本発明は、半導体材料などに対して行われるようなアニールを、均一にかつ効率よく行うためのレーザ照射装置(レーザと、このレーザから出力されるレーザ光を被照射体まで導くための光学系を含む装置)およびレーザ照射方法に関するものである。また、前記のレーザ処理の工程を含んで作製された半導体装置の作製方法に関する。
近年、基板上に薄膜トランジスタ(以下、TFTと記す)を製造する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型表示装置への応用開発が進められている。特に、多結晶半導体膜を用いたTFTは、従来の非結晶半導体膜を用いたTFTよりも電解効果移動度(モビリティともいう)が高いため、高速動作が可能である。そのため、従来では基板の外に設けられていた駆動回路で行っていた画素の制御を、画素と同一の基板上に形成した駆動回路で行うことが用いられている。
ところで、半導体装置に用いる基板はコストの面から、石英基板や単結晶半導体基板よりもガラス基板が有望視されている。ガラス基板は耐熱性に劣り、熱変形しやすいため、ガラス基板上に多結晶半導体膜を用いたTFTを形成するために半導体膜を結晶化する際には、ガラス基板の熱変形を避けるためにレーザアニールがしばしば用いられる。
レーザアニールの特徴は、輻射加熱あるいは伝導加熱を利用するアニール法と比較して、処理時間を大幅に短縮することができることや、半導体基板または基板上の半導体膜を選択的、局所的に加熱して、基板にほとんど熱的損傷を与えないことなどが挙げられる。
レーザアニールに用いられるレーザ発振器は、その発振方法によってパルス発振と連続発振(CW:continuous−wave)の2種類に大別される。近年では、半導体膜の結晶化において、エキシマレーザのようなパルス発振のレーザ発振器よりも、ArレーザやYVO4レーザのような連続発振のレーザ発振器を用いる方が、半導体膜内に形成される結晶の粒径が大きくなることが見出されている。半導体膜内の結晶粒径が大きくなると、この半導体膜を用いて形成されるTFTチャネル領域に入る粒界の数が減る。従って、移動度が高くなり、より高性能なデバイスの開発に利用することができる。そのため、連続発振のレーザ発振器は脚光を浴びている。
通常、半導体膜のレーザアニールに用いられるレーザビームのスポットの形状は線状であり、半導体膜上に線状に整形されたレーザビームのスポットを走査させ、レーザアニールが行われる。レーザビームのスポットを線形に整形することで、一度にレーザアニールできる面積を大きくすることができる。なお、本明細書では、照射面における形状が線状、矩形状であるレーザビームをそれぞれ線状ビーム、矩形状ビームと呼ぶ。なお、ここでいう「線状」は、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペクト比が大きい矩形(例えば、アスペクト比が10以上(好ましくは100〜10000))を意味する。なお、線状とするのは被照射体に対して十分なアニールを行うためのエネルギー密度を確保するためであり、矩形状や面状であっても被照射体に対して十分なアニールを行える程度であればよい。将来的には面状ビームを用いてレーザニールを行う可能性もある。
一方、半導体装置に通常用いられる厚さ数十〜数百nmの珪素膜をYAGレーザやYVO4レーザで結晶化させる場合、基本波よりも波長が短い第二高調波を用いる。これは、基本波よりも第二高調波の方が半導体膜に対するレーザ光の吸収係数が大きいため、半導体膜の結晶化を効率良く行うことができるからである。なお、本工程に基本波を用いることはほとんど無い。
しかしながら、連続発振のレーザ発振器を用いてレーザアニールを行うにあたって、照射面においてアニールの状態が不均一になるという問題がある。その原因として、連続発振のレーザ照射器から射出されたレーザビームは、ガウス分布で中心から端に向かってエネルギーが弱まる特徴を有していることが挙げられる。従って、均一にアニールすることは難しい。
本出願人らは、これら従来のレーザ照射装置が有する問題点を解決したレーザ照射装置を既に提案している。
特開2004−128421
特許文献1で開示されたレーザ照射装置は、2つのレーザビームを用いて、第二高調波に変換された連続発振のレーザと同時に基本波の連続発振のレーザを照射するものである。
ここで、図11にビームスポット1101の半導体膜における照射跡と、ビームスポット1101の断面aにおけるエネルギー密度分布1102を示す。
一般に、TEM00(シングル横モード)の連続発振のレーザ発振器から射出されたレーザビームの断面は図11で示すように、エネルギー分布1102はガウス分布を有しており、均一なエネルギー密度分布を有しているのではない。
例えば、ビームスポット1101の中央付近の領域1103は、少なくとも1つの結晶粒(以下、大粒径の結晶粒と呼ぶ)に1つのTFTができる程度の結晶粒径を得ることができるしきい値(y)より大きいエネルギー密度を有する。このとき、ビームスポット端部1104は、結晶性領域が形成されるしきい値(x)よりはエネルギー密度が大きく、しきい値(y)よりはエネルギー密度が小さいため、レーザを半導体膜に照射すると、ビームスポット端部1104によって照射された領域には部分的に溶融しきれない領域が残り、ビームスポット中心の領域に形成されるような大粒径の結晶粒ではなく、粒径の比較的小さい結晶粒(以下、微結晶と呼ぶ)のみが形成されることになる。
このようにして微結晶が形成された領域、すなわちビームスポット端部付近の領域1104に半導体素子を形成しても高い特性は期待できない。また、これを避けるためには大粒径の結晶粒が形成された部分、すなわちビームスポット中央付近の領域1103に半導体素子を形成する必要があるため、レイアウト上の制約を受けることは明らかである。従って、レーザビームが照射された領域全体に占める、微結晶が形成される領域の割合を減らすことが求められる。
ビームスポット端部付近の領域1104には、その表面に半導体膜の膜厚と同程度の高さを持つ凹凸(リッジ)が形成される。このリッジが形成された半導体膜を利用してTFTを形成する場合、活性層に接して形成されるゲート絶縁膜の膜厚を均一に形成するのが難しいため、ゲート絶縁膜の薄膜化が困難になる。従って、ここに形成されたTFTの微細化が妨げられるなどの問題がある。
また、図11のエネルギー分布を持つレーザを単に線状または矩形状に加工しても、レーザビームの端部は中心部と比較するとエネルギー密度が小さい。したがって、レーザビームのエネルギー密度分布を均一化することが求められる。結晶粒の大きさが半導体膜の任意の部位において同じになるようにアニールすることが可能になれば、この半導体膜を用いたTFTの特性が良好かつ均一になる。
本発明は、上記の問題を解決し、半導体膜全面に対して均一にレーザ処理を行うことができるレーザ照射装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本願発明は以下の構成を採用する。なお、ここでいうレーザアニール法とは、半導体基板または半導体膜にイオン注入などにより形成された損傷領域やアモルファス領域を結晶化させる技術や、基板上に形成された非晶質半導体膜にレーザ照射を行って半導体膜を結晶化させる技術、単結晶ではない結晶性半導体膜(上記した単結晶ではない半導体膜をまとめて非晶質半導体膜と呼ぶ)にニッケルなどの結晶化を促進する元素を導入した後にレーザ照射を行うことによって結晶化をさせる技術などを指している。
また、半導体基板または半導体膜の平坦化や表面改質に適用される技術も含んでいる。ここでいう半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、液晶表示装置や発光装置などの電気光学装置、さらにはこれらの電気光学装置を部品として含む電子装置も含まれるものとする。
本発明は以下の構成を有する。
本発明で開示する発明の1つは、第1のレーザ発振器と、第2のレーザ発振器と、第1のレーザ発振器から出射された第1のレーザビームの両端部分を遮断するためのスリットと、集光レンズとを有し、第1のレーザビームが照射面に照射される範囲を覆うように第2のレーザ発振器より射出される第2のレーザビームを照射する手段を有し、第1のレーザビームおよび第2のレーザビームに対して照射面を相対的に第1の方向へ移動する手段と、第1のレーザビームおよび第2のレーザビームに対して照射面を相対的に第2の方向へ移動する手段とを有する。
他の発明の構成は、第1のレーザ発振器と、第2のレーザ発振器と、回折光学素子と、第1のレーザ発振器から出射された第1のレーザビームの両端部分を遮断するためのスリットと、集光レンズとを有し、第1のレーザビームが照射面に照射される範囲を覆うように第2のレーザ発振器より射出される第2のレーザビームを照射する手段を有し、第1のレーザビームおよび第2のレーザビームに対して照射面を相対的に第1の方向へ移動する手段と、第1のレーザビームおよび第2のレーザビームに対して照射面を相対的に第2の方向へ移動する手段を有する。
他の発明の構成は、第1のレーザ発振器より出射された第1のレーザビームはスリットを通し、さらに集光レンズを通した後に照射面に入射する。同時に、照射面において第2のレーザ発振器より出射された第2のレーザビームを第1のレーザビームを覆うように重ねて照射する。さらに、照射面に対して相対的に走査することによって、照射面を等しくアニールする。
他の発明の構成は、第1のレーザ発振器より出射された第1のレーザビームは回折光学素子を通し、スリットを通し、さらに集光レンズを通した後に照射面に入射する。同時に、照射面において第2のレーザ発振器より出射された第2のレーザビームを第1のレーザビームを覆うように重ねて照射する。さらに、照射面に対して第1のレーザビームおよび第2のレーザビームを相対的に走査することによって、照射面を等しくアニールする。
上記発明の構成において、集光レンズはシリンドリカルレンズまたは球面レンズを用いることを特徴とする。
上記発明の構成において、第1のレーザ発振器および第2のレーザ発振器から射出されるレーザは、連続発振のレーザ、または発振周波数が10MHz以上のパルスレーザであることを特徴とする。連続発振のレーザとしては、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどの固体レーザ、GaNレーザ、GaAsレーザ、InAsレーザなどの半導体レーザのいずれかを用いることができる。また、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザとして、単結晶のYAG、YVO4、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4にドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザを挙げることができる。なお、本発明のレーザ照射処理が行うことができる程度のエネルギーを持つレーザであれば、第1のレーザ発振器と第2のレーザ発振器の種類が別であってもよい。
