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JP2006035671A - Frp構造体 - Google Patents

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JP2006035671A JP2004219786A JP2004219786A JP2006035671A JP 2006035671 A JP2006035671 A JP 2006035671A JP 2004219786 A JP2004219786 A JP 2004219786A JP 2004219786 A JP2004219786 A JP 2004219786A JP 2006035671 A JP2006035671 A JP 2006035671A
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Hideki Nudeshima
Jiro Sonoda
治朗 園田
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Abstract

【課題】高剛性、軽量性を備えながら高いX線透過性を有するとともに、制振性に優れたFRP構造を提供し、X線機器用部材等に好適なFRP構造体を提供する。
【解決手段】次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[B]の片側に厚みが5〜200μmの構成要素[C]、もう一方の側に構成要素[A]となる積層構成を有し、かつFRP構造体の中立面が[A]の内部にあることを特徴とするFRP構造体。
[A]熱可塑性樹脂発泡体層
[B]連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層
[C]シート状樹脂層
【選択図】 図1

Description

本発明は、制振性に優れたFRP構造に関し、さらに詳しくは高剛性、軽量性、X線透過性が必要な医療機器部品等の部材として好適な良外観FRP構造に関する。
X線撮影用カセッテ、X線画像変換パネルやCT天板等の高いX線透過性を必要とする医療機器部品においては、アルミニウムに替わり、アルミニウムよりもX線透過性に優れ、軽量である繊維強化プラスチック(以下、FRPと略記する。)製、特に炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと略記する。)製の構造体が提案されている。
CFRP構造体は、自重および荷重に対する撓みの低減や、衝撃に対して、必要な剛性、強度を確保するのに有効であるが、X線機器用部材の中にはX線技師が直接持ち運び、取り扱う部材があり、さらなる軽量化が求められている。
また、X線撮影においては、撮影画像の鮮鋭化が必要な反面、人体へのX線被爆量低減のためX線照射量を低減することが求められている。より少ない照射量で鮮鋭な画像特性を得るためには、X線機器構造体のさらなるX線透過性の向上が必要である。
かかる課題を解決せんとして、CFRP等の2層の剛性層の間に剛性層よりも密度が小さくX線透過性が良好な充填材層を含む放射線画像変換パネルが提案されている(特許文献1)。
この方法では、充分な軽量性、剛性、強度が得られ、X線透過性も向上するものの、撮影画像の鮮鋭化については、従来のCFRP構造体に比較してさほどの改善は見られず充分満足できるレベルには至っていない。
また最近、安定したX線画像特性を得るために、撮影中に構造体自身が大きく振動しないように、外部から伝達される振動に対する制振性が必要であることがわかってきている。
一般的に制振性を向上させるためには以下のような要件が有効である。
(1)高剛性化による構造体の振動初期振幅の低減
(2)高剛性化と軽量化による固有振動数の増大
(3)振動エネルギー変換に係る損失係数の増大
本観点から特許文献1について考察すると高剛性化と軽量化により上記(1)と(2)の要件はある程度満たされると考えられるが、(3)の要件については考慮されておらず、制振性は不十分なものである。
このように、X線透過性が必要な医療機器部品等において、充分な制振性を有する構造材はこれまで提案されていなかった。
特開2002−303696 号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を鑑み、高剛性を備えながら、軽量性、X線透過性、制振性を同時に向上させたFRP構造体を提供することを目的とする。また、X線機器用構造体等に好適なFRP構造体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明によれば、次の手段を採用するものである。すなわち、次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[B]の片側に厚みが5〜300μmの構成要素[C]、もう一方の側に構成要素[A]となる積層構成を有し、かつFRP構造体の中立面が[A]の内部にあることを特徴とする。
[A]熱可塑性樹脂発泡体層
[B]連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層
[C]シート状樹脂層
なお、本発明において、FRP層とは、異なる種類の強化繊維を備えたり、連続強化繊維が異なる角度で配されて、厚み方向に不均一な分布を備えていたとしても、同一のマトリックス樹脂によって一体化されているものは単一のFRP層と定義する。
また本発明において、中立面とは、厚み方向に外力を負荷し曲げ変形が生じた場合に、曲げ応力および曲げ歪が零になり伸縮しない面と定義する。
上記構成要素[A]が、見かけ密度0.03〜0.7g/cmであることが好ましい。また上記構成要素[A]が、25℃での110Hzに対する損失係数が0.05〜1.5であることが好ましい。ここでいう損失係数は、JIS K 7244に基づき測定される。
さらに上記構成要素[A]が、せん断弾性率が0.01〜0.3GPaであることが好ましい。ここでいう熱可塑性樹脂発泡体のせん断弾性率とは、ASTM D3846に基づき測定される物性値である。またさらに上記構成要素[A]が、発泡セルの平均直径が1mm以下であることが好ましい。
