JP2006137902A - 窒化物蛍光体、窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】600nm以上、特に620〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い窒化物蛍光体、窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有し、かつ、600〜650nmの範囲にピーク発光波長を有している。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係る窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有し、かつ、600〜650nmの範囲にピーク発光波長を有している。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
【選択図】なし
Description
本発明は、600〜650nm以上の長波長域に発光ピークを有し、かつ発光強度の高い窒化物蛍光体、窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子に関する。
現在、紫外線〜青色の光を吸収して、比較的長波長の黄色〜橙色の蛍光色を示す窒化物系の蛍光体は、白色発光素子に適した蛍光体として注目されている。白色発光素子は、GaN系などの青色系の半導体発光素子(青色LED)の発光の一部をフォトルミネセンス蛍光体により波長変換し、青色LEDの光と波長変換された光(主として黄色系の光)との混色により、LEDの光と異なる発光色、特に白色系の光を発する発光素子である。このような発光素子は、小型で電力効率が高いため、信号灯、車載照明や液晶のバックライト、駅の行き先案内板等の表示板等、各種の光源として利用されている。
青色LEDと組み合わせて白色発光素子に用いられるフォトルミネセンス蛍光体としては、現在、セリウム(Ce)で付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下「YAG系蛍光体」と言う。)が主流とされているが、このYAG系蛍光体に代わる白色発光素子用フォトルミネセンス蛍光体として黄色〜橙色に発光する窒化物蛍光体も期待されている。
一方、YAG系蛍光体が放射する光は、黄緑色〜黄色であり、YAG系蛍光体をフォトルミネセンス蛍光体として使用した場合、白色発光素子の発光色がやや青白い白色になるため、簡単な照明には良いが、高い演色性が要求される照明用途や、カラー液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして使用する場合には、出力光が赤色成分不足となる。このため、600nm以上、特に620nm以上の発光ピーク波長を有する赤色発光蛍光体を用いて赤色成分を補い、発光色を補正することが要望されている。
そこで、YAG系蛍光体にさらに前記窒化物系の蛍光体を併用することが提案されている。このような窒化物系赤色蛍光体としては、カルシウム(Ca)−α−サイアロン系の蛍光体(特許文献1〜3参照)が知られている。
特開2002−363554号公報
特開2003−124527号公報
特開2003−203504号公報
青色LEDと組み合わせて白色発光素子に用いられるフォトルミネセンス蛍光体としては、現在、セリウム(Ce)で付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下「YAG系蛍光体」と言う。)が主流とされているが、このYAG系蛍光体に代わる白色発光素子用フォトルミネセンス蛍光体として黄色〜橙色に発光する窒化物蛍光体も期待されている。
一方、YAG系蛍光体が放射する光は、黄緑色〜黄色であり、YAG系蛍光体をフォトルミネセンス蛍光体として使用した場合、白色発光素子の発光色がやや青白い白色になるため、簡単な照明には良いが、高い演色性が要求される照明用途や、カラー液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして使用する場合には、出力光が赤色成分不足となる。このため、600nm以上、特に620nm以上の発光ピーク波長を有する赤色発光蛍光体を用いて赤色成分を補い、発光色を補正することが要望されている。
