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JP2007092261A - スチールコードおよび自動車用タイヤ - Google Patents

スチールコードおよび自動車用タイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】高い伸び性を有するとともに、低荷重域に適度の一次伸び部を有し、且つ、ゴム侵入性に優れ、また、設備コストや生産エネルギーの消費量を抑制し生産性の低下を防止でき、ゴム製品の埋設補強材、特に自動車用タイヤの補強層外層部に埋め込んで使用するハイエロンゲーションコードとして好適なスチールコードおよび該スチールコードを使用した自動車用タイヤを提供する。
【解決手段】単層撚り(あるいは複層撚り)のスチールコードで、コード断面形状10を略楕円形とし、すべての素線1〜5(あるいはストランド)に撚り合わせのための形付けによるくせとは別に小さいスパイラル状くせを付け、各素線(あるいは各ストランド)のスパイラル状くせを断面略楕円形で、撚り込み率を1.01〜1.46とする。
【選択図】図1

Description

本発明は自動車用タイヤ等のゴム製品の埋設補強材として使用されるスチールコードおよび該スチールコードを使用した自動車用タイヤに関するものである。
自動車が走行路の突起物を踏んだ際に自動車全体がバウンドすることのないようにするためには、タイヤの路面と接触する面を歪ませて凹凸を吸収する効果(所謂「エンベロープ効果」)を高め、タイヤ全体が歪まないようにする必要がある。そのため、自動車用タイヤには、タイヤ外周のカーカスとトレッドの間の補強層(ブレーカあるいはベルト)の外層部に埋め込むスチールコードとして、高い伸び性を有する(即ち破断までの伸びが大きい)スチールコード(所謂「ハイエロンゲーションコード」)が使用されている。こうした目的で使用するハイエロンゲーションコード(H/Eコード)は、破断までの全伸度(破断までの伸び)が4%以上、好ましくは5%以上(通常のスチールコードでは3%以下)であることが要求される。
また、ハイエロンゲーションコードは、その使用目的からして、単に全伸度が大きいというだけでなく、低荷重で伸び易い1次伸び部を有し、荷重の増加に伴い序々に伸び剛性を強めて、破断する際の全伸度(破断までの伸び)が4%以上、好ましくは5%以上となることが必要である。また、このコードは、タイヤに埋め込まれるものであるため、コード全面にゴムが被覆されるとともにコード内部に隙間無くゴムが侵入することも不可欠である。
しかし、従来のスチールコードでは、破断する際の全伸度(破断までの伸び)が4%以上、好ましくは5%以上という高い伸び性を有するとともに、低荷重域に適度の一次伸び部を有し、且つ、ゴム侵入性に優れるという、自動車用タイヤの補強層外層部に埋め込んで使用するハイエロンゲーションコードとして必要な条件を全て満たすことはできない。
上記ハイエロンゲーションコードとしての条件の内、全伸度4%以上、好ましくは5%以上というのは、複層撚り(n×m構造)のスチールコードの採用により実現可能である。しかし、複層撚り(n×m構造)では、素線が互いに密接するために、ストランドの中央に閉じた空隙ができて、ゴム侵入性が悪く、タイヤ成形時にストランド中央の空隙がそのまま残ってしまう。
また、単層撚りのハイエロンゲーションコードとしては、撚りピッチを従来より小さくすることによって全伸度4%以上を達成し、5%以上も可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、上記従来の単層撚りのハイエロンゲーションコードは、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が5〜10と極めて小さくて(一般コードの撚ピッチ係数は20程度である)、捻る回数が多くなるため、生産性が悪く、そのために撚り線機が多台数必要で、設備コストがかかるだけでなく、エネルギーの消費量も大きい。
