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JP2006272656A - 金属/樹脂複合管およびその製造方法 - Google Patents

金属/樹脂複合管およびその製造方法 Download PDF

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JP2006272656A JP2005092737A JP2005092737A JP2006272656A JP 2006272656 A JP2006272656 A JP 2006272656A JP 2005092737 A JP2005092737 A JP 2005092737A JP 2005092737 A JP2005092737 A JP 2005092737A JP 2006272656 A JP2006272656 A JP 2006272656A
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謙一 宮崎
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Abstract

【課題】金属製の外管とFRP製の内管を複合した金属/樹脂複合管において、加熱成形後の冷却工程における両管の間の剥離や、内管の座屈および材料破壊を防止することを目的とする。
【解決手段】金属の外管とFRPの内管を加熱および加圧成形するに際し、管軸方向の圧縮強度と圧縮弾性率との比率が所定の関係を満たす繊維強化樹脂を緩衝層として両管の間に挟み込むことにより、外管の熱収縮による管軸方向の圧縮荷重が、かかる緩衝層の圧縮および剪断変形によって吸収される。また複合管の管軸方向について、第二の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、第一の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は金属と樹脂を一体に加熱および加圧成形してなる複合管およびその製造方法に関する。
金属材料の摺動性、耐溶剤性および加工性と、繊維強化樹脂(以下、「FRP」という。)の高い比強度、比剛性および耐熱変形性を享受するため、従来から金属管の内部にFRP管を複合した複合管が提供されている。
かかる複合管の製造方法は大別して、(1)接着法、(2)クラッド法、(3)メッキ法、(4)圧着法の四種類が提案されている。
(1)接着法は、FRP管の表面に接着剤を塗布し、これを金属管の内周面に貼着する製法である。しかし、FRP管と金属管を均一に接着させるためにはFRP管の外表面を滑らかに研磨する必要があるため、樹脂中の繊維の損傷や加工コストの増大を招くこととなる。また接着剤の強度および剛性が金属管やFRP管に比べて低いため、両管の接着強度、特に層間剪断強度が十分でないという問題があった。
(2)クラッド法は、金属管とFRP管とを嵌め合いに成形し、金属管の内部にFRP管を圧入する製法である。かかる製法による場合、厳密な公差管理が必要となり加工コストが甚大となる。またFRP管の表面を研磨する必要があることから生じる繊維の損傷の問題も上記の接着法と同様に生ずる。更に、金属管とFRP管は両者の摩擦力によって当接しているのみであるため、両管の層間剪断強度を十分に得ることが困難である。
(3)メッキ法は、FRP管の表面に金属メッキを施す製法である。しかしFRP表面に金属をメッキする場合は、金属材料に金属をメッキする場合に比べて両者の接合力が大幅に劣るという問題がある。また金属メッキにより構造部材として十分な厚さの金属層を得るためには加工コストが極めて大きく現実的ではない。
(4)圧着法は、金属管の内周面に配接したFRP管を、金属管と一体に加圧圧着する製法である。かかる製法は加工コストや成形後の両管の層間剪断強度の高さの点で優れている。
圧着法を用いた先行技術としては、特許文献1(特開平5−50511号公報:段落[0020],[0022],[0027])に金属被覆繊維強化樹脂製円筒部材の製造法に関する発明が、そして特許文献2(特開平8−114216号公報:段落[0009],[0029])に複合ローラおよびその製造方法に関する発明が、それぞれ記載されている。