上記発明の構成において、第1のレーザビームはBBO(β−BaB2O4、ホウ酸バリウム)、LBO(Li2B4O7、ホウ酸リチウム)、KTP(KTiOPO4、チタニルリン酸カリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、KDP(KH2PO4、リン酸二水素カリウム)、LiIO3(リチウムアイオデート)、ADP(NH4H2PO4、リン酸二水素アンモニウム)、BIBO(BiB3O6、ビスマストリボレート)、CLBO(CsLiB6O10、セシウムリチウムボーレート)、KB5(KB5O8・4H2O、ポタジムペンタボレート)などの非線形光学素子により、高調波に変換されていることを特徴とする。
上記発明の構成において、第1の方向と第2の方向は、互いに直交していることを特徴としている。これによって、ビームスポットの幅を一定にしたままで、かつリッジを形成させずに、かつ無駄なくレーザを照射面全面に照射することができる。
上記発明の構成において、第1のレーザ発振器より出射された第1のレーザビームは、照射面に対する入射方向は自由であることを特徴としている。
上記発明の構成において、第2のレーザ発振器より出射された第2のレーザビームは、照射面に対して斜めに照射することを特徴とする。
上記発明の構成において、第2のレーザビームのビームスポットは、第1のレーザビームのビームスポットの全てを照射面において覆うことを特徴とする。
本発明を用いることにより、全面において結晶粒径が均一で、かつ表面に凹凸が形成されない半導体膜を形成することが可能なレーザ処理装置を提供することができる。
以下に本発明の実施の様態を、図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態を、図1、3を用いて説明する。本発明は、連続発振のレーザビームの高調波を用いて半導体膜をレーザアニールする際、高調波の線状ビームの両端部分をスリットで遮断し、さらにこの高調波に連続発振のレーザビームの基本波を照射面において重ね合わせるように同時に照射するものである。
レーザ発振器101、102は公知のもので連続発振のレーザ、すなわち、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどの固体レーザ、GaNレーザ、GaAsレーザ、InAsレーザなどの半導体レーザのいずれかが用いられる。また、レーザ発振器101は、BBO、LBO、KTP、KDP、LiNbO3、LiIO3、CLBO、ATP、BIBO、KB5などの公知の非線形光学素子を用いて第二高調波に変換され、TEM00(シングル横モード)でレーザビームを発振する連続発振のレーザ発振器である。なお、レーザ発振器101と102は同じ種類であっても違う種類であっても構わない。
レーザ発振器101から射出されたレーザビームは、スリット103を通る。スリット103は、線状または矩形状のビーム108の長軸方向に作用するように設置することで、線状または矩形状のビーム108の両端におけるエネルギーの弱い領域をできるだけ削除することができ、同時に線状または矩形状のビーム108の長軸方向の長さを調整することができる。つまり、レーザ発振器101から出射した直後は図3(a)の形状のエネルギー密度分布を持つが、スリットを通すことにより、図3(b)の実線状のエネルギー密度分布を有するビームになる。
次いで、ミラー104でレーザビームの方向を変える。なお、方向を変えた後のレーザビームの方向は、基板に対して垂直方向でも斜め方向でも構わない。
その後、線状または矩形状のビーム105の長軸方向および短軸方向に作用するシリンドリカルレンズ106、107により、照射面にて線状または矩形状のビーム108が形成される。本発明の実施の形態において、2つのシリンドリカルレンズ106、107を集光レンズとして用いている。シリンドリカルレンズ106、107のうち、1つは線状または矩形状のビームの長軸方向にビームの整形を行い、残りの1つは線状または矩形状のビームの短軸方向にビームの整形を行う。シリンドリカルレンズ106、107を用いる利点は、ビームの長軸方向と短軸方向の集光をそれぞれ独立して行うことができる点である。なお、元のビームのビーム径、出力、ビームの形状をそのまま用いることができる場合は、シリンドリカルレンズを必ずしも2つ用いなくても良い。また、元のビームの長軸と短軸の長さの比を保ったまま集光を行う場合は、シリンドリカルレンズ106、107の代わりに球面レンズを用いてもよい。なお、シリンドリカルレンズ106は、スリット103と照射面が共役の関係になるように配置されている。このようにシリンドリカルレンズ106を配置することにより、スリット103を通過することによって発生する回折光が照射面に達して干渉縞を形成することを防ぐことができる。
レーザ発振器102は、基本波を発振する連続発振のレーザ発振器であり、光ファイバー109によって伝送され、線状または矩形状のビーム108のビームスポットを覆うように照射面へ照射され、ビームスポット110が形成される。なお、ビームスポット110は、線状または矩形状のビーム108のビームスポットを含む大きさであればよい。基本波を照射する前は図3(c)の点線で示したエネルギー密度を持つが、基本波を照射することによって、図3(c)の実線で示すように大粒径の結晶性領域を形成するためには十分なエネルギーが与えられる。
半導体膜が成膜された基板111はガラスを材料としており、レーザ照射の際に基板111が落ちないように、吸着ステージ112に固定されている。吸着ステージ112は、Xステージ113、Yステージ114を用いて半導体膜の表面に平行な面上をX方向またはY方向に走査を繰り返し、半導体膜を結晶化させる。本実施の形態ではXステージ113、Yステージ114を用いて半導体膜が成膜された基板111を動かす構成となっているが、レーザビームの走査は、被処理物である基板を固定してレーザビームの照射位置を移動させる照射系移動型、レーザビームの照射位置を固定して基板を移動させる被処理物移動型、または上記2つの方法を組み合わせた方法を用いることができる。レーザビームの照射位置を移動させる方法として、例えばガルバノミラーやポリゴンミラーを用いることが可能である。
通常、波長が1000nm程度の基本波は、固相の半導体膜にほとんど吸収されないが、液相の半導体膜に対する吸収係数は固相の1000倍であるため、吸収されやすい。従って、高調波と基本波を同時に照射する場合、高調波によって溶融された部分の半導体膜のみ基本波が良く吸収され、結果として半導体膜に与えられるエネルギーが上昇する。
また、微結晶領域は、線状または矩形状のビーム108の両端がエネルギー不足であるため、不完全な溶融が起きる。しかしながら、一部の半導体膜は溶融しているため、その部分にも基本波は吸収される。そのため、本発明を用いれば、線状または矩形状のビーム106の両端部分で不足しているエネルギーを補うことができ、高調波が照射されている部分の半導体膜を完全に溶融することができる。
高調波のみのレーザアニールでは微結晶領域が形成されるが、本発明を用いることで、中心部と同等の結晶に改善することができる。なお、溶融していない部分には基本波が吸収されないため、半導体膜が溶融されることはない。
なお、本発明を用いることによって得られる半導体膜は、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ半導体膜の表面にリッジが形成されない。そのため、隣接する結晶化領域の間にもTFTを作製することが可能となる。これによって、レイアウトやサイズの制約が無く、半導体膜内で場所を選ばずにTFTを作製することができる。
また、本発明を用いると、半導体膜の全面において均一にアニールされる。従って、本発明の方法によって形成された半導体膜を用いて作製した全てのTFTは、特性が良好かつ均一になる。
さらには、本発明を用いることによって、連続発振のレーザを半導体膜に照射する際に、その照射位置を決める目印の作製が不要となる。さらには、半導体装置を作成する際のデザインルールを大幅に緩和することが可能になる。
このようにして得られた半導体膜を利用して、例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイなどを公知の方法に従って作製することができる。
なお、本実施の形態では、連続発振のレーザを用いた例を示しているが、連続発振のレーザに換えて発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることもできる。用いることができるレーザとして、単結晶のYAG、YVO4、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4にドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とし、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを挙げることができる。
本実施例では、より均一に半導体膜を結晶化させるために、回折光学素子(ディフラクティブオプティクス、またはディフラクティブオプティカルエレメントともいう)を用いて、連続発振のレーザビームの高調波をエネルギー分布の均一な線状または矩形状のレーザビームにして、このレーザビームの両端部分をスリットで遮蔽した後に半導体膜に照射する。さらに、この線状または矩形状のビームに対して、連続発振のレーザビームの基本波を照射面において重ね合わせるように同時に照射するものである。
本実施例で示すレーザ照射装置は、レーザ発振器201、202、回折光学素子203、スリット205、ミラー206、集光レンズ208、209、吸着ステージ213、Xステージ215、Yステージ216から構成される。
図2にレーザ照射装置の一例を示す。まず、非晶質半導体膜を成膜した基板214を用意する。基板214は、吸着ステージ213上に固定されている。吸着ステージ213は、Xステージ215およびYステージ216を用いることによって、X軸およびY軸方向に自在に移動が可能である。なお、X軸方向およびY軸方向の移動は、モータステージ、ボールベアリングステージ、リニアモータステージなどの各種ステージを用いることができる。
レーザ発振器201、202は公知のもので連続発振のレーザ、すなわち、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどの固体レーザGaNレーザ、GaAsレーザ、InAsレーザなどの半導体レーザのいずれかが用いられる。半導体レーザは自ら発光して励起するため、フラッシュランプを用いて励起させる固体レーザよりエネルギー効率が良い。これらのレーザのいずれかをレーザ発振器201、202に用いることにより、少なくとも1つの結晶粒の中に1つのTFTが形成可能な粒径を持つ半導体膜を効率的に形成することができる。
また、レーザ発振器201は、BBO、LBO、KTP、KDP、LiNbO3、LiIO3、CLBO、ATP、BIBO、KB5などの公知の非線形光学素子を用いて第二高調波に変換され、TEM00(シングル横モード)でレーザビームを発振する連続発振のレーザ発振器である。なお、状況に応じて、レーザ発振器201から出射されるレーザを、非線形光学素子を用いて第二高調波以外の高調波に変換しても構わない。さらに、第1のレーザ発振器201と第2のレーザ発振器202は同じ種類であっても別な種類であっても構わない。
