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JP2007051203A - 含フッ素共重合体、該含フッ素共重合体を含有する皮膜形成用組成物、この皮膜形成用組成物を用いた反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、並びに該反射防止フィルム又は該偏光板を用いた画像表示装置 - Google Patents

含フッ素共重合体、該含フッ素共重合体を含有する皮膜形成用組成物、この皮膜形成用組成物を用いた反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、並びに該反射防止フィルム又は該偏光板を用いた画像表示装置 Download PDF

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JP2007051203A
JP2007051203A JP2005236680A JP2005236680A JP2007051203A JP 2007051203 A JP2007051203 A JP 2007051203A JP 2005236680 A JP2005236680 A JP 2005236680A JP 2005236680 A JP2005236680 A JP 2005236680A JP 2007051203 A JP2007051203 A JP 2007051203A
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Masato Nagura
正人 名倉
Masaki Noro
正樹 野呂
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Fujifilm Corp
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Abstract

【課題】屈折率の低いポリマーである含フッ素共重合体の提供、このポリマーを用いた大量生産に適した塗布型の反射防止フィルム作製のための皮膜形成用組成物の提供、この皮膜形成用組成物を用いた反射率が低く、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムの提供、並びにこのような反射防止フィルムをその最表面に用いた画像表示装置の提供。
【解決手段】特定の化学構造を有する繰返し単位を含んでなる含フッ素共重合体、この含フッ素共重合体を含有する皮膜形成用組成物、透明支持体上に、この皮膜形成用組成物から形成された低屈折率層を塗設してなる反射防止フィルム、このような反射防止フィルムが、偏光膜の一方の保護フィルムに用いられた偏光板、及びこのような反射防止フィルム又は偏光板がディスプレイの最表面に用いられている画像表示装置。
【選択図】なし

Description

本発明は新規な含フッ素共重合体、該含フッ素共重合体を含有する皮膜形成用組成物、この皮膜形成用組成物を用いた反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、並びに該反射防止フィルム又は該偏光板を用いた画像表示装置に関する。
反射防止フィルムは、一般に、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するように光学製品などの表面に設置され、特に良好な視認性を求められる陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、その表示面の最表面に配置される。
このような反射防止フィルムは、反射防止層として高屈折率層の上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層を形成するための素材としては、反射防止性能の観点から可能な限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、及び下層への密着性を高めることが重要である。
材料の屈折率を下げる手段としては、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段があり、特許文献1〜3には、安価な含フッ素オレフィンを主成分とする硬化性樹脂重合体の、反射防止膜への利用に関して記載がなされている。しかしながら、上記(1)、(2)いずれの場合も、皮膜強度及び密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する方向である。
低屈折率性を保ちながら耐擦傷性を大きく向上させる手段として、表面への滑り性付与が有効である。滑り性付与に対してはフッ素の導入、シリコーン系化合物の導入等の手法が有効であり、これらの手段は表面張力を下げるために他の目的であるレベリング性付与にも効果が期待できる。低屈折率層に含フッ素ポリマーを用いる場合には、それ自体でも滑り性を有しているが、溶媒に可溶化するために、炭化水素系共重合成分を50%程度導入した側鎖の短いフッ素系材料単独では十分な滑り性が得られない。そこでシリコーン系化合物と組み合わせることが従来から行われてきた。
低屈折率層素材に対して少量のシリコーン系化合物を添加することにより、滑り性発現効果及び耐擦傷性改良効果は顕著に現れる。また、滑り性に加えて撥水性やディスプレイの最表面に用いられる反射防止膜の性能として重要度の高い防汚性等の効果も発現する。しかし一方で、低屈折率層素材との相溶性(皮膜の透明性)、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン系成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等さまざまな問題があった。特に反射防止フィルムにおいては、相溶性不足によるヘイズ発生は光学性能を悪化させるため大きな問題である。また低屈折率層塗布後、反射防止フィルムを巻き取った際に、該反射防止フィルムの裏面にシリコーン系化合物が付着することがその後の加工工程に支障をきたすため大きな問題になっている。
一方、シリコーン系成分を含フッ素共重合体にグラフトさせる手法として、特許文献4には、エポキシ基を含有する含フッ素オレフィン共重合体とアミノ基含有ポリシロキサン
との高分子反応を用いたフッ素ゴムの合成法について記載されている。また特許文献5〜7にはシリコンマクロマーと含フッ素オレフィンの共重合体に関して記載されている。
特開平8−92323号公報。 特開平10−147749号公報。 特開平10−25388号公報。 特開昭56−28219号公報。 特開平2−251555号公報。 特開平2−308806号公報。 特開平6−322053号公報。
しかしながら、特許文献4記載の技術では、該特許文献における化合物はフィルムとして塗布することが出来ず、反射防止フィルム用途には用いることが出来ない。また特許文献5〜7に記載の技術は、そもそも反射防止フィルム用途を前提としていないため、透明性や屈折率、強度など、目的とする性能が極めて不足している。
本発明の課題は、第1に屈折率の低いポリマーを提供することであり、第2にこのポリマーを用いて、大量生産に適した塗布型の反射防止フィルム作製のための皮膜形成用組成物を提供することであり、第3に、このような皮膜形成用組成物を用いて、反射率が低く、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを提供することであり、第4に耐久性、耐候性に優れた反射防止フィルムを提供することであり、第5に反射が防止され、耐擦傷性、防汚性に優れた反射防止フィルムを偏光膜の一方の保護フィルムとして用いた偏光板を提供することにあり、第6にこのような反射防止フィルム又は偏光板をその最表面に用いた画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、フッ素を含み且つシリコーン系部位を有する共重合体を用いることで反射率が低く、耐擦傷性、防汚性に優れた反射防止膜を得た。
すなわち本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
[1] 下記一般式(1)で表される繰返し単位を含んでなる含フッ素共重合体。
一般式(1):
Figure 2007051203
一般式(1)において、Rf1は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Rf2は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表す。Aは架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する繰り返し単位からなる構成成分を表し、Bは任意の繰り返し単位からなる構成成分を表す。Zは下記のポリシロキサン構造:
Figure 2007051203
を含む構成成分を表わす。R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。a〜dはそれぞれ各構成成分のモル分率(モル%)を表し、それぞれ5≦a≦45、30≦b≦70、5≦c≦65、0≦d≦30の関係を満たす値を表す。但し、a+b+c+d=100である。sはポリシロキサン構造を含む構成成分Zの全共重合体に対する質量分率(質量%)を表し、0<s≦20の関係を満たす値を表す。p1は10〜1000の整数を表す。
