JP2005300907A - スクリーン及びこれを用いた画像投影システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡単な構成で視野角が広く、外光の影響を受けにくいプロジェクタ用スクリーンを実現すること。
【解決手段】 光拡散シートと、拡散シートの裏面に対向して配置された略水平方向の稜線を持った鋸歯状プリズムを有する鋸歯状プリズムシートとでスクリーンを構成し、鋸歯状プリズムは外光の入射方向に傾斜した仰角を持っており、鋸歯状プリズム面上には光反射層が形成されている構造とした。
【選択図】 図1
【解決手段】 光拡散シートと、拡散シートの裏面に対向して配置された略水平方向の稜線を持った鋸歯状プリズムを有する鋸歯状プリズムシートとでスクリーンを構成し、鋸歯状プリズムは外光の入射方向に傾斜した仰角を持っており、鋸歯状プリズム面上には光反射層が形成されている構造とした。
【選択図】 図1
Description
本発明は、高輝度CRTや液晶プロジェクタなどからの光画像を投影するフロントスクリーン、及びこれを有する画像投影システムに関する。
高輝度CRTや液晶プロジェクタ等を用いて光画像を投影して画像を表示するプロジェクション装置等の画像投影システムは、大画面で高精細な画像を簡便に表示できるため、複数の使用者との情報コミュニケーションツールとして多様に利用されるようになってきた。ここで用いられるスクリーンには、白色素材や反射膜を表面に被覆した構造にすることで光利用効率を向上させたり、表面にビーズを散布して光拡散により複数の観察者に対する視認性を向上させたりする工夫がされてきた。あるいは、スクリーン表面にレンチキュラレンズなどの指向性反射構造を設けることによって、複数の観察者に効率良く画像表示を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−169224号公報(第3頁、第1図)
しかしながら、従来のプロジェクタ用スクリーンにおいては、スクリーンに入射する照明光などの外光が存在すると、その外光をも同時に観察者側に反射してしまい、その結果コントラストが低下して投影画像の視認性が悪くなるという課題を有していた。
例えば、本発明のスクリーンは、光を拡散透過する光拡散シートと、拡散シートの裏面に対向して配置された略水平方向の稜線を持った鋸歯状プリズムを有する鋸歯状プリズムシートを備えると同時に、鋸歯状プリズムに外光の入射方向に傾斜した仰角を持たせ、その面上に光反射層を形成することによって、照明光などの外光による影響が少なく、視認性が良好な画像を投影することが可能なスクリーンが実現でき上記課題を解決することができた。
特に、光拡散シートとして、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、前記柱状構造の柱状中央領域はそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシートを用いることによって、投影画像の輝度が高く、より外光による影響の少ないスクリーンを得ることができた。
すなわち、このような構成によって、プロジェクタの真上にある照明からの光を正反射して投影画像と混合することを防ぐことができ、その結果明るい室内でもコントラストの高い鮮明な画像を得ることを可能とすることができた。
本発明によれば、良好な輝度とコントラストを有する薄型軽量のプロジェクタ用スクリーンを提供できるために、これを用いたプロジェクションシステムの表示品質が向上するのみならず、プロジェクションシステムの小型軽量化をも実現できるという効果を有する。
また、照明を点けた状況下でも明るい投影画像を得ることができるために、会議室等でも手元の書類を参照しながらプロジェクタ画像を見ることが可能となり、プロジェクタ使用環境を著しく改善できるという効果を有する。
本発明のスクリーンは、光を拡散透過する光拡散シートと、光拡散シートの裏面に配置された略水平方向の稜線を持った鋸歯状プリズムを有する鋸歯状プリズムシートと、鋸歯状プリズムの面上に形成された光反射層を備えており、鋸歯状プリズムは外光の入射方向に傾斜した仰角を持つようにした。ここで、光拡散シートとして、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、柱状構造の柱状中央領域がそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシートを用い、光反射層で反射された光画像の反射光に対する入射角が柱状レンズシートの散乱入射角の範囲内にあるように構成した。さらに、柱状レンズシートの散乱入射角を約45度以下に、柱状レンズシートを構成する柱状レンズの傾斜角を約30度以下に設定した。さらに、柱状レンズシートの表面に光拡散機能を有する凹凸構造を形成した。あるいは、柱状レンズシートの表面に光拡散機能を有する透明な支持基材を設けることとした。