上記構成要素[B]が、引張弾性率200〜850GPaの連続炭素繊維を30〜80重量%含むことが好ましい。また上記構成要素[B]が、一方向に引き揃えた連続炭素繊維を異なる角度で積層した構成を含むことが好ましい。
上記構成要素[A]の総厚みTa(mm)と構成要素[B]の総厚みTb(mm)との比Ta/Tbが、0.5〜10であることが好ましい。
上記構成要素[C]が、引張弾性率が0.5〜5GPaの樹脂からなることが好ましい。シート状樹脂層の引張弾性率とは、JIS K 7161に基づく物性値である。また上記構成要素[C]が、25℃での110Hzに対する損失係数が0.01〜1.00の樹脂からなることが好ましい。
構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の25℃での110Hzに対する損失係数ηaと構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂の25℃での110Hzに対する損失係数ηcとの比ηa/ηcが、1〜100であることが好ましい。
全体の見かけ密度が、0.2〜1.4g/cmであることを特徴とする。また全体の厚みが、0.8〜5.0mmであることが好ましい。
FRP構造体は、構成要素[A]の両面に構成要素[B]を配置した構造を含むことが好ましい。少なくとも片側表面が構成要素[C]であり、該表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05〜0.5μmであることが好ましい。ここでいう表面の算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601に基づき測定される。
本発明のFRP構造体は、X線透過性が必要な医療機器部品として使用されることが好ましい。
上記構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の成形後の厚みが成形前の厚みの0.2〜0.95倍となるように、加熱加圧成形し、構成要素[A]、[B]および[C]を一体化することが好ましい。
また、上記構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の成形後の厚みが成形前の厚みの0.2〜0.95倍となるように、加熱加圧成形し、構成要素[A]および[B]を一体化した後、構成要素[C]を形成することも好ましい。
本発明によれば、熱可塑性樹脂発泡体層、連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層、およびシート状樹脂層が順に配された積層構造を含み、FRP構造体の中立面が熱可塑性樹脂発泡体層の内部に配置されていて、シート状樹脂層の厚みが5〜200μmの範囲内であることから、高剛性、軽量かつX線透過性が高く、制振性に優れたFRP構造体を得ることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態の例を図面を参照しながら説明する。
図1、図2、図3はいずれも、本発明によるFRP構造体の斜視図である。
これらは、いずれも熱可塑性樹脂発泡体層1、およびシート状樹脂層3がFRP層2を挟んで配されている積層構造を含んだFRP構造体である。
FRP層2は、高い強度や剛性を確保するために必要である。強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成する。本発明では、軽量性とX線透過率をより高く確保するため、より少ない厚みで強度や剛性といった機械特性を得られることから、強化繊維の形態としては、連続繊維であることが必要である。
強化繊維の材質としては、無機繊維、有機繊維の中で、比強度、比弾性率に優れ、X線透過性が良好な炭素繊維を用いる。炭素繊維として、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、セルロース系など挙げられるが、強度・剛性のバランスからはPAN系の炭素繊維が好ましく、引張弾性率が200〜850GPaであることがより好ましい。引張弾性率が200GPa以上であれば、FRP層2に必要な剛性を効率よく得られることから好ましい。引張弾性率は高いほうが、少ない炭素繊維含有量で必要な剛性を得ることができるため、軽量性およびX線透過性の点でより好ましいため、現状技術レベルで入手しうるものを上限とした。さらに引張弾性率が高い炭素繊維があれば使用することが可能である。
また、他の強化繊維、例えば、ガラス繊維、有機高弾性率繊維(例えば、米国デュポン(株)製のポリアラミド繊維“ケブラー”)、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、単価ケイ素繊維などの高強度、高弾性率繊維などを併用しても良い。
また、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維や、有機天然繊維などを含んでも良い。
図4は、本発明によるFRP構造体中のFRP層2の一例を示す斜視図である。FRP層は通常、1方向に配向した連続炭素繊維4と、マトリックス樹脂5からなる層2’を複数層積層し、一体化したものである。積層数や連続炭素繊維4の各層の角度は特に限定されず、必要な強度や剛性に応じ任意に設定することができる。上記1方向に配向した層2’の各層はそれぞれ異なる配向方向に積層することが好ましい。異なる配向方向とは、少なくとも2種類以上の配向方向を備えていればよく、FRP層2を構成する複数の層2’の中には同じ配向角度からなる層2’を含んでいても良い。
またFRP層2の別の例として、連続炭素繊維の織物と、マトリックス樹脂5からなる層を含んだものも挙げることができるが、好ましくは、一方向に引き揃えた連続炭素繊維を異なる角度で複数層積層した図4に代表されるタイプの構造を含むものである。一方向に引き揃えられた連続炭素繊維は、連続炭素繊維の織物と比較すると、繊維の屈曲が少ないため、同じ引張弾性率の炭素繊維を同じ繊維含有率で使用した場合、より高い剛性を発現すること、また、炭素繊維が面内で均一に分布しやすいことに加えて、織り目等の空隙も生じないため、均一なX線透過性分布が得られやすいことから好ましい。
