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JP2005502325A - キナーゼ及びホスファターゼ - Google Patents

キナーゼ及びホスファターゼ Download PDF

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Abstract

本発明はヒトキナーゼおよびホスファターゼ(KPP)、およびKPPを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。本発明はまた、KPPの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼ及びホスファターゼの核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した心血管疾患、免疫系の疾患、神経疾患、成長および発達に影響を及ぼす疾患、脂質異常、細胞増殖異常及び癌の診断・治療・予防に関する。本発明はさらに、キナーゼ及びホスファターゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価に関する。
【背景技術】
【0002】
可逆的なタンパク質のリン酸化は、真核細胞の細胞内での様々な現象を調節するために広く利用されている。典型的な哺乳動物細胞で活性なタンパク質の10%以上が、リン酸化されていると推定される。キナーゼは、高エネルギーのリン酸基をアデノシン三リン酸(ATP)から標的タンパク質のヒドロキシアミノ酸残基であるセリン、トレオニン、またはチロシンに転移する。これとは対照的に、ホスファターゼはこれらのリン酸基を除去する。ホルモン、神経伝達物質、および成長因子、および分化因子を含む細胞外シグナルは、キナーゼを活性化する。そのようなキナーゼは細胞表面受容体、または最終的なエフェクタータンパク質の活性体として存在する場合があり、さらにシグナル伝達経路上のどこかに存在する場合もある。キナーゼのカスケードが生じ、またセカンドメッセンジャー分子に対し感受性のあるキナーゼも存在する。このシステムによって、弱いシグナル(例えば、わずかにしか存在しない成長因子分子)の増幅や、多くの弱いシグナルの全か無かの応答への統合が行われる。次に、ホスファターゼは細胞におけるリン酸化の程度の決定に必須であり、キナーゼと共に代謝酵素活性、細胞増殖、細胞の成長および分化、細胞接着、および細胞周期の進行などの重要な細胞プロセスを調節する。
【0003】
キナーゼ
キナーゼは最も大きな既知の酵素スーパーファミリーを構成し、標的分子が多種多様である。キナーゼは、高エネルギーリン酸基のリン酸供与体からリン酸受容体への移動を触媒する。ヌクレオチドは通常、これらの反応においてリン酸供与体として働き、ほとんどのキナーゼはアデノシン三リン酸(ATP)を利用する。リン酸受容体には様々な分子が可能であり、その中には、ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質、炭水化物、およびタンパク質が含まれる。タンパク質は、ヒドロキシアミノ酸においてリン酸化される。リン酸基が付加されると、受容体分子における局所電荷が変化し、それによって内部構造が変化し、分子間接触を引き起こし得る。可逆的なタンパク質のリン酸化は、真核細胞におけるタンパク質活性の調節の主な方法である。一般に、タンパク質は、ホルモン、神経伝達物質、成長因子、および分化因子などの細胞外シグナルに応答したリン酸化により活性化される。活性化されたタンパク質は、細胞内シグナル伝達経路、並びにタンパク質リン酸化を調節するサイクリックヌクレオチド、カルシウム−カルモジュリン、イノシトール、および様々な分裂促進因子などのセカンドメッセンジャー分子によって細胞の細胞応答を開始させる。
【0004】
キナーゼは、解糖などの基本的な代謝プロセスから細胞周期の調節、分化、およびシグナル伝達カスケードによる細胞外環境との情報交換に至る細胞機能の全てに関与する。細胞内におけるタンパク質の不適切なリン酸化は、細胞周期の進行および細胞分化における変化に関連する。細胞周期における変化は、アポトーシスの誘発や癌の誘発に関連することが示されている。細胞分化における変化は、生殖系、免疫系、および骨格筋の、疾患や障害に関連することが示されている。
【0005】
プロテインキナーゼには2つのクラスがある。一方のクラスのプロテインチロシンキナーゼ(PTK)はチロシン残基をリン酸化し、他方のクラスであるプロテインセリン/トレオニンキナーゼ(STK)はセリン残基およびトレオニン残基をリン酸化する。ある種のPTKおよびSTKは、両方のファミリーの構造的な特徴を有し、チロシン残基およびセリン/トレオニン残基の両方に対して特異性(二重特異性)を有する。ほとんど全てのキナーゼは、特定の残基およびキナーゼファミリー特有の配列モチーフを含む保存された250〜300のアミノ酸からなる触媒ドメインを含む。プロテインキナーゼ触媒ドメインは、更に11のサブドメインに分類することができる。N末端サブドメインI-IVは、ATP供与体分子に結合して方向性を与える2葉構造(two lobed structure)に折り畳まれ、サブドメインVはその2葉にまたがる。C末端サブドメインVI-XIはタンパク質基質と結合し、γリン酸をATPからチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基のヒドロキシル基に移動させる。11のサブドメインのそれぞれは、サブドメインに特徴的なアミノ酸モチーフ或いは特定の触媒残基を含む。例えば、サブドメインIは、8個のアミノ酸からなる高グリシンATP結合共通モチーフを含み、サブドメインIIは、触媒活性の最大化に必要な重要なリシン残基を含み、サブドメインVIからIXは高度に保存された触媒中心を含む。PTKおよびSTKはまた、ヒドロキシアミノ酸特異性を付与し得るサブドメインVIおよびVIIIに固有の配列モチーフを含む。
【0006】
更に、キナーゼは、キナーゼドメイン内に含まれるか或いは隣接する、通常は5〜100の範囲の残基からなる追加のアミノ酸配列によって分類され得る。これらの追加のアミノ酸配列はキナーゼ活性を調節し、基質特異性を決定する。(Hardie, G及びS. Hanks (1995) The Protein Kinase Facts Book, Vol I, 17-20ページ Academic Press, San Diego CA.を参照)。具体的には、2つのプロテインキナーゼシグネチャ配列が、キナーゼドメインで同定されている。 第1のプロテインキナーゼシグネチャ配列は、ATP結合に関与するリシン残基活性部位を含み、第2のプロテインキナーゼシグネチャ配列は触媒活性に重要なアスパラギン酸残基を含む。分析するタンパク質がこの2つのプロテインキナーゼシグネチャを含む場合、そのタンパク質がプロテインキナーゼである確率は100%に近い(PROSITE: PDOC00100, November 1995)。
【0007】
プロテインチロシンキナーゼ
プロテインチロシンキナーゼ(PTK)は、膜貫通受容体PTKタンパク質または非膜貫通非受容体PTKタンパク質のいずれかに分類され得る。膜貫通チロシンキナーゼは、ほとんどの成長因子に対する受容体として機能する。成長因子が受容体チロシンキナーゼ(RTK)に結合し、それによって受容体が、自己をリン酸化し(自己リン酸化)、また特定の細胞内セカンドメッセンジャータンパク質をリン酸化する。受容体PTKに結合する成長因子(GF)は、上皮成長因子、血小板由来成長因子、繊維芽細胞成長因子、肝細胞成長因子、インスリン成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、血管内皮成長因子、およびマクロファージコロニー刺激因子が含まれる。
【0008】
非膜貫通型非受容体PTKは、膜貫通領域を含まない代わりに細胞膜受容体の細胞質ドメインとシグナル伝達複合体を形成する。非受容体PTKを介して機能する受容体には、サイトカイン受容体およびホルモン受容体(成長ホルモンおよびプロラクチン)や、Tリンパ球およびBリンパ球における抗原特異的受容体が含まれる。
【0009】
多くのPTKは、PTK活性が正常な細胞制御を受けない癌細胞における腫瘍遺伝子産物として初めに同定された。実際に、約3分の1の腫瘍遺伝子がPTKをコードする。更に、細胞形質転換(発癌)はチロシンリン酸化活性の上昇を伴う場合が多い(Charbonneau, H.及びTonks, N. K. (1992) Annu. Rev. Cell Biol. 8:463-93)。従って、PTK活性の調節は、ある種の癌を制御するための重要な手段となり得る。
【0010】
プロテインセリン/トレオニンキナーゼ
プロテインセリン/トレオニンキナーゼ(STK)は非膜貫通型タンパク質である。STKのサブクラスは、ERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)またはMAP(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)として知られ、様々なホルモンや成長因子による細胞刺激によって活性化される。細胞刺激は、MEK(MAP/ERKキナーゼ)のリン酸化に導くシグナル伝達カスケードを誘導し、MEKのリン酸化の後に、セリンおよびトレオニンのリン酸化によりERKが活性化される。多数のタンパク質が活性なERKに対する下流のエフェクターであることから、細胞増殖および分化の調節や、細胞骨格の調節に関与すると思われる。ERKの活性化は通常一過性であり、細胞は、そのダウンレギュレーション(下方制御〕に関係する二重特異性ホスファターゼを有する。また様々な研究から、ERK活性の上昇がある種の癌に関連することが分かった。その他のSTKには、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)、カルシウム−カルモジュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼ、およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAP)などのセカンドメッセンジャー依存性プロテインキナーゼや、サイクリン依存性プロテインキナーゼ、チェックポイントおよび細胞周期キナーゼ、Numb関連キナーゼ(Nak)、ヒト融合(hFu)、増殖関連キナーゼ、5'-AMP-活性化プロテインキナーゼ、およびアポトーシスに関与するキナーゼが含まれる。
【0011】
MAPキナーゼのERKファミリーの1メンバ−であるERK7は、ERK1とERK2へのモチ−フ類似性を有する新規61kDaタンパク質であるが、ERK1及びERK2のように細胞外刺激によってまた共通活性剤であるcJun N末端キナーゼ(JNK)及びp38キナーゼによっても活性化されない。ERK7は、その核局在化及び成長の阻害の調節を、他のMAPキナーゼでは典型的であるキナーゼドメインではなく、そのC末端テイルにより行う(Abe, M.K. (1999) Mol. Cell. Biol. 19:13011312)。
【0012】
セカンドメッセンジャー依存性プロテインキナーゼは、サイクリックAMP(cAMP)、サイクリックGMP、イノシトール三リン酸、ホスファチジルイノシトール、3,4,5-三リン酸、サイクリックADPリボース、アラキドン酸、ジアシルクリセロールおよびカルシウム−カルモジュリンなどのセカンドメッセンジャーの効果を主に仲介する。PKAはホルモン誘導性細胞応答の仲介に関与し、ホルモン刺激に応答して細胞内で生成されるcAMPによって活性化される。cAMPは、研究した全ての動物細胞におけるホルモン作用の細胞内メディエーターである。ホルモン誘導性細胞応答には、甲状腺ホルモン分泌、コルチゾル分泌、プロゲステロン分泌、グリコーゲン分解、骨再吸収、心拍数の調節、および心筋収縮力の調節が含まれる。PKAは全ての動物細胞に見られ、これらほとんどの細胞におけるcAMPの効果に関係すると思われる。PKA発現の変化は、癌、甲状腺疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、および心血管疾患等様々な障害や疾患に関連する(Isselbacher, K.J.他. (1994) Harrison's Principles of Internal Medicine, McGraw-Hill, New York NY, 416-431, 1887ページ)。
【0013】
カゼインキナーゼI(CKI)遺伝子ファミリーは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼの別のサブファミリーである。この引き続き拡大するキナーゼ群は、細胞代謝、DNAの複製、およびDNAの修復を含む様々な細胞プロセスおよび核プロセスの調節に関与する。CKI酵素は、真核細胞の膜、核、細胞質および細胞骨格や、哺乳動物細胞の紡錘体上に存在する(Fish, K. J.他(1995) J. Biol. Chem. 270:14875-14883.)。
【0014】
CKIファミリーメンバーの全ては、9〜76のアミノ酸からなる短いアミノ末端ドメイン、284のアミノ酸からなる高度に保存されたキナーゼドメイン、および24〜200を超える範囲のアミノ酸からなる可変カルボキシル末端ドメインを含む(Cegielska, A. 他,(1998) J. Biol. Chem. 273:1357-1364.)。このCKIファミリーは高度に関連するタンパク質からなる。 これは、様々な試料からのカゼインキナーゼIのイソ型の同定によって確認されている。α、β、γ、δ、およびεの少なくとも5つの哺乳動物イソ型が存在する。Fish 他が、ヒト胎盤cDNAライブラリからCKIεを同定した。このCKIεは416のアミノ酸からなる塩基性タンパク質であり、CKIデルタに類似している。CKIεが既知のCKI基質をリン酸化し、CKI特異的インヒビターであるCKI-7によって抑制されることが組み替え発現によって分かった。CKIεのヒト遺伝子は、酵母CKI遺伝子座であるHRR250の欠失によって起こる成長が遅い表現型(slow-growth phenotype)を有する酵母をレスキューすることができる(Fish 他 前出)。
【0015】
哺乳動物の概日リズム突然変異であるtauが、シリアンハムスターにおける概日リズムの周期を著しく短くするCKIεの半優性染色体対立遺伝子であることが分かった。tau遺伝子座はカゼインキナーゼIεによってコードされ、ショウジョウバエ概日遺伝子double-timeの相同体でもある。野生型およびtau突然変異CKIε酵素の両方の研究から、突然変異酵素はその最大速度が著しく低下し、自己リン酸化状態であることが分かった。更に、in vitroにおけるCKIεは哺乳動物PERIODタンパク質と相互作用する能力を有するが、突然変異酵素はPERIODをリン酸化する能力に欠ける。Lowreyらが、CKIεが概日機構の中心をなす転写−翻訳系の自己調節ループ内の負のフィードバックシグナルを遅らせる重要な因子であると提案した。従って、CKIε酵素は、概日リズム、時差ぼけおよび睡眠、更に概日調節下のその他の生理的プロセスおよび代謝プロセスに影響を与える医薬組成物の理想的な標的である(Lowrey, P. L.他(2000) Science 288:483-491.)。
【0016】
ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ(HIPK)はセリン/トレオニンキナーゼであり、DYRKキナーゼサブファミリーの新しいメンバーである(Hofmann, T.G. 他 (2000) Biochimie 82:1123-7).HIPKはホメオプロテインと相互作用するドメインから別れた、保存されたプロテインキナーゼドメインを含む。HIPKは核内キナーゼであり、またHIPK2は神経組織においてよく発現される(Kim, Y.H. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:25875-25879、Wang, Y. 他(2001) Biochim. Biophys. Acta 1518:168-172)。HIPKはホメオドメイン転写因子のコリプレッサとして作用する。このコリプレッサの活性は、細胞タンパク質機能の調節に重要なユビキチン結合やリン酸化のような翻訳後修飾において見られる (Kim, Y.H. 他 (1999) Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 96:12350-12355)。
【0017】
ショウジョウバエいぼ腫瘍抑制因子遺伝子の相同体であるヒトh-wartsタンパク質は、染色体6q2425.1にマッピングされる。それはセリン/トレオニンキナーゼドメインを有しており、間期細胞の中心体に局在する。ヒトh-wartsタンパク質は、有糸分裂に関与しており、分裂装置の成分として機能する(Nishiyama, Y. 他 (1999) FEBS Lett. 459:159165)。
【0018】
カルシウム−カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ
カルシウム−カルモジュリン(CaM)依存性キナーゼは、平滑筋の収縮、グリコーゲン分解(ホスホリラーゼキナーゼ)、および神経伝達(CaMキナーゼIおよびCaMキナーゼII)の調節に関与する。CaM依存性プロテインキナーゼは、細胞内の遊離カルシウムの濃度に応答して細胞内カルシウム受容体であるカルモジュリンによって活性化される。多くのCaMキナーゼはまた、リン酸化によって活性化される。ある種のCaMキナーゼはまた、自己リン酸化またはその他の調節キナーゼによって活性化される。CaMキナーゼIは、神経伝達物質関連タンパク質であるシナプシンIおよびII、遺伝子転写調節因子であるCREB、および嚢胞性繊維コンダクタンス調節タンパク質であるCFTRを含む様々な物質をリン酸化する(Haribabu, B.他(1995) EMBO Journal 14:3679-3686)。また、CaMキナーゼIIは、様々な部位においてシナプシンをリン酸化し、チロシンヒドロキシラーゼのリン酸化および活性化によって脳におけるカテコールアミンの合成を調節する。CaMキナーゼIIはまた、チロシンヒドロキシラーゼおよびトリプトファンヒドロキシラーゼのリン酸化/活性化によってカテコールアミンおよびセロトニンの合成を調節する(Fujisawa, H. (1990) BioEssays 12:27-29)。カルモジュリン結合プロテインキナーゼ様タンパク質をコードするmRNAが哺乳動物前頭葉で多量に見つかった。このタンパク質は軸索および樹状突起の双方における小胞に結合し、主に出生後に蓄積される。このタンパク質のアミノ酸配列はCaM依存性STKに類似しており、このタンパク質はカルシウムの存在下でカルモジュリンと結合する(Godbout, M.他(1994) J. Neurosci. 14:1-13)。
【0019】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAP)は、リン酸化カスケードによって細胞表面から核へのシグナル伝達を仲介する。MAPは、細胞内シグナル伝達経路を調節する別のSTKファミリーである。いくつかのサブグループが同定されており、それぞれが異なった基質特異性を有し、固有の細胞外刺激に応答する(Egan, S. E.およびWeinberg, R. A. (1993) Nature 365:781-783)。 MAPキナーゼカスケードを構成する三つのキナーゼモジュールがあり、それらはMAPK(MAP)、MAPKキナーゼ(MAP2K、MAPKKまたはMKK)およびMKKキナーゼ(MAP3K、MAPKKKまたはMEKK)である(Wang,X.S. 他 (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 253: 33-37)。細胞外信号制御キナーゼ(ERK)経路は、例えば、上皮細胞成長因子(EGF)、紫外線、高浸透圧性培養液、熱ショックまたは内毒素リポ多糖(LPS)のような成長因子やマイトジェン(分裂促進因子)によって活性化される。密接に関連しているが、異なった平行経路である、c-Jun N-末端キナーゼ (JNK)、即ちストレスによって活性化されるキナーゼ(SAPK)経路、およびP38キナーゼ経路は、ストレスによる刺激および腫瘍壊死因子(TNF)やインターロイキン-1(IL-1)のような炎症誘発性サイトカインによって活性化される。MAPキナーゼ発現の変化は、癌、炎症、免疫疾患、および成長および発達に影響を及ぼす疾患を含む様々な疾患に関与する。MAPキナーゼシグナリング経路は哺乳類細胞および酵母に存在する。
【0020】
サイクリン依存性プロテインキナーゼ
サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)は、細胞周期を介して細胞の進行を調節するSTKである。細胞は、サイクリンと呼ばれる活性化タンパク質ファミリーの合成および分解による調節により、有糸分裂に入ったり有糸分裂から出たりする。小さな調節タンパク質であるサイクリンはCDKに結合してそのCDKを活性化させる。 それによって、有糸分裂プロセスに関与する選択されたタンパク質がリン酸化され活性化される。CDKは、活性化するために多数の入力が必要であるという点でユニークである。サイクリンの結合に加えて、CDKの活性化には、CDKにおける特定のトレオニン残基のリン酸化および特定のチロシン残基の脱リン酸化が必要である。
【0021】
NIMA(有糸分裂に決して入らない)関連キナーゼ(Neks)は細胞周期に関連するSTKの別のファミリーである。CDKおよびNekの両方は、動物細胞における複製、成熟、微小管形成中心である中心体の分離に関与する(Fry, A. M.ら,(1998) EMBO J. 17:470-481)。
【0022】
チェックポイントおよび細胞周期キナーゼ
細胞分化のプロセスでは、細胞周期移行の順序およびタイミングは細胞周期チェックポイントの制御下にある。 この細胞周期チェックポイントは、DNA複製および染色体分離などの重要なプロセスが正確に実行されるようにする。例えば放射線などによってDNAが損傷を受けた場合、チェックポイント経路が活性化され、修復の時間を与えるべく細胞周期が停止される。損傷が大きい場合には、アポトーシスが誘導される。このようなチェックポイントが存在しないと、損傷したDNAが異常な細胞に受け継がれ、癌などの増殖異常が引き起こされ得る。プロテインキナーゼは、このプロセスにおいて重要な役割を果たす。例えば、特定のキナーゼすなわちチェックポイントキナーゼ1(Chk1)が酵母および哺乳動物で同定された。 このChk1は、酵母におけるDNA損傷によって活性化される。Chk1が活性化されると、G2/M移行において細胞が停止する(Sanchez, Y.他(1997) Science 277:1497-1501)。具体的には、Chk1が細胞分裂サイクルホスファターゼCDC25をリン酸化し、それによってサイクリン依存性キナーゼCdc2を脱リン酸化して活性化するCDC25の正常な機能が阻害される。Cdc2の活性化によって細胞が有糸分裂に入るのが調節される(Peng, C-Y 他,(1997) Science 277:1501-1505.)。従って、Chk1の活性化によって、損傷した細胞が有糸分裂に入るのが阻止される。Chk1のようなチェックポイントキナーゼにおける欠損によっても、G2/Mのような他のチェックポイントにおいてDNAが損傷した細胞を停止できないことにより癌が引き起こされ得る。
【0023】
細胞増殖関連キナーゼ
細胞増殖関連キナーゼは、ヒト巨核球細胞における細胞周期および細胞増殖の調節に関与する血清/サイトカイン誘導性STKである(Li, B.他(1996) J. Biol. Chem. 271:19402-19408)。増殖関連キナーゼは、細胞分裂に関与するSTKのpolo(ショウジョウバエpolo遺伝子に由来する)ファミリーに関連する。増殖関連キナーゼは肺腫瘍組織においてダウンレギュレートされ、プロトオンコジーンである可能性がある。 プロトオンコジーンが正常な組織において制御を受けないで発現すると、正常な組織が癌化し得る。
【0024】
5'-AMP- 活性化プロテインキナーゼ
あるリガンド活性化STKプロテインキナーゼは、5'-AMP-活性化プロテインキナーゼ(AMPK)である(Gao, G. 他,(1996) J. Biol Chem. 271:8675-8681)。哺乳動物AMPKは、酵素であるアセチル-CoAカルボキシラーゼおよびヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼのリン酸化による脂肪酸およびステロールの合成の調節因子であって、熱ショックやグルコースおよびATPの枯渇などの細胞内ストレスに対するこれらの経路の応答を仲介する。AMPKは、触媒αサブユニットと、このαサブユニットの活性を調節すると考えられている2つの非触媒βサブユニットおよびγサブユニットからなるヘテロ三量体複合体である。AMPKのサブユニットは、脳、心臓、脾臓、および肺などの非脂肪性組織において予想以上に広く分布している。この分布から脂質の代謝の調節以外にもある役割を果たしていると考えられる。
【0025】
アポトーシスにおけるキナーゼ
アポトーシスは、細胞死を導く高度に制御されたシグナル伝達経路であって、組織の発達および恒常性に極めて重要な役割を果たしている。このプロセスの調節不全は、自己免疫疾患、神経変性疾患、および癌を含む様々な疾患の病原に関連する。様々なSTKがこのプロセスにおいて重要な役割を果たす。ZIPキナーゼは、N末端プロテインキナーゼドメインに加えてC末端ロイシンジッパードメインを含むSTKである。このC末端ドメインは、ホモ二量体化およびキナーゼの活性化、ならびに転写因子のサイクリックAMP応答性エレメント結合タンパク質(ATF/CREB)ファミリーのメンバーである活性化転写因子ATF4などの転写因子との相互作用を仲介すると考えられる(Sanjo, H.他 (1998) J. Biol. Chem, 273:29066-29071)。DRAK1およびDRAK2は、インターフェロンγ誘導性アポトーシスにおいて機能することがわかっている死関連プロテインキナーゼ(DAPキナーゼ)と相同性を共有するSTKである(Sanjo 他 前出)。ZIPキナーゼと同様に、DAPキナーゼも、N末端キナーゼドメインに加えてアンキリンリピート型のC末端タンパク質−タンパク質相互作用ドメインを含む。ZIP、DAP、およびDRAKキナーゼは、NIH3T3細胞に形質転換されると、アポトーシスに関連する形態変化を誘導する(Sanjo他,前出)。しかしながら、これらのタンパク質のN末端キナーゼ触媒ドメイン或いはC末端ドメインのいずれかが欠失すると、アポトーシス活性がなくなる。 このことから、キナーゼ活性に加えてC末端ドメインにおける活性も、アポトーシスに必要であり、調節因子または特定の基質と相互作用するドメインの可能性がある。
【0026】
RICKは、死受容体CD95を含む特定のアポトーシス経路を仲介するとして近年同定された別のSTKである(Inohara, N. 他(1998) J. Biol. Chem. 273:12296-12300)。CD95は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであって、免疫系の調節および恒常性において重要な役割を果たす(Nagata, S. (1997) Cell 88:355-365)。CD95受容体シグナル伝達経路は、様々な細胞内分子の受容体複合体への補充、およびそれに続くリガンド結合を伴う。このプロセスは、システインプロテアーゼカスパーゼ-8の補充を伴い、それによってカスパーゼカスケードが活性化され細胞死が起こる。RICKは、カスパーゼ様ドメインと相互作用するC末端「カスパーゼ動員」ドメインおよびN末端キナーゼ触媒ドメインとからなる。このことから、RICKがカスパーゼ-8の動員においてある役割を果たしていると思われる。 この解釈は、ヒト293T細胞におけるRICKの発現がカスパーゼ-8の活性化を促進し、CD95アポトーシス経路に関与する様々なタンパク質によるアポトーシスの誘導を増強するという事実によって補強される(Inohara 他,前出)。
【0027】
ミトコンドリアプロテインキナーゼ
原核生物ヒスチジンプロテインキナーゼに対する配列によって関連する真核生物キナーゼの新規のクラスであるミトコンドリアプロテインキナーゼ(MPK)は、他の真核生物プロテインキナーゼとは配列類似性を有していないようである。これらのプロテインキナーゼは、ミトコンドリアマトリックス空間のみに存在し、原始的真核細胞によってエンドサイトーシスによって取り込まれた呼吸依存性細菌に存在した遺伝子が進化したものと思われる。MPKは、分枝鎖αケト酸デヒドロゲナーゼおよびピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体のリン酸化および不活化に関与する(Harris, R. A.他 (1995) Adv. Enzyme Regul. 34:147-162)。5つのMPKが同定されている。4つのメンバーはピルビン酸デヒドロゲナーゼイソ酵素に対応し、解糖とクエン酸回路との中間において重要な調節酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性を調節する。5番目のメンバーは分岐鎖αケト酸デヒドロゲナーゼキナーゼに対応し、分岐鎖アミノ酸の除去のための経路の調節に重要である(Harris, R.A.他 (1997) Adv. Enzyme Regul. 37:271-293)。飢餓状態および糖尿病状態において、ラットの肝臓、心臓および筋肉におけるピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの活性が著しく上昇することが知られている。この活性の上昇が、両方の病態におけるピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体のリン酸化および不活化、並びに糖新生のためのピルビン酸および乳酸の保存に寄与する(Harris(1995),前出)。
【0028】
(非タンパク質基質に対するキナーゼ)
脂質キナーゼおよびイノシトールキナーゼ
脂質キナーゼは、脂質ヘッドグループのヒドロキシル残基をリン酸化する。ホスファチジルイノシトール(PI)のリン酸化に関与するキナーゼのファミリーが記載されており、それぞれのメンバーがイノシトール環の特定の炭素をリン酸化する(Leevers, S.他(1999) Curr. Opin. Cell. Biol. 11:219-225)。ホスファチジルイノシトールのリン酸化は、プロテインキナーゼCシグナル伝達経路の活性化に関与する。イノシトールホスホリピッド(ホスホイノシチド)細胞内シグナル伝達経路は、細胞膜においてシグナル伝達分子がGタンパク質結合受容体に結合することによって始まる。これによって、イノシトールキナーゼによる細胞膜の内側のホスファチジルイノシトール(PI)残基のリン酸化が起こり、それによってPI残基が二リン酸状態(PIP)に変換される。次にPIPがイノシトール三リン酸(IP)およびジアシルグリセロールに切断される。これらの2つの生成物は、シグナル伝達経路を分けるためのメディエーターとして作用する。これらの経路によって仲介される細胞応答には、バソプレシンに応答する肝臓におけるグリコーゲン分解、アセチルコリンに応答する平滑筋の収縮、およびトロンビン誘導性血小板凝集がある。
【0029】
PIおよびその誘導体のD3位をリン酸化するPI3-キナーゼ(PI3K)は、細胞増殖、分化、および代謝に関与する成長因子シグナルカスケードにおいて重要な役割を果たす。PI3Kは、アダプターサブユニットおよび触媒サブユニットからなるヘテロ二量体である。このアダプターサブユニットは足場タンパク質として作用し、特定のチロシン−リン酸化タンパク質、脂質成分、およびその他の細胞質因子と相互作用する。アダプターサブユニットがインスリン応答性基質(IRS)-1などのチロシンリン酸化標的と結合すると、触媒サブユニットが活性化され、PI (4, 5) 二リン酸 (PIP2)をPI (3, 4, 5) P3 (PIP3)に変換する。次にPIPが、PKA、プロテインキナーゼB(PKB)、プロテインキナーゼC(PKC)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)-3、およびP70リボソームs6キナーゼを含むその他の幾つかのタンパク質を活性化する。 PI3Kもまた、細胞骨格形成タンパク質のRac、rho、およびcdc42と直接相互作用する(Shepherd, P. R. 他 (1998) Biochem. J. 333:471-490)。obeseマウスおよびfatマウスなどの糖尿病動物モデルは、PI3kアダプターサブユニットのレベルが改変されている。アダプターサブユニットにおける特定の変異が、インスリン抵抗性のデンマーク人集団に見られることから、PI3Kが2型糖尿病においてある役割を果たしていると思われる(Shepherd、前出)。
【0030】
脂質キナーゼリン酸化活性の例は、スフィンゴ脂質代謝産物であるスフィンゴシン-1-リン酸(SPP)へのD-エリスロ-スフィンゴシンのリン酸化である。SPPは、細胞外作用および細胞内作用の両方を持つ新規の脂質セカンドメッセンジャーであることが分かった(Kohama, T.他 (1998) J. Biol. Chem. 273:23722-23728)。細胞外では、SPPはGタンパク質結合受容体EDG-1(内皮由来Gタンパク質結合受容体)のリガンドである。細胞内では、SPPは、細胞の成長、生存、運動性、および細胞骨格の変化を調節する。D-エリトロ-スフィンゴシンを特異的にリン酸化してSPPにするスフィンゴシンキナーゼによってSPPのレベルは調節される。細胞シグナル伝達におけるスフィンゴシンキナーゼの重要性は、血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子、およびプロテインキナーゼCの活性化を含む様々な刺激が、スフィンゴシンキナーゼの活性化によってSPPの細胞内レベルを上昇させるという事実、および酵素の競合阻害剤がPDGFによって誘導された細胞増殖を選択的に阻害するという事実から証明された(Kohama 他,前出)。
【0031】
プリンヌクレオチドキナーゼ
プリンヌクレオチドキナーゼであるアデニル酸キナーゼ(ATP:AMPホスホトランズフェラーゼ、もしくはAdK)およびグアニル酸キナーゼ(ATP:GMPホスホトランズフェラーゼ、もしくはGuK)が、ヌクレオチド代謝において重要な役割を果たし、ATPおよびGTPの合成および細胞内レベルの調節のそれぞれにおいて重要である。これらの2つの分子は、成長している細胞におけるDNA合成およびRNA合成の前駆物質であって、細胞における主な生化学エネルギーの主な供給源(ATP)であり、シグナル伝達経路(GTP)を提供する。これらの2つの分子の合成における様々なステップを妨げることが、癌および抗ウイルス治療のための多くの抗増殖剤の原理である(Pillwein, K. 他 (1990) Cancer Res. 50:1576-1579)。
【0032】
AdKはほとんどの細胞型に見られ、高い速度でATPを合成する骨格筋などの細胞に特に多く存在する。これらの細胞において、AdKは、細胞レベル下構造であるミトコンドリアおよび筋原繊維と物理的に結合している。ミトコンドリアはエネルギーを生産し、筋原繊維はそのエネルギーを利用する。近年の研究により、ATPを生成する代謝プロセスからATPを消費する細胞成分への高エネルギーのホスホリルの転移においてAdKが重要な役割を果たしていることが実証された(Zeleznikar, R. J. 他 (1995) J. Biol. Chem. 270:7311-7319)。従って、AdKは、細胞、特に癌細胞などの増殖や代謝速度が速い細胞におけるエネルギー生産の維持において中心的な役割を演じると考えられ、ある種の癌の治療においてその活性を抑制するための標的を提供し得る。別法では、AdK活性の低下が、心不全や呼吸器不全を引き起こす様々な代謝筋エネルギー疾患の原因と考えられ、AdKの活性を上昇させて治療できるであろう。