さらに、光拡散シートとして、透明な高分子フィルム上に微細な凹凸状光拡散構造が形成された光拡散シートを用いることとした。ここで、光拡散シートのヘイズ値がおよそ35〜75%になるようにした。また、鋸歯状プリズムシートに形成されている鋸歯状プリズムの仰角を3〜20度とした。さらに、鋸歯状プリズムは、鋸歯プリズムシートの面内でストライプ状に配列されている。あるいは、鋸歯状プリズムは、鋸歯状プリズムシートの面内で不規則なモザイク状に配列されている。また、光反射層の反射率を10〜80%とし、鋸歯状プリズムシートを黒色とした。
また、本発明の画像投影システムは、上述したいずれかの構成のスクリーンと、スクリーンに光画像を投影する光画像投影器を備えている。
以下に本発明のスクリーンの実施例に関して図面を参照しながら説明する。 図1に本発明のスクリーンの断面構成とプロジェクタの配置を模式的に示す。図示するように、プロジェクタ5からの光画像は、光拡散シート1と鋸歯状プリズムシート2とで構成されるスクリーンに投影され、その投影画像はスクリーンを介してプロジェクタ5と同じ側にいる観測者の視点9によって観測される。このような使われ方のスクリーンをフロントスクリーンと言う。
鋸歯上プリズムシート2の光拡散シート1側には、鋸歯状プリズムが形成されており、そのプリズムの稜線はおおよそ水平面の方向を向いている。図1に示した構成では、鋸歯状プリズムが形成されている面は光拡散シート1の背面に対向した面になっているが、後述するように、鋸歯状プリズムを光拡散シート1とは逆側の面に形成しても良い。鋸歯プリズムの仰角は照明10からの光の方向に開いている。その仰角としては3〜20度となっている。この仰角の大きさは、鋸歯状プリズムのピッチと投影画像を構成する画素の大きさに依存している。鋸歯状プリズムのピッチが投影画像の画素の大きさに比べて十分小さい場合には仰角を8〜20度と大きくすることができるが、鋸歯状プリズムのピッチが投影画像の画素の大きさ程度かそれよりも大きい場合には仰角を3〜8度程度とするのが望ましい。
鋸歯状プリズム2は、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはポリエチレン系樹脂などの透明な高分子樹脂の表面に、鋸歯形状の成形型を用いて成形することによって容易に作製することができる。このプリズムのピッチとしては、20μm程度以上のものであれば容易に加工が可能である。多くのプロジェクタ用スクリーンにおいては、鋸歯状プリズムのピッチは50〜500μm程度であれば十分である。
また、鋸歯状プリズムの表面には光反射層3が形成されている。この光反射層3は、AlやAgなどの高反射率金属またはその合金を真空蒸着することによって容易に得ることができる。この光反射層3の反射率は5〜92%程度であって、蒸着する金属膜の材料や膜厚によって制御することができる。投影光画像のスクリーン単位面積当たりの強度が十分強い場合は光反射層3の反射率を5〜70%程度に落として画像のぎらつきを抑える。また、大画面スクリーンに画像を投影する場合など、投影光画像のスクリーン単位面積当たりの強度が弱い場合は、光反射層3の反射率を70%以上の大きな値とすることによって、明るい表示が可能となる。光反射層3としては、金属膜以外にもより高い反射率を得ることができ、また低反射率膜を容易に形成することができる誘電体多層膜を用いることもできる。
光拡散シートは、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはポリエチレン系樹脂などの透明高分子シートの表面に微細な凹凸構造を形成して、シートを透過する光を散乱させるものである。この微細な凹凸構造は、いわゆるシボと呼ばれる不規則な凹凸バターンを形成したものや、微細な離散プリズム構造を成型によって形成したものなどが良く知られている。また、透明高分子シートの表面に直接凹凸構造を加工する代わりに、球径が制御された樹脂ビーズや無機ビーズをアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂などの樹脂からなる透明な接着剤に所定の割合で混合して塗布したものを用いても良い。
透明高分子シート上に形成した凹凸構造の平均径や高さおよび分布密度を変えることによってヘイズ値として約5〜95%の範囲の光拡散シート1を得ることができる。また、球形ビーズを用いる場合は、ビーズ材質(屈折率)やビーズ径およびビーズ濃度を変えることによってヘイズ値約5〜95%の範囲の任意の光拡散シート1を得ることができる。
また、透明高分子シートの表面に凹凸構造を形成する場合には、その凹凸構造の形状に異方性を持たせてその配列の方向をそろえることによって、光の拡散方向に異方性を持たせることもできる。
