JP2005305519A - 熱間圧延ラインおよびそれを用いた高Cr鋼の熱間圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高Cr鋼の熱間圧延において、スケール疵、肌荒れ等の表面欠陥の発生を抑制する。
【解決手段】水蒸気雰囲気作成装置30(水蒸気を満たす箱32、36)を熱間圧延ライン100の途中に設ける。高Cr鋼の熱間圧延において、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させる。
【選択図】図1
【解決手段】水蒸気雰囲気作成装置30(水蒸気を満たす箱32、36)を熱間圧延ライン100の途中に設ける。高Cr鋼の熱間圧延において、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、熱間圧延ラインおよびそれを用いた高Cr鋼の熱間圧延方法に関し、スケール疵、肌荒れ等の表面欠陥の発生を抑制する高Cr鋼の熱間圧延方法に関するものである。
金属帯、中でも、帯鋼に代表される薄鋼板は、溶製後、鋳造されてスラブ状の金属塊にされ、しかる後、熱間圧延、冷間圧延を経て製造され、あるいは更に鍍金処理等を施される場合もある。
図8は、従来から多くある熱間圧延ライン100の一例を示す。加熱炉10により数百〜千数百℃に加熱された厚み150〜300mmのスラブ状の金属塊(以下、被圧延材)8は、粗圧延機列12、仕上圧延機列18により厚み1〜25mmまで圧延されて薄く延ばされる。
粗圧延機列12を構成する各圧延機(スタンド)は、図8に示す熱間圧延ライン100の場合、R1、R2、R3の3基であるが、必ずしも基数はこれに限らない。多くの場合4機であり、そのうち一部(多くの場合1機)を往復圧延するものとし、残る圧延機が一方向圧延を行う3/4連続と呼ばれるタイプが多い。しかし、4機中3機が一方向のタイプに限らず、例えば3機中1機が一方向のタイプも含め、3/4連続という。粗圧延機列12のすぐ上流に幅プレス9を設置したものも多い。仕上圧延機列18を構成する各圧延機(スタンド)は、図8に示す熱間圧延ライン100の場合、F1〜F7の7基であるが、6基の場合もある。
前記のように数百〜千数百℃に加熱された高温の被圧延材8には、加熱炉10から抽出されたとき、その表裏面に酸化物の膜(以下、スケール)が生成している。この他、圧延され薄く延ばされると共に放熱により降温していく過程でも、被圧延材8は高温の状態で大気に曝されるため、新たなスケールが被圧延材8の表裏面に生成する。このため、粗圧延機列12の中の各圧延機の入側には、ポンプからの供給圧にして10〜30MPa内外の高圧水を被圧延材8の表裏面に吹き付けてスケールを除去するデスケーリング装置16が設置され、スケールを除去している。図8の例では、往復圧延を行うR1、R2については、その出側にもデスケーリング装置16が設置され、スケールを除去している。
図8において、13は、粗圧延機のワークロール(単にロールと称する)、14は、仕上圧延前に被圧延材8の先後端クロップ(被圧延材8の先後端の、いびつな平面形状の部分)を切断除去し、仕上圧延機列18に円滑に噛み込まれ易い略矩形の平面形状に整形するためのクロップシャー、19は、仕上圧延機のワークロール(単にロールと称する)、22は、仕上圧延後の被圧延材8を水又は空気で冷却するための冷却ゾーン、24は、冷却後の被圧延材8を巻き取るためのコイラ、50は制御装置、70はプロセスコンピュータ、90はビジネスコンピュータである。
ここで、話は高Cr鋼板の製造に移るが、質量%で9〜30%のCrを含有し、残部は実質的にFeから成る高Cr鋼板の製造は、所望の成分範囲内に溶製した溶鋼を鋳造してスラブ状の金属塊とし、そのスラブ状の金属塊を被圧延材8として、以上述べた熱間圧延ライン100にて熱間圧延し、必要に応じ焼鈍し、脱スケール(酸洗によるものが一般的であるが、メカニカルデスケーリング、即ち、ブラシやショットブラスト、等が併用される場合もある)し、冷間圧延して行われる。