またFRP層2は、引張弾性率200〜850GPaの範囲内の連続炭素繊維4をFRP層2の30〜80重量%の範囲内で含むことが好ましい。炭素繊維の含有率が30重量%未満の場合には、FRP層2が必要な剛性を得るための重量が大きくなるため、FRP構造体の軽量性を保持したまま高い剛性を得ることが難しくなる。反対に炭素繊維の含有率が80重量%より大きな場合には、強化繊維にマトリックス樹脂5を均一に含浸することが困難となり、FRP構造の強度不足や外観品位が著しく劣るなどの品質上の問題が発生する可能性がある。
マトリックス樹脂5としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂など、熱または光や電子線などの外部からのエネルギーにより硬化して、少なくとも部分的に三次元硬化物を形成する樹脂があげられる。熱可塑性樹脂の具体例として、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂などがある。本発明に適用するマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性マトリックス樹脂を使用した場合には、そのガラス転移温度は100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であることがよい。その理由は、本発明のFRP構造体は、100℃前後で塗装や蒸着などの表面処理工程を適用することがあり、マトリックス樹脂のガラス転移温度が100℃未満であると表面処理工程中にFRP構造体の剛性が低下し、変形や反りの問題が起きるからである。
熱可塑性樹脂発泡体層1は、FRP構造体において軽量性を損なわずに断面2次モーメントを増加させ、FRP構造として高い剛性を得るためのものである。さらに熱可塑性樹脂発泡体層1は連続炭素繊維4を含むFRP層2よりも一般的に低密度であるためX線の透過性に優れる。
X線透過性は、構造体材質の分子量および厚みに依存する。分子量および/または厚みが小さい程、一般的にX線透過性は向上する。すなわちFRP構造体は、見かけ密度が小さな熱可塑性樹脂発泡体層1を備え、かつ全体厚みが小さいほど、X線が透過しやすいため低照射量でも高コントラストでクリアな画像が得られる。医用放射線機器においては、構造体のX線の透過しやすさをにアルミニウム当量(mmAl)というパラメータで評価する。これは構造体のX線透過率がアルミニウムの厚さにして何mmに相当するかという尺度であり、アルミニウム当量が小さな値である程X線透過性が高く好ましい。
また本発明のFRP構造体をX線機器用部材に用いた場合に、安定したX線画像特性を得るためには、撮影中に構造体外部からの加振に対する構造体の制振性を高める必要がる。そのための主な要件は以下の通りである。
(1)構造体の振動初期振幅の低減
(2)構造体の固有振動数の増大
(3)構造体の損失係数の増大
高剛性化が(1)と(2)に効き、これには部材の高弾性化および/または厚肉化が有効である。本発明では、弾性率が高い連続炭素繊維を有したFRP層2を備えることによって高剛性化を図り、(1)と(2)に対し効果を発揮する。
また軽量化が、(2)に効き、これには部材の低密度化および/または薄肉化が有効である。本発明では、熱可塑性樹脂発泡体層1を備えることによって低密度化を図り、(2)に対して効果を発揮する。
さらに動的粘弾性の向上および/または構造体内部での摩擦が振動エネルギーを他のエネルギーへ変換することから(3)に効く。本発明では、一般的に金属や熱硬化性樹脂よりも動的粘弾性が高い熱可塑性樹脂を使用することにより、外部からの加振に対して熱可塑性樹脂発泡体層1の振動エネルギーが内部損失で熱エネルギーに変換され、振動振幅が減衰される。またFRP層2の内部で強化繊維とマトリックス樹脂との間の摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。さらに、FRP層2が熱可塑性樹脂発泡体層1に接していることによって、FRP層2を伝達する振動エネルギーが熱可塑性樹脂層1との界面で減衰することも期待できる。熱可塑性樹脂発泡体層1の表面は、セル構造によって平滑な面とはなりにくいため、FRP層2との界面は平面接触の場合と比較して接触面積が増加し振動エネルギーの減衰には特に効果的である。シート状樹脂層3も熱可塑性樹脂発泡体層1と同様に軽量性、X線透過性および制振性が期待できる。また、FRP層2と接して配されることにより、FRP層2の繊維模様や黒色を隠蔽し優れた意匠性をも期待できる。
またこの積層構造において、FRP構造体の中立面は熱可塑性樹脂発泡体層1の内部に配置されることが必要である。これによりFRP層2およびシート状樹脂層3と比較して弾性率の小さな熱可塑性樹脂発泡体層1に対する曲げ応力による変形の影響を低減することが可能で、FRP構造体の曲げ剛性向上が図れる。
またシート状樹脂層3の厚みは5〜300μmの範囲内であることが必要である。これは厚みが5μm未満であると制振効果が不十分となるためである。また、厚みが50μm以上であれば隠蔽効果により、外観意匠性が向上するため好ましい。反対に厚みが300μmより大きな場合には、FRP構造体の比弾性率の低下を招き、FRP構造体の剛性低下、重量増加に繋がり好ましくない。
熱可塑性樹脂発泡体層1の材質は、ポリアミド樹脂、変性フェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリメタクリルイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1‐ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルエーテルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、ポリエステルエステルエラストマーなどの各種エラストマー類などがあるがこれらに限定されるものではなく、これらを単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
本発明のFRP構造体においては、熱可塑性樹脂発泡体層1は、見かけ密度が0.03〜0.7g/cmの熱可塑性樹脂発泡体からなることが好ましい。熱可塑性樹脂発泡体の見かけ密度が0.03g/cm以上であれば、FRP構造として十分な強度や剛性が確保でき好ましい。また見かけ密度が0.7g/cm以下の場合には、軽量性やX線透過性が良好となり、設計の自由度が広がるため好ましい。
