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JP2006141348A - 標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選抜取得方法および構造モチーフ配列の同定方法並びに分子設計方法 - Google Patents

標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選抜取得方法および構造モチーフ配列の同定方法並びに分子設計方法 Download PDF

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JP2006141348A JP2004339301A JP2004339301A JP2006141348A JP 2006141348 A JP2006141348 A JP 2006141348A JP 2004339301 A JP2004339301 A JP 2004339301A JP 2004339301 A JP2004339301 A JP 2004339301A JP 2006141348 A JP2006141348 A JP 2006141348A
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美和 白鳥
Teruaki Kobayashi
輝章 小林
Toru Sasaki
亨 佐々木
Daichi Naka
大地 仲
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Abstract

【課題】 本発明は、標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選択取得方法、構造モチーフの同定取得方法、並びに標的物質と相互作用する化合物の分子設計方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 標的物質と相互作用するタンパク質またはポリペプチドの解析方法において、無細胞タンパク質ディスプレー法を利用することにより、標的物質との相互作用に必要なドメインポリペプチドをタンパク質から切り出して取得し、得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列を解析することにより、標的物質との相互作用に必要十分なアミノ酸配列からなる構造モチーフを同定し、さらに該構造モチーフと標的物質との複合体の立体構造から結合空間を予測して標的物質に相互作用する医薬化合物を設計する。

Description

本発明は、標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選抜取得方法、および該ドメインポリペプチドのアミノ酸配列を用いた構造モチーフの同定方法、ならびに該構造モチーフを用いた標的物質と相互作用する化合物の分子設計方法等に関する。
生体の構造と機能の最も基本的かつ不可欠な担い手であるタンパク質は、一般的に数十から数百のアミノ酸から成るいくつかのドメインから構成されている。ドメインとはタンパク質の構造と機能をつかさどる最小単位であり、特にヒトや齧歯類などの進化の時間の中で比較的新しいタンパク質は、様々なドメインを有していることが知られている。タンパク質はこれらのドメインを介して他の生体分子と相互作用しており、これにより細胞レベルでは遺伝子の発現制御、細胞骨格の形成、さらには細胞内のシグナル伝達などに深く関与している。またこの相互作用は個体レベルにおいては生命活動の維持に必須であるとともに、一方では疾患を引き起こす原因となっている場合もある。
しかしながらこのドメインを見出す理論的および実験的手法については、蓄積された既存の情報との比較に基づく要素が極めて大きい。例えばタンパク質が有するドメインを推定する方法の一つとして、個別の実験情報を統合したタンパク質のデータベースを対象に、コンピューターを利用したアミノ酸配列の相同性に基づく解析法が知られているにすぎない。この方法ではコンピューターによる相同性解析後、推定したドメインが実際に機能を有しているか否かを実験的に立証する必要があった。このためタンパク質のドメインに相当するアミノ酸配列領域を同定する有効な手法の開発が大きな課題となっていた。
一方、タンパク質の相互作用を解析する技術として、ファージ・ディスプレー法、リボソームディスプレー法、mRNAディスプレー法などが近年に入って実用化されている。これらの技術は解析対象となる物質に対してタンパク質とその遺伝子の複合体を添加し、相互作用する複合体を回収した後、その遺伝子部分の配列を解析することにより、相互作用するタンパク質を同定する方法である。また酵母Two-Hybridシステムは、酵母の細胞内転写システムを利用したタンパク質相互作用の解析方法であり、ハイスループットな解析手段としてよく知られている。さらに解析対象となる物質をアフィニティークロマトグラフィーなどで濃縮した後、マススペクロメトリーにより相互作用するタンパク質を同定する方法も開発されている。しかしながらこれらの方法で得られる情報は、解析対象となる物質に対して相互作用するタンパク質の断片にすぎず、その断片中に相互作用に必要な最小単位であるドメインが存在するか否かは、既存のアミノ酸配列データベースを用いた相同性解析に依存していた。また、例えドメインを含んでいたとしても、上記方法により得られるポリペプチドには余分なアミノ酸配列が多数結合している(図20(A))ため、これらを除去してドメインのみを取得することは非常に煩雑な操作が必要であった。
また、物質とタンパク質の相互作用を解析する技術であるIVV法(特許文献1および非特許文献1等を参照)により標的物質に相互作用するタンパク質の同定も試みられていた。この方法によれば、標的物質とタンパク質を接触させて相互作用する分子を取得する操作を繰り返すことにより、標的物質と相互作用することがわかっているタンパク質の一部のポリペプチドが取得される(非特許文献2等を参照)。このポリペプチドは、上記ドメインを含んではいたが、やはり余分なアミノ酸が結合しており(図20(A))、標的物質との相互作用に必要最小単位を取得するには同様に煩雑な操作が必要であった。
一方、特定の疾患に関連することが知られている創薬の標的となるタンパク質に関し、該タンパク質の相互作用をいかにして抑制し、その活性を制御する物質が該疾患の治療薬として開発されることが多い。タンパク質はその相互作用に関与するドメインの界面にホットスポットと呼ばれる部位を有していることが知られており(非特許文献3、図20(A))、創薬開発の観点からはこのホットスポットに作用し、タンパク質の相互作用を抑制する医薬化合物の開発が望まれている。一般的にタンパク質の相互作用に関与するホットスポット部位に存在するアミノ酸およびその側鎖は立体構造的に自由度が高いため、単一のタンパク質の結晶構造解析からは、その空間位置を正確に同定することは困難であることが知られている(非特許文献3)。このような意味でも、タンパク質の相互作用に必要最小単位であるドメイン(図20(B))の簡便な同定あるいは取得方法の提供が望まれていた。
WO98/16636号公報 特願2003-315385号明細書 蛋白質核酸化学Vol.46,No2(2001)138-146 J. of Biological Chemistry, vol.276, 24, 20898-20906(2001) Nature Reviews 301-317Vol.3(2004)
本発明は、標的物質と相互作用するタンパク質またはポリペプチドの解析方法において、無細胞タンパク質ディスプレー法を利用することにより、標的物質との相互作用に必要なドメインポリペプチドをタンパク質から切り出して取得する方法、および該方法により得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列を解析することにより、標的物質との相互作用に必要十分なアミノ酸配列からなる構造モチーフを同定する方法、ならびに該方法により同定された構造モチーフを利用して標的物質に相互作用する医薬化合物を設計する方法等を提供するためになされたものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を進めた結果、(1)mRNAライブラリーの3’末端にピューロマイシンを含む核酸構築物を結合させて、これを鋳型として無細胞タンパク質合成系にて翻訳して、上記核酸構築物のピューロマイシンを介し、タンパク質とそれをコードするmRNAが共有結合したタンパク質−核酸連結体を作製し、(2)このタンパク質−核酸連結体を標的物質と接触させ、標的物質と特異的に結合するタンパク質部を有する上記連結体を選択し、(3)選択されたタンパク質−核酸連結体についているmRNAをポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、(4)増幅されたDNAを鋳型の一部として上記タンパク質−核酸連結体を作製し、(2)〜(4)の工程を行なうというサイクル(以下、これを「濃縮操作」と称することがある)を数回繰り返したところ、次第に取得されるmRNAライブラリーに含まれるmRNAの平均鎖長が短くなるとともに、同定されるタンパク質のアミノ酸鎖長も短くなり、かつ数個のクラスターを形成する現象を見出した。
そこで、糖尿病と関連するPPARγ2(Peroxisome Proliferation-activated receptor gamma 2)を標的物質として上記濃縮操作を繰り返し、相互作用するタンパク質のうち、クラスターを形成したポリペプチドのアミノ酸配列を解析した結果、これらのポリペプチドは共通配列を有する数十アミノ酸からなる部分ポリペプチドとして取得されており、これらがPPARγ2結合ドメインとほぼ一致することを見出した。さらに、該ポリペプチドのアミノ酸配列を類似のアミノ酸配列順に並べて解析(マルチプルアライメント解析)を行ない、共通するアミノ酸が出現する位置や頻度を求めることにより、標的物質と相互作用するに必要十分なアミノ酸配列である構造モチーフ配列を決定できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明によれば、
(1)(i)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(ii)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(iii)上記(i)および(ii)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部が、ドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選抜取得方法、
(2)(i)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(ii)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(iii)上記(i)および(ii)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部がドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程、(iv)工程(iii)でクラスターを形成した核酸を取得する工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用するドメインポリペプチドをコードする核酸の選抜取得方法、
(3)ドメインポリペプチドが、全長タンパク質の90%以下の長さのポリペプチドからなり、かつ標的物質との相互作用ドメインの130%以下の長さのポリペプチドであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方法、
(4)(i)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(ii)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(iii)上記(i)および(ii)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部がドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程、(iv)工程(iii)でクラスターを形成した核酸の塩基配列を解析する工程、(v)該塩基配列あるいはそれを翻訳したアミノ酸配列から存在頻度および/または出現頻度を指標として共通配列を選択する工程を含むことを特徴とする構造モチーフ配列の同定方法、
(5)上記(4)に記載の構造モチーフ配列の一部に変異を導入し、該変異構造モチーフを標的物質と接触させて相互作用を解析することを特徴とする変容した機能を有する構造モチーフの取得方法、
