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JP2005531339A - 組織工学的な整形外科用スキャッフォールド - Google Patents

組織工学的な整形外科用スキャッフォールド Download PDF

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Abstract

整形外科用のスキャッフォールドまたは他の中実体を製作するプロセスであって、このプロセスは、シリコンを含む生体活性材料の成形ブロックを形成するステップ、前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、およびこれらの処理された表面が互いに結合する条件下において、2つまたはそれ以上の前述のブロックを含むスキャッフォールドを自己組立てするステップ、ならびに、この後、この組立てられた構造物を回収するステップを含む。このプロセスを用いて得られた整形外科用スキャッフォールドを含む製品も提供される。

Description

本発明は、組織工学的な自己組立型の整形外科用スキャッフォールドを製作するためのプロセス、およびこれにより得られる整形外科用のスキャッフォールドに関係する。
組織工学(TE)は、身体が自力で治癒するのを助けるという、医学における新たな重要な傾向を具体化する。骨および軟骨は比較的簡単な細胞系であり、身体は既に骨のための内蔵再生系(「再建」)を有しているため、新たな骨を工作することは、次の10年間で重要なTE分野になることが期待されている。
骨を置換する必要性は、外傷、感染症、癌または筋骨格疾患に起因して生じ得る。毎年、USAだけで、外科医師は450,000例以上の骨移植を行っている。様々な手法で天然材料と合成材料の両方が使用されている。
骨自家移植片は、患者の骨格系の別の領域から採取した骨の一部である。自家移植は、補充骨を必要とする手順での有効性における金字塔的標準と考えられているが、自家移植片の採取はリスクを伴っており、患者にかなりの不快感を与える。回復時間は遅く、6ヶ月を超えることも多い。
代替手段は、被移植患者以外のヒト供与者ソースを含む同種異系移植片である。一般的には人間の死体から得られる同種異系骨移植片は、清浄化され、滅菌され、使用するまで骨バンクで保管される。しかし、滅菌プロセスが骨の強度を弱める可能性があり、また、感染性疾患を伝播する危険性があることも分かっている。更に、骨伝導および骨誘導能力が限られていることも知られており、これの重要性については以下でもっと充分に検討される。
動物からの加工骨が人間に移植される骨異種移植片は高い生産性を提供するが、疾患の伝播に関して同種異系移植よりも危険性が高いことが分かっている。
一連の骨移植片材料がこれまでに臨床用に使用されており、また、他の材料が開発中である。承認済みの天然の製品は、脱鉱質化ヒト骨基質、ウシコラーゲン・鉱質複合体および加工サンゴモヒドロキシアパタイトを含む。承認済みの合成製品は、硫酸カルシウムスキャッフォールド、生体活性ガラススキャッフォールドおよびリン酸カルシウムスキャッフォールドを含む。これらの材料は、数多くの特定の物理的および生物学的特性を持っていることが要求される。
整形外科用のスキャッフォールドは、骨に対する一時的導管または恒久的導管のどちらにも使用される。これらは、骨折部位を横断する成長、または損傷を負った骨もしくは感染した骨の再成長を促進することができ、また誘導することもできる。皮質骨と海綿骨の組成は非常に類似しているが、これらの微細構造はかなり異なっている。緻密骨または皮質骨は、硬組織「支質」または「間質」により相互に保持された、幅が約50から100ミクロンの神経血管性「ハバース」管を含んでいる。スポンジ状の海綿骨の構造は皮質骨とは異なっており、もっと空隙が多く、小柱状である。
整形外科用のスキャッフォールドにおいて使用されるあらゆる材料は、置換することが意図されている骨の多孔度を厳密に反映した多孔度を有していることが要求される。例えば、海綿骨用の生体模倣スキャッフォールドは、幅が500−600ミクロンの細孔により互いに連結された薄い間質格子を有している。生分解性複合材料で置換できるのは、内部に血液を持たないこの間質である。
更に、インプラントを骨に対する置換物として使用するためには、このインプラントは、少なくとも骨結合および骨伝導が可能でなければならない。骨結合とは、線維組織の厚い介在層を伴うことなく、生体材料が骨の表面に直接的に化学結合することを指している。
