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JP2007069817A - ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置 - Google Patents

ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置 Download PDF

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JP2007069817A JP2005260888A JP2005260888A JP2007069817A JP 2007069817 A JP2007069817 A JP 2007069817A JP 2005260888 A JP2005260888 A JP 2005260888A JP 2005260888 A JP2005260888 A JP 2005260888A JP 2007069817 A JP2007069817 A JP 2007069817A
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Takeshi Yamanaka
剛 山中
Tadashi Okuda
正 奥田
Kazutaka Adachi
和孝 安達
Takeshi Ito
健 伊藤
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  • Control Of Transmission Device (AREA)
  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)
  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)

Abstract

【課題】電気走行(EV)モードからハイブリッド(HEV)モードへの切り換え時におけるエンジン始動を、出力トルクの抜け感なしに行い得るようにする。
【解決手段】アクセル増に伴うEV→HEVモード切り換え要求時t1にモード2301b により制御を開始し、HEV用第1クラッチ伝達トルク容量tTc1を増やし、EV&HEV用第2クラッチがスリップし始める前から第1クラッチの引き摺りによりエンジンのクランキングを開始する。モード2301bでは、第2クラッチが分担可能な範囲の駆動力をEVモードで発生させ、これを超えた駆動力になったら第2クラッチが滑り出すよう第2クラッチ伝達トルク容量tTc2をEVモード時最大駆動力evTmaxに維持する。第2クラッチが滑り始めたt2にモード2303に遷移し、第2クラッチを滑らせながら第1クラッチの引き摺りによるエンジン始動を行わせるようtTc2を決定し、tTc1は、駆動力の上昇と、第2クラッチの安定的なスリップを維持するよう決定する。
【選択図】図13

Description

本発明は、エンジン以外にモータ/ジェネレータからの動力によっても走行することができ、モータ/ジェネレータからの動力のみにより走行する電気走行(EV)モードと、エンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力により走行するハイブリッド走行(HEV)モードとを有するハイブリッド車両に関し、特に、前者のEVモードでの走行中にエンジン出力も必要になって後者のHEVモードへ切り換えるに際し、エンジンを始動させるための装置に関するものである。
上記のようなハイブリッド車両に用いるハイブリッド駆動装置としては従来、様々な型式のものが提案されているが、そのうちの1つとして、特許文献1に記載のごときものが知られている。
このハイブリッド駆動装置は、エンジン回転を変速機に向かわせる軸に結合して、これらエンジンおよび変速機間にモータ/ジェネレータを具え、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間を切り離し可能に結合する第1クラッチを有すると共に、モータ/ジェネレータおよび変速機出力軸間を切り離し可能に結合する第2クラッチをトルクコンバータの代わりに有した構成になるものである。
かかるハイブリッド駆動装置を具えたハイブリッド車両は、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結する場合、モータ/ジェネレータからの動力のみにより走行する電気走行(EV)モードとなり、第1クラッチおよび第2クラッチをともに締結する場合、エンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力により走行するハイブリッド走行(HEV)モードとなり得る。
かかるハイブリッド車両において、前者のEVモードでの走行中エンジン出力が必要になり、EVモードから後者のHEVモードへ切り換えるに際しては、エンジンを始動させながら当該モード切り替えを行う必要がある。
かかるモードの切り替えおよびエンジンの始動に際しては従来、特許文献1にも記載されている通り、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間にあって解放状態の第1クラッチを締結進行させ、該第1クラッチの引き摺りトルクにより停止状態のエンジンをクランキングさせてエンジンを始動させることでEVモードからHEVモードへのモード切り換えを行う。
そして特許文献1には更に、上記エンジン始動時のエンジントルク変動や、第1クラッチを締結する時のトルク変動が駆動車輪に伝達されてショックとなるのを防止するため、モータ/ジェネレータおよび変速機間にあって締結状態の第2クラッチを一旦解放し、この状態で上記第1クラッチの締結進行によるエンジンの始動を行わせる技術も提案されている。
特開平11−082260号公報
しかし従来のように、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間の第1クラッチを締結進行させてエンジンをクランキングさせている間、モータ/ジェネレータおよび変速機間の第2クラッチを解放状態にしておくのでは、かかるエンジンのクランキング中に第2クラッチが動力源および駆動車輪間を切り離して駆動車輪へのトルク伝達を行わなくすることから、駆動車輪への出力トルクがゼロになってエンジンのクランキング中に出力トルクの抜けを感じさせ、運転者に違和感を与える虞がある。
本発明は、第2クラッチを従来のように完全解放する代わりに、スリップ締結させれば、第1クラッチの締結進行によるエンジン始動時の変動が駆動車輪に伝達されるのを防止しつつ、エンジンのクランキング中に駆動車輪への出力トルクがゼロになって出力トルクの抜け感が発生するという上記の問題を解消し得るとの事実認識にもとづき、この着想を具体化して上記の問題解決を実現したハイブリッド車両のエンジン始動制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明によるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置は、請求項1に記載した以下の構成とする。
先ず、前提となるハイブリッド車両を説明するに、これは、
動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能な第2クラッチを介在させたものである。
そしてこのハイブリッド車両は、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なものである。
本発明は、かかるハイブリッド車両に対し、以下のような第1クラッチ締結制御手段、第2クラッチ締結制御手段、およびモータ/ジェネレータ制御手段を設ける。
第1クラッチ締結制御手段は、電気走行モードでの走行中ハイブリッド走行モードヘモード切り替えするとき第1クラッチを締結進行させて、該第1クラッチの引き摺りトルクによりエンジンを始動させるものである。
また第2クラッチ締結制御手段は、第1クラッチ締結制御手段によるエンジンの始動に伴う第1クラッチの伝達トルク変動が駆動車輪に伝わるのを防止するため第2クラッチを、車両運転状態に応じた目標駆動力相当の伝達トルク容量となるようスリップ締結させておくものである。
更にモータ/ジェネレータ制御手段は、第2クラッチ締結制御手段により第2クラッチがスリップ締結されているとき、該スリップ締結を維持するべくモータ/ジェネレータが作用するよう該モータ/ジェネレータのトルクを制御するものである。
上記した本発明によるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、
電気走行モードでの走行中ハイブリッド走行モードに切り替えるときのエンジン始動を以下のごとくに行う。
つまり、第1クラッチ締結制御手段は、第1クラッチを締結進行させて、その引き摺りトルクによりエンジンを始動させ、
第2クラッチ締結制御手段は、第1クラッチ締結制御手段によるエンジンの始動に伴う第1クラッチの伝達トルク変動が駆動車輪に伝わるのを防止するよう第2クラッチを、車両運転状態に応じた目標駆動力相当の伝達トルク容量となるようスリップ締結させ、
モータ/ジェネレータ制御手段は、第2クラッチ締結制御手段により第2クラッチがスリップ締結されているとき、このスリップ締結を維持するべくモータ/ジェネレータが作用するようモータ/ジェネレータのトルクを制御する。
従って、エンジンを上記のように第1クラッチの締結進行によりクランキングして始動させる間、第2クラッチが上記のスリップ締結により、目標駆動力相当のトルクを継続的に伝達する反面、エンジン始動時のトルク変動を駆動車輪に伝達されなくすることとなり、トルク変動によるショックを回避しつつ、駆動力の抜け感を回避してこれに伴う違和感をなくすことができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の前記したエンジン始動制御装置を適用可能なハイブリッド駆動装置を具えたフロントエンジン・リヤホイールドライブ車(後輪駆動式ハイブリッド車両)のパワートレーンを示し、1はエンジン、2は駆動車輪(後輪)である。
