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JP2005518801A - 組換えプロテインcバリアント - Google Patents

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Abstract

本発明は、血液のプロテインC−抗凝固系において抗凝固活性を現すことができる野生型血液凝固成分に対してアミノ酸配列が実質的に相同的であり、そしてプロテインC(PC)および活性化プロテインC(APC)から選択されるバリアント血液凝固成分に関し、該バリアント成分は対応する野生型の血液凝固成分により発現された抗凝固活性に比べて強化され抗凝固活性を現すことができ、そして該バリアント成分は該野生型の成分と比較して、プロテインCのGla−ドメインを構成するそのN−末端アミノ酸残基配列に少なくとも1つアミノ酸残基の修飾、およびプロテインCのセリン−プロテアーゼドメインに少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾を含む点が異なる。また本発明は、DNA技術に基づくそのようなバリアントの生産法;該方法で使用することを意図するDNAセグメント;および治療および診断目的のための該バリアントの使用に関する。

Description

発明の分野
本発明は、強化された抗凝固(anticoagulant)活性を現す機能的組換えプロテインCバリアント(protein C variant)、およびそのようなバリアントの治療または診断目的のための使用を対象とする。より詳細には、本発明は修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたセリンプロテアーゼ(SP)ドメインの両方を含むプロテインCバリアント、およびそのようなバリアントの治療または診断目的のための使用を対象とする。
発明の背景
プロテインCは、一般にプロテインC−抗凝固系と名付けられている血液の抗凝固系に参加する主要な生理学的に重要なビタミンK−依存性タンパク質である。すべてのビタミンK−依存性タンパク質のようにプロテインCはN−末端の45アミノ酸残基を含んでなるGla−ドメインまたはGla−モジュールを含み、該ドメインは以下にさらに詳細に検討するように膜結合親和性に重要である。プロテインCのSP−ドメインは、i.a.プロテインCのタンパク質分解活性およびセルピン耐性に関与する。
このようなプロテインC−抗凝固系において、プロテインCはコファクターであるプロテインS、および血液凝固のダウン−レギュレーターとしてその活性化状態(APC、ctivated rotein )のプロテインCに対する相乗的コファクターとして作用する完全な第V因子(FV)を含む他のタンパク質と協調して機能し、これにより血液の過剰な凝固を防止し、すなわち血栓症を抑制する。プロテインCの活性化形により現される抗凝固活性は、血液凝固系の別のコファクターである活性化第VIII因子(FVIIIa)および活性化第V因子(FVa)の特異的開裂および分解により、血液凝固反応を阻害する能力から発する。それらの結果として、血液凝固に必要な成分、すなわち第X因子(FX)およびプロトロンビンの活性化は阻害され、そして凝固系の活性の勢いは削がれる。このようにプロテインCは血液凝固系が正しく機能するために主に生理学的に重要である。
プロテインCの重要性は、臨床的な所見から推定することができる。例えば重篤な血栓塞栓症はホモ接合性プロテインC欠損症の個体に影響を及ぼし、そして影響を受けた個体はすでに彼らの新生児の段階(neonatal life)で血栓症を発症する。生じる臨床的状態である電撃性紫斑症は通常、この状態をプロテインCで処置しなければ致命的である。一方、ヘテロ接合性プロテインC欠損症は、それほど重篤ではない血栓塞栓症の表現型を伴い、そして静脈血栓症の比較的穏やかな危険因子を構成するだけである。この遺伝的形質の保有者は正常なプロテインCレベルの個体と比較して、5〜10倍高い血栓症のリスクを有すると予想された。しかしより重要なことは血栓症に関する最も多い遺伝的欠損が、プロテインC系にも影響を及ぼすということである。この状態は通常、APC耐性(APC resistance)と呼ばれ、そして最も多くはFV−遺伝子中の1つの点突然変異により引き起こされ、この突然変異はFVアミノ酸配列中のアミノ酸残基Arg506のGln残基への置換を導く。Arg506はAPCによる開裂作用に感受性である活性化FV(FVa)の3つの開裂部位の1つを構成し、そしてそのような突然変異したFVaは正常なFVaよりもAPCにより効率的に分解されにくい(非特許文献1)。この突然変異したFVaはR506QFVa、FVa LeidenおよびQ506変異体FVaとも命名されている。
血液凝固系における抗凝固成分としてプロテインCおよび活性化プロテインC(APC)の生理学的重要性は、これらの物質の治療目的のための使用の可能性を示す。
実際にプロテインCおよびその活性化形態であるAPCは、すでにある程度、治療目的に使用されてきた(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。より詳細にはヒト血漿から精製したプロテインCがホモ接合性プロテインC欠損症の補充療法として使用され(非特許文献6)、そして髄膜炎菌血症による重篤な播種性血管内凝固症候群の場合にも成功裏に使用されてきた(非特許文献7)。さらに(大腸菌(E.coli)を使用した)敗血症のヒヒのモデルでは、APCは保護効果を有することが示され、これはAPCが大腸菌(E.coli)の侵襲前に与えられた時に特に際立った(非特許文献8)。いずれの場合でも今日までに得られた結果は、プロテインCが上記の状態の処置にのみ有用な薬剤となるだけでなく、凝固系が活性化される多くの他の状態、例えば静脈血栓症、心筋梗塞(MI)後および血管形成術後の冠状血管の再疎通後の血管閉塞の防止および処置に有用となることを示唆している。
血液凝固障害に関連する種々の状態の治療的処置は、改善された抗凝固特性を有するプロテインCのバリアントを利用できれば改善され得ると構想されている。さらにそのようなバリアントは、改善された性能を有するアッセイを得るための、プロテインC系の他の成分の様々な生物学的アッセイを改善するために試薬として有用となるだろう。
過去数十年の組換えDNA技術の進歩は、所望する生物学的物質を効率的に生産するための、かつ/または所望する、そして場合により特別に設計された特性を有する生物学的物質を作成するための可能性に莫大な影響を持っていた。実際にプロテインCの機能的バリアントだけでなく、本質的に野生型プロテインCも以下の参考文献で報告されたように組換え技術により生産された。
特許文献1(Bang et al)では、ヒトプロテインC誘導体の組換え生産が開示されている。しかし本質的にヒトの野生型プロテインCに相当する機能的活性を有するプロテインCポリペプチドの生産だけが開示されている。最近、この参考文献に従い生産された野生型プロテインCが重篤な敗血症の処置に成功裏に使用された(非特許文献9)。
組換え技術で調製されたプロテインCの使用も、非特許文献10および非特許文献11に開示された。
残基158〜169を含む活性化ペプチド領域に向けられた突然変異誘発法により得られるプロテインCの機能的バリアントは、トロンビンに対して強化された感度を有することができ、そのようなバリアントは野生型プロテインCよりも早くトロンビンにより活性化される(非特許文献12;および非特許文献13)。これらの研究の1つ(非特許文献13)では、たとえトロンビンによるプロテインCの効率的活性化に通常必要とされる膜タンパク質であるトロンボ−モジュリンが存在しなくても、血液の凝固中に形成されるトロンビンにより比較的容易に活性化される変異体プロテインCを導く多数の突然変異が活性化部位の回りに導入された。
より具体的には、非特許文献13に開示されているトロンビンと強化された相互作用を有するこれらプロテインCバリアントは、活性化ペプチド領域中に突然変異を含んでなり、トロンビン開裂部位に近い2つの推定される阻害酸性残基が改変されている。Grinnell et al.(以下)に開示された、該改変された残基を活性化ペプチド領域内に、そしてまたAsn313Gln突然変異を含んでなる1つのプロテインCバリアントが、インビボで行われた実験で抗凝固物質としても機能することが最近示された(非特許文献14)。しかしこのプロテインCバリアントでは、強化された抗凝固活性はAsn313Gln突然変異によるものであり、他の突然変異はトロンビンとの強化された相互作用を生じた。
非特許文献15では、ヒトプロテインCの機能におけるグリコシル化の役割が調査され、位置指定突然変異誘発法を使用して、4つの潜在的N−連結グリコシル化部位、すなわち97、248、313および329位の各々が1つずつ排除されている。ここに開示されるプロテインCバリアントでは、Glnが97、248および313位でそれぞれAsnから代わり、そして248および313位でこの置換変異を有するプロテインC変異体は、他の修飾された特性に加えて2〜3倍強化された抗凝固活性を現すことが示されている。
野生型プロテインCのアミノ酸配列中、例えばセリンプロテアーゼ(SP)モジュールに、少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾の導入により強化された抗凝固活性を現すプロテインCおよびAPCの機能的バリアントが(この修飾はプロテインCのグリコシル化を改変しない)、特許文献2に開示されている。ここに具体的に開示されている1つのバリアントは、残基no.300から314の間の短いアミノ酸残基の範囲(stretch)の中に位置するSPモジュール中に数個の突然変異を含み、該バリアントは野生型のヒトプロテインCに比べて約200%強化された抗凝固活性を現す。
非特許文献16は、Glu357Gln突然変異(すなわちキモトリプシンの番号付けを使用するならばGlu192Gln)を含んでなるプロテインC変異体を開示する。この変異体は純粋系において約2〜3倍強化された速度でFVaを不活性化する一方、血漿では抗凝固活性は変異体がアルファ1−アンチトリプシンおよびアノチトロンビンIIIのようなプロテアーゼインヒビターにより急速に阻害されるので、野生型プロテインCに比べて強化されない。
天然のプロテインCのGla−ドメインに修飾または欠損を有するプロテインCバリアントも以前に報告された。
例えば天然のプロテインCのGla−ドメインを欠き、しかもThr254Tyr突然変異(すなわちキモトリプシンの番号付けに基づきThr99Tyr)を含んでなるプロテインCバリアントが、非特許文献17に開示されている。このバリアントプロテインCはリン脂質の不存在下で純粋なFVa、すなわち可溶性FVaに対して2倍強化された活性を有するが、Gla−ドメインが無いことにより血漿中での抗凝固活性を欠いている。
最近、修飾されたGla−ドメインを有する幾つかのプロテインCバリアントが、Shen et al.(非特許文献18)により報告された。これらプロテインCバリアントはGla−ドメインに幾つかの置換を含み、そして強化されたCaおよび/または膜結合特性を現し、すなわち活性化プロテインC(APC)の強化された抗凝固活性も現す。これらのバリアントの中には特許文献3にGla−ドメインに置換修飾を含む他のプロテインCバリアントと一緒に開示されたものもある。後者の参考文献は一般に、それらのGla−ドメインに修飾、すなわち置換により改変、例えば強化された膜結合親和性を現す修飾されたビタミン−K依存性ポリペプチドに関する。ビタミン−K依存性ポリペプチドは第VII因子または任意の他のビタミン−K依存性タンパク質、例えばプロテインCを含んでなることができる。Gla−ドメイン残基の番号付けは、特許文献3によればプロテインC配列の4位がいかなる残基にも占有されていない点でShen et alとこの特許文献3の間で異なることに注目すべきであり、これは例えばShen(および本発明)による10位が特許文献3による11位に対応する。
特許文献4は、野生型プロテインCと比べて重要な生物学的活性を保持するが、野生型プロテインCと比べた時に上昇した抗凝固活性、セルピン不活性化に対する耐性およびトロンビンに対する上昇した感度も有するヒトプロテインC誘導体に関する。これらプロテインC誘導体はAsp167Phe置換(D167F)、Asp172Lys置換(D172K)、および特にGla−ドメインまたはSP−ドメイン中で特異的に定められ、そして含まれる少なくとも1つのさらなる置換を含む。Y302QまたはY302E(すなわちSP−ドメイン中)の置換はここに開示されているが、試験データを用いて改善された特性が確認されない。さらにこの置換はセルピンに対する耐性を提供することを構想しているが、真に強化された抗凝固活性、すなわち分子毎に強化されるものであり、時間経過を必要としない抗凝固活性を提供することを構想していない。
特許文献5では、修飾されたGla−ドメインを含むプロテインCバリアントが開示され、ここでSer12(リン酸化可能)を非リン酸化可能なアミノ酸残基に交換する目的で、1以上の位置指定突然変異誘発がアミノ酸10、11および12位(His、Ser、Ser)、すなわちアミノ酸12、アミノ酸12および11、またはアミノ酸12、11および10で行われた。実験結果は数個のバリアントについてのみ開示され、そして抗凝固活性は活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイにおける凝固時間の延長としてのみ評価される。
たとえ強化された抗凝固活性および/または他の修飾された特性を有するプロテインCバリアントがすでに開示されても、未だに強化された抗凝固活性および/または治療および/または診断目的に有用となり得る他の有益な特性を現すプロテインCバリアントの必要性が存在する。
さらに修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインの両方を含むプロテインCバリアント(このバリアントは分子毎に強化され、時間経過の延長を必要としない抗凝固活性に加えて、強化された膜結合親和性を現す)は、今まで報告されなかった。そのようなバリアントはより低用量の必要性またはより低い頻度の投与および/または例えば野生型のプロテインCに比べて抗凝固活性の迅速な開始のような利点を提供することができる。上に挙げた特許文献4はセルピンに対して強化された耐性を有するプロテインC誘導体を指し、そして他の改善された特性に加えて、延長された、しかし強化されていない抗凝固活性を有することに注目されたい。
米国特許第A4775624号明細書 国際公開第98/44000号パンフレット 国際公開第99/20767号パンフレット 国際公開第01/59084号パンフレット 国際公開第01/36462号パンフレット Dahlbaeck,J.Clin.Invest.1994,94:923−927 Verstraete and Zoldholyi,Drugs 1995,49:856−884 Esmon et al.,Dev.Biol.Stand.1987,67:51−57 Okajima et al.,Am.J.Hematol.1990,33:277−278 Drefys et al.,N.Engl.J.Med.1991,325:1565−1568 Marlar and Neuman,Semin.Thromb.Haemostas.1990,16:299−309 Rivard et al.,J.Pediatr.1995,126:646−652 Taylor et al.,J.Clin.Invest.1987,79:918−925 Bernard,G.R.et al.重篤な敗血症のための組換えヒト活性化プロテインCの効力および安全性(Efficacy and Safety of Recombinant Human Activated Protein C for Severe Sepsis),New England Journal of Medicine,March,8.2001;344(10):699−709 Berg et al.,Biotechnique,1993,14:972−978 Hoyer et al,Vox Sang.1994,67:Suppl.3:217−220 Erlich et al.,Embo.J.1990,9:2367−2373 Richardson et al.,Nature 1992,360:261−264 Kurz et al.,Blood,1997,89:534−540 Grinnell et al.,J.Biol.Chem.,1991,9778−9785 Rezaie et al.J.Biol.Chem.1993,268:19943−19948 J.Biol.Chem.,1996,271:23807−23814 Shen et al.J.Biol.Chem.,1998,Vol.273,No.47:31086−31091
発明の要約
本発明は、修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインを含むプロテインCの機能的バリアント(このバリアントは活性化された時、好ましくは分子毎に強化される強化された抗凝固活性を現す)に関する。本発明のプロテインCバリアントの強化された抗凝固活性は本質的に、修飾されたGla−ドメインによる強化されたカルシウムおよび/または膜結合特性、あるいは修飾されたSP−ドメインによる強化されたタンパク質分解、適当にはアミド分解活性、または好ましくは両方から発する。さらに該活性は主にプロテインCチモーゲンの活性形であるAPCにより発現され、該チモーゲンはほとんど不活性である。したがって本発明は修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインを含み、そして強化された抗凝固活性を現すAPCのバリアントにも関する。Gla−ドメインはプロテインCの最初のアミノ−末端45残基を含んでなり、そしてその構造および機能は、以下でさらに詳細に検討する。ヒトに由来するプロテインC中のSP−ドメインは、262アミノ酸残基(no.158〜419)を含んでなり、これも以下でさらに詳細に検討する。
本発明に従い少なくとも1個、しかし好ましくは1個より多くのアミノ酸残基の修飾の各Gla−およびSP−ドメインへの導入、適当には少なくとも4個、そして特に7個以上の修飾をGla−ドメインに、そして6以上の修飾をSP−ドメインに導入することにより、野生型タンパク質に比べて改善された特性を有するプロテインCまたはAPCバリアント、そして特に改善された抗凝固活性(それ自体または活性化された時)を有するバリアントを提供することが見いだされた。
適当には本バリアントはそれらのGla−ドメイン中に10個より多くのアミノ酸修飾を含まず、そしてそれらのSP−ドメイン中に10個より多くのアミノ酸修飾を含まず、そして好ましくはハイブリッドが野生型のプロテインCと高度な相同性を有するほど、他のGla−ドメインとプロテインCのGla−ドメインとの間の差異が数個のアミノ酸残基しか構成しないかぎり、プロトロンビンまたは第X因子に由来するGla−ドメインを有するハイブリッドプロテインCバリアントのような異なるビタミンK−依存性タンパク質間のハイブリッドは包含しない。同様に、SP−ドメインおよびプロテインCの残りが異なる種に由来するハイブリッドは通常、本発明に包含しない。
より一層強化された抗凝固活性のような改善された特性を現す本発明のプロテインCバリアントは、例えば治療目的に使用する時、投薬用量または投与頻度を下げることにより利点を提供することができる。
また本発明は、DNA技術に基づきそのようなバリアントを生産する方法、該方法での使用を意図するDNAセグメント、および治療および/または診断目的のための該バリアントの使用に関する。
本発明に従い、野生型物質の抗凝固活性に比べて強化された抗凝固活性とは、分子あたり強化された活性を意味し、例えば分子を安定化することにより時間経過が延長される必要はないことを意味する。
発明の詳細な説明
A.プロテインCの分子配列
プロテインC分子は4種の型のモジュールまたはドメインからなる。アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、Gla−モジュール、2つのEGF−様モジュール、すなわち上皮増殖因子相同体モジュール、および最後に典型的なセリンプロテアーゼ(SP)モジュールからなる。血漿では、循環しているほとんどのプロテインCが、限定タンパク質分解により1本鎖前駆体から生じる、成熟した2本鎖のジスルフィド結合したプロテインCチモーゲンからなる。これらの2本の鎖は20kDaの軽鎖(これはGla−およびEGF−モジュールを含む)とSP−モジュールを構成する40kDaの重鎖である。トロンボモジュリンに結合したトロンビンによる活性化中、Arg−Leu(残基169および170)のペプチド結合が重鎖のN−末端部分で開裂され、そして12個のアミノ酸残基(残基158〜169)を含んでなる活性化ペプチドが放出される。本発明と関連して、プロテインCおよびそのバリアントのアミノ酸配列中の残基の番号付けは、成熟プロテインCに基づく。
プロテインCのアミノ酸配列は、対応するcDNAヌクレオチド配列から推定され、そして技術文献に報告された。さらにプロテインCに関するcDNAヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、HSPROTCと命名されたヒトプロテインCについて寄託番号X02750で、およびBTPBCと命名されたウシプロテインCについて寄託番号KO2435で、EMBL遺伝子データベースから利用可能である(ハイデルベルグ、ドイツ))。
上に述べたように、ビタミンK−依存性タンパク質のGla−ドメインは、N−末端45アミノ酸残基を含んでなる。すなわち全Gla−ドメインのアミノ酸配列は、ヒトおよびウシプロテインCのようなタンパク質について知られており、その全アミノ酸配列またはそのN−末端部分(45残基)が決定された。上記のデータベースの配列に基づき、ヒトプロテインCおよびウシプロテインCのGla−ドメインは、以下のように具体的に説明することができる(それぞれ配列番号1および配列番号2)。
Figure 2005518801
同様に、SP−ドメインのアミノ酸配列(それぞれヒトおよびウシ)は、これらデータベースの配列から得られ、ここでヒトプロテインCのSP−ドメインは、アミノ酸残基no.158〜419を含んでなり、そしてウシSP−ドメインは、アミノ酸残基158〜417を含んでなる。好ましくはSP−ドメイン中の修飾はヒトSP−ドメインのアミノ酸no.290と320との間およびその全てを含むアミノ酸残基の範囲に位置し、該範囲は以下のアミノ酸配列:
Figure 2005518801
に対応する。
ウシプロテインCのSP−ドメイン中、アミノ酸no.292と318との間およびその全てを含む、対応するがより短いアミノ酸範囲は、以下のアミノ酸配列:
Figure 2005518801
を有する。
Gla−ドメイン中の修飾標的の選択に関連して、個々の配列間(異なるビタミンK依存性タンパク質に由来、および/または異なる種に由来する)の類似性および片寄りに関して、そのようなN−末端配列の比較は、突然変異誘発(すなわち修飾)標的として適する可能性があるプロテインCのGla−ドメイン中の位置を示すことができる。そのような比較について、Gla−ドメインの全アミノ酸配列を知る必要はなく、抗凝固活性に潜在的に重要な位置のアミノ酸残基が決定されていれば十分となるだろう。異なる種、例えばヒトとウシとのSP−ドメイン間のプロテインC中のSP−ドメイン、またはそれらの特別な部分の配列の同様の比較は、適切な突然変異誘発標的となり得るSP−ドメイン中の位置を示すことができる。
本発明と関連して、アミノ酸に関する略号として通常の1文字または3文字記号を以下の対応表に示すように使用する:
Figure 2005518801
B.プロテインCのバリアント
上に述べたように、本発明は組換えプロテインCの機能的バリアントに関し、該バリアントは修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインを含み、そして該バリアントは強化された抗凝固活性を表す。これらのバリアントは1個以上、適当には数個の、そして好ましくは10〜15個のアミノ酸残基について野生型組換えプロテインCとは異なり、該残基は対応する野生型配列のGla−ドメインおよびSP−ドメイン中の両方に挿入され、削除されまたは置換(すなわち置き換え)されており、これにより本発明のプロテインCバリアントを生じる。該差異はプロテインCのAPCへの活性化後にも維持されるので、本発明は強化された抗凝固活性を有するAPCバリアントにも関する。本発明の適切な態様に従い、Gla−ドメイン中の修飾(1つまたは複数)は、置換(1つまたは複数)であり、そしてSP−ドメインは少なくとも1つの置換および少なくとも1つの削除を含む。
