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JP2006272782A - 平版印刷版 - Google Patents

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JP2006272782A JP2005095972A JP2005095972A JP2006272782A JP 2006272782 A JP2006272782 A JP 2006272782A JP 2005095972 A JP2005095972 A JP 2005095972A JP 2005095972 A JP2005095972 A JP 2005095972A JP 2006272782 A JP2006272782 A JP 2006272782A
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聡 星
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Abstract

【課題】厳しい印刷条件においても汚れが非常に少ない印刷物を得られる平版印刷版を提供する。
【解決手段】親水性領域と疎水性領域とを有する画像層と支持体とからなり、親水性領域の上に湿し水が付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している平版印刷版において、親水性領域の上に付着している湿し水の量が0.1乃至2g/mであることを特徴と平版印刷版。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性領域と疎水性領域とを有する画像層と支持体からなり、親水性領域の上に湿し水が付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している平版印刷版に関する。また、本発明は、疎水性に変換可能な親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版にも関する。さらに、本発明は、親水性層と支持体とを有する平版印刷用親水性基板にも関する。
平版印刷版の親水性基板として、従来から陽極酸化されたアルミニウム基板が用いられている。また、陽極酸化されたアルミニウム基板を、下塗り剤(例、シリケート、ポリビニルホスホン酸、ポリビニル安息香酸)で処理し、親水性を高めることも行われている。スルホン酸基を有するポリマーを下塗り層(親水性層)に使用する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
アルミニウムのような金属支持体に代えて、ポリマー(例、ポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート)フイルムからなる支持体も提案されている。ポリマーフイルム支持体には、親水性層を設ける必要がある。ポリマーフイルム支持体に設ける親水性層としては、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとからなる膨潤親水性層(例えば、特許文献2参照)、親水性ポリマーと架橋剤からなる親水性膨潤層(例えば、特許文献3参照)、親水性ポリマーが加水分解されたテトラアルキルオルソシリケートにより硬化された親水性層(例えば、特許文献4、5参照)が知られている。また、親水性表面を有するポリマーフイルム支持体として、マイクロポーラスな親水性架橋シリケート表面を有するポリエチレンテレフタレート支持体(例えば、特許文献6参照)も提案されている。
特開昭59−101651号公報 特開平8−292558号公報 特開平9−218507号公報 特開平8−272087号公報 特開平8−507727号公報 欧州特許第0709228号明細書
従来の親水性層を平版印刷版に用いても、印刷開始時に汚れの生じない印刷物が得られる。しかし、親水性層の親水性がより高く、より厳しい印刷条件においても汚れの生じない印刷物が得られる平版印刷版が望まれている。
本発明の目的は、厳しい印刷条件においても汚れが非常に少ない印刷物が得られる平版印刷版を提供することである。
本発明は、下記(1)〜(5)の平版印刷版、下記(6)の平版印刷用原版、下記(7)の平版印刷用親水性基板および下記(8)〜(10)の平版印刷方法を提供する。
(1)親水性領域と疎水性領域とを有する画像層と支持体からなり、親水性領域の上に湿し水が付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している平版印刷版であって、親水性領域の上に付着している湿し水の量が0.1乃至2g/mであることを特徴とする平版印刷版。
(2)画像層の塗布量が0.1乃至10g/mである(1)に記載の平版印刷版。
(3)画像層が吸収している湿し水の量が0.01乃至2g/mである(1)に記載の平版印刷版。
(4)画像層が親水性層と親水性層の一部の領域の上に設けられた疎水性層からなる(1)に記載の平版印刷版。
(5)画像層が親水性層の一部の領域が疎水性に変換された層である(1)に記載の平版印刷版。
(6)疎水性に変換可能な親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版であって、親水性画像記録層が0.01乃至2g/mの吸水量を有することを特徴とする平版印刷用原版。
(7)親水性層と支持体とを有する平版印刷用親水性基板であって、親水性層が0.01乃至2g/mの吸水量を有することを特徴とする平版印刷用親水性基板。
(8)親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版の親水性画像記録層の一部領域を画像に対応して疎水性領域に変換し、画像記録層の表面に親水性領域と疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
(9)親水性層と支持体とを有する親水性基板と親水性層上に設けられている画像記録層からなる平版印刷原版から、画像記録層の一部領域を画像に対応して除去し、露出した親水性層からなる親水性領域と残存する画像記録層からなる疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
(10)親水性層と支持体とを有する親水性基板の上に、画像に対応して疎水性物質を付着させ、親水性層表面からなる親水性領域と疎水性物質が付着した疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
平版印刷においては、非画像部の親水性と画像部の疎水性との違いが最も重要である。従って、親水性層の親水性を高めれば、平版印刷において良好な印刷物が得られると考えられていた。
本発明者の研究の結果、従来の技術では、親水性層の膨潤性を高めるか、あるいは、多孔質の層を構成することにより親水性を高めると、親水性層中の湿し水の量が多くなり、その結果、親水性層の上に付着している湿し水の量が少なくなって、良好な印刷物が得られないことが判明した。言い換えると、印刷時において親水性領域の上の湿し水の量(および親水性層が吸収し得る湿し水の量)は、印刷物の画質に影響を与えることが明らかとなった。
本発明者が研究を進めた結果、印刷時の平版印刷版において、親水性領域の上に付着した湿し水の量は、印刷時の親水性領域に存在する湿し水の総量と親水性領域が吸収し得る湿し水の量の差として求めることができ、この量が、印刷汚れの発生に重要な影響を及ぼすことが明らかになった。特に、過酷な印刷条件(例えば、湿し水の量を制限する印刷、置き版により乾燥した状態から印刷を開始する印刷、網点シャドー部や白抜き細線部のような親水性領域の面積比が小さい領域を含む印刷)では、親水性領域の上に付着している湿し水の量によって、印刷物の画質が左右される。本発明者の実験の結果、親水性領域の上に付着している湿し水の量は、0.1乃至2g/mが最適であることが判明した。
従来の平版印刷原版は、親水性層が吸収し得る湿し水の量が多く、印刷時において上記の数値を満足することができない。なお、従来の平版印刷原版でも、過剰量の(親水性層が吸収し得る湿し水を大幅に上回る)湿し水を供給すると、本発明の定義(0.1乃至2g/m)を満足する場合もある。しかし、従来の平版印刷原版に過剰量の湿し水を供給すると、印刷すること、すなわち、疎水性領域の上に油性インクを付着させることができない。
本発明者がさらに研究を進めた結果、平版印刷原版に用いる親水性層は、単に親水性を高めるのではなく、水を吸収しにくい層(例えば、架橋密度が高く、膨潤しにくい親水性層)が好ましいことが判明した。そのような親水性層は、湿し水の供給量が少ない過酷な印刷条件でも、親水性層が吸収し得る湿し水の量が少ないため、余剰の水が親水性領域の上に存在しやすくなる。以上のようにして、本発明者は、親水性領域の上に付着する湿し水の量を0.1乃至2g/mの範囲内に調整することに成功した。
以上の結果、本発明に従うと、厳しい印刷条件においても汚れが非常に少ない印刷物が得られる。
[親水性領域の上に付着している湿し水の量]
本発明では、印刷時において、親水性領域の上に付着している湿し水の量を0.1乃至2g/mの範囲に調整する。親水性領域の上に付着している湿し水の量は、0.1乃至1.5g/mが好ましく、0.1乃至1g/mがさらに好ましい。親水性領域の上に付着している湿し水の量は、直接測定するよりも、印刷時の親水性領域(非画像部)の吸水量(A)と印刷時の親水性領域の総水分量(B)とをそれぞれ測定し、その差(B)−(A)を親水性領域の上に付着している湿し水の量として計算する方が容易で好ましい。