特許文献1記載の発明は、内管としてガラスクロスプリプレグシートをはじめとする繊維含浸樹脂または金属薄板を、そしてこれを金属外管と接合する接着層としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸した樹脂含浸補強繊維を、それぞれ用いるものである。また接着層の加熱硬化に際しては圧縮空気による加圧を併用する旨が開示されている。
特許文献2記載の発明は、金属パイプの内周面にFRPローラを複合するに際し、FRPローラの最内層と最外層について、ともにローラの周方向に繊維を配向させることにより、繊維の乱れを無くし、内外管を強固に接着することを可能とするものである。また内外管の成形方法については、加熱環境下において拡張コーンのねじ込みや拡張用カムの回転作動を行う旨が開示されている。
特開平5−50511号公報 特開平8−114216号公報
圧着法においては、金属製の外管とFRPのプリプレグよりなる内管とを強固に加圧成形しようとする場合、FRPの母材(マトリクス)が熱硬化性樹脂であるか熱可塑性樹脂であるかを問わず、高い成形温度下にて加圧作業を行う。このとき金属とFRPの線膨張係数(CTE)の違いにより、加熱・加圧成形後の冷却工程において、両管間の剥離や内管の座屈または材料破壊を生じる場合がある。
これは、図9に示すように、金属製の外管10とFRP製の内管12が加熱下で加圧圧着された複合管の状態Aから、両管が冷却されるとCTEの大きい外管10は特に長さの大きい管軸方向に沿って大きく熱収縮するため、両管の接合力が弱い場合は剥離11(状態B)を、接合力が大きい場合は内管の座屈13(状態C)や、主として内管の最外層において材料破壊を生じるためである。なお、金属材料の例としてステンレスのCTEは17〜18[10−6/K]、アルミニウムのCTEは25〜26[10−6/K]であるのに対し、FRPの例として、代表的な炭素繊維強化プラスチックの場合、CTEは1[10−6/K]前後と極めて低い。
ここで、先行文献1記載の発明の場合、内筒体1と樹脂含浸補強繊維2の繊維種別やその配向は特に検討されておらず、管軸方向についてのそれぞれの圧縮弾性率や剪断弾性率の大小が不明であり、また内筒体1と樹脂含浸補強繊維2にいずれもガラスクロスプリプレグシートを用いることを許容していることから、上記の剥離や座屈、材料破壊が生じ得るという問題があった。
また、先行文献2記載の発明の場合、FRP管の最外層(および最内層)をそれぞれ1層ずつ周方向に繊維配向させているものの、内管は単一の繊維強化樹脂よりなるため、これと直接当接する金属パイプが熱収縮した場合、複合管全体としての剛性を高く維持しようとするならば、特に内管の外層近傍にて材料破壊が生じやすいという問題が避けられないものであった。
先行技術の有するこれらの課題を踏まえ、本発明においては、金属製の外管とFRP製の内管を複合した金属/樹脂複合管において、その剛性を高く維持しつつも、加熱成形後の冷却工程における両管の間の剥離や、内管の座屈および材料破壊を防止することを目的とする。
そこで上記課題を解決するため本発明者は鋭意検討の末、金属の外管とFRPの内管を加熱および加圧成形するに際し、管軸方向の圧縮強度と圧縮弾性率との比率が所定の関係を満たす、内管とは異なる繊維強化樹脂を緩衝層として両管の間に挟み込むことにより、外管の熱収縮による管軸方向の圧縮荷重が、かかる緩衝層の圧縮および剪断変形によって吸収されるという知見に想到した。またこのことは、外管の熱収縮に伴う管軸方向の荷重が内管に直接負荷されることを防止し、内/外管の剥離や、内管の座屈または材料破壊の発生を回避できることを意味するものであることから、かかる知見に基づき上記課題を解決する本発明の完成に到った。また緩衝層をエポキシ系などの接着剤ではなく繊維強化樹脂とすることにより、複合管全体としての剛性の確保も図られている。
すなわち以下の発明によれば、上記課題を解決することが可能である。
(1)金属製の外管の内周面に、第一の繊維強化樹脂からなる内管が、第二の繊維強化樹脂からなる緩衝層を挟んで加熱および加圧成形された金属/樹脂複合管であって、
前記複合管の管軸方向について、第二の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、第一の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする金属/樹脂複合管。
また本発明は、その具体的な実施の態様として以下の各関連発明を含むものである。
(2)前記Rc2がRc1の1.5倍以上であることを特徴とする(1)記載の金属/樹脂複合管。