【0033】
RNAおよびDNA合成のためのGTPの合成における重要なステップを提供するのに加えて、GuKはまた、GDPおよびGTPの調節によって細胞のシグナル伝達経路において重要な役割を果たす。具体的には、膜結合Gタンパク質に結合するGTPは細胞受容体の活性化を仲介し、アデニルシクラーゼが細胞内で活性化され、セカンドメッセンジャーであるサイクリックAMPが生産される。 Gタンパク質に結合するGDPはこれらのプロセスを阻害する。また、GDPおよびGTPのレベルによって、細胞増殖の調節および発癌に関与するとして知られるp21ra sなどのある種の腫瘍タンパク質の活性が調節される(Bos, J. L. (1989) Cancer Res. 49:4682-4689)。GuKの抑制によって起こるGDPに対するGTPの比率が高いと、p21rasが活性化され発癌が促進される。GDPのレベルを上昇させ、GDPに対するGTPのレベルを低下させるためにGuKの活性を高めることが、発癌を抑制する治療となり得る。
【0034】
GuKは、ヘルペスウイルス感染の治療に有用なある種の抗ウイルス剤のリン酸化および活性化における重要な酵素である。これらの薬剤には、グアニン相同体アシクロビルおよびbuciclovirが含まれる(Miller, W. H.およびMiller R. L. (1980) J. Biol. Chem. 255:7204-7207、Stenberg, K. 他 (1986) J. Biol. Chem. 261:2134-2139)。感染細胞においてGuKの活性を高めることが、これらの薬剤の効果を促進させる治療方法となり得るため、薬剤の服用を減らすことが可能であろう。
【0035】
ピリミジンキナーゼ
ピリミジンキナーゼは、デオキシチジンキナーゼ、およびチミジンキナーゼ1および2を含む。デオキシチジンキナーゼは核に存在し、チミジンキナーゼ1および2は細胞質に見られる(Johansson, M.他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94:11941-11945)。ピリミジンキナーゼによるデオキシリボヌクレオシドのリン酸化によって、DNA前駆物質のde novo合成のための代替の経路が提供される。リン酸化におけるピリミジンキナーゼの役割はプリンキナーゼと同様に、化学療法に重要な幾つかのヌクレオシド類似体の活性化に重要である(Arner E. S.およびEriksson, S. (1995) Pharmacol. Ther. 67:155-186)。
【0036】
パントテン酸キナーゼ
パントテン酸キナーゼ(PanK)は細菌のCoA 生合成経路における重要な調節酵素である。これはパントテン酸のリン酸化を触媒してホスホパントテン酸(phosphopantothenate)を形成する。CoAはATP部位への競合的結合によるPanK 活性のフィードバック阻害剤である。哺乳動物(PanK)の予測されたタンパク質配列は細菌のPanKに関連していないとしても、PanKはまた、哺乳動物CoAの生合成においても重要な調節酵素である(Rock, C.O. (2000) J. Biol. Chem. 275:1377-1383)。PanKはCoAおよびそのアシルエステルのフィードバック阻害によって調節される。PanKの非必須アクチベータである遊離カルニチンの濃度が変化するとこの阻害は修正される(Fisher, M.N. 他 (1985) J. Biol. Chem. 260:1574515751)。
【0037】
ホスファターゼ
一般的に、プロテインホスファターゼは、ホスホアミノ酸基質選択性に基づいて、セリン/トレオニン特異性またはチロシン特異性のいずれかによって特徴づけられる。しかしながら、或る種のホスファターゼ(DSP:二重特異性ホスファターゼ)は、リン酸化したチロシン、セリン、またはトレオニン残基に作用し得る。プロテインセリン/トレオニンホスファターゼ(PSP)は、細胞内での多くのcAMP仲介性ホルモン応答の重要な制御因子である。プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)は、細胞周期および細胞内シグナル伝達プロセスにおいて重要な役割を果たす。別のファミリーのホスファターゼは、酸性ホスファターゼ、またはヒスチジン酸性ホスファターゼ(HAP)ファミリーで、そのメンバーは酸性のpH条件下でリン酸エステルを加水分解する。
【0038】
PSPはサイトゾル、核、およびミトコンドリアに見られ、多くの組織、特に脳において細胞骨格および膜構造に結合している。或る種のPSPは、活性のためにCa2+またはMn2+などの2価の陽イオンを必要とする。PSPは、糖代謝、筋収縮、蛋白合成、T細胞機能、神経作用、卵母細胞成熟、および肝代謝において重要な役割を果たす(Cohen, P. (1989) Annu. Rev. Biochem. 58:453-508の概説を参照)。PSPは2つのクラスに分類することができる。PPPクラスには、PP1、PP2A、PP2B/カルシニュリン、PP4、PP5、PP6、およびPP7が含まれる。このクラスのメンバーは、高度に保存されたシグネチャ配列を有する相同な触媒サブユニットに、1つ以上の調節サブユニットが組み合わさって構成されている(PROSITE PDOC00115)。更に、足場分子および固着分子との相互作用によって、PSPの細胞内局在性および基質特異性が決定される。PPMクラスは、PP2Cに密接に関連した幾つかのアイソフォームから成り、PPPクラスにとは進化的な関連性が存在しない。
【0039】
PP1は、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)によってリン酸化した多くのタンパク質を脱リン酸化し、細胞における多くのcAMP仲介性ホルモン応答の重要な制御因子である。幾つかのアイソフォームが同定されているが、α型およびβ型は同じ遺伝子の異なるスプライシングによって生成される。PP1に関して、遍在性の標的タンパク質および組織特異的標的タンパク質が同定された。脳において、ドーパミンおよび32kDaのアデノシン3'、5'一リン酸調節性ホスホプロテイン(DARPP-32)によるPP1活性化の阻害が、新線条体ニューロンにおける正常なドーパミン応答に必要である(Price, N. E.及びM. C. Mumby (1999) Curr. Op. Neurobiol. 9:336-342の概説を参照)。PP1およびPP2Aが微少血管内皮細胞の細胞運動を制限することが分かっており、脈管形成の阻害にPSPがある役割を果たしていると思われる(Gabel, S.他(1999) Otolaryngol. Head Neck Surg. 121:463-468)。
【0040】
PP2Aは、主なセリン/トレオニンホスファターゼである。コアPP2A酵素は、更なる調節サブユニット(B)を動員する65 kDaの足場サブユニット(A)と結合した1つの36 kDaの触媒サブユニット(C)から成る。Bサブユニットをコードする3つの遺伝子ファミリー(PR55、PR61、およびPR72)が知られており、そのそれぞれが複数のアイソフォームを含み、更なるファミリーが存在し得る(Millward, T. A.他(1999) Trends Biosci. 24:186-191)。これらの「B型」サブユニットは細胞型特異的および組織特異的であって、基質特異性、酵素活性、およびホロ酵素の細胞内局在性を決定する。PR55ファミリーは高度に保存されていて、保存されたモチーフを有する(PROSITE PDOC00785)。PR55によって、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)およびMAPKキナーゼ(MEK)に対するPP2A活性が上昇する。PP2Aは、MAPK活性化部位を脱リン酸化し、細胞の有糸分裂への移行を阻害する。CKIIキナーゼ触媒サブユニット、ポリオーマウイルスの中型T抗原および小型T抗原、およびSV40小型t抗原を含む幾つかのタンパク質が、PP2Aのコア酵素結合についてPR55と競合し得る。ウイルスはこのメカニズムを利用してPP2A活性を徴用し、細胞の細胞周期進行を刺激する(Pallas, D. C.他(1992) J. Virol. 66:886-893)。MAPキナーゼの発現の変化はまた、癌、炎症疾患、免疫系疾患、および成長および発達に影響を与える疾患を含む様々な症状に関与すると考えられている。実際、PP2Aはin vitroで30種以上のプロテインキナーゼを脱リン酸化してその活性を調節する。 また、その他の研究結果から、PKB、PKC、カルモジュリン依存性キナーゼ、ERKファミリー、MAPキナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ、およびIκBキナーゼなどのキナーゼについてもin vivoで同様であることが示された(Millward 他, 前出)。PP2A自体が、CK IキナーゼおよびCKIIキナーゼの基質であり、ポリカチオン高分子によって刺激され得る。PP2A様ホスファターゼは、哺乳動物サイクリンAおよびBのG1期破壊を維持するために必要である(Bastians, H.他(1999) Mol. Biol. Cell 10:3927-3941)。PP2Aは脳において主に作用し、神経フィラメントの安定性および正常な神経機能の調節、特に微少管結合タンパク質tauのリン酸化に関係すると考えられる。tauの過剰なリン酸化がアルツハイマー病に見られる神経変性を引き起こすと提案された(前出のPrice および Mumbyの概説を参照)。
【0041】
PP2Bすなわちカルシニュリンは、Ca2+活性化二量体ホスファターゼであって、特に脳に多量に存在する。PP2Bは、触媒サブユニットおよび調節サブユニットから成り、カルシウム/カルモジュリン複合体の結合によって活性化される。カルシニュリンは、免疫抑制薬シクロスポリンおよびFK506の標的である。その他の細胞因子と共にこれらの薬剤は、カルシニュリンと相互作用してホスファターゼ活性を阻害する。T細胞では、この作用によって、転写因子のNF-ATファミリーのカルシウム依存性活性化が阻害され、免疫抑制が起こる。このファミリーは広く分布し、カルシニュリンがその他の組織においても遺伝子の発現を調節する可能性が高い。ニューロンでは、カルシニュリンは神経伝達物質放出の阻害から後シナプスNMDA受容体共役カルシウムチャネルの脱感作、および長期の記憶に至るまでの機能を調節する(PriceおよびMumby, 前出)。
【0042】
PPPクラスのその他のメンバーが近年同定された(Cohen, P. T. (1997) Trends Biochem. Sci 22:245-25)。その1つであるPP5は、テトラトリコペプチド リピートを有する調節ドメインを含む。PP5は、in vitroで陰イオン性リン脂質および多価不飽和脂肪酸によって活性化され、心房性ナトリウム利尿ペプチドまたはステロイドホルモンによって調節されるシグナル伝達経路を含む幾つかのシグナル伝達経路に関与すると思われる(Andreeva, A. V.およびM. A. Kutuzov (1999) Cell Signal. 11:555-562の概説を参照)。
【0043】
PP2Cは、広い基質特異性を有する最大42 kDaの単量体であって、その活性が二価の陽イオン(主にMn2+またはMg2+)に依存する。PP2Cタンパク質は、陽イオン結合に関係するアスパラギン酸残基を含む不変なDGHモチーフを有する保存されたN末端領域を共有する(PROSITE PDOC00792)。標的タンパク質とPP2Cの作用を調節するメカニズムは、同定されていない。PP2Cは、ストレス応答性p38およびJunキナーゼ(JNK)経路を阻害することが分かっている(Takekawa, M.他(1998) EMBO J. 17:4744-4752)。
【0044】
PSPとは対照的に、チロシン特異的ホスファターゼ(PTP)は、大きさおよび構造が様々であって(20 kDa〜100 kDa以上)一般に単量体のタンパク質であり、主に細胞膜を通過するシグナル伝達において機能する。PTPは、可溶性ホスファターゼか、或いはホスファターゼドメインを含む膜貫通受容体タンパク質のいずれかに分類される。全てのPTPは、活性部位を含む約300のアミノ酸の保存された触媒ドメインを共有する。この活性部位の共通配列は、触媒作用中にリン酸部分に求核攻撃を加えるシステイン残基を含む(Neel, B.G.およびN.K. Tonks (1997) Curr. Opin. Cell Biol. 9:193-204)。受容体PTPは、可変長のN末端細胞外ドメインと、膜貫通領域と、通常は2つの触媒ドメインを有する細胞質内領域とから成る。第一の触媒ドメインのみが酵素活性を有するように見えるが、第2の触媒ドメインは第1の触媒ドメインの基質特異性に影響を与えると思われる。幾つかの受容体PTPの細胞外ドメインは、フィブロネクチン様リピート、免疫グロブリン様ドメイン、MAMドメイン(接着機能を有する可能性が高い細胞外モチーフ)、または炭酸脱水素酵素様ドメイン(PROSITE PDOC 00323)を含む。このような様々な構造モチーフによって、PTPの大きさおよび特異性が多様になっている。
【0045】
PTPは、細胞接着、リンパ球活性化、および細胞増殖などの生体プロセスにおいて重要な役割を果たす。PTPμおよびPTPκは、細胞−細胞接触に関与し、カドヘリン/カテニン機能を調節するであろう。幾つかのPTPが細胞の進展、接着斑、および細胞運動に影響を与えているが、そのほとんどがインテグリン/チロシンキナーゼシグナル伝達経路によって行なわれる(前出のNeel, B. G.およびN K. Tonksの概説を参照)。CD45ホスファターゼは、シグナル伝達およびリンパ球の活性化を調節する(Ledbetter, J. A.他(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8628-8632)。Src-ホモロジー-2ドメインを有する可溶性PTP(SHP)が同定された。このことは、これらの分子が受容体チロシンキナーゼと相互作用することを示唆するものである。SHP-1は、造血細胞におけるJanusファミリーPTKの調節によって、およびT細胞受容体およびc-Kitによるシグナル伝達によって、サイトカイン受容体シグナル伝達を調節する(前出の NeelおよびTonksの概説を参照)。M期誘導物質のホスファターゼはPTK CDC2を脱リン酸化して活性化し、有糸分裂の誘導において重要な役割を果たし、細胞分裂を導く(Sadhu, K.他(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5139-5143)。加えて、少なくとも8種のPTPをコードする遺伝子が、リンパ腫、小細胞肺癌、白血病、腺癌、および神経芽腫を含む様々な腫瘍症状において転座或いは再構成された染色体領域にマッピングされた(Charbonneau, H.およびN. K. Tonks (1992) Annu. Rev. Cell Biol. 8:463-493の概説を参照)。PTP酵素の活性化部位は、MTM1遺伝子ファミリーのコンセンサス配列を含む。MTM1遺伝子は、X遺伝子に連鎖した劣性の筋細管ミオパシーに関与している。この疾患は、Xq28に連関される先天的な筋疾患である(Kioschis, P.他, (1998) Genomics 54:256-266)。PTKの多くは発癌遺伝子によってコードされ、発癌がチロシンリン酸化活性の増加をしばしば伴うことは、よく知られている。従って、PTPは、細胞におけるチロシンリン酸化のレベルを調節して細胞形質転換および様々な癌の成長を防止或いは逆転し得る可能性がある。この考えは、PTPの過剰な発現により細胞の形質転換を抑制でき、PTPの特異的阻害により細胞形質転換を促進できるという研究結果によって支持される(Charbonneau および Tonks, 前出)。
【0046】
二重特異性ホスファターゼ(DSP)は、PSPよりもPTPに構造的に類似している。DSPは、追加の7個のアミノ酸残基を有する拡張されたPTP活性化部位モチーフを有する。DSPは、主に細胞増殖に関与しており、細胞周期調節因子であるcdc25A、cdc25B、およびcdc25Cが含まれる。ホスファターゼDUSP1およびDUSP2は、チロシン残基およびトレオニン残基の両方においてMAPKファミリーメンバーERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)、JNK(c-Jun N-末端キナーゼ)、およびp38を不活化する(PROSITE PDOC 00323, 前出)。活性化された状態では、これらのキナーゼは、ニューロンの分化、増殖、癌への形質転換、血小板凝集、およびアポトーシスに関与する。従って、DSPはこれらのプロセスの適切な調節に必要である(Muda, M.他(1996) J. Biol. Chem. 271:27205-27208)。腫瘍抑制因子PTENは、脂質ホスファターゼ活性も示すDSPである。PTENは、細胞外マトリックスとの相互作用を負に調節してアポトーシス感受性を維持すると思われる。PTENは、血管形成の防止に関係する(Giri, D.およびM. Ittmann (1999) Hum. Pathol. 30:419-424)。PTENの発現の異常は、様々な癌に関連する(Tamura, M.他(1999) J. Natl. Cancer Inst. 91:1820-1828の概説を参照)。
【0047】
ヒスチジン酸ホスファターゼ(HAP、EXPASY EC 3.1.3.2)もまた、酸性ホスファターゼとして知られ、低いpH下で、アルキル基、アリール基、アシル基のオルトリン酸モノエステル、およびリン酸化されたタンパク質を含む広範囲な基質を加水分解する。HAPは、2つの領域で保存された配列を共有し、どちらも触媒作用に関与するヒスチジン残基のあたりに位置する。HAPファミリーのメンバーには、リソソーム酸性ホスファターゼ(LAP)と前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が含まれ、両者ともL-酒石酸塩による抑制に感受性を示す(PROSITE PDOC00538)。
【0048】
イノシトールリン酸ホスファターゼであるシナプトジャニンは、イノシトールリン酸をイノシトール環の3、4、5の位置で脱リン酸する。シナプトジャニンは神経末端でクラスリンで覆われたエンドソーム中間体に存在するシナプス前性の主要タンパク質であり、クラスリンコートに結合するタンパク質であるEPS15と結合する。この結合はシナプトジャニン−170のC末端領域(Asp−Pro−Pheのアミノ酸の3回繰り返し)で媒介される。更に、この3残基繰り返しは、EPS15のEHドメインの結合部位であることがわかっている(Haffner, C. 他 (1997) FEBS Lett. 419:175-180)。加えて、シナプトジャニンはエンドソームタンパク質と原形質膜との相互作用を調節し、シナプス小胞のリサイクリングに関与している可能性もある(Brodin, L. 他 (2000) Curr. Opin. Neurobiol. 10:312-320)。シナプトジャニン1遺伝子(Synj1)の標的破壊を受けたマウスの研究は、野生型マウスに見られるより効果的にエンドソーム小胞のコートが形成されていることを支持しており、Synj1が膜とコートタンパク質の相互作用の負調整として機能していることを示唆する。これらの発見は、シナプス小胞リサイクリングでイノシトールリン酸代謝が重要な役割を果たしている遺伝的証拠を提供する(Cremona, O. 他 (1999) Cell 99:179-188)。
【0049】
発現プロファイル作成
アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子または無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する、簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて、或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを試験するときは、アレイは次のような遺伝子を同定するプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、毒性アッセイにおいてテストされる物質に影響されるか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、ハウスキーピング機能を実行するか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの同定である。
【0050】
新規のキナーゼおよびホスファターゼ、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。 この新規の組成物は、心血管疾患、免疫系の疾患、神経の疾患、成長および発達に影響を及ぼす疾患、脂質異常、細胞増殖異常及び癌の診断・予防・治療に関する。本発明はさらに、キナーゼ及びホスファターゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価に関する。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0051】
本発明は、総称して「KPP」、個別にはそれぞれ「KPP-1」、「KPP-2」、「KPP-3」、「KPP-4」、「KPP-5」、「KPP-6」、「KPP-7」、「KPP-8」、「KPP-9」、「KPP-10」、「KPP-11」、「KPP-12」、「KPP-13」および「KPP-14」と呼ぶキナーゼおよびホスファターゼである精製されたポリペプチドを提供する。或る態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一態様では、SEQ ID NO:1-14のアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチドを提供する。
【0052】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群より選択されたポリペプチドをコードするような単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-14からなる群から選択したポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:15-28を有する群から選択される。
【0053】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を持つ組換えポリヌクレオチドを提供する。一実施態様で本発明は、この組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様で本発明は、この組換えポリヌクレオチドを持つ遺伝形質転換生物体を提供する。
【0054】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択されたアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する天然のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1-14とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドを製造する方法を提供する。製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0055】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0056】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド配列、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様で該ポリヌクレオチドは、少なくとも60の連続したヌクレオチド群からなる。
【0057】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなる或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、複合体が存在すればオプションでその量を検出する過程からなる。該プローブと該標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチド群からなる。
【0058】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一の天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0059】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択される。一実施例では、SEQ ID NO:1−14からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。 更に、本発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的KPPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0060】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別法では、本発明は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的KPPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0061】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性につき、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的KPPの過剰発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0062】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0063】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドの活性をモジュレートする或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドの活性にとり許容し得る条件下で、該ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の不存在下での該ポリペプチドの活性と比較する過程からなり、この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性の変化は、該ポリペプチドの活性をモジュレートする化合物を標示する。
【0064】
更に本発明は、SEQ ID NO:15-28からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果につき、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを有するサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
【0065】
本発明は更に、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸群を有する生体サンプルを試験化合物で処理する過程。(b)処理済み生体サンプルの核酸群をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる。(i)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を持つポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生体サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間に特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で生じる。上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片を持つ。毒性の算定方法には更に、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列および方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料および方法に本発明が限定されるものではなく、修正され得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施態様を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0067】
請求の範囲および明細書中で用いている単数形の「或る」および「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意されたい。したがって、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には1個以上の抗体、および、当業者に公知の抗体の等価物などについても言及している。
【0068】
本明細書中で用いる全ての技術用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料および方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用い得る、細胞、プロトコル、試薬およびベクターについて説明および開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0069】
(定義)
用語「KPP」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などからの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得た、実質的に精製されたKPPのアミノ酸配列を指す。
【0070】
用語「アゴニスト」は、KPPの生物学的活性を強化または模倣する分子を指す。アゴニストとしては、KPPと直接に相互作用、あるいはKPPが関与する生物学的経路の各成分に作用してKPPの活性をモジュレートする、タンパク質、核酸、糖質、小分子、または任意の他の化合物や組成物があり得る。
【0071】
「対立遺伝子変異体/変異配列」は、KPPをコードする、別の形態の遺伝子である。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変容したmRNAまたはポリペプチドを作製し得る。その構造または機能は、変容することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異体を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0072】
KPPをコードする「変容した/改変された」核酸配列としては、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換がありながら、KPPと同じポリペプチド、或いはKPPの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドをもたらす配列もある。この定義には、KPPをコードするポリヌクレオチド配列にとり正常な染色体の遺伝子座ではない位置での、アレル変異配列群との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーションを含み、また、KPPをコードするポリヌクレオチドの或る特定オリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性をも含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じた結果、機能的に等価なKPPとなるような、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にKPPの活性が保持される範囲で、残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性、についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジンおよびアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、およびフェニルアラニンとチロシンを含みうる。
【0073】
「アミノ酸」または「アミノ酸配列」の語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質の配列またはその断片を指し、天然または合成分子を指す。ここで「アミノ酸配列」は天然のタンパク質分子のアミノ酸配列を指すものであり、「アミノ酸配列」及び類似の語は、アミノ酸配列を、列挙したタンパク質分子に関連する完全な本来のアミノ酸配列に限定しようとするものではない。
【0074】
「増幅」は、核酸配列の追加複製に関連する。増幅には通常、当業者に公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いる。
【0075】
用語「アンタゴニスト」は、KPPの生物学的活性を阻害あるいは減弱する分子を指す。アンタゴニストとしては、KPPと直接相互作用すること、あるいはKPPが関与する生物学的経路の各成分に作用することによってKPPの活性をモジュレートする、抗体などタンパク質、核酸、糖質、小分子、または任意の他の化合物や組成物があり得る。
【0076】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab、F(ab')2 及びFv断片を指す。KPPポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷のポリペプチド群を用いて、または、当該の小ペプチド群を持つ断片群を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、所望によりキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。結合その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0077】
