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JP2007091716A - 水中薬剤徐放性微粒子及びその製造方法 - Google Patents

水中薬剤徐放性微粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薬剤が水中に徐々に放出される徐放性能を備え、かつ皮膜強度の優れた水中徐放性微粒子を提供する。
【解決手段】徐放を目的とする薬剤がポリビニルアルコール系ポリマーで被覆されていることを特徴とする水中薬剤徐放性微粒子。
【選択図】なし

Description

本発明は、徐放を目的とする薬剤あるいは該薬剤を内包した多孔質体をポリビニルアルコール(以下、PVAと称す)系ポリマーで被覆してなる水中薬剤徐放性微粒子およびその製造方法に関する。
各種薬剤を内包した多孔質微粒子は、マイクロカプセルの一種として従来より様々な用途で検討されてきたが、単に内包するだけでは水中等では速やかに拡散され、持続性に欠けるものであった。そのため、薬剤が基材から水中に徐々に放出される徐放機能の付与が、医薬・農薬等の分野で盛んに開発が行われている。その徐放機構として、例えばロウの様に水に不溶の基剤中に薬物を分散させたり、塩類や水不溶性ポリマーの被覆で徐放機能をもたせる等の開発が行われている。
その中で色素、香料、農薬、医薬等を多孔性微粒子に担持させた被担持物質を透過性物質で被覆することで徐放性を持たせた徐放性微粒子及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1のように実質的に水不溶性の透過性物質で被担持物質を被覆する場合には、水中への徐放制御が困難である。
またゼラチンのように水溶性天然高分子を採用しているケースもあるが、水溶性天然高分子は一般的に皮膜強度が非常に弱く、使用条件によっては適用が困難となるばかりか、天然物であるが故に生分解しやすく、海中等自然界に暴露する場合は徐放に寄与する寿命が著しく短くなる。さらにはその被覆方法も生成微粒子の凝集抑制等が考慮されていないものであった。
特開2003−286196号公報
本発明の目的は、薬剤が水中に徐々に放出される徐放性能を備え、かつ皮膜強度の優れた水中徐放性微粒子を提供することにある。
本発明者等は上記課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、徐放を目的とする薬剤あるいは該薬剤を内包した多孔質体がPVA系ポリマーで被覆された微粒子とすることにより、水中への徐放制御に優れ、かつ皮膜強度が優れた水中薬剤徐放性微粒子が得られることを見出した。
すなわち本発明は、徐放を目的とする薬剤がPVA系ポリマーで被覆されていることを特徴とする水中薬剤徐放性微粒子であり、好ましくは徐放を目的とする薬剤が多孔質体で内包されてなり、さらに該多孔質体がPVA系ポリマーで被覆されていることを特徴とする上記の水中薬剤徐放性微粒子であり、より好ましくはPVA系ポリマーが微粒子当り1〜95質量%被覆されていることを特徴とする上記の水中薬剤徐放性微粒子である。
そして本発明は、PVA系ポリマーを溶解した溶液中で徐放を目的とする薬剤をエマルジョン化した後、溶媒を除去することでエマルジョン化された前記薬剤をPVA系ポリマーで被覆する上記の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法であるか、あるいはPVA系ポリマーを溶解した溶液に徐放を目的とする薬剤を内包した多孔質体を浸漬後、溶媒を除去することで前記多孔質体をポリビニルアルコール系ポリマーで被覆する上記の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法であり、より好ましくはPVA系ポリマーを熱処理することを特徴とする上記の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法であり、さらに好ましくはスプレードライ方式により溶媒を除去することを特徴とする上記の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法である。
本発明の微粒子はあらゆる用途に使用でき、農林業、水産、医療、その他徐放目的の分野にて好適に使用することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の水中薬剤徐放性微粒子において、徐放を目的とする薬剤を被覆する被覆材は、制御の容易さの点から水溶性であることが好ましい。薬剤を徐放させるためには、水溶性の被覆材が徐々に溶解することで溶出を制御することが可能となる。水溶性高分子としては、PVA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、水溶性アルキッド、ポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン等が挙げられるが、その中でもPVA系ポリマーであることが必要である。
