穿刺針を被検体内部に刺し込んで被検体内の組織を摘出したり被検体内の組織に薬液を注入する穿刺術を施すにあたり、画像の分解能が低いと被検体内に刺し込まれた穿刺針の位置を正確に把握することができず、穿刺針の先端を、患部11の中の所望の小さなポイントに合わせるのが難しく、これが正確な穿刺術を難しくしている要因の1つとなっている。また、画像上には穿刺針の通過経路をあらわす線図が表示されていても、被検体内部の組織どうしの境界で穿刺針が多少曲がって進むことがあり、かならずしもその線図どおりには進まない。このため、実際に刺し込まれた穿刺針の位置を正確に把握する必要があり、正確に把握することができないと穿刺針を刺し込もうとした部位以外の血管や臓器等に傷を付けてしまう恐れもある。
これらの問題を解決するために、穿刺針の案内方向に沿った所定の画像領域内について他の画像領域とは異なる画像処理を施すことにより画像上で穿刺針を見易くするという提案がなされている(特許文献1参照)。
この提案では、穿刺針を見やすく表示したいという要求はわかるが、どのような画像処理を施すと穿刺針が見やすくなるのかという点について解決策は提案されていない。また、仮に画像処理によって穿刺針を見やすく表示することができたとしても、穿刺針を他の血管や臓器に傷をつけることなく所望のポイントに到達させるためには、穿刺針のみが見やすく表示されても不都合であって、被検体内部の血管や臓器等、穿刺針以外の画像も見やすく表示される必要がある。
従来より各種の画像処理が試みられており、従来より、被検体内部の血管や臓器等と穿刺針との双方がこれまでの画像処理技術の範囲内で最も見やすくなるように画像処理が施されており、それでもなお、穿刺針の位置がわかりにくいという問題点が指摘されているのであって、上記のような、穿刺針の通過領域と他の領域とで画像処理を異ならせるというだけの提案では、穿刺針の位置を正確に把握し、その穿刺針を、他の血管や臓器等に傷をつけることなく所望のポイントに到達させ得るような画像は実現し得ない。
通常の観察用の画像は、単位時間あたりに取得することのできる画像の枚数をあらわす指標であるフレームレートとのかね合いで、分解能(図21に示す走査線2の密度等)が決められており、穿刺術を施すには、単なる観察用の画像よりも高い分解能を有する画像が必要であって、観察用の画像では本質的に分解能が不足している。しかしながら画像の分解能を上げようとすると、上記のようにフレームレートとのバランスで分解能が定められているため、今度はフレームレートが低下し、穿刺針を被検体内に刺し込んでいく速度に画像の変化が追随せず、今度はフレームレートの点から正確な穿刺術を施すのが難しくなってしまうという問題がある。
また、穿刺針の先端部を加振器により振動させ、振動による信号の変化をピックアップすることにより、その穿刺針の先端位置を正確に検出する技術が提案されている(特許文献2参照)。この技術では穿刺針先端の振動によって生じる、その穿刺針先端で反射した超音波の周波数のドプラ遷移を検出することにより、その穿刺針先端位置を検出している。
本発明は、上記事情に鑑み、正確な穿刺術を施すために好適な画像を生成する機能を備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の超音波診断装置のうちの第1の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部とを備え、
上記送受信部が、走査領域内を所定の走査線密度で走査する第1の送受信モードと、走査領域のうちの、穿刺針の通過経路の一部もしくは全部を含む所定の第1の領域内について、走査領域のうちの、その第1の領域を除く第2の領域内よりも高い走査線密度で走査する第2の送受信モードとを有するものであることをを特徴とする。
本発明の第1の超音波診断装置は、走査領域内を所定の走査線密度で走査する第1の送受信モード、すなわち従来と同様な、走査領域全域を画像観察用にバランスのとれた分解能とフレームレートが得られるように走査する送受信モードに加え、穿刺針の通過経路の一部もしくは全部を含む第1の領域について、その第1の領域を除く第2の領域よりも高い走査線密度で走査する第2の送受信モード、すなわち、穿刺針の通過経路領域(第1の領域)以外の領域(第2の領域)の分解能を下げてでも通過経路領域(第1の領域)の分解能を上げる送受信モードを有しているため、穿刺術を施す際は、その第2の送受信モードにより、フレームレートを大きく低下させることなく穿刺針の通過経路領域の分解能が向上し、実際に刺し込まれた穿刺針の位置や被検体内組織の配置位置を十分な精度で把握することができ、しかも穿刺針の刺し込み速度に十分に追随する画像を得ることができる。
尚、上記「走査線密度」は、一回の超音波ビームの送受信を一本の走査線として数えたときの走査線密度をいう。すなわち、公知のように、同一の経路に沿って進む超音波ビームであっても、超音波ビームの焦点位置が異なる複数の超音波ビームを順次送受信することにより画像の分解能を高めることができ、したがって本発明では、同一の経路に沿って進む超音波ビームであってもその超音波ビームを一枚の画像(フレーム)内で複数回送受信する場合、その同一の経路に沿う走査線の本数は、一本ではなく、その送受信の回数と同じ本数として数えられる。
また、本発明の第2の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置における第2の送受信モードが、上記第1の領域内について上記第2の領域内よりも高い走査線密度で走査するものであるのに代わり、本発明の第2の超音波診断装置の第2送受信モードは、被検体内の、穿刺針の通過経路の一部もしくは全部を含む、第1の送受信モードにおける走査領域よりも狭い走査領域である第1の領域内について、第1の送受信モードにおける走査線密度よりも高い走査線密度で走査するモードであることを特徴とする。
本発明の第2の超音波診断装置は、第2の送受信モードでは、本発明の第1の超音波診断装置にいう第2の領域については走査そのものを止めるというものであり、本発明の第1の超音波診断装置と同様、穿刺術を施しやすい分解能とフレームレートを持った画像を提供することができる。
ここで、上記本発明の第1ないし第2の超音波診断装置において、第1の送受信モードと第2の送受信モードを切替えるについては、第1の送受信モードと第2の送受信モードとを切り替える送受信モード切替操作子を備えてもよく、あるいは、上記ガイド部材が上記本体部に着脱自在なものであって、上記超音波プローブが、ガイド部材の、本体部への着脱を検出するセンサを備え、上記送受信部が、そのセンサにより、ガイド部材の、本体部への装着が検出されるか否かに応じて、それぞれ、第2の送受信モードもしくは第1の送受信モードに切り替わるものであってもよい。さらに、センサを備える形態の場合、そのセンサが、ガイド部材の、本体部への着脱を検出するとともに、本体部に装着されたガイド部材の種別を判別するものであって、送受信部が、ガイド部材の種別に応じて上記第1の領域を設定するものであることが好ましい。
ガイド部材に応じて被検体内への穿刺針の刺し込む方向が定まるため、被検体内の異なる深さ位置に穿刺針を刺し込むことができるようにするには、その穿刺針を案内する方向が異なる、本体部に着脱自在な複数種類のガイド部材が必要となる。その場合、ガイド部材の種類に応じて分解能を向上させるべき第1の領域を異ならせる必要を生じることが考えられる。そこで、上記センサに、装着されたガイド部材の種別を判別する機能を持たせ、装着されたガイド部材に応じて第1の領域を設定するように構成することにより、例えばその第1の領域を、操作子を操作して装着したガイド部材に合わせて調整するように構成した場合と比べ、操作性が大きく向上する。
また、上記第1ないし第2の超音波診断装置において、上記第1の領域を定める別の手段として、穿刺針先端を振動させる振動機構を備え、送受信部が、超音波振動子に伝播してきた穿刺針先端の振動を受信して穿刺針先端位置を検出し、検出された穿刺針先端位置に基づいて上記第1の領域を設定するものであってもよい。
あるいは、上記第1の領域を定めるさらに別の手段として、上記超音波プローブが、穿刺針の、ガイド部材を通過する先端側の部分の長さを測定するセンサを備え、送受信部が、そのセンサにより測定された長さに応じて上記第1の領域を設定するものであってもよい。
また、上記第1ないし第2の超音波診断装置において、上記画像生成部が、受信信号に基づく画像に、穿刺針の通過経路をあらわす図形を重畳する機能を有し、その超音波診断装置が上記画像に上記図形を重畳させるか否かを切り替える図形重畳切替操作子を備え、上記送受信部が、図形重畳切替操作子が上記画像に上記図形を重畳させる側に切り替えられるか否かに応じて、それぞれ、第2の送受信モードもしくは第1の送受信モードに切り替わるものであってもよい。
このように、穿刺術に関連した操作を行なう操作子を備える場合、1つの操作子で穿刺術に関連した複数の操作を同時に切り替えるように構成することにより、操作性が向上する。
さらに、上記本発明の第1ないし第2の超音波診断装置において、上記画像生成部が、走査領域全域をあらわす第1の画像を生成する第1の画像生成モードと、その走査領域のうちの穿刺針の通過経路の少なくとも一部を含む一部領域からなる拡大領域、もしくはその走査領域全域からなる拡大領域をあらわす、被検体内の単位面積あたりの寸法が上記第1の画像よりも拡大された第2の画像を生成する第2の画像生成モードとを有するものであることが好ましい。
走査領域全域についての通常の寸法の画像(第1の画像)を生成する第1の画像生成モードに加え、走査領域のうちの拡大領域について拡大画像(第2の画像)を生成する第2の画像生成モードを置くことにより、分解能が向上するだけでなく、拡大された、穿刺術にとって一層好ましい見やすい画像が提供される。