図1において、プロジェクタ5から投影された光画像は、光拡散シート1を拡散透過しての鋸歯状プリズムシート3のプリズム面上に形成された光反射層3に入射して反射される。反射光は光路を変えて再び光拡散シート1の裏面に入射して再び光拡散シート1で散乱されて視点9から観察することができる。この視点9で観察される投影画像は、拡散光によるものであるため広い視野角で観察することができる。
このとき、鋸歯状プリズムの仰角が3〜15度と小さいと同時にそのピッチは投影画像の画素に比較して十分小さいために、その光拡散シート1への再入射位置は画素程度の距離以上に離れた位置にはならない。この入射位置と再入射位置とのずれは、プロジェクタ5の位置と光路7と8で示されるプロジェクタ5からの投影光画像の広がり角度、および鋸歯状プリズムの形状と寸法によって決まる。より鮮明な投影画像を得るためには、スクリーン全体における上記入射位置と再入射位置とのずれが投影画像の画素寸法の半分以下となるように前記鋸歯状プリズムの形状と寸法を定めることが望ましい。
ここで、スクリーンの真上に配置された照明10が点灯している場合を考える。照明10からの光はプロジェクタ5からの光に比べて大きな入射角でスクリーンに入射する。そして、光拡散フィルム1を拡散透過した後、光反射層3で反射されて再び光拡散シート1を拡散透過してスクリーン表面から出射される。この光反射層3で反射されるとき、反射面は照明側に仰角をもって傾斜しているために、反射光その仰角の二倍大きな反射角を持って反射されることになる。従って、この照明10からの外光は光拡散シート1によって拡散を受けてもなお、視点9には到達せず、投影画像の画質の低下を生じることはない。
光拡散シート1で拡散を受け、光反射層3で再び反射された後さらに光拡散シート1で拡散を受けるために、外光存在下ではこの光拡散シート1のヘイズ値を高く設定しすぎると鋸歯状プリズムシート2表面の光反射層3における外光除去効果が小さくなってしまうために投影画像の視認性が悪くなってしまう。外光存在下でも投影画像の視認性を損なわないようにするためには、光拡散シート1のヘイズ値は75%程度以下とするのが良い。投影光画像の強度が十分強い場合は、光拡散シート1のヘイズ値が35〜50%程度の小さな値であっても良好な画像の表示が可能となる。
次に、鋸歯状プリズムシート1に形成される鋸歯状プリズムの配列に関して説明する。図8は鋸歯状プリズムシート1に配列された鋸歯状プリズムの配列の様子を示した模式的平面図である。図8(a)は、稜線がほぼ水平になるようにしてストライプ状に鋸歯状プリズムを配列した状態を模式的に示す平面図である。このような配列を行なうことによって、鋸歯状プリズムを面内一様に形成することができ、プリズムシートの設計と製造が容易となる。しかしながら、ストライプピッチが規則的であるために、投影光が強くなるとモワレ縞が発生しやすくなる。このモワレ縞の発生を低減するためには、光拡散シート1のヘイズ値を高くするか、もしくは光拡散シート1の表面に反射防止膜または減反射膜を形成する必要がある。ストライプ状配置において、モワレ縞発生を低減する別の方法は、ストライプピッチを徐々に変化させたり、不規則ピッチとしたりすることである。
図2は大きさが異なって長方形に細分化された鋸歯状プリズムをモザイク上に不規則充填した場合を模式的に示した平面図である。この細分化された鋸歯状プリズムは、いずれも稜線をほぼ水平方向に向けて配列されている。このようにモザイク状に不規則充填配列させることによってストライプ状配列で発生しやすいモワレ縞を避けることができる。また、このように配列した細分化鋸歯状プリズムに水平方向の仰角成分を付与することによって、水平方向の指向性を付与することも可能となる。この水平方向の指向性を付与することによって、その指向性方向の輝度を高めることが可能となる。
図2に本発明によるスクリーンの別の断面構成を模式的に示す。この構成は、図1で示した構成に用いた光拡散シート1として柱状レンズシート12を用いている。この柱状レンズシート12は、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、前記柱状構造の柱状中央領域はそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有している。すなわち、この柱状構造は一種の柱状レンズを構成しており、これら柱状レンズシートはこの柱状レンズが面内に多数配列された構造となっている。この柱状レンズの面内の断面形状は、円や正方形あるいは六角形などの対称な形状や、楕円や長方形あるいは長円形などの長手方向の異方性を持った形状や、不規則な閉曲線からなる不規則形状など、種々の形状のものを用いることができる。ここで、柱状レンズの光軸方向をその配向方向と呼ぶことにする。図2に示す構成においては、柱状レンズシート1を構成する柱状レンズの配向方向は観察者の視点9の方向とおよそ一致している。すなわち、柱状レンズは柱状レンズシート12の面内で下方に傾いて配列している。以下、柱状レンズシートの面に立てた垂線と柱状レンズシートを構成する柱状レンズのなす角度を、柱状レンズシートの傾斜角と呼ぶことにする。