骨伝導性生体材料は、生体骨がこの材料の表面で成長し、再建されることを受動的に可能にする。従って、鉱質化、コラーゲン生成およびタンパク質合成を含む正常な骨芽細胞の振る舞いが維持される。
OTEスキャッフォールド材料として望まれる更なる2つの特性は、骨誘導性または骨原性であることと、新骨内方成長の速度と適合する速度での分解性を有していることである。
骨誘導性生体材料は、例えば間葉幹細胞の骨芽細胞への分化を補強および促進することにより、骨の成長を活発に促進する。骨誘導性インプラントは、通常では成長しない領域での骨の成長、即ち「異所性」骨形成をしばしば誘導する。この誘導プロセスは普通の状況では生化学的なプロセスであるが、機械的または物理的な性状でもあり得る。最後に、骨原性生体材料とは、骨を形成することができる細胞を含む材料、または骨芽細胞に分化することができる細胞を含む材料である。
生分解速度に関する典型的な要件は、スキャッフォールドが、軟骨の修復の場合には4−10週間、骨の修復の場合には3−8週間、構造的な完全性を維持できることである。
これらの材料の機械的な要件は、置換される組織のタイプに大いに依存する。皮質骨は15−30GPaのヤング率を有しており、海綿質(スポンジ状、小柱状)の骨は0.01−2GPaのヤング率を有しており、軟骨は0.001GPa未満のヤング率を有しているが、あらゆる特定のケースにおいて使用される材料は、できる限りこれらのヤング率を反映すべきである。
多孔質のスキャッフォールドを製作するための多くの手法が生分解性ポリマー系に対して開発されており、これらの手法は、溶媒注型および粒子溶脱、溶融成形、繊維結合、気体発泡または積層膜成形を含む。
分散ポリマー相の熱水変換およびバーンアウトなどのもっと熱的に安定したセラミック系に対する種々の異なる手法が知られている。
現存する多孔質の生分解性高分子系の多くは、細胞内方成長のための整形外科用スキャッフォールドとして使用するには限界があることが分かっている。例えば、置換される組織に対する機械的特性の乏しい適合性しか得られない可能性が多い。この高分子系内における長い距離にわたって一様な多孔度を達成するのは難しく、また、これらの基質は骨伝導性ではあり得るが、骨誘導能力を何ら持っていない可能性がある。
多孔質セラミック系も細孔径分布を制御する能力が乏しいという問題を抱えており、更に、ポリマーに比べ、成形性に劣る可能性もある。
これらの欠点のうちの幾つかに取り組むため、ポリマー/セラミック複合体、間葉幹細胞を伴うシードポリマースキャッフォールドおよび生体材料/組織ハイブリッド構造などのもっと複雑なスキャッフォールドが開発中である。
WO第98/44964号は、骨移植片の置換用としてシリコン化合物(シリカゲルまたは生体活性ガラス)などの生体活性材料を有する多孔質の生分解性ポリマーを包含した生体適合性組成物を開示している。
WO第01/95952 A1号は、整形外科用のスキャッフォールドにおける生体活性・生分解性シリコンの使用について記載している。詳細には、シリコンが所望の形状に形作られ、この後、生体活性材料を形成すべく電気化学的に多孔質化される。電気化学を介するナノ構造シリコンの重大な限界は、大きなインプラントで必要となる深さをわたる陽極処理を実施できないことである。別の実施態様では、多孔質のシリコン粉末が生分解性ポリマー(ポリカプロラクトン)と混合され、整形外科用の生体活性複合体を形成すべく相互に融合される。しかし、このような複合体で骨内方成長用にどの程度の大きさのチャンネルを実現することができるのかに関しては開示されていない。
本出願人らは、独特な自己組立方法を用いて、このタイプの材料から整形外科用のスキャッフォールドを有利に製作できることを見出している。
本発明によれば、整形外科用のスキャッフォールドを製作する方法が提供され、この方法は、シリコンを含む生体活性材料の成形ブロックを形成するステップ、前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、およびこれらの処理された表面が互いに結合する条件下において、2つまたはそれ以上の前述のブロックを含むスキャッフォールドを自己組立てするステップを含む。