また、上記第2の画像(拡大画像)を生成する第2の画像生成モードを有する態様において、第1の画像生成モードと第2の画像生成モードとを切り替えるについては、第1の送受信モードと第2の送受信モードの切替えの場合と同様、第1の画像生成モードと第2の画像生成モードとを切り替える画像生成モード切替操作子を備えてもよく、あるいは、ガイド部材が本体部に着脱自在なものであって、上記超音波プローブが、ガイド部材の、本体部への着脱を検出するセンサを備え、画像生成部が、そのセンサにより、ガイド部材の、本体部への装着が検出されるか否かに応じて、それぞれ、第2の画像生成モードもしくは第1の画像生成モードに切り替わるものであってもよい。さらに、センサを備える形態の場合、そのセンサが、ガイド部材の、本体部への着脱を検出するとともに、本体部に装着されたガイド部材の種別を判別するものであって、画像生成部が、ガイド部材の種別に応じて上記拡大領域を設定するものであることが好ましい。
前述したように、ガイド部材の種類に応じて穿刺針の案内方向が異なり、その場合、ガイド部材の種類に応じて拡大領域を異ならせることが好ましい場合が生じる。そこで、上記センサに、装着されたガイド部材の種別を判別する機能を持たせ、装着されたガイド部材に応じて拡大領域を設定するように構成することにより、拡大領域をいちいちマニュアルで設定する構成の場合と比べ、操作性が大幅に向上する。
また、上記第1ないし第2の超音波診断装置における、上記第1の画像生成モードと第2の画像生成モードとを有する態様において、上記拡大領域を定める別の手段として、穿刺針先端を振動させる振動機構を備え、送受信部が、超音波振動子に伝播してきた穿刺針先端の振動を受信して穿刺針先端位置を検出するものであって、画像生成部が、上記送受信部により検出された穿刺針先端位置に基づいて上記拡大領域を定めるものであってもよい。
あるいは、上記拡大領域を定めるさらに別の手段として、上記超音波プローブが、穿刺針の、ガイド部材を通過する先端側の部分の長さを測定するセンサを備え、画像生成部が、そのセンサにより測定された長さに応じて拡大領域を設定するものであってもよい。
また、第1ないし第2の超音波診断装置であって、上記第1の画像生成モードと第2の画像生成モードとを有する態様の場合に、画像生成部が、受信信号に基づく画像に、穿刺針の通過経路をあらわす図形を重畳する機能を有し、その超音波診断装置が上記画像に上記図形を重畳させるか否かを切り替える図形重畳切替操作子を備え、画像生成部が、図形重畳切替操作子が上記画像に上記図形を重畳させる側に切り替えられるか否かに応じて、それぞれ、第2の画像生成モードもしくは第1の画像生成モードに切り替わるものであってもよい。
前述した、第1の送受信モードと第2の送受信モードとの切替えの場合と同様、図形重畳切替操作子で、第1の画像生成モードと第2の画像生成モードとの切替えを兼用させることにより、操作性が高められる。
また、本発明の超音波診断装置のうちの第3の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部と、
上記穿刺針先端を振動させる振動機構とを備え、
上記送受信部が、超音波振動子に伝播してきた穿刺針先端の振動を受信して穿刺針先端位置を検出し、検出された穿刺針先端位置に応じた周波数の超音波ビームが形成されるように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。
周波数が高い超音波ビームを送受信すると分解能が向上するが、周波数の高い超音波ビームは減衰がはげしく、被検体内の深い部分の画像を得ることはできない。そこで穿刺針先端位置を検出し検出された穿刺針先端位置に応じてその穿刺針先端が被検体内の浅い位置にあるときは、周波数の高い超音波ビームを送受信して画像の分解能を向上させ、穿刺針先端が被検体内の深い位置に刺し込まれるにつれて低い周波数の超音波ビームを送受信することにより、全体としてできる限り高い分解能の画像を生成することができる。
また、本発明の超音波診断装置のうちの第4の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部と、
上記穿刺針先端を振動させる振動機構とを備え、
上記送受信部が、超音波振動子に伝播してきた穿刺針先端の振動を受信して穿刺針先端位置を検出し、検出された穿刺針先端位置に応じた周期で超音波ビームが順次形成されるように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。 超音波ビーム形成の周期を短かくすることによりフレームレートを向上させることができ、フレームレートを一定に保つならば走査線本数を増やして分解能を向上させることができるが、被検体内の深い位置まで超音波ビームを送信し、その深い位置で反射した超音波を受信するには、超音波の伝播に時間を要するため、周期を短くするには限界がある。そこで、穿刺針先端が被検体内の浅い位置にあるときは超音波ビーム送受信の周期を短くしてフレームレートないしは分解能を向上させ、穿刺針先端が被検体内の深い位置に刺し込まれるにつれて超音波ビーム送受信の周期を長くすることにより、全体としてフレームレートと分解能が高いレベルで調整された画像を得ることができる。
また、本発明の超音波診断装置のうちの第5の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部と、
上記穿刺針先端を振動させる振動機構とを備え、
上記送受信部が、超音波振動子に伝播してきた穿刺針先端の振動を受信して穿刺針先端位置を検出し、検出された穿刺針先端位置に応じて超音波ビームの焦点距離が変化するように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。
穿刺術を施す際に画像上最も関心のある領域は、穿刺針先端近傍の領域であり、その領域の画像分解能を向上させることが好ましい。一方、超音波ビームのビーム径は、その超音波ビームの長手方向どこでも同じビーム径ではなく、超音波ビームには、ある深さ位置に最も細かいビーム径を有する焦点が形成されている。ここで、ビーム径が細かい方が分解能が高く、穿刺針先端位置に応じた深さ位置に超音波ビームの焦点を形成することにより、穿刺術に好適な高分解能の画像を生成することができる。
さらに、本発明の超音波診断装置のうちの第6の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部とを備え、
上記超音波プローブが、穿刺針の、ガイド部材を通過する先端側の部分の長さを測定するセンサを備え、
上記送受信部が、そのセンサにより測定された長さに応じた周波数の超音波ビームが形成されるように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。
この第6の超音波診断装置は、穿刺針の刺し込まれた部分の長さに応じて超音波ビームの周波数を変更するものであって、前述の第3の超音波診断装置と同様、そのときの穿刺針の刺し込み長さに応じてできる限り分解能の高い画像を生成することができる。
さらに、本発明の超音波診断装置のうちの第7の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部とを備え、
上記超音波プローブが、穿刺針の、ガイド部材を通過する先端側の部分の長さを測定するセンサを備え、
上記送受信部が、そのセンサにより測定された長さに応じた周期で超音波ビームが順次形成されるように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。
この第7の超音波診断装置によれば、前述の第4の超音波診断装置と同様、超音波ビーム形成の周期を調整することにより、フレームレートと分解能が高いレベルで調整された、穿刺術に好適な画像を得ることができる。
さらに本発明の超音波診断装置のうちの第8の超音波診断装置は、被検体内に延びる複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される走査領域内の画像を生成する超音波診断装置において、
被検体にあてがわれて被検体内への超音波の送信と被検体内で反射した超音波の受信とを行なう超音波振動子を有する本体部と、被検体内に刺し込まれる穿刺針を案内するガイド部材とを備えた超音波プローブと、
複数本の走査線それぞれに沿って進む超音波ビームが順次に形成されるように超音波振動子を駆動するとともに、被検体内で反射して超音波振動子に戻ってきた超音波を超音波振動子で受信して受信信号を得る送受信部と、
上記受信信号に基づく画像を生成する画像生成部とを備え、
上記超音波プローブが、穿刺針の、ガイド部材を通過する先端側の部分の長さを測定するセンサを備え、
上記送受信部が、そのセンサにより測定された長さに応じて超音波ビームの焦点距離が変化するように超音波振動子を駆動するものであることを特徴とする。
本発明の第8の超音波診断装置によれば、穿刺針の刺し込み長さに応じて超音波ビームの焦点位置が調整され、前述した第5の超音波診断装置と同様、穿刺術に好適な高分解能の画像を得ることができる。
ここで、上記第1〜第8の超音波診断装置は、二次元的に広がる平面的な走査領域内の画像を生成するものであってもよいが、被検体内に延びる、立体的に配列された複数本の走査線それぞれに沿う超音波ビームの送信と受信とを繰り返すことにより被検体内を走査し、その走査により得られた受信信号に基づいて、それら複数本の走査線により規定される立体的な走査領域内の画像を生成するものであることも好ましい態様である。
前述したように、穿刺針は組織の境界等で少し曲げられて進み、あらかじめ定められた通過経路から外れる場合があるが、この穿刺針が曲がる方向は二次元的な走査面内のみではなく、その走査面から外れる方向にも曲がることがあり、その場合、画像から外れてしまう結果となる。そこで、立体的な走査領域を形成して三次元画像を得ることにより、常に穿刺針先端位置をモニタすることができる。
