以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、当実施形態に係る自動車の運転姿勢調整装置が適用される車体の概略構成を示し、図2は、当実施形態に係る運転姿勢調整装置の全体構成を示している。
この車体は、ボンネット等により構成されるエンジンルーム1と、このエンジンルーム1の後方に配置された乗員等を収容するキャビン2とを備える。このキャビン2には、フロアパネル3と、このフロアパネル3の前端縁から上方に延びエンジンルーム1との隔壁をなすダッシュロアパネル4と、ダッシュロアパネル4の上方に配設され計器類等が収容されるインストルメントパネル5と、このインストルメントパネル5の後方に配設されこのパネル5から延びるステアリング6と、このステアリング6の後方に配設され自動車を運転する乗員(ドライバ)が着座するシート7と、上記ダッシュロアパネル4の後方であって上記インストルメントパネル5の下方に設けられ上記シート7に着座する乗員が操作する複数のペダル8と、このペダル8を操作する乗員の踵に対応する所定の位置に配設される可動フロアパネル9等とが設けられている。
そして、当実施形態の運転姿勢調整装置は、シート7の位置に基づいて、ペダル8、可動フロアパネル9、ステアリング6の位置調整(角度調整を含む)を実行することにより上記シート7に着座する乗員の運転姿勢を調整するものとなされ、図1に示すように、大きい体格の乗員Lが着座するのに適したLポジションから小さい体格の乗員Sが着座するのに適したSポジションに至るまで、シート7に着座する乗員が所定の回動中心軸10を中心に略回動する態様で連続的に位置調整可能に構成されている。すなわち、この運転姿勢調整装置は、シート7と、ペダル8と、可動フロアパネル9と、ステアリング6と、シート7の位置を調整するシート位置調整機構20と、可動フロアパネル9の位置を調整するフロア位置調整機構30と、ペダル8の位置を調整するペダル位置調整機構40と、ステアリング6の位置を調整するステアリング位置調整機構60と、これらのフロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40およびステアリング位置調整機構60をシート7の位置に基づいて制御するECU(electrical control unit)70とを備え、シート7とペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6との相対位置(相対角度を含む)を変更してシート7に着座する乗員の姿勢を調整するものとなされている。
この運転姿勢調整装置によってLポジションからSポジションに移行するには、シート位置調整機構20を操作することによりシート7の位置をSSからSMを経由してSLに変更して(図2参照)このシート7に着座する乗員のヒップポイントを図1に示すHLからHSに、すなわち上方に回動移動させつつペダル8に近接する方向に移動させ、このシート7の位置の変更に伴ってペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6を図1および図2でPL、FL、STLからPS、FS、STSに移動させ、これによりシート7に着座する乗員の基本姿勢状態において視線eを略一定に保ち、また乗員の上腿部と下腿部との開度を増大させつつ、当該乗員の姿勢を車幅方向に延びる回動中心軸10を中心に回動させるものとなされている。なお、このシート位置調整機構20は、LポジションからSポジションに移行するのに上方に回動させつつ前方に移動させるので、この移行に必要な車体の前後方向に沿った移動必要長さを、従来のスライド型の機構よりも短くすることができ、これにより後席空間の拡大や視認性の向上を図ることができる等のメリットがある。
この運転姿勢調整装置の具体的構成およびその作用について説明する。
シート7は、シートクッション7aと、このシートクッション7aの後端縁から上方に延びるシートバック7bと、シートバック7bの上端縁に配置されたヘッドレスト7cとを備える。このシート7は、シート位置調整機構20を介してフロアパネル3に固定された左右一対の支持フレーム19に取り付けられている。
シート位置調整機構20は、図3に示すように、シートクッション7aに対するシートバック7bの傾斜角度を変更するためのリクライニング機構21と、シート7の前後上下位置と座面角度とを同時変更可能なシート移動機構22とを備え、これらを電動で操作してシート7の位置や各角度を調整するものとなされている。当実施形態では、これらの機構21,22のうちシート移動機構22によって移動されるシート7、特にシートクッション7aの位置に応じて上記フロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40およびステアリング位置調整機構60が調整制御されるものとなされ、これにより可動フロアパネル9、ペダル8およびステアリング6のシート7に対する相対位置が調整される。
リクライニング機構21は、公知のリクライニング機構が用いられ、ここではその説明を省略する。なお、当実施形態では、このリクライニング機構21とシート移動機構22とを別個独立に操作し得るものとなされているが、両機構21,22を一定の規則に従って連動させるものとしてもよい。
一方、シート移動機構22は、上記支持フレーム19とシート7のシートフレーム11とを連結するリンク24,25を前後に左右一対ずつ有するダブルリンク機構として構成され、上記LポジションからSポジションへ移行するに従い、シートバック7bを上方に移動させつつ前方に移動させるとともに、シート7の座面の傾斜角度(後方に向かうに従い下方に傾斜する傾斜角度)も変更させるように構成されている。
具体的には、支持フレーム19の前後両端部に支持ブラケット23a,23bが上方に突出した状態で取り付けられ、各支持ブラケット23a,23bには長さの異なるリンク24,25の一端部が軸支されている。各リンク24,25の他端部は、それぞれシートフレーム11の前後両端部のうち対応する部分に、すなわち前側リンク24はシートフレーム11の前端部に、一方、後側リンク25はシートフレーム11の後端部に軸支され、これらのリンク24,25が起伏することによってシートクッション7aが円弧軌道に沿って移動するものとなされている。また、前後リンク24,25の長さが異なるので、当該リンク24,25の倒伏に伴って座面角度も変更される。当実施形態では、後側リンク25を前側リンク24よりも短く形成することにより、各リンク24,25が倒伏した状態から起立した状態に移行するに伴ってシートクッション7aの座面が後下がりの状態からその水平面に対する傾斜角度が小さくなるように設定され、各リンク24,25が起立した状態では座面が略水平ないし若干後下がりの状態となるように構成されている。
これらのリンク24,25は、後側リンク25の長手方向に沿って設けられた長孔25aに挿入されたピン26がラック部材27によって前後動することによって起伏するものとなされている。ラック部材27は、車体の前後方向に沿って配設され、後端部に上記ピン26が突設されている一方、前端部が支持フレーム19に固着されたギヤボックス12内に挿入されている。このギヤボックス12内には、ラック部材27の前端部に噛合するピニオン28が配設され、このピニオン28が正逆回転することによりラック部材27が前後方向に移動するものとなされている。このピニオン28にはこれを直接的、或いは一個ないし複数個のギヤを介して間接的に回転させる駆動モータ29に連結され、この駆動モータ29を駆動させるシート位置調整スイッチ13を操作することによってシート7の位置を調整するように構成されている。このシート位置調整スイッチ13には、駆動モータ29を正転させる正転スイッチ(図示せず)と駆動モータ29を逆転させる逆転スイッチ(図示せず)とが設けられ、この正逆転駆動によって上記ピニオン28を正逆回転させるものとなされている。