また、この従来の単層撚りハイエロンゲーションコードは、密に撚り合わされているため、ゴムが侵入できる隙間が小さく、コードの中心部にまでゴムが入りにくい。3〜6本の素線(スチールフィラメント)を単層構造に撚り合わせた所謂1×n(n=3〜6)のスチールコードは、中心部がコード長手方向にストロー状の空隙となり、特に、素線同士を密着するよう稠密に撚り合わせたクローズ撚りの場合、コード中心部の空隙は閉ざされたものとなる。この場合、例えばタイヤ成形工程でスチールコードがゴムとの複合体となるときにそのコード中心部の空隙までゴムが浸透せず、コード中心部が中空部となって残ると、タイヤ表面の外傷からコード内部へ浸入した水分等が、中空部となったコード中心部の空隙に浸入して、それが毛細管現象によりコード内部を長手方向に浸透し、その結果、コード内部より腐食が進行し、スチールコードの耐疲労性を悪化させ、タイヤ寿命を縮めてしまうことがある。
単層撚りでゴム侵入性に優れるコードとしては、ゴム侵入性を確保するため、円形螺旋状に形付けした素線を素線同士が密着しないよう緩く撚り合わせたオープン構造のスチールコード(所謂「オープンコード」)がある。このコードはオープン構造であるゆえ、撚りピッチを小さくすることなく高い伸び性を得ることができる。しかし、オープンコードは、緩い撚り合わせのため小さな荷重で大きく伸びることから、取り扱い作業性が非常に悪く、しかも、タイヤの製造におけるコードをゴムシートで挟み込む工程(カレンダー工程という)でコードをリールから繰り出す際の小さな張力でコードが伸びて、素線間の隙間がなくなってしまい、その状態でゴムシートに挟まれてしまうため、その後の加硫工程で熱と圧力でコードとゴムとを一体化する処理を行う際に、素線間の隙間が閉じてしまっているためにゴムがコード内部に侵入できず、タイヤ内にゴムで埋まっていない空隙が残ってしまう。
そして、ゴム侵入性に優れたスチールコードとして、n本(n=3〜6)の素線からなる1×n構造で、少なくとも1本の素線が撚り合わせのための形付けによるくせとは異なる小さいスパイラル状くせを有し、かつコード断面形状が略楕円形を呈するゴム製品補強用スチールコードも提案されている(特許文献2参照。)。しかし、このコードの場合も全伸度を大きくするには撚りピッチを小さくする必要があって、生産性が悪く、撚り線機が多台数必要で、設備コストがかかり、エネルギーの消費量も大きい。
また、3本以上の素線からなるスチールコードの少なくとも1本の素線をジグザグ状にくせ付けした素線とすることで、ゴム材が侵入できる隙間を形成させゴム侵入性を高めることも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。このスチールコードは、素線同士が接触する箇所が多く存在するため、隣り合う素線同士が離間するオープンコードとは異なって、接触部分により張力による隙間の減少が抑止されるとともに低荷重時の伸びが小さくなる。また、このスチールコードは、全素線をジグザグ状にくせ付けすることで、高い伸び性を得ることが可能である。しかし、全素線をジグザグ状にくせ付けしたスチールコード(「ジグザグコード」という)で、全伸度(破断までの伸び)を5%以上にしようとすると、ジグザグのくせ付けを大きく(ピッチおよび波高を大きく)しなければならず、それによって撚りが乱れ、撚りの乱れに起因して耐疲労性が低下するという問題がある。また、ジグザグくせは歯車等で加工する2次元波型であって、屈曲部を有するが、曲げ応力が負荷されると(このコードをタイヤ補強に用いると、路面の凹凸で曲げ応力が常に負荷される。)、その屈曲部に応力が集中し、それによって耐疲労性が低下するという問題もある。
特開平1−250483号公報 実公平7−30714号公報 特開平2−307994号公報
したがって、高い伸び性を有するとともに、低荷重域に適度の一次伸び部を有し、且つ、ゴム侵入性に優れ、また、設備コストや生産エネルギーの消費量を抑制し生産性の低下を防止でき、ゴム製品の埋設補強材、特に自動車用タイヤの補強層外層部に埋め込んで使用するハイエロンゲーションコードとして好適なスチールコードおよび該スチールコードを使用した自動車用タイヤを提供することが課題である。
本発明のスチールコードは、n本(n=3〜6)の素線を撚り合わせてなる単層撚りあるいは各々がn本(n=2〜7)の素線からなるm本(m=3〜7)のストランドを撚り合わせてなる複層撚りで、単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランドが各々偏平螺旋状に形付けされて、それら素線間あるいはストランド間に隙間ができコード断面形状が略楕円形を呈するように撚り合わされてなるゴム製品補強用のスチールコードであって、単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランドのすべてが撚り合わせのための形付けによるくせとは別に該撚り合わせのための形付けによるくせより波高ならびにピッチの小さいスパイラル状くせを有し、それら各素線あるいは各ストランドのスパイラル状くせの断面形状が略楕円形で、単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランドの撚り込み率が1.01〜1.46であることを特徴とする。