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置し、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータ/ジェネレータ5を設ける。
モータ/ジェネレータ5は、モータとして作用したり、ジェネレータ(発電機)として作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置する。
このモータ/ジェネレータ5およびエンジン1間に、より詳しくは、軸4とエンジンクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン1およびモータ/ジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。
ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
モータ/ジェネレータ5および自動変速機3間に、より詳しくは、軸4と変速機入力軸3aとの間に第2クラッチ7を介挿し、この第2クラッチ7によりモータ/ジェネレータ5および自動変速機3間を切り離し可能に結合する。
第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
自動変速機3は、2003年1月、日産自動車(株)発行「スカイライン新型車(CV35型車)解説書」第C−9頁〜第C−22頁に記載されたと同じものとし、複数の摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結したり解放することで、これら摩擦要素の締結・解放組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定するものとする。
従って自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。
この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。
但し自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
上記した図1のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7を締結し、自動変速機3を動力伝達状態にする。
この状態でモータ/ジェネレータ5を駆動すると、当該モータ/ジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸3bより出力する。
変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータ/ジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第1クラッチ6および第2クラッチ7をともに締結し、自動変速機3を動力伝達状態にする。
この状態では、エンジン1からの出力回転およびモータ/ジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bより出力する。
変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータ/ジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータ/ジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換し、この発電電力をモータ/ジェネレータ5のモータ駆動に用いるよう蓄電しておくことでエンジン1の燃費を向上させることができる。
なお図1では、モータ/ジェネレータ5および駆動車輪2を切り離し可能に結合する第1クラッチ7を、モータ/ジェネレータ5および自動変速機3間に介在させたが、
図2に示すように、第2クラッチ7を自動変速機3およびディファレンシャルギヤ装置8間に介在させても、同様に機能させることができる。
また、図1および図2では第2クラッチ7として専用のものを自動変速機3の前、若しくは、後に追加することとしたが、
この代わりに第2クラッチ7として、図3に示すごとく自動変速機3内に既存する前進変速段選択用の摩擦要素または後退変速段選択用の摩擦要素を流用するようにしてもよい。
この場合、第2クラッチ7が前記したモード選択機能を果たすのに加えて、この機能を果たすよう締結される時に自動変速機を動力伝達状態にすることとなり、専用の第2クラッチが不要でコスト上大いに有利である。
図1〜3に示すハイブリッド車両のパワートレーンを成すエンジン1、モータ/ジェネレータ5、第1クラッチ6、および第2クラッチ7は、図4に示すようなシステムにより制御する。
なお以下では、パワートレーンが図1に示すようなものである場合について説明を進めることとする。
図4の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具え、パワートレーンの動作点を、目標エンジントルクtTeと、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(目標モータ/ジェネレータ回転数tNmでもよい)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量tTc1と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2とで規定する。
統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、
エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ11からの信号と、
モータ/ジェネレータ回転数Nmを検出するモータ/ジェネレータ回転センサ12からの信号と、
変速機入力回転数Niを検出する入力回転センサ13からの信号と、
変速機出力回転数Noを検出する出力回転センサ14からの信号と、
エンジン1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15からの信号と、
モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号とを入力する。
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータ/ジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1〜図3に示すように配置することができる。
統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数No(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択すると共に、目標エンジントルクtTe、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(目標モータ/ジェネレータ回転数tNmでもよい)、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1、および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2をそれぞれ演算する。
目標エンジントルクtTeはエンジンコントローラ21に供給され、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(目標モータ/ジェネレータ回転数tNmでもよい)はモータ/ジェネレータコントローラ22に供給される。
エンジンコントローラ21は、エンジントルクTeが目標エンジントルクtTeとなるようエンジン1を制御し、
モータ/ジェネレータコントローラ22はモータ/ジェネレータ5のトルクTm(または回転数Nm)が目標モータ/ジェネレータトルクtTm(または目標モータ/ジェネレータ回転数tNm)となるよう、バッテリ9およびインバータ10を介してモータ/ジェネレータ5を制御する。
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(図示せず)に供給し、第1クラッチ6の伝達トルク容量Tc1が目標伝達トルク容量tTc1に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2が目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
統合コントローラ20は、上記した運転モード(EVモード、HEVモード)の選択、そして目標エンジントルクtTe、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(目標モータ/ジェネレータ回転数tNmでもよい)、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1、および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2の演算を、図5の機能別ブロック線図で示すように実行する。
目標駆動力演算部30では、図7に示す到達目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから、定常的な到達目標駆動力tFo0を演算する。
運転モード選択部40では、図8に示すEV−HEV領域マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標とする運転モードを決定する。