回折光学素子203はディフラクティブオプティクス、またはディフラクティブオプティクスエレメントとも呼ばれ、光の回折を利用してスペクトルを得る素子である。回折光学素子203の表面に多数の溝を形成することにより集光レンズ機能を奏するものが用いられる。そして、この回折光学素子203を用いることにより、連続発振のレーザ発振器から出射されたレーザビームのガウス分布からなるエネルギー分布を、エネルギー分布が均一な線状または矩形状のビームに形成することができる。
スリット205は、回折光学素子の結像位置に配置される平板状部材であり、より詳しくは前記回折光学素子により形成される線状または矩形状で、且つエネルギー分布が均一なビームが結像される位置に配置される。その概略を図3、図4に示す。
レーザの出射直後は図3(a)の形状のエネルギー密度分布を有するが、回折光学素子203を通すことによって、図3(d)の形状のエネルギー密度分布となる。つまり、ビームの中央付近においてはエネルギー分布が均一になる。しかしながら、ビームの端部はエネルギー不足であるため、不完全な溶融が起きることになる。そこで、この端部を図4で示すようなスリットによって遮蔽する。
スリットは、その中央部に矩形状のスリット開口部401を有するとともに、スリット開口部401の長手方向の両端部には、高調波を出射するレーザ201の種類によって両端部を開放または遮蔽してエネルギー分布を調節することが可能な遮蔽板402が配設される。
このように、レーザの種類に合わせてスリット開口部401の両端で遮蔽板402を調節することにより、回折光学素子で形成した矩形状ビームのうち、特に長手方向の両端部のエネルギー分布が不均一な部分を必要に応じてカットすることができる。
このような構成により、レーザ発振器201から射出されたレーザビームは回折光学素子203によって、線状または矩形状で、且つエネルギー分布が均一なビームに形成された後にスリット205の位置で結像する。その後、ビームはスリット205によってエネルギー密度分布が小さい部分を遮蔽された後にミラー206で反射され、線状または矩形状のビーム207となる。さらにシリンドリカルレンズ208、209によって集光され、非晶質半導体膜を成膜した基板214に対して垂直方向または斜め方向から、線状または矩形状のビーム210として入射される。
同時に、レーザ発振器202から射出されたレーザビームは、光ファイバー211によって伝送され、照射面の線状または矩形状のビーム210のビームスポットに重ねるように照射され、ビームスポット212が形成される。なお、照射面において、ビームスポット212は、ビーム210によって形成されるビームスポットの全てを覆い、且つ照射面に対して斜め方向から照射される。基本波を照射する前は図3(f)の点線で示したエネルギー密度を持つが、基本波を照射することによって、図3(f)の実線で示すように、大粒径の結晶性領域を形成するためには十分であり、かつ均一なエネルギーが与えられる。
半導体膜が成膜された基板214はガラスを材料としており、レーザ照射の際に基板214が落ちないように、吸着ステージ213に固定されている。吸着ステージ213は、Xステージ215、Yステージ216を用いて半導体膜の表面に平行な面上をXY方向に走査を繰り返し、基板214上の半導体膜を結晶化させる。
本実施例では2つのシリンドリカルレンズ208、209を集光レンズとして用いており、この2枚のシリンドリカルレンズに対して垂直にレーザを入射させる。シリンドリカルレンズは一方向に曲率を持っているため、1次元方向にのみ集光または拡散をさせることが可能である。したがって、2つのシリンドリカルレンズ208、209の曲率の方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向にすることにより、照射面におけるビームスポットの大きさをXY方向で任意に変更することができるため、光学調整が容易であり、かつ調整の自由度が高い。なお、レーザ発振器201より出射されたレーザビームのビーム径、出力、形状をそのまま使うことができる場合は、シリンドリカルレンズは必要最低限の数だけ用いればよい。また、元のビームの長軸と短軸の長さの比を保ったまま集光を行う場合は、シリンドリカルレンズ208、209の代わりに球面レンズを用いてもよい。
基板214に入射される線状または矩形状のビーム210は、10Wのレーザを用いた場合では、短手方向の長さが約1〜10μmのものが用いられる。なお、短手方向の長さは光学設計の制限上、下限は約1μmである。
長手方向の長さは、レーザ発振器201の出力および短手方向の長さより、エネルギー密度が足りるように決めればよい。例えば、出力が10Wのレーザを用いた場合では、300μm程度になる。また、ビーム210によって形成されるビームスポットの形状を線状または矩形状にするのは、このビームスポットの形状が楕円形状をしていると、基板を走査するときに基板上に荒れが生じるためである。
上記のようにすることによって、基板214上の半導体膜を均一に結晶化することができる。なお、本願発明は上記の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更が可能である。
なお、本発明を用いることによって得られる半導体膜は、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ半導体膜の表面にリッジが形成されない。そのため、隣接する結晶化領域の間にもTFTを作製することが可能となる。これによって、レイアウトやサイズの制約が無く、半導体膜内で場所を選ばずにTFTを作製することができる。
また、本発明を用いると、半導体膜の全面において均一にアニールされる。従って、本発明の方法によって形成された半導体膜を用いて作製した全てのTFTは、特性が良好かつ均一になる。
さらには、本発明を用いることによって、連続発振のレーザを半導体膜に照射する際に、その照射位置を決める目印の作製が不要となる。さらには、半導体装置を作成する際のデザインルールを大幅に緩和することが可能になる。
本実施例では、高調波のCWレーザと基本波のCWレーザを半導体膜上で重ねて照射しているが、CWレーザに換えて、連続発振のレーザに換えて発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることもできる。用いることができるレーザの例として、単結晶のYAG、YVO4、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4にドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とし、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを挙げることができる。
本実施例では、2つの連続発振の高調波のレーザから発振されたレーザ光を分割し、エネルギー分布が互いに異なるレーザ光を重ね合わせることによってエネルギー分布が均一なビームを形成する。さらに、スリットを用いてこのビームの端部を遮蔽することによってエネルギー分布をより均一化した後に、半導体膜に照射する。同時に、連続発振の基本波のレーザを照射面において重ね合わせるように照射するものである。この概要を図5、図6を用いて説明する。
501、502はレーザであり、このレーザは公知のもので連続発振のレーザ、すなわち、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどの固体レーザ、GaNレーザ、GaAsレーザ、InAsレーザなどの半導体レーザのいずれかが用いられる。半導体レーザは自ら発光して励起するため、フラッシュランプを用いて励起させる固体レーザよりエネルギー効率が良い。また、レーザ501、502から発振されるレーザ光は、BBO、LBO、KTP、KDP、LiNbO3、LiIO3、CLBO、ATP、BIBO、KB5などの公知の非線形光学素子により高調波に変換する。なお、本実施例では、レーザ501、502は連続発振のYAGレーザを用い、非線形光学素子により第2高調波に変換して用いているが、必要に応じて第2高調波以外の高調波に変換しても構わない。
503、504は光アイソレータである。被照射体に対する反射率が高いレーザ光を用い、このレーザ光が被照射体に垂直に入射すると、被照射体に入射したときと同じ光路を戻る、いわゆる戻り光が発生する。戻り光はレーザの出力や周波数の変動や、ロッドの破壊などの悪影響を及ぼす要因となる。そのため、戻り光を出射光と分離する素子が必要となるが、この素子は光非相反素子と呼ばれており、光アイソレータは代表的なものである。ここで用いる光アイソレータは、一方向のみに光を透過させ、この方向と反対の方向に伝搬しようとする光を阻止する働きを有する素子である。本実施例における光学系は対称的な配置となっているため、照射面でのそれぞれの反射光が互いのレーザに対して、戻り光と同様な悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、光アイソレータ503、504を設置することが望ましい。
そして、射出されたそれぞれのレーザ光は、ビームエキスパンダー505、506またはビームエキスパンダー507、508により拡大される。なお、ビームエキスパンダー505、506、507、508はレーザから射出されたレーザ光の断面形状が小さい場合に特に有効なものであり、レーザ光の大きさ等によっては用いなくてもよい。もちろん、レーザ光を一方向のみではなく、二方向と拡大してもよい。また、ビームエキスパンダー505、506、507、508として合成石英ガラス製のシリンドリカルレンズを用いると、高い透過率が得られるので望ましい。
また、ビームエキスパンダー505、506、507、508の表面に施されているコーティングは、使用するレーザ光の波長に対する透過率が99%以上得られるものを使用するのが望ましい。さらに、用いるレーザの波長により合成石英ガラスの表面に施されているコーティングを適切なものに変えれば、さまざまなレーザに適用できる。
ビームエキスパンダー505、506、または507、508から射出されたレーザ光は、ミラー509、510により2方向に分割される。その様子を図6を用いて説明する。
図6(A)および図6(B)はレーザ光の進行方向に対して垂直な断面でのレーザ光の形状を示している。レーザ501から発振したレーザ光は図6(A)で示すように、ミラー509により第1のレーザ光と第2のレーザ光に分割され、第1のレーザ光はダンパー513に吸収され、第2のレーザ光はミラー511で反射された後にスリット515へ入射する。同様に、レーザ502から発振したレーザ光は図6(B)で示すように、ミラー510により第3のレーザ光と第4のレーザ光に分割され、第3のレーザ光はミラー512に入射した後にスリット515へ入射し、第4のレーザ光はダンパー514に吸収される。
スリット515へ入射する2つのレーザ光は、異なるレーザから発振されたものであるため合成されても干渉は起こらない。また、レーザ501から発振されたレーザ光のうち第2のレーザ光がスリット515へ入射し、レーザ502から発振されたレーザ光のうち第3のレーザ光がスリット515へ入射している。スリット515またはその近傍において異なるエネルギー分布を有するレーザ光が合成されるので、エネルギー分布の均一性の優れた矩形状のレーザ光が形成される。(図6(C))
