある。また、目的とする天然皮革調などのエンボスロールで型押ししてシボを仕上げ処理面に再現する型押し仕上げがある。
上記の仕上げ処理に際しては、必要な開孔部を塞いでしまわないように留意する必要がある。必要な開孔部を残すことにより、抗菌剤、消臭剤などの機能性微粒子が雰囲気に直接接触した状態が確保されるので、微粒子が本来有する性能を極力損なうことなく、かつ効果良く発現させることができる。
上記の型押し仕上げ処理を行なう場合は、処理温度や処理圧力をより低くし、またエンボスロール表面の凹凸がより忠実に転写されるようにする目的で、即ち型押し性をよくする目的で、型押し処理面の仕上げ層、または被覆層を構成する高分子弾性体の組成や分子量などを適宜設定するのが好ましい。
多孔質被覆層の表面、または多孔フィルム層の表面に形成させる開孔部は、平均直径が1〜100μmのものとする必要があり、好ましくは3〜95μm、より好ましくは5〜90μmである。開孔部の平均直径はより大きい方が微粒子の機能性をより発現し易くなるが、100μmを超えて大きくしすぎると外観上目立つので目的とする用途における一般的な評価上は好ましくなく、雨天時の水やその他の汚染物質などが浸入し易く、また表面強度が著しく低下してしまうといった問題点のほかにも、皮革様シートの表面積当りに外観や表面強度などの点で形成可能な開孔部の合計面積が制限されると、機能性微粒子を担持させうる孔内部の表面積までが著しく制限されてしまうという大きな問題点が顕在化する。一方、開孔部の平均直径を1μmより小さくしすぎると、単位面積当りに膨大な数の開孔部を設ければ必要な開孔面積を確保することは可能だが、いくら合計面積が確保されていても開孔部から機能性微粒子に至るまでの孔壁面と媒体、例えば空気などとの抵抗が著しく増大し、移動速度が制限されてしまうので、機能性が迅速には発現できなくなってしまう。したがって、外観や表面強度などの品質上目的とするレベルと、機能上目的とするレベルを得るための機能性微粒子の担持量との兼ね合いから、開孔部の平均直径は上記範囲で極力大きめに設定するのが好ましい。
さらに本発明の機能性皮革様シートの表面の開孔部は、5〜1000個/cm分布していることが、表面の外観と機能性微粒子の効果を低下させない点で好ましく、10〜800個/cm分布していることがより好ましく、20〜500個/cm分布していることがより好ましい。
このため、表面に開孔部を形成させる際には、表面を観察しながら処理条件を適宜選定する必要がある。例えば、バフィング処理であればサンドペーパーの番手や回転速度、圧力、処理速度、処理回数などであり、塗装仕上げ処理であれば、インクの組成や濃度、塗布量、乾燥条件、処理回数などであり、型押し仕上げ処理であれば、表面温度、圧力、処理速度、処理回数などである。
次に本発明の実施態様を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数および%は特に断わりのない限り質量に基づくものである。
[開孔部の平均直径]
得られる皮革様シートの表面を電子顕微鏡にて写真撮影を行ない、任意10点の開孔部の平均面積を求め、その平均面積を円の面積としたときの直径とする。
実施例1
ナイロン6チップと高流動性低密度ポリエチレンチップとを50/50の質量率で混合して、押し出し機にて島成分がナイロン、海成分がポリエチレンで平均島数が約600の海島型繊維を紡糸した。得られた海島型繊維を延伸、クリンプ、カットして、平均繊度3.5デシテックス、カット長さ51mmのステープルを得た。該ステープルをカードで開繊し、クロスラッパー方式によりウェブとした後、積層し、次いで針に1箇所だけバーブがついたフェルト針を用いて980パンチ/cmのパンチ数にてニードルパンチで絡合処理して目付450g/mの不織布を得た。この不織布を120℃に加熱した後、冷却ロールでプレスして表面を平滑にし、さらに濃度13%のポリエステル−エーテル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMFと略す)溶液を含浸し、DMF水溶液浴中で湿式凝固し、湯洗してDMFを除去した。次いで、100℃のトルエン浴中でステープル中の海成分を抽出除去し、平均繊度0.05デシテックスのナイロン極細繊維の束からなる不織布とその内部に付与されたポリウレタンからなる、厚さ1.1mmの繊維質基体を得た。
