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JP2005237300A - 食品素材及びその製造方法 - Google Patents

食品素材及びその製造方法 Download PDF

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JP2005237300A JP2004052494A JP2004052494A JP2005237300A JP 2005237300 A JP2005237300 A JP 2005237300A JP 2004052494 A JP2004052494 A JP 2004052494A JP 2004052494 A JP2004052494 A JP 2004052494A JP 2005237300 A JP2005237300 A JP 2005237300A
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Akihiko Kimura
彰彦 木村
Masao Kondo
正夫 近藤
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Toyo Hakko Co Ltd
Aichi Prefecture
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Toyo Hakko Co Ltd
Aichi Prefecture
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Abstract

【課題】 大豆関連物質以外の植物で納豆菌を増殖させ、ビタミンKを生産し、ビタミンKが高含有された食品素材及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】 本願発明の食品素材は大豆関連物質以外の含有植物(大根葉、ケーナ、大根の上部根部及びにんじん等)を用いて納豆菌で発酵させて得られる。この食品素材は1g中にビタミンKをKとKの総量として1g中に30μg以上含有する。またこの原料として廃棄野菜を使用することができる。この食品素材の製造方法は廃棄大根葉を洗浄、破砕、加水、殺菌をして納豆菌の高橋菌を接種し、40℃で24時間発酵させる。その後、40℃で48時間熟成させる。次いで乾燥して粉末とする。この食品素材は、特定保健食品等に利用できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、食品素材及びその製造方法に関する。更に詳しくは野菜を納豆菌で発酵して製造するビタミンKを含有する食品素材及びその製造方法に関する。
ビタミンKは、従来、血液が凝固する際に必要な因子として知られているが、その必要量は微量であり、一般に成人では腸内細菌から供給されるので欠乏症が出ることがなく、あまり注目されることはなかった。
しかし、最近の研究で、ビタミンKは骨形成促進作用と骨吸収抑制作用があり、ビタミンKの投与で骨密度が増加することが明らかになった。
そして、ビタミンKの骨粗鬆症治療薬としての臨床試験も行われており、1日45mg以上の投与で治療効果が証明されている。しかし骨粗鬆症は発病してからの治療より予防が重要であり、このためには食品から日常的にビタミンKを摂取することが望まれる。
日常的なビタミンの摂取は通常、食品を通じて行なわれるのが望ましい。ビタミンKは、自然界においてビタミンK及びKが存在し、緑黄色野菜や海藻類にビタミンK、納豆などの発酵食品にビタミンKの含有が知られている。これらの食品によってビタミンKの摂取を図ることが一応できる。
しかし、これらの食品に含有されるビタミンKは、含有量の最も高い上記納豆でさえも100g中わずか1mg前後にしかすぎず、従来の食品から骨粗鬆症予防に有効な量のビタミンKを取ることは実際には困難であると考えられる。
すなわち、骨粗鬆症予防に有効なビタミンKの有効摂取量を食品から得るとすると相当に多くの納豆等を摂取する必要があると考えられる。
上記のように食品のうちでビタミンKの含有量が最も高いと思われるのは納豆である。元来大豆にはビタミンKの含有量は極めて少ないが、この大豆を納豆菌で発酵させることによってビタミンKが新たに生産され、ビタミンK高含有量の食品となる。これに着目して従来からオカラ、大豆煮汁、大豆粕及び大豆の種皮等の大豆関連物質を納豆菌で発酵させてビタミンKの製造が研究されている。この関連発明としては、例えば下記特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5が挙げられる。
