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JP2006262680A - スイッチング電源回路 - Google Patents

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JP2006262680A JP2005080469A JP2005080469A JP2006262680A JP 2006262680 A JP2006262680 A JP 2006262680A JP 2005080469 A JP2005080469 A JP 2005080469A JP 2005080469 A JP2005080469 A JP 2005080469A JP 2006262680 A JP2006262680 A JP 2006262680A
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Abstract

【課題】電圧共振形コンバータのワイドレンジ対応を実現化し、高効率を得る。
【解決手段】電圧共振形コンバータに二次側並列共振回路と二次側直列共振回路と組み合わせ、絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数kt=0.6程度以下の疎結合の状態とする。これにより、定電圧制御特性を急峻な単峰特性として、安定化に必要なスイッチング周波数の制御範囲を縮小する。また、二次側直列共振回路が組み合わされたことで電力変換効率について良好な特性が得られる。また、一次側並列共振周波数fo1と二次側並列共振周波数fo2、二次側直列共振周波数fo3の設定によって、さらなる効率向上が図られる。また、総合結合係数ktが低下されたことでスイッチング電圧のピークレベルの抑制が図られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子をハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきていることなどを背景に、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
図12は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化して、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のソース−ドレイン間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、次の図13に示されるように、フェライト材によるE型コアCR11、E型コアCR12を組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンB10が備えられる。このボビンB10の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンB10を上記EE型コア(CR11,CR12)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして絶縁コンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE型コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。
図12において、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
この場合には、二次巻線N2に対して二次側並列共振コンデンサC2を並列に接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側並列共振回路(電圧共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側並列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1、及び平滑コンデンサCoを接続することで、半波整流回路を形成している。この半波整流回路は、二次巻線N2(二次側並列共振回路)に得られる交番電圧V2の等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ制御回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。つまり、制御すべきスイッチング動作を得るためのドライブ信号を生成して出力する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
図14及び図15は、上記図12に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、AC100V系に対応するVAC=100Vの条件として、図12の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=43T、N2=43Tとした。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCr=6800pF、二次側並列共振コンデンサC2=0.01μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=175kHz、二次側並列共振回路の共振周波数fo2=164kHzが設定される。
また、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
先ず、図14は、図12に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図14(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時におけるスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電圧V2、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1が示されている。図14(b)には、最小負荷電力Pomin=0W時におけるスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電圧V2、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1が示されている。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFにおいては0レベルで、期間TONにおいては、ターンオン時においてボディダイオードDDに対して順方向に流れることで負極性となり、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間を流れてターンオフに至るまで増加していく波形として得られる。このために、スイッチング電流IQ1としては、ターンオフタイミングにピークレベルが得られることになる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成して得られるもので、図示する波形となる。
また、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1に流れる整流電流ID1は、最大負荷電力Pomax=200W時では、整流ダイオードDo1のターンオン時にピークレベルが得られた後に図示する波形により0レベルに低減していき、整流ダイオードDo1のオフ期間において0レベルとなる波形により流れるものとなる。なお、最小負荷電力Pomin=0W時においては、オン期間であっても0レベルとなる。
二次巻線電圧V2は、この場合には、二次巻線N2//二次側並列共振コンデンサC2の並列回路に得られる電圧となるもので、二次側整流ダイオードDo1が導通しているオン期間に対応しては、二次側直流出力電圧Eoのレベルによりクランプされ、二次側整流ダイオードDo1のオフ期間では、負極性方向の正弦波形が得られる。また、二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1と、二次側並列共振回路(N2(L2)//C2)に流れる電流が合成したものとなり、例えば図示する波形により流れる。
図15は、図12に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=75W〜200Wまでの範囲で90%以上となっている。電圧共振形コンバータとして、特にスイッチング素子Q1が1石であるシングルエンド方式は、電力変換効率について良好な結果が得られることが知られている。
また、図15に示されるスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図12の電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、軽負荷の傾向となるのに従って、スイッチング周波数が高くなるようにして制御されている。また、オン期間TON、オフ期間TOFFに関しては、負荷変動に対してオフ期間TOFFはほぼ一定であるのに対して、オン期間TONが、軽負荷の傾向となるのに従って短縮される特性となっている。つまり、図12に示す電源回路は、オフ期間TOFFは一定としたうえで、例えば軽負荷の傾向となるのに応じて、オン期間TONを短縮するようにしてスイッチング周波数を可変制御していることになる。
このようにして、スイッチング周波数が可変制御されることで、一次側並列共振回路及び二次側並列共振回路を備えることにより得られる誘導性インピーダンスが可変されることになる。この誘導性インピーダンスの可変によっては、一次側から二次側への伝送電力量、及び二次側並列共振回路から負荷への電力伝送量が変化することとなって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが可変される。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られることになる。
図16は、図12に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
ここで、一次側並列共振回路の共振周波数をfo1、二次側並列共振回路の共振周波数のfo2とすると、図12の回路では、先に説明したように一次側並列共振周波数fo1に対して二次側並列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側並列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。
さらに、図12の回路のようにして一次側並列共振周波数と二次側並列共振回路とを備える場合、共振周波数fo1,fo2との間には中間共振周波数foが存在することになる。中間共振周波数foとスイッチング周波数fsとの関係による共振インピーダンス特性は、最大負荷電力Pomax時は特性曲線Eで示され、最小負荷電力Pomin時は、特性曲線Fとして示される。
二次側並列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、この中間共振周波数foのスイッチング周波数fsに対する共振インピーダンス特性によって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが決定される。また、図12に示す電圧共振形コンバータとしては、この中心共振周波数foよりも低い周波数領域でスイッチング周波数fsを可変制御する、いわゆるローアーサイド制御の方式を採る。
そして、この図16において中間共振周波数foに対応する特性曲線E,Fとして示される特性の下で、ローアーサイド制御に対応したスイッチング周波数制御により、二次側直流出力電圧Eoの定格レベル(図12の回路の場合135V)を目標値として定電圧化を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間であることになる。換言すれば、このΔfsで示される区間に対応する周波数範囲で、負荷変動に応じてスイッチング周波数を所要値となるようにして可変することで、二次側直流出力電圧Eoは定格レベルtgとなるようにして制御される。
特開2000−152617号公報
ところで、各種電子機器の多様化を背景に、電源回路としては、AC100V系とAC200V系との何れの商用交流電源入力にも対応して動作する、いわゆるワイドレンジ対応とすることも求められている。
図12に示す構成の電源回路は、先に説明したように、スイッチング周波数制御により二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るように動作し、そのために必要とされるスイッチング周波数の可変範囲(必要制御範囲)は、図16にて説明したΔfsによって示される。
図12に示す電源回路は、200W〜0Wまでの比較的広範囲な負荷変動に対応するものとされている。そして、図12の電源回路について、この負荷条件に対応した実際の必要制御範囲は、fs=117.6kHz〜208.3kHzで、Δfs=96.7kHzとなり、比較的に広範囲なものとなっている。
ここで、二次側直流出力電圧Eoのレベルは、当然のことながら交流入力電圧VACのレベルが変化することによっても変動する。すなわち、二次側直流出力電圧Eoのレベルは、交流入力電圧VACのレベル増減に応じて、同様に増減する。