(3)外管、内管および緩衝層の、管軸に垂直な断面の形状が矩形であることを特徴とする(1)または(2)に記載の金属/樹脂複合管。
(4)内管が炭素繊維強化プラスチック、緩衝層がガラス繊維強化プラスチックからなることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の金属/樹脂複合管。
(5)内管と緩衝層の厚さの比が10:1乃至100:1であることを特徴とする(4)記載の金属/樹脂複合管。
(6)内圧負荷手段を具備する芯材の周囲に、第一の繊維強化樹脂からなる内管を被着させる第一工程と、
内管の外周に第二の繊維強化樹脂からなる緩衝層を被着させる第二工程と、
金属製の外管の内部に、緩衝層を被着した内管を挿入する第三工程と、
外管、緩衝層および内管を所定の成形温度(℃)に加熱しつつ、前記内圧負荷手段によりこれらを一体に加圧成形する第四工程と、
前記成形温度(℃)の40乃至80%の温度(℃)にてエージングを行う第五工程とからなる金属/樹脂複合管の製造方法であって、
前記複合管の管軸方向について、第二の繊維強化樹脂の加圧成形後の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、第一の繊維強化樹脂の加圧成形後の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする金属/樹脂複合管の製造方法。
金属製の外管とFRP製の内管を加熱環境下で加圧成形する場合、CTEの大きな金属管は成形温度まで加熱した際に大きな熱膨張変形を生じ、その状態で熱変形の小さなFRP製の内管と一体に加圧成形されることとなる。本発明にかかる金属/樹脂複合管によれば、複合管の管軸方向について、両者の間に挟み込む緩衝層の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、内管の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする。
これにより、加熱・加圧状態から複合管の全体が冷却されて外管が収縮する際に、緩衝層は、圧縮弾性率の低さゆえ外管側が引きずられて圧縮変形し、一方で内管側は拘束された状態で保持されるため管軸方向に全体が剪断変形をすることとなる。このため、金属外管とFRP内管の間に生じる熱応力を緩衝層の圧縮および剪断応力として受け止め、これを吸収させることができる。
図8は、本発明にかかる複合管の熱変形特性を示す説明図である。外管10と内管12の間に緩衝層14を挟み込むことにより、熱膨張した外管10(状態A)の冷却による熱収縮に伴う緩衝層14の圧縮および剪断変形が生じ(状態B)、熱応力が吸収されている様子を示している。
また緩衝層に負荷される応力は、そのひずみの大きさから、外管と直接接触する最外面の圧縮応力が一般的に最もクリティカルになるところ、緩衝層の圧縮強度の高さゆえ、上記の圧縮変形によっても緩衝層自体が破壊されることは回避される。一方、繊維強化樹脂の圧縮強度と剪断強度は一般に正の相関関係を有し、緩衝層は高い剪断強度も有するものであるところ、外管から緩衝層に負荷される剪断応力は緩衝層の厚さに反比例して緩衝層全体に負荷されるためその値は小さなものとなり、緩衝層自体が剪断破壊されることもまた回避される。
このような緩衝層を設けない従来の複合管では、冷却開始時に生じるストレスオーバーシュートによる内管最外層の材料破壊や、冷却が進行し外管の熱収縮ひずみが大きくなった場合の両管の剥離や内管全体の座屈破壊などが特に問題となるが、本発明のように金属外管とFRP内管の間に、管軸方向の圧縮強度/圧縮弾性率(Rc)の値が大きい緩衝層を設けることによりこれらの問題を解決することができる。
また緩衝層を繊維強化樹脂とすることにより、接着剤による内/外管の接合を行う従来の方式に比べ、複合管全体としての剛性が高く確保される。これにより金属外管の摺動性や加工性、耐溶剤性と、FRP内管の高い比強度や比剛性、耐熱変形性の利点をいずれも享受することのできる金属/樹脂複合管が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて具体的に説明する。ただし特に複合管の断面形状や管軸の形状、加圧手段の具体方法などにつき、本発明は以下の実施の形態に限られるものではない。本発明にかかる金属/樹脂複合管の管軸に沿った断面(縦断面)の形状を図1に示す。また管軸に垂直な断面(横断面)の形状を図2に示す。図2は図1のA−A断面に相当する。10は外管、12は内管、14は緩衝層、20は複合管を表わす。
