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JP2006265104A - 皮膚外用剤用リン脂質誘導体、皮膚外用剤、リポソームおよび脂肪乳剤 - Google Patents

皮膚外用剤用リン脂質誘導体、皮膚外用剤、リポソームおよび脂肪乳剤 Download PDF

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Abstract

【課題】化粧品・皮膚外用剤用途での機能・効果が優れたリン脂質誘導体を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるリン脂質誘導体。
Figure 2006265104

(RCOは炭素数14〜18の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である。RCOは、炭素数14〜22の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸の割合が90mol%以上であり、2個以上の不飽和基を持つ炭素数14〜22の不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、天然水素添加リン脂質を原料に、1位に飽和脂肪酸、2位に高純度で安定性の高いモノ脂肪酸が結合したリン脂質誘導体、及びこれを配合した皮膚外用剤、リポソーム、脂肪乳剤に関する。
近年、化粧品に対する安全性の要求が以前にも増して求められており、天然由来の化粧品が消費者へ安心感を与え、消費者の天然由来嗜好が高まっている。特に、狂牛病などの影響もあり、植物由来の原料を用いた化粧品が望まれている。また、環境面からも自然界で自浄作用のある天然由来原料が望まれている。
その中で、安全性や入手性の点から大豆あるいは卵黄由来のリン脂質が広く用いられている。その用途は、乳化剤、分散剤、マイクロエマルジョン剤、リポソーム形成材料等として広く利用されている。このような多様な要求に対応するため、各々の用途に応じた適切な機能を有する種々のリン脂質が求められている。
しかしながら、天然由来の未水素添加リン脂質を用いた場合では、色や臭いが悪く、特に安定性が悪い問題点がある。これは、リン脂質を構成する脂肪酸として、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などの2つ以上の二重結合を有するポリエン脂肪酸を含むため、容易に酸化され、着色や変臭などが起こり、用途が非常に限られていた。
そのため、例えば特許文献1では、未水素添加の卵黄リン脂質に低級アルコールを残留させた組成物が提案されているが、安定性が改善されるものの、満足できるものではなかった。
特開平10−155427号公報
また、別の解決方法として、一般的に水素添加したリン脂質を用いることが検討されている。しかしながら、水素添加により、リン脂質の相転移温度を上昇させてしまう。このリン脂質の相転移温度とは、ゲル状態から液晶状態へ変化する際の温度であり、相転移温度以下ではアシル鎖の運動が抑制され流動性がないゲル状であり、相転移温度以上では流動性の増した液晶状態となる。一般に相転移温度はリン脂質を構成する脂肪酸鎖長、不飽和度、親水基の種類等によって大きく異なる。天然由来のリン脂質では組成に幅があるが、水素添加により相転移温度が、一般的な大豆リン脂質では−20℃〜−10℃から50〜55℃へ、一般的な卵黄リン脂質では−15℃〜−5℃から45℃〜50℃へと上昇する。こうした相転移温度の上昇により、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が変化し、その機能効果に大きく影響を与えるため、用途が限られる。特に、化粧品では分散性が悪くなり、分離・凝集し、また使用感として硬い感じになり、のび・なめらかさといった重要な要因に影響を与えるという欠点がある。そのため、例えば特許文献2では、水素添加レシチンにグリコール類を添加する方法が提案されているが、製品の処方が制限される等の問題があった。
特開2004−51495号公報
このように従来の天然由来の未水素添加リン脂質、あるいは水素添加リン脂質では、化粧品として使用する場合に必要な、色、臭い、安定性、分散性および溶解度等の界面化学的な物性、使用感(のび・なめらかさなど)を同時に満足するのが困難である。特に、長期間の保存で凝集や沈殿物を生じないことと、酸化に対する安定性を満足するのが困難である。
本発明の課題は、天然由来の未水素添加リン脂質あるいは水素添加リン脂質では得られない優れた酸化安定性と適正な相転移温度を有し、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が良好で、化粧品・皮膚外用剤用途での機能・効果が優れたリン脂質誘導体を工業的に提供することである。
そのため、リン脂質のアシル基の種類と、不純物による物性への影響、相転移温度などの物性と機能・効果の関係を検討し、優れた機能や効果として、安定性が高く、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が優れたリン脂質誘導体を提供することである。
特に、本発明の課題は、化粧品・皮膚外用剤用途において、原料が天然由来であるリン脂質誘導体を配合することにより、安定性が高くかつ水分散性が良好でかつ使用感に優れた効果を発揮する皮膚外用剤、リポソーム、脂肪乳剤を提供することにある。
すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1) 天然水素添加リン脂質の2位置換誘導体であって、相転移温度が37℃以下である、式(1)で示される皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
Figure 2006265104
(RCOは炭素数14〜18の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である。
COは、炭素数14〜22の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸の割合が90mol%以上であり、2個以上の不飽和基を持つ炭素数14〜22の不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である。)
(2) 2位脂肪酸残基がオレイン酸残基である前記のリン脂質誘導体。
(3) ホスファチジルコリン含有量が85重量%以上である前記のリン脂質誘導体。
(4) 天然水素添加リン脂質が水素添加大豆リン脂質である前記のリン脂質誘導体。
(5) Ca2+含有量100ppm以下である前記のリン脂質誘導体。
(6) 40℃で1ヶ月経過後の過酸化物価が5以下である前記のリン脂質誘導体。
(7) クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の溶剤で20重量%の溶液とした際の色相がAPHA:10以下である前記のリン脂質誘導体。
(8) 酸価が10以下である前記のリン脂質誘導体。
(9) 前記のリン脂質誘導体を配合してなる皮膚外用剤。
(10) 前記のリン脂質誘導体を含むリポソーム。
(11) 前記のリン脂質誘導体を配合してなる脂肪乳剤。
本発明により、飽和リン脂質と不飽和リン脂質の特性を併せ持ち、安定性が高く、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が優れ、かつ皮膚外用剤・化粧品での機能効果や使用感が良好な相転移温度の範囲を有する原料が天然由来であるリン脂質誘導体の提供が可能となった。特に、2位に高純度モノ不飽和脂肪酸を導入することにより、安定性が飛躍的に高くなった。
さらに、リン脂質中のCa2+含有量を100ppm以下とすることにより、このリン脂質誘導体の溶解性、水分散性が改善可能となった。また、このリン脂質誘導体を配合することにより、安定性が高くかつ水分散性が良好でかつ使用感に優れた効果を発揮する皮膚外用剤、リポソーム、脂肪乳剤の提供が可能となった。
式(1)で示される本発明のリン脂質誘導体の原料は、天然由来のリン脂質である。また、安定性等の点から、不飽和脂肪酸を実質的に有しない水素添加品とする。このような水素添加天然リン脂質原料としては、哺乳類に由来しないリン脂質が好ましく、植物または卵黄由来のリン脂質が更に好ましい。植物由来の水素添加リン脂質としては、水素添加大豆リン脂質が特に好ましい。
このリン脂質原料のリン脂質純度の低いものは、加水分解の際に副生成物が多く生成するので、純度85重量%以上のものが好ましく、特に90重量%以上のものが好ましい。
また、リン脂質原料中のホスファチジルコリン含有量が85重量%以上のものが好ましく、特に90重量%以上のものが好ましい。原料のリン脂質中のホスファチジルコリン含有量を85重量%以上とすることによって、得られるリン脂質誘導体中のホスファチジルコリン含有量も高くなり、分散性、溶解度といった界面化学的な物性が向上し、皮膚外用剤・化粧品で必須の分散性が良好となり、分離・凝集を防止でき、使用感も向上する。
本発明のリン脂質誘導体に結合する1位の脂肪酸RCOOHは、炭素数14〜18の脂肪酸であり、この脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が0.1mol%以下である(これは特に好ましくは実質的に含有されていない)。即ち、1位の脂肪酸はほぼ飽和脂肪酸からなる。この脂肪酸は、1種または2種以上の混合物でも良く、好ましくは2種以上の混合物である。本発明の1位のアシル基RCOは、原料である天然水素添加リン脂質の1位アシル基組成のままであり、炭素数14〜18である。これは例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの1種または2種以上の混合物である。
本発明のリン脂質誘導体の組成中には、一位に炭素数14未満の脂肪酸や炭素数18を超える脂肪酸が置換されたリン脂質誘導体が不純物として存在していても良いが、これらの不純物量は少ないことが好ましく、具体的には本発明のリン脂質誘導体100mol%に対して1.0mol%以下が好ましく、0.1mol%以下が更に好ましい。炭素数が14未満の飽和脂肪酸の場合には、臭気や安定性の問題から好ましくなく、炭素数18より多い炭素数の飽和脂肪酸は、相転移温度が高くなるため好ましくない。
本発明の2位置換リン脂質誘導体を合成するには、天然水素添加リン脂質(特に好ましくは水素添加大豆リン脂質)を原料に用い、2位を塩化カルシウム共存下、ホスホリパーゼAで加水分解し、リゾリン脂質を得る。次に、このリゾリン脂質の2位を、炭素数18〜22の脂肪酸(2個以上の不飽和基を持つ不飽和脂肪酸が0.1mol%以下であり、モノ不飽和脂肪酸が90mol%以上である)でアシル化して得られる。アシル化の方法としては、特に限定されず、通常のアシル化法を用いればよい。
本発明のリン脂質誘導体の2位に導入する際用いる脂肪酸としては、2個以上の不飽和基を持つ炭素数14〜22の不飽和脂肪酸が0.1mol%以下であり、炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸が90mol%以上である炭素数14〜22の脂肪酸を使用する。
炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸などから選ばれるモノ不飽和脂肪酸が好ましい。特に好ましくはオレイン酸が良い。炭素数18より小さいモノ不飽和脂肪酸が多くなると、特異な臭気が強くなり、化粧料として使用しにくくなるため好ましくない。炭素数22より大きいモノ不飽和脂肪酸が多くなると、安定性、分散性等が悪く、また高純度原料を入手しにくいため好ましくない。これらモノ不飽和脂肪酸は天然植物由来であることが好ましい。二位を置換するべき炭素数14〜22の脂肪酸のうち、2個以上の不飽和成分が0.1mol%以下かつ炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸が90mol%以上(好ましくは95mol%以上)の脂肪酸組成物を原料に用いることが好ましい。
2位に導入する脂肪酸には、炭素数14以上、18未満のモノ不飽和脂肪酸が含まれていても良いが、その比率は、炭素数14〜22の脂肪酸全体の9.9mol%以下でなければならず、4.9mol%以下であることが好ましく、1.0mol%以下であることが更に好ましい。特に好ましくは、炭素数14以上、18未満のモノ不飽和脂肪酸が実質的に含有されていない。
2位に導入する脂肪酸には、炭素数14〜22の飽和脂肪酸が含まれていても良いが、その比率は、炭素数14〜22の脂肪酸全体の9.9mol%以下でなければならず、4.9mol%以下であることが好ましく、1.0mol%以下であることが更に好ましい。特に好ましくは、炭素数14〜22の飽和脂肪酸が実質的に含有されていない。
また、2位に導入する脂肪酸には、炭素数14以上、18未満のモノ不飽和脂肪酸と炭素数14〜22の飽和脂肪酸との両方が含まれていても良いが、その合計比率は、炭素数14〜22の脂肪酸全体の9.9mol%以下でなければならず、4.9mol%以下であることが好ましく、1.0mol%以下であることが更に好ましい。
また、本発明のリン脂質誘導体の組成中には、2位に炭素数14未満の脂肪酸や炭素数22を超える脂肪酸が置換されたリン脂質誘導体が不純物として存在していても良いが、これらの不純物量は少ないことが好ましく、具体的には本発明のリン脂質誘導体100mol%に対して0.5mol%以下が好ましく、0.1mol%以下が更に好ましい。
2位に導入する際用いる不飽和脂肪酸としては、従来工業スケールで生産されている市販のモノ不飽和脂肪酸(二重結合が1つの脂肪酸)を用いた場合では、純度が50〜90mol%程度と低く、さらに各種の微量不純物をも有しているため、色、臭い、安定性などの品質が不十分である。特に、2個以上の不飽和基を持つ脂肪酸が多いため、安定性等が良くない問題がある。
そのため、高純度なモノ不飽和脂肪酸を用いなければならない。その原料としては、モノ不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸混合物であればよいが、好ましくは天然植物由来のオリーブ油、ゴマ油、米ヌカ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、落花生油、サフラワー油、ひまわり油、マカダミアナッツ油などの油脂を加水分解して得られる脂肪酸やこれらの混合物が使用でき、市販の天然植物由来のモノ不飽和脂肪酸も原料とすることが出来る。当然のことながら、モノ不飽和脂肪酸の含量が高い原料ほど効率良く、高純度モノ不飽和脂肪酸を得ることができる。こうした原料より、公知の分子蒸留法、尿素付加法、液体クロマトグラフィー法、超臨界抽出法、溶剤分別法などの方法により精製された、2個以上の不飽和結合を有するポリエン不飽和脂肪酸成分が0.1mol%以下かつ純度90mol%以上(特に好ましくは、95mol%以上)のモノ不飽和脂肪酸を用いなければならない。
ここで、2個以上の不飽和基を持つポリエン不飽和脂肪酸残基の比率が0.1mol%より多い場合は、リン脂質誘導体の酸化安定性、保存安定性が悪くなる。モノ不飽和脂肪酸純度が90mol%未満の場合は、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が悪化する。2個以上の不飽和基を持つポリエン不飽和脂肪酸残基は実質的に含有されていないことが特に好ましい。
こうした高純度なモノ不飽和脂肪酸を用いて得られる本発明のリン脂質誘導体に結合した2位の不飽和脂肪酸残基としては、2個以上の不飽和基を持つ不飽和脂肪酸残基が0.1mol%以下であり、かつモノ不飽和脂肪酸が90mol%以上である炭素数18〜22の脂肪酸残基とする。2個以上の不飽和基を持つ不飽和脂肪酸残基が0.1mol%より多い場合は、リン脂質誘導体の酸化安定性、保存安定性が悪くなる。炭素数18〜22の不飽和脂肪酸残基としては、例えば、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸などから選ばれるモノ不飽和脂肪酸残基が好ましい。特に好ましくはオレイン酸が良い。これらモノ不飽和脂肪酸残基は天然植物由来であることが好ましい。また、脂肪酸純度として、2個以上の不飽和成分が0.1mol%以下かつ純度90mol%以上のモノ不飽和脂肪酸残基であることが好ましく、この純度は、特に好ましくは、95mol%以上である。
本発明に用いるリン脂質誘導体はホスファチジルコリン含有量が85重量%以上であることが好ましく、より好ましくは90重量%以上である。リン脂質中のホスファチジルコリン含有量が低いと、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が悪く、特に、皮膚外用剤・化粧品では分散性が悪くなり、分離・凝集し、使用感等の重要な要因に影響を与えるという欠点がある。