[親水性層]
親水性層の改良により、親水性領域の上に付着する湿し水の量を調整できる。親水性領域が吸収している湿し水の量は、0.01乃至2g/mが好ましく、0.01乃至1.5g/mがさらに好ましく、0.01乃至1g/mが最も好ましい。従って、親水性層は、0.01乃至2g/mの吸水量を有することが好ましい。親水性層の塗布量は、0.1乃至10g/mであることが好ましい。
親水性層は、疎水性に変換可能な親水性画像記録層の態様と、親水性層と支持体とが親水性基板を構成する態様との二種類に分類できる。
疎水性に変換可能な親水性画像記録層の態様では、親水性画像記録層が親水性−疎水性変換剤を含むことにより、平版印刷版を製版できる。
親水性層と支持体とが親水性基板を構成する態様では、親水性層の上に画像記録層を設けるか、あるいは、親水性層の上に疎水性領域を直接形成する(例えば、インクジェット方式で疎水性油滴を画像状に付与する)ことにより、平版印刷版を製版できる。
本発明は、いずれの態様にも有効である。
親水性領域の上に付着する湿し水の量を増加させるためには、水を吸収しにくい層として親水性層を構成することが好ましい。水を吸収しにくい層を形成するためには、具体的には、(1)親水性層を構成する親水性ポリマーを高密度で架橋させる方法、(2)ゾル−ゲル変換により、物性がガラスに近い層を形成する方法、または(3)親水性層を構成する親水性ポリマーをグラフト重合させる方法が採用できる。また、補助的に親水性層の吸収量を削減する手段として、(4)粒子を充填剤として親水性層に添加する方法を、上記(1)〜(3)と併用してもよい。
(親水性ポリマーを高密度で架橋させる方法)
架橋前の親水性ポリマーは、公知の親水性ポリマーと同様である。
親水性ポリマーは、天然ポリマー(例、多糖類、タンパク質)や半合成ポリマー(例、デンプン誘導体、セルロースエーテル、セルロースエステル)よりも、合成ポリマーの方が好ましい。多糖類の例は、アラビアゴムアルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、デキストリンを含む。タンパク質の例は、カゼイン、ゼラチンを含む。セルロースエーテルの例は、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロースを含む。セルロースエステルの例は、セルロースアセテートを含む。
親水性ポリマーの主鎖は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリエステル、ポリアミド(例、アルコール可溶性ナイロン)、ポリアミン、ポリエーテル(例、ポリオキシエチレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル)、ポリウレタン、ポリウレアまたはそれらの組み合わせが好ましく、炭化水素、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリウレアまたはそれらの組み合わせがさらに好ましく、炭化水素が最も好ましい。
親水性ポリマーは、側鎖あるいは主鎖または側鎖の置換基として親水性基を有することが好ましい。親水性基は、カルボン酸基、アミノ基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル、アミド基、ポリオキシアルキレン基(例、ポリオキシエチレン)が好ましく、カルボン酸基、アミノ基、スルホン酸基、ヒドロキシル、アミド基、ポリオキシアルキレン基がさらに好ましい。
カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基は、アニオンまたは塩の状態になっていてもよい。カルボン酸基の対カチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンが好ましい。スルホン酸基の対カチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが好ましい。
アミノ基は、カチオン(アンモニウム基)または塩の状態になっていてもよい。アミノ基の対アニオンは、ハライドイオンが好ましい。
親水性ポリマーは、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーの重合体であることが好ましい。親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーの例は、(メタ)アクリル酸およびその塩、イタコン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、3−ビニルプロピオン酸およびその塩、ビニルスルホン酸およびその塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩、ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびその塩、アリルアミン、ヒドロキシプロピレンを含む。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンも、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーの重合体に含まれる。ポリビニルアルコールのケン化度は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
親水性ポリマーは、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマーであってもよい。親水性ポリマーは、二種類以上の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマーであってもよい。親水性ポリマーは、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーと他の(親水性基を有していない)エチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。
他のエチレン性不飽和モノマーの例は、酢酸ビニル、スチレンを含む。コポリマーの例は、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーを含む。
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
親水性ポリマーは、(1−1)親水性ポリマーに架橋性基を導入し、その架橋性基を反応させる方法、または(1−2)親水性ポリマーの親水性基と架橋剤とを反応させる方法により、架橋構造を導入できる。
(1−1)親水性ポリマーに架橋性基を導入し、その架橋性基を反応させる方法では、親水性基に対する反応性基と架橋性基とを有する化合物を親水性ポリマーに反応させる。架橋性基は、エチレン性不飽和基(例、ビニル、アリル、アクリロイル、メタクリロイル)または環形成基(例、シンナモイル、シンナミリデン、シアノシンナミリデン、p−フェニレンジアクリレート)が好ましい。
架橋性基の架橋反応では、架橋性基を有する親水性ポリマーに加えて、架橋性基と反応する官能基(架橋性基と同様の官能基)を有するモノマーを用いることが好ましい。架橋反応に重合開始剤(後述)を用いることが好ましい。エチレン性不飽和基または環形成基の架橋反応は、親水性層を塗布により支持体上に形成し、乾燥後、または乾燥と同時に実施することが好ましい。
(1−2)親水性ポリマーの親水性基と架橋剤とを反応させる方法では、親水性基に対する反応性を有する複数の官能基を有する架橋剤を用いる。
架橋剤は、一般に、熱または光によりポリマー間に架橋を形成できる化合物である。架橋剤について、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載がある。
架橋剤の反応性基は、カルボキシル及びその塩、無水カルボン酸基、アミノ、イミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、アルデヒド、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、エチレン性不飽和二重結合、配位結合基、エステル結合またはテトラゾール基であることが好ましい。
カルボキシルを反応性基として有する架橋剤の例は、α,ω−アルカンジカルボン酸(例、コハク酸、アジピン酸)、α,ω−アルケンジカルボン酸、ポリカルボン酸(例、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸)を含む。
アミノ、イミノを反応性基として有する架橋剤の例は、アミン(例、ブチルアミン、スペルミン、ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、アニリン、フェニレンジアミン、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン)、イミン(例、ポリエチレンイミン)を含む。
エポキシ基を反応性基として有する架橋剤の例は、ポリエポキシ化合物(例、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル)を含む。
ヒドロキシルを反応性基として有する架橋剤の例は、アルキレングリコール(例、エチレングリコール、プロピレングリコール)、オリゴアルキレングリコール(例、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、ポリアルキレングリコール、ポリオール(例、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール)を含む。