このスチールコードは、オープン構造であり、且つ、単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランドがスパイラル状くせを有するため、伸びが大きく、ピッチを小さくしなくても、破断するまでの全伸度が4%以上、好ましくは5%以上という高い伸び性を得ることができる。そのため、生産性が低下せず、撚り線機の台数を増やす必要がなく、エネルギーの消費も増加しない。また、低荷重域で素線あるいはストランド間の隙間が減少してもスパイラル状くせが残り、ゴム侵入性が確保される。
また、3次元波型であるスパイラル状くせを付けた素線あるいはストランドは、2次元波型であるジグザグくせを付けた素線よりも伸びが大きいため、くせの波高をジグザグくせの場合ほど大きくする必要がなく、形状を安定させ、撚りの乱れを少なくすることができる。そのため、撚りの乱れに起因する耐疲労性の低下を小さくすることができる。また、スパイラル状くせには曲げ応力が集中するような屈曲部がなく、曲げ応力の集中による疲労性の低下も少ない。
そして、このスチールコードは、単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランドの撚り込み率が1.01〜1.46であることにより、1次伸度がいたずらに大きく成り過ぎるのを抑えることができ、低荷重域に適度の1次伸び部を有し、荷重の増加に伴い序々に伸び剛性を強めて、破断する際の全伸度(破断までの伸び)が4%以上、好ましくは5%以上になるようにすることができる。
撚り込み率は、周知のように単位長さのスチールコードを作るのに必要な素線あるいはストランドの長さ(比率)で定義されるもので、素線あるいはストランドが略楕円形の断面形状のスパイラル状くせを有する状態で偏平螺旋状に形付けされて撚り合わされて断面略楕円形のコードとなるスチールコードにおいて、撚
り込み率が1.01未満だと、素線あるいはストランドの断面略楕円形のスパイラル状くせが伸び性に及ぼす効果が小さく、全伸度4%以上、好ましくは5%以上というハイエロンゲーションに求められる伸び性が得られない。また、撚り込み率が1.46を越えると、長径部波高が過大になり過ぎて撚線加工が難しいばかりではなく、伸度が大きく成り過ぎ、スチールコードとしての本来のタイヤの補強機能が損なわれる。
また、このスチールコードは、コード断面形状が略楕円形で、かつ素線あるいはストランドのスパイラル状くせの断面形状が略楕円形であることにより、コード全体の短径側寸法を小さくすることができ、短径側をタイヤのゴムの厚み方向に配置することでタイヤの厚みを薄くすることができる。また、それによりタイヤ径方向の剛性が小さくなり、走行中に突起物を踏んだときの凹凸を吸収する効果が増大する。
また、このスチールコードは、コード断面形状が略楕円形であることにより、コード長径側の少なくとも片端部において少なくとも隣り合う2本の素線が接触する頻度が増加して素線の自由な動きが制限され、そのため、スチールコードをゴムに埋設し加硫する際に発生するゴムの流れによる外圧で素線間の隙間が減少するのを防止でき、ゴムの侵入を確実にすることができ、それにより、耐疲労性が向上する。
また、このスチールコードは、コード断面形状を略楕円形とし、且つ素線のスパイラル状くせの断面形状を略楕円形にしたことで、撚線効果が十分に発揮され、耐疲労性が向上する。コードの伸び性すなわち破断するまでの全伸度は、各素線のスパイラル状くせの波高を大きくすることにより高めることができるが、単に素線のスパイラル状くせの波高を大きくしただけでは、それらを撚り合せたコードは、スパイラル状素線の集合体であって、撚線効果が十分に発揮されず、十分な耐疲労性を得られない。