ところで、高Cr鋼板の熱間圧延では、鋼板の表面にスケール疵や肌荒れが発生しやすい。一度スケール疵や肌荒れが発生すると、それらが発生した鋼板を、それらが発生していない鋼板と同じように焼鈍し、脱スケールし、冷間圧延したのでは、冷間圧延後も鋼板表面にそれらの影響が残存し、その鋼板は、もはや需要家には引き渡せない欠陥品となってしまう。よって、冷間圧延するのに先立って、先述の酸洗等による脱スケールを行う際に、鋼板の搬送速度を減速することで、それらスケール疵や肌荒れを除去するよう対応することになるが、これが生産性を阻害する、という問題があった。
更に、高Cr鋼板は炭素鋼と比べて酸洗性が悪く、スケール疵の程度のひどいものになると、いくら鋼板の搬送速度を落として酸洗してもスケール疵が残り、その場合は、その鋼板をスクラップ化し、代替品を再生産せざるを得なくなる場合もある、という問題があった。
また、スケール疵は、これまでの経験から、気温が低い冬季に発生率が高く、鋼板上面より下面の方が発生率が高いことがわかっている。
そのため、従来から、スケール疵の発生を抑制するために、以下に挙げる4つの方法が主に採られてきた。
(1)加熱前に表面粗度を粗くして厚いスケールを生成させる方法(例えば特許文献1)
(2)加熱中の温度・雰囲気制御を行ってスケール生成を制御する方法(例えばば特許文献2)
(3)圧延前に潤滑剤を噴射・塗布する方法(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5)
(4)圧延前にスケールを生成させる方法(例えば特許文献6)
(2)加熱中の温度・雰囲気制御を行ってスケール生成を制御する方法(例えばば特許文献2)
(3)圧延前に潤滑剤を噴射・塗布する方法(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5)
(4)圧延前にスケールを生成させる方法(例えば特許文献6)
(1)の従来技術として、特許文献1では、加熱炉装入前にショットブラスト処理を行ってフェライト系ステンレス鋼のような高Cr鋼のスラブの表層に加工歪を導入することで、加熱炉10内での加熱中に同表層に均一なスケールを生成するようにしている。しかし、この方法では、圧延前にスケールが厚くなりやすく、デスケーリング装置16による脱スケールによっても除去しきれなかったスケールが、その後の圧延によって鋼板状の被圧延材8の表層に噛み込むスケール噛み込みが発生しやすい。
(2)の従来技術として、特許文献2では、クロム量に応じて加熱中の酸素濃度、水蒸気量(露点)、加熱時間を制御するようにしている。(1)でもそうであるが、(2)でも、加熱炉10内での加熱中にスケールを生成させるので、スケールが厚くなりやすく、デスケーリング装置16による脱スケールによっても除去しきれなかったスケールが、その後の圧延によって鋼板状の被圧延材8の表層に噛み込むスケール噛み込みが発生しやすい。また、(1)、(2)の方法は、スケールをロール13と被圧延材8との間の潤滑剤として利用することで、スケール疵の発生の抑制を狙ったものでもあるが、もともと非常に高圧な水の圧力を更に調整することで、鋼板状の被圧延材8の表層の脱スケールの程度を制御しようとしても、技術的に難しい。また、加熱炉10内でスラブ状の被圧延材8の表層に生成する1次スケールと、スラブ状の被圧延材8を加熱炉10から抽出後に大気と接触することで生成する2次スケールとでは、2次スケールの方がロール13と被圧延材8との間の潤滑剤として作用させるのに適しているため、加熱炉10内でスラブ状の被圧延材表層に生成する1次スケールを潤滑剤として用いようとすること自体がさして良い方法とは言えない。1次スケールは、数時間にも及ぶ加熱炉10内での酸化性雰囲気でのスラブ状の被圧延材の加熱により、スラブ状の被圧延材の表層に分厚く生成しており、しかもその厚さはスラブ状の被圧延材の局所的に凝集して極端に厚い箇所がある等、とにかく均一でなくて、却って飛び込み疵等になる場合もあるのに対し、最初のデスケーリング装置16により高圧水を吹き付けて1次スケールを除去した後の露出した金属面に大気との接触で被圧延材の自熱により生成させる2次スケールは均一だからである。