また、本実施例では、2つのレーザを用い、レーザ光の分割数を2としているが、これに限らない。なお、レーザは10台程度用いるのが好ましいが、用いるレーザの台数が少ないときは、偶数台用いて、レーザ光を偶数に分割するのが望ましい。また、用いるレーザは同一のものでなくても良い。
また、本実施例では、図6で示したように、レーザ光の進行方向における垂直な面において等幅で分割しているが、本発明はこれに限らない。
また、本実施例では、エネルギー分布が互いに異なるレーザ光を照射面またはその近傍において合成しているが、レーザ光のモードによって最適な合成方法は異なるので、実施者が適宜合成方法を決定すれば良い。例えば、TEM00モードのレーザ光では対称性が高いので、2分割したレーザ光のうちの一方のビームの左半分と他方のビームの右半分とを合成すると、比較的均一性の高いレーザ光を得ることができる。もちろん、分割数を増やした方がより均一性の高いレーザ光を得ることができる。その他のモードでも同様の方法で均一性の高いレーザ光を得ることができる。
スリット515を通過したレーザビーム516は、ミラー517で反射した後、レーザビーム516の長軸に作用するシリンドリカルレンズ518及びレーザビーム516の短軸方向に作用するシリンドリカルレンズ519により集光され、半導体膜を成膜した基板520に照射される。なお、図5では、まずシリンドリカルレンズ518でレーザビーム516の長軸に作用させた後に、シリンドリカルレンズ519でレーザビーム516の短軸方向に作用させているが、この順番でなくてもよい。本実施例において、2つのシリンドリカルレンズ518、519は集光レンズとして用いられている。なお、元のビームの長軸と短軸の長さの比を保ったまま集光を行う場合は、シリンドリカルレンズ518、519の代わりに球面レンズを用いてもよい。
さらに、レーザビーム516によって形成されたビームスポット521を覆うように、連続発振の基本波のレーザビームを照射面において重ね合わせるように同時に照射する。レーザ発振器522は、基本波を発振する連続発振のレーザ発振器であり、光ファイバー523によって伝送され、ビームスポット521に重なるように照射面へ照射され、ビームスポット524が形成される。なお、ビームスポット524は、ビームスポット521を完全に覆う大きさであればよい。
半導体膜が成膜された基板520はガラスを材料としており、レーザ照射の際に基板520が落ちないように、吸着ステージ525に固定されている。吸着ステージ525は、Xステージ526、Yステージ527を用いて半導体膜の表面に平行な面上をXY方向に走査を繰り返し、半導体膜を結晶化させる。
このようなレーザ照射装置を用いて半導体膜のアニールを行えば、非晶質半導体膜を結晶化させたり、結晶性を向上させて結晶性半導体膜を得たり、不純物元素の活性化を行うことができる。
なお、本発明を用いることによって得られる半導体膜は、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ表面にリッジが形成されない。そのため、隣接する結晶化領域の間にもTFTを作製することができる。また、、レイアウトやサイズの制約が無く、半導体膜内で場所を選ばずにTFTを作製することができる。
また、本発明を用いると、半導体膜の全面において均一にアニールされるため、この方法によってアニールされた半導体膜を用いて作製した全てのTFTは、特性が良好かつ均一になる。
さらには、本発明を用いることによって、連続発振のレーザを半導体膜に照射する際に、その照射位置を決める目印の作製が不要となる。さらには、半導体装置を作成する際のデザインルールを大幅に緩和することが可能になる。
本実施例では、高調波のCWレーザと基本波のCWレーザを半導体膜上で重ねて照射しているが、CWレーザに換えて、連続発振のレーザに換えて発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることもできる。用いることができるレーザの例として、単結晶のYAG、YVO4、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4にドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とし、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを挙げることができる。
本実施例では、本発明によるレーザアニール装置を用いて、薄膜トランジスタ(TFT)を作成する工程を示す。なお、本実施例ではトップゲート型(順スタガ型)TFTの作製方法を記載しているが、トップゲート型TFTに限らず、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTなどでも同様に本発明を用いることができる。
図7(A)に示すように、絶縁表面を有する基板700上に下地膜701を形成する。本実施例では、基板700としてガラス基板を用いる。なお、ここで用いる基板には、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミックス基板、ステンレス基板などを用いることができる。また、プラスチック、アクリルなどに代表される可撓性を有する材料からなる基板は、一般的に他の基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、本工程の処理に耐え得るのであれば用いることができる。
下地膜701は、基板700に含まれるナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が半導体中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。このため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体中への拡散を抑えることのできる酸化珪素や窒化珪素、窒化酸化珪素などの絶縁膜を用いて形成する。また、下地膜701は単層または積層構造のいずれでもよい。本実施例では、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)を用いて窒化酸化珪素膜を10〜400nmの膜厚になるように成膜した。
なお、基板700として、ガラス基板またはプラスチック基板のようにアルカリ金属やアルカリ土類金属が多少なりとも含まれている基板を用いている場合には、不純物の拡散を防ぐために下地膜を設けることは有効であるが、石英基板など不純物の拡散がさほど問題にならない基板を用いる場合には必ずしも下地膜701を設ける必要はない。
次いで、下地膜701上に非晶質半導体膜702を形成する。非晶質半導体層702は、公知の方法(スパッタリング法、LPCVD法、プラズマCVD法など)により、25〜100nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで形成する。ここで用いる非晶質半導体膜702は、珪素やシリコンゲルマニウムなどを用いることができるが、ここでは珪素を用いる。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
続いて図7(B)に示すように、本発明のレーザアニール装置を用いて非晶質半導体膜702にレーザ703、705を照射して結晶化を行う。本実施例では、レーザ703として10W、第2高調波、TEM00モード(シングル横モード)発振のNd:YVO4レーザを用い、球面レンズ704を通して照射を行うとともに、レーザ705として100W、基本波、TEM00モード発振のNd:YVO4レーザを重ねて照射する。なお、レーザ703のビームスポットを完全に覆うようにレーザ705を照射する。
ここで挙げたレーザに限らず、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどのの固体レーザ、GaNレーザ、GaAsレーザ、InAsレーザなどの半導体レーザのいずれかを用いることができる。また、レーザ703は、BBO、LBO、KTP、KDP、LiNbO3、LiIO3、CLBO、ATP、BIBO、KB5などの公知の非線形光学素子により高調波に変換されている。なお、本実施例では、レーザ703は非線形光学素子により第2高調波に変換されているが、第2高調波以外の高調波であっても構わない。また、半導体レーザは自ら発光して励起するため、エネルギー的に効率がよい。
この方法を用いることによって、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒が形成されるだけではなく、隣接したレーザ照射領域の境界において、微結晶領域やリッジの形成を防ぐことが可能になる。さらに、確実に微結晶領域やリッジの形成を防ぐ場合、隣接した高調波の照射領域を若干重ねることが有効である。
このように、半導体膜を均一にアニールすることにより、この半導体膜によって作製される電子機器の特性を良好かつ均一にすることができる。
また、スリットを用いると、レーザ光の強度が弱い部分を遮断することができるため、一定以上の強度を持つ線状または矩形状のレーザ光を照射することができる。
その後、図7(C)に示すように、レーザ光の照射によって形成された結晶性半導体膜706をパターニングし、島状の半導体膜707を形成する。さらに、この島状の半導体膜707を覆うようにゲート絶縁膜708を形成する。ゲート絶縁膜708には、酸化珪素、窒化珪素または窒化酸化珪素などを用いることができる。その際の成膜方法はプラズマCVD法、スパッタ法を用いることができる。ここではプラズマCVD法で窒化酸化珪素膜を115nmの厚さに成膜した。
次に、ゲート絶縁膜708上に導電膜を形成し、パターニングすることでゲート電極709を形成する。その後、ゲート電極709、またはレジストを形成してパターニングしたものをマスクとして用い、島状の半導体膜707にn型またはp型の導電性を付与する不純物を選択的に添加し、ソース領域710、ドレイン領域711、LDD領域712などを形成する。上記の工程によって、Nチャネル型TFT713および714と、Pチャネル型TFT715を同一基板上に形成することができる。
続いて、図7(D)に示すように、Nチャネル型TFT713、714、およびPチャネル型TFT715の保護膜として、絶縁膜716を形成する。この絶縁膜716は、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜を単層または積層構造で100〜200nmの厚さに形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化珪素膜を形成した。絶縁膜716を設けることにより、酸素や空気中の水分をはじめ、各種イオン性の不純物の侵入を阻止するブロッキング作用を得ることができる。