また、このスチールコードは、特に、略楕円形のコード断面形状の短径に対する長径の比率が1.05〜1.70で、略楕円形のコード断面の長径方向において単層撚りにおける素線あるいは複層撚りにおけるストランド同士が接触せず、3/100mm以上の隙間を有するものとするのがよい。これにより、タイヤの成型時、両面をカバーする為のゴムを薄くすることができ、ゴム侵入性が高まってコードの疲労寿命が伸びるとともに、タイヤの成型時、両面をカバーする為のゴムを薄くすることができて経済性が向上する。短径に対する長径の比率(長径/短径)が1.05未満ではこの効果が得られない。また、長径/短径が1.7を越えると、余りにも長至が大きく成り過ぎ、撚線効果が少なくなり疲労寿命が低下する。
また、このスチールコードは、略楕円形のコード断面形状の短径を基準とした撚りピッチ係数(撚ピッチ/コード短径)が10以上であってよい。撚りピッチ係数が10以上でも、ハイエロンゲーションコードとしての上記特性を有するものとすることができる。
そして、本発明の自動車用タイヤは、上記構成のスチールコードを補強材としてゴム中に埋設したことを特徴とする。このタイヤは、自動車が走行路の突起物を踏んだ際にタイヤ外周部で凹凸を吸収し、自動車全体がバウンドすることのないようにする効果が大きい。また、スチールコードの耐疲労性が高く、タイヤ寿命が長い。
以上のとおり、本発明によれば、高い伸び性を有するとともに低荷重域に適度の一次伸び部を有し、且つ、ゴム侵入性に優れ、また、設備コストや生産エネルギーの消費量を抑制し生産性の低下を防止することのできるスチールコードおよび該スチールコードを使用した自動車用タイヤを提供することができる。
図1は本発明の実施の形態の1×5構造のスチールコードの断面図である。このスチールコードは、素線径が0.20〜0.45mmのn本(n=3〜6)の素線を各々偏平螺旋状に形付けし単層で素線間に隙間ができるように撚り合わせた1×nのオープン撚り構造で、コード断面形状が略楕円形を呈するとともに、すべての素線が撚り合わせのための形付けによるくせとは別に、撚り合わせのための形付けによるくせより波高ならびにピッチの小さい同じスパイラル状くせを有し、それら各素線のスパイラル状くせの断面形状が略楕円形のスチールコードである。
このスチールコードは、例えば自動車用タイヤの補強材としてカーカスとトレッドの間の補強層(ブレーカあるいはベルト)の外層部に埋め込まれる。
図1は、この実施の形態のスチールコードの一例として、素線径が0.20〜0.45mmの5本の素線1,2,3,4,5を撚り合わせた1×5構造のスチールコードを模式的に示している。
素線1,2,3,4,5のスパイラル状くせは、略楕円形である断面形状11,12,13,14,15の短径に対する長径の比率(長径/短径)を1.3〜4.0とし、撚り込み率は1.01〜1.46とする。
また、コードの略楕円形の断面形状10の短径に対する長径の比率(長径/短径)を1.05〜1.70とし、略楕円形のコード断面の長径方向において素線同士が接触せず、3/100mm以上の隙間を有するものとする。
このスチールコードは、オープン構造であり、且つ、各素線1,2,3,4,5がスパイラル状くせを有するため、伸びが大きく、ピッチを小さくしなくても、破断するまでの全伸度が4%以上、好ましくは5%以上という高い伸び性を得ることができる。そのため、生産性が低下せず、撚り線機の台数を増やす必要がなく、エネルギーの消費も増加しない。また、低荷重域で素線間の隙間が減少してもスパイラル状くせが残り、ゴム侵入性が確保される。
また、3次元波型であるスパイラル状くせを付けた素線1,2,3,4,5は、高い伸度を確保しつつ形状を安定させて撚りの乱れを少なくすることができ、撚りの乱れに起因する耐疲労性の低下を小さくすることができ、また、曲げ応力の集中による疲労性の低下も少ない。
そして、このスチールコードは、素線1,2,3,4,5の撚り込み率が1.01〜1.46であることにより、1次伸度がいたずらに大きく成り過ぎるのを抑えることができ、低荷重域に適度の1次伸び部を有し、荷重の増加に伴い序々に伸び剛性を強めて、破断する際の全伸度(破断までの伸び)が4%以上、好ましくは5%以上になるようにすることができる。
また、このスチールコードは、コードの断面形状10が略楕円形で、かつ素線のスパイラル状くせの断面形状11,12,13,14,15が略楕円形であることにより、コード全体の短径側寸法を小さくすることができ、短径側をタイヤのゴムの厚み方向に配置することでタイヤの厚みを薄くすることができる。また、それによりタイヤ径方向の剛性が小さくなり、走行中に突起物を踏んだときの凹凸を吸収する効果が増大する。