PVA系ポリマーは他の水溶性高分子に比べて皮膜強度に優れるという特性を有しており、水溶性高分子の中で最適である。PVA系ポリマーは分子中に有する水酸基により強固な水素結合を形成するだけでなく、無機多孔性微粒子や極性有機多孔性微粒子との親和性に富んでおり、これらに対する皮膜としても優れた特性を有する。また、PVA被覆部位が水に溶解することで内包薬剤が徐放するだけでなく、被覆PVAが膨潤することで分子ふるいレベルで薬剤徐放制御が可能となる。
また生分解性においてもPVA系ポリマーはPseudomonas属等の微生物でしか分解されない傾向にあるので、後述するが水溶性天然高分子に比べて徐放材として好適である。
また、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン等といったアニオン、カチオン性高分子は、海水中ではその水溶性が低下する傾向となり好ましくないが、PVA系ポリマーは基本的にノニオンであるから、海水中でもその水溶性は大きく変動することなく、徐放性も確保されるという特長を有する。
一方、例えば塩のような低分子の場合は溶解制御が非常に困難であり、また被覆しにくい。
また、水溶性の天然高分子化合物では一般的に結晶性が弱いため皮膜強度が弱く、使用条件によっては皮膜が容易に崩壊し、徐放寿命を短くする恐れがあるし、天然物であるが故に生分解しやすく、海中等自然界に暴露する場合は徐放に寄与する寿命が著しく短くなる。さらには天然高分子は品種、産地が同一であっても、気温、天候、採取時期によって分子量が若干変化し、またその物性の変化もみられる可能性があり好ましくない。
さらに、水不溶性の被覆材では徐放が非常に困難となる。透過性物質として、透析等の中空濾過膜に用いられているような相分離による連続多孔の導入も考えられるが、担持薬物に応じた孔径制御の必要性があり、非常に汎用性に劣るものとなる。
本発明に用いられるPVAは特に限定されないが、ビニルアルコールユニットを70モル%以上有するポリマーが好適に使用される。もちろん所望によりエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などの構成単位を有していても構わない。しかしながら、皮膜を構成するポリマーの結晶性が低いほど耐水性が低く、「徐放」となるには多量のPVAが必要となることから、結晶化を進行させるためにビニルアルコールユニットが95モル%以上のポリマーが好適に使用される。
さらに本発明の水中薬剤徐放性微粒子は、徐放を目的とする薬剤を内包した多孔質体の状態とし、さらに該多孔質体がPVA系ポリマーで被覆されていることが好ましい。徐放を目的とする薬剤の乳化・微粒子化は一般的に困難で、保護コロイド効果のあるPVA系ポリマーで乳化できるようになるが、薬剤によっては安定な乳化が困難で微粒子化できない場合がある。そのような場合には徐放を目的とする薬剤を予め後述する多孔質微粒子に担持させ、該薬剤を内包した多孔質体とした後、PVA系ポリマーで該多孔質体表面を被覆すればよい。
また、本発明においてはPVA系ポリマーが微粒子当り1〜95質量%被覆されていることが好ましい。1質量%未満の場合は、被覆量が少ないだけでなく被覆斑も多く、薬剤放出量は未被覆と殆ど変わらず、「徐放」にはなり得ず不適である。一方、被覆率が95質量%より多い場合には、徐放を目的とする薬剤の、微粒子当りの含有量が少なく、そのため薬剤放出量が少ないため不適である。要求される徐放性能に応じ、該範囲内で被覆率を制御すればよいが、より好ましくは5〜90質量%、さらには10〜80質量%であることが徐放寿命の点で好ましい。
本発明における徐放を目的とする薬剤とは特に限定されず、農薬、医薬、香料、色素、酸素等、微粒子に担持できる薬剤ならば何ら差し支えない。
また、該薬剤を内包する多孔質体に用いる多孔質微粒子も特に限定されず、二酸化ケイ素やケイ酸カルシウム、ゼオライト等の無機多孔質微粒子でもよいし、ポリウレタン、セルロース、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の有機多孔質微粒子でもよい。
薬剤を内包させた多孔質体にPVA系ポリマーを被覆して水中薬剤徐放性微粒子を得るためには、多孔質体の平均粒径は50μm以下であることが好ましい。