これらの柱状レンズシートは、屈折率が中心に向かう程連続的に大きくなっているグレイディッドインデックス型柱状レンズ、または中心部分の屈折率がそれを取り巻く外周領域の屈折率よりも高い2層構造になっているステップインデックス型柱状レンズが平面状に複数配列されているフィルム構造になっている。
図5と図6に図2に示したスクリーンを拡大した構造とそこに入射した光の様子を模式的に示す。図に示したように柱状レンズシート12は、高屈折率領域14と低屈折率領域15とから構成されている。この高屈折率領域14は柱状構造をしており、柱状レンズシートの面内に配列している。柱状レンズは図では簡単のため高屈折率領域14と低屈折率領域15とに明確な境界があるように描かれているが、グレイディッドインデックス型柱状レンズの場合は、高屈折率領域14と低屈折率領域15との間には明確な境界はない。柱状レンズの中心軸すなわち光軸はフィルム面の垂線に対して0〜70度程度の任意の傾きに作製することができる。すなわち、柱状レンズシートの傾斜角は0〜70度の任意の角度に作製することができる。
この柱状レンズシートの製造は、例えば、屈折率の異なる2種類以上の光重合性化合物からなる液状反応層に、グラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって行う。そして、紫外線の照射角度を変えることによって、傾斜角を調整することができる。
外部から柱状レンズシートに入射する光の光路の一例について図5を用いて説明する。プロジェクタ用スクリーンに投影される光は、投影光画像の広がり角度内に分布する様々な入射角を持って柱状レンズに入射する。まず、簡単のためにステップインデックス型柱状レンズシートの場合について説明する。光路16に示すように、プロジェクタから柱状レンズシート12の高屈折率領域14に入射した光はスネルの法則に従って、柱状レンズシート12の入射面の法線側に向かって屈折する。高屈折率領域14に入射した光は低屈折率領域15との境界面に入射するが、境界面への入射角が臨界角よりも大きくなっている場合は、入射光は全反射される。このように、入射光は高屈折率領域14と低屈折率領域15との境界面で繰り返し反射して下方に導波していき、柱状レンズシート12から光反射層3に出射される。
このとき、柱状レンズシート12の層厚と高屈折率領域14への光の入射角と入射位置によって柱状レンズシートからの光の出射位置が定まる。図5には光16と同じ入射角で入射した光が、入射位置が異なるために光の出射位置と出射角度が異なっている例を光17で示してある。プロジェクタからの投影画像は様々な入射角と入射位置に入るために、投影画像は柱状レンズシート12の裏面で、ある散乱角を持って散乱されているのと同様の作用をする。この散乱角は、高屈折率領域14と低屈折率領域15との屈折率差または屈折率勾配と、シートの厚さおよび柱状レンズのレンズ径によって定まる。すなわち、柱状レンズシート12の層厚が厚くなればなるほど散乱角が大きくなるように出射する。また、高屈折率領域14と低屈折率領域15の屈折率差が大きいほど散乱角は大きくなる。さらに、柱状レンズシート12の層厚が厚くなればなるほど、またレンズ半径が小さくなればなるほど、さらにシート面内での柱状レンズの個数密度が大きくなればなるほどヘイズ値は大きくなる。また、光の入射角が特定の角度を越えると、入射光は散乱されずに直進して透過する。入射光が散乱される入射角範囲を散乱入射角、入射光が直進して透過する入射角範囲を直線透過角と呼ぶことにする。このように入射角を定義すると、光路16と17で示された光は散乱入射角で入射した光に対応する。
柱状レンズシート12の裏面から出射した光は、光反射層3で反射される。光反射層3は鋸歯状プリズムの表面に形成されているために柱状レンズシート12の裏面に対して傾斜している。従って、反射光は垂直な面で反射されるときに比較して、反射層3の傾斜角の二倍だけ大きな反射角で反射される。このとき、反射光の柱状レンズシート12への入射角が散乱入射角の場合は、光は柱状レンズシート12の高屈折率層14内部を伝播して柱状レンズシート12の表面から散乱出射される。また、光反射層3が傾斜しているために、図5に示すように柱状レンズシート12と反射層3との間隙が十分狭い状態でなければ、反射光は同一の柱状レンズに戻らない。その結果、スクリーンに表示される画像がぼける結果になるため、この間隙は十分狭くする必要がある。
