JP2007084368A - セラミックス摺動部材とその製造方法およびこれを用いたメカニカルシールリング用部材並びにメカニカルシールリング - Google Patents
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Abstract
【課題】 シールリング等の摺動部材としての強度を確保し、且つ摺動特性に優れ、クラックが発生することのないセラミックス摺動部材を提供する。
【解決手段】 セラミックス摺動部材1が、緻密質のセラミックスからなる基材1bの表面に、潤滑液が供給される摺動面3を備えたセラミックスからなる多孔質層1aが形成されており、この多孔質層1aの大多数の気孔は、摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の気孔は摺動面3に開気孔4aとなっていることを特徴とする。開気孔4a内に貯溜していた潤滑液15を十分に摺動面3に供給するように作用して、摩擦係数を低くすることにより高い摺動特性を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 セラミックス摺動部材1が、緻密質のセラミックスからなる基材1bの表面に、潤滑液が供給される摺動面3を備えたセラミックスからなる多孔質層1aが形成されており、この多孔質層1aの大多数の気孔は、摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の気孔は摺動面3に開気孔4aとなっていることを特徴とする。開気孔4a内に貯溜していた潤滑液15を十分に摺動面3に供給するように作用して、摩擦係数を低くすることにより高い摺動特性を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は自動車冷却水ポンプ、冷凍機等の軸封装置として用いられるメカニカルシールリングを始め、軸受またはフォーセットバルブの構成部品である弁体等の摺動部材に用いられるセラミックス摺動部材とその製造方法に関するものである。
セラミックス摺動部材はその耐摩耗性を利用して、例えば流体機器の軸封装置のメカニカルシールに用いられるメカニカルシールリングに応用されている。軸封装置に用いられるメカニカルシールは、流体の完全密封を目的として、各種機械の回転部に用いられるシール方法の一つであり、メカニカルシールリングは各種機械の回転部に摺接して、摺動面の摩耗に従い軸方向に動くことができる回転リングと動かない固定リングとからなり、相対的に回転する軸にほぼ垂直な端面において、流体の漏れを制限する働きをするものである。
図4は従来のメカニカルシールリングを用いた軸封装置の一例を示す部分断面図である。この軸封装置は、メカニカルシールとして環状体である固定リング22aの摺動面21a上で、凸状部を有する環状体である回転リング22bの摺動面21bを摺動させてシール作用を及ぼすメカニカルシールリング22を用いた装置である。メカニカルシールリング22は、駆動機構(不図示)による駆動力を伝達させる回転軸23と、この回転軸23を回転可動に支承するケーシング24との間に取り付けられ、固定リング22aと回転リング22bとの互いの摺動面21a,21bが回転軸23に対して垂直面を形成するように設置されている。
そして、回転リング22bはパッキング26によって緩衝的に支持され、このパッキング26の回転リング22bと相対する側には回転軸23を巻回するようにコイルスプリング29が設置され、このコイルスプリング29の弾発力(予め設定されたコイルスプリングの力)により、パッキング26を押圧することによって、回転リング22bの摺動面21bが固定リング22aの摺動面21aに押圧されて摺動するようにしてある。
また、コイルスプリング29がパッキング26を押圧する側と相対する側には、カラー28がセットスクリュー27により回転軸23に固定され、コイルスプリング29のストッパーとして設置されている。一方、回転リング22bの摺動面21bと摺動面21aを介して接する固定リング22aは緩衝ゴム25によって支持されており、緩衝ゴム25はこの軸封装置の外枠となるケーシング24の内側に取り付けられて固定リング22aを支持するようにしてある。
そして、回転軸23が回転するとカラー28がともに回転し、コイルスプリング29の弾発力によって押圧されるパッキング26と、このパッキング26によって支持されている回転リング22bの摺動面21bと、が押圧されながら回転することによって、固定リング22aの摺動面21aとの間でシール作用が働くようにしてある。このような軸封装置を流体機器(不図示)に取り付ける場合には、メカニカルシールリング22に対してカラー28の側の延長上に、流体機器が配置されるように取り付けて用いられる。
このとき、流体機器に用いられている流体は、軸封装置のケーシング24で囲まれた内部にまで侵入するが、パッキング26と回転軸23との間に設けられたOリング30によるシール作用と、メカニカルシールリング22の摺動面21a,21bのシール作用によって、流体が軸封装置より外部に漏洩することを防止している。なお、このとき軸封装置によって密封された流体を密封流体31と称し、その一部がメカニカルシールリング22の摺動面21a,21bの間に入り込み潤滑液として作用するので、摩擦係数を低くし優れた摺動特性を得ることができる。
そして、このメカニカルシールリング22に用いられるメカニカルシールリング用部材としては、カーボン材、超硬合金、炭化けい素質焼結体、アルミナ質焼結体が主として用いられ、近年では高硬度で高耐食性を有し、摺動時の摩擦係数が小さく平滑性も優れた多孔質炭化けい素質焼結体を用いるケースが増加している。例えば、特許文献1では、炭化けい素粉末と、成形助剤と、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性のポリスチレン、またはスチレン−アクリル共重合体から成る樹脂ビーズとを混合して粉末原料を得る工程と、この粉末原料を成形することで成形体を得る工程と、この成形体を脱脂、加熱焼結させる工程とを具備した製造方法により得られる摺動部材用多孔質炭化けい素質焼結体が提案されている。また、以下の特許文献に示されるように、内部と表面で気孔率の異なるセラミックス焼結体が提案され、このようなセラミックス焼結体をメカニカルシールリング用部材に適用することが検討されるようになりつつある。
また、特許文献2では、可燃性粉粒体、セラミックス原料、粘結材および混練用液体を含有する混練物を成形して成形体とし、この成形体の長さ方向または厚さ方向に沿って異なる温度で焼成するか、前記方向のいずれかに沿って一方を非酸化性雰囲気中、他方を酸化性雰囲気中で焼成することにより、気孔率および平均気孔径が異なる少なくとも2つの気孔性状部分を備えた多孔質セラミックスが提案されている。
また、特許文献3では、セラミックス原料と焼結助剤との混合物を成形し、得られた成形体を焼結させる前に減圧下焼結温度以下の温度に加熱して、成形体の表層部にある焼結助剤の一部を気化させて除いた後、常圧下で加熱して焼結を進めることにより、表層部の密度が基材の密度よりも低く且つ表層部−基材間の密度変化を連続的にしたセラミックス焼結体が提案されている。
また、特許文献4では、セラミックス原料粉末と焼失性気孔形成剤を含む混合粉末層(連通多孔質層)と、セラミックス原料粉末と同一または異なるセラミックス原料粉末からなるセラミックス原料粉末層(緻密層)とを、焼失性繊維材を介して積層し、この焼失性繊維材と焼失性気孔形成剤とを接触させた状態で成形し、得られた成形体中の焼失性気孔形成剤および焼失性繊維材を焼失させ、更にセラミックス原料粉末を焼結させることで、連通多孔質層と緻密層を備えたセラミックス焼結体が提案されている。
また、特許文献5では、緻密質セラミックスと多孔質セラミックスとのろう剤またはガラス接着剤による接合を排除するために、微粒で構成された緻密質セラミックス、粗粒で構成された多孔質セラミックスを一体的に加圧焼結したセラミックス焼結体が提案され、フィルターおよび半導体製造装置用部品への適用事例が示されている。
また、特許文献6では、超音波振動を用いた成形技術の利用により表面部における気孔率と、内部における気孔率とを異ならせることにより、耐熱性、断熱性および耐熱衝撃性を向上させたセラミックス焼結体が提案され、焼結用部品および焼結用タイル部品への適用事例が示されている。
また、特許文献7では、真球状の架橋性ポリスチレンビーズや乳化重合させたポリスチレンビーズ等、圧縮強度の高い気孔形成剤により気孔が形成された多孔質セラミックスからなる第1域と、緻密質セラミックスからなる第2域とを含むセラミックス焼結体やそれを用いたメカニカルシールリングが提案されている。
特開2005−179100号公報
特許第2571147号公報
特許第2732256号公報
特開2004−352597号公報
特開2002−338334号公報
特開平6−183860号公報
特開平5−148058号公報
しかしながら、特許文献1で提案された多孔質炭化けい素質焼結体をシールリング用部材に適用した場合、摺動開始時に瞬間的に高温の摩擦熱が発生しやすいような過酷な使用状況下では、なお強度が低いため、その内部からクラックが発生するという問題を避けることができなかった。
また、特許文献2で提案された多孔質セラミックスは、成形体の長さ方向または厚さ方向に沿って異なる温度で焼成するか、上記方向のいずれかに沿って一方を非酸化性雰囲気中、他方を酸化性雰囲気中で焼成して焼結しているため、焼成工程における制御が煩雑であった。その上、焼結体全体が多孔質体となるため、触媒担体、バイオリアクター、濾過材等の気孔率が50%以上求められる用途には好適であるものの、摺動部材に対しては気孔率が高過ぎるために、強度が低く、適用することができなかった。
また、特許文献3で提案されたセラミックス焼結体は、他のセラミックス焼結体との接合を容易にしたり、耐熱衝撃性を向上させたりするものの、成形体表層部にある焼結助剤の一部を気化させて除くことで、表層部を低密度にしているため、摺動部材として用いると、表層部の強度が低く、脱粒が多くなるという問題があった。
また、特許文献4で提案されたセラミックス焼結体は、連通多孔質層、緻密層間の界面に焼失性繊維材を介在させているために、界面に応力が集中し、このセラミックス焼結体を摺動部材として用いると、連通多孔質層が剥離するという問題を避けられなかった。
