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JP2006332368A - 圧電薄膜素子及びその製造方法 - Google Patents

圧電薄膜素子及びその製造方法 Download PDF

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JP2006332368A JP2005154408A JP2005154408A JP2006332368A JP 2006332368 A JP2006332368 A JP 2006332368A JP 2005154408 A JP2005154408 A JP 2005154408A JP 2005154408 A JP2005154408 A JP 2005154408A JP 2006332368 A JP2006332368 A JP 2006332368A
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秀樹 佐藤
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Abstract

【課題】 (001)面方位に高配向なPZT膜が安定して得られる圧電薄膜素子の構造及びその製造方法を得ることにある。
【解決手段】 基板1上に、少なくとも基板側から順番に第一の電極薄膜2、ペロブスカイト結晶構造を有する圧電薄膜4、第二の電極薄膜を積層した構造を有する圧電薄膜素子を製造するに際し、化学溶液法により、第一の電極薄膜2上に下地膜として高配向な第一の圧電薄膜3を形成し、その後、スパッタリング法によって、その化学溶液法で形成した第一の圧電薄膜3上に、当該第一の圧電薄膜3の配向を引き継いだ高配向な第二の圧電薄膜4を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インクジェットプリンタヘッド、ハードディスクドライブヘッドのポジショナー等のアクチュエータ部分への応用が期待されている圧電薄膜(主にチタン酸ジルコン酸鉛薄膜)素子及びその製造方法に関わるものである。
圧電材料は、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換し、あるいは電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する材料である。圧電材料の代表的なものとしては、ペロブスカイト型の結晶構造のチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3)(以下「PZT」と記す)がある。特に、ペロブスカイト型の正方晶系結晶構造のPZTの場合には<001>軸方向(c軸方向)に最も大きな圧電変位が得られる。
近年の電子機器の小型化に伴って、圧電素子に対しても小型化が強く要求されるようになってきた。そして、その要求を満たすために、圧電素子は従来から多く使用されてきた焼結体に比べて著しく体積の小さい薄膜の形態で使用されるようになりつつあり、圧電素子に対する薄膜化の研究開発が盛んになってきた。
例えばPZTの場合、自発分極Psは<001>軸方向を向いているので、薄膜化しても高い圧電特性を実現するためには、PZT膜を構成する結晶の<001>軸を、基板表面に対して垂直方向に揃える必要がある。つまり、言い換えると(001)面方位に高い割合で配向させる必要がある。
現状、(001)面に高配向なPZT膜は以下のような方法で作製されている。すなわち、図3に示すように、基板11として、結晶方位(100)面が表面に出るように切り出した岩塩型結晶構造の酸化マグネシウム(MgO)からなる単結晶の基板を用いる。その上に、(100)面方位に配向した白金(Pt)下部電極薄膜12をスパッタリング法で形成し、そのPt下部電極薄膜12上に、基板温度600℃で、スパッタリング法によってPZT膜14を形成することで、Pt下部電極薄膜12の配向性を引き継いだ(001)面に高配向なPZT膜14を得ている。
なお、安価なSi基板を使用し、同様な方法で、白金の下部電極薄膜の配向性を引き継いぎ、(001)面に高配向なPZT膜を得るものとして、特開平2003−188431号公報(特許文献1)がある。
特開平2003−188431号公報