(3)の従来技術として、特許文献3、特許文献4では高塩基性Caスルホネートを潤滑剤として用いるようにしている。特許文献5では水酸化鉄を含有する流体を塗布・またはスプレーするようにしている。しかし、これらの潤滑剤を用いる方法は、環境負荷がかかること、噴射後の潤滑剤の処理に手間がかかり、コスト高になること等の問題がある。
(4)の従来技術として、特許文献6では、粗圧延前の高温の被圧延材にスケール生成を促進させるために、空気、酸素ガス、水蒸気のうち1種類または2種類以上を吹き付けることにより、被圧延材8の表面に付着した酸化スケールを剥離させるとともに、金属面の露出した同部分を、大気と接触させ、被圧延材の自熱によりスケールを再生させて、圧延を行うようにしている。この方法は、酸素の吹き付けであるとコストが高いこと、空気の吹き付けであると酸素ほどの効果が得られないこと、等の問題がある。水蒸気であると製鉄所内では予熱を利用して発生させているので、酸素ほどコストは高くないが、水蒸気を吹き付けると被圧延材8の表面温度が低下し、スケールの生成が思うほど促進されないという問題がある。
本発明はこれらの問題を解決するために、なされたものである。
請求項1に係る本発明は、水蒸気を満たす箱をその途中に設けたことを特徴とする熱間圧延ラインである。
請求項2に係る本発明は、高Cr鋼の熱間圧延において、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させることを特徴とする高Cr鋼の熱間圧延方法である。
請求項3に係る本発明は、大気中の絶対水蒸気量が10g/m3以下のときに、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させることを特徴とする高Cr鋼の熱間圧延方法である。
尚、本発明にいう高Cr鋼は、質量%で9〜30%のCrを含有し、残部は実質的にFeから成り、耐熱鋼やTi、Nb、V、B等の添加元素を含有するもの等も含むものとし、不純物その他については、JIS G 4304に準拠する。
本発明によれば、高Cr鋼の熱間圧延において、スケール疵、肌荒れ等の表面欠陥の発生を抑制できる。また、本発明は、高Cr鋼板の熱間圧延のみならず、厚板や形鋼等の圧延にも適用可能である。
被圧延材に水蒸気を吹き付けた場合、水蒸気は空気や酸素よりも比重が大きいため、熱容量が大きい分、被圧延材からより多量の熱を持ち去り、その表面を冷却させやすい。スケール生成には被圧延材の表面温度は少なくとも950℃以上必要である。
例えば、1100℃に加熱された高Cr鋼(以下、被圧延材8)は、厚さにもよるが、加熱炉10から抽出して1分経過すると、表面温度が980〜1100℃になり、粗圧延によって厚みが薄くなると、更に表面温度が低下する。加熱炉10から抽出して3分内外が経過し、粗圧延が終了する時には、粗圧延各パスでの厚みや被圧延材8の搬送速度の履歴にもよるが、被圧延材8の表面温度は、最低で950℃まで低下する。
ここに水蒸気を噴射すると、水蒸気が持つ冷却能力のために、表面温度が900〜950℃まで低下し、スケール生成が十分でなくなる場合が出てくる。発明者らは、熱間圧延ライン100の実操業に接して研究した結果、以上のように考察した。
(第1の発明)