一般的にリン脂質のアシル基の脂肪酸鎖長、不飽和度は、そのリン脂質の相転移温度に大きく影響を与える。相転移温度はアシル基鎖長が長くなるにつれて高くなり、飽和に比べ不飽和の方が極端に低下する。この相転移温度とは、ゲル状態から液晶状態へ変化する際の温度であり、相転移温度以下ではアシル鎖の運動が抑制され流動性がないゲル状であり、相転移温度以上では流動性の増した液晶状態となる。この相転移温度の前後で、リン脂質の分散性、溶解度等の界面化学的な物性が変化し、その機能効果に大きく影響を与える。そこで、リン脂質の構造と相転移温度、物性と機能効果の関係を詳細に検討した結果、本発明の1位に飽和脂肪酸、2位にモノ不飽和脂肪酸を結合させたリン脂質誘導体が分散性、溶解度等の界面化学的な物性が優れ、かつ皮膚外用剤での機能効果や使用感が良好であるためには、相転移温度が37℃以下であることが好ましいことを見出した。特に好ましくは、25℃以下である。相転移温度が37℃より高い場合は、分散性、溶解度等の界面化学的な物性が悪く、特に、皮膚外用剤・化粧品では分散性が悪くなり、分離・凝集し、また使用感として硬い感じになり、のび・なめらかさといった重要な要因に影響を与える。
また、リン脂質誘導体を配合して使用する際には、一般的に相転移温度以上の高温条件下で攪拌・混合しなければ均一に分散しないので、相転移温度の高いリン脂質では熱劣化しやすく、特に、不飽和結合を有するリン脂質やその他熱に不安定な配合成分が劣化しやすい。そのため、相転移温度が低いことが好ましい。
本発明に用いるリン脂質誘導体は、天然水素添加リン脂質、特に好ましくは水素添加大豆リン脂質を原料に用い、リゾ化反応を行う際には、アシル基の転移反応を起こさず、高い反応率を得るために塩化カルシウムを添加している。そこで、0.1mMから2Mの濃度となるような塩化カルシウム共存下、ホスホリパーゼAで加水分解する。得られたリゾリン脂質には、そのため不純物としてCa2+が残存する。こうしたCa2+のような2価の金属イオンがリン脂質中に残存した場合、溶解性や分散性が悪くなる。そこで、水・有機溶剤による洗浄・晶析とイオン交換等のカラムクロマトグラフィーを組合わせた精製を行うことにより、Ca2+残存量が100ppm以下となった精製リゾリン脂質を得る。
次に、このリゾリン脂質の2位をアシル化し、水・有機溶剤による洗浄・晶析とイオン交換等のカラムクロマトグラフィーを組合わせた精製を行うことにより、不純物を除去し、Ca2+残存量が100ppm以下となるように精製して、本発明に用いるリン脂質誘導体が得られる。アシル化の方法としては特に限定されず、通常のアシル化法を用いればよい。しかし、リゾリン脂質中のCa2+残存量が100ppmより多い場合は、アシル化反応が阻害され、目的物の純度が悪くなってしまうため、Ca2+残存量を100ppm以下とすることが望ましい。またさらに、リン脂質中のCa2+含有量を100ppm以下とすることにより、本発明のリン脂質誘導体の溶解性が良好となり、特に、水への溶解性に優れたものが得られる。特に好ましくは、Ca2+含有量を10ppm以下とするのが良い。Ca2+含有量が100ppmより多い場合は、水に溶解しにくく、溶け残りを生じやすく、特に、長期間保存した場合は沈殿物を生じやすい。
本発明のリン脂質誘導体は、2位に結合した脂肪酸に占める、2個以上の不飽和基を持つ脂肪酸の割合が0.1mol%以下であるため、酸化安定性、保存安定性が極めて高く、40℃、1ヶ月後の過酸化物価は5以下である。このため、分散性、溶解度等の界面化学的な物性はほとんど変わらず、かつ皮膚外用剤での機能効果や使用感が良好なまま維持される。40℃、1ヶ月後の過酸化物価が5より大きく上昇する場合は、分散性、溶解度等の界面化学的な物性や皮膚外用剤での機能効果や使用感が好ましくなくなり、場合によっては着色、変臭等の問題を引き起こす。
本発明のリン脂質誘導体は皮膚外用剤等への配合や安定性の観点から、色相は本発明のリン脂質誘導体をクロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の溶剤で20重量%の溶液とした際にAPHAが10以下であることが好ましい。APHAが10より多い場合は、酸化安定性、保存安定性が悪くなり、これを配合する皮膚外用剤での機能効果や使用感が好ましくなくなり、場合によっては着色、変臭等の問題を引き起こす。
本発明のリン脂質誘導体は、安定性や分散性の観点から酸価が10以下であることが好ましい。特に好ましくは、5以下である。酸価が10より高い場合は、安定性や分散性が悪く、経時的に加水分解反応が進行し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質が多くなり、さらに、安定性や分散性が悪なり、皮膚外用剤での機能効果や使用感の点からも好ましくない。また、配合物とした際に、加水分解によりpH等も下がり、その他の配合物の安定性にも影響を与えるため好ましくない。
本発明の皮膚外用剤とは、薬事法の言う化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれに属していてもよく、また属していなくともよい。本発明の皮膚外用剤は、人体の外用に使用される化粧、ヘアケアを目的し、乳液、ローション、クリーム、美容液、パック、洗顔料、などの基礎化粧品や、ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナイー、アイシャドー、まゆずみなどの仕上げ化粧品、整髪料、養毛料、シャンプー、リンスなどの頭髪化粧品などをいう。
