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JP2006516025A - ビスフェノールaの精製方法 - Google Patents

ビスフェノールaの精製方法 Download PDF

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Abstract

a)ビスフェノールA晶析装置中でビスフェノールAと水とを含む液体混合物を冷却して、液相中にビスフェノールAの結晶を形成せしめ;b)前記液相からビスフェノールAの結晶を分離し;c)前記液相の少なくとも一部を、ビスフェノール高含有有機相及び水高含有相に分け;d)フェノールと少なくとも一部の前記ビスフェノール高含有有機相とを付加物晶析装置中に供給して、母液中にフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物を形成せしめ;そしてe)前記母液から前記結晶性付加物を分離する工程を含む方法でビスフェノールAを精製する。高純度のビスフェノールAが高収率で得られる。

Description

本発明はビスフェノールAの精製方法及び精製されたビスフェノールAに関する。
「ビスフェノールA」又は「p,p’−ビスフェノールA」は、フェノールとアセトンとの縮合生成物である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに対するよく知られた名称である。ビスフェノールAは、ポリカーボネート及びエポキシ樹脂のような多くの市販品の製造にとって技術的及び商業的重要性の高い製品である。1999年におけるビスフェノールAの世界生産は1年当たり2百万メートルトンを超えており、今もなお増え続けている。高品質エポキシ樹脂、特にポリカーボネートの製造には、高純度のビスフェノールAの使用が必要である。
ビスフェノールAは、種々の公知方法に従って、アセトンと化学量論的に過剰のフェノールとの触媒の存在下における縮合反応によって製造される。これらの公知方法は、ビスフェノールAと共に、異性体、類似体及び同族体、例えば2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、o,p’−ビスフェノールAと称する)、2,2,4−トリメチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン、トリスフェノール、ポリフェノール及び好ましくなく着色した物質を含むいくつかの不純物を生成する。高純度のビスフェノールAの提供に技術的及び商業的関心が高いことに鑑み、その精製に関して多くの研究努力がなされてきた。
ビスフェノールAと水との混合物が製造される1つの公知方法によれば、混合物を加熱し、続いて冷却して、そしてビスフェノールAを再結晶する。
特許文献1は、粗製ビスフェノールAと水とを混合し、混合物を100℃の温度に加熱し、それによって水相及び液体有機相が生成することを開示している。この混合物はゆっくりと冷却して、ビスフェノールAを結晶化させる。結晶中に残る全ての異性体ジフェノール類又は他の有機不純物は、塩素化溶媒、例えばクロロホルム、塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン又はクロロベンゼンで洗浄することによって除去する。
特許文献2は水の存在下において水−結晶化ビスフェノールAと水不混和性有機溶媒、例えばトルエンと混合し、この混合物を撹拌し、そして撹拌された混合液中に3つの相を形成させることを提案している。有機溶媒を主に含む相は除去し、精製されたビスフェノールAは残りの2相から回収する。
特許文献3は、ビスフェノールAの、フェノール非含有混合物、0.5〜15重量%のジフェノール異性体及び不純物の混合物に水を添加する、ビスフェノールAの結晶化方法を開示している。水と粗製ビスフェノールAとの混合物は、周囲圧力において95〜105℃に加熱して、固体材料を全て溶融させる。次いで、撹拌しながら、圧力を低下させることによって断熱冷却させる。温度は90℃より低い温度まで低下する。結晶化ビスフェノールAは洗浄することによって、純度を更に増加させることができる。残念ながら、結晶化ビスフェノールAの最大純度は、数回の洗浄操作後でさえ、99.2%を超えることはない。
特許文献4はビスフェノール結晶から吸蔵有機溶媒を除去する方法を開示している。結晶は、100℃又はそれ以上の温度に保持された水中に投入し、溶融された水−ビスフェノール相が生成する。水−ビスフェノール相は過剰の水から分離し、ビスフェノール結晶に吸蔵されている溶媒は、それがフラッシュ蒸留され得るところから水相中に拡散することができる。
特許文献5は、液化された粗製材料の水性液体中の分散液を、混合物を周囲圧力及び前記粗製材料を溶融させるのに充分な温度において撹拌することによって生成させる、ビスフェノールAのような粗製結晶性芳香族化合物の精製方法を開示している。次に、3つの相、固体結晶相、水性液体相及び母液相を形成できるように、撹拌を減少させる。