図8に示すEV−HEV領域マップから明らかなように、高負荷・高車速時はHEVモードを選択し、低負荷・低車速時はEVモードを選択し、EV走行中にアクセル開度APOおよび車速VSPの組み合わせで決まる運転点がEV→HEV切り換え線を越えてHEV領域に入るときEVモードからHEVモードへのモード切り換えを行い、また、HEV走行中に運転点がHEV→EV切り換え線を越えてEV領域に入るときHEVモードからEVモードへのモード切り換えを行うものとする。
図5の目標充放電演算部50では、図9に示す充放電量マップを用いて、バッテリ蓄電状態SOCから目標充放電量(電力)tPを演算する。
動作点指令部60では、アクセル開度APOと、到達目標駆動カtFo0と、目標運転モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらを動作点到達目標として、時々刻々の過渡的な目標エンジントルクtTeと、目標モータ/ジェネレータトルクtTmと、第1クラッチ6の目標ソレノイド電流Is1と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2と、目標変速段SHIFTとを演算する。
変速制御部70では、上記の目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2と、目標変速段SHIFTとを入力され、これら目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2および目標変速段SHIFTが達成されるよう自動変速機3内の対応するソレノイドバルブを駆動する。
これにより図3の自動変速機3は、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2が達成されるよう締結制御されつつ、目標変速段SHIFTが選択された動力伝達状態になる。
上記の動作点指令部60は、図6に示す制御プログラムを実行して、上記の過渡的な目標エンジントルクtTeと、目標モータ/ジェネレータトルクtTmと、第1クラッチ目標ソレノイド電流Is1と、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2と、目標変速段SHIFTとを演算する。
ステップS61においては、現在の駆動力から前記した到達目標駆動力tFo0へ所定の味付けをもった応答で移行するのに必要な過渡目標駆動力tFoを演算する。
この演算に当たっては例えば、到達目標駆動力tFo0を所定時定数のローパスフィルタに通過させて得られる出力を過渡目標駆動力tFoとすることができる。
次のステップS62においては、過渡目標駆動力tFoを得るのに必要な自動変速機3の目標入力トルクtTiを次式の演算により求める。
tTi=tFo×Rt/if/iG ・・・(1)
ここで、Rtは駆動車輪2のタイヤ有効半径、ifはファイナルギヤ比、iGは現在の選択変速段により決まる自動変速機3のギヤ比である。
ステップS63においては、図5の運転モード選択部40で決定した目標運転モードに従った運転モードの選択を行う。
定常的には、目標運転モードがEVモードであればEVモードを選択し、目標運転モードがHEVモードであればHEVモードを選択する。
HEVモードでの走行中に目標運転モードがEVモードになれば、HEVモードからEVモードヘのモード切り換えを行い、
EVモードでの走行中に目標運転モードがHEVモードになれば、図12に示す状態遷移図に従って後述するごとくにモード切り換えを行うことにより、本発明に係わるエンジン1の始動を伴う当該EVモードからHEVモードヘのモード切り換えを実行する。
ステップS64においては、図10に例示する予定の変速マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標変速段SHIFTを決定し、これを図5の変速制御部70へ指令して自動変速機3を目標変速段SHIFTへと変速させる。
なお図10において、実線は隣り合う変速段間のアップシフト線であり、破線は隣り合う変速段間のダウンシフト線である。
但し、これらアップシフト線もしくはダウンシフト線を横切って対応する変速要求が発生しても、EVモードからHEVモードヘの切り換え中であれば、当該モード切替が終了するまでこの変速要求を実行せず、モード切り換え後に対応する変速を行わせるものとする。
ステップS65においては目標エンジントルクtTeを以下のようにして求める。
HEVモードであれば、先ず、ステップS62で求めた目標入力トルクtTiと、自動変速機3の入力回転数Niと、エンジン回転数Neとから、次式を用いて理想エンジントルクtTeOを演算する。
tTeO=(tTi× Ni−tP)/Ne ・・・(2)
そして、図11に例示する最大エンジントルクマップをもとに、エンジン回転数Neに応じた最大エンジントルクTemaxを求め、上式により求めた理想エンジントルクtTeO を最大エンジントルクTemaxを超えないよう制限したものを目標エンジントルクtTeとする。
また、EVモードであればエンジントルクが不要であるから、目標エンジントルクtTeはゼロとする。
なお、運転モードの切り換え中であれば、後で詳述するモード切り換え中の操作に従って目標エンジントルクtTeを決める。
上記のように決定した目標エンジントルクtTeは、図4のエンジンコントローラ21に指令し、エンジンコントローラ21はエンジン1を目標エンジントルクtTeが実現されるよう制御する。
本発明におけるモータ/ジェネレータ制御手段に相当するステップS66においては、EVモードもしくはHEVモードのいずれかであれば、次式を用いて目標モータ/ジェネレータトルクtTmを演算する。
tTm=tTi−tTe ・・・(3)
モード切り換え中であれば、後述するモード切り換え中の操作に従って目標モータ/ジェネレータトルクtTmを決定する。
以上のように決定した目標モータ/ジェネレータトルクtTmは、図4のモータ/ジェネレータコントローラ22に指令し、モータ/ジェネレータコントローラ22はモータ/ジェネレータ5を目標モータ/ジェネレータトルクtTmが実現されるよう、インバータ10を介して制御する。
本発明における第1クラッチ締結制御手段に相当するステップS67においては、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量tTc1を以下のように決定する。
EVモードであれば、第1クラッチ6を解放しておくため、その目標伝達トルク容量tTc1はゼロにし、HEVモードであれば、第1クラッチ6を締結するため、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1を最大値にする。
そしてモード切り換え中であれば、後述するモード切り換え中の操作に従って目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1を決定する。
以上のように決定した目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は、図5に示す目標第1クラッチソレノイド電流Is1に変換されて、図4に示すごとく第1クラッチ6の締結制御に用いられ、第1クラッチ6を目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1が実現されるよう締結制御する。
本発明における第2クラッチ締結制御手段に相当するステップS68においては、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2を以下のように決定する。
EVモードであれば、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2をEVモードでの最大駆動力相当値evTmax(EV時第2クラッチ最大伝達トルク容量)とし、HEVモードであれば目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を最大値にする。
そしてモード切り換え中であれば、後述するモード切り換え中の操作に従って目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を決定する。
以上のように決定した目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、図5の変速制御部70を介して第2クラッチ7の締結制御に用いられ、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2が実現されるよう締結制御する。
つまり目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、目標変速段SHIFTとともに図5の変速制御部70へ指令され、自動変速機3の目標変速段SHIFTへの変速制御に供される。
ここで本発明に係わる、エンジン始動を伴うEVモードからHEVモードヘの切り換え制御を、図12に示す状態遷移図と、図13,14に示すタイムチャートとに基づき以下に詳述する。
EVモードでの走行中、アクセル開度APOを図13のように増大させた(目標駆動力が増大した)結果、運転点が例えば図8の点Aから点A’へと変化して目標モードがHEVモードになり、EVモードからHEVモードヘのモード切り換えが発生した場合は、
図12および図13に示すごとくEVモードから先ずモード2301bに遷移してモード切り換えが開始され、その後モード2303〜2307を経てHEVモードに至る。
モード2301b、およびモード2303〜2307については後で詳述する。
EVモードでの走行中、アクセル開度APOは図14のように一定であっても、車速VSPが上昇した結果、運転点が例えば図8の点Bから点B’へと変化して目標モードがHEVモードになり、EVモードからHEVモードヘのモード切り換えが発生した場合や、