また、反射層3で反射された光が柱状レンズシート12の散乱入射角となるように再入射しなければスクリーン表面からの出射光は散乱を受けない。従って、柱状レンズの傾斜角と散乱入射角および鋸歯状プリズムの仰角とを反射光が散乱入射角で入射するように調整することが重要である。具体的には、柱状レンズシート12の散乱入射角を45度以下とし、それを構成する柱状レンズの傾斜角を30度以下とし、鋸歯状プリズムの仰角を3〜20度とすることによって、ぼけの少ない鮮明な投影画像を得ることができる。柱状レンズシート12を構成する柱状レンズの傾斜角は、柱状レンズシート12の面に立てた垂線に対して上下方向のどちら側に傾斜していても良い。重要なことは、光反射層3からの反射光が柱状レンズシート12に散乱入射角で再入射するように傾斜角と散乱入射角が決められていることである。
本発明のスクリーンには、柱状レンズのレンズ径1μm〜500μm、レンズ高さ(柱状レンズシート層厚)10μm〜2mmの柱状レンズシートを用いることができる。しかし、製造歩留まりや光利用効率あるいはハンドリングのし易さなどを考慮するとレンズ径は5μm〜100μm、レンズ高さは20μm〜200μmとするのが好ましい。また、柱状レンズの屈折率差は0.01〜0.05のものを用いることができる。また、柱状レンズの傾斜角は、0〜70度程度の任意の角度にすることができる。
一方、図6を用いて柱状レンズシート12への入射角が直線透過角であると同時に、柱状レンズシート12への反射光の入射角が直線入射角である場合を説明する。このような状況は柱状レンズシート12の傾斜角が30度程度以下と小さい上に、柱状レンズシート12への入射光の入射角が大きな場合に生じる。このとき、光路18で示されるように、入射光は柱状レンズシート12で散乱を受けずに透過して光反射層3で反射された後、再び柱状レンズシート12を直線的に透過して表面から出射される。この出射光は散乱を受けていないために、通常の平滑なミラーで反射されるときと同様に正反射される。従って、大きな入射角でスクリーンに入射した照明光などの外光は、直線的にスクリーンで反射されて視点に到達しないために、視認性の高い画像の投影が可能となる。また、光反射層3が傾斜しているために、傾斜のない光反射層で反射される場合よりも、より広い入射角の外光に対して効果がある。
再び図2の説明に戻る。図2においてプロジェクタ5からの投影画像は光軸6を中心として光線7と光線8で示される広がりをもって投影される。この投影画像の広がりの範囲内に対して、光反射層3からの反射光が柱状レンズシート12の散乱入射角となるように本発明のスクリーンでは柱状レンズシートの散乱入射角とそれを構成する柱状レンズの傾斜角、および鋸歯状プリズムの仰角を選択して構成される。これによって、柱状レンズシート12内で図5に示したのと同様の光路をたどり柱状レンズシート12の表面から散乱入射角に対応した散乱角で視点9側に散乱出射する。そのため、視点9からスクリーンを観察している人には、広い視野角で明るい投影画像が観察できることになる。
一方、図2において、観察者に対してスクリーンの上方にある照明10からの光は、柱状レンズシート12の直線透過角を持って入射するため、図6に示したように通常のミラーで反射されるのと同様な光路をたどる。従って、その照明光は観察者の視点9には入らず、鑑賞者は照明光の影響を受けない高コントラストで鮮明な画像を見ることができる。
ここで、柱状レンズシート12と鋸歯状プリズムシート2とは互いの位置が定まるように端部を機械的に固定しても良いし、接合剤で互いに接合しても良い。これらを接合しないで配置するときは、柱状レンズシート12と鋸歯状プリズムシート2との間隙が一定になるようにすると同時に、可能な限りその間隙を小さくすることで、より鮮明な画像を得ることができる。可能であれば密着配置するのが良い。
図3に本発明によるスクリーンの別の構成例を示す。この構成が図2で示した構成と異なる点は、柱状レンズシート12を構成する柱状レンズの傾斜角がほぼ0度であり、プロジェクタ5がスクリーン中央の位置に設置されている点である。このように、柱状レンズの傾斜角がほぼ0度の場合においても、光反射層3からの反射光が散乱入射角で柱状レンズシート12に再入射することによって、図2で示した構成と同様に照明などの外光の影響を受けない鮮明な投影画像を得ることができる。
図4に本発明によるスクリーンの別の構成例を示す。図4に示した最良形態は、図2に示した最良形態において、鋸歯状プリズムシート2のプリズムが形成されていない面を柱状レンズシート12の裏面に接合し、また、柱状レンズシート12の表面に透光性の光拡散板13を接合したものである。