本発明のリン脂質誘導体は、化粧料中、乳化剤、分散剤、マイクロエマルジョン剤、可溶化剤、保湿剤、感触向上剤、リポソーム形成材料、顔料の表面処理剤等に幅広く配合することができるが、その配合量は、皮膚外用剤のそれぞれの要求特性等によって異なるが、通常0.01重量%以上が好ましい。
また、本発明の皮膚外用剤には、前記必須成分以外に、精製水、従来から使用されている油脂、油脂誘導体、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、色素、無機顔料、香料、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤などを適宜配合して、常法により製造することができる。
また、特に、本発明のリン脂質をリポソームとして調製する場合は、一般的なリポソームの製法が適用できる。例えば、ボルテクスィング法、ソニケーション法、プレベシクル法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、アニーリング法、逆相蒸発法、W/O/Wエマルジョン法などの方法が挙げられるが、これらのいずれの調製法を用いてもよく、またこれらに限定されるものではない。
本発明のリン脂質誘導体を配合してなる脂肪乳剤とは、主として油成分、乳化剤、有効成分、水、その他添加剤からなり、本発明のリン脂質誘導体は乳化剤の成分として利用できる。これらは慣用の高圧乳化法等の方法により混合され、脂肪乳剤として調製することができる。
参考例、試験例及び実施例を挙げて本発明を更に説明する。各例中、「%」は特別な言及がない限り、「重量%」単位である。
(参考例1)
1. 試料
本発明において、リン脂質の組成分析、純度測定は薄層クロマトグラフィー(以下、TLCという)で行った。TLCは、「Kieselgel 60」(Merck & Co.Inc.)を用い、5%の試料2マイクロリットルをスポットし、クロロホルム:メタノール:蒸留水=65:25:4(容量比)で展開し、硫酸銅(無水)10gとリン酸(85%)8ミリリットルを蒸留水で100ミリリットルとした溶液を噴霧後加熱する方法により行った。また、本発明の合成例において用いた原料の天然植物由来モノ不飽和脂肪酸の脂肪酸純度は、脂肪酸試料10mgに、三フッ化ホウ素/メタノール試薬5mLを加え、水浴上で15分間加温した。冷却後、n−ヘキサン5mLと飽和食塩水15mLを加えて振とうし、静置後、n−ヘキサン相のガスクロマトグラフィー分析を下記の条件で行って、純度を測定した。
カラム温度: 210℃
注入温度: 225℃
スプリット比: 1/100
キャリアーガスとその流量: 窒素ガス、30mL/分
検出器: FID
試料量: 2.0μL
(本発明品1の調製)
水素添加大豆リン脂質ホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度:90%品、C16:0=17.7mol%, C18:0=81.9mol%)120gをクロロホルム1800ミリリットルに溶解し、塩酸100ミリモルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH=8.0)880ミリリットル、100ミリモル塩化カルシウム水溶液1320ミリリットル、およびホスホリパーゼA24000単位を加え、40℃で24時間反応し、2位のアシル基を加水分解した。反応後、反応液を分液ロートに移し、6時間静置し、2層に分離した後、下層を別の分液ロートに移して水洗するため、蒸留水1320ミリリットルを加え、振とうし、6時間静置した。2層に分離した後、下層をフラスコに分取し、エバポレーターで溶媒留去し、ヘキサン5000ミリリットルを加えて4℃に冷却し、同温度で1時間保ったのち、濾過して析出物64.3gを得た。これにクロロホルム1200ミリリットル、メタノール600ミリリットルを加えて、溶解し、イオン交換樹脂(アンバーライトIRC-50、ロームアンドハース社製)を充填したカラム(カラム容量:500ミリリットル)を通液させ、処理液をエバポレータで500ミリリットルまで濃縮した。これにアセトン5リットルを加えて10℃に冷却し、同温度で1時間保ったのち、濾過して析出物60.3gを得た。
得られた析出物の組成は、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%)98.5%、遊離脂肪酸1.5%、Ca2+残存量13.9ppmであった。次に、脂肪酸の酸無水物化の方法は、ヒマワリ油由来の高純度オレイン酸(日本油脂株式会社製「EXTRA OLEIC-99」、オレイン酸純度:99.5mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.02mol%)100.0gをクロロホルム200ミリリットルに溶解し、10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド40gをクロロホルム20ミリリットルに溶解したものをゆっくり滴下した。1時間反応した後、析出した白色のジシクロヘキシルウレアを濾過により除去し、オレイン酸無水物溶液を得た。次に、得られたろ液のオレイン酸無水物と、先の1−アシル−2−リゾホスファチジルコリンの析出物60.3g、ジメチルアミノピリジン3.0gを加え、2位のアシル化反応を40℃、24時間行った。得られた反応液をエバポレーターで溶媒留去し、酢酸エチル1リットル、蒸留水1リットルを加え、40℃で攪拌を行った後、6時間静置を行った。