JP2006265104A - 皮膚外用剤用リン脂質誘導体、皮膚外用剤、リポソームおよび脂肪乳剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、天然由来の未水素添加リン脂質を用いた場合では、色や臭いが悪く、特に安定性が悪い問題点がある。これは、リン脂質を構成する脂肪酸として、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などの2つ以上の二重結合を有するポリエン脂肪酸を含むため、容易に酸化され、着色や変臭などが起こり、用途が非常に限られていた。
(1) 天然水素添加リン脂質の2位置換誘導体であって、相転移温度が37℃以下である、式(1)で示される皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
R2COは、炭素数14〜22の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸の割合が90mol%以上であり、2個以上の不飽和基を持つ炭素数14〜22の不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である。)
(3) ホスファチジルコリン含有量が85重量%以上である前記のリン脂質誘導体。
(4) 天然水素添加リン脂質が水素添加大豆リン脂質である前記のリン脂質誘導体。
(5) Ca2+含有量100ppm以下である前記のリン脂質誘導体。
(6) 40℃で1ヶ月経過後の過酸化物価が5以下である前記のリン脂質誘導体。
(7) クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の溶剤で20重量%の溶液とした際の色相がAPHA:10以下である前記のリン脂質誘導体。
(8) 酸価が10以下である前記のリン脂質誘導体。
(9) 前記のリン脂質誘導体を配合してなる皮膚外用剤。
(10) 前記のリン脂質誘導体を含むリポソーム。
(11) 前記のリン脂質誘導体を配合してなる脂肪乳剤。
1. 試料
本発明において、リン脂質の組成分析、純度測定は薄層クロマトグラフィー(以下、TLCという)で行った。TLCは、「Kieselgel 60」(Merck & Co.Inc.)を用い、5%の試料2マイクロリットルをスポットし、クロロホルム:メタノール:蒸留水=65:25:4(容量比)で展開し、硫酸銅(無水)10gとリン酸(85%)8ミリリットルを蒸留水で100ミリリットルとした溶液を噴霧後加熱する方法により行った。また、本発明の合成例において用いた原料の天然植物由来モノ不飽和脂肪酸の脂肪酸純度は、脂肪酸試料10mgに、三フッ化ホウ素/メタノール試薬5mLを加え、水浴上で15分間加温した。冷却後、n−ヘキサン5mLと飽和食塩水15mLを加えて振とうし、静置後、n−ヘキサン相のガスクロマトグラフィー分析を下記の条件で行って、純度を測定した。
カラム温度: 210℃
注入温度: 225℃
スプリット比: 1/100
キャリアーガスとその流量: 窒素ガス、30mL/分
検出器: FID
試料量: 2.0μL
水素添加大豆リン脂質ホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度:90%品、C16:0=17.7mol%, C18:0=81.9mol%)120gをクロロホルム1800ミリリットルに溶解し、塩酸100ミリモルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH=8.0)880ミリリットル、100ミリモル塩化カルシウム水溶液1320ミリリットル、およびホスホリパーゼA224000単位を加え、40℃で24時間反応し、2位のアシル基を加水分解した。反応後、反応液を分液ロートに移し、6時間静置し、2層に分離した後、下層を別の分液ロートに移して水洗するため、蒸留水1320ミリリットルを加え、振とうし、6時間静置した。2層に分離した後、下層をフラスコに分取し、エバポレーターで溶媒留去し、ヘキサン5000ミリリットルを加えて4℃に冷却し、同温度で1時間保ったのち、濾過して析出物64.3gを得た。これにクロロホルム1200ミリリットル、メタノール600ミリリットルを加えて、溶解し、イオン交換樹脂(アンバーライトIRC-50、ロームアンドハース社製)を充填したカラム(カラム容量:500ミリリットル)を通液させ、処理液をエバポレータで500ミリリットルまで濃縮した。これにアセトン5リットルを加えて10℃に冷却し、同温度で1時間保ったのち、濾過して析出物60.3gを得た。
ナタネ油由来の高純度ガドレイン酸(ガドレイン酸純度:99.3mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.02mol%)100.0gをクロロホルム200ミリリットルに溶解し、10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド40gをクロロホルム20ミリリットルに溶解したものをゆっくり滴下した。1時間反応した後、析出した白色のジシクロヘキシルウレアを濾過により除去し、ガドレイン酸無水物溶液を得た。得られたろ液のガドレイン酸無水物と本発明品1で得られた1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%)98.5%品60.0gとジメチルアミノピリジン3.0gを加え、2位のアシル化反応を40℃、24時間行った。得られた反応液は本発明品1と同様に処理し、析出物50.4gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−ガドレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C20:1=97.6mol%、略称HSGPC)99.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.9ppmであった。