アルデヒドを反応性基として有する架橋剤の例は、ポリアルデヒド(例、グリオキザール、テレフタルアルデヒド)を含む。
イソシアナート、ブロックイソシアナート基を反応性基として有する架橋剤の例は、ポリイソシアナート(例、トリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジフェニルメタンイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、ナフタレン−1,5−ジイソシアナート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアナート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアナート付加反応物)、ブロックポリイソシアナート化合物を含む。
アルコキシシリル基を反応性基として有する架橋剤の例は、シランカップリング剤(例、テトラアルコキシシラン)を含む。
配位結合基を反応性基として有する架橋剤の例は、金属架橋剤(例、アルミニウムアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート)を含む。
メチロールを反応性基として有する架橋剤の例は、ポリメチロール化合物(例、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトール)を含む。
メルカプトを反応性基として有する架橋剤の例は、ポリチオール化合物(例、ジチオエリスリトール、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート))を含む。
(ゾル−ゲル変換により、物性がガラスに近い層を形成する方法)
ゾル−ゲル変換により物性がガラスに近い層を形成する場合、親水性ポリマーは、金属水酸化物と金属酸化物との系からなることが好ましく、ポリシロキサンのゲル組織を形成するゾル−ゲル変換系がさらに好ましい。ゾル−ゲル変換系は、特開2003−175683号公報に記載がある。
ゾル−ゲル変換系は、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造を形成し、同時に多価金属は未結合のヒドロキシルやアルコキシ基も有していてこれらが混在した樹脂状構造となっているポリマーである。塗布前のヒドロキシルやアルコキシ基が多い段階ではゾル状態である。塗布後、エステル化反応が進行するのに伴って網目状の樹脂状構造が強固となり、ゲル状態になる。
ゾル−ゲル変換系の多価元素は、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウムが好ましく、ケイ素、すなわちシロキサン結合によるゾル−ゲル変換系が最も好ましい。
ゾル−ゲル変換系に用いるシラン化合物の例は、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシシラン、トリブロモシラン、トリメトキシシラン、イソプロポキシシラン、トリ(t−ブトキシ)シランを含む。
シラン化合物に加えて、他の金属化合物を併用できる。金属化合物の金属元素の例は、Ti、Zn、Sn、Zr、Alを含む。金属化合物の例は、Ti(OR)、TiCl、Zn(OR)、Zn(CHCOCHCOCH、Sn(OR)、Sn(CHCOCHCOCH、Sn(OCOR)、SnCl、Zr(OR)、Zr(CHCOCHCOCH、Al(OR)を含む。Rは、炭素原子数が1〜6のアルキル基である。
ゲル構造のマトリックスには、シランカップリング剤に相当する官能基を末端に有する親水性ポリマーや、架橋剤を加えてもよい。シランカップリング剤に相当する官能基を末端に有する親水性ポリマー(特開2003−175683号公報記載)は、下記式で表される。
(R−)(RO−)3−mSi−(CH−S−(CHR−CR(−L−Y))
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至8の炭化水素基であり、mは0、1または2であり、nは1乃至8の整数であり、pは30〜300の整数であり、Lは、単結合または二価の連結基であり、Yは−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COCH、−OCH、−OH、−COMまたは−CONHC(CHSOMであり、Mは、プロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びオニウムイオンからなる群より選ばれる対カチオンである。二価の連結基は、1〜60個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜100個の水素原子、0〜20個の硫黄原子からなることが好ましい。
アルミニウム、チタンまたはジルコニウムを用いるゾル−ゲル変換は、上記のケイ素をアルミニウム、チタンまたはジルコニウムに置き換えて実施することができる。
(親水性層を構成する親水性ポリマーをグラフト重合させる方法)
グラフト重合させる方法では、主鎖または側鎖の一つの末端のみに、反応性基を有する親水性ポリマーを用いる。主鎖の一方の末端のみに、反応性基を有することが好ましい。「反応性基」は、化学結合剤と反応して化学結合を形成できる官能基を意味し、化学結合剤の反応性基との関係で決定される相対的な概念である。親水性ポリマーは、水溶性であり、化学結合剤と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
反応性基は、一般には、ポリマーの架橋剤に含まれる反応性基と同様である。化学結合剤の詳細は、前述した架橋剤と同様である。
反応性基の例は、カルボキシル(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸または無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ(HN−)、ヒドロキシル(HO−)、エポキシ基(例、1,2−エポキシエチル)、メチロール(HO−CH−)、メルカプト(HS−)、イソシアナート(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基を含む。片末端に2以上の反応性基を有していてもよい。2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間に連結基が介在していることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、あるいは−O−または−S−を含む組み合わせであることが好ましく、−O−または−S−で親水性ポリマーの繰り返し単位と結合することがさらに好ましい。
親水性ポリマーの主鎖および親水性基は、前述した親水性ポリマーを高密度で架橋させる方法と同様である。
親水性ポリマーの主鎖と親水性基との間に連結基が介在していてもよい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィドを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基(例、カルボキシル)を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、1万乃至7万が最も好ましい。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がカルボキシル基またはその塩である場合、化学結合剤として、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリメチロール化合物、ポリイソシアナート化合物、ブロックポリイソシアナート化合物または金属架橋剤を用いることが好ましい。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がメチロール基、フェノール性水酸基、グリシジル基である場合、化学結合剤として、ポリカルボン酸化合物、ポリアミン化合物またはポリヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がアミノ基である場合、化学結合剤として、ポリイソシアナート化合物、ブロックポリイソシアナート化合物、ポリエポキシ化合物またはポリメチロール化合物を用いることができる。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がヒドロキシル基である場合、化学結合剤として、ポリイソシアナート化合物、ブロックポリイソシアナート化合物、ポリアルデヒド化合物、ポリカルボン酸化合物を用いることができる。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がアルコキシシリル基である場合、化学結合剤として、テトラアルコキシシラン、多価アルコールを用いることができる。
親水性ポリマーの片末端に有する反応性基がエチレン性不飽和二重結合である場合、化学結合剤として、ポリチオール化合物、アミン、イミンを用いることができる。
化学結合剤間の反応は、以上の親水性ポリマーと化学結合剤との反応に加えて、エポキシ基間の反応も利用できる。
親水性ポリマーの片末端の反応性基が化学結合剤の一つの反応性基と化学結合し、化学結合剤の二つの反応性基が互いに化学結合している分子構造を形成できる。