本明細書で使用する場合、「ブロック」という用語は多角形の三次元構造を表す。これらのブロックは、1つまたはそれ以上の平坦な区域を伴う平らな側面の多角形または球形を含め、所望の構築形態に合わせて様々な形状を為していてよい。典型的には、これらは横断面が正方形、六角形または八角形を為している。適切には、これらは中空であり、または中央の穴を有している。これらは一般的にサイズが比較的小さく、例えば差し渡しで1−8mm、好適には1.5−5mmである。詳細には、これらは、例えば3mm×3mm×3mmの立方体、または横断面は同様な寸法であるが、深さが例えば0.8mmから0.9mmに低減されている直平行六面体、例えば差し渡しが1.9mmから3.9mmまでの範囲で、深さが0.8mmから0.84mmの六角形を含む。
適切には、これらのブロックは少なくとも部分的に多孔質であり、好適には10%から90%までの範囲、より好適には30%から80%までの範囲、最も好適には35%−58%の多孔度を有している。30%から80%までの多孔度値は、例えばブロックに1次元、2次元または3次元の2mmのチャンネルを導入することによりもたらすことができる。もっと高い多孔度値は、ブロックを製作するために使用される材料(例えば、以降で説明される生体活性シリコン粉末とポリマーの混合物)に可溶性の塩を含め、この後、水性媒質中におけるインキュベーションによって前述の塩を除去することにより可能である。これは、上で説明されている様々なタイプの骨構造の状況において使用することができる。
本発明の方法を用いることにより、全体を通じて望ましいナノ構造を有する、殆どの骨移植片で必要となる比較的大きなスキャッフォールドを得ることが可能である。その上、本スキャッフォールドは高度に秩序立った構造を有する。骨移植片の場合、これは、巨視的多孔度およびマクロ細孔構成の優れた制御が可能であることにつながる。
適切には、使用される生体活性材料は、バルク結晶性シリコン、多孔質シリコン、アモルファスシリコンまたは多結晶質シリコン、更にはWO第01/95952号に記載されている如き生体活性シリコンと他の材料との複合体を含む。しかし、特定的には、本発明の方法において使用される生体活性材料は、生体活性シリコンと生体適合性ポリマーとの複合体を含む。
シリコンは、適切には、ポリマー担体材料に融合された多結晶質または多孔質粒子の形態で本複合体中に存在する。これらは、適切には、所望の生体活性シリコン粒子を予備形成し、これらの粒子を、これも粉末または顆粒の形態を為すポリマー担体材料と混合し、この混合物を溶融するため、結果として得られた前述の混合物を加熱することにより形成される。好適には、上述のポリマーは、例えば150℃未満の融点、好適には100℃未満の融点を有する低融点ポリマーであり、従って、上述の溶融プロセスは、シリコン粒子のナノ構造を失うことなく実施することができる。
適切なポリマーの特定の例は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート)(PHB)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリイミノカルボナート、ポリホスファゼンおよびポリアミノ酸を含む。好適には、本複合体において使用されるポリマーは、約2kDから15kDプロダクト(product)までの範囲の分子量を有するPCLである。
本発明の方法において使用されるシリコンは、生体活性シリコン、再吸収性シリコンまたは生体適合性シリコンであってよい。本明細書で使用する場合、「生体活性」という用語は組織に結合する構成成分を表す。再吸収性シリコンは、模擬体液の溶液に浸漬したときに、ある時間的期間にわたって溶解するシリコンを意味するものと定義される。「生体適合性」という用語は、少なくとも幾つかの生物学的用途にとって許容可能な材料を表し、詳細には、組織と適合可能な材料であってよい。本明細書で使用される「シリコン」という用語は、例えば半導体の形態を為すシリコンを含め、元素のケイ素を含む材料を表すことが認識される。
これらの特性はシリコンの物理的形態、特にこのシリコンが多孔質、多結晶質、非晶質またはバルク結晶性であるかどうかに依存し、これらの特性についてはWO第97/06101号でもっと詳細に説明されている。
所望の整形外科用スキャッフォールドの特定の使用および作用様式に依存して、多孔質及び/又は多結晶質のシリコンを含めることは、これらのナノ構造の形態が石灰化を促進し、これにより骨との結合を助長することが判明しているため、好適であり得る。多孔質及び/又は多結晶質シリコンの半導体特性は、治療、修復または置換プロセスを電気的に制御する道を拓く。更に、多孔質シリコン、特に20Åから500Åまでの範囲の細孔径を有する中間的多孔度のシリコン、およびナノメーターサイズの顆粒の多結晶質シリコンは再吸収性であることが分かっている。再吸収プロセス中に生じるシリコンの腐食は、骨の成長を刺激することが知られているケイ酸を産生する。