2層に分離した後、下層を分取し、酢酸エチル1リットルを加え、再び40℃で攪拌を行った後、6時間静置を行い、2層に分離した後、下層を分取した。次に、この下層にクロロホルム1リットルを加え、40℃で攪拌を行った後、6時間静置を行い、2層に分離した後、下層を分取した。得られた下層に、クロロホルム1リットルを加えて希釈し、イオン交換樹脂(「アンバーライトIRC-50」、ロームアンドハース社製)を充填したカラム(カラム容量:500ミリリットル)を通液させ、処理液をエバポレータで500ミリリットルまで濃縮した。これにアセトン5リットルを加えて10℃に冷却し、同温度で1時間保ったのち、濾過して析出物50.1gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=99.2mol%、略称HSOPC)99.4%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.5%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量6.7ppmであった。
(本発明品2の調製)
ナタネ油由来の高純度ガドレイン酸(ガドレイン酸純度:99.3mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.02mol%)100.0gをクロロホルム200ミリリットルに溶解し、10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド40gをクロロホルム20ミリリットルに溶解したものをゆっくり滴下した。1時間反応した後、析出した白色のジシクロヘキシルウレアを濾過により除去し、ガドレイン酸無水物溶液を得た。得られたろ液のガドレイン酸無水物と本発明品1で得られた1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%)98.5%品60.0gとジメチルアミノピリジン3.0gを加え、2位のアシル化反応を40℃、24時間行った。得られた反応液は本発明品1と同様に処理し、析出物50.4gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−ガドレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C20:1=97.6mol%、略称HSGPC)99.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.9ppmであった。
(本発明品3の調製)
ナタネ油由来の高純度エルカ酸(エルカ酸純度:99.5mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.02mol%)100.0gをクロロホルム200ミリリットルに溶解し、10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド40gをクロロホルム20ミリリットルに溶解したものをゆっくり滴下した。1時間反応した後、析出した白色のジシクロヘキシルウレアを濾過により除去し、エルカ酸無水物溶液を得た。得られたろ液のエルカ酸無水物と本発明品1で得られた1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%)98.5%品60.0gとジメチルアミノピリジン3.0gを加え、2位のアシル化反応を40℃、24時間行った。得られた反応液は本発明品1と同様に処理し、析出物49.9gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=96.4mol%、略称HSEPC)99.5%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.4%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量5.8ppmであった。
(比較品1)
水素添加大豆リン脂質(ホスファチジルコリン純度:90%品):略称HSPC
(比較品2)
水素添加卵黄リン脂質(ホスファチジルコリン純度:90%品):略称HEPC
(比較品3)
大豆リン脂質(未水素添加品、ホスファチジルコリン純度:90%品): 略称:SPC
(比較品4)
卵黄リン脂質(未水素添加品、ホスファチジルコリン純度:90%品): 略称:EPC
(比較品5)
ヒマワリ油由来のオレイン酸(オレイン酸純度:81.3mol%、ポリ不飽和脂肪酸:3.6mol%)を用いた以外は、本発明品1と同様に行って、析出物47.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.4mol%、略称HSOPC)99.0%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.9%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.2ppmであった。
(比較品6)
ヒマワリ油由来のオレイン酸(オレイン酸純度:60.5mol%、ポリ不飽和脂肪酸:11.2mol%)を用いた以外は、本発明品1と同様に行って、析出物41.2gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=57.8mol%、略称HSOPC)98.8%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.1%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量9.8ppmであった。