特許文献6は、(1)粗製ビスフェノールAと水との混合物を大気圧より高い圧力及び100℃超の温度において製造し、(2)大気圧より低い圧力においてビスフェノールAを結晶化し、(3)結晶性ビスフェノールを母液から分離し、(4)母液の少なくとも一部を、ビスフェノール高含有有機相と水高含有相に分け、(5)ビスフェノール高含有有機相、水及び場合によっては追加量の粗製ビスフェノールの混合物を、大気圧より高い圧力及び100℃超の温度において製造し、(6)混合物を冷却し、ビスフェノールを結晶化させ、そして(7)母液から結晶性ビスフェノールを分離する工程を含む粗製ビスフェノールの精製方法を開示している。
米国特許第3,326,986号明細書 米国特許第4,461,915号明細書 米国特許第4,740,635号明細書 米国特許第4,533,764号明細書 米国特許第4,141,924号明細書 米国特許第5,512,700号明細書
前記特許文献に記載された方法の多くは高品質のビスフェノールAを提供する。しかし、残念ながら、これらの特許は、高品質をなお維持しながらも、ビスフェノールAの収率を最適化する方法は教示していない。ビスフェノールAが非常に大規模で製造されるという事実からすれば、高品質というだけでは不十分である。従って、精製方法の収率を最適化すると同時に高品質のビスフェノールAを得ることが非常に重要である。収率の増加がわずかであっても、再循還される必要のある原料又は材料の非常に大きな節減になる。
従って、粗製ビスフェノールAの新しい精製方法を提供することが依然として望まれている。
本発明の1つの側面は、
a)ビスフェノールA晶析装置中でビスフェノールAと水とを含む液体混合物を冷却して、液相中にビスフェノールAの結晶を形成せしめ;
b)前記液相からビスフェノールAの結晶を分離し;
c)前記液相の少なくとも一部を、ビスフェノール高含有有機相及び水高含有相に分け;
d)フェノールと少なくとも一部の前記ビスフェノール高含有有機相を付加物(アダクト)晶析装置中に供給して、母液中にフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物を形成せしめ;そして
e)前記母液から前記結晶性付加物を分離する
工程を含んでなるビスフェノールAの精製方法である。
本発明の別の側面は、前記方法に従って製造することができる精製ビスフェノールAである。
図1は本発明の方法の好ましい一実施態様の流れ図を示す。
図2は本発明の方法の別の好ましい実施態様の流れ図を示す。
好ましくは、本発明の方法に従って精製される粗製ビスフェノールAの純度は、90%又はそれ以上、より好ましくは95%又はそれ以上である。このような純度の粗製ビスフェノールAの製造は当業界でよく知られている。本発明の精製方法によって除去することができる不純物としては、ビスフェノールA製造の種々の副生成物、例えば2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(o,p’−ビスフェノールAとも称する);2,2,4−トリメチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン、トリスヒドロキシフェニル化合物、例えば4,4’−(4−ヒドロキシ−m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニル、ポリフェノール、イソプロペニルフェノール及び/又はスピロビインダン類が挙げられる。
本発明の方法の工程a)において使用する液体混合物は、混合物の総重量に基づき、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜60%の粗製ビスフェノールA及び好ましくは20〜80%、より好ましくは40〜70%の水を含む。用語「液体混合物」は、混合物が工程a)における選択条件において液体であることを意味する。ビスフェノールは、水との接触前に予熱して、部分的に又は完全に溶融させることができる。ビスフェノールは、好ましくは155〜240℃、より好ましくは170〜205℃の温度に加熱する。水もまた、ビスフェノールとの接触前に、好ましくは45〜105℃、より好ましくは80〜100℃の温度に予熱することができる。ビスフェノールAと水との混合物は、好ましくは1バール(100kPa)より高い圧力、好ましくは1.5〜5バールの圧力及び105〜150℃の温度に保持するのが好ましい。本発明の方法の工程a)においては、混合物をビスフェノールA晶析装置中で冷却して、液相中にビスフェノールA結晶を形成させる。好ましくは、圧力を大気圧以下に、より好ましくは640〜920mbar(64〜92kPa)の絶対圧力に低下させる。圧力を低下させる場合には、ビスフェノールAと水との高温混合物を、好ましくは80〜100℃に、より好ましくは88〜98℃に冷却する。この冷却は好ましくは断熱的に実施する。
本発明の方法の工程b)においては、ビスフェノールAの結晶を液相から分離する。ビスフェノールAの結晶は、濾過又は遠心分離のような公知方法によって、好ましくは大気圧において回収できる。工程b)の温度は一般に80〜110℃、好ましくは92〜105℃である。回収された結晶は、有機溶媒で、又は好ましくは水で洗浄できる。洗浄液は一般に70〜105℃、好ましくは85〜100℃の温度を有する。