(6)(i)上記(1)または(3)で選抜されたドメインポリペプチド、あるいは上記(4)または(5)に記載の構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(ii)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程、(iii)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う化合物を設計する工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用する化合物の分子設計方法、
(7)標的物質が、疾病に関連するものであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の方法、
(8)(i)標的物質が疾病に関連するもので、上記(1)または(3)で選抜されたドメインポリペプチドまたは上記(4)または(5)に記載の構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(ii)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程、(iii)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う化合物を設計し、(iv)設計された化合物を合成する工程を含むことを特徴とする標的物質が関連する疾患の治療および/又は予防薬の製造方法、
が提供される。
本発明によれば、標的物質との相互作用に必要なドメインポリペプチドをタンパク質から切り出して取得する方法、および得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列を解析し、標的物質との相互作用に必要十分なアミノ酸配列からなる構造モチーフ配列を同定する方法、ならびに該方法により同定された構造モチーフを利用して標的物質に相互作用する化合物を設計する方法等が提供される。該方法は、標的物質が疾患に関連する物質であった場合、該疾患の治療および/又は予防薬となる短鎖ポリペプチドの取得、あるいは化合物の分子設計・取得方法等に有用である。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、以下の構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容のみに特定されるものではない。
(1)ドメインポリペプチドおよびそれをコードする核酸の選抜取得方法
本発明の1つは、以下に説明する方法により標的物質と相互作用するドメインポリペプチドを選抜取得する方法である。「ドメインポリペプチド」とは、標的物質と相互作用する必要最小単位である「ドメイン」を含み、該ドメインのアミノ酸鎖長の30%以下以下の長さのアミノ酸残基からなるポリペプチドが該ドメインに付加された構造を有する。付加されるポリペプチドは、該ドメインのC末側、N末側のいずれでも、又両方でもよい。標的物質と相互作用する必要最小単位である「ドメイン」とは、それ自体安定な立体構造を形成するタンパク質の部分構造であり、標的物質と結合して相互作用する機能を有する単位を意味する。本発明におけるドメインとは、既知のものも未知のものも含む。
「相互作用する」とは、標的物質に結合して該物質の機能を制御するか、または該物質によって機能を制御されることを意味する。また、本発明の方法で用いる「標的物質」とは、タンパク質あるいはポリペプチドと相互作用するものであれば何れのものでもよいが、特定の疾患と関連し、該物質の機能の制御が該疾病の治療および/又は予防に有用であることがわかっている物質が特に好ましく用いられる。具体的には、例えば、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖質、脂質、化合物、既知の医薬化合物等が挙げられる。
本発明のドメインポリペプチドの選抜取得方法は、 (1)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(2)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(3)上記(1)および(2)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部が、1つ以上のクラスターを形成するまで繰り返す工程を含むことを特徴とするものである。以下に本方法を詳細に説明する。
(i)タンパク質−核酸連結体および該連結体と標的物質を接触させる工程
本発明の方法で用いられる「タンパク質−核酸連結体」は、例えば、WO98/16636号公報に記載のもの等のように、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したものであり、タンパク質の相互作用解析等の強力なツールとなり得る分子である。
ここで、「タンパク質部」とは、核酸部に含まれるコーディング配列によりコードされるタンパク質を含み、タンパク質は既知のものも未知のものも含み、具体的には、生物体内で発現しているタンパク質は全て含まれ、さらには合成のポリペプチドからなるもの、ランダムアミノ酸配列からなるもの等も挙げられる。また、タンパク質−核酸連結体を精製するためのタグと上記タンパク質との融合タンパク質も含まれる。「核酸部」とは、タンパク質部のタンパク質をコードするコーディング配列を含み、さらに、用いるタンパク質合成系においてタンパク質が生成されるための配列を含む核酸であり、RNAでもDNAでもよい。
核酸部は、具体的には、コーディング領域と発現制御領域を含むものである。発現制御配列とは、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識される配列等が挙げられる。プロモーター配列の種類は、適用する発現系に適したものを適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、大腸菌ウイルスT7のRNAポリメラーゼによって認識されるT7プロモーター配列、SP6 RNAポリメラーゼにより認識されるSP6プロモーター配列などが挙げられる。また、翻訳の際にリボソームによって認識される配列としては、翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるRNA配列(Kozak配列)に対応するDNA配列や、原核細胞のリボソームによって認識されるシャイン・ダルガノ配列(Shine-Dalgarno)、5’キャップ構造(Shatkin,Cell,9,645−(1976))、オメガ配列等のtabacco mosaic virusのリボソームによって認識される配列、WO03/56009号公報に記載の配列、rabbitβ−globlin、Xenopusβ−globlin あるいはbromo mosaic virusのリボゾーム認識領域などが挙げられる。また、タンパク質−核酸連結体の核酸部を増幅するのに、PCRを用いる場合、PCRプライマー用配列を含むものも挙げられる。また、核酸部を増幅するためにPCRを用いる場合には、PCRプライマー結合用の共通配列を含むものも挙げられる。
コーディング配列とは、タンパク質−核酸連結体のタンパク質部に含まれるタンパク質をコードする配列であり、この種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。また、タンパク質−核酸連結体群を作製する場合には、cDNAライブラリーの各要素が有する塩基配列等も好ましい。
また、該核酸部の3’末端に結合した「核酸構築物」とは、その末端に「核酸誘導体」を結合しており、該核酸部を鋳型として無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳を行った場合、mRNAの末端付近まで翻訳が進んだ後、該核酸誘導体(例えば、ピューロマイシンなど)がリボソームのAサイトに入ることによりタンパク質と結合させる機能を有するものを意味する。具体的には、スペーサー、該タンパク質−核酸連結体を標識する標識部、また該連結体を固相に結合するための構造、核酸部を逆転写するためのプライマー部等を含むものが好ましい。
「核酸誘導体」としては、無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳が行われた時に、合成されたタンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物である限り限定されないが、その3’末端がアミノアシルtRNAに化学構造骨格が類似しているものを選択することができる。代表的な化合物として、ピューロマイシン(Puromycin)と3’-N-アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3'-N-Aminoacylpuromycinaminonucleoside 、 PANS-アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、アミノ酸部がバリンのPANS−Val、アミノ酸部がアラニンのPANS−Ala、その他、アミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸化合物が挙げられる。
また、3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合して連結した3’-N-アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3'-Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS-アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、アミノ酸部がバリンのAANS−Val、アミノ酸部がアラニンのAANS−Ala、その他、アミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸化合物を使用できる。また、核酸あるいは核酸とアミノ酸のエステル結合したものなども使用できる。さらにまた、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨格及び塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質とを化学的に結合した化合物は、すべて本発明で用いられる核酸誘導体に含まれる。核酸誘導体としては、ピューロマイシン、PANS−アミノ酸もしくはAANS−アミノ酸がリン酸基を介してヌクレオシドと結合している化合物がより好ましい。これらの化合物の中でピューロマイシン、リボシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルデオキシシチジルピューロマイシン、デオキシウリジルピューロマイシンなどのピューロマイシン誘導体が特に好ましい。
このような核酸誘導体は、それ自体既知の化学結合方法によって製造することができる。具体的には、リン酸ジエステル結合で合成ユニットを結合させる場合は、DNA合成機に一般的に用いられているホスホアミダイド法などにより固相合成で合成することが可能である。ペプチド結合を導入する場合は、活性エステル法などにより合成ユニットを結合させるが、DNAとの複合体を合成する場合は、両方の合成法に対応が可能な保護基が必要になる。
「スペーサー」は、ポリエチレン又はポリエチレングリコールあるいはその誘導体などの高分子物質や、オリゴヌクレオチドやペプチドあるいはその誘導体などの生体高分子物質等が用いられ、好ましくはポリエチレングリコールが用いられる。スペーサーの長さは特に限定されないが、好ましくは、分子量150〜6000であるか、または主鎖の原子数は10原子から400原子であり、さらに好ましくは、分子量600〜3000であるか、または主鎖の原子数が40原子から200原子である。
「標識部」は、親和性物質、共有結合性物質、蛍光物質、分解性物質等が挙げられる。これらは、「該連結物を固相に結合するための構造」としても用いられるし、また「該連結物を精製するための構造」としても用いられる。親和性物質としては、ポリA配列、ポリT配列、ビオチン、FLAG等の各種抗原又は抗体、Hisタグ、NTA等の配位子、受容体リガンド等が挙げられる。また、共有結合性物質としては、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド等の核酸末端部分、ヒドラジド、ケトン、チオエステル等の官能基、ソラレン等の架橋性物質が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセイン、オレゴングリーン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa488等が挙げられる。分解性物質としては、光反応で分解する1-(2-ニトロフェニル)-エチル基を有する誘導体や、プロテアーゼやペプチダーゼに認識されるアミノ酸配列等が挙げられる。これらの標識物質は、それ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手可能であり、また常法により核酸等に結合して標識することができる。