この繊維質基体の片面に濃度20%のポリエステル−エーテル系ポリウレタンのDMF溶液を500g/m塗布した後、水/DMF=90/10のDMF水溶液浴中に浸漬してポリウレタンを凝固させ、約200μの厚みの多孔質被覆層を形成した。
この多孔質被覆層の表面をバフィング処理して厚さで約0.05mmを研削除去し、表面に平均直径1〜500μmの種々の孔が分布し、平均直径で89μmの開孔部を設け、下記配合の抗菌剤(平均粒子径2μm)の分散液30g/mをグラビアロールで塗布、乾燥して、前記開孔部から抗菌剤を孔内部へ擦り込んだ。多孔質被覆層を電子顕微鏡で観察すると、抗菌剤が多孔質被覆層を構成する樹脂内部に含まれることなく孔内部に存在していることが確認できた。
分散液:AIS−NAZ320(触媒化成工業(株)製) 5部
水 100部
次にポリエステル系ポリウレタンからなる25g/mの目付けのメルトブローン不織布を、ポリエステル系ポリウレタンのDMF溶液を接着剤として使用して、多孔質被覆層の表面に貼り合わせた。なお、メルトブローン不織布の貼り合わせは、まず接着剤を多孔質被覆層表面へグラビアロールで非連続状に塗布し、直ちにメルトブローン不織布をシワが入らないように張力を調節しつつ積層し、乾燥することで、多孔質被覆層表面の開孔部を著しく塞いでしまわないようにして行なった。
貼り合わせたメルトブローン不織布の表面に、カーボンブラックが配合されたポリエステル系ポリウレタンのDMF溶液である黒色インクを30g/m、グラビアロールで2回塗布、乾燥することで転写し、次いで160℃に加熱した微細な凹凸模様の天然皮革調エンボスロールにて型押しして、本発明の機能性皮革様シートを得た。
得られた機能性皮革様シートは、表面に平均直径1〜30μmの種々の孔が100〜200個/cm程度分布し、平均直径で13μmの開孔部が存在しているので、表面側について評価した抗菌性は擦り込んだ量の抗菌剤が単体で発揮する性能に対して遜色のないものであり、かつ皮革様シートとしてもソフトな風合いや天然皮革調の外観をも有するものであり、靴や鞄などの用途において非常に好適な素材であった。
実施例2
上記実施例1において、多孔質被覆層の表面をバフィング処理して厚さで約0.04mmを研削除去し、表面に平均直径1〜400μmの種々の孔が分布し、平均直径で85μmの開孔部を設け、下記配合のトルマリン微粉末(平均粒子径0.7μm)の分散液30g/mをグラビアロールで塗布、乾燥して、前記開孔部からトルマリン微粉末を孔内部へ擦り込んだ。多孔質被覆層を電子顕微鏡で観察すると、微粉末が多孔質被覆層を構成する樹脂内部に含まれることなく孔内部に存在していることが確認できた。
分散液:トルマリン微粉末 10部
水 90部
次にこの多孔質被覆層の表面にポリエステル系ポリウレタンをメルトブローン法で吹き付け、30g/mの目付けのメルトブローン不織布を多孔質被覆層の表面に積層した。
積層したメルトブローン不織布の表面に、酸化鉄(弁柄)と酸化チタンが配合されたポリエステル系ポリウレタンのDMF溶液である薄茶色インクを30g/m、グラビアロールで2回塗布、乾燥することで転写し、次いで160℃に加熱した実施例1より少し大きな凹凸模様の天然皮革調エンボスロールにて型押しし、さらに機械的な揉み処理を施して、本発明の機能性皮革様シートを得た。
得られた機能性皮革様シートは、表面に平均直径1〜35μmの種々の孔が100〜200個/cm程度分布し、平均直径で18μmの開孔部が存在しているので、表面側について評価したマイナスイオンの発生量は擦り込んだ量のトルマリン微粉末が単体で発揮する性能に対して遜色のないものであり、かつ皮革様シートとしてもソフトな風合いや天然皮革調の外観をも有するものであり、家具や電子機器の意匠性外装などの用途において非常に好適な素材であった。
実施例3