現在、そのようなバリアントは突然変異誘発法、特にオリゴヌクレオチドプライマーの使用を含む位置指定突然変異誘発法により都合よく得られる。しかし本発明はこれらのバリアントを得る様式にかかわらず機能的バリアント自体に関する。
PCとAPCとの間の緊密な関係の観点から、しばしば本発明と関連してPCとAPCとの間で明確な区別はせず、しかしPC/APCの名称を使用し、そしてこれら物質の1つまたは両方を考察すれば、内容は明らかとなるだろう。さらにプロテインCチモーゲンはほとんど不活性であり、すなわちプロテインCの強化された抗凝固活性は、該チモーゲンのインビボまたはインビトロでの活性化後にのみ本質的に現れる。したがって本発明と関連して「強化された抗凝固活性を現すプロテインCバリアント」等の表現は、この強化された活性がプロテインC(チモーゲン)バリアントの活性化後に現れるか、または該バリアントがAPCバリアントであることを意味する。
本発明と関連して「バリアント」という表現は、一般に野生型分子と比べて高度な相同性、適当には少なくとも90%の相同性を有する変異体分子のような修飾された野生型分子を意味する。
したがって、そのようなバリアントは野生型物質に関する実質的相同性を保存するために、適切にはわずかな修飾されたアミノ酸残基、そして可能ならばわずか1個のアミノ酸残基を各Gla−およびSP−ドメインに包含する。これは処置に使用するバリアントに対する可能な免疫応答を回避し、または少なくとも減らすために、インビボでの処置について本バリアントの使用と関連して特に重要である。
このように製薬学的目的には、好ましくは本バリアントは対応する野生型物質と実質的に相同的であり、そして点突然変異、例えば1もしくは数個の単一アミノ酸残基の置換、削除および/または挿入を該各ドメインに含むだけである。好ましくはバリアントは該各ドメインに1個より多くのアミノ酸残基の修飾を含み、そしてインビボの使用には多くて最高10個以上のアミノ酸残基修飾を該各ドメインに含むことができる。
したがってPC/APCの適切なバリアントは、野生型の成熟PC/APCと高度、すなわち少なくとも90%、適切には少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、そして特別には少なくとも98%のアミノ酸配列の同一性を有する。
本発明の診断的態様と関連して、高度な相同性はもちろんそれほど重要ではないが、主要な要件は機能的バリアントが1以上の所望する活性を、野生型タンパク質と比べて強化されたレベルで現すことである。
製薬学的目的には、本発明の好適な態様はヒトPC/APCバリアントに関する。しかしまた本発明は、修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインにより強化された膜結合特性および強化された抗凝固活性を有する、マウスもしくはラット起源のバリアントのような哺乳動物起源、例えばウシ起源またはマウス起源の他のPC/APCバリアントに関する。
上記のように、Gla−ドメインまたはGla−モジュールはビタミンK依存性タンパク質ファミリーに特異的であり、その員は特異的タンパク質モジュール(該Gla−モジュール)を含み、ここでグルタミン酸(E)残基がγ−カルボキシグルタミン酸残基(Gla)に修飾される。この修飾は、ビタミンKを使用してプロテインC前駆体のグルタミン酸残基の側鎖をカルボキシル化する酵素により肝臓で行われる。配列では(配列番号1および2)、ヒトおよびウシプロテインCのGla−ドメインについてそれぞれ上記を仮定し、E残基はこのように循環しているタンパク質ではGla−残基に転換されている。
Gla−ドメインは、ビタミンK−依存性タンパク質の最初のアミノ末端45残基を含んでなり、そしてカルシウムに結合し、そして負に荷電したプロコアグラント(procoagulant)リン脂質に結合する能力を持つタンパク質を提供する。さらにFVaおよびFVIIIaのタンパク質分解において、活性化プロテインC(APC)の機能に極めて重要な膜接触部位が該Gla−ドメインに含まれ、APCの活性はAPCと他のタンパク質、すなわち第V因子およびプロテインSコファクターとの膜表面上の会合で現れる。しかし種々のビタミンK−依存性タンパク質のGla−含有領域間の高度な配列相同性にかかわらず、これらのタンパク質は広い範囲の膜親和性を表す。これは低い親和性タンパク質であるプロテインC、例えばヒトプロテインCの膜親和性を修飾し、そしてより具体的には強化することが可能となることを示している。
このために、高親和性ビタミンK依存性タンパク質の構造は、Shen et al.(同上)に示唆されるように、膜結合親和性、すなわちプロテインCのような低親和性タンパク質の抗凝固活性を強化することができる修飾の可能性を示唆するための鋳型として役立つことができる。例えば位置指定突然変異誘発法を野生型プロテインCに行って、プロテインZのような高親和性ビタミンK依存性タンパク質の構造に近付く構造を有するプロテインCバリアントを生産することができる。
しかしすべてのビタミンK依存性タンパク質に有効であり、そして強化された膜結合親和性を生じることができるアミノ酸修飾の可能な位置を予測する静電的分布について、共通の原型の存在が国際公開第99/20767号パンフレットに示唆されているが、この原型はGla−ドメインの数個の位置、すなわち10、11、28、32および33(本発明に関連して使用する番号付けに従う)に関するだけである。さらにShen et al.(同上)に報告されているように、プロテインCは独特な特徴を有し、そして必ずしもそのような共通の仮説に当てはまらないことが示された。
プロテインCのSP−ドメインは、APC−インヒビター、例えばα1AT(アルファ1−アンチ−トリプシン)およびPCI(プロテインCインヒビター)中の配列と相互作用する配列、およびFVaまたはFVIIIa中の配列と相互作用する配列も含む。APC/PCのそのような配列は、分子毎に強化される抗凝固活性を有し、そして場合によってはセルピンおよび他のAPC−インヒビターに耐性でもあるAPC/PCバリアントを生成するために行う位置指定突然変異誘発法の推定上の標的を構成する。
本発明に従い、修飾(1つまたは複数)がプロテインCのGla−ドメインおよびSP−ドメインの両方に導入されて、強化された膜結合親和性または強化された抗凝固活性および好ましくは両方のようなインビボおよびインビトロでの改善された特性を現すと同時に、繊溶および抗炎症活性のような他の望ましい生物学的特性を維持するバリアントプロテインCを生成できることが予期せずに見いだされた。
B(1)Gla−ドメインの修飾
この章では、Gla−ドメインにおける適切な修飾を開示する。これにより得られる修飾されたバリアントは、さらに以下のB(2)に開示するように、それらのSP−ドメイン中にも少なくとも1つの修飾を含む。
本バリアントはGla−ドメイン中に置換(置き換え)、削除または挿入(付加)のような少なくとも1個、適切には少なくとも4個、例えば4〜6個または7〜10個のアミノ酸修飾(1つまたは複数)を含む。
本発明の1つの観点に従い、Gla−ドメイン中の該少なくとも1つのアミノ酸修飾は、プロテインCのGla−ドメインの任意の位置で、1つのアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への置換である。本発明のさらなる観点に従い、該位置は10、11、28、32または33位以外の位置である。本発明の適切な態様に従い、該少なくとも1つのアミノ酸修飾は、23または44位に位置する。
本発明のさらなる観点は、上記の少なくとも1つのアミノ酸修飾がD23SおよびH44Yから選択される置換突然変異であるプロテインCバリアントに関する。
本発明の1つの態様は、上記の少なくとも1つのアミノ酸修飾がアミノ酸残基no.1〜9、13〜27、29、30、31および34〜45からなる群から選択される位置、またはアミノ酸残基no.1〜3、5〜7、9、12〜27、29〜31および36〜45からなる群から選択される位置に位置するプロテインCバリアントに関する。
本発明の他の態様は、Gla−ドメイン中の該少なくとも1つのアミノ酸修飾がアミノ酸残基no.10、11、12、23、32、33および44から選択される位置に位置するプロテインCバリアントに関する。適切には1より多くの、そして好ましくはすべてのアミノ酸残基10、11、12、23、32、33および44が例えば置換により修飾されている。
本発明の1つの観点に従い、該少なくとも1つのアミノ酸修飾は、1つの修飾以外の1以上のアミノ酸修飾、あるいは配列E10G11E32D33、Q10G11E32D33、G11N12E32D33、G11E32D33、E32D33およびE32中で定められる修飾の組み合わせを含んでなる。共通する実施に従い、例えばE32D33は32位でEが野生型残基(Q)から置き換えられ、そして33位でDが野生型(N)から置き換えられた突然変異した配列を意味する。あるいは本バリアントはGla−ドメイン中に1以上のこれら修飾(直前に述べた)、およびSP−ドメイン中の少なくとも1つ、そして適切には1より多くの修飾を含むことができる。場合によりそのようなバリアントはGla−ドメイン中に少なくとも1つのさらなる修飾、例えばY44も含む。
さらに一層強化された抗凝固活性を有する具体的なヒトプロテインCバリアントは、すべての置換突然変異H10Q、S11G、S12N、D23S、Q32E、N33DおよびH44Yを含む。このようにSP−ドメイン中の少なくとも1つの修飾に加えて、このプロテインCバリアントは、以下のアミノ酸配列:
Figure 2005518801
を有する修飾されたGla−ドメインを有する。
本発明の別の観点は、Gla−ドメイン中に単一の突然変異として1以上の前記置換を含むプロテインCバリアント、および適切には置換S11G、S12N、Q32EおよびN33Dを含むバリアントに関する。
B(2)SP−ドメインの修飾
本発明に従い、Gla−ドメイン中の1以上の修飾は、SP−ドメイン中の少なくとも1つの修飾と組み合わされる。
ヒトPCの機能におけるグリコシル化の役割に関するGrinnell et al.(同上)の研究、および国際公開第98/44 000号パンフレットを除いて、このモジュール、すなわちPC/APC分子のセリンプロテアーゼ(SP)モジュール中の1以上の突然変異が、強化されたタンパク質分解および分子毎に強化される抗凝固活性を導くことを示す従来技術の参考文献は無い。しかし一方では以前に、ヒトAPCが幾つかのセルピン、すなわち蛇毒タンパク質により、プロテインCインヒビター(PCI)により、およびアルファ1−アンチ−トリプシン(α1AT)により阻害されることが知られ、さらに他方では、ウシAPCがα1ATにより阻害されないことが知られていた。この現象を理解するための努力では、Holly and Foster(Biochemistry,1994,33:1876−1880)がヒトとウシのプロテインC間のハイブリッド分子を構築し、そしてプロテインCのSP−モジュール中のどこか異なる残基について、分子的背景を示すことができた。しかしこの報告からはSP−モジュール中の突然変異が強化されたタンパク質分解および抗凝固活性を導くことをそこに示唆していないし、またはそれらから明らかではない。たとえHolly and Fosterが、PCバリアントが修飾されたSPドメイン(ここでアミノ酸残基no.300〜314は以下に開示する配列番号6と同じである)を含むと実際に解釈しても、彼らはこのバリアントのいかなる強化された抗凝固活性も、延長された抗凝固活性さえも開示しなかった。
本発明者は、ヒトおよびウシAPCとα1ATとの異なる反応性の原因であるSP−モジュール中の部位を厳密に同定することを企図して、さらに詳細にSP−モジュールを研究した。これらの研究に関連して、ヒト野生型プロテインC中の残基番号300と314の間(およびその全てを含む)のアミノ酸配列がタンパク質分解およびアミド分解活性、すなわちPC/APCの抗凝固活性に必須であり、そしてこのアミノ酸範囲中に突然変異(1つまたは複数)を導入することは、野生型物質に比べてより高速で該活性を現すPC/APCの機能的バリアントを生じるということが全く予期せずに見いだされた。この知見は上に引用した国際公開第98/44 000号パンフレットの主題である。
たゆまぬ科学実験、分析および革新を通じて、本発明者はSP−ドメイン中の修飾(1つまたは複数)とGla−ドメイン中の修飾(1つまたは複数)とを組み合わせて、Gla−ドメインおよびSP−ドメインの両方の中に突然変異を含み、そして強化された膜結合親和性および強化されたタンパク質分解および/またはアミド分解活性、すなわち強化された抗凝固活性を現すと同時に、他の望ましい特性を維持するPCバリアントを生成することが可能であることを見いだした。
このように本発明の適切な態様は、強化されたタンパク質分解および抗凝固活性を発現するPC/APCの機能的バリアントを対象とし、このバリアントは上で検討した修飾されたGla−ドメインに加えて、1以上の突然変異をSP−モジュール中にも含む点で野生型PC/APCとは異なる。特別な態様に従い、本発明はPC/APCのバリアントを企図し、ここでSP−モジュール中の突然変異(1つまたは複数)、適当には点突然変異(1つまたは複数)は、野生型ヒトプロテインCの残基番号290〜320、そして適切には残基番号300〜314からなるアミノ酸範囲内に位置する。
ヒトPC/APCでは、残基番号300〜314からなる上に挙げた配列は、アミノ酸に関する1文字暗号を使用した配列WGYHSSREKEAKRNR(配列番号6)を含んでなる。本発明の1つの好適な態様は、Gla−ドメイン、および該アミノ酸配列(配列番号6)に含まれる突然変異(1つまたは複数)を除いて野生型PC/APC分子と同一のアミノ酸配列を有するヒトPC/APCバリアント対象とし、SP−ドメイン中の突然変異した配列はWGYRDETKRNR(配列番号7)を含んでなる。
野生型分子中の突然変異の位置は、以下に表示する突然変異した配列:WGY...R.EKRNR(配列番号7)から明らかであり、ここで点は削除されたアミノ酸を具体的に示し、そして置換には下線を付す。このようにこの特別な態様のPC/APCバリアントは、野生型のPC/APCモジュールと比較して4個のアミノ酸残基が短縮化され、そして2つの置換を含むSPモジュール中のアミノ酸範囲を含む。
このように本発明の適切な態様は、Gla−ドメイン中に少なくとも1つの修飾を含み、そしてSP−モジュール中のアミノ酸残基300〜314からなる範囲内に削除および置換突然変異を含むPC/APCバリアントに関する。好ましくはアミノ酸残基no.303、304、305および308が削除され、そしてアミノ酸残基no.307および310が置換されて(E307D/A310T)、配列番号7の突然変異した配列を含んでなる上に挙げたPC/APCバリアントを生成する。したがって該配列内に突然変異を含む好適なバリアントは、配列番号6の配列により表される野生型の配列の代わりに配列番号7の配列により表される突然変異した配列をSP−ドメイン中に含む。
B(3)Gla−ドメインおよびSP−ドメイン中の修飾
本PCバリアントはGla−ドメインに少なくとも1つの修飾を、そしてSP−ドメインに少なくとも1つの修飾を含み、そして適当には各ドメインに1より多くの修飾を含む。より詳細には本発明はB(1)で述べたようなGla−ドメイン中の修飾を、そしてB(2)で述べたようなSP−ドメイン中の修飾を有するPCバリアントに関する。本バリアントはこれらの修飾を任意の組み合わせで含むことができる。さらに具体的に述べたアミノ酸置換を、同じ効果を提供する他の置換に置き換えることができ、すなわち同様な特徴の他のアミノ酸残基を使用して野生型の残基を置き換えることができる。さらに削除、付加または置換突然変異を加えることができ、この突然変異は本発明の基本的特徴に影響を及ぼさない変化を生じる。そのような修飾は以下のB(4)章の突然変異誘発法の考察から明らかである。例えば野生型アミノ酸残基をB(4)章に掲げる群1から選択される具体的アミノ酸へ置換することは、該野生型残基をこの群に属する他の任意のアミノ酸残基へ置換することに代えることができる。
本発明の適当な態様は、Gla−ドメイン中の10、11、12、23、32、33および44位に置換を有し、そしてSP−ドメイン中の290から320位の間および全てを含む、好ましくは300から314位の間および全てを含むアミノ酸範囲に、そしてより特別には303、304、305、307、308および310位に突然変異を含むプロテインCバリアントに関する。他の適切なプロテインCバリアントは、303から310位の間および全てを含むアミノ酸範囲内、または302から316位の間および全てを含むアミノ酸範囲内に修飾を含む。SP−ドメイン中の適切な修飾は、場合によっては少なくとも1つの置換と一緒の削除である。
1つの好適な態様に従い、プロテインCバリアントはGla−ドメイン中に置換H10Q、S11G、S12N、D23S、Q32E、N33DおよびH44Yを、そしてSP−ドメインの303、304、305および308位に削除および置換E307DおよびA310Tを含む。ここで該バリアントはしばしば「スーパー−APC」と呼ぶ。さらなる態様に従い、プロテインCバリアントはスーパー−APCと同じSP−ドメイン突然変異を含むが、Gla−ドメインは置換S11G、S12N、Q32EおよびN33Dのみを含む。
組み合わせて強力に強化された抗凝固活性を有するPC/APCバリアントを生成することができるSP−ドメイン中およびGla−ドメイン中の他の突然変異を以下で検討する。
SPドメイン中の突然変異は少なくともわずかに上昇した抗凝固活性、および場合により強化されたアミド分解活性を伴うはずである。主要な例は本明細書中ですでに記載したSP変異体である(B(2)章)。しかし多くの他のバリアントを、プロテインC中のこの領域、すなわちセリンプロテアーゼドメイン中の所謂148ループを含んでなる300〜314アミノ酸残基の領域の突然変異誘発により作成することができる。
Gla−ドメイン中の突然変異も多くの異なる突然変異を含んでなることができるが、原理的にはそれらは自身により強化、または改変されたリン脂質−結合能をもたらすはずである。Glaドメイン中の適当な突然変異はその幾つかが本明細書にすでに記載され、それらにはE32;E32D33;G11;Q10G11;G11N12;Q10G11N12;S23;S23E32D33Y44、Q10G11E32D33、G11N12E32D33、Q10G11N12S23E32D33Y44を含むが、多くの他のバリアントも可能である。Gla−ドメインを突然変異させるために挿入する問題の位置は、このようにNo.10、11、12、23、28、32、33、34、35および44を含む。
原理的には、本明細書中および従来技術ですでに検討したありとあらゆるGla−ドメインバリアント、およびこれまでの既知の突然変異、例えばGrinnell et al.(同上)にすでに記載された炭水化物に影響を及ぼす突然変異および/または国際公開第01/59084号パンフレットに開示された突然変異をさらに含むようなバリアントも、B(2)および以下に開示するSP突然変異と一緒に使用することができる。
本明細書に特別に記載する1つのSP変異体は、この領域、すなわちWGYHSSREKEAKRNR(配列番号6)中のwtヒトプロテインC配列に比べて、配列WGY...R.EKRNR(配列番号7)を含む。ループは短縮されるべきであるという考えに基づき、多数の選択的突然変異を以下に掲げる。
Figure 2005518801
以下の方法に従い、可能な大変多数の変化が存在する。理論的には、これらは削除または置換に供する7個のアミノ酸残基の無作為な変化を可能とする現代の分子生物学的道具を介して見いだすことができる。スクリーニングは合成基質に対して強化された触媒活性を生じる興味深い変異体の能力に基づき構築することができる。
修飾することができるSP−ドメイン中の他の位置は、302および316位である。これらの位置でwtアミノ酸はSer、Ala、Thr、His、Leu、Lys、Arg、Asn、Asp、Glu、GlyおよびGlnから選択されるアミノ酸と置換することができ、例えば置換はY302QまたはY302Eである。
上で述べたように、修飾された、すなわちGla−ドメインに少なくとも1つの修飾を、そしてSP−ドメインに少なくとも1つの修飾を含むバリアントまたは変異体である本発明のPC/APCは、強化された膜結合親和性および強化されたタンパク質分解および/またはアミド分解活性、すなわち強化された抗凝固活性を有する。そのような抗凝固活性は、すなわち本バリアントがインビトロの標準的な凝固アッセイにおいて凝固時間を上昇させる能力として決定することができる。強化された抗凝固活性は、血漿に由来するか、または組換えDNA技術により得ることができる野生型PC/APCと比べて測定される。このように本発明に従い有用となるには、PC/APCバリアントは野生型物質の抗凝固活性よりも高い抗凝固活性を現すべきである。適当には本バリアントは少なくとも約50%、、そして適切には少なくとも約100%強化された抗凝固活性を現す。好適なPC/APCバリアントは、野生型のプロテインCよりも約400%以上、例えば1000%まで、またはさらに3000%まで強化された抗凝固活性を現す。
強化された膜結合とは別に、Gla−ドメイン中の突然変異は他の改善された特性も提供することができることを構想する。例えばGla−ドメインは幾つかの他のタンパク質との相互作用に関する部位を有するので、Gla−ドメインはおそらくプロテインSおよび第VおよびVIII因子と相互作用することができる。このようにこれらのタンパク質との相互作用は、Gla−ドメイン中の突然変異により改善され得ると構想する。
上で述べたように、本バリアントは好ましくは対応する野生型物質と高度な相同性を有する。すなわち本バリアントは好ましくは点突然変異、すなわち1または数個の単一アミノ酸残基の置換、削除および/または挿入のみを含む。
本発明の好適な態様は、ヒトPC/APCバリアントに関する。しかし本発明は、マウスおよびラットのような哺乳動物起源、例えばウシおよびマウスの強化された抗凝固活性を有するPC/APCバリアントに関する。
本発明の別の態様に従い、これらのバリアントがさらに野生型物質に比べて強化された抗凝固活性を有するならば、バリアントはプロテインCについて前に記載した1または数個の突然変異をさらに含むことができる。そのような突然変異はGla−ドメイン、SP−ドメインおよび/またはプロテインC分子の他のドメインに位置することができる。
本修飾はAPC中の活性部位の修飾と組み合わせてもよい。APCの活性部位は、活性部位の位置指定突然変異誘発法により、または例えばN−ダンシル−グルタミル−グリシル−アルギニル−クロロメチル−ケトンにより化学的に不活性化することができる。Sorensen et al.,1997,J.Biol.Chem.,272:11863−11868を参照にされたい。活性化部位が修飾されたAPCはプロトロンビナーゼ複合体のインヒビターであるので、強化された膜親和性を現す活性化部位が修飾されたAPCは、治療的に有利なAPCバリアントを提供する。
B(4)突然変異誘発法
当業者には置換以外のGla−ドメイン中の修飾および削除以外の修飾およびSP−ドメイン中の置換が、上記のように改善された特性を有するプロテインCバリアントを提供できることが明らかである。さらに本明細書に具体的に挙げた置換以外の置換もそのような改善されたバリアントを提供することができる。そのような置換は保存的または非保存的である。共通の側鎖特性に基づき、自然に存在する残基は以下の種類に分類される:
1)ノルロイシン、Met、Ala、Val、LeuおよびIleを含んでなる疎水性残基;
2)Cys、SerおよびThrを含んでなる中性の疎水性残基;
3)AspおよびGluを含んでなる酸性残基;
4)Asn、Gln、His、LysおよびArgを含んでなる塩基性残基;
5)GlyおよびProを含んでなる鎖の方向に影響を及ぼす残基;および
6)Trp、TyrおよびPheを含んでなる芳香族残基.