[2] 一般式(1)における構成成分Aが、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和二重結合を有する基、または開環重合反応性基のいずれかを有する重合体の構成成分を表す上記[1]に記載の含フッ素共重合体。
[3] 一般式(1)における構成成分Aが、下記一般式(2)で表される繰返し単位からなる上記[1]または[2]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
一般式(2):
Figure 2007051203
一般式(2)において、Lは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、エーテル結合を有してもよい。cは上記[1]で定義したとおりである。
[4] 一般式(1)におけるポリシロキサン構造を含む構成成分Zが、下記一般式(3)で表される構造である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
一般式(3):
Figure 2007051203
一般式(3)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はシアノ基を表し、R7〜R12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基又はフェニル基を表す。q1、q2はそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。q3、q4はそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。p2は10〜1000の整数を表す。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の含フッ素共重合体を含有することを特徴とする皮膜形成用組成物。
[6] 皮膜形成用組成物がさらに硬化剤を含んでいる上記[5]に記載の皮膜形成用組成物。
[7] 皮膜形成用組成物がさらに無機微粒子を含有する上記[5]又は[6]に記載の皮膜形成用組成物。
[8] 無機微粒子が平均粒子径1〜200nmのシリカ微粒子である上記[7]に記載の皮膜形成用組成物。
[9] 透明支持体上に、屈折率の異なる複数の機能層を塗設してなる反射防止フィルムであって、該機能層のうちの少なくとも一層が低屈折率層であり、該低屈折率層が上記[5]〜[8]のいずれかに記載の皮膜形成用組成物から形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。
[10] 上記[9]に記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
[11] 上記[9]に記載の反射防止フィルム又は上記[10]に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
本発明で得られる含フッ素共重合体は、フッ素含率が高いため、屈折率が低い。また該含フッ素共重合体により形成された皮膜からなる反射防止フィルムは、反射防止能が高く、耐擦傷性に優れている。また、シリコーン系成分を含有するため、滑り性が付与されており、耐擦傷性がさらに向上しているだけでなく、防汚性にも優れている。この反射防止フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されているうえ、耐擦傷性が高く、さらに優れた防汚性をも有する。
本願明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として
含む意味で使用される。また、本発明でいう「重合」には、共重合も含む趣旨である。さらに、本発明でいう「支持体上」には、該支持体等の直接の表面をいう場合と、該支持体等の上に何らかの層(膜)を設けた表面をいう場合の両方を含む趣旨である。
<含フッ素共重合体>
〔一般式(1)で表される共重合体〕
[一般式M1又はM2で表される単量体成分]
本発明で用いられる前記一般式(1)で表される共重合体について説明する。
一般式(1)で表される共重合体は、下記一般式M1又はM2で表される含フッ素単量体成分と、構成成分A及びBを形成する単量体成分、及びポリシロキサン構造含む構成成分からなるランダム共重合体である。これらそれぞれの一般式で表される構成成分は、それぞれ1種類で構成されていても、複数の単量体によって構成されていてもよい。
Figure 2007051203
Figure 2007051203
M1中、Rf1は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基である。この含フッ素アルキル基は、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH2(CF24H、−CH2(CF28CF3、−CH2CH2(CF24H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF32、−CH2CF(CF32、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF25CF2H等}を有していてもよく、また脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)を有していてもよく、エーテル結合(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH248H、−CH2CH2OCH2CH2817、−CH2CHF2OCF2CF2OCF2CF2H等)を有していてもよい。Rf1はペルフルオロアルキル基であってもよい。
Rf1の好ましい形態としては、合成適性、及び基材への密着性の観点から下記一般式(4)で表される構造が好ましく、特に下記一般式(5)で表される構造が好ましい。
一般式(4):
−CH2−(CH2q5−(O)r1−Rf3
一般式(4)において、Rf3は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基(好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基であり、より好ましくは炭素数2〜10の含フッ素アルキル基であり、さらに好ましくはフッ素含率60質量%以上のアルキル基であり、特に好ましくはフッ素含率70質量%以上のアルキル基である)を表し、直鎖(例えばRf1の例として上記した構造が挙げられる)であっても、分岐構造(例えばRf1の例として上記した構造が挙げられる)であっても、又は脂環式構造(例えばRf1の例として上記した構造が挙げられる)であってもよく、エーテル結合(例えばRf1の例として上記した構造が挙げられる)を有していてもよい。q5は0〜5の整数を表し、より好ましくは0〜3の整数であり、特に好ましくは0又は1である。r1は0又は1を表す。Rf3の基はペルフルオロ基であってもよい。
一般式(5):
−CH2(CH2q6OCHR13Rf4
一般式(5)においてRf4は、Rf3の説明として上記したものと同じ意味を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜10のフッ素原子を含む/又は含まないアルキル基を表し(例えばCH3、CH2CH3、CH2CF3等)、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のア
ルキル基であり、R13とRf4は互いに結合して環構造(好ましくは5員又は6員環、例えばペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロテトラヒドロフリル基等)を形成していてもよい。q6は0〜4の整数を表し、好ましくは0〜3の整数であり、特に好ましくは0又は1である。
これらのM1の導入量、すなわちaの値は、5〜45モル%の範囲であり、5〜40モル%の範囲であることが好ましく、10〜30モル%の範囲であることがより好ましい。
以下に、一般式(1)で表される共重合体を形成する前記の単量体M1の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007051203
Figure 2007051203
Figure 2007051203
M1で表される上記単量体は、例えば、“Macromolecules”,32巻(21)、p.7122(1999年)、特開平2−721号公報等に記載のごとく、ビニロキシアルキルスルフォネート、ビニロキシアルキルクロリド等の離脱基置換アルキルビニルエーテル類に対して、塩基触媒存在下含フッ素アルコールを作用させる方法;国際公開第92/05135号パンフレットに記載のごとく、含フッ素アルコールとブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類をパラジウム等の触媒存在下混合してビニル基の交換を行う方法;米国特許第3420793号明細書記載のごとく、含フッ素ケトンとジブロモエタンをフッ化カリウム触媒存在化で反応させた後、アルカリ触媒により脱HBr反応を行う方法等により合成することができる。