本発明の別の好ましい実施態様によれば、工程b)の液相から分離されたビスフェノールAの結晶は溶融させ、水と混合し、第2のビスフェノールA晶析装置中で冷却して、液相中にビスフェノールA結晶を形成させ、結晶を液相から分離する。工程b)で得られたビスフェノールAの結晶は溶融させ且つ工程a)及びb)を繰り返すこの再結晶工程によって、更に精製される。この再結晶プロセスは1回又はそれ以上の回数実施できる。
本発明の方法の工程c)においては、液相の少なくとも一部は、ビスフェノール高含有有機相及び水高含有相に分ける。好ましくは総容量の少なくとも75%、最も好ましくは液相の全容量を2相に分離する。この2相は公知手段、例えばデカンテーション又は遠心分離によって分離できる。工程c)の温度は一般に60〜105℃、好ましくは75〜95℃である。得られる水高含有相は一般に液相中に存在する水の総重量の50%より多く、好ましくは70%より多く含む。水高含有相の全量又は一部は、廃棄するか又は工程a)に再循還できる。得られるビスフェノール高含有有機相は液相中に存在するビスフェノールAの総重量の50%より多く、好ましくは80%より多く含む。ビスフェノール高含有相の少なくとも一部、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%は、本発明の方法の次の工程d)において使用する。工程d)においてビスフェノール高含有相を用いる前に、工程c)におけるデカンテーション又は遠心分離の後に、ビスフェノール高含有相中に残る水を除去するために、それを場合によっては追加処理、例えば蒸留に供する。
ビスフェノールAの結晶を第2のビスフェノールA晶析装置中で再結晶する場合には、第2のビスフェノールA晶析装置から回収された液相もまた、前記工程c)で記載したように、ビスフェノール高含有有機相及び水高含有相に分けるのが好ましい。ビスフェノール高含有有機相は、下記のように工程d)において使用することもできるし、又は好ましくは最初の工程a)で使用するために再循還することもできる。
方法の工程d)においては、フェノール及び少なくとも一部のビスフェノール高含有有機相を付加物晶析装置中に供給して、母液中にフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物を形成させる。工程d)には、新鮮な若しくは回収されたフェノール又はその両者を使用することができる。例えばフェノールは、フェノールとビスフェノールAとの付加物から、好ましくは工程e)において更に以下に記載されるようにして得られるフェノールとビスフェノールAとの付加物からフェノールを留去することによって回収できる。本発明の別の好ましい実施態様によれば、工程e)において更に以下に記載するようにして得られるフェノールとビスフェノールAとの付加物(アダクト)の洗浄に使用した再循還フェノールを工程d)において使用できる。好ましくは、工程e)において更に以下に記載するようにして得られる母液の少なくとも一部もまた、付加物晶析装置に供給する。ビスフェノール高含有有機相、フェノール及び、場合によっては、母液の重量比は、好ましくは、付加物晶析装置中の混合物が8〜60%、より好ましくは12〜40%、最も好ましくは15〜30%のビスフェノールA;25〜85%、より好ましくは30〜80%、最も好ましくは40〜75%のフェノール;及び場合によっては20%以下、好ましくは15%以下の他の成分、例えば2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(o,p’−ビスフェノールAとも称する);2,2,4−トリメチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン、トリスヒドロキシフェニル化合物、例えば、4,4’−(4−ヒドロキシ−m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニル、ポリフェノール、イソプロペニルフェノール及び/又はスピロビインダン類を含むように選ばれる。
工程d)に使用する付加物晶析装置中の温度は、好ましくは30〜95℃、より好ましくは35〜65℃である。付加物晶析装置中の圧力は、好ましくは0.5〜1.3kPa、より好ましくは0.7〜1.1kPaである。母液中には、モル比1:1のフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物が形成される。結晶の品質及び形状を最適化するために、結晶化は、米国特許第5,723,688号に教示されたように、水及び/又はアセトンの存在下で実施するのが好ましい。
本発明の精製方法は、その好ましい実施態様において、本明細書中に記載した種々の再循還工程を含む。不純物の濃度をあるレベル以下に維持するために、この方法から材料の一部を除去することが望ましい場合もある。例えばビスフェノール高含有有機相の一部を、残りの部分をフェノールと合する前に、精製方法から除去することができる。