また、特許文献5で提案されたセラミックス焼結体は、多孔質セラミックスと緻密質セラミックスとが十分高い接合強度をもって一体化されているものの、摺動部材への適用を考慮したセラミックス焼結体ではないために、摺動部材としての最適な気孔形状およびその制御方法が不明であるという問題があった。
また、特許文献6で提案されたセラミックス焼結体は、耐熱性、断熱性および耐熱衝撃性を兼ね備えたものではあるものの、特許文献5で提案されたセラミックス焼結体と同様、摺動部材への適用を考慮したセラミックス焼結体ではないために、摺動部材としての最適な気孔形状およびその制御方法が不明であるという問題があった。
また、特許文献7で提案されたセラミックス焼結体は、量産性が高いものの、その内部には球形或いは球に近い形状の気孔を有しており、このような形状の気孔を得ようとすると、真球状の架橋性ポリスチレンビーズや乳化重合させたポリスチレンビーズ等、圧縮強度が高く、加圧成形後に弾性回復しやすい気孔形成剤を用いなければならず、成形後の弾性回復時や脱脂時に気孔を起点としたマイクロクラックが発生しやすいという問題があった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、メカニカルシールリングを始め、軸受またはフォーセットバルブの構成部品である弁体等の摺動部材としての強度を確保し、且つ摺動特性に優れ、クラックが発生することのないセラミックス摺動部材を提供することにある。また、各種機械の回転部に用いて、優れた摺動特性を備えたメカニカルシールリングを提供することにある。
本発明のセラミックス摺動部材は、緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、潤滑液が供給される摺動面を備えたセラミックスからなる多孔質層が形成されており、該多孔質層の大多数の気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の前記気孔は前記摺動面に開気孔となっていることを特徴とする。
また、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさが5〜40μmであり、平行な方向の大きさが10〜50μmであることを特徴とする。
さらに、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差が3μm以上であることを特徴とする。
さらにまた、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記開気孔は、その開口の真円度が5μm以下であることを特徴とする。
またさらに、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記開気孔は、開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う前記開口の間隔が30〜100μmであることを特徴とする。
また、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記摺動面の気孔面積率は3〜12%であることを特徴とする。
さらに、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記基材と前記多孔質層との界面は、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面であることを特徴とする。
またさらに、本発明のセラミックス摺動部材は、上記構成において、前記凹凸面は、摺動面に垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さが前記多孔質層の厚みの0.02〜1倍であることを特徴とする。
本発明のセラミックス摺動部材の製造方法は、セラミック粉末の造粒粉からなる第1の原料を準備するとともに、セラミック粉末の造粒粉に、樹脂ビーズからなり焼成工程において焼失または熱分解する気孔形成剤を混合してなる第2の原料を準備する工程と、成形型に前記第1の原料を基材部として充填するとともに前記第2の原料を前記基材部の表面に層状部として充填する工程と、前記成形型により前記層状部と前記基材部とを前記層状部の厚み方向に加圧して、前記層状部において前記気孔形成剤が前記層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さく変形した成形体を得る工程と、前記成形体を焼成するとともに前記気孔形成剤を焼失または熱分解して気孔を形成し、緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、加圧面を摺動面としたセラミックスからなる多孔質層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
また、本発明のセラミックス摺動部材の製造方法は、上記構成において、前記樹脂ビーズは、シリコーンからなる樹脂ビーズ、あるいはポリスチレンおよびアクリル−スチレン共重合体の少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズのいずれかであることを特徴とする。
さらに、本発明のメカニカルシールリング用部材は、上記構成のいずれかの本発明のセラミックス摺動部材からなり、リング状部材もしくは板状部材の表面または円筒状部材の外周面または円筒状部材の内周面に前記摺動面が潤滑液を介して当接し摺動することを特徴とする。
また、本発明のメカニカルシールリングは、潤滑液を介して互いの摺動面を当接し摺動させる固定リングと回転リングとからなり、これら固定リングおよび回転リングの少なくとも一方が上記構成のいずれかの本発明のセラミックス摺動部材からなることを特徴とする。
さらに、本発明のメカニカルシールリングは、上記構成において、前記セラミックス摺動部材は、前記セラミックスがアルミナ、炭化けい素、炭窒化けい素および炭素のいずれかであることを特徴とする。
本発明のセラミックス摺動部材は、緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、潤滑液が供給される摺動面を備えたセラミックスからなる多孔質層が形成されており、この基材は緻密質のセラミックスからなるので、高強度であるとともに、この多孔質層の大多数の気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の気孔はこの摺動面に開気孔となっていることから、この摺動面の開気孔または摺動摩耗により新たに露出する開気孔はいずれも奥行きの浅い開気孔となるので、この開気孔が他の部材と摺動すると開気孔内に負圧が発生し、この負圧が開気孔内に貯溜していた潤滑液を十分に摺動面に供給するように作用して、摩擦係数を低くすることにより高い摺動特性を得ることができる。
また、前記気孔が、前記摺動面に垂直な方向の大きさが5〜40μmであり、平行な方向の大きさが10〜50μmであるときには、すでに摺動面に存在する開気孔のみならず、摺動摩耗によって新たに露出する開気孔についても、負圧が開口付近の潤滑液を均一に供給できるように作用するとともに、開気孔の奥にも十分な負圧が作用して、潤滑液を十分に摺動面に供給でき、より高い摺動特性を得ることができる。
さらに、前記気孔が、前記摺動面に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差が3μm以上であるときには、負圧が開口付近の潤滑液をさらに均一に供給できるように作用するとともに、開気孔の奥にもより十分な負圧がはたらくことにより、潤滑液を十分に摺動面に供給でき、より高い摺動特性を得ることができる。
さらにまた、前記開気孔は、その開口の真円度が5μm以下であるときには、潤滑液が特定方向にのみ偏よることなく摺動面に供給されるように作用するので、潤滑液が摺動面に行き渡り、摩擦係数を低くできるというより高い摺動特性を得ることができる。
またさらに、前記開気孔が、前記開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う前記開口の間隔が30〜100μmであるときには、複数の結晶粒子が強固に結合されるので、摺動による脱粒を抑えられるとともに、開気孔の開口が摺動面に均一に配置されることになり、潤滑液が均等に摺動面に行き渡るように作用するので、摩擦係数を低くでき、より高い摺動特性を得ることができる。
また、前記摺動面の気孔面積率が3〜12%であるときには、開気孔が他の開気孔と連通する比率が低くなり、摺動面に供給された潤滑液が前記連通した開気孔を伝わって、外部に漏れることがないように作用するので、セラミックス摺動部材としてのシール性能を維持しつつ、高い摺動特性が得られるとともに、摺動条件が過酷であっても多孔質層内部や基材内部に入るクラックを防止することができる。
さらに、前記基材と前記多孔質層との界面が、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面であるときには、界面が平面である場合に比べ、焼成後、前記凹凸面が界面に発生する応力を分散させるように作用するので、焼成時の収縮による変形を小さくすることができる。
またさらに、前記凹凸面が、摺動面に垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さが前記多孔質層の厚みの0.02〜1倍であるときには、焼成後、凹凸面が界面に発生する応力を十分に分散して、内部歪みが小さくなるように作用するので、摺動面が平滑になって安定した摺動特性が得られる。
さらに、本発明のセラミックス摺動部材の製造方法は、セラミック粉末の造粒粉からなる第1の原料を準備するとともに、セラミック粉末の造粒粉に、樹脂ビーズからなり、焼成工程において焼失または熱分解する気孔形成剤を混合してなる第2の原料を準備する工程と、成形型に前記第1の原料を基材部として充填するとともに前記第2の原料を前記基材部の表面に層状部として充填する工程と、前記成形型により前記層状部と前記基材部とを前記層状部の厚み方向に加圧して、前記層状部において前記気孔形成剤が前記層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さく変形した成形体を得る工程と、前記成形体を焼成するとともに前記気孔形成剤を焼失または熱分解して気孔を形成し、緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、加圧面を摺動面としたセラミックスからなる多孔質層を形成する工程とを備えることで、気孔形成剤が加圧方向に塑性変形し、層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さくなった気孔を有するセラミックス摺動部材とすることができ、摺動面に開口を有する開気孔に貯溜されていた潤滑液が摺動面に適切に供給されるので、高い摺動特性を備えたセラミックス摺動部材を容易に得ることができる。