また、親水性ポリマーの片末端の反応性基が化学結合剤Aの一つの反応性基と結合し、化学結合剤Aの一つの反応性基が化学結合剤Bの一つの反応性基と結合し、化学結合剤Bの二つの反応性基が互いに化学結合している分子構造を形成できる。化学結合剤Bは、さらに、親水性ポリマーの反応性基と反応して化学結合を形成していてもよい。
これらの分子構造では、親水性ポリマーの片末端のみが化学結合剤により固定され、親水性ポリマーの親水性部位(片末端以外の親水性繰り返し単位からなる部分)は、自由度が高く、運動性に優れた構造を有している。
(粒子を充填剤として親水性層に添加する方法)
充填剤として添加する粒子は、親水性層の含水量を低下させる効果に加えて、親水性層の表面に粗さを付与し、層表面に付着する湿し水の量を増加する効果を有する。また、粒子は、親水性層の強度を改善する効果も有する。
充填剤として、有機粒子または無機粒子を使用できる。
有機粒子は、ポリマーからなることが好ましい。ポリマーは、架橋していることが好ましい。有機粒子は、コア/シェル構造(マイクロカプセルを含む)を有していてもよい。有機粒子の表面は親水性であることが好ましい。具体的には、有機粒子が水に分散する程度の表面親水性を有していることが好ましい。
有機粒子は、乳化重合法により合成できる。特開平5−254251号公報に記載されているミクロゲルは、乳化重合法による有機粒子である。乳化重合法では、モノマーを、分子中に炭素−炭素二重結合を含む基を(好ましくは2個以上)有する乳化剤を用いて乳化重合する。
モノマーの例は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、スチレンおよびスチレン誘導体を含む。乳化剤の炭素−炭素二重結合を含む基の例は、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、イソプロペニル、アクリロイル、メタアクリロイルを含む。アクリロイル、メタアクリロイルが好ましい。
乳化剤は、炭素−炭素二重結合を含む基に加えて、親水性基を有する。親水性基の例は、カルボン酸基およびその塩、硫酸エステル基およびその塩、アミノ、置換アミノ基、ヒドロキシル、リン酸基およびその塩、ポリオキシアルキレン基(例、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)を含む。カルボン酸基、硫酸エステル基およびリン酸基の対カチオンは、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム)が好ましい。置換アミノ基の置換基は、アルキル基、アラルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、アルキル基またはヒドロキシアルキル基がさらに好ましい。親水性基は、置換アミノ基であることが好ましい。
炭素−炭素二重結合を有する乳化剤は、通常の乳化剤の機能に加えて、重合性(架橋性)モノマーとしての機能も有する。従って、上記の乳化剤を用いることで、ポリマー微粒子の表面に、乳化剤由来の親水性基を存在させることができる。親水性基は、使用する乳化剤の種類、量、そして反応方法により、ポリマー微粒子の内部にも存在させることができる。
乳化剤の例は、炭素−炭素二重結合を分子中に2個以上有するポリオキシエチレンアルキルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、炭素−炭素二重結合を分子中に2個以上有するポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、炭素−炭素二重結合を分子中に2個以上有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩、炭素−炭素二重結合を分子中に2個以上有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系分散剤、オリゴエステル(メタ)アクリレートのリン酸エステルもしくはそのアルカリ塩、及び親水性アルキレンオキサイド基を有するポリアルキレングリコール誘導体のオリゴエステルポリ(メタ)アクリレートを含む。市販の乳化剤(例、KAYAMER PM−2(日本化薬(株)製)、ニューフロンティアA−229E(第一工業製薬(株)製)、ニューフロンティアN−250Z(第一工業製薬(株)製))を用いてもよい。
炭素−炭素二重結合を有する乳化剤と他の乳化剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤)を併用してもよい。乳化剤の添加量は、モノマー100質量部に対して、1乃至20質量部が好ましく、3乃至10質量部がさらに好ましい。
乳化重合法では、例えば、反応容器に乳化剤及び水を投入し、これにモノマーを加えて乳化した後、ラジカル重合開始剤を加え、攪拌下に加温してモノマーを重合させることによりポリマー微粒子を得ることができる。モノマーは、一括ではなく、分割滴下により添加してもよい。各成分の量は、最終的に得られる反応液(分散液)中の固形分濃度が、20乃至50質量%となるように調整することが好ましく、30乃至45質量%となるように調整することがさらに好ましい。反応時のpHは、3乃至9が好ましく、反応温度は、40乃至90℃が好ましく、50乃至80℃がさらに好ましい。反応時間は、30分乃至2時間が好ましい。
ラジカル重合開始剤は、過硫酸塩(例、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)、過酸化水素、水溶性アゾ化合物、またはレドックス系重合開始剤が好ましい。レドックス系重合開始剤が好ましい。レドックス系重合開始剤は、過硫酸塩と還元剤(例、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム)との組み合わせからなる。ラジカル重合開始剤の添加量は、全モノマー量の0.05乃至5質量%が好ましく、0.1乃至3質量%がさらに好ましい。
重合促進剤(例、遷移金属イオン)の存在下に、重合反応を行なうことが好ましい。
アルギン酸カルシウムにより有機微粒子を構成してもよい。
無機微粒子は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、またはこれらの混合物からなることが好ましい。
無機微粒子は、市販品(例えば、コロイダルシリカ分散物)を用いてもよい。
微粒子の平均粒径は、5nm乃至10μmが好ましく、0.5μm乃至3μmがさらに好ましい。
微粒子の含有量は、親水性層の全固形分に対して、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
(低分子親水性化合物)
親水性層に、低分子親水性化合物を添加してもよい。低分子親水性化合物の例は、グリコール(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール)、そのエーテルまたはエステル、多価アルコール(例、グリセリン、ペンタエリスリトール)、アミン(例、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン)およびその塩、スルホン酸(例、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)およびその塩、ホスホン酸(例、フェニルホスホン酸)およびその塩、カルボン酸(例、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸)およびその塩を含む。
(親水性−疎水性変換剤)
疎水性に変換可能な親水性画像記録層の態様では、親水性画像記録層が親水性−疎水性変換剤を含む。
親水性−疎水性変換剤は、加熱により化合物自体の物性が親水性から疎水性に変化する化合物(好ましくはポリマー)または疎水性化合物の熱可塑性粒子、熱硬化性粒子またはマイクロカプセルが好ましい。
親水性から疎水性に変化する化合物は、熱により脱炭酸を起こして親水性から疎水性に変化する官能基を有するポリマー(特開2000−122272号公報に記載)が好ましい。親水性から疎水性に変化する化合物を塗布したときの被膜表面の空中水滴による接触角が、加熱前に20°以下であり、加熱後には65°以上に変化することが好ましい。
熱可塑性粒子または熱硬化性粒子を構成する疎水性化合物は、ポリマーであることが好ましい。ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子または疎水性化合物を内包するマイクロカプセルであることが好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子は、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号、同9−171250号の各公報および欧州特許第931647号明細書に記載がある。
熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01乃至2.0μmが好ましい。熱可塑性ポリマー粒子は、乳化重合法、懸濁重合法または溶解分散法(モノマーを非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を蒸発させながら粒子状に固化させる方法)により合成できる。
熱反応性ポリマー粒子は、熱硬化性ポリマー粒子および熱反応性基を有するポリマー粒子に分類できる。