ナタネ油由来の高純度エルカ酸(エルカ酸純度:99.5mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.02mol%)100.0gをクロロホルム200ミリリットルに溶解し、10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド40gをクロロホルム20ミリリットルに溶解したものをゆっくり滴下した。1時間反応した後、析出した白色のジシクロヘキシルウレアを濾過により除去し、エルカ酸無水物溶液を得た。得られたろ液のエルカ酸無水物と本発明品1で得られた1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%)98.5%品60.0gとジメチルアミノピリジン3.0gを加え、2位のアシル化反応を40℃、24時間行った。得られた反応液は本発明品1と同様に処理し、析出物49.9gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=96.4mol%、略称HSEPC)99.5%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.4%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量5.8ppmであった。
水素添加大豆リン脂質(ホスファチジルコリン純度:90%品):略称HSPC
(比較品2)
水素添加卵黄リン脂質(ホスファチジルコリン純度:90%品):略称HEPC
(比較品3)
大豆リン脂質(未水素添加品、ホスファチジルコリン純度:90%品): 略称:SPC
(比較品4)
卵黄リン脂質(未水素添加品、ホスファチジルコリン純度:90%品): 略称:EPC
ヒマワリ油由来のオレイン酸(オレイン酸純度:81.3mol%、ポリ不飽和脂肪酸:3.6mol%)を用いた以外は、本発明品1と同様に行って、析出物47.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.4mol%、略称HSOPC)99.0%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.9%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.2ppmであった。
ヒマワリ油由来のオレイン酸(オレイン酸純度:60.5mol%、ポリ不飽和脂肪酸:11.2mol%)を用いた以外は、本発明品1と同様に行って、析出物41.2gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=57.8mol%、略称HSOPC)98.8%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.1%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量9.8ppmであった。
ナタネ油由来のガドレイン酸(ガドレイン酸純度:81.2mol%、ポリ不飽和脂肪酸:1.8mol%)を用いた以外は、本発明品2と同様に行って、析出物47.5gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−ガドレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C20:1=80.2mol%、略称HSGPC)98.8%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.1%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量8.8ppmであった。
ナタネ油由来のエルカ酸(エルカ酸純度:81.4mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.8mol%)を用いた以外は、本発明品3と同様に行って、析出物48.0gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=80.4mol%、略称HSEPC)99.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.4ppmであった。
水素添加大豆リン脂質ホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度:80%品)を用いた以外は、比較品5と同様に行って、析出物46.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.2mol%、略称HSOPC)79.4%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.9%、遊離脂肪酸0.7%、その他リン脂質成分14.8%、その他(脂肪酸エステル類等)3.2%、Ca2+残存量19.5ppmであった。
イオン交換樹脂での処理を行わない以外は、比較品5と同様に行って、粗精製の析出物43.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.0mol%、略称HSOPC)97.4%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン2.5%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量2100ppmであった。
イオン交換樹脂での処理を行わない以外は、比較品8と同様に行って、粗精製の析出物44.1gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=80.1mol%、略称HSEPC)97.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン2.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量2300ppmであった。