外管10は金属材料からなる。これにより、樹脂との複合管とした場合の表面の摺動性、切削、溶接、メッキなどの加工性、耐溶剤性などの利点が得られる。金属材料は特に限定されず、例えばステンレス(SUS)、鋼、アルミニウム(アルミ)、鉄、銅、チタン、マグネシウム、またはこれらの合金などの中から用途、入手性、加工性などの観点から適宜選択できる。
また外管10の外周面は、一般的なワイヤブラシやサンダーなどの機械的研磨処理のほか、脱脂処理、硫化や酸化などの化成処理、防錆などのメッキ処理、陽極酸化処理、表面効果処理、膜処理などを成形前に行っておいてもよい。ただし、これらの表面処理は内管12との複合後に行うこともできる。
一方、外管10の内周面は緩衝層14との接着力を向上するため、脱脂処理、プライマー処理、機械的研磨処理、化成処理などを行っておくことが好適であるが、これらは必須の工程ではない。また用いる金属材料により、例えばアルミニウム管へのノンクロメート化成処理、鋼管へのリン酸塩被膜処理、SUS管へのエポキシ系プライマー処理など、好適な処理を適宜選択できる。
図1、図2において、外管10の縦断面形状は直線、横断面形状は矩形を例示してあるが、本発明の目的を達成するための外管10の形状はこれに限られるものではなく、枝分かれの有無を含めて長手方向が真っ直ぐ以外の異形管や、円形断面や三角形断面をはじめ、特殊形状の横断面形状の管でもよく、長手方向に沿って断面が変化してもよい。
内管12は、第一の繊維強化樹脂材料からなる。これにより、母材や繊維の種別、および繊維配向の好適な設定により、金属管を超える比強度、比剛性、耐熱変形性、耐食性、耐薬品性などを複合管として得ることができる。
第一の繊維強化樹脂に用いる母材(マトリクス)には、例えばエポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)、不飽和ポリエステル樹脂(FRP)、アルキド樹脂、ビスマレイミド樹脂(BMI)、シアネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、またはポリウレタン樹脂(PUR)などの熱硬化性樹脂、またはポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリサルフォン(PSF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリレンケトン、ポリアリレンサルファイド、またはポリエステル(PET)などの熱可塑性樹脂の中から一つを選択して、または二種類以上を混合して用いることができる。このうち、エポキシ樹脂またはシアネート樹脂が強度、成形性、入手性の観点から好適に用いられる。
また第一の繊維強化樹脂に用いる強化繊維(ファイバー)には、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ケブラー繊維、天然繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナ繊維などの金属繊維が用いられる。
これらの強化繊維は、いずれか一種類、または複数種類を混合したものでもよく、繊維長も短繊維、長繊維を問わないが、内管、ひいては複合管の比強度や比剛性を高くする観点から、炭素繊維、アラミド繊維、または炭化珪素繊維を長繊維として用いるのが好適である。
強化繊維と樹脂の複合方法は特に限定されない。例えば、強化繊維を三次元的に内管の形状に編み上げた状態で樹脂を含浸することもできるが、強化繊維を一方向に揃え、前記の母材を含浸して半硬化状態にしたシート状のプリプレグを複数枚形成しておき、これらを適宜積層していく方法が、繊維の配向設計により複合管の所定の方向(例えば管軸方向)を強化することが容易にできるため好適である。
複合管20全体の軸方向弾性率を高くする観点から、内管12は、炭素繊維の一方向(UD:unidirectional)材のプリプレグシートを、管軸方向(0度方向)を中心に配向させて積層成形することが特に好適である。
内管12の形状は特に限定されない。図1、図2では外管10と同様に縦断面形状を直線、横断面形状を矩形としているが、これに限られず、外管10と同様に、異形管や、特殊形状の横断面形状の管としてもよい。また内管12の縦または横断面形状を外管10と同一または相似形とする必要はなく、内管として要求される肉厚、開口形状および開口面積を適宜採用することができる。