次に本発明の水中徐放性微粒子の製造方法について説明する。
本発明の水中徐放性微粒子を得るためには、PVA系ポリマーを溶解した溶液に徐放を目的とする薬剤を分散させた後、加熱するなどして溶媒を除去して前記薬剤をPVA系ポリマーで被覆するか、あるいはPVA系ポリマーを溶解した溶液に前記薬剤を内包した多孔質体を分散させた後、加熱するなどして溶媒を除去して前記薬剤を内包した多孔質体をPVA系ポリマーで被覆することで得られる。
PVA系ポリマーの溶解方法、溶媒の除去方法は特に限定されるものではなく、用途に応じ選定することが可能であるが、徐放を目的とする薬剤をPVA系ポリマーで被覆する方法としては、1)徐放を目的とする薬剤そのものをPVA系ポリマーで被覆した微粒子、2)前記薬剤を内包した多孔質体をPVA系ポリマーで被覆した微粒子、のケースでそれぞれ異なる。
前者1)のケースについては、PVA系ポリマーで構成される微粒子内に徐放を目的とする薬剤が分散、すなわち実質的にPVA系ポリマーが前記薬剤を被覆している状態であればよく、例えば前記薬剤が水溶性である場合はPVA系ポリマー溶液中に前記薬剤を溶解させた後、溶液中の水を乾燥することで、PVA系ポリマーで被覆された微粒子を得ればよい。
また前記薬剤が非水溶性である場合は、前記薬剤を融点以上に加熱して溶融させた状態でPVA系ポリマー溶液中で乳化分散させた後、溶液中の溶媒を乾燥・除去することで、PVA系ポリマーで被覆された微粒子を得ればよいし、単純に融点以下の温度で薬剤そのものをPVA系ポリマー溶液中で分散させた後に同様の処理をしてPVA系ポリマーで被覆された微粒子を得てもよい。
後者2)のケースについては、前記した多孔質体の孔内に徐放を目的とする薬剤を内包させたものを、PVA系ポリマーを溶解した溶液に添加した後、溶媒を除去することで得られる。多孔質体へ前記薬剤を内包させる方法としては、前記薬剤を融点以上に加熱した溶融液中へ多孔質体を浸漬する方法でもよいし、前記薬剤が溶解し得る溶媒に溶解させた溶液中へ多孔質体を浸漬する方法でもよい。
また、前記多孔質体の浸漬分散濃度については、多孔質体のPVA系ポリマー水溶液中での分散安定性により適宜適正量を調整すればよいが、多孔質体の分散濃度が低すぎると乾燥にかかるエネルギーが多く非効率であり、また多すぎると分散が不安定となり、二次凝集や沈降、チキソトロピック性が発現するなどの問題が生じる。好ましくは1〜30質量%、さらには5〜20質量%が好適である。
また、徐放速度を制御する目的でPVA系ポリマーを熱処理することも好適である。一般的に結晶性水溶性合成高分子であるPVA系ポリマーを熱処理することにより結晶化が促進され、皮膜の水溶速度や膨潤度に変化が生じることで、徐放速度を制御することができる。徐放速度は熱処理温度および時間により制御できる。
さらに、本発明の水中薬剤徐放性微粒子を得るためには、PVA系ポリマーを溶解した溶液に徐放を目的とする薬剤を分散、あるいは該薬剤を内包した多孔質体を分散させた後、加熱するなどして溶媒を除去することで得られるが、溶媒の除去にはスプレードライ方式を採用することが好ましい。単純に乾燥機に投入する方法では被覆樹脂が微粒子同士のバインダーとして寄与し、結果として微粒子同士が大きく凝集したものしか得られない場合が多い。
スプレードライ方式では噴霧ノズルからミスト状に噴霧された微粒子が、サイクロン空気滞留中に乾燥が完結するため、凝集のない非常に良好な微粒子を得ることができる。また、分散液のまま乾燥できるので、pick−up変動もみられない。またスプレードライ方式を実施するにあたっては、溶液、浸漬等他の条件について特に限定されないが、噴霧ミスト状のまま装置の壁面に付着すると壁面にスケールが溜まり、収率の面で好ましくないため、ミストが壁面に付着しない程度の条件にする必要がある。乾燥温度は溶媒の沸点以上であることが必要で、水の場合は100℃以上、好ましくは120℃以上で乾燥できる。また壁面付着は噴霧ノズルから壁面までの距離や噴霧量にもよるため、装置に応じて適宜調整する必要がある。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。尚、本発明の実施例において、PVA被覆率、徐放剤濃度の測定は以下の方法によって行ったものとする。
[PVA被覆率 %]
PVAのヨウ素呈色反応を利用して、以下の方法にて算出した。
1)PVAで被覆した微粒子1gを精秤し[A(g)]、水100mlに投入し、95℃で60分攪拌して被覆PVAを溶解する。その後濾過し、濾液を10ml共栓付試験管に採取し、PVA検出液10mlを加えて混合し、10分後AKA光電比色計で波長670nmにおける吸光度を測定する。