特開平11−196820号公報 特開平08−009916号公報 特開平08−019378号公報 特開2000−287676号公報 特開平10−295393号公報
しかし、ビタミンKの原料となる上記大豆関連物質を確保するためには、豆腐等の大豆から製造される製品の生産地の近くであることが必要とされる。また、大豆関連物質は腐敗しやすく、運搬及び貯蔵等が困難である。更に大豆関連物質原料の種類によっては匂い及び味等においてヒトの嗜好性に合わない場合がある。
従って、これまでに発見された大豆関連物質由来のビタミンKをより多くの他の植物から簡易かつ大量に製造することが課題であった。
そこで、本発明者らは、大豆関連物質以外の植物で納豆菌を増殖させ、ビタミンKを生産し、ビタミンKが高含有された食品素材及びこの製造方法を提供することを目的とする。
本来緑黄色野菜はビタミンKを含有している。更にこの緑黄色野菜を納豆菌で発酵してビタミンKをも含有させることによりビタミンKが高含有された食品素材を得られると考えられる。
本発明者は、以上のような観点から、骨粗鬆症予防等として有効と考えられるビタミンKの日常的な多量摂取を可能とするために、嗜好性に優れかつ野菜等を納豆菌で発酵させて得られるビタミンKを含有させることによって、ビタミンKとKの総量としてビタミンKが高含有された食品素材を開発することを目的として種々研究を重ねた。
本発明は以下に示す通りである。
1.野菜を納豆菌で発酵させて得られ、かつビタミンKを含有することを特徴とする食品素材。
2.上記ビタミンKの少なくとも一種がメナキノン−7(MK-7)である上記1.記載の食品素材。
3.上記ビタミンKとビタミンKとの合計量が上記食品素材1gに対して30μg以上含有する上記1.又は2.記載の食品素材。
4.上記野菜は大根、ケーナ、にんじん、トマト、青シソ、小松菜、ほうれん草、春菊及びブロッコリーのうちの少なくとも1種である上記1.乃至3.のいずれかに記載の食品素材。
5.上記野菜が廃棄野菜である上記1.乃至4.のいずれかに記載の食品素材。
6.上記廃棄野菜が大根葉である上記5.記載の食品素材。
7.上記1.から6.記載の食品素材を製造する方法において、野菜を納豆菌で発酵させてビタミンKを含有させる工程を有することを特徴とする食品素材の製造方法。
8.更に、熟成工程を備える上記7.記載の食品素材の製造方法。
本発明の食品素材はビタミンKが高含有であり、嗜好性に優れる。
この食品素材に含有されるビタミンKがメナキノン−7(MK-7)である場合はヒトに対して活性型であるため、骨粗鬆症予防等に有効な食品素材が得られる。
また、ビタミンKとビタミンKとの合計量が食品素材1gに対して30μg以上含有する場合は、ビタミンKが高含有であるため、更に骨粗鬆症予防等に有効な食品素材が得られる。
更に、上記野菜が大根、ケーナ及びにんじん等のうちの少なくとも1種である場合は、原料の入手が容易かつ安価であり、ビタミンKが高含有であり、且つ野菜の使用により納豆臭の軽減が容易にできる。
また、上記野菜が廃棄野菜である場合は、原料が安価でありかつ資源の有効利用となる。
更に、上記廃棄野菜が大根葉である場合は、安価かつ容易にビタミンKを含有する食品素材が得られる。
本発明の製造方法によれば容易にビタミンKを含有した食品素材が製造できる。
また、上記製造方法において熟成工程を備える場合は、更にビタミンKを高含有した食品素材が製造できる。
本発明について、以下詳細に説明する。
本発明で使用される野菜(大豆種子を除く、以下も同様とする)の種類は後述する納豆菌が増殖するものであれば特に限定されない。この野菜の種類としては緑黄色野菜及び淡色野菜等が挙げられる。これらは1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
この緑黄色野菜の具体例として大根葉、ケーナ、にんじん、トマト、青シソ、小松菜、ほうれん草、春菊、ブロッコリー、みつば、なばな、セロリ(葉)及びセロリ(茎)等が挙げられる。この緑黄色野菜は1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、淡色野菜の具体例として大根(根部)、カブ、キャベツ、白菜、ねぎ(根〕及びたまねぎ等が挙げられる。この淡色野菜は1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記野菜は大根、ケーナ、にんじん、トマト、青シソ、小松菜、ほうれん草、春菊及びブロッコリーのうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの野菜は納豆菌の増殖に適していて、ビタミンKの生産が容易だからである。上記大根は葉であってもよいし、根部でもよい。この大根の根部は大根の根部を横方向に切断した場合、大根の葉の側である上部の根部が特に好ましい。