外管10と内管12に挟み込まれ、両者を結合する緩衝層14は、第二の繊維強化樹脂材料からなる。これにより複合管全体としての剛性を維持しつつ、両管の間に生じる熱応力を緩衝層14に対する圧縮および剪断応力として吸収させることができる。
第二の繊維強化樹脂に用いる母材(マトリクス)には、第一の繊維強化樹脂として広く例示した熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂の中から一つを選択して、または二種類以上を混合して用いることができる。
また第二の繊維強化樹脂に用いる強化繊維(ファイバー)には、第一の繊維強化樹脂として広く例示した繊維材料の中からいずれか一種類、または複数種類を混合して用いることができる。ただし本発明の目的を達成するためには、前記樹脂を含浸して緩衝層14を形成し、これを加熱および加圧成形した状態で、管軸方向について、圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、内管12のそれ(Rc1)よりも大きいものとすることが必要である。Rc2をRc1よりも大きくすることにより、加熱成形後の冷却工程における内/外管の剥離や、内管12の材料破壊または座屈破壊を防ぐことができる。
このため、強化繊維としてガラス繊維、アラミド繊維、ケブラー繊維または炭素繊維、母材としてエポキシ樹脂、シアネート樹脂、または不飽和ポリエステル樹脂が、高い圧縮および剪断強度、並びに適度な圧縮および剪断弾性率の観点から好適に用いられる。
ただし、例えば第一、第二の繊維強化樹脂をいずれもエポキシ樹脂を含浸した炭素繊維とする場合、上記のようにRc2をRc1よりも大きくするため、強化繊維の含有量および/または配向の向きを変えることが必要であり、特に0/90度方向に積層したクロス材を用いることが好適である。このほか、ガラスクロスFRP、ガラスマットFRP、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂などのGFRP、ケブラークロスFRPなどが圧縮強度と圧縮弾性率の適度なバランスの観点から好適に用いられる。
接着剤にて内/外管を接着する従来技術の場合、金属管の収縮による両管の剥離等を防止するためには、接着層を剪断強度に見合うまで厚くする必要があり、複合管全体の弾性率を低下させるという問題点があったところ、上記の繊維強化樹脂を緩衝層14に用いることにより、金属/樹脂複合管とした場合も、外管単体の弾性率を低下させることなく高い値に維持することができるという本発明の利点を得ることが可能となる。例えば内管として炭素繊維強化プラスチックを用いる場合、外管の材料をアルミやチタンのみならず高弾性率のSUSを用いたとしても、剥離等の成形上の問題を生じることなく、外管単体の弾性率を維持する金属/樹脂複合管を得ることができる。
緩衝層14は外管10と内管12に挟み込まれるが、その分布や厚さは特に限定されない。ただし、内/外管の剥離などの問題を回避し、かつ複合管全体の剛性を高く維持する観点からは、外管10の内周面と内管12の外周面の間に形成される空間を全体に均一に近い厚さとし、かかる空間にて緩衝層14を挟み込むことが好適である。
本発明の請求項2にかかる発明においては、前記Rc2がRc1の1.5倍以上、好ましくは2.0倍、更に好ましくは3.0倍以上であることが好適である。これにより、外管10の熱収縮により生じる応力を緩衝層14にて十分に吸収させ、内/外管の剥離や内管の破壊の問題をより好適に回避することができる。
本発明の請求項3にかかる発明においては、外管、内管および緩衝層の横断面形状を矩形とすることができる。これは、後述する本発明にかかる複合管の製造方法において、内管12の内側より内圧を負荷する方式を採っているため、従来のシュリンクテープなどを用いた外圧負荷方式と異なり、金属管を外側に有し、かつ矩形断面の複合管でありながら、各コーナー部についても高い圧力負荷を与え、成形後の各層の剥離を排除することができるためである。
本発明の請求項4にかかる発明においては、内管を炭素繊維強化プラスチック、緩衝層をガラス繊維強化プラスチックとすることが好適である。これにより、緩衝層の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)を、内管のそれ(Rc1)よりも大きくすることができる、本発明の目的を達成することができる。