また、熱可塑性樹脂発泡体は、25℃での110Hzに対する損失係数が0.05〜1.5の範囲内であることが好ましい。損失係数が0.05以上であれば、振動エネルギーが効率よく減衰する。一方、振動エネルギーの減衰の観点からは損失係数は大きい方が好ましいが、一般に損失係数が1.5を超える領域では、剛性の低下が大きくなるため、損失係数は1.5以下である方が設計上の制約が少なくなることから好ましい。
また、熱可塑性樹脂発泡体層1はFRP構造体中で中立面を含んで配されるため、FRP構造体の曲げ剛性には曲げ弾性率よりもせん断弾性率の寄与が大きい。また、せん断弾性率が0.3GPaを超える領域では、一般的に損失係数が小さくなることから、制振性が低下する。係る観点から熱可塑性樹脂発泡体層1は、せん断弾性率が0.01〜0.3GPaの熱可塑性樹脂発泡体からなることが好ましい。
また熱可塑性樹脂発泡体層1は、発泡セルの平均直径が1mm以下である熱可塑性樹脂発泡体からなることが好ましい。これは平均直径が1mm以下であれば、熱可塑性樹脂発泡体層1の厚みが薄い場合(例えば2mm以下の薄肉厚の場合等)でも、強度のばらつきが生じ難く、FRP構造体が安定した強度を得易くなるとともに、透過したX線がより均一な強度分布となり、また、熱可塑性樹脂発泡体層1の内部でX線の散乱が生じ難くなることから好ましい。
さらに、構成要素[A]である熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚みTa(mm)と構成要素[B]であるFRP層2の総厚みTb(mm)との比Ta/Tbが、0.5〜10の範囲内であることが好ましい。これは、該比が0.5以上であれば、FRP構造体としての制振性やX線透過性が、熱可塑性樹脂発泡体層1の十分な厚みによって確保することが可能になり、設計の自由度が高くなる。また10以下であれば、曲げ剛性や強度の低下の点を懸念せず設計することができることから好ましい。
またシート状樹脂層3は、前記FRP層2のマトリックス樹脂5で挙げたような各種熱硬化性樹脂や、前記熱可塑性樹脂発泡体層1で挙げたような各種熱可塑性樹脂が使用できる。またシート状樹脂層3は、同種または異種の合成樹脂からなる織物や不織布を含んでいてもよい。さらに、シート状樹脂層3は、自由度の高い色調や、鏡面に近い平滑な面、シボなどの意匠性が高い表面構造などを比較的容易に得ることができるものであり、FRP層2の繊維模様や黒色を隠蔽することもできる。シート状樹脂層3の形成としては、フィルム、シート材、不織布をFRP構造体の表面に配設してもよいし、溶融した熱可塑性樹脂を塗布、コーティング、成形してもよい。
またシート状樹脂層3は、引張弾性率が0.5〜5GPaの範囲内の樹脂からなることが好ましい。これはFRP構造体が高い剛性を確保するために有効である。またシート状樹脂層3は、25℃での110Hzに対する損失係数が0.01〜1.00の範囲内である樹脂からなることが好ましい。これは前記熱可塑性樹脂発泡体層1と同様に振動エネルギーの高い減衰と剛性とのバランスを保ち、設計の制約を少なくするために有効である。
構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の25℃での110Hzに対する損失係数ηaと構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂の25℃での110Hzに対する損失係数ηcとの比ηa/ηcは、1〜100であることが好ましい。1以上であると、振動減衰効果の高い中立面付近に、損失係数の大きな構造を配置することが可能となりFRP構造体の制振性を高めるために好ましい。100以下の場合には、制振性と曲げ剛性との適切なバランスを保持することが可能で、設計の制約を少なくするために好ましい。
またさらに、FRP構造体全体の見かけ密度は、0.2〜1.4g/cmの範囲内であることが好ましい。これは持ち運び性、X線透過性および制振性を向上させるためには見かけ密度1.4g/cm以下の軽量性が有効である。一方密度0.2g/cm以上の場合、十分な強度や曲げ剛性を得易く、設計上の制約が少なくすることができるため好ましい。
またFRP構造体全体の厚みは、0.8〜5.0mmの範囲内であることが好ましい。これは0.8mm以上の厚みであると、軽量性やX線透過性の向上と、強度や剛性、制振性の確保とが適切にバランスされ、設計の制約を少なくすることが可能である。また反対に厚みが5.0mm以下の場合には、軽量性やX線透過性が向上するとともに、構造体として装置の一部に組み込まれる際に、薄肉であるため部品間の干渉が生じることが少なく装置設計上の厚みの制限を受けにくいことから好ましい。
さらに本発明のFRP構造体は、構成要素[A]の両面に構成要素[B]を配置した構造、すなわち、図2に示すように熱可塑性樹脂発泡体層1をFRP層2で両面から挟んだサンドイッチ構造を有することがより好ましい。これは、曲げ荷重に対して、曲げ応力が大きくなる両外層に曲げ弾性率が高いFRP層2を配置し、曲げ応力が零である中立面付近に曲げ弾性率が小さい熱可塑性樹脂発泡体層1を配置することによって、同一見かけ密度の下でFRP構造体の曲げ剛性を向上させる点で有効なためである。また、本構成を採ればFRP構造体の反りの低減に有効であり、表面の平滑性も得られやすいことからも好ましい。さらにより好ましくは、図3に示すような多層積層構造であり、層間の界面が多数存在するために、界面での振動減衰が大きいことから好ましい。
またさらにFRP構造体表面の少なくとも片面がシート状樹脂層3からなり、その表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。これはFRP構造体として高い意匠性を得る他に、FRP構造表面の後加工として、塗装や蒸着などの表面処理を施す場合があり、その際に均一厚みの表面膜厚が得られやすく、良好な表面品位を得るために有効であるとともに、FRP構造に入射するX線の散乱を低減する上で好ましい。
本発明のFRP構造体は、軽量性を備えながら高強度、高剛性かつ制振性に優れたFRP構造体であり、X線透過性が必要な医療機器部品として使用されることが好ましい。