運転点を例えば図8のC点に固定したままであってもバッテリ蓄電状態SOCが低下した結果、目標モードがHEVモードになってEVモードからHEVモードヘのモード切り換えが発生した場合は、
図12および図14に示すごとくEVモードから先ずモード2301aに遷移してモード切り換えが開始され、その後、モード2302a(モード2302a1または2302a2)およびモード2303〜2307を経てHEVモードに至る。
モード2301aおよびモード2302a(モード2302a1,2302a2)については後で詳述する。
先ず、前者のようなアクセル開度増(目標駆動力増)に伴う、モード2301b を経由するEVモードからHEVモードヘのモード切り換えについて、図12および図13を参照しつつ説明する。
このモード切り換えは、アクセルペダルの踏み込みによるEVモードからHEVモードヘの切り換え要求(エンジン始動要求)であるから、滑らかなモード切り換え(エンジン始動)よりも高応答なモード切り換え(エンジン始動)による素早い駆動力増大が望まれる。
また、アクセル操作に応じた駆動力変化中であるから、或る程度のモード切り換え(エンジン始動)力ショックは、運転者がこれを感じない運転状態である。
そこで、当該モード2301bを通るモード切り換え制御では、以下のようにこれを行わせることとする。
アクセルペダルの踏み込みによるEVモードからHEVモードヘの切り換え要求瞬時t1(図13)に、モード2301bへと遷移してモード切り換えが開始され、このモード2301bでは、第2クラッチ7が分担可能な範囲の駆動力はEVモードで発生させ、第2クラッチ7が分担可能な範囲を超えた駆動力になったらできるだけ早く第2クラッチ7が滑り出すように制御するため、以下のような制御態様にする。
《第1クラッチ6の締結制御》
上述した通り早くエンジン1を始動したい要求から、図13に示すように目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1を増やし、第2クラッチ7がスリップし始める前から第1クラッチ6の引き摺りトルクによりエンジン1のクランキング(エンジン回転数Ne≧0)を開始する。
但し、第1クラッチ6の引き摺りトルクが大きすぎると駆動力が低下して減速感が発生するから、これを防止するために目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は次式で示す範囲内とする。
tTc1<Tmmax−tTi ・・・(4)
ここで、Tmmaxはモータ/ジェネレータ5の最大トルクである。
《第2クラッチ7の締結制御》
上記した通りモード2301bでは、第2クラッチ7が分担可能な範囲の駆動力はEVモードで発生させ、第2クラッチ7が分担可能な範囲を超えた駆動力になったらできるだけ早く第2クラッチ7が滑り出すようにするため、
モード2301bでの目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を、図13に示すようにEVモードでの最大駆動力相当値evTmaxに維持する。
《エンジン1の制御》
モード2301bではエンジン始動前のため、モード2301bでの目標エンジントルクtTeを図13に示すようにゼロとする。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2301bでは第1クラッチ6の引き摺りトルクによる駆動力低下を抑制するため、目標モータ/ジェネレータトルクtTmとして、過渡目標駆動力tFoを実現する目標変速機入力トルクtTiに第1クラッチ6の引き摺りトルク補償分tTc1を加算して得られる、次式で表されるトルク値を図13のように与える。
tTm=tTi+tTc1 ・・・(5)
《次モード2303ヘの遷移条件》
上記の制御中、アクセル開度APOの増大に伴う目標変速機入力トルクtTiの上昇に呼応した目標モータ/ジェネレータトルクtTmの上昇で、モータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクがEVモードでの最大駆動力相当値に維持されたEV時第2クラッチ最大伝達トルク容量evTmaxを超えると、第2クラッチ7が滑り始める。
かように第2クラッチ7が滑り始めた図13の瞬時t2に前記のモード2301bから次のモード2303へと遷移する。
第2クラッチ7が滑り始める前後で第2クラッチ7が伝達するトルクは、モータ/ジェネレータ5によるトルクから第2クラッチ7の伝達トルク容量分Tc2に連続的もしくは段階的に切り換わるため、駆動力が段差を持ったものにならず、その連続性が確保される。
また、第1クラッチ6の引き摺りトルクを確保しながら第2クラッチ7をスリップさせるには、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2をEVモードで出し得る駆動力範囲まで下げなくてはならないが、予めEVモードから第2クラッチ伝達トルク容量Tc2をEVモードで出せる最大駆動力相当値に維持しておくため、EVモードで出し得る駆動力範囲まで第2クラッチ7の締結作動油圧を下げる時間を省略することができ、エンジン始動による駆動力上昇のレスポンスが向上する。
遷移(瞬時t2)後のモード2303では、第1クラッチ6の締結時における駆動力変動ショックを減らすことを目的に、第2クラッチ7を滑らせながら第1クラッチ6の引き摺りトルクによるエンジン始動を行わせるため、以下のような制御態様とする。
《第2クラッチの締結制御》
第2クラッチ7が滑っているときには、第2クラッチ7の入力側で如何なるトルク変動が発生しようとも、第2クラッチの出力トルクは第2クラッチ伝達トルク容量となる。
そこで、モード2303では目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を次式により決定し、
tTc2=tTi ・・・(6)
この目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を、図13に示すごとく過渡目標駆動力tFo0(目標変速機入力トルクtTi)の上昇にあわせて上昇させる。
《第1クラッチ6の締結制御》
モード2303での第1クラッチ6の目標伝達トルク容量tTc1は、駆動力の上昇と、第2クラッチ7の安定的なスリップを維持するため、次式で表される範囲内の値とする。
Tc1min<tTc1<Tmmax−tTc2=Tmmax−tTi ・・・(7)
ここでTc1minは、エンジン点火前であればエンジンフリクション値とし、エンジン点火後であればゼロとする。
《エンジン1の制御》
モード2303ではエンジン1がクランキングされていることから、エンジン1が始動されるような制御を行う。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2303でのモータ/ジェネレータ制御に当たっては、例えば、第2クラッチ7の目標スリップ量dNc2を達成するための目標モータ/ジェネレータ回転数tNmを次式により求め、
tNm=Ni+dNc2 ・・・(8)
モータ/ジェネレータ回転数Nmがこの目標値tNmに一致するよう、PI制御器(P:比例制御、I:積分制御)を用いてモータ/ジェネレータ5を回転数制御する。
かかるPI制御によれば、図13に示すように第1クラッチ6の締結時におけるクラッチトルク変動に合わせてモータ/ジェネレータトルクtTmが変化し、モータ/ジェネレータ5の回転数制御を安定して行うことができる。
但しPI制御器のみでは、第1クラッチ6の引き摺りトルク負荷により回転変動が発生してから、この回転変動を抑えるようにモータ/ジェネレータトルクtTmが変化するため、このモータ/ジェネレータトルクtTmによる第1クラッチ6の回転変動(トルク変動)補償では、モータ/ジェネレータ回転数の一時的な低下量が多くなるため、第2クラッチ7に大きめのスリップ量を確保する必要がある。
そこで、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1に合わせて、フイードフォワード制御により第1クラッチ6のトルク変動を補償する成分を目標モータ/ジェネレータトルクtTmに加えるようにするのがよい。
かようにフィードフォワード補償を加える場合、第1クラッチ6のトルク変動をモータ/ジェネレータにより早く補償することができ、結果としてモータ/ジェネレータ回転数の一時的な低下量が多くなるのを抑制することができ、第2クラッチのスリップ量を少なくしてその発熱を抑制することができる。
なお同じ目的を達成するには、上記のフイードフォワード制御を追加する代わりに、モータ/ジェネレータの回転慣性系に基づく外乱オブザーバを用いて、モータ/ジェネレータ5に作用するモータ/ジェネレータトルク以外のトルクを外乱とみなして外乱推定を行い、この外乱推定値でモータ/ジェネレータトルクを補正して外乱相殺を行ってもよい。
回転数制御を用いることなく第2クラッチ7のスリップを維持するその他の手法としては、次式に示すように、目標モータ/ジェネレータトルクtTmが、駆動力分(第2クラッチ7の伝達トルク容量tTc2)に第1クラッチ6の引き摺りトルク補償分tTc1を加えた値より大きくなるよう、モータ/ジェネレータ5をオープン制御する方法もある。
tTm〉tTc2+tTc1・・・・(9)
《次モード2304ヘの遷移条件》
上記の制御中、エンジン回転数Neがモータ/ジェネレータ回転数Nm以上になる図13の瞬時t3に、エンジン回転数Neのオーバーシュート抑制のためモード2303からモード2304へと遷移する。
上記した制御により、第1クラッチ6の締結完了時にも第2クラッチ7がスリップ状態を安定に維持されることから、第1クラッチ6が締結完了したり、クラッチ前後の回転差が逆転して第1クラッチ6の伝達トルクが急変しても、これらに伴う第1クラッチの伝達トルク変動が自動変速機3に伝わるのを回避でき、ショックのないエンジン始動が可能であると共に第2クラッチ7の発熱を抑制することができる。