前記一般式(1)で表される共重合体を形成する単量体M2において、Rf2は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基をわす。重合反応性の観点からはペルフルオロメチル基又はペルフルオロエチル基が好ましく、入手性の観点からペルフルオロメチル基(M2はヘキサフルオロプロピレンを表す)であることが特に好ましい。
これらのM2の導入量、すなわちbの値は、30〜70モル%の範囲であり、35〜65モル%の範囲であることが好ましく、40〜60モル%の範囲であることがより好ましい。
[構成成分A]
構成成分Aは、架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する単量体に基づく繰り返し単位からなる構成成分を表す。架橋反応に関与し得る反応性基としては、例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和2重結合を有する基{例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等}、開環重合反応性基(例えばエポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(例えば活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
これらのうちで不飽和2重結合を有する基は、水酸基を有するポリマーを合成した後、(メタ)アクリル酸クロリド等の不飽和カルボン酸ハライド、(メタ)アクリル酸無水物
等の不飽和カルボン酸無水物などを作用させる等の方法で導入してもよく、3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で、脱塩化水素を行う等の定法によって形成してもよい。また同様に他の官能基もモノマー段階から導入されていてもよいし、水酸基等の反応性基を有するポリマーを合成後に導入してもよい。
上記の架橋反応性基の中で、好ましくは水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和二重結合を有する基、開環重合反応性基である。より好ましくは水酸基であり、具体的には2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記一般式(2)で表される水酸基を含有する単量体を用いることが望ましい。
一般式(2):
Figure 2007051203
一般式(2)において、Lは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、エーテル結合を有してもよい。
これらの架橋反応性基を有する共重合成分の導入量、すなわちcの値は、5〜65モル%の範囲であり、15〜45モル%の範囲であることが好ましく、25〜45モル%の範囲であることがより好ましい。以下に、架橋反応に関与し得る重合単位の好ましい例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007051203
Figure 2007051203
上記以外の共重合成分、すなわち一般式(1)における構成成分Bで表したものとしては、硬度、基材への密着性、溶媒への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。
これらの構成成分Bの導入量、すなわちdの値は、0〜30モル%の範囲であり、0〜25モル%の範囲であることが好ましく、0〜20モル%の範囲であることがより好ましい。
このような構成成分Bは、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類等に基づく繰り返し単位からなる構成成分を例として挙げることができる。
[ポリシロキサン構造を含む構成成分]
前記一般式(1)におけるポリシロキサン構造を含む構成成分Zにおいて、R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。sはポリシロキサン構造を含む構成成分Zの全共重合体に対する質量分率(質量%)を表し、0<s≦20の関係を満たす値を表す。p1は10〜1000の整数を表す。ポリシロキサン構造を含む構成成分Zは、どのように導入してもよい、すなわち、Zはポリシロキサン構造の他に任意の構造を有してもよい。操作の簡便さなどの観点から、高分子重合開始剤を用いる
ことが好ましく、アゾ基やペルオキシ基等のラジカル発生可能な基を有するポリシロキサン化合物がこれにあたる。特に下記一般式(3)で表されるポリシロキサン構造を含む構成成分であることがより好ましい。
一般式(3):
Figure 2007051203
上記一般式(3)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はシアノ基を表し、R7〜R12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基又はフェニル基を表す。q1、q2はそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。q3、q4はそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。p2は10〜1000の整数を表す。
なおこうした重合開始剤は、例えば特公平6−104711号公報、特開平6−93100号公報等に記載のごとくに合成できる。
こうした高分子重合開始剤のうち好ましいものの例を以下に示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
Figure 2007051203
Figure 2007051203
Figure 2007051203
Figure 2007051203
Figure 2007051203
ポリシロキサン構造を含む構成成分は、質量分率で0.01〜20%含まれていることが好ましく、0.05〜10%がより好ましく、0.1〜5%が特に好ましい。
本発明における含フッ素共重合体の数平均分子量(Mn)は1,000〜1,000,000の範囲にあることが好ましく、5,000〜500,000がより好ましい。さらに好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
[含フッ素共重合体の具体例]
表1、表2及び表3に本発明で有用な含フッ素共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1、表2及び表3には重合単位の組み合わせとして表記する。ポリシロキサン構造を含む構成成分を除いた成分中のモル分率及びポリシロキサン構造を含む構成成分を含む重合単位の質量分率を示す。
Figure 2007051203
本発明に用いられる一般式(1)で表される含フッ素共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって行うことができる。またこの際回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある
。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
重合温度は、生成する共重合体の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
ポリシロキサン構造を含む構成成分を導入する高分子重合開始剤(シリコンマクロマー)の共重合反応性が悪い場合には、適宜モノマーを滴下又は分割して添加してもよい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
<皮膜形成用組成物>
〔硬化触媒、硬化剤等〕
本発明の皮膜形成用組成物には、以上述べた含フッ素共重合体と共に、適宜、硬化触媒、又は硬化剤等が配合されてもよく公知のものを使用することができる。これらは、前記一般式(1)で表される含フッ素共重合体中の架橋反応性部位の硬化反応性に応じて選択される。この組成物は通常、液の形態をとる。
[含フッ素共重合体の硬化反応性部位が加水分解性シリル基の場合]
(ゾル/ゲル反応の触媒)
例えば一般式(1)の含フッ素共重合体が、加水分解性シリル基を硬化反応性部位として含有する場合には、ゾル/ゲル反応の触媒として公知の酸又は塩基触媒を配合することができ、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの無機ブレンステッド酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの有機ブレンステッド酸類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等のルイス酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミンなどの有機塩基類などを挙げることができるが、特に酸触媒が好ましく、中でもパラトルエンスルホン酸等の有機ブレンステッド酸類又はジブチル錫ジラウレート等のルイス酸類が好ましい。