また、このスチールコードは、コードの断面形状10が略楕円形であることにより、コード長径側の少なくとも片端部において少なくとも隣り合う2本の素線が接触する頻度が増加して素線の自由な動きが制限され、そのため、スチールコードをゴムに埋設し加硫する際に発生するゴムの流れによる外圧で素線間の隙間が減少するのを防止でき、ゴムの侵入を確実にすることができ、それにより、耐疲労性が向上する。
また、このスチールコードは、コードの断面形状10を略楕円形とし、且つ素線のスパイラル状くせの断面形状11,12,13,14,15を略楕円形にしたことで、撚線効果が十分に発揮され、耐疲労性が向上する。
また、このスチールコードは、略楕円形の断面形状10の短径に対する長径の比率が1.05〜1.70で、該略楕円形のコード断面の長径方向において素線同士が接触せず、3/100mm以上の隙間を有することにより、タイヤの成型時、両面をカバーする為のゴムを薄くすることができて経済的になり、ゴム侵入性が高まってコードの疲労寿命が伸びるとともに、タイヤの成型時、両面をカバーする為のゴムを薄くすることができて経済性が向上する。
このスチールコードは、略楕円形のコード断面形状の短径を基準とした撚りピッチ係数(撚ピッチ/コード短径)が10以上であってよい。撚りピッチ係数が10以上でも、ハイエロンゲーションコードとしての上記特性を有するものとすることができる。
このスチールコードは、補強材として自動車用タイヤのカーカスとトレッドの間の補強層(ブレーカあるいはベルト)の外層部に埋め込まれ、自動車が走行路の突起物を踏んだ際にタイヤ外周部で凹凸を吸収し、自動車全体がバウンドすることのないよう機能する。また、スチールコードの耐疲労性が高く、タイヤ寿命を向上させる。
なお、上記実施の形態では、1×5構造のスチールコードの例を説明したが、この発明は、n本(n=3〜6)の素線を撚り合わせてなる他の単層撚りのスチールコードにも適用することができる。また、本発明は、4×2構造等、各々がn本(n=2〜7)の素線からなるm本(m=3〜7)のストランドを撚り合わせてなる複層撚りのスチールコードにも適用することもできる。
複層撚りの場合、すべてのストランドが撚り合わせのための形付けによるくせとは別に、撚り合わせのための形付けによるくせより波高ならびにピッチの小さい同じスパイラル状くせを有し、それら各ストランドのスパイラル状くせの断面形状が略楕円形であるようスチールコードを構成する。そして、そのストランドのスパイラル状くせは、略楕円形である断面形状の短径に対する長径の比率(長径/短径)を1.3〜4.0とし、撚り込み率を1.01〜1.46とする。また、コードの略楕円形の断面形状の短径に対する長径の比率(長径/短径)を1.05〜1.70とし、略楕円形のコード断面の長径方向においてストランド同士が接触せず、3/100mm以上の隙間を有するものとする。
また、本発明のスチールコードは、自動車用タイヤ以外のベルトその他のゴム製品の埋設補強材としても適用することができる。
表1は、同一素材の素線を使用して、本発明の実施例のスチールコード2種(「実施例1」、「実施例2」)と、素線のスパイラル状くせの断面形状を円形とした比較例1種(「比較例」)と、従来例2種(「従来例1」、「従来例2」)の各サンプルを作成し、ゴム被覆後加硫をして、伸び性、耐疲労性、ゴム侵入性、生産性および加工エネルギの消費の各々の特性を比較テストした結果を示している。
Figure 2007092261
「実施例1」は、0.30mm径の素線を使用した本発明の1×5構造の単層撚りのスチールコードで、素線のスパイラル状くせの波高(長径/単径)が1.04mm/0.93mm、撚りピッチが15mm、コード径(長径/短径)が1.05mm/0.94mm、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が15.1である。
「実施例2」は、0.20mm径の素線を使用した本発明の4×4構造の複層撚りのスチールコードで、ストランドのスパイラル状くせの波高(長径/単径)が1.81mm/1.09mm、撚りピッチ(ストランド撚りピッチ/コード撚りピッチ)が8mm/15mm、コード径(長径/短径)が1.84mm/1.11mm、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が10.1である。