上記野菜は廃棄野菜を用いることができる。廃棄された野菜であっても新鮮な野菜であっても、納豆菌の増殖に差はなくビタミンKの生産量は変わらないためである。また、廃棄野菜であると原料となる野菜が安価に入手可能だからである。
また、上記廃棄野菜は廃棄された大根葉とすることができる。大根葉は従来から利用されることが少なくそのほとんどが廃棄されているため、ビタミンKの含有された食品素材の原料として入手が容易である。更に安価であり、資源の有効利用となるためである。
上記野菜の形態は特に限定されない。生の野菜でもよいし、この生の野菜(必要に応じて水を加えて)をミキサーにかけて破砕したペースト状のもの(以下「青汁」とも言う)でもよい。また、茹でる等の加熱したものでもよいし、この煮汁でもよいし、煮汁を濃縮したエキス又はこのエキスを乾燥粉末にしたものでもよい。
本願発明で使用する納豆菌は野菜で増殖してビタミンKを生産するものであれば特に限定されない。納豆菌の具体例としては、Bacillus natto IF03009、Bacillus subtilis IF03335、同IF03336、同IF03936、同IF013169、高橋菌(T株、東京農業大学菌株保存室)、宮城野菌(宮城野納豆製造所)及びTOYO−11等の各種の納豆菌が挙げられる。これらの納豆菌のいずれも使用でき、2種以上を併用することもできる。また、これらの納豆菌の変異株も使用できる。これらの納豆菌のうちで、高橋菌株、宮城野菌株及びTOYO−11が好ましく使用される。
発酵は通常の方法ですることができる。培地は液体培地でも良く個体培地でもよい。培地に植菌して好ましくは30〜42℃、より好ましくは35〜41℃、更に好ましくは36〜40℃で、好ましくは12〜48時間、より好ましくは15〜36時間、更に好ましくは18〜30時間発酵させる。
上記発酵温度と発酵時間の組合せは好ましくは30〜42℃かつ12〜48時間、より好ましくは35〜41℃かつ15〜36時間であり、更に好ましくは36〜40℃かつ18〜30時間である。
植菌数は液体培地で好ましくは培地100mlあたり10〜1010個、より好ましくは10〜10個であり、固体培地では好ましくは培地1gあたり10〜10個、より好ましくは10〜10個である。
上記発酵後、熟成することが好ましい。熟成温度は好ましくは35〜45℃、より好ましくは37〜43℃、更に好ましくは39〜41℃である。また、熟成時間は好ましくは、12〜72時間、より好ましくは18〜60時間、更に好ましくは24〜48時間熟成させる。
本発明の食品素材はビタミンKを含有する。植物を納豆菌で発酵させた場合はビタミンKとしてメナキノン−1からメナキノン−14のものが生産される。メナキノン(MK)のキノン骨格に結合するポリプレノイド側鎖の長さによってMK−1からMK−14までの14種類が知られており、微生物の種類によって生産されるメナキノンの種類が異なる。本発明に含有するビタミンKは特に限定されず上記メナキノンのいずれのものでもよい。
本発明において含有されるビタミンKの少なくとも1種はメナキノン−7であることが好ましい。メナキノン−7は、ヒトに対して活性型のビタミンKであるため好ましい。
本発明の食品素材は上記ビタミンKとビタミンKとの合計量が上記食品素材1gに対して30μg以上含有することが好ましい。ビタミンKは元来野菜に含有されている。これに対してビタミンKは納豆菌による発酵で生産される。摂取されたビタミンKはヒトの組織内の酵素によりメナキノン4等のビタミンKに特異的に変換されると考えられている。このため、ビタミンKはビタミンKとして摂取してもよく、ビタミンKとして摂取してもよいと考えられている。従って、ビタミンKとビタミンKとの合計量が多いほうが好ましい。
本発明の食品素材1g中の含有量はより好ましくは40μg以上であり、更に好ましくは50μg、特に好ましくは60μg以上である。納豆のビタミンK含有量は納豆1g当り約10μgの濃度であり、食品素材のビタミンK含有量が上記以上であると食品で摂取できるビタミンKの補充的効果が大きいためである。