しかしながら、上記の方法で実際にPZT膜の成膜を行うと、(001)面方位に高配向なPZT膜が得られる成膜条件の範囲が非常に狭く、スパッタリング成膜装置内の環境の微妙な変化によって、(001)面方位に高配向なPZT膜が得られなくなり、多結晶のPZT膜になってしまうという問題が発生する。このことは、生産における歩留りを著しく低下させており、結果として、生産コストが高くなる原因になっている。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、(001)面方位に高配向なPZT膜が安定して得られる圧電薄膜素子の構造及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1の発明に係る圧電薄膜素子の製造方法は、基板上に、少なくとも基板側から順番に第一の電極薄膜、ペロブスカイト結晶構造を有する圧電薄膜、第二の電極薄膜を積層した構造を有する圧電薄膜素子を製造するに際し、化学溶液法により、第一の電極薄膜上に下地膜として高配向な第一の圧電薄膜を形成し、その後、スパッタリング法によって、その化学溶液法で形成した第一の圧電薄膜上に、当該第一の圧電薄膜の配向を引き継いだ高配向な第二の圧電薄膜を形成することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の圧電薄膜素子の製造方法において、前記第一の圧電薄膜および第二の圧電薄膜の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、または、これらのいずれかに何らかの元素を添加したもののいずれかを用いることを特徴とする。
請求項3の発明に係る圧電薄膜素子は、第一の電極薄膜と第二の電極薄膜に挟まれた領域にペロブスカイト結晶構造を有する圧電薄膜を備える圧電薄膜素子において、上記圧電薄膜を、第一の電極薄膜上に下地膜として化学溶液法により形成した高配向な第一の圧電薄膜と、その第一の圧電薄膜上にスパッタリング法によって形成され、当該第一の圧電薄膜の配向を引き継いだ高配向な第二の圧電薄膜とで構成したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3記載の圧電薄膜素子において、上記第一の電極薄膜及び第二の電極薄膜が白金(Pt)、ルテニウム、イリジウム、またはこれらの酸化物のいずれかから成り、上記第一の圧電薄膜及び第二の圧電薄膜が(001)面方位に高配向なチタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、または、これらのいずれかに何らかの元素を添加したもののいずれかから成ることを特徴とする。
<発明の要点>
本発明は、白金下部電極薄膜の上に、まず化学溶液法でPZT薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法でPZT膜を形成するという工程を経ることで、安定して(001)面方位に高配向なPZT膜を得ることを要旨とする。
以下に本発明の根拠を記載する。
化学溶液法は、下部電極薄膜側から表面側に向かって結晶化が進行していくため、下地である下部電極薄膜の配向性を安定して引き継ぐことができる成膜方法であると言われている。しかしながら、(1)成膜時の工程数が非常に多い、(2)クラックが発生して歩留りが低い、等の大きな欠点があり、1μm以上の膜厚が必要であるPZT圧電薄膜の形成技術としては不向きと言われており、積極的な検討が行われていない状況であった。
一方、スパッタリング法は低コストで、かつ大きな成膜速度でPZT膜を成膜することができるため、生産性に優れた成膜方法として期待されており、盛んに検討が行われてきた。しかしながら、この成膜方法ではPZT膜の結晶化が比較的ランダムに進行するため、成膜初期に白金下部電極薄膜の配向性を安定して引き継ぐことができず、安定した高配向なPZT膜の形成が実現できていない。現在、高配向なPZT膜を安定して形成するために、白金下部電極薄膜上に配向制御層という、PZTと同じペロブスカイト構造で、しかも配向しやすい材料から成る層を形成し、その上にPZT膜を形成するという試みがされている(特許文献1:特開2033−188431号公報)。スパッタリング法によるPZTは白金上では配向しにくいが、ペロブスカイト構造で配向している層上では配向しやすいため、この配向制御層の挿入によって、高配向なPZT膜が形成できる確率は向上している。
しかしながら、この配向制御層もスパッタリング法で形成されているため、スパッタリング装置の環境によっては、白金下部電極薄膜上に高配向な膜を形成できないこともあり、完全な問題解決には至っていない状況である。
これらのことを踏まえて、発明者等は、化学溶液法とスパッタリング法の長所を組み合わせることを考えた。白金下部電極薄膜上には、安定して高配向の成膜が実現できる化学溶液法を用いて高配向なPZT薄膜を成膜し、高配向のPZTが形成された後、スパッタリング法で高配向のPZT膜を高速で形成する方法を考案した。本発明によれば、従来の製造工程数を殆ど増やすことなく、高配向なPZT膜を安定して作製できるようになる。