「比較例」は、0.30mm径の素線を使用した1×5構造の単層撚りのスチールコードで、素線のスパイラル状くせの断面形状を円形で波高が0.99mm、撚りピッチが15mm、コード径(長径/短径)が1.00mm/0.99mm、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が15.1である。
「従来例1」は、0.30mm径の素線を使用した、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が極めて小さい(撚ピッチ/コード径=6.4)1×5構造の従来の単層撚りのハイエロンゲーションコード(特許文献1参照)で、撚りピッチが5.5mm、コード径が0.85mm、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が6.4である。
「従来例2」は、0.20mm径の素線を使用した、4×4の複層撚りのスチールコードで、撚りピッチ(ストランド撚りピッチ/コード撚りピッチ)が3.5mm/7mm、コード径が1.46mm、撚ピッチ係数(撚ピッチ/コード径)が4.8である。
表1において、
「1次伸度」は、引張試験を行ったとき、素線及びストランド同士の隙間が消えるまでの伸度であり、「2次伸度」は、素線及びストランド同士の隙間が消えた後の伸度域(直線状態)の伸度であり、「ゴムカバレッジ」は、50Nの引張荷重をかけた状態でコードをゴム中に埋め込み、加硫した後コードを取り出し、そのコードを分解して一定長さを観察し、観察した長さに対する、ゴム材と接触した形跡のある長さの比をパーセント表示したものであり、「回転曲げ寿命指数」は、ハンター式疲労試験において、コードを略U字形状に曲げた状態で連結回転させ(この時、コードの最大曲率点に150kg/mm2 の応力がかかるように曲げの形状を設定)、最大曲率点付近が破断するまでの総回転数で示したものであり、「一台当単位時間の生産量指数」は、単位時間当たりの生産効率を「従来例1」を100として指数表示したものであり「撚線加工のエネルギ消費指数」は、単位生産量当たりに消費するエネルギーの比率を「従来例1」を100として指数表示したものである。
この比較テストの結果(表1)から、実施例1および実施例2のスチールコードは、伸び特性(一次伸度、二次伸度)、耐疲労性(回転曲げ寿命指数)、ゴム侵入性(ゴムカバレッジ)を損なうことなく、生産性(撚機一台当単位時間の生産量指数)を高め、また、加工エネルギの消費(撚線加工のエネルギ消費指数)を低減できることがわかる。
本発明の実施の形態の1×5構造のスチールコードの断面図である。 本発明の実施の形態の1×5構造のスチールコードのコード断面形状の疲労寿命への影響を、素線のスパイラル状くせの断面形状が円形の比較例と対比して示すグラフである。
符号の説明
1,2,3,4,5 素線
10 コードの断面形状
11,12,13,14,15 素線のスパイラル状くせの断面形状

Claims (4)

  1. n本(n=3〜6)の素線を撚り合わせてなる単層撚りあるいは各々がn本(n=2〜7)の素線からなるm本(m=3〜7)のストランドを撚り合わせてなる複層撚りで、前記単層撚りにおける素線あるいは前記複層撚りにおけるストランドが各々偏平螺旋状に形付けされて、それら素線間あるいはストランド間に隙間ができコード断面形状が略楕円形を呈するように撚り合わされてなるゴム製品補強用のスチールコードであって、前記単層撚りにおける素線あるいは前記複層撚りにおけるストランドのすべてが撚り合わせのための形付けによるくせとは別に該撚り合わせのための形付けによるくせより波高ならびにピッチの小さいスパイラル状くせを有し、それら各素線あるいは各ストランドのスパイラル状くせの断面形状が略楕円形で、前記単層撚りにおける素線あるいは前記複層撚りにおけるストランドの撚り込み率が1.01〜1.46であることを特徴とするスチールコード。
  2. 前記略楕円形のコード断面形状の短径に対する長径の比率が1.05〜1.70で、前記略楕円形のコード断面の長径方向において前記単層撚りにおける素線あるいは前記複層撚りにおけるストランド同士が接触せず、3/100mm以上の隙間を有することを特徴とする請求項1記載のスチールコード。
  3. 前記略楕円形のコード断面形状の短径を基準とした撚りピッチ係数が10以上である請求項1または2記載のスチールコード。
  4. 請求項1、2または3記載のスチールコードを補強材としてゴム中に埋設したことを特徴とする自動車用タイヤ。
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