これらの硬化触媒の添加量は、触媒の種類、硬化反応性部位の違いによってまちまちであるが、一般的には皮膜形成用組成物全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。
(光の作用により硬化促進剤を発生する化合物)
また皮膜形成用組成物の保存安定性の観点から、光の作用によって酸又は塩基等の硬化促進剤を発生する化合物を使用してもよい。これらの化合物を使用する場合には、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が可能になる。
光の作用により酸を発生する化合物としては、例えば有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号公報等に種々の例が記載されており、これら公知の化合物を使用することができる。
具体的には、R14SO3 -(R14はアルキル基、アリール基を表す)、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、BF4 -等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やs−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。光の作用で塩基を発生する化合物も公知のものを使用することができ、具体的にはニトロベンジルカルバメート類、ジニトロベンジルカルバメート類等を挙げることができる。
さらに硬化を促進する目的で脱水剤を使用してもよい。脱水剤としては、例えば、カルボン酸オルトエステル(オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル等)、又は酸無水物(無水酢酸等)等を挙げることができる。
またこの際、特開昭61−258852号公報等に記載のごとく、有機シリケート(各種アルコキシシラン加水分解部分縮合物)等を硬化剤として併用してもよい。これらの硬化剤を使用する場合には、上記含フッ素共重合体100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、含フッ素共重合体100部当り、5.0〜100質量部程度の添加量とすることが好ましい。
[含フッ素共重合体の硬化反応性部位が活性水素を有する基の場合]
(硬化剤)
一方、硬化反応性部位が水酸基等の活性水素を有する基である場合には、硬化剤を配合することが好ましく、かかる硬化剤としては、例えばポリイソシアネート系、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物などを挙げることができる。
ポリイソシアネート系としては、m−キシリレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、メチルシリルトリイソシアネートなどのシリルイソシアネート化合物、及びこれらイソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
アミノプラストとしては、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂などが採用される。中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールの1種又は2種以上により少なくとも部分的にエーテル化されたメチロールメラミン(例えばヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、ブチルエーテル化メチロールメラミン等)、又はこれらの縮合物などが挙げられる。
多塩基酸又はその無水物としては、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、フタル酸、無水フタル酸などの芳香族多価カルボン酸又はその無水物やマレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸などの脂肪族多価カル
ボン酸又はその無水物などが例示される。
本発明において、各成分の配合量は適宜選定することが可能であるが、上記含フッ素共重合体100質量部当り、硬化剤が0.5〜300質量部程度の量が好ましく、特に、含フッ素共重合体100質量部当り、硬化剤を5.0〜100質量部程度とすることが好ましい。また含フッ素共重合体とこれらの硬化剤をあらかじめ部分的に縮合させてもよい。
上記の硬化剤と共に、硬化反応を促進させるため、必要に応じて、適宜、硬化促進触媒を用いることができる。これらの例としては、加水分解性シリル基の硬化触媒として前記した塩基又は酸触媒を挙げることができ、また前記したとおり光の作用によってこれらの触媒を生成する化合物も好ましく使用することができる。これらの添加量の好ましい範囲も加水分解性シリル基の硬化触媒として前記した範囲と同様である。
[含フッ素共重合体の硬化反応性部位がカチオン重合性基の場合]
含フッ素共重合体の架橋反応性部位が、カチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)を有する場合にも、硬化触媒として上記同様の酸触媒を添加することができる。
この際、特に他の硬化剤を併用しなくてもよいが、これらのカチオン重合性基と反応可能な多官能化合物(例えば、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸等の多塩基、上記カチオン重合性基を一分子中に複数有する化合物)を硬化剤として併用することもできる。
これらの硬化剤を添加する場合、上記含フッ素共重合体100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、含フッ素共重合体100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。
[含フッ素共重合体の硬化反応性部位がラジカル重合性基の場合]
(ラジカル重合開始剤)
一方、含フッ素共重合体の架橋反応性部位が、ラジカル重合可能な不飽和2重結合(アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有する場合には、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として、2−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビスプロピオニトリル、2−アゾビスシクロヘキサンジニトリル等;ジアゾ化合物として、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類及び芳香族スルホニウム類等がある。
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
また、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
熱又は光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合が開始する量であればよいが、一般的には、皮膜形成用組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
上記したように、前記一般式(1)で表される含フッ素共重合体がラジカル重合可能な不飽和2重結合を有する場合には、他の硬化剤を併用しなくてもよいが、硬化剤としてこれらの不飽和結合と反応し得る多官能の不飽和モノマー{例えば、ジペンタエリスロトールヘキサ(メタ)アクリレート等、多価のアルコールから誘導される(メタ)アクリレートモノマー等}を添加してもよい。
これらの硬化剤を添加する場合も、他の硬化剤と同様に、上記含フッ素共重合体100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、含フッ素共重合体100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。
〔溶媒〕
本発明の皮膜形成用組成物は、通常一般式(1)で表される含フッ素共重合体を適当な溶媒に溶解して作製される。この際、該共重合体の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜20質量%程度である。
上記溶媒としては、一般式(1)で表される含フッ素共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶媒を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(
例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)、及び水などを挙げることができる。