このことから、AC100系からAC200V系までのワイドレンジでの交流入力電圧の変動に対応しては、例えばAC100系のみ、あるいはAC200V系のみの単レンジでの変動に対応する場合より、二次側直流出力電圧Eo1のレベル変動も大きくなるということがいえる。そして、このようにして拡大した二次側直流出力電圧Eo1のレベル変動に対応して定電圧制御動作を行うためには、上記した117.6kHz〜208.3kHzの範囲を、これより高い周波数の方向に拡大した、より広範囲な必要制御範囲が必要となる。
しかしながら、現状におけるスイッチング素子を駆動するためのIC(発振・ドライブ回路2)としては、対応可能な駆動周波数の上限は200kHz程度が限界である。また、仮に上記のような高い周波数での駆動が可能となるICが開発された場合にも、スイッチング素子が高周波駆動されることによっては電力変換効率が著しく低下し、電源回路として実用することは実質的に不可能となる。
このことから、例えば図12に示す電源回路の構成によりワイドレンジ対応とすることは実現が非常に困難であることがわかる。
このような事情から、共振形コンバータを備えたスイッチング電源回路としては、ワイドレンジ対応の動作を実現するとした場合には、例えばAC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、一次側スイッチングコンバータの構成をハーフブリッジ/フルブリッジで切り換える構成を採ることが行われている。あるいは、商用交流電源ACについての整流動作を行う整流回路の動作を、AC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、全波整流/倍電圧整流で切り換える構成とすることも行われている。
しかしながら、AC100V系とAC200V系とで回路構成の切り換えを行う場合には、以下のような問題点が生じる。
例えば、このような商用交流電源レベルに応じた切り換えには、入力電圧についての閾値(例えば150V)を設定し、これを上回った場合はAC200V系、下回った場合はAC100V系に対応した回路切換を行うようにされるが、単純にこのような切り換えのみを行っていたのでは、例えばAC200V系の入力時の瞬間停電等による一時的な交流入力電圧の低下に対しても、AC100系に対応した切り換えが行われてしまうおそれがある。つまり、例えば整流動作の切り換え構成を例に挙げれば、AC200V系の入力であるにも関わらず、AC100V系であるとして倍電圧整流回路に切り換えられてしまい、これによってスイッチング素子などが耐圧オーバーとなって破壊される可能性がある。
そこで、実際には、上記のような誤動作が生じないようにするために、メインとなるスイッチングコンバータの直流入力電圧だけではなく、スタンバイ電源側のコンバータ回路の直流入力電圧も検出する構成を採るようにされる。
しかしながら、このようにしてスタンバイ電源側のコンバータ回路を検出するということは、基準電圧と入力電圧との比較を行うための例えばコンパレータIC等を実装することになるが、これにより部品点数が増加して、回路製造コストの増加、及び回路基板サイズの大型化が助長されてしまうことになる。
また、このように誤動作防止を目的としてスタンバイ電源側のコンバータの直流入力電圧を検出するということは、メイン電源の他にスタンバイ電源を備える電子機器でなければ、実際に使用することができないということになる。つまり、電源を実装可能な電子機器の種類が、スタンバイ電源を備えたものに限定されるわけであり、それだけ利用範囲が狭くなっているという問題も生じる。
また、ハーフブリッジ/フルブリッジの切り換えを行う構成では、フルブリッジ構成を可能とするためにスイッチング素子を少なくとも4つ備える必要がある。つまり、切り換えが不要であればハーフブリッジによりスイッチング素子が2つで済むものを、この場合はさらに2つ追加しなくてはならない。
また、整流動作の切換を行う構成としても、倍電圧整流動作を得るために平滑コンデンサCiを2本備えるようにしなければならない。つまり全波整流のみとする構成と比較して、平滑コンデンサCiを1本追加しなければならなくなる。
これらの点でも、上記したような回路切換を伴うワイドレンジ対応の構成では、回路製造コストの増加、及び電源回路基板の大型化を招く。特に、整流動作切り換えの構成において、平滑コンデンサCi等は電源回路を構成する部品のうちでも大型の部類に入ることから、このような基板サイズの大型化はさらに助長される。
また、先に説明したようにしてスイッチング周波数の制御範囲が広範となることによるもう1つの問題点としては、二次側直流出力電圧Eoについての安定化の高速応答特性が低下してしまうということが挙げられる。
特に近年の電子機器では、例えば各種駆動部のオン/オフ等に応じて負荷電力が最大負荷と無負荷とで瞬時的に変化する、いわゆるスイッチング負荷といわれる負荷条件となることがある。これに応じて電源回路側としても、このように高速且つ広範に変動する負荷電力に応じて、二次側直流出力電圧Eoの定電圧制御を行う必要がある。
しかしながら、上述のようにスイッチング周波数制御範囲が広範であると、最大値と最小値とで変化する負荷に対応して定電圧制御に必要なスイッチング周波数へと変化させるまでに、その分多くの時間を要してしまうことになる。つまり、定電圧制御の応答性が鈍くなる。
また、図12に示す電源回路は、一次側電圧共振形コンバータを備える構成であり、このような構成の電源回路が電力変換効率について有利となる傾向の特性を有していることは、先に説明したとおりである。しかしながら、例えば近年のエネルギー事情、環境事情などを考慮して、電子機器については、より高い電力変換効率特性とすることが求められている。これに伴い、電子機器に搭載される電源回路そのものについても、さらなる電力変換効率の向上が要求されている状況にある。
特に、図12に示した回路では、先の図15の特性から理解されるように負荷が軽い条件での電力変換効率の向上が図られておらず、この領域での効率向上が全体の効率向上を図る上で重要となる。
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、直流入力電圧を入力してスイッチングを行うスイッチング素子を備えて形成したスイッチング手段と、上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。
また、少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と一次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成されて、上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とする一次側並列共振回路を備える。
また、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して並列となる関係により二次側並列共振コンデンサを接続することで、上記二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と、上記二次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側並列共振回路を備える。
また、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して直列となる関係により二次側直列共振コンデンサを接続することで、上記二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と、上記二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側直列共振回路を備える。
また、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧に基づき整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段と、上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記二次側直流出力電圧について定電圧制御を行う定電圧制御手段とを備える。
その上で、上記絶縁コンバータトランスは、一次側と二次側との結合係数が、少なくとも上記一次側並列共振回路と上記二次側並列共振回路とを有して形成される電磁結合形共振回路について、上記スイッチング周波数を有する周波数信号の入力に対する出力特性として単峰特性が得られ、且つ所定レベル以上の交流入力電圧入力時における上記スイッチング素子のオン期間の割合が所定以下となるようにして、疎結合とみなされる所定の値に設定されている。
そして、少なくとも所定の負荷条件の下で一定以上の電力変換効率が得られるようにして、上記一次側並列共振回路の共振周波数と上記二次側並列共振回路の共振周波数と上記二次側直列共振回路の共振周波数とを設定して構成することとした。
上記構成による電源回路は、一次側に一次側並列共振回路と、二次側に二次側並列共振回路と二次側直列共振回路とを備える電圧共振形コンバータとしての構成を採る。このように一次側と二次側とにそれぞれ共振回路が組み合わされた構成が採られることにより、絶縁コンバータトランスの電磁結合による結合形共振回路を形成することになる。その上で、絶縁コンバータトランスについて所定の結合係数による疎結合とすることで、当該結合形共振回路に対する入力であるスイッチング周波数の周波数信号(スイッチング出力)に対する出力特性として、急峻な単峰特性を得ることが可能となる。この結果、二次側直流出力電圧の安定化に要するスイッチング周波数の可変範囲(必要制御範囲)を縮小することができる。
また、二次側直列共振回路を組み合わせているが、一次側並列共振回路に対する二次側直列共振回路の組み合わせは、軽負荷の条件でも高効率が得られる。しかし、この組み合わせは中間負荷時に安定なZVS(ゼロ電圧スイッチング)動作ができず、異常発振動作も生じ実用化レベルではなかった。これに対し本発明では、上記のように絶縁コンバータトランスの結合係数が所定の疎結合とされる値にまで低下されたことで、安定なZVS動作を実現してこれを実用化することができる。
さらに、上記結合係数の値を低下させていくことによっては、負荷変動に対するスイッチング素子のオフ期間とオン期間の特性として、特に所定レベル以上の交流入力電圧入力時におけるオン期間の割合が小さくなることが明らかとなった。つまりは、上記のようにして結合係数が所定の疎結合とされる値に設定されることで、特に所定レベル以上の交流入力電圧入力時におけるオン期間の割合を所定以下とすることができ、これによってスイッチング素子に印加されるスイッチング電圧のピークレベルの抑制が図られる。
また、その上で本発明としては、一次側並列共振回路の共振周波数と二次側並列共振回路の共振周波数と二次側直列共振回路の共振周波数の設定により、所定の負荷条件の下で、一定以上の電力変換効率特性が得られるようにされる。
このようにして本発明は、一次側並列共振回路、二次側並列共振回路、二次側直列共振回路を組み合わせた電圧共振形コンバータについて、定電圧制御に必要なスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)が縮小される。これにより、電圧共振形スイッチングコンバータについて、スイッチング周波数制御のみによりワイドレンジ対応化することが容易に実現可能となる。
また、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータとされているが、これによって二次側並列共振回路のみを組み合わせた場合よりも電力変換効率の向上が図られる。また、このように二次側直列共振回路を設けた場合にも本発明では上記したように安定なZVS動作を得ることができるので、何ら支障なく実用化することができる。
さらには、上記のようにして結合係数が所定の疎結合とされる値にまで低下されることで、特に所定レベル以上の交流入力電圧入力時におけるスイッチング素子のオン期間の割合が小さくなり、これによってスイッチング素子に印加されるスイッチング電圧のピークレベルの抑制が図られる。
さらに本発明によっては、一次側並列共振回路の共振周波数と二次側並列共振回路の共振周波数と二次側直列共振回路の共振周波数の設定により、所定の負荷電力の負荷条件にも対応させるようにして一定以上の電力変換効率が得られるようにしている。電圧共振形コンバータは、高い電力変換効率特性を本来有するが、本発明によっては、電圧共振形コンバータを備える電源回路について、より良好な電力変換効率特性を有するものを提供できることになる。
そして、上記のようなワイドレンジ化、及び高効率化を実現するための基本構成としては、少なくとも二次側並列共振回路を備える電圧共振形コンバータに対し、絶縁コンバータトランスについて所要の結合係数が得られる構造とし、さらに二次側直列共振回路形成のための二次側直列共振コンデンサを追加すればよいものであり、従って、部品点数の増加などによるコストアップ、回路の大型化、重量増加などを伴うことなくこれを実現できるというメリットもある。
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について説明する。