非保存的置換はこれらの1種類の員が別の種類の員に置き換えることを含み、一方、保存的置換はアミノ酸残基を同じ種類の員と置き換えることを含むことができる。置換突然変異誘発法に興味深い位置は、異なる種に由来する野生型プロテインCに見いだされるアミノ酸残基が、例えば側鎖の嵩、荷電および/または疎水性に関して異なる位置を含む。しかし興味深い他の位置は、特定のアミノ酸残基が少なくとも幾つかの異なる種間では異ならず、同一であるような位置であり、なぜならばそのような位置は生物学的活性に潜在的に重要であるからである。最初に候補位置を比較的保存的な様式で置換する。次いでそのような置換が生物学的活性に変化をもたらす場合、より実質的な置換を導入し、かつ/または付加、削除または挿入のような他の修飾を作成し、そして生じたバリアントを生物学的活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列の保存的置換または修飾は、野生型プロテインCに類似する機能的および化学的特徴を有するバリアントを生じることが期待できるので、適切には本プロテインCバリアントは少なくとも1つの非保存的置換、例えば塩基性残基の代わりに芳香族残基への、または酸性残基の代わりに塩基性残基への置換を含む。
修飾した、すなわちバリアントもしくは変異体である本発明のPC/APCは、強化された抗凝固活性を有するので、生物学的活性に関する上記のスクリーニングは、抗凝固活性の測定に適切に関連する。そのような抗凝固活性はi.a.、本バリアントが標準的なインビトロ凝固アッセイにおいて凝固時間を上げる能力として決定することができる。強化された凝固活性は、血漿に由来するか、または組換えDNA技術により得られる野生型PC/APCに対する比較で測定される。このように本発明に従い有用となるには、PC/APCバリアントは野生型の物質の抗凝固活性よりも高い抗凝固活性を現すべきである。適当には本バリアントは野生型のプロテインCよりも少なくとも約400%以上、例えば1000%まで、またはさらに3000%まで強化された抗凝固活性を現す。
上記の、そして類似の原理に基づき、本発明のバリアントのGla−ドメイン(配列番号5)中の好適な突然変異を決定した。より詳細にはMacDonald et al(Biochemistry 1997;36:5120−5127)による理論的文献で、すべてが既知のGla−ドメインの配列が比較され、そしてこれらGla−ドメインが負に荷電したリン脂質に結合する能力を持つ配列と関連させることを試みた。この分析から、種々のGlaドメインの中でも負に荷電したリン脂質に関する親和性に関する大きな変動が、主に10および32および33位の残基周辺のアミノ酸配列の差異に関連することが示唆された。
Shen et al(J Biol Chem 1998,273:31086−31091)による以前の文献では、数個の異なる変異体が作成され、そしてMacDonald et alの理論的考察に従い試験された。これらの変異体に関する共通のテーマは、11位をセリン(S)からグリシン(G)に、そして32位をグルタミン(G)からグルタミン酸(E、成熟タンパク質ではGlaに転換されるだろう)に、そして33位をアスパラギン(N)からアスパラギン酸(D)へ変えることであった。さらに10および12位をその時点で1つ、一緒にではなく変えた。すなわち試験した変異体はG11E32D33(GED)、E32D33(ED)およびE32(E)に加えて、E10G11E32D33(EGED)、Q10G11E32D33(QGED)、G11N12E32D33(GNED)であった。
QGEDおよびGNEDは抗凝固物質として本質的に等しく効果的であり、そして両方がwtAPCよりも抗凝固的であることが観察された。wtAPCと比較して、両方の変異体が優れた様式で負に荷電したリン脂質を含むリン脂質小胞に結合し、そしてまたCa2+にも強固に結合した。たとえその試験の最も効率的な変異体がwtAPCよりも抗凝固的であっても、これは低濃度のリン脂質を使用した時にのみ見いだされた。すなわちたとえAPCの改善された酵素活性が使用したすべての膜について増加した膜親和性と関連したことが見いだされても、負に荷電したリン脂質に関するAPCの強化された親和性は、低濃度の負に荷電したリン脂質でAPCの抗凝固(酵素)活性を改善しただけであることを示唆した。
Shen et al(J Biol Chem 1998,273:31086−31091)の研究により刺激されて、本調査を開始した。この考えは10、11および12位での突然変異を1つのバリアントに組み合わせ、そして加えて23および44位での突然変異が変異体APCの効力に影響を及ぼすことができるかどうかを試験することにより、恐らくより効率的な突然変異を作成することができるということであった。32および33位はShen et al.による研究から重要であると考えられたが(J Biol Chem 1998,273:31086−31091)、これは示されて無かった。Shen et al.により試験された変異体、すなわちGED、ED(32、33位)およびE(32位)に加えてEGED、QGED、GNEDは、以下の理由から32および33位の重要性を確実に証明できなかった。変異体EGED、QGED、GNEDおよびGEDはすべて、wtAPCよりも効率的であったが、2つの変異体EDおよびEはより効率的ではなかった。これは10〜12位周辺の突然変異がより効率的なタンパク質を生じるものであり、32および33突然変異が必要無い可能性を生じた。証明されてはいないが、10〜12位周辺の突然変異は、32および33位での突然変異と組み合わされなければならないと仮定された。しかしShen et al(J Biol Chem 1998,273:31086−31091)の研究から、32および33位のみの突然変異では強化された抗凝固活性を現すプロテインCバリアントの作成には不十分であることは明らかであった。以下に示すように、10〜12位(QGNバリアント)も23、32、33および44位(SEDYバリアント)の突然変異誘発も、わずかに改善された抗凝固活性以上の分子を作成しなかった。上に確認されるすべての修飾(QGNSEDYまたは“ALL”と命名)を含む特別な変異体(配列番号3)のみが高度に効率的であった。
野生型残基を野生型プロテインCの上で確認した位置で置換するために使用する適切なアミノ酸残基に関して、これらのアミノ酸配列と種々のビタミンK依存性タンパク質のリン脂質結合能との間の相関分析を含め、種々のGla−ドメインのアミノ酸配列の比較を行った。これによりヒトプロテインSおよびウシ第X因子の両方がこれらの配列を含んでなり、そしてこれらタンパク質の両方が負に荷電したリン脂質に高親和性で結合するので、QGNが10、11および12位の興味深い選択であることが示唆された。多くのGlaドメインにおいて、23位はセリン(S)残基に占有され、そしてこれはなぜプロテインCの野生型残基が本発明の適切なバリアントを作成する時にセリン残基と置き換えられたのかの理由である。44位での修飾はこれまでに考えられなかったことに注目されたい。しかし44位にヒスチジン(H)残基を含むGlaドメインはヒトプロテインCのGlaドメインだけであるので、44位にチロシン残基を有するすべての他のGlaドメインでは、44位でヒスチジン残基をチロシン(Y)と置き換えることが有用な修飾となり得るのが合理的と思われる。
このようにGla−ドメイン中の突然変異の選択に関する適切な方法は、類似のGlaドメインを有する幾つかのビタミンK依存性タンパク質が存在するという事実に基づく。実際に、すべてのGla−ドメインは同じ基本フォールド(fold)を有する。ドメインのこのフォールディングに重要なアミノ酸残基は高度に保存されており、これはカルシウムに結合する多数のGla残基を含み、これによりドメインのフォールディングに決定的となる。また幾つかの他のアミノ酸残基も、ドメインのフォールディングに関与している。すべての既知のGla−ドメインを含むタンパク質に由来する配列のアライメントは、Gla−ドメインの配列の自然な変化を示し、そして保存されたアミノ酸残基がそのような分析で強調されている。これらのアミノ酸残基はドメインの内部に位置する傾向がある。対照的に露出したアミノ酸残基により占有されている位置は、より高度に多様性であり、そしてこれらの位置は突然変異がフォールディングの問題を引き起こす見込みが低いので突然変異誘発法に好適な位置である。これらの位置のアミノ酸残基もGla−ドメインのファミリー内で高度に可変性である。これらの位置は例えば10〜12、23、32および33位である。種々のGla−ドメインは負に荷電したリン脂質膜に高度に異なる親和性を有し、これは可変性位置におけるアミノ酸の差異によるはずである。Gla−ドメインのアミノ酸配列を負に荷電したリン脂質に対する親和性と比較することにより、突然変異誘発法に有用となり得る情報を引き出すことができ、これは以前に調製され、そして上で考察した種々のプロテインCバリアントについて証明されている。これらには10〜12、23、32および33位で突然変異したタンパク質を含む。これらの位置をすでに試されたもの以外のアミノ酸残基に突然変異させる多くのさらなるバリアントが可能である。置換のためのアミノ酸の選択において、アミノ酸のファミリー内にあるものを試すことができるが、ファミリーの境界を越えて行くことも興味深いかもしれない。44位でHisからTyrへの突然変異誘発は、すべての他のGla−ドメインが44位にTyrを有するように行った。
Gla−ドメインを修飾する主な目的は、負に荷電したリン脂質膜に対して増加した親和性を有するプロテインCバリアントを得ることである。この利点はより多くのAPCがリン脂質膜上に存在し、すなわち凝固に及ぼす阻害効果がより顕著になるということである。この利点はAPCの効果がプロテインSおよび第V因子のようなコファクターの存在に依存しなくなることである。多くの病理学的状況において、コファクターは病理的タンパク質分解に消費される。高効率の「スーパーAPC」バリアントは、コファクターの不存在下でもwt−APCより明らかに有利であろう。
上記の検討から、たとえGla−ドメインが45アミノ酸残基を含んでも、その各々が独立して、または組み合わされて修飾されることができ、そしてこれにより生成されたAPCバリアントは強化された抗凝固活性を有するさらなるバリアントに関する調査で特徴付けられなければならず、そのような調査は実際に当業者の技術的範囲内にある。さらに当該技術分野の状況に基づき、例えば前駆体として本明細書に具体的に開示したバリアントを使用して、前駆体バリアント(例えば実験の部で具体的に調製されるようなバリアント)と同じ特性を本質的に有するさらなるバリアントを、1または数個の保存的置換を導入することにより、またはGla−ドメインの部分またはプロテインC分子の他の部分に修飾を導入することにより(ここでそのような修飾は、修飾されることを意図する前駆体の特性に影響を及ぼさない)生成することができる。本質的に変化していないか、または本バリアントと同じ特性を現すようなバリアントは本バリアントと均等であると考え、すなわち本発明により包含される。これは少なくとも突然変異の誘発の標的がアミノ酸残基no.290〜320、または特別にはアミノ酸残基no.300〜314から選択されるならば、SP−ドメインについてもあてはまる。
C.DNAセグメントおよびその調製
本発明はPC/APCバリアントに関係するデオキシリボ核酸(DNA)セグメントまたは配列、例えばこれらバリアントをコードする構造遺伝子、修飾されるアミノ酸範囲等のコード配列を含んでなる突然変異誘発プライマー等に関する。
これに関連して、遺伝子暗号の周知の重複を考慮しなければならない。すなわちタンパク質を作るために使用するほとんどのアミノ酸について、1以上のコーディイングヌクレオチドトリプレット(コドン)が特定のアミノ酸残基をコードするか、または定めることができる。したがって多数の異なるヌクレオチド配列が特定のアミノ酸残基配列をコードすることができる。しかしそのようなヌクレオチド配列は、それらが同じアミノ酸残基配列の生成をもたらすことができるので、機能的に均等であると考えられる。さらに場合により、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントを上記ヌクレオチド配列に包含することができるが、そのようなメチル化はいかなる様式でもコード関係に影響を与えない。すなわちメチル化バリアントを含んでなるか、または含まないそのような機能的に均等な配列も本発明により包含される。
本発明の適切なDNAセグメントは、本発明の修飾された(バリアントまたは変異体)PC/APCをコードするDNA配列を含んでなり、すなわちDNAセグメントは、修飾PC/APCをコードする構造遺伝子を含んでなる。しかし本発明のDNAセグメントは例えば突然変異誘発プライマーとして使用するために、修飾されたアミノ酸範囲を含む数個から約15個のアミノ酸残基をコードするヌクレオチドトリプレットを含んでなる比較的短い配列からなることができる。
本発明の構造遺伝子は好ましくはイントロンを含まず、すなわち遺伝子はコドンの非中断配列からなり、各コドンが該修飾PC/APC中に存在するアミノ酸残基をコードする。しかし遺伝子はイントロンおよび自然な遺伝子中に存在する遺伝子発現の他の制御要素を含んでなってもよい。
本発明の1つの適切なDNAセグメントは、野生型タンパク質のGla−ドメインに対応するアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸修飾(挿入、削除、置換)、および野生型タンパク質のSP−モジュールに対応するアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸修飾(挿入、削除、置換)を除き、野生型ヒトPC/APCに対する配列に対応するPC/APCバリアントを定めるアミノ酸残基配列をコードする。
他の適当なDNAセグメントはPC/APCバリアントをコードし、ここでGla−ドメインの該修飾(1つまたは複数)は、10、11、28、32または33位以外の位置でそのアミノ酸残基配列中に含まれる。好適なDNA−セグメントは、そのGla−ドメイン中に修飾H10Q、S11G、S12N、D23S、Q32E、N33DおよびH44Yまたは修飾S11G、S12N、Q32EおよびN33Dを、そしてそのSP−ドメインのアミノ酸残基の範囲に修飾された範囲がWGYRDETKRNR(配列番号7)を含んでなる残基no.300〜314を含んでなる修飾を含むPCバリアントをコードする。
加えて本発明は、本PC/APCバリアントをコードする相同的および類似的DNA配列、およびそれらに相補的なRNA配列に関する。
本DNAセグメントは、以下(D章)でさらに説明するように、従来の発現ベクター/宿主細胞系に適するPC/APCバリアントを生産するために使用することができる。
DNAセグメント自体に関して、これらは周知技術に従い得ることができる。例えば、いったんジデオキシチェーンターミネーションシークエンシング法(Sanger et al.,1977)のような通例のシークエンシング法を使用してヌクレオチド配列を決定すれば、該セグメントは、特に大きなDNAセグメントを調製する場合、適当には自動化合成法に従い化学的に合成することができる。大きなDNAセグメントは、周知技術を使用して、本DNAセグメントを構成する数個の小さいオリゴヌクレオチドを合成し、続いてこのオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションおよび連結して大きなDNAセグメントを形成することにより調製することができる。
本DNAセグメントを合成するために化学的方法を使用する場合、もちろん野生型分子中の1以上のアミノ酸残基をコードする適切な塩基の置換、挿入および/または削除により野生型PC/APCをコードするDNA配列を修飾することは容易である。
適切には組換えDNA技術を使用して、修飾された構造遺伝子を含んでなる本DNAセグメントを調製する。このように遺伝子、すなわち野生型PC/APCをコードするcDNAを含んでなる組換えDNA分子から出発して、修飾されたPC/APCをコードする構造遺伝子を含んでなる本発明のDNAセグメントは、該修飾された組換えDNA分子の発現後に、置換(置き換え)、削除および/または挿入(付加)のような所望するアミノ酸残基の変化を導入するために該組換えDNA分子の修飾により得ることができる。これらの変化を達成するために都合が良い1つの方法は、例えばPCR技術を用いて行う位置指定突然変異誘発法による。PCRはolymerase hain eactionの略であり、そしてMullis and Faloona(1987)により最初に報告された。
部位特異的プライマー指定突然変異誘発法は今では当該技術分野で標準的であり、そして合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して行われ、このプライマーは所望する突然変異(1つまたは複数)を表す限定された誤対合を除き、突然変異させるDNAを含んでなる一本鎖ファージDNAに相補的である。簡単に説明すると、ヘテロロガスなDNAを含むファージDNAに相補的な鎖の直接的合成に対するプライマーとして合成オリゴヌクレオチドを使用し、そして生じた二本鎖DNAをファージが支援する宿主細菌中で形質転換させる。形質転換した細菌のカルチャーをトップアガー(top agar)にまき、ファージを有する単一細胞からプラークが形成するようにする。この方法では、突然変異させるDNAは一本鎖形で利用できなければならず、これはM13ファージでのクローニング後に得ることができる。位置指定突然変異誘発法も、“ギャップ化二本鎖(gapped duplex)”法により達成することができる(Vandeyar et al.,1988;Raleigh and Wilson,1986)。
本発明の適当な態様に従い、位置指定突然変異誘発法を標準的なPCR技術で行う(Mullis and Faloona(1987))。例示的なPCRに基づく突然変異誘発法は、本明細書中の実験の部に記載する。これらの実施例では、変異体DNAセグメントの複製がインビトロで行われ、原核でも真核でもなく無細胞を使用する。
明らかに位置指定突然変異誘発法は、例えば野生型PC/APCをコードし、そして発現するcDNA配列または構造遺伝子を含むベクターから始め(該ベクターは少なくともDNAを複製することができる)、そして選択したヌクレオチドを本明細書に記載するように突然変異させて、本発明のバリアントをコードする1以上の本DNAセグメントを形成することにより、本明細書に記載するPC/APCバリアントをコードする本DNAセグメントを構築するための便利な道具として使用することができる。突然変異したDNAを含む該ベクターの複製は、通常は該ベクターを含む原核細胞である宿主細胞の形質転換後に得ることができる。突然変異誘発、複製、発現およびスクリーニング法の具体的説明は、本明細書の実験の部に記載する。
D.PC/APCバリアントの調製
PC/APCバリアントをコードする完全なcDNA配列または構造遺伝子を含んでなるようなDNAセグメントは、適切な宿主細胞、好ましくは真核細胞中で該cDNAの発現によりコードされたバリアントを生産するために使用することができる。一般にそのような本発明のバリアントの調製は、本発明のバリアントをコードするDNAセグメントを提供し;提供されたDNAセグメントを発現ベクターに導入し;ベクターをコンパチブルな宿主細胞に導入し;宿主細胞を該バリアントの発現に必要な条件下で培養し;そして発現したバリアントを宿主細胞から回収する工程を含んでなる。上に挙げた各工程に適切な方法は、本明細書の実験の部に記載する。
本発明に従い使用することができるベクターはDNA複製ベクターを含んでなり、このベクターは通常は適切な宿主細胞中でベクターの自律複製能によりこのDNAセグメントの複製をもたらすことができるように、本発明のDNAセグメントに操作可能に連結され得る。
DNAの複製だけでなく、本発明のDNAセグメントによりコードされるバリアントの生産も達成するために、該DNAセグメントは発現ベクター、すなわち中に導入されたDNAセグメントの発現を支配することができるベクターに操作可能に連結される。DNAの複製および発現は、同じかまたは異なるベクターから達成することができる。
本発明は組換えDNA分子も対象とし、これはDNA複製および/または発現ベクターに操作可能に連結された本発明のDNAのセグメントを含む。
本発明のDNAのセグメントが操作可能に連結され得るベクターの選択は、例えばタンパク質発現について組換えDNA分子に望まれる機能的特性、および形質転換される宿主細胞に直接依存することは周知である。市販されている、および/または従来の技術文献に開示された種々のベクターは、そのようなベクターが該DNAセグメントの複製を支配することができる限り、本DNAセグメントと共に使用することができる。PC/APCバリアントの構造遺伝子を含むDNAセグメントの場合、好ましくはベクターはベクターが該DNAセグメントまたは遺伝子に操作可能に連結された時、構造遺伝子も発現することができる。
本発明の適切な態様は真核細胞発現系、適切には脊椎動物、例えば哺乳動物の細胞発現系に関する。真核細胞で使用することができる発現ベクターは当該技術分野では周知であり、そして幾つかの市販の供給元から入手可能である。一般にそのようなベクターは所望するDNAセグメントの挿入に都合の良い制限部位を含む。典型的なそのようなベクターは、pSVLおよびpKSV−10(ファルマシア(Pharmacia)、スウェーデン)、pBPV1/pML2d(インターナショナルバイオテクノロジーズ(International Biotechnology)社)、ストラタジーン(ラジョラ、カリフォルニア州)から入手可能なpXT1、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC;ロックヴィル、メリーランド州)から寄託番号ATCC37722で入手可能なpJ5ω、pTDT1(ATCC31255)等の真核発現ベクターである。本開示の実験の部では、pRc/CMV(インビトロジェン(Invitrogen)から入手可能、カリフォルニア州、米国)を使用してアデノウイルスでトランスフェクトしたヒト腎臓細胞で使用するための発現プラスミドを得た。
本発明の組換えDNA分子を構築するために使用する適当な真核細胞発現ベクターは、真核細胞中で効果的である選択マーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーを含む。適当な薬剤耐性マーカーは、その発現がネオマイシン耐性を生じる遺伝子、すなわちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である、Southern et al.,J.Mol.Appl.Genet.,1:327−341(1982)。さらに適切な薬剤耐性マーカーはジェネティシン(G418)に耐性を生じるマーカーである。あるいは選択性マーカーは別のプラスミド上に存在することができ、この場合、2つのベクターが宿主細胞のコトランスフェクションにより導入され、そして選択は選択性マーカーについて適切な薬剤中で培養することにより成される。