本発明の請求項5にかかる発明においては、内管と緩衝層の厚さの比が好ましくは5:1乃至200:1、更に好ましくは10:1乃至100:1であることが好適である。弾性率の比較的低い緩衝層の厚さをこの範囲に留めることにより、複合管全体の剛性を高く維持しつつ、外管10の熱収縮によって生じる内管12との間の熱応力を、緩衝層14の圧縮および剪断変形により好適に吸収させることができる。
本発明の請求項6にかかる発明については、
内圧負荷手段を具備する芯材の周囲に、内管12を被着させる第一工程と、その外周に緩衝層14を被着させる第二工程と、これらを外管10の内部に挿入する第三工程と、外管10、緩衝層14および内管12を所定の成形温度(℃)に加熱しつつ、前記内圧負荷手段によりこれらを一体に加圧成形する第四工程と、前記成形温度(℃)の40乃至80%の温度(℃)にてエージングを行う第五工程とからなる金属/樹脂複合管の製造方法であって、
前記複合管の管軸方向について、緩衝層14の加圧成形後の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、内管12のそれ(Rc1)よりも大きいものとすることが好適である。これにより本発明にかかる金属/樹脂複合管が得られるとともに成形時のプリストレスを除去することができる。
芯材は、後述する内圧負荷手段18を具備する中子であり、その外周に内管12を例えばプリプレグの巻き付けなどの方法により形成するものである。材質はSUS、銅、アルミまたはセラミクスなどの金属や、樹脂材料から適宜選択することができる。
内圧負荷手段は、積層した内管12と緩衝層14を複合管の内部から押圧し、外管10と一体に加圧成形するための手段である。具体的な方法は特に限定されないが、セパレートした芯材の中心にテーパーのある棒材を押入する方法や、同じくセパレートした芯材の中心部に高圧空気を流し込む方法などが好適に用いられる。
エージングは加熱・加圧成形時に各材料が受けるプリストレスを除去するものである。その温度や時間は特に限定されないが、摂氏温度単位において、成形温度の40乃至80%とすることが好適である。この範囲以下の温度ではエージングの効果が十分得られず、またこの範囲以上の温度では再び外管10の熱膨張量が大きくなり、新たなプリストレスを生じる。
以下、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明する。図3は本実施例にかかる製造方法の第一工程を示す説明図である。高さ5cm、幅10cmのSUS(圧縮弾性率:200[GPa])製の角柱を芯材16とし、その表面に、第一の繊維強化樹脂からなる一方向材のプリプレグを巻き付け、矩形横断面の内管12を形成した。第一の繊維強化樹脂には、母材にエポキシ樹脂、強化繊維にピッチ系の炭素繊維(長繊維)を用いた。長手方向である管軸方向の剛性を強化するため、0度方向(管軸方向)を2層に対し、45度方向を1層の割合でプリプレグを配向し、合計して厚さ4mmの積層を行った。プリプレグの繊維方向(0度方向)の圧縮弾性率は250[GPa]、上記積層によってなる内管の軸方向の圧縮弾性率は約220[GPa]であった。
図4は第二工程を示す説明図である。内管12の表面に、第二の繊維強化樹脂プリプレグを巻き付け、矩形横断面の緩衝層14を形成した。第二の繊維強化樹脂には、表1に示す4種類のFRP材料を用いた。すなわち実施例1ではファイバーを長繊維ガラスクロス、マトリクスを不飽和ポリエステル樹脂とするFRP、実施例2ではファイバーを短繊維ガラスマット、マトリクスを不飽和ポリエステル樹脂とするFRP、実施例3ではファイバーを炭素繊維(クロス材)、マトリクスをシアネート樹脂とするFRP、実施例4ではファイバーをケブラークロス、マトリクスをエポキシ樹脂とするFRPを、それぞれ用いた。かかる緩衝層14は内管12の表面全体に対し、約0.2mmの厚さで積層した。
実施例1から4で用いた第一および第二の繊維強化樹脂につき、管軸方向の圧縮強度[MPa]、圧縮弾性率[GPa]、圧縮強度/圧縮弾性率(Rc1、Rc2)[10−3]、Rc2とRc1の比率をそれぞれ表1に示す。
図5は第三工程を示す説明図である。肉厚5mmのSUS製の矩形管を外管10に用い、これを緩衝層14に被せた。後述する内圧負荷手段18のストロークを小さくすべく、外管10の内周面は緩衝層14と極力嵌め合いに近い状態となるよう切削した。なお、外管10の内周面はエポキシ系のプライマー処理を行い、緩衝層14との接着性を向上させた。