モード2304では、エンジン回転数Neのオーバーシュートを抑制するために、次のように制御態様とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
このモード2304では第2クラッチ7が未だ滑っているため、変速機入力トルクTiは第2クラッチ伝達トルク容量tTc2と同じである。
そこで、モード2304での目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、前記した式(6)で表されるように決定し、過渡目標駆動力tFoに合わせて図13に示すように設定する。
《第1クラッチ6の締結制御》
モード2304では上記の通り第1クラッチ6が締結を完了していることから、当該モードでの目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は、図13に示すように最大伝達トルク容量とする。
《エンジン1の制御》
モード2304では第1クラッチ6が締結を完了し、エンジン始動後であることから、目標エンジントルクtTeとしてHEVモードでの目標エンジントルクを設定する。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2304でのモータ/ジェネレータ制御に当たっては、前記したモード2303におけると同様、例えば、目標第2クラッチスリップ量dNc2を達成するように目標モータ/ジェネレータ回転数tNmを前記した式(8)により求め、モータ/ジェネレータ回転数Nmがこの目標値tNmに一致するようモータ/ジェネレータ5を回転数制御したり、
目標モータ/ジェネレータトルクtTmが前記した式(8)に示すように、駆動力分(第2クラッチ7の伝達トルク容量tTc2)に第1クラッチ6の引き摺りトルク補償分tTc1を加えた値より大きくなるよう、モータ/ジェネレータ5をオープン制御する。
《次モード2305ヘの遷移条件》
エンジン回転数Neがモータ/ジェネレータ回転数Nm以上になった図13の瞬時t3以後、エンジン回転数Neとモータ/ジェネレータ回転数Nmとが所定時間に亘ってほぼ同じであると判定する図13の瞬時t4に、第1クラッチ6の締結が確実に完了したとの判断にもとづき、モード2304からモード2305へと遷移する。
上記した制御により、第1クラッチ6の締結完了時にも第2クラッチ7がスリップ状態を安定に維持されることから、第1クラッチ6が締結完了したり、クラッチ前後の回転差が逆転して第1クラッチ6の伝達トルクが急変しても、これらに伴う第1クラッチの伝達トルク変動が駆動車輪2に伝わるのを回避でき、ショックのないエンジン始動が可能であると共に第2クラッチ7の発熱を抑制することができる。
モード2305では、第2クラッチ7の再締結時におけるショックを抑制するために、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクと、第2クラッチ7の伝達トルク容量とを一致させた状態にすることを旨とし、そのために以下のような制御態様とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
このモード2305では第2クラッチ7が未だ滑っているため、変速機入力トルクTiは第2クラッチの伝達トルク容量tTc2と同じ値になる。
そこで、モード2305での目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、前記した式(6)で表されるように決定し、過渡目標駆動力tFoに合わせて図13に示すように設定する。
《第1クラッチ6の締結制御》
モード2305では上記の通り第1クラッチ6が締結を完了していることから、当該モードでの目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は、図13に示すように最大伝達トルク容量とする。
《エンジン1の制御》
モード2305では第1クラッチ6が締結を完了し、エンジン始動後であることから、目標エンジントルクtTeとしてHEVモードでの目標エンジントルクを設定する。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2305でのモータ/ジェネレータ制御に当たっては、後続のモード2306,2307での滑らかな第2クラッチ7の締結に備えるため、第2クラッチ7の目標スリップ量dNc2を安定して達成するように、目標モータ/ジェネレータ回転数tNmを前記した式(8)により求め、モータ/ジェネレータ回転数Nmがこの目標値tNmに一致するようモータ/ジェネレータ5の回転数制御を行う。
《次モード2306ヘの遷移条件》
エンジン回転数Neとモータ/ジェネレータ回転数Nmとが所定時間に亘ってほぼ同じであると判定する(第1クラッチ6の締結完了を判定する)図13の瞬時t4以後、モータ/ジェネレータ回転数Nmが所定時間に亘って目標モータ/ジェネレータ回転数tNm近傍と判定する図13の瞬時t5に、回転のオーバーシュートやトルクの変動が抑えられ第2クラッチ7が一定速に安定したスリップ状態であって、エンジンおよびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7へ入力されるトルクと第2クラッチ伝達トルク容量Tc2とがほぼ同じであるとの判断のもと、モード2305からモード2306へと遷移する。
ここで、最初から第2クラッチ7のスリップをゼロにすることを目標とせず、所定量のスリップ状態を目標とするのは、モータ/ジェネレータ回転数のアンダーシュートにより第2クラッチ7のスリップ方向が逆転して駆動力変動が発生するのを抑制するためである。
このモード2306では、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクと、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2とがほぼ同じである状態を維持しながら、モータ/ジェネレータ回転数Nmのアンダーシュートにより第2クラッチ7のスリップ方向が逆転して駆動力変動が発生するのを抑制するため、以下の制御態様とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
このモード2306では第2クラッチ7が未だ滑っているため、変速機入力トルクTiは第2クラッチの伝達トルク容量tTc2と同じ値になる。
そこで、モード2306での目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、前記した式(6)で表されるように決定し、過渡目標駆動力tFoに合わせて図13に示すように設定する。
《第1クラッチ6の締結制御》
モード2306では上記の通り第1クラッチ6が締結を完了していることから、当該モードでの目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は、図13に示すように最大伝達トルク容量とする。
《エンジン1の制御》
モード2306では第1クラッチ6が締結を完了し、エンジン始動後であることから、目標エンジントルクtTeとしてHEVモードでの目標エンジントルクを設定する。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2306でのモータ/ジェネレータ制御に当たっては、目標第2クラッチスリップ量dNc2の変化速度が、目標第2クラッチスリップ量dNc2の減少に伴って小さくなるよう、目標第2クラッチスリップ量dNc2を徐々にゼロまで減らしながら、目標モータ/ジェネレータ回転数tNmを前記した式(8)により決定し、モータ/ジェネレータ回転数Nmがこの目標値tNmに一致するようモータ/ジェネレータ5の回転数制御を行う。
《次モード2307ヘの遷移条件》
図13の瞬時t5以後、目標第2クラッチスリップ量dNc2が0近傍である状態が所定時間継続した瞬時t6に、第2クラッチ7の再締結を行うためのモード2307へと遷移する。
このように、目標第2クラッチスリップ量dNc2がゼロ近傍になったときに第2クラッチ7の再締結を行うようにすれば、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクと第2クラッチ伝達トルク容量tTc2とがほぼ一致した状態で第2クラッチ7の再締結が行われることとなり、第2クラッチ7の伝達トルクがその伝達トルク容量Tc2からエンジントルクおよびモータ/ジェネレータトルクの合成トルクに切り替わっても、第2クラッチ7の再締結時におけるトルク変動を抑制することができる。
このモード2307では、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクと、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2とがほぼ同じである状態を維持しながら第2クラッチ7を再締結させるために、以下の制御態様とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
モータ/ジェネレータ5の回転数制御では、回転センサの精度や外乱トルクによる影響で、確実に第2クラッチ7の前後回転差をゼロにするまでに時間がかかる場合がある。
そこで、このモード2307においては、第2クラッチ7のスリップ量が或る程度なくなったら、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2を図13に示すように、許容できる駆動力変動以下になるようにオープン制御で徐々に増大させ、滑らかに第2クラッチ7のスリップ量をなくしつつ当該第2クラッチ7の再締結を行わせる。
《第1クラッチ6の締結制御》
モード2307では第1クラッチ6が締結状態であることから、当該モードでの目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1は、図13に示すように最大伝達トルク容量とする。
《エンジン1の制御》