次いで、さらに絶縁膜717を形成する。ここでは、SOG(Spin On Glass)法またはスピンコート法によって塗布されたポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリル、シロキサン(珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む材料、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも一種を有する物質が含まれている物質)などの有機樹脂膜、TOF膜、無機層間絶縁膜(窒化珪素、酸化珪素などの珪素を含む絶縁膜)、low−k(低誘電率)材料などを用いることができる。絶縁膜717は、ガラス基板上に形成されたTFTによるリッジを緩和し、平坦化する意味合いが強いため、平坦性に優れた膜が好ましい。
さらに、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜および有機絶縁膜をパターン加工して、不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。
次に、導電性材料を用いて導電膜を形成し、この導電膜をパターン加工することによって配線718を形成する。その後、保護膜として絶縁膜719を形成すると、図7(D)に示すような半導体装置が完成する。なお、本発明のレーザアニール方法を用いた半導体装置の作製方法は、上述したTFTの作製工程に限定されない。
また、レーザ光による結晶化の前に、触媒元素を用いた結晶化工程を設けてもよい。その触媒元素としては、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いることができる。触媒元素を用いた結晶化工程の後にレーザ光による結晶化工程を行うと、半導体膜の上部は溶融するが下部は溶融しない。半導体膜の下部で溶融せずに残った結晶が結晶核になり、半導体膜の上部に向かって結晶化が進む。
このため、レーザ光による結晶化工程のみに比べて、より半導体膜の結晶性を高めることができ、レーザ光による結晶化後の半導体膜表面の荒れが抑えられることができる。よって、後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの特性のばらつきがより抑えられ、オフ電流を抑えることができる。
なお、触媒元素を添加し、加熱処理を行って結晶化を促進した後にレーザ光の照射を行ってもよいし、加熱処理の工程を省略してもよい。また、加熱処理を行った後、その温度を保ちつつレーザ処理を行ってもよい。
本実施例では、半導体膜の結晶化に本発明のレーザ照射方法を用いた例を示したが、半導体膜にドーピングした不純物元素の活性化を行うために用いてもよい。また、本発明を用いた半導体装置の作製方法は、集積回路や半導体表示装置の作製方法にも用いることができる。
なお、本発明を用いることによって得られる半導体膜は、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ表面にリッジが形成されない。そのため、隣接する結晶化領域の間にもTFTを作製することが可能となる。これによって、レイアウトやサイズの制約が無く、半導体膜内で場所を選ばずにTFTを作製することができる。
また、本発明を用いると、半導体膜の全面において均一にアニールされる。従って、本発明の方法によって形成された半導体膜を用いて作製した全てのTFTは、特性が良好かつ均一になる。
さらには、本発明を用いることによって、連続発振のレーザを半導体膜に照射する際に、その照射位置を決める目印の作製が不要となる。さらには、半導体装置を作成する際のデザインルールを大幅に緩和することが可能になる。
本実施例では、高調波のCWレーザと基本波のCWレーザを半導体膜上で重ねて照射しているが、CWレーザに換えて、連続発振のレーザに換えて発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることもできる。用いることができるレーザの例として、単結晶のYAG、YVO4、GdVO4、または多結晶のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4にドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とし、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを挙げることができる。
本実施例では、本発明を利用して作成されたTFTのレイアウトの例について図8、図9を用いて以下に説明する。
図8において、801は半導体膜、802、804、805、806は高調波によるビームスポット、803はレーザビームの基本波を半導体膜801に照射したときに形成されるビームスポット、807はレーザピッチ、808は隣接するビームスポットが重なった領域である。
通常は、隣り合う結晶化領域の境界には微結晶領域が形成され、リッジも形成されるため、隣り合う結晶化領域をまたぐようにTFTを作製しない。ところが、設計上いろいろな位置にTFTを配置しなければならない場合が生ずる。すなわち、限られた面積の中で集積度を上げようとするときは、隣り合う結晶化領域をまたいでTFTが位置する必要がでてくる。ところが、このようにTFTを形成すると、TFTが有する半導体膜の結晶化状態がそれぞればらつく。電子機器の特性は、電子回路に含まれる複数のTFTのうち、電子移動度が一番低いTFTに従うことになるため、この部分がボトルネックとなる。
本発明を用いることによって、高調波によるビームスポットの部分は結晶化が均一に行われる。そのため、隣接する結晶化領域の境界には微結晶領域やリッジが形成されなくなり、レイアウトを自由に設計することが可能になる。なお、隣接する結晶化領域の境界は、図8(a)において、高調波によるビームスポット802と高調波によるビームスポット804の境界に相当する。
また、図8(b)に示すように、隣接する高調波によるビームスポットの領域を重ね合わせることにより、微結晶領域やリッジを形成させなくすることも可能である。
図9には、図8で説明したようにレーザ照射を行った後のTFTのレイアウトの一例として、発光素子の画素に用いるTFTのレイアウトを示す。900は半導体膜、901はソース信号線、902はゲート信号線、903は電流供給線、904はスイッチング用TFT、905は駆動用TFT、906は容量、907は発光素子である。また、図9(C)の(1)、(2)が重なっている部分は図8(b)のレーザが重なった領域808に相当する。
本発明のレーザ照射装置によってレーザ照射を行うと、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ表面にリッジが形成されないため、図9(C)の(1)、(2)にように隣接する結晶化領域の間にもTFTを作製することが可能となる。
このように、隣接する結晶化領域の境界の位置に関係なく、無駄なく自由にTFTを作成することが可能になる。そして、連続発振のレーザを半導体膜に照射する際に、その照射位置を決める目印の作製が不要となる。その結果、コストの低減を図ることができ、かつTFTのデザインの自由度が向上する。さらには、リッジが形成されないため、品質が高く、かつ性能のばらつきがないようにTFTを製作することができる。
本発明を用いてレーザ照射を行った半導体材料を用いて様々な電子機器を完成させることができる。本発明を用いることにより、基板全面を均一にアニールすることが可能となるため、半導体素子のレイアウトや大きさの自由度を高くすることや、集積度を向上することが可能となる。また、基板のどの部分においても結晶化度は同じであるため、製作した半導体素子の製品品質は良好な状態であり、且つばらつきをなくすことが可能になる。その具体例を、図を用いて説明する。
図10(A)は表示装置であり、筐体1001、支持台1002、表示部1003、スピーカー部1004、ビデオ入力端子1005などを含む。この表示装置は、他の実施例で示した作製方法により形成した薄膜トランジスタをその表示部1003に用いることにより作成される。なお、表示装置には液晶表示装置、発光装置などがあり、具体的にはコンピュータ用、テレビ受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図10(B)はコンピュータであり、筐体1011、表示部1012、キーボード1013、外部接続ポート1014、ポインティングマウス1015などを含む。他の実施例で示した作製方法を用いることにより、表示部1012やその他の回路への適用が可能である。さらに、本発明は本体内部のCPU、メモリなどの半導体装置にも適用が可能である。
また、図10(C)は携帯電話であり、携帯端末の1つの代表例である。この携帯電話は筐体1021、表示部1022、操作キー1023などを含む。上記の携帯電話を初めとして、PDA(Personal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカメラ、小型ゲーム機などの電子機器は携帯端末であるため、表示画面が小さい。従って、本発明の他の実施例で示した微細なトランジスタを用いてCPU、メモリなどの機能回路を形成することによって、小型・軽量化を図ることができる。
本実施例で作成したトランジスタを薄膜集積回路、または非接触型薄膜集積回路装置(無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identification)とも呼ばれる)として用いることもできる。他の実施例で示した作製方法を用いることにより、薄膜集積回路および非接触型薄膜集積回路は、タグとしての利用やメモリとしての利用が可能である。
図10(D)は、パスポート1041にICタグ1042を付けている状態を示している。また、パスポート1041にICタグ1042を埋め込んでもよい。同様にして、運転免許証、クレジットカード、紙幣、硬貨、証券、商品券、チケット、トラベラーズチェック(T/C)、健康保険証、住民票、戸籍謄本などにICタグを付けたり埋め込むことができる。このようにタグとして利用することによって、偽造されたものと区別することが可能になる。
また、無線機能を設けたICタグは以下のように用いることができる。会計の際に無線ICタグに会計を済ませたことを記入し、出口にチェック手段を設け、会計済みであることを無線ICタグに書き込まれているかをチェックする。会計を済ませていないで店を出ようとすると、警報が鳴る。この方法によって、会計のし忘れや万引きを予防することができる。
このほかに、ICタグをメモリとして用いることも可能である。図10(E)はICタグ1051を野菜の包装に貼り付けるラベルに用いた場合の例を示している。また、包装そのものにICタグを貼り付けたり埋め込んだりしても構わない。ICタグ1051には、生産地、生産者、製造年月日、加工方法などの生産段階のプロセスや、商品の流通プロセス、価格、数量、用途、形状、重量、賞味期限、各種認証情報などを記録することが可能になる。ICタグ1051からの情報は、無線式のリーダ1052のアンテナ部1053で受信して読み取り、リーダの表示部1054に表示することによって、卸売業者、小売業者、消費者が把握することが容易になる。また、生産者、取引業者、消費者のそれぞれに対してアクセス権を設定することが可能であり、アクセス権を有しない場合は読み込み、書き込み、書き換え、消去ができない仕組みになっている。