本発明の組換えDNA分子で形質転換される宿主細胞として使用することができる真核細胞は、細胞培養法、発現ベクターの増殖法および意図する遺伝子産物の発現法と適合する細胞系を使用する限り、どのようにも限定されることはない。適当な宿主細胞には酵母および動物細胞を含む。脊椎動物細胞、そして特に哺乳動物細胞、例えばサル、マウス、ハムスターまたはヒト細胞系が好ましい。適当な真核宿主細胞には、ATCCからCCL61で入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658で入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH/3T3、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)等の真核組織培養細胞系を含む。本明細書の実験の部では、アデノウイルスでトランスフェクトしたヒト腎臓細胞系293(アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能、ロックビル、メリーランド州、米国)を使用した。
本発明に従い発現系を得るためには、真核細胞、好ましくは哺乳動物の宿主細胞のような適当な宿主細胞は本組換えDNA分子を用いて、例えばGraham et al.,Virol.,52:456(1973);Wigler et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,76:1373−76(1979)に開示されている方法のような既知の方法を使用して形質転換される。
このように本発明のDNAセグメントを真核宿主細胞中で発現させるために、一般に複製起点、本発明のDNAセグメントの上流に位置するプロモーター、リボゾーム結合部位、ポリアデニレーション部位および転写終結部位のような遺伝子発現を制御する機能的配列を含む本発明の組換えDNA分子を使用する。真核細胞中で本発明のDNAセグメントを発現するために使用するそのような機能的配列は、ウイルスまたはウイルス性物質から得ることができ、または例えば該セグメントが完全な構造遺伝子を含んでなる時、本DNAセグメント中に本来含まれてもよい。
真核発現系で使用することができるプロモーターは、このようにアデノウイルス2、ポリオーマウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のようなウイルスから得ることができる。特にアデノウイルス2の主要後期プロモーターおよびSV40の初期プロモーターおよび後期プロモーターが好適である。
適当な複製起点は、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、SV40、水泡性口内炎ウイルス(VSV)およびウシパピローマウイルス(BPV)のようなウイルスに由来することもできる。あるいはもし宿主の染色体に組み込むことができるベクターを発現ベクターとして使用する場合、宿主染色体の複製起点を利用してもよい。
たとえ真核発現系が好適であっても、原核発現系を本発明と共に使用することもできる。さらに原核系は本発明のDNAセグメントの複製または増幅を行うために有利に使用し、続いて該原核系で生産されたDNAセグメントを、コードされた産物の発現に例えば真核発現系で使用することができる。
このように本発明の原核ベクターには原核レプリコン、すなわちそれらで形質転換される細菌宿主細胞のような原核宿主細胞中での自律複製および組換えDNA分子の染色体外での維持を支配する能力を有するDNA配列を含む。そのようなレプリコンは当該技術分野では周知である。加えて、原核レプリコンを含むそれら態様は遺伝子も含み、この発現はそれにより形質転換される細胞宿主に薬剤耐性を付与する。典型的な細菌薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するものである。
原核系を使用する場合、DNA複製のためだけでなく発現系としても原核レプリコンを含むこれらベクターは、それにより形質転換される大腸菌(E.coli)のような細菌宿主細胞中で、構造遺伝子を含む本DNAセグメントの発現、すなわち転写および翻訳を支配することができる原核プロモーターも含む。プロモーターはRNAポリメラーゼの結合および転写が起こることを可能とするDNA配列により形成される発現制御要素である。
細菌宿主と適合性があるプロモーター配列は、典型的には本発明のDNAセグメントの挿入に都合が良い制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。そのようなベクタープラスミドの典型は、カリフォルニア州、リッチモンドのバイオラッド(BioRad)から入手可能なpUC8、pUC9、pUC18、pBR322およびpBR329、およびスウェーデンのファルマシアから入手可能なpPLおよびpKK223である。
したがって本発明の遺伝子産物を発現することができる原核発現系を得るために、適切な原核宿主細胞は、例えばManiatis et al.モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク(1982)に開示されているように、典型的には使用するベクターの種類に依存する周知の方法に従い、本発明の組換えDNA分子で形質転換される。
もちろん成功裏に形質転換された原核または真核細胞を、非形質転換細胞から区別し、そして分離することが必要である。このために様々な方法が知られ、そして従来の技術文献に記載されたきた。
そのような方法に従い、組換えDNAの存在は形質転換手順に供された細胞に由来するモノクローナルコロニーのDNA含量を調査することによりアッセイされる。そのような方法はSouthern,J.Mol.Biol.98:503(1975)およびBerent et al.,Biotech,3:208(1985)により開示された。
成功裏の形質転換は、例えば発現した遺伝子産物に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を使用した周知の免疫学的方法により、あるいは発現した遺伝子産物の生物学的活性の検出により確認することもできる。
このように発現ベクターで成功裏に形質転換された細胞は、表示される抗原性または生物学的活性により同定することができる。このために、形質転換したと思われる細胞のサンプルを回収し、そして該生物学的活性または抗原性のいずれかについてアッセイする。
そのように選択された、成功裏に形質転換された細胞を使用して、上に開示した所望のPC/APCバリアントを生産する。
E.生物学的活性のアッセイ
本発明のPC/APCバリアントの生物学的活性をアッセイするために適当な方法は、APTT系のような血漿凝固系、および精製された第VIIIa因子および第Va因子の分解に関する試験に基づく。そのような方法は本明細書の実験の部により詳細に開示する。
F.組成物
本PC/APCバリアントは典型的には意図する使用に適する組成物の形態で提供される。そのような組成物はPC/APCバリアントの生物学的活性を保存し、そしてそれらの安定性が与えられるべきである。適当な組成物は、例えば生理学的に耐容され得る担体と組み合わせた治療的に活性な量の本発明のバリアントを含む治療用組成物である。適切にはそのような組成物は凍結乾燥されている。さらに該組成物はそれらの抗凝固活性を強化するために、プロテインSおよび/または第V因子のような治療に活性な量のさらなる有効成分も含むことができる。プロテインCはカルシウム依存性タンパク質であるので、適当には本発明の組成物は二価のカルシウムも好ましくは生理学的な量で含む。
一般に、そして具体的な治療用組成物において、組成物の形態の設計に関連して考慮する配慮は当業者には周知であり、これらをさらに詳細に記載する必要はない。
G.治療法
本発明に従い、本PC/APCバリアントは強化された抗凝固活性を現すことが示された。すなわち本発明は個体、例えばヒトの凝血を抑制する方法にも関し、該方法は該個体に治療的に有効量の本発明のバリアントPC/APCを含んでなる組成物を投与することを含んでなる。処置することができる状態は、本明細書のいたるところに開示する。
組成物について、治療法の計画に関連して考慮する配慮、例えば適当な投薬用量範囲および投与経路は当業者には周知であり、したがってこれらの方法をさらに詳細に記載する必要はない。
しかし簡単に説明すると、本プロテインCバリアントは種々の投与経路を介して投与することができる。例えばプロテインCバリアントは非経口投与、経口投与、または鼻内投与のための組成物として調製することができる。このように血流への効果的送達を確実とするために、プロテインCバリアントを静脈内注射、連続注入、ボーラス注射またはそれらの組み合わせにより投与することができる。あるいはプロテインCバリアントは血流へのゆっくりとした放出を望む場合、皮下に投与することができる。
プロテインCバリアントの適切な用量は、処置する個体の年齢、性別および全体的な健康状態のような様々な状況を考慮して担当医師により容易に決定され得る。有効な用量は0.02ng/ml〜100ng/ml未満の血漿範囲、適当には0.2〜50ng/ml、好ましくは2〜60ng/ml、そして特に40〜50ng/mlを生じるべきである。このように望ましくない血液凝固を抑制するために、多くの血栓塞栓状態の処置法で、0.01mg/kg/日から少なくとも約1.0mg/kg/日の用量の注射を、1日に1〜6回、1〜10日間使用することができる。
好ましくは非経口投与用の調製物は、水性の生理学的バッファー溶液中の液体溶液または懸濁液からなる。経口投与には、錠剤またはカプセルが適当な単位剤形である。
H.考察
本発明は少なくとも1つの修飾を、野生型PCの各Gla−およびSP−ドメインを含むPC−バリアントに関する。
本明細書の実験の部で調製した本発明の具体的なバリアントは、突然変異した配列番号5の配列を含むバリアントのGla−ドメイン中の突然変異を、300〜314位を含んでなるアミノ酸残基の範囲中のSP−ドメイン中の突然変異と組み合わせ、この突然変異した配列は突然変異した配列番号7の配列に対応する。さらなるバリアントはSP−ドメイン中の前記突然変異、すなわち突然変異した配列番号7を、Gla−ドメイン中の突然変異S11G、S12N、Q32EおよびN33Dと組み合わせて含む。
以前に発明者はGla−ドメインにのみ突然変異を含むPC−バリアント、およびSP−ドメインにのみ突然変異を含むPC−バリアントも研究した。後者のPC−バリアント(“SP−変異体”)は国際公開第98/44 000号パンフレットに記載されたが、“Gla−変異体”は2001年3月2日に出願された米国特許仮出願第60/272,466号明細書に開示されている。
H(1)Gla−突然変異
Gla−変異体に関する上に挙げた研究では、配列番号5の配列を有し、そしてQGNSEDY(ALL)と命名した突然変異したGla−ドメインを含むバリアントが、wtAPCよりも抗凝固的であり、そしてまた以前に報告されたGNEDまたはQGED(Shen et al.、同上により記載されている)のようなGla−ドメインよりも抗凝固的であることが分かった。i.a.2つのバリアントQGNおよびSEDYのいずれも増加した抗凝固活性、増加した抗凝固活性または負に荷電したリン脂質膜に対する増加した親和性を現さないか、またはわずかに現すだけなので、このバリアントがさらに強化された活性を現すことは極めて驚くべきことである。これはGla−ドメインの膜結合能が大変複雑であり、そして単一のアミノ酸置換により容易に影響を受けないことを示唆している。Gla−ドメインの多くの領域が突然変異した時のみ、一層強化されたリン脂質親和性および一層増加した抗凝固活性を現すQGNSEDY(ALL)のような独自のバリアントを得ることが可能である。
QGNSEDY(ALL)の抗凝固活性はプロテインSにより強化され(potentiated)、これはSmirnov and Esmonにより米国特許第5,837,843号明細書に記載されたキメラAPCバリアントの活性とは対照的である。このバリアントはプロテインCとプロトロンビンとの間のハイブリッドであり、ここでプロトロンビンGla−ドメインはプロテインC(PC)中の対応するGla−ドメインに置き換えられている。強化されたリン脂質結合により、このPC/APCバリアントは野生型APCよりも抗凝固的であるが、その活性はプロテインSにより強化されない。
また欧州特許第0296413A2号明細書は、プロトロンビンとPCだけでなくFVII、FIXまたはFXとPCとの間のプロテインCとのハイブリッドに関する。これらのバリアントはプロトロンビン、FVII、FIXまたはFXに由来するGla−ドメインおよびPCに由来する残りを含む。しかしこれらのバリアント中、Gla−ドメインは最初のN−末端43アミノ酸残基に限られ、すなわちこれらのバリアントはwtプロテインCの44位の修飾されたアミノ酸残基を含まない。そこではこれらのバリアントが凝血形成に対して改善された活性、または改善された繊溶促進効果を有すると述べられているが、これらのバリアントはそのような活性に関して十分に特性が決定されなかった。FX/PCハイブリッドのみが調製そして特性決定され、そしてこのハイブリッドが第Va因子の改善された不活性化とは別に、wtPCよりも改善された抗凝固特性を有することは見いだされなかった。
本バリアントQGNSEDY(ALL)が持つさらに全く予期せぬ利点は、Arg306でFVaを開裂することができるので、APCにより攻撃される主要な開裂部位、すなわちArg506位で突然変異した突然変異FVa(FV:Q506またはFVLeidenと命名)を正に開裂することができるということである。この突然変異した第Va因子は、APC−耐性と名付けられた共通の血液凝固障害に存在する。したがってQGNSEDY(ALL)がFVaをArg306で開裂する能力は、開裂した時、FVaの完全な不活性化をもたらす部位であるArg306の開裂が大変悪い野生型APCよりも有利である。このように野生型APCとは対照的に、本バリアントQGNSEDY(ALL)は活性化FV:Q506を開裂し、そして不活性化することができる。Arg506での開裂とは対照的に、Arg306での開裂はプロテインSにより強化される。しかし本バリアントQGNSEDY(ALL)のさらなる利点は、これがたとえプロテインSが不在でも活性化FV:Q506を開裂することである。さらにこの開裂はたとえプロテインSが必要でなくてもプロテインSにより刺激される。本バリアントQGNSEDY(ALL)が活性化第V因子をArg306で開裂する能力は、APC−耐性の患者にも抗凝固物質として魅力的となる。
H(2)SP−変異体
国際公開第98/44 000号パンフレットでは、発明者はPCのSP−ドメイン中の修飾、そして具体的には配列番号7の突然変異した配列を含む修飾SP−ドメインに関する調査を報告する。
これはウシSPモジュールの対応するアミノ酸配列と同一である野生型ヒトプロテインCに比べて短縮化されたアミノ酸配列(配列番号7)である。SPモジュールのヒト、ウシ、ラットおよびマウスの配列間の比較により、ラットおよびマウスのPC/APC分子がウシPC/APCの場合よりもヒトPC/APCに類似することが明らかになったので、ヒトPC/APC中に削除および置換突然変異を含んでなり、300〜314アミノ酸配列をウシPC/APCの対応する配列と同一とした変異体を調製し、そして調査した。反対に挿入および置換突然変異をウシPC/APCに導入してヒトPC/APCのアミノ酸300〜314番に相当するウシの配列を延長し、そしてその配列をヒトのアミノ酸配列No.300〜314と同一とした。本明細書の実験の部および国際公開第98/44000号パンフレットでは、ヒトPC/APCおよびウシPC/APCの変異体の単離および特性決定が記載されている。標準的なPCR技術(Mullis and Faloona(1987),Meth.Enzymol.155,335−350)を使用して、上記の削除、置換および挿入突然変異を、ヒトPC/APCおよびウシPC/APCのcDNAに作成した。このように真核系でこれら突然変異したcDNAの発現後、配列番号7の配列を含んでなる突然変異ヒトPC/APC分子および配列番号6の配列を含んでなる突然変異ウシPC/APC分子が生産され、そして均一に精製された。さらに野生型ヒトおよびウシプロテインC/APCのcDNAをこの真核系で発現し、そして発現産物を均一に精製した。これらの手順で得られた精製した野生型PC/APC分子およびそのバリアントを特性決定するために、これらの分子をトロンビンで活性化し、そしてトロンビン活性化産物をS−Sepharoseクロマトグラフィーにより分離した。次いで単離されたPC/APC分子の機能的特性を特性決定した。上に述べたcDNAの発現、そして続く精製手順により得られた種々のPC/APC構築物は以下のように称する:wt−hPC/APC、野生型ヒトPC/APC:Δ−hPC/APC、配列番号7の配列に対応する短縮化配列を含んでなるヒトプロテインC;wt−bPC/APC、野生型ウシPC/APC:ins−bPC/APC、配列番号6の配列に対応する延長された配列を含んでなるウシPC/APC。これらの変異体、Δ−hPC/APCおよびins−bPC/APCはそれぞれヒトAPC−SPおよびウシAPC−SPとも命名し、後者の名称を以下の実施例1およびこの実施例に関する図面で主に使用する。
以下の実施例1から明らかであるように、標準的なSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、これら組換えPC/APC構築物は還元および非還元条件下の両方で泳動した時、予想された分子量を有した。アミド分解活性、すなわちS−2238(クロモジェニックス(Chromogenix)社、メルンダル、スウェーデン)のような低分子量物質に対するタンパク質分解活性を特性決定し、そして突然変異したヒトPC/APC(Δ−hPC/APC)が野生型ヒトPC/APCよりもこの基質に対して一層高い活性を有することが観察された。一方、ウシの突然変異(ins−bPC/APC)は、合成基質に対して一層低い活性を有し、これはたとえ突然変異が活性部位から幾らか離れて位置しても、削除/挿入突然変異がPC/APCの触媒部位に影響を及ぼすことを示唆した。
すなわちこの以前の調査では、突然変異がPC/APCの活性部位から幾らか離れて位置するPC/APCのSP−モジュール中の突然変異が、強化されたタンパク質分解、そしてより具体的には強化されたアミド分解活性により強化された抗凝固活性を有するPC/APCバリアントを生じることができるということが予期せずに明らかとなった。本突然変異はこの活性部位内またはそれに隣接して位置しないという結論は、APCの公開された仮説の分子モデルおよびAPCのSP−モジュールの3次元的構造について説明されたモデルに基づき、これはEMBO Journal,1996,15:6810−6821(Mather et al)に開示されている。これらのモデルから、上で述べた構築物中に含まれる突然変異は、SP−モジュールのループ5に位置し、このループは活性部位の領域と直接接触していない。
本明細書の実験の部では、上記組換えPC/APC分子の合成的基質開裂のキネティックスが、国際公開第98/44000号パンフレットに報告されたように特性決定され、すなわちKm、Vmaxおよびkcatの値が以下の実施例1により詳細に説明されているように基質濃度を変化させることにより決定された。国際公開第98/44000号パンフレットに報告されたように、Km値の減少が見いだされ、この基質に対する種々のAPC−分子の親和性がより高いことが示唆された。さらにVamx値は大変異なり、Δ−hPC/APCはwt−hPC/APCのVmaxより少なくとも7倍高いVmax値を有し;一方、ins−bPC/APCは明らかに低いVmax値を有したが、Km値はほとんど影響を受けなかった。これらの結果はΔ−hPC/APCの上昇した活性が、突然変異により引き起こされた上昇した触媒活性と基質に対する上昇した親和性の組み合せに依ったことを示唆している。
さらに国際公開第98/44000号パンフレットおよび以下の実施例1に報告されるように、上で述べた突然変異PC/APC分子の抗凝固活性をAPTTに基づく血漿凝固系(活性化部分トロンボプラスチン時間:activated partial tromboplastin time)反応(本来の経路による活性化)で測定した。これらの試験では、ヒト血漿に加えた時、Δ−hPC/APCはwt−hPC/APCに比べて抗凝固応答を強化したことが観察された。加えるウシプロテインSが存在しなければ、wt−bPC/APCおよびins−bPC/APCは両方とも大変悪い抗凝固応答を有するが、これら両方のウシ組換え化合物は反応混合物にウシプロテインSも含めた時、明らかな抗凝固活性を現した。
上記の結果は報告されたヒトAPC中の削除−突然変異がヒト血漿に存在する天然の基質に対して強化された活性を導いたが(FVaおよびFVIIIa)、報告されたウシAPC中の挿入−突然変異はたとえ合成基質に対する活性が損なわれても天然基質に対する反応性に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。ヒトAPC中の削除突然変異が実際に天然基質FVIIIaに対するタンパク質分解活性の上昇を導くことを確認するために、精製された成分(以前に記載された系、Shen and Dahlbeack,J.Biol.Chem.1994,269:18735−18738)を使用してFVIIIa分解系における組換えAPCの効果を、国際公開第98/44000号パンフレットに報告されたように調査した。この系はFIXa、FVIIIa、リン脂質小胞およびカルシウムを含み、そしてFVIIIaの活性はFXの添加により、そして短いインキューベーション時間の後、FXaに対する合成基質の添加でも測定した。種々のAPC分子の効果は、APCをその相乗的コファクターであるプロテインS(APCと同じ種の)およびウシFVと一緒に加えることにより試験した。この系では、Δ−hPC/APCがwt−hPC/APCによりも高い活性を有することが明らかであったが、2つのウシPC/APCは互いに比較的類似していた。精製したFVaの分解に関して、種々のAPCは試験しなかったが、Δ−hPC/APCはwt−hPC/APCよりも高い活性を有することが予想される。ヒトおよびウシAPCに導入された変化は阻害速度に影響するかもしれないので、突然変異APC分子の阻害速度をヒト血漿中で試験した。すなわちAPCを血漿に加え、そして種々の間隔で、残るアミド分解活性を測定した。突然変異したヒトの分子が野生型ヒトAPCと同じ半減期を有することが分かり、突然変異はセルピンによる阻害速度に影響しないことが示唆された。これをさらに試験するために、突然変異および野生型APCの精製PCIおよびα1ATによる阻害速度を試験し、そして本質的に同一であることが分かった。他方、ウシAPCおよび突然変異ウシAPCはα1ATにより阻害されず、これは阻害速度の決定に関与する突然変異した領域についての仮説が正しくないこと、すなわちヒトおよびウシAPCの異なるの阻害パターンに関する説明は、同定された配列の差異により生じなかったが、別の配列の差異をさらに定めるべきであることを示している。
結論すると、実施例1で報告する結果は、hAPC中の削除−突然変異が天然基質FVIIIaおよびFVaに対して、ならびに低分子量基質に対して、より高い触媒活性を有する分子を導く一方、この突然変異はセルピンによる阻害速度に影響をおよぼさなかったことを示す。
H(3)組み合わせたGla−およびSP−ドメイン変異体
Gla−およびSP−モジュールに関する知見に基づき、発明者はGla−ドメインおよびSP−ドメインの両方に修飾を含むPC/APCバリアントが、wtPC/APCだけでなく、好ましくは上に挙げたPC/APCのGla−およびSP−変異体よりも改善された特性を有するPC/APCバリアントを提供できることを認識した。
修飾されたGla−ドメインおよび修飾されたSP−ドメインの組み合わせが、Gla−ドメインまたはSP−ドメイン中の修飾により該変異体に付与される改善された特性を完全に破壊し得る相互作用を導かなければ、該組み合わせ変異体は、Gla−およびSP−変異体の一方によっては現されない、さらに強化された抗凝固活性および/またはwtPC/APCよりも改善された特性の組み合わせを示すであろう。