<要点の補足説明>
本発明において、PZT膜の配向方向は(001)面方位のみに限定されるものではなく、他の面方位(111)、(110)、(100)、(010)等に関しても同様に本発明の製造方法を適用することができ、これによって本発明所期の効果を得ることができる。
また、ペロブスカイト型結晶構造を有する圧電薄膜としては、PZTが代表的な材料であるが、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、または、これらのいずれかに何らかの元素を添加したもののいずれをも用いることができ、これらのいずれによっても同様に本発明所期の効果を得ることができる。
さらに、第一の電極薄膜として、白金(Pt)の代わりにルテニウム、イリジウム、またはこれらの酸化物を用いても同様の効果が得られる。
本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
本発明の製造方法では、第一の電極薄膜上に、先に化学溶液法を用いて第一の圧電薄膜を成膜するので、第一の電極薄膜上に安定して高配向の第一の圧電薄膜が成膜される。この後において、上記の高配向の第一の圧電薄膜上に、スパッタリング法で第二の圧電薄膜を成膜するので、第一の圧電薄膜の配向を引き継いで、高配向の第二の圧電薄膜を高速に形成することができる。従って、本発明の製造方法によれば、ペロブスカイト結晶構造を有する高配向の圧電薄膜を、従来の製造方法における工程数を殆ど増やすことなく、安定して製造することができる。
また本発明の圧電薄膜素子は、第一の電極薄膜上に化学溶液法を用いて形成した第一の圧電薄膜と、この第一の圧電薄膜上にスパッタリング法で形成した第二の圧電薄膜を備えた構造であるので、順次下地の配向を引き継いだ高配向の圧電薄膜を有する圧電薄膜素子を得ることができる。
以下に本発明の実施例として、PZT圧電薄膜(Pb(Zr0.53Ti0.47)O3圧電薄膜)を3μm形成した例を記載する。
図1(a)に示すように、基板1にはMgO(100)配向基板(20mm×20mm、厚さ0.5mm)を用いて、まず、その基板1上に第一の電極薄膜として白金(Pt)下部電極薄膜2(膜厚0.2μm)をRFマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。Pt下部電極薄膜2の成膜条件は、基板温度700℃、放電パワー200W、導入ガスAr(流量9cc/min)、圧力約2.666Pa(0.02Torr)、成膜時間12分30秒で行った。
その後、図1(b)に示すように、前記のPt下部電極薄膜2上に、化学溶液法で、PZT薄膜3(第一の圧電薄膜)を0.16μm成膜した。PZT薄膜3の成膜には、原料溶液として、以下に示す成分および含有量のPZT薄膜形成剤を用いた。
PbOとして7.1wt%、
ZrO2として1.8wt%、
TiO2として1.1wt%、
1−ブタノール50%以上。
原料溶液を0.1ml滴下し、スピンコーター(500rpm・3秒、3000rpm・15秒)で均一に塗布した後、乾燥のために空気中で330℃で5分間加熱した。この塗布と乾燥を4回繰り返した後、空気中で700℃で5分間焼成し、PZT薄膜3を得た。
その後、図1(c)に示すように、この化学溶液法で形成したPZT薄膜3(第一の圧電薄膜)の上に、RFマグネトロンスパッタリング法でPZT膜4(第二の圧電薄膜)を成膜した。PZT膜4のスパッタリング法による成膜条件は、基板温度600℃、放電パワー75W、導入ガスAr(流量9cc/min)・O2(流量1cc/min)、圧力約0.399Pa(0.003Torr)、成膜時間7時間35分で行った。
以上の工程により作製した上記PZT膜4(2.84μm)/Pt下部電極薄膜2(0.2μm)付きのMgO基板5の断面構造を図2に示す。このPZT膜/下部電極薄膜付きのMgO基板5について、更に、成膜の再現性を確認するために、上記の成膜工程を10回繰り返し行い、PZT膜4の10個の試料(実施例)を作製した。
次に、比較例として、従来技術によってPZT膜(厚さ3μm)を形成した。この比較例の作製方法の詳細を図3により説明する。