参考例1の試料を常法に従い、NaOH/メタノールで加水分解した後、三フッ化ホウ素/メタノールでメチルエステルとし、ガスクロマトグラフィーにて各脂肪酸を定量し、1位と2位のアシル基が混合した全体の脂肪酸組成を測定した。また、本発明品1と同様の方法により参考例1の各試料の1−アシル−2−リゾリン脂質を合成し、同様に1位のアシル基を加水分解してガスクロマトグラフィーにて1位脂肪酸組成を測定した。2位アシル基の脂肪酸組成は、全体の脂肪酸組成と1位脂肪酸組成の差分から算出した。表1に結果を示す。
参考例1の試料の相転移温度は、示差走査熱量計DSC(Seiko製)で測定した(昇温速度:5℃/分)。表2に結果を示す。
参考例1の試料のCa2+含量は、試料を酸で灰化した後、原子吸光測定装置(日立製作所製)で測定した。その際、0〜3000ppmの検量線を作成し、定量を行った。表2に結果を示す。
参考例1の試料を用いた過酸化物価の経時変化は、試料を固体状態で、経時試験開始時と、空気下、40℃、1ヶ月保存した後の過酸化物価(POV、日本油化学協会制定の基準油脂分析法2.4.12−86に準ず)を測定して行った。表2に結果を示す。
参考例1の試料の酸価は、日本油化学協会制定の基準油脂分析法4.2.1−1996に準じて測定した。表2に結果を示す。
参考例1の試料を用い、2重量%の水分散液をスターラーで調製し、その水分散性を評価した。評価は、調製時(室温)、室温・1ヶ月後と4℃・1ヶ月後で目視にて行った。表2に結果を示す。
(評価の基準)
○:均一
△:やや不均一
×:沈殿を生じ、完全に分離
参考例1の試料を使用して乳液を作製した。すなわち、表3の組成からなる基材のうち乳化剤を含む油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、攪拌しながら水相部を同温度で添加した。
参考例1の試料を使用してクリームを作製した。すなわち、表4の組成からなる基材のうち乳化剤を含む油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、攪拌しながら水相部を同温度で添加した。
参考例1の試料を使用してリポソーム液を作製した。すなわち、参考例1のリン脂質2.00g、コレステロール0.45g(1.32mmol)をナス型フラスコに入れ、クロロホルム50mLを加えて溶解し、ロータリーエバポレーターにて脱溶剤し、フラスコ内壁に脂質の薄膜を形成した。減圧下にて溶剤除去を十分に行い、pH7のリン酸緩衝生理食塩水液30mLを加えて分散し、さらに超音波洗浄器にて5分間処理を行いリポソーム溶液とした。
前記した乳液、クリーム、リポソーム液の各試料の安定性試験として、各試料を透明瓶に入れ、密閉し、40℃、1ヶ月間保存した後、外観、臭いについて評価した。結果を表5に示す。
(臭いの評価基準)
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
前記した乳液、クリーム、リポソーム液の各試料を皮膚に塗布し、官能試験を行った。官能試験は10人の専門パネラーで行った。評価方法は、上腕部を洗浄した後に試料を塗布し、塗布時のなめらかさ、べたつきのなさ、塗布後のしっとり感についての評価を下記基準により5段階評価し、さらにその平均点をもとめ判定した。結果を表5に示す。
5点:非常に良好。
4点:良好。
3点:普通。
2点:やや不良。
1点:不良。
(判定)
◎:平均点:4.5点以上
○:平均点:3.5点以上、4.5点未満
△:平均点:2.5点以上、3.5点未満
×:2.5点未満
前記したクリームの各試料を、それぞれ30〜50歳のパネラー10名にブラインドにて1ヶ月間使用し、しわ防止、皮膚のはり、皮膚のきめについて評価を行った。しわ防止に関しての評価基準は、「有効」、「やや有効」、「無効」の三段階で、肌のはり、肌のきめに関しての評価基準は、「良好」、「やや良好」、「変化なし」の三段階で行った。結果を表6に示す。ここで表中の数字は、各評価に該当する人数を示している。
Claims (11)
- 前記モノ不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項1記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- ホスファチジルコリン含有量が85重量%以上である、請求項1または2記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- 前記天然水素添加リン脂質が水素添加大豆リン脂質である、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- Ca2+含有量が100ppm以下である、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- 40℃で1ヶ月経過後の過酸化物価が5以下である、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の溶剤で20重量%の溶液とした際の色相がAPHA:10以下である、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- 酸価が10以下である、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
- 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を配合してなる皮膚外用剤。
- 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を含むリポソーム。
- 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を配合してなる脂肪乳剤。
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