以上に挙げたICタグは、従来用いているバーコードより製造コストが高いため、コスト低減を図る必要がある。本発明を用いることによって、隣り合う結晶化領域の境界においても無駄なく半導体素子を形成することができるため、コストの低減に有効である。また、リッジがないため、どのICタグも品質が高く、かつ性能のばらつきがないように製作することができる。
以上のように、本発明により作製された半導体装置の適用範囲は極めて広く、本発明により作製された半導体装置をあらゆる分野の電子機器に用いることができる。
本実施例では、本発明のレーザ照射装置による結晶化方法に、触媒元素による結晶化方法を組み合わせて、より結晶化を良好に行う例について説明する。
まず、図12(A)に示すように、基板1200上に下地膜1201を形成し、下地膜1201上に半導体膜1202を成膜する工程までは、実施例2を参照して行う。次に、図12(B)に示すように、半導体膜1202の表面に、重量換算で10〜100ppmのNiを含む溶液(例えば酢酸ニッケルの溶液)をスピンコート法で塗布し、半導体膜1202の表面近傍にニッケルを導入した領域を形成する。なお、図12(B)の点線は、触媒元素を導入したことを示す。触媒の導入は上記方法に限定されず、スパッタ法、蒸着法、プラズマ処理などを用いて導入しても良い。
そして、500〜650℃で4〜24時間、例えば570℃、14時間の加熱処理を行う。この加熱処理により、触媒元素が導入された領域から、触媒元素が導入されていない領域に向かって、すなわち半導体膜1202表面から基板1200に向かって縦方向に結晶化が促進され、結晶化された半導体膜1203が形成される(図12(C))。
加熱処理は、ランプの輻射を熱源としたRTA(Rapid Thermal Anneal)、又は加熱された気体を用いるRTA(ガスRTA)で設定加熱温度740℃、180秒のRTAを行ってもよい。ここでの設定加熱温度は、パイロメータで測る基板の温度であり、その温度を熱処理時の設定温度としている。他には、ファーネスアニール炉を用いて550℃にて4時間の熱処理があり、これを用いて加熱処理をしても良い。結晶化温度の低温化及び時短化は触媒作用のある金属元素の作用によるものである。
なお、本実施例では触媒元素としてニッケル(Ni)を用いているが、その以外にも、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いても良い。
次に、半導体膜1202にレーザ照射を行う。他の実施例と同様に、高調波のCWレーザを出射し、このビームの両端部分をスリットで遮断し、光学系を用いて線状、矩形状、または楕円状にビーム形状を成形したのちに半導体膜に照射する。または、高調波のCWレーザを出射し、回折光学素子を用いてエネルギー分布を均一にし、このレーザビームの両端部分をスリットで遮断し、光学系を用いて線状、矩形状、または楕円状のレーザビームに成形した後、半導体膜に照射する。このようにして照射面に高調波のCWレーザを照射する。高調波のCWレーザが半導体膜上に作るビームスポットを完全に覆うように、基本波のCWレーザを照射面に照射する。この状態で、半導体膜を2つのレーザビーム1204に対して相対的に走査することによって、半導体膜の全面を良好にアニールすることができる。なお、本発明を用いて結晶化を行うと、結晶粒径が半導体膜の全面において均一で、かつ表面にリッジが形成されない。また、他の実施例と同様に、CWレーザに換えて、発振周波数が10MHz以上のパルス発振をするレーザを用いることができる。
上述した方法により、結晶性が高められた半導体膜1205が形成される。なお、触媒元素を用いて結晶化された半導体膜1205内には、触媒元素(ここではNi)がおおよそ1×1019atoms/cm3程度の濃度で含まれていると考えられる。次に、半導体膜1205内に存在する触媒元素のゲッタリングを行う。ゲッタリングによって、半導体膜1205中に混入する金属元素を除去することができるため、オフ電流を低減することが可能である。
まず、図13(A)に示すように半導体膜1205の表面に酸化膜1206を形成する。1nm〜10nm程度の膜厚を有する酸化膜1206を形成することで、後のエッチング工程において半導体膜1205の表面がエッチングにより荒れるのを防ぐことができる。なお、酸化膜1206は公知の方法を用いて形成することができる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などと過酸化水素水を混合させた水溶液や、オゾン水で、半導体膜1205の表面を酸化することで形成しても良いし、酸素を含む雰囲気中でのプラズマ処理や、加熱処理、紫外線照射等により形成しても良い。また酸化膜を別途、プラズマCVD法やスパッタ法、蒸着法などで形成しても良い。
次に酸化膜1206上に、希ガス元素を1×1020atoms/cm3以上の濃度で含むゲッタリング用の半導体膜1207を、スパッタ法を用いて25〜250nmの厚さで形成する。ゲッタリング用の半導体膜1207は、半導体膜1205とエッチングの選択比を大きくするため、半導体膜1205よりも膜の密度の低い方がより望ましい。希ガス元素としてはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用いる。
次に、図13(B)に示すように、ファーネスアニール法やRTA法を用いて加熱処理を施し、ゲッタリングを行う。ファーネスアニール法で行なう場合には、窒素雰囲気中にて450〜600℃で0.5〜12時間の加熱処理を行なう。また、RTA法を用いる場合には、加熱用のランプ光源を1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1〜10回、好ましくは2〜6回繰り返す。ランプ光源の発光強度は任意なものとするが、半導体膜が瞬間的には600〜1000℃、好ましくは700〜750℃程度にまで加熱されるようにする。
加熱処理により、半導体膜1205内の触媒元素が、拡散により矢印に示すようにゲッタリング用の半導体膜1207に移動し、ゲッタリングされる。
次に、ゲッタリング用の半導体膜1207を選択的にエッチングして除去する。エッチングは、ClF3によるプラズマを用いないドライエッチング、或いはヒドラジンや、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド((CH3)4NOH)を含む水溶液などアルカリ溶液によるウエットエッチングで行なうことができる。このとき酸化膜1206によって半導体膜1205がエッチングされるのを防ぐことができる。
次に酸化膜1206をフッ酸により除去した後、半導体膜1205をパターニングし、島状の半導体膜1208を形成する(図13(C))。この島状の半導体膜1208を用いてTFTに代表される各種の半導体素子を形成することができる。なお、本発明においてゲッタリング工程は、本実施例に示した方法に限定されない。その他の方法を用いて半導体膜中の触媒元素を低減するようにしても良い。
なお、本実施例では、触媒元素を添加してから加熱処理を行って結晶化を促進してから、レーザビームの照射により結晶性をより高めている構成について説明した。本発明はこれに限定されず、加熱処理の工程を省略しても良い。具体的には、触媒元素を添加してから加熱処理の代わりにレーザビームを照射し、結晶性を高めるようにしても良い。
本実施例では、TFTを薄膜集積回路装置、または非接触型薄膜集積回路装置(無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identification)とも呼ばれる)として用いることもできる。他の実施例で示した作製方法を用いることにより、薄膜集積回路装置や非接触型薄膜集積回路装置は、タグやメモリとして利用することができる。
本発明を用いることによって、半導体全面に良好にレーザ照射処理を行うことができるようになる。そのため、半導体素子のレイアウトや大きさの自由度を高めることや、集積度を向上することが可能となる。また、製作した薄膜集積回路装置や非接触型薄膜集積回路装置の製品品質は良好な状態であり、品質のばらつきを押さえることが可能になる。その具体例を説明する。
本実施例では、無線ICタグの集積回路に用いられる半導体素子として絶縁分離されたTFTを用いた例を示す。しかし、無線ICタグの集積回路に用いることができる半導体素子はTFTだけではなく、その他の素子を用いることもできる。例えば、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタなどを代表的に挙げることができる。
以下の図を用いて、無線ICタグの作製方法を説明する。実際には、一辺の長さが1メートルを超える基板に多数の半導体素子を同時に形成した後に、個々の半導体素子に切り離し、それぞれの封止を行うことによって作製する。
まず、図14(A)に示すように、第1の基板1400を用意する。第1の基板1400として、バリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。この他に、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂を用いてもよい。無線ICタグの作製工程における処理温度に耐えることができる合成樹脂であれば、基板として用いることができる。
第1の基板1400が、以上に挙げるような材質であれば、その面積や形状に大きな制限はない。そのため、第1の基板1400として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。
また、上記の材料からなる基板の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。例えば、ガラス基板、石英基板、または半導体基板を研磨して薄くした基板を用いてもよい。
第1の基板1400を準備した後、第1の基板1400上に絶縁膜1402を形成する(図14(A))。絶縁膜1402としては、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)等の酸素又は窒素を有する絶縁膜の単層構造または積層構造で設けることができる。本実施例では、絶縁膜1402として酸化窒化珪素を100nm成膜する。また、絶縁膜1402に高密度プラズマ処理を行って、絶縁膜1402を酸化させたり窒化させたりしてもよい。
高密度プラズマは、マイクロ波、例えば2.45GHzを使うことによって生成される。具体的には、電子密度が1011〜1013/cm3かつ電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下の高密度プラズマを用いる。このように低電子温度が特徴である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低い。そのため、従来のプラズマ処理に比べると、プラズマダメージが少なく欠陥が少ない膜を形成することができる。プラズマの生成はラジアルスロットアンテナを用いたマイクロ波励起のプラズマ処理装置を用いることができる。マイクロ波を発生するアンテナから基板1400までの距離を20〜80mm(好ましくは20〜60mm)とする。