そこで、YAG系蛍光体にさらに前記窒化物系の蛍光体を併用することが提案されている。このような窒化物系赤色蛍光体としては、カルシウム(Ca)−α−サイアロン系の蛍光体(特許文献1〜3参照)が知られている。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のCa−α−サイアロン系の蛍光体は、発光ピーク波長は殆どが500〜600nmであり、発光ピーク波長が600nmより長波長である実用的な窒化物蛍光体は殆どない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、600nm以上、特に620〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い窒化物蛍光体、窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子を提供することを目的としている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、600nm以上、特に620〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い窒化物蛍光体、窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、600〜650nmの範囲に発光ピーク波長を有し、発光強度の高い新規な窒化物蛍光体を見いだした。
すなわち、請求項1に記載の発明の窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有することを特徴とする。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
すなわち、請求項1に記載の発明の窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有することを特徴とする。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の窒化物蛍光体において、
主結晶相が、α−サイアロン構造又はα−サイアロン構造と斜方晶系の結晶構造の混合相であることを特徴とする。
主結晶相が、α−サイアロン構造又はα−サイアロン構造と斜方晶系の結晶構造の混合相であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体を製造する方法であって、
窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物と、窒化珪素とを、溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させて窒化物前駆体を形成し、該窒化物前駆体を、不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより窒化物蛍光体を生成することを特徴とする。
窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物と、窒化珪素とを、溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させて窒化物前駆体を形成し、該窒化物前駆体を、不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより窒化物蛍光体を生成することを特徴とする。
請求項4に記載の発明の白色発光素子は、青色光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光の一部を吸収して緑色〜黄色の波長領域の蛍光を発光する蛍光体と、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の白色発光素子は、紫外線〜青紫色の領域の光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光を吸収して青色の蛍光を発光する蛍光体、もしくは緑色の蛍光を発光する蛍光体の少なくとも一方と、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする。
本発明に係る窒化物蛍光体は、特に従来あまり実用的なものがなかった600〜650nmの長波長域に発光ピーク波長を有し、かつ、高い発光強度を示すものである。また、紫外線域から黄緑色光域までの広い波長領域の光、及び電子線や電場によっても励起されて発光する。したがって、通常の照明、各種の表示管や、白色LED等に使用する蛍光体として有用である。特に、発光ピーク波長が620〜650nmのものはYAGと組み合わせて用いることにより、白色LEDの赤色補正用に適している。
また、母体材料がα−サイアロン又はα−サイアロンと斜方晶の混合相であるので、化学的、機械的及び熱的特性に優れ、蛍光体材料としても安定で長寿命を期待することができる。その結果、白色LEDの樹脂封着工程時の赤色蛍光体の熱劣化を防ぐことが可能である。
さらに、本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法によれば、各原料を溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させることにより、均一組成の窒化物前駆体を形成することができる。そして、このような窒化物前駆体を不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより、優れた特性で、粒子径の揃った結晶性の良好な窒化物蛍光体を得ることができる。さらに、原料の窒化、結晶成長を同一反応容器中で行うことができるため、簡単なプロセスで効率良く製造することができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる。