2)別に、既知濃度のPVA水溶液で同様の吸光度を測定し、3点以上で検量線を作成する。
3)検量線より、被覆PVA溶解液中のPVA量[B(g)]を算出する。
4)次式により、微粒子へのPVA被覆率を算出する。
PVA被覆率(%)=B(g)×[100(ml)/10(ml)]/A(g)×100
なお、PVA検出液はヨウ素107g/l、ホウ酸21g/lを含む水溶液である
[徐放剤濃度 %]
試料溶液を0.5μmのメンブランフィルターで濾過し、5μLを高速液体クロマトグラフに注入、測定した。別途、徐放剤濃度が既知の溶液を測定して検量線を作成し、その検量線より試料溶液中の徐放剤濃度を算出した。尚、測定条件は下記の通りである。
測定機器; 東ソー(株)製高速液体クロマトグラフ(HPLC)
溶離液; アセトニトリル/蒸留水=8/2(体積比)
カラムオーブン温度; 45℃
流量; 0.8mL/min
検出UV波長; 285nm
[実施例1]
(1)PVA(株式会社クラレ製「PVA−117」の2質量%水溶液100質量部に対し、徐放を目的とする薬剤として、ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをPVAに対し50質量%添加し、50℃にてジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを溶融させた状態で、1000rpmで3分以上攪拌することで、該薬剤が均一に分散した微粒子分散液を作製した。該分散液をスプレードライ装置(東京理化株式会社製、卓上型スプレードライヤー「SD−1型」)にて乾燥温度120℃でスプレードライを実施し、PVA被覆率65.8質量%の微粒子を作製した。この微粒子は前記薬剤とPVAからのみ構成されており、前記薬剤の含有量は微粒子当り34.2質量%であった。
(2)得られた微粒子を海水(岡山県牛窓沖より採取)中に0.01g/lの濃度で懸濁させ、振とう機を用いて25℃、20rpm/分で所定時間振とうした。所定時間毎に浸漬海水をサンプリングし、該海水中の徐放剤濃度を液体クロマトグラフィーにて測定し、微粒子中に存在する徐放剤濃度を求めた。徐放性能を表1に示す。
[実施例2]
徐放を目的とする薬剤であるジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを、40℃にてメタノールに50質量%溶解させた溶液を作製し、この40℃溶液100質量部に対し多孔質シリカ微粒子(東海化学工業所製「マイクロイドML−384」)を10質量部添加し、30分間浸漬することで前記多孔質シリカ微粒子の孔内部にジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを注入させた後、濾紙上で濾過し、20℃のメタノールで粒子表面を洗浄し、30℃で一晩放置することで、ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを30.3質量%内包した多孔質体を作製した。この多孔質体20質量部とPVA(株式会社クラレ製「PVA−117」)の10質量%水溶液100質量部とを混合し、均一な微粒子分散液を作製する以外は、実施例1と同様にスプレードライを実施し、PVA被覆率33.8%の微粒子を作製した。この微粒子は前記薬剤および該薬剤を内包する多孔質体およびPVAから構成されており、前記薬剤の含有量は微粒子当り20.2質量%であった。得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[実施例3]
PVAの10質量%水溶液を20質量部とする以外は実施例2と同様に微粒子を作製したところ、PVA被覆率は7.0%であり、薬剤含有量は微粒子当り28.2質量%であった。得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[実施例4]
実施例2において、被覆PVAに対し200℃で5分間熱処理を実施した。PVA被覆率は実施例と同じく33.8%であり、薬剤含有量は微粒子当り20.2質量%であった。得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[比較例1]
PVAの1質量%水溶液を6質量部とする以外は実施例2と同様に微粒子を作製した。PVA被覆率は0.3%であり、薬剤含有量は微粒子当り29.8質量%であった。得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[比較例2]