また、前記樹脂ビーズが、シリコーンからなる樹脂ビーズ、あるいはポリスチレンおよびアクリル−スチレン共重合体の少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズのいずれかであるときには、これらの樹脂ビーズは塑性変形しやすく前記成形体の成形後やその後の脱脂中に弾性回復することがないように作用するので、多孔質層の大多数の気孔を摺動面に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さくすることができるとともに、この樹脂ビーズは弾性回復しないので、気孔を起点とするマイクロクラックを防止することができる。
さらに、本発明のメカニカルシールリング用部材は、本発明のセラミックス摺動部材からなり、リング状部材もしくは板状部材の表面または円筒状部材の外周面または円筒状部材の内周面に前記摺動面が潤滑液を介して当接し摺動するときには、基材が緻密質のセラミックスからなり、前記セラミックス摺動部材の開気孔が他の部材と摺動すると開気孔内に負圧が発生し、この負圧が前記開気孔内に貯溜していた潤滑液を十分に摺動面に供給するように作用するので、摩擦係数が低くなり、高強度で摺動特性の高いメカニカルシールリング用部材とすることができる。
また、本発明のメカニカルシールリングは、潤滑液を介して互いの摺動面を当接し摺動させる固定リングと回転リングとからなり、これら固定リングおよび回転リングの少なくとも一方が本発明のセラミックス摺動部材からなるときには、基材が緻密質のセラミックスからなるので高強度であるとともに、前記セラミックス摺動部材の開気孔が他の部材と摺動することによって発生する負圧が開気孔内に貯溜していた潤滑液を摺動面に十分供給することができるので、高強度で摺動特性の高いメカニカルシールリングとすることができる。
さらに、セラミックス摺動部材のセラミックスがアルミナ、炭化けい素、炭窒化けい素および炭素のいずれかであるときには、これらセラミックスは低い摩擦係数を実現しやすいので、耐久性を確保することができる。
本発明は、メカニカルシールリング等の各種摺動部材における前記課題を解決するためにセラミックス摺動部材を種々検討したものである。以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
ここで、図1は、本発明のセラミックス摺動部材の摺動面に垂直な方向の部分断面図であって、(a),(b)は気孔を模式的に表した部分断面図の一例であり、(c)は界面のうねりの高さを示す図で、(b)の界面部分の拡大図、(d),(e),(f)は気孔の拡大図である。また、図2(a)は本発明のセラミックス摺動部材を摺動面から見た平面図、(b)は開気孔の平面図である。図3は、本発明のメカニカルシールリングを用いた軸封装置の一例を示す部分断面図である。このセラミックス摺動部材1は、緻密質のセラミックスからなる基材1b上にセラミックスからなる多孔質層1aを界面2を介して形成し、多孔質層1aが界面2と介する側と相対する側を摺動面3とするとともに、多孔質層1aには気孔4と開気孔4aを有して構成してある。
そして、本発明のセラミックス摺動部材1は、高強度である緻密質のセラミックスからなる基材1bの表面に、潤滑液15が供給される摺動面3を備えたセラミックスからなる多孔質層1aが形成されており、この多孔質層1aの大多数の気孔4は、摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の気孔4は摺動面3に開気孔4aとなっていることを特徴としている。この摺動面3の開気孔4aまたは摺動摩耗により新たに露出する開気孔4aはいずれも奥行きの浅い開気孔4aとなる。この開気孔4aが他の部材と摺動すると負圧が発生し、気孔内に貯溜していた潤滑液15を十分に摺動面3に供給するように作用して、摩擦係数を低くして、より高い摺動特性を得ることができる。
本発明では多孔質層1aの大多数の気孔4を、摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さくすることが重要で、このようにすることで摺動による摩耗によって新たに露出した開気孔4a内に貯留する潤滑液15を摺動面3に適切に供給するのに、十分な負圧を発生させることができる。なお、本発明でいう大多数とは、摺動面3に対して垂直な断面で多孔質層1aにおける摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さくなっている気孔の個数がその断面の多孔質層1aにおけるすべての気孔の個数の50%を超えている状態を言う。この個数が70%以上の状態ならばさらに好適である。
また、図1(d)に示すように気孔4bが楕円体であってその長軸が摺動面3と平行になっている場合、短軸y1を摺動面3に垂直な方向の大きさ、長軸x1を摺動面3に平行な方向の大きさとする。また、図1(e)に示すように気孔4cが偏平体であって、かつ長手方向が摺動面3と平行になっている場合、気孔4cの短軸方向の最大長y2を摺動面3に垂直な方向の大きさ、気孔4cの長軸方向の最大長x2を摺動面3と平行な方向の大きさとする。
さらに、図1(f)に示すように垂直な方向の大きさy3および平行な方向の大きさx3をとればよい。気孔4b,4c,4dは、セラミックス摺動部材1の破断面を鏡面加工して得られた面を金属顕微鏡により倍率50〜400倍で観察することができ、このような気孔4b,4c,4dの形態としては、例えば偏平体、円柱、楕円体、繊維体およびこれらが複合した形態等が挙げられる。
また、気孔4は、摺動面3に垂直な方向の大きさが5〜40μmであり、平行な方向の大きさが10〜50μmであることが好適であり、気孔4が複合した形態である場合、摺動面3に垂直な方向の大きさおよび平行な方向の大きさはそれぞれの最大値をとればよい。このときには、すでに摺動面3に存在する開気孔4aのみならず、摺動摩耗によって新たに露出する開気孔4aについても、負圧が開口付近の潤滑液15を均一に供給できるように作用するとともに、開気孔4aの奥にも十分な負圧が作用して、適正量の潤滑液15を摺動面3に供給することができるので、より高い摺動特性を得ることができる。
ここで、摺動面3に垂直な方向の気孔4b,4c,4dの大きさを5〜40μmとしたのは、十分な負圧が得られるとともに、潤滑液15を摺動面3上に十分供給するようにはたらくからで、摺動面3に垂直な方向の気孔4b,4c,4dの大きさが5μm未満であったり、逆に40μmを超えたりすると、潤滑液の粘性が高い場合には、十分な負圧が得られにくくなり、潤滑液15が摺動面3上に十分供給されない場合があるからである。
また、摺動面3に平行な方向の大きさを10〜50μmとしたのは、十分な負圧が得られるとともに、潤滑液15を摺動面3上に十分供給するようにはたらくからで、摺動面3に平行な方向の大きさが10μm未満であったり、逆に50μmを超えたりすると、垂直な方向の大きさと同様、潤滑液の粘性が高い場合には、負圧を得られにくくなり、潤滑液15が摺動面3に十分供給されない場合があるからである。
ここで、摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさは、セラミックス摺動部材1の摺動面3に対し垂直な方向の切断面を鏡面加工して得られた面から寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、例えば倍率を50〜400倍にして、(200〜1000)μm×(200〜1000)μmの範囲より気孔4b,4c,4dのいずれか10個を抽出し、それぞれ気孔の大きさを前記ゲージを用いて測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
特に、気孔4b,4c,4dの摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差が負圧に与える影響は大きく、その差が3μm以上であることが好適で、この差を3μm以上にするときには、負圧が開口付近の潤滑液15をさらに均一に供給できるように作用するとともに、開気孔4aの奥にもより十分な負圧がはたらくことにより、潤滑液15を十分に摺動面3に供給でき、より高い摺動特性を得ることができる。
負圧により適正な量の潤滑液15を摺動面3に供給することができるので、長期に渡って高い摺動特性を維持し続けることができる。また、気孔4b,4c,4dの摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差を45μm以下にすることが好適で、45μm以下にすることで適正な量の潤滑液15を気孔4a内に予め貯留することができる。
また、開気孔4aは、その開口の真円度が5μm以下であることが好適である。すなわち、開気孔4aは、摺動面3から見たときに、より真円に近づける(真円度を上げる)ことで、潤滑液15が特定方向にのみ偏よることなく摺動面3に供給されるように作用するので、摺動面3に行き渡り摩擦係数を低くできることにより高い摺動特性を得ることができる。そして、開気孔4aの開口の大多数は略円形状である。
つぎに、図2(b)に示すように、開気孔4aは摺動面3から見ると、略円形になっており、その開口の直径Dは潤滑作用や脱粒の防止に影響を与える。ここで、この開口とは、開気孔4aが摺動面3で外気と通じる出入口をいう。
また、開気孔4aは、その開口の真円度が5μm以下であることが好適である。なお、真円度Eは、図2(b)に示すように開口の外周側の3点に接する外接円の直径および開口の中心側の3点に接する内接円の直径をそれぞれOD,IDとして、
E=(OD−ID)/2
で定義する。
E=(OD−ID)/2
で定義する。
真円度Eは、幾何学的円に対する偏差の度合いを示すものであり、真円度Eが0に近いほど、真円に近くなる。真円度Eは、画像処理機能を備えたマイクロスコープを用い、倍率100〜1000倍として、少なくとも1つの開気孔4aが入る視野から画像処理機能を用いて内接円および外接円を特定した後、その各直径を測定し、算出することができる。