このように、鋸歯状プリズムシート2のプリズムを形成していない面を柱状レンズシート12の裏面に接合することによって、柱状レンズシート12裏面の光反射による光損失を軽減できる上に、光反射層3と柱状レンズシート12との距離を一定に保つことが容易となり画像投影特性が安定する。このとき、高解像度の投影を行なうために、光反射層3と柱状レンズシート12の裏面との距離を狭くして、鋸歯状プリズムシート2のシート厚みを30〜100μm程度とすることが好ましい。
一方、柱状レンズシート12の表面に透光性の光拡散板13を接合することによって、スクリーン表面への映り込みを防止することができる上に、投影光画像の強度が強い場合に発生するモワレ縞を防止することができる。
また、図4に示すように光拡散板13を柱状レンズシート12の表面に接合する代わりに、柱状レンズシート12の表面に凹凸構造によるアンチグレア構造としても良い。この凹凸構造の製法としては、それに対応した凹凸構造を持った加工ステージの上で、屈折率の異なる2種類以上の光重合性化合物からなる液状反応層に、グラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射し、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって柱状レンズシート12を作製することで可能となる。この凹凸の粗さや微細形状や形成密度を変化させることによって、表面に形成したアンチグレア構造のヘイズ値を任意に制御することができる。
また、プロジェクタ5からの投影光画像強度が十分強い場合は、光反射層3の光反射率を30〜70%と低くして、鋸歯状プリズムシート2を形成する材料として吸光性の黒色基材を用いることによって、視認性の良い画像を表示することができる。このような場合は、20インチ程度以下の中小型スクリーンに画像を投影する場合に適している。このような、中小型スクリーンに画像を投影しても、本発明に用いている柱状レンズシートを構成する柱状レンズの径が数十μmと小さいため、分解能が高く鮮明な画像を表示させることができる。
ところで、プロジェクタの位置とスクリーンとの位置関係は、その使用環境によって異なる。図7にその関係を模式的に示す。図7(a)はプロジェクタ5がスクリーン100の下方に配置されており、図7(b)ではプロジェクタ5がスクリーン100と同じ高さに配置されており、図7(c)ではプロジェクタ5がスクリーン100の上方に配置されている。図7(a)、(b)、(c)に示す配置を各々ローアーポジション、センターポジション、アッパーポジションと言う。図1、図2、図4の構成の説明では、全てアッパーポジションの場合を示した。また、図3の構成の説明では、センターポジションの場合を示した。本発明のプロジェクタ用スクリーンは、ローアーポジションを含め、上記のいずれの配置に対しても適用可能であり、重要なことは光反射層3からの反射光が柱状レンズシート12の散乱入射角の範囲内にあることである。
もちろん、光拡散シート1として、図1で説明した表面に微細散乱構造を形成したものを用いる場合は、いずれの配置においても制限はない。
図9に本発明で用いた柱状レンズシートの光透過特性を示す。図9において、横軸は柱状レンズシートへの光の入射角、縦軸は各入射角に対する光透過強度を表している。柱状レンズの傾斜角が0度における柱状レンズシートの特性20の場合は、柱状レンズシートは角度±βで光強度がほぼゼロになっていることがわかる。入射角が−β〜βの範囲内では光は散乱透過され、入射角の絶対値がβ以上の範囲内では光は散乱されずに直線的に透過する。すなわち、透過で用いる場合は、入射角が−β〜βの範囲内が散乱入射角であり、それ以外の角度範囲が直線透過角ということになる。ここでは、簡便のためにβを柱状レンズシートの散乱入射角と呼んでいる。一方、柱状レンズの傾斜角をα度だけ傾けた場合の特性21は、傾斜角が0度の場合に比べて、散乱入射角の範囲がそのままα度だけずれた位置にシフトする。そのとき、散乱入射角の角度範囲はほとんど変化なく、散乱入射角の範囲はα−β〜α+βの範囲内にシフトする。従って、図9の特性21においては、角度αで入射した光は透過時に散乱を受けるが角度−αで入射した光は散乱を受けずに直線透過する。従って、プロジェクタからの光画像の光軸をスクリーンに対してαだけ傾けて柱状レンズシート12に照射すると同時に、投影画像の広がり角を±β以内にすることによって、明るく視野角の広い画像を得ることができる。βの値は、柱状レンズシートの層厚、柱状レンズの口径、あるいは柱状レンズの屈折率差などを調整することによって、10〜45度程度までの任意の値に制御することができる。
以下に、本発明の実施例をより具体的に説明する。
(具体例1)