本発明の皮膜形成用組成物は溶剤の乾燥の後に、ウェブで電離放射線および/または熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化し、皮膜を形成させてフィルムとすることができる。使用する素材により任意に選択することができるが、熱硬化単独でも電離照射線照射単独でも、両者を逐次行うことも好ましい。
熱硬化の条件としては、バインダーが架橋反応を起こす限りにおいて特に制限はないが、好ましくは40〜200℃以下、更に好ましくは60〜130℃、最も好ましくは80〜120℃である。熱硬化の時間は、硬化成分の組成、触媒種・量などにより異なるが、30秒〜24時間、好ましくは60秒〜1時間、最も好ましくは3分〜20分である。
フィルムの膜面温度を所望の温度にする方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフィルムに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線あるいは赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号に記載の回転金属ロールに温水や蒸気を流して加熱する方法も利用できる。一方、下記で述べる電離放射線の照射時においては、フィルムの膜面温度が上がる場合には、ロールを冷却してフィルムに接触させる方法が利用できる。
本発明における電離放射線種は特に制限されるものではなく、皮膜形成用組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく利用できる。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は10mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。
〔低屈折率層用材料〕
本発明においては、以上述べた含フッ素共重合体を含む皮膜形成用組成物を、例えば低屈折率層形成用組成物として用いこれを透明支持体上に塗設して、低屈折率層を形成することにより、複数の機能層を含む反射防止フィルムを作製することができる。
低屈折率層形成用組成物として上記皮膜形成用組成物を用いる場合には、上述の(A)含フッ素共重合体を含む硬化性のバインダーに加えて、(B)無機微粒子、さらには必要に応じて(C)後述するオルガノシラン化合物を含有することも好ましい。
[低屈折率層用無機微粒子]
無機微粒子の配合量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。無機微粒子の配合量が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が十分に発揮され、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪くなるなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。
無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
これら無機微粒子のサイズは、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは5〜90nmである。該無機微粒子の粒径が該下限値以上であれば耐擦傷性の改良効果が大きくなり、該上限値以下であれば低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪くなるなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
[オルガノシラン化合物]
本発明においては、低屈折率層はさらにオルガノシラン化合物を含んでなる硬化性組成物から形成されても良い。オルガノシラン化合物の定義や好ましい化合物の構造などは特開2004−331812号公報の[0059]〜[0085]に記載されている内容と同じである。
[低屈折率層形成用硬化性組成物に含有するその他の物質]
前記の硬化性皮膜形成用組成物を低屈折率層形成用組成物として用いるとき、該組成物は、前述の(A)含フッ素共重合体、および(B)無機微粒子、好適には(C)オルガノシラン化合物に、必要に応じてさらに各種添加剤及び後述するラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤を添加し、更にこれらを適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
低屈折率層と直接接する下層との界面密着性等の観点からは、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して30質量%以下の範囲とすることが好ましく、20質量%以下の範囲とすることがより好ましく、10質量%以下の範囲とすることが特に好ましい。
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系化合物又はフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中には、ジメチルシリルオキシ
以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X−22−164B”、“X22−164C”、“X−22−170DX”、“X−22−176D”、“X−22−1821”(以上商品名);チッソ(株)製の“FM−0725”、“FM−7725”、“FM−4421”、“FM−5521”、“FM6621”、“FM−1121”;Gelest製の“DMS−U22”、“RMS−033”、“RMS−083”、“UMS−182”、“DMS−H21”、“DMS−H31”、“HMS−301”、“FMS121”、“FMS123”、“FMS131”、“FMS141”、“FMS221”(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH2(CF24H、−CH2(CF28CF3、−CH2CH2(CF24H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF32、−CH2CF(CF32、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF25CF2H等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH248H、−CH2CH2OCH2CH2817、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成又は相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
好ましいフッ素系化合物の例としては、ダイキン化学工業(株)製の“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”(以上商品名);大日本インキ(株)製の「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
低屈折率層に、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤又はポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物
にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レダウコーニング(株)製“SH−3748”(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
[低屈折率層用の溶媒]
本発明における低屈折率層を形成するための塗布液に用いられる溶媒としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶媒が使用できる。乾燥負荷の観点からは、常圧、室温における沸点が100℃以下の溶媒を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶媒を少量含有することが好ましい。
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃を以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
本発明における低屈折率層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。
まず、低屈折率層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。得られた塗布液を用いて、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると、反射防止膜の各層を形成する場合のように、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ま
しくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、低屈折率層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