また、開気孔4aは、開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う開口の間隔が30〜100μmであることが好適である。開口の直径Dを大きくすると開気孔4a内に貯溜する潤滑液15の量は多くなるので、高い潤滑作用が得られ、一方、開口の直径Dを小さくすると、摺動による摩耗によって開口の端部から発生する脱粒を少なくすることができる。この作用により、開気孔4aは開口の直径Dが10〜50μmであるものがセラミックス摺動部材1として好適である。
また、図2(a)に示すように、隣り合う開気孔4aの最短距離を示す間隔Cも潤滑作用や脱粒の防止に影響を与える。間隔Cが30μm未満と短かすぎると、摺動初期段階で隣り合う開気孔4a間に挟まれる結晶を結合する粒界相の量が少なくなるので、摺動初期段階で隣り合う開気孔4a間に挟まれる結晶は脱粒するおそれが高くなり、間隔Cが100μmを超えるまでに長すぎると、開気孔4a間の面積が大きくなり、潤滑液15の粘度が高いと、摺動面3全体に亘って充分に潤滑液15が供給されにくくなる。
したがって、隣り合う開気孔4aの間隔Cは30〜100μmであることが好適である。開気孔4aが、開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う開口の間隔が30〜100μmであるときには、複数の結晶粒子が強固に結合されるので、摺動による脱粒を抑えられるとともに、開気孔4aの開口が摺動面3に均一に配置されることになり、潤滑液15が均等に摺動面3に行き渡るように作用するので、摩擦係数を低くできるとともに、より高い摺動特性を得ることができる。ここで、開口の直径Dおよび間隔Cは、寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、例えば倍率を50〜400倍にして、(200〜1000)μm×(200〜1000)μmの範囲でゲージを用いて測定することができる。
また、摺動面3の気孔面積率は3〜12%であることが好適である。本発明のセラミックス摺動部材1は、多孔質層1aの気孔率を制御することで、摺動特性、シール性能とも向上させることができ、気孔率は摺動面3における気孔面積率で置き換えて捉えることができる。特に、多孔質層1aは、摺動面3の気孔面積率を3〜12%とするときには、開気孔4aが他の開気孔4aと連通する比率が低くなり、摺動面3に供給された潤滑液15が連通した開気孔4aを伝わって、外部に漏れることがないように作用するので、開気孔4a内に貯溜していた潤滑液15は摺動面3に連続した流体膜を形成しやすくなり、多孔質層1aの強度も確保できるので、高い摺動特性や、例えばメカニカルシールリングで要求される高いシール性能を得ることができる。なお、多孔質層1aの気孔面積率は、摺動面3および開口の合計面積より、特定の視野を選定し、その視野の面積に対する開口の面積比率として定義されるものである。
ここで、多孔質層1aの気孔面積率を3〜12%としたのは、3%未満では潤滑液15
の粘度が高い場合、開気孔4aから滲出する潤滑液15が少ないために、十分な潤滑効果を発揮できず、高い摺動特性が得られないおそれがあるからであり、12%を超えると、開気孔4aが互いに連通する比率が摺動面3上にあるすべての開気孔4aに対して高くなるので例えばメカニカルシールリングで要求されるようなシール性能が低下するおそれがあるからである。
の粘度が高い場合、開気孔4aから滲出する潤滑液15が少ないために、十分な潤滑効果を発揮できず、高い摺動特性が得られないおそれがあるからであり、12%を超えると、開気孔4aが互いに連通する比率が摺動面3上にあるすべての開気孔4aに対して高くなるので例えばメカニカルシールリングで要求されるようなシール性能が低下するおそれがあるからである。
さらに同様にして、基材1bの気孔率を制御することで、摺動条件が過酷であっても、基材1b内部に入るクラックを少なくすることができ、気孔率は摺動面3と平行な面における気孔面積率で置き換えて捉えることができる。特に、基材1bは、気孔面積率を2%以下とすることにより、基材1b内部のクラック防止に効果的である。そして、基材1bの気孔面積率は、摺動面3と平行な断面の面積に対する、断面上の気孔の面積比率として定義されるものである。
なお、多孔質層1aの気孔面積率は、金属顕微鏡を用いて、倍率100倍にして、CCDカメラで摺動面3の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製(LUZEX−FS))により画像内の1視野の測定面積を9.0×10−2mm2、測定視野数を10、測定総面積を9.0×10−1mm2として測定すればよい。また、基材1bの気孔面積率は、取り込む画像を摺動面3と平行な断面とする以外、多孔質層1aの気孔面積率を測定した条件と同じ条件で測定すればよい。
また、基材1bと多孔質層1aとの界面2は、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面であることが好適である。本発明のセラミックス摺動部材1では、基材1aと多孔質層1bとの界面2の性状は、界面2に発生する応力の分散に影響を与える。図1(a)で示されるように、界面2は凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面であることにより、界面2が平面である場合に比べ、焼成後、凹凸面が界面2に発生する応力を分散させるように作用するので、焼成時の収縮による変形を小さくすることができる。なお、凹凸面は、窪み状の凹部と、突起状の凸部とが滑らかに繰り返される面をいい、図1(b)で示されるように、摺動面3に垂直な方向にうねっている面であってもよい。
また、凹部のみが摺動面3と平行な平面であったり、逆に、凸部のみが摺動面3と平行な平面であったりしてもよく、セラミックスの結晶粒子の大きさの違いによって生じる微小な凹凸が界面2にあっても差し支えない。これら凹凸面はセラミックス摺動部材1の破断面を鏡面加工して得られた面を金属顕微鏡により、倍率50〜400倍で観察することができる。
また、凹凸面は、摺動面3に垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さが多孔質層1aの厚みの0.02〜1倍であることが好適である。図1(c)は、気孔を模式的に表した図1(b)の界面2部分の拡大断面図で、界面2のうねりの高さを示す図であるが、特に、凹凸面が摺動面3に垂直な方向にうねっている面である場合、うねりの高さhは摺動特性に影響を与える。
うねりの高さhが多孔質層1aの厚みの0.02〜1倍であることにより、摺動面3の変形を抑えられ、焼成後、凹凸面が界面2に発生する応力を十分に分散して、内部歪みが小さくなるように作用するので、長期間安定した摺動特性を得られるとともに、界面2が平面である場合に比べ、余裕を持ってセラミックス摺動部材1の交換をすることができる。加えて、凹凸面のうねりの高さが多孔質層1aの厚みの0.02〜1倍と十分に確保されているので、摺動摩耗によって、多孔質層1aが摩耗して一気に緻密質のセラミックスからなる基材1bが露出することなく、凹凸面のうねりの高い部分から順に露出してくるように作用するので、急に摩擦係数が高くなることのないより高い摺動特性を得ることができる。うねりの高さhおよび多孔質層1aの厚み、および凹凸面はセラミックス摺動部材1の摺動面3に対し垂直な破断面を鏡面加工して得られた面を寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡により、倍率50〜400倍でゲージを用いて測定することができる。
なお、うねりの高さhとは、寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、例えば倍率を50〜400倍にして、摺動面3に垂直な断面より(200〜1000)μm×(200〜1000)μmの範囲を10範囲抽出し、各範囲毎にゲージを用いて図1(c)で示されるうねりの山m、うねりの谷v間の摺動面3に対する垂直方向の距離の最大値を測定し、前記10範囲の中の最大値をいう。また、多孔質層1aの厚みとは、寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、例えば倍率を50〜400倍にして、うねりの高さhを特定した範囲における摺動面3、うねりの谷v間の距離の最大値をゲージを用いて測定した値をいう。
次に、本発明のセラミックス摺動部材1の製造方法を説明する。まず、セラミック粉末に水と必要に応じて焼結助剤と分散剤とを加え、ボールミルで混合してスラリー化し、このスラリーに有機添加剤である成形助剤として、バインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥してセラミック粉末の造粒粉からなる第1の原料を準備する。
なお、耐熱衝撃温度300℃以上が要求されるセラミックス摺動部材1にはセラミック粉末を炭化けい素粉末とし、焼結助剤としてはアルミナ粉末、イットリア等の稀土類酸化物粉末を用いることが好適である。また、アルミナ粉末や稀土類酸化物粉末以外の焼結助剤としては炭素粉末や硼素粉末を組み合わせてもよく、炭素粉末を焼結助剤に用いた場合、開気孔4a内に容易に遊離炭素を含有させられ、この遊離炭素が摺動面3上に流出して、潤滑液15としてはたらくことで摺動特性を向上させられるため、摺動初期に異音やリンキングが発生しやすいセラミックス摺動部材1には好適である。
次に、第1の原料とは別に、前記セラミック粉末と同じセラミック粉末の造粒粉と、樹脂ビーズからなり、焼成工程において焼失または熱分解する気孔形成剤とをボールミル等で混合してなる第2の原料を準備する。ここで、開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う開口の間隔を30〜100μmにするには、直径12.5〜62.5μmである気孔形成剤を例えば、セラミック粉末に対し2〜10質量%含ませて十分均一に混合すればよい。
また、開口の真円度を5μm以下にするには、例えば、気孔形成剤の真球度を5μm以下にすることで得られる。ここで、気孔形成剤の真球度とは、互いに90度をなし、中心軸を含む2または3の断面の輪郭を真円度測定器で測定し、それぞれの輪郭の外周側の3点と接する外接円から輪郭までの半径方向の距離の最大値として求めることができる。