そこで、発明者らは、水蒸気の吹き付けが被圧延材8の表面温度を下げるのであるから、図1に示すように、熱間圧延ライン100の途中に、水蒸気を大気中よりも多く含有する雰囲気(以下、水蒸気雰囲気)に接触しながら被圧延材8が通過できる、水蒸気雰囲気作成装置30を設け、被圧延材8を、該水蒸気雰囲気作成装置30により作成される水蒸気雰囲気内を通過させるようにすれば良いと考えた。それには、図2に示すように、水蒸気を満たす箱(以下、水蒸気箱)32があって、その中を通過させる、あるいは図3に示すように、被圧延材8の下側に設けた、上側が開放された水蒸気箱36から水蒸気が溢れ出てきて水蒸気雰囲気を作り出すようにする等した上で、その水蒸気雰囲気内を通過させるようにすれば良いと考えた。水蒸気箱32(36)に水蒸気を供給すべく接続した蒸気配管34を合わせたものが水蒸気雰囲気作成装置30である。水蒸気箱の箱の形状は、図2に示すもののように、密閉したものに被圧延材8の通過用に開口部32Aを設けた実質的に密閉型のタイプのものや、図3に示すもののように、上方が全面的に開放した実質的に囲い状のタイプのものに限られるものではなく、水蒸気を大気中よりも多く含有する雰囲気に接触しながら被圧延材8が通過できるタイプのものであれば、いかなるタイプのものであってもよい。
そこで、発明者らは、水蒸気の吹き付けが被圧延材8の表面温度を下げるのであるから、図1に示すように、熱間圧延ライン100の途中に、水蒸気を大気中よりも多く含有する雰囲気(以下、水蒸気雰囲気)に接触しながら被圧延材8が通過できる、水蒸気雰囲気作成装置30を設け、被圧延材8を、該水蒸気雰囲気作成装置30により作成される水蒸気雰囲気内を通過させるようにすれば良いと考えた。それには、図2に示すように、水蒸気を満たす箱(以下、水蒸気箱)32があって、その中を通過させる、あるいは図3に示すように、被圧延材8の下側に設けた、上側が開放された水蒸気箱36から水蒸気が溢れ出てきて水蒸気雰囲気を作り出すようにする等した上で、その水蒸気雰囲気内を通過させるようにすれば良いと考えた。水蒸気箱32(36)に水蒸気を供給すべく接続した蒸気配管34を合わせたものが水蒸気雰囲気作成装置30である。水蒸気箱の箱の形状は、図2に示すもののように、密閉したものに被圧延材8の通過用に開口部32Aを設けた実質的に密閉型のタイプのものや、図3に示すもののように、上方が全面的に開放した実質的に囲い状のタイプのものに限られるものではなく、水蒸気を大気中よりも多く含有する雰囲気に接触しながら被圧延材8が通過できるタイプのものであれば、いかなるタイプのものであってもよい。
ちなみに図2は、水蒸気箱32を、熱間圧延ライン100の粗圧延機列12のうちの最初の圧延機R1の3m手前に設置した例である。水蒸気箱32の長さは3m、幅は2.5mである。開口部32Aは幅2m、高さ0.4mで、2本のテーブルローラ5に挟まれるように設置した。水蒸気箱32には100Aの蒸気配管34を片側上下2本ずつ、両側で合計8本を配置し、被圧延材8には直接吹き付けないよう、水蒸気箱32内が水蒸気で満たされるようにしてある。
ちなみに水蒸気箱32の長さは3mで、2本のテーブルローラ5に挟まれるように設置したが、スラブ状の被圧延材8は短いものであると4.5m内外のものもあるから、重心移動によりスラブ状の被圧延材8が開口部32Aに転落してしまわないよう、例えば、テーブルローラ5のピッチを1mとし、水蒸気箱32の中間にテーブルローラを配置する、あるいは別個の水蒸気箱32を4本のテーブルローラ5の各中間に3箇所に分けて断続的に配置する等しても良い。
もう一つ別の実施の形態を以下に説明する。図3中の各符号は図2のものと共通であり、水蒸気箱36を熱間圧延ライン100の粗圧延機列12のうちの最初の圧延機R1の3m手前に設置し、水蒸気箱36の長さは3m、幅は2.5m、開口部は幅2m、というところまでは、やはり共通であるが、開口部36Aは熱間圧延ライン100の途中において、パスラインよりも下方に設置された穴状をしており、通過する被圧延材8の下側から水蒸気が溢れ出てきて水蒸気雰囲気を作り出すようになっている。