モード2307では第1クラッチ6が締結状態であり、エンジン始動後であることから、目標エンジントルクtTeとしてHEVモードでの目標エンジントルクを設定する。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
このモード2307では目標モータ/ジェネレータトルクtTmを図13に示すように、瞬時t6での指令値を保持する。
《次モード2307ヘの遷移条件》
図13の瞬時t6から所定時間が経過した瞬時t7にHEVモードに遷移して、EVモードからHEVモードへのモード切り換えを終了する。
以上の制御により、第2クラッチ7をショックなしに滑らかに再締結することができ、エンジン始動を伴うEVモードからHEVモードへのモード切り換えを完了することができる。
但し、モータ/ジェネレータ5の回転数制御を用いて、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5から第2クラッチ7に入力されるトルクと、第2クラッチ伝達トルク容量Tc2とをほぼ同じにする場合、目標エンジントルクtTeと実際のエンジントルクTeとの間における乖離量や外乱トルクをモータ/ジェネレータトルクで補償することになるため、モード2307の終了時t7においてHEVモードでの目標モータ/ジェネレータトルクtTmとモータ/ジェネレータトルクTmとの間にずれΔTm(図13参照)が発生する。
このため、HEVモードにする瞬時t7になって直ちに目標モータ/ジェネレータトルクtTmをHEVモードでの目標モータ/ジェネレータトルクに変えると、モータ/ジェネレータトルク偏差ΔTmに基づく駆動力変化が発生してショックになる。
かといって、このモータ/ジェネレータトルク偏差ΔTmを保持し続けると、所望の充放電量の妨げになる。
そこで、HEVモードにする図13の瞬時t7からモータ/ジェネレータトルク偏差ΔTmを徐々にゼロにすることにより、駆動力の急変およびこれに伴うショックが発生するのを防止することとする。
次に、バッテリ蓄電状態SOCの低下や、車速VSPの上昇に伴う、モード2301a を経由するEVモードからHEVモードヘのモード切り換えについて、図12および図14を参照しつつ説明する。
このモード切り換えは、運転者のアクセル操作によるものでなく、運転者が一定の運転操作を継続している間における、エンジン始動が必要なモード切り換えであるから、速やかなモード切り換えやエンジン始動よりも、駆動力変化(ショック)の小さい滑らかなモード切り換えやエンジン始動が望まれる。
そこで、当該モード2301aを通るモード切り換え制御では、以下のようにこれを行わせることとする。
バッテリ蓄電状態SOCの低下や、車速VSPの上昇に伴う、EVモードからHEVモードヘの切り換え要求瞬時t1(図14)に、モード2301aへと遷移してモード切り換えが開始され、このモード2301aでは、第2クラッチ7の作動(締結)油圧を少しでも早く抜くため、以下のような制御態様とする。
《第1クラッチ6の締結制御》
高応答なエンジン始動よりも滑らかなエンジン始動が要求されているため、このモード2301aでは未だ第1クラッチ6の引き摺りトルクによるエンジン1のクランキングを開始させない。
《第2クラッチ7の締結力制御》
モード2301aで必要以上に第2クラッチ7の作動油圧が抜け、第2クラッチ7のスリップが発生して駆動カが抜けるのを防ぐため、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2が図14に示すごとく、目標変速機入力トルクtTi相当値よりも若干大きな値まで低下するよう、第2クラッチ7の作動油圧を低下させる。
《エンジン1の制御》
モード2301aでは、エンジン始動前のため目標エンジントルクtTeを図14に示すように0と定める。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
モード2301aでは、エンジン始動前であって未だEV走行故に、目標モータ/ジェネレータトルクtTmを、図14に例示するようなEVモードでの目標トルクとする。
《次モード2302aヘの遷移条件》
図14の瞬時t1から、第2クラッチ7の作動油圧の抜けに要する所定時間が経過した瞬時t2’に、モード2301aからモード2302a(2302a1または2302a2)へと遷移するが、この時クラッチ作動油温が所定値以上ならばモード2302alに遷移し、クラッチ作動油温が所定値より小さいならばモード2302a2に遷移する。
高温時に選択されるモード2302a1では、油温が高くてクラッチ作動油圧の制御性が良いため、以下のような制御態様とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
モード2302a1での第2クラッチ7の締結制御に当たっては、第2クラッチ7の目標スリップ量dNc2が達成されるように第2クラッチ7をスリップ制御し、そのためのスリップ制御器としてはPI制御器を用いるのがよい。
《第1クラッチ6の締結力制御》
エンジン始動の応答性よりも滑らかさが優先されるため、このモード2302a1では第1クラッチ6の締結進行によるエンジンのクランキングを図14に示すように未だ開始させない。
《エンジン1の制御》
このモード2302a1では、エンジンが未だ始動前なので目標エンジントルクtTeを図14に示すようにゼロとする。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
このモード2302a1では、未だEVモードでの走行中のため、目標モータ/ジェネレータトルクtTmをEVモードでの値とする。
一方で、低温時に選択されるモード2302a2では、油温が低くてクラッチ作動油圧の制御性が良くなく、第2クラッチ7の安定したスリップ制御が難しいため、上記した高温時の制御と異なり、以下のようなオープン制御とする。
《第2クラッチ7の締結制御》
モード2302a2では、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を、オープン制御により所定の時間変化割合で徐々に減少させる。
《第1クラッチ6の締結制御》
高応答なエンジン始動よりも滑らかなエンジン始動が要求されているため、このモード2302a2では未だ第1クラッチ6の引き摺りトルクによるエンジン1のクランキングを開始させない。
《エンジン1の制御》
このモード2302a2では未だエンジン始動前のため、目標エンジントルクtTeを図14に示すように0とする。
《モータ/ジェネレータ5の制御》
このモード2302a2では未だエンジン始動前でEVモードによる走行が行われているから、目標モータ/ジェネレータトルクtTmをEVモードでの目標モータ/ジェネレータトルクとする。
《次モード2303ヘの遷移条件》
図14の瞬時t2’以後、モード2302a1による上記の制御が行われている場合は、第2クラッチ7がスリップし始めた瞬時t2に、または、モード2302a2による上記の制御が行われている場合は、第2クラッチ7がスリップし始めてからこのスリップが安定するのに必要な所定時間が経過した瞬時t2に、モード2302a(モード2302a1または2302a2)からモード2303へと遷移する。
上記の制御によれば、第2クラッチ7のスリップが一定に保たれている安定状態のもとでは、第2クラッチ伝達トルク容量Tc2が、第2クラッチ締結時の伝達トルクと同じになり、第2クラッチ7がスリップする前後の変速機入力トルクTiをほぼ同じにし得ることから、駆動力の変動を抑えてショックを緩和することができる。
その理由をを以下に説明する。
第2クラッチ7が締結され、変速機入力回転数Niが或る加速度dNで加速していると仮定すると、このときモータ/ジェネレータ5の回転系運動方程式は次式で表される。
Jm×dN=Tm−Tc2 ・・・(10)
ここで、Jmはモータ/ジェネレータ5の慣性モーメント、Tmはモータ/ジェネレータトルク、Tc2は第2クラッチ7の伝達トルク容量である。
よって、第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は、式(10)から次式により表される。
Tc2=Tm−Jm×dN ・・・(11)
また、第2クラッチ7のスリップが一定で安定している時も、モータ/ジェネレータ5の加速度は第2クラッチ7を締結している時と同じdNであるから、モータ/ジェネレータ5の回転系運動方程式は前記の式(10)で表される。
したがって、第2クラッチ7の伝達トルクTc2も、第2クラッチ7を締結しているときと同じ式(11)で表されるので、第2クラッチ7のスリップが一定で安定していれば、第2クラッチの伝達トルク容量を締結時の伝達トルクと同じに自動調節することができる。
図14の瞬時t2に、モード2302a(モード2302a1または2302a2)からモード2303への遷移が行われた後は、図12に示すごとく、モード2301bを経由する場合と同様の制御が行われ、図14の瞬時t2以後に示すような制御が遂行される。
ところで、図12のモード2302a2を経由する低温時は、第2クラッチ7がスリップし始めてからこのスリップが安定するのに必要な所定時間が経過した時に、モード2302a2からモード2303への遷移を行うこととしたから、以下の作用効果が得られる。
第2クラッチ7のスリップ発生時には、第2クラッチの伝達トルク容量Tc2が変速機入力トルクTiとほぼ一致するが、クラッチ作動油圧は目標値に対し遅れて追従するため、第2クラッチ7がスリップした時点の目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2は変速機入力トルクTiよりも少し小さくなる。
よって、クラッチ作動油圧が安定すると、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2がスリップ開始時よりも少し小さくなると共に駆動力も小さくなるが、
