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JP2006022219A - ジエン系ゴム重合体の製造方法 - Google Patents

ジエン系ゴム重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ジエン系単量体の重合時の安全性を保ちつつ、かつジエン系ゴム重合体の生産性を向上させることができるジエン系ゴム重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 ジエン系単量体を含む単量体の乳化重合によりジエン系ゴム重合体を製造する方法であり、全単量体(100質量%)のうちの5質量%以上10質量%未満を一括で反応器に投入し、単量体の重合体への転化率が70〜85質量%になるまで単量体を重合させる初期重合工程と、初期重合工程に引き続き、残りの単量体を反応器内に滴下して重合させる滴下重合工程とを有し、適下重合工程の間、反応器内の単量体の重合体への転化率が常に70〜85質量%となるような滴下速度で単量体を滴下するジエン系ゴム重合体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ジエン系ゴム重合体の製造方法に関する。
ジエン系ゴム重合体は、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)樹脂等における弾性体として使用され、通常は乳化重合により製造されている。これらの樹脂の性能のうち特に耐衝撃性等は、ジエン系ゴム重合体の粒子径に依存することが広く知られている。ジエン系ゴム重合体の粒子径が大きいほど耐衝撃性は良好となるが、ジエン系ゴム重合体の粒子径の大きさ(粒子数)とジエン系単量体の重合速度とには相関があり、粒子径を大きくする(粒子数を少なくする)とジエン系単量体の重合速度が低下し、ジエン系ゴム重合体の生産性が低下する傾向にある。
ジエン系単量体の重合速度を上げる方法としては、重合温度を上げることが有効な手段であることは広く知られている。しかしながら、重合初期段階から重合温度を上げた場合、重合速度増大に起因して単位時間あたりの重合発熱が著しく大きくなり、反応制御が困難になることから安全上問題が生じる。さらに、生産規模(反応器容量)が大きくなるにつれて、重合反応熱の除去が困難になり、暴走反応を起こす原因となる。特に、単量体の主成分がブタジエンの場合では、単量体が大きな蒸気圧を有することから反応器内の温度を上昇させると、反応器内圧力が著しく上昇し、反応器耐圧を超えるおそれがある。そこで、このような事態を避けるために反応器耐圧を上げることが考えられるが、反応器の製造コストの上昇につながり、設備投資額削減の観点から大きな問題となる。
このような背景に基づき、暴走反応を起こさないような比較的低温でジエン系単量体の重合を開始するのが一般的である。
また、ジエン系ゴム重合体は、近年その有用性がますます高まってきており、より一層の生産性の向上が望まれている。しかしながら、反応器の単位体積当たりのジャケット冷却能力は、反応器の容量の増加に伴って低下するため、小スケールの場合には容易に生産可能な重合速度領域であっても、大容量になると重合発熱を除熱できなくなり、暴走反応を引き起こす原因となる。したがって、生産性の向上を目的として反応器の大容量化を実施すれば、その反応器の除熱能力に相当する速度まで重合速度を低下させることが必要となり、目的とする生産性の向上に相反する対策を取らなければならなかった。また、重合速度を低下させずに、しかも安全に生産を実施するためには、ベントコンデンサ等の補助的な冷却設備を設置して除熱能力を高める方法が考えられるが、かかる方法によって十分な生産性の向上を図ることは困難である。
そこで、ジエン系ゴム重合体の生産性を向上させる試みが行われている。例えば、圧力器にあらかじめ仕込んでおいた水、乳化剤、ジエン単量体を含んでなる液体バッチ組成物に、ジエン単量体と開始剤を含んでなる液体供給組成物を連続的に供給するセミバッチ法に関する提案がなされている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1の方法では、重合時間の短縮を目的に重合時の温度を上昇させると、高圧ガスであるジエン系単量体を使用しているので、反応器内圧力が上昇して危険であるため、一定レベル以上の重合時間の短縮は不可能である。また、ジエン系ゴム重合体の粒子径が大きい場合には、重合時間短縮の困難さは、特に顕著に現れる。
特開平9−176213号公報
よって、本発明の目的は、ジエン系単量体の重合時の安全性を保ちつつ、かつジエン系ゴム重合体の生産性を向上させることができるジエン系ゴム重合体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するべく検討を行った結果、本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法を発明するに到った。