例えば上記H(1)で示したように、FV Leidenを開裂する強化された能力、およびまた強化されたタンパク質分解、例えばアミド分解活性により強化された抗凝固活性を有するAPCバリアントを得ることができる。
したがって実施例8に具体的に説明するように、発明者は配列番号5の修飾されたGla−ドメインおよび配列番号7の修飾された配列を含むSP−ドメインを含む好適なPC/APCバリアントを調製した。実施例8に示すようにAPTT試験では、このバリアントがwtPC/APCよりも一層強化された抗凝固活性を有する。
さらに発明者は、Gla−ドメインが突然変異G11N12E32D33を含み、そしてSP−ドメインが配列番号7の修飾された配列を含むPC/APCバリアントを調製した。このバリアントもwtPC/APCよりも改善された抗凝固活性を現す(実施例9を参照にされたい)。
I本PC/APCバリアントの潜在的用途
APCへの活性化後に強化された抗凝固活性を現す組換えプロテインC分子が、可能性のある治療用化合物、およびプロテインC系の他の成分のための種々の生物学的アッセイで使用される試薬としての両方で大きな潜在的用途を有することは明らかである。本発明に従い、突然変異がプロテインC分子のGlaモジュールおよびSP−モジュールの両方に存在する場合、例えば強化された膜結合活性、および強化されたタンパク質分解、例えばアミド分解活性によっても実質的に強化された抗凝固活性を有するバリアントプロテインCを得ることができることが示された。すなわちそのような突然変異の系統的調査により、さらに良い特性を有する他のプロテインC分子を生産することができると期待できる。例えばGla−ドメイン中の特別な突然変異を選択することにより、より高い特異的機能を持つAPC分子、例えばFVaをArg306で開裂するさらなる分子を設計し、すなわち血液凝固障害であるAPC−耐性に存在する該突然変異FVを十分よく分解するさらなるAPCバリアントを生産することが可能となり得る。SP−ドメイン中の特別な突然変異の選択は、FVIIIaに対して主に働く、またはFVaを主に開裂するAPC分子を設計することを可能にすることができる。
強化された抗凝固活性を発現する本プロテインCバリアントは、望ましくない血液凝固が抑制されるすべての状況に有用になると想定する。すなわち本バリアントは血栓症および他の血栓塞栓状態を防止または処置するために使用することができる。そのような状態の具体例は、播種性血管内凝固症候群(DIC)、アテローム硬化症、心筋梗塞、種々の凝固能亢進性状態および血栓塞栓症、およびまた敗血症(sepsis)および敗血症(septicaemia)である。本バリアントは、例えば心筋梗塞に関連した、および手術に関連した血栓溶解治療後の血栓症の予防に、およびAPC−耐性(先天的または後天的)またはプロテインC欠損症(先天的または後天的)の処置に使用することもできる。本プロテインCバリアントとプロテインS(野生型プロテインSまたはそのバリアント)との組み合わせは有用であり、この組み合わせにはAPCのコファクターとしての活性を現す第V因子を含むこともできる。
さらにAPCは多くの活性を有し、例えばこれは抗血栓活性を現すだけでなく、プロフィブリン溶解、抗炎症および抗アポトーシス活性も現すので、本APCバリアントは重篤な敗血症、血栓症および発作のような種々の複雑な医学的障害の処置に有力な役割を有する。APCは全身的な抗凝固物質および抗炎症因子でもあり、そして敗血症、虚血、損傷および発作の動物モデルでは臓器の損傷を減らすことが見いだされた。これはまた、重篤な敗血症患者において、死亡率を実質的に下げる。
APCバリアントのさらなる潜在的用途は、神経病理的障害または脳炎症疾患、例えば発作、アルツハイマー病のような様々な種類の神経障害がある神経変性疾患および種々の自己免疫疾患を有する個体の処置である。
本PC/APCバリアントは天然APCと同じ条件の処置にも使用することができると構想する。
本PC/APCバリアントの診断的用途に関して、プロテインSに関する改善された機能的アッセイおよびまた第V因子の抗凝固活性にも大きな必要性がある。強化された膜結合および強化されたタンパク質分解、適当にはアミド分解活性により、強化された抗凝固活性を有する突然変異APCは、そのようなAPCがより強いシグナルを与え、そしてこれが種々のアッセイでノイズに対して増加したシグナル比を導くので、そのようなアッセイに大変有用となるだろう。SP−変異体について、これはアミド分解活性がここに開示する変異体hAPCが正常(normal)APCよりも高く、そしてまた抗凝固効果も該変異体hAPCが標準APCよりも一層高いことを示す実施例1で報告された突然変異APC分子の最初のインビトロ特性決定により確認される。この突然変異分子とそのコファクターであるプロテインSおよび完全なFVとの相互作用は、SP−モジュール中の突然変異にはより影響を受けなったようであり、これはインビトロ試験で突然変異hAPC(Δ−hAPC)を使用する概念が正しいことを示唆している。
Gla−モジュールおよびSP−モジュール中の突然変異の組み合わせを、プロテインCの他の部分中のさらなる突然変異と組み合わせて、大変独特な特性を持つプロテインCを生成することも可能となる。イーライ リリー(Ely Lilly)の科学者(Ehrlich et al,Embo.J.1990,9:2367−2373;Richardson et al,Nature 1992,360:261−264)および他のグループは、活性化ペプチド領域周辺の突然変異がTM(トロンボモジュリン)の不存在下でも容易に活性化されるプロテインCを生じたことをすでに示した。同様に、活性化ペプチド領域中の別の組の突然変異が、合成している細胞から活性化形で分泌されるプロテインC分子を導いた(Ehrlich et al,J.Biol.Chem.1989,264:14298−14304)。また本突然変異と、APCとそのコファクターとの間の相互作用を強化することができる将来の突然変異との組み合わせも企図する。
もちろん本発明はそれらの生産様式とは無関係に本明細書に定めるプロテインCバリアントを対象とする。前の章、例えばD章では、幾つかの適切な方法を開示する。
しかしトランスジェニック動物に関する方法のような他の方法が有用になると予見する。例えばヒトプロテインCを乳の中に生産するトランスジェニックブタが開示されているサイエンティフィックアメリカン(Scientific American)、1997年1月、のVelander,et al.,「薬剤工場としてのトランスジェニック家畜(Transgenic Livestock as Drug Factories)」を引用する。このように本プロテインCバリアントを生産するトランスジェニック動物を得ることができると思われる。
実験の部
以下の実施例では、本発明を具体的に説明する適切な態様を開示する。しかしこれらの実施例は本発明を限定すると解釈されるべきではない。この中で特に言及しない限り、ヒトPC/APCバリアントを調製し、そしてヒト凝固因子、血漿等を使用した。
これらの実施例で以下の材料を使用した。
ヒトα1−アンチトリプシン(α1AT)およびプロテインCインヒビター(PCI)は、それぞれCarl−B.Laurell and Margareta Kjellberg博士からの好意により与えられた(スウェーデン、マルメの大学病院の臨床化学部)。HPC免疫アフィニティーカラムはCharles T.Esmon博士(ハワード ヒュー医学研究所、オクラホマ医学調査基金、米国)から得た。Fast Flow Q−Sepharose(FFQ)およびOctonativeM(第VIII因子の供給源として)は、スウェーデンのファルマシアから購入した。リポフェクチンおよびジェネティシン(G418)は、スウェーデンのライフテクノロジーズ(Life Technologies)社から入手することができ、そしてダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)はギブコ(Gibco)社から入手可能である。精製されたウシ第IXa因子、第X因子、リン脂質小胞および発色基質S−2222は、スウェーデンのクロモジェニック社のSteflen Rosen博士の好意により贈られた。ヒルジンは米国のシグマケミカル(Sigma Chemical)社から得、そしてD−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン(PPACK)は米国のカルビオケム(Calbiochem)から得た。ウシ第V因子、α−トロンビンおよびヒトプロテインSならびにウシプロテインSは以前に記載された方法に従い精製した(Dahlbaek et al.,1990:Dahlbaek and Hildebrand,1994)。
プロテインCのSP−変異体
この実施例は国際公開第98/4400号パンフレットに対応する。
(a)位置指定突然変異誘発法
Johan Stenflo博士(スウェーデン、マルメの大学病院の臨床化学部)の好意により贈られた完全長のヒトプロテインCのcDNAクローン、およびDonald Foster博士(ザイモジェネティックス:ZymoGenetics)社、米国)から親切にも提供された完全長のウシプロテインCのcDNAクローンは、制限酵素HindIIIおよびXbaIにより別々に消化し、そして生成した完全長のプロテインCのcDNAであるヒトまたはウシのいずれかの完全なPCコード領域を含んでなる制限断片を、HindIIIおよびXbaIで消化した発現ベクターpRc/CMVにクローン化した。
野生型のヒトまたはウシプロテインCのコード配列を含む生成した発現ベクターを、プロテインCのSP−モジュールの位置指定突然変異誘発法に使用し、ここで標的DNAの増幅のためのPCR手順を以下に記載し、そして以下の反応スキームに示すように行った(スキームI)。この手順に使用したプライマーのヌクレオチド配列を、以下の表Iに掲げる。
Figure 2005518801
突然変異したヒトプロテインCのcDNAを得るために、5’末端アミノ酸から313位までのコード領域を含むヒトプロテインCのcDNAの断片を、鋳型として完全なヒトプロテインCのcDNAおよび1対のプライマーAおよびBを使用して増幅した。プライマーBは突然変異誘発性オリゴヌクレオチドであった(スキーム1のPCR1)。一部が第1断片と重複する303位後の残りのアミノ酸を含むヒトプロテインCのcDNAの第2断片は、鋳型として完全なヒトプロテインCのcDNAおよび1対のプライマーCおよびDを使用して増幅し、プライマーCは突然変異誘発性オリゴヌクレオチドであった(スキーム1のPCR2)。
上記PCR増幅手順から、2つの部分的に重複した二本鎖cDNA断片が得られ、この両方が突然変異したDNA配列を含んだ。これら2つのcDNAは、さらなるPCR手順で2つのプライマーAおよびDと一緒に鋳型として使用して、所望する突然変異アミノ酸を含む完全長のヒトプロテインCのcDNAを増幅した(スキーム1のPCR3)。
上記各PCR反応の試薬混合物は、0.25μgの鋳型DNA、200μMの各デオキシリボヌクレオシドトリホスフェート(dNTP:dATP/dCTP/dGTP/dTTP)、0.5μMの各プライマーおよび2.5UのPwo−DNAポリメラーゼ(ベーリンガーマンハイム:Boehringer Mannheim)をTris−HClバッファー(10mM Tris、25mM KCl、5mM (NHSOおよび2mM MgSO、pH8.85)中に含む100μlであった。サンプルは、94℃で2分の変性期間、55℃で2分のアニーリング期間、そして72℃で2分の延長期間からなる30サイクルのPCRにかけた。増幅後、DNAは1mM EDTAを含有する40mM Tris−酢酸バッファー中で0.8%アガロースゲルの電気泳動にかけた。すべてのPCR増幅産物は、JETプラスミドMiniprep−キット(サビーンバイオテック(Saveen Biotech)社、スウェーデン)を使用することにより精製した。
所望する突然変異を含有する生成したヒトプロテインCのcDNAは、SacIIおよびApaIで消化し、そして次いでSacIIおよびApaI消化からの断片(ヌクレオチド728〜1311)を、完全なヒトプロテインC断片を含むベクターpUC18にクローン化して(HindIII−SacII、5’末端−ヌクレオチド728;およびApaI−XbaI、ヌクレオチド1311−3’末端)、所望の突然変異、すなわち配列番号6のヒト野生型配列の代わりに突然変異した配列番号7の配列を含んでなるヒトプロテインCをコードするヒトプロテインCの完全長cDNAを生成した。
さらにウシプロテインCのcDNAを突然変異させ、そして突然変異したcDNAは、異なるプライマーおよび鋳型を使用したことを除き、本質的に上記に開示したように増幅させた。所望の突然変異を含むウシプロテインCのcDNAのPCR増幅産物は、SalIおよびBglIIで開裂し、そしてSalIおよびBglIIでの消化に由来する断片(ヌクレオチド600〜1123)を、完全なウシプロテインC断片を含むベクターpUC18にクローン化して(HindIII−SalI、5’末端−ヌクレオチド600;およびBglII−XbaI、ヌクレオチド1123−3’末端)、ベクターpUC18中に突然変異したウシプロテインCの完全長cDNAを生成し、その後にHindIIIおよびXbaIを使用して所望の突然変異を含む、すなわち配列番号7のウシ野生型配列の代わりに突然変異した配列番号6の配列を含んでなるウシプロテインC変異体をコードするウシプロテインCの完全長cDNAを開裂した。
次いで上記突然変異した各ヒトおよびウシプロテインCのcDNAを、HindIIIおよびXbaIで消化し、そして適切な制限断片をベクターpRc/CMVにクローン化し、これを同じ制限酵素で消化した。得られたベクターは突然変異したヒトまたはウシプロテインCの真核細胞中での発現に使用した。
適切な宿主細胞のトランスフェクション前に、すべての突然変異はSanger et al.,同上のジデオキシチェーンターミネーション法によるDNAシークエンシングにより確認した。
上記の位置指定突然変異誘発法について、表Iに5’から3’方向で掲げた以下のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。
Figure 2005518801
プライマーA〜Dは、上に開示したようにヒトプロテインCのcDNAを突然変異させ、そして増幅させるために使用した。ウシプロテインCのcDNAを突然変異させ、そして増幅させるために、同様に2組のプライマー、すなわちプライマーAおよびEおよびプライマーFおよびDを使用し、プライマーEおよびFは突然変異誘発性プライマーである。これらプライマーのヌクレオチド配列は以下に説明するように、ベクターのヌクレオチド配列の一部またはプロテインCのcDNAヌクレオチド配列の一部に関連している。
プライマーAは、ベクターpRc/CMV中のヌクレオチド860〜895に対応し、そしてpRc/CMVベクターDNAとプロテインCのcDNAとの間にHindIII制限部位を提供する。
プライマーBは、ヒトプロテインCのcDNAの部分的な修飾されたアンチセンスヌクレオチド配列に対応し、修飾されたセンス配列は:LVTGWGYRDETKRN(配列番号40)をコードする。
このアミノ酸残基の配列は、包括的なアミノ酸残基番号296〜313に由来するヒトプロテインCの修飾された配列に対応し、ここで残基303〜310の配列は突然変異を含み、すなわち残基303、304、305および308が削除され、そして残基307および310は置換され、生じる配列RDET(配列番号43)はウシプロテインCの対応する部分と同一である(残基305〜308)。
プライマーCは、RDETKRNRTFVL(配列番号41)をコードするヒトプロテインCのcDNAの部分的な修飾されたヌクレオチド配列に対応する。
このアミノ酸残基の配列は、包括的なアミノ酸残基番号303〜318に由来するヒトプロテインCの修飾された配列に対応し、これは上記プライマーBについて開示されたものと同じ突然変異を含み、すなわち残基番号303〜305および308が削除され、そして残基番号307および310は置換されている。すなわちプライマーCはウシプロテインCの対応する配列と同一の短縮化配列RDETをコードする。
プライマーDは、ベクターpRc/CMV中のヌクレオチド984〜1019の配列に対するアンチセンス配列に対応し、そしてpRc/CMVベクターDNAとプロテインCのcDNAとの間にXbal制限部位を提供する。
プライマーEは、ウシプロテインCのcDNAの部分的な修飾されたアンチセンスヌクレオチド配列に対応し、修飾されたセンス配列は;VTGWGYHSSREKEA(配列番号42)をコードする。
このアミノ酸残基の配列は、包括的なアミノ酸残基番号299〜308に由来するウシプロテインCの修飾された配列に対応し、ここで残基番号305〜308(RDET)(配列番号43)に対応する配列は突然変異、すなわち4つの挿入および2つの置換を含み、突然変異した配列はヒトプロテインC(残基番号303〜310)の対応する部分と同一のHSSREKEA(配列番号44)である。
プライマーFは、HSSREKEAKRNRTF(配列番号45)をコードするウシプロテインCのcDNAの部分的な修飾されたアンチセンスヌクレオチド配列に対応する。このアミノ酸残基配列は、包括的なアミノ酸残基番号305〜314に由来するウシプロテインCの修飾された配列に対応し、これは上記プライマーEで述べたものと同じ突然変異を305と308位の間に含む。すなわちプライマーFは、ヒトプロテインCの対応する配列と同一である延長された配列HSSREKEA(配列番号46)をコードする。
(b)バリアントまたは野生型プロテインCを生産する安定な形質転換体の生産
バリアントまたは野生型プロテインCを生産する安定な形質転換体を生産するために、アデノウイルスでトランスフェクトしたヒト腎細胞系293を、10%のウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンおよび10μg/mlのビタミンKを含有するDEME培地中で成長させ、そして工程(a)からの野生型または突然変異したプロテインCのcDNAを含んでなる発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションは以前に記載された(Felgner et al.,1987)ようにリポフェクチン法に従い行った。簡単に説明すると、2mMのL−グルタミンを含有するDEMEで100μlに希釈した2μgのベクターDNAを、同じバッファーで100μlに希釈した10μlリポフェクチン(1μg/μl)と混合した。混合物を室温に10〜15分間維持し、そして1.8mlに培地で希釈し、そして次いで同じ培地で2回洗浄した細胞(5cmのペトリ皿中、25〜50%の集密度)に加えた。
(c)バリアントまたは野生型プロテインCの発現。(b)章のトランスフェクトした細胞を16時間インキューベーションし、その後、培地を10%のウシ血清を含有する完全培地に交換し、そして細胞をさらに48〜72時間インキューベーションした。次いで細胞をトリプシン処理し、そして選択培地(10%血清、400μg/mlのG418、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンおよび10μg/mlのビタミンKを含んでなるDMEM)を含む10cmの皿に播種した(Grinnell,et al.1990)。G418耐性コロニーは3〜5週の選択後に得た。各DNAトランスフェクション手順から、24コロニーを選択し、そしてコンフルエンスになるまで成長させた。すべてのコロニーは、モノクローナル抗体HPC(ヒトプロテインCについて)またはモノクローナル抗体BPC(ウシプロテインCについて)を使用したドット−ブロットアッセイによりスクリーニングしてプロテインCの発現を調査した。高発現細胞コロニーを選択し、そして選択培地中でコンフルエンスになるまで成長させた。その後、これらの細胞をならし培地(血清を欠く選択培地)中で成長させて、プロテインCまたはそのバリアントの発現を開始させ、この培地は選択培地のように72時間毎に交換した。適当な時間後、各発現産物を含有するならし培地は該産物を(d)章で精製するために集めた。
(d)組換え野生型および突然変異タンパク質の精製
(i)ウシ組換えプロテインCおよびその変異体は、以前に記載されたように精製した(Yen et al.,1990)。5mMのEDTAおよび0.2μMのPPACKを、(c)章で集めたならし培地に加えた。次いで培地をファルマシアFFQアニオン−交換カラムにのせ、そして室温でCaCl勾配で溶出した(出発溶液、20mMのTris−HCl/150mMのNaCl、pH7.4;限定溶液、20mMのTris−HCl/150mMのNaCl/30mMのCaCl、pH7.4)。CaClはChelex100処理と組み合わせて一晩透析することにより除去した(20mMのTris−HCl、150mMのNaCl、pH7.4)。透析物を2回目のFFQカラムにのせてプロテインCまたはその変異体をカラムに吸着させ、その後にタンパク質をNaCl勾配溶液(出発溶液、20mMのTris−HCl/150mMのNaCl、pH7.4;限定溶液、20mMのTris−HCl/500mMのNaCl、pH7.4)で溶出した。
(ii)ヒト野生型または変異体プロテインCを生産する形質転換体から(c)章で得られた培養基を最初にカラム精製に供し、次いでわずかに変更した(He et al.,1994)したことを除き以前に記載されたように(Rezaie and Esmon,1994)、モノクローナル抗体HPCを持つアフィニティーカラムにのせた。
(i)および(ii)で得た精製タンパク質をYM10フィルター(アミコン)で濃縮し、TBSバッファー(50mMのTris−HClおよび150mMのNaCl、pH7.4)に対して12時間透析し、そしてその使用まで−80℃で保存した。
上記野生型および変異体プロテインCの純度および均一性を、SDS−PAGEにより確立した。この電気泳動手順はポリアクリルアミド(10〜15%)のスラブ−ゲル電気泳動として、0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の存在下、還元および非還元条件下で行い、ここで該タンパク質は銀染色により視覚化された(Morrissey,1981)。
5〜15%のアクリルアミド濃度勾配を使用したSDS−PAGE分析および上記のように精製したタンパク質の泳動の結果は、実施例1(c)での発現から得られたすべての組換えプロテインCが単一バンドとして非還元条件下で各血漿由来タンパク質の分子量に類似する相対的分子量で移動することを示した。ヒトプロテインCは62kDaの見かけの分子量を有し、一方ウシプロテインCは幾分小さかった。以前の報告と一致して、血漿由来ヒトプロテインC、組換え野生型プロテインCおよび変異体プロテインCは、グリコシル化バリアントとしてαおよびβプロテインCに相当する2つのサブフォームを現した(Miletich and Broze,1990)。しかしこれら2つのサブフォームはウシプロテインCでは明らかではなかった。還元条件下で、各組換えプロテインCに由来する重鎖は二本鎖として移動した(Mr 41KDa)。軽鎖(Mr 21KDa)も観察された。これは実施例1(b)からの形質転換細胞が組換え野生型および変異体プロテインC誘導体を類似様式で生産することを示す。
(e)プロテインC変異体の特性決定
(1)前記工程で得られたプロテインC変異体を特性決定するために、変異体および野生型プロテインCを活性化し、そしてそれらの活性を以下の試験法に従い測定した。以下に記載するような活性阻害試験も行った。
(1)(i)プロテインCの活性化およびアミド分解活性アッセイ