また、母体材料がα−サイアロン又はα−サイアロンと斜方晶の混合相であるので、化学的、機械的及び熱的特性に優れ、蛍光体材料としても安定で長寿命を期待することができる。その結果、白色LEDの樹脂封着工程時の赤色蛍光体の熱劣化を防ぐことが可能である。
さらに、本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法によれば、各原料を溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させることにより、均一組成の窒化物前駆体を形成することができる。そして、このような窒化物前駆体を不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより、優れた特性で、粒子径の揃った結晶性の良好な窒化物蛍光体を得ることができる。さらに、原料の窒化、結晶成長を同一反応容器中で行うことができるため、簡単なプロセスで効率良く製造することができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる。
以下、本発明に係る窒化物蛍光体、用途としての白色発光素子や窒化物蛍光体の製造方法について詳細に説明する。
(窒化物蛍光体)
本発明に係る窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有している。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
(窒化物蛍光体)
本発明に係る窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有している。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。
本発明は、従来のCa−α−サイアロンにおいて、Caの少なくとも一部をSrで置換したものである。
本発明では、Caに対するSrの置換量を増加させることによって発光ピーク波長が長波長域にシフトするので好ましい。
一方、Srを含まないCa−α−サイアロンは、600nmより短波長の発光ピーク波長を有するため本発明の範囲外とする。
このようにして従来のα−サイアロンの組成比、特にCaとSrの添加量をコントロールすることにより600〜650nmの発光ピーク波長を有する窒化物蛍光体とすることができる。特にSrのCaに対する置換量を表すy/(x+y)の値が0.3より大、ことに0.4以上では、発光波長が620nm以上となるため好ましい。
本発明では、Caに対するSrの置換量を増加させることによって発光ピーク波長が長波長域にシフトするので好ましい。
一方、Srを含まないCa−α−サイアロンは、600nmより短波長の発光ピーク波長を有するため本発明の範囲外とする。
このようにして従来のα−サイアロンの組成比、特にCaとSrの添加量をコントロールすることにより600〜650nmの発光ピーク波長を有する窒化物蛍光体とすることができる。特にSrのCaに対する置換量を表すy/(x+y)の値が0.3より大、ことに0.4以上では、発光波長が620nm以上となるため好ましい。
さらに、本発明ではAlは構造を安定化させると考えられるが、Alの添加量が多くなると逆に発光強度が低下する。特に後述する実施例の結果よりm=3.0では発光強度が低くなるのでm<3とする必要がある。
また、この窒化物蛍光体は、Srと(Ca+Sr)の割合であるy/(x+y)によって結晶構造が変化し、Srの添加量が少ない場合には主結晶相がα−サイアロン結晶構造となり、Srの添加量が増加するにつれて斜方晶系の割合が増えて、α−サイアロン結晶構造と斜方晶系の結晶構造とが混在したものとなる。
本発明に係る窒化物蛍光体は、その主結晶相が斜方晶系の割合の多いものほど、発光波長が長く、強度も大きい傾向があり、したがって主結晶相がα−サイアロン結晶構造と斜方晶系の結晶構造とが混在したものが好ましい。
本発明に係る窒化物蛍光体は、その主結晶相が斜方晶系の割合の多いものほど、発光波長が長く、強度も大きい傾向があり、したがって主結晶相がα−サイアロン結晶構造と斜方晶系の結晶構造とが混在したものが好ましい。
本発明の窒化物蛍光体には、発光強度や残光性、その他の蛍光特性を調整するために、希土類金属元素等の共付活剤として作用する元素、例えばセリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、サマリウム(Sm)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、マンガン(Mn)などを適宜ドープしても良い。
本発明に係る窒化物蛍光体は、紫外線〜黄緑色光領域の光、電子線、電場による励起により600nm以上、特に従来殆どなかった620nm〜650nmの範囲に発光ピーク波長を有する蛍光を発光する新規な長波長赤色発光蛍光体である。