これらの特性を有するシリコンは、例えばWO第97/06101号の実施例で説明されている如きシリコンウェーハの電気分解により、シリコンナノワイヤーからの熱分解反応からもたらされるシリコンナノ結晶として、及び/又は微晶質のシリコンとして得ることができる。
本複合体におけるシリコン:有機ポリマーの質量比は、適切には1:99から99:1w/wまでの範囲、好適には1:20から1:4w/wまでの範囲である。
ナノ構造のシリコン/ポリマー複合体は、これらが生体活性を兼ね備えた良好な成形性を提供するため、本発明の方法において使用するのに特に好適である。更に、これらの複合体は化学的特性を一定にした状態で調整可能な機械的特性を有しており、これは調整プロセスに役立つ。これらのブロックの多孔度は物理的な変形を通じて所望の多孔度に容易に「合わせる」ことができる。いずれにしても、多孔度は、構造の製作中にある与えられた型に投入される複合体の量に大いに依存し、望ましい場合または必要な場合には、製造後、例えば湿性化学によるエッチングプロセス、または塩の組み込みとこれに続く選択的な溶脱により修正することができる。
選定された表面の処理は、結合に対するこの表面の「活性化」をもたらすことを条件として、様々な方法で実施されてよい。詳細には、この処理は、これらのブロックを互いにしっかりと保持する共有結合を形成すべく例えばカップリング剤と反応することができる反応性の基を上述の表面にもたらす。このような反応性の基の例はシラノール基(SiOH)を含む。
処理は、例えばWO第00/26019号またはWO第00/66190号に開示されている技術を用いて化学的に果たされてよい。しかし、化学的な誘導体化を特定の表面領域に限定するのは難しく、従って、一つの好適な方法は、この表面を活性化放射線またはプラズマに被晒することによる表面の活性化を含む。詳細には、本出願人らは、選定された表面へ富酸素プラズマを短時間、例えば15秒間から1時間またはそれ以上、好適には1−10分間照射することにより、この表面のシラノール(SiOH)部分の密度が増大し、更には表面のポリマー(存在している場合)の幾分かがエッチングにより取り除かれ、これが結晶性Si領域の一層の露出をもたらすことを見出した。
代替的に、シリコン/ポリマー複合体ブロックの表面は、このブロックの表面に露出されるシリコンの量を選択的に多量化することにより、結合に対して活性化されてもよい。これは、ポリマー成分が軟化してシリコンに粘着する状態をもたらすのに充分な温度の表面に粉末状のシリコンを加えることにより都合よく達成することができる。
「自己組立」という用語は、単純に混合することにより個々のエレメントが相互に結合して望ましい構造を形成することを意味している。従って、2つまたはそれ以上のブロックが組織化された構造を形成することができ、この構造内における組織化は、単に構成ブロックのどの表面を結合に対して活性化すべく処理するかを選択することにより、適切な組立条件下において決定される。この方法によれば、複雑な成形プロセスを回避することができる。
適切なカップリング試薬は、表面の活性化の形態に依存する。
上で概要説明されている如き酸素プラズマを使用する場合には、適切なカップリング剤はテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)またはメルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)などのアルコキシシラン試薬を含む。カップリング試薬は、適切には、0.0015モルから0.0132モルまでの濃度において、水などの溶媒中に溶解される。カップリング剤の濃度が高くなればなるほど、生じるカップリングの程度が大きくなり、従って、これは、達成され得る最終的構造の大きさに影響を及ぼす。この後、前処理されたブロックは、所望の構造が形成されるまで、カップリング試薬の溶液中において攪拌しながら混合される。適切には、反応の継続時間およびカップリング試薬の濃度は、所望の構造が5分から30分までの時間内に得られるように設定される。