さらに本発明のFRP構造体は、熱可塑性樹脂発泡体層1の成形後の厚みが成形前の厚みの0.2〜0.95倍となるように、ホットプレス、オートクレーブ、レジントランスファーモールディング等の成形法を単独または併用することによって加熱加圧成形され、熱可塑性樹脂発泡体層1およびFRP層2が一体化することが好ましい。これにより加熱加圧成形される際に、熱可塑性樹脂発泡体層1が成形圧力の一部を吸収し、FRP構造体として面内で均一な圧力分布の下で成形がなされる。結果として厚みばらつきが小さく、残留歪や反りの小さなFRP構造体を提供できるため好ましい。なお、シート状樹脂層は、熱可塑性樹脂発泡体層1およびFRP層2と同時に一体化しても良いし、熱可塑性樹脂発泡体層1およびFRP層2を一体化後、貼着や塗装等により、形成しても良い。
(実施例)
実施例、比較例に使用した炭素繊維の引張弾性率の測定方法を以下に示す。
(a)引張弾性率
JIS R 7601炭素繊維試験方法の樹脂含浸繊維束試験方法に準じて、引張弾性率の測定を行なった。試験片長は200mmとし、試験回数は5回で平均値を採用した。
図1に示すFRP構造体を以下の手順で製造した。
引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維4(東レ(株)製”トレカ”T700S)を一方向にシート状に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付200g/m、炭素繊維含有率67重量%のUDプリプレグを用意した。本プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで3枚切り出し、配向角度が(0°/90°/0°)となるように常温で3枚を貼り合わせプリプレグ積層物を得た。
厚み3.0mmのポリプロピレン樹脂発泡体シート(古河電気工業(株)製”エフセル”CP4030)1枚と、厚み0.19mmのPETフィルム(東レ(株)製"ルミラー”S10#188)1枚をそれぞれ縦300mm、横300mmの大きさで準備した。
これらを、(ポリプロピレン樹脂発泡体シート/配向角度が(0°/90°/0°)のプリプレグ積層物/PETフィルム)となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。該積層体をホットプレス装置を用いて、130℃、1MPaで加熱加圧下、60分間保持し、プリプレグ積層物を硬化させると共に、各層を接着し、厚み3mmのFRP構造体を得た。
得られたFRP構造体中で、ポリプロピレン樹脂発泡体シートが熱可塑性樹脂発泡体層1に、プリプレグ積層物の硬化したものが、FRP層2に、PETフィルムが、シート状樹脂層3に対応する。
得られたFRP構造体のシート状樹脂層3の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。JIS B 0601表面粗さ−定義及び表示に準じて、シート状樹脂層3側のFRP構造体表面の算術平均粗さ(Ra)を触針式の表面粗さ計で測定を行なった。カットオフ値λcは0.8mmとし、評価長さlnは4mmとし、試験回数は5回で平均値を求めたところ、算術平均粗さ(Ra)は0.2μmであった。
またFRP構造体の断面を拡大顕微鏡で観察し、熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚みとFRP層2の総厚みとを測定し、(熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚み(mm))/(FRP層2の総厚み(mm))を求めたところ、3.92であった。
また断面拡大観察により、熱可塑性樹脂発泡体層1の発泡セル20個を無作為に選択し、その直径を測定した。20個の平均直径は0.15mmであった。
さらにFRP構造体から熱可塑性樹脂発泡体層1の一部を5片切り出し、その見かけ体積と重量から5片の平均見かけ密度を求めたところ、0.41g/cmであった。
またFRP構造体の見かけ体積と重量からFRP構造体の見かけ密度を求めたところ、0.75g/cmであった。熱可塑性樹脂発泡体層1の厚みは2.25mmであり、成形前のポリプロピレン樹脂発泡体シート厚みの0.75倍であった。
X線照射装置((株)東芝製 診断用X線高電圧装置 KXO−30F)を用いて60kVでX線をFRP構造体の平滑面に向けて照射し、FRP構造体を透過したX線透過線量を線量計(Radical Corporation製 model No.2025 Radiation Monitor)で測定した結果、アルミニウム当量は0.17mmAlであった。
本FRP構造体から、幅15mm、長さ140mmの大きさの短冊状試験片を0°方向が長さ方向になるものを5本、90°方向が長さ方向になるものを5本切り出した。本試験片を用いて、JIS K 7074炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法に準じて3点曲げ試験を行なった。使用した圧子は半径5mmの丸型圧子、支点間距離は120mm、試験速度は8mm/minである。短冊状試験片は、熱可塑性樹脂発泡体層1が圧子側になるように配置した。測定された0°方向の5片の曲げ弾性率の平均値は15GPaであり、同様に90°方向の5片の曲げ弾性率の平均値は11GPaであった。
積層構造体の構造解析計算の結果、FRP構造の中立面は熱可塑性樹脂発泡体層1の内部に配されていた。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は軽量でX線透過性に優れ、高剛性である。
また、本FRP構造体から0°方向を長さ方向として、幅15mm、長さ170mmの試験片を5本切り出した。本試験片の片端を厚み5mmのシリコンゴム製シートを介して万力で固定し、スパン120mmの片持ち梁状に配置した。片持ち梁状の先端に加速度ピックアップを両面テープで接着するとともに、インパクト加振用ハンマーで梁の支持部付近を叩き試験片に加振した。ハンマーの衝撃電気信号と、加速度ピックアップの電気信号は、アンプを介してFFTアナライザ((株)小野測器製マルチパーパスFFTアナライザ CF−5210)に接続されている。FFT解析によって試験片の固有振動数と半値幅法による損失係数を求めた。試験片5片の平均値を求めると、固有振動数は140Hzであり、損失係数は0.18であった。この場合の振動減衰曲線は図5のようになる。縦軸が振動振幅、横軸が時間であり、短時間に振動振幅が0近似となり制振性に優れていた。