すなわち、本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法は、ジエン系単量体を含む単量体の乳化重合によりジエン系ゴム重合体を製造する方法であり、全単量体(100質量%)のうちの5質量%以上10質量%未満を一括で反応器に投入し、単量体の重合体への転化率が70〜85質量%になるまで単量体を重合させる初期重合工程と、初期重合工程に引き続き、残りの単量体を反応器内に滴下して重合させる滴下重合工程とを有し、適下重合工程の間、反応器内の単量体の重合体への転化率が常に70〜85質量%となるような滴下速度で単量体を滴下することを特徴とする。
また、滴下重合工程において、全単量体100質量部に対して60質量部以下の水を単量体とともに滴下することが望ましい。
本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法によれば、ジエン系単量体の重合時の安全性を保ちつつ、かつジエン系ゴム重合体の生産性を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、耐圧とは、反応器製造業者が示した反応器耐圧のことであり、常用圧力とは、日常の操作において上がり得る最大圧力であり、重合初期とは、重合開始時点から単量体の残部の滴下開始時点までであり、重合開始温度とは、重合開始時の圧力が反応器常用圧力以下になる温度である。
本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法は、重合開始剤および乳化剤を加えた水中に、ジエン系単量体を含む単量体を分散させて重合させる方法、いわゆる乳化重合によりジエン系ゴム重合体を製造する方法であり、単量体の一部を一括で反応器に投入し、単量体を重合させる初期重合工程と、初期重合工程に引き続き、残りの単量体を反応器内に滴下して重合させる滴下重合工程とを有する製造方法である。
本発明におけるジエン系単量体としては、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
ジエン系単量体以外の成分としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;メチルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられる。
また、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレートなどの架橋剤;メルカプタン類、テレペン類といった連鎖移動剤を単量体と併せて使用することは可能である。
乳化剤としては、特に限定しないが、不均化ロジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸のアルカリ金属塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系塩化合物;ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸系塩化合物などが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
また、重合安定性を向上させる目的で、乳化分散剤を使用することができる。乳化分散剤としては、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。
重合開始剤としては、特に限定しないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性過硫酸;ジイソピロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、メチルシクロヘキシルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸過物を一成分としたレドックス系開始剤を使用できる。
反応器内の温度の上限は、特に限定はしないが、ジエン系ゴム重合体の安定性の観点から120℃以下が好ましい。
乳化重合中の除熱の方法は、特に限定しないが、反応器周囲にジャケットを設け、そのジャケット内に温度調節可能な冷却水を循環させる方法が好ましい。
(初期重合工程)
本発明において、初期重合工程における単量体の仕込み量は、全単量体(100質量%)のうち、5質量%以上かつ10質量%未満である。単量体の仕込み量が全単量体の5質量%未満では、バッチ間で、形成されるジエン系ゴム重合体の粒子数にばらつきが生じやすく、ジエン系ゴム重合体の再現性が低下する。単量体の仕込み量が全単量体の10質量%を超えると、初期重合工程における未反応単量体の量が多くなり、反応器内の温度制御ができなくなった場合の最高到達圧力が大きくなるおそれがある。