存在するシリコン量の選択的な富化により表面が活性化されている場合には、カップリングのための適切な方法は、毛細管力による活性化表面の会合の促進と、これらの会合表面の化学的な架橋を含む。典型的には、デンプンなどの多糖を用いて橋架け構造を形成することができる。適切には、これらの富化部位はデンプン水溶液でコーティングされ、これらのコーティングされたブロックがペルフルオロデカリン(PFD)およびヘキサンを含む混合物の存在下において攪拌される。この後、液体を取り除き、組立てられた製作物を乾燥させることができる。
処理する表面の選択は、製作される構造に依存する。本質的に「一次元的な」形状を製作するためには、ブロックの上部及び/又は下部表面が処理される。これは、これらの表面が相互に組み合わさったときに、これらが本質的に柱状の配列に積み重なることを意味する。
本質的に二次元の構造を創出するためには、これらのブロックの側端が適切に処理される。この方法の場合、これらのブロックは互いに並んで相互に固まる。真に三次元の構造の場合には、混合プロセスが始まる前に、各側面及び/又は上面ならびに下面のうちの少なくとも幾つかが前処理される。
本出願人らは、このスキャッフォールド組立体が可逆的であり、分解できることを見出した。スキャッフォールドが適切な時間的期間にわたって、新骨成長での形成速度に適合する速度で分解できる能力は、例えば上で検討されている如く、骨移植片にとって有利であり得る。
更に、これらの分解特性を利用することによって、スキャッフォールドが分解するときにトラップされている物質を放出することができるように本発明のスキャッフォールド内に薬剤学的に活性な物質などの所望の物質の分子をトラップすることにより、所望の物質の遅延放出または徐放出を得ることができる。スキャッフォールド組立体の可逆性が望まれる場合には、シリコン富化ブロックの多糖による橋架けを用いてスキャッフォールドを調製することが好適である。望ましい場合には、スキャッフォールドを上で説明されているようにして製作した後、生物学的な活性または特異性を変えるべく他の表面修飾反応を実施してもよい。例えば、APTESは、脈管成長内皮細胞因子(VGEF)活性または生体内における他の細胞性認識/付着機能を変える他の小さなペプチドと共に表面にカップリングされてよい。
組立てられた構造の安定性は熱を加えることにより改善することもできる。
本発明は、更に、上で説明されているプロセスによって得られる整形外科用のスキャッフォールドを含む。
従って、本発明は、更に、シリコンを包含する生体活性材料の相互に付着された複数のブロックを含む整形外科用のスキャッフォールドを提供する。詳細には、この生体活性材料は、上述の如く、シリコンと生体適合性ポリマーの複合体を含む。また、適切には、これらのブロックは共有結合により相互に接着される。
本発明による整形外科用のスキャッフォールドは様々な用途に使用することができる。例えば、これらのスキャッフォールドは股関節骨折、腰部および膝部の関節症、椎骨骨折、脊椎固定、長骨骨折、軟組織の修復ならびに骨粗鬆症の治療に使用することができる。
本発明のプロセスはもっと広範囲の用途に使用することができ、例えばシリコンを含む他の物体、特に生体活性であることが要求される医療用具またはインプラントの製作に使用することができる。その上、「自己組立てされた」多量体物体のエレメント間における共有化学結合の形成はこれまで実施されていない。マイクロメートル/ミリメートル規模の多量体物体の以前の自己組立方策は、これらの多量体の縮合された長距離秩序が物理的な毛細管力によって具現化される非生体適合性または非生体活性のポリマー(ポリジメチルシロキサン(PDMS)など)を用いていた。本発明の方法を用いれば、ブロック間に共有化学結合、特に強力な共有界面結合をもたらすことが可能である。この方策は、様々な非医用目的の中実体、更には上でリストアップされているものの製造においても用途を見出すことができる。
従って、一つの更なる局面では、本発明は中実体を製作するためのプロセスを提供し、このプロセスは、シリコンを含む材料の成形ブロックを形成するステップ、前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、およびこれらの処理された表面が互いに結合する条件下において、2つまたはそれ以上の前述のブロックを相互に組み合わせるステップ、ならびに、この後、この組立てられた構造物を回収するステップを含む。
適切には、このプロセスにおいて、ブロックを相互に結合するため、これらの表面間に共有化学結合が形成される。実施するための好適な選択肢は上で説明されているものと同様である。