図1の回路図は、本発明における実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、シングルエンド方式による電圧共振形スイッチングコンバータとしての基本構成を採る。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、例えば1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式の電圧共振形コンバータとして形成される。この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合の電圧共振形コンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
また、スイッチング素子Q1のドレインは、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻始め端部と接続される。一次巻線N1の巻き終わり端部は、平滑コンデンサEiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、一次巻線N1の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
そして、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)であるスイッチング電圧V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られる発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数に従って連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送する。
図2は、図1の電源回路が備える絶縁コンバータトランスPITの構造例を示す断面図である。
この図に示すように、絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアを備える。E型コアCR1、CR2は、それぞれ図のように断面形状がE字型とされたコアである。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成されるボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBを上記EE型コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの中央磁脚に巻装される状態となる。
さらに、EE型コアの中央磁脚に対しては、図のようにしてギャップGが形成される。このギャップGの長さは、一次側と二次側との結合係数を決定するにあたっての一要素となる。なお、ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
その上で、この場合の絶縁コンバータトランスPITにおいては、EE型コアの2本の外磁脚の中央部分、つまり、一次巻線N1の巻装位置と二次巻線N2の巻装位置との境にあたる部位の各々に対応して、フェライトシートコアFSC1、FSC2を挟むようにして設けている。これらフェライトシートコアFSC1、FSC2は、それぞれ所定の厚さLn2を有する。
また、この場合のフェライトシートコアFSC1、FSC2は、その名前からも分かるように、E型コアCR1,CR2と同じフェライトから成るもので、外磁脚に挟まれた状態で設けられる。そのうえで、さらに、フェライトシートコアFSC1、FSC2は、外磁脚の内側端面部からEE型コアの内磁脚側に対して、所定の長さLn3により突出部位(磁路発生部位)があるようにして設けられる。これにより、ボビンBにおける一次巻線N1と二次巻線N2の巻装部の間の部位に対しては、フェライトシートコアFSC1、FSC2の端部側が所定長分だけ嵌入されるような状態となる。
ここで、例えば先の図13に示した絶縁コンバータトランスPITのようにして、フェイライトシートコアFSC1、FSC2を挿入しない単純なEE型コア構造の場合には、図3(a)の磁束φ1、φ2に示すようにして磁路が形成されることになる。なお、図3においては、図示をわかりやすくするためにボビンBは省略している。
この図から分かるように、磁束φ1、φ2の磁路は、一次巻線N1側と二次巻線N2側とをまたぐようにして外磁脚を通る。このために、図13に示した絶縁コンバータトランスPITにおいて、一次巻線N1と二次巻線N2との結合度は相応に高いものであり、図12の回路にて設定していた結合係数k=0.80程度は、ギャップ長1.0mm程度のギャップGを内磁脚に形成することで得ていたものである。
これに対して、図2に示したようにしてフェライトシートコアFSC1,FSC2を設けた場合、E型コアCR1,CR2が、フェライトシートコアFSC1,FSC2と同材質のフェライトであることによれば、実質的には、図3(b)に示すようにして、EE型コアの形状として、外磁脚の中央部が内磁脚の中央部側に突出した形状を有しているものとみることができる。そして、このようなEE型コアの形状は、図3(a)のEE型コア形状に対して、突出部分(磁路発生部位)の長さLn3の分だけ、外磁脚の中央部分と内磁脚の中央部分との空間距離が短くなっていることになる。
これらの部位が近づいた分、図3(b)に示す絶縁コンバータトランスPITでは、図3(b)において破線で示すφ11,φ12により示される磁束が生じることになる。この磁束φ11,φ12の成分は、上記フェライトシートコアFSC1,FSC2の突出部分の厚さLn2が厚くなって、これらフェライトシートコアFSC1,FSC2の突出部分を通る磁束の量が増大するほど増加し、一方の磁束φ1,φ2の成分量は減少していく。
ここで、磁束φ11,φ12の磁路は、一次巻線N1側と二次巻線N2側との個々にそれぞれ対応して形成されるものとなる。従って、上記した磁束φ1,φ2の成分量が減少するのに対し、磁束φ11,φ12が増加する傾向になるということは、一次巻線N1と二次巻線N2との結合度が低下することになる。
つまりは、このフェライトシートコア(FSC)によっても結合係数を変化させることができるもので、上記のようにその厚さLn2に応じて結合係数を低く設定することが可能となる。
このようにして、フェライトシートコアFSC1、FSC2を設けたことによって結合係数が低下するということは、本例の構成によれば、ギャップGの拡大を伴わずに結合係数としてより低い値を設定することができる。
本実施の形態の場合、具体的にはギャップGの長さを従来と同様の1.0mm程度に設定した上で、フェライトシートコアFSC1、FSC2の上記した厚さLn2を1.5mmに設定したことで、絶縁コンバータトランスPITにおける総合的な結合係数(以下、総合結合係数ktとする)として、kt=0.6程度を得るようにされる。
なお、上記説明からも理解されるように、総合結合係数ktの設定は、EE型コアの基本形状に対して、上記フェライトシートコア(FSC1、FSC2)と同様の磁路発生部位が形成されることでこれを行うことができるものであるが、これによれば、例えばフェライトシートコアを使用せずとも図3(b)に示すままの実際のコア形状が得られるようにE型コアを成型して、これを組み合わせることによってもフェライトシートコアを使用する場合と同様の総合結合係数ktの設定を可能とすることができる。
ただし、本実施の形態では、現状においては上記したようなE型コアを成型するよりも製造工程としてはより簡易となることを考慮して、フェライトシートコア(FSC1,FSC2)を外磁脚に挟み込む形態としているものである。
また、本実施の形態の場合、絶縁コンバータトランスPITとしては、次の図4(a)に示す構造とすることもできる。
図4(a)において、この場合の絶縁コンバータトランスPITとしても、その断面形状がE字型とされたフェライト材によるE型コアCR3とE型コアCR4とについて、互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアを備える。
但しこの場合は、一次側巻線(N1)と二次側巻線(N2)とをそれぞれ独立して巻装する2つのボビンB5について、各々を上記EE型コア(CR3・CR4)に形成される2本の外磁脚の一方ずつに取り付けることで、図のように一次側巻線が一方の外磁脚に、二次側巻線が他方の外磁脚に巻装される状態が得られるようにされている。
そして、この場合も上記EE型コアの中央磁脚に対しては、ギャップGが形成される。この場合もギャップGは、E型コアCR3,CR4の中央磁脚を2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
この図4(a)に示す構造とされた絶縁コンバータトランスPITにおいては、図4(b)に示されるような磁路が形成される。なお、この図4(b)においても説明の便宜上ボビンB5については省略している。
先ず、上記のようにして一次側巻線と二次側巻線とがそれぞれ別々の外磁脚に対して巻装されていることで、この場合の磁路としては、図示するようにE型コアCR3側とE型コアCR4側とでそれぞれ2つの外磁脚を跨ぐようにして形成される磁束φ3による磁路と、それぞれの外磁脚側から内磁脚側へ通る磁束φ13と磁束φ14とによる磁路とが形成される。
図示されるように、上記磁束φ3としては、一次巻線N1側と二次巻線N2側とを跨ぐようにして形成されることがわかる。
一方の磁束φ13、φ14は、一次巻線N1側と二次巻線N2側との個々にそれぞれ対応して形成されるものとなる。
このように、一次巻線N1側と二次巻線N2側との個々にそれぞれ対応して形成される磁束φ13、φ14は、上記もしているように共に内磁脚を通る。従って、この場合もEE型コアの内磁脚に形成されるギャップGの長さが、一次側と二次側の結合度を設定する1要素となっていることが理解できる。
但し、この場合の構造によると、一次側と二次側の結合度は、上記ギャップGの長さを長くすることによっては磁束φ13、φ14が減少して高められるものとなる。逆にギャップGの長さを短くすることによっては磁束φ13、φ14が増加して低くなるようにされる。つまりは、この図4に示す構造とされた場合、結合係数を低下させるにあたっては、ギャップGの長さをより短くするようにされるものであり、これによって、この場合としてもギャップGの拡大を伴わずに結合係数の値を低下させることができるものである。
このようにして本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITの構造によれば、ギャップGを拡大することなく一次側と二次側の結合係数を低下させることができる。
例えば、ギャップGの拡大によって結合係数の低下を図る場合、絶縁コンバータトランスPITにおける渦電流損失が増大するものとなるが、このように本例の場合は結合係数の低下にあたってギャップGの拡大が伴わないことで、この渦電流損失を抑制して効率低下を有効に抑制することができる。
なお、以下では絶縁コンバータトランスPITとしては図2に示した構成が採られるものとして、一次側と二次側の結合係数については総合結合係数ktにより示すものとする。確認のために述べておくと、図2、図4何れの構成が採られる場合にも、同じ結合係数の値の設定にあたってギャップGの長さが同等とされるように構成されていることで、上記渦電流損失の抑制効果は同等に得ることができる。
説明を図1に戻す。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、前述もしたように、スイッチング素子Q1のドレインと接続されている。これにより、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が一次巻線N1に伝達され、一次巻線N1には交番電圧が生じる。
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側並列共振コンデンサC2を並列に接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側並列共振回路を形成する。この二次側並列共振回路は、後述する二次側整流回路の整流動作に応じて共振動作を行う。つまり、一次側とともに、二次側においても電圧共振動作が得られる。
また、さらに実施の形態では、二次巻線N2に対して直列に、二次側直列共振コンデンサC3を接続するものとしている。この二次側直列共振コンデンサC3の接続により、この場合の二次側においては上記並列共振動作と共に直列共振動作(電流共振動作)も得られることになる。
そして、この場合の二次側整流回路は、上記のようにして二次側並列共振コンデンサC2が並列接続され、また二次側直列共振コンデンサC3が直列接続された二次巻線N2に対して、整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2と、平滑コンデンサCoを図示するように接続して成る倍圧半波整流回路が備えられる。
この倍圧半波整流回路の接続態様としては、まず、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対して、上記二次側直列共振コンデンサC3の直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと、整流ダイオードDo2のカソードを接続する。また、整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。二次巻線N2の巻始め端部と、整流ダイオードDo2のアノードと、平滑コンデンサCoの負極端子は、二次側アースに対して接続する。
このようにして形成される倍圧半波整流回路の整流動作は次のようになる。