ジエン系単量体が主成分の場合、耐圧反応器を用いて高圧下でジエン系単量体を液化させて重合する必要があるため、反応器耐圧との関係で重合温度が制限される。そのため、通常、反応器内圧力が反応器の常用圧力以下になるように重合温度を設定し重合を開始する必要がある。また、安全上、重合初期の単量体の仕込み量は、重合初期の段階で暴走反応が起こっても反応器の耐圧を超えない量にすることが重要である。暴走反応は、重合発熱を除熱することができなくなった際に、重合の発熱量が反応器内の温度を上昇させることによって起こる。したがって、暴走反応が始まった際の未反応単量体が少なければ少ないほど、重合による発熱量は小さくなるため、反応器内の温度は比較的高くならず、反応も比較的早く停止する。また、このような系においては、未反応単量体が減少してくると反応器内圧力は低下し始めるのが通常である。
そこで、本発明においては,暴走反応の起こる要因を考慮して、反応器内圧力が降下している状態で重合を進行させることで、これまで提案されてきたセミバッチ式重合法より重合温度を上昇させることができることを見出した。高圧ガスであるブタジエン単量体等の重合反応中の反応器内では、気液平衡が成り立った状態で重合が進行していく。しかし、重合反応が進行し、単量体の量が減ってくると、気液平衡のバランスが崩れて、反応器内の圧力が降下してくる。この圧力の降下は、一般に全単量体量の50〜60質量%が重合体に転化した時点から起こり始める。圧力の降下が起こり始めると重合温度を上昇させても単量体が再び追加されない限りは圧力が急激に上昇しない。
すなわち、初期重合工程において仕込まれた単量体が反応する際、未反応単量体の量を極めて減少させることで、暴走反応を起こり難くし、また、それにより反応器内圧力の低下を短時間で起こさせることができるため、重合初期から重合温度を上昇させられるという方法である。
(滴下重合工程)
本発明において、滴下重合工程の間に滴下する単量体の量は、初期重合工程にて仕込まれなかった単量体の残部、すなわち単量体全単量体(100質量%)のうち90質量%以上、かつ95質量部未満である。
本発明において、単量体の残部の滴下開始は、初期重合工程にて仕込まれた単量体の重合体への転化率が、70質量%〜85質量%になった時点である。転化率が70質量%未満の状態で単量体の残部の滴下を開始すると、暴走反応が起こった際の圧力上昇値が反応器の耐圧を超える可能性がある。転化率が85質量%を超えた状態で単量体の残部の滴下を開始すると、反応器内の重合体の安定性が低下し、カレットが発生する可能性がある。
本発明においては、適下重合工程の間、反応器内の単量体(初期重合工程にて仕込まれ単量体、および滴下重合工程にて滴下された単量体の合計)の重合体への転化率が常に70〜85質量%となるような滴下速度で単量体を滴下することが必要である。
反応器内の単量体の重合体への転化率が70質量%未満になると、圧力の降下がまだ十分に起こっていないため、圧力が上昇する可能性がある。反応器内の単量体の重合体への転化率が85質量%を超えると、反応器内の重合体の安定性が低下し、カレットが発生する可能性があるため好ましくない。
反応器内の単量体の重合体への転化率がこの範囲内に入るように滴下速度をコントロールすれば、圧力の降下が起こるため、重合開始時点から反応器内の圧力を常用圧力以内に維持することが可能となる。滴下速度を決定する方法としては、重合中に転化率を測定しながら、滴下速度を決定してもよいく、また、ジエン系単量体の重合速度があらかじめ分かっていれば、滴下される単量体の量と重合速度との関係から最適な滴下速度を求めて決定することもできる。なお、本発明における単量体の滴下は、単量体の滴下速度、すなわち単位時間当たりの滴下量が単量体の転化率を70〜85質量%にするような量でありさえすれば、連続的に行っても、間欠的に行ってもよい。
適下重合工程において、全単量体100質量部に対して60質量部以下の水を単量体とともに滴下することが、水の滴下の顕熱を利用して反応器内の除熱を行うことができる点で好ましい。単量体とともに滴下する水の量が全単量体100質量部に対して60質量部を超えると、初期に仕込む水の量が少なくなるため、反応器内組成物の攪拌が出来なくなり、粒子生成期間の重合挙動における再現性が低下する傾向にある。
このようにして得られるジエン系ゴム重合体の粒子径は、質量平均粒子径で好ましくは80〜400nmであり、より好ましくは100〜300nmであり、さらに好ましくは、120〜300nmである。ジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径が80nmより小さい場合は、十分な耐衝撃性が得られない。ジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径が400nmを超える場合は、透明性が低下する。
質量平均粒子径が120nm以上のジエン系ゴム重合体を製造しようとする場合、ジエン系単量体の重合速度が遅くなる。よって、本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法は、質量平均粒子径が120nm以上のジエン系ゴム重合体を製造する場合に、その効果を十分に発揮することができる。