本発明の食品素材の形態は特に限定されない。液体状、半液体状、粉末状及び固形状等とすることができる。固体培地による納豆菌の発酵の場合は、得られた発酵物をそのまま乾燥して固体状とすることができる。また、これを粉砕して粉状体とすることができる。更に、この粉末を打錠等により得られる錠剤とすることができる。錠剤は、糖衣錠など、種々の用途に応じて表面がコーティングされた錠剤とすることができる。また、この粉末を顆粒にすることもできる。更に粉末、顆粒を含有するカプセルとすることができる。更に、この粉末を液体に溶解し又は懸濁させて液体状とすることもできる。また、この発酵物からエタノール等の種々の溶媒でビタミンKを抽出して、必要に応じて、エタノール等の溶媒、その他の余分の成分を取り除き精製粉末を得る。更に必要に応じて滅菌等を行い種々の形態とすることができる。
また、液体培地である場合は、培養液の濃縮液又はペースト等とすることができる。更に、濃縮乾燥して粉末状又は固体状とすることもできる。また、得られた濃縮液に対し適切な量の食品添加物、例えば、水溶性食物繊維、乳糖及びセルロース等を加え、凍結乾燥等することもできる。この濃縮乾燥等の方法は既知のものが適用できる。例えば、減圧濃縮法、減圧乾燥法及び凍結乾燥法等が挙げられる。更に、必要に応じて、エタノール等の溶媒、その他の余分の成分を取り除き精製粉末を得る。更に必要に応じて滅菌等を行い種々の形態とすることができる。
本発明の食品素材は、そのまま飲用することも食することもできる。また、飲料又は食品に添加して使用することができる。また、特定の保健効果が認められる保健食品、生体調節成分の機能を生かして作られる機能性食品又は保健用ドリンク剤とすることができる。
本発明の食品素材を飲食品に適用する場合、所要量の上記食品素材を食品原料に添加して一般の製造法により加工製造することができる。例えば上記食品素材を飲料に添加物として直接添加するか、又はビスケットのような固形食品に添加して骨粗鬆症予防の食品、健康食品又は機能性食品等として提供することができる。
また、本発明の食品素材を、例えば、油脂、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。更に、必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状又は顆粒状等にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。本発明の食品素材を添加する飲食品の種類は特に限定されない。
更に、本発明の食品素材を低級アルコール類、ヘキサン、エチルエーテル、アセトン、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒などで抽出し、濃縮することにより、この食品素材からビタミンKを抽出することができる。好ましい混合溶媒は、ヘキサン−イソプロピルアルコールである。この抽出液からのビタミンKの精製には、分子蒸留、水蒸気蒸留などの当該製造業者が通常用いる方法が適用される。このようにして得られたビタミンKは、骨粗鬆症等の予防・治療等の医薬品等に利用される。
飲食品に添加する場合、この食品素材の添加量は特に制限されない。健康食品、機能性食品としての摂取は、病気予防、健康維持に用いられるので、年齢、体重、性別により適宜添加量は調整する。この場合、成人一日のビタミンK摂取量が好ましくは55〜1300μg、より好ましくは110〜650μg、更に好ましくは275〜325μgになるように添加する。
また、本発明の食品素材をそのまま飲用又は食する場合にも、上記摂取量が適用できる。
本発明の野菜を発酵して得られる食品素材の製造方法は、特に限定されないが、主に以下の方法による。
野菜等を洗浄し、必要に応じて水を加えてミキサーにかけて破砕する。このとき野菜と水の配合割合は野菜1gに対して水を好ましくは1〜10ml、より好ましくは2〜8ml、より好ましくは2〜6mlとする。得られた青汁を好ましくは80〜100℃、より好ましくは85〜96℃、更に好ましくは90〜96℃で,好ましくは2〜30分間、より好ましくは5〜25分間、更に好ましくは15〜20分間殺菌する。この殺菌方法は特に限定されない。通常は湯せん又はオートクレーブ等で行う。
この加熱処理により納豆菌の増殖を妨げる雑菌の殺菌を行うことができる。また、表1に示すように上記範囲内であると野菜中のビタミンKが破壊されることがない。
Figure 2005237300