(比較品7)
ナタネ油由来のガドレイン酸(ガドレイン酸純度:81.2mol%、ポリ不飽和脂肪酸:1.8mol%)を用いた以外は、本発明品2と同様に行って、析出物47.5gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−ガドレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C20:1=80.2mol%、略称HSGPC)98.8%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.1%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量8.8ppmであった。
(比較品8)
ナタネ油由来のエルカ酸(エルカ酸純度:81.4mol%、ポリ不飽和脂肪酸:0.8mol%)を用いた以外は、本発明品3と同様に行って、析出物48.0gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=80.4mol%、略称HSEPC)99.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン0.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量7.4ppmであった。
(比較品9)
水素添加大豆リン脂質ホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度:80%品)を用いた以外は、比較品5と同様に行って、析出物46.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.2mol%、略称HSOPC)79.4%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン1.9%、遊離脂肪酸0.7%、その他リン脂質成分14.8%、その他(脂肪酸エステル類等)3.2%、Ca2+残存量19.5ppmであった。
(比較品10)
イオン交換樹脂での処理を行わない以外は、比較品5と同様に行って、粗精製の析出物43.7gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−オレオイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C18:1=80.0mol%、略称HSOPC)97.4%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン2.5%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量2100ppmであった。
(比較品11)
イオン交換樹脂での処理を行わない以外は、比較品8と同様に行って、粗精製の析出物44.1gを得た。得られた析出物の組成は、1−アシル−2−エルコイル−3−ホスファチジルコリン(1位アシル C16:0=24.6mol%, C18:0=75.4mol%、2位アシル C22:1=80.1mol%、略称HSEPC)97.2%、1−アシル−2−リゾホスファチジルコリン2.7%、遊離脂肪酸0.1%、Ca2+残存量2300ppmであった。
(試料の脂肪酸組成の測定)
参考例1の試料を常法に従い、NaOH/メタノールで加水分解した後、三フッ化ホウ素/メタノールでメチルエステルとし、ガスクロマトグラフィーにて各脂肪酸を定量し、1位と2位のアシル基が混合した全体の脂肪酸組成を測定した。また、本発明品1と同様の方法により参考例1の各試料の1−アシル−2−リゾリン脂質を合成し、同様に1位のアシル基を加水分解してガスクロマトグラフィーにて1位脂肪酸組成を測定した。2位アシル基の脂肪酸組成は、全体の脂肪酸組成と1位脂肪酸組成の差分から算出した。表1に結果を示す。
Figure 2006265104
(相転移温度)
参考例1の試料の相転移温度は、示差走査熱量計DSC(Seiko製)で測定した(昇温速度:5℃/分)。表2に結果を示す。
(Ca2+含量)
参考例1の試料のCa2+含量は、試料を酸で灰化した後、原子吸光測定装置(日立製作所製)で測定した。その際、0〜3000ppmの検量線を作成し、定量を行った。表2に結果を示す。
(過酸化物価の経時変化)
参考例1の試料を用いた過酸化物価の経時変化は、試料を固体状態で、経時試験開始時と、空気下、40℃、1ヶ月保存した後の過酸化物価(POV、日本油化学協会制定の基準油脂分析法2.4.12−86に準ず)を測定して行った。表2に結果を示す。
(酸価)
参考例1の試料の酸価は、日本油化学協会制定の基準油脂分析法4.2.1−1996に準じて測定した。表2に結果を示す。
(水分散性)
参考例1の試料を用い、2重量%の水分散液をスターラーで調製し、その水分散性を評価した。評価は、調製時(室温)、室温・1ヶ月後と4℃・1ヶ月後で目視にて行った。表2に結果を示す。
(評価の基準)
○:均一
△:やや不均一
×:沈殿を生じ、完全に分離
Figure 2006265104
(乳液の調製)
参考例1の試料を使用して乳液を作製した。すなわち、表3の組成からなる基材のうち乳化剤を含む油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、攪拌しながら水相部を同温度で添加した。
Figure 2006265104
(クリームの調製)