トロンビンによるプロテインCの活性化形(活性化プロテインC、APC)への活性化は、わずかな変更を除き以前に記載されたように行った(Solymoss et al.,1988)。簡単に説明すると、プロテインCをα−トロンビン(1:10、重量/重量)と37℃で2時間、5mMのEDTAの存在下でTBS中にてインキューベーションした。インキューベーション後、混合物をスルホプロピル−Sepharoseカラムに通してトロンビンを除去した。SDS−PAGEで還元したプロテインCとAPCとの間の移動度の差異により、プロテインCが完全に活性化されたことを確認した。APCのアミド分解活性は、合成基質S2238(クロモジェニックス社、スウェーデン)の加水分解の決定により測定し、この過程はVmaxキネティックマイクロプレートリーダー(Victor、モレキュラーデバイス(Molecular Devices)社、米国)中、室温にて405nmで監視した。
(1)(ii)活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイ
APC活性の定量的測定は、APT時間の延長に基づいた。Coatest APC耐性キット(クロモジェニックス社、メルンダール、スウェーデン)をAPCのAPTTアッセイに使用した。50μlのヒトまたはウシクエン酸処理正常血漿を50μlのAPTT試薬と37℃で200秒間インキューベーションし、そして次いでAPC(0〜10nMの最終濃度)を含有する100μlのCaCl(12.5mM)を加えた。凝固時間はAmelung−CoagulometerKC10(スウェディッシュ ラベックス(Swedish Labex)社)を使用して測定した。すべての希釈はTBSバッファー中、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で作成した。
(1)(iii)FVIIIa不活性化アッセイ
種々の濃度のヒトまたはウシ組換えAPC(0〜32nM)を、プロテインS(20nM)および第V因子(20nM)とマイクロタイタープレートウェル(Linbro、フローラボラトリーズ(Flow Laboratories))内で、25μlの最終容量の50mM Tris−HCl、150mM NaClバッファー中(10.5mMのCaCl、0.1%BSAを含有する、pH7.4)を用いて混合した。80μlの第VIIIa試薬(ウシ第IXa因子、ヒト第VIIIa因子、CaClおよびリン脂質を含む)を混合物に加えた。室温で5分間インキューベーションした後、ウシ第X因子を加えた。続いて形成された活性化第X因子の量は、5分間のインキューベーション後に50μlの合成基質S−2222を加えることにより測定した。反応は暗中、室温で5分間のインキューベーション後に50μlの20%酢酸を加えることにより停止し、そして405nmの吸収を監視した。第Xa因子の生産は第VIIIa因子の活性に直線的に相関し、これを各対照の活性の割合として表す(Shen and Dahlbaeck,1994)。上に与えたすべての試薬濃度は最終濃度である。
(1)(iv)プロトロンビン時間(PT)アッセイ
APCによる第V因子の不活性化は、PTアッセイに従い測定した。100μlのヒトまたはウシ血漿(1:3希釈)を37℃で120秒間インキューベーションし、その後、凝固は300μlのネオプラスチン(Neoplastin)およびAPCの混合物(ネオプラスチン:APC、2:1、容量/容量)を加えることにより開始した。APCの最終濃度は0〜30nMであった。このアッセイはAmelung−CoagulometerKC10で行った。
(1)(v)ヒト血漿中でのプロテインCおよびプロテインC変異体の不活性化
プロテインCの活性化に由来するAPC(ヒトまたはウシ野生型またはそれらの変異体のいずれか)は、300μlのクエン酸処理ヒト血漿を用いて37℃で70nMに希釈した。サンプル(40μl)を集め、そして0〜60分の範囲の時点で冷TBS中で5倍に希釈した。各希釈したサンプルから、60μlをマイクロタイタープレート上のウェル中の50μlの合成基質S−2238(クロモジェニックス社、スウェーデン)(1mM)に加えた。APCによるS−2238のアミド分解速度は、405nmで0〜10分間、連続的に記録した(Holly and Foster,1994)。
(1)(vi)プロテインCおよびその変異体のα1ATによる不活性化
野生型または突然変異ヒトAPCまたはウシAPC(各々170nM)を、ヒトα1AT(0〜16μM)と80μlのTBSバッファー(0.1%BSAを含む)と37℃で一晩、別個にインキューベーションした(Holly and Foster,1994)。サンプル(20μl)を集め、そしてマイクロタイタープレート上のウェル中の100μlのS−2238(1mM)に加えた。S−2238の加水分解速度は、405nmで室温にて0〜10分間、Vmaxキネティックプレートリーダー中で監視した。
(1)(vii)プロテインCおよびプロテインC変異体のPCIによる不活性化
種々の組換えAPC(40nM)を、88nMのPCIと1mlのTBSバッファー(0.1%BSAを含む)中にて37℃でインキューベーションした。インキューベーション後、サンプル(50μl)を集め、そして0〜120分の時間範囲の時点で氷上に置き、次いで50μlのS−2238(1mM)に加えた。S−2238の加水分解速度は、405nmで室温にて0〜10分間、測定した。
(2)上に開示したように行った活性試験の結果を以下にまとめる。
(2)(i)実施例1(d)からのプロテインCの活性化後、活性化プロテインCについて泳動したSDS−PAGEは、すべての組換え野生型および変異体APCの分子量が対応する血漿由来のAPCに類似したが、各不活性化形よりも小さいことを示した。完全なプロテインCのバンドはAPCサンプル中には観察されず、そしてこれらすべてのタンパク質の純度はゲル上で90%より高かった。すべてのAPCのアミド分解活性は、合成基質S−2238を用いて測定した。野生型ヒトおよびウシAPCについて、初速度は本質的に同じであるが、変異体組換えヒト活性化プロテインC(ヒトAPC−SPと命名)の初速度は野生型APCよりも約5倍高かった。しかし変異体組換えウシ活性化プロテインC(ウシAPC−SPと命名)については、初速度は野生型APCのわずか約1/10であった。これらの結果を図1に示す。
(2)(ii)APTTアッセイでは、組換え野生型および変異体APCの抗凝固活性をヒト血漿、ウシプロテインSを補充したヒト血漿およびウシ血漿中で分析した。図2Aから明らかであるように、ヒト血漿中でヒトAPC−SPは野生型ヒトAPCよりも高い抗凝固活性を現すが、野生型APCもウシAPC−SPもいかなる実質的な抗凝固活性を現さなかった。一方、これらすべてのAPCはウシ血漿中およびウシプロテインSを補充したヒト血漿中で抗凝固機能を現した。しかしウシAPCおよびヒトAPC−SPはヒトAPCおよびウシAPC−SPよりも高い抗凝固活性を示した(図2B、2C)。
(2)(iii)ヒトプロテインSおよび第V因子の存在下で行った第VIIIa因子不活性化アッセイにおいて、第VIIIa因子の活性は上の(2)(i)章からのすべてのAPCにより不活性化されたが、高濃度が必要であった。低濃度で、ウシ野生型APCもウシAPC−SPも第VIIIa因子を不活性化できなかった。ヒトAPC−SPは野生型ヒトAPCよりも強力な抗凝固活性を現した(図3A、3B)。野生型ヒトおよびウシAPCならびにそれらの変異体は、ウシプロテインSおよびウシ第V因子の存在下で第VIIIa因子活性を阻害することができたが、野生型ウシAPCおよびウシAPC−SPは両方とも野生型ヒトAPCおよびヒトAPC−SPよりも効率的に働いた(図3C)。
(2)(iv)(1)(iv)のPTアッセイに従い、野生型APCおよびその変異体による第Va因子の不活性化を、ヒト血漿およびウシ血漿中で試験した。両野生型ヒトAPCおよびヒトAPC−SPともこのPTアッセイにおいて凝固時間を本質的に上げた。さらにヒトAPC−SPは野生型ヒトAPCよりも活性であった。野生型ウシAPCもウシAPC−SPもヒト血漿にいかなる効果も及ぼさなかった(図4A)。図4Bから明らかであるように、野生型ヒトAPCおよびヒトAPC−SPはウシ血漿中で凝固時間を効率的に延長したが、野生型ウシAPCおよびその変異体は、ウシ血漿中で弱い抗凝固活性を現しただけであった(図4B)。
(2)(v)−(vii)APC不活性化試験の結果
上記APC不活性化試験(1)(v)は、野生型および変異体APCのアミド分解活性が0〜60分で60〜90%下降したことを示した(図5)。すなわちこれらAPCはPCI、α1AT、α−マクログロブリン等のような数種のセリンプロテアーゼインヒビターにより不活性化されるはずである。
実際に両野生型ヒトAPCおよびヒトAPC−SPとも、試験(1)(vi)で高濃度のα1ATにより実質的に阻害された。しかし野生型ウシAPCおよびウシAPC−SPはこの阻害に対してほぼ完全に耐性であった。
(1)(vii)に従い得られた試験結果は、ウシ野生型APCがヒトPCIにより効率的に分解されるが、ウシAPC−SPはヒトPCIによりさほど効率的に阻害されなかったことを示した。一方、ヒトAPC−SPのアミド分解活性は、野生型ヒトAPCよりもはるかに早かったが、その速度は野生型ウシAPCの速度に類似した。
プロテインCのGla−ドメイン変異体の調製
(a)位置指定突然変異誘発法
Gla−ドメインに修飾を含む種々のプロテインCバリアントは、以前にShen et al(J.Biol.Chem 1998,273:31086−31091およびBiochemistry 1997,36 16025−16031)により本質的に記載されたように、組換え技術を用いて作成した。
Johan Stenflo博士(スウェーデン、マルメの大学病院、臨床化学部)の好意により贈られた完全長のヒトプロテインCのcDNAクローンを、制限酵素HindIIIおよびXbaIで消化し、そして完全なPCコード領域、すなわち完全長のプロテインCのcDNAを含んでなる生成した制限断片を、HindIIIおよびXbaIで消化した発現ベクターpRc/CMVにクローン化した。
野生型ヒトプロテインCのコード配列を含む生成した発現ベクターを、プロテインCのGla−モジュールの位置指定突然変異誘発法に使用し、ここで標的DNAを増幅するためのPCR手順を以前に記載されたように行った(Shen et al.,同上)。
突然変異誘発プライマーをこの手順に使用するために設計して、10、11、12、23、32、33および44位での野生型アミノ酸残基の種々の別のアミノ酸に交換した。より具体的には10位でヒスチジン(H)をグルタミン(Q)に置き換え;11位でセリン(S)をグリシン(G)に置き換え;12位でセリン(S)をアスパラギン(N)に置き換え;23位でアスパラギン酸(D)をセリン(S)に置き換え;32位でグルタミン(Q)をグルタミン酸(E)に置き換え、これは成熟タンパク質でGla(ガンマ−カルボキシグルタミン酸に転換される):33位でアスパラギン(N)をアスパラギン酸(D)に置き換え;そして最後に44位でヒスチジン(H)をチロシン(Y)に置き換えた。これらのプライマーは以下のバリアント(または変異体)を生産するために使用した:
変異体1)はQGNと命名した(10、11、12位を突然変異させた)。
変異体2)はSEDと命名した(23、32および33位を突然変異させた)。
変異体3)はSEDYと命名した(23、32、33および44位を突然変異させた)。
変異体4)はQGNSEDYと命名し、これは変異体1)と3)の組み合わせである(QGNおよびSEDY)。
変異体5)はGNEDと命名し、そして変異体6)はQGEDと命名した(両方ともShen et alにより以前に記載された)を比較として使用した。
QGN変異体を作成するために、2つの以下のオリゴヌクレオチドを合成し、そして第1のPCR手順に使用した、すなわちプライマーAはヌクレオチド配列:5’−AAA TTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG AGA CCC AAG CTT−3’(配列番号34)(HindIIIクローニング部位を含むベクターpRc/CMV中のヌクレオチド860〜895のセンスに対応)を有し、そしてプライマーBはヌクレオチド配列:GCA CTC CCG CTC CAG GTT GCC TTG ACG GAG CTC CTC CAG GAA(配列番号47)(対応するヌクレオチドを下線により示す突然変異した10〜12位を含むアミノ酸4〜17をコードするDNA範囲の第2鎖に対応する)。これらプライマーAおよびBはPCR反応に使用し、ここでwtヒトプロテインCのcDNAを鋳型として使用した。PCR産物は、変異体アミノ酸残基を含む適切な約200bp長の断片を生じるHindIIIおよびBsrBIで開裂した。この断片を2つの他のDNA片に連結し、その1つはwtヒトプロテインCのcDNAの大きな部分をコードするBsrBI−XbaI断片であり、そしてもう1つはHindIII−XbaI開裂pRc/CMVベクターであった。連結したcDNAは制限酵素開裂(HindIII/BsrBI)で検査し、そしてシークエンシングによりQGN突然変異を確認した。
幾つかの工程を作ってSEDYを作成した。第1はすでにE32D33突然変異を有するcDNAにS23突然変異を作成することであった(Shen et al J.Biol.Chem 1998,273:31086−31091)。S23突然変異には1つはプライマーCと命名し、そしてもう1つはプライマーDと命名した2つのプライマーを作成した。プライマーCはヌクレオチド配列:ATA GAG GAG ATG TGT AGC TTC GAG GAG GCC AAG(配列番号48)(突然変異には下線を付す)を有し;そしてプライマーDはヌクレオチド配列:CTT GGC CTC CTC GAA GCT ACA GAT CTC CTC TAT(配列番号49)(突然変異には下線を付す)を有した。変異体cDNAを作成するために、2つのPCR反応を行い、ここで変異体cDNA EDを鋳型として使用し、そしてプライマーAおよびCは第1反応で使用する一方、プライマーDおよびEは第2反応で使用した。プライマーEはヌクレオチド配列:5’−GCA TTT AGG TGA CAC TAT AGA ATA GGG CCC TCT AGA−3’(配列番号37)(XbaIクローニング部位を含むベクターpRc/CMV中のヌクレオチド984〜1019に対するアンチセンス)を有した。プライマーAおよびCが関与した第1PCR反応は、プロテインCのcDNAの5’部分を増幅し(アミノ酸28までをコードする)、一方プライマーDおよびEが関与した第2PCR反応は、アミノ酸18からプロテインCの終わりまでをコードするcDNAの3’部分を生成した。この反応で生産されたこれら2つの産物は、次いでプライマーAおよびEを使用するさらなるPCR反応で合わされた。この手順に由来する最終産物は、23、32および33位に突然変異を持つ全プロテインCをコードするcDNAであった。次いでこのPCR産物をHindIIIおよびSalIで開裂し、これは360bpの5’断片を与え、これを精製し、そしてwtプロテインCのSalI−XbaI断片とHindIII−XbaIで開裂したpRc/CMVベクター中で連結した。このベクターはこのように完全長変異体SEDのcDNAを含んだ。このcDNAをPCR反応の鋳型として使用して、変異体SEDY(すなわち44位がヒスチジンからチロシン(Y)に突然変異した)を作成した。この反応で、プライマーAは44位が突然変異するように設計し、そして以下のヌクレオチド配列:CTG GTC ACC GTC GAC GTA CTT GGA CCA GAA GGC CAG(配列番号50)(アミノ酸残基39〜49をコードする第2鎖に対応する−下線を付したコドンは突然変異スポットである)を有するプライマーFと合わせた。このPCR産物をHindIIIおよびSalIで開裂し、そして約360bp長の断片をプロテインCのcDNAの残りの部分、すなわちSalI−XbaI断片およびHindIII−XbaIで開裂したpRc/CMVに連結した。
次いで変異体QGNSEDYをコードする完全に突然変異したプロテインCのcDNAは、QGNおよびSEDY変異体のcDNAを使用して作成した。この組み合わせは制限酵素消化および適切な断片の連結を使用して作成した。すなわちQGN変異体のcDNAはHindIIIおよびBsrBIで開裂し、そして約200bp長の5’断片を単離し、そしてSEDYのcDNAに由来するBsrBI−XbaI断片(約1000bp長)と一緒に使用した。2つの断片をHindIII−XbaIで開裂したpRc/CVMと連結して、QGNSEDY(本明細書中では“ALL”とも呼ぶ)をコードする完全長の変異体プロテインCのcDNAを生成した。最終産物はシークエンシングで試験し、そして正しい突然変異を含むことが分かった。
記録のために、E32D33変異体はプライマーG:5’−CAG TGT GTC ATC CAC ATC TTC GAA AAT TTC CTT GGC−3’(配列番号51)(アミノ酸27〜38に関するアンチセンス、E32D33の突然変異に下線を付した)を使用して、類似様式で作成した(この変異体はShen et al J.Biol.Chem 1998,273:31086−31091に記載されている)。
DNAシークエンシングですべての突然変異を確認した。ヒト293細胞での細胞培養、発現、精製およびプロテインC分子の特性決定は、以前に記載したように(Shen,L et al J.Biol.Chem 1998;273:31086−31091)に記載されているように行った。
簡単に説明すると、望ましい突然変異を含む生成したヒトプロテインCのcDNAを、SacIIおよびApaIで消化し、次いでSacIIおよびApaI消化からの断片(ヌクレオチド728〜1311)を、完全なヒトプロテインC断片(HindIII−SacII、5’末端−ヌクレオチド728;およびApaI−XbaI、ヌクレオチド1311−3’末端)を含むベクターpUC18にクローン化して、所望する突然変異を含んでなる、すなわちヒト野生型配列の代わりに突然変異した配列を含んでなるヒトプロテインC変異体をコードするヒトプロテインC完全長cDNAを生成した。
次いで上記の各突然変異ヒトプロテインCのcDNAをHindIIIおよびXbaIで消化し、そして適切な制限断片をすでに同じ制限酵素で消化したベクターpRc/CMVにクローン化した。得られたベクターは真核細胞中での突然変異ヒトプロテインCの発現に使用した。
適切な宿主細胞のトランスフェクション前に、すべての突然変異はSanger et al.,同上のジデオキシチェーンターミネーション法によるDNAシークエンシングにより確認した。
(b)バリアントまたは野生型プロテインCを生産する安定な形質転換体の生産
バリアントまたは野生型プロテインCを生産する安定な形質転換体を生産するために、アデノウイルスでトランスフェクトしたヒト腎臓細胞系293を、10%のウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンおよび10μg/mlのビタミンKを含有するDMEM培地中で成長させ、そして工程(a)からの野生型または突然変異したプロテインCのcDNAを含んでなる発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションは以前に記載された(Felgner et al.,1987)ようにリポフェクチン法に従い行った。簡単に説明すると、2mMのL−グルタミンを含有するDMEMで100μlに希釈した2μgのベクターDNAを、同じバッファーで100μlに希釈した10μlリポフェクチン(1μg/μl)と混合した。混合物を室温に10〜15分間維持し、そして1.8mlに培地で希釈し、そして次いで同じ培地で2回洗浄した細胞(5cmのペトリ皿中、25〜50%の集密度)に加えた。
(c)バリアントまたは野生型プロテインCの発現。
工程(b)のトランスフェクトした細胞を16時間インキューベーションし、その後、培地を10%のウシ血清を含有する完全培地に交換し、そして細胞をさらに48〜72時間インキューベーションした。次いで細胞をトリプシン処理し、そして選択培地(10%血清、400μg/mlのG418、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンおよび10μg/mlのビタミンKを含んでなるDMEM)を含む10cmの皿に播種した(Grinnell,et al.1990)。G418耐性コロニーは3〜5週間の選択後に得た。各DNAトランスフェクション手順から、24個のコロニーを選択し、そしてコンフルエンスになるまで成長させた。すべてのコロニーは、モノクローナル抗体HPC(ヒトプロテインCについて特異的)を使用したドット−ブロットアッセイによりスクリーニングしてプロテインCの発現を調査した。高発現細胞コロニーを選択し、そして選択培地中でコンフルエンスになるまで成長させた。その後、これらの細胞をならし培地(血清を欠く選択培地)中で成長させて、プロテインCまたはそのバリアントの発現を開始させ、この培地は選択培地のように72時間毎に交換した。適当な時間後、各発現産物を含有するならし培地は該産物を以下の工程(d)で精製するために集めた。
(d)組換え野生型および突然変異タンパク質の精製
ヒト野生型または変異体プロテインCを生産する形質転換体から、(c)章で得た培養基は、「プソイド−アフィニティー(pseudo−affinity)」と命名されたクロマトグラフィー法を含んでなり、そして以前に記載された簡便かつ好都合の精製法(Yan et al.,Biotechnology 1990,Vol.8,665−61)にかけた。
上記で得た精製したタンパク質を、YM10フィルター(アミコン:Amicon)で濃縮し、TBSバッファー(50mM Tris−HClおよび150mM NaCl、pH7.4)に対して12時間透析し、そしてそれらを使用するまで−80℃で保存した。
上記野生型および変異体プロテインCの純度および均一性を、SDS−PAGEにより確立した。この電気泳動手順はポリアクリルアミド(10〜15%)のスラブ−ゲル電気泳動として、0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の存在下、還元および非還元条件下で泳動し、ここで該タンパク質は銀染色により視覚化された(Morrissey,1981)。
プロテインCのGla−ドメイン変異体の特性決定
前記工程で得られたプロテインC変異体を特性決定するために、変異体および野生型プロテインCを活性化し、そしてそれらの抗凝固活性を、血漿に基づくアッセイおよび精製した成分を用いた装備を含む種々の実験系で試験した。
2つの血漿系、1つは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)系およびもう1つはトロンボプラスチン時間(TP)系を試験した。APTTおよびTP系の両方において、濃度を増加させてwtまたは変異体APCの抗凝固活性を試験した。APTT系では、APCの抗凝固活性はFVIIIaおよびFVaの両方の分解に依存する一方、TP系は主にFVaの分解に感受性である。しかし希釈したTP系はある程度、FVIIIaの分解にも感受性である。
(a)APTT反応により監視したAPCバリアントによる凝固阻害
(i)方法:血漿(50μl)を50μlのAPTT試薬(オルガノン テクニカ(Organon Technica)からのAPTT Platelin LS)と混合し、そして37℃で200秒間インキューベーションした。凝固は50μlのAPC(図6に与える最終濃度)および50μlの25mMのCaClとの混合物により開始した。凝固時間はAmelung coagulometerで測定した。