「抗原決定基」の語は、特定の抗体と接触する、分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原決定基は、抗体への結合において無損傷抗原(即ち免疫応答を誘発するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0078】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸またはオリゴヌクレオチドを指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模な組み合わせライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマー組成は、2本鎖または1本鎖であってもよく、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、または他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド構成要素は修飾された糖基(例えば、リボヌクレオチドの2'-OH 基が2'-F または 2'-NH2で置換されている)を有することが可能で、これらの糖基は、例えば、ヌクレアーゼに対する耐性あるいは血中でのより長い寿命など、望む性質を改善しうる。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリアー等の分子に抱合させることができる。アプタマー類は、例えば或る架橋剤の光活性化によって、それらの同種リガンド群と特異的に架橋させ得る(Brody, E.N. および L. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0079】
「イントラマー(intramer)」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する。例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0080】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性ヌクレオチドを含むアプタマーは、右旋性のヌクレオチドを含む基質に通常作用する天然の酵素による分解に耐性がある。
【0081】
「アンチセンス」の語は、特定の核酸配列の「センス」(コーディング)鎖と塩基対を形成することが可能な任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、修飾されたバックボーン連結たとえばホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸などを有するオリゴヌクレオチドや、修飾された糖基たとえば2'-メトキシエチル糖または2'-メトキシエトキシ糖などを有するオリゴヌクレオチドや、あるいは修飾された塩基たとえば5-メチルシトシン、2-デオキシウラシルまたは7-デアザ-2'-デオキシグアノシンなどを有するオリゴヌクレオチドがあり得る。アンチセンス分子は、化学合成または転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写または翻訳を妨害する。「負」または「マイナス」という表現は、或る参考DNA分子のアンチセンス鎖を指すことがあり、「正」または「プラス」という表現は、或る参考DNA分子のセンス鎖を意味し得る。
【0082】
「生物学的に活性」の語は、天然分子の構造的機能、調節機能または生化学的機能を有するタンパク質を指す。同様に、「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然、組換え体、または合成のKPPまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0083】
「相補(的)」または「相補性」の語は、塩基対形成によってアニーリングする2つの一本鎖核酸の間の関係を指す。例えば、配列「5'-AGT-3'」は、相補配列「3'-TCA-5'」と対合する。
【0084】
「〜のポリヌクレオチド配列を含む(有する)組成物」及び「〜のアミノ酸配列を有する組成物」は、所定のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む広範囲の任意の成分を指す。この組成物には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。KPPをコード、若しくはKPPの断片群をコードするポリヌクレオチド配列群を有する組成物類は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。これらプローブは、凍結乾燥形態で貯蔵でき、また、糖質などの安定化剤と結合させ得る。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成要素(例えばデンハート液、粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0085】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片アセンブリシステム(GCG, Madison, WI)か、あるいはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片アセンブリ用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
【0086】
「保存的なアミノ酸置換」は、置換がなされた時に元のタンパク質の特性を殆ど損なわないと予測されるような置換、即ちタンパク質の構造と特に機能が保存され、そのような置換による大きな変化がない置換を指す。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換可能で、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
Figure 2005502325
【0087】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやαヘリックス構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分が保持される。
【0088】
「欠失」は、結果的に1個若しくは数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドが失われてなくなるようなアミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を指す。
【0089】
「誘導体」の語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの化学修飾を指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって誘導起源のポリペプチドの、少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって修飾されたポリペプチドである。
【0090】
「検出可能な標識」は、測定可能なシグナルを生成することができ、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに共有結合または非共有結合するようなレポーター分子または酵素を指す。
【0091】
「差次的発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または遺伝子発現またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、または病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0092】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャー群の新たな組み合わせによって、新しいタンパク質がアセンブリされることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0093】
「断片」は、KPPの又はKPPをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一であるが親配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、或るポリペプチド断片は、定義された或る配列内に見られるような或るポリペプチドの最初の250または500アミノ酸(または最初の25%または50%)から選択した、或る長さの連続したアミノ酸を持ち得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表および図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0094】
SEQ ID NO:15−28の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:15−28を特定に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:15-28のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:15-28を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:15-28の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:15-28の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0095】
SEQ ID NO:1-14 のある断片は、SEQ ID NO:15-28のある断片によってコードされる。SEQ ID NO:1-14 の断片には、SEQ ID NO:1-14を特異的に同定する固有のアミノ酸配列領域が含まれている。 例えば、SEQ ID NO:1-14 の断片は、SEQ ID NO:1-14を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-14 の断片、及び断片が対応するSEQ ID NO:1-14 の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0096】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)と、それに続く1オープンリーディングフレームおよび翻訳終止コドンを有する配列である。或る「完全長」ポリヌクレオチド配列は、或る「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0097】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、互換性、または配列同一性を意味する。
【0098】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」または「一致%」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0099】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G. 及び P.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「weighted(重み付けされた)」残基重み付け表が、デフォルトとして選択される。CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列対間の「percent similarity(類似率)」として一致率を報告する。
【0100】
或いは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)が一般的に用いられ、且つ、無料で入手可能な配列比較アルゴリズム一式を提供している(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)。 このアルゴリズムは、幾つかの情報源から入手可能であり、メリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からも入手可能である。BLASTソフトウェア一式には様々な配列分析プログラムが含まれており、既知のポリヌクレオチド配列を種々のデータベースから得た別のポリヌクレオチド配列とアラインメントする「blastn」もその1つである。その他にも、2つのヌクレオチド配列をペアワイズで直接比較するために用いる「BLAST 2 Sequences」と称されるツールも利用可能である。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして対話形式で利用することが可能である。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及び他のパラメータをデフォルト設定に設定して用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータに設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0101】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap: 5 and Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
【0102】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図および配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0103】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で、類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0104】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の電荷および疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(したがって機能も)保存する。
【0105】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズでアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスが選択される。ポリヌクレオチドのアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の一致率は、CLUSTAL Vによって「percent similarity(類似性パーセント)」として報告される。
【0106】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0107】
Matrix: BLOSUM62
Open Gap: 11 and Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter: on
【0108】
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図および配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0109】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、染色体の複製、分離及び維持に必要な全ての要素を含む直鎖状の微小染色体である。
【0110】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0111】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容的アニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更することができる。許容的アニーリング条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlの、せん断して変性したサケ精子DNAの存在下である。
【0112】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0113】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。或いは、約65℃、60℃、55℃または42℃の温度で行ってもよい。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。特定条件下で、例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションに有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、およびヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0114】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって形成された、2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0115】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0116】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0117】
「免疫原性断片」は、生物(例えば哺乳類)に導入すると免疫応答を引き起こし得る、KPPのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用な、KPPの任意のポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片をも指す。
【0118】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0119】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0120】
用語「モジュレート」または「活性を調節」は、KPPの活性を変化させることを指す。例えば、モジュレートによって、KPPのタンパク質活性の増減が、あるいは、結合特性またはその他の、生物学的特性、機能的特性あるいは免疫学的特性の変化が生じ得る。
【0121】
「核酸」および「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」および「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるかあるいはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0122】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列群は非常に近接するか連続的に隣接することがあり、また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は同一リーディングフレーム内にあり得る。
【0123】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、この組成に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0124】
KPPの「翻訳後修飾」としては、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、タンパク質分解切断、及びその他の当分野で既知の修飾を含み得る。これらのプロセスは、合成的或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、KPPの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なることとなる。
【0125】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、KPPやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に接着した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬および酵素がある。「プライマー」は、短い核酸、通常はDNAオリゴヌクレオチドであり、相補的塩基対を形成することで標的ポリヌクレオチドにアニーリングされ得る。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って伸長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸配列の増幅(および同定)に用い得る。
【0126】
本発明に用いるプローブおよびプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチド群からなる。特異性を高めるため、長めのプローブおよびプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブおよびプライマーも用い得る。これよりもかなり長いプローブおよびプライマーもある。表、図面および配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0127】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. 他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対を既知の配列から得るには、例えば、そのためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用い得る。
【0128】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチドおよび、最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得た配列を分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming library)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域のいずれかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、あるいは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0129】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、核酸の一部が単に付加、置換または欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部と成し得る。
【0130】
あるいはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部と成すことができ、ベクターは例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなベクターは哺乳類に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳類内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0131】
「調節因子」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を制御する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0132】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子およびその他の当分野で既知の成分がある。
【0133】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0134】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。KPPをコードする核酸若しくはその断片、またはKPP自体を含む疑いのあるサンプルは、体液や、細胞、染色体、細胞小器官または細胞から単離された膜からの抽出物や、細胞や、溶解しているか基板に結合しているゲノムDNA、RNAまたはcDNAや、組織や、組織プリント等から構成され得る。
【0135】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、遊離した標識A及びその抗体を含む反応において、エピトープA(つまり遊離した、標識されていないA)を含むポリペプチドの存在が、抗体に結合する標識されたAの量を低減させる。
【0136】
「実質的に精製された」の語は、自然環境から取り除かれ、単離または分離された核酸またはアミノ酸配列であって、自然に会合する他の構成要素の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましいのは少なくとも90%が無いものを指す。
【0137】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0138】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、ウェル、溝、ピン、チャネル、孔など、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0139】
「転写イメージ(transcript image)」または「発現プロファイル(プロフィール)」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0140】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する、任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージあるいはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクションおよび微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0141】
ここで用いる「遺伝形質転換体(transgenic organism)」とは任意の生物であり、限定するものではないが動植物を含み、生物の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することにより、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの感染によって行う。或る実施例において、核酸はレンチウイルスベクターのような組換えウイルスベクターを用いた感染によって導入することができる(Lois, C. 他(2002) Science 295:868-872)。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種あるいはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指す。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌および動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他 (1989)等の参考文献に記載されている。
【0142】
特定の核酸配列の「変異体/変異配列」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の配列同一性を有する核酸配列であると定義する。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として記載し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、あるいは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0143】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、そのポリペプチドの一方の所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0144】
(発明)
本発明は、新規のキナーゼおよびホスファターゼ(KPP)、およびKPPをコードするポリヌクレオチドの発見、及び心血管疾患、免疫系の疾患、神経の疾患、成長および発達に影響を及ぼす疾患、脂質異常、細胞増殖異常及び癌の診断・治療あるいは予防のためのこれらの組成物の使用に基づく。
【0145】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチドおよびその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は、本発明のポリペプチド配列とポリヌクレオチド配列とに対応する物理的完全長クローン群のIncyte ID番号を示す。完全長クローンは、列3に示すポリペプチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチドをコードする。
【0146】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO :)と最も近いPROTEOME データベース相同体のPROTEOME データベース識別番号 (PROTEOME ID NO:) を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBankとPROTEOMEデータベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0147】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0148】
表2及び3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドがキナーゼおよびホスファターゼであることを確立している。例えば、SEQ ID NO:2 はM1残基からV1037残基までマウス(Mus musculus)のセリン/トレオニンキナーゼUNC51.2 (GenBank ID g6580857) に93%同一であることが、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であるが、これは観測されたポリペプチド配列が偶然に得られる確率を示す。SEQ ID NO:2はまた、プロテインキナーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及PROFILESCANおよび追加のBLAST 解析よりのデータは、SEQ ID NO:2 がプロテインキナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0149】
別の実施例において、SEQ ID NO:6 はA13残基からN416残基までラットイノシトールポリリン酸マルチキナーゼ(GenBank ID g13162658) に83%同一であることがBLASTによって確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは2.2e-183である。
【0150】
別の実施例において、SEQ ID NO:7 はQ10残基からK319残基まで分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の推定Trp-Aspリピートタンパク質(GenBank ID g 3947883) に40%同一であることをBLASTによって確認した(表2参照)。BLAST確率スコアは4.7e-62である。SEQ ID NO:7はまた、G-ベータリピートであるWDドメインを有する。 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:7 がTrp-Asp (WD) リピートタンパク質である、さらに実証的な証拠を提供する。
【0151】
別の例おいて、SEQ ID NO:8 は、サブドメインIIにおける触媒的リジンを持たない新規の哺乳動物セリン/トレニオンタンパク質であるラットプロテインキナーゼWNK1にP86残基からE529残基まで67%同一であることをBLASTによって確認した(表2参照)。BLAST確率スコアは2.6e-200である。SEQ ID NO:8はまた、プロテインキナーゼドメインをも有する。 これは、HMMを基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、PROFILESCANおよび他のBLAST解析よりのデータによって、SEQ ID NO:8 がセリン/トレオニンプロテインキナーゼである、さらに実証的な証拠が提供される。
【0152】
別の例において、SEQ ID NO:10 はR127残基からV548残基までヒトプロテインキナーゼCのゼータアイソザイムC (GenBank ID g35501) に97%同一であることがBLASTによって確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは3.3e-296である。SEQ ID NO:10はまた、プロテインキナーゼドメインとプロテインキナーゼC末端ドメインをも有する。 これは、HMMを基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及び他のBLAST 解析よりのデータは、SEQ ID NO:10 がプロテインキナーゼCである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0153】
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3-5、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:11-14については、同様の方法で分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1−14の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0154】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)および対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、および塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列のアセンブリに使われたcDNA配列および/またはゲノム配列のヌクレオチド開始位置(5')と停止位置(15')、およびSEQ ID NO:15-28 を同定するか、またはSEQ ID NO:15-28 と、関連するポリヌクレオチド配列とを区別する技術(例えば、ハイブリダイゼーション技術または増幅技術)に有用なポリヌクレオチド配列の断片のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示す。