すなわち、図3の状態かシート位置調整スイッチ13の所定部位を押圧操作することによって、駆動モータ29が一方向に回転するとともに、この駆動モータ29の回転によりピニオン28が反時計方向に回転し、これによりラック部材27が前方に移動する。ラック部材27が前方に移動すると、その後端部に取着されているピン26も長孔25a内を案内されつつ前方に移動し、この長孔25aに沿ってピン26が案内されるに伴って後側リンク25が支持ブラケット23bを中心として上方に回動するように構成されている。
一方、図3の状態からシート位置調整スイッチ13の上記と異なる部位を押圧操作することによって、駆動モータ29が上記と逆方向に回転するとともに、この駆動モータ29の回転によりピニオン28が時計方向に回転し、ラック部材27が後方に移動する。ラック部材が後方に移動すると、その後端部に取着されているピン26も長孔内25aを案内されつつ後方に移動し、この長孔25aに沿ってピン26が案内されるに伴って後側リンク25が支持ブラケット23bを中心として下方に回動するように構成されている。
また、このシート移動機構22の所定箇所には、シート7の位置を検出するためのセンサが設けられており、当実施形態ではギヤボックス12内のピニオン28の近傍に当該ピニオン28の回転を検出することによってシート7の位置を検出するシート位置センサ15が設けられている。このシート位置センサ15の具体的構成は特に限定するものではなく、エンコーダ等の公知のセンサが用いられる。
このシート位置センサ15からECU70に対して電気信号が出力され、ECU70ではこの出力に基づいてシート7の位置を検出し、この検出結果に基づいてフロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40およびステアリング位置調整機構60を制御して可動フロアパネル9、ペダル8、ステアリング6の位置を調整する。
フロア位置調整機構30は、シート7の位置に応じて上記可動フロアパネル9の位置を調整するものであり、当実施形態では可動フロアパネル9の高さ位置の調整に加え、水平面に対する角度も調整するものとなされている。
可動フロアパネル9は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、シート7に着座する乗員の足部が載置され、特に乗員がペダル8を操作している場合には、このペダル8を操作する足部の踵が載置されるものである。この可動フロアパネル9の大きさは特に限定するものではないが、シート7に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさ以上に構成されるのが好ましい。
この可動フロアパネル9は、上記フロア位置調整機構30によってフロアパネル3上で支持されている。すなわち、フロア位置調整機構30は、当実施形態では、図4に示すように、フロアパネル3の上面前端部に固着された支持ブラケット31と可動フロアパネル9の下面に取着された前後連結ブラケット32a,32bとの間を前後リンク33,34で連結するダブルリンク機構が用いられ、可動フロアパネル9の前後上下位置と角度とを同時変更可能に構成されている。
具体的には、上記ペダル8に対応したフロアパネル3の上面前端部には、車体の前後方向に沿って配置された支持ブラケット31が接合されており、この支持ブラケット31の前後両端部と、可動フロアパネル9の下面前後両端部に突設された連結ブラケット32a,32bとを前後リンク33,34で連結している。前側リンク33は後側リンク34と比べて高い位置で上記支持ブラケット31に軸支されている。そして、このリンク33,34が起伏することによって可動フロアパネル9の前後上下位置および傾斜角度が変更され、上記回動中心軸10を中心に可動フロアパネル9が略回動するように構成されている。
このリンク33,34は、上記シート移動機構22と同様に、リンク長さを前後で変更しており、前側リンク33が後側リンク34よりも若干短く形成されている。このリンク33,34によって支持される可動フロアパネル9は、シート7の位置がペダル8に近接する方向に向かうに従って上方に移動し、最下点(図1、図2でFL)では若干後下がりに傾斜するように設定され、一方、最上点(図1、図2でFS)では若干前下がりに傾斜するように設定され、最下点と最上点との間の所定位置で略水平になるように設定されている(図2でFM)。
図4に示すように、このリンク33,34は、前側リンク33の長手方向に沿って設けられた長孔33aに挿入されたピン36がラック部材35によって前後動することによって起伏するものとなされている。ラック部材35は、ダッシュロアパネル4の下端傾斜部4aに沿って配設され、後端部に上記ピン36が突設されている一方、前端部がダッシュロアパネル4の上記下端傾斜部4aにブラケット16を介して固着されたギヤボックス37内に挿入されている。このギヤボックス12内には、ラック部材35の前端部に噛合するピニオン38が配設され、このピニオン38が正逆回転することによりラック部材35が前後方向に移動するものとなされている。このピニオン38は、ECU70によって駆動制御される正逆回転可能な駆動モータ39によって正逆回転駆動され、ピニオン38の回転を検出することによって可動フロアパネル9の位置を検出するフロア位置センサ38aによってフィードバッグ制御がなされる。このようにして、可動フロアパネル9の位置決めが実行され、この可動フロアパネル9の位置決めを行うことによりペダル8との相対位置も調整するものとなされている。また、フロア位置調整機構30は、上記駆動モータ39を正逆回転させる位置調整スイッチ39aが設けられており、このスイッチ39aの操作により可動フロアパネル9の位置調整を実行することができるものとなされている。なお、この位置調整スイッチ39aには、駆動モータ39を正転させる正転スイッチ(図示せず)と駆動モータ39を逆転させる逆転スイッチ(図示せず)とが設けられ、この正逆転駆動によって上記リンク33,34を起伏させるものとなされている。
一方、ペダル位置調整機構40は、シート7の位置に応じて上記ペダル8の踏面の傾斜調整および踏面高さの調整を行うものであり、当実施形態では、ペダル8を、操作中心軸である支軸44を中心に回転移動させることによって踏み込み量等の操作量を変更することなく、ペダル8の傾斜角度と踏面高さを調整可能にしている。なお、当実施形態では、上記支軸44が上記回動中心軸10と一致するように設定されているとともに、上記フロア位置調整機構30と協働して、ペダル8の踏面と可動フロアパネル9の踵載置面との傾斜角度が後述する初期設定位置において一定に維持されるように構成されている。
ペダル8は車幅方向に沿って複数個並設されており、例えば左側にアクセルペダルが、右側にブレーキペダルが配設される。これらのペダル8の位置調整機構40は、両者とも同様に形成されているので、ここでは一のペダル8(アクセルペダル)を例にとって説明する。