そして、本発明のセラミックス摺動部材1の基材部を形成するために、第1の原料を成形型に充填し、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面を備えた加圧治具(不図示)で、基材部の表面を所定の圧力および所定の時間で加圧した後、第2の原料を基材部の表面に層状部として充填する。後記の焼成により基材部は基材1bに、層状部は多孔質層1aとなる。
なお、先に本発明のセラミックス摺動部材1の層状部を形成するために、成形型(不図示)に第2の原料を充填し、加圧治具(不図示)で層状部の表面を所定の圧力および所定の時間で加圧した後、第1の原料を層状部の表面に基材部を形成するために充填してもよい。ここで、凹凸面が、摺動面3に垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さを多孔質層1aの厚みの0.02〜1倍とするには、加圧治具(不図示)の凹凸面にうねりを与え、その高さを多孔質層1aの厚みの0.03〜1.01倍にすることでできる。
そして、成形型(不図示)により層状部と基材部とを層状部の厚み方向に加圧することで、層状部において気孔形成剤が層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さく変形した成形体(不図示)を得ることができる。また、気孔形成剤が加圧方向に塑性変形する圧力で加圧することが重要であり、気孔形成剤が加圧方向に塑性変形し、層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さくなった気孔4を有するセラミックス摺動部材1とすることができ、摺動面3に開口を有する開気孔4aに貯溜されていた潤滑液15が摺動面3に適切に供給されるので、高い摺動特性を備えたセラミックス摺動部材1を容易に得ることができる。また、摺動面3の気孔面積率は加圧方向の圧力で決めることができ、気孔面積率を3〜12%にするには、圧力を例えば90〜110MPaにすればよい。さらに、基材1bの気孔面積率は加圧方向の圧力および焼成温度で決めることができ、気孔面積率を2%以下にするには、圧力を例えば90〜110MPa、焼成温度を2000〜2050℃にすればよい。
特に、樹脂ビーズは、シリコーンから成る樹脂ビーズ、あるいはポリスチレンおよびアクリル−スチレン共重合体の少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズのいずれかであることが好適である。これら樹脂ビーズはその圧縮強度が1.2MPa以下と低いので、通常の成形圧、例えば98MPaでは、これらの樹脂ビーズは塑性変形しやすく成形体(不図示)の成形後やその後の脱脂中に弾性回復することがないように作用するので、摺動面3に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さい気孔が得られやすいからである。
なお、摺動面3に垂直な方向の大きさが5〜40μmであって、平行な方向の大きさが10〜50μmである気孔4を得るには、直径6〜50μmの樹脂ビーズを用いればよく、摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差を3μm以上の気孔4を得るには成形圧を98MPa以上にすればよい。摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差を45μm以下の気孔4を得るには、成形圧を110MPa以上にすればよい。
また、気孔形成剤はガラス転移温度(Tg)が50〜150℃であることが好適である。ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、非晶質樹脂を加熱することにより、非晶質状からゴム状になる温度をいう。ガラス転移温度(Tg)を50〜150℃としたのは、ガラス転移温度(Tg)が50℃未満では、脱脂または焼成における昇温速度によっては気孔形成剤が容易にゴム状に変質して、気孔4がつぶれるおそれがあるからである。
一方、ガラス転移温度(Tg)が150℃を超えると、気孔形成剤がビーズ、即ち球状体としての形状が維持されやすくなるので、球状体に近い気孔4が多くなり、セラミックス摺動部材1としての強度が低下するからである。ガラス転移温度(Tg)を50〜150℃とすることで、塑性変形による気孔4のつぶれを防止することができるとともに、成形後や脱脂中に弾性回復することがないので、気孔4を起点とするマイクロクラックを防止することができ、セラミックス摺動部材1としての強度を高くすることができる。
そして、成形体(不図示)を必要に応じて、窒素雰囲気中、10〜40時間で昇温し、450〜650℃で2〜10時間保持後、自然冷却して脱脂すればよい。そして、成形体(不図示)を、たとえば、1800〜2050℃で、3〜5時間保持し焼成するとともに、気孔形成剤を脱脂または焼成における昇温過程で焼失または熱分解して気孔4を形成し、緻密質のセラミックスからなる基材1bの表面に、加圧面を摺動面3としたセラミックスからなる多孔質層1aを形成することで、本発明のセラミックス摺動部材1とすることができる。なお、基材1bと多孔質層1aとの界面2が、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面にするには焼成工程を加圧焼成より常圧焼成、減圧焼成、真空焼成等非加圧焼成を選ぶほうが好適である。
また、セラミックス摺動部材1は、必要に応じて加圧面を研削、研磨等の加工を施して摺動面3としてもよく、例えば、両頭研削盤や平面研削盤等で摺動面3を平面とした後、セラミックス摺動部材1がメカニカルシールリング用部材として用いられる場合には、平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工し、錫製のラップ盤でシール性が維持できるように算術平均高さRaが0.98μm以下となるように鏡面加工してもよい。上述のような製造方法によれば、摺動部材としての強度を確保し、且つ摺動特性に優れ、クラックが発生することのないセラミックス摺動部材1を安価に得ることができる。
図3は本発明のメカニカルシールリングを用いた軸封装置の一例を示す断面図である。この軸封装置は、メカニカルシールとして環状体である固定リング5aの摺動面3a上で、凸状部を有する環状体である回転リング5bの摺動面3bを摺動させてシール作用を及ぼすメカニカルシールリング5を用いた装置である。メカニカルシールリング5は、駆動機構(不図示)による駆動力を伝達させる回転軸6と、この回転軸6を回転可動に支承するケーシング7との間に取り付けられ、固定リング5aと回転リング5bとの互いの摺動面3a,3bが回転軸6に対して垂直面を形成するように設置されている。
そして、回転リング5bはパッキング9によって緩衝的に支持され、このパッキング9の回転リング5bと相対する側には回転軸6を巻回するようにコイルスプリング12が設置され、このコイルスプリング12の弾発力(予め設定されたコイルスプリングの力)により、パッキング9を押圧することによって、回転リング5bの摺動面3bが固定リング5aの摺動面3aに押圧されて摺動するようにしてある。また、コイルスプリング12がパッキング9を押圧する側と相対する側には、カラー11がセットスクリュー10により回転軸6に固定され、コイルスプリング12のストッパーとして設置されている。
一方、回転リング5bの摺動面3bと摺動面3aを介して接する固定リング5aは緩衝ゴム8によって支持されており、緩衝ゴム8はこの軸封装置の外枠となるケーシング7の内側に取り付けられて固定リング5aを支持するようにしてある。そして、回転軸6が回転するとカラー11がともに回転し、コイルスプリング12の弾発力によって押圧されるパッキング9と、このパッキング9によって支持されている回転リング5bの摺動面3bと、が押圧されながら回転することによって、固定リング5aの摺動面3aとの間でシール作用が働くようにしてある。このような軸封装置を流体機器(不図示)に取り付ける場合には、メカニカルシールリング5に対してカラー11の側の延長上に、流体機器が配置されるように取り付けて用いられる。
このとき、流体機器に用いられている流体は、軸封装置のケーシング7で囲まれた内部にまで侵入するが、パッキング9と回転軸6との間に設けられたOリング13によるシール作用と、メカニカルシールリング5の摺動面3a,3bのシール作用によって、流体が軸封装置より外部に漏洩することを防止している。なお、このとき軸封装置によって密封された流体を、密封流体14と称し、その一部がメカニカルシールリング5の摺動面3a,3bの間に入り込み潤滑液15として作用する。一方、回転リング5bはパッキング9によって緩衝的に支持され、緩衝ゴム8およびパッキング9は回転軸6の回転で発生する振動を吸収する機能も有する。なお、図3に示す軸封装置では、固定リング5aを環状体、回転リング5bを凸状部を有する環状体としたが、これとは逆に固定リング5aを凸状部を有する環状体とし、回転リング5bを環状体とすることもできる。
そして、本発明は、基材1bが緻密質のセラミックスからなり、セラミックス摺動部材1の開気孔4aが他の部材と摺動すると摺動面3で空気の流れによる動圧が先ず発生し、続いて開気孔4a上ではその動圧より低い負圧が開気孔4a内に貯溜していた潤滑液15に対し作用し、開気孔4a上で発生する負圧によって開気孔4a内に貯溜していた潤滑液15を摺動面3に適切に供給することができるので、セラミックス摺動部材1をリング状部材もしくは板状部材の表面または円筒状部材の外周面または円筒状部材の内周面に摺動面3が潤滑液15を介して当接し摺動するメカニカルシールリング用部材に用いることが好ましい。
また、本発明のメカニカルシールリング5は、潤滑液15を介して互いの摺動面3a,3bを当接し摺動させる固定リング5aと回転リング5bとからなり、これら固定リング5aおよび回転リング5bの少なくとも一方がセラミックス摺動部材1からなることが好適である。セラミックス摺動部材1は、前述した通り、基材1bが緻密質のセラミックスからなり、回転リング5bが摺動を開始すると、摺動面3a,3bで空気の流れによる動圧が先ず発生し、続いて開気孔4a上ではその動圧より低い負圧が開気孔内に貯溜していた潤滑液15に対し作用し、この開気孔4a上で発生する負圧によって開気孔内に貯溜していた潤滑液15を摺動面3a,3bに適切に供給することができるので、高強度で摺動特性の高いメカニカルシールリング5とすることができる。