本発明の方法の工程e)においては、フェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物を母液から分離する。この結晶性付加物は、濾過又な遠心分離のような公知方法によって、好ましくは大気圧において回収できる。工程e)の温度は一般に40〜75℃、好ましくは45〜65℃である。結晶は、好ましくは、例えばフェノール、フェノール−アセトン混合物又は水、最も好ましくはフェノール単独によって洗浄して、結晶から母液を除去する。ビスフェノールA/フェノール付加物の重量に基づき、好ましくは0.1〜1.5部の、より好ましくは0.3〜1部のフェノールを使用する。生成物混合物からの固体ビスフェノールA/フェノール付加物の分離及び固体付加物の洗浄は、好ましくは35〜95℃、より好ましくは38〜60℃の温度において実施する。
本発明の好ましい一実施態様によれば、工程e)において得られた母液の少なくとも一部は工程d)に再循還する。好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の母液を再循還する。本発明の別の好ましい実施態様によれば、工程e)において得られた結晶性付加物を洗浄するために、好ましくは使用したフェノールの少なくとも一部を工程d)に再循還する。好ましくは、フェノールの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%を工程d)に再循還する。母液の及び/又は、もしあれば、フェノールの残りの部分は、不純物のレベルを制御するために、この方法から除去するか、廃棄するのが好ましい。好ましくは、再循還する母液及び/又はフェノールは、母液及び/又はフェノールを、工程d)に再循還する前に、水並びに、場合によっては、他の揮発性材料、例えばアセトン及び/又はフェノールの一部を除去するために、蒸留工程に供する。この蒸留工程は好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜170℃の温度において、0.15〜1バール、好ましくは0.25〜0.5バールの絶対圧において実施する。
不純物の濃度をあるレベル未満に保持するために、プロセスから材料の一部を除去することが望ましい場合もある。
より好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、f)場合によっては、工程e)において得られた母液の少なくとも一部を蒸留工程に供して水を除去し;g)水が除去された母液を、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒と接触させ;そしてh)工程g)で処理された母液を工程d)に再循還する追加の工程を含む。好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%の母液を、工程f)〜h)に供する。蒸留工程f)は前述のようにして実施することができる。ビスフェノールAの1種又はそれ以上の異性体を異性化触媒によってビスフェノールAに異性化する異性化工程自体は公知である。米国特許第4,375,567号;第4,825,010号;第4,822,923号及び第5,105,026号並びにヨーロッパ特許出願公開第0 552 518 A1号及び第0 630 878号は、異性化工程及び異性化触媒を記載している。この触媒は酸型のカチオン交換樹脂であるのが好ましい。より好ましくは、この触媒は、スルホン酸基を有する強酸性カチオン交換樹脂、例えばスルホン化スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂又はベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂である。異性化工程g)は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃の温度において実施する。工程g)において処理された母液は工程d)に再循還する。
最も好ましくは、少なくとも一部の母液及び工程e)の固液分離において結晶を洗浄するのに使用したフェノールは再循還液に合し、前記再循環液を、任意であるが好ましい蒸留工程に供して水を除去し、次いで前記再循還液を、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒と接触させ、続いて異性化再循還液を工程d)に再循還する。これらの工程は前述のようにして実施できる。
工程e)において得られたフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物は溶融させることができ、公知の方法でフェノールの留去によってビスフェノールAを回収できる。回収されたビスフェノールAは本発明の方法の工程a)に再循還するのが好ましい。別法として、ビスフェノールAはエポキシ樹脂のような他の生成物の製造に使用できる。蒸留されたフェノールの少なくとも一部は、方法の工程d)に再循還するのが有利である。