次に、剥離層1404を形成する(図14(A))。剥離層1404は金属膜や金属膜と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属膜としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、鉛(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる膜を単層又は積層して形成する。また、これらの材料は、公知の手段(スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法)を用いて形成することができる。なお、本実施例では、プラズマCVD法でタングステンを30nm成膜する。
剥離層1404を形成するとき、表面に酸化物、窒化物、または窒化酸化物が形成される。これらの化合物はエッチングガス、特に3フッ化塩素(ClF3)との反応速度が高く、簡便かつ短時間に剥離することができる。つまり、エッチングガスによって金属、金属酸化物、金属窒化物、又は金属の窒化酸化物のいずれかが除去されれば、剥離が可能である。
また、剥離層1404の表面に酸化物、窒化物、又は窒化酸化物が形成されるときに、化学的な状態に変化が生じることがある。例えば、Wを有する酸化膜が形成される場合、酸化タングステン(WOx(x=2〜3))は、価数に変化が生じる。その結果、物理的手段により剥離しやすい状態となる。化学的手段に加え、物理的手段を用いることができるため、より簡便に、短時間で除去することができる。
剥離層1404を形成した後に、下地膜として機能する絶縁膜1406を形成する。本実施例では、スパッタ法を用いて酸化珪素を200nm成膜する。
次に、半導体膜1408を形成する。半導体膜1408としては、非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜でもよい。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素またはシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いるとよい。本実施例では、非晶質珪素膜を50nm形成する。なお、半導体膜1408の形成後に、半導体膜1408に含まれる水素を除去する工程を行っても良い。具体的には、500℃で1時間加熱すればよい。
ここで、本発明のレーザ照射装置を用いて半導体膜1408にレーザビームを照射して、半導体膜1408の結晶化を行う(図14(B))。本実施例では、第1のレーザとして、10W、第2高調波、TEM00モード(シングル横モード)発振のNd:YVO4レーザを用い、球面レンズを通して照射を行う。同時に、第2のレーザとして、100W、基本波、TEM00モード発振のNd:YVO4レーザを重ねて照射する。ここで、第1のレーザのビームスポットを完全に覆うように第2のレーザを照射する。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
他の実施例と同様に、第1のレーザにスリットを通すことによって、第1のレーザの長軸方向の両端部の強度が弱い部分を除去し、同時に長軸方向の長さを調整することができる。さらに、第2のレーザとしてエネルギーが高い基本波を照射面において重ね合わせることで、半導体膜を良好に結晶化させることができる。
ここで用いることができるレーザの種類は、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。
なお、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、Arイオンレーザ、またはTi:サファイアレーザは、連続発振をさせることが可能であり、Qスイッチ動作やモード同期などを行うことによって10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。10MHz以上の発振周波数でレーザビームを発振させると、半導体膜がレーザによって溶融してから固化するまでの間に、次のパルスが半導体膜に照射される。従って、発振周波数が低いパルスレーザを用いる場合と異なり、半導体膜中において固液界面を連続的に移動させることができるため、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。
レーザの媒質としてセラミック(多結晶)を用いると、短時間かつ低コストで自由な形状に媒質を形成することが可能である。単結晶を用いる場合、通常、直径数mm、長さ数十mmの円柱状の媒質が用いられているが、セラミックを用いる場合はさらに大きいものを作ることが可能である。
発光に直接寄与する媒質中のNd、Ybなどのドーパントの濃度は、単結晶中でも多結晶中でも大きくは変えられないため、濃度を増加させることによるレーザの出力向上にはある程度限界がある。しかしながら、セラミックの場合、単結晶と比較して媒質の大きさを著しく大きくすることができるため大幅な出力向上が期待できる。
さらに、セラミックの場合では、平行六面体形状や直方体形状の媒質を容易に形成することが可能である。このような形状の媒質を用いて、発振光を媒質の内部でジグザグに進行させると、発振光路を長くとることができる。そのため、増幅が大きくなり、大出力で発振させることが可能になる。また、このような形状の媒質から射出されるレーザビームは出射時の断面形状が四角形状であるため、丸状のビームと比較すると、線状ビームに整形するのに有利である。このように出射されたレーザビームを、光学系を用いて整形することによって、短辺の長さ1mm以下、長辺の長さ数mm〜数mの線状ビームを容易に得ることが可能となる。また、励起光を媒質に均一に照射することにより、線状ビームは長辺方向にエネルギー分布の均一なものとなる。
なお、本実施例のレーザ結晶化方法に、結晶化を助長する金属元素(ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)など)を用いる結晶化方法を組み合わせると、より結晶化が良好に行われる。
このようにして形成した結晶性半導体膜1410にP型の導電型を付与する不純物元素をドーピングする。ここでは、不純物元素としてホウ素(B)をドーピングする。(図14(C))
次に、結晶性半導体膜1410を選択的にエッチングして、第1の半導体膜1412、第2の半導体膜1414を形成する(図14(D))。
次に、第1の半導体膜1412を覆うようにレジストマスク1416を形成した後、第2の半導体膜1414に対してp型の導電型を付与する不純物元素をドーピングする(図15(A))。本実施の例では、不純物元素としてボロン(B)をドーピングする。
次に、レジストマスク1416を除去し、第1の半導体膜1412、第2の半導体膜1414に対してプラズマ処理を行い酸化または窒化させることによって、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414の表面に、第1の絶縁膜1418、1420(酸化膜または窒化膜)を形成する(図15(B))。本実施例では、酸素を含む雰囲気中でプラズマ処理を行い、第1の半導体膜1412、第2の半導体膜1414を酸化し、絶縁膜1418として酸化珪素(SiOx)を形成する。第1の絶縁膜1418、1420として窒化珪素を形成する場合には、窒素雰囲気下でプラズマ処理を行えばよい。一般的に、CVD法やスパッタ法により形成した酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜は、膜の内部に欠陥を含んでいるため膜質が十分でない。そのため、酸素雰囲気下中で、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414にプラズマ処理を行い、表面を酸化することによって、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414上に、CVD法やスパッタ法等により形成した絶縁膜より緻密な絶縁膜を形成することができる。また、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414の上方にCVD法やスパッタ法等を用いて設けられた絶縁膜を介して導電膜を設ける場合、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414の端部において絶縁膜の段切れ等による被覆不良が生じ半導体膜と導電膜間でショート等が発生する恐れがある。しかし、あらかじめ第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414の表面に、プラズマ処理を用いて酸化または窒化をすることによって、第1の半導体膜1412および第2の半導体膜1414の端部で絶縁膜の被覆不良が発生することを抑制することができる。
次に、第1の絶縁膜1418及び絶縁膜1420を覆うように第2の絶縁膜1422を形成する。第2の絶縁膜1422の材料は、窒化珪素(SiNx)または窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)である。ここでは、絶縁膜1422として窒化珪素膜を4〜20nmの厚さで形成する(図15(C))。
次に、第2の絶縁膜1422に対して酸素雰囲気中でプラズマ処理を行い、第2の絶縁膜1422の表面を酸化させ第3の絶縁膜1424を形成する(図15(C))。なお、プラズマ処理は上述した条件下で行うことができる。ここではプラズマ処理により、第2の絶縁膜1422の表面に第3の絶縁膜1424として酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を、2〜10nmで形成される。
次に、第1の半導体膜1412、第2の半導体膜1414の上方にゲート電極として機能する導電膜1426、1428を形成する(図15(D))。なお、ここでは導電膜1426、1428は、第1の導電膜1426a、1428aと第2の導電膜1426b、1428bとの積層構造で設けられている。ここでは、第1の導電膜1426a、1428aとして窒化タンタルを用い、第2の導電膜1426b、1428bとしてタングステンを用いて積層構造で設ける。なお、ゲート電極として用いることができる導電膜は、単層で形成しても良い。また、導電膜の材料も、上記の材料に限定されるものではなく、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された一種類の元素または複数種含む合金、若しくはこれらの元素を含む化合物を用いることができる。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成することもできる。
次に、導電膜1426をマスクとして第1の半導体膜1412にp型を付与する不純物元素を導入し、導電膜1428をマスクとして第2の半導体膜1414にn型を付与する不純物元素を導入する。この工程によって、ソース領域およびドレイン領域を形成する。その後、導電膜1426、1428を覆って絶縁膜1430を形成する(図16(A))。
第1の半導体膜1412のソースまたはドレイン領域と電気的に接続するように絶縁膜1430上に導電膜1432を形成することによって、第1の半導体膜1412をチャネル形成領域として利用するp型の薄膜トランジスタ1434、第2の半導体膜1414をチャネル形成領域として利用するn型の薄膜トランジスタ1436を設ける(図16(A))。なお、本実施例ではトップゲート型(順スタガ型)TFTを作製する例を示したが、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTなどTFTを作製する際にも、本発明を用いることができる。