参考例1の試料を使用してクリームを作製した。すなわち、表4の組成からなる基材のうち乳化剤を含む油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、攪拌しながら水相部を同温度で添加した。
Figure 2006265104
(リポソーム液の調製)
参考例1の試料を使用してリポソーム液を作製した。すなわち、参考例1のリン脂質2.00g、コレステロール0.45g(1.32mmol)をナス型フラスコに入れ、クロロホルム50mLを加えて溶解し、ロータリーエバポレーターにて脱溶剤し、フラスコ内壁に脂質の薄膜を形成した。減圧下にて溶剤除去を十分に行い、pH7のリン酸緩衝生理食塩水液30mLを加えて分散し、さらに超音波洗浄器にて5分間処理を行いリポソーム溶液とした。
(安定性試験)
前記した乳液、クリーム、リポソーム液の各試料の安定性試験として、各試料を透明瓶に入れ、密閉し、40℃、1ヶ月間保存した後、外観、臭いについて評価した。結果を表5に示す。
(臭いの評価基準)
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
(官能試験)
前記した乳液、クリーム、リポソーム液の各試料を皮膚に塗布し、官能試験を行った。官能試験は10人の専門パネラーで行った。評価方法は、上腕部を洗浄した後に試料を塗布し、塗布時のなめらかさ、べたつきのなさ、塗布後のしっとり感についての評価を下記基準により5段階評価し、さらにその平均点をもとめ判定した。結果を表5に示す。
(評価基準)
5点:非常に良好。
4点:良好。
3点:普通。
2点:やや不良。
1点:不良。
(判定)
◎:平均点:4.5点以上
○:平均点:3.5点以上、4.5点未満
△:平均点:2.5点以上、3.5点未満
×:2.5点未満
Figure 2006265104
表5の安定性試験および官能試験結果から明らかな如く、本発明品1〜3を用いた配合皮膚外用剤は、安定性に優れ、かつ使用感の良好な優れたものであった。これに対して比較品1〜11を用いた配合皮膚外用剤は、安定性と使用感を同時に満足すべきものではなかった。
(クリームのパネル試験)
前記したクリームの各試料を、それぞれ30〜50歳のパネラー10名にブラインドにて1ヶ月間使用し、しわ防止、皮膚のはり、皮膚のきめについて評価を行った。しわ防止に関しての評価基準は、「有効」、「やや有効」、「無効」の三段階で、肌のはり、肌のきめに関しての評価基準は、「良好」、「やや良好」、「変化なし」の三段階で行った。結果を表6に示す。ここで表中の数字は、各評価に該当する人数を示している。
Figure 2006265104
以上の結果から判るように、本発明品は、しわ防止、皮膚のはり、皮膚のきめの各項目について、比較品に比べて著しく優れた特性を示し、皮膚外用剤、特に化粧品として有用であることが判った。

Claims (11)

  1. 天然水素添加リン脂質の2位置換誘導体であって、相転移温度が37℃以下である、式(1)で示される皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
    Figure 2006265104
    (RCOは炭素数14〜18の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が0.1モル%以下である。
    COは、炭素数14〜22の脂肪酸の残基であり、この脂肪酸に占める炭素数18〜22のモノ不飽和脂肪酸の割合が90モル%以上であり、2個以上の不飽和基を持つ炭素数14〜22の不飽和脂肪酸の割合が0.1モル%以下である。)
  2. 前記モノ不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項1記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  3. ホスファチジルコリン含有量が85重量%以上である、請求項1または2記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  4. 前記天然水素添加リン脂質が水素添加大豆リン脂質である、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  5. Ca2+含有量が100ppm以下である、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  6. 40℃で1ヶ月経過後の過酸化物価が5以下である、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  7. クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の溶剤で20重量%の溶液とした際の色相がAPHA:10以下である、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  8. 酸価が10以下である、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を配合してなる皮膚外用剤。
  10. 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を含むリポソーム。
  11. 請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の皮膚外用剤用リン脂質誘導体を配合してなる脂肪乳剤。
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