このペダル8は、ダッシュロアパネル4に取り付けられたペダルブラケット41と、このペダルブラケット41に軸支されたペダル位置調整機構40としてのペダルレバーと、このペダルレバーの下端部に配設された踏面部48とを備えている。このペダル位置調整機構40は、通常のペダルレバーとは異なり、レバー上半部に対するレバー下半部の相対位置を変更可能に構成され、この相対位置を変更することにより傾斜角度や踏面高さを変更するものとなされている。
すなわち、ペダル位置調整機構40は、図5および図6に示すように、上記ペダルブラケット41に軸支されたアッパレバー42と、このアッパレバー42に対する相対的な位置を変更可能に構成されたロアレバー43とを備える。アッパレバー42は、振り子状に形成されており、上下に延びるアッパ本体42aと、その下端部に設けられたガイド部42bとを備え、ガイド部42bには回動中心軸10を中心とする円弧状に形成されたガイド溝42cが形成されている。一方、ロアレバー43は、弓状に湾曲し下端部に踏面部48が設けられたロア本体43aと、このロア本体43aの上端部に回動中心軸10を中心とする円弧状に形成されたスライダ43bとを備え、上記ガイド溝42cにスライダ43bが嵌合され、このスライダ43bがガイド溝42cに沿ってスライドすることによりロアレバー43がアッパレバー42に対して相対位置変更可能に取り付けられている。
具体的には、図6に示すように、ガイド部42bは断面視略C字状に形成されることによりガイド溝42cが形成されている。このガイド溝42cに嵌合されたスライダ43bはガイド溝42cの開口方向の側面(図5では左側面)にラック部43cが刻設されている。このラック部43cにはウォーム45が噛合し、このウォーム45が正逆回転することによりラック部43cを有するスライダ43bがガイド溝42cの円弧形状に沿ってスライドするものとなされている。このウォーム45はフレキシブル動力伝達軸46および駆動モータ47に接続されており、この駆動モータ47がECU70の出力を受けて正逆回転するものとなされている。そして、このペダル位置調整機構40を、図2に示すように、Lポジションにあるときは支軸44を中心に下方に回動させてシート7との相対距離が長くなるように駆動させ(図2でPL)、一方、Sポジションにあるときは支軸44を中心に上方に回動させて、標準的な体格および体型の乗員に適合するように設定されたPMポジションを経てシート7との相対距離が短くなるように駆動させる(図2でPS)。
上記駆動モータ47は、例えばインストルメントパネル5にペダル毎に対応して設けられたペダル位置調整スイッチ47a(図7参照)によっても駆動させることができるものとなされている。そして、この駆動モータ47の回転数等を検出することによってペダル8の位置を検出するペダル位置センサ49が設けられ、この検出結果はECU70に出力されるように構成されている。このペダル位置センサ49も上記シート位置センサ15と同様に例えばエンコーダ等の公知のセンサによって構成されている。
一方、ステアリング位置調整機構60は、シート7の位置に応じて上記ステアリング6の位置および傾斜角度を調整するものであり、当実施形態では上記回動中心軸10を中心に回動してステアリング6の傾斜角度を変更するチルト機構を用い、このチルト機構を自動調整して位置および傾斜角度を同時変更可能に構成されている。
具体的には、ステアリング6は、図2および図7に示すように、ダッシュロアパネル4の所定部から延びるステアリングシャフト62と、このステアリングシャフト62の先端に固定されたステアリングホイール61とを備え、このステアリングシャフト62は、基端側の所定部分でユニバーサルジョイント59で屈曲自在に連結されている一方、このユニバーサルジョイント59よりもステアリングホイール61側でステアリング位置調整機構60によって車幅方向に延びるステアリングメンバ54に支持され、このステアリング位置調整機構60を調整することにより所定の範囲で上下に回動可能に構成されている。なお、上記ステアリングメンバ54は、支持ブラケット53によりダッシュロアパネル4とカウルパネル51との間に設けられたダッシュアッパパネル52に支持され、これにより強固に車体に支持されている。
ステアリングシャフト62は、具体的にはステアリングホイール61に連結される上部シャフト62aと、この上部シャフト62aにユニバーサルジョイント59を介して連結される下部シャフト62bを備える。この下部シャフト62bの基端部は、ステアリングギヤ(図示せず)に接続される。一方、上部シャフト62aの周囲には、ステアリングコラム63が配設されている。そして、上記したように、このステアリングコラム63の上部においてステアリング位置調整機構60によりステアリング6がステアリングメンバ54に支持されている。
このステアリング位置調整機構60は、ステアリングメンバ54を上下から挟着し、かつ、ステアリングコラム63の支持位置を上下に変更可能な上下ステアリング支持ブラケット55,56を備える。なお、ステアリング支持ブラケット55,56は、上記ステアリングコラム63を左右から挟み込むために車幅方向に左右一対設けられているが、ここでは図示を省略する。
下部ステアリング支持ブラケット56には、回動中心軸10を中心とする円弧状(半径R)の案内孔56aが設けられ、この案内孔56aにステアリングコラム63から側方に突設されたガイドピン64がその先端部が案内孔56aから突出した状態で挿入されている。この案内孔56aから突出するガイドピン64の先端部にはリング部57が設けられ、このリング部57には内周部に雌ネジが刻設されたナット部材58がステアリングコラム63に略直交した方向に突出した状態で一体的に設けられている。このナット部材58には、送りねじ部材65が螺合され、この送りねじ部材65を正逆回転させることによってナット部材58、およびガイドピン64を介してステアリングコラム63を上下に昇降させるものとなされている。そして、この昇降によってステアリング6も回動中心軸10を中心に回動し、上記LポジションでSTLに位置するものとなされ、上記SポジションでSTSに位置するものとなされている(図7参照)。
この送りねじ部材65はアタッチメント66を介してフレキシブル動力伝達軸67に接続され、このフレキシブル動力伝達軸67はダッシュロアパネル4に配設された駆動モータ68により駆動される。この駆動モータ68には、ステアリング位置センサ69(以下「ステア位置センサ」と称す)としての回転センサが並設されるとともに、この乗員の要求に応じてこの駆動モータ68を駆動してステアリング6の位置等を変更し得るように位置調整スイッチ68aが設けられている。さらに、ステアリングコラム63の先端部には、このステアリングホイール61による舵角を検出する舵角センサ95が設けられている。そして、上記ステア位置センサ69および舵角センサ95からECU70に信号が出力されることによりステアリング6の位置および舵角を検出し得るように構成されている。
なお、図7において、インストルメントパネル5の前部下方に配設されているのは、エアダクト81であり、このインストルメントパネル5の前部上方に配設されているのは、フロントガラス83である。一方、インストルメントパネル5内には、計器82がシート7に着座する乗員に向けた状態で配設されている。