【0155】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は特に、例えば組織特異的cDNAライブラリあるいはプールしたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合もある。或いは列2に記載したポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチド配列のアセンブリに寄与したGenBank cDNAまたはESTを指す場合もある。さらに、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベースから由来した配列(即ち「ENST」命名を含む配列)を同定し得る。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方のアセンブリ体を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された(stitched)」配列である(実施例5参照)。または、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号またはNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0156】
あるいは、接頭コードは手作業で編集されたか、ゲノムDNA配列から予測されたか、または配列解析方法の組み合わせから由来している構成配列を同定する。次の表は構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する同じ配列の分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
Figure 2005502325
【0157】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために、表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNA適用範囲が得られたが、該当するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0158】
表5はIncyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリとはIncyte cDNAライブラリであり、これは、最も頻繁にはIncyte cDNA配列群によって代表されるが、これら配列は、上記のポリヌクレオチド配列をアセンブリおよび確認するために用いられた。cDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0159】
表8は、本発明のポリヌクレオチド配列に見られる一塩基多型((SNP) を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteプロジェクト識別番号(PID)を示す。列3はSNPが検出されたESTのIncyte識別番号(EST ID)を示し、列4はSNP の識別番号(SNP ID)を示す。列5はSNPが存在するEST配列内の位置(EST SNP)を示し、列6は完全長ポリヌクレオチド配列内のSNPの位置を示す。列7はEST配列内に存在する対立遺伝子を示す。列8および列9はSNP部位に存在する2つの対立遺伝子を示す。列10はESTに存在する対立遺伝子に基づいてSNP部位に含まれるコドンによってコードされるアミノ酸を示す。列11〜14は四つの異なったヒト母集団における対立遺伝子1の発生頻度を示す。n/d(検出されない)の項目は母集団における対立遺伝子1の発生頻度が低すぎて検出されなかったことを示し、また、n/a(利用不可)はその母集団において対立遺伝子の発生頻度が決定されなかったことを示す。
【0160】
本発明はまた、KPPの変異体も含む。好適なKPPの変異体のアミノ酸配列は、KPPアミノ酸配列と少なくとも約80%、または少なくとも約90%、或いは少なくとも約95%もの一致率を有し、KPPの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するような変異体である。
【0161】
本発明はまた、KPPをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施例において、本発明は、KPPをコードするSEQ ID NO:15−28からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。配列表に示したSEQ ID NO:15−28のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0162】
本発明はまた、KPPをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、KPPをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:15−18からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、または少なくとも約95%もの一致率を有するようなSEQ ID NO:15−28からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。 上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、KPPの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するアミノ酸配列をコードし得る。
【0163】
更にあるいは別法では、本発明のポリヌクレオチドの変異体はKPPをコ−ドするポリヌクレオチド配列のスプライス変異体である。スプライス変異体は、KPPをコードするポリヌクレオチド配列と有意な配列同一性をもつ部分であり得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって生じるブロックの配列の追加または欠損のため、その変異体は通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。スプライス変異体はその全長についてKPPをコードするポリヌクレオチド配列とのポリヌクレオチド配列同一性が約70%以下、あるいは約60%、あるいは約50%以下でありえるが、そのスプライス変異体のある部分はKPPをコードするポリヌクレオチド配列のある部分とのポリヌクレオチド配列同一性が少なくとも約70%、あるいは少なくとも約85%、あるいは少なくとも約95%、あるいは100%になっている。例えば、SEQ ID NO:26の配列を有する或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:16の配列を有するポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、SEQ ID NO:27の配列を有する或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:23の配列を有するポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、またSEQ ID NO:28の配列を有する或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:21の配列を有するポリヌクレオチドのスプライス変異体である。上記のスプライス変異配列は何れも、SECPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードすることができる。
【0164】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るKPPをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のKPPのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全てのそのような変異が明確に開示されているとみなす。
【0165】
KPPをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のKPPのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するKPP或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定コドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主または原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択し得る。コードされたアミノ酸配列を変えないで、KPP 及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0166】
本発明はまた、KPP及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後、当分野でよく知られている試薬を用いて、この合成配列を任意の様々な入手可能な発現ベクター及び細胞系中に挿入し得る。更に、合成化学を用いてKPP またはその任意の断片をコードする配列に突然変異を誘導し得る。
【0167】
更に本発明には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:15-28 及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511等を参照)。アニーリングおよび洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載した。
【0168】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用い得る。例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)を用い得る。あるいは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼとを併用し得る。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)およびABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373或いは377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ等を参照)。
【0169】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、KPPをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマーおよびネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、 Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318--322を参照)。別の方法にインバースPCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座およびその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えば、Triglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している。(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic 1:111-119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:30553060を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー類、およびPROMOTERFINDERライブラリ類(Clontech, Palo Alto CA)を用いて、ゲノムDNAをウォーキングし得る。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法では、市販ソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上で、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするように、プライマー群を設計し得る。
【0170】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5'領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5'非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
【0171】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化されるフルオロフォア(蛍光色素)と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0172】
本発明の別の実施態様では、適切な宿主細胞内で、KPP、その断片または機能的等価物を発現させる組換えDNA分子群に、KPPをコードするポリヌクレオチド配列群またはその断片群をクローニングし得る。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列群を作ることができ、これらの配列をKPPの発現に利用できる。
【0173】
種々の目的で、KPPをコードする配列群を改変するために、当分野で一般的に既知の方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列群を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物の、クローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0174】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.-C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17: 259-264; 及びCrameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャッフリング技術を用いてシャッフリングして、KPPの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのKPPの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択またはスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリングおよび選択/スクリーニングを行い得る。従って、「人工的な」育種及び急速な分子の進化によって遺伝的多様性が生み出される。例えば、ランダムポイント突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。或いは、所与の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、管理された、制御可能な方法で最大化させることができる。
【0175】
別の実施例では、KPPをコードする配列は当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215-223及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser7.225-232を参照)。別法として、化学的方法を用いてKPP自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行い得る(例えばCreighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60、Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202204を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にKPPのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更を用いた他のタンパク質の配列または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0176】
このペプチドは、分取用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質的に精製し得る(例えばChiez, R.M.およびF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421を参照)。この合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認できる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0177】
生物学的に活性なKPPを発現させるために、KPPをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。これらの要素には、ベクター及びKPPをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。必要なエレメント群は、強度および特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、KPPをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。KPP をコードする配列、およびその開始コドンや、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要でないこともある。しかしながら、コード配列あるいはその断片のみが挿入された場合は、インフレームATG開始コドンなど外来性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(例えば、Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162を参照)。
【0178】
当業者に周知の方法を用いて、KPPをコードする配列群と、好適な転写及び翻訳制御エレメント群とを持つ発現ベクター群を作製できる。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換え技術がある(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章、8章及び16-17章、Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY,9章、13章及び16章等を参照)。
【0179】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、KPPをコードする配列群の保持及び発現ができる。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌などの微生物や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス:CaMVまたはタバコモザイクウイルス:TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiプラスミドまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系がある。(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. 及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Engelhard、E.K. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他(1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307-311、『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J. 他T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813-815、McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.およびN. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0180】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、KPPをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、KPP をコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニングおよび増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。KPP をコードする配列をこのベクターのマルチクローニング部位にライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を持つ形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(例えば、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のKPPが必要な場合は、KPPの発現をハイレベルで指示するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0181】
KPPの産生には、酵母発現系の使用が可能である。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae) またはピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の、分泌か細胞内での保持かのどちらかを指示するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列群を組み込むことを可能にする(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol.153:516-544、及びScorer. C. A. 他 (1994) Bio/Technology 121−181-184.を参照)。
【0182】
植物系を使用してKPPを発現することも可能である。KPP をコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。あるいは、RuBisCOの小サブユニットなどの植物プロモーター、または熱ショックプロモーターを用い得る(例えば、Coruzzi, G. 他 (1984) EMBO J. 3: 1671-1680; Broglie, R. 他 (1984) Science 224: 838-843; および Winter, J. 他 (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85-105を参照)。これらの作製物は、直接DNA形質転換にまたは病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である。(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191-196ページ等を参照)。
【0183】
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とからなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に、KPP をコードする配列群をライゲーションし得る。非必須のE1またはE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でKPPを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J. および T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0184】
また、ヒト人工染色体(HAC)類を用いて、或るプラスミドに含まれ得る断片やプラスミドから発現し得る断片より大きなDNAの断片群を送達し得る。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で送達されている(例えばHarrington, J.J.他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。
【0185】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるKPPの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、KPPをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素及び/または内因性の発現要素や、同じベクター上に或いは別のベクター上に選択マーカー遺伝子を含み得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列をうまく発現するような細胞の成長および回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0186】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(Wigler, M. ら (1977) Cell 11:223-232、Lowy, I. ら (1980) Cell 22:817-823等を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシド系ネオマイシンおよびG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える( Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570; ColbereGarapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:114 等を参照。)この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDが、文献に記載されている(Hartman, S.C及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性あるいは安定したタンパク質発現を定量し得る(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0187】
マーカー遺伝子発現の有無によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在および発現の確認が必要な場合もある。例えば、KPP をコードする配列が或るマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、KPP をコードする配列群を有する形質転換された細胞群は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定できる。+または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がKPP をコードする配列とタンデムに配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0188】
一般に、KPPをコードする核酸配列を含み、KPPを発現する宿主細胞は、当業者に周知の種々の方法を用いて同定することが可能である。 これらの方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、また、核酸或いはタンパク質の検出及び/または数量化のための膜系、溶液ベース、或いはチップベースの技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0189】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるKPPの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。このような技法の例には、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取(フローサイトメーター)(FACS)などがある。KPP 上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ等を参照)。
【0190】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。KPPをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、KPPをコードする配列群、またはその任意の断片群を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングできる。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼおよび標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどから市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子あるいは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤などがある。
【0191】
KPPをコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換した宿主細胞は、細胞培地からのタンパク質の回収及び発現に適した条件下で培養し得る。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、あるいはその両者に依存する。KPPをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過してのKPPの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0192】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現をモジュレートする能力、または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための、特定の細胞装置および特徴的な機序を持つ、種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、WI38など)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするように選択し得る。
【0193】
本発明の別の実施態様では、KPPをコードする天然の核酸配列、修飾された核酸配列、または組換えの核酸配列を、上記した任意の宿主系内の融合タンパク質の翻訳を生じる或る異種配列にライゲーションし得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラKPPタンパク質が、KPP活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分および異種ペプチド部分も、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-mycおよび赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、融合タンパク質が、KPPをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を持つように遺伝子操作すると、精製後にKPPが異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現および精製方法は、前出のAusubel(1995)10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現および精製を促進することもできる。
【0194】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したKPPの合成が可能である。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0195】
本発明のKPPまたはその断片を用いて、KPPに特異結合する化合物をスクリーニングできる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、KPPへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドまたは受容体)または小分子が挙げられる。ある実施態様では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのKPPの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性パートナーまたは自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2): 5章などを参照)。別の実施例において、このようにして同定された化合物は天然のリガンドの受容体KPPである(Howard, A.D. 他(2001) Trends Pharmacol. Sci.22:132-140; Wise, A. 他 (2002) Drug Discovery Today 7:235-246等を参照)。
【0196】
別の実施例では、この化合物はKPPが結合する天然の受容体、少なくとも受容体の断片、または、リガンド結合部位または結合ポケットの全部あるいは一部を含む受容体の断片に密接に関連し得る。例えば、この化合物はシグナルを伝播できるKPPの或る受容体、あるいは、シグナルを伝播できないKPPの或るデコイ受容体であり得る(Ashkenazi, A. 及びV.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol. 11:255-260; Mantovani, A. 他 (2001) Trends Immunol. 22:328-336)。この化合物は既知の技術を用いて合理的に設計され得る。このような技術の例にはヒトの関節リューマチの治療に有効な化合物エタネルセプト(etanercept) (ENBREL; Immunex Corp., Seattle WA)の作成に使われる技術が含まれる。エタネルセプトは、遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体二量体であり、ヒトのIgG1のFc部分に連結されている。
【0197】
一実施態様では、KPPに特異的に結合、刺激、あるいは阻害する化合物のスクリーニングには、分泌タンパク質として、あるいは細胞膜上でKPPを発現する、好適な細胞群の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。次に、KPP を発現する細胞、またはKPP を含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、結合や、KPP または該化合物の何れかの結合、刺激または活性の阻害を分析する。