好ましい核酸部とその3’末端側に結合した核酸構築物、核酸誘導体(以下、これを「タンパク質−核酸連結体鋳型」と称することがある)の好ましい構造としては、核酸部であるRNAと、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合している1本鎖核酸(以下、これを「スペーサー鎖」と称することがある)がアニーリングした構造を有し、さらに該スペーサー鎖と標識部を含む1本鎖核酸と核酸部がそれぞれ結合しているものが挙げられる。具体的には、PCT/JP2004/013399号明細書に記載のもので、製造法も該明細書に記載された方法が好ましく用いられる。このような構造を有することにより、核酸部と核酸構築物のRNAリガーセ等による結合効率が高く、またタンパク質−核酸連結体を標識部により精製でき、核酸部のRNAを逆転写することができ、さらに核酸部を2本鎖DNAとすることもできる。
かくして構築されたタンパク質−核酸連結体鋳型をタンパク質翻訳系に導入することによりタンパク質−核酸連結体を製造することができる。核酸からそれがコードするタンパク質を人工的に生成させるための翻訳系は当業者に公知である。具体的には、適当な細胞よりタンパク質合成能を有する成分を抽出し、その抽出液を用いて目的のタンパク質を合成させる無細胞タンパク質合成系が挙げられる。このような無細胞タンパク質合成系には、リボゾーム、開始因子、伸長因子及びtRNA等の翻訳に必要な要素が含まれている。このような無細胞タンパク質合成系としては、例えば、真核生物の無細胞タンパク質合成系が用いられ、より具体的には、ウサギ網状赤血球抽出液やコムギ胚芽抽出液などが挙げられるが、これらに限られるものではない。無細胞タンパク質合成系は、キットとして市販されているものを使用することができる。例えば、ウサギ網状赤血球抽出液のキットとしては、Rabbit Reticulocyte Lysate Systems, Nuclease Treated(Promega社製)等が用いられ、またコムギ胚芽抽出液としては、PROTEIOSTM Wheat germ cell−free protein synthesis core kit(TOYOBO社製)等が挙げられる。タンパク質翻訳系としては、生細胞を使用してもよく、具体的には、原核又は真核生物、例えば大腸菌の細胞等を用いることができる。無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞などは、その中にタンパク質をコードする核酸を添加するか又は導入することによってタンパク質合成が行われるものである限り特に制限はない。本発明の核酸構築物を無細胞タンパク質合成系に導入する直前に、60〜90℃で加熱した後急冷する工程を行うと、タンパク質−核酸連結体の合成効率が高くなるため好ましい。
上記翻訳反応液から、タンパク質−核酸連結体を精製する場合、標識鎖に親和性物質あるいは共有結合物質が結合している場合には、該親和性物質あるいは共有結合物質を介して精製を行うことができる。精製の方法は、用いる親和性物質および共有結合物質に応じて適宜選択してそれ自体既知の定法を用いることができる。
上記で製造されたタンパク質−核酸連結体は、上記標的物質と接触させ、該物質と相互作用する連結体を選択取得する工程に供する。この選択方法は、タンパク質−核酸連結体中のタンパク質が有する機能(生物活性)を用いて標的物質と相互作用するタンパク質を該連結体として選択することを意味する。このような相互作用の解析方法としては、例えばWO98/16636号公報に記載の方法を用いることができる。また、標的物質と接触させるタンパク質−核酸連結体は、通常、cDNAライブラリー等から製造された複数の連結体群である。
また、本発明のタンパク質−核酸連結体および標的物質は、固相(支持体)に結合させて用いることもできる。タンパク質−核酸連結体の固相への結合は、上記標識部に親和性物質や共有結合性物質が結合している場合には、これらを用いて行うことができる。具体的には、親和性物質又は共有結合性物質が親和性を有するまたは結合する物質を予め固定化した固相に、上記タンパク質−核酸連結体を接触させることにより、当該タンパク質−核酸連結体を固相に容易に固定化することができる。固相への標的物質の結合は、例えば、Scott,J.K.&Smith,G.P.(1990)Science,249,386−390;Devlin,P.E.et al.(1990)Science,249,404−406;Mattheakis,L.C.et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,9022−9026等に記載されている方法等により行うことができる。
固相(支持体)としては、通常の核酸、タンパク質、糖質、脂質、化合物等の固定化に用いることができる支持体であれば特に限定されない。支持体としては、親和性物質や共有結合性物質どうしの結合形成、あるいは標的物質の結合に悪影響を及ぼさないものであればその形状は特に限定されず、例えば、平板、マイクロウェル、ビーズ等の任意の形態をとることができる。支持体の材質としては、例えば、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー類、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブランフィルター等の多孔質物質を挙げることができる。
上記選択方法に付するタンパク質−核酸連結体は、核酸部がRNAのものでもよいし、mRNA鎖をDNAに逆転写したタンパク質−逆転写核酸連結体でもよい。逆転写反応に必要な試薬及び反応条件は当業者に周知であり、必要に応じて適宜選択することができる。さらに得られたタンパク質−逆転写核酸連結体のRNAをRNA分解酵素などを用いて分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより2本鎖DNA−タンパク質連結体を作製して用いることもできる。このような、タンパク質−逆転写核酸連結体、あるいは2本鎖DNA−タンパク質連結体を用いれば、核酸部分の安定性がよいこと、また1本鎖RNAの非特異的吸着がないため好ましい。
(ii)標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の取得、核酸部の増幅、該核酸部を鋳型の一部としたタンパク質−核酸連結体の調製工程
上記選択方法で選択されたタンパク質−核酸連結体は、これを再度標的物質との相互作用に基づいて選択する工程に供する。一度選択されたタンパク−核酸連結体の核酸部を増幅して、さらにタンパク質−核酸連結体とするためには、(a)選択取得されたタンパク質−核酸連結体の1本鎖RNA部分を必要に応じて分解する等した後に、これをPCRなどで増幅し(増幅工程)、(b)増幅されたDNA鎖をもとにmRNA鎖を製造し、さらに上記のタンパク質−核酸連結体鋳型を製造し、これを翻訳してタンパク質−核酸連結体を調製することにより行なうことができる。
(a)増幅工程は、PCRを用いて例えば以下のように行うことも好ましい。タンパク質−核酸連結体の核酸中、増幅するのは少なくともコーディング配列を含む領域である。このように増幅されたDNAについて、それ自体既知の定法により塩基配列を解析することにより、上記選択方法で選択されたタンパク質をコードするDNA配列を同定できるので、該配列をもとにDNAまたはRNAも取得することができる。該領域を増幅するのに用いられるPCRプライマーとしては、特に制限はないが、全てのタンパク質−核酸連結体に共通に用いられる配列として、5’側のプライマーは、コーディング配列の5’上流側に連結されている配列が好ましく用いられる。具体的には、上記したタンパク質−核酸連結体の場合、5’側のプライマーは、翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列などが好ましく用いられ、3’側のプライマーは、タグ配列や共通配列が好ましく用いられる。
かくして増幅されて得られたDNAは、コーディング配列のみを含むものであるので、上記に記載の(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列(以下、これらを「5’付加配列」と称することがある)。タグ配列、共通配列等(以下、これらを「3’付加配列」と称することがある)を結合する。これらの配列の結合は、DNAリガーゼ、下述するオーバーラップエクステンション法、PCR法を用いて行うことができる。PCRのプライマーとしては、増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’末端付加配列からなるものと、増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列からなるものが用いられる。
オーバーラップエクステンション法による結合方法は、まず増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAに合成し、さらに増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAを合成する方法である。上記5’側付加配列および3’付加配列の結合は、片方ずつ行っても、両方同時に行ってもよい。かくして合成された2本鎖DNAは、これを両末端の塩基配列を有するプライマーなどを用いてさらにPCRで増幅してもよい。
かくして調製されたタンパク質−核酸連結体鋳型は、上記(i)に記載の方法により翻訳され、タンパク質-核酸連結体が調製される。
(iii)濃縮操作
本発明の方法では、上記(i)および(ii)に記載の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部が、ドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す(本明細書では、これを「濃縮操作」と称することがある)。「ドメインポリペプチドをコードするクラスター」(以下、「クラスター」と称することがある)とは、上記ドメインポリペプチドをコードする核酸を共通配列として含むほぼ同じ長さの核酸のかたまりを意味する。共通配列を含むほぼ同じ長さのかたまりとは、上記で取得されるタンパク質−核酸連結体群の50%以上が該共通配列を含み、その鎖長が最も短い核酸と長い核酸が1倍〜10倍の範囲に入ってくることを意味する。このようなクラスターが形成されたことは、形成を確認し得る方法であれば特に制限はないが、例えば、標的物質と相互作用することで選択取得されたタンパク質−核酸連結体の核酸部を、RNAのまま、又はDNAとしてアガロースゲルまたはSDS−ポリアクリルアミドゲル中を電気泳動等で分離した場合にバンドが観察されることにより確認することができる。
また、クラスターが形成された場合、その反応溶液に含まれる全てのポリペプチドをコードする核酸を取得して、上記の方法等を用いて翻訳し、標的物質に再度接触させ、標的物質と結合するポリペプチドの割合が高いことにより濃縮操作が十分であることを確認することもできる。
通常、この濃縮操作は、2〜15回行なうことによって、本発明のドメインポリペプチドと、これをコードする核酸の連結体が取得される。取得された連結体の核酸部を上記方法により増幅して常法により塩基配列を解析することにより、該ドメインポリペプチドをコードする塩基配列を同定することができる。また、該塩基配列を有する核酸を常法により合成すればドメインポリペプチドをコードする核酸を取得することができ、またこの核酸を公知の、例えば、上記したタンパク質合成方法等により翻訳合成することにより、ドメインポリペプチドを取得することができる。
かくして取得されるドメインポリペプチドの例としては、PPARγ2に相互作用するドメインペプチドとして、配列表の配列番号1〜14に記載のアミノ酸配列を有するものが挙げられる。さらに、図1および図2に記載の遺伝子としてUNIGENEデータベースに登録されているものを含むものが取得された。また、Smad3に相互作用するドメインペプチドとしては、配列番号15〜19に記載のアミノ酸配列を有するものが取得され、さらに図3および図4に記載の遺伝子としてUNIGENEデータベースに登録されているものを含むものが取得された。また、FK506に相互作用するドメインポリペプチドとしては、配列番号20〜23に記載のアミノ酸配列を有するものが取得され、さたに図5および図6に遺伝子としてUNIGENEデータベースに登録されているものを含むものが取得された。