熱硬化性ポリマーは、フェノール骨格を有する樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂を含む。フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂およびエポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性ポリマー粒子の平均粒径は0.01乃至2.0μmが好ましい。熱硬化性ポリマー粒子は、溶解分散法で製造できる。熱硬化性ポリマーの合成と同時に粒子を形成することもできる。
熱反応性基を有するポリマー粒子の熱反応性基は、ラジカル重合性基(例、アクリロイル、メタクリロイル、ビニル、アリル)、カチオン重合性基(例、ビニル、ビニルオキシ)、付加反応性基(例、イソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基)および反応相手である活性水素原子を有する官能基(例、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル)、縮合反応性基(例、カルボキシル)および反応相手である官能基(例、ヒドロキシル、アミノ)、開環付加反応性基(例、酸無水物)および反応相手である官能基(例、アミノ、ヒドロキシル)を含む。
ポリマーの重合において、熱反応性基をポリマー粒子に導入できる。
重合において熱反応性基を導入する場合は、熱反応性基を有するモノマーを乳化重合または懸濁重合することが好ましい。熱反応性基を有するモノマーの例は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートまたはそのブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレートまたはそのブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートを含む。ブロックイソシアナートは、例えば、アルコールによりブロックできる。
熱反応性基を有するモノマーと他の(熱反応性基を持たない)モノマーとのコポリマーを用いてもよい。他のモノマーの例は、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルを含む。
ポリマーの重合後に高分子反応を行って、熱反応性基を導入してもよい。高分子反応は、国際公開第96/34316号パンフレットに記載がある。
熱反応性基を有するポリマー粒子の平均粒径は、0.01乃至2.0μmが好ましく、0.05乃至2.0μmがさらに好ましく、0.1〜1.0μmが最も好ましい。
親水性−疎水性変換剤として機能するマイクロカプセルは、疎水性化合物を内包する。疎水性化合物は、熱反応性基を有することが好ましい。熱反応性基は、熱反応性基を有するポリマー粒子の熱反応性基と同様である。熱反応性基を有するモノマーの例は、熱反応性基を有するポリマー粒子のモノマーに加えて、複数のエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む。複数のエチレン性不飽和基を有するモノマーは、多価アルコールのアクリル酸エステル(例、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、多価アルコールのメタクリル酸エステル(例、ジペンタエリスリトールジメタクリレート)、多価アルコールのイタコン酸エステル(例、エチレングリコールジイタコネート)、多価アルコールのマレイン酸エステル(例、エチレングリコールジマレエート)、多価アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)を含む。
マイクロカプセルは、公知の方法で製造できる。マイクロカプセルの製造方法は、コアセルベーション法(米国特許第2800457号、同第2800458号明細書に記載)、界面重合法(英国特許第990443号、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報に記載)、ポリマー析出法(米国特許第3418250号、同第3660304号の各明細書記載)、イソシアナートポリオール壁材料を用いる方法(米国特許第3796669号明細書記載)、イソシアナート壁材料を用いる方法(米国特許第3914511号明細書記載)、尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法(米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(米国特許第4025445号明細書記載)、ヒドロキシセルロース壁材を用いる方法、モノマー重合によるin situ法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報記載)、スプレードライング法(英国特許第930422号、米国特許第3111407号の各明細書記載)、電解分散冷却法(英国特許第952807号、同第967074号の各明細書記載)が採用できる。
マイクロカプセルを水媒体中に安定に分散するための分散剤として、水溶性ポリマーを使用することができる。水溶性ポリマーとして、天然ポリマー(例、多糖類、タンパク質)、半合成ポリマー(セルロースエーテル、澱粉誘導体)または合成ポリマーを用いることができる。多糖類の例は、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウムを含む。タンパク質の例は、カゼイン、ゼラチンを含む。セルロースエーテルの例は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースを含む。合成ポリマーは、炭化水素主鎖を有するポリマー(ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、ポリビニルピロリドン)が好ましい。コポリマーを用いてもよい。コポリマーの例は、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体を含む。
水溶性ポリマーは、イソシアネート化合物と反応しないか、極めて反応性が低いことが好ましい。イソシアネート化合物と反応性が高いポリマー(例とえばゼラチン)を用いる場合は、予め反応性の官能基を除去またはブロックしておくことが好ましい。
マイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤することが好ましい。マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、これらのコポリマーまたは混合物が好ましく、ポリウレア、ポリウレタンこれらのコポリマーまたは混合物がさらに好ましい。マイクロカプセル壁に熱反応性基を有する化合物を導入してもよい。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01乃至3.0μmが好ましく、0.05乃至2.0μmがさらに好ましく、0.10乃至1.0μmが最も好ましい。
ポリマー粒子及びマイクロカプセルの親水性画像記録層への添加量は、固形分換算で、画像記録層固形分の50質量%以上が好ましく、70乃至98質量%がさらに好ましい。
親水性画像記録層にマイクロカプセルを添加する場合、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。ポリウレアまたはポリウレタン壁からなるマイクロカプセルの場合、溶剤は、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−3ブタノール、)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル)、アセタール、エステル(例、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチルラクトン)、ケトン(メチルエチルケトン)、多価アルコール、アミド(例、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、アミン、脂肪酸が好ましい。二種類以上の溶剤を併用してもよい。
溶剤の添加量は、塗布液の5乃至95質量%が好ましく、10乃至90質量%がさらに好ましい、15乃至85質量%が最も好ましい。
(光熱変換剤)
疎水性に変換可能な親水性画像記録層の態様では、親水性画像記録層が光熱変換剤を含むことが好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。光は赤外光であることが好ましい。言い換えると、光熱変換剤は、赤外線吸収剤であることが好ましい。
赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。粒子としてマイクロカプセルを使用する場合は、光熱変換剤として赤外線吸収染料を用いることが特に好ましい。
赤外線吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。好ましい赤外線吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許3881924号、同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
赤外吸収染料については、米国特許4756993号、同5156938号の各明細書および特開平10−268512号、特開2004−306582号の各公報にも記載がある。市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