【0198】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中のあるいは固体支持物に固定されたKPPと混合させるステップと、KPPとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出および測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然産物の混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0199】
或るアッセイは、或る化合物がその天然のリガンドに結合する能力、またはその天然のリガンドの天然の受容体への結合を阻害する或る化合物の能力を評価するために使うことができる。このようなアッセイの例には、米国特許第5,914,236号 および米国特許第6,372,724号で説明されているような放射標識アッセイ法が含まれる。関連する実施例において、一つ以上のアミノ酸置換をポリペプチド化合物(受容体等)に導入して、その天然のリガンドへの結合能力を改善または改変することができる(Matthews, D.J. and J.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30等参照)。その他の関連する実施例において、一つ以上のアミノ酸置換をポリペプチド化合物(リガンド等)に導入して、その天然の受容体への結合能力を改善または改変することができる(Cunningham, B.C. 及びJ.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411; Lowman, H.B. 他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988等参照)。
【0200】
本発明のKPPまたはその断片を用いて、KPPの活性を調節する化合物をスクリーニングできる。このような化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニストまたは逆アゴニストなどが含まれ得る。ある実施態様では、KPP活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をKPPと混合し、試験化合物の存在下でのKPPの活性を試験化合物不在下でのKPPの活性と比較する。試験化合物の存在下でのKPPの活性の変化は、KPPの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をKPPの活性に適した条件下でKPPを含むin vitroすなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、KPPの活性をモジュレートする試験化合物は間接的にモジュレートする場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、または複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0201】
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、KPPまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号および第5,767,337号などを参照)。例えば129/SvJ細胞系などのマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換される。このベクターは、相同組換えにより、宿主ゲノムの対応する領域に組込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U.他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス株などから採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。これらの胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を特定し、これらを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬物で検査されうる。
【0202】
KPPをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉および外胚葉の細胞タイプを含む、少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統および心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他 (1998) Science 282:1145-1147)。
【0203】
KPPをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、KPPをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について試験し、潜在的医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばKPPを乳汁内に分泌するなどKPPを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0204】
(治療)
KPPのある領域とキナーゼおよびホスファターゼの領域との間に、例えば配列およびモチーフの内容における化学的および構造的類似性が存在する。さらに、KPPを発現する組織の例を表6に示す。したがって、KPPは心臓血管系疾患、免疫系疾患、神経疾患、成長および発達に影響する疾患、脂質障害、細胞の異常増殖および癌に関与すると考えられる。KPPの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、KPPの発現または活性を低下させることが望ましい。また、KPPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、KPPの発現または活性を亢進させることが望ましい。
【0205】
従って、一実施例において、KPPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にKPPまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎および静脈血栓、血管系腫瘍、血栓溶解の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス移植、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱及びリウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血および肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎およびマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏性肺炎、肺好酸球増加、閉塞性細気管支炎―器質化肺炎(bronchiolitis obliterans-organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、膠原血管病併発性肺疾患、肺胞タンパク症、肺腫瘍、炎症性および非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、および肺移植の合併症などが含まれる。免疫系疾患の中には、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性およびウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎および神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病およびゲルストマン‐シュトロイスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病および代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神遅滞、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎および多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性および中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害および統合失調症(精神分裂病)を含む精神障害と、季節性感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症、家族性前頭側頭痴呆が含まれ、成長および発達に影響を及ぼす疾患の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれ、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM ガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、微小変化型ネフローゼ症候群、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症があり、また細胞増殖異常として、日光性角化症、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症があり、また癌として腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌等の癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌、多発性骨髄腫などの白血病、ホジキン病などのリンパ腫が含まれる。
【0206】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むKPPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、KPPまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0207】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、KPPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたKPPを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
【0208】
更に別の実施例では、KPPの活性を調節するアゴニストを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むKPPの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0209】
更なる実施例では、KPPの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にKPPのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した心血管系疾患、免疫系疾患、神経疾患、発生または発達障害、脂質障害、細胞増殖異常および癌が含まれる。一実施態様では、KPPと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはKPPを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶ標的化機構、或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0210】
別の実施例では、KPPをコードするポリヌクレオチドの相補体を発現するベクターを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むKPPの発現または活性の増大に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0211】
別の実施態様では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組合せて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組合せることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法により、少量の各薬物で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0212】
KPPのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造し得る。詳しくは、精製されたKPPを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてKPPと特異的に結合する薬の同定が可能である。KPPの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(すなわち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えば由来はラクダまたはラマ)は強力な酵素阻害剤である可能性があり、ペプチド擬態物質の設計において利点を持つようであり、免疫吸着剤とバイオセンサーとの開発においても利点を持つようである(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0213】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、KPPまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ジニトロフェノールなどの界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)およびコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0214】
KPPに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなる、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片はまた、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。KPPアミノ酸類の短いストレッチ群は、KLHなど他のタンパク質の配列と融合され、このキメラ分子に対する抗体群が産生され得る。
【0215】
KPPに対するモノクローナル抗体は、抗体分子を産生する任意の技術を用いて、培地内の連続した細胞株によって作製し得る。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D.他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P.他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0216】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために開発された技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:68516855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他. (1985) Nature 314:452-454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、KPP特異性一本鎖抗体を生成する。関連した特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリ類からチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0217】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリまたはパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G. 他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
【0218】
KPPのための特異結合部位を有する抗体断片を産生することもできる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
【0219】
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的結合アッセイ、または免疫放射定量測定法のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このような免疫測定法には、KPPとその特異抗体との間の複合体の計測が含まれる。二つの非干渉性KPPエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0220】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、KPPに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表す。Kaの定義は、平衡状態下の、KPP抗体複合体のモル濃度を、遊離抗体と遊離抗原とのモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多様なKPPエピトープに対して親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体製剤に関して判定したKaは、KPPに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のKPP エピトープに単一特異的なモノクローナル抗体試薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が10〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、KPP抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が10〜10L/molの低親和性抗体医薬は、KPPが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. and Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0221】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価および結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質および適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を持つポリクローナル抗体試薬は一般に、KPP抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(前出のCattyの文献、同Coligan 他の文献等を参照)。
【0222】
本発明の別の実施例では、KPPをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、KPPをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、または修飾したオリゴヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンス、、オリゴヌクレオチドまたはより大きな断片が、KPPをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。(例えばAgrawal, S., ed. (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJを参照。)
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で細胞内に送達することが可能である(Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475 及び Scanlon, K.J. 他 (1995)9(13):1288-1296等を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W.及びW. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープおよび当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217-225、Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736.等を参照)。
【0223】
本発明の別の実施態様では、KPPをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M.他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C.他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G.他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G.他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. and Somia. N. (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生生物(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E.他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生菌、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原生動物寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。KPPの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からKPPを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0224】
本発明の更なる実施例では、KPPの欠損による疾患や異常症を、KPPをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってKPP欠損細胞に導入することによって治療する。in vivoあるいはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、および(v)DNAトランスポゾンの使用がある(Morgan, R.A. および W.F. Anderson(1993)Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z.(1997)Cell 91:501-510; Boulay, J-L. およびH. Recipon(1998)Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
【0225】
KPPの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAXベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。KPPは、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えばサイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)またはβアクチン遺伝子)、(ii)誘導性プロモーター(例えばテトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551、Gossen, M. ら (1995) Science 268:1766-1769、Rossi, F.M.V. and H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456)、市販のInvitrogen社のT-REXプラスミドに含まれる)、エクジソン誘導性プロモーター(Invitrogen社のプラスミドPVGRXR及びPINDから得られる)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーターまたはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(前出のRossi, F.M.V. 及び H.M. Blau)、または(iii)正常個体由来の、KPPをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いて、発現させることができる。
【0226】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPERFECT LIPID TRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳類の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0227】
本発明の別の実施例では、KPPの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でKPPをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。 上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A. および A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞株群を得る方法が開示されており、引用を以て本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0228】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、KPPの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞群に、KPPをコードするポリヌクレオチド群を送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製およびパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内に導入する目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他 (1995) Transplantation 27:263268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544 及び Verma, I.M. 及び N. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0229】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、KPPの発現に関して1以上の遺伝子異常を持つ標的細胞に、KPPをコードするポリヌクレオチド類を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターの利用は、HSVが親和向性を持つ中枢神経細胞にKPPを導入する際に特に有用たり得る。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。 複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。 米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外因性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532 及び Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なったセグメント群を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0230】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてKPPをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシドタンパク質が過剰産生される。同様に、KPPのコード配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のKPPをコードするRNAが産生され、高レベルでKPPが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群において持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他 (1997) Virology 228:74-83)。αウイルスの宿主域は広いので、様々なタイプの細胞にKPPを導入できることとなる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNAおよびRNAの形質移入方法およびαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0231】
転写開始部位(transcription initiation site)由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。この位置は、例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開く、二重らせんの能力を阻害するので有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E.他 (1994) in: Huber、B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163-177ページ等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計することができる。
【0232】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人工的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、KPPをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0233】
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対して標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を持つ標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチド群とのハイブリダイゼーションへのアクセス可能性をテストすることによって行い得る。
【0234】
本発明の相補リボ核酸分子およびリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相ホスホラミダイト化学合成など、オリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、RNA分子は、KPPをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によって産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6などの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞または組織内に導入することができる。
【0235】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするために、RNA分子を修飾し得る。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5'末端、3'末端、あるいはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを使用することが含まれる。この概念は、本来はPNA群の産出におけるものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−および同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)を加える。
【0236】
本発明の更なる実施例は、KPPをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現の改変に効果的な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を改変し得る。従って、KPPの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、KPPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、KPPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、KPPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0237】