図2に示すFRP構造体を以下の条件にて製造した。
FRP層2の材料には実施例1と同じUDプリプレグを使用した。該プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで6枚切り出し、一方向に引き揃えられた連続炭素繊維の配向角度が(0°/90°/0°)となるように常温で3枚を貼り合わせたプリプレグ積層物を2組準備した。
また別途シート状樹脂層3の材料には実施例1と同じPETフィルムを2枚、熱可塑性樹脂発泡体層1の材料には厚み2.0mmのポリプロピレン樹脂発泡体シート(古河電気工業(株)製”エフセル”CP3020)を1枚、それぞれ縦300mm、横300mmの大きさで準備した。
これらを、図2の構成となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。
積層体中の2対のプリプレグ積層物が積層体の厚さ方向に対して連続炭素繊維4の配向角が対称となるように貼り合わせた。実施例1と同様の条件で成形し、厚み3mmのFRP構造体を得た。
得られたFRP構造体の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。実施例1と同様の方法で、得られたFRP構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は0.2μm、(熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚み(mm))/(FRP層2の総厚み(mm))は1.32、熱可塑性発泡体層1の発泡セルの平均直径は0.15mm、熱可塑性樹脂発泡体層1の見かけ密度は0.41g/cm、FRP構造体の見かけ密度は0.94g/cm、アルミニウム当量は0.25mmAl、0°方向の曲げ弾性率は30GPa、90°方向の曲げ弾性率は20GPaであった。
FRP構造の中立面は熱可塑性樹脂発泡体層1の内部に配されている。
熱可塑性樹脂発泡体層1の厚みは1.5mmであり、成形前の厚みの0.75倍であった。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は軽量でX線透過性に優れ、高剛性である。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は190Hzであり、損失係数は0.11であった。この場合の振動減衰曲線は図6のようになり、短時間に振動振幅が0近似となり制振性に優れていた。
図2に示すようなFRP構造体を以下の条件にて製造した。
FRP層2の材料には、引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維4(東レ(株)製”トレカ”T700S)の平織り織物に、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付320g/m2、炭素繊維含有率50重量%の織物プリプレグを準備した。該プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで2枚切り出した。
また、実施例1と同じPETフィルム2枚とポリプロピレン樹脂発泡体シート1枚をそれぞれ縦300mm、横300mmの大きさで準備した。
これらを、図2の構成となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。実施例1と同様の条件で成形し、厚み3mmのFRP構造体を得た。
得られたFRP構造体の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。実施例1と同様の方法で、得られたFRP構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は0.2μm、(熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚み(mm))/(FRP層2の総厚み(mm))は、2.86、熱可塑性樹脂発泡体層1の発泡セルの平均直径は0.2mm、熱可塑性樹脂発泡体層1の見かけ密度は0.35g/cm、FRP構造体の見かけ密度は0.80g/cm、アルミニウム当量は0.18mmAl、0°方向の曲げ弾性率は17GPa、90°方向の曲げ弾性率は17GPaであった。FRP構造の中立面は熱可塑性樹脂発泡体層1の内部に配されている。熱可塑性樹脂発泡体層1の厚みは1.95mmであり、成形前の厚みの0.65倍であった。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は軽量でX線透過性に優れ、高剛性である。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は150Hzであり、損失係数は0.14であった。この場合の振動減衰曲線は図7のようになり、短時間に振動振幅が0近似となり制振性に優れていた。
図3に示すようなFRP構造体を以下の条件にて製造した。
FRP層2の材料に引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維4(東レ(株)製”トレカ”T700S)を一方向にシート状に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付125g/m、炭素繊維含有率67重量%のUDプリプレグを用意し、該プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで8枚切り出し、連続炭素繊維の配向角度が(0°/90°)となるように常温で2枚を貼り合わせたプリプレグ積層物を4組得た。
また実施例1と同じPETフィルム4枚と、実施例2と同じポリプロピレン樹脂発泡体シート1枚をそれぞれ縦300mm、横300mmの大きさで準備した。