尚、三次元画像の構築には通常長時間を要するため、穿刺針の通過経路近傍の領域のみ、三次元画像を構築することが好ましい。
以上説明したように、本発明の超音波診断装置によれば、穿刺術に好適な画像を生成することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の超音波診断装置の一実施形態を示すブロック図である。ここでは先ず、このブロック図を参照して、本実施形態の超音波診断装置の概要について説明する。 以下、各部の作用ないし機能の説明はあとにまわし、先ずは、この超音波診断装置の構成について説明する。
この超音波診断装置の本体部10は、大別して、制御部100、アナログ処理部200、ディジタルスキャンコンバータ部300、ドプラ処理部400、表示制御部500、生体信号アンプ部600から構成されている。制御部100は、CPU部101と、ビームスキャン制御部102と、送受信用メモリ103とからなり、CPU部101には、操作パネル701、一体的に構成されたタッチパネル702とEL表示器703、およびフロッピィディスク装置704が接続されている。
また、アナログ処理部200は、送受信部201、受信ディレイ制御部202、ビームフォーマ部203、コントロールインターフェイス部204、アナログ信号処理部205、およびドプラシグナル処理部206から構成されており、コントロールインターフェイス部204と、送受信部201、受信ディレイ制御部202、およびドプラシグナル処理部206は、制御ライン207で結ばれている。また、コントロールインターフェイス部204とアナログ信号処理部205は制御ライン208で結ばれており、さらに、受信ディレイ制御部202とビームフォーマ部203は制御ライン209で結ばれている。アナログ処理部200を構成する送受信部201には、超音波プローブ20が、着脱自在に、ここでは最大4本まで接続される。
また、ディジタルスキャンコンバータ部300には、白黒用スキャンコンバータ301、カラー用スキャンコンバータ302、およびスクロール用スキャンコンバータ303が備えられている。
また、ドプラ処理部400には、パルス/連続波ドプラ解析部401とカラードプラ解析部402が備えられている。
さらに、表示制御部500は、ここでは1つのブロックで示されており、この表示制御部500には、プリンタ705、VTR(ビデオテープレコーダ)706、観察用テレビモニタ707、およびスピーカ708が接続されている。
また、生体信号アンプ部600も、表示制御部500と同様、ここでは1つのブロックで示されており、この生体信号アンプ部600には、ECG電極ユニット709、心音マイク710、および脈波用トランスデューサ711が接続されている。
さらに、この超音波診断装置には、電源部800が備えられている。この電源部800は、商用電源に接続され、この超音波診断装置各部に必要な電力を供給する。
また、本体部10は、CPUバス901を有しており、このCPUバス901は、制御部100を構成するCPU部101およびビームスキャン制御部102と、アナログ処理部200を構成するコントロールインターフェイス部204と、ディジタルスキャンコンバータ部300を構成する白黒用スキャンコンバータ301、カラー用スキャンコンバータ302、およびスクロール用スキャンコンバータ303と、ドプラ処理部400を構成するパルス/連続波ドプラ解析部401およびカラードプラ解析部402と、さらに画像表示部500とを接続している。また、この本体部10は、エコーバス902を有しており、このエコーバス902は、アナログ処理部200を構成するアナログ信号処理部205で生成される画像データを、ディジタルスキャンコンバータ部300に供給する。また、ドプラ処理部400を構成するパルス/連続波ドプラ解析部401およびカラードプラ解析部402で生成されたデータも、エコーバス902を経由してディジタルスキャンコンバータ部300に供給される。さらに、この本体部10は、ビデオバス903を有しており、このビデオバス903は、ディジタルスキャンコンバータ部300を構成する白黒用スキャンコンバータ301、カラー用スキャンコンバータ302、およびスクロール用スキャンコンバータ303のいずれかで生成されたビデオ信号を表示制御部500に伝達する。
操作パネル701は、多数の操作子7011,7012,7013,7014,7015,7016,…を含む、多数のキーを備えたキーボード等からなり、この操作パネル701を操作するとその操作情報がCPU部101で検知され、その操作情報に応じた指令が、その指令に応じて、ビームスキャン制御部102、コントロールインターフェイス部204、ディジタルスキャンコンバータ部300、ドプラ処理部400、あるいは表示制御部500に伝達される。
EL表示部703は、液晶表示画面を有し、また、CPU部101は、そのEL表示部703の液晶表示画面に表示するEL用線画を作成するEL用線画作成部を兼ねており、そのCPU部101で生成されたEL用線画がEL表示部703の液晶表示画面上に表示される。そのEL表示部703の液晶表示画面上にはタッチパネル702が備えられており、そのタッチパネル702に指で触れるとそのタッチパネル702上の指で触れた位置をあらわす位置情報がCPU部101に伝達される。このタッチパネル702およびEL表示器703は、例えば、操作パネル701の操作により、この超音波診断装置に、ある1つのモードに関するパラメータを設定する旨指示すると、CPU101により、その1つのモード用に設定すべき多数のパラメータ一覧がEL表示部703に表示され、タッチパネル702を指で触れて所望のパラメータを設定するなど、この超音波診断装置への各種の指示を入力し易いように構成されたものである。
フロッピィディスク装置704は、図示しないフロッピィディスクが装脱自在に装填され、その装填されたフロッピィディスクをアクセスする装置であって、CPU部101により、オペレータが操作パネル701やタッチパネル702の操作により行なった指示がそのフロッピィディスク装置704に装填されたフロッピィディスクに書き込まれ、この超音波診断装置への電源投入時、あるいは操作パネル701の操作により初期状態へのリセットが指示された時に、そのフロッピィディスク装置704に装填されたフロッピィディスクからそこに書き込まれている各種の指示情報がCPU部101に入力され、CPU部101は、その指示情報に応じて各部を初期状態に設定する。これは、この超音波診断装置を稼働させるにあたって必要となる、操作パネル701やタッチパネル702から設定すべきパラメータ等が多数存在し、例えば電源投入のたびにそれら多数のパラメータ等を設定し直すのは極めて大変であり、このためフロッピィディスクに初期状態のパラメータ等を書き込んでおいて、電源投入時や初期状態へのリセットが指示された時には、そのフロッピィディスクに書き込まれているパラメータ等を読み込んでそれらのパラメータ等に応じて各部を設定することにより、パラメータ等の設定効率化を図るというものである。
制御部100を構成するCPU部101は、上述のように、主としてマン・マシンインターフェイスの役割りを担っているのに対し、同じく制御部100を構成するビームスキャン制御部102は、主として、この超音波診断装置による超音波の送受信のタイミング等、リアルタイム性が要求される制御を担当している。この超音波診断装置で超音波の送受信を行なう時には、送受信用メモリ103から、アナログ処理部200を構成する各部を制御するためのデータが読み出され、送受信用メモリ103から読み出されたデータは、ビームスキャン制御部102からCPUバス901を経由してアナログ処理部200のコントロールインターフェイス部204に伝達され、このコントロールインターフェイス部204は、制御ライン207を経由して、送受信部201、受信ディレイ制御部202、およびドプラシグナル処理部206を制御し、また、このコントロールインターフェイス部204は、制御ライン208を介してアナログ信号処理部205を制御し、さらに受信ディレイ制御部202は、コントロールインターフェイス部204の制御を受けて、制御ライン209を介してビームフォーマ部203を制御する。送受信用メモリ103から読み出されたデータによるアナログ処理部200の各部の制御についての詳細は後述する。
送受信部201には、超音波プローブ20が接続されている。この超音波プローブには、例えばリニア走査型超音波プローブ、コンベックス走査型超音波プローブ、セクタ走査型超音波プローブ、また特殊な超音波プローブとしては、体腔内に挿入されるタイプの超音波プローブ、さらには、これら各種の超音波プローブについて、使用される超音波の周波数の相違による種別等、多種類の超音波プローブが存在する。超音波プローブを本体部10に装着するにはコネクタ(図示せず)が用いられるが、本体部10側には超音波プローブを接続するためのコネクタが4個取り付けられており、前述したように、多種類の超音波プローブのうち最大4本まで同時装着が可能である。超音波プローブを本体部10に装着すると、どの種類の超音波プローブが装着されたかをあらわす情報が本体部10で認識できるように構成されており、その情報は、制御ライン207、コントロールインターフェイス部204、およびCPUバス901を経由してCPU部101に伝えられる。一方、操作パネル701からは、操作子7011の操作により、この超音波診断装置を使用するにあたり、今回、本体部10側の4つのコネクタのうちのどのコネクタに接続された超音波プローブを使用するか指示が入力される。その指示は、CPUバス901を経由してビームスキャン制御部102に伝えられ、ビームスキャン制御部102は、送受信用メモリ103から、使用する超音波プローブに応じたデータを読み出し、その読み出されたデータは、CPUバス901、コントロールインターフェイス部204、制御ライン207を経由して送受信部201に伝達され、送受信部201は、上記のようにして指示された超音波プローブ20に対し、以下に説明するように高電圧パルスを送信して超音波を送信し、その超音波プローブで受信された信号を受け取る。ここでは、図1に1つだけ示す超音波プローブ20が超音波送受信のために選択されたものとする。