また、この運転姿勢調整装置が搭載される自動車(車両)は、車速および走行方向前方に走行する車両に対する車間距離を一定に保つための走行補助装置(オートクルーズ装置)が搭載されている。このため、この自動車には、図8に示すように、自動車の車速を検出する車速センサ94と、フロントグリル、フロントバンパやシュラウド等の車体前部に配設され、走行方向前方を走行する車両との車間距離を検出する前方レーダー97(例えばミリ波レーダーやレーザーレーダー)と、リヤバンパ等の車体後部に配設され、走行方向後方を走行する車両との車間距離を検出する後方レーダー98(例えばミリ波レーダーやレーザーレーダー)と、上記車速センサ94や前後レーダー97,98からの出力を受けてスロットルやブレーキを自動制御するオートクルーズ制御手段74と、このオートクルーズ機能をオン・オフするオートクルーズスイッチ99とを備えている。
さらに、ステアリング6の舵角を検出する上記舵角センサ95やギヤ位置を検出するギヤ位置センサ96がECU70に接続されている。
図8は上記構成の運転姿勢調整装置の駆動、制御系統の構成を示すブロック図を示している。ECU70は、各種演算処理を実行するCPU、各種初期設定等を記憶するROM(Read Only Memory)、および入力された各種情報等を上書き可能に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えたものであり、シート位置センサ15からの検出結果に基づいて所定の目標位置マップからペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の目標位置(角度を含む)を特定して、この目標位置にペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6が移動するようにフロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40、ステアリング位置調整機構60を制御するとともに、各種センサ94,97,98からの出力を受けて自動車の車速や車間距離を制御するものである。そして、上記所定の目標位置マップは、各車載部材8,9,6に対応して複数設けられ、各目標位置マップは、図9に示すように、シート7の位置に対応してペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の目標位置が定められており、初期設定時では所定の位置におけるシート7に着座する標準的な体型の乗員を基準に、この乗員に適応するペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置が定められている。この目標位置マップは、初期設定時のマップから乗員の体型や好み等に応じて補正可能に構成されており、この補正があった場合には補正後のマップに従って各機構30,40,60が制御されるように構成されている。すなわち、特定のシート位置aにおけるペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置について、初期設定時の初期設定位置D1,D2,D3から乗員の要求に応じた個別設定位置C1,C2,C3に補正可能に構成されている。そして、シート位置がこの特定シート位置aに位置したときに各部9,8,6は初期設定位置D1,D2,D3ではなく個別相対位置C1,C2,C3に位置合わせされる。
従って、このECU70は、乗員からの要求に応じて、すなわち乗員によって各種位置調整スイッチ13,39a,47a,68aが操作された場合には、この操作量に応じて各種駆動モータ29,39,47,68を駆動させ、各部6,7,8,9の位置を調整するものとなされている。そして、この乗員による位置調整は、上記ECU70によって、自動車の停止時には無規制、すなわち乗員による自由な位置調整を許容するものとなされ、一方、自動車の走行時には所定の規制が課されるものとなされている。
具体的には、ECU70は、位置制御手段71と、マップ補正手段72と、調整規制制御手段73と、オートクルーズ制御手段74と、記憶手段80とを備え、各種位置センサ15,38a,49,69,94,95,96,97から検出結果としての信号が入力されるとともに、各種スイッチ13,39a,47a,68a,91,92,99から指令信号が入力され、さらにタッチパネルとして構成された表示手段100に接続され、この表示手段100の画面上に設けられたタッチパネルスイッチから入力できるように構成されている。すなわち、ECU70(特に調整規制制御手段73)が本願発明にいう調整規制手段に相当する。
位置制御手段71は、シート7の位置に変更があった場合にシート位置センサ15から入力された信号に基づきシート7の現在位置を検出するとともに、このシート7の位置に応じたペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の目標位置を記憶手段80に記憶されている各目標位置マップから特定してペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の現在位置から上記目標位置までの移動量を算出し、この算出結果に基づいてフロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40やステアリング位置調整機構60、より詳しくは位置センサ38a,49,69で確認しつつ各機構30,40,60の駆動モータ39,47,68を制御するものである。
また、位置制御手段71は、シート位置を常時監視しており、シート7が移動された場合に即座にペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6を移動させるように構成されている。具体的には、位置制御手段71は、シート位置センサ15から検出された検出位置をメモリ位置として記憶手段80に記憶させ、このメモリ位置を次回検出位置と比較して両者が同一であるか否かを判定し、同一である場合にはシート7が停止していると判断し、同一でない場合にはシート7が移動していると判断してシート7の移動、停止を常時監視するものとなされている。さらに、各部8,9,6の位置決め制御も、このシート位置と同様に実行されており、所定時刻の位置センサ38a,49,69による検出位置をメモリ位置として記憶手段80に記憶させ、このメモリ位置と次回検出位置とを比較することによってペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の移動、停止を検出するものとなされている。
なお、当実施形態では、アクセルペダル8の自動位置調整およびその後の微調整にあたってブレーキペダルの位置も連動して自動調整されるように設定され、各ペダル8の自動調整およびアクセルペダル8の微調整にあたって両ペダル8間で踏みかえ感、踏みかえ量等が変更されないようになされている。
上記マップ補正手段72は、上記位置制御手段71による制御の基準を定める目標位置マップを乗員の要求に応じて補正するものである。すなわち、マップ補正手段72は、上記位置制御手段71によるペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置の自動制御が実行された後、位置調整スイッチ39a,47a,68aの操作があった場合に作動して調整決定スイッチ91の入力があった際のシート7の位置を特定シート位置として、並びにペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置を各車載部材6,8,9の個別設定位置として記憶手段80に記憶させるとともに、少なくとも特定シート位置におけるペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置を初期設定位置から、設定されたペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の個別設定位置に記憶されている目標位置マップを補正するように構成されている。この目標位置マップは、初期化可能に構成され、初期化する場合には初期設定位置が記憶手段80から読み出され、上書き補正するものとなされている。