その後、この加熱処理を行った青汁を好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜80℃、更に好ましくは55〜80℃に冷却し、次いで前記納豆菌を接種する。この納豆菌の接種量は、好ましくは10〜1010個/ml、より好ましくは10〜10個/ml、更に好ましくは10〜10個/mlの前培養液を、上記の青汁を100体積%とした場合に好ましくは0.5〜2体積%、より好ましくは0.7〜1.5体積%とする。
前記詳述した発酵温度及び発酵時間で静置培養又は振とう培養する。これらのうちで静置培養が好ましく用いられる。その後熟成することが好ましい。この熟成温度及び時間は上記したものが適用できる。その後必要に応じて濾過をし、得られた濾液は、そのまま、又は更に濾過助剤などを用いて精密濾過された後、濃縮機、例えば、逆浸透圧濃縮機を用いて濃縮される。
また、他の方法としては野菜を青汁にすることなしに固形状態で発酵させることもできる。この場合、上記洗浄した野菜を必要に応じて、切断する。この大きさは特に制限されない。この切断野菜を前述した温度、時間及び方法で殺菌する。上記殺菌した野菜等を好ましくは含水率を60〜95%、より好ましくは65〜90%に調整する。その後、この加熱処理を行った野菜等に前記納豆菌を接種して発酵させる。この納豆菌の接種量は好ましくは乾燥野菜1gに対して好ましく10〜10個の胞子植菌を行う。
この固形状で発酵させる場合は、発酵に際しては酸素の供給を充分行うことが好ましい。具体的には金網等のうえに薄い層にして発酵させる。この発酵温度、発酵時間、熟成温度及び熟成時間は前記詳述したものが適用できる。
上記方法で得られた発酵物は、前記詳述した種々の食品素材の形態にされ、種々の飲料又は食品とすることができる。
[実施例1]
ケーナを原料とする市販の青汁を、希釈後の青汁を100質量%とした場合に、上記ケーナ青汁が50質量%になるように蒸留水で希釈して400mlのケーナ青汁希釈液を得た。
これをビーカーにいれて湯せんにかけ、93℃に達した時点から1分間加熱殺菌をした。この加熱殺菌した青汁を80℃まで冷却し試料100mlを、内径17.2cmのシャーレに移し、菌濃度10/mlの前述した高橋菌の前培養液を1ml接種した。
このシャーレの上蓋をずらして40℃の恒温器で24時間静置培養した。
これを試料1とした。
[参考例1]
上記高橋菌の代わりに前記宮城野菌を使用した以外は実施例1と同様にして、試料2を得た。
[比較例1]
上記高橋菌及び宮城野菌の接種の変わりに無菌接種とした以外は実施例1及び2と同様にして試料3を得た。
上記結果を図1に示す。図1より以下のことが判る。50%希釈青汁の菌無接種においてはビタミンKを上記ケーナ青汁50質量%希釈液1gにつき0.74μg含有している。
これに対して高橋菌で発酵させた場合にはビタミンKは発酵青汁1gにつき、0.47μg含有し、MK−7を0.52μg含有している。これによりビタミンKはKとKの合計0.99μg/g含有することになり菌無接種の青汁よりビタミンKが総量で0.25μg/g含有量が増えた。
また、宮城野菌で発酵させた場合にはビタミンKは0.42μg/g含有し、MK−7を0.3μg/g含有している。これによりビタミンKは合計0.72μg/g含有することになり当初の青汁と含有量はほぼ等しい。
従って、ケーナ青汁に高橋菌を使用した場合は、ビタミンKの含有量は減少するものの、MK−7が増加するためビタミンKの総量が32%増加する。これに対して宮城野菌を使用する場合はビタミンKの総量が発酵の前後で変化がない。
[実施例2]
廃棄された大根葉を150gを洗浄し、蒸留水350mlを加えてミキサーにかけ大根葉の青汁を得た。この青汁を実施例と同様にして発酵させて試料4とした。
[参考例2]
上記高橋菌の代わりに前記宮城野菌を使用した以外は実施例2と同様にして試料5を得た。
[比較例2]
上記高橋菌及び宮城野菌の接種の代わりに菌無接種とした以外は実施例2と同様にして試料6を得た。
上記実施例2、参考例2及び比較例2の結果を図2に示す。図2より以下のことが判る。大根葉青汁の菌無接種において(比較例2、試料6)はこの大根葉青汁1gについて、ビタミンKを15μg含有している。
これに対して高橋菌で発酵させた場合(実施例2、試料4)にはビタミンKは10μg/g含有し、MK−7を14.0μg/g含有している。これによりビタミンKは合計24.0μg/g含有することになり菌無接種の大根青汁より9.0μg/g含有量が増えた。