尚も更に、本発明は中実体を製作するためのプロセスを提供し、このプロセスは、材料の成形ブロックを形成するステップ、前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前述のブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、およびこれらの処理された表面が相互の表面間に共有化学結合を形成する条件下において、2つまたはそれ以上の前述のブロックを互いに組み合わせるステップ、ならびに、この後、この組立てられた構造物を回収するステップを含む。
繰返しになるが、このプロセスを実施する好適な手段は上で説明されているものと類似した手段になる。
(発明の詳細)
ステップ1
個々の構造の合成:
最初に、様々な質量比で、ポリカプロラクトン(PCL)をWO第01/95952号に説明されているようにして得られた多孔質の粉末状シリコン材料と共に粉砕することにより、(立方体または六角形の形態における)ブロックを構築する個々の複合体を調製した。調製比は以下の通りであった:
Figure 2005531339
この後、これらの複合体粉末を、所望の2−D形状(六角形または正方形)を有する予め形成されたPDMS型に注いだ。これらの型をオーブン内において110℃で〜1時間加熱した後、室温にまで冷却した。この後、得られ中実の複合体ブロックは、0.8mmから4mmまでの間の所望の厚みに切断することができた。
ステップ2
組織化された組立体の製作:
図3cに描かれている2−D八量体を次のようにして製作した。表面のPCLの幾分かをエッチングして取り除き、結晶性Si領域を露出させ、この表面のシラノール(SiOH)部分の密度を高めるため、ステップ1で得られたブロックの所定の表面を短時間(8分間)、富酸素プラズマに曝露した。8個のブロックを、室温における2.8mlのエタノールと共に0.0063モルのMPTS水溶液に加え、所望の構造が達成されるまで30分間攪拌した。
他の組立体も類似の仕方で製作した。このようにして製作された1D、2Dおよび3D組立体の例が図2から4に示されている。
選定された部位の選択的な富化
シリコン粉末材料を長方形のガラス製スライド上に広げた。次いで、このガラス製スライドをホットプレート上に置き、ホットプレートの温度を200℃に調節した。上で説明されているようにして製作された(立方体または六角形の形態における)ブロックを構築する複合体の選定された部位を熱いシリコン粉末に慎重に触れさせた。熱いシリコンと接触したPCLポリマー部分は軟化し、これらの選定された部位にシリコン材料の組み込みをもたらした。
中空のPCLキューブに埋め込まれたバイオシリコンの石灰化
11.4%の中間的多孔度のSi(w/w)を含む複合体構造を実施例1と類似の方法により製作し、37℃のSBFの溶液に14日間晒した。この後、走査電子顕微鏡検査法を用いて、この構造の一次元的なチャンネルの内部を調べた。この画像(図5)は多数の石灰化析出部の存在をはっきりと示し、この析出物の組成は、対応するエネルギー分散型X線スペクトルで確認された。この結果は、PCLのみを含む対照サンプルと際立った対照を為しており、対照サンプルでは、材料の表面に石灰化析出物が存在していないことが明らかであった。
複合体ブロックの多糖カップリング
上の実施例2で説明されている如く、面(または辺)をシリコン粉末で選択的に富化した後、以下の一般的な手順による組立プロセス(ここでは、2次元的な組立プロセスに関して説明されている)の前に、これらのシリコン富化部位をデンプン水溶液(2%)でコーティングした。
3個の対向(1、3)面修飾キューブを、15.0mlのPFDと10.0mlのn−ヘキサンを含有する50ml用のビーカー(直径4.0mm)に入れ、オービタルシェーカー内において200rpmの速度で回転させた。もっと長い鎖長の線形の鎖を得る場合には、50mlのPFDと50mlのn−ヘキサンを含有するもっと大きな容器(800ml用のビーカー)を、90.0rpmの速度でオービタルシェーカー内において回転させる方法を用いた。この組立プロセスが終了した後、液体を除去し、組立てられた製作物を空気中において室温で一晩乾燥させた。