このような窒化物蛍光体の用途としては、長波長赤色蛍光体として、ランプ等の照明用蛍光体として使用したり、冷陰極管、CRT、PDP、FED、無機EL等の表示管用赤色蛍光体として使用することができる。
また、紫外線、及び紫色〜黄緑色の波長領域の可視光で励起され、これらの光をより長波長の光に変換することが可能なため、白色発光素子の作成に非常に有効である。
具体的には、青色LEDに、このLEDからの青色光の一部を吸収し、波長変換して緑色〜黄色に発光する第1の蛍光体と、第2の蛍光体として本発明の窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、色バランスの優れた白色発光素子を得ることができる。
例えば、発光ピーク波長が400nm〜460nmであるGaN系やInGaN系などの青色LEDと、青色光により励起されて黄緑〜黄色に発光するYAG系蛍光体とを備えた白色発光素子に、発光色の赤色成分補色用として、本発明の窒化物蛍光体を添加することにより、演色性、色感度を向上させることができる。
また、青色LEDと、その青色光により緑色に発光する第1の蛍光体と、本発明の赤色発光窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、青、緑、赤の光の三原色の混色による白色発光素子を得ることもできる。
また、青色LEDの代わりに、例えばピーク波長が360nm〜400nmの紫外〜青紫色の領域の光を発光する半導体素子(紫外線LED)を用い、その発光を吸収して赤、緑、又は青の蛍光を発するフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせて、これら三原色の混色により白色系の光を発する発光素子も知られているが、本発明の窒化物蛍光体はこのような白色発光素子の赤色成分として用いることもできる。いずれの場合においても、本発明の窒化物蛍光体は、紫外光〜黄緑色光の広い波長領域の光で励起可能であるため、青色LEDからの光だけでなく他の蛍光体が放射する光によっても発光するので、効率が高い。
さらに、紫外線LEDや青色LED、又は青緑〜緑色に発光するLEDに組み合わせる蛍光体として、本発明の窒化物蛍光体を単独で用い、白色光や、紫、赤紫、ピンク、赤など様々な色の光を発する発光素子を得ることもできる。
具体的には、青色LEDに、このLEDからの青色光の一部を吸収し、波長変換して緑色〜黄色に発光する第1の蛍光体と、第2の蛍光体として本発明の窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、色バランスの優れた白色発光素子を得ることができる。
例えば、発光ピーク波長が400nm〜460nmであるGaN系やInGaN系などの青色LEDと、青色光により励起されて黄緑〜黄色に発光するYAG系蛍光体とを備えた白色発光素子に、発光色の赤色成分補色用として、本発明の窒化物蛍光体を添加することにより、演色性、色感度を向上させることができる。
また、青色LEDと、その青色光により緑色に発光する第1の蛍光体と、本発明の赤色発光窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、青、緑、赤の光の三原色の混色による白色発光素子を得ることもできる。
また、青色LEDの代わりに、例えばピーク波長が360nm〜400nmの紫外〜青紫色の領域の光を発光する半導体素子(紫外線LED)を用い、その発光を吸収して赤、緑、又は青の蛍光を発するフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせて、これら三原色の混色により白色系の光を発する発光素子も知られているが、本発明の窒化物蛍光体はこのような白色発光素子の赤色成分として用いることもできる。いずれの場合においても、本発明の窒化物蛍光体は、紫外光〜黄緑色光の広い波長領域の光で励起可能であるため、青色LEDからの光だけでなく他の蛍光体が放射する光によっても発光するので、効率が高い。
さらに、紫外線LEDや青色LED、又は青緑〜緑色に発光するLEDに組み合わせる蛍光体として、本発明の窒化物蛍光体を単独で用い、白色光や、紫、赤紫、ピンク、赤など様々な色の光を発する発光素子を得ることもできる。
(窒化物蛍光体の製造方法)
次に、本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法について説明する。
本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法は、公知の固相反応法、噴霧熱分解法、液相反応法、その他の方法を適用することができるが、以下に示す尿素−前駆体を用いた方法が均一組成で、また、粒子径の揃った結晶性の良好な窒化物を得やすい点で最も好ましい。さらに、この方法は原料の窒化や結晶成長を同一反応容器中で行うことができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる点で好適である。