図1に示す超音波プローブ20はいわゆるコンベックス走査型の超音波プローブであり、その先端には、複数の超音波振動子211が円弧上に配列されており、超音波の送受信にあたっては、被検体(特に人体)1の体表に超音波振動子211があてがわれる。その状態で、送受信部201から複数の超音波振動子211それぞれに向けて超音波送信用の各高電圧パルスが印加される。複数の超音波振動子211それぞれに印加される各高電圧パルスは、コントロールインターフェイス部204の制御により相対的な時間差が調整されており、これら相対的な時間差がどのように調整されるかに応じて、これら複数の超音波振動子211から、被検体1の内部に延びる複数の走査線2のうちのいずれか一本の走査線に沿って、被検体内部の所定深さ位置に焦点が結ばれた超音波パルスビームが送信される。
この送信される超音波パルスビームの属性、すなわち、その超音波パルスビームの方向、焦点の深さ位置、中心周波数等は、もともとは送受信用メモリ103にそれらのデータが格納されており、超音波振動子211からは、ビームスキャン制御部102により送受信用メモリ103から読み出されCPUバス901を経由してコントロールインターフェイス部204に伝えられたデータにより定まる超音波パルスビームが送信される。
この超音波パルスビームは被検体1の内部を進む間にその1本の走査線上の各点で反射して超音波プローブ20に戻り、その反射超音波が複数の超音波振動子211で受信される。この受信により得られた複数の受信信号は、送受信部201に入力されて送受信部201に備えられた複数のプリアンプ(図示せず)でそれぞれ増幅された後ビームフォーマ部203に入力される。このビームフォーマ部203には、多数の中間タップを備えたアナログ遅延線(後述する)が備えられており、受信ディレイ制御部202の制御により、送受信部201から送られてきた複数の受信信号がアナログ遅延線のどの中間タップから入力されるかが切り換えられ、これにより、それら複数の受信信号が相対的に遅延されるとともに互いに電流加算される。ここで、それら複数の受信信号に関する相対的な遅延パターンを制御することにより、被検体1の内部に延びる所定の走査線に沿う方向の反射超音波が強調され、かつ被検体1の内部の所定深さ位置に焦点が結ばれた、いわゆる受信超音波ビームが形成される。ここで、超音波は、被検体1内部を、信号処理の速度と比べてゆっくりと進むため、1本の走査線に沿う反射超音波を受信している途中で被検体内のより深い位置に焦点を順次移動させる、いわゆるダイナミックフォーカスを実現することもでき、この場合、超音波パルスビーム1回の送信に対応する1回の受信の間であっても、その途中で時間的に順次に、受信ディレイ制御部202により、各超音波振動子で得られた各受信信号が入力される、アナログ遅延線の各タップが切り換えられる。
この受信超音波ビームの属性、すなわち受信超音波ビームの方向、焦点位置等についても、もともとは送受信用メモリ103に格納されていたデータにより定められる。すなわち、送受信用メモリ103に格納されていたデータがビームスキャン制御部102により読み出され、CPUバス901を経由してコントロールインターフェイス部204に伝えられ、さらに制御ライン207を経由して受信ディレイ制御部202に伝えられ、受信ディレイ制御部202はそのようにして伝えられてきたデータに基づいて、ビームフォーマ部203を制御する。
尚、上記説明では、超音波振動子211には高電圧パルスを与え、超音波パルスビームを送信する旨説明したが、この場合、前述したように超音波は信号処理速度と比べるとゆっくりと被検体内を進むため、超音波振動子211に高電圧パルスを印加した時点を起点とし、超音波振動子211で反射超音波を受信する時点までの時間により、その時点で得られた信号が被検体内のどの深さ位置で反射した反射超音波に対応する信号であるかを知ることができる。すなわち、送信される超音波がパルス状のものであることにより、被検体の深さ方向に分解能を持つことになる。通常は、このように、超音波振動子211には高電圧パルスが印加されるが、特殊な場合には、被検体内の深さ方向に分解能を持たないことを許容し、超音波振動子211に連続的に繰り返す高電圧パルス列信号を印加して被検体内に連続波としての超音波ビームを送信することもある。
ただし、以下においても、ドプラ処理部400を構成するパルス/連続波ドプラ解析部401の説明の際に連続波に言及する場合を除き、パルス状の超音波ビームを送信するものとして説明する。
図1に示す超音波プローブ20は、図21を参照して説明した従来の超音波プロー部と同様、配列された超音波振動子211を備えた本体部21と、その本体部21に着脱自在に装着されるガイド部材22で構成されている。ガイド部材22には、穿刺針30が、被検体1内部の、複数の走査線2によって規定される走査領域3内であって、かつあらかじめ定められた方向に差し込まれるように穿刺針30を案内する案内孔22aが設けられており、穿刺針30は、その案内孔22aに挿入され、その案内孔22aに案内されながら被検体内の患部11に向けて刺し込まれる。
送受信部201およびビームフォーマ部203は、上記のようにして、被検体1内部の複数の走査線2のそれぞれに沿って順次に超音波パルスビームの送信と受信とを繰り返し、これにより生成される各走査線に沿う受信超音波ビームをあらわす走査線信号が順次アナログ信号処理部205に入力される。このアナログ信号処理部205では、入力された走査線信号が対数圧縮され、検波され、さらに、操作パネル701の操作子7012を操作することにより指定された、被検体1内部のどの深さ領域までの画像を表示するかという指定(つまり被検体内部の浅い領域のみの画像を表示すればよいのか、あるいはどの程度深い領域までの画像を表示する必要があるかという指定)に応じたフィルタリング処理等が施され、さらにA/D変換器によりディジタルの画像データに変換される。このアナログ信号処理部205から出力された画像データは、エコーバス902を経由して、ディジタルスキャンコンバータ部300を構成する白黒用スキャンコンバータ301に入力される。この白黒用スキャンコンバータ301では、表示用の各画素に対応したデータを生成するための補間演算処理が施され、さらに入力された画像データが表示用のビデオ信号に変換され、その表示用のビデオ信号がビデオバス903を経由して表示制御部500に入力される。この表示制御部500は、複数の走査線2で規定される被検体断層面内の超音波反射強度分布によるBモード像を観察用テレビモニタ707に表示する。その際、必要に応じて、操作パネル701から入力された患者名や撮影年月日、撮影条件等も、そのBモード像に重畳されて表示される。このBモード像として、被検体1内部が動いている様子をあらわす動画像を表示することもでき、あるいは、ある時点における静止画像を表示することもでき、さらには、生体信号アンプ部600からの同期信号に基づいて、人体の心臓の動きに同期した、その心臓の動きの、ある位相における画像を表示することもできる。
生体信号アンプ部600には、被検体(人体)1の心電波形を得るためのECG電極ユニット709、心音をピックアップする心音マイク710、人体の脈をとらえる脈波用トランスデューサ711が接続されており、生体信号アンプ部600では、これらのうちのいずれか1つもしくは複数のセンサに基づいて同期信号が生成され、表示制御部500に送られる。
また表示制御部500には、観察用テレビモニタ707のほか、プリンタ705、VTR(ビデオテープレコーダ)706が接続されており、表示制御部500は、オペレータからの指示に応じて、観察用テレビモニタ707に表示された画像をプリンタ705ないしはVTR706に出力する。
再度、アナログ処理部200の説明から始める。
被検体内部に延びるある一本の走査線上の超音波反射情報の時間変化を知ろうとするときは、オペレータからの指示に応じて、その関心のある一本の走査線に沿って超音波が繰り返し送受信され、その1本の走査線に沿う被検体の受信超音波ビームをあらわすデータがエコーバス902を経由してスクロール用スキャンコンバータ303に入力される。このスクロール用スキャンコンバータ303は、縦方向にその1本の走査線に沿う被検体の深さ方向の超音波反射強度分布、横軸が時間軸からなり時間軸方向にスクロールする画像(Mモード像)をあらわすビデオ信号が生成され、ビデオバス903を経由して表示制御部500に入力され、例えば観察用テレビモニタ707に、そのビデオ信号に基づく画像が表示される。尚、表示制御部500は、白黒用スキャンコンバータ301から送られてきたBモード像をあらわすビデオ信号とスクロール用スキャンコンバータ303から送られてきたMモード像をあらわすビデオ信号とを横に並べる機能や、Bモード像に、後述するカラーモード像を重畳する機能も有しており、観察用テレビモニタ707には、オペレータからの指示に応じて、複数の画像が並べて表示され、あるいは複数の画像が重畳して表示される。
もう一度、アナログ処理部200の説明に戻る。