(2)構造モチーフ配列の同定方法
上記(1)で選抜取得されたドメインポリペプチド群をコードする塩基配列、あるいはそれを翻訳したアミノ酸配列から、存在頻度および/または出現頻度を指標として共通配列を選択する工程等により構造モチーフ配列を同定することができる。この構造モチーフ配列の同定方法の概要を図7に示す。
「構造モチーフ」とは、標的物質と相互作用するドメインよりさらに短鎖のアミノ酸からなる標的物質との相互作用に必要十分なポリペプチドを意味する。また、「構造モチーフ配列」とは、該構造モチーフを構成するアミノ酸配列、または該アミノ酸配列をコードする塩基配列を意味する。
構造モチーフ配列は、上記で選抜取得されたドメインポリペプチド群をコードする塩基配列、あるいはそれを翻訳したアミノ酸配列から解析同定する。以下、アミノ酸配列から同定する方法について説明するが、塩基配列からも同様にして同定することができる。同定の方法は、取得されたドメインポリペプチド群がほぼ共通に有しているアミノ酸配列を抜き出すことによる方法が用いられる。「ほぼ共通に有しているアミノ酸配列」は、(i)存在頻度と(ii)出現頻度を指標として同定される。(i)存在頻度による選択方法は、まず、取得されたドメインポリペプチド群のアミノ酸配列を、市販のソフトウェア(ClustalW:Thompson JD,et al., Nucleic Acids Res., 22(22), 4673-80 (1994))を用いてマルチプルアラインメント解析を行なう(図7)。ここで、多くのドメインペプチドが共通に有しているアミノ酸配列(図7)を中心として、その前後に隣接するアミノ酸1つずつについて、各ドメインポリペプチドに存在しているかいないかを解析し、全ドメインポリペプチドの50%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは100%で存在している範囲を選択する(以下、これを「存在頻度により選択されたポリペプチド」と称することがある)。図7では、アミノ酸配列B1のN末(左端)からアミノ酸配列A−1およびA−2のC末(右端)までが存在頻度100%の範囲となる。
(ii)さらに、上記マルチプルアラインメント解析したドメインペプチドが共通に有しているアミノ酸配列およびその前後に隣接しているアミノ酸1つずつについて、アミノ酸の種類を解析し、全ドメインペプチドの50%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは100%が同じアミノ酸を有している範囲を選択する(以下、これを「出現頻度により選択されたポリペプチド」)と称する。図7では、黒楕円で示したアミノ酸が出現頻度の高いアミノ酸であるといえる。
本発明の構造モチーフ配列は、存在頻度により選択されたポリペプチドと出現頻度により選択されたポリペプチドの共通部分を選択することにより同定することができる。図7では、最下段に示した部分が構造モチーフとして選択することができる。また、マルチプルアラインメントを行なう際、取得されたドメインポリペプチドの部分アミノ酸配列が完全に一致するドメインポリペプチド群をファミリーとしてグループ化しておくと、これらのファミリー内で上記構造モチーフの解析を行なうこともできる。例えば、図7では、黒塗り部分のアミノ酸配列が完全に一致したファミリーA、斜線部分のアミノ酸配列が完全一致したファミリーB、縦線部分のアミノ酸配列が完全一致したファミリーC等のようにファミリー化することができる。
かくして同定した構造モチーフ配列としては、例えば、PPARγ2に相互作用する構造モチーフとして配列表の配列番号24または25に記載のアミノ酸配列が、またTGFβの細胞内情報伝達因子smad3に相互作用する構造モチーフとして配列表の配列番号26または27に記載のアミノ酸配列が、さらに免疫抑制剤であるFK506(タクロリムス、J. Antibiot.(Tokyo), 40(9), 1249-55(1987))に相互作用する構造モチーフとして配列表の配列番号28に記載のアミノ酸配列等が挙げられる。このような構造モチーフ配列は、これをコードするDNAを周知の方法で調製し、これを上記のような周知の方法で翻訳することにより調製取得することができるし、化学合成によって合成ポリペプチドとして取得することもできる。
また、構造モチーフ配列は、これに変異をいれることにより変容した機能を有する構造モチーフを取得することもできる。このような構造モチーフも本発明の範囲に入るものである。「変容した機能」とは、例えば、標的物質への結合力が強いものや相互作用が強いもの等が挙げられる。変異を導入するアミノ酸としては、上記の出現頻度の解析で最も高いアミノ酸の出現頻度が60%以下のものを選択することができる。変異を導入した構造モチーフは、標的物質と接触させ、その相互作用を上記の方法で解析することができ、野生型と比較することによれば、該構造モチーフの変容した機能を同定することができる。構造モチーフへの変異の導入方法は、それ自体既知の通常用いられる方法で行うことができる。例えば、構造モチーフをコードするDNAに市販の点変異導入キット等を用いて変異を入れ、これを周知の方法で翻訳することにより調製することができるし、また化学合成によってもポリペプチドとして合成することができる。
(3)ドメインポリペプチドあるいは構造モチーフと標的物質複合体の立体構造解析
本発明の1つは、(i)上記で取得されたドメインポリペプチドあるいは構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(ii)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程、(iii)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う化合物を設計する工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用する化合物の分子設計方法である。
「ドメインポリペプチドあるいは構造モチーフと標的物質との複合体」とは、両分子が相互作用をするような立体構造および配置で複合体を形成したものを意味し、異なる複数のドメインポリペプチドあるいは構造モチーフが標的物質に結合したものでもよい。本発明は最終的に、ドメインポリペプチドあるいは構造モチーフが、標的物質と結合した場合の立体構造をもとに、標的物質と相互作用する化合物の構造を設計する方法であるので、ドメインポリペプチドあるいは構造モチーフは標的物質と結合して相互作用する機能を有する限りでより短鎖(立体構造が低体積)であることが好ましい。
本発明で取得される構造モチーフ、特に短鎖のモチーフはそれ自体が医薬としての活性を有する可能性がある。このポリペプチドの構造をさらに最適化することで、より優れた医薬とすることができる。これらを本明細書において「短鎖ポリペプチド」と称することがある。
結合した「標的物質と標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位」とは、両分子が相互作用をするような立体構造及び配置を保つための結合位置(以下)、これを「ホットスポット」と称することがある)を意味する。
「標的物質の結合空間」とは、標的物質がタンパク質の場合は、これと相互作用するタンパク質もしくは化合物、ポリペプチドの結合する空間を意味し、また、標的物質が化合物もしくはポリペプチドの場合には、これと相互作用するタンパク質の結合空間を意味する。具体的には、標的物質がタンパク質であり、これと相互作用するものがポリペプチドの場合、標的物質に結合するタンパク質のホットスポット部位に存在するアミノ酸側鎖はタンパク質と結合したポリペプチドのアミノ酸側鎖と立体構造的に安定な複合体を形成する。このため、標的タンパク質のホットスポット部位に存在するアミノ酸およびその側鎖の正確な空間位置が解析可能となり、上記部位に作用する化合物の分子設計に極めて重要な情報となる。
上記工程は、それ自体既知の方法を適宜組み合わせて行うことができる。例えば、(i)上記で取得されたドメインポリペプチドあるいは構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(ii)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程については、立体構造の解析は、X線解析やNMR法などを用いることができ、例えばDuncan E. McRee etal.,Practical Protein Crystallography(second edition(1999),Academic Prに記載の方法等を用いることができる。(iii)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う化合物を設計する工程は創薬化学(第1版)、長野哲雄、夏苅英昭、原博、東京化学同人(2004)、あるいは最新創薬化学(上)(下)、C.G. Wermth、
テクノミック(1998)に記載の方法等を用いて行なうことができる。
かくして設計された短鎖ポリペプチドや化合物は、これを周知の方法で合成し、標的物質と接触させて、設計のもととなったドメインポリペプチドあるいは構造モチーフと同様の相互作用を示すかを確認する。ここで、標的物質が疾病に関連するものである場合、上記方法で設計された医薬候補化合物は、それ自体既知の方法により試験管内、あるいは生体内における薬理学的または生理学的試験により、その医薬としての活性や安全性のスクリーニングを行なうことにより該疾病治療薬とすることができる。この場合、上記工程により得た化合物を有効成分とする医薬組成物を製造する方法も本発明に含まれる。
かくして得られる医薬化合物はそれ自体を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。 本発明で得られた医薬化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、液剤等の剤形として経口的に投与してもよいし、あるいは薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁剤形等の注射剤として非経口的投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、局所内投与、皮下投与してもよい。また坐薬としての投与も可能である。
経口、経腸、非経口の組成物を調製する場合には、有機または無機の固体または液体の担体、希釈剤とともに通常用いられる単位容量形態で混和することによって行うことができる。これら製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。 固形製剤を製造する際に用いられる賦形剤としては、例えば乳糖、ショ糖、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウム等が用いられる。経口投与のための液体製剤、すなわちシロップ剤、懸濁剤、液剤等は、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水、植物油等を含む。この製剤は、不活性な希釈剤以外に補助剤、例えば湿潤剤、懸濁補助剤、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤、安定剤等を含むこともできる。
非経口投与の製剤、すなわち注射剤、坐剤等の製造に用いられる溶剤または懸濁化剤としては、例えば水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチン等が挙げられる。坐剤に用いられる基剤としては、例えばカカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン脂、ウィテップゾール等が挙げられる。
なお、本明細書における、上記した核酸の単離、調製、核酸の連結、核酸の合成、PCR、プラスミドの構築、無細胞系の遺伝子操作技術は、市販のキットなどを用いた場合にはその取扱説明書に準じ、それ以外で特に明記しない限り、Sambrook et al.(1998)Molecular Clonimg, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 標的タンパク質と相互作用するタンパク質を含む対応付けライブラリーおよび該タンパク質をコードするDNAの取得
(1)対応付け分子ライブラリーの調製