光熱変換剤は、マイクロカプセルに内包させてもよい。添加量は、親水性画像記録層の全固形分に対し0.001〜50質量%が好ましく、0.005〜30質量%がさらに好ましく、0.01〜10質量%が最も好ましい。
[重合開始剤]
重合性化合物を重合させるために、重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤は、光、熱、あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな総合を有する化合物などを選択して使用することができる。
ラジカルを発生する化合物は、好ましくは熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物(熱ラジカル発生剤)である。熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物から適宜、選択して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物を2種類以上併用してもよい。
ラジカルを発生する化合物は、特開2004−306582号公報に記載がある。ラジカルを発生する化合物の例は、ハロゲン化有機化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オキシム塩化合物を含む。オニウム塩が最も好ましい。
[支持体]
支持体は、紙、ポリマー(例、セルロースエステル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール)フイルム、金属(例、アルミニウム、亜鉛、銅)板、ポリマーをラミネートした紙、金属を蒸着した紙、金属を蒸着したポリマーフイルムを用いることができる。ポリマーフイルムおよび金属板が好ましく、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板がさらに好ましく、アルミニウム板が最も好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルニウム合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例は、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンを含む。合金中の異元素の量は、10質量%以下である。
アルミニウム板の厚みは、0.1mm乃至0.8mmが好ましく、0.15mm乃至0.6mmがさらに好ましく、0.2mm乃至0.4mmが最も好ましい。
アルミニウム板には粗面化処理を実施することが好ましい。
例えば、アルミニウム板表面をサンドブラスト加工やブラシ加工などで機械的にこすり、表面を削って凹部を形成し、粗面を設けることができる。
アルミニウム板には粗面化処理を実施することが好ましい。
粗面化処理の前に、表面の圧延油を除去するための脱脂処理を行ってもよい。脱脂処理は、界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液を用いて実施できる。
粗面化処理は、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、化学的粗面化処理を含む。
機械的粗面化処理は、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法を含む。
電気化学的粗面化処理は、例えば、酸(例、塩酸、硝酸)を含む電解液中で交流または直流により行うことができる。混合酸を用いる方法(特開昭54−63902号公報記載)も採用できる。
アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も実施できる。機械的エンボス加工でも凹凸を設けることができる。さらに、グラビア印刷などで表面に凸部を形成して粗面を設けてもよい。固体微粒子(マット剤)を含有する層を、塗布あるいは印刷のような手段で支持体表面に粗面を設けてもよい。固体微粒子は、高分子フイルムを作製する段階で高分子フイルム中に含有させ(内添し)、高分子フイルム表面に凹凸を形成することもできる。溶剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、X線照射処理により粗面を形成することもできる。以上の手段を組み合わせて実施してもよい。サンドブラスト加工もしくは樹脂の印刷により粗面を形成する手段もしくは固体微粒子を添加して凹凸を形成する手段が、特に好ましい。
粗面化処理されたアルミニウム板は、アルカリエッチング処理、さらに中和処理を実施することが好ましい。
アルミニウム板は、陽極酸化処理することが好ましい。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の好ましい条件は、電解質濃度が1〜80質量%、液温が5〜70℃、電流密度が5〜60A/dm、電圧が1〜100V、電解時間が10秒〜5分である。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/mが好ましく、1.5〜4.0g/mがさらに好ましい。
[その他の層]
支持体と親水性層との間に下塗り層を設けてもよい。
親水性画像記録層の上に、保護層を設けてもよい。
[平版印刷用原版]
親水性画像記録層を有する態様では、親水性画像記録層および支持体からなる平版印刷用原版を用いて印刷する。
具体的には、親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版の親水性画像記録層の一部領域を画像に対応して疎水性領域に変換し、画像記録層の表面に親水性領域と疎水性領域とを有する平版印刷版を製版し、平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する。
親水性層と支持体とが親水性基板を構成する態様では、親水性層の上に画像記録層を設けることにより、平版印刷用原版を得ることができる。
画像記録層は、露光によりアルカリ水溶液に対する可溶性が向上するポジ型と、逆にアルカリ水溶液に対する可溶性が低下するネガ型とに分類できる。ポジ型とネガ型のいずれも公知である。油性インクまたは湿し水により画像記録層の未露光部または露光部が除去できると、露光後に現像処理(画像記録層の未露光部または露光部を除去する処理)を実施することなく、直接印刷機に装着して印刷することもできる。そのような画像記録層も提案されている。
具体的には、親水性層と支持体とを有する親水性基板と親水性層上に設けられている画像記録層からなる平版印刷原版から、画像記録層の一部領域を画像に対応して除去し、露出した親水性層からなる親水性領域と残存する画像記録層からなる疎水性領域とを有する平版印刷版を製版し、平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する。
親水性層の上に設けられる画像記録層は、加熱により化合物自体の物性が親水性から疎水性に変化する化合物(好ましくはポリマー)または疎水性化合物の熱可塑性粒子、熱硬化性粒子またはマイクロカプセルを含むことができる。これらの詳細は、親水性画像記録層に添加する親水性−疎水性変換剤と同様である。
画像記録層は、光熱変換剤や重合開始剤を含むこともできる。光熱変換剤および重合開始剤の詳細も、親水性画像記録層に添加できる光熱変換剤および重合開始剤と同様である。
親水性層の上に疎水性領域を直接形成する(例えば、インクジェット方式で疎水性油滴を画像状に付与する、電子写真記録方式で疎水性のトナー画像を形成する)ことにより、平版印刷版を製版することもできる。
具体的には、親水性層と支持体とを有する親水性基板の上に、画像に対応して疎水性物質を付着させ、親水性層表面からなる親水性領域と疎水性物質が付着した疎水性領域とを有する平版印刷版を製版し、平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する。
[水分量の測定]
(印刷時の親水性領域の水分量)
印刷時における非画像部の水分量は、赤外線式水分計測装置(DMS)にて、水由来のOH伸縮振動の特性吸収帯である3378cm−1付近の吸収強度をリアルタイムに測定することにより、定量化する。DMSの測定原理は、赤外線照射による光吸収強度を測定するものである。水分量に換算するには検量線が必要であり、乾燥した試料に水を供給して、その重量変化から水分量を算出し、その値と赤外線吸収強度の相関直線を求めて、検量線とする。
(親水性層中の水分量)
25℃10%湿度環境の中で1時間調湿した試料の重量(A1)を乾燥時の重量として測定する。次に、25℃90%湿度環境の中で、試料を露点温度(23℃)に設定した金属定板の上にのせ、十分吸水させた後の重量(A2)を測定し、その差(A2)−(A1)を親水性層中の水分量とする。
[実施例1]
(アルミニウム支持体の作製)
厚み0.24mmのアルミニウム板(材質1050)を、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン水懸濁液を用いてその表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。この板を15%水酸化ナトリウム水溶液に浸してエッチングをした後、水洗した。更に1%硝酸で中和し、次に0.7%硝酸水溶液中で矩形波交番波形電流を用い、160クーロン/dmの陽極時電気量で電界粗面化処理を行った。水洗後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸してエッチングした後、水洗した。次に30質量%硫酸水溶液中に浸してデスマットした後、水洗した。更に、20質量%硫酸水溶液中で直流電流を用いて陽極酸化処理を行い、酸化皮膜量2.7g/mとした。更に、ケイ酸ナトリウム0.5重量%水溶液を用いて30℃で10秒間処理し、アルミニウム支持体を得た。平均表面粗さは、0.45μmであった。