アナログ処理部200を構成するドプラシグナル処理部206は、被検体1内部の血流分布や、ある一点、ないしある1本の走査線上の血流速度を求めるための構成要素であり、このドプラシグナル処理部206では、ビームフォーマ部203で生成された受信超音波ビームをあらわす走査線信号に、いわゆる直交検波が施され、さらにA/D変換によりディジタルデータに変換される。ドプラシグナル処理部206から出力された直交検波後のデータは、ドプラ処理部400に入力される。ドプラ処理部400には、パルス/連続波ドプラ解析部401とカラードプラ解析部402とが備えられており、ここでは、ドプラシグナル処理部206から出力されたデータは、カラードプラ解析部402に入力されるものとする。カラードプラ解析部402では、各走査線それぞれに沿って例えば8回ずつ超音波送受信を行なったときのデータに基づく自己相関演算により、オペレータにより指定された、Bモード画像上の関心領域(ROI)内の血流分布をあらわすデータが求められる。ROI内の血流分布をあらわすデータは、エコーバス902を経由してカラー用スキャンコンバータ302に入力される。このカラー用スキャンコンバータ302では、そのROI内の血流分布をあらわすデータが表示に適したビデオ信号に変換され、そのビデオ信号は、ビデオバス903を経由して表示制御部500に入力される。表示制御部500では、白黒用スキャンコンバータ301から送られてきたBモード像上のROIに、例えば超音波プローブ20に近づく方向の血流を赤、遠ざかる方向の血流を青、それらの輝度で血流速度をあらわしたカラーモード像を重畳して、観察用テレビモニタ707に表示する。これにより、そのROI内の血流分布の概要を把握することができる。 ここで、オペレータにより、そのROI内のある1点もしくはある1本の走査線上の血流を詳細に観察する旨の要求が入力されると、今度は送受信部201により、その一点を通る一本の走査線、もしくはその関心のある1本の走査線に沿う方向に多数回超音波の送受信が繰り返され、それにより得られた信号に基づいてドプラシグナル処理部206で生成されたデータが、ドプラ処理部400を構成するパルス/連続波ドプラ解析部401に入力される。被検体内のある一点の血流に関心があるときは、被検体内にはパルス状の超音波ビームが送信され、ある1本の走査線上の血流情報が平均化されることを許容しS/Nの良い血流情報を得たいときは、被検体内には連続波としての超音波ビームが送信される。
パルス/連続波ドプラ解析部401では、ある1点もしくはある1本の走査線について多数回超音波送受信を行なうことにより得られたデータに基づくFFT(Fast Fourier Transform)演算により、その一点の血流情報あるいはその一本の走査線上の平均的な血流情報が得られる。このパルス/連続波ドプラ解析部401で得られた血流情報をあらわすデータは、エコーバス902を経由して、スクロール用スキャンコンバータ303に入力され、スクロールスキャンコンバータ303では、縦軸が血流速度、横軸が時間軸からなり時間軸方向にスクロールする画像をあらわすビデオ信号が生成される。このビデオ信号は、ビデオバス903を経由して表示制御部500に入力され、観察用テレビモニタ707上に、例えば白黒用スキャンコンバータ301から送られてきたBモード像と並べられて表示される。
図2は、図1に1つのブロックで示す送受信用メモリに格納されたデータの概念図である。
ここには多数の走査線データ1〜m、および多数のシーケンスデータ1〜nが格納されている。各1つの走査線データは、ある1つの超音波プローブの、ある1本の走査線に沿った送信超音波ビーム、受信超音波ビームの属性を規定するデータの集合からなり、具体的には、ある走査線データ(例えば走査線データ1)は、ある特定の1種類の超音波プローブに適合したデータであって、かつ、その超音波プローブ20における複数の走査線2のうちのある1本の走査線に沿う方向に送信される、ある深さ位置に焦点が形成された、ある周波数の送信超音波ビームを形成するために複数の超音波振動子211にそれぞれ与える高電圧パルスの相対的な時間差(それら相対的な時間差全体を遅延パターンと称する)、およびそれら複数の超音波振動子211に与える高電圧パルスのパルス幅や繰返し周期等を規定するデータ、さらには、受信超音波ビームの方向や焦点位置を規定するための、各超音波振動子211で得られた各受信信号の相対的な遅延時間(それら相対的な遅延時間全体を、やはり遅延パターンと称する)を規定するデータ等の集合で構成されている。
また、各1つのシーケンスデータ(例えばシーケンスデータ1)は、走査線データの読み出し順序を規定しているデータであり、このシーケンスデータに定められた順序で複数の走査線データが順次読み出され読み出された走査線データに基づく超音波ビームの送受信が順次実行される。すなわち、操作子7011の操作によりある超音波プローブを使用することが指示され、さらには後述する送受信モードの切り替えが行なわれると、送受信用メモリ103からそれらに適合したシーケンスデータがビームスキャン制御部102によって読み出され、超音波の送受信にあたっては、ビームスキャン制御部102により、その読み出されたシーケンスデータに従って、例えば図1に示す複数の走査線2のうち、先ず最初は、最も左側の走査線に沿う超音波ビームの送受信を行うための走査線データが読み出されアナログ処理部200に送られてその走査線に沿う超音波ビームの送受信が実行され、次いで左側から2番目の走査線に沿う超音波ビームの送受信を行うための走査線データが読み出されアナログ処理部に送られてその走査線に沿う超音波ビームの送受信が実行される。以下同様であり、最も右側の走査線に沿う超音波ビームの送受信が実行され、これにより1フレーム分の受信信号が得られ、走査領域3についての1枚の画像が生成される。次いで、次のフレームの画像を生成するために、再度、最も左側の走査線に沿う超音波ビームの送受信に移る。
図3は、複数の超音波振動子に印加される高電圧パルスの遅延パターンを示した概念図である。
配列された複数の超音波振動子211に、配列の両端(A),(B)に位置する超音波振動子と比べ配列の中央(O)よりに位置する超音波振動子に、時間的に遅れた高圧パルス212を印加する。このように、遅延パターンを持った高電圧パルスを複数の超音波振動子211に印加することにより、被検体内の所定の方向に延び、かつある深さ位置に焦点が形成された送信超音波パルスビームが形成される。
図4は、パルス幅および繰返し周期の異なる高電圧パルスが超音波振動子に印加される様子を示した模式図である。
図4(A)と図4(B)とを比べると、図4(A)よりも図4(B)の方がパルス幅が広く、かつ繰返し周期の長い高電圧パルスが超音波振動子211に印加されている。
送受信に用いる超音波の周波数を大きく異ならせるには、その周波数に適合した超音波振動子が配列された超音波プローブを各周波数毎に準備する必要があるが、図4に示すように、超音波振動子211に印加する高電圧パルスのパルス幅や繰返し周期を調整することにより、ある範囲内で超音波の周波数を調整することができる。
図5は、ビームフォーマ部における、受信超音波ビームの形成の仕方を示す原理説明図である。
ここでは、説明の簡単のため、複数のタップを備えた遅延線1001a,…,1001m,…,1001nと、制御信号に応じて受信信号の遅延線への入力ルートを切り換える選択スイッチ1002a,…,1002m,…,1002nとのペアが各超音波振動子211に対応して備えられているものとする。各選択スイッチ1002a,…,1002m,…,1002nにはそれぞれ1つの超音波振動子211で得られた1つの受信信号が入力され、各選択スイッチ1002a,…,1002m,…,1002nでは、その入力された受信信号が、遅延線の複数のタップのうちの、制御信号に応じたタップから遅延線に入力される。各遅延線は2001a,…,2001m,…,2001nは受信信号が入力されたタップに応じた遅延時間だけその入力された受信信号を遅延して加算器1003に入力する。加算器1003は、その加算器1003に同時に入力された受信信号どうしを加算して、受信超音波ビームをあらわす走査線信号を出力する。
なお、この図5では、解りやすさのため、超音波振動子の個数と同数の、遅延線1001a,…,1001m,…,1001nと選択スイッチ1002a,…,1002m,…,1002nとのペアを備えるとともに、各遅延線1001a,…,1001m,…,1001nから出力された受信信号を互いに加算する加算器103を備えた構成について説明したが、実際には、多数のタップを備えた一本の遅延線に、複数の超音波振動子で得られた複数の受信信号が、入力されるタップがそれぞれ制御されながら入力され、それら複数の受信信号がそれぞれ入力された各タップに応じた時間だけ遅延されると共にその遅延線内で互いに電流的に加算され、その一本の遅延線から、制御された遅延パターンに従って遅延を受けかつ互いに加算された走査線信号が、直接に出力される。
図6は、遅延パターンと、走査線の方向と、焦点位置との関係を示した説明図である。
A−B間に複数の超音波振動子が配列されているものとし、A−B間の中点をOとする。このとき、各超音波振動子に印加される高電圧パルスに、図6(A)に示すようにB側に位置する超音波振動子に対し長めの遅延時間を与えて各超音波振動子に印加すると、中点OからB側に傾いた方向に延びる走査線に沿う送信超音波ビームが形成され、図6(B)に示すように、左右対称の遅延パターンを与えると中点Oから超音波振動子211の配列方向に対し垂直に延びる走査線に沿う送信超音波ビームが形成され、図6(C)に示すように、A側に位置する超音波振動子に対し長めの遅延時間を与えた高電圧パルスを印加すると、A側に傾いた送信超音波ビームが得られる。また、同一の走査線に沿う送信超音波ビームであっても、高電圧パルスの遅延パターンに応じて焦点位置を定めることができる。具体的には、図6(A)〜(C)に破線で示すように焦点を中心としてA−B間を結ぶ線分に接する円弧を描くいて考える。各超音波振動子から送信された超音波パルスがその円弧上に同時に到達すると、それらの超音波パルスは焦点に集まるように進む。したがって、例えば図6(B)のように焦点を形成する場合は、A点およびB点に位置する超音波振動子に同時に高電圧パルスが印加され、その高電圧パルスの印加によってA点およびB点に位置する超音波振動子から発せられた超音波パルスがその円弧上に達したタイミングでO点に位置する超音波振動子に高電圧パルスが印加されてそのO点に位置する超音波振動子から超音波パルスが送信される。こうすることにより、図6(B)に示す走査線に沿うとともに図6(B)に示す焦点位置で最も細いビーム径を有する送信超音波パルスビームが形成される。