これらを、図3の構成となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。積層体中の4対のプリプレグ積層物は積層体の厚さ方向に対して連続炭素繊維4の配向角が対称となるように貼り合わせた。実施例1と同様の条件で成形し、厚み3mmのFRP構造体を得た。得られたFRP構造体の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。実施例1と同様の方法で、得られたFRP構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は0.2μm、(熱可塑性樹脂発泡体層1の総厚み(mm))/(FRP層2の総厚み(mm))は、1.37、熱可塑性樹脂発泡体層1の発泡セルの平均直径は0.15mm、熱可塑性樹脂発泡体層1の見かけ密度は0.47g/cm、FRP構造体の見かけ密度は0.99g/cm、アルミニウム当量は0.21mmAl、0°方向の曲げ弾性率は23GPa、90°方向の曲げ弾性率は20GPaであった。FRP構造の中立面は熱可塑性樹脂発泡体層1の内部に配されている。熱可塑性樹脂発泡体層1の厚みは1.32mmであり、成形前の厚みの0.66倍であった。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は軽量でX線透過性に優れ、高剛性である。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は160Hzであり、損失係数は0.17であった。この場合の振動減衰曲線は図8のようになり、短時間に振動振幅が0近似となり制振性に優れていた。
(比較例1)
FRP層2の材料として実施例1と同じ引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維4を一方向にシート状に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付125g/m、炭素繊維含有率67重量%のUDプリプレグを準備した。本プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで22枚切り出し、一方向に引き揃えられた連続炭素繊維の配向角度が(0°/90°/0°/・・・/90°/0°/0°/90°/・・・/0°/90°/0°)となるように常温で22枚を貼り合わせプリプレグ積層物を得た。また別途シート状樹脂層3の材料として実施例1と同じPETフィルム2枚を縦300mm、横300mmの大きさで準備した。これらを、(PETフィルム/プリプレグ積層物/PETフィルム)となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。実施例とは異なり、熱可塑性樹脂発泡体シートは用いない。実施例1と同様の条件で成形し、厚み3mmのFRP構造体を得た。得られたFRP構造体の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。
実施例1と同様の方法で、得られたFRP構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は0.2μm、FRP構造体の見かけ密度は1.55g/cm、アルミニウム当量は0.39mmAl、0°方向の曲げ弾性率は49GPa、90°方向の曲げ弾性率は39GPaであった。見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は実施例と比較すると、高剛性であるが、軽量性、X線透過性に欠ける。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は190Hzであり、損失係数は0.05であった。この場合の振動減衰曲線は図9のようになり、実施例と比較すると振動振幅が0近似になる時間をより多く必要とし、制振性は劣っていた。
(比較例2)
FRP層2の材料として実施例1と同じ引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維4を一方向にシート状に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付200g/m、炭素繊維含有率67重量%のUDプリプレグを準備した。本プリプレグを縦300mm、横300mmの大きさで10枚切り出し、一方向に引き揃えられた連続炭素繊維の配向角度が(0°/90°/0°)となるように常温で3枚を貼り合わせたプリプレグ積層物を2組得た。また別途実施例の熱可塑性樹脂発泡体のかわりに熱可塑性樹脂シートとして、押出し成形により得た厚み1.9mmのナイロン樹脂(東レ(株)製”アミラン”CM1021)シート1枚を縦300mm、横300mmの大きさで準備した。これらを、(プリプレグ積層物/熱可塑性樹脂シート/プリプレグ積層物)となるように常温で貼り合わせ、積層体を得た。実施例とは異なり、熱可塑性樹脂発泡体層1は用いない。積層体中の2対のプリプレグ積層物が積層体の厚さ方向に対して連続炭素繊維4の配向角が対称となるように貼り合わせた。実施例1と同様の条件で成形し、厚み3mmのFRP構造体を得た。得られたFRP構造体の表面は滑らかで、凹凸などの欠点はなく良好であった。実施例1と同様の方法で、得られたFRP構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は0.8μm、FRP構造体の見かけ密度は1.24g/cm、アルミニウム当量は0.35mmAl、0°方向の曲げ弾性率は42GPa、90°方向の曲げ弾性率は24GPaであった。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本FRP構造体は実施例と比較すると、高剛性であるが、軽量性、X線透過性に欠ける。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は190Hzであり、損失係数は0.08であった。この場合の振動減衰曲線は図10のようになり、実施例と比較すると振動振幅が0近似になる時間をより多く必要とし、制振性は若干劣っていた。
(比較例3)
厚み0.5mmのアルミニウム板を縦300mm、横300mmの大きさで2枚切り出した。また別途熱可塑性樹脂発泡体層1の材料として実施例1と同じポリプロピレン樹脂発泡体シート1枚を縦300mm、横300mmの大きさで準備した。これらを、(アルミニウムシート/ポリプロピレン樹脂発泡体シート/アルミニウムシート)となるように2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、厚み3mmの構造体を得た。得られた構造体の表面はアルミニウム特有の半光沢面で、凹凸などの欠点はなく良好であった。実施例1と同様の方法で、得られた構造体の特性を測定したところ、表面の算術平均粗さ(Ra)は1.0μm、熱可塑性樹脂発泡体層1の発泡セルの平均直径は0.20mm、熱可塑性樹脂発泡体層1の見かけ密度は0.35g/cm、構造体の見かけ密度は1.13g/cm、アルミニウム当量は1.10mmAl、0°方向の曲げ弾性率は31GPa、90°方向の曲げ弾性率は31GPaであった。熱可塑性樹脂発泡体層1の成形後の厚みは成形前の厚みの0.67倍であった。