以下、本発明で好適に用いられる尿素−前駆体を用いた方法の一例について説明する。まず、尿素及び/又は尿素誘導体(以下、「尿素等」と称すこともある)をこれらの融点以上の温度まで加熱して溶融状態にする。ただし、加熱温度が高すぎると別の生成物が生ずる場合があるので、尿素等が溶解し、かつ、後述するCa化合物やSr化合物、Eu化合物、Al化合物、窒化珪素を加えた後も溶融状態を所定時間保持することができる程度の温度とすることが好ましい。例えば、尿素を用いる場合、その融点は132℃であるので、それより若干高めの温度まで加熱すれば十分である。
次に、本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法について説明する。
本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法は、公知の固相反応法、噴霧熱分解法、液相反応法、その他の方法を適用することができるが、以下に示す尿素−前駆体を用いた方法が均一組成で、また、粒子径の揃った結晶性の良好な窒化物を得やすい点で最も好ましい。さらに、この方法は原料の窒化や結晶成長を同一反応容器中で行うことができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる点で好適である。
以下、本発明で好適に用いられる尿素−前駆体を用いた方法の一例について説明する。まず、尿素及び/又は尿素誘導体(以下、「尿素等」と称すこともある)をこれらの融点以上の温度まで加熱して溶融状態にする。ただし、加熱温度が高すぎると別の生成物が生ずる場合があるので、尿素等が溶解し、かつ、後述するCa化合物やSr化合物、Eu化合物、Al化合物、窒化珪素を加えた後も溶融状態を所定時間保持することができる程度の温度とすることが好ましい。例えば、尿素を用いる場合、その融点は132℃であるので、それより若干高めの温度まで加熱すれば十分である。
尿素誘導体としては、尿素中の窒素原子への各種有機基の置換体としての尿素化合物、あるいはカーバメイト化合物、尿素錯化合物、尿素付加体化合物等の各種のものを使用することができる。尿素等としては、入手のしやすさや取り扱いの容易さ等の点から尿素が好適なものとして用いられる。
次に、最終生成物の構成成分となる、Ca化合物、Sr化合物、Eu化合物、Al化合物を溶融した尿素等に溶解し、さらに窒化珪素を分散させて窒化物前駆体を形成する。なお、Ca化合物は生成する窒化物蛍光体に応じて加えれば良く、必ずしも必須ではない。また、共付活剤をドープする場合は、共付活剤として作用する金属元素の化合物を、所定量添加、溶解する。
窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物、すなわちCa化合物、Sr化合物、Eu化合物、Al化合物、共付活剤元素の化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化物、硝酸塩など溶融尿素等に溶解するものを用いると生成物がより均一になるので好ましい。窒化物中に酸素を導入する場合は、酸化アルミニウムや酸化珪素などの酸化物も使用することができる。また、窒化珪素としては、結晶質のものでも非晶質のものでも、適宜用いることができる。例えば、反応性の点では非晶質の窒化珪素の方が好ましいと考えられるが、入手が容易であること、取り扱いがし易いこと、及び収率の点からは結晶質の窒化珪素が有利である。
このようにして得られた窒化物前駆体を、例えば放冷し乾燥させて固体状にする。この固体状のものを、必要に応じて機械的に粉砕し、加熱炉を用いて加熱し、窒化物を生成する。加熱炉としては、バッチ炉、ベルト炉、管状炉、ロータリーキルン等、公知のものを使用することができる。
ただし、加熱は不活性雰囲気又は還元性雰囲気のもとで行う必要がある。
また、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気中、一段の加熱(焼成)で目的の生成物を形成しても良いし、複数段に分けて加熱(焼成)することにより目的とする窒化物を得ても良い。加熱温度、加熱時間等の諸条件は目的とする生成物の種類及び要求されている特性に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、1段加熱の場合には、1200〜1700℃の範囲内の温度で0.5〜24時間の範囲から条件を設定すれば良い。また、2段加熱の場合には、第2段目の加熱温度を第1段目の加熱温度よりも高く設定することが望ましく、例えば、第1段目の加熱を、約200〜900℃の範囲内の温度で0.5〜6時間行い、第2段目の加熱を、約1200〜1700℃の範囲内の温度で約0.5〜24時間行うことが望ましい。複数段の加熱は、より均一な組成の生成物を再現性良く得ることができる点で有利である。
ただし、加熱は不活性雰囲気又は還元性雰囲気のもとで行う必要がある。