また、宮城野菌で発酵させた場合(参考例2、試料5)にはビタミンKは6μg/g含有し、MK−7を2.5μg/g含有している。これによりビタミンKは合計8.5μg/g含有することになり無菌接種の青汁と比較すると含有量は6.5μg/gのマイナスとなった。
従って、大根青汁に高橋菌を使用した場合はビタミンKの総量は60%増大し、ビタミンK含有食品素材の製造に有効といえる。
[実施例3]
原料には、廃棄された大根葉を使用し、実施例2と同様の大根葉の青汁を得て、実施例2と同様に発酵させて食品素材を得て、試料7とした。
[実施例4]
発酵容器を実例3と同じ容積、形状の異なる容器にした以外は実施例3と同様にして発酵物を得て試料8とした。
[実施例5]
納豆菌としてTOYO−11菌を使用した以外は実施例3と同様にして発酵物を得て試料9とした。
[実施例6]
発酵容器を実例5と同じ容積、形状の異なる容器にした以外は実施例5と同様にして発酵物を得て試料10とした。
[比較例3]
菌を無接種にしたこと以外は実施例3と同様にして試料11を得た。
実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び比較例3の結果を図3に示す。図3は試料1gあたりのビタミンKの含有量を示す。この図3から判るように高橋菌を接種した場合は、接種菌の生理的状態によりMK−7の生産量が異なる。
これに対して、TOYO−11菌を接種した場合は接種菌の生理的状態によりMK−7の生産量が異なることはない。
また、食品素材の試料7のビタミンKとMK−7の合計は47μg/g、試料8のビタミンKとMK−7の合計は75μg/g、試料9のビタミンKとMK−7の合計は53μg/g、試料10のビタミンKとMK−7の合計は58μg/gとなる。
一方菌無接種の試料11は20μg/gである。
従って、試料7〜10のいずれもビタミンKが高含有された食品素材となることがわかる。
[実施例7]
実施例1と同様に大根葉の青汁を得て、実施例1と同様に発酵させた。
その後、この発酵物を更に40℃の恒温器に48時間静置して、熟成させて食品素材を得て、試料12とした。
図4は、上記発酵前の大根青汁、発酵後の大根青汁及び熟成後の試料12の各々を乾燥し、この乾燥したものの1gあたりのビタミンKの含有量に換算した値を示す。
図4から以下のことが判る。即ち、発酵後の乾燥した食品素材1gあたりビタミンKを50μg及びMK−7を95μgを含有しビタミンKとして総量145μgを含有する。これに対して、熟成後の乾燥した食品素材1gあたりビタミンKを45μg及びMK−7を170μg含有しビタミンKとして総量215μgを含有する。
従って、発酵後熟成することによりビタミンKの総量は約48%増加することがわかる。
[実施例8]
大根の根部を横方向に葉のある側からみて1/3のところで切断して、葉のついている側の根部(以後「大根の上部根部」という)の150gと蒸留水350gを加えてミキサーにかけ大根の上部根部の青汁を使用した以外は実施例1と同様にして発酵し食品素材を得て試料13を得た。
その後試料13を実施例7と同様にして熟成させて試料14を得た。
図5は、上記発酵前の大根の上部根部青汁、発酵後の同青汁試料13及び熟成後の同青汁試料14の各々を乾燥し、この乾燥試料1gあたりのビタミンKの含有量に換算した値を示す。
図5から以下のことが判る。大根の上部根部の発酵前のビタミンKの含有量は50μg/乾燥gである。これに対して大根の上部根部の発酵後のビタミンKの総量は380μg/乾燥gであり、熟成後のビタミンKの総量は330μg/乾燥gである。即ち、大根の根部のようにビタミンKを豊富に含まないものでも納豆菌によりMK−7の生産が可能であり、ビタミンKの高含有食品素材が得られることがわかる。
尚、この図5には示さないが、大根の下部根部を実施例7と同様にして食品素材を得たが、発酵前、発酵後及び熟成後においても、ビタミンK及びMK−7の含有は微量であった。
[実施例9]
洗浄したにんじん(葉の部分を除いた根部)300gと蒸留水300gを加えてミキサーにかけたにんじんの青汁を使用した以外は実施例8と同様にして発酵し食品素材を得て試料15とした。
更に熟成時間を24時間とした以外は実施例8と同様にして食品素材を得て試料16とした。
その結果を図6に示す。この図6は試料15及び熟成後の同青汁試料16の各々を乾燥し、この乾燥試料1gあたりのビタミンKの含有量に換算した値を示す。この図6から以下のことが判る。即ち、にんじんのようにビタミンKをわずかにしか含有しない野菜からもMK−7が生産され、ビタミンKを高含有する食品素材が得られる。