ここで、A−B間に配列された、超音波送信に用いられている複数の超音波振動子は、例えば超音波プローブ20(図1参照)に配列された複数の超音波振動子211の一部であって、送信超音波パルスビームの形成に用いる複数の超音波振動子からなる送信開口を、超音波プローブ20に配列された超音波振動子211の配列方向に移動することにより、走査線を、超音波振動子211の配列方向に平行移動させることができる。ただし、図1に示す超音波プローブ20の場合、超音波振動子211は円弧状に配列されているため、走査線は、平行移動ではなく、円弧を描くように移動することになる。
このようにして、超音波プローブ20に配列された超音波振動子211上の任意の点を始点として被検体内の任意の方向に延びる走査線に沿うとともに、その走査線上の任意の点に焦点を持つ送信超音波ビームを得ることができる。
受信超音波ビームの形成についても上記の送信超音波ビームの場合と同様である。
すなわち、被検体内で反射し各超音波振動子に戻ってきた超音波を各超音波振動子で受信することにより得られた各受信信号を、図6(A)に示すように、B側の超音波振動子で得られた受信信号に対し長めの遅延時間を与えた上で互いに加算すると、中点Oを始点としB側に傾いた走査線に沿う受信超音波ビームが形成され、図6(B)に示すように左右対称の遅延時間を与えた上で互いに加算すると、中点Oを始点として超音波振動子の配列方向に対し垂直に延びる走査線に沿う受信超音波ビームが形成され、図6(C)に示すようにA側の超音波振動子で得られた受信信号に対し長めの遅延時間を与えた上で互いに加算すると、点Oを始点としA側に傾いた走査線に沿う受信超音波ビームが得られる。また、同一の走査線に沿う受信超音波ビームであっても、遅延パターンに応じて焦点位置を定めることができる。具体的には、焦点で反射してそれぞれ各点A,O,Bに向かう超音波は、焦点と各点A,O,Bとを結ぶ各線分と、円弧との交点に同時に到達することになり、焦点で反射した超音波を各超音波振動子で受信する時刻に差異が生じることになる。そこで焦点で反射した超音波が先に到達した超音波振動子で得られた受信信号を、超音波が後から到達する超音波振動子に超音波が到達する迄の間遅延させた上で互いに加算すると、焦点を通る走査線に沿う方向に延び、かつその焦点で最も細く絞られた受信超音波ビームが形成されることになる。
ここで、送信の場合と同様、A−B間に配列された、反射超音波の受信に用いられている複数の超音波振動子は、例えば超音波プローブ20(図1参照)に配列された複数の超音波振動子211の一部であって、反射超音波の受信に用いる複数の超音波振動子からなる受信開口を、超音波プローブ20に配列された超音波振動子211の配列方向に移動することにより、走査線を、配列された超音波振動子211の方向に平行移動させることができる。ただし、図1に示す超音波プローブ20の場合は、超音波振動子211は円弧上に配列されているため、送信の場合と同様走査線は平行移動ではなく円弧を描くように移動することになる。
このようにして、送信および受信の双方について、超音波プローブ20に配列された超音波振動子211上の任意の点を始点として被検体内の任意の方向に延びる走査線に沿うとともにその走査線上の任意の点に焦点を持つ超音波ビームを得ることができる。
以上で本実施形態の超音波診断装置全体の概要説明を終了し、以下、本実施形態に特徴的な点について説明する。
尚、図1に示す実施形態の場合、以下の説明から明らかなように、送受信部201のみでなく、アナログ処理部200全体、およびドプラ処理部400、さらには、制御部100の、アナログ処理部200やドプラ処理部400を制御する機能を合わせたものが、本発明にいう送受信部に相当し、ディジタルスキャンコンバータ部300、表示制御部500、CPU部101の、グラフィック画像を生成する機能、および制御部100の、ディジタルスキャンコンバータ部300や表示制御部500を制御する機能を合わせたもの、さらには、プリンタ705、VTR706、および観察用テレビモニタ707を合わせたものが、本発明にいう画像生成部に相当する。
図7は、本実施形態における、超音波による被検体内の走査の各例を示す模式図である。
図7(A)は、図21に示す従来例と同様、複数の走査線2は、走査領域3内に均一に広がっている。これは、本発明にいう第1の送受信モードの一例に相当する。尚、図7(A)において円A、円Bを付した点に関しては後述する。
図7(B)は、走査領域3のうち、穿刺針30の通過領域を含む第1の領域31について、走査領域3のうち、その第1の領域31を除く第2の領域32よりも高い走査線密度で走査する様子が示されている。これは、本発明にいう第2の送受信モード(本発明の第1の超音波診断装置にいう第2の送受信モード)の一例に相当する。
また、図7(C)については、走査領域3自体が、図7(B)に示す第1の領域31と同一の領域にまで狭められ、その狭められた走査領域3からなる第1の領域31について走査する様子が示されている。これも本発明にいう第2の送受信モード(本発明の第2の超音波診断装置にいう第2の送受信モード)の一例に相当する。
これらのモード切替えは、図1に示す送受信用メモリ103にそれぞれのモードに対応するシーケンスデータ(図2参照)を格納しておき、操作パネル701の操作子7013を操作することにより行なわれる。操作子7013が操作されていずれかの送受信モードに切り替えられると、ビームスキャン制御部102は、操作子7013の操作により指定された送受信モードに応じたシーケンスデータを読み出し、超音波の送受信にあたって、送受信用メモリ103に格納された走査線データ(図2参照)を、その読み出したシーケンスデータに従って順次読み出すことによって、その送受信モードが実現する。
図8は、図1に示す観察用テレビモニタ707に表示される画像の模式図である。
図7(A)のモードのときは、観察用テレビモニタ707には、広い走査領域3全域の画像が均質の分解能で表示され、図7(B)のモードのときは、一応広い走査領域3は確保されるものの、第1の領域31については高分解能、第2の領域32については低分解能の画像が表示される。また、図7(C)のモードのときは、第1の領域31と同一の走査領域についての、すなわち狭い走査領域についての画像が表示される。
図8には、穿刺針の通過経路をあらわす線図30aも表示されている。この穿刺針の通過経路をあらわす線図30aを表示するか否かは、図1に示す操作パネル701上の操作子7014によって切り替えられ、表示することが指示されると、CPU101によってその線図が作成されて、CPUバス901を経由して表示制御部500に送られ、表示制御部500では、その線図30aが、白黒スキャンコンバータ301で作成されビデオバス903を経由して表示制御部500に入力されたBモード像に重畳される。
尚、ここでは、図7(A),(B),(C)の送受信モードの切替えは操作子7013で行ない図8に示す線図30aの表示、非表示の切替えは別の操作子7014で行なう旨説明したが、これらの操作子を兼用させ、図7(A)の送受信モードのときは線図30aは非表示とし、図7(B)もしくは図(C)の送受信モードのときには線図30aを表示するようにしてもよい。こうすると送受信モードの選択と線図の表示、非表示の切替えとを独立に行なうことはできなくなるが、操作性は向上する。
患部11を単に観察するときは、広い走査領域を確保し、かつその走査領域全体に所定の均質な分解能が得られるように、図7(A)に示すモードが採用される。また、患部11に穿刺針30を刺し込もうとするときは、その穿刺針30の通過経路を含む領域について高分解能の画像が得られるように、図7(B)もしくは図7(C)に示すモードが採用される。図7(B)のモードは、広い走査領域を一応確保できるという長所があり、図7(C)のモードは、図7(B)のモードよりも走査領域は狭まるがその分フレームレートを向上させることができるという長所がある。
図9は、観察用モニタテレビ707に表示される画像の他の例を示す模式図である。
ここには、患部11を中心とした領域(拡大領域)をあらわす拡大画像が示されている。
観察用モニタテレビ707に図9に示すような拡大画像を表示するには、図8に示すような全体画像が表示されている段階で、図1に示す操作パネル701上の操作子7015を操作して、どの部分(拡大領域と称する)を拡大するかROI(Region Of Interest)指定を行ない、かつ拡大すべき旨を指示する。すると、CPU部101からCPUバス901を経由して白黒用スキャンコンバータ301に拡大領域の位置情報が入力され、白黒用スキャンコンバータ301では、その拡大領域について拡大画像が得られるような補間処理演算が行なわれてその拡大領域のみをあらわす画像が生成される。また線図30aを重畳するときは、CPU部101では、その拡大領域に適合する線図が生成される。
このような拡大画像の生成を、例えば図7(C)に示す送受信モードと組み合わせると、分解能が向上し、かつ拡大された画像が表示され、穿刺術にとって一層好ましい画像が得られることになる。
尚、図9に示す拡大画像にも線図30aが示されているが、拡大画像を生成して表示するモードと線図30aを表示するモードとを一致させ、線図30aを表示するか否かを切り替える操作子7014と画像拡大を指示する操作子7015とを兼用させ、通常の寸法の画像を表示するときは線図30aは非表示とし、拡大画像を表示するときに線図30aを表示するようにしてもよい。こうすると画像生成モードの選択と線図の表示、非表示の切替えとを独立に行なうことはできなくなるが、その分操作の手間が省かれる。
図10は、図7(A)の円Aに囲まれた部分の内部構造を示す模式図である。 超音波プローブの本体部21側には、2つの固定接片21a_1,21a_2と1つの可動接片21bが備えられおり、さらに2つの固定接片21a_1,21a_2が可動接片21bで導通しているか否かを検出する検出器21cが備えられている。