図2に示した構成のスクリーンを以下のように作製した。柱状レンズシートとして、柱状レンズ径50μm、シート厚み70μmのものを用いた。その高屈折率領域と低屈折率領域における最大屈折率差は0.02であり、傾斜角20度で散乱入射角30度のものと傾斜角0度で散乱入射角30度のものを用いた。光反射層として厚み200μmのポリエチレン製の鋸歯状プリズムシートのプリズム面上にアルミニウムを1μmの厚さで蒸着したものを柱状レンズシートの裏面に配置したものを用いた。以上の構成のものを本試料として用いた。鋸歯状プリズムシートのプリズムは幅100μmのストライプ状とした。また、プリズムの仰角は15度とした。
(具体例1)
図2に示した構成のスクリーンを以下のように作製した。柱状レンズシートとして、柱状レンズ径50μm、シート厚み70μmのものを用いた。その高屈折率領域と低屈折率領域における最大屈折率差は0.02であり、傾斜角20度で散乱入射角30度のものと傾斜角0度で散乱入射角30度のものを用いた。光反射層として厚み200μmのポリエチレン製の鋸歯状プリズムシートのプリズム面上にアルミニウムを1μmの厚さで蒸着したものを柱状レンズシートの裏面に配置したものを用いた。以上の構成のものを本試料として用いた。鋸歯状プリズムシートのプリズムは幅100μmのストライプ状とした。また、プリズムの仰角は15度とした。
柱状レンズシート面の垂線から10度上に傾いた方向から投影光が照射されるようにプロジェクタを配置し、白色画像を投影しながら、測定器の角度を変化させてスクリーン前面の輝度分布を調べた。このプロジェクタから投影された白色画像の広がり角度は±18度であった。なお、白色校正板に対して測定して得られた輝度の値をゲイン1として、測定値をゲインに換算して調べた。測定結果を図10に示す。傾斜角0度の柱状レンズシートを用いた試料に対する結果22は、スクリーンに立てた垂線方向で最大輝度を持っており、約±30度の散乱角を持つことが分かる。すなわち、柱状レンズの配向方向の延長線上に輝度の最大値が現れている。一方、傾斜角15度の柱状レンズシートを用いた試料に対する結果は、曲線23に示すように輝度の最大値がスクリーンに立てた垂線上およびそれから約15度傾いた位置の2箇所に現れている。より強いピークは、柱状レンズの配向方向の延長線上に現れている。
以上の結果から、本発明のスクリーンによれば、投影光の入射角に関らず柱状レンズの配向方向に輝度の最大ピークが現れていることが分かり、広い視覚範囲で輝度の高い投影画像を見ることができる。
(具体例2)
図1に示した構成のスクリーンを前述の具体例1と同様に作製した。ただし、柱状レンズシートの代わりにヘイズ値70%のビーズ光拡散シートを用いた。また、比較用資料として、平板ポリエチレンフィルム上にアルミニウムを1μmの厚さで蒸着した光反射層を形成したものを用いた。光拡散シート側に垂直に投影光が照射されるようにプロジェクタを配置し、白色部が1000Cd/m2の白黒ストライプ画像を投影すると同時に、照明光として1000Cd/m2の白色光をプロジェクタ表面に重ねて投影し、その照明光の照射角度を変化させながらスクリーン正面から白黒ストライプ画像のコントラスト変化を調べた。このプロジェクタからの照明用白色光の広がり角度は±3度であった。
(具体例2)
図1に示した構成のスクリーンを前述の具体例1と同様に作製した。ただし、柱状レンズシートの代わりにヘイズ値70%のビーズ光拡散シートを用いた。また、比較用資料として、平板ポリエチレンフィルム上にアルミニウムを1μmの厚さで蒸着した光反射層を形成したものを用いた。光拡散シート側に垂直に投影光が照射されるようにプロジェクタを配置し、白色部が1000Cd/m2の白黒ストライプ画像を投影すると同時に、照明光として1000Cd/m2の白色光をプロジェクタ表面に重ねて投影し、その照明光の照射角度を変化させながらスクリーン正面から白黒ストライプ画像のコントラスト変化を調べた。このプロジェクタからの照明用白色光の広がり角度は±3度であった。
測定の結果を図11に示す。図11より、比較用試料におけるコントラストは照明光の照射角度が80度程度で画像の識別が困難になるほどコントラストの低下が見られたが、本具体例のスクリーンは、照明光の照射角度が60度近くになるまで画像の識別が可能であることが分かる。
以上の結果から、光拡散シートを用いた本発明のスクリーンは、従来の光拡散シートを用いたスクリーンよりも外光の影響を受けにくい特性を持っていることを実証できた。
(具体例3)
具体例1で作製した傾斜角0度の柱状レンズシートを用いたスクリーンを第二試料とした。また、第二比較用試料として、第二試料における鋸歯状プリズムシートの代わりにポリエチレンフィルム上にAgを1μm蒸着して作製した反射板を用いたものを用意した。そして、具体例2と同様にして、スクリーン上に投影されたストライプ画像のコントラスト変化を調べた。結果を図12に示す。第二比較用試料に対する結果26と比較して、第二試料の結果は照明用白色光が30度程度まで傾いた状態においても、白黒パターンの識別が可能であった。
(具体例3)