(1−i)ランダムプライマーを利用した対応付け分子作成用cDNAライブラリーの作製 oligo dTカラムで精製したヒト脳由来のmRNA(CLONTECH社製)0.5μgを鋳型としてランダムプライミング法により逆転写反応を行った。ランダムプライミング法に用いるランダムプライマーとして9塩基からなるランダム配列と後述のPCRで3’側共通配列となる配列を含むプライマー(配列番号29)を0.2あるいは0.4pmol、または、2あるいは4pmol用い、SuperScriptDouble Strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen社製)に付属の逆転酵素を利用し、mRNAから相補的な一本鎖cDNAライブラリーを合成した。これを上記キットに添付されたマニュアルに従って、RNaseHを用いてcDNAと二本鎖化しているRNAを部分分解し、E.coliDNAポリメラーゼIにより第2鎖のDNAを合成した。次にE.coli DNAリガーゼにて合成された第2鎖を連結後、T4 DNAポリメラーゼより得られたcDNA末端の平滑化を行い、この二本鎖化されたcDNAをエタノール沈殿にて精製した。
一方、無細胞蛋白合成用の翻訳エンハンサー配列と、FLAGをコードする遺伝子を含む一本鎖DNA(配列番号30)とその3’末端に相補的な配列からなるDNA(配列番号31)をアニーリングしたアダプターを調製した。このアダプター(100μM)とcDNA(4μl)を混合し、DNAリガーゼ(ligationhigh;TOYOBO社製)を5μl加えて、16℃で一晩反応させ両者を結合し、QIAGEN社DNA purifucation Kitを用いて精製後、50μlのnucleasefree水に溶解した。
次にSP6プロモーター、翻訳エンハンサー配列と開始コドンからなるフォワードプライマー(配列番号32)および後述するピューロマイシンリンカーとの結合のための配列を有するリバースプライマー(配列番号33)を用い、TOYOBO社KODplusを用いたPCR法にて94℃2分間の反応後、98℃10秒、60℃30秒、68℃5分の反応を16回から18回実施後、さらに68℃3分反応させた。このPCRにより増幅されたDNAを、対応付け分子作成用cDNAライブラリーとした。
(1−ii)対応付け分子作成用cDNAライブラリーから対応付け分子ライブラリーの作製 Promega社製Ribomax Large ScaleRNA Production Systemを利用し、本システムの方法に従い、上記で作製した対応付け分子作成用cDNAライブラリーからmRNAを合成した。そして、このmRNAに対してキャップアナログ(7.2mM、RNA Capping Analog ; Gibco BRL社製)を加え、定法によりmRNAの5'側を修飾した。次に特願2003-315385号明細書に記載のピューロマイシンリンカー(T-splint5.9FA)とmRNAとの混合モル比が1.2:1から3.0:1になる様にT4RNA リガーセ buffer (50mM Tris-HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液を94℃になるまで加熱後、10分かけて25℃まで冷却することによりアニーリングした。この後、T4RNAリガーゼ(Takara社製)を至適量加えて25℃で約1時間反応させた後、RNeasy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて精製し、対応付け分子作製用mRNAライブラリーとした。
次にTOYOBO社製PROTEIOS(小麦胚芽無細胞タンパク質合成系)を用い、同キット添付の方法に従い、上記のピューロマイシンリンカーが結合した対応付け分子作製用mRNAライブラリー(64μg)からタンパク質合成を行った。この反応により、ピューロマイシンリンカーが結合したmRNAとタンパク質が共有結合した対応付け分子(本明細書中では、これを「タンパク質−核酸連結体」又は「対応付け分子」と称することがある)が作製された。また、対応付け分子のライブラリーを、「対応付け分子ライブラリー」と称することがある。
(1−iii)対応付け分子ライブラリーの逆転写反応および精製
上記(2)で得られた対応付け分子ライブラリーを含む溶液が1MNaCl、100mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton-X100になるように調整し、9.6nmolのBiotinylatedOligo(dT)Probe(Promega社製)が結合したMAGNOTEX-SA(Takara社製)360μlと4℃、約1時間結合させた。この後、上清を除き、洗浄bufferA(1M NaCl、100mM Tris-HCl(pH8.0)、0.25% Triton-X100)で3回洗浄後、buffer B(500mM NaCl、100mMTris-HCl(pH8.0)、0.25% Triton-X100)で1回洗い、さらにbuffer C(250mM NaCl、100mM Tris-HCl(pH8.0)、0.25%Triton-X100)で1回洗い、次いで、MilliQ水90μlで3回溶出し、poly-Aを用いて対応付け分子の精製を行なった。
次に精製された対応付け分子のリンカーに含まれる逆転写用配列を利用し、SuperScript III Reverse Transcriptase (Invitrogen社製)を用いて逆転写反応を行った。すなわち上記精製工程の溶出画分270μlに対し、108μlの5×RT Buffer、54μl の10mM dNTP、27μl の0.1M DTT、21.6μl の40U/μl RNase Inhibitor(WAKO社製)、27μlの200U/μl RTase、32.4μl のnuclease free水を添加し、50℃2分反応後、26℃に至るまで1秒間に0.4℃温度を降下させ逆転写反応を行った。
次に上記で逆転写反応した反応液540μlを20mM HEPES-KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10%グリセロール、50μg/ml BSA、0.5μg/ml tRNAになるように調整した。これを、40μlの抗FLAG M2抗体アガロースビーズ(Sigma社製)と4℃で一晩結合させ、100μlのBindingBuffer(20mM HEPES-KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10% グリセロール、50μg/mlBSA、0.5μg/ml tRNA)で3回洗浄後、40μlの3×FLAG peptide(Sigma社製) Buffer(最濃度100μM 3×FLAGpeptideを含むBinding Buffer)で3回溶出し、精製された核酸部分がDNAとRNAのハイブリッドである対応付け分子ライブラリー(本明細書中では、これを「タンパク質−逆転写連結体群」又は「RNA-DNA対応付けライブラリー」と称することがある)を得た。
(2)標的タンパク質(PPARγ2)に相互作用するタンパク質を有する対応付け分子および該タンパク質コードする遺伝子の取得
(2−i)標的タンパク質と対応付け分子ライブラリーの接触および融合体の取得
スクリーニングの標的タンパク質として核内受容体(PPARγ2)を用い、これに相互作用するタンパク質(ポリペプチド)のスクリーニングを、実施例1にて調製した対応付け分子ライブラリーから行った。PPARγ2は506アミノ酸からなる核内受容体であり、糖尿病や高脂血症に関与することが知られている。
まず常法に従って、ヒトPPARγ2(GenBank accession No.D83233.1, AF012874.1, L40904.2, :配列番号34)のN末に融合タンパク質としてグルタチオンS−トランスフェラーゼ(gulutathione S-transferase:GST)をコードするDNAを付加させて、大腸菌用発現ベクターに挿入したDNAを調製し、これを大腸菌(BL21(DE3)pLysS)で発現させた。この際、GSTとPPARγ2の間にTEVプロテアーゼで切断できるサイトを導入した。得られた融合タンパク質はGlutathione Sepharose4Bビーズ(アマシャムファルマシア社製)を用いて精製し、脱塩カラムにて溶出に使用したグルタチオンを除去した。精製の詳細な方法は、上記の合成反応で得られたタンパク質(25μg)をBinding Buffer(100mM KCl、20mM HEPES-KOH(pH7.8)、0.1% NP40、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5μg/ml tRNA、50μg/ml BSA、10%グリセロール)に溶解し、Glutathione Sepharose4Bビーズ(アマシャムファルマシア社製)に結合させた後、100μlのBinding Bufferで3回洗浄操作を行った。またネガティブコントロール用としてGSTタンパク質のみを合成し、同様の方法で精製した。
上記で得られたGST-PPARγタンパク質およびGSTタンパク質を実施例1にて調製した対応付け分子ライブラリーと接触させた。まず、実施例1で得られた対応付け分子ライブラリーをGlutathione Sepharose4Bビーズ(タンパク質を結合させていないビース)と室温で30分間混合し、ビーズを除去後、上記のPPARγ2を結合させたGlutathione Sepharose4Bビーズに室温で1から2時間反応させた後、BindingBufferを用いて3回から10回の範囲で洗浄した。
次に、上記接触によって得られたGST-PPARγタンパク質あるいはGSTタンパク質と対応付け分子の融合体を取得するために、TEVプロテアーゼ(インビトロジェン社製)2μlを添加したBindingBuffer 100μlを添加し、室温で1時間反応させ、この上清を回収する操作を2回繰り返した。
(2−ii)標的タンパク質と相互作用するタンパク質を有する対応付け分子および該タンパク質をコードするDNAの回収
上記(1)で得られたGST-PPARγ2あるいはGSTと対応付け分子の融合体から、対応付け分子の核酸部分のみをDNAとして取得した。具体的には、上記で得られた溶出液200μlに対して100μg/mlのRNase A(キアゲン社製)を40μlあるいは10U/μlのRNase H(TOYOBO社製)を10μl添加し、室温で5分あるいは37℃で30分反応させることにより、対応付け分子の二本鎖形成(RNA/DNA)しているRNA鎖部分を除去し、エタノール沈殿により精製後、20μlのNucleaseFree水に懸濁した。ここで、得られた分子に含まれるDNAは、標的タンパク質と相互作用するタンパク質をコードするものである。ここまでの一連の操作を、以下「DNA取得操作」と称することがある。
このDNAを用いて、再度上記実施例1に記載の方法を実施し、標的タンパク質に相互作用するタンパク質を有する対応付け分子の濃縮を行なった。
実施例2 標的タンパク質と相互作用するタンパク質を有する対応付け分子および該タンパク質をコードする遺伝子の濃縮
上記実施例1(2)で得られたPPARγあるいはGSTと相互作用するタンパク質をコードするDNA溶液1μlを鋳型として、配列番号35および36に記載の配列からなるプライマーを用い、TOYOBO社製KODplusを用いたPCR法にて94℃で2分反応後、さらに98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で5分の反応を18回実施後、さらに68℃で3分反応させた。次にこのPCR産物を鋳型とし、SP6プロモーターやスペーサーとのアニーリング配列を含むプライマー(配列番号32および配列番号33)を使用して実施例1に記載の方法でPCRを実施し、対応付け分子作製用cDNAライブラリーを調製した。
得られた対応付け分子作製用cDNAライブラリーについて、上記実施例1(1−ii)、(1-iii)および(2)に記載の一連の操作を行なった。上記の操作を「標的タンパク質と相互作用するタンパク質を有する対応付け分子および該タンパク質をコードする遺伝子の濃縮操作」あるいは「濃縮操作」と称することもある。
この濃縮操作を、さらに3回繰り返した。この操作により、標的タンパク質であるPPARγ2あるいはGSTに相互作用するタンパク質を有する対応付け分子および相互作用するタンパク質をコードする遺伝子の濃縮を合計4回(1回目の上記対応付け分子あるいは遺伝子の取得(実施例1に記載)は濃縮操作には含まない)繰り返したことになる。
これらの操作(DNA取得操作1回目、濃縮操作1〜4回目)により得られたDNAを、実施例2に記載の方法により、対応付け分子作製用mRNAライブラリーとし、各100ngを、4%ウレア変性ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。この後、対応付け分子作製用mRNAライブラリーに結合しているピューロマイシンリンカーに導入してある蛍光(Fluoroscein)をMolecularImager(Bio Rad社製)を用いて検出し、各DNA取得、および濃縮工程後のmRNAライブラリーの泳動パターンを解析した。
この結果を図8に示す。レーン0はDNA取得操作で得られたDNAから、またレーン1〜4は濃縮操作1〜4回後の結果を示す。図から明らかなように、3および4回の濃縮操作の後のDNA(RNA)では、不均一なmRNAライブラリー(レーン0に記載のスメアな泳動図)と比較して、いくつかの単一なバンドが形成されていることがわかった(レーン3および4)。つまり、上記濃縮操作3〜4回で得られるDNA(RNA)はいくつかの断片に集約されていることが判った。