本発明におけるジエン系ゴム重合体とは、少なくとも重合体(100質量%)中、ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体単位を60〜100質量部含む重合体を意味する。
以下に実施例に基づき本発明を説明する。実施例、比較例中の部は、特にことわりがない限り質量部を表す。また、圧力は、ゲージ圧で表した。
[質量平均粒子径]
ジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、キャピラリー式粒度分布計より求めた。
[転化率の測定]
重合中の転化率は、オートクレーブの底の開閉弁より反応器の内容物を、重合禁止剤を少量入れたサンプル瓶に約20g採取し、そのうち10gをアルミ皿に入れ、質量を測り、それを180℃に設定したギアオーブンに30分間投入後、再度質量を測り、質量差から固形分(質量%)を測定した。そして、測定した固形分の値を下記(1)式に代入し、転化率を得た。ここで、(1)式中、単量体質量、水質量、不揮発分質量およびブタジエン質量は、反応器内に投入、滴下された単量体、水、不揮発分およびブタジエンの量であり、不揮発分とは、具体的にはピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどの重合に使用される触媒を指す。
Figure 2006022219
[実施例1]
(初期重合工程)
ジャケット付き70Lオートクレーブ(反応器耐圧1.0MPa、常用圧力600kPa)に、表1に示す初期仕込み組成物を仕込んでジャケット循環水温度を80℃にして反応器内の昇温を開始し、50℃になった時点で表1に示す触媒を反応器内に投入して重合を開始し、1hr毎にオートクレーブより重合体をサンプリングし、転化率を測定した。また、重合開始から1.0hrで反応器内の温度が72℃になるようにジャケット循環水を調節して昇温した。
(滴下重合工程)
重合開始1.0hr後より表1に示す滴下組成物を、反応器内の単量体の重合体への転化率が、75質量%になるように滴下した。このときの滴下速度は、表1に示す滴下速度であり、これを3.3hrかけて滴下した。その際、ジャケット循環水は、反応器内温度が72℃になるように調整した。
滴下終了後、1hr毎に表1に示す追加開始剤を追加し、滴下終了から6.7hr後に重合を完了させた。
反応器内の重合中最大圧力は、常用圧力内の574kPaであった。単量体の転化率は、96.8質量%であった。また、重合終了後のジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、0.16μmであった。反応器内のカレット量は、使用単量体質量に対して0.1質量%であった。結果を表2に示す。
Figure 2006022219
Figure 2006022219
[比較例1]
滴下重合工程における、反応器内の単量体の重合体への転化率が60質量%になるように滴下速度を表3のように設定し、滴下時間を2.5hrに変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。結果、反応器内の圧力は、重合開始から2.0hrの時点で常用圧力を超え、重合開始から3.0hrの時点で696.7kPaまで上昇した。トータルの重合時間は、6.9hrで、単量体の転化率は96.9質量%であった。また、重合終了後のジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、0.16μmであった。反応器内のカレット量は、使用単量体質量に対して0.1質量%であった。結果を表4に示す。
Figure 2006022219
Figure 2006022219
[比較例2]
(初期重合工程)
ジャケット付き70Lオートクレーブ(反応器耐圧1.0MPa、常用圧力600kPa)に、表5に示す初期仕込み組成物を仕込んでジャケット循環水温度を80℃にして反応器内の昇温を開始し、50℃になった時点で表5に示す触媒を反応器内に投入して重合を開始し、反応器内の温度が72℃になるまで昇温した。
(滴下重合工程)
重合開始1.3hr後より表5に示す滴下組成物を、反応器内の単量体の重合体への転化率が、70質量%になるように滴下した。このときの滴下速度は、表5に示す滴下速度であり、これを2.7hrかけて滴下した。その際、ジャケット循環水は、反応器内温度が72℃になるように調整した。
滴下終了後、1hr毎に表1に示す追加開始剤を追加し、滴下終了から6.9hr後に重合を完了させた。
単量体の転化率は、96.7質量%であった。反応器内の重合中最大圧力は、常用圧力を超える639.7kPaまで上昇した。また、重合終了後のジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、0.16μmであった。反応器内のカレット量は、使用単量体質量に対して0.1質量%であった。結果を表6に示す。
Figure 2006022219
Figure 2006022219
[比較例3]