この目標位置マップの補正態様は種々あるが、ここではその一例を説明する。すなわち、個別設定位置が設定されていない場合の目標位置マップは、シート位置に応じて各体格の標準的比率(例えば座高値と足の長さの比率)にある乗員の体型にあわせたペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置を表した初期設定マップとして構成され(図9参照)、シート位置とペダル位置、フロア位置またはステアリング位置との関係が比例関係を保ちながら連続的に変化する軌跡として形成されている。そして、乗員の要求に応じて各車載部材8,9,6について個別設定位置が設定された場合には、その特定のシート位置aについての車載部材8,9,6の位置だけが初期設定位置D1,D2,D3から個別設定位置C1,C2,C3に変更されるように構成されている。従って、特定シート位置aにおける各部9,8,6は個別設定位置C1,C2,C3に位置合わせされる一方、目標位置マップが初期化された場合には、特定シート位置aにおける各部9,8,6は初期設定位置D1,D2,D3に位置合わせされる。なお、ペダル8と可動フロアパネル9とステアリング6とのいずれか一について個別設定位置が設定された場合には、この個別設定位置が設定された車載部材8,9,6の目標位置マップだけが補正されるように構成されている。
調整規制制御手段73は、複数の走行状態検出手段、当実施形態では舵角センサ95、車速センサ94、ギヤ位置センサ96、前後レーダー97,98、オートクルーズ制御手段74からの出力を受けて、自動車の走行状態が予め定められた所定の走行状態にあるか否かを判定するとともに、この結果、所定の走行状態にあると判定した場合には、上記位置調整スイッチ13,39a,47a,68aの操作量に拘わらず、シート位置調整機構20、フロア位置調整機構30、ペダル位置調整機構40(アクセルペダル、ブレーキペダルの双方の機構)、ステア位置調整機構60による調整動作を規制するものである。
すなわち、通常、自動車の走行時に各部6,7,8,9の位置が調整されると、この車載部材6,8を操作するまたは車載部材7,9に当接する乗員の姿勢にも影響を与えることから、当該乗員の運転姿勢が不安定になることがあり、このためアクセルペダル8等の誤操作を招く虞がある。従って、当実施形態の運転姿勢調整装置では、自動車の走行状態から各部6,7,8,9の位置調整を許容する場合と禁止する場合とに分け、また位置調整を許容する場合であっても一定の制限を設け、この車載部材、特にペダル8やステアリング6の誤操作を有効に防止するものとなされている。ここで、自動車が走行状態にあるときは、通常、乗員によって常時ステアリングホイール61が握られており、従ってこのステアリングホイール61の位置を調整することとすると、ステアリング6の誤操作を招く虞があることから、当実施形態ではステアリング位置調整機構60による位置調整を全面的に禁止するものとなされている。
具体的には、調整規制制御手段73は、走行状態に応じて、規制すべき位置調整機構20,30,40,60を選定するとともに、この選定された位置調整機構20,30,40,60に対して所定の規制内容で規制するものとなされている。また、この規制内容も走行状態に応じて適宜変更され、走行状態に応じて各位置調整機構20,30,40,60を規制するものとなされている。
規制内容は上記したように走行状態に応じて予め定められており、これらの規制内容がチャートとして記憶手段80に記憶されている。この規制内容には、調整が禁止される禁止規制と、一定の制限のもと調整が許容される制限規制とが含まれる。当実施形態では、この制限規制として、シート7や車載部材6,8,9の移動速度および移動量について制限を加え、この移動速度や移動量が所定の制限範囲内となるように設定されている。この移動速度や移動量の制限範囲は、特に限定するものではなく、運転姿勢を大きく崩さないようにする観点から適宜設定されるが、移動速度としては、規制が課せられていない通常時速度に対して下限が5分の1、上限が3分の2の範囲で適宜設定されるのが好ましく、また、移動量としては下限が全ストロークの5分の1、上限が全ストロークの2分の1の範囲で適宜設定されるのが好ましい。
ここで、走行状態といっても種々存在するが、車載部材の誤操作を防止する観点から規制内容を区別するための走行状態は予め定められており、このような走行状態として、複数(当実施形態では5つ)の走行状態判別基準を設け、各基準毎に複数の具体的走行状態に分けて各具体的走行状態毎に規制内容が定められている。すなわち、走行状態を細分化して各走行状態毎に規制内容を定め、走行状態に応じて各種位置調整機構20,30,40,60を規制するものとなされている。
具体的には、調整規制制御手段73は、走行状態判別基準として、(I)自動車が旋回状態にあるか否か、(II)車速が所定の車速を基準にこの所定車速よりも速いか否か(例えば、時速60kmを基準にしたものやカーナビによって取得された制限速度や法定速度を基準にしたもの)、(III)ギヤ位置がいずれの位置にあるか(IV)前方ないしは後方車間距離が所定の車間距離を基準にこの車間距離よりも長いか否か(例えば車頭時間に車速を乗じて得られる安全車間距離を基準にしたもの)(V)オートクルーズ制御手段74が作動中か否か、を基準にして具体的走行状態を基準毎に判別し、各具体的走行基準毎に定められた規制内容を実行するように構成されている。この走行状態(走行判別基準および具体的走行状態)と規制内容の関係は、図10のチャートに示すとおりに設定されている。なお、図10中、右欄に記載された規制番号は、各具体的走行状態に応じて定められた各位置調整機構20,30,40の規制内容群を示すものである。この図10にステアリング位置調整機構60の規制内容が定められていないのは、上記したように自動車の走行時にはステアリング位置調整機構60の調整は全面的に禁止されているため、その図示を省略したからである。
ここで、具体的走行状態毎に規制内容を定めると、走行状態判別基準が個別に複数存在するため、一つの位置調整機構20,30,40,60について複数の異なる規制内容が重畳的に適用されることがあり、当実施形態では、このような場合に次のようにして適用すべき規制内容を決定するものとなされている。
すなわち、調整規制制御手段73は、走行状態判別基準(I)〜(IV)については重畳的に適用される複数の規制内容のうち最も厳格な規制内容を適用するように構成されるとともに、オートクルーズスイッチ99が操作されてオートクルーズ制御手段74が作動中の場合には、走行状態判別基準(I)〜(IV)に拘わらず、この走行状態判別基準(V)について定められた規制内容が優先的に適用されるように構成されている。ここで、厳格な規制内容とは、位置調整機構20,30,40,60による調整に際して拘束条件が大きいものをいい、制限規制に対する禁止規制、制限規制の中でも所定の範囲が狭いものが各規制に対する厳格な規制内容に該当する。