本発明の方法は連続的に実施するのが好ましいが、回分式で実施することもできる。本発明の方法によれば、高純度のビスフェノールAが高収率で得られる。一般に、ビスフェノールAの純度は99%又はそれ以上であり、最適条件下では99.5%又はそれ以上ですらある。一般に、工程a)〜e)を含む本発明の方法の収率は、粗製ビスフェノールAの重量に基づき、少なくとも75%又はそれ以上、好ましくは少なくとも80%又はそれ以上、最適条件下では90%又はそれ以上ですらある。非常に大きく、堅い結晶を有する結晶性ビスフェノールAが得られる。
本発明の好ましい実施態様を図面を参照して説明する。当然のことながら、図面は本発明の範囲を限定するものと解してはならない。
図面中の参照番号は次の意味を有する:
1:溶融された粗製ビスフェノールAの供給流
2:水の供給流
3:ビスフェノールAの晶析装置
4:第1固液分離装置
5.ビスフェノールAの貯蔵装置
6.液液分離段階
7.水高含有相
8.ビスフェノール高含有相
9.フェノール流
10.再循還液
11.付加物晶析装置
12.第2固液分離装置
13.異性化反応器
14.異性化再循還液
15.結晶性ビスフェノールA/フェノール付加物
16.第1蒸留装置
17.水
18.第2蒸留装置
19.ビスフェノールA再循還流。
図1を参照するに、溶融された粗製ビスフェノールAの供給流1と、水の供給流2は、ビスフェノールA晶析装置3に連続的に供給し、そこで工程a)で述べたようにしてビスフェノールAの結晶化を実施する。ビスフェノールAの結晶が液相中に得られ、それは、第1固液分離装置4、例えば遠心分離機に供給し、結晶性ビスフェノールAを、工程b)で述べたようにして液相から分離する。結晶性ビスフェノールAは第1固液分離装置4から除去し、好ましくは洗浄し、乾燥し(図示せず)、ビスフェノールAの貯蔵装置5中に回収する。液相は第1固液分離装置4から液液分離段階6に供給する。液液分離段階6は典型的には、デカンテーション及び/又は蒸留工程を含み、そこで液相はビスフェノール高含有有機相と水高含有相に分ける。水高含有相7は液液分離段階6から除去する。ビスフェノール高含有相8は、フェノール流9及び/又はフェノール含有異性化再循還液14と一緒にし、付加物晶析装置11、例えば連続付加物晶析装置中に供給し、そこで混合物を、工程d)で述べたようにして冷却する。母液中のフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物は、通常は懸濁液の形態で生成する。懸濁液は、第2固液分離装置12、例えば付加物遠心分離機に移し、そこで結晶性ビスフェノールA/フェノール付加物を母液から分離し、工程e)で述べたようにしてフェノールで洗浄する(図示せず)。結晶性ビスフェノールA/フェノール付加物15は固液分離装置12から除去する。母液及びフェノールは再循還液10に一緒にし、それは工程g)で述べたようにして、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する異性化触媒13と接触させる。この異性化工程後、異性化された再循還液14は付加物晶析装置11に再循還する。
図2に示す本発明の実施態様は、再循還液10を、第1蒸留装置16に供給して残留量の水17を留去してから、再循還液が異性化反応器13中で異性化触媒と接触させられる点で、図1に示す方法と異なる。結晶性ビスフェノールA/フェノール付加物15は、第2蒸留装置18に供給し、そこでフェノール流9を留去する。フェノール流の一部は洗浄液フェノールとして使用するために第2固液分離装置12に送る。フェノール流の別の部分は、付加物晶析装置11に再循還することができる。第2蒸留装置18に残されたビスフェノールAは、更に精製するために、ビスフェノールA再循還流19としてビスフェノールA晶析装置3に供給する。
本発明を以下の実施例によって更に説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。特に断らない限り、全ての部及び%は重量に基づく。全ての部及び%は、数日間にわたって測定した平均値である。実施例は、図2に関して本発明を説明する。
p,p’−ビスフェノールA95.4%及び他の不純物を含む180℃の温度の溶融粗製ビスフェノールA 5840kg/時の供給流1を、水の部分蒸発を防ぐのに充分な圧力下に100℃の温度でし、水8700kg/時の供給流2と一緒にし、ビスフェノールA晶析装置3に供給した。晶析装置3は、蒸発冷却によって、有機/水混合物を95℃に冷却した。精製ビスフェノールAの結晶が液相中に形成された。ビスフェノールAの結晶は液相から分離し、遠心分離機4中において熱水で洗浄し、次いで乾燥し、ビスフェノールAの貯蔵装置5に移した。遠心分離機4からの液相は液液分離装置6中で分離し、水高含有相7及びビスフェノール高含有有機相8を得た。ビスフェノール高含有相8 2030kg/時が混合槽(図2には図示せず)中で再循還液14 61370kg/時と一緒にした。異性化再循還液14は、フェノールを80%及びp、p’−ビスフェノールAを11.6%含んでおり、残りは不純物であった。ビスフェノール高含有有機相8の残りの1300kg/時を、このプロセスから除去した。混合槽中において生成した混合物63400kg/時を、50℃で操作される連続付加物晶析装置11に供給した。