実施例3 塩基配列解析によるPPARγ2と相互作用するタンパク質の解析
(1)塩基配列解析
実施例2までの操作で得られた2〜4回の濃縮操作を行った対応付け分子作製用cDNAライブラリーを、常法に従って精製後、pGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)へ挿入するクローニング操作を行った。そして挿入配列を含んでいるクローンを選択し、各回毎に約100クローンの塩基配列解析を行なった。濃縮操作3〜4回で得られた塩基配列として、図1及び図2に記載のUNIGENEデータベースに登録されていた遺伝子をコードするものがあった。
(2)特定のアミノ酸配列の濃縮度解析
上記で得られた塩基配列をアミノ酸配列に変換し、得られたアミノ酸配列情報をもとに、マルチプルアライメント解析をソフトウェアー(Clustal W)を用いて実施した。これらのうち代表的なものを図9および配列番号1〜14に示す。この解析の結果、上記標的タンパク質としてGST-PPARγ2を用いた濃縮操作により取得されたタンパク質は、同じアミノ酸配列を含むアミノ酸数として14から55個前後の比較的短いペプチドに集約されていることが判った。さらに、核内受容体と相互作用することが知られている特徴的なアミノ酸配列(LXXL*L*-様配列、Xは任意のアミノ酸を示す。L*L*は両方がL、もしくはいずれか一方がLであることを示す)を含む新規なタンパク質が選択的に取得されていることが判った。
上記で塩基配列を解析した約100クローンのうち、上記LXXL*L*-様配列が出現した頻度を示した結果を図10に示す。図から明らかなように、濃縮操作を繰り返すごとにLXXL*L*-様配列を有するタンパク質の割合が増加していることがわかった(図10、白バー:PPARγ2)。一方、実施例1および2で標的タンパク質(GST-PPARγ2)ではなくGSTを用いて同様にスクリーニングを実施した結果では、LXXL*L*-様配列を有するタンパク質は全く濃縮、取得されていなかった(図10、黒バー:GST)。このことから、上記濃縮操作により得られたタンパク質は、標的タンパク質GST-PPARγ2に特異的に選択されて取得されたものであることがわかった。
次に、上記DNA取得および濃縮操作で得られたDNA全体に対して特定のアミノ酸配列をコードするDNAの割合を解析した。特定のアミノ酸配列は、図9に記載のPPAR1ファミリーおよびPPAR2ファミリーに分類されるものを例に解析した。ここで、PPAR1ファミリーおよびPPAR2ファミリーとは、上記でマルチプルアライメント解析をソフトウェアー(ClustalW)を用いてアラインメントをした後、LXXL*L*-様配列が同じアミノ酸配列であるものをファミリーとして分類したものである。
まず、常法に従って、サイバーグリーンを用いた定量PCR法(SYBER GREEN Master Mix:ABI社製)により、各濃縮回におけるPPAR1ファミリーおよびPPAR2ファミリーをコードするDNAの存在量を定量した。ネガティブコントロールとして、βActinを指標とした。また遺伝子の定量は、PPAR1ファミリーに関しては配列番号37および38の配列を有するプライマー、PPAR2ファミリーに関しては配列番号39および40の配列を有するプライマー、βActinは配列番号41および42の配列を有するプライマーを用いて実施した。
この結果を図11に示す。図11(1)は各濃縮操作により取得されたDNA10ng中のPPAR1ファミリーをコードするDNAの分子数を示し、図11(2)は各濃縮操作により取得されたDNA10ng中のPPAR2ファミリーをコードするDNAの分子数を示す。また、図11(3)は各濃縮操作により取得されたDNA10ng中のβActinをコードするDNAの分子数を示す。図から明らかなように、濃縮回が進むとともにPPAR1ファミリーおよびPPAR2ファミリーをコードするDNAの分子数が増加しており、これらのDNAが濃縮されていることが判った。一方、βActinをコードするDNAの分子数は濃縮回が進むとともに減少していくことが判った。
(3)PPARγ2との結合解析
(3−i)タンパク質合成
上記(1)で得られたペプチド(図9に記載のPPAR1-6(配列番号1)、1-7(配列番号2)、1-13(配列番号3)、2-1(配列番号4)、2-5(配列番号5)、2-7(配列番号6)、2-8(配列番号7)、3-3(配列番号8)、4-1(配列番号9)、4-2(配列番号10)、5-3(配列番号11)、5-5(配列番号12)、7-5(配列番号13)、10-1(配列番号14))を以下の方法で合成した。まず、上記アミノ酸配列をコードする塩基配列の5’側に、GST及びFLAGエピトープのアミノ酸配列をコードする塩基配列を定法により結合し、このDNAに対してProc.Natl.Acad.Sci.USA、99:14652-14657(2002)に記載されている方法に準じてPCR反応を行い、転写用のDNA断片を調製した。このDNAを鋳型としてSP6RNA Polymerase(Promega社製)を用いて転写反応を行ない、mRNAを合成し、エタノール沈殿操作により得られたmRNAを精製した。このmRNAを用いたタンパク合成は特開2002-204689号公報およびProc.Natl.Acad.Sci.USA、99:14652-14657(2002)に準じたバッチ法による無細胞タンパク質合成系を用いた。
陽性コントロールとしてPPARγとヘテロダイマーを形成することが知られているRxRα、陰性コントロールとしてGSTとFLAGエピトープのみを有するものを上記と同様に調製した。無細胞タンパク質合成系で得られた合成溶液に含まれるGST融合蛋白質をGST96-well Detection Module(Amersham社製)を用いて定量した結果、いずれもほぼ一定量のタンパク質が合成されていることが判った。
(3−ii)標的タンパク質との結合解析
実施例1で大腸菌で発現させたPPARγ2タンパク質を精製後、PBS(-)により5〜10μg/mlの濃度に希釈し、96ウェルプレート(CORNING社製、透明、高結合型)に1ウェル当たり100μl(0.5〜1μg)の量で添加した。このプレートを4℃にて12時間以上静置し、PPARγ2タンパク質をプレートに固定化した。次にこのプレートをPBSで2回洗浄後、BlockingBuffer(1%BSA/PBS)を1ウェル当たり200μl添加し、インキュベーター内で37℃、200rpm、2〜3時間ブロッキング反応を行った。この後、プレートをPBSで2回洗浄し、リガンドとして10μMのチアゾリジン系化合物(ロシグリタゾン、エタノールに溶解)を含むBindingBuffer(L+) (20mM Hepes-KOH(pH 7.9)、100mM KCl、0.1mM EDTA、0.1% NP40、10%(v/v)グリセロール、50μg/mlBSA、10μM ロシグリタゾン)を1ウェル当たり95μl、あるいはリガンドを含まないBinding Buffer(L-) (20mMHepes-KOH(pH 7.9)、100mM KCl、0.1mM EDTA、0.1% NP40、10%(v/v)グリセロール、50μg/ml BSA、0.4%(v/v)エタノール)を1ウェル当たり95μl添加した。
続いて上記(3−i)で調製したGST融合タンパク質を含む合成反応液を、1ウェル当たり5μl添加し、室温にて1時間反応させた。次にこのプレートをWashBuffer(0.05%Tween20 in PBS)で3回洗浄後、Blocking Bufferにて10000倍希釈したAnti-FLAG M2Antibody-Peroxidase Conjugate(SIGMA)を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて1時間反応させた。次にプレートをWashBufferで3回洗浄後、発色液(24mMクエン酸、51mM Na2HPO4、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、SIGMA)、0.014%H2O2)を1ウェル当たり100μl添加して約5分間発色させた後、1N 硫酸溶液を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止した。反応液の波長490nmにおける吸光度に対し、リファレンス波長を650nmとして測定した。この結果を図12に示す。
図から明らかなようにPPAR1-6、1-7、1-13、2-1、2-5、2-7、2-8、3-3、4-1、4-2、5-3、5-5、7-5、10-1はいずれも陰性コントロールであるGST-FLAG(図12:Negative Control)よりPPARγ2に対し高い結合活性を示した(図12:白色バー)。またこれらの結合活性はロシグリタゾンを添加することにより、PPARγ2との結合活性が上昇することが判った(図12:黒色バー)。
さらに、これらのうち、ポリペプチドPPAR1-7、 PPAR 1-13、PPAR 2-7に関し、そのアミノ酸配列のC末端側にKを介してビオチン結合させた合成ペプチドを化学合成により準備し、BIACORE3000(ビアコア社製)を用いたSPR測定および解析を行った。BIAapplicationshandbook、chapter4.4に従い、センサーチップ表面に上記ビオチン化したペプチドを個別に固定化した。センサーチップはSAタイプ(ビアコア社製)を用いた。センサーチップ1枚に付きフローセルが4分割されているが、フローセル1には何も固定化せずコントロール区として用い、フローセル2、3および4に各ビオチン化ペプチドを1種類ずつ固定化した。
次にランニングバッファーを一定流量(5μL/min)で流しておき、SPR測定値を安定させ、各フローセルのベースライン値(SPR-baseline)後、種々の濃度のPPARγ2を含有液を同流量で流し、センサーチップ上の各ポリペプチドとの間で特異的結合を形成させ、各フローセルのSPR応答値(SPR-bound)を測定し、解離定数(Kd)を解析した。この結果、PPAR1-7のPPARγ2に対するKd値は132nM、PPAR 1-13のPPARγ2に対するKd値は241nM、PPAR 2-7のPPARγ2に対するKd値は92.6nMであることが判った。
(3−iii)PPARγ2リガンドの結合阻害活性測定
各ポリペプチドのPPARγ2のコアクティベーターであるSRC-1結合阻害活性を測定した。SRC-1はその分子内にLXXL*L*-様配列を有し、ロシグリタゾン存在下でPPARγ2への結合力が増強することが知られている。そこでプルダウンアッセイ法により、PPARγとSRC-1の相互作用への、上記ポリペプチド(PPAR1-7、PPAR 1-13、PPAR 2-7)が及ぼす影響について解析を行った。
10μl(bed体積7.5μl)のGlutathioneSepharose 4Bビーズに、実施例1で大腸菌を用いて合成および精製したGST-PPARγ2(PPARγのN末端側にGSTタグを結合させた融合蛋白質)を50μl(10〜20μg)添加して結合させた。また、陰性コントロールとしてGSTを50μl(10〜20μg)添加して結合させた。ヒトSRC-1(GenBank accession No. 1101269074203_0.1
、1101269074203_1.1.)のアミノ酸番号として565〜770残基部分をコードする遺伝子配列番号43をpET15bベクターに挿入したDNAを調製し、特願2003-173634号明細書に記載の方法に従ってmRNAへの転写反応の鋳型となるDNAテンプレートを調製した。この後、RiboMAXLarge Scale RNA ProductionSystem-SP6 (Promega社製)を用いた転写反応によりmRNAを調製し、得られたmRNAをRneasyKit(QIAGEN社製)を用いて精製し、さらに特願2003-173634号明細書に記載の方法に従い、Cy3-Puroにて C末端がラベル化されたSRC-1(以下、これを「C末端ラベル化SRC-1」と称することがある)含む反応溶液を得た。
GST-PPARγ2あるいはGSTを固定化したビーズに25μMロシグリタゾンを含むバインディングバッファー(20mM Hepes-KOH(pH 7.9)、100mM KCl、0.1mM EDTA、0.1% NP40、10%(v/v)グリセロール、50μg/mlBSA、10μM ロシグリタゾン)、あるいはロシグリタゾンを含まないバインディングバッファー (20mM Hepes-KOH (pH 7.9)、100mMKCl、0.1mM EDTA、0.1% NP40、10%(v/v)グリセロール、50μg/ml BSA、 0.25〜0.4%(v/v)エタノール)を100μl添加後、添加したバインディングバッファーと同じバッファーでビーズを洗浄した。