或る特定ポリヌクレオチドの発現を改変する際の有効性について、少なくとも1個、または複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変えるのに有効であるとされている化合物の化学的修飾、天然または非天然の化合物の既存の、市販または私的なライブラリからの選択、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインすること、および組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリからの選択がある。KPPをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルは例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、あるいはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。KPPをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常、KPPをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。特異的ポリヌクレオチドの発現の改変に有効な化合物のスクリーニングは、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いて行うことができる。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性を調べるためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド等)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関する(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0238】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを、患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、またはリボソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(例えばGoldman, C.K.他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466を参照)。
【0239】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含めて治療が必要な全ての被験体に適用できる。
【0240】
本発明の或る更なる実施態様は、薬物として許容できる或る賦形剤と共に製剤される或る活性成分を一般に有する、或る組成物の投与に関する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴムおよびタンパク質がある。様々な剤型が広く知られており、詳細は
Remington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、KPP、KPPの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはKPPのインヒビターなどからなる。
【0241】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0242】
肺から投与する組成物は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチドおよびタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリンなどの薬物を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号などを参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0243】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0244】
KPPまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、その高分子の細胞融合と細胞内送達とを促進し得る。別法では、KPPまたはその断片をHIV Tat-1タンパク質の陽イオン性N末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
【0245】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌまたはブタ等において、先ず治療有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲および投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量および投与経路を決定することができる。
【0246】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性成分の量、たとえばKPPまたはその断片、KPPの抗体、KPPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの量を指す。治療有効性及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイと動物実験とから得られたデータは、ヒトに用いる投与量の範囲の策定に用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆どあるいは全く持たず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、用いられる投与形態、患者の感受性および投与の経路によってこの範囲内で変わる。
【0247】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。充分なレベルの活性成分を与え、あるいは所望の効果を維持すべく、用法および用量を調整する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の全身健康状態、被験者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、薬剤の併用、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0248】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100.000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量および送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、ヌクレオチドの処方では、タンパク質またはそれらのインヒビター類とは異なる処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとなる。
【0249】
(診断)
別の実施例では、KPPに特異的に結合する抗体が、KPPの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはKPPやKPPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作成される。KPPの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからKPPを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものも、されていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0250】
KPPを測定するための様々なプロトコル、例えばELISA、RIA、FACS等が本技術分野において知られており、KPP発現の修正レベル或いは異常レベルを診断する基準を提供する。正常或いは標準的なKPPの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とKPPに対する抗体とを混合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験体、対照、および、生検組織からの疾患サンプルでの、KPP発現の量を標準値と比較する。標準値と被験体との偏差が、疾患を診断するパラメータを確定する。
【0251】
本発明の別の実施態様では、KPPをコードするポリヌクレオチドを、診断のために用い得る。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。これらのポリヌクレオチドを用いて、KPPの発現が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出し定量し得る。この診断アッセイを用いて、KPPの存在の有無、更には過剰な発現を判定し、治療時のKPPレベルの調節を監視し得る。
【0252】
一実施形態では、例えばKPPをコードまたは近縁の分子群をコードするゲノム配列群など、ポリヌクレオチド配列を検出できるPCRプローブとのハイブリダイゼーションを用いて、KPPをコードする核酸配列群を同定できる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いは特異性のやや低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性、およびハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェンシーによって、そのプローブが、KPP、対立遺伝子、または関連配列をコードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0253】
プローブはまた、関連する配列の検出にも用いることができ、その配列はKPPをコードする任意の配列と少なくとも50%の相同性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:15−28の配列、或いはKPP遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0254】
KPPをコードするDNAに対する特異的ハイブリダイゼーションプローブを作製する方法には、KPPまたはKPP誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を、mRNAプローブを作製するためのベクターにクローニングする方法が含まれる。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0255】
KPPをコードするポリヌクレオチド配列は、KPPの発現に関係する疾患の診断の為に用い得る。限定するものではないが、このような疾患には心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎および静脈血栓、血管系腫瘍、血栓溶解の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス移植、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱及びリウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血および肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎およびマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏性肺炎、肺好酸球増加、閉塞性細気管支炎―器質化肺炎(bronchiolitis obliterans-organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、膠原血管病併発性肺疾患、肺胞タンパク症、肺腫瘍、炎症性および非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、および肺移植の合併症などが含まれる。免疫系疾患の中には、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性およびウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎および神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病およびゲルストマン‐シュトロイスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病および代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神遅滞、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎および多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性および中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害および統合失調症(精神分裂病)を含む精神障害と、季節性感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症、家族性前頭側頭痴呆が含まれ、成長および発達に影響を及ぼす疾患の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれ、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM ガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、微小変化型ネフローゼ症候群、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症があり、また細胞増殖異常として、日光性角化症、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症があり、また癌として腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌等の癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌、多発性骨髄腫などの白血病、ホジキン病などのリンパ腫が含まれる。KPP をコードするポリヌクレオチド配列は、変容したKPP 発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、およびマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0256】
或る形態では、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて、KPPをコードするヌクレオチド配列が有用であり得る。KPPをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプル中のシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変化している場合は、該サンプル内の、KPPをコードするヌクレオチド配列群のレベル変化の存在が、関連する疾患の存在を標示する。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、あるいは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0257】
KPPの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、KPPをコードする配列或いはその断片とを混合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量で用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0258】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0259】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0260】
KPPをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドの、更なる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、あるいはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはKPPをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはKPPをコードするポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適化された条件下で特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェンシー条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0261】
或る実施態様では、KPPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入および欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、KPPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。このDNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液などに由来し得る。DNA内のSNPによって、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異が生じる。この差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列へアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0262】
SNPを利用して、ヒト疾患の遺伝的基礎を研究しうる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPはまた、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、慢性肉芽腫性疾病等の単一遺伝子病の転帰の違いを研究するために有用である。例えば、マンノース結合レクチンでの変異体(MBL2)は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することがわかっている。SNPはまた、生命を脅かす毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、N-アセチルトランスフェラーゼにおける或る変異は抗結核剤、イソニアジドに応答した末梢神経障害の発生率が高くなるが、ALOX5 遺伝子のコアプロモータの変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息薬での治療に対する臨床的反応を減少する。異なった集団でのSNPの分布についての分析は遺伝的浮動、突然変異、組み換えおよび選択の研究に有用であると共に、集団の起源と移動の調査にも有用である(Taylor, J.G他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P.他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0263】
KPPの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識またはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、 Melby, P.C. 他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235-244; Duplaa, C. 他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照)。目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0264】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列に由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、或るマイクロアレイにおけるエレメント群として用いることができる。多数の遺伝子の相対発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異および多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬物の活性を開発およびモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用の最も少ない治療薬を選択することができる。
【0265】
別の実施態様では、KPP、KPPの断片または、KPPに特異的な抗体類を、或るマイクロアレイ上のエレメントとして用い得る。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬物−標的相互作用および遺伝子発現プロファイルをモニターまたは測定することが可能である。
【0266】
或る実施態様は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数および相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。当該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写物または逆転写物全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその相補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその相補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供し得る。
【0267】
転写イメージは、組織、細胞株、生検またはその生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージはしたがって、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0268】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用機序及び毒性メカニズムを示す、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャ(toxicant signatures)と称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S. 及び N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同様のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子および遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ正確である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変容しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、種々の化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャ群の統計的マッチングには、遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日に米国国立環境衛生科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。したがって、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは、重要且つ望ましい。
【0269】
或る実施例では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ以上のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写物レベルを定量し得る。処理した生体サンプル中の転写レベルを、未処理生体サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写物レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0270】
別の実施態様は、本発明のポリペプチド配列群を用いて或る組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更なる分析にかけることができる。プロテオーム発現パターンすなわちプロファイルは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数および相対存在量を定量することにより分析し得る。したがって、或る細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離および分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により、分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、あるいは銀染色液または蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生体サンプルからの、同等に位置したタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。或るスポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0271】
プロテオームのプロファイルは、KPPに特異的な抗体を用いてKPP発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他 (1999) Anal. Biochern. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0272】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。いくつかの組織のいくつかのタンパク質については、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関が乏しいので(Anderson, N.L. および J. Seilhamer(1997)Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロファイルを改変するような化合物の分析において、プロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロファイル作成はこのような場合により信頼し得、情報価値があり得る。
【0273】
別の実施例では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0274】
別の実施例では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生体サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0275】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他の (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他の (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他の (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。
【0276】
本発明の別の実施態様ではまた、KPPをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。配列は、或る特定の染色体に、または或る染色体の或る特定領域に、または人為形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、あるいは単一染色体cDNAライブラリ群に対してマッピングされる(例えばHarrington, J.J. 他(1997)Nat. Genet. 15:345-355、Price, C.M.(1993)Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J.(1991)Trends Genet. 7:149-154を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列群を用いて、例えば或る病状の遺伝を特定染色体領域の遺伝とまたは制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を開発し得る(例えば、 Lander, E.S. 及び D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0277】
蛍光in situハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(例えばHeinz-Ulrich,他 (1995) in Meyers, 前出 965-968ページを参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のKPPをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、あるいは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、ポジショナルクローニングの作業を促進し得る。
【0278】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳類の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニング、またはその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。いったん疾患または症候群に関与する遺伝子(群)が、血管拡張性失調症の11q22-23領域など、特定のゲノム領域への遺伝的連鎖によって、大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子あるいは調節遺伝子を提示している可能性がある(例えばGatti, R.A. 他 (1988) Nature 336:577580を参照)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0279】
本発明の別の実施例では、KPP、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置しうる。KPPと、検査される薬剤との結合による複合体の形成を測定しうる。
【0280】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen, 他 (1984) PCT application WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の様々な低分子の試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、KPP、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、本技術分野でよく知られている方法で、結合したKPPを検出する。精製したKPPはまた、上記した薬剤のスクリーニング技術において用いるプレート上で直接コーティングすることもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0281】
別の実施例では、KPPと結合可能な中和抗体がKPPと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、KPPと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0282】
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にKPPをコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
【0283】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0284】
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物、特に米国特許第60/293.665号、第60/298.712号、第60/303.418号、第60/306.967号、第60/308.183号、第60/343.007、第60/357.675および第60/376.988は、言及することをもって本明細書の一部となす。
【実施例】
【0285】
cDNA ライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールにまたは変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得た溶解物は、塩化セシウムのクッション液の上に重層して遠心分離するか、クロロフォルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0286】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0287】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で既知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニット等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素または酵素群でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ選択(300〜1000bp)は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Biosciences)、あるいは分取用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの、適合する制限酵素部位にライゲーションされた。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Invitrogen)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)、またはplNCY(Incyte Genomics)、またはこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRFまたはSOLR、或いはInvitrogen社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含むコンピテントな大腸菌細胞に形質転換した。
【0288】