図10(A)は、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着されていない状態を示しており、2つの固定接片21a_1,21a_2は互いに非導通の状態にある。図10(B)は、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着された状態を示しており、可動接片21bが、ガイド部材22の突起部22bに押されて2つの固定接片21a_1,21a_2の間を導通状態にしている。これら2つの固定接片21a_1,21a_2の間導通、非導通の状態は検出器21cにより検出され、その情報は、図1に示す送受信部201、制御ライン207、コントロールインターフェイス部204、およびCPUバス901を経由して、CPU部101およびビームスキャン制御102に伝えられる。CPU部101では、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着されているか否かの情報を、図8,図9に示す、穿刺針の通過経路をあらわす線図30aの生成や、その線図30a以外にも本体部21にガイド部材22が装着されていることを画像上に情報として表示するために使用し、ビームスキャン制御部102では、その情報に応じて送受信モード(図7(A)〜(C)参照)の切り替えに使用する。
すなわち、ここでは、図10に示すような、本体部21への、ガイド部材22の着脱を検出するセンサを備え、送受信モードを図7(A)〜(C)のように切り替えるための操作子7013を備えることに代え、このセンサにより、本体部21にガイド部材22が装着されていないことが検出されたときに図7(A)に示す送受信モード、本体部21にガイド部材22が装着されていることが検出されたときには、図7(B)もしくは図7(C)に示す送受信モードに切り替えられる。あるいは、操作子7013と図10に示すセンサとの双方を備え、さらに操作子7013を有効とする手動モードと、図10に示すセンサの方を有効とする自動モードとを切り替える操作子7016を備えてもよい。
また、図1に示す操作パネル701に、通常の寸法の画像を生成して表示するか拡大画像を生成して表示するかを切り替える操作子7015を備えることに代え、このセンサ12より、本体部21にガイド部材22が装着されていないことが検出されたときに図8に示す、走査領域3の全域を通常の寸法で表示する画像を生成し(本発明にいう第1の画像生成モードに切り替え)、そのセンサにより、本体部21にガイド部材22が装着されていることが検出されたときに、図9に示す拡大画像を生成(本発明にいう第2の画像生成モードに切り替え)てもよい。あるいは、操作子7015と、図10に示すセンサとの双方を備え、さらに、操作子7016により、操作子7015を有効とするか図10に示すセンサの方を有効とするかを切り替えることとし、このようにして、拡大画像の生成についても、手動と自動とを使い分けてもよい。
図11は、図7(A)の円Aで囲まれた部分の内部構造の他の例を示す模式図である。
超音波プローブの本体部21には4つの固定接片21a_1,21a_2,21a_3,21a_4と3つの可動接片21b_1,21b_2,21b_3が備えれらており、さらに各2つの固定接片21a_1,21a_2;21a_2,21a_3;21a_3,21a_4のペアがそれぞれ導通しているか否かを検出する3つの検出器21c_1,21c_2,21c_3が備えられている。 また、ガイド部材22側には、ガイド部材の種数に応じて最大3つの突起22b_1,22b_2,22b_3が備えられる。ここに示すガイド部材22の場合、2つの突起22b_1,22b_2が備えられている。
図11(A)は、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着されていない状態を示しており、各2つの固定接片21a_1,21a_2;21a_2,21a_3;21a_3,21a_4のペアは、いずれも非導通の状態にある。図11(B)は、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着されている状態を示しており、そのガイド部材の種類に応じて、各2つの固定接片21a_1,21a_2;21a_2,21a_3;21a_3,21a_4のペアのうちのいずれか1つもしくは2つ以上が導通状態となる。この図11(B)に示す例では、固定接片21a_1と固定接片21a_2とのペアが可動接片21b_1により導通状態となり、固定接片21a_2と固定接片21a_3とのペアが可動接片21b_2により導通状態となっている。固定接片21a_3と固定接片21a_4とのペアは、非導通状態にとどまっている。各固定接片ペアの導通、非導通の状態は検出器21c_1,21c_2,21c_3により検出される。この検出により得られる情報は、超音波プローブの本体部21にガイド部材22が装着されているか否かという情報と、さらに、本体部21にガイド部材22が装着されている場合にその装着されているガイド部材の種類とをあらわす情報を含んでいる。
この情報は、図10を参照して説明した場合と同様にして、CPU部101およびビームスキャン制御部102に伝えられる。
ガイド部材22の種類は、穿刺針を案内する角度の相違であり、被検体内の浅い部分に穿刺針を刺し込む必要があるか深い部分に穿刺針を刺し込む必要があるかに応じて種類の異なるガイド部材22が本体部21に装着される。
したがって本体部21に装着されるガイド部材の種類に応じて、図8,図9に示す穿刺針の通過経路を示す線図30aの画像上の位置や角度が異なることになり、CPU部101では、装着されたガイド部材に応じた線図が作成される。ガイド部材の種類に応じて穿刺針30が刺し込まれる画像上の領域が異なることから、図7(B),(C)に示す分解能を向上させるべき領域(第1の領域31)がガイド部材の種類におうじて異なる場合があり、ビームスキャン制御部102では、超音波プローブの本体部21に装着されるガイド部材の種類に応じて、図7(B),(C)における第1の領域31が切り替えられる。この切り替えは、前述したように、送受信用メモリ103から異なるシーケンスデータを読み出すことによって行なわれる。
また、送受信モードの切り替えと同様、拡大画像の生成に関しても、装着されたガイド部材の種類に応じてそのガイド部材によって刺し込まれる穿刺針の通過経路を含む領域が拡大されるように、ROIが自動的に変更される。このときは、操作子7015からROI指定の機能は取り去り、その操作子7015を、拡大画像を生成するか否かのみの操作子としてもよく、あるいは、手動モード、自動モード切替用操作子7016の操作により、拡大画像のROI指定を操作子7015で行なうか(手動モード)、図11に示すセンサからの情報によって行なうかを切り替えてもよい。
図12は、超音波プローブ先端部分の模式図、図13は、図12に円Cで示された、穿刺針30の先端部分の拡大断面図である。
ここでは、穿刺針30は、中空針31と、その中空針31の内壁に摺接する内針32から構成されている。また、この穿刺針30の後端部には、図12に示すように、穿刺針30の内針32をその長手方向(図13に示す矢印Z−Z方向)に振動させる加振器40が備えられている。この加振器40により内針32に振動が加えられると、超音波プローブ20の超音波振動子211から送信され内針32の先端部で反射した超音波は、その内針32の振動に起因してドプラ遷移を受けることになる。この内針32の先端でドプラ遷移を受けながら反射し超音波振動子211に戻った超音波は被検体内の他の組織で反射して戻った超音波と同様にして超音波振動子211により受信され、図1に示す送受信部201、ビームフォーマ部203を経由し、さらにドプラシグナル処理部206を経由して、ここでは血流のカラー表示とは無関係であるが、カラードプラ解析部402に入力される。カラードプラ解析部402では前述した血流分布を求める演算と同様な演算により、超音波がドプラ遷移を受けた点、すなわち穿刺針30の先端位置が検出される。この穿刺針30の先端位置をあらわす情報は、CPUバス901を経由してビームスキャン制御部102に入力され、ビームスキャン制御部102では、その穿刺針30の先端の位置に応じて、その穿刺針先端近傍の領域が高分解能の画像となるように、図7(B),(C)に示す第1の領域31が定められる。具体的には、前述したように、その穿刺針先端位置に応じたシーケンスデータが送受信用メモリ103から読み出されることになる。
このように、穿刺針先端位置を検出して前述した第1の領域31を定めることにより、第1の領域31を固定的に定めておく場合と比べ、画像の分解能とフレームレートを一層高いレベルで調整することができ、あるいは第1の領域31をオペレータが操作子を操作して設定する場合と比べ、操作の手間が省け使い勝手が向上する。
また、この穿刺針30の先端の位置情報を、拡大画像のROI指定用に用いてもよい。穿刺術を施すにあたり重要なのは穿刺針30先端近傍の画像情報であり、常に穿刺針30の先端位置が含まれるように拡大画像のROIを自動的に定めることにより、穿刺針30が刺し込まれていく途中においても、常にその穿刺針30の先端近傍が拡大されて見やすく表示されることになる。
図14は、ガイド部材22の、図7(A)の円Bに囲まれた部分の内部構造を示す模式断面図である。