そして、このようなメカニカルシールリング5を始めとするセラミックス摺動部材1は、セラミックスがアルミナ、炭化けい素、炭窒化けい素および炭素のいずれかであることが好適で、これらセラミックスは低い摩擦係数を実現しやすいので、耐久性を確保することができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず、炭化珪素粉末にアルミナ粉末、イットリア粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。
次に、この造粒粉の一部に、表1に示す気孔形成剤を8質量%添加、混合して第2の原料を準備した後、成形型に第1の原料を基材部として充填するとともに第2の原料を基材部の表面に層状部として充填し、成形型により層状部と基材部とを層状部の厚み方向に98MPaの圧力で加圧して、リング形状をなす成形体を作製した。
そして、成形体を窒素雰囲気中、600℃で5時間保持して脱脂した後、アルゴン雰囲気中、1850℃で3時間保持し、層状部および基材部がそれぞれ多孔質層1aおよび基材1bとなった焼結体を得た。その後、多孔質層1aの表面を平面研削盤で研削して平面とした後、平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工し、同じく平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫製のラップ盤で算術平均高さRaが0.98μm以下となるように鏡面加工し、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.1〜4を得た。
なお、算術平均高さRaは、JIS B 0601−2000に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、測定長さ、カットオフ値および触針の走査速度をそれぞれ5mm、0.8mmおよび0.5mm/秒として測定した。その後、固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、炭素からなる回転リング5bとの互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数を測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:8m/s
・ 面圧 :500kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:100時間
なお、相対速度は回転軸の中心を基準として外周側に向かい、11.25mm離れた位置(以下、位置Pという。)における固定リング5aに対する回転リング5bの回転速度である。面圧は固定リング5aに対する回転リング5bの単位面積当たりの圧力であり、固定リング5aと回転リング5bとを当接させるのに予め設定された加圧力Fを回転リング5bの摺動面3bの面積で除すことで求められ、面積は、寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、倍率50倍で回転リング5bの凸状部の外径および内径をゲージで測定し、算出した。
・ 相対速度:8m/s
・ 面圧 :500kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:100時間
なお、相対速度は回転軸の中心を基準として外周側に向かい、11.25mm離れた位置(以下、位置Pという。)における固定リング5aに対する回転リング5bの回転速度である。面圧は固定リング5aに対する回転リング5bの単位面積当たりの圧力であり、固定リング5aと回転リング5bとを当接させるのに予め設定された加圧力Fを回転リング5bの摺動面3bの面積で除すことで求められ、面積は、寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、倍率50倍で回転リング5bの凸状部の外径および内径をゲージで測定し、算出した。
また、摺動後、金属顕微鏡を用い倍率50倍で、固定リング5aの摺動面3aに対し垂直な破断面を鏡面加工して得られた面内における1000μm×1000μmの範囲より、多孔質層1a内におけるすべての気孔の個数に対する摺動面3aに垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さい気孔4b,4c,4dの個数の比率を測定し、その比率を表1に示した。併せて、同じ範囲内における内部クラックの有無を観察し、表1に内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを×で示した。
また、摩擦係数μについては、トルクメーターを用いて摺動中の回転リング5bの位置Pにおける回転トルクTを測定し、この回転トルクTを、摺動面3bの面積に面圧を掛けることで得られる加圧力Fおよび回転軸の中心から位置Pまでの距離11.25mmで除した値とした。すなわち、摩擦係数μはμ=T/11.25Fとし、その値を表1に示した。
表1に示すように、試料No.1は前記比率が50%以下であることから、摺動面上に潤滑液が適切に供給されなかったので、摩擦係数μが高い上、内部クラックも観察された。一方、本発明の試料No.2〜4は、比率が50%を超えていることから、摺動面上に潤滑液は適切に供給され、摺動後も摩擦係数μは低く、摺動特性が高いことがわかる。特に比率が70%のNo.3は摩擦係数μがもっとも低く優れていた。また、摺動後、内部クラックも観察されないことから、強度も高いことがわかる。
炭化珪素粉末に、硼素粉末、フェノール樹脂粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、表2に示す気孔形成剤を8質量%添加、混合して第2の原料を準備した。
そして、実施例1と同様にして、リング形状をなす成形体を作製後、脱脂、焼成を行って焼結体とし、表面を平面研削盤で研削して平面とした後、アルミナ製のラップ盤で粗加工し、錫製のラップ盤で鏡面加工して、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.5〜13を得た。その後、固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、炭素からなる回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを測定し、その値を表2に示した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:12m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:200時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出し、また、摺動後、多孔質層1a内におけるすべての気孔の個数に対する摺動面3aに垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さい気孔4b,4c,4dの個数の比率を測定して表2に示し、併せて、内部クラックの有無を観察し、内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを×で示した。
・ 相対速度:12m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:200時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出し、また、摺動後、多孔質層1a内におけるすべての気孔の個数に対する摺動面3aに垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さい気孔4b,4c,4dの個数の比率を測定して表2に示し、併せて、内部クラックの有無を観察し、内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを×で示した。
表2に示すように、試料No.7は、気孔が摺動面3に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさが等しいことから、摺動面3a,3bに潤滑液が適切に供給されず、摩擦係数μが高い上、内部クラックも観察された。一方、本発明の試料No.5,6,8〜13は、摺動面3a,3bに潤滑液は適切に供給され、摩擦係数μは低く、摺動特性が高いことがわかる。特に、気孔が摺動面3に垂直な方向の大きさが5〜40μmであって、平行な方向の大きさが10〜50μmである試料No.6,8〜13は、摩擦係数μが0.06以下と低く好適である。
さらに、垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差が3μm以上である試料No.6,9〜13は摩擦係数μが0.055以下とより低く好適である。また、本発明の試料No.5,6,8〜13は、摺動後、内部クラックはいずれも観察されないことから、強度も高いことがわかる。
炭化珪素粉末に、硼素粉末、フェノール樹脂粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに有機添加剤である成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性ポリスチレンを添加、混合して第2の原料を準備した。
そして、実施例1と同様にして、リング形状をなす成形体を作製後、脱脂、焼成を行って焼結体とし、表面を平面研削盤で研削して平面とした後、アルミナ製のラップ盤で粗加工し、錫製のラップ盤で鏡面加工して、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.14,15を得た。
そして、開口の直径10〜50μmである開気孔4aの摺動面3から見たときの真円度Eを画像処理機能を備えたマイクロスコープを用い、倍率200倍で300μm×300μmの範囲より、画像処理機能を用いて、図2(b)に示す内接円および外接円を特定してから、各直径をそれぞれ6点測定し、各真円度E1〜E6を算出した。その後、固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、炭素からなる回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを測定し、その値を表3に示した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