被覆高分子材料として、固形分濃度を10質量%水溶液に調製したエチレン酢ビ共重合エマルジョン(株式会社クラレ製「パンフレックスOM−4000」)100質量部を選定する以外は実施例1と同様の製法にてエチレン酢ビ共重合体被覆微粒子を作製した。被覆による重量増加分より算出したエチレン酢ビ共重合体被覆率は38.3%であり、薬剤含有量は微粒子当り18.7質量%であった。この得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[比較例3]
被覆高分子材料として、ゼラチン(和光純薬工業株式会社製)の10質量%水溶液100質量部とする以外は実施例1と同様の製造方法にてゼラチン被覆微粒子を作製した。被覆による重量増加分より算出したゼラチン被覆率は35.5%であり、薬剤含有量は微粒子当り19.5質量%であった。この得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[比較例4]
被覆高分子材料としてポリアクリル酸(日本純薬株式会社製「AC−10L」、重量平均分子量25,000)の10質量%水溶液100質量部とする以外は、実施例2と同様の製造方法にてポリアクリル酸被覆微粒子を作製した。被覆による重量増加分より算出したポリアクリル酸被覆率は32.4%であり、薬剤含有量は微粒子当り20.5質量%であった。この得られた微粒子の徐放性能を表1に示す。
[参考例1]
PVA被覆処理を施していない、実施例2と同様に水中徐放性微粒子を作製し、徐放性能を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007091716
表1に示すように、PVA系ポリマーを使用した実施例1〜4では、徐放剤の溶出抑制が確認された。また、被覆率の調整や熱処理により溶出速度を変化させることが可能であることも確認された。
一方で、被覆率が1質量%未満である比較例1では、PVAを被覆しない参考例1と全く同じ結果となった。また、水溶性でない高分子を被覆した比較例2では全く溶出せず、徐放性制御は困難であった。
さらに、天然水溶性高分子であるゼラチンを被覆した比較例3では、240時間浸漬後では薬剤の含有量が著しく低下していた。これは、ゼラチンの皮膜強度が弱く、振とうにより経時的に微粒子の破壊が起こったこともあるが、一方でゼラチンが海水中微生物により生分解されたこともあり、徐放効果の寿命としては短いものであった。
また水溶性合成高分子であるポリアクリル酸を被覆した比較例4では、ポリマーがアニオンであるが故に海水中での溶解速度は淡水に比べ低下するため、長寿命の傾向であったが、皮膜強度自体が弱いため、振とうにより経時的に微粒子の破壊が起こり、240時間後には微粒子の内部にあるシリカ多孔質体の脱落物が多く見られた。
本発明の微粒子は、農林業、水産、医療、その他徐放目的のあらゆる用途分野にて好適に使用することができる。また使用形態も特に限定されず、そのままの形態で散布したり、繊維や布帛の表面に固着したり、塗料等に添加し使用する等、目的に応じた形態で使用可能である。

Claims (7)

  1. 徐放を目的とする薬剤がポリビニルアルコール系ポリマーで被覆されていることを特徴とする水中薬剤徐放性微粒子。
  2. 徐放を目的とする薬剤が多孔質体で内包されてなり、さらに該多孔質体がポリビニルアルコール系ポリマーで被覆されていることを特徴とする請求項1記載の水中薬剤徐放性微粒子。
  3. ポリビニルアルコール系ポリマーが微粒子当り1〜95質量%被覆されていることを特徴とする請求項1または2記載の水中薬剤徐放性微粒子。
  4. ポリビニルアルコール系ポリマーを溶解した溶液中で徐放を目的とする薬剤をエマルジョン化した後、溶媒を除去することでエマルジョン化された前記薬剤をポリビニルアルコール系ポリマーで被覆する請求項1〜3のいずれか1項記載の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法。
  5. ポリビニルアルコール系ポリマーを溶解した溶液に徐放を目的とする薬剤を内包した多孔質体を浸漬後、溶媒を除去することで前記多孔質体をポリビニルアルコール系ポリマーで被覆する請求項1〜3のいずれか1項記載の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法。
  6. ポリビニルアルコール系ポリマーを熱処理することを特徴とする請求項4または5記載の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法。
  7. スプレードライ方式により溶媒を除去することを特徴とする請求項4または5記載の水中薬剤徐放性微粒子の製造方法。
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