ここで、第1の半導体膜1412、第2の半導体膜1414およびこれらの半導体層と同時に形成される導電膜1432(すなわち配線)は、基板1400の上面から見た場合に、角部が丸くなるように形成するのが好ましい。配線などの角を丸めて形成された状態について図19に模式的に示す。
図19(A)は従来の形成方法を示した図であり、図19(B)は配線や半導体膜の角を丸めて形成した状態を示した図である。図19(B)に示すように角部を丸くすると、配線形成時に発生するゴミが配線の角部に残ることを抑制することができる。したがって、半導体装置のゴミによる不良を低減し、歩留まりを向上させることができる。
次に、導電膜1432を覆うように絶縁膜1438を形成し、この絶縁膜1438上にアンテナとして機能する導電膜1440を形成し、さらに導電膜1440を覆うように絶縁膜1442を形成する(図16(B))。なお、ここで薄膜トランジスタ1434、1436の上方に設けられた導電膜1430等(点線で囲まれた領域)をまとめて素子群1444と記す。
絶縁膜1430、1438、1442は、それぞれ単層でも複数層でも良く、それぞれ同じ材料を用いて形成しても、別々の材料を用いて形成してもよい。その材料として、(1)酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)等の酸素または窒素を有する絶縁膜、(2)DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素を含む膜、(3)エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料、およびシロキサン系材料、などを挙げることができる。
また、上記の(3)で挙げた材料は、スピンコーティング法、液滴吐出法または印刷法等を用いることによって形成することができるため、平坦化を効率的に行い、処理時間の短縮を図ることができる。さらに、絶縁膜1430、1438、1442にプラズマ処理を行い、酸化または窒化をさせることも可能である。
導電膜1440としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)や銀(Ag)や金(Au)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、炭素(C)等の金属、上記の金属を含んだ金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることができる。
次に、素子群1444を避けた領域に、レーザ照射などの方法によって開口部1446を形成して剥離層1404を露出させ、この開口部1446からエッチャントを導入することによって剥離層1404を除去する。(図17(A))また、剥離層1404は、全て除去してもよいし、完全に除去せずに一部残してもよい。剥離層1404を残すことによって、エッチング剤によって剥離層1404を除去した後であっても、基板1400上に薄膜トランジスタ1434、1436を保持することができ、後の工程において取扱が簡便となる。エッチング剤としては、三フッ化塩素ガス等のフッ化ハロゲンまたはハロゲンを含む気体や液体を使用することができる。例えば、CF4、SF6、NF3、F2等を用いることもできる。
次に、絶縁膜1442に接着性を有する第1のシート材1448を接着させて、基板1400から素子群1444を剥離させる(図17(B))。
第1のシート材1448を接着する目的は、この後の工程で剥離される素子群1444の機械的強度を保持するためである。このため、第1のシート材1448の厚みは50μm以上あると好ましい。第1のシート材1448は、可撓性のフィルムを利用することができ、少なくとも一方の面に粘着剤を有する面が設けてある。第1のシート材1448の一例として、ポリエステルを基材とし、接着面に粘着剤が設けてあるものを利用することができる。粘着剤としては、アクリル樹脂等を含んだ樹脂材料、または合成ゴム材料を含む材料を用いることができる。
次に、剥離させた素子群1444を、可撓性を有するフィルムで封止する。ここでは、第2のシート材1450に素子群1444を貼り付け、さらに、第3のシート材1452を用いて素子群1444を封止する(図18(A)、(B))。
第2のシート材1450、第3のシート材1452は、可撓性のフィルムを利用することができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルム等を利用することができる。また、フィルムは、熱圧着により、被処理体に加熱処理と加圧処理が行われるものであり、加熱処理と加圧処理を行う際には、フィルムの最表面に設けられた接着層か、または最外層に設けられた層(接着層ではない)を加熱処理によって溶かし、加圧により接着する。また、第1のシート材1448と第2のシート材1450とで素子形成層を封止する場合には、第1のシート材1448も同様の材料を用いればよい。
以上の工程により、記憶素子を有し、非接触でデータのやりとりが可能である半導体装置を得ることができる。また、本実施の例で示した半導体装置は、可撓性を有している。素子群1444を可撓性のある基板に貼り合わせると、厚さが薄く、軽く、落下しても壊れにくい半導体装置が完成する。安価な可撓性基板を用いると、安価に半導体装置を提供することができる。さらに、曲面や異形の形状を持つ物体に貼り合わせることも可能になる。さらに、基板1400を再利用することによって、低コストで半導体装置を作製することができる。
なお、本実施例は、上記の実施の例および他の実施例と自由に組み合わせることができる。
本実施例では、本発明のレーザ照射装置およびレーザ照射方法を用いて結晶化した半導体膜を用いて、非接触でデータの送受信が可能である無線ICタグとして利用した場合に関して、図20を用いて説明する。
無線ICタグ2001は、非接触でデータを送受信する機能を有し、電源回路2002、クロック発生回路2003、2004、他の回路を制御する制御回路2005、インターフェイス回路2006、メモリ2007、データバス2008、アンテナ(アンテナコイル)2009を有する(図20(A))。
電源回路2002は、アンテナ2009から入力された交流信号を基に、半導体装置内にあるそれぞれの回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路2003は、アンテナ2009から入力された交流信号を基に、半導体装置内のそれぞれの回路に供給する各種クロック信号を生成する回路である。クロック発生回路2004は、リーダライタ2010と送受信するデータを、復調したり、変調する機能を有する。制御回路2005は、メモリ2007を制御する機能を有する。アンテナ2009は、電磁界または電波の送受信を行う機能を有する。リーダライタ2010は、半導体装置とのデータの送受信や制御、および送受信や制御したデータに関する処理を制御する。なお、RFIDは上記の構成に制約されない。例えば、電源電圧のリミッタ回路や暗号処理専用ハードウェアといった他の要素を追加した機能であってもよい。
また、無線ICタグ2001において、各回路への電源電圧の供給方法は、(1)電源(バッテリー)を搭載せず、アンテナで電波を受信することによって電源電圧を供給する方法、(2)アンテナの代わりに電源(バッテリー)を搭載して電源電圧を供給する方法、(3)電波と電源によって電源電圧を供給する方法、のいずれも用いることができる。
本発明の半導体装置を無線ICタグ等に利用した場合、非接触で通信を行う点、複数のデータの読取りが可能である点、データの書き込みが可能である点、様々な形状に加工可能である点、選択する周波数によっては指向性が広く認識範囲が広い点、等の利点を有する。無線ICタグは、非接触による無線通信で人や物の個々の情報を識別可能なタグ、ラベル加工を施して目標物への貼り付けを可能としたラベル、イベントやアミューズメント向けのリストバンド等に適用することができる。また、無線ICタグを樹脂材料で成型加工してもよい。さらに、無線ICタグは、入退室管理、精算、在庫管理などのシステムの運用に活用することができる。
本発明を用いて作製した半導体装置を無線ICタグとして実際に用いるときの一形態について説明する。表示部2020を有する携帯端末2021の側面には、リーダライタ2022が設けられ、品物2024の側面には無線ICタグ2026が設けられる(図20(B))。品物2024に設けられた無線ICタグ2026にリーダライタ2022をかざすと、表示部2020に品物2024の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に品物2024の説明等の商品に関する情報が表示される。
また、品物2030をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダライタ2032と、品物2030に設けられた無線ICタグ2034を用いて、品物2030の検品を行うことができる(図20(C))。このように、システムに無線ICタグを活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。さらに、在庫管理や出荷システムと連動させることによって、余剰在庫の減少や棚卸しの簡略化というメリットも生まれる。
なお、本実施例は、実施の形態および他の実施例と自由に組み合わせることができる。
図1は本願発明のレーザ照射装置の概要を示す図である。
図2は本願発明のレーザ照射装置の概要を示す図である。
図3は本願発明を用いたときのレーザのエネルギー密度を説明する図である。
図4は本願発明で用いるスリットの概要を示す図である。
図5は本願発明のレーザ照射装置の概要を示す図である。
図6は本願発明のレーザ照射の概要を示す図である。
図7は本願発明を用いたTFT作成過程の概要を示す図である。
図8は本願発明によるレーザ照射の概要を示す図である。
図9は本願発明を用いた画素作成の概要を示す図である。
図10は、本願発明を用いた電子機器の例を示す図である。
図11は、レーザのエネルギー密度を示す図である。
図12は、本願発明を用いた半導体膜の結晶化を説明する図である。
図13は、本願発明を用いた半導体膜の結晶化を説明する図である。
図14は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図15は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図16は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図17は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図18は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図19は、本願発明を用いた半導体装置の作製過程を説明する図である。
図20は、本願発明を用いた半導体装置の例を示す図である。