表3に示すように、開口の直径Dが10〜50μmの開気孔4aの真円度Eが5μm以下の試料No.14は、真円度Eが5μmを超える試料No.15より摩擦係数μが低く良好である。
炭化珪素粉末に、硼素粉末、フェノール樹脂粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに有機添加剤である成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性ポリスチレンを添加、混合して第2の原料を準備した。
そして、実施例1と同様にして、リング形状をなす成形体を作製後、脱脂、焼成を行い、焼結体を得、表面を平面研削盤で研削して平面とした後、アルミナ製のラップ盤で粗加工し、錫製のラップ盤で鏡面加工し、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.16〜18を得た。そして、開口の直径10〜50μmである開気孔の間隔Cを金属顕微鏡を用い、倍率100倍で200μm×200μmの範囲より各6点測定し、C1〜C6とした。その後、上記固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、炭素からなる回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを用いて測定し、その値を表4に示した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:20m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :エチレングリコール
・ 摺動時間:500時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。また、摺動後、金属顕微鏡を用い倍率50倍で、固定リング5aの摺動面3aで脱粒の有無を観察し、脱粒が確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。
・ 相対速度:20m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :エチレングリコール
・ 摺動時間:500時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。また、摺動後、金属顕微鏡を用い倍率50倍で、固定リング5aの摺動面3aで脱粒の有無を観察し、脱粒が確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。
表4に示すように、試料No.16は開口の直径Dが10〜50μmである開気孔4aの間隔Cが30μm未満であることから、本実施例のように摺動条件が過酷な場合、摺動面3a,3bからわずかではあるが脱粒が発生し、摩擦係数μも高かった。また、試料No.18は、開口の直径Dが10〜50μmである開気孔4aの間隔が100μmを超えていることから、本実施例のように粘度の高い潤滑液を用いると、摺動面3a,3b全体に亘って潤滑液が良好に供給されず、摩擦係数μは高い値となった。一方、試料No.17は、摺動面3a,3b上に潤滑液は適切に供給され、摺動後も摩擦係数μは低く、摺動特性が高いことがわかる。
炭化珪素粉末に、アルミナ粉末、イットリア粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに有機添加剤である成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性ポリスチレンを添加、混合して第2の原料を準備した。
そして、実施例1と同様にして、リング形状をなす成形体を作製後、脱脂、焼成を行い、焼結体を得、表面を平面研削盤で研削して平面とした後、アルミナ製のラップ盤で粗加工し、錫製のラップ盤で鏡面加工し、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.19〜25を得た。また、多孔質層1aの気孔面積率は、金属顕微鏡を用いて倍率100倍にして、CCDカメラで摺動面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製(LUZEX−FS))により、画像内の1視野の測定面積を9.0×10−2mm2、測定視野数を10、測定総面積を9.0×10−1mm2として測定した。
その後、固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって炭素からなる回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを測定し、その値を表5に示した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:16m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出し、また、摺動後、内部クラックの有無を観察し、表5に内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。その後、多孔質層1aを平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工して除去した後、同じく平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫製のラップ盤で算術平均高さRaが0.98μm以下となるように基材1bを鏡面加工し、基材1bの気孔面積率を多孔質層1aの気孔面積率を測定した方法と同じ方法で測定した。なお、算術平均高さRaは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
・ 相対速度:16m/s
・ 面圧 :300kPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出し、また、摺動後、内部クラックの有無を観察し、表5に内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。その後、多孔質層1aを平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工して除去した後、同じく平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫製のラップ盤で算術平均高さRaが0.98μm以下となるように基材1bを鏡面加工し、基材1bの気孔面積率を多孔質層1aの気孔面積率を測定した方法と同じ方法で測定した。なお、算術平均高さRaは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
表5に示すように、試料No.25は多孔質層1aの気孔面積率が12%を超えていることから、摺動100時間後には内部に微小クラックが確認されなかったものの摺動300時間後には、多孔質層1aに内部クラックが確認された。また、試料No.24は基材1bの気孔面積率が2%を超えていることから、摺動100時間後には内部クラックが確認されなかったものの摺動300時間後には、基材1bに内部に微小なクラックが確認された。
また、試料No.19は摺動300時間後にも内部クラックが確認されなかったものの、多孔質層1aの気孔面積率が3%未満であることから、摩擦係数μは高かった。一方、試料No.20〜23は、基材1bおよび多孔質層1aの気孔面積率がそれぞれ2%以下および3〜12%であることから、摩擦係数μも低く、摺動終了後にも内部クラックは発生せず、良好であった。
炭化珪素粉末に、アルミナ粉末、イットリア粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに有機添加剤である成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径18μmの造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性ポリスチレンを添加、混合して第2の原料を準備した後、成形型に第1の原料を基材部として充填し、一部の成形型には微小振動を与えることで、界面となる基材部の表面を凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面にしたものと、一部の成形型には微小振動を与えず、基材部の表面を治具により平面にしたものとを準備した。
そして、第2の原料を基材部の表面に層状部として充填し、成形型により層状部と基材部とを層状部の厚み方向に98MPaの圧力で加圧して、リング形状をなす成形体を作製した。得られた成形体を窒素雰囲気中、600℃で5時間保持して脱脂した後、アルゴン雰囲気中、2050℃で3時間保持し、層状部および基材部がそれぞれ多孔質層1aおよび基材1bとなった焼結体を得た。得られた焼結体に発生した多孔質層1aの表面の変形量を形状寸法測定機で測定した。その結果を表6に示す。
そして、多孔質層1aの表面を平面研削盤で研削して平面とした後、平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工し、同じく平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫製のラップ盤で算術平均高さRaが0.98μm以下となるように鏡面加工し、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aである試料No.26〜32を得た。その後、固定リング5aと、外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体であって、炭素からなる回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを測定し、その値を表6に示した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:12m/s