cDNA クローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus PlasmidおよびQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0289】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解および熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKAN2蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0290】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences 社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離には、また、標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)か、標準ABIプロトコルと塩基対呼び出しソフトウェアとを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、あるいはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて同定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0291】
Incyte cDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。 その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、IncyteのcDNA配列、またはその翻訳を公共のデータベース(例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、および鵞口瘡カンジダ(Candida albicans )からの配列を含むPROTEOMEデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、及びPFAM等隠れマルコフモデル(HMM)に基づいたタンパク質ファミリーデータベース並びに、SMART(Schultz 他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I. 他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)のようなHMMに基づいたタンパク質ドメインデータベースから選択したデータベースに対して問い合わせた。(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。Eddy, S.R. (1996) Cuff. Opin. Struct. Biol. 6:361-365等を参照)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS、およびHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するようにアセンブリした。あるいは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、またはGenscan予測コード配列群(実施例4および5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体群を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を引き出した。あるいは、本発明のポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOMおよびProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、およびTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)およびLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列間の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって指定されるデフォルトパラメータを用いて作製する。
【0292】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、または確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
【0293】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:15-28のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0294】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定及び編集
推定上のキナーゼおよびホスファターゼは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C及びS. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C及びS. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346-354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶアセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列がキナーゼおよびホスファターゼをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいてキナーゼおよびホスファターゼについて問合せて分析した。潜在的なキナーゼおよびホスファターゼも、キナーゼおよびホスファターゼとして注釈が付けられたIncyte cDNA配列に対する相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNAまたは公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載したアセンブリプロセスを用いて、Incyte cDNA配列および/または公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、または非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0295】
5 cDNA 配列データを使ったゲノム配列データのアセンブリ
スティッチ配列( Stitched Sequence
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ以上のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。区間の全長が、2つ以上の配列に在るような配列区間群をクラスター内で同定し、そのように同定された区間群は、推移性により、等しいと考えた。例えば、1つのcDNAと2つのゲノム配列上に或る区間が存在する場合、この3つの区間は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われる順にステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した区間間の連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpeptおよびgbpriと比較した。Genscanが予測した不正確なエキソン群は、genpeptからのトップBLASTヒットとの比較により補正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0296】
ストレッチ配列( Stretched Sequence
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載したようにアセンブリされた部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入または欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0297】
KPP をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:15-28をアセンブリするために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:15-28 と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続及びオーバーラップした配列のクラスターにアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethonなどの公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッドおよび遺伝地図データを用いて、いずれかのクラスター化された配列が既にマッピングされているかを判定した。マッピングされた配列が或るクラスターに含まれている場合、そのクラスターの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0298】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または区間として表される。センチモルガン単位での或る区間の地図上の位置は、染色体の短腕(p-arm)の末端に対して測定する(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。 もっとも、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットによって広範囲に変化する)。cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap/)など一般個人が入手可能なヒトゲノム地図などの資源を用いて、既に同定された疾患遺伝子類が、上記の区間内若しくは近傍にマップされているかを判定できる。
【0299】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種または組織からのRNAが結合されている膜への標識ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している。(例えば前出のSambrook, 7章、同Ausubel (1995) 4章および16章を参照)。
【0300】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、任意の特定の一致を厳密なあるいは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を修正することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0301】
【数1】
Figure 2005502325
【0302】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100のノーマライズされた値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に−4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0303】
或いは、KPPをコードするポリヌクレオチド配列群を、由来する組織源について分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリされる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。すなわち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性または尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリーすなわち癌、細胞系、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。 各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、KPPをコードするcDNAの組織特異的および疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0304】
KPP をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、該断片から設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて完全長分子の適切な断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマーは、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの伸長は全て回避した。
【0305】
選択したヒトcDNAライブラリ群を用い、配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマーあるいはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0306】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマーを有する。また、Mg +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマー対、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 60℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃, 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃、15 秒、ステップ 3: 57℃、 1 分、ステップ 4: 68℃、2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃, 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。
【0307】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0308】
伸長したヌクレオチドは、脱塩および濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、音波処理またはせん断し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結を行った。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長したクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハング部分を満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0309】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃、 15 秒、ステップ 3: 60℃、 1 分、ステップ 4: 72℃、 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を29回反復する。ステップ6: 72℃、5 分、ステップ7: 4℃で保存する。上記のようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0310】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証した。あるいは、完全長ポリヌクレオチドを用い、上記手順で、そのような伸長のために設計したオリゴヌクレオチド類と、或る適切なゲノムライブラリとを用いて5'調節配列を得た。
【0311】
KPP をコードするポリヌクレオチドの SNP( 一塩基多型 ) の同定
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:15-28において同定された。実施例3に記述されているように、同じ遺伝子からの配列を共にクラスターにしてアセンブリし、これによって遺伝子内のすべての配列変異体の同定ができた。一連のフィルタからなるアルゴリズムを使って、SNPを他の配列変異体から区別した。前段フィルターは、最小限Phredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アライメントエラーや、ベクター配列、キメラおよびスプライス変異体の不適当なトリミングにより生じるエラーを取り除いた。染色体の高度解析の自動化手順により、推定SNPの近傍におけるオリジナルのクロマトグラムファイルが解析された。クローンエラーフィルタは統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ、または体細胞突然変異によって引き起こされるエラーのような、実験処理時に導入されるエラーを識別した。クラスターエラーフィルターは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体または偽遺伝子のクラスター化に起因するエラー、または非ヒト配列によるコンタミネーションにより生じたエラーを同定した。最後のフィルター群によって、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に存在する重複(duplicates)とSNPが除去された。
【0312】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人母集団は、ユタ州の83人、フランス人4人、ベネズエラ3人およびアーミッシュ派2人を含む92人(男性46人、女性46人)で構成された。アフリカ人母集団はすべてアフリカ系アメリカ人である194人( 男性97人、 女性97人)からなる。ヒスパニック母集団はすべてメキシコ系ヒスパニックの324人( 男性162人、 女性162人)からなる。アジア人母集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、親の内訳は中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%およびその他のアジア人8%と報告されている。対立形質の発生頻度は最初に白人母集団において分析し、いくつかの例において、この母集団で対立形質分散を示さなかったSNPは他の三つの母集団においてさらに検査しなかった。
【0313】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:15-28から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビーズカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0314】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0315】
11 マイクロアレイ
或るマイクロアレイ上でのアレイエレメント群の連接または合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweilerなどを参照)、機械的マイクロスポッティング技術およびこれらから派生した技術を用いて達成し得る。上記各技術において基板は、均一且つ、無孔の表面を持つ固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップおよびシリコンウェハがある。あるいは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似した手順を利用し、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置および結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他. (1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他. (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31等を参照)。
【0316】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)など本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。あるいは、レーザー脱離および質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。 一実施態様におけるマイクロアレイの調製および使用について、以下に詳述する。
【0317】
組織または細胞サンプルの調製
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルは、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1X 第1鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害剤、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)またはdCTP-Cy5(Amersham Biosciences)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用い、200ngのポリ(A)+RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 混合した後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール沈殿させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて完全に乾燥させ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
【0318】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートを持つベクター含有細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
【0319】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、0.1%のSDSおよびアセトン中で超音波洗浄し、処理の間および処理後に充分に蒸留水で洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation(VWR), West Chester PA)中でエッチングし、充分に蒸留水中で洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0320】
米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 この特許に引用することを以って本明細書の一部とする。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0321】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0322】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバー内を湿度100%に保つため、140μlの5×SSCをチェンバーの1コーナーに加える。アレイを入れたチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間ずつ3回洗浄し、乾燥させる。
【0323】
検出
レポーター標識したハイブリダイゼーション複合体を検出するには、Cy3の励起のために488nm、Cy5の励起のために632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡を用いる。励起レーザー光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0324】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つのフルオロフォアを連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフィルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフィルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0325】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つの蛍光色素で標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0326】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化したデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラースケールへのリニア20色変換を用いて、シグナル強度がマッピングされたイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なるフルオロフォアを同時に励起および測定する場合には、各フルオロフォアの発光スペクトルを用いて、データは先ずフルオロフォア間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正される。
【0327】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0328】
12 相補的ポリヌクレオチド
KPPをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的配列は、天然のKPPの発現を検出し、低下させ、または阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さなあるいは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)と、KPPのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、KPPをコードする転写物にリボソームが結合するのを防ぐ。
【0329】
13 KPP の発現
KPPの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌内でKPP を発現させるには、抗生物質耐性遺伝子と、cDNAの転写レベルを高める誘導性プロモーターとを持つ、好適なベクターに、cDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターとしては、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5またはT7バクテリオファージプロモーター、およびtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性細菌は、イソプロピルβ-Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導されるとKPP を発現する。真核細胞でのKPP の発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に、一般にバキュロウイルスとして知られるAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、KPP をコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスへの更なる遺伝的修飾が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945.等を参照)。
【0330】
殆どの発現系では、KPPが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、または、FLAGや6-Hisなどペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの、組換え融合タンパク質の、親和性ベースの精製を迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性および抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製後、GST部分を、特異的に操作した諸部位において、KPP からタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナルおよびポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現および精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で得られた精製KPP を直接用いて以下の実施例17、18、19、20および21のアッセイを行うことができる。
【0331】
14 機能的アッセイ
KPP機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのKPPをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターとしては、PCMV SPORT(Invitrogen, Carlsbad CA)およびPCR 3.1プラスミド(Invitrogen,)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤あるいは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパク質の発現の変容、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変容とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
【0332】
遺伝子発現におけるKPPの影響は、KPPをコードする配列とCD64またはCD64-GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。KPP及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0333】
15 KPP 特異的抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488-495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたKPP を用いて、標準的なプロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を作り出す。
【0334】
あるいは、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてKPP アミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。C末端付近あるいは親水性領域などの、適切なエピトープの選択方法については、当分野に記述が多い(前出のAusubel, 1995, 11章などを参照)。
【0335】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995 等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗KPP 活性を検査するには、ペプチドまたはKPP を基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0336】
16 特異的抗体を用いる天然 KPP の精製
天然または組換えKPPを、KPP特異抗体を用いたイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗KPP抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0337】
KPPを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、KPPを優先的に吸着する条件下(例えば洗浄剤が存在する高イオン強度緩衝液)でカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とKPPとの結合を切るような条件で(例えば、或るpH2〜3のバッファー、あるいは高濃度の、例えば尿素またはチオシアン酸イオンなどのカオトロープで)溶出させ、KPPを回収する。
【0338】
7 KPP と相互作用する分子の同定
KPPまたは生物学的に活性であるKPP断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する。(例えばBolton A.E.およびW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したKPPと共にインキュベートし、洗浄して、標識したKPP複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なKPP濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したKPPの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0339】
別法では、KPPと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステムやMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0340】
KPPはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0341】
18 KPP 活性の実証
通常、プロテインキナーゼ活性は、[γ-32P]ATPの存在で、KPPによりタンパク質基質のリン酸化を定量化することで測定される。KPPを、タンパク質基質、32P-ATP、および或る適切なキナーゼバッファと共にインキュベートする。基質に組み込まれた32Pを、電気泳動法で遊離32P-ATPより分離し、組み込まれた32Pをラジオアイソトープカウンターでカウントする。組み込まれた32Pの量は、KPPの活性に比例する。リン酸化した特異的アミノ酸残基の判定を、加水分解したタンパク質のホスホアミノ酸解析で行う。
【0342】