また、水蒸気箱には100Aの蒸気配管34を片側上下2本ずつ、両側で合計4本配置し、被圧延材8には直接吹きつけないよう、水蒸気箱36内と被圧延材8の厚みをカバーする、それよりも上方のある程度の空間が水蒸気で満たされるようにした。被圧延材8が無いときは開口部36Aを図示しないシャッターで閉じておくようにし、必要なときだけシャッターを開けるようにした。
ちなみに開口部36Aの長さは3mで、2本のテーブルローラ5に挟まれるように設置したが、例えば、テーブルローラ5のピッチを1mとし、水蒸気箱36の中間にテーブルローラを配置する、あるいは別個の水蒸気箱36を4本のテーブルローラ5の各中間に3箇所に分けて断続的に配置する等しても良いのは先に述べた実施の形態の場合と同様である。
水蒸気雰囲気作成装置30を熱間圧延ライン100の途中においてどこに設置すればよいかであるが、1次スケールが最初のデスケーリング装置16により脱スケールされた直後の幅プレス9の入側が一つには好ましく、幅プレス9により機械的な変形を受ける結果、最初のデスケーリング装置16により脱スケールしきれなかった1次スケールはもとより、1次スケールが脱スケールされた箇所に生成する2次スケールすらも脱スケールされて顕著に金属面が露出する、図1に太い実線の矢印で示した、幅プレス9の出側ももう一つは好ましく、後述の、被圧延材8が水蒸気により十分脱スケールが促進される温度条件さえ満たせば、図1に太い点線の矢印で示した、熱間圧延ライン100の途中の粗圧延機列12の存在する領域全域や、あるいはもっと被圧延材8の加熱炉10における加熱温度を高くすれば、仕上圧延機列18の入側やスタンド間等も好ましい。
さらに追加して述べれば、被圧延材8は、図4に示す如く、上面にはデスケーリング装置16からの水や、ロール13の冷却水が水乗りすることによる、膜沸騰状態での水蒸気による酸化促進の効果があるのに対し、下面にはそれが殆ど無い。また、上面よりも下面の方が、テーブルローラ5との接触がある分、その表面温度が低下しやすい。このため、上面には2次スケールが比較的多く生成する一方で、下面には2次スケールが不足し、ロール13と被圧延材8の間の潤滑が十分でなくなり、スケール疵や肌荒れが発生し易いものと考えられる。このような状況はあるが、本発明を適用すれば、スケール疵、肌荒れの発生しやすい下面であっても、それらの発生を抑制することができる。
(第2の発明)
そして、発明者らは、更に研究を進めた結果、絶対水蒸気量が100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を、3秒以上かけて被圧延材を通過させるようにすれば、被圧延材の表面(上面、下面とも)が十分に水蒸気と接触するため、被圧延材の表面に十分に2次スケールが生成する。その目的上は、加熱炉10で加熱する必要のある被圧延材8の温度は最低の1100℃で良いが、それ以上にスラブ状の被圧延材8を高温に加熱したとしても、目的は達せられる。ただ、加熱温度を過度に高くすると、スラブ状の被圧延材8が加熱炉10内でクリープ変形によって垂れてしまい、加熱炉10内での搬送に支障をきたすため、1300℃以下が好ましい。
そして、発明者らは、更に研究を進めた結果、絶対水蒸気量が100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を、3秒以上かけて被圧延材を通過させるようにすれば、被圧延材の表面(上面、下面とも)が十分に水蒸気と接触するため、被圧延材の表面に十分に2次スケールが生成する。その目的上は、加熱炉10で加熱する必要のある被圧延材8の温度は最低の1100℃で良いが、それ以上にスラブ状の被圧延材8を高温に加熱したとしても、目的は達せられる。ただ、加熱温度を過度に高くすると、スラブ状の被圧延材8が加熱炉10内でクリープ変形によって垂れてしまい、加熱炉10内での搬送に支障をきたすため、1300℃以下が好ましい。