・ 面圧 :1MPa
・ 潤滑液 :エチレングリコール
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。摺動後、固定リング5aの摺動面3aに対し垂直な破断面を鏡面加工し、界面のうねりの高さhを寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、倍率100倍でゲージを用いて測定した。そして、金属顕微鏡を用い倍率50倍により、内部クラックの有無を観察し、表6に内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。
・ 相対速度:12m/s
・ 面圧 :1MPa
・ 潤滑液 :エチレングリコール
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。摺動後、固定リング5aの摺動面3aに対し垂直な破断面を鏡面加工し、界面のうねりの高さhを寸法測定用のゲージを備えた金属顕微鏡を用い、倍率100倍でゲージを用いて測定した。そして、金属顕微鏡を用い倍率50倍により、内部クラックの有無を観察し、表6に内部クラックが確認されなかったものを○、確認されたものを△で示した。
表6に示すように、試料No.26は界面2が平面であることから多孔質層1aの表面の変形量が大きかった。一方、界面2が凹部と凸部が滑らかに繰り返される凹凸面である試料No.27〜32は多孔質層1aの表面の変形量が小さく好適であった。特に、凹凸面が、摺動面3aに垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さhが多孔質層1aの厚みの0.02〜1倍である試料No.28〜32は、多孔質層1aの表面の変形量が120μm以下とより小さく、摩擦係数μも小さかった。
表7に示す各種セラミック粉末に、所定の焼結助剤である各種粉末、分散剤および水を所定量加えボールミルに投入した後、48時間混合してスラリー化した。このスラリーに有機添加剤である成形助剤としてバインダーを添加、混合した後、噴霧乾燥することにより造粒粉からなる第1の原料を準備した。次に、この造粒粉に、気孔形成剤として懸濁重合された非架橋性アクリル−スチレン共重合体を8質量%添加、混合して第2の原料を準備した後、成形型に第1の原料を基材部として充填するとともに第2の原料を基材部の表面に層状部として充填し、成形型により層状部と基材部とを層状部の厚み方向に98MPaの圧力で加圧して、リング形状をなす成形体を作製した。
そして、成形体を窒素雰囲気中、600℃で5時間保持して脱脂した後、各種セラミック粉末に応じた焼成条件により焼成して、層状部および基材部がそれぞれ多孔質層1aおよび基材1bとなった焼結体を得た。その後、多孔質層1aの表面を平面研削盤で研削して平面とした後、平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いてアルミナ製のラップ盤で粗加工し、同じく平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫製のラップ盤で算術平均高さRaが0.98μm以下となるように鏡面加工し、外径26mm、内径19mmの環状体である固定リング5aおよび外径24mm、内径21mmの凸状部を有する外径26mm、内径19mmの環状体である回転リング5bを構成する試料No.33〜37を得た。その後、固定リング5aおよび回転リング5bとを回転軸を通して互いの摺動面3a,3bを当接し、以下の条件で摺動させ、摺動中の摩擦係数μを測定した。なお、算術平均高さRaおよび摩擦係数μは、実施例1に示した方法と同じ方法で測定した。
<摺動条件>
・ 相対速度:8m/s
・ 面圧 :2MPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。また、摺動後、金属顕微鏡を用い倍率50倍で、固定リング5aおよび回転リング5bの摺動面3a,3bに対し垂直な破断面を鏡面加工して得られた面内で、多孔質層1aにおけるすべての気孔の個数に対する摺動面3aに垂直な方向の大きさyが平行な方向の大きさxより小さい気孔4b,4c,4dの個数の比率を測定し、その比率を表7に示した。
・ 相対速度:8m/s
・ 面圧 :2MPa
・ 潤滑液 :水
・ 摺動時間:300時間
なお、実施例1と同様の方法により、相対速度、面圧を算出した。また、摺動後、金属顕微鏡を用い倍率50倍で、固定リング5aおよび回転リング5bの摺動面3a,3bに対し垂直な破断面を鏡面加工して得られた面内で、多孔質層1aにおけるすべての気孔の個数に対する摺動面3aに垂直な方向の大きさyが平行な方向の大きさxより小さい気孔4b,4c,4dの個数の比率を測定し、その比率を表7に示した。
表7に示すように、超硬を用いた試料No.37は摩擦係数μが高かったのに対し、アルミナ、炭化けい素、炭窒化けい素および炭素を用いた試料No.33,34,35,36は摩擦係数μが低く好適であった。
1:セラミックス摺動部材
1a:多孔質層
1b:基材
2:界面
3,3a,3b,21a,21b:摺動面
4:気孔
4a:開気孔
4b,4c,4d:閉気孔
5,22:メカニカルシールリング
5a,22a:固定リング
5b,22b:回転リング
6,23:回転軸
7,24:ケーシング
8,25:緩衝ゴム
9,26:パッキング
10,27:セットスクリュー
11,28:カラー
12,29:コイルスプリング
13,30:Oリング
14,31:密封流体
15:潤滑液
1a:多孔質層
1b:基材
2:界面
3,3a,3b,21a,21b:摺動面
4:気孔
4a:開気孔
4b,4c,4d:閉気孔
5,22:メカニカルシールリング
5a,22a:固定リング
5b,22b:回転リング
6,23:回転軸
7,24:ケーシング
8,25:緩衝ゴム
9,26:パッキング
10,27:セットスクリュー
11,28:カラー
12,29:コイルスプリング
13,30:Oリング
14,31:密封流体
15:潤滑液
Claims (13)
- 緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、潤滑液が供給される摺動面を備えたセラミックスからなる多孔質層が形成されており、該多孔質層の大多数の気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさが平行な方向の大きさより小さく、一部の前記気孔は前記摺動面に開気孔となっていることを特徴とするセラミックス摺動部材。
- 前記気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさが5〜40μmであり、平行な方向の大きさが10〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス摺動部材。
- 前記気孔は、前記摺動面に垂直な方向の大きさと平行な方向の大きさとの差が3μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス摺動部材。
- 前記開気孔は、その開口の真円度が5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセラミックス摺動部材。
- 前記開気孔は、前記開口の直径が10〜50μmであり、隣り合う前記開口の間隔が30〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセラミックス摺動部材。
- 前記摺動面の気孔面積率は3〜12%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセラミックス摺動部材。
- 前記基材と前記多孔質層との界面は、凹部と凸部とが滑らかに繰り返される凹凸面であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のセラミックス摺動部材。
- 前記凹凸面は、摺動面に垂直な方向にうねっている面であって、うねりの高さが前記多孔質層の厚みの0.02〜1倍であることを特徴とする請求項7に記載のセラミックス摺動部材。
- セラミック粉末の造粒粉からなる第1の原料を準備するとともに、セラミック粉末の造粒粉に、樹脂ビーズからなり焼成工程において焼失または熱分解する気孔形成剤を混合してなる第2の原料を準備する工程と、成形型に前記第1の原料を基材部として充填するとともに前記第2の原料を前記基材部の表面に層状部として充填する工程と、前記成形型により前記層状部と前記基材部とを前記層状部の厚み方向に加圧して、前記層状部において前記気孔形成剤が前記層状部の厚み方向の大きさがそれに垂直な方向の大きさより小さく変形した成形体を得る工程と、前記成形体を焼成するとともに前記気孔形成剤を焼失または熱分解して気孔を形成し、緻密質のセラミックスからなる基材の表面に、加圧面を摺動面としたセラミックスからなる多孔質層を形成する工程とを備えることを特徴とするセラミックス摺動部材の製造方法。
- 前記樹脂ビーズは、シリコーンからなる樹脂ビーズ、あるいはポリスチレンおよびアクリル−スチレン共重合体の少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のセラミックス摺動部材の製造方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のセラミックス摺動部材からなり、リング状部材もしくは板状部材の表面または円筒状部材の外周面または円筒状部材の内周面に前記摺動面が潤滑液を介して当接し摺動することを特徴とするメカニカルシールリング用部材。
- 潤滑液を介して互いの摺動面を当接し摺動させる固定リングと回転リングとからなり、これら固定リングおよび回転リングの少なくとも一方が請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のセラミックス摺動部材からなることを特徴とするメカニカルシールリング。
- 前記セラミックス摺動部材は、前記セラミックスがアルミナ、炭化けい素、炭窒化けい素および炭素のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載のメカニカルシールリング。
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