また、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気中、一段の加熱(焼成)で目的の生成物を形成しても良いし、複数段に分けて加熱(焼成)することにより目的とする窒化物を得ても良い。加熱温度、加熱時間等の諸条件は目的とする生成物の種類及び要求されている特性に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、1段加熱の場合には、1200〜1700℃の範囲内の温度で0.5〜24時間の範囲から条件を設定すれば良い。また、2段加熱の場合には、第2段目の加熱温度を第1段目の加熱温度よりも高く設定することが望ましく、例えば、第1段目の加熱を、約200〜900℃の範囲内の温度で0.5〜6時間行い、第2段目の加熱を、約1200〜1700℃の範囲内の温度で約0.5〜24時間行うことが望ましい。複数段の加熱は、より均一な組成の生成物を再現性良く得ることができる点で有利である。
また、その他の加熱手段として、機械的に粉砕した前駆体粉末を、望ましくは粒度調整した後、気相中に分散させた状態で加熱することにより、微細かつ粒子径の揃った結晶性の高い窒化物粉末を得ることができる。
さらに、他の加熱手段として、噴霧熱分解法を利用しても良い。この噴霧熱分解法は、液体状の前駆体を超音波式、二流体ノズル方式等の噴霧器や他の霧化手段を用いて、微細な液滴とし、これを不活性雰囲気又は還元性雰囲気条件下で加熱し、前駆体を分解、反応させて、微細かつ粒径の揃った窒化物粉末を得ることができる。
また、上述の製造例においては、溶融状態にした尿素等に各化合物等を溶解又は分散させる方法を述べたが、予め尿素等と化合物等とを混合してから加熱して尿素等を溶融しても構わない。
また、上述の製造例においては、溶融状態にした尿素等に各化合物等を溶解又は分散させる方法を述べたが、予め尿素等と化合物等とを混合してから加熱して尿素等を溶融しても構わない。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
下記の方法にしたがって、試料1〜14を作製した後、各試料1〜14について以下に示す測定を行い評価した。
[試料1の作製]
尿素を134℃で溶融し、溶融尿素を得た。この溶融尿素30g中に、EuCl3・6H2O0.235g、AlCl3・6H2O3.098g及びCaCl20.512gを添加し、溶解させた。更に、Si3N4粉末3g(宇部興産製SN−E10)を添加、攪拌し、均一に分散させた。これを攪拌しながら空冷して、元素のモル比がCa:Eu:Si:Al=0.9:0.1:10:2の固体の窒化物前駆体を生成した。得られた前駆体を、カーボン容器に入れ、4%のH2を含むN2雰囲気中600℃で1時間、焼成を行った後粉砕した。これをMo容器に入れ、4%のH2を含むN2雰囲気中1200℃で6時間保持し、引き続き1550℃で6時間保持しトータル24時間加熱を行い、窒化物蛍光体を作製した。
下記の方法にしたがって、試料1〜14を作製した後、各試料1〜14について以下に示す測定を行い評価した。
[試料1の作製]
尿素を134℃で溶融し、溶融尿素を得た。この溶融尿素30g中に、EuCl3・6H2O0.235g、AlCl3・6H2O3.098g及びCaCl20.512gを添加し、溶解させた。更に、Si3N4粉末3g(宇部興産製SN−E10)を添加、攪拌し、均一に分散させた。これを攪拌しながら空冷して、元素のモル比がCa:Eu:Si:Al=0.9:0.1:10:2の固体の窒化物前駆体を生成した。得られた前駆体を、カーボン容器に入れ、4%のH2を含むN2雰囲気中600℃で1時間、焼成を行った後粉砕した。これをMo容器に入れ、4%のH2を含むN2雰囲気中1200℃で6時間保持し、引き続き1550℃で6時間保持しトータル24時間加熱を行い、窒化物蛍光体を作製した。
[試料2〜14の作製]
上記試料1の作製において原料のCa、Sr、Eu、Alのモル比を適宜変えて、試料1と同様の方法で試料2〜14を得た。なお、Sr源としてはSrCl2・6H2Oを用いた。各試料1〜14の化学組成とを表1に示す。
なお、試料1〜7は、上記一般式(1)中、Srと(Ca+Sr)の割合であるy/(x+y)を変化させており、試料8〜10は、試料4の組成でEuの割合であるzを0.03≦z≦0.1の範囲内で変化させている。また、試料11、12は試料1〜10と異なりAlの添加量を変化させてm=3とした場合であり、さらにSrを含有しない。また、試料13、14も同様にAlの添加量を変化させてm=2.8とした場合であり、さらにCaを含有しない。なお、試料1、11及び12は本発明外のものである。
上記試料1の作製において原料のCa、Sr、Eu、Alのモル比を適宜変えて、試料1と同様の方法で試料2〜14を得た。なお、Sr源としてはSrCl2・6H2Oを用いた。各試料1〜14の化学組成とを表1に示す。
なお、試料1〜7は、上記一般式(1)中、Srと(Ca+Sr)の割合であるy/(x+y)を変化させており、試料8〜10は、試料4の組成でEuの割合であるzを0.03≦z≦0.1の範囲内で変化させている。また、試料11、12は試料1〜10と異なりAlの添加量を変化させてm=3とした場合であり、さらにSrを含有しない。また、試料13、14も同様にAlの添加量を変化させてm=2.8とした場合であり、さらにCaを含有しない。なお、試料1、11及び12は本発明外のものである。