第2クラッチ7がスリップし始めたことだけを条件とせず、このスリップ開始からこのスリップが安定するのに必要な所定時間が経過した時にモード2303への遷移を行うことにより、低温のためクラッチ作動油圧の制御性が悪いときでも第2クラッチのスリップ開始前後における駆動力段差を抑制でき、制御精度を高めることができる。
上記した本実施例によるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、
EVモードでの走行中、HEVモードに切り替えるときのエンジン始動に際し、
第1クラッチ6を締結進行させて、その引き摺りトルクによりエンジン1を始動させ、
このエンジン始動に伴う第1クラッチの伝達トルク変動が駆動車輪2に伝わるのを防止するよう第2クラッチ7を、車両運転状態に応じた過渡目標駆動力tFo相当の伝達トルク容量となるようスリップ締結させ、
かかる第2クラッチ7のスリップ締結を維持するべくモータ/ジェネレータ5が機能するようモータ/ジェネレータ5のトルクを制御するから、
エンジン1を上記のように第1クラッチ6の締結進行によりクランキングして始動させる間、第2クラッチ7が上記のスリップ締結により、過渡目標駆動力tFo相当のトルクを継続的に伝達する反面、エンジン始動時のトルク変動を駆動車輪2に伝達されなくすることとなり、トルク変動によるショックを回避しつつ、駆動力の抜け感を回避してこれに伴う違和感をなくすことができる。
また本実施例においては、第2クラッチ7をスリップ締結させながら第1クラッチ6の締結進行によりエンジンをクランキングさせて始動する時、エンジンの始動に要する第1クラッチ6の引き摺り(スリップ)トルク分と、車輪駆動力となる第2クラッチ7のスリップトルク分との和の近傍値となるようモータ/ジェネレータ5のトルクを制御することができる。
この場合、エンジン1のクランキングと、駆動力発生とを両立させながら、第2クラッチ7のスリップ状態を安定下に維持して上記の作用効果を達成することができる。
更に本実施例においては、第1クラッチ6の締結進行による引き摺り(スリップ)トルクの上昇に合わせてモータ/ジェネレータ5のトルクを上昇させることができる。
この場合、第1クラッチ6の引き摺り(スリップ)トルク分がモータ/ジェネレータ5の回転を低下させる傾向が緩和され、第2クラッチ7のスリップ状態を安定下に維持して上記の作用効果を達成することができる。
更に本実施例においては、第2クラッチ7をスリップ締結させながら第1クラッチ6の締結進行によりエンジン1をクランキングさせて始動する時、第2クラッチ7が所定のスリップ状態となるようモータ/ジェネレータ5をスリップサーボ制御することができる。
この場合、モータ/ジェネレータトルクが第2クラッチ7のスリップを確保するように自動的に設定されることとなり、第2クラッチ7のスリップ状態を確実に維持して上記の作用効果を確実なものにすることができる。
更に本実施例においては、モータ/ジェネレータトルク以外の、モータ/ジェネレータに作用するトルクを外乱として、この外乱を推定する外乱オブザーバを有し、この外乱推定値をモータ/ジェネレータトルクに加えて外乱補償を行うことができる。
この場合、第1クラッチ6の引き摺りトルクや第2クラッチ7の引き摺りトルクを自動的に精度よく推定し得ることとなり、これら引き摺りトルクによるモータ/ジェネレータ5の回転低下を良好に抑制して、第2クラッチ7のスリップ状態を安定下に維持することができ、上記の作用効果を確実に達成することができる。
更に本実施例においては、EVモードからHEVモードへの切り換え時におけるエンジン始動に際し、EVモードで実現可能な第2クラッチ7の伝達トルク範囲内において第2クラッチ7の伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後に第2クラッチのスリップを開始させることができる。
この場合、モータ/ジェネレータトルクの増加で第2クラッチ7のスリップを先行させることによる駆動力の突き上げや、第2クラッチ7の伝達トルク容量の減少で第2クラッチ7のスリップを先行させることによる駆動力の抜けを防止でき、ショックの少ない第2クラッチ7のスリップおよびエンジン始動を実現することができる。
更に本実施例においては、第2クラッチの伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後に、モータ/ジェネレータトルクを上昇させることにより第2クラッチ7のスリップを開始させることにより、
モータ/ジェネレータトルクの増加で第2クラッチ7のスリップを先行させることによる駆動力の突き上げを防止でき、ショックの少ない第2クラッチ7のスリップおよびエンジン始動を実現することができる。
更に本実施例においては、第2クラッチ7の伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後、第2クラッチ7の伝達トルク容量を更に減少させることにより第2クラッチのスリップを開始させることができる。
この場合、第2クラッチ7の伝達トルク容量の減少で第2クラッチ7のスリップを先行させることによる駆動力の抜けを防止でき、ショックの少ない第2クラッチ7のスリップおよびエンジン始動を実現することができる。
更に本実施例においては、第2クラッチ7のスリップ締結時に第2クラッチ7の伝達トルク容量を、エンジン要求負荷の増大に応じて大きく、エンジン要求負荷の低下に応じて小さくすることにより、
第2クラッチ7の再締結を待たずに駆動力を増加させることができるようにし、もって、駆動力の応答性を向上させることができる。
更に本実施例においては、第1クラッチ6の引き摺りトルクでエンジン1を始動させている時の第1クラッチ6の伝達トルク容量をエンジンのフリクション以上とすることにより、
第1クラッチ6の引き摺りトルクでエンジン1を確実にクランキングさせて、これを始動させることができる。
更に本実施例においては、エンジン1が始動するまでの間、モータ/ジェネレータ5の最大トルクからエンジンのフリクション分を差し引いて得られる値の範囲内の値に目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を設定することができる。
この場合、エンジン1の確実なクランキングを確保しながら、第2クラッチ7の伝達トルク容量を上げ過ぎる弊害を回避することができる。
ちなみに第2クラッチ7の伝達トルク容量を上げ過ぎると、これと、第1クラッチ6の伝達トルク容量とが、モータ/ジェネレータ5で支え得る負荷を超えてモータ/ジェネレータ回転数が引き下げられ、第2クラッチ7の所定のスリップ状態を維持できなくなるところながら、本実施例によればかかる事態の発生を回避することができる。
更に本実施例においては、エンジン1が始動するまでの間、モータ/ジェネレータ5の最大トルクから目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2を差し引いて得られる値の範囲内の値に目標第1クラッチ伝達トルクtTc1を設定することができる。
この場合、駆動力の発生に際し余ったモータ/ジェネレータトルクの全てがエンジン1のクランキングに用いられるため、エンジン1の始動が速くなり駆動力発生の応答性を向上させることができる。
更に本実施例においては、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数に対してオーバーシュートした時、これらの間の回転差の反転にあわせてモータ/ジェネレータトルクを減少させることにより、
エンジン回転数およびモータ/ジェネレータ回転数間の回転差の反転による第1クラッチ6のスリップトルク負荷の反転に伴いモータ/ジェネレータ回転数が上昇して第2クラッチ7の前後回転差が広がるのを防止することができ、結果として第2クラッチ7の発熱が増大するのを防止して、その耐久性を向上させることができる。
更に本実施例においては、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数よりも高い状態から第1クラッチ6が締結された直後にモータ/ジェネレータトルクを増加させ、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数よりも低い状態から第1クラッチ6が締結された直後にモータ/ジェネレータトルクを減少させるようにすることができる。
この場合、第1クラッチ6の締結時におけるスリップ負荷に合わせてモータ/ジェネレータトルクを変化させることで、
第2クラッチ7のスリップ中であれば、そのスリップを所定量に維持して、このスリップ量の増加による第2クラッチの発熱の問題や、このスリップ量を確保できないことによる駆動力変動の問題を緩和することができ、また、
第2クラッチ7が締結状態であれば、第1クラッチ6の伝達トルク変動による駆動力変動を、モータ/ジェネレータトルクの変化により抑制することができる。
更に本実施例においては、エンジン1の始動が終わって第2クラッチ7を再締結するに際し、第2クラッチ7の入出力回転速度差の変化率がゼロ近傍となるようモータ/ジェネレータ5を制御することができる。
この場合、第2クラッチ7の入出力回転速度差CL2回転差がなくなって、第2クラッチ7の伝達トルクがその伝達トルク容量から、エンジントルクおよびモータ/ジェネレータトルクの和値に替わっても、伝達トルクの変動が少なくて第2クラッチ7の再締結時におけるショックを抑制することができる。