規制内容の決定について、例えばシートの移動速度を例にとって説明すると、図10に網掛けで示すように、自動車の走行状態、すなわち走行状態判別基準に対する具体的走行状態が(I)直進状態、(II)制限車速以上、(III)中・高速ギヤ、(IV)安全車間距離以下、(V)オートクルーズ作動中でない場合に、シート7の移動速度の規制内容として、走行状態判別基準(I)、(II)、(III)については制限規制が適用され、走行状態判別基準(V)については無規制、走行状態判別基準(IV)については禁止制限が適用されるが、この場合禁止制限が最も厳格な規制内容なので、シート位置調整機構20によるシート7の移動は禁止されることになる。一方、走行状態判別基準(V)オートクルーズ作動中である場合には、上記走行状態判別基準(I)〜(IV)に定める具体的走行状態に拘わらず、この規制番号(12)で定める規制内容が各位置調整機構20,30,40,60について適用されることになる。
次に、オートクルーズ制御手段74は、車速および走行方向前方(および後方)に対する車両に対する車間距離を一定に保つため、車速センサ94や前方レーダー97(および後方レーダー98)からの入力を受けてスロットルやブレーキを自動制御するものである。このオートクルーズ制御手段74の作動および非作動は、例えばインストルメントパネル5に設けられたオートクルーズスイッチ99からの入力を受けて適宜切換可能に構成されている。そして、オートクルーズ制御手段74が作動中である場合には、このオートクルーズ制御手段74の作動を示す作動フラグをオンにし、該制御手段74が作動中であることが認識可能に構成されている。
一方、記憶手段80は、ROMおよびRAMを含んで構成され、図8に示すように、ペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置調整の基準となる目標位置マップ情報が記憶されているとともに、この目標位置マップ情報とは別に、ペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6について個別設定位置が設定された場合に、この設定された際のペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置を個別設定情報として記憶され、かつ、この個別設定位置が設定されたシート位置を特定シート位置情報として上記個別設定情報と関連付けた形で記憶されている。また、記憶手段80のROM領域に初期設定マップとなるペダル8および可動フロアパネル9の初期設定位置情報が記憶されている。さらに、記憶手段80には、上記シート7、ペダル8、可動フロアパネル9、ステアリング6の検出位置をメモリ位置として記憶させる仮記憶部(図示せず)が設けられている。なお、目標位置マップ情報、個別設定位置情報および特定シート位置情報は記憶手段80のRAM領域に記憶され、このうち目標位置マップ情報は上記マップ補正手段72によって随時書き換えられ、個別設定位置情報および特定シート位置情報は乗員の要求に応じて、例えば図外のリセットスイッチを押圧操作することによって、消去されるように構成されている。なお、個別設定位置情報および特定シート位置情報は、目標位置マップが初期化された場合でも初期化されないように構成されている。
また、この記憶手段80には図10のチャートに示すように走行状態に応じた規制内容が記憶され、このチャートに基づいて各種走行状態検出手段からの検出結果に基づいて調整規制制御手段73によって各位置調整機構20,30,40,60が規制される。
以上の構成の運転姿勢調整装置の制御、特にECU70における制御をフローチャートに基づいて説明する。
図11に示すフローチャートは、当実施形態の運転姿勢調整装置の基本制御を示す。このフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチがオンにされることにより開始され、シート位置調整スイッチ13が操作されたか否かを判定する(ステップSS1)。その結果、スイッチ13が操作されたと判定すると(ステップSS1でYES)、車速センサ94によって自動車が走行中であるか否か判定し(ステップSS2)、走行中である場合にはステップSS7に移行して後述する調整規制制御が実行される。一方、走行中でない場合には(ステップSS1でNO)、シート位置調整スイッチ13の操作量に応じて駆動モータ29を駆動させてシート7を移動させるとともに、上記目標位置マップからこのシート7の位置に対応するペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の目標位置が読み取られ、この目標位置に各車載部材8,9,6の位置が合わせされるように、各位置センサ38a,49,69で位置確認されつつ、各駆動モータ39,47,68が駆動され、各車載部材6,8,9の自動位置調整が実行される(ステップSS3)。具体的には、図10に示す目標位置マップにおいてシート7の位置が特定シート位置aにある場合に、各車載部材6,8,9の位置が個別設定位置C1,C2,C3となるように位置調整される。一方、シート位置が特定シート位置a以外にあるときは、各車載部材6,8,9の位置が初期設定位置となるように位置調整される。
このステップSS3に続いて、或いはステップSS1でNOと判定されると、ステップSS4に移行して、各車載部材6,8,9の位置調整スイッチ68a,39a,47aが操作されたか否かを判定し、この操作があった場合には乗員の体型や好み等に応じてペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6の位置についての乗員による微調整要求があったものと認識される。この微調整要求があった場合には、自動車が走行中であるか否かの判定をし(ステップSS5)、自動車が走行中である場合にはステップSS7に移行して後述する調整規制制御が実行される。一方、走行中でない場合には(ステップSS5でNO)、各位置調整スイッチ39a,47a,68aの操作量に応じてペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6を移動する(ステップSS6)。具体的には、各位置調整スイッチ39a,47a,68aには駆動モータ39,47,68を正転方向に駆動するスイッチと、逆転方向に駆動するスイッチとが設けられ、このスイッチ操作に基づいて各駆動モータ39,47,68を正転方向または逆転方向に回転駆動させることにより各車載部材8,9,6の位置を調整するものとなされている。そして、ペダル8、可動フロアパネル9およびステアリング6が所望の位置に合わされて乗員によって調整決定スイッチ91が押圧操作されると、シート7を含めた各部6,7,8,9の位置が特定シート位置または各個別設定位置として記憶手段80に記憶されるものとなされている。そして、これら各部6,7,8,9の位置がメモリ位置として記憶手段80に記憶させてリターンする。