滴下重合工程における、反応器内の単量体の重合体への転化率が90質量%になるように滴下速度を表7のように設定し、滴下時間を3.8hrに変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。結果、反応器内の圧力は、最大で512.3kPaであった。トータルの重合時間は、6.9hrで、単量体の転化率は96.8質量%であった。また、重合終了後のジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、0.16μmであった。反応器内のカレット量は、使用単量体質量に対して1.2質量%であった。結果を表8に示す。
Figure 2006022219
Figure 2006022219
[比較例4]
(初期重合工程)
70Lオートクレーブ(反応器耐圧1.0MPa、常用圧力600kPa)に、表9に示す初期仕込み組成物を仕込んで昇温を開始し、50℃になった時点で表9に示す触媒を反応器内に投入して重合を開始し、反応器内の温度が62℃になるまで昇温した。
(滴下重合工程)
重合開始1.2hr後より表9に示す滴下組成物を、反応器内の単量体の重合体への転化率が、60質量%になるように滴下した。このときの滴下速度は、表9に示す滴下速度であり、これを4.0hrかけて滴下した。その際、ジャケット循環水は、反応器内温度が62℃になるように調整した。
滴下終了後、1hr毎に表1に示す追加開始剤を追加し、滴下終了から9.0hr後に重合を完了させた。
単量体の転化率は、96.1質量%であった。反応器内の重合中最大圧力は、585.7kPaであった。また、重合終了後のジエン系ゴム重合体の質量平均粒子径は、0.16μmであった。反応器内のカレット量は、使用単量体質量に対しての0.1質量%であった。結果を表10に示す。
Figure 2006022219
Figure 2006022219
実施例1では、初期重合工程における単量体の量を全単量体(100質量%)のうちの8.0質量%とし、滴下重合工程における反応器内の単量体の重合体への転化率を75〜80質量%にすることにより、反応器の常用圧力以下の圧力で重合を終了することができた。
比較例1では、滴下重合工程における反応器内の単量体の重合体への転化率が60〜65質量%になるようにコントロールしたので、反応器内の圧力は、常用圧力より大きくなってしまった。したがって、比較例1の条件で重合を実施する場合には、反応器内温度を下げて重合を行う必要があった。反応器内温度を下げることにより、重合速度が遅くなり、重合時間が実施例1に比べると遅くなる。
比較例2では、初期重合工程における単量体の量を全単量体(100質量%)のうちの20質量%としたため、重合中の反応器内の最高圧力は、639.7kPaまで上昇した。これは、実施例1に比べて、反応器内の未反応単量体が多いためであり、比較例1と同様に重合時の反応器内温度を下げて重合を行う必要があり、重合時間は実施例1に比べると長くなる。
比較例3では、初期重合工程における単量体の量を全単量体(100質量%)のうちの8.0質量%とし、滴下重合工程における反応器内の単量体の重合体への転化率が90〜95質量%になるようにコントロールして重合を行った。反応器内圧力が実施例1に比べて小さくなる結果が得られたが、重合終了後の反応器内のカレットが実施例1に比べて12倍に増加した。重合1回当たりのカレットの増加は、反応器内の洗浄に負荷をかけることになり、結果として生産性を低下させる可能性がある。
比較例4では、反応器内圧力が常用圧力を超えないように重合温度を62℃まで下げて重合を実施した。実施例1と比べて、最終的に得られる重合体はほぼ同等なものが得られたが、重合時間が9hrとなり、生産性の面で不利である。
本発明のジエン系ゴム重合体の製造方法によれば、ジエン系単量体または、ジエン系単量体を主成分とする単量体混合物の重合反応において、重合開始から重合終了までの反応器内の圧力を反応器の常用圧力以上に上昇させることなく一定に維持でき、重合時間を大幅に短縮することが可能になる。このようなジエン系ゴム重合体の製造方法は、工業的に有用である。

Claims (2)

  1. ジエン系単量体を含む単量体の乳化重合によりジエン系ゴム重合体を製造する方法であり、
    全単量体(100質量%)のうちの5質量%以上10質量%未満を一括で反応器に投入し、単量体の重合体への転化率が70〜85質量%になるまで単量体を重合させる初期重合工程と、
    初期重合工程に引き続き、残りの単量体を反応器内に滴下して重合させる滴下重合工程とを有し、
    適下重合工程の間、反応器内の単量体の重合体への転化率が常に70〜85質量%となるような滴下速度で単量体を滴下することを特徴とするジエン系ゴム重合体の製造方法。
  2. 滴下重合工程において、全単量体100質量部に対して60質量部以下の水を単量体とともに滴下することを特徴とする請求項1記載のジエン系ゴム重合体の製造方法。
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