陽性コントロールとしてGST-PPARγ2を結合させたビーズに、ロシグリタゾンを含むバインディングバッファー50μlおよびC末端ラベル化SRC-1を含む反応溶液50μlを添加したもの、及びロシグリタゾンを含むバインディングバッファー 50μlおよびC末端ラベル化SRC-1を含む反応溶液50μlを添加したものを準備した。
一方、GST-PPARγ2を結合させたビーズに、ロシグリタゾンを含むバインディングバッファー 50μlとC末端ラベル化SRC-1を含む反応溶液50μl、及び最終濃度として4μMの上記ポリペプチド(PPAR1-7、PPAR 1-13、PPAR 2-7)を個別に添加したものを準備した。
試料を遮光し、ロータリーシェーカーに乗せて室温、200rpmで2時間反応後、添加したものと同じバインディングバッファーでビーズを洗浄し、15μlの2×SDSloading Bufferを添加し、95℃、5分間熱処理を行った後、ビーズに結合したC末端ラベル化SRC-1を回収した。回収した溶液はSDSポリアクリルアミド電気泳動により分離し、C末端ラベル化SRC-1の蛍光バンドをMolecularImager(Bio Rad社製)にて解析した。この結果を図13に示す。
PPARγとSRC-1の結合はロシグリタゾンを添加しない場合(図13Ligand(-))と比べ、ロシグリタゾンを添加(10μM)することにより増強した(図13:Ligand(+))。このロシグリタゾン存在下で合成ペプチド(PPAR1-7、PPAR 1-13、PPAR 2-7)の影響を解析した結果、これらのペプチドはPPARγとSRC-1の結合を阻害する活性を有していることが判った。
つまり、本発明の濃縮操作により取得されたこれらのポリペプチドは、標的タンパク質であるPPARγ2に結合して相互作用するのに必要十分な部分が切り出されたものであることが判った。
実施例4 マルチプルアラインメント解析によるPPARγ2と相互作用するタンパク質の構造モチーフ配列の同定
上記のように、本発明の濃縮操作によれば、標的タンパク質に結合して相互作用するのに必要十分な部分ポリペプチドが切り出されて取得されることがわかったので、次に、取得されたポリペプチドに変異を入れることにより、より強い結合力や相互作用活性を有するより短鎖のポリペプチドの取得ができないか検討した。
(1)構造モチーフ配列候補の選択
実施例3でPPARγ2を標的タンパク質とした濃縮操作の3回もしくは4回後に得られたLXXL*L*-様配列を有するクローン由来のアミノ酸配列を対象に、ソフトウェアー(ClustalW)を用いてマルチプルアライメント解析を実施した。これらのアミノ酸配列において、共通するアミノ酸の出現する位置や頻度を求めることにより、PPARγ2と結合して相互作用するために好ましいアミノ酸配列や、必要十分なポリペプチド鎖長の決定を試みた。
(1−i)PPARγ2を標的タンパク質とした濃縮操作で得られたポリペプチドのアミノ酸配列の解析
図14(A)、(B)において、濃縮操作3回および4回で得られた種々のアミノ酸配列に関し、LXXL*L*-様配列を含むものをすべてマルチプルアラインメント解析して、これらのアミノ酸配列についてLXXL*L*-様配列のはじめのロイシン(L)の位置をアミノ酸番号0とし、C末側をプラス(+)、N末側をマイナス(−)として並べた。
まず、上記でアラインメントしたアミノ酸配列において、特定の位置(番号)のアミノ酸の種類を解析し、各クローンがその位置に有するアミノ酸のうち、最も多かったアミノ酸が全体に対して占める割合(以下、これを「最も多かったアミノ酸の出現頻度」と称することがある)を黒色のバーで示した。この結果を図14(A)および(B)に示した。(A)は濃縮回数3回目で得られたポリペプチドの結果を示し、(B)は濃縮回数4回目で得られたポリペプチドの結果を示す。
この図において、アミノ酸番号はグラフの横軸、最も多かったアミノ酸の出現頻度は縦軸となっている。また、3回目(上段)、4回目(上段)で最も多かったアミノ酸を図14(D)に示した。例えば、3回目の濃縮により得られたLXXL*L*-様配列を含むクローンにおいて、アミノ酸番号―8では、最も多かったアミノ酸はセリン(S)であり、その出現頻度は約75%であったことがわかる。また、図14(C)には、濃縮操作4回後の上記アミノ酸の出現頻度と濃縮操作3回の結果の差を示し、濃縮3回後と4回後のポリペプチドの間で特定の位置のアミノ酸の出現頻度の変化の有無を示した。
図14(A)および図14(B)から、アミノ酸番号―2のプリン(P)およびアミノ酸番号0のロイシン(L)はともに出現頻度100%を示すことがわかった。また、アミノ酸番号−2〜0、及び3、4、また10〜13でも最も多かったアミノ酸の出現頻度が90%以上であり、さらに−13から−7、及び9〜13では最も多かったアミノ酸の出現頻度が65%以上と特定のアミノ酸の出現頻度が高いことがわかった。つまり、PPARγ2を標的タンパク質とした濃縮操作により取得されたポリペプチドは、そのアミノ酸配列中に各クローンで共通性の高いアミノ酸配列が存在し、またそれとは逆にいくつかの異なるアミノ酸が用いられている場所もあることがわかった。
一方、取得されたLXXL*L*-様配列を含むクローンは、様々な長さのアミノ酸配列を含んでいた。このため、上記のアラインメントを行なったアミノ酸配列において、あるアミノ酸番号については、アミノ酸が存在するクローンとしないクローンがあった。そこで、各アミノ酸番号において実際にアミノ酸があったクローン数の総クローン数に対する割合(以下、これを「存在頻度」と称することがある)を図14(A)(B)に白丸でプロットしたグラフで示した。この存在頻度は、解析したクローン間のアミノ酸配列で共通に存在する領域長の範囲を知るための指標となる。図から明らかなように、アミノ酸番号−4〜4までは存在頻度が100%であることがわかった。また、−7〜9の範囲も存在頻度が80%以上、−11〜13の範囲でも50%以上と存在頻度が比較的高いことがわかった。これらの範囲は図14(D)でそれぞれ枠線で囲って示した。
さらに、出現頻度及び存在頻度が共に高いアミノ酸として、いずれも65%以上であるものを四角で囲み、50〜65%であるものを丸で囲み、さらに40〜50%であるものを破線で示した。これらのアミノ酸配列は、PPARγ2を標的タンパク質とした濃縮操作により得られたポリペプチドで共通配列として存在しており、このアミノ酸配列が構造モチーフ配列候補として選択されると考えられた。
(1−ii)構造モチーフ配列候補の選択
さらにPPARγ2を標的タンパク質とした濃縮操作を2〜5回行なった後に取得されたポリペプチドについて、上記の解析を行なった結果を図15(A)に示した。最上部の番号は、LXXL*L*-様配列のはじめのロイシン(L)の位置をアミノ酸番号0とし、C末側をプラス(+)、N末側をマイナス(−)として並べたアミノ酸番号を示し、アミノ酸配列は、上段が全ての濃縮操作後で取得されたポリペプチドで最も出現頻度が高かったアミノ酸を番号順に並べたものである。また、その下には、それ以外のクローンで出現したアミノ酸を出現頻度が高い順に並べたものである。また、存在頻度が100%であるアミノ酸配列(−4〜4)を枠線で囲って示し、存在頻度が80%以上(−7〜9)、及び50%以上(−11〜13)を破線で囲った。また、存在頻度が50%以上で出現頻度が最も高かったアミノ酸を四角で囲み、さらに出現頻度、存在頻度が共に100%であったアミノ酸を星印で示した。さらに存在頻度が50%以上で、いずれかの濃縮操作で出現頻度が50%以上であったアミノ酸を丸で囲んで示した。
この結果から構造モチーフ配列候補を以下のとおり選択した。存在頻度および出現頻度が共に50%以上であるアミノ酸番号−2〜4のポリペプチドで、出現頻度が100%であるアミノ酸番号−2のプロリン(P)、アミノ酸番号0のリジン(L)は固定して、アミノ酸番号4を疎水性アミノ酸(X)、それ以外を任意のアミノ酸(X1)である図15(B)に示したものを基本型として選択した。さらに、この配列においてアミノ酸番号1をトリプトファン(T)、又アミノ酸番号2をフェニルアラニン(F)又はセリン(S)としたポリペプチドもより好ましい構造モチーフ候補(図15B(2))として選択した。また、アミノ酸番号−2がプリン(P)、−1がリジン(L)、0がリジン(L)、3がリジン(L)、4がリジン(L)、それ以外を任意のアミノ酸(X1)とした配列を有するポリペプチドも選択した(図15(B)(3))。さらに、この配列においてアミノ酸番号1がスレオニン(T)、2がフェニルアラニン(F)もしくはセリン(S)であるポリペプチド(図13(B)(4))も選択した。
さらに、上記の図13(B)に記載したアミノ酸配列を有する構造モチーフ候補に、さらに配列を追加した構造モチーフ候補として、アミノ酸番号−7がプリン(P)、アミノ酸番号−6〜−3を任意のアミノ酸(X1)とした構造モチーフの基本型(図13C(1))を選択した。この追加される構造モチーフの基本型配列において、さらにアミノ酸番号−4がアルギニン(R)もしくはリジン(L)、アミノ酸番号−3がチロシン(Y)もしくはヒスチジン(H)である構造モチーフ候補(図13(C)(2))も選択した。さらに、図13(C)(3)に記載の配列も選択した。
実施例5 転写因子(Smad3)に相互作用するタンパク質のアミノ酸配列解析およびその構造モチーフ候補の選択および確認スクリーニングの標的タンパク質として転写因子であるSmad3を用い、これに相互作用するタンパク質のスクリーニングを実施例1で調製した対応付け分子ライブラリーから行った。Smad3は、TGFβシグナル経路で重要な役割を果たし、疾患との関連も高い425アミノ酸からなるタンパク質である。ヒトSmad3(GenBank Accession No. 1101269074203_2.1、1101269074203_3.1、1101269074203_4.1、1101269074203_5.1、1101269074203_6.1、1101269074203_7.1、1101269074203_8.1、1101269074203_9.1、1101269074203_10.1、1101269074203_11.1、1101269074203_12.1、1101269074203_13.1、1101269074203_14.1)は、そのC末端の網の酸配列(SSVS)をDDVDに置き換えた常活性体のDNA(配列番号44)を作成し、そのN末にGST (gulutathioneS-transferase)を付加させた融合タンパク質として実施例1と同様の方法で大腸菌で発現させた。この際、GSTとSmad3との間にトロンビンで切断できるサイトを導入した。そして実施例2に準じてSmad3を標的タンパク質としたDNA取得操作および濃縮操作を実施した。
DNA取得操作(図16:0)および各濃縮操作(図16:1〜5)の過程で得られた、対応付け分子作成用mRNAライブラリー各100ngを、4%ウレア変性PAGEにて泳動した。この後、mRNAライブラリーのスペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)をMolecularImager(Bio Rad社製)を用いて検出し、DNA取得操作および各濃縮操作におけるmRNAライブラリーの泳動パターンを解析した。
結果を図16に示す。図から明らかとおり、4および5回の濃縮操作により、不均一なmRNAライブラリー(レーン0に記載のスメアな泳動図)と比較し、いくつかの単一なバンドが形成された(レーン4および5)。この解析の結果、対応付け分子作成用mRNAライブラリーが4回から5回の濃縮操作により濃縮されていることが判った。
実施例3の方法に準じて4回および5回の濃縮操作を行って取得した対応付け分子作成用cDNAライブラリーをクローニングした後、塩基配列を解析した。さらに該塩基配列をアミノ酸配列に変換し、実施例4(1)に記載の方法に準じてマルチプルアラインメント解析を行なった結果、出現頻度の高かったアミノ酸配列を図17(1)から(5)及び配列番号15〜19に示す。図17に記載のアミノ酸配列を解析した結果、これらのタンパク質は1425アミノ酸からなるSARA(SmadAnchor for Receptor Activation)の一部であることが判った。このタンパク質はSmad3のMH2ト゛メインと相互作用し、Smad3の核内移行を抑制することが知られている。
つまり、本発明の濃縮操作は、標的タンパク質に結合して相互作用するに必要十分なポリペプチドが切り出されて取得されることが異なる2種類の標的タンパク質を用いた解析により確認された。
さらに、上記で解析したアミノ酸配列のうち、実施例4の方法に準じて存在頻度および出現頻度が高いことを指標として、図17(1)から(5)のアミノ酸配列で四角で囲った配列を構造モチーフ配列候補として選択した。