尚、絶対水蒸気量が100g/m3未満でも、時間をかければ2次スケールが十分生成するが、熱間圧延の途中で長時間かけてスケールを生成させることは生産性を阻害するため、好ましくない。従って、絶対水蒸気量が100g/m3以上という条件のもとで、被圧延材が水蒸気雰囲気内を通過するようにするのが好ましく、また、生産性を阻害しない目的上、被圧延材が水蒸気雰囲気内を通過する時間は10秒以下とするのが好ましい。
更に、発明者らの別の研究によれば、スケール疵、肌荒れが全く発生しない夏期の条件(室温32℃、絶対水蒸気量約24g/m3)では、1次スケール除去後、表面温度1000℃で5秒後に50μmの2次スケールが生成する。しかし、冬季の条件(室温16℃、絶対水蒸気量10g/m3)では、1次スケール除去後、表面温度1000℃で5秒後には、20μmの2次スケールしか生成しない。以上のようすを図5に示す。
水蒸気との接触にかけられる時間を仮に最短の3秒としたときに、絶対水蒸気量を100g/m3以上とすれば、図6に示す通り、2次スケールの生成厚みが50μm以上となる。2次スケールの生成厚みが50μm以上であれば、ここに詳細を示さない別途の検証の結果、スケール疵、肌荒れの発生を防げることがわかっている。
(第3の発明)
スケール疵が、冬季である10月から5月にかけて発生率が高くなるのは、発明者らの更に別の研究の結果、空気中の水蒸気量が低下するためであることがわかった。高Cr鋼を加熱炉10にて加熱後、最初のデスケーリング装置16によって1次スケールを除去後、粗圧延機列12により圧延されるまでの2次スケールの生成が、冬季は空気中水蒸気量が少ないため十分でなく、粗圧延機12による圧延時に、ロール13と被圧延材8の間でのスケールによる潤滑も十分でないため、スケール疵、肌荒れが発生し易いのである。
スケール疵が、冬季である10月から5月にかけて発生率が高くなるのは、発明者らの更に別の研究の結果、空気中の水蒸気量が低下するためであることがわかった。高Cr鋼を加熱炉10にて加熱後、最初のデスケーリング装置16によって1次スケールを除去後、粗圧延機列12により圧延されるまでの2次スケールの生成が、冬季は空気中水蒸気量が少ないため十分でなく、粗圧延機12による圧延時に、ロール13と被圧延材8の間でのスケールによる潤滑も十分でないため、スケール疵、肌荒れが発生し易いのである。
従って、大気中の絶対水蒸気量が不足する場合にのみ、本発明を適用すれば良い。即ち、大気中の絶対水蒸気量が10g/m3以下のときに、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させれば良い。
図7に示すように、10月から5月の間の大気中の絶対水蒸気量は、平均で10g/m3以下であることがわかった。従って大気中の絶対水蒸気量が10g/m3を下回るときは、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させれば、スケール疵、肌荒れの発生を抑制することができる。
なお、本発明の適用対象は、図1に示した熱間圧延ライン100に限定されず、他の構成の熱間圧延ラインにも同様に適用できる。
用いた鋼材を表1に示す。
図2に示す形態の水蒸気雰囲気作成装置30を用いた。水蒸気箱32内の水蒸気量は露点温度計により測定し、露点温度から絶対水蒸気量に変換した。表2に本実施例1の条件と結果をしめす。実施例1ではNo.9、10以外は大気中の絶対水蒸気量が10g/m3以下であることを確認してから実施した。