見かけ密度、アルミニウム当量、曲げ弾性率の測定結果から、本構造体は実施例と比較すると、軽量性、X線透過性に欠ける。
また、実施例1と同様の方法で、試験片の固有振動数と損失係数を求めた。固有振動数は210Hzであり、損失係数は0.08であった。この場合の振動減衰曲線は図11のようになり、実施例と比較すると振動振幅が0近似になる時間をより多く必要とし、制振性は劣っていた。
実施例1、2、3、4と比較例1、2、3の構成と各種評価について、表1の結果を得た。実施例1、2、3、4は比較例1、2、3と比較して、軽量でX線透過性に優れ、高い剛性を保持するとともに、優れた制振性が得られた。
Figure 2006035671
本発明は、X線透過性が必要な医療機器に限らず、電子機器を格納する筐体部材や航空宇宙用途の機械部材などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
本発明の一実施態様に係るFRP構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施態様に係るFRP構造体を示す斜視図である。 本発明のさらに他の実施態様に係るFRP構造体を示す斜視図である。 本発明の一実施態様に係るFRP構造体に含まれるFRP層を示す拡大斜視図である。 本発明の実施例1に係る振動減衰曲線である。 本発明の実施例2に係る振動減衰曲線である。 本発明の実施例3に係る振動減衰曲線である。 本発明の実施例4に係る振動減衰曲線である。 本発明の比較例1に係る振動減衰曲線である。 本発明の比較例2に係る振動減衰曲線である。 本発明の比較例3に係る振動減衰曲線である。
符号の説明
1 熱可塑性樹脂発泡体層
2 FRP層
3 シート状樹脂層
4 連続炭素繊維
5 マトリックス樹脂
6 振動振幅が0近似となる時間

Claims (18)

  1. 次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[B]の片側に厚みが5〜300μmの構成要素[C]、もう一方の側に構成要素[A]となる積層構成を有し、かつFRP構造体の中立面が[A]の内部にあることを特徴とするFRP構造体。
    [A]熱可塑性樹脂発泡体層
    [B]連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層
    [C]シート状樹脂層
  2. 構成要素[A]が、見かけ密度0.03〜0.7g/cmである請求項1に記載のFRP構造体。
  3. 構成要素[A]は、25℃での110Hzに対する損失係数が0.05〜1.5である請求項1または2に記載のFRP構造体。
  4. 構成要素[A]は、せん断弾性率が0.01〜0.3GPaである請求項1〜3のいずれかに記載のFRP構造体。
  5. 構成要素[A]は、発泡セルの平均直径が1mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のFRP構造体。
  6. 構成要素[B]が、引張弾性率200〜850GPaの連続炭素繊維を30〜80重量%含む請求項1〜5のいずれかに記載のFRP構造体。
  7. 構成要素[B]が、一方向に引き揃えた連続炭素繊維を異なる角度で積層した構成を含む請求項1〜6のいずれかに記載のFRP構造体。
  8. 構成要素[A]の総厚みTa(mm)と構成要素[B]の総厚みTb(mm)との比Ta/Tbが、0.5〜10である請求項1〜7のいずれかに記載のFRP構造体。
  9. 構成要素[C]は、引張弾性率が0.5〜5GPaの樹脂からなる請求項1〜8のいずれかに記載のFRP構造体。
  10. 構成要素[C]は、25℃での110Hzに対する損失係数が0.01〜1.00の樹脂からなる請求項1〜9のいずれかに記載のFRP構造体。
  11. 構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の25℃での110Hzに対する損失係数ηaと構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂の25℃での110Hzに対する損失係数ηcとの比ηa/ηcが、1〜100である請求項1〜10のいずれかに記載のFRP構造体。
  12. 全体の見かけ密度が、0.2〜1.4g/cmである請求項1〜11のいずれかに記載のFRP構造体。
  13. 全体の厚みが、0.8〜5.0mmである請求項1〜12のいずれかに記載のFRP構造体。
  14. 構成要素[A]の両面に構成要素[B]を配置した構造を有する請求項1〜13のいずれかに記載のFRP構造体。
  15. 少なくとも片側表面が構成要素[C]であり、該表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05〜0.5μmである請求項1〜14のいずれかに記載のFRP構造体。
  16. X線透過性が必要な医療機器部品として使用される請求項1〜15のいずれかに記載のFRP構造体。
  17. 構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の成形後の厚みが成形前の厚みの0.2〜0.95倍となるように、加熱加圧成形し、構成要素[A]、[B]および[C]を一体化して請求項1〜15のいずれかに記載のFRP構造体を得るFRP構造体の製造方法。
  18. 構成要素[A]を構成する熱可塑性樹脂発泡体の成形後の厚みが成形前の厚みの0.2〜0.95倍となるように、加熱加圧成形し、構成要素[A]および[B]を一体化した後、構成要素[C]を形成して、請求項1〜15のいずれかに記載のFRP構造体を得るFRP構造体の製造方法。
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