先ず、二次巻線N2に励起される交番電圧(V2)の一方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されることになるので、この期間に対応しては整流ダイオードDo2が導通し、整流電流を二次側直列共振コンデンサC3に対して充電する動作が得られる。これによって、二次側直列共振コンデンサC3には、二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの両端電圧が生成される。次の、上記交番電圧の他方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo1に順方向電圧が印加されて導通する。このとき、平滑コンデンサCoに対しては、この交番電圧の電位と、上記二次側直列共振コンデンサC3の両端電圧とが重畳された電位により充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期に対応してのみ充電が行われる。つまり、倍圧半波としての整流動作が得られている。
この二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
なお、このような倍圧半波整流回路において、上記整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2とは、スイッチング周波数に応じた比較的高周波でのオン/オフ動作を行うことから、高速型(高速リカバリ型)が選定される。
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。
スイッチング素子Q1のスイッチング周波数が可変制御されることによっては、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンスが変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
ここで、本実施の形態の場合、二次巻線N2に対しては二次側並列共振コンデンサC2に加え、二次側直列共振コンデンサC3が接続されて直列共振動作も得られるようになっている。このような場合での二次側直流出力電圧Eoについての定電圧制御動作は、後の図6においても説明するように、上記のようなスイッチング周波数自体の可変制御と、スイッチング素子Q1のオン期間TONとオフ期間TOFFの時間長の可変制御とが複合的に行われるものとなる。
なお、上記図1に示した回路形態による本例の電源回路の実際として、要部については、下記のように設定を行って構成している。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、コアについてEER-35を選定して、ギャップGについては1.0mmのギャップ長を設定した。また、一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=63T、N2=25Tを選定して、絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数ktについてはkt=0.57が設定される。また、この際、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1=403μH、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2=86μHとなる。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=6800pFを選定した。この一次側並列共振コンデンサCrについてのキャパシタンス設定と、上記絶縁コンバータトランスPITの構造により得られる一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=96kHzが設定される。また、二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.033μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、絶縁コンバータトランスPITの構造により得られる二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とにより、二次側並列共振周波数fo2=94.5kHzが設定される。すなわち、一次側の共振周波数fo1と二次側並列共振周波数fo2との関係としては、fo1≒fo2の関係が得られているといえる。
さらに、二次側直列共振コンデンサC3についてはC3=0.1μFを設定し、これによって二次側直列共振周波数fo3=54.3kHzを設定した。
これらより、この場合の共振周波数fo1、二次側並列共振周波数fo2、二次側直列共振周波数fo3の三者の関係としては、図1にも示したようにfo1≒fo2>fo3の関係が得られているものである。
また、特に一次側の共振周波数fo1と二次側の直列共振周波数fo3との比較では、fo1≒fo3×0.56となっており、共振周波数fo3は共振周波数fo1のおよそ1/2の値となるようにされている。
また、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vとしている。
図5の波形図は、上記構成による図1の電源回路における要部の動作を、スイッチング素子Q1のスイッチング周期により示しており、図5(a)には、最大負荷電力Pomax=200Wの条件において、交流入力電圧VAC=100V時でのスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、交番電圧V2、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、二次側整流電流ID2が示される。また図5(b)には、同じく最大負荷電力Pomax=200Wの条件下、交流入力電圧VAC=230V時での上記各波形が示されている。
図5において、先ずスイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧であり、スイッチング電流IQ1は、ドレイン側からスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1の共振パルスは、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることにより、正弦波状の共振波形として得られる。
なお、この場合、図5(a)に示す交流入力電圧VAC=100V時では、スイッチング電圧V1のピークレベル(V1−p)は640Vpとなっている。一方、図5(b)に示す交流入力電圧VAC=230V時ではV1−p=770Vpとなる。
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いてドレインからソースに流れることで正極性に反転する波形となる。
この図に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、適正にZVSが行われていることを示している。
なお、図5(a)における交流入力電圧VAC=100V時、スイッチング電流IO1のピークレベルは3.4Apであり、図5(b)に示す交流入力電圧VAC=230V時ではIQ1=4.0Apとなる。
一次巻線電流I1は、一次巻線N1に流れる電流であり、スイッチング電流IQ1に流れる電流成分と一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。一次巻線電流I1における期間TOFFの波形は、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流波形に対応している。
また、交番電圧V2、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1,ID2によっては、二次側整流回路の動作が示される。
二次巻線N2に誘起された交番電圧V2によっては、先の説明のようにして、この交番電圧V2の半周期の期間ごとに対応して、整流ダイオードDo1,Do2が交互に導通する。
二次側整流電流ID1,ID2は、図示するようにして、半波の正弦波形状により交互となるようにして平滑コンデンサCoに対して流れる。二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、二次側整流電流ID1,ID2を合成して得られ、図示するようにして正弦波状となる。二次巻線電流I2の正弦波形状は、二次側に形成された直列共振回路の共振動作の影響により得られるものである。
なお、本実施の形態の場合において、交番電圧V2は、最大負荷電力Pomax時においては、図示するように二次巻線N2の誘起電圧レベルが二次側直流出力電圧Eo以上のレベルの電圧となって整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2を導通させている期間に対応して、二次側直流出力電圧Eoの1/2のレベルによりクランプされる波形が得られる。
またこの場合、図5(a)に示す交流入力電圧VAC=100V時での二次側整流電流ID1、ID2のピークレベルは、それぞれ5.0Ap、6.0Apとなり、図5(b)に示す交流入力電圧VAC=230V時での二次側整流電流ID1、ID2のピークレベルはそれぞれ6.0Ap、7.0Apとなっている。
図6は、図1に示した電源回路についての実験結果として、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、期間TONと期間TOFFの時間長、及びスイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの変化特性を示している。
なお、後述もするように図1にて説明した本実施の形態の電源回路の構成によれば、AC100V系とAC200V系との双方の入力に対応して動作可能なワイドレンジ対応の構成が実現される。これに応じ図6では、交流入力電圧VAC=100V時の各特性を実線により示し、交流入力電圧VAC=230V時での各特性を破線によりそれぞれ示している。
図6において、先ずスイッチング周波数fsは、軽負荷の傾向となるのに応じて高くなっていく傾向で変化している。また、交流入力電圧VACの100V時と230V時との比較では、VAC=230V時の方がその値が高くなっていることがわかる。
これらのことは、この場合の定電圧制御動作が、軽負荷傾向及び交流入力電圧の上昇傾向に応じて二次側直流出力電圧Eoが上昇するのに応じてスイッチング周波数fsを高くする制御であることを示している。
また、図6において、期間TONの時間長は、軽負荷傾向となるに従って減少し、逆に期間TOFFは軽負荷傾向となるに従って増加するようにされる。また、交流入力電圧VAC=100V時とVAC=230V時とを比較して、期間TONは交流入力電圧VAC=230V時の方が時間長が短く、また期間TOFFは交流入力電圧VAC=230Vの方が時間長が長くなるように制御されていることがわかる。
従って、このような期間TON/期間TOFFの時間長の可変制御によっては、軽負荷傾向及び交流入力電圧の上昇傾向に応じて二次側直流出力電圧Eoが上昇するのに応じ、期間TONを短く、期間TOFFを長くする制御が行われていることを示し、これによってスイッチング周波数fs自体の可変制御と同様に、二次側直流出力電圧Eoのレベルを安定化する傾向の制御となっていることがわかる。
このように図1の回路では、二次側直流出力電圧Eoの安定化にあたり、スイッチング周波数可変制御と期間TON/TOFFの時間長の可変制御とが複合的に行われているものである。
なお、この場合のスイッチング周波数fsの特性によると、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対して連続的に可変制御されていることがわかる。
ここで、仮に二次側に対して直列共振回路のみの組み合わされた構成とされる場合、スイッチング周波数fsは負荷変動に対して連続的に可変制御されるものとはならず、中間負荷の領域(例えばPo=120W〜50W程度の範囲)でスイッチング周波数fsが一定となる領域が存在することになる。
図1に示す電源回路のように、スイッチング周波数fsが連続的に可変制御される定電圧制御動作は、先の図15に示した特性図との比較より、図12に示した二次側に並列共振回路のみが組み合わされた構成とされた場合により近いものであることがわかる。従って二次側直流出力電圧Eoの安定化動作については、一次側の並列共振回路と二次側の直列共振回路との組み合わせではなく、一次側と二次側のそれぞれの並列共振回路どうしの組み合わせによる作用が支配的となっていると考えることができる。
また、図6において、スイッチング電圧V1のピークレベルV1−pは、交流入力電圧VACが100V時と230V時とで共に、重負荷の傾向となるに従って上昇する傾向となる。また、同じ負荷電力の条件においては、交流入力電圧VAC=230V時の方がその値が高くなっていることがわかる。
ここで、図6に示す各特性において、先ずスイッチング周波数fsの具体値としては、交流入力電圧VAC=100V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対応して、fs=83.3kHz〜137.0kHzで、Δfs=53.7kHzとなり、このスイッチング周波数の変化に対応する期間TON/TOFFは、TON=8.0μs〜3.6μs、TOFF=4.0μs〜4.8μsとなる結果が得られた。