鋼種AはCr含有率が16%以上の肌荒れの発生しやすい鋼種である。この鋼種では、箱内の絶対水蒸気量100g/m3以上、接触時間3秒以上のNo.1の条件では肌荒れは発生しなかった。しかし、接触時間の短いNo.2の条件や、水蒸気箱32内の絶対水蒸気量の少ないNo.3の条件では、軽微の肌荒れが発生、接触時間が短く水蒸気量も少ないNo.4の条件では、明らかな肌荒れが、下面に発生した。2次スケールの生成不足による潤滑不足と考えられる。
鋼種BはCr含有率が11%以下の肌荒れの発生が比較的軽微な鋼種ではあるが、冬季には肌荒れが発生する。水蒸気箱1内の絶対水蒸気量100g/m3以上、接触時間3秒以上のNo.5の条件では、肌荒れは発生しなかった。また、接触時間の短いNo.6の条件や、水蒸気量の少ないNo.7の条件でも肌荒れは発生しなかった。ただし、水蒸気箱32内の絶対水蒸気量も接触時間も不足しているNo.8の条件では、下面に肌荒れが発生した。尚、大気中の絶対水蒸気量が10g/m3以上であるNo.9、10では、水蒸気箱32に水蒸気は入れなかったが、肌荒れは発生しなかった。
図3に示す形態の水蒸気雰囲気作成装置30を用いた。本実施例においては、水蒸気箱36を熱間圧延ライン100の粗圧延機列12の3m手前のパスライン下に設置した。水蒸気箱36内の水蒸気量は露点温度計により測定し、露点温度から絶対水蒸気量に変換した。表3に本実施例2の条件と結果を示す。
鋼種Aについて見ると、水蒸気量100g/m3以上、接触時間3秒以上のNo.11の条件では、肌荒れは発生しなかった。しかし、接触時間の短いNo.12の条件や、水蒸気箱36内の絶対水蒸気量の少ないNo.13の条件では、軽微の肌荒れが発生、接触時間が短く水蒸気量も少ないNo.14の条件では、明らかな肌荒れが、下面に発生した。2次スケールの生成不足による潤滑不足と考えられる。鋼種BはCr含有率が11%以下の肌荒れの発生が比較的軽微な鋼種ではあるが、冬季には肌荒れが発生する。箱内の絶対水蒸気量が100g/m3以上、接触時間3秒以上のNo.15の条件では肌荒れは発生しなかった。また、接触時間の短いNo.16の条件や、水蒸気量の少ないNo.17の条件でも肌荒れは発生しなかった。ただし、水蒸気箱36内の絶対水蒸気量も接触時間も不足しているNo.18の条件では下面に肌荒れが発生した。
5…テーブルローラ
8…被圧延材
9…幅プレス
10…加熱炉
12…粗圧延機列
R1、R2、R3…粗圧延機
13、19…(ワーク)ロール
14…クロップシャー
16…デスケーリング装置
18…仕上圧延機列
F1〜F7…仕上圧延機
22…冷却ゾーン
24…コイラ
30…水蒸気雰囲気作成装置
32、36…水蒸気箱
32A、36A…水蒸気箱の開口部
34…水蒸気配管
100…熱間圧延ライン
8…被圧延材
9…幅プレス
10…加熱炉
12…粗圧延機列
R1、R2、R3…粗圧延機
13、19…(ワーク)ロール
14…クロップシャー
16…デスケーリング装置
18…仕上圧延機列
F1〜F7…仕上圧延機
22…冷却ゾーン
24…コイラ
30…水蒸気雰囲気作成装置
32、36…水蒸気箱
32A、36A…水蒸気箱の開口部
34…水蒸気配管
100…熱間圧延ライン
Claims (3)
- 水蒸気を満たす箱をその途中に設けたことを特徴とする熱間圧延ライン。
- 高Cr鋼の熱間圧延において、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させることを特徴とする高Cr鋼の熱間圧延方法。
- 大気中の絶対水蒸気量が10g/m3以下のときに、1100℃以上に加熱された高Cr鋼を、絶対水蒸気量100g/m3以上の水蒸気雰囲気内を3秒以上かけて通過させることを特徴とする高Cr鋼の熱間圧延方法。
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