《X線回折パターン》
上記得られた蛍光体粉末(試料1〜14)について、(株)リガク製粉末X線回折計を用い、Cu−Kα線をX線源としてX線回折パターンを測定した。図1に代表的なものとして試料2、6のX線回折パターンを示す。図1に示すように、Srが少ないとα−サイアロン構造が主相であるが、Srの比率が増加するにつれて斜方晶系の割合の多い結晶構造となることが確認できる。また、その他の各試料についても同様にX線回折パターンから結晶構造の確認を行い、表1に併せて示した。
上記得られた蛍光体粉末(試料1〜14)について、(株)リガク製粉末X線回折計を用い、Cu−Kα線をX線源としてX線回折パターンを測定した。図1に代表的なものとして試料2、6のX線回折パターンを示す。図1に示すように、Srが少ないとα−サイアロン構造が主相であるが、Srの比率が増加するにつれて斜方晶系の割合の多い結晶構造となることが確認できる。また、その他の各試料についても同様にX線回折パターンから結晶構造の確認を行い、表1に併せて示した。
《蛍光特性》
各試料1〜14について、日本分光(株)製分光蛍光光度計(FP−6600型)を用いて400nmの単色光を励起光源とし、500nmから800nmの範囲で蛍光スペクトルを測定した。各試料1〜14の発光ピーク波長と発光強度についての測定結果(測定値)を表1に示す。表1中の発光強度は、試料1の発光ピーク波長594nmにおける発光強度を100としたときの相対強度である。また、図2に代表的な試料1、2、6の蛍光スペクトルを示す。さらに、これら試料1、2、6についてそれぞれの発光ピーク波長における励起スペクトルを250nmから580nmの範囲で測定した結果を図3に示す。
なお、励起スペクトルの補正にはローダミンBを、蛍光スペクトルの補正にはキセノンランプとタングステンランプを用いた。
各試料1〜14について、日本分光(株)製分光蛍光光度計(FP−6600型)を用いて400nmの単色光を励起光源とし、500nmから800nmの範囲で蛍光スペクトルを測定した。各試料1〜14の発光ピーク波長と発光強度についての測定結果(測定値)を表1に示す。表1中の発光強度は、試料1の発光ピーク波長594nmにおける発光強度を100としたときの相対強度である。また、図2に代表的な試料1、2、6の蛍光スペクトルを示す。さらに、これら試料1、2、6についてそれぞれの発光ピーク波長における励起スペクトルを250nmから580nmの範囲で測定した結果を図3に示す。
なお、励起スペクトルの補正にはローダミンBを、蛍光スペクトルの補正にはキセノンランプとタングステンランプを用いた。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される化学組成を有し、かつ、600〜650nmの範囲にピーク発光波長を有することを特徴とする窒化物蛍光体。
(CaxSryEuz)m/2Si12-(m+n)Alm+nOnN16-n…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、x+y+z=1、0<y/(x+y)≦1、0<z≦0.3、0.6<m<3.0、0≦n≦1.5である。 - 請求項1に記載の窒化物蛍光体において、
主結晶相が、α−サイアロン構造又はα−サイアロン構造と斜方晶系の結晶構造の混合相であることを特徴とする窒化物蛍光体。 - 請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体を製造する方法であって、
窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物と、窒化珪素とを、溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させて窒化物前駆体を形成し、該窒化物前駆体を、不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより窒化物蛍光体を生成することを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。 - 青色光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光の一部を吸収して緑色〜黄色の波長領域の蛍光を発光する蛍光体と、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする白色発光素子。
- 紫外線〜青紫色の領域の光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光を吸収して青色の蛍光を発光する蛍光体、もしくは緑色の蛍光を発光する蛍光体の少なくとも一方と、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする白色発光素子。
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