また、交流入力電圧VAC=230V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対応して、fs=126kHz〜153kHzで、Δfs=27kHzとなり、このスイッチング周波数の変化に対応する期間TON/TOFFは、TON=3.7μs〜1.5μs、TOFF=4.2μs〜5.0μsとなる結果が得られている。
また、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時、最大負荷電力Pomax=200Wの条件ではηAC→DC=92.1%、交流入力電圧VAC=230Vの条件ではηAC→DC=91.0%との測定結果が得られた。
そして、特筆すべきは、図6に示されているように、この場合のAC→DC電力変換効率は最大負荷電力時(Po=200W時)から25%の負荷電力(Po=50W付近)までの負荷変動に対してなだらかに上昇していき、その後の負荷電力の低下に応じて徐々に低下していく特性となっていることである。
これは、二次側に並列共振回路のみを形成した図12の回路の場合(図15参照)のように、重負荷の傾向となるに従って効率が向上する特性とは逆の特性となっており、これによって25%負荷以下での効率が図12の回路の場合よりも明らかに向上していることがわかる。
具体的に本実施の形態において、特に交流入力電圧VAC=100V時での特性は、負荷電力Po=200W〜25Wまでの変動範囲に対してηAC→DC=90%以上となる高効率が得られている。
ここで、図6に示した図1の電源回路の特性について、先ずはスイッチング周波数fsについての特性を図12の電源回路と比較してみる。
図12の電源回路では、交流入力電圧VAC=100Vの入力で、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの変動に対して、fs=117.6kHz〜208.3kHzで、Δfs=96.7kHzとされていた。
これに対し図1の電源回路では、交流入力電圧VAC=100Vの入力で、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの変動に対して、fs=83.3kHz〜137.0kHzで、Δfs=53.7kHzとなっており、図12の電源回路の特性と比較して大幅に必要制御範囲が短縮されていることが分かる。さらに図1の電源回路では、交流入力電圧VAC=230Vの入力で、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの変動に対して、fs=126kHz〜153kHzでΔfs=27kHzとなっており、この条件においても必要制御範囲は図12の電源回路の特性と比較して大幅な短縮が図られている。
このような図1の電源回路のスイッチング周波数fsの特性は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの対応負荷電力の条件で、AC100V系〜AC200V系の範囲(例えばVAC=85V〜264V)の商用交流電源入力に対応して安定化が可能な、いわゆるワイドレンジ対応が実現化されていることを示している。
なお、このような図1の回路でのワイドレンジ対応化については後述する。
また、AC→DC電力変換効率については、図12の回路では軽負荷の条件となるに従って電力変換効率が低下することで、ηAC→DC=90%以上の高効率の範囲が負荷電力Po=200W〜75Wの範囲とされていたが、上記もしているように本例ではPo=200W〜25Wまでの範囲に拡大される。
本実施の形態において、このように電力変換効率の向上が図られる主たる要因は、二次側に対して直列共振回路を形成したことによる。
つまり、本実施の形態のように電圧共振形コンバータとして、一次側並列共振回路に対して二次側直列共振回路を組み合わせた構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。これは、二次側直列共振回路で得られる共振エネルギーにより、二次側直流出力電圧Eo生成にあたってのエネルギーをまかなうことができることによる。つまり、この点で二次巻線N2に伝達されるべきエネルギーを二次側直列共振回路を設けない場合よりも少なくでき、その分電力変換効率の向上が図られるものである。
そして、この構成は、最大負荷電力から軽負荷の傾向となるのにしたがって、電力変換効率が増加していくという特徴的な性質を有しており、これによって軽負荷傾向に応じて電力変換効率が低下する傾向となる並列共振回路どうしの組み合わせ(図12)の構成と比較すれば、負荷変動に対する電力変換効率特性としては非常に良好な特性を得ることができる。
また、電力変換効率の向上は、各共振周波数の設定によっても図られている。
つまり、本実施の形態の電力変換効率特性(ηAC→DC)としては、上記もしているように負荷電力Po=200W〜25Wまでの負荷変動範囲に対し、ηAC→DC=90%以上が得られているが、このような負荷条件に対する電力変換効率特性は、最終的には、共振周波数fo1,fo2,fo3の調整により得られたものである。つまり、共振周波数fo1,fo2,fo3について各種設定を行って実験を行い、前述したfo1=96kHz、fo2=94.5kHz、fo3=54.3kHzを設定してfo1≒fo2>fo3とみなされる関係を設定したことで、最終的に得られた特性である。
なお、このよなうな共振周波数の設定による電力変換効率の向上は、先の図5に示したスイッチング電流IQ1の波形によっても示されている。
つまり、図5(a)と、先の図14(a)のスイッチング電流IQ1を比較して分かるように、本実施の形態に対応する図5(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、スイッチング素子Q1のオン期間TONが終了してオフ期間TOFFに遷移するターンオフ以前のタイミングで、3.4Apのピークレベルが得られる波形となっている。そして、ターンオフタイミングに至るとさらに低下したレベルとなっている。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、二次巻線電流I2の波形が影響している。つまり、並列共振回路と直列共振回路とが組み合わされた二次側の共振回路に流れる電流に応じた波形成分を持っている。二次巻線電流I2の波形は、共振周波数fo1に対する共振周波数fo2、共振周波数fo3の設定によって決まる。
このことから、図5(a)に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、一次側並列共振回路と二次並列共振回路と二次側直列共振回路の各共振周波数fo1,fo2,fo3の然るべき設定により得られているものである、ということになる。
この図5(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失、導通損は低減されることになる。
このようなスイッチング素子のスイッチング損失、導通損の低減が、本実施の形態の電源回路について高電力変換効率特性が得られていることの1つの要因となっている。
ここで、上述のようにして図1の回路では二次側に対して直列共振回路を形成したことでも、電力変換効率の向上が図られるが、単に二次側直列共振回路を設けた構成とした場合には、中間負荷時に異常動作が生じ、実用化は難しくなる。
図1の回路のように、一次側並列共振回路に対し二次側直列共振回路を組み合わせた場合、一次側のスイッチング電流IQ1にいわゆるかみつき電流と呼ばれる、スイッチング素子Q1がターンオフするタイミングで正極性による電流が流れる。
このかみつき電流により、スイッチング損失が増加すると共に、安定なZVS(ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる。また、いずれにせよこのような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。そして、これらの異常動作が生じることから、その実用化が困難なものとされていた。
このような中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路とが同時に動作することによる相互作用が原因となっている。
そこで、これに対し本実施の形態では、絶縁コンバータトランスPITの結合係数(総合結合係数kt)を従来よりも低い所定の値に設定するものとしている。
このように総合結合係数ktがより低く設定されることで、上記した一次側並列共振回路と二次側直列共振回路との間の相互作用は希薄となって、中間負荷時における異常動作も無くなっていくことになる。具体的には、上記したスイッチング電流IQ1のかみつき電流が観察されなくなり、通常のZVSに対応するの波形が得られることになる。そして、これによって上記した異常発振動作も解消できる。
このようにして図1に示した本実施の形態の構成では、一次側並列共振回路に対して二次側直列共振回路を組み合わせた構成を、実用化可能なものとして実現することができる。
なお、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITが有する総合結合係数ktにまで疎結合の状態とすることは、従来の電圧共振形コンバータでは、一次側から二次側への電力伝送ロスの増加による電力変換効率の低下を招くということを理由に、これまで行われてこなかったという背景がある。
しかしながら、本実施の形態では、図6の実験結果としても示したように、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、非常に良好な電力変換効率特性を得ることができる。
これは、二次側に対しても共振回路(二次側並列共振回路及び二次側直列共振回路)を形成していることによる。すなわち、二次側共振回路を備えることで、先にも述べたようにその共振動作により得られるエネルギーの増加分を含めて二次側直流出力電圧Eoとしての電力を供給可能となるものであり、疎結合とされたことによる電力変換効率の低下が補償されるものである。
また、上記のようにして総合結合係数ktについてより低い値に設定することによっては、スイッチング電圧V1のピークレベルの上昇が抑えられるという実験結果が得られた。この点について以下で説明する。
先ず、スイッチング電圧V1のピークレベルV1−pは、
V1−p=Ei{(1+π/2)×(TON/TOFF)}
により表される。
この式より、ピークレベルV1−pは、整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiの上昇(すなわちこの場合は交流入力電圧VACの上昇)に応じて上昇することが理解できる。また、これと共に「TON/TOFF」の値の上昇、すなわち1スイッチング周期内の期間TONの占める割合の増加に伴っても上昇することが理解できる。
先の図6の特性図より、「TON/TOFF」の値は、重負荷の条件となるに従って高くなり、最大負荷電力Pomax=200W時で最大となることがわかる。また、上記もしているようにピークレベルV1−pの値は交流入力電圧VACの上昇に伴って上昇するので、これらのことよりピークレベルV1−pの値は、交流入力電圧VAC及び負荷電力Poが最大となるときに最大値となることが理解できる。
ここで、上記のようにしてピークレベルV1−pが負荷電力に応じて上昇する特性に着目すれば、図6に示した負荷変動に対する期間TONと期間TOFFの特性として、期間TOFFに対する期間TONの時間長がより少なくなれば、上記した「TON/TOFF」の値が小さくなるようにされ、この結果ピークレベルV1−pの上昇を抑制することができる。
特に、ピークレベルV1−pは最大交流入力電圧時に最大値となるので、ピークレベルV1−pの最大値側の抑制を図るにあたっては、図6中に破線により示すような最大交流入力電圧側での期間TONと期間TOFFの特性として、期間TONの割合がより小さくなる特性が得られればよい。
実験の結果、図1の構成において絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数ktの値を従来よりも低下させていくと、このような負荷変動に対する期間TONと期間TOFFの特性として、特に最大交流入力電圧側(この場合はワイドレンジ対応の構成であるのでAC200V系の入力時)で得られる特性において、期間TOFFと期間TONとの時比率の変化が大きくなり、その結果1スイッチング周期内の期間TONの占める割合が小さくなっていくという結果が得られた。すなわち、このように総合結合係数ktの値をより低く設定していくことで、特に最大交流入力電圧側で上記のような「TON/TOFF」の値をより小さくできるという結果が得られたものである。
このようにして、特に最大交流入力電圧側で「TON/TOFF」の値がより小さくなる特性が得られることで、最大交流入力電圧の入力時での「TON/TOFF」の値としてもより小さくなるようにされる。そして、このように最大交流入力電圧の入力時での「TON/TOFF」の値がより小さくなることで、スイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの最大値としてもこれに伴って低下することになる。
このようにして結合係数ktの値を低下させたことに伴って、ピークレベルV1−pの最大値の抑制が図られることになる。
スイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの最大値の抑制が図られれば、その分スイッチング素子Q1に印加される電圧レベルも低減されるので、これによってスイッチング素子Q1としてはより低耐圧な部品を選定することができる。
より低耐圧な部品が選定できれば、素子サイズとしても小型となり、よって回路面積の削減を図ることができる。さらに、部品コストとしてもより低コストとなるのでこれに伴う回路製造コストの削減も図られる。
ここで、本実施の形態としては、総合結合係数ktとしてkt=0.57を設定しているが、このような総合結合係数ktの設定によって、この場合はスイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの最大値(最大交流入力電圧及び最大負荷電力時:この場合はVAC=264V・Po=200W時)を820Vにまで抑制することができる。
このようなピークレベルV1−pの最大値とされたことで、この場合のスイッチング素子Q1としては900Vの耐圧品を使用することができる。
続いては、図1の構成によって実現されるワイドレンジ対応化について説明する。
先ず、図1に示す電源回路は、二次側の共振回路として、上記直列共振回路と共に、並列共振回路を備える電圧共振形コンバータとしての構成を採っている。つまり、図1に示す電源回路としても、先の図12に示した従来の構成と同様に、一次側と二次側とのそれぞれに並列共振回路を備えていることに変わりはない。
ここで、ワイドレンジ対応化の観点では、このように一次側と二次側とに備えられるお互いの並列共振回路での相互作用が支配的なものとなる。これは、先の図6、及び図15に示したそれぞれのスイッチング周波数fsの特性から、この場合の定電圧制御動作としては、一次側並列共振回路と二次側並列共振回路とを組み合わせた構成(図12)のときと同様にスイッチング周波数fsが連続的に可変制御されていることからも理解できる。
従って以下、図1の構成におけるワイドレンジ対応化については、一次側並列共振回路に対して二次側並列共振回路のみが組み合わされた場合での定電圧制御特性を基にその説明を行う。
上記のようにして一次側と二次側とに並列共振回路が組み合わされているということは、絶縁コンバータトランスPITの電磁誘導を介してこれらの並列共振回路が形成されていることになる。このような構成を、一次側並列共振回路と二次側並列共振回路との関係によりみれば、スイッチング周波数fsに対応する周波数信号が入力される、電磁結合による結合形共振回路を形成しているものとして等価的にみることができる。
このようにして電磁結合形共振回路を含むとされる、図1の電源回路の二次側直流出力電圧Eoについての定電圧制御特性は、絶縁コンバータトランスPITの結合度(総合結合係数kt)に応じて異なるものとなる。この点について図7を参照して説明する。
図7は、上記した電磁結合形共振回路についての、入力(スイッチング周波数信号)に対する出力特性を示している。つまり、二次側直流出力電圧Eoについての制御特性をスイッチング周波数fsとの関係により示している。この図では、スイッチング周波数を横軸にとり、二次側直流出力電圧Eoのレベルを縦軸にとっている。
図1にて説明したように、本実施の形態としては、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側並列共振回路の共振周波数fo2とはおよそ同等となるように設定されているが、実際において、共振周波数fo1と共振周波数fo2とでは、共振周波数fo1のほうが若干高い周波数となっている。図7においてスイッチング周波数fsを示す横軸に対しては、共振周波数fo1,fo2を対応させて示しているが、この場合は上記の共振周波数fo1,fo2の関係に対応させて、共振周波数fo1のほうが共振周波数fo2よりも高くなるものとして示している。
ここで、絶縁コンバータトランスPITの結合度について、総合結合係数kt=1となる密結合とされる状態を設定したとする。すると、この場合の一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1、及び二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2は、それぞれ、0であることになる。
このようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側とが密結合とされる状態での定電圧制御特性としては、図7の特性曲線1として示すように、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側並列共振回路の共振周波数fo2とは異なる周波数f1、f2において二次側直流出力電圧Eoがピークとなる、いわゆる双峰特性となる。
ここで、周波数f1は、
Figure 2006262680
で表され、
周波数f2は、
Figure 2006262680
で表される。
また、上記(数1)(数2)における項の1つであるfoは、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と、二次側並列共振回路の共振周波数fo2との中間に存在する中間共振周波数であり、1次側のインピーダンスと2次側のインピーダンスと、一次側と二次側とで共通となるインピーダンス(相互結合インダクタンスM)により決定される周波数である。
なお、相互結合インダクタンスMについては、
Figure 2006262680
により表される。
また、上記した総合結合係数ktについて、kt=1の状態から徐々に小さくしていったとする、つまり、密結合の状態から徐々に疎結合の度合いを高くしていったとすると、図7に示される特性曲線1は、双峰の傾向が徐々に希薄となって、中間共振周波数fo近傍で平坦化していくような変化を示す。そして、ある総合結合係数ktにまで低下した段階で、いわゆる臨界結合の状態となる。この臨界結合の状態では、特性曲線2として示すようにして、双峰特性としての傾向ではなくなっており、中間共振周波数foを中心として曲線形状が平坦となる特性となる。
そして、さらに、上記臨界結合の状態から総合結合係数ktを小さくしていって、疎結合の状態を強めていったとすると、図7の特性曲線3として示すように、中間周波数foにおいてのみピークとなる単峰特性が得られる。また、この特性曲線3と、特性曲線1,2とを比較してみると、特性曲線3は、ピークレベルそのものは特性曲線1,2より低下するものの、その二次関数的な曲線形状として、より急峻な傾斜を有していることが分かる。
本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITは、総合結合係数kt≒0.6以下とされる疎結合の状態が設定されている。この総合結合係数ktの設定では、上記特性曲線3として示される単峰特性による動作となる。
上記図7に示す単峰特性と、先に図16に示した従来の電源回路(図12)の定電圧制御特性とを実際に比較してみると、図16に示した特性は図7の特性に対して、二次関数的には相当に緩やかな傾斜となる。
上記のようにして図16に示す特性が曲線的に緩やかであることから、二次側直流出力電圧Eoについて定電圧制御を行うためのスイッチング周波数の必要制御範囲は、例えば交流入力電圧VAC=100Vの入力による単レンジ対応の条件下であっても、fs=117.6kHz〜208.3kHzで、Δfs=96.7kHzとなる。このため、スイッチング周波数制御による定電圧制御のみによって、ワイドレンジ対応とすることが非常に困難であることは、先に説明したとおりである。
これに対し、本実施の形態の定電圧制御特性としては、上記図7の特性曲線3により示される単峰特性であることで、定電圧制御動作としては、例えば次の図8に示すものとなる。
図8においては、図1に示す本実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧VAC=100V時(AC100V系)における最大負荷電力Pomax時、最小負荷電力Pomin時の各特性曲線A,Bと、交流入力電圧VAC=230V時(AC200V系)における最大負荷電力Pomax時、最小負荷電力Pomin時の各特性曲線C,Dとの、4つの特性曲線が示されている。
この図8から分かるように、先ず、AC100V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=100V時において、二次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs1で示されることになる。つまり、特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsから、特性曲線Bにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
また、AC200V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=230V時において、二次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs2で示される。つまり、特性曲線Cにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsから、特性曲線Dにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
前述したように、本実施の形態における二次側直流出力電圧Eoの制御特性である単峰特性は、先に図16に示した制御特性と比較して、二次関数曲線的に相当に急峻である。
このために、上記した交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時の各必要制御範囲となるΔfs1、Δfs2は、図16に示されるΔfsと比較して相当に縮小されたものとなる。
また、これにより、Δfs1における最低スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)から、Δfs2における最高スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)までの周波数可変範囲(ΔfsA)としても、相応に狭いものとなる。
確認のために、図1の電源回路において測定されたΔfs1、Δfs2、ΔfsAの実際は、それぞれ、
Δfs1=53.7kHz(=137.0kHz−83.3kHz)
Δfs2=43.5kHz(=153kHz−126kHz)
ΔfsA≒70 kHz(=153kHz−83.3kHz)
となる。
そして、上記周波数可変範囲ΔfsAとしては、現状におけるスイッチング駆動用IC(発振・ドライブ回路2)が対応するスイッチング周波数の可変範囲内に充分に収まるものとなっている。つまり、図1に示す電源回路では、スイッチング周波数について、現実に、周波数可変範囲ΔfsAで可変制御することが可能とされている。
このようにして、図1に示す本実施の形態の電源回路は、AC100V系とAC200V系の何れの商用交流電源入力にも対応して、適正にメイン直流電源である二次側直流出力電圧Eoを安定化可能とされている。つまり、スイッチング周波数制御のみによって、ワイドレンジ対応を可能としている。
ちなみに、電磁結合による結合形共振回路は、例えば中間周波トランス増幅器などのようにして、通信技術において、トランジスタによる増幅回路の増幅帯域幅を拡大するための手法として既に知られてはいる。しかしながら、このような分野では、密結合での双峰特性、或いは臨界結合での平担特性を用いているものであり、疎結合での単峰特性は用いられてはいない。本実施の形態では、このような電磁結合による結合形共振回路の技術において、通信技術の分野では採用されていなかった疎結合での単峰特性を、共振形スイッチングコンバータの分野において積極的に用いている、ということがいえる。これにより、上記のようにして二次側直流出力電圧Eoを安定化するために必要なスイッチング周波数の可変範囲(必要制御範囲)を縮小し、スイッチング周波数制御での定電圧制御のみによるワイドレンジ対応を可能としているものである。
このようにして、AC100V系とAC200V系の各商用交流電源入力の条件の下で、定電圧制御のためのスイッチング周波数fsの必要制御範囲(Δfs)が縮小されることによっては、定電圧制御の応答性、制御感度も大幅に改善されることになる。
電子機器においては、負荷電力Poについて、いわゆるスイッチング負荷といわれる、最大と無負荷とで比較的高速にスイッチングする(切り替わる)ようにして変動させるような動作を行うものがある。このようなスイッチング負荷としての動作を行う機器として、例えば、パーソナルコンピュータの周辺機器であるプリンタを挙げることができる。
このようなスイッチング負荷としての動作が行われる機器に対して、例えば図12に示したような必要制御範囲Δfsが比較的広範な電源回路を搭載した場合には、前述もしたように、急峻な負荷電力の変化に追随して相応に多くの変化量によるスイッチング周波数fsの可変制御を行うことになる。このために、高速な定電圧制御の応答性を得ることが困難とされていた。
これに対し本実施の形態では、特に単レンジごとの領域で必要制御範囲Δfsが大幅に縮小されていることから、負荷電力Poの最大と無負荷とでの急峻な変動に対して、高速に応答して二次側直流電圧Eoを安定化することが可能である。つまり、スイッチング負荷に対する定電圧制御の応答性能としては大幅に向上している。