この比較例では、基板11にMgO(100)配向基板(20mm×20mm、厚さ0.5mm)を用いて、まず、その基板11上にPt下部電極薄膜12(膜厚0.2μm)をスパッタリング法によって成膜した。Pt下部電極薄膜12の成膜は、基板温度700℃、放電パワー200W、導入ガスAr(流量9cc/min)、圧力約2.666Pa(0.02Torr)、成膜時間12分30秒で行った。その後、この上にスパッタリング法で、PZT膜14(厚さ3μm)を形成した。PZT膜14のスパッタリング法による成膜は、基板温度600℃、放電パワー75W、導入ガスAr(流量9cc/min)・O2(流量1cc/min)、圧力約0.399Pa(0.003Torr)、成膜時間8時間で行った。
成膜の再現性を確認するために、以上の工程によるPZT膜の成膜を10回繰り返し行い、10個の試料(比較例)を作製した。
作製した20個のPZT膜の試料(10個は本発明の実施例の試料、他の10個は従来例の試料)の配向性を評価するために、X線回折測定を行い、X線回折パターンから、(001)面方位に高い割合で配向したPZT膜と多結晶になっているPZT膜を区別した。
結果を表1に示す。表1は従来例(本発明)の方法と従来例の方法で10個ずつ作製したPZT膜の配向性を示すものである。
Figure 2006332368
表1から、比較例(従来技術)で形成したPZT膜の試料は10個中2個が多結晶になっているのに対し、実施例(本発明)で形成したPZT膜の試料は10個中10個全てが(001)面方位に配向していることが分かる。これによりPt下部電極薄膜上に先に化学溶液法により下地層としてPZT薄膜を形成し、その後に、スパッタリング法によりPZT膜を形成することにより、安定した高配向のPZT膜の成膜を実現し且つ高速にPZT膜を成膜することができるという、本発明の効果が確認された。また、この方法は、従来の工程数を殆ど増やすことなく、高配向なPZT膜を安定して作製できるという長所を有するものである。
圧電薄膜素子を構成する場合は、図2及び図3に破線で示唆するように、PZT膜/下部電極薄膜付きのMgO基板5、15について、この上に、図2及び図3に示すように、膜厚0.2μmのPt上部電極薄膜6、16をRFマグネトロンスパッタリング法で形成し、それをドライエッチング法によって微細加工することで、MgO基板(弾性体)とPZT膜から成る圧電薄膜素子、例えばカンチレバー型小型アクチュエータを作製する。
本発明の実施例に係る圧電薄膜素子の製造方法を示した図である。 本発明の実施例に係る圧電薄膜素子の構造を示した断面図である。 比較例に係る圧電薄膜素子の構造を示した断面図である。
符号の説明
1 基板
2 下部電極薄膜
3 PZT薄膜(第一の圧電薄膜)
4 PZT膜(第二の圧電薄膜)
5 MgO基板
6 上部電極薄膜
11 基板
12 下部電極薄膜
13 PZT薄膜(第一の圧電薄膜)
14 PZT膜(第二の圧電薄膜)
15 MgO基板
16 上部電極薄膜

Claims (4)

  1. 基板上に、少なくとも基板側から順番に第一の電極薄膜、ペロブスカイト結晶構造を有する圧電薄膜、第二の電極薄膜を積層した構造を有する圧電薄膜素子を製造するに際し、
    化学溶液法により、第一の電極薄膜上に下地膜として高配向な第一の圧電薄膜を形成し、その後、
    スパッタリング法によって、その化学溶液法で形成した第一の圧電薄膜上に、当該第一の圧電薄膜の配向を引き継いだ高配向な第二の圧電薄膜を形成することを特徴とする圧電薄膜素子の製造方法。
  2. 請求項1記載の圧電薄膜素子の製造方法において、
    前記第一の圧電薄膜および第二の圧電薄膜の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、または、これらのいずれかに何らかの元素を添加したもののいずれかを用いることを特徴とする圧電薄膜素子の製造方法。
  3. 第一の電極薄膜と第二の電極薄膜に挟まれた領域にペロブスカイト結晶構造を有する圧電薄膜を備える圧電薄膜素子において、
    上記圧電薄膜を、第一の電極薄膜上に下地膜として化学溶液法により形成した高配向な第一の圧電薄膜と、その第一の圧電薄膜上にスパッタリング法によって形成され、当該第一の圧電薄膜の配向を引き継いだ高配向な第二の圧電薄膜とで構成したことを特徴とする圧電薄膜素子。
  4. 請求項3記載の圧電薄膜素子において、
    上記第一の電極薄膜及び第二の電極薄膜が白金(Pt)、ルテニウム、イリジウム、またはこれらの酸化物のいずれかから成り、上記第一の圧電薄膜及び第二の圧電薄膜が(001)面方位に高配向なチタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、または、これらのいずれかに何らかの元素を添加したもののいずれかから成ることを特徴とする圧電薄膜素子。
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