ガイド部材22に設けられた、穿刺針30を案内するための案内孔22aに穿刺針30を挿入すると、その穿刺針30は2つのローラ22b_1,22b_2に挟まれ、その穿刺針30を被検体内に刺し込むにつれそれらの2つのローラ22b_1,22b_2が図14に示す矢印方向に回転する。それら2つのローラ22b_1,22b_2のうちの一方のローラ22b_1には、そのローラ22b_1の回転量を計測するポテンショメータ23が連結されている。したがってこのポテンショメータ23により、穿刺針30が被検体内にどれだけ刺し込まれたかを知ることができる。このポテンショメータ23の出力は、送受信部201,制御ライン207,コントロールインターフェイス部204,CPUバス901を経由して制御部100に伝達され、図12,図13を参照して説明した、穿刺針30の先端位置を直接的に検出する方法に代わる方法として、図7(B),(C)に示す第1の領域31の指定や拡大画像を得るときのROI指定用として用いられる。
図15は、超音波振動子から被検体内に向けて送信される超音波ビームの周波数分布を示す図である。図15(A),(B)とも、横軸は超音波の周波数f、縦軸はその周波数のパワーPをあらわしている。
図15(A)と図15(B)を比べると、図15(A)の方が図15(B)よりも中心周波数f0 が高周波側に寄っている。この中心周波数f0 の調整は、図4を参照して説明したように超音波振動子211に印加する高電圧パルスのパルス幅や繰返し周期を調整することにより行なわれる。
ここでは、図12,図13を参照して説明した、穿刺針30の先端の位置検出手法と組み合わされて、穿刺針30の先端が被検体内の浅い位置にあるときには、図15(A)に示すような中心周波数f0 が高周波側に寄った超音波の送受信を行ない、穿刺針30の先端が被検体内に深く刺し込まれるにつれて図5(B)に示すように中心周波数f0 が低周波側に寄った超音波の送受信が行なわれる。高周波の超音波を採用すると高分解能の画像を得ることができるが、減衰がはげしく、高周波の超音波を用いた場合は被検体内の浅い領域しか観察できず、一方低周波の超音波は被検体内の深い領域まで入り込むが高周波の超音波と比べ分解能の点で劣る。そこでここでは、穿刺針の先端位置に応じた周波数の超音波を用いることにより、穿刺針先端の深さ位置に応じて極力分解能の高い画像を得ることができる。
穿刺針先端位置と送受信に用いる超音波の周波数は、あらかじめその関係を定めて送受信用メモリ103に格納しておいて、穿刺針先端位置に応じて送受信用メモリ103に格納されたデータを読み出して超音波振動子211に印加する高電圧パルスを調整してもよく、あるいは穿刺針先端位置と送受信に用いる超音波の周波数との関係を関係式の形式で持っておいて、穿刺針先端位置から、演算により、周波数を求め、その周波数の超音波が送受信されるよう高電圧パルスを調整してもよい。
尚、ここでは穿刺針先端の位置を認識するために図12,図13を参照して説明した手法を採用する旨説明したが、図14を参照して説明した穿刺針30の送り込み長さを測定することによりその送り込み長さとの関係で送受信に用いる超音波の周波数を変更してもよい。
図16は、超音波振動子から被検体内に向けて送信される超音波ビームの送信の周期を示す図である。図16(A),(B)とも横軸は時間軸tをあらわし、各時刻t0 ,t1 ,t2 ,t3 ,……に被検体内に向けて超音波ビームが送信されるものとする。
ここでは、図12,図13を参照して説明した穿刺針の先端の位置検出手法と組み合わされて、穿刺針30の先端が被検体内の浅い位置にあるときには、図16(A)に示すように短い周期で超音波ビームの送受信が行なわれ、穿刺針30の先端が被検体内に深く刺し込まれるにつれて、図16(B)に示すように超音波ビームの送受信の間隔が広げられる。
前述したように、超音波は、信号処理の速度と比べると被検体内をゆっくりと進行する。したがって被検体内の浅い領域について観察するときは図16(A)に示すように超音波ビーム送受信の周期を短くすることができ、被検体内の深い領域について観察しようとするほど、超音波ビーム送受信の周期を長くする必要がある。
超音波ビーム送受信の周期が短いと同一の時間内に多数回送受信を行なうことができ、その分走査線の間隔を密にして分解能を向上させたり、フレームレートを上げて早い動きに対する追随性を向上させることができる。
そこで穿刺針の先端位置に応じた周期で超音波ビームを送受信することにより、穿刺針先端の深さ位置に応じて、分解能とフレームレートを極力高い次元でバランスさせることができる。
穿刺針先端位置と超音波ビームの送受信の周期との関係は、図12に示す送受信用メモリ103に格納しておき穿刺針先端位置に応じてその周期をあらわすデータを読み出してそのデータにより送受信部201を制御してもよく、穿刺針先端位置と超音波ビーム送受信の周期との関係を関係式の形式で持っておいて穿刺針先端位置情報から超音波ビームまで受信の周期を計算により求め、その計算で求めたデータに基づいて送受信部201を制御してもよい。
尚、穿刺針先端位置を認識するために、ここでは図12,図13を参照して説明した手法を採用する旨説明したが、図14を参照して説明した、穿刺針30の送り込み長さを測定する手法を採用し、その送り込み長さとの関係で超音波ビーム送受信の周期を変更してもよい。
図17は、超音波ビームのビーム形状を示す図である。尚、ここでは、送信超音波ビームも受信超音波ビームも同様な形状を有しているものとして、それらを特に区別せずに説明する。
図17(A)には、被検体1の内部の比較的浅い位置に、ビーム径が最も絞られた焦点Fが形成された超音波ビームが示されており、図17(B)には被検体1内部の比較的深い位置に焦点Fが形成された超音波ビームが示されている。焦点Fの近傍では超音波ビームのビーム径が細いため、その分、分解能の高い画像を得ることができる。これら超音波ビームの形状は、図3、図4〜図6を参照して説明した手法により調整することができる。
そこで、ここでは、図12、図13を参照して説明した、穿刺針30の先端の位置検出手法と組み合わされて、穿刺針30の先端が被検体内の浅い位置にあるときはその浅い位置に焦点を持つ超音波ビームが形成され、穿刺針30の先端が被検体内に深く刺し込まれるにつれて、図17(B)に示すように、より深い位置に焦点を持つ超音波ビームが形成される。
超音波ビームの焦点位置の変更は、前述したように、図1に示す送受信用メモリ103に格納されている多数の走査線データのうちのどの走査線データを読み出すかにより行なわれる。
このように、穿刺針30の先端位置に応じた位置に焦点を有する超音波ビームを形成することにより、穿刺術に好適な、高分解能の画像を得ることができる。 尚、ここでは穿刺針先端の位置を認識するために、図12,図13を参照して説明した手法を採用する旨説明したが、図14を参照して説明した、穿刺針30の送り込み長さを測定する手法を採用し、その送り込み長さとの関係で超音波ビームの焦点位置を変更してもよい。
尚、ここでは、図15,図16,図17を用いて、穿刺針30の先端位置ないし送り込み長さに応じて、それぞれ、超音波の周波数、超音波送受信の周期、超音波ビームの焦点位置を変更する技術について説明したが、これらはそれぞれに独立に実現してもよく、あるいはそれらのうちの複数を組合せて同時に実現してもよい。あるいは、それらと、それらよりも前に説明した各種の手法、例えば走査線の密度の変更や拡大領域の設定等とを組み合わせて実現してもよい。
図18は、超音波振動子の二次元的な配列を示す図である。
これまでの説明は、超音波プローブ20に備えられた超音波振動子211は、特には限定していないものの、円弧状に一列に配列されていることを中心にした説明であるが、超音波振動子211は二次元的に配列されていてもよい。図18には、X方向とY方向とに二次元的に配列された超音波振動子211が示されている。
図19は、超音波振動子が図18に示すように二次元的に配列された超音波プローブを用いて走査を行なったときの走査領域を示した図である。
この場合、被検体内がX−X方向のみでなくY−Y方向にも走査され、図19に示すような立体的な走査領域3を得ることができる。
図20は、図面上では解りにくいが奥行きを表現した立体画像を表わした図である。
図19に示すように立体的な走査領域3を得ることができることに対応して、被検体内の立体的な断層像を表示することができる。
被検体内に穿刺針を刺し込んだとき、その穿刺針はあらかじめ定められた通過経路を辿るとは限らず、被検体内の組織の境界等でそれらの組織の固さの違い等により曲げられ、あらかじめ定められた通過経路から外れた経路を進む場合があり、しかもその経路の外れ方は図19に示すX−Z面内とは限らずY方向に外れる場合もある。このようなとき、二次元的な断層像を表示していたのでは、穿刺針先端がその表示された画像から外れ穿刺針先端を十分視認できない結果となるを招く場合がある。そこで、図18に示すような、超音波振動子211が二次元的に配列した超音波プローブを用い、図19に示すような立体的な走査領域3を得て、図20に示すような立体画像を表示することにより、穿刺針先端がどの方向に曲げられても、その穿刺針先端をきちんと視認し、他の組織に傷をつけないように注意を払うことができる。
尚、立体画像の生成には時間がかかるため、穿刺針先端近傍についてのみ立体画像を生成することが好ましい。画像生成領域を穿刺針先端近傍に限定する手法としては、これまでに説明した拡大画像のROI指定の手法をそのまま採用することができる。
また、これまでに説明した各種の技術は特にその性質に反しない限り、図19〜図20を参照して説明した立体画像の生成の場合にもそのまま適用することができる。
尚、これまでに説明した全ての実施形態は、配列された複数の超音波振動子を備えた超音波プローブを採用した例であるが、超音波診断装置に関し、複数の超音波振動子を備える代りに、前面に音響レンズを備えた1個の超音波振動子を備えその超音波振動子を機械的に一次元的、あるいは二次元的に動かしながら超音波を送受信することにより、被検体内を超音波で走査する技術も一般的に知られている。本発明においてもその技術を採用して、これまで説明した各種の技術をその性質に反しない限り実現してもよい。その性質に反する場合としては、この技術を採用した場合、例えば音響レンズはその焦点が固定されているため、穿刺針の先端の位置に応じて焦点を変更するという手法は実現が難しいことになる。