実施例1において、海成分を抽出除去した後、裏面をバフィングし、さらに青黒色の染料で染色することで、厚さ0.7mmの繊維質基体を得た。この繊維質基体の片面に、実施例1と同様にして多孔質被覆層を形成し、バフィング処理して開孔部を設け、開孔部から孔内部へ抗菌剤を擦り込んだ。
ポリエステル系ポリウレタンのDMF溶液をポリエチレンフィルム上に塗布し、水/DMF=70/30のDMF水溶液浴中で凝固させ、次いでパンチング加工により平均直径0.35mmの貫通孔を30個/cm開けることで、厚さ0.2mmの多孔フィルムを作成した。得られた多孔フィルムを上記の抗菌剤を擦り込んだ多孔質被覆層表面に貼り合わせ、ポリエチレンフィルムを剥がした。
貼り合わせた多孔フィルムの表面に、実施例1と同様に黒色インクを転写し、次いで165℃に加熱した微細な凹凸模様の天然皮革調エンボスロールにて型押しし、さらに機械的な揉み処理を施して、本発明の機能性皮革様シートを得た。
得られた機能性皮革様シートは、表面に平均直径30〜80μmの種々の孔が5〜20個/cm程度分布し、平均直径で48μmの開孔部が存在しているので、表面側について評価した抗菌性は擦り込んだ量の抗菌剤が単体で発揮する性能に対して殆ど遜色のないものであり、かつ皮革様シートとしてもソフトな風合いや天然皮革調の外観をも有するものであり、衣料や車両内装などの用途において非常に好適な素材であった。
比較例1
実施例1において、繊維質基体の片面に抗菌剤を混合した下記配合のポリウレタンの溶液を500g/mを塗布した後、水/DMF=90/10のDMF水溶液浴中に浸漬してポリウレタンを凝固させ、約200μの厚みの多孔質被覆層を形成した。この多孔質被覆層を電子顕微鏡で観察すると、抗菌剤が多孔質被覆層を構成する樹脂内部に存在していることが確認できた。
溶液:ポリエステル系ポリウレタン 20部
AIS−NAZ320(触媒化成工業(株)製) 0.3部
DMF 79.7部
この多孔質被覆層の表面をバフィング処理して厚さで約0.05mmを研削除去し、表面に平均直径5〜500μmの種々の孔が分布し、平均直径で100μmの開孔部を設けた。この開孔部が設けられた多孔質被覆層表面に実施例1と同様にして黒色インクを転写し、次いで160℃に加熱した微細な凹凸模様の天然皮革調エンボスロールにて型押しして、機能性皮革様シートを得た。
得られた機能性皮革様シートは、表面に平均直径10〜40μmの種々の孔が50〜150個/cm程度分布し、平均直径で25μmの開孔部が存在しているものの、表面側について抗菌性を評価したところ、使用した量の抗菌剤が単体で発揮する性能に対して著しく劣っていて、殆ど抗菌性を有しないものであった。しかも、表面の耐磨耗性を評価したところ、実施例1のものより著しく減量するなど表面強度が弱く、その上風合いも実施例1のものに比べて硬いものであった。
比較例2
実施例1において、バフィング処理により開孔部を設けた多孔質被覆層表面に、下記配合のポリウレタン溶液を75g/m、グラビアロールで6回塗布、乾燥することで転写した。多孔質被覆層を電子顕微鏡で観察すると、抗菌剤が開孔部近傍の表面および孔壁の内部に、多孔質被覆層へ一部が含まれた状態で付着していることが確認できた。
溶液:ポリエステル系ポリウレタン 8部
AIS−NAZ320(触媒化成工業(株)製) 2部
DMF 45部
シクロヘキサノン 45部
抗菌剤を転写した多孔質被覆層表面に、実施例1と同様にして黒色インクを転写し、次いで160℃に加熱した微細な凹凸模様の天然皮革調エンボスロールにて型押しして、機能性皮革様シートを得た。
得られた機能性皮革様シートは、表面に平均直径5〜30μmの種々の孔が50〜150個/cm程度分布し、平均直径で15μmの開孔部が存在しているものの、表面側について抗菌性を評価したところ、使用した量の抗菌剤が単体で発揮する性能に対して著しく劣っているものであった。しかも、表面の耐磨耗性を評価したところ、実施例1のものより著しく減量するなど表面強度が弱く、その上風合いも実施例1のものに比べて硬いものであった。
比較例3