一方、ステップSS7の調整規制制御を図12のフローチャートに基づいて説明する。この調整規制制御が実行されると、複数の走行状態検出手段、具体的には舵角センサ95、車速センサ94、ギヤ位置センサ96、前後レーダー97,98、オートクルーズ制御手段74により各走行状態判別基準に基づく具体的走行状態が読み込まれる(ステップRS1)。具体的には、走行状態判別基準(I)に基づく具体的走行状態を検出するため、舵角センサ95により舵角を検出し、また走行状態判別基準(II)に基づく具体的走行状態を検出するため、車速センサ94により車速を検出し、さらに走行状態判別基準(III)に基づく具体的走行状態を検出するため、ギヤ位置センサ96によりギヤ位置を検出し、また走行状態判別基準(IV)に基づく具体的走行状態を検出するため、前後レーダー98,99により車間距離を検出し、走行状態判別基準(V)に基づく具体的走行状態を検出するため、オートクルーズ制御手段74の作動状態を示す作動フラグを検出する。
その上で、ステップRS2において、現在適用中の規制内容を特定する規制内容特定制御が実行され、この規制内容特定制御で特定された規制内容が例えばカーナビゲーションシステムの表示部として構成された表示手段100に表示して乗員に対して規制内容を報知する(ステップRS3)。なお、この規制内容特定制御については後述する。
そして、ステップSS1またはステップSS4における位置調整スイッチ13,39a,47a,68aの操作による位置調整が上記ステップRS2において特定された規制内容に反するか否かの判定が行われ、この規制内容に反する位置調整の要求である場合には、この位置調整を規制する(ステップRS4)。具体的には、規制内容が禁止規制である場合には、その位置調整操作が無効にされ、一方、規制内容が制限規制である場合には設定された所定の制限範囲内でペダル8、可動フロアパネル9の位置を調整し、この制限範囲を超える範囲でその位置調整操作が無効にされる。また、規制内容に反しない位置調整要求である場合には、その要求に応じてペダル8、可動フロアパネル9の位置調整が行われる。
次に、このステップRS4で規制によって位置調整操作が無効にされたか否かの判定を行い(ステップRS5)、規制による操作無効がなされているときは(ステップRS5でYES)、スピーカー110aや表示灯110b等の報知手段110から音や光を出力して乗員に対して操作無効を報知する(ステップRS6)。
そして、調整決定スイッチ91が押圧操作されたか否かを判定し(ステップRS7)、調整決定スイッチ91が押圧操作された場合には、走行中の位置調整が一通り終了したものとして図11に示すフローチャートにリターンする。なお、ステップSS2でYESと判定したことによって調整規制制御が実行されている場合には、このステップRS7ではNOと判定され、次述する規制内容変更制御が実行された後、図11に示すフローチャートにリターンし、その結果、各車載部材6,8,9について位置調整があったか否かの判定を行うことになる。
一方、ステップRS7でNOと判定した場合には、次に説明する規制内容変更制御が実行され、各部6,7,8,9の位置調整がさらに行われたかの判定をするために図11に示すフローチャートにリターンする。
すなわち、ステップRS7でNOと判定した場合には、具体的走行状態が各種センサ等95,94,95,97,98,74から読み込まれ(ステップRS8)、後述する規制内容特定制御が実行される(ステップRS9)。そして、この規制内容特定制御によって特定された規制内容が現在適用中の規制内容と比較して変化したか否かを判定し(ステップRS10)、規制内容が変化していない場合には、そのまま図11のフローチャートにリターンする一方、規制内容が変化している場合には規制内容が緩和されたか否かの判定を行う(ステップRS11)。規制内容が緩和されている場合には(ステップRS11でYES)、所定時間待機した後(ステップRS12)、再度確認し(ステップRS13)、それでも規制内容が緩和されている場合には(ステップRS13でYES)、規制内容を変化後の規制内容に変更して図11のフローチャートにリターンする。一方、ステップRS11で規制内容が緩和されていない場合には、規制内容が厳格化したものと認定し、直ちに変化後の規制内容に変更してこれを適用し、その後、図11のフローチャートにリターンする。
なお、この調整規制制御において、上記基本フローチャートにおけるステップSS1からステップSS6に定める処理をステップRS3とRS4の処理の間に挿入し、規制内容を特定してから、各種位置調整を検出するように構成してもよい。このように構成すれば、乗員による位置調整の実行前に規制内容が特定されているため乗員において規制内容を早期に知ることができ、また迅速に処理することができる点で有利である。この場合には、ステップSS7に対応する処理等を適宜訂正する必要がある。
ここで、規制内容特定制御について、図13および図14のフローチャートを用いて説明する。
まず、図13を用いて、規制内容特定制御が実行されると、上記ステップRS1またはRS8で読み込まれた舵角センサ95からの検出結果である舵角が略ゼロ、すなわち自動車が直進状態にあるか否かの判定を行う(ステップTS1)。ここで舵角が略ゼロとしているのは直進状態でも路面状況等によって若干ステアリングホイール61が操作されることもあるので、一定の誤差を設けているからである。
そして、舵角が略ゼロでないと判定すると(ステップTS1でYES)、規制内容に図10に示すチャートの規制番号(1)を設定し、一方、舵角が略ゼロであると判定すると(ステップTS1でNO)、規制内容としてチャートの規制番号(2)を設定する(ステップTS2,TS3)。
次に、車速センサ94によって検出された車速が制限車速以上であるか否かの判定を行い(ステップTS4)、制限車速以上または未満のいずれのときも(ステップTS4でYESまたはNO)、上記設定された規制内容と規制番号(3)または規制番号(4)に定める規制内容とを比較し、設定された規制内容よりも厳格な項目が各規制番号に定める規制内容に存在するか否かの判定を行い(ステップTS5,TS7)、厳格項目が存在する場合にのみ(ステップTS5,TS7でYES)、厳格な項目に該当する規制内容だけを設定された規制内容として更新し(ステップTS6,TS8)、図14に示すステップTS9に移行する。
図14に移って、ステップTS9では、ギヤ位置センサ96によって検出されたギヤ位置が中・高速ギヤ位置にあるか否かの判定を行い(ステップTS4)、中・高速ギヤ位置にあると判定した場合には(ステップTS9でYES)、上記各ステップにより設定された規制内容(更新されている場合には更新後の規制内容)と上記チャートに示す規制番号(7)に定める規制内容とを比較し(ステップTS10)、この規制番号(7)中に厳格項目、すなわち設定規制内容よりも厳格な規制内容がある場合には(ステップTS10でYES)、その厳格項目だけを更新する(ステップTS11)。
一方、ステップTS9でNOと判定した場合には、ギヤ位置がバッグギヤの位置にあるか否かを判定し(ステップTS12)、バックギヤ位置にある場合またはバックギヤ位置にない場合のいずれのときも(ステップTS12でYESまたはNO)、上記設定された規制内容と規制番号(5)または規制番号(6)に定める規制内容とを比較し、設定された規制内容よりも厳格な項目が各規制番号に定める規制内容に存在するか否かの判定を行い(ステップTS13,TS15)、厳格項目が存在する場合にのみ(ステップTS13,TS15でYES)、厳格な項目に該当する規制内容だけを設定された規制内容として更新し(ステップTS14,TS16)、ステップTS17に移行する。
続いて、前後レーダー97,98によって検出された車間距離が安全車間距離以下か否かの判定を行う(ステップTS17)。ここで、安全車間距離は、車速センサ94から検出された車速に車頭時間を乗じて得た距離であり、車頭時間は前方の自動車が停止してブレーキを踏み、前方の自動車の後端縁で停止するまでの時間をいい、通常3.0秒から4.0秒の間で適宜設定される。当実施形態では車頭時間を3.6秒に設定している。