上記で選択した構造モチーフ配列候補は、文献(Genes Dev. 16 pp. 1950 (2002))に示されているSmad3とSARAの複合体をX線結晶構造解析で示された、SARAの相互作用部分とほぼ完全に一致していた。つまり、上記で選択した構造モチーフ配列候補が、実際の構造モチーフ配列であることが確認できた。
さらに、図17(5)配列の二重線部分で示した部位と結合が報告されている(Nat Genet. 2002 Aug;31(4):419-23.)PPP1CCがこの濃縮操作と解析により得られていることが判った。このことは、スクリーニングの標的タンパク質に対し、間接的に相互作用するタンパク質も同様に取得可能であることを示している。
また、濃縮操作4〜5回後に取得された上記Smad3と相互作用するドメインポリペプチドで、UNIGENEデータベースに登録されていたものを図3及び4に記載した。
実施例6 医薬化合物FK506に相互作用するタンパク質のアミノ酸配列解析およびその構造モチーフ候補の選択および確認
スクリーニングの標的化合物として免疫抑制剤であるFK506を用い、これに相互作用するタンパク質のスクリーニングを実施例1で調製した対応付け分子ライブラリーから行った。FK506はペプチジルプロリルイソメラーゼである蛋白質FKBPと複合体を形成してカルシニューリンに結合し、NFAT(nuclearfactor of activated T cells)の脱リン酸化とその核内移行によるT細胞の活性化を阻害する天然から単離された免疫抑制剤である。FKBPの中でも12kDaのFKBP12がFK506の主な標的である。
標的化合物であるFK506はまず1等量のジメチルアミノピリジン存在下で5等量の無水コハク酸とジメチルホルムアミド(DMF)中、室温で2日間室温で反応させ、カルボン酸誘導体として逆相HPLCで精製した。これをDMFに溶解し、それぞれ1等量のBenzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphoniumhexafluorophosphate(PyBOP)、1-Hydroxybenzotriazole hydrate(HOBt)、トリエチルアミンを加えて室温で5分間反応させた後、Biotin-POE3-amine(モレキュラーバイオサイエンス社製)を3等量加えて1時間反応させた。生成したビオチン化FK506を逆相HPLCで精製し、MALDI-TOF-MSで確認した。
上記で調製したビオチン化FK506を50%エタノール水溶液に1mMとなるように溶解した水溶液16μlをTBKT(150mM KCl、50mMTris-HCl(pH7.5)、0.2% Tween20)384μlに加えて撹拌し、MAGNOTEX-SAビーズ(Takara社製)100μl相当に加えて室温で30分混合した。このビーズを回収し、TBKT150μlで5回、FH506バインディングバッファー(150mM KCl、50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.1% Tween20、 1mMEDTA、 1mM DTT)300μlで3回洗って、これをFK506ビーズとした。上記の方法において、ビオチン化FK506の代わりにBiotin-POE3-amine(モレキュラーバイオサイエンス社製)を使って、これをビオチンビーズとして陰性コントロールとした。
このFK506ビーズおよびビオチンビーズに対して、実施例1で調製した対応付け分子ライブラリーを添加し、実施例2に記載の方法に準じてFK506に対して相互作用するタンパク質及びこれをコードするDNAの取得および濃縮操作を実施した。この結果、濃縮操作7回および8回で、SDS-PAGEで確認できるバンドが形成されたので、ここで得られた応付け分子作成用cDNAライブラリーを取得してクローニングした後、塩基配列を解析した。一方、陰性コントロールであるビオチンビーズでは、特定のDNAに集約することはなかった。
上記で得られた塩基配列をアミノ酸配列に変換し、実施例4(1)に記載の方法に準じてマルチプルアラインメント解析を行なった結果、出現頻度の高かったアミノ酸配列を図18及び配列番号20〜23に示した。ここで、取得された配列を解析したところ、FKBP12の全長に相当する配列(図18および図19:FKBP12)が得られた。またFKBP5の部分アミノ酸配列、(図18および19:FKBP5)が得られた。この部分アミノ酸配列は、FK506結合活性が比較的高いとされているN末端側のFK506結合ドメイン(FK1)を完全に含んでいた((図19:FKBP5)。このことから、本発明の標的物質を用いた濃縮操作は、標的物質が化合物でも行なうことができ、取得されるペプチドは、該化合物に結合して相互作用するに必要十分なポリペプチドが切り取られていることが確認された。
上記の濃縮操作では、さらに、FKBP12のホモログと推測されるタンパク質(図18:Homolog1(配列番号22)、Homolog2(配列番号23))が得られた。これらのアミノ酸配列よりFK506と結合するタンパク質の構造モチーフ候補配列を図18の再下段及び配列番号28に示した。Xは任意のアミノ酸を示す。
また、濃縮操作7〜8回後で得られたFK506と相互作用するポリペプチドをコードする核酸のうち、UNIGENEデータベースに登録されていた遺伝子の番号及び遺伝子名を図5及び6に示した。
本発明の方法は、標的物質との相互作用に必要なドメインポリペプチドをタンパク質から切り出して取得する方法(図20(B))、および得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列を解析し、標的物質との相互作用に必要十分なアミノ酸配列からなる構造モチーフ配列を同定する方法(図21(A))、ならびに該方法により同定された構造モチーフを利用して標的物質に相互作用する化合物を設計する方法(図21(B))等が提供される。該方法は、標的物質が疾患に関連する物質であった場合、該疾患の治療薬となる短鎖ポリペプチドあるいは化合物の取得・設計等に有用である。
PPARγ2と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図である。 PPARγ2と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図であり、図1の続きである。 Smad3と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図である。 Smad3と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図であり、図3の続きである。 FK506と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図である。 FK506と相互作用するドメインポリペプチドをコードする遺伝子を示した図であり、図5の続きである。 本発明の構造モチーフの同定方法を示した模式図である。 PPARγ2を標的物質とした濃縮操作の結果を示す電気泳動写真である。 PPARγ2を標的物質として得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列の例を示した図である。 濃縮操作と、共通配列を有する核酸の割合の関係を示すグラフである。 濃縮操作と、共通配列を有する核酸量の関係を示すグラフである。 PPARγ2を標的物質とした濃縮操作で得られたドメインポリペプチドのPPARγ2との結合度を示したグラフである。 PPARγ2を標的物質とした濃縮操作で得られたドメインポリペプチドがPPARγ2の天然のリガンドの結合を阻害する程度を示したグラフである。 PPARγ2を標的物質とした濃縮操作で得られたドメインポリペプチドの各アミノ酸の存在頻度および出現頻度を示すグラフである。 PPARγ2を標的物質とした濃縮操作で得られたドメインポリペプチドから得られた構造モチーフ配列を示す図である。 Smad3を標的物質とした濃縮操作の結果を示す電気泳動写真である。 Smad3を標的物質として得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列の例を示した図である。 FK506を標的物質として得られたドメインポリペプチドのアミノ酸配列の例を示した図である。 FK506の天然のリガンド配列における本発明の濃縮操作で得られたドメインポリペプチドの位置を示す図である。 本発明のドメインポリペプチドを示す模式図である。 本発明の構造モチーフを示す模式図である。

Claims (8)

  1. (1)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(2)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(3)上記(1)および(2)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部が、ドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用するドメインポリペプチドの選抜取得方法。
  2. (1)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(2)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(3)上記(1)および(2)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部がドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程、(4)工程(3)でクラスターを形成した核酸を取得する工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用するドメインポリペプチドをコードする核酸の選抜取得方法。
  3. ドメインポリペプチドが、全長タンパク質の90%以下の長さのポリペプチドからなり、かつ標的物質との相互作用ドメインの130%以下の長さのポリペプチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. (1)タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群と標的物質とを接触させる工程、(2)標的物質に特異的に結合した該タンパク質−核酸連結体を取得し、該連結体の核酸部を増幅し、これを鋳型の一部として用いて、タンパク質部とそれをコードする核酸部が、核酸部の3’末端に結合した核酸構築物を介して直接結合したタンパク質−核酸連結体群を調製する工程、(3)上記(1)および(2)の工程を、標的物質に特異的に結合したタンパク質−核酸連結体の核酸部がドメインポリペプチドをコードするクラスターを形成するまで繰り返す工程、(4)工程(3)でクラスターを形成した核酸の塩基配列を解析する工程、(5)該塩基配列あるいはそれを翻訳したアミノ酸配列から存在頻度および/または出現頻度を指標として共通配列を選択する工程を含むことを特徴とする構造モチーフ配列の同定方法。
  5. 請求項4に記載の構造モチーフ配列の一部に変異を導入し、該変異構造モチーフを標的物質と接触させて相互作用を解析することを特徴とする変容した機能を有する構造モチーフの取得方法。
  6. (1)請求項1または3で選抜されたドメインポリペプチド、あるいは請求項4または5に記載の構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(2)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程、(3)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う低分子化合物を設計する工程を含むことを特徴とする標的物質と相互作用する化合物の分子設計方法。
  7. 標的物質が、疾病に関連するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. (1)標的物質が疾病に関連するもので、請求項1または3で選抜されたドメインポリペプチドまたは請求項4または5に記載の構造モチーフと標的物質との複合体を作製する工程、(2)該複合体の立体構造解析を行い標的物質と該ポリペプチドまたは構造モチーフとの結合部位を特定する工程、(3)同定された結合部位から標的物質の結合空間を予測して、該結合空間に合う化合物を設計し、(4)設計された化合物を合成する工程を含むことを特徴とする標的物質が関連する疾患の治療および/又は予防薬の製造方法。
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JP2012504415A (ja) * 2008-09-30 2012-02-23 アボット・ラボラトリーズ 改良rnaディスプレイ法

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