図6は、架橋剤としてのデンプンの存在下における複合体シリコン/PCLブロックのカップリングに及ぼすシリコン富化の効果を比較するための実験の結果を示している。6個のキューブ(すべての面がシリコン富化され、図では暗く見えている)が上述の方法によりデンプンでコーティングされ、相互に組み合わさってスキャッフォールドを形成するのが見られた。これとは対照的に、非修飾キューブ(シリコンで選択的に富化された面を有しておらず、図では明るいキューブとして見えている)は同じ条件下で自己組立てしなかった。
デンプン架橋PCL/シリコン複合体構造からの物質の放出
水溶液中における鋭敏な発色団(トリス(2,2−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物)の出現をモニタリングすることにより、PCL/シリコン複合体がデンプン架橋シリコン界面の開裂時に物質を放出する能力を評価した。
2個のキューブ(それぞれが1つの面に球形の空洞を有するキューブ;質量0.0492g)にルテニウム錯体(〜0.4mg)を埋め込んだ後、各空洞の口の周辺にシリコン結晶(0.4mg)を埋め込んだ。それぞれの富シリコン表面に希釈デンプン溶液を加え、構造を組立てた。組立てられた構造物を空気中において1時間乾燥させた後、216rpmの振盪速度を有する50ml用のビーカーに入った水/PFD混合液(12mlのPFDおよび10.0mlの水)中に投入した。放出動力学を22時間までモニタリングした。
この二量体は2.5時間までに完全に分解するのが見られ、この架橋が可逆性であることを示した。
生物学的試験
本発明の方法を用いて得られたスキャッフォールドを試験し、これらの精確な特性を決定することができる。詳細には、通常の方法を用いて、石灰化活性、シリコンの溶解動力学およびポリマー/Si界面における相の振る舞い(混合または分離−形態学の直接的な視覚化)、更には機械的な強度を試験することができる。
プロセスパラメーター、例えば生体活性材料の性状、特に複合体材料の性状、ブロックの大きさおよび形状、カップリング試薬の濃度、ならびにブロックがカップリング試薬に浸漬される時間の長さなどを変えることにより、種々の異なる目的に適した広範囲の様々な整形外科用スキャッフォールドを得ることができる。
図1は、直径3mmの六角形(a)または辺の長さが4mmの直平行六面体のいずれかである、ポリカプロラクトン/シリコン複合体の典型的な単量体ブロックを示している。 図2は、図1の六角形のブロックから形成された一次元的な組立体を示しており、図の(a)は六角形のブロックからなる四量体を含み、(b)は六角形のブロックからなる五量体を含む。 図3は、(a)中空の六角形ブロックからなる三量体、(b)中実の六角形ブロックの密に詰まったアレイ、および(c)8個のキューブからなるタイルを含む、二次元的なネットワークを示している。 図4は、立方体からなる八量体を含む、三次元的なスキャッフォールドを示している。 図5は、模擬体液(SBF)の溶液に晒された中間的多孔度のシリコン/PCL複合体キューブにおけるチャンネルの内部に沿って得たSEM画像を示している。 図6は、すべての面がシリコンで富化されているシリコン/PCL複合体キューブの多糖カップリングにより形成された組立体を示している。これに対応する非修飾キューブは、同じ条件下で自己組立てしない。

Claims (28)

  1. プロセスが、シリコンを含む生体活性材料の成形ブロックを形成するステップ、前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、該処理された表面が互いに結合する条件下において、2つまたはそれ以上の前記ブロックを含むスキャッフォールドを自己組立てするステップ、および、この後、該組立てられた構造物を回収するステップを含む、整形外科用スキャッフォールドを製作するためのプロセス。
  2. 上記ブロックの横断面が正方形または六角形である、請求項1に記載のプロセス。
  3. 上記ブロックが少なくとも部分的に多孔質である、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
  4. 上記生体活性材料がバルク結晶性シリコン、アモルファスシリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、または生体活性シリコンと別の材料との複合体を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
  5. 上記生体活性材料が生体活性シリコンと生体適合性ポリマーとの複合体である、請求項4に記載のプロセス。