本発明の着想を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図である。 本発明の着想を適用可能な他のハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図である。 本発明の着想を適用可能な更に他のハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図である。 図3に示したパワートレーンの制御システムを示すブロック線図である。 同制御システムにおける統合コントローラの機能別ブロック線図である。 同機能別ブロック線図における動作点指令部が実行する制御プログラムを示すフローチャートである。 図6のフローチャートで到達目標駆動力を求めるときに用いる到達目標駆動力の特性線図である。 ハイブリッド車両の電気走行(EV)モード領域およびハイブリッド走行(HEV)モード領域を示す領域線図である。 ハイブリッド車両のバッテリ蓄電状態に対する目標充放電量特性を示す特性線図である。 ハイブリッド車両に搭載した自動変速機の変速線図である。 ハイブリッド車両に搭載したエンジンの許容最大トルクを例示する特性線図である。 ハイブリッド車両が電気走行(EV)モードからハイブリッド走行(HEV)モードに切り換わる時のモード遷移マップ図である。 アクセル操作に伴って電気走行(EV)モードからハイブリッド走行(HEV)モードへ移行する場合の、図6に示す制御プログラムによる動作タイムチャートである。 車速変化やバッテリ蓄電状態の変化に伴って電気走行(EV)モードからハイブリッド走行(HEV)モードへ移行する場合の、図6に示す制御プログラムによる動作タイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 駆動車輪(後輪)
3 自動変速機
4 伝動軸
5 モータ/ジェネレータ
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 ディファレンシャルギヤ装置
9 バッテリ
10 インバータ
11 エンジン回転センサ
12 モータ/ジェネレータ回転センサ
13 変速機入力回転センサ
14 変速機出力回転センサ
15 アクセル開度センサ
16 バッテリ蓄電状態センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータ/ジェネレータコントローラ
30 目標駆動力演算部
40 運転モード選択部
50 目標充放電量演算部
60 動作点指令部
70 変速制御部

Claims (18)

  1. 動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能な第2クラッチを介在させ、
    第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なハイブリッド車両において、
    前記電気走行モードでの走行中ハイブリッド走行モードヘモード切り替えするとき第1クラッチを締結進行させて、該第1クラッチの引き摺りトルクによりエンジンを始動させる第1クラッチ締結制御手段と、
    この手段によるエンジンの始動に伴う第1クラッチの伝達トルク変動が前記駆動車輪に伝わるのを防止するため第2クラッチを、車両運転状態に応じた目標駆動力相当の伝達トルク容量となるようスリップ締結させておく第2クラッチ締結制御手段と、
    この手段により第2クラッチがスリップ締結されているとき、該スリップ締結を維持するべく前記モータ/ジェネレータが作用するよう該モータ/ジェネレータのトルクを制御するモータ/ジェネレータ制御手段とを具備してなることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記ハイブリッド車両が、前記第2クラッチおよび駆動車輪間に自動変速機を介在され、第2クラッチからの動力を自動変速機により変速して駆動車輪に向かわせるものであることを特徴とする、ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  3. 請求項1に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記ハイブリッド車両が、前記モータ/ジェネレータおよび第2クラッチ間に自動変速機を介在され、モータ/ジェネレータからの動力を自動変速機により変速した後、第2クラッチを経て駆動車輪に向かわせるものであることを特徴とする、ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  4. 請求項1に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記ハイブリッド車両が、前記モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に自動変速機を介在され、該自動変速機内にあってトルク伝達を司るクラッチの1つを前記第2クラッチとして流用するものであることを特徴とする、ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、第2クラッチを前記スリップ締結させながら第1クラッチの締結進行によりエンジンを始動させる時、エンジンの始動に要する第1クラッチのスリップトルク分と、車輪駆動力となる第2クラッチのスリップトルク分との和の近傍値となるようモータ/ジェネレータのトルクを制御するものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、第1クラッチの締結進行によるスリップトルクの上昇に合わせてモータ/ジェネレータのトルクを上昇させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、第2クラッチを前記スリップ締結させながら第1クラッチの締結進行によりエンジンを始動させる時、第2クラッチが所定のスリップ状態となるようモータ/ジェネレータをスリップサーボ制御するものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、モータ/ジェネレータトルク以外の、モータ/ジェネレータに作用するトルクを外乱として、この外乱を推定する外乱オブザーバを有し、この外乱推定値をモータ/ジェネレータトルクに加えて外乱補償を行うものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第2クラッチ締結制御手段およびモータ/ジェネレータ制御手投は、前記エンジン始動を行うに際し、電気走行モードで実現可能な第2クラッチの伝達トルク範囲内において第2クラッチの伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後に第2クラッチのスリップを開始させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  10. 請求項9に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第2クラッチ締結制御手段が第2クラッチの伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後に、前記モータ/ジェネレータ制御手段がモータ/ジェネレータトルクを上昇させることにより第2クラッチのスリップを開始させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  11. 請求項9に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第2クラッチ締結制御手段が、第2クラッチの伝達トルク容量を目標第2クラッチ伝達トルク近傍まで減少させた後、第2クラッチの伝達トルク容量を更に減少させることにより第2クラッチのスリップを開始させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第2クラッチ締結制御手段が、第2クラッチのスリップ締結時に第2クラッチの伝達トルク容量を、エンジン要求負荷の増大に応じて大きく、エンジン要求負荷の低下に応じて小さくするものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第1クラッチ締結制御手段は、第1クラッチの引き摺りトルクでエンジンを始動させている時の第1クラッチの伝達トルク容量をエンジンのフリクション以上とするものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第2クラッチ締結制御手段は、エンジンが始動するまでの間、モータ/ジェネレータの最大トルクからエンジンのフリクション分を差し引いて得られる値の範囲内の値に目標第2クラッチ伝達トルクを設定するものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記第1クラッチ締結制御手段は、エンジンが始動するまでの間、モータ/ジェネレータの最大トルクから目標第2クラッチ伝達トルクを差し引いて得られる値の範囲内の値に目標第1クラッチ伝達トルクを設定するものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数に対してオーバーシュートした時、これらの間の回転差の反転にあわせてモータ/ジェネレータトルクを減少させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ制御手段は、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数よりも高い状態から第1クラッチが締結された直後にモータ/ジェネレータトルクを増加させ、エンジン回転数がモータ/ジェネレータ回転数よりも低い状態から第1クラッチが締結された直後にモータ/ジェネレータトルクを減少させるものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータ手段は、エンジンの始動が終わって第2クラッチを再締結するに際し、第2クラッチの入出力回転速度差の変化率がゼロ近傍となるようモータ/ジェネレータを制御するものであることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。

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