晶析装置からの付加物結晶を母液から分離し、付加物遠心分離機12中でフェノールによって洗浄した。付加物遠心分離機12から出た母液及びフェノールは再循還液10に合し、第1蒸留装置16中で蒸留して、水及び場合によっては他の軽い不純物を除去し、次いで75℃に冷却した。蒸留された再循還液10 41400Kg/時を、異性化触媒を含み且つ65℃において操作される異性化反応器13に供給した。異性化触媒として、ジビニルベンゼン基を4重量%含むスルホン化マクロポーラス架橋ポリスチレン樹脂を使用した。残りの蒸留再循還液は異性化反応器流出液及び液液分離装置6からのビスフェノールA高含有有機相8と一緒にした。付加物遠心分離機12から回収された付加物結晶15は、溶融させ、フェノール流9をストリップし、このフェノール流9は付加物遠心分離装置12中の付加物結晶を洗浄するのに使用した。97.3のp,p’−ビスフェノールAを含む溶融回収ビスフェノール2070kg/時のビスフェノールA再循還流19は、溶融粗製ビスフェノールA 5840kg/時の供給流1及び熱水8700kg/時の供給流2と一緒にし、ビスフェノールA晶析装置3に戻した。
この方法によって、4500kg/時の精製ビスフェノールA結晶が生成した。生成物を分析し、それはp,p’−ビスフェノールAを99.6%含むこと及び2.3 APHAのアルコール色を有することが判明した。
本発明の方法の好ましい一実施態様の流れ図である。 本発明の方法の別の好ましい実施態様の流れ図である。

Claims (15)

  1. a)ビスフェノールA晶析装置中でビスフェノールAと水とを含む液体混合物を冷却して、液相中にビスフェノールAの結晶を形成せしめ;
    b)前記液相からビスフェノールAの結晶を分離し;
    c)前記液相の少なくとも一部を、ビスフェノール高含有有機相及び水高含有相に分け;
    d)フェノールと少なくとも一部の前記ビスフェノール高含有有機相を付加物晶析装置中に供給して、母液中にフェノールとビスフェノールAとの結晶性付加物を形成せしめ;そして
    e)前記母液から前記結晶性付加物を分離する
    工程を含んでなるビスフェノールAの精製方法。
  2. 工程e)で得られた母液の少なくとも一部を工程d)に再循還する請求項1に記載の方法。
  3. 母液を工程d)に再循還する前に、蒸留工程に供して水を除去する請求項2に記載の方法。
  4. f)工程e)で得られた母液の少なくとも一部を蒸留工程に供して水を除去し;
    g)水が除去された母液を、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒と接触させ;そして
    h)工程g)で処理された母液の少なくとも一部を工程d)に再循還する
    追加工程を含む請求項1に記載の方法。
  5. g)工程e)で得られた母液の少なくとも一部を、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒と接触させ;そして
    h)工程g)で処理された母液の少なくとも一部を工程d)に再循還する
    追加工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
  6. 工程e)で得られた結晶性付加物をフェノールで洗浄する請求項1に記載の方法。
  7. 結晶性付加物の洗浄に使用したフェノールの少なくとも一部を工程d)に再循還する請求項6に記載の方法。
  8. 結晶性付加物の洗浄に使用したフェノールの少なくとも一部を最初に蒸留工程に供して水を除去し、次いで工程d)に再循還する請求項7に記載の方法。
  9. 結晶性付加物の洗浄に使用したフェノールの少なくとも一部と工程e)で得られた母液の少なくとも一部を再循環母液に合し、工程d)に再循還する請求項6に記載の方法。
  10. 再循還液を蒸留工程に供して水を除去してから、再循還液を工程d)に再循還する請求項9に記載の方法。
  11. 蒸留工程後、再循還液を、再循還液を工程d)に再循還する前に、ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒と接触させる請求項10に記載の方法。
  12. ビスフェノールAの異性体をビスフェノールAに異性化する触媒が酸型のカチオン交換樹脂である請求項4、5又は11に記載の方法。
  13. 工程b)で液相から分離されたビスフェノールAの結晶を溶融させ、水と混合し、第2のビスフェノールA晶析装置中で冷却して、液相中にビスフェノールAの結晶を形成せしめて、前記結晶を液相から分離する請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 工程d)で得られた結晶性付加物を蒸留工程に供してフェノールを留去し、得られたビスフェノールAを工程a)に再循還する請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に従って製造することができる精製ビスフェノールA。
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