本発明のフィルムを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。さらにダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
<反射防止フィルム>
〔反射防止フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明な基材上に、必要に応じて、後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている。
反射防止フィルムは、最も単純な構成では、基材上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、支持体として機能している。
・基材フィルム/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、・帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。
また帯電防止層は、導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
〔低屈折率層以外の機能層〕
以上の様に、本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に、屈折率の異なる複数の機能層を塗設してなる反射防止フィルムであって、該機能層のうち少なくとも低屈折率層は、以上述べた含フッ素共重合体を必須の構成成分として含む皮膜形成用組成物から形成されていることを特徴とするものである。次ぎに低屈折率層以外の機能層について述べる。
[皮膜形成用バインダー]
本発明において、低屈折率層以外の機能層を形成するための皮膜形成用組成物の、主たる皮膜形成バインダー成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダーとは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上をしめるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
主たる皮膜形成バインダー成分は、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。なお本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を表す。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。これらのラジカル重合開始剤についての詳細は、前記の含フッ素共重合体を含む皮膜形成用組成物に関する記載の中で、硬化反応性部位としてラジカル重合性基を持つ含フッ素共重合体の硬化触媒として記載したものと同様のものを使用することができる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
本発明においてはポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに又はそれに加えて、架橋反応に関与し得る反応性基(以下、架橋性官能基ともいう)を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアネート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは、塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
[高屈折率層用材料]
本発明の反射防止フィルムには高屈折率層を設けることが好ましい。高屈折率層は、バインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーから形成されることができる。
(マット粒子)
高屈折率層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が0.1〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有させることができる。マット粒子とバインダー間の屈折率差は、フィルムの白濁防止と、光拡散効果のよさの観点から、0.02〜0.20であることが好ましく、0.04〜0.10であることが特に好ましい。マット粒子のバインダーに対する添加量も、屈折率と同様の観点から、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。
異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
2種類以上のマット粒子を用いる場合には、両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するため、屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。
またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を「粗大粒子」と定義すると、この粗大粒子の割合は、全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された高屈折率層中のマット粒子量が、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように高屈折率層に含有される。
マット粒子の粒度分布は、コールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
(高屈折率粒子)
高屈折率層には、層の屈折率を高めるため、及び硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた高屈折率層では層の屈折率を低目に保つために珪素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
(無機フィラー)
高屈折率層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー
種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、高屈折率層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は、光学的に均一な物質として振舞う。
本発明の高屈折率層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
[ハードコート層]
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、必要に応じて、透明支持体の表面に設けるものである。特に、透明支持体と上記高屈折率層(又は中屈折率層)の間に設けることが好ましい。またハードコート層は、層中に上記の高屈折率粒子などを含有させることにより、高屈折率層を兼ねることもできる。
ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂の架橋反応、又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は重合反応させることにより形成することができる。
またハードコート層は、上記の上記高屈折率層と同様、マット粒子や無機フィラーを、同様の量範囲で用いることができる。
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が3〜70%、好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下、好ましくは2.5%以下である。本発明の反射防止フィルムが、これらの範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性及び反射防止性が得られる。
〔支持体〕
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム(株)製“TAC−TD80U”,“TAC−TD80UF”等}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム及びその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設けるなどしてディスプレイの最表面に配置する。透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの点から好ましい。
上記のように、本発明の反射防止フィルムをディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用したりする場合には、接着性を向上させるため、透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に本発明の反射防止フィルムを適切な時間浸漬することにより実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の、水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前又は後に、アルカリ液を反射防止フィルムの反射防止層を形成する側の面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