(下塗り層の形成)
下記組成の塗布液を調製し、上記のアルミニウム支持体上に、0.5g/m厚となるように塗布し、100℃1分間乾燥して下塗り層を形成した。
────────────────────────────────────────
下塗り層塗布液
────────────────────────────────────────
メタノールシリカ(日産化学(株)製)の30質量%メタノール分散液400g
イソプロピルアルコール 2000g
────────────────────────────────────────
(ゾル−ゲル液の調製)
エチルアルコール2000g、アセチルアセトン100g、オルトチタン酸テトラエチル100g、精製水1000g中にテトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)100g、末端にシランカップリング剤に相当する官能基を有する親水性ポリマー(1)35gを60℃で4時間攪拌して混合した。その後、室温まで徐冷してゾルゲル液とした。
Figure 2006272782
(親水性層の形成)
下記組成からなる塗布液を調製し、バーコーターにて下塗り層の上に乾燥膜質量が1.0g/mになるように塗布した。次いでオーブンにて80℃で10分乾燥を行い、親水性層を形成し、親水性基板を作製した。
────────────────────────────────────────
親水性層塗布液
────────────────────────────────────────
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、スノーテックスC)の20質量%水溶液
70g
ゾル−ゲル液 500g
アニオン系界面活性剤(日光ケミカルズ社製、ニッコールOTP−100S)の5質量%水溶液 30g
精製水 400g
────────────────────────────────────────
[実施例2]
下記組成の塗布液を、実施例1で作製したアルミニウム支持体上にバー塗布した。140℃、10分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成して親水性基板を作製した。
────────────────────────────────────────
親水性層塗布液
────────────────────────────────────────
水 2500g
ポリアクリル酸(質量平均分子量:10万) 20g
片末端に反応性基を有する親水性ポリマー(2) 60g
下記架橋剤(1) 25g
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、スノーテックスC)の20質量%水溶液
1200g
界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルのナトリウム塩)の5質量%水溶液
20g
────────────────────────────────────────
Figure 2006272782
Figure 2006272782
[実施例3]
下記組成の塗布液を、実施例1で作製したアルミニウム支持体上にバー塗布した後、140℃、10分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成して親水性基板を作製した。
────────────────────────────────────────
親水性層塗布液
────────────────────────────────────────
水 2500g
ポリアクリル酸(質量平均分子量25万) 10g
メタノールシリカ(日産化学(株)製)の30質量%メタノール分散液300g
界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルのナトリウム塩)の5質量%水溶液
20g
────────────────────────────────────────
[実施例4]
(下塗り層の形成)
下記組成の塗布液を調製し、実施例1で作製したアルミニウム支持体上に、2g/m厚となるように塗布し、100℃1分間乾燥して下塗り層を形成した。
────────────────────────────────────────
下塗り層塗布液
────────────────────────────────────────
下記ポリマー(3) 16g
下記重合開始剤(1) 4g
メチルエチルケトン 500g
1−メトキシ−2−プロパノール 500g
────────────────────────────────────────
Figure 2006272782
Figure 2006272782
(親水性層の形成)
下記組成からなる水溶液を調製し、下塗り層を設けたアルミニウム支持体を浸漬し、窒素雰囲気下、100W低圧水銀ランプで10分間光照射を行い、下塗り層表面にグラフトポリマー型親水性層を形成し、親水性基板を作製した。親水性層の厚みは、0.2μmであった。
────────────────────────────────────────
親水性層形成用水溶液
────────────────────────────────────────
アクリル酸 100g
精製水 900g
────────────────────────────────────────
[実施例5]
実施例4の親水性層形成用水溶液に使用したアクリル酸に代えて、アクリルアミドを使用した以外は実施例4と同様にして、親水性基板を作製した。
[実施例6]
実施例4の親水性層形成用水溶液に使用したアクリル酸に代えて、メタクリル酸スルホプロピルのカリウム塩を使用した以外は実施例4と同様にして、親水性基板を作製した。
[実施例7]
実施例1のアルミニウム支持体を、表面にコロナ処理を施した膜厚0.24mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性基板を作製した。
(印刷時の水分量の測定)
実施例1〜7で作製した親水性基板を、枚葉印刷機DAIYA1F−2(三菱重工業社製)のシリンダーに取り付け、赤外線式水分計測装置(DMS)の光照射部および受光部からなるセンサー部材を版面から4mmの位置に固定して、水分量の測定を行った。水およびインキを供給した後、毎時7200回転のスピードで、100枚程度印刷したときの版面非画像水分量をリアルタイムで計測した。
結果を第1表に示す。
(親水性層中の水分量の測定)
実施例1〜7で作製した親水性基板を、25℃10%湿度環境の中で1時間調湿した後の重量(A1)と、次に、25℃90%湿度環境の中で、露点温度(23℃)に設定した金属定板の上にのせ、十分吸水させた後の重量(A2)を測定し、その差(A2)−(A1)を親水性層中の水分量とした。
結果を第1表に示す。
(印刷汚れ評価)
得られた平版印刷版用支持体上に、油性マジックでベタ画像を形成し、枚葉印刷機DAIYA1F−2(三菱重工業社製)のシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインクを供給した後、毎時7200枚の印刷速度で印刷を100枚行なった。引き続き、水目盛りを変えて、水インキバランスの評価を行い、地汚れの発生する水目盛りを計測した。さらに、インクを版の全面に着けた後、湿し水を供給して、インクが払われるまでの枚数を評価した。水目盛りは、地汚れが発生する値が小さいほど、少ない湿し水量でも汚れ難い親水性に優れた支持体であると評価でき、インク払い枚数は、値が小さいほど、汚れ難く親水性に優れた支持体であると評価できる。
結果を第1表に示す。
第1表
────────────────────────────────────────
印刷時の水分量 親水性層中の水分量 (A)−(B) 地汚れが インキ
親水性基板 (A) (B) 発生する 払い
(g/m) (g/m) (g/m) 水目盛り 枚数
────────────────────────────────────────
実施例1 0.40 0.30 0.10 35 15
実施例2 0.60 0.50 0.10 35 20
実施例3 0.70 0.55 0.15 40 20
実施例4 1.00 0.70 0.30 35 25
実施例5 1.10 0.75 0.35 35 20
実施例6 1.40 0.50 0.90 30 20
実施例7 0.35 0.25 0.10 35 20
────────────────────────────────────────
[実施例8〜14]
(感光液の調製)
下記の組成からなる感光液を調製した。
────────────────────────────────────────
感光液(1)
────────────────────────────────────────
バインダーポリマー(4) 16g
重合開始剤(2) 10g
赤外線吸収剤(1) 2g
重合性モノマー(アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 40g
フッ素系界面活性剤(1) 4g
メチルエチルケトン 110g
MFG 860g
────────────────────────────────────────
Figure 2006272782
Figure 2006272782