実施例1において、抗菌剤分散液を多孔質被覆層へ擦り込むことなくメルトブローン不織布を貼りあわせ、実施例1と同様にして黒インクを転写し、次いで同様のエンボスロールを用いて型押しする際に温度を170℃とし、かつ処理速度を遅くすることで、実施例1の機能性皮革様シートとほぼ同様の風合いを有するが表面には開孔部が殆ど形成されていない銀面付き皮革様シートを製造した。この銀面付き皮革様シートを、下記配合の抗菌剤分散液へ浸漬し、含液率80%にて絞液し、最後に乾燥した。
得られた銀面付き皮革様シートを電子顕微鏡で観察すると、抗菌剤は殆どが繊維質基体層中の極細繊維からなる束やポリウレタン表面に付与されていることが確認された。この銀面付き皮革様シートは、表面側には殆ど抗菌性がなく、しかも風合いが実施例1のものに比べて少しゴワゴワしたものであった。
比較例4
実施例1において、多孔質被覆層へ擦り込む抗菌剤分散液の分散媒として水と等量のDMFを含むものに替える以外は同様にして銀面付き皮革様シートを得た。
得られた銀面付き皮革様シートを電子顕微鏡で観察すると、付与された抗菌剤の多くが多孔質被覆層の開孔部近傍に付着し、あるいはおよび孔壁の内部の樹脂に含まれた状態で付与されていることが確認された。この銀面付き皮革様シートを実施例1の抗菌性皮革様シートと比べると、外観や風合いはあまり遜色がなかったが、表面側で評価した抗菌性は使用した量の抗菌剤が単体で発揮する性能に対して著しく劣るものであった。
本発明の機能性皮革様シートは、従来の皮革様シートと同様の用途であれば何れも使用可能であり、より好適には人が接する機会のある各種の製品、例えば靴、鞄、財布、家具、衣料、手袋、ベルト、車両内装、ボール、電子機器の意匠性外装等の素材として使用できる。
本発明の機能性皮革様シートの断面模式図である。
符号の説明
1 繊維質基体層
2 多孔層被覆層
3 機能性微粒子
4 開孔部

Claims (6)

  1. 繊維質基体層、その少なくとも片面に形成された多孔質被覆層、および機能性微粒子からなる機能性皮革様シートにおいて、機能性微粒子が多孔質被覆層の孔内部に多孔質被覆層を構成する樹脂内部へ含まれることなく存在し、かつ機能性皮革様シートの表面に平均直径1〜100μmの開孔部を有することを特徴とする機能性皮革様シート。
  2. 繊維質基体層が平均繊度0.3デシテックス以下の極細繊維を主体とする繊維または繊維束からなる不織布とその内部に付与された高分子弾性体からなる請求項1記載の機能性皮革様シート。
  3. 多孔質被覆層表面に多孔フィルム層が積層されている請求項1または2記載の機能性皮革様シート。
  4. 繊維質基体層の少なくとも片面に平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層を形成し、該多孔質被覆層を形成する樹脂の非溶剤に機能性微粒子を分散させた処理液を多孔質被覆層の開孔部より孔内部へ投入し、次いで該非溶剤を除去することを特徴とする機能性皮革様シートの製造方法。
  5. 繊維質基体層の少なくとも片面に積層された多孔質被覆層の表面部を除去し、平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層を形成する請求項4記載の機能性皮革様シートの製造方法。
  6. 平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔質被覆層の表面に、さらに平均直径1〜100μmの開孔部を有する多孔フィルム層を積層する請求項4または5記載の機能性皮革様シートの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011192793A (ja) * 2010-03-15 2011-09-29 Heiji Niiyama 発光装置
WO2013014732A1 (ja) * 2011-07-24 2013-01-31 Niiyama Heiji 発光装置
JP2018044259A (ja) * 2016-09-14 2018-03-22 株式会社クラレ 皮革様シート及びボール表皮材

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