  6. 上記複合体が、生体活性シリコン粒子を粉末または顆粒の形態におけるポリマーと混合し、結果として生じた混合物を溶融させるべく加熱することにより得られる、請求項5に記載のプロセス。
  7. 上記混合物が、所望の形のブロックを形成すべく、型内で加熱される、請求項6に記載のプロセス。
  8. 上記ポリマーが150℃未満の融点を有する、請求項6に記載のプロセス。
  9. 上記生体適合性ポリマーがポリカプロラクトンである、請求項5から8のいずれか一項に記載のプロセス。
  10. 該複合体におけるシリコン:有機ポリマーの質量比が1:99から99:1までである、請求項5から9のいずれか一項に記載のプロセス。
  11. 上記シリコン:有機ポリマーの質量比が1:20から1:4w/wまでの範囲内である、請求項10に記載のプロセス。
  12. 上記表面が、該表面間に共有化学結合を形成することにより相互に結合する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
  13. 該ブロックの上記1つまたはそれ以上の表面が、該表面上のシラノール基(SiOH)の密度を高めるように処理される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
  14. 上記1つまたはそれ以上の表面が富酸素プラズマに曝露され、この後、カップリング剤の存在下において、同様に処理されたブロックと混合される、請求項13に記載のプロセス。
  15. 上記カップリング剤がアルコキシシランである、請求項14に記載のプロセス。
  16. 上記アルコキシシランが水溶液である、請求項15に記載のプロセス。
  17. 該ブロックの上記1つまたはそれ以上の表面が、該表面上の露出されたシリコンの量を富化するように処理され、この後、カップリング剤の存在下において、同様に処理されたブロックと混合される、請求項4から12までのいずれか一項に記載のプロセス。
  18. 上記カップリング剤が多糖である、請求項17に記載のプロセス。
  19. 上記カップリング剤がデンプンである、請求項18に記載のプロセス。
  20. 該組立てられた構造の該表面が、前記表面の生物学的活性を変えるべく処理される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
  21. 該組立てられた構造が、前記構造の機械的な強度を高めるべく加熱される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
  22. 相互に接着された、シリコンを包含する生体活性材料の複数のブロックを含む、整形外科用スキャッフォールド。
  23. 上記生体活性材料がシリコンと生体適合性ポリマーとの複合体を含む、請求項22に記載の整形外科用スキャッフォールド。
  24. 上記ブロックが共有結合により相互に接着される、請求項22または請求項23に記載の整形外科用スキャッフォールド。
  25. プロセスが、シリコンを含む材料の成形ブロックを形成するステップ、前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、および該処理された表面が互いに結合する条件下において、2つまたはそれ以上の前記ブロックを含む構造を自己組立てするステップ、ならびに、この後、該組立てられた構造物を回収するステップを含む、中実な物体を製作するためのプロセス。
  26. 該ブロックを相互に結合させるため、該表面間に共有化学結合が形成される、請求項23に記載のプロセス。
  27. プロセスが、材料の成形ブロックを形成するステップ、前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面が同様なブロックの同様に処理された表面に接着するように前記ブロックの1つまたはそれ以上の選定された表面を処理するステップ、および該処理された表面が前記表面間に共有化学結合を形成する条件下において、2つまたはそれ以上の前記ブロックを含む構造を自己組立てするステップ、ならびに、この後、該組立てられた構造物を回収するステップを含む、中実な物体を製作するためのプロセス。
  28. 実質的に実施例に関して上文にて説明されている通りの整形外科用スキャッフォールドを製作するためのプロセス。
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