以上のようにして、本実施の形態のスイッチング電源回路では、一次側並列共振回路に対し二次側並列共振回路と二次側直列共振回路とを組み合わせた電圧共振形コンバータとして、絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数ktについて疎結合とみなされる所定の値にまで低下させたことで、スイッチング周波数の可変制御のみによるワイドレンジ対応化を図ることができる。
また、上述したようにして二次側直列共振回路が組み合わされた構成とされたことで、先の図6に示した軽負荷の条件となるに従って上昇する特性によって従来よりも電力変換効率の向上が図れる。そして、この際、総合結合係数ktが上記のように所定以下に設定されていることで、二次側直列共振回路を組み合わせた場合での異常動作の防止が図られて、これを実用可能なものとして実現することができる。
さらには、一次側並列共振回路、二次側並列共振回路、二次側直列共振回路の各共振周波数fo1、fo2、fo3の設定によって、電力変換効率のさらなる向上が図られている。
また、本実施の形態では、上記のようにして総合結合係数ktが疎結合とされる所定の値にまで低下されたことに伴って、特に最大交流入力電圧側でのオン期間TONの割合が低下してスイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの上昇が抑えられ、これによってスイッチング素子Q1の耐圧レベルの低下が図られる。このとき、総合結合係数ktとして上述したkt=0.57までに低下させることで、ピークレベルV1−pの最大値が820V程度に抑制され、これによってスイッチング素子Q1としては900Vの耐圧品を選定することができる。
そして、このようなワイドレンジ対応化、高効率化、及びスイッチング電圧V1のピークレベルV1−pの抑制効果を実現するための基本構成としては、二次側並列共振回路を備える電圧共振形コンバータ(例えば従来の図12の構成)に対し、少なくとも絶縁コンバータトランスPITを所要以下の総合結合係数ktが得られる構造とし、さらに二次側直列共振回路形成のための二次側直列共振コンデンサC3を追加すればよいものであり、従って、部品点数の増加などによるコストアップ、回路の大型化、重量増加などを伴うことなくこれを実現できるというメリットもある。
また、上記のような比較的低い結合係数の値に低下させるにあたって、本実施の形態では絶縁コンバータトランスPITを先の図2或いは図4に示す構造とすることで、ギャップGの拡大を伴わずにこれを実現することができる。すなわち、これにより従来よりも低い結合係数の設定にあたっては、ギャップGを拡大する必要はないものとでき、渦電流損失による効率低下を有効に防止できる。
続いては、本実施の形態の電源回路の変形例として、二次側整流回路のバリエーションを次の図9〜図11に示す。
図9は、本発明の第1の変形例としての電源回路の構成を示している。
なお、この図9から図11までの各図において、既に図1にて説明した部分と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。特に、一次側の構成については図1の場合と同様となるのでここでの説明は省略する。
この図9に示す電源回路は、二次側整流回路として倍圧全波整流回路を備える。
先ず、この場合としても、二次巻線N2に対しては並列に二次側並列共振コンデンサC2を接続している。
その上で、上記倍圧全波整流回路としては、先ず二次巻線N2について、図示するようにセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに2分割する。二次巻線部N2A,N2Bには、同じ所定巻数(ターン数)が設定される。
また、二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部に対しては、直列に二次側直列共振コンデンサC3Aを接続し、二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部に対しては、直列に二次側直列共振コンデンサC3Bを接続する。これにより、この場合の二次側においては、上記並列共振コンデンサC2の接続による二次側並列共振回路と共に、二次巻線部N2Aのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC3Aのキャパシタンスから成る第1の二次側直列共振回路と、二次巻線部N2Bのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC3Bのキャパシタンスから成る第2の二次側直列共振回路とが形成されることになる。
そして、二次巻線N2における二次巻線N2A側の端部を、上記二次側直列共振コンデンサC3Aの直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。また、二次巻線N2における二次巻線N2B側の端部を、二次側直列共振コンデンサC3Bの直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。
整流ダイオードDo1,Do3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。
また、整流ダイオードDo2,Do4の各アノードの接続点と二次巻線N2のセンタータップについても、二次側アースに接続する。
上記接続形態では、二次巻線部N2A,二次側直列共振コンデンサC3A、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第1の二次側直列共振回路を備える第1の倍圧半波整流回路と、二次巻線部N2B,二次側直列共振コンデンサC3B、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第2の二次側直列共振回路を備える第2の倍圧半波整流回路とが形成されることになる。
第1の倍圧半波整流回路では、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC3A→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行い、二次巻線部N2Aの交番電圧(V2)の電位により二次側直列共振コンデンサC3Aに対する充電を行う。他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→二次側直列共振コンデンサC3A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行うことで、二次側直列共振コンデンサC3Aの両端電圧と二次巻線N2Aの交番電圧の重畳電位により、平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
また、第2の倍圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、上記他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC3B→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次巻線部N2Aの交番電圧(V2で同等)の電位により、二次側直列共振コンデンサC3Bを充電し、上記一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→二次側直列共振コンデンサC3B→整流ダイオードDo3→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次側直列共振コンデンサC3Bの両端電圧と二次巻線N2Bの交番電圧の重畳電位により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
上記した整流動作によれば、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部N2Bの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC3Bの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部N2Aの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC3Aの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベル(V2)の2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られている。
なお、ここでは説明の便宜上、二次側並列共振コンデンサC2がないものとして整流電流経路を説明したが、実際の整流動作としては、二次側並列共振コンデンサC2を設けたことによる並列共振回路としての動作の影響を受けて行われる。このように実際に行われる整流動作によっても、生成される二次側直流出力電圧Eoとしては上記二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルが得られる。また、この場合としても各半周期に対応してそれぞれ平滑コンデンサCoに対する充電が行われるので、整流動作としては、倍圧全波整流動作が得られることに変わりはない。
ここで、上記のようにして二次側整流回路について倍圧全波整流回路を備える図9の電源回路としても、絶縁コンバータトランスPITについては総合結合係数ktとしてkt≒0.6が設定され、一次側並列共振周波数fo1、二次側並列共振周波数fo2、二次側直列共振周波数fo3について、この場合としてもfo1≒fo2>fo3の関係が得られるようにして各共振周波数の設定を行っている。
これによってこの第1の変形例としての電源回路としても、スイッチング周波数制御のみによるワイドレンジ対応化が実現され、またスイッチング負荷に対する定電圧制御動作の応答性の向上が図られる。また、二次側直列共回路を組み合わせたことによる異常発振も防止され、AC→DC電力変換効率としても図1の場合と同様に向上が図られる。
さらには、図1の場合と同様に総合結合係数ktが所定値にまで低下されたことでピークレベルV1−pの最大値も同様に抑制される。
図10は、第2の変形例としての電源回路の構成を示している。
第2の変形例では、二次側の整流平滑回路として4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路を備えたブリッジ全波整流回路を備えるものである。
この場合も、先ずは二次巻線N2に対して並列に並列共振コンデンサC2を接続している。また、二次巻線N2に対して直列に二次側直列共振コンデンサC3を接続している。
そして、上記ブリッジ整流回路としては、整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点が正極入力端子となり、整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードの接続点が正極出力端子となり、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点が負極入力端子となり、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点が負極出力端子となるようにして形成される。
上記ブリッジ整流回路の正極入力端子は、二次側直列共振コンデンサC3を介して二次巻線N2の巻き終わり端部と接続され、正極出力端子は平滑コンデンサCoの正極端子に接続される。負極入力端子は二次巻線N2の巻始め端部と接続され、負極出力端子は二次側アースと接続される。平滑コンデンサCoの負極端子も二次側アースに対して接続される。
このようにして形成される二次側整流回路では、二次巻線N2の交番電圧V2の一方の極性の半周期に対応しては、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo4が導通して整流を行って、整流電流ID1により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。また、もう一方の半周期に対応しては、整流ダイオードDo2、整流ダイオードDo3が導通して整流を行い、整流電流ID2により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2の誘起電圧(V2)の等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを生成する。
このような回路構成を採る図10の電源回路としても、絶縁コンバータトランスPITについては総合結合係数ktとしてkt≒0.6が設定され、一次側並列共振周波数fo1、二次側並列共振周波数fo2、二次側直列共振周波数fo3について、この場合としてもfo1≒fo2>fo3の関係が得られるようにして各共振周波数の設定を行っている。
これによって図10に示す第2の変形例の電源回路としても、スイッチング周波数制御のみによるワイドレンジ対応化が実現され、またスイッチング負荷に対する定電圧制御動作の応答性の向上が図られる。また、二次側直列共回路を組み合わせたことによる異常発振も防止され、AC→DC電力変換効率としても図1の場合と同様に向上が図られる。
さらには、図1の場合と同様に総合結合係数ktが所定値にまで低下されたことでピークレベルV1−pの最大値も同様に抑制される。
図11は第3の変形例としての電源回路の構成を示している。
第3の変形例は、二次側の整流回路を4倍圧整流回路としたものである。