そして、上記ステップTS17で、車間距離が安全車間距離以下または安全車間距離よりも大といずれの判定を行った場合でも(ステップTS17でYESまたはNO)、上記設定された規制内容と規制番号(8)または規制番号(9)に定める規制内容とを比較し、設定された規制内容よりも厳格な項目が各規制番号に定める規制内容に存在するか否かの判定を行い(ステップTS18,TS20)、厳格項目が存在する場合にのみ(ステップTS18,TS20でYES)、厳格な項目に該当する規制内容だけを設定された規制内容として更新し(ステップTS19,TS21)、ステップTS22に移行する。
次に、ステップTS22でオートクルーズ制御手段74によってオートクルーズ機能が作動しているか否かの判定を行い、オートクルーズ機能が作動している場合には車速センサ94によって検出された車速が所定の制限車速以下であるか否かの判定もあわせて行われ(ステップTS23)、所定の制限車速以下である場合には、オートクルーズ作動状態において特に定められたチャートの規制番号10の全てを設定内容として設定して図12のフローチャートにリターンする。また、ステップTS22およびステップTS23でNOと判定した場合には、ステップTS24をスキップしてそのまま図12に示すフローチャートにリターンする。
上記構成の運転姿勢調整装置によれば、走行状態検出手段としての各種センサ等94,95,96,97,98,74による検出結果に基づいて複数の具体的走行状態を検出することができ、この各具体的走行状態に対応して規制内容が定められたチャート(図10参照)に基づいて規制すべき位置調整機構20,30,40,60を選定するとともに、その位置調整機構20,30,40,60についての規制内容を定め、この定められた規制内容に基づいて乗員における各位置調整機構20,30,40,60によるシート7、ペダル8、可動フロアパネル9、ステアリング6の位置調整動作を規制するので、自動車の走行状態をより細やかに分けることができ、この細分化された走行状態に基づいて調整規制制御手段73によりシート位置調整機構20や部材位置調整機構としてのペダル、フロア、ステア位置調整機構40,30,60によるシート7や車載部材8,9,6の位置調整をよりきめ細やかな規制を設定することができる。そして、この規制、すなわち走行状態に応じて各部6,7,8,9の位置調整速度や調整幅を制限したり、位置調整を禁止したりして、自動車の走行時における乗員の運転姿勢をより安定させつつ、シート7や車載部材8,9の位置を調整することができ、例えばアクセルペダル8やブレーキペダル8、およびステアリング6等の誤操作を確実に防止することができる。しかも、自動車の走行時においてシート位置調整機構20、部材位置調整機構30,40,60の調整が一定の規制のもとで可能となされているので、シートに着座する乗員の要求に応えることができ、これにより当該装置の使用にあっての利便性が向上する。
また、例えば車速とギヤ位置とで各々異なる規制内容が課されている場合に、同一の位置調整機構20,30,40,60について異なる規制内容が課されることがあり、このような場合に、その位置調整機構20,30,40,60について最も厳格な規制内容を課すように調整規制制御手段73が構成されているので、運転姿勢を確実に安定した状態で調整することができ、車載部材(例えばペダル)の誤操作を効果的に防止することができる。また、オートクルーズ機能が設定されている場合に、このオートクルーズ機能設定時の規制内容が優先的に適用されるように構成されているため、比較的乗員の運転姿勢における自由度が大きいオートクルーズ設定時に車載部材等の位置調整に関する乗員の要望を可及的に受け付けることができる。
なお、以上に説明した運転姿勢調整装置は、本発明に係る装置の一実施形態であって、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
(1)上記実施形態では、シート位置調整機構20と各部材位置調整機構30,40,60のそれぞれについて位置調整動作の規制を実行するように構成されているが、この各位置調整機構20,30,40,60の全てについて規制可能に構成しなくてもよい。例えば、シート位置調整機構20について、図15に示すように、手動でシート7を移動させる位置調整機構20(シート移動機構22)を採用するものであってもよい。
この場合、駆動モータ29に換えて、ピニオンギヤ28と供回りする大径ギヤ129を設け、この大径ギヤ129の操作レバー113によって操作される係止爪部114により回転させる機構を採用するものであってもよい。
(2)また、上記実施形態では、各車載部材7,8,6について、シート7の位置に応じて各車載部材8,9,6の位置の自動調整を行った後、乗員による位置調整スイッチ13,39a,47a,68aの操作に基づく位置調整を規制するものとなされているが、このシート7の位置に応じた自動調整をも規制するものとしてもよい。
(3)上記実施形態では、個別設定位置を設定した場合に目標位置マップを補正するものとなされているが、このマップの補正方法は特に限定するものではなく、目標位置マップの補正がないものであってもよい。例えば、マップ補正手段72は個別設定位置の設定があった場合に、シート位置に応じたペダル8、可動フロアパネル9やステアリング6の変化軌跡(目標位置軌跡)を個別設定位置を経由する軌跡となるようにその全体をシフトするように構成されているものであってもよい。
(4)また、上記実施形態ではシート移動機構22としてシート7を上下に移動させるとともに前後にも移動させるダブルリンク機構が用いられているが、この機構に換えて或いはこの機構とともに車体の前後方向に沿ってシート7をスライド移動させるシートスライド機構を採用するものであってもよい。ただし、シート位置の検出が容易で、しかもシート位置に拘わらず視線およびペダル8の操作性を一定に保つことができるという観点から上記ダブルリンク機構のみを用いたシート移動機構22を採用するのが好ましい。
(5)また、フロア位置調整機構30およびペダル位置調整機構40も上記実施形態のものに限定されず、その他の機構を用いるものであってもよい。例えば、フロア位置調整機構として可動フロアパネル9を上下方向にのみ移動させるべくリンクを交差させたリンク機構やラチェット機構、その他の公知の昇降機構を用いるものとしてもよい。
(6)上記実施形態では、ペダル8および可動フロアパネル9をシート7の位置に応じて位置調整する運転姿勢調整装置について説明しているが、シート位置に応じて位置調整する車載部位はペダル8や可動フロアパネル9、ステアリング6に限定されず、例えばルームミラー、ドアミラー等であってもよい。
この場合、上記実施形態では自動車の走行時に制限規制または禁止規制のいずれかの規制がなされるようにチャートが構成されているが、例えばドアミラー等の車載部材については走行時であってもその走行状態によっては無規制で位置調整を許容するものであってもよく、その場合には、チャートに無規制で位置調整を行うものを追加することができる。
(7)上記実施形態では、全ての位置調整機構20,30,40,60について規制対象となっているが、走行状態毎に一部の位置調整機構20,30,40,60について規制対象となるものであってもよい。