(ii)結果:このAPTTに基づくアッセイで、wtAPCの活性は変異体1)、3)および4)、すなわちQGN、SEDYおよびQGNSEDY(ALL)の活性、ならびにShen et al(J.Biol.Chem 1998,273:31086−31091)により以前に記載された2つの変異体、すなわちそれぞれGNEDおよびQGEDと命名された変異体5)および6)の活性と比較した。
図6に関して、ALLの抗凝固活性がwtAPCの抗凝固活性に比べてかなり強化されることが明らかである。使用した最高濃度で、ALLは1000秒を越える凝固時間を生じるが、wtAPCはわずか約200秒の凝固時間を与えただけであった。APCを加えない基本の標準凝固時間は、約30〜45秒である。一方、2つの以前に記載された変異体QGEDおよびGNEDは、大変異なる結果を与えた。GNEDはwtAPCよりもかなり活性である一方、QGEDは実際にはwtAPCよりも活性が低かった。バリアントQGNおよびSEDYはGNEDと同程度に活性であったが、ALLよりは活性が低かった。
このAPTTアッセイで、試薬は標準的な市販の試薬であり、これはShen et al(J.Biol.Chem 1998,273:31086−31091)による実験で使用された試薬とは対照的である。この実験では、希釈しないとAPCバリアントがwtAPCよりもより活性な抗凝固物質とならないので、希釈したAPTT試薬を使用した。Shen et alの参考文献の検討では、これは試薬中のリン脂質のレベルによると説明された。高レベルのリン脂質を使用すると、Shen et alによる実験で使用したAPCバリアントの上昇した活性は容易に認識されなかった。希釈した試薬を使用した時のみ、著者はAPCバリアントの抗凝固活性における強い上昇を証明することができた。
本バリアントQGNSEDY(ALL)は、標準的レベルのリン脂質でもwtAPCよりも明らかに一層活性であるので、独特であると思われる。
(b)APTTアッセイにおけるヒトプロテインSの影響
(i)方法:プロテインSの濃度を増加させながらプロテインS欠損血漿に加えて、図7に示す最終濃度を得た。血漿アリコート(50μl)をAPTT試薬と混合し、次いで37℃で200秒間インキューベーションした。その後、wtまたはALL変異体(QGNSEDY)のいずれかのAPCを50μl(20nM濃度)の容量で加え、次いで50μlの25mMのCaClを加えることにより凝固を直ちに開始した。結果はプロテインS欠損血漿中のプロテインSの濃度に対して凝固時間をプロットした図7に示す。
これらの実験は本質的に図6を参照にして上記のように行い、プロテインS欠損血漿を正常血漿の代わりに使用した。このプロテインS欠損は血漿ヒト起源であり、そしてプロテインSの消耗はヒトプロテインSに対する高度に効率的なモノクローナル抗体(HPS54−Dahlbeack et al(J.Biol.Chem 1990 265:8127−35))を使用した免疫−吸着の結果であった。
(ii)結果:図7に関連して、好適なGla−ドメインバリアント、すなわちQGNSEDYバリアントは、プロテインS欠乏血漿を使用した時でもwtAPCよりかなり活性であったことは明らかである。特に興味深い考察は、外因性プロテインSの添加がQGNSEDYならびにwtAPCの抗凝固活性を強化したことである。プロテインSの不存在下では、変異体ALLは約160秒の凝固時間を生じ、そしてこの凝固時間は試験系にプロテインSを加えることにより350秒まで延長された。wtAPCで得られた対応する値は、プロテインSの不存在下で約100秒の基本凝固時間、そしてこの試験で使用した最高のプロテインS濃度の存在下で150秒の延長された凝固時間であった。このようにALLはプロテインSの存在および不存在下の両方で本質的にwtAPCよりも活性であり、そしてALLはプロテインSの存在によりさらに強化されることは明らかである。これは、プロテインSにより刺激されなかったEsmon and Smirnovにより彼らのAPCバリアントで得られた結果とは対照的である(米国特許第98/20118号明細書)。明らかに本バリアントQGNSEDYはプロテインSにより刺激されので、Esmon and Smirnovにより開示されたバリアントよりも優れている。
(c)TP系により監視したAPCバリアントによる凝固阻害
(i)方法:正常血漿(50μl)を濃度を増加させた種々のAPCバリアント(50μlアリコート)と混合し、その後、凝固は組織因子の供給元として1/50に希釈したトロンボプラスチンの添加により開始した。凝固を開始するために、希釈したトロンボプラスチンは25mMのCaClも含んだ。
(ii)結果:図8から明らかであるように、このアッセイで得られた結果はAPTT系で得られた結果に類似した。すなわちバリアントQGNSEDYはwtAPCよりもかなり活性であった。より具体的には使用した最高濃度で、バリアントQGNSEDY(図8でALLと命名する)は、600秒に近い凝固時間を生じた。2番目に高いバリアントはGNEDであり、これは最高濃度で約180秒の凝固時間を生じた。対照的に、wtAPCは約70秒の凝固時間を生じただけであった。外因性のAPCを加えずに得られる基本凝固時間は、約40秒であった。
明らかにこの実験結果は、たとえwtAPCの濃度を上げてもwtAPCがバリアントQGNSEDYの抗凝固活性ほど高い抗凝固活性を現さないので、wtAPCと比べた時、バリアントQGNSEDYは独自の特性を有することを示唆している。これはバリアントQGNSEDYのGla−ドメインを作成するために行った突然変異誘発法により、wtAPCに比べて新規かつ独自な機能を現す分子が作成されたことを示唆するのかもしれない。1つのそのような機能はFXaにより提供されるFVa中のArg506部位の保護に関する可能性がある。FXaはFVaにArg506に近い部位で結合し、そしてこれによりArg506部位の保護を生じることが知られている。恐らくQGNSEDYの独自かつ高リン−脂質結合能は、FXaにより提供される保護を排除する。凝固アッセイ中、特定量のFXaが形成され、そしてこれはwtAPCがFVa中のArg506部位を開裂する能力を制限するかもしれない。QGNSEDYバリアントのリン脂質膜だけでなくFVa分子に対する高い親和性により、FXaを置き換えることができる可能性はある。さらにこの試験で使用したAPCの最高濃度で、QGNSEDYバリアントはwtAPCよりもかなり長く凝固時間を延長することができる。これはAPCバリアントQGNSEDYが独自のインビボ特性を有し、すでに進行している凝固反応を阻害することができるかもしれないことを示唆している。
(d)PTアッセイにおけるプロテインSの影響
実施例3(b)(i)に記載したもののようなプロテインS欠損血漿を用いた実験も行い、実施例3(c)(i)のトロンボプラスチン系を使用した。これにより得られた結果は、実施例3(b)(ii)のAPTT系に記載した結果に類似した。簡単に説明すると、QGNSEDYバリアントはプロテインSの不存在下で活性であるが、さらにその活性はプロテインSにより強化される。
APCによるFVaの不活性化
この実施例ではAPCバリアントQGNSEDYの強化された活性が、FVa活性の損失が経時的に示されるFVaの分解をより具体的に特徴付けるように計画された系で確立された。
(i)方法:血漿FVa(0.76nM)(血漿を1/25に希釈し、そしてそれに含まれるFVをトロンビン添加により活性化する−これはFVaの供給源として使用した)をAPC(0.39nM)と、25μMのリン脂質小胞(10%のホスファチジルセリンおよび90%のホスファチジルコリンの混合物)の存在下でインキューベーションした。バッファーは25mM Hepes、0.15M NaCl、5mM CaCl、pH7.5、および5mg/ml BSAであり、そして温度は37℃であった。
種々の時点で、アリコートを取り出し、そして残るFVa活性をFVaアッセイにより決定した。このアッセイはFVaが、FXaが媒介するプロトロンビン活性化を強化する能力に基づいた。このアッセイはウシFXa(5nMの最終濃度)、50μMリン脂質小胞(10%のホスファチジルセリンおよび90%のホスファチジルコリンの混合物)および0.5μMのウシプロトロンビンを含んだ。トロンビンの生成は発色基質S2238(クロモジェニックス社から入手可能)を使用して測定した。
(ii)結果:FVaとwtAPCとのインキューベーション後のFVa活性の損失は、主に2つの開裂反応、すなわちArg506およびArg306での開裂反応の結果である。キネティクス的に優先される反応はArg506で起こる反応であり、これはインキューベーションの最初の5分間に観察されるFVa活性の初期の迅速な損失をもたらす。Arg506開裂はNicolaes et al.により示されたように(J.Biol.Chem 1995 270:21158−66)、Arg506で開裂されたFVaはFXaのコファクターとして未だ部分的に活性であり、その活性の約40%は維持されているので、FVaの部分阻害をもたらすだけである。一方、Arg306でのよりゆっくりとした開裂は、FVa活性の完全な損失をもたらす。このArg306開裂はインキューベーションの5分から25分の間に観察されるFVa活性のゆっくりとした減少に反映されるようにゆっくりと進行する。図9から明らかであるように、バリアントQGNおよびSEDYはwtAPCよりもわずかに良いだけだが、バリアントQGNSEDYの存在はさらにかなり有力である。バリアントQGNSEDYの存在は最初の5分間に約20%のFVa活性までFV活性の大変迅速な低下をもたらすだけでなく、最終的にはFVaをほぼ完全に阻害する。これらの結果は本バリアントQGNSEDYがwtAPCで見られるよりも迅速にArg506でFVaを開裂するだけでなく、wtAPCに反して、Arg306でもFVaを開裂することを示唆している。
バリアントQGNSEDYおよびwtAPCがFVaを不活性化する能力を、以前に特性決定したバリアントGNEDの能力と比較する、上記に記載したものと同様な実験(結果は示さず)を行った(図6および図8を参照にされたい)。GNEDバリアントは他の2つのAPCについて得られた曲線のほとんど中間に位置する曲線を与えることが分かり、すなわちGNEDはwtAPCよりも有力であるが、本バリアントQGNSEDYよりも効率が低かった。これらの実験はすべて、外因性プロテインSを加えずに行った。得られた結果は実施例3(a)および(c)で行い、そしてそれぞれ図6および8で具体的に説明する実験結果と一致し、そして以前に開示したGNEDバリアントが中間の活性を有することも示す。
APCによるFVaの不活性化
この実施例ではAPC濃度を変動させ、そして残るFVa活性を実施例4(i)に記載したプロトロンビナーゼアッセイを使用してインキューベーションの10分後に測定した。
(i)方法:希釈した正常混合血漿(0.76nM)から得たFVaを、濃度を上昇させたAPC(図10に与える最終濃度)、および25μMのリン脂質小胞(ホスファチジルセリン/ホスファチジルコリン、10/90、モル/モル)と、25mMのHepes(pH7.5)、150mMのNaCl、5mMのCaClおよび5mg/mlのBSA中にて37℃でインキューベーションした。FVa活性は実施例4(i)に記載したプロトロンビナーゼアッセイで測定した。
(ii)結果:図10から、これらの実験が変異体ALL、すなわちバリアントQGNSEDYの優れた効力を明らかに証明していることは明白である。大変低濃度のAPCでも、FVa活性の有力な阻害がもたらされた。さらに図10の曲線から、変異体ALLは約40%の活性を現すFVaの中間分解産物を生じるArg506部位で開裂するだけでなく、FVa活性のほぼ完全な損失をもたらすArg306部位でも開裂することは明らかである。
APCによる正常およびQ506変異体FVaの不活性化
この実施例では、正常血漿FVaをAPC耐性血漿(FV:Q506−FV Leidenについてホモ接合性の個体から得た)に由来するFVaに置き換えた。この実験は外因性プロテインSの存在および不存在下で行った。
(i)方法:正常プール血漿から、またはホモ接合性APC耐性(FV:Q506またはFV Leiden)の個体のいずれかから得た血漿FVaを、0.4nMのAPCおよび25μMのリン脂質小胞と、精製することを除き実施例(4)(i)に記載したようにインキューベーションした。ヒトプロテインS(100nM)を加えてArg306での開裂を確実とした。図11に示す時点で、残るFVa活性を測定した。
(ii)結果:wtAPCの添加はArg306での開裂に相当するFVa活性にゆっくりとした減少をもたらし、図11の曲線に相当するその傾斜は、図9で具体的に説明したwtAPCの曲線の第2部分に類似した。対照的に、本バリアントQGNSEDY(またはALL)は、APCバリアントによるArg306でのFVaの強化された開裂と一致するFVa活性に、より迅速な低下をもたらした。プロテインSの添加はwtAPCおよびQGNSEDYを両方の効果を強化したが、それでも2つのタンパク質間の差異が残った。このようにプロテインSはwtAPCを刺激するだけでなく、本APCバリアントも刺激し、後者はリン脂質に対してかなり強化された結合親和性を現す。これはプロテインSがAPCのリン脂質に関する結合親和性を強化することにより機能することを示唆したので興味深い。これがプロテインSが働く唯一のメカニズムとなるならば、プロテインSの添加はwtAPCとQGNSEDYバリアントとの間の差異を減らすと期待される。
APCの膜結合親和性
wtおよびバリアントプロテインCがリン脂質膜に結合する能力を調査するために、表面プラズマ共鳴法(surface plasma resonance technique)を使用した。この技法の市販のバリアントは、BIAcoreから入手可能である。この実施例ではBIAcore2000を使用した。
(i)方法:リン脂質小胞はBIAcoreからL1センサーチップの表面上で捕捉した。これらのチップは共有的に結合した疎水性の脂肪族基を持つデキストランヒドロゲルからなる。3つの異なる種類の小胞は押出し法を使用して(Avestin Lipofact基本押出し装置を使用して)調製され、3種類の小胞は異なるリン脂質組成、すなわち1)100%のホスファチジルコリン(図12)、2)80%のホスファチジルコリンおよび20%のホスファチジルセリン(図13)および3)20%のホスファチジルセリン、20%のホスファチジルエタノールアミンおよび60%のホスファチジルコリン(図14)を有した。4つのプロテインC変異体、すなわちHPC ALL(すなわちQGNSEDY)、SEDY、QGNおよびSED、およびwtHPCを試験した。これらの実験ではプロテインC濃度は0.5μMであり、そして使用したバッファーは5mMのCaClを含む10mM Hepes、0.15M NaCl、pH7.5であった。
ホスファチジルコリンを含有する膜は、負に荷電したホスファチジルセリンが膜の一部でなければビタミンK依存性タンパク質に結合しない。ホスファチジルエタノールアミンは、膜中のこの種のリン脂質の存在がプロテインCの結合を強化し、そしてFVaの分解速度を強化することが示されたので特に興味深い。このように本実施例では、プロテインCバリアントがリン脂質の型に対して変化した特異性を示すかどうかを調査する。種々の組換えプロテインCバリアントをBIAcore機に注入し、この機械は3種のリン脂質膜により覆われた異なる表面積を含むチップを装備していた。
(ii)結果:プロテインCの負に荷電したリン脂質膜に対するKdは約15μMであるので、0.5μMのプロテインC濃度(この濃度ではwtプロテインCが任意の特に強力な結合を与えると予想されないので)を使用した。このようにこれらの実験では、プロテインCバリアントの結合能のいかなる上昇も見ることが可能なはずである。図12から明らかであるように、あるとしても大変少ないプロテインCバリアントの100%ホスファチジルコリンを含有する膜への結合があった。達成された最大の応答単位は、わずか約160であった。図13から、明らかに20%のホスファチジルセリンを含む膜上で、Y−軸上にプロットされる応答で鋭い上昇により反映されるようなプロテインCの迅速な会合を示す特にバリアントQGNSEDY(またはALL)によるかなり良い結合が存在した。他のバリアント、すなわちQGN、SEDYおよびSEDはwtプロテインCと同様に挙動した。図14に示すこの結果は、QGNSEDY(またはALL)バリアントとwtプロテインCとの間の最も顕著な差異が、ホスファチジルエタノールアミンを含有する膜を使用した時に観察されたことを具体的に説明している。QGNSEDYバリアントは膜への結合において鋭い上昇を示し、そして大変急速に約700単位の応答に達した。続く200秒間、約850応答単位まで上がった。解離に続いてプロテインC注入の中止、そして結合したタンパク質が比較的迅速に膜から放出された。結合はEDTAが結合を完全に逆行するので、カルシウム依存的であった。この挙動はビタミンK依存性タンパク質から予想される。
実施例8〜10
上記で調製したプロテインCのSP−変異体およびGla−ドメイン変異体を、都合よく前駆体として使用して、プロテインCのGla−およびSPドメインの両方に突然変異を含むプロテインCの組み合わせバリアントを作成する。これは標準的なDNA分子生物学法を使用してcDNAレベルでなされる。
好ましくは制限酵素開裂、断片の単離および断片の連結を使用する。
組換えバリアントの調製
個々のプロテインCバリアントに関するcDNAはPcDNA3ベクター中に存在し、そしてHindIII−XbaI部位を使用してベクターにクローン化する。プロテインCバリアントに関する全cDNAはそれ故に、制限酵素HindIIIおよびXbaIでの消化によりベクターから放出され得る。このcDNAはさらに特異的酵素により断片化される。組み合わせバリアントの作成に特に有用な酵素はSalIであり、これはプロテインCのcDNAを2つの断片、cDNAの5’部分に対応する小さい断片(コード配列の最初の259ヌクレオチド)、すなわちGla−ドメインを含むタンパク質のN−末端をコードする部分、およびプロテインCの残りをコードするより大きな3’断片に開裂する。SalIの開裂部位は44位のコドンのちょうど3’位に位置し、したがってより小さい断片が完全長のGla−ドメインをコードする。Gla−ドメインおよびSPドメインの両方に突然変異を有する組み合わせバリアントは、Gla−ドメインが変異したプロテインCからのより小さい5’断片を、SPドメインに突然変異を有するプロテインCバリアントのより大きな3’断片とを組み合わせることにより作成することができる。2つのプロテインCのcDNA断片をHindIII−XbaI開裂PcDNA3ベクターと連結反応で組み合わせ、そして連結したDNAは細菌を形質転換させるために使用する。抗生物質耐性クローンを標準技術で選択し、そしてプラスミドDNAを単離し、そして配列をcDNA中の突然変異の存在について確認する。次いでDNAはHEK293細胞をトランスフェクトするために使用し、そして組換えプロテインCが発現され、精製され、そして他のプロテインCバリアントについて記載したように特性決定される。
この方法に従い、Gla−ドメイン突然変異QGNSEDYおよび配列番号7の修飾された配列からなるSP−ドメイン突然変異を含む「スーパーPC/APC」を調製する。
組換えプロテインCはトロンビンにより活性化され、そしてAPTT反応で試験される。スーパー−APCは野生型APCによりも顕著な凝固時間の延長をもたらした(図15)。この実験では、上昇した濃度のwt−またはスーパー−APCをAPTT凝固時間反応に加え、そして凝固時間を監視する。wt−プロテインCは期待どおり凝固時間を延長し、そして試験した最高濃度(20nM)で、約100秒の凝固時間を生じ、これはAPCの不存在下で観察される時間のおよそ倍である。スーパーAPCはさらにかなり活性であり、そしてすでに5nMのAPC濃度で凝固時間は同様のレベルまで延長される。より高いスーパーAPC濃度で、凝固時間はさらに延長され、そして20nMのスーパー−APCで、血漿は200秒の観察時間内に凝固しない。
APTT試験は以下の手順に従いヒト血漿中で行った。
ヒトのクエン酸処理血漿(50μl)を50μlのAPTT試薬と混合した。37℃で180秒のインキューベーション後、50μlのAPCを図15に示した濃度で加えた。APCは50mM Tris−HCl、0.15M NaClバッファー、pH7.5中に含まれ、また30mM CaClおよび0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)も含んだ。図15では、点は2回の測定の平均を表す。
この実施例では、GNEDと呼ばれるGlaバリアント中の突然変異をSP突然変異と組み合わせることによる効果、ここで修飾された領域WGYRDETKRNR(配列番号7)に、包括的な300から314位からの野生型配列を置き換える。GNED変異体は突然変異G11、N12、E32およびD33をGlaドメインに持つ(このバリアントはShen et al JBC 1998に記載されている)。この組み合わせは、負に荷電したリン脂質膜に対して強化された親和性、および例えば国際公開第99/20767号パンフレットに記載されているような希釈されたAPTTおよび希釈された組織因子依存的アッセイにおいて、低濃度のリン脂質を含む凝固アッセイで強化された抗凝固活性が示されたバリアントの活性化形を有するプロテインCバリアントを生じた。しかし通常のAPTT反応では、GNED−APCはwt−APCほどに活性であるか、またはわずかに良いだけである。実施例1では、SPバリアントが強化された抗凝固活性(少なくとも100%の増加)を生じることが示されたが、幾つかの凝固アッセイ条件下では(特定のAPTT試薬)、SP変異体の強化された抗凝固活性を明らかに示すことは難しかった。この意図は今、GNEDおよびSP突然変異を1つの新たなプロテインCバリアントに組み合わせることであった。上で検討したように、仮定はGla突然変異の強化されたリン脂質結合能力が、より効率的なSP変異体と組み合わされた時、有意に強化された抗凝固能力を持つプロテインCハイブリッドを生じるだろうということであった。そのようなバリアントは血栓塞栓障害、敗血症等のような強化された凝固活性の状況において治療薬として有用となり得る。この新規バリアントはGNED−SPと表し、そしてGNEDバリアントに由来するGlaドメインをコードするcDNAを、SP変異体のセリンプロテアーゼドメインをコードするcDNAと組み合わせることにより作成された。これは方法の章で概説した標準的なDNA技術で行った。次いで変異体cDNAは293HEK細胞をトランスフェクトするために使用し、そして高発現コロニーを単離し、そして拡大し、そして組換えタンパク質を含有するならし培地を集めた。組換えタンパク質を精製し、そして特性決定し、そしてトロンビンにより活性化して、前の章に記載したAPCを生成した。
APTTに基づくアッセイは以下のように行った:正常な個体に由来する50μlのヒト血漿を、50μlのAPTT試薬(2部のオルガノンのPlatelinおよび0.1%BSAを含む1部のTBSバッファー)(TBSは50mMのTris−HCl、0.15MのNaCl、pH7.5を表す)と混合した。37℃で180秒間インキューベーションした後、上昇する濃度のAPCを含む50μlの25mM CaClを加え、そして凝固時間を記録した。結果を図16に示す。この実験で、SPバリアントはwtAPCと同様に活性であったが、GNED−APCバリアントはwtAPCよりも明らかに良かった。しかしGNED−SPが最高であり、そして試験した他のどのバリアントよりも明らかに抗凝固的であった。