先ずこの場合としても、二次巻線N2に対しては並列に並列共振コンデンサC2を接続している。
そして、4倍圧整流回路としては、図示するようにして整流ダイオードDo1〜Do4による4つの整流ダイオードと、二次側直列共振コンデンサC3A、二次側直列共振コンデンサC3B、平滑コンデンサCo1、Co2とを備えて形成される。
この場合、二次巻線N2の一方の端部(巻き終わり端部)に対しては、図示するように二次側直列共振コンデンサC3A→整流ダイオードDo1(アノード→カソード)の直列接続を介し、平滑コンデンサCo1の正極端子が接続される。そして、この平滑コンデンサCo1の負極端子は、二次巻線N2の他方の端部(巻き終わり端部)に対して接続される。
また、これら平滑コンデンサCo1の負極端子と二次巻線N2の他方端部の接続点に対しては、平滑コンデンサCo2の正極端子が接続され、この平滑コンデンサCo2の負極端子が二次側アースに接続されている。
さらに、二次巻線N2の上記した一方の端部と二次側アースとの間には、二次側直列共振コンデンサC3B→整流ダイオードDo4(カソード→アノード)の直列接続回路を挿入している。
これら二次側直列共振コンデンサC3Bと整流ダイオードDo4との接続点に対しては、図示するようにして整流ダイオードDo3のアノードが接続される。そして、この整流ダイオードDo3のカソードは、上記した平滑コンデンサCo1・Co2の接続点と、二次巻線N2の上記した他方の端部との接続点に対して接続される。
さらに、この整流ダイオードDo3のカソードと二次巻線N2の他方の端部の接続点に対しては、整流ダイオードDo2のアノードが接続される。そして、整流ダイオードDo2のカソードは、上記した二次側直列共振コンデンサC3Aと整流ダイオードDo1の接続点に対して接続されている。
上記構成による4倍圧整流回路において、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期では、整流電流は[二次巻線N2→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC3A→二次巻線N2]の循環経路によって流れる。また、同様に上記交番電圧の他方の半周期においても、整流電流は循環経路によって[二次巻線N2→二次側直列共振コンデンサC3B→整流ダイオードDo3→二次巻線N2]を流れる。
つまり、この場合としても、二次側直列共振コンデンサC3A、C3Bの両端には、それぞれ対応する半周期に、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの直流電圧が得られることになる。
そして、この場合としても、各半周期において、整流電流は上記循環経路から分岐してそれぞれ以下のような経路によっても流れる。
先ず、交番電圧の上記した一方の半周期では、整流電流は分岐して[平滑コンデンサCo2→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC3B→二次巻線N2]の経路によっても流れる。このとき、先の循環経路により、この期間には上記二次側直列共振コンデンサC3Bが充電された状態にある。このため、上記のような整流電流経路によっては、上記平滑コンデンサCo2に対し、二次巻線N2に得られる交番電圧とこの二次側直列共振コンデンサC3Bの両端電圧の重畳分による電圧レベルにより充電が行われることになる。
つまり、これによって平滑コンデンサCo2には、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる直流電圧が生成されることになる。
また、上記交番電圧の他方の半周期では、整流電流は分岐して[二次側直列共振コンデンサC3A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo1→二次巻線N2]の経路によっても流れ、この場合は先の循環経路によって二次側直列共振コンデンサC3Aに得られた両端電圧の重畳分を受けた二次巻線N2の交番電圧の電圧レベルにより、平滑コンデンサCo1に対する充電が行われることになる。
すなわち、これによって平滑コンデンサCo1としても、その両端電圧としては二次巻線N2に得られる交番電圧レベルの2倍に対応したレベルが得られる。
このようにして、平滑コンデンサCo1と平滑コンデンサCo2の各両端には、それぞれ二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる直流電圧が生成される。そして、これによって平滑コンデンサCo1と平滑コンデンサCo2との直列接続の両端には、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの4倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。
なお、この場合としても説明の便宜上、二次側並列共振コンデンサC2がないものとして整流電流経路を説明したが、実際の整流動作としては、この場合も二次側並列共振コンデンサC2を設けたことによる並列共振回路としての動作の影響を受けて行われる。このように実際に行われる整流動作によっても、生成される二次側直流出力電圧Eoとしては上記二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの4倍に対応したレベルが得られるので、整流動作としては4倍圧整流動作が得られることに変わりはない。
上記回路構成を採る図11の電源回路としても、絶縁コンバータトランスPITについては総合結合係数ktとしてkt≒0.6が設定され、一次側並列共振周波数fo1、二次側並列共振周波数fo2、二次側直列共振周波数fo3について、この場合としてもfo1≒fo2>fo3の関係が得られるようにして各共振周波数の設定を行っている。
これによって図11の第3の変形例としての電源回路としても、スイッチング周波数制御のみによるワイドレンジ対応化が実現され、またスイッチング負荷に対する定電圧制御動作の応答性の向上が図られる。また、二次側直列共回路を組み合わせたことによる異常発振も防止され、AC→DC電力変換効率としても図1の場合と同様に向上が図られる。
さらには、図1の場合と同様に総合結合係数ktが所定値にまで低下されたことでピークレベルV1−pの最大値も同様に抑制される。
なお、二次側の整流平滑回路のバリエーションとしては、上記した図9〜図11以外の構成とすることも可能である。
但し、本実施の形態では、二次側に対して直列共振回路を組み合わせたものであり、従って直列共振動作が得られるように、二次巻線N2全体で各半周期に二次巻線電流が流される必要がある。このことから、半周期にしか二次巻線電流が流されない半波整流回路、及び両波整流回路は除外となる。
なお、本発明としては上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側電圧共振形コンバータの細部の回路形態などは他にも考えられる。また、スイッチング素子については、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。 実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。 図2に示す構造による絶縁コンバータトランスにおいて形成される磁路について説明するための図である。 実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例とその磁路について示す図である。 実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。 実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン/オフ期間、スイッチング電圧のピークレベルの変動特性を示す図である。 実施の形態の電源回路についての定電圧制御特性を示す図である。 実施の形態の電源回路の定電圧制御動作として、交流入力電圧条件及び負荷変動に応じたスイッチング周波数制御範囲(必要制御範囲)を示す図である。 第1の変形例としての電源回路の構成例を示す回路図である。 第2の変形例としての電源回路の構成例を示す回路図である。 第3の変形例としての電源回路の構成例を示す回路図である。 従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。 図12に示した電源回路が備える絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。 図12に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。 図12に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン/オフ期間の変動特性を示す図である。 従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
符号の説明
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、CR1,CR2,CR3,CR4 E型コア、FSC1,FSC2 フェライトシートコア、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2 二次巻線、C2 二次側並列共振コンデンサ、C3,C3A,C3B 二次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、N2A,N2B 二次巻線部

Claims (3)

  1. 直流入力電圧を入力してスイッチングを行うスイッチング素子を備えて形成したスイッチング手段と、
    上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
    少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスと、
    少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と一次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成されて、上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とする一次側並列共振回路と、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して並列となる関係により二次側並列共振コンデンサを接続することで、上記二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と、上記二次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側並列共振回路と、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して直列となる関係により二次側直列共振コンデンサを接続することで、上記二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と、上記二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側直列共振回路と、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧に基づき整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段と、
    上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記二次側直流出力電圧について定電圧制御を行う定電圧制御手段とを備え、
    上記絶縁コンバータトランスは、一次側と二次側との結合係数が、
    少なくとも上記一次側並列共振回路と上記二次側並列共振回路とを有して形成される電磁結合形共振回路について、上記スイッチング周波数を有する周波数信号の入力に対する出力特性として単峰特性が得られ、且つ所定レベル以上の交流入力電圧入力時における上記スイッチング素子のオン期間の割合が所定以下となるようにして、疎結合とみなされる所定の値に設定され、
    さらに、少なくとも所定の負荷条件の下で一定以上の電力変換効率が得られるようにして、上記一次側並列共振回路の共振周波数と上記二次側並列共振回路の共振周波数と上記二次側直列共振回路の共振周波数とが設定されている、
    ことを特徴とするスイッチング電源回路。
  2. 上記絶縁コンバータトランスは、
    EE型コアの中央磁脚に対して上記一次巻線と上記二次巻線とが巻装された上で、上記中央磁脚に対してギャップが形成されると共に、上記EE型コアの外磁脚の所定位置において上記中央磁脚側に突出するようにしてフェライトシートコアが設けられている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  3. 上記絶縁コンバータトランスは、
    EE型コアの一方の外磁脚に上記一次巻線が巻装され、他方の外磁脚に上記二次巻線が巻装されており、上記EE型コアの中央磁脚に対してギャップが形成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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