〔塗膜形成方法〕
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に限定されるものではない。
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。
得られた各層形成用の塗布液を用いて、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると、反射防止膜の各層を形成する場合のように、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均
一性が高く、より好ましい。
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
2層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同第2941898号、同第3508947号、同第3526528号の各明細書及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
<偏光板>
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
〔偏光膜〕
偏光膜としては、公知の偏光膜を用いることができ、また偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない、長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いることもできる。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない、長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させて行う延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが、生産性の観点から好ましく用いられる。
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
〔液晶表示装置との組み合わせ〕
本発明の反射防止フィルム並びに該反射防止フィルムを用いた偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{「日本液晶討論会」の予稿集、p.58〜59(1998年)記載}、及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させる、ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4583825号、同第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」(東レリサーチセンター発行)(2001年)などに記載されている。
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内、本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<反射防止フィルムの作製>
〔含フッ素共重合体の合成〕
合成例1:
1){M1−(1)}[2−(1H,1H,5H−ペルフルオロペンチルオキシ)エチルビニルエーテル]の合成
1H,1H−ペルフルオロペンタノール100g、及び硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム20gを混合したところに、69gの水酸化ナトリウムを100mLの水に溶解した水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で30分間撹拌した。この混合液に、さらにクロロエチルビニルエーテル183.8g及びトルエン150mLを加え、80℃で5時間加熱撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒を留去した。更に減圧蒸留により精製することにより標記含フッ素ビニルエーテルの100gを得た(沸点73〜76℃、1064Pa)。
2)含フッ素共重合体(P−1)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル40mL、及び上記1)で作製した{M1−(1)}6.04g、A−(4)に対応する単量体(2−ヒドロキシエチルビニルエーテル)7.05g、S−(1)に対応する高分子開始剤0.60g及び過酸化ジラウロイル0.50gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)18.0gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2であった。温度を65℃に保持し、10時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。
反応液を大過剰のヘキサンに投入した。得られたポリマーを少量の酢酸エチルに溶解して2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。該ポリマーを減圧下乾燥させることにより含フッ素共重合体(P−1)を得た。
本発明に有用な他のポリマーも同様にして合成される。
比較合成例1〜4:比較用共重合体(Pr−1)〜(Pr−4)の合成
合成例1のP−1の合成と同様の方法を用い、下記表2に示す単量体を用いて比較用共重合体(Pr−1)〜(Pr−4)を合成した。
Figure 2007051203
〔反射防止フィルムの作製〕
実施例1−1〜1−11及び比較例1−1〜1−5
[低屈折率層形成用塗布液の調製]
下記表3中に示した質量部にて各成分を混合し、メチルエチルケトンで6質量%になるように溶解した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液を調製した。また表中、コロイダルシリカは日産化学工業(株)製“MEK−ST”(商品名)を用いた。「サイメル303」(商品名)は三井サイテック(株)製のメチロール化メラミンを表す。
Figure 2007051203
[ハードコート層形成用塗布液(HC−1)の調製]
{ハードコート層形成用塗布液(HC−1)の組成}
“PET−30” 50.0g
「イルガキュア184」 2.0g
“SX−350”(30%) 1.5g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 13.9g
“KBM−5103” 10.0g
トルエン 38.5g
上記混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層の塗布液(HC−1)を調製した。
上記ハードコート層形成用塗布液の調製に使用した化合物を以下に示す。
“PET−30”:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物{日本化薬(株)製}
「イルガキュア184」:重合開始剤{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}
“SX−350”:平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子{屈折率1.60、綜研
化学(株)製、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm{屈折率1.55、綜研化学(株)製、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
“KBM−5103”:アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{信越化学工業(株)製}。
[反射防止フィルム(1)の作製]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を、ロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層形成用塗布液(HC−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールと、ドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの層を形成し、巻き取った。このようにして作製した試料得られたハードコート層の表面粗さは、Ra=0.18μm、Rz=1.40μm、ヘイズ35%であった。
このようにして得られたハードコート層の上に、上記低屈折率層形成用塗布液(Ln1)を用いて、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して反射防止フィルム(1)を作製した。低屈折率層の硬化条件は120℃、10分とした。