具体例1で作製した傾斜角0度の柱状レンズシートを用いたスクリーンを第二試料とした。また、第二比較用試料として、第二試料における鋸歯状プリズムシートの代わりにポリエチレンフィルム上にAgを1μm蒸着して作製した反射板を用いたものを用意した。そして、具体例2と同様にして、スクリーン上に投影されたストライプ画像のコントラスト変化を調べた。結果を図12に示す。第二比較用試料に対する結果26と比較して、第二試料の結果は照明用白色光が30度程度まで傾いた状態においても、白黒パターンの識別が可能であった。
このように、本発明のスクリーンによれば、光拡散シートとして柱状レンズシートを用いることによって、照明などの外光に対する影響を受け難い、視認性の高い画像投影ができる。
1 光拡散シート
2 鋸歯状プリズムシート
3 光反射層
5 プロジェクタ
9 視点
10 照明
12 柱状レンズシート
14 高屈折率領域
15 低屈折率領域
100 スクリーン
2 鋸歯状プリズムシート
3 光反射層
5 プロジェクタ
9 視点
10 照明
12 柱状レンズシート
14 高屈折率領域
15 低屈折率領域
100 スクリーン
Claims (12)
- 投影された光画像を表示するスクリーンにおいて、
光を拡散透過する光拡散シートと、
前記光拡散シートの裏面に配置された略水平方向の稜線を持った鋸歯状プリズムを有する鋸歯状プリズムシートと、
前記鋸歯状プリズムの面上に形成された光反射層と、を備え、
前記鋸歯状プリズムは外光の入射方向に傾斜した仰角を持つことを特徴とするスクリーン。 - 前記光拡散シートは、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、前記柱状構造の柱状中央領域はそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシートであり、
前記光反射層で反射された光画像の反射光に対する入射角が前記柱状レンズシートの散乱入射角の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。 - 前記柱状レンズシートの散乱入射角は約45度以下であり、前記柱状レンズシートを構成する柱状レンズの傾斜角は約30度以下であることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン。
- 前記柱状レンズシートの表面に光拡散機能を有する凹凸構造が形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載のスクリーン。
- 前記柱状レンズシートの表面に光拡散機能を有する透明な支持基材が設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載のスクリーン。
- 前記光拡散シートは、透明な高分子フィルム上に、微細な凹凸状光拡散構造が形成された光拡散シートであることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
- 前記光拡散シートのヘイズ値はおよそ35〜75%であることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
- 前記鋸歯状プリズムシートに形成されている鋸歯状プリズムの仰角は、3〜20度であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスクリーン。
- 前記鋸歯状プリズムは、前記鋸歯プリズムシートの面内でストライプ状に配列されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のスクリーン。
- 前記鋸歯状プリズムは、前記鋸歯状プリズムシートの面内で不規則なモザイク状に配列されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のスクリーン。
- 前記光反射層の反射率が10〜80%であり、前記鋸歯状プリズムシートが黒色であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のスクリーン。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載のスクリーンと、前記スクリーンに光画像を投影する光画像投影器と、を備えることを特徴とする画像投影システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004116901A JP2005300907A (ja) | 2004-04-12 | 2004-04-12 | スクリーン及びこれを用いた画像投影システム |
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