次のアッセイでは、正常な個体に由来する50μlのヒト血漿を、濃度が上昇するAPCも含む100μlの希釈したシムプラスチン(Simplastin)(1:50に希釈して約35秒の凝固時間を与える組織因子を含有する試薬)と混合した。SPおよびwtバリアントはほぼ同等に活性であるが、GNED−APCはwt−APCよりも抗凝固的であった。しかしGNED−APCバリアントは大変効率的であり、そしてすでに1〜2nMのGNED−SPでAPCは明らかに延長された凝固時間を生じた(図17)。
この実施例では、実施例8のバリアント、すなわちQGNSEDY(ALL)に由来するGLAドメインを実施例1のSP変異体のSPドメインと組み合わせることにより作成し、スーパー−APCと呼ぶこのハイブリッドをさらに試験する。スーパー−APCはGNED−SP APCよりも徹底的に試験し、血小板が支持する凝固に及ぼすAPCの効果も関与する全血を使用した試験を含める。ヒト血漿だけでなく、ラットおよびマウス血漿も試験した。スーパー−APCの抗凝固効果は、動物の血漿中で特に強力であった。これら動物血漿実験は、スーパー−APCがQGNSEDY−APCよりも効率的である点を証明するために取ることができる。スーパー−APCのインビボ効果は予測することが難しいが、スーパー−APCはQGNSEDY−APCよりも抗凝固物質として効率的であるようである。
APTT反応では(図18)(同じAPTTを用いて上記のように行った実験)、スーパー−APCがAPTT凝固時間の延長において任意の他のバリアントより効率的であった。QGNSEDY−APCと同じであるALL−APCは、wtAPCおよびSP−APCよりも効率的であった。スーパー−APCは高度に効率的であり、そしてすでに1nMの濃度未満のAPCで明らかな抗凝固効果が観察されることは注目すべきである。
組織因子に基づくアッセイでは(図19)類似の結果が得られ、スーパー−APCは任意の他のバリアントよりも効力的な抗凝固物であった。最低濃度のスーパー−APCは、wtAPCの10倍高いレベルとおよそ等しく、スーパー−APCバリアントの高い効率を証明する。
スーパー−APCの抗凝固効果がプロテインSの存在に依存的であるかどうかを試験するために、血漿プロテインSがHPS54(これはプロテインSのAPCコファクター活性の阻害に効率的であることが知られている)と表される過剰のモノクローナル抗体で阻害されるさらなる実験を行った。この実験では、血漿をHPS54(50μg/mlの最終濃度)と室温で1時間インキューベーションし、これは以前に示されたように(Dahlbaeck,B.,Hildebrand,B.,and Malm,J.、モノクローナル抗体を使用したビタミンK依存性プロテインS中の機能的に重要なドメインの特性決定(Characterization of functionally important domains in vitamin K−dependent proteinS using monoclonal antibpdies)(1990),J.Biol.Chem.265,8127−8135)、プロテインSコファクター活性を阻害するために十分である。次いで血漿をAPTT反応に使用し、そしてこの場合、スウェーデンのクロモジェニックス社のAPTT試薬を使用した。他の観点では、実験は図16について記載したように行った。wtAPCおよびSP−APCの両方が凝固時間を延長するのにむしろ非効率的であった(図20)。対照的に、ALL−APCおよびスーパー−APCの両方が、すでに1nM未満の濃度で凝固時間を効率的に延長した。スーパー−APCの効果はALL−APCよりも強力であった。この実験では、スーパー−APCバリアントがプロテインSの不存在下でも効率的な抗凝固物質であることを示す。プロテインSの不存在下でのスーパー−APCのこの強力な抗凝固効果は、治療的に高度に興味深い特徴となるかもしれない。またスーパー−APCがプロテインSの存在下で刺激されたことにも注目することが重要である。
通常のAPCは血小板の存在下では抗凝固物質としてむしろ非効率的である。すなわち正常な生理学的条件下で、APCは血小板表面上で起こる反応に及ぼす効果は無いか、または弱い効果を有するだけらしい。動脈血栓症は一般に血小板が関与するので、血小板上での凝固反応の阻害に効率的であるAPCバリアントを得ることは興味深いかもしれない。これを試験するために、全血凝固試験を考案し、これは第Xa因子(FXa)による凝固の開始に依存する。クエン酸処理した全血(75μl)を37℃で180秒間インキューベーションした後、25mMのCaClおよび濃度が上昇する種々のAPCバリアントを含む75μlのFXa(1nM)を加えた。バッファーは上で述べたTBS−BSAであった。APCの不存在下で、凝固時間は約33秒であった。wtAPCの添加(図21)はむしろ非効率的であり、そして延長した凝固時間は20nMのAPCでのみ観察された。SP−APCバリアントはwtAPCとほぼ同等に効率的であった。対照的にALLおよびスーパーバリアントは、より一層効力的であった。ALL−APCの場合、wtAPCよりも約20倍活性であるが、スーパー−APCはさらにより活性であると推定される。図21から、スーパー−APCは全血系でwtAPCよりも約40倍活性であると推定される。
動物血漿実験は、APTT−および組織因子に基づくアッセイ系の両方を使用して行った。ラット血漿を用いてAPTT反応で得られた凝固時間は、一般にヒトの系で観察された時間よりも短かった。APTT試薬をTBS−BSAで1:2に希釈して、約25秒周辺の合理的な凝固時間を得ることが十分であると分かった(図22)。wtAPCの添加はラット血漿の凝固時間の延長には非効率的であることが分かった。対照的に、SP−APCおよびALL−APCの両方が効果は穏やかでも効果的であった。対照的にスーパー−APCは高度に効率的であり、そして試験した最低濃度(2.5nM)でも、凝固時間を効果的に延長した。たとえラット血漿に基づくものであっても、この実験はスーパー−APCがSP−APCまたはALL−APCのいずれよりも大変良いことを証明した。組織因子が誘導する系で得られた結果は、類似の結論をもたらした(図23)。この系で、wt−APCおよびSP−APCは同様であり、一方、ALL−APCはより有力な抗凝固物質であった。しかしスーパー−APCは他のどのバリアントよりも明らかに大変効率的であった。
マウス血漿を使用して、APTTおよび組織因子系の両方で得られた結果は、ラット血漿で得られた結果に類似した(図24および25)。両系で、効率に関してはスーパー−APCが最も有力であり、ALL−APCが次に並ぶ。APTT系では、SP−APCがwtAPCよりもわずかに効力的であったが、2つとも組織因子に基づく系での効率は類似した。特に組織因子に基づく系は、大変明瞭な結果をもたらし、スーパー−APCが試験した他のすべてのバリアントよりも優れていた。
以下では、本発明を図面を参照にしてより詳細に開示し、ここで図1〜5はSP−ドメインにのみ突然変異を有するバリアントに関する、すなわち:
ヒトおよびウシ野生型APCおよびAPC変異体のアミド分解活性を具体的に説明する。ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。 A〜Cは種々のAPCがヒトおよびウシ血漿の活性化部分トロンボプラスチン時間に及ぼす効果を具体的に説明する。A)ヒト血漿では:ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。B)ウシプロテインS(5μg/mlの最終濃度)を補充したヒト血漿において:ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。C)ウシ血漿では:ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。 A〜Cは種々のAPCがヒト第VIIIa因子の不活性化に及ぼす効果を具体的に説明する。異なる濃度の種々のAPCを第VIIIa因子、第IXa因子、リン脂質およびCa2+混合物と5分間、ウシ第V因子およびヒトもしくはウシプロテインSの存在下でプレインキューベーションした。第X因子はこの溶液により活性化され、そして第Xa因子の形成速度を合成基質で測定した。吸収は第VIIIa因子の活性に直線的に相関し、そして結果を各対照の割合として表した。A)ヒトプロテインSおよびウシ第V因子の存在下での高濃度のAPC(最終濃度を示す)による第VIIIa因子の不活性化;ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。B)ヒトプロテインSまたはウシ第V因子の存在下での低濃度のAPC(最終濃度を示す)による第VIIIa因子の不活性化;ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。C)ウシプロテインSおよびウシ第V因子の存在下でのAPC(最終濃度を示す)による第VIIIa因子の不活性化;ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。 AおよびBは種々のAPCがヒトおよびウシ血漿のプロトロンビン時間に及ぼす効果を具体的に説明する。A)ヒト血漿では:ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。B)ウシ血漿では:ヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)、ウシAPC−SP(■)。 種々のAPC、すなわちヒトAPC(〇)、ヒトAPC−SP(●)、ウシAPC(□)およびウシAPC−SP(■)のヒト血漿による不活性化を具体的に説明する。
図6〜14は、Gla−ドメインに突然変異を有するバリアントに関する。すなわち:
種々のAPCバリアント(変異体)がヒト血漿で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に及ぼす効果を具体的に説明する。以下のAPCバリアントを調査した:ヒト野生型(wt)APC(●)、APC変異体QGN(□)、APC変異体QGED(▲)、APC変異体GNED(×)、APC変異体SEDY(|)およびAPC変異体ALL(またはQGNSEDY)(△)。 APTTアッセイにおいてヒトプロテインSがAPC(wtおよび変異体)の効果に及ぼす影響を具体的に説明する。以下のAPCバリアントを調査した:wtAPC(●)およびAPC変異体QGNSEDY(ALL)(□)。 種々のAPCバリアントがヒト血漿におけるプロトロンビンに及ぼす効果を具体的に説明する。以下のAPCバリアントを調査した:wtAPC(●)、APC変異体QGN(□)、APC変異体QGED(▲)、APC変異体GNED(×)、APC変異体SEDY(|)およびAPC変異体QGNSEDY(△)。 プロトロンビンのFXaが媒介する活性化(該活性化はFVaにより強化される)により生成されるトロンビンにより測定される、種々のAPCバリアントがヒト第Va因子を不活性化する能力を具体的に説明する。以下のAPCバリアントを調査した:wtAPC(●)、APC変異体QGN(□)、APC変異体SEDY(+)、およびAPC変異体QGNSEDY(ALL)(△)。 種々のAPCバリアントがヒト第Va因子を不活性化する能力を具体的に説明し、FVaの活性はプロトロンビナーゼアッセイにより測定される。以下のAPCバリアントを調査した:wtAPC(●)、APC変異体QGN(▲)、APC変異体SEDY(△)、およびAPC変異体QGNSEDY(ALL)(□)。 APCによる正常、すなわち野生型(wt)、FVaおよびQ506変異体FVa(FVa Leiden)の不活性化を具体的に説明する。値は:wtAPCによるwtFVa(●);APC変異体QGNSEDY(ALL)によるwtFVa(□);wtAPCによるR506QFVa(▲);およびAPC変異体QGNSEDY(ALL)によるR506QFVa(×)の不活性化について表す。 wtおよび変異体プロテインCがホスホ−膜に結合する能力を具体的に説明する。BIAcoreからの表面プラズマ共鳴法を使用した。これらの図面で異なるリン脂質、すなわち100%ホスホァチジルコリン(図12);20%ホスホァチジルセリンおよび80%ホスホァチジルコリンの混合物(図13);および20%ホスホァチジルセリン、20%ホスファチジルエタノールアミンおよび60%ホスホァチジルコリンの混合物(図14)を使用した。すべての試験でヒト野生型プロテインC(wt)およびAPバリアントQGNSEDY(ALL)、SEDY、SEDおよびQGNを分析した。
図15〜25は本発明のバリアント、すなわちSP−ドメインおよびGla−ドメインの両方に突然変異を含むバリアントに関する。すなわち:
QGNSEDY(ALL)の突然変異したGla−ドメインおよび突然変異したSP−ドメインを含んでなる変異体(スーパー−Apc)が、ヒト血漿における活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に及ぼす効果を具体的に説明する。 APTT反応における組換えAPCバリアントの効果を具体的に説明する。 GNED−SPが、組織因子が誘導する凝固に及ぼす効果を具体的に説明する。 APTT反応におけるAPCバリアントの効果を具体的に説明する。 APCバリアントが、TFが誘導する凝固に及ぼす効果を具体的に説明する。 APCバリアントが、Mab HPS54(プロテインS特異的)の存在下でAPTT凝固時間に及ぼす効果を具体的に説明する。 APCバリアントが全血凝固に及ぼす効果を具体的に説明する。 rat血漿を使用したAPTT反応におけるAPCバリアントの効果を具体的に説明する。 rat血漿を使用したTFが誘導する凝固におけるAPCバリアントの効果を具体的に説明する。 マウスAPTT反応におけるAPCバリアントの効果を具体的に説明する。 マウス血漿の組織因子が誘導する凝固に及ぼすAPCバリアントの効果を具体的に説明する。
【配列表】
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Claims (37)

  1. 血液のプロテインC−抗凝固系において抗凝固活性を現すことができる野生型血液凝固成分に対してアミノ酸配列が実質的に相同であり、そしてプロテインC(PC)および活性化プロテインC(APC)から選択されるバリアント血液凝固成分であって、該バリアント成分は対応する野生型の血液凝固成分により発現される抗凝固活性に比べて強化された抗凝固活性を現すことができ、そして該バリアント成分は該野生型の成分と比較して、最初の45N−末端アミノ酸残基を含んでなり、そしてGla−ドメインと命名されたN−末端アミノ酸残基配列に少なくとも1つのアミノ酸残基修飾、および野生型成分のセリン−プロテアーゼ(SP)ドメインに対応するアミノ酸残基配列の領域中に少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾を含む点が各野生型成分とは異なる、上記バリアント血液凝固成分。
  2. 対応する野生型成分と少なくとも90%のアミノ酸残基配列の同一性を有する、請求項1に記載のバリアント成分。
  3. 対応する野生型成分と少なくとも95%のアミノ酸残基配列の同一性を有する、請求項1に記載のバリアント成分。
  4. 対応する野生型成分と少なくとも97%のアミノ酸残基配列の同一性を有する、請求項1に記載のバリアント成分。
  5. 上記の少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾が置換、削除または挿入されたアミノ酸残基を含んでなる、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  6. 上記成分が野生型成分と比較して強化された膜−結合親和性を現すバリアントPCまたはバリアントAPCである、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  7. 野生型プロテインCに比較して強化されたカルシウム親和性をさらに現す、請求項6に記載のバリアント成分。
  8. 上記バリアント成分が少なくとも6個、そして場合により7〜10個のアミノ酸残基の修飾を上記Gla−ドメインに含む、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  9. 上記バリアント成分が、置換突然変異H10Q、S11G、S12N、D23S、Q32E、N33DおよびH44Yを含む修飾されたGla−ドメインを含み、該修飾されたGla−ドメインが以下のアミノ酸配列:
    Figure 2005518801
    を有する、請求項1に記載のバリアント成分。
  10. 上記Gla−ドメインが10、11、28、32または33位から選択される位置にアミノ酸置換を含み、そして少なくとも1つのさらなる修飾をGla−ドメインに含み、場合により該少なくとも1つのさらなる修飾が12、23または44位から選択される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のバリアント成分。
  11. Gla−ドメイン中の上記の少なくとも1つのアミノ酸修飾が12、23および44位から選択される位置での置換突然変異であり、該置換突然変異がS12N、D23SおよびH44Yから選択される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のバリアント成分。
  12. Gla−ドメイン中の上記の少なくとも1つのアミノ酸修飾が10、11、12、23、32、33および44位から選択される位置に配置され、そして場合によっては置換突然変異であり、そして場合により10、11、12、23、32、33および44位のすべてが修飾されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のバリアント成分。
  13. 上記成分が野生型成分と比べて、強化されたタンパク質分解活性、適当にはアミド分解活性を現すバリアントPCまたはバリアントAPCである、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  14. 野生型プロテインCと同じグリコシル化部位を含み、該部位のアミノ酸残基がAsnである、請求項1に記載のバリアント成分。
  15. SP−ドメイン中の上記少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾が、野生型成分のアミノ酸残基番号290〜320、適切には300から314の間のアミノ酸範囲に対応する領域に含まれる、請求項1に記載のバリアント成分。
  16. 野生型のアミノ酸残基番号300〜314に対応する修飾された領域が、削除Δ303,304,305,308および置換E307D/A310Tを含み、そして式WGYRDETKRNR(配列番号7)により表される、請求項15に記載のバリアント成分。
  17. 上記バリアント成分が、置換突然変異H10Q、S11G、S12N、D23S、Q32E、N33DおよびH44Yを含む修飾されたGla−ドメインを含み、そして該修飾されたGla−ドメインが以下のアミノ酸配列:
    Figure 2005518801
    を有する、請求項16に記載のバリアント成分。
  18. Gla−ドメイン中の上記修飾(1つまたは複数)が置換である、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  19. さらに少なくとも1つの保存的置換を含む、前記請求項のいずれかに記載のバリアント成分。
  20. 上記の野生型血液凝固成分がヒト起源である、請求項1ないし19のいずれか1項に記載のバリアント成分。
  21. 前記請求項のいずれかに記載のバリアント血液凝固成分をコードするヌクレオチド配列を含んでなるDNAセグメント。
  22. 適切には発現ベクターである複製可能なベクター、およびその中に挿入された請求項21に記載のDNAセグメントを含んでなる組換えDNA分子。
  23. 適切には中に安定に包含された請求項22に記載の組換えDNA分子を持つ微生物または動物細胞、適切には培養された動物細胞系を含んでなる宿主細胞。
  24. アデノウイルスでトランスフェクトしたヒトの腎臓細胞である、請求項23に記載の宿主細胞。
  25. 請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント血液凝固成分をコードする請求項21に記載のDNAセグメントの生産法であって;
    (a)野生型血液凝固成分をコードするDNAを準備し;
    (b)ヌクレオチドの修飾を該野生型DNAに導入して、該バリアント血液凝固成分をコードする修飾されたDNAセグメントを形成し;そして
    (c)該修飾されたDNAセグメントを複製させる、
    ことを含んでなる上記方法。
  26. 請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント血液凝固成分の生産法であって;
    (a)該バリアント成分をコードするDNA−セグメントを準備し;
    (b)工程(a)で準備した該DNAセグメントを発現ベクターに導入し;
    (c)該DNAセグメントを含む該ベクターを、コンパチブルな宿主細胞に導入し;
    (d)工程(c)で準備された宿主細胞を、該バリアント成分の発現に必要な条件下で培養し;そして
    (e)発現したバリアント成分を培養した宿主細胞から単離する、
    ことを含んでなる上記方法。
  27. 有効量の請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント血液凝固成分および製薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含んでなる製薬学的組成物。
  28. 血液のプロテインC−抗凝固系に参加する成分をアッセイするための診断試験システム、適切にはキット形態であって、該システムが請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント血液凝固成分を含んでなる上記システム。
  29. バリアント血液凝固成分がバリアントAPCであり、そして上記試験システムがプロテインSまたは完全な抗凝固第V因子の機能活性をアッセイするシステムである、請求項28に記載の診断試験システム。
  30. 患者の凝血を抑制する方法であって、該患者に凝固抑制量の請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント血液凝固成分を含んでなる生理学的に耐容可能な組成物を投与することを含んでなる上記方法。
  31. 血栓症が抑制される、請求項30に記載の方法。
  32. 血液凝固障害APC耐性を有する患者で凝血が抑制される、請求項31に記載の方法。
  33. 血栓症のような凝固障害を処置または防止するための薬剤の製造における請求項1ないし20のいずれか1項に記載のバリアント成分の使用。
  34. バリアント成分がバリアントPCまたはバリアントAPCをバリアントPSと組み合わせて含んでなる、請求項33に記載の使用。
  35. APC耐性の処置のための薬剤の製造ににおける請求項33に記載の使用。
  36. Gla−ドメインが突然変異S11G、S12N、Q32EおよびN33Dを含む、請求項16に記載のバリアント成分。
  37. SPドメイン中の上記の少なくとも1つの修飾が302または316位の修飾である、請求項9に記載のバリアント成分。
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