[実施例10]
洗浄したトマトを皮付きのまま、蒸留水を加えずにミキサーにかけてトマト青汁を得て、これを使用した以外は実施例9と同様に発酵し食品素材を得て試料17とした。更に、実施例8と同様にして熟成して食品素材を得て試料18とした。
この結果を図7に示す。図7は試料17及び熟成後の同青汁試料18の各々を乾燥し、この乾燥試料1gあたりのビタミンKの含有量に換算した値を示す。図7から以下のことが判る。トマトのようにビタミンKをほとんど含まない野菜からもMK−7が生産され、ビタミンKを含有する食品素材が得られる。
[ビタミンKの測定]
ビタミンKは、以下の方法でHPLC用サンプルを調製し、HPLCで測定した。実施例で得られた発酵物の試料1〜18の0.5〜2.5gを正確にとり、イソプロパノール10.0ml、n−ヘキサン12.0mlを加え、室温で5分間振とうした後2500rpmで5分間遠心分離した。上層のn−ヘキサン層を取り、溶媒を減圧留去した。残留物にn−ヘキサン4.0mlを加え、あらかじめエーテル:n−ヘキサン(4:96、容量比)10.0mlとn−ヘキサン10.0mlで洗浄したSep−pakシリカカートリッジ(ウォーターズ社製)に負荷した。カートリッジをn−ヘキサン10.0mlで洗浄した後エーテル:n−ヘキサン(4:96、容量比)10.0mlを加えて溶出した。得られた溶出液の溶媒を減圧留去した後、エタノール1mlで溶解した試料を、以下の条件でHPLCで分析し、ビタミンKを内部標準としてビタミンK類(ビタミンK1及びメナキノン−7)の含有量をビタミンK含有食品素材1g中のμgとして求めた。
カラム:NUCLEOSIL 100−5C−18(150×4.6mm、(株)ジーエルサイエンス社製)
移動相:メタノール:エタノール(9:1、容量比)
流速:1.0ml/分
検出波長:励起波長(Ex)320nm、蛍光波長(Em)430nm
還元カラム:白金カラムRC−10((株)資生堂医理化テクノロジー社製)
[実施例の効果]
大豆関連物質以外の野菜である大根葉、ケーナ、大根根部、にんじん及びトマトについて、納豆菌は増殖してMK−7を含有する食品素材を生産する。従って、この食品素材は健康食品及び特定保健食品等に広く利用ができる。また、本願の方法によれば確実かつ容易にビタミンKを含有した食品素材が製造できる。
本発明は、保健飲料、健康食品、特定保健用食品、医薬品等において広く利用される。例えば、本発明の食品素材を飲料に添加して抗骨粗鬆症等の保健飲料、食品に添加して抗骨粗鬆症等の保健食品又はふりかけ等にして健康食品等に利用される。
ケーナ青汁に対して、納豆菌の種類によるビタミンKの生産を比較した図である。 廃棄された大根葉青汁に対して、納豆菌の種類によるビタミンKの生産を比較した図である。 種類の異なる納豆菌により大根葉青汁から製造した食品素材のビタミンKの含有量を比較した図である。 大根葉青汁から得られる乾燥食品素材1gあたりのビタミンK及びMK−7の含有量を比較した図である。 大根の上部根部青汁から得られる乾燥食品素材1gあたりのビタミンK及びMK−7の含有量を比較した図である。 にんじん青汁から得られる乾燥食品素材1gあたりのビタミンK及びMK−7の含有量を比較した図である。 トマト青汁から得られる乾燥食品素材1gあたりのビタミンK及びMK−7の含有量を比較した図である。

Claims (8)

  1. 野菜を納豆菌で発酵させて得られ、且つビタミンKを含有することを特徴とする食品素材。
  2. 上記ビタミンKの少なくとも一種がメナキノン−7である請求項1記載の食品素材。
  3. 上記ビタミンKとビタミンKとの合計量が上記食品素材1gに対して30μg以上含有する請求項1又は2記載の食品素材。
  4. 上記野菜は大根、ケーナ、にんじん、トマト、青シソ、小松菜、ほうれん草、春菊及びブロッコリーのうちの少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載の食品素材。
  5. 上記野菜が廃棄野菜である請求1乃至4のいずれか1項に記載の食品素材。
  6. 上記廃棄野菜が大根葉である請求項5記載の食品素材。
  7. 上記請求項1から6記載の食品素材を製造する方法において、野菜を納豆菌で発酵させてビタミンKを含有させる工程を備えることを特徴とする食品素材の製造方法。
  8. 更に、熟成工程を備える請求項7記載の食品素材の製造方法。
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