或る実施態様では、プロテインキナーゼ活性はガンマリン酸塩がアデノシン三リン酸(ATP)からタンパク質基質中のセリン、トレオニン、またはチロシン残基に転移する量を定量化することによって測定される。反応はビオチン標識されたペプチド基質を有するプロテインキナーゼサンプルとガンマ32P-ATPとの間で起こる。反応に続き、溶液中のアビジンがビオチン標識された32Pペプチド生成物に結合させる目的で添加される。結合試料は、次に生成物アビジン複合体を保持し、遊離のγ32P-ATPの透過させる膜を用いて、遠心限外濾過プロセスを行う。残余として32Pペプチド生成物を含む遠心分離されたユニットのリザーバーは、次にシンチレーションカウンタでカウントされる。この方法は、選択されたペプチド基質及びキナーゼ反応バッファによってあらゆるタイプのプロテインキナーゼのアッセイを可能とする。このアッセイは、キット形態(ASUA, Affinity Ultrafiltration Separation Assay, Transbio Corporation, Baltimore MD,米国特許番号 5, 869, 275)で提供される。限定するものではないが、示唆された基質及びその各々の酵素は、ヒストンH1(シグマ)及びp34cdc2キナーゼ、アネキシンI、アンギオテンシン(シグマ)及びEGF受容体キナーゼ、アネキシンII及びsrcキナーゼ、ERK1及びERK2基質及びMEK、ミエリン塩基性蛋白質及びERKである(Pearson, J. D.他(1991) Methods Enzymol. 200 : 62-81)。
【0343】
別の実施態様では、KPPのプロテインキナーゼ活性は、KPP、50μlのキナーゼバッファー、ミエリン塩基性蛋白質(MBP)若しくは合成ペプチド基質のような基質1μg、1mMのDTT、10μgのATP、及び0,5. 5μCiの[γ-32P]ATPを含むアッセイに於いて証明される。反応液を30℃で30分間インキュベートし、ピペットでP81ペーパーに移して反応を停止させる。組み込まれていない[γ-32P]ATP は、洗浄によって取り除かれ、組み込まれた放射活性はシンチレーションカウンタを用いて測定される。別法では、SDSローディングバッファーの存在下で100℃に加熱して反応を停止し、オートラジオグラフにより12%SDSポリアクリルアミドゲル上で分離させる。組み込まれた32Pの量は、KPPの活性に比例する。
【0344】
さらに別の実施例では、KPPのアデニル酸キナーゼ若しくはグアニル酸キナーゼ活性が、ガンマラジオアイソトープカウンターを用いて、[γ-32P]ATP からの32P のADP若しくはGDPへの取り込みによって測定でき得る。キナーゼバッファー中のKPPを、適切なヌクレオチドモノリン酸基質(AMP若しくはGMP)及びリン酸ドナーとしての32p標識ATPと共にインキュベートする。反応物は37℃でインキュベートされ、トリクロロ酢酸の添加によって終了される。酸抽出物は、中和され、ゲル電気泳動にかけられて、一リン酸、二リン酸、三リン酸のヌクレオチド画分に分離する。二リン酸ヌクレオチド画分が取り除かれ、カウントされる。回収した放射性活性はKPPの活性に比例する。
【0345】
さらに別の実施例では、KPPのための別のアッセイは、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、シンチレーションプレート技術、及びフィルタ結合アッセイを含む。有用な基質はグルタチオントランスフェラーゼで標識された組換えタンパク質を含み、ビオチンで標識された合成ペプチド基質を含む。小さい有機分子、タンパク質またはペプチドのようなKPP活性の阻害物質はこのようなアッセイによって同定され得る。
【0346】
別の実施例では、KPPのホスファターゼ活性は、P-ニトロフェニルリン酸(PNPP)の加水分解によって測定する。KPP は0.1%のβ-メルカプトエタノールの存在で、pH7.5のHEPES バッファーでPNPPと共に37℃で60分間インキュベートする。この反応を6 mlの10規定の水酸化ナトリウムを加えて停止させる(Diamond, R.H. 他 (1994) Mol. Cell. Biol. 14:375262)。或るいは、KPPの酸性ホスファターゼ活性は、pH4.5の0.1Mクエン酸ナトリウム、及び50μlの40mM塩化ナトリウム中にKPPを含む抽出液と100μlの10mM PNPPを37℃で20分インキュベートして実証する。この反応は0.5 mlの0.4M グリシン/NaOH(pH10.4)を加えて止める(Saftig, P. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:1862818635)。PNPPの加水分解によって起こる410nmでの光吸収の増加を分光光度計で測定する。このアッセイでは、光吸収の増加がKPP の活性に比例する。
【0347】
別法では、KPP活性は、リン酸化したタンパク質基質から除去されたリン酸の量を測定して決定する。反応は、60mM Tris(pH7.6)、1mM EDTA、1mM EGTA、0.1%のβ-メルカプトエタノールおよび10μM 基質、適量の32P標識したセリン/トレオニン/またはチロシンを含む最終容量30μl中の2nM或いは4nMのKPP において行なう。反応は基質で開始し、30℃で10〜15分間インキュベートする。0.6 M HC1、90mM Na4P2O7、および2mM NaH2PO4中の4%(w/v)活性化木炭450μlで停止させ、次に12,000×gで5分間遠心分離する。酸可溶性32Piを液体シンチレーションカウンターで定量する(Sinclair, C. 他 (1999) J. Biol. Chem. 274:2366623672)。
【0348】
19 キナーゼ結合アッセイ
KPPのFLAG-CD44cyt融合タンパク質への結合は、KPPを抗KPP抱合免疫親和性ビーズとインキュベートした後、ビーズ(10〜20ngのタンパク質を有する)の一部を、125I-標識化 FLAG-CD44cyt融合タンパク質(5,000 cpm/ng のタンパク)の存在下で、0.5mlの結合バッファ (20 mM Tris-HCL (pH 7.4)、150 mMの NaCl、0.1% ウシ血清アルブミンおよび0.05% Triton X-100)で4℃で、5時間インキュベートすることによって測定できる。結合させた後、ビーズは結合バッファー中でよく洗浄し、ビーズ結合放射活性をシンチレーションカウンタで測定する(Bourguignon, L.Y.W. 他 (2001) J. Biol. Chem. 276:7327-7336)。取り込まれた32Pの量は、結合したKPPの量に比例する。
【0349】
20 KPP インヒビターの同定
実施例1 7のアッセイで説明したように、検査されるべき化合物を、好適なバッファーおよび基質と共に様々な濃度で384-ウェルプレートのウェルに注入する。KPP 活性はそれぞれのウェルについて測定し、KPP 活性を阻害するそれぞれの化合物の能力および容量反応動態(dose-response kinetics)を決定することができる。KPP活性を増強する分子の同定にも、このアッセイを用いることができる。
【0350】
21 KPP 基質の同定
KPPの「基質トラッピング(substrate-trapping)」アッセイは、タンパク質チロシンホスファターゼのPTPシグネチャ配列におけるある突然変異によって付与され得る基質親和性の上昇を利用する。このような突然変異を有するKPPは、それらの基質と安定した複合体を形成し、このような複合体を生化学的に単離し得る。KPPの触媒ドメインをコードするクローンのPTPシグネチャ配列における不変な残基の特定部位の突然変異誘発を、当分野で周知の方法或いはBIO-RADが販売するMUTA-GENEキットなどの市販のキットを用いて行うことができる。大腸菌におけるKPP突然変異を誘発する場合は、突然変異を含むDNA断片を、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-KPP融合タンパク質或いはKPPをコードする配列を有する発現ベクターの対応する野生型配列と交換する。KPP突然変異体が大腸菌で発現され、それを生化学的に精製する。
【0351】
10cmのシャーレ1枚に付き20μgのCsCl-精製DNA、又は6cmのシャーレ1枚に付き8μgのCsCl-精製DNAを用いて、リン酸カルシウム仲介性トランスフェクションによってCOS1または293細胞にこの発現ベクターを移入する。トランスフェクションから48時間経過した後に、細胞を100ng/mlの上皮成長因子で刺激すると、チロシンキナーゼEGFRがCOS細胞に多量に存在するため、細胞におけるチロシンのリン酸化が増大する。細胞を、50mM Tris HCl(pH7.5)/5mM EDTA/150mM NaCl/1% Triton X-100/5 mMヨード酢酸/10mM リン酸ナトリウム/10mM NaF/5μg/mlロイペプチン/5μg/mlアプロチニン/1mM benzamidineで溶解する(10cmのシャーレ1枚に付き1ml、6cmのシャーレ1枚に付き0.5ml)。KPPを、好適な抗体で溶解物から免疫沈降させる。GST-KPP融合タンパク質を、細胞溶解物1mgにつきそれぞれ、グルタチオン−セファロース、4μgのモノクローナル抗体または10μlのビーズで沈降させる。複合体をポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)で視覚化することができるが、更に精製して基質分子を同定することもできる(Flint, A. J.他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1680-1685)。
【0352】
当業者には、本発明の要旨および精神から逸脱しない範囲での、記載した本発明の方法およびシステムの、種々の修正および変更の手段は自明であろう。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な修正は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0353】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0354】
表2は、本発明のポリペプチド群のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。各ポリペプチドとそのGenBank相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0355】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0356】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0357】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0358】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0359】
表7は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、参照文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0360】
表8は、本発明のポリヌクレオチド配列に見られる一塩基多型を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。
【0361】
表1
Figure 2005502325
表2
Figure 2005502325
表2(続)
Figure 2005502325
表3
Figure 2005502325
表3(続)
Figure 2005502325
表3(続)
Figure 2005502325
表3(続)
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表3(続)
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表3(続)
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表3(続)
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表4
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表4 (続)
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表4 (続)
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表4 (続)
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表4 (続)
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表5
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表6
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表6(続)
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表6(続)
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表7
Figure 2005502325
表7(続)
Figure 2005502325
表8
Figure 2005502325

Claims (83)

  1. 以下の(a)乃至(g)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
    (a)SEQ ID NO:1-14(配列番号1乃至14)からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド
    (b)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3-8、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:14を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
    (c)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列に対して少なくとも91%が同一であるような天然アミノ酸配列を有するポリペプチド
    (b)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:11からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも99%が同一であるような天然アミノ酸配列を有するポリペプチド
    (e)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を本質的に有するポリペプチド
    (f)SEQ ID NO:1−14を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片。
    (g)SEQ ID NO:1−14を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片。
  2. SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
  8. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
  9. 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
    (a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養する過程と、
    (b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程。
  10. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体。
  12. 以下の(a)乃至(e)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
    (a)SEQ ID NO:15-28を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (b)SEQ ID NO:15-28からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一であるような天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (e)(a)〜(d)のRNA等価物
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列を有する少なくとも20の連続したヌクレオチド群を持つ或るプローブと前記サンプルとをハイブリダイズし、該プローブが、或るハイブリダイゼーション複合体が前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片群との間に形成される条件下で、前記標的ポリヌクレオチドへ特異的にハイブリダイズする過程と、
    (b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、 前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたは断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする方法。
  15. 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
    (b)前記増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程、とを含むことを特徴とする方法。
  17. 請求項1に記載のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  18. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
  19. 機能的なKPPの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項17に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  20. 請求項1のポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを有する或るサンプルを或る化合物に曝す過程と、
    (b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  21. 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  22. 機能性KPPの発現低下に関連する疾患又は病状を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項21に記載の組成物を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  23. 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを有する或るサンプルを或る化合物に曝す過程と、
    (b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  24. 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  25. 機能性KPPの過剰発現に関連する疾患又は病状の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項24に記載の組成物を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  26. 請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)適切な条件下で請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させるステップと、
    (b)請求項1に記載のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定するステップとを含むことを特徴とする方法。
  27. 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1に記載のポリペプチドの活性が許容された条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させる過程と、
    (b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
    (c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。
  28. 請求項5の配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変するのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b)前記標的ポリヌクレオチドの、改変された発現を検出する過程と、
    (c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程、とを含むことを特徴とする方法。
  29. 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
    (a)核酸群を有する或る生体サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
    (b)処理した前記生体サンプルの核酸群と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチド群を有する或るプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションが、前記プローブと前記生体サンプルの或る標的ポリヌクレオチドとの間で或る特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される諸条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列またはその断片を有するポリヌクレオチドである、前記過程と、
    (c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
    (d)前記処理された生体サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量を、或る処理されていない生体サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生体サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示することを特徴とする方法。
  30. 生物学的サンプル中のKPPの発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
    (a)前記抗体を前記ポリペプチドと混合し、抗体とポリペプチドとの複合体が形成されるのに適した条件下で、前記生物学的サンプルを請求項11に記載の抗体と結合する過程と、
    (b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生体サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。
  31. 請求項11の抗体であって、
    (a)キメラ抗体
    (b)一本鎖抗体
    (c)Fab断片
    (d)F(ab')2 断片
    (e)ヒト化抗体、のいずれかであることを特徴とする抗体。
  32. 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
  33. 被検者中のKPPの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  34. 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
  35. 被検者中のKPPの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  36. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
    (a)抗体応答を誘発する諸条件下で、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列またはその免疫原性断片を有する或るポリペプチドを用いて或る動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から抗体を単離する過程と、
    (c)前記単離された抗体を該ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有する或るポリペプチドに特異結合するようなポリクローナル抗体を同定する過程、とを含むことを特徴とする方法。
  37. 請求項36の方法で産生したポリクローナル抗体。
  38. 請求項37のポリクローナル抗体と好適なキャリアとを有する組成物。
  39. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
    (a)抗体応答を誘発する諸条件下で、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列またはその免疫原性断片を有する或るポリペプチドを用いて或る動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から、抗体を産出する細胞を単離する過程と、
    (c)不死化した細胞と前記抗体産出細胞とを融合し、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
    (d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
    (e)SEQ ID NO:1-14からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程、とを含むことを特徴とする方法。
  40. 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
  41. 請求項40に記載のモノクローナル抗体と適切なキャリアとを含む組成物。
  42. Fab発現ライブラリをスクリーニングすることにより産出されることを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  43. 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  44. SEQ ID NO:1-14を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中で検出する方法であって、
    (a)前記抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、或るサンプルと共に請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
    (b)特異結合を検出する過程とを含み、該特異結合が、SEQ ID NO:1−14を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを示すことを特徴とする方法。
  45. SEQ ID NO:1-14 からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
    (a)前記抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、或るサンプルと共に請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
    (b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-14からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを得る過程、とを含むことを特徴とする方法。
  46. マイクロアレイの少なくとも1つのエレメントが請求項13に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするマイクロアレイ。
  47. ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロファイルを作製する方法であって、
    (a)サンプルのポリヌクレオチドを標識するステップと、
    (b)ハイブリダイゼーション複合体の形成に適した諸条件下で請求項46のマイクロアレイのエレメント群をサンプルの標識されたポリヌクレオチド群と接触させる過程と、
    (c)サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量するステップとを含むサンプルの転写イメージを作製する方法。
  48. 或る固体基板上の固有の物理的位置に付着された種々のヌクレオチド分子を有するアレイであって、少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子が、或る標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチド群と特異的にハイブリダイズ可能な最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を有し、前記の標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするアレイ。
  49. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  50. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  51. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列が前記の標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  52. 請求項48に記載のアレイで、マイクロアレイであることを特徴とするアレイ。
  53. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列を有する或るヌクレオチド分子にハイブリダイズした前記の標的ポリヌクレオチドを更に有することを特徴とするアレイ。
  54. 請求項48に記載のアレイで、或るリンカーが少なくとも1つの前記のヌクレオチド分子と前記の固体基板とを連結していることを特徴とするアレイ。
  55. 請求項48に記載のアレイで、該基板上の固有の物理的位置の各々が複数のヌクレオチド分子を含み、任意の単一の固有の物理的位置でのその複数のヌクレオチド分子は同一の配列を有し、該基板上の固有の物理的位置の各々は、該基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子群の配列とは異なる或る配列を有するヌクレオチド分子群を含むことを特徴とするアレイ。
  56. SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  57. SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  58. SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  59. SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  60. SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  61. SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  62. SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  63. SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  64. SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  65. SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  66. SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  67. SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  68. SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  69. SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  70. SEQ ID NO:15のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  71. SEQ ID NO:16のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  72. SEQ ID NO:17のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  73. SEQ ID NO:18のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  74. SEQ ID NO:19のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  75. SEQ ID NO:20のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  76. SEQ ID NO:21のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  77. SEQ ID NO:22のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  78. SEQ ID NO:23のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  79. SEQ ID NO:24のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  80. SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  81. SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  82. SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  83. SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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