Figure 2006272782
Figure 2006272782
(マイクロカプセル分散液の作製)
油相として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75%酢酸エチル溶液)10g、エチレン性不飽和モノマー(アロニックスM−215、東亞合成(株)製)6.00g、界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。
水相としてポリビニルアルコール(PVA−205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液37.5gを調製した。
油相および水相を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
(マイクロカプセル液の調製)
下記の組成からなるマイクロカプセル液を調製した。
────────────────────────────────────────
マイクロカプセル液
────────────────────────────────────────
作製したマイクロカプセル分散液 260g
水 240g
────────────────────────────────────────
(画像記録層の形成)
感光液とマイクロカプセル液を混合し攪拌することで、画像記録層の塗布液を調製した。
塗布液を調製後直ちに、実施例1〜7で作製した親水性基板上にバー塗布した。塗布層を100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
(無機粒子分散液の調製)
イオン交換水193.6gに、合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル社製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法で測定)が3μmになるまで分散した。得られた分散無機粒子のアスペクト比は100以上であった。
(機上現像型平版印刷用原版の作製)
組成の保護層塗布を画像記録層上にバー塗布し、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成した。
このようにして、機上現像型平版印刷用原版を作製した。
────────────────────────────────────────
保護層塗布液
────────────────────────────────────────
無機粒子分散液(1) 150g
ポリビニルアルコール(PVA105、(株)クラレ製、ケン化度:98.5モル%、重合度:500) 6g
ポリビニルピロリドン(K30、東京化成工業(株)製、質量平均分子量:4万)
1g
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(LUVITEC VA64W、ICP社製、共重合比=6/4) 1g
ノニオン系界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1g
イオン交換水 600g
────────────────────────────────────────
(印刷評価)
得られた平版印刷用原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインクを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を1000枚行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測したところ、いずれの平版印刷用原版を用いた場合も、1000枚まで非画像部の汚れのない印刷物が得られた。
[実施例15]
(非現像型平版印刷用原版の作製)
実施例7で作製したマイクロカプセル(1)を、実施例1の親水性層塗布液(1)に全固形分重量に対して固形分量として50重量%添加した。調製した塗布液を実施例1と同様に下塗り層の上に塗布、乾燥して、親水性画像記録層を形成した。このようにして、非現像型平版印刷用原版を作製した。
(印刷評価)
得られた平版印刷用原版を、実施例8〜14と同様にして画像露光を行った後、何ら処理することなく印刷機に取り付け、湿し水とインクを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を1000枚行った。1000枚まで非画像部の汚れのない印刷物が得られた。
[実施例16〜21]
(樹脂粒子の製造)
ポリ(ドデシルメタクリレート)14g、酢酸ビニル100g、オクタデシルメタクリレート4.0gおよびアイソパーHを286gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル)1.5g加え、4時間反応した。さらに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8gを加えた後、温度80℃に加温して2時間反応し、続けて2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.6g加えて2時間反応した。その後、温度を100℃に上げそのまま1時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通して得られた白色分散物は重合率93%で平均粒径0.35μmのラテックスであった。粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製)で測定した。
(油性インクの作製)
ドデシルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合比:98/2重量比)10g、アルカリブルー10gおよびシェルゾール71、30gをガラスビーズとともにペイントシェーカー(東洋精機(株)製)に入れ、4時間分散し、アルカリブルーの微小な青色分散物を得た。
上記の樹脂粒子50g(固形分量として)、上記の青色分散物5g(固形分量)および、ナフテン酸ジルコニウム0.06gをアイソパーGの1リットルに希釈することにより青色油性インクを作製した。
(インクジェットによる平版印刷用原版の作製)
パソコン出力により描画できるグラフテック社製サーボ・プロターDA8400を改造し、ペン・プロッター部にインク吐出ヘッドを装着し、1.5mmの間隔をおいた対向電極上に、実施例1〜6で作製した親水性基板を設置した。親水性基板上に、作製した油性インクを用いて印字を行ない製版した。製版に際しては、印刷用支持体のアルミ裏層と対向電極を、銀ペーストを用いて電気的に接続した。
製版された版を、版面温度が70℃となる様に調整したリコーフュザー(リコー(株)製)で10秒間加熱しインク画像を定着した。得られた製版物の描画画像を光学顕微鏡により、200倍の倍率で観察して評価した。いずれも、細線・細文字等の滲みや欠落のない鮮明な画像であった。
(印刷評価)
得られた平版印刷用原版を、実施例8〜14と同様に印刷評価を行ったところ、1000枚まで非画像部の汚れのない印刷物が得られた。

Claims (10)

  1. 親水性領域と疎水性領域とを有する画像層と支持体からなり、親水性領域の上に湿し水が付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している平版印刷版であって、親水性領域の上に付着している湿し水の量が0.1乃至2g/mであることを特徴とする平版印刷版。
  2. 画像層の塗布量が0.1乃至10g/mである請求項1に記載の平版印刷版。
  3. 画像層が吸収している湿し水の量が0.01乃至2g/mである請求項1に記載の平版印刷版。
  4. 画像層が親水性層と親水性層の一部の領域の上に設けられた疎水性層からなる請求項1に記載の平版印刷版。
  5. 画像層が親水性層の一部の領域が疎水性に変換された層である請求項1に記載の平版印刷版。
  6. 疎水性に変換可能な親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版であって、親水性画像記録層が0.01乃至2g/mの吸水量を有することを特徴とする平版印刷用原版。
  7. 親水性層と支持体とを有する平版印刷用親水性基板であって、親水性層が0.01乃至2g/mの吸水量を有することを特徴とする平版印刷用親水性基板。
  8. 親水性画像記録層と支持体とを有する平版印刷用原版の親水性画像記録層の一部領域を画像に対応して疎水性領域に変換し、画像記録層の表面に親水性領域と疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
  9. 親水性層と支持体とを有する親水性基板と親水性層上に設けられている画像記録層からなる平版印刷原版から、画像記録層の一部領域を画像に対応して除去し、露出した親水性層からなる親水性領域と残存する画像記録層からなる疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
  10. 親水性層と支持体とを有する親水性基板の上に、画像に対応して疎水性物質を付着させ、親水性層表面からなる親水性領域と疎水性物質が付着した疎水性領域とを有する平版印刷版を製版する工程;平版印刷版に湿し水と油性インクとを供給し、親水性領域の上に湿し水が0.1乃至2g/m付着し、疎水性領域の上に油性インクが付着している状態で印刷する工程からなる平版印刷方法。
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