図6は第四工程を示す説明図である。芯材16には内圧負荷手段18を設け、内管12および緩衝層14を内側から外管10に対して加圧できるようにした。かかる内圧負荷手段18により内管12に30[MPa]の押圧を与えた。また図示しないヒータにより複合管全体を130[℃]に加熱し、180[分]の成形を行った。
内圧負荷手段18を図7に示す。4つにセパレートした芯材16の中心に穿設したテーパー孔に、これと対応するテーパー状のSUS製の棒材18を押入する方式を採用した。管軸方向に所定の長さだけ棒材18を出し入れすることにより、希望する内圧を芯材16および内管12に与えることができるものである。
上記成形時間の経過後、棒材18を芯材16より抜き出し、80[℃]で120[分]のエージングを行い、実施例1から4にかかる金属/樹脂複合管を得た。得られた複合管をそれぞれ管軸に沿って数箇所ずつ輪切りにし、断面を目視により観察したところ、層間剥離や材料破壊はいずれも認められず、良好な成形が行われたことが確認された。またこれら実施例1から4にかかる複合管は、いずれも管軸方向の圧縮弾性率として204[GPa]以上という高い値を維持しており、これはSUSの外管単体による弾性率を超えるものであった。
本発明にかかる金属/樹脂複合管は、FRPゆえの比強度、比剛性や耐熱変形性を有するとともに、外管が金属であることから一般の切削加工が可能である。これにより所定の肉厚や形状の複合管を削り出すことができるほか、摺動性や溶接加工性にも優れるため、ロボットハンドや、構造部材としての配管などに利用可能である。
本発明の実施の形態にかかる複合管の縦断面図 本発明の実施の形態にかかる複合管の横断面図 本発明の実施例にかかる複合管の製造方法の第一工程を示す説明図 本発明の実施例にかかる複合管の製造方法の第二工程を示す説明図 本発明の実施例にかかる複合管の製造方法の第三工程を示す説明図 本発明の実施例にかかる複合管の製造方法の第四工程を示す説明図 本発明の実施例に用いる内圧負荷手段を示す説明図 本発明にかかる複合管の熱変形特性を示す説明図 従来の複合管における層間剥離および座屈破壊を示す説明図
符号の説明
10 外管
11 剥離
12 内管
13 座屈
14 緩衝層
16 芯材
18 内圧負荷手段
20 複合管

Claims (6)

  1. 金属製の外管の内周面に、第一の繊維強化樹脂からなる内管が、第二の繊維強化樹脂からなる緩衝層を挟んで加熱および加圧成形された金属/樹脂複合管であって、
    前記複合管の管軸方向について、第二の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、第一の繊維強化樹脂の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする金属/樹脂複合管。
  2. 前記Rc2がRc1の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1記載の金属/樹脂複合管。
  3. 外管、内管および緩衝層の、管軸に垂直な断面の形状が矩形であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属/樹脂複合管。
  4. 内管が炭素繊維強化プラスチック、緩衝層がガラス繊維強化プラスチックからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属/樹脂複合管。
  5. 内管と緩衝層の厚さの比が10:1乃至100:1であることを特徴とする請求項4記載の金属/樹脂複合管。
  6. 内圧負荷手段を具備する芯材の周囲に、第一の繊維強化樹脂からなる内管を被着させる第一工程と、
    内管の外周に第二の繊維強化樹脂からなる緩衝層を被着させる第二工程と、
    金属製の外管の内部に、緩衝層を被着した内管を挿入する第三工程と、
    外管、緩衝層および内管を所定の成形温度(℃)に加熱しつつ、前記内圧負荷手段によりこれらを一体に加圧成形する第四工程と、
    前記成形温度(℃)の40乃至80%の温度(℃)にてエージングを行う第五工程とからなる金属/樹脂複合管の製造方法であって、
    前記複合管の管軸方向について、第二の繊維強化樹脂の加圧成形後の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc2)が、第一の繊維強化樹脂の加圧成形後の圧縮強度/圧縮弾性率の値(Rc1)よりも大きいことを特徴とする金属/樹脂複合管の製造方法。

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