[反射防止フィルム(2)〜(11)及び(r1)〜(r5)の作製]
反射防止フィルム(1)の作製において、低屈折率層用塗布液(Ln1)を用いる代わりに、低屈折率層用塗布液(Ln2)〜(Ln11)の何れかを用いる以外は反射防止フィルム(1)の作製と同様にして、反射防止フィルム(2)〜(11)を作製した。また、低屈折率層用塗布液(Ln1)を用いる代わりに、比較用の低屈折率層用塗布液(Lnr−1)〜(Lnr−5)の何れかを用いる以外は反射防止フィルム(1)と同様にして、比較用反射防止フィルム(r1)〜(r5)を作製した。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液の組み合わせを表4に示す。
[反射防止フィルムの鹸化処理]
得られた反射防止フィルムは以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
(1)アルカリ浴:5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃−120秒
(2)第1水洗浴:水道水、60秒
(3)中和浴:0.5mol/L硫酸、30℃−20秒
(4)第2水洗浴:水道水、60秒
(5)乾燥:120℃−60秒
〔反射防止フィルムの評価〕
このようにして得られた鹸化済みの反射防止フィルム(1)〜(11)及び(r1)〜(r5)について、下記性能評価を行った。得られた結果を表4に示す。
(1)平均反射率
分光光度計“V−550”{日本分光(株)製}を用い、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
測定は、反射防止フィルムの裏面を粗面化処理した後、黒色のインクで光吸収処理(380〜780nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて行った。
(2)耐擦傷性試験
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH、
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール“No.0000”{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○ :非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△ :弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
× :一目見ただけで分かる傷がある。
(3)防汚性試験
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、サンプル表面に「マジックインキ」(商品名)を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように「マジックインキ」付着性を評価した。
◎:「マジックインキ」の跡が完全に拭き取れる。
○:「マジックインキ」の跡がわずかに見える。
△:「マジックインキ」の跡が少し見える。
×:「マジックインキ」の跡がほとんど拭き取れない。
Figure 2007051203
表4より以下のことが明らかである。
本発明により得られる含フッ素共重合体を含む反射防止フィルムは、十分に強靱な膜強度、滑り性を有していることから耐擦傷性に優れていることがわかる。また、フッ素含率が高く、且つ皮膜表面のレべリング性に優れているため、広い波長領域で非常に低い表面反射率を有していることが分かる。さらに防汚性も格段に良化している。
<反射防止フィルムを設置した表示装置の作製>
実施例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−5
上記実施例1−1〜1−11及び比較例1−1〜1−5で作製した反射防止フィルム(1)〜(11)及び(r1)〜(r5)を、それぞれ、日本電気(株)より入手したパーソナルコンピューター“PC9821NS/340W”(商品名)の液晶ディスプレイ表面に貼り付け、画像表示装置サンプルを作製し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。
本発明の反射防止フィルム(1)〜(11)の何れかを設置した画像表示装置は、周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較用反射防止フィルム(r1)〜(r5)の何れかを設置した画像表示装
置は、周囲の映り込みはある程度低減できるものの表面強度に劣るものであった。

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)で表される繰返し単位を含んでなる含フッ素共重合体。
    一般式(1):
    Figure 2007051203
    一般式(1)において、Rf1は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、Rf2は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表す。Aは架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する繰り返し単位からなる構成成分を表し、Bは任意の繰り返し単位からなる構成成分を表す。Zは下記のポリシロキサン構造:
    Figure 2007051203
    を含む構成成分を表わす。R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。a〜dはそれぞれ各構成成分のモル分率(モル%)を表し、それぞれ5≦a≦45、30≦b≦70、5≦c≦65、0≦d≦30の関係を満たす値を表す。但し、a+b+c+d=100である。sはポリシロキサン構造を含む構成成分Zの全共重合体に対する質量分率(質量%)を表し、0<s≦20の関係を満たす値を表す。p1は10〜1000の整数を表す。
  2. 一般式(1)における構成成分Aが、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和二重結合を有する基、または開環重合反応性基のいずれかを有する重合体の構成成分を表す請求項1に記載の含フッ素共重合体。
  3. 一般式(1)における構成成分Aが、下記一般式(2)で表される繰返し単位からなる請求項1または2のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
    一般式(2):
    Figure 2007051203
    一般式(2)において、Lは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、エーテル結合を有してもよい。cは請求項1で定義したとおりである。
  4. 一般式(1)におけるポリシロキサン構造を含む構成成分Zが、下記一般式(3)で表される構造である請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
    一般式(3):
    Figure 2007051203
    一般式(3)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はシアノ基を表し、R7〜R12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基又はフェニル基を表す。q1、q2はそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。q3、q4はそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。p2は10〜1000の整数を表す。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素共重合体を含有することを特徴とする皮膜形成用組成物。
  6. 皮膜形成用組成物がさらに硬化剤を含んでいる請求項5に記載の皮膜形成用組成物。
  7. 皮膜形成用組成物がさらに無機微粒子を含有する請求項5又は6に記載の皮膜形成用組成物。
  8. 無機微粒子が平均粒子径1〜200nmのシリカ微粒子である請求項7に記載の皮膜形成用組成物。
  9. 透明支持体上に、屈折率の異なる複数の機能層を塗設してなる反射防止フィルムであって、該機能層のうちの少なくとも一層が低屈折率層であり、該低屈折率層が請求項5〜8のいずれかに記載の皮膜形成用組成物から形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。
  10. 請求項9に記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
  11. 請求項9に記載の反射防止フィルム又は請求項10に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
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