JP2005279339A - 塗布液の塗布乾燥方法、装置、及び光学フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】光学フィルム等の高精度の塗布が要求される分野において、塗布ムラを発生させない安定的な塗布状態を提供する。
【解決手段】走行する帯状可撓性の支持体16の下面に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段10によって塗布し、塗布液を乾燥手段76によって乾燥させ、支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法。支持体が塗布手段を通過してから3秒以内に、又は、支持体が塗布手段を通過してから塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、支持体の塗布層が上面となるように、支持体を反転して走行させる。
【選択図】 図2
【解決手段】走行する帯状可撓性の支持体16の下面に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段10によって塗布し、塗布液を乾燥手段76によって乾燥させ、支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法。支持体が塗布手段を通過してから3秒以内に、又は、支持体が塗布手段を通過してから塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、支持体の塗布層が上面となるように、支持体を反転して走行させる。
【選択図】 図2
Description
本発明は塗布液の塗布乾燥方法、装置、及び光学フィルムに係り、特に、光学補償フィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の光学フィルムや、液晶層のムラを改善するために有用な光学フィルム等の製造に好適に適用できる塗布液の塗布乾燥方法、装置、及びこれを使用して製造された光学フィルムに関する。
近年、光学フィルムの需要が増加しつつある。この光学フィルムとしては、液晶セルに位相差板として使用される光学補償フィルムや、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の各種の機能を有するフィルムが代表的である。
このような光学フィルムの製造方法の代表的なものとして、帯状可撓性の支持体(以下、「ウエブ」と言う)の表面に各種塗布装置を使用して塗布液を塗布し、これを乾燥させて各種組成の塗布膜を形成する方法が挙げられる。このための塗布膜を形成する方法や装置としては、従来より各種の提案がなされている(特許文献1〜4参照。)。
特開平9−73081号公報
特開2000−157923号公報
特開2003−126768号公報
特開2003−93954号公報
このような光学フイルムを製造する分野において、特に塗布直後の乾燥は非常に重要である。ところが、従来においては、特許文献1に示されるように、室温であれば特に風の流れを規制することはなかった。すなわち、外乱を無くすために乾燥部分をケースで覆う等の手段が採用されている。また、特許文献2及び3に示されるように、外乱を無くすためにケースを設けずにその風速を規定する程度であり、塗布直後の乾燥を均一に維持するのには不十分であった。
これに対し、特許文献4に示されるように、複数の穴を持った整風部材を塗布直後の面に近接して配置し、乾燥した蒸発ガスを均一にして乾燥ムラを抑制する提案は、塗布直後の乾燥に非常に有効である。しかしながら、塗布量が多い場合には、整風部材のみでは、蒸発ガス濃度が高くなるにつれて乾燥が遅れてしまい、その後段に設けられている高温、高風量のドライヤーゾーンなどの影響を受けやすくなる問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光学フィルム等の高精度の塗布が要求される分野において、塗布ムラを発生させない安定的な塗布状態を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段によって塗布し、該塗布液を乾燥手段によって乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法において、前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内に、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、前記支持体の塗布層が上面となるように、前記支持体を走行させることを特徴とする塗布液の塗布乾燥方法、及びそのための装置を提供する。
本発明によれば、塗布後3秒以内に、又は、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、塗布層が上面となるように支持体が反転されるので、有機溶媒の蒸発ガスが下方に流れ落ちる程度は少なく、その結果乾燥ムラが抑えられる。
すなわち、塗布面が下を向いた状態で各種塗布装置により塗布を行うのは、光学フィルムの製造では一般的であるが、従来のように、塗布面が下を向いたままでは、蒸発した溶剤ガスは通常は空気より重いために、下に流れ落ち、その際に周囲のガスも引っ張り、塗布面近傍では蒸発したガスが不均一になる。その結果、塗布面近傍の境界層を大きく乱し、そのため蒸発速度偏差を生じて乾燥ムラとなるが、本発明では、塗布面が速やかに上面となるので、このような不具合を生じない。
また、本発明は、走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段によって塗布し、該塗布液を乾燥手段によって乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法において、前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、前記支持体の塗布層が上面となるように、前記支持体を走行させることを特徴とする塗布液の塗布乾燥方法、及びそのための装置を提供する。
本発明によれば、より限定された条件で塗布層が上面となるように支持体が反転されるので、有機溶媒の蒸発ガスが下方に流れ落ちる程度は一層少なく、その結果乾燥ムラが抑えられる。
本発明において、前記支持体を、水平面に対して0〜45度の角度をなすようにして走行させることが好ましい。このように、支持体を、水平面に対して0〜45度に維持できれば、有機溶媒の蒸発ガスが下方に流れ落ちる程度は少なく、その結果乾燥ムラが抑えられる。一方、支持体を、水平面に対して45度超に傾斜させると、蒸発ガスが下方に流れ落ちる速度が速くなり、乾燥ムラを引き起こす。
なお、塗布手段としては、特に制限がないが、バーコータ(「ロッドコータ」とも称され、メイヤーバーコータをも含む)、グラビアコータ(ダイレクトグラビアコータ、グラビアキスコータ等)、ロールコータ(トランスファロールコータ、リバースロールコータ等)、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、又はスライドホッパ等が採用できる。
また、本発明において、前記乾燥手段を、前記支持体がその内部を通過する断面矩形状のトンネル状体とし、該トンネル状体内に、その略全面に多数の貫通孔を有する板状部材を前記支持体の塗布層に対向して配置することが好ましい。このように、トンネル状体内が多数の貫通孔を有する板状部材により二分され、板状部材の下側を通過する支持体の塗布層より蒸発したガスが、吸引等により板状部材の貫通孔を経て板状部材の上側に移動し、トンネル状体外に排出される。この板状部材により、蒸発したガスの流れが均一となり、その結果乾燥ムラが抑えられる。
また、本発明において、前記板状部材と前記支持体との間隔を3〜30mmとすることが好ましい。板状部材と支持体とをこのような距離に配置することにより、蒸発したガスの流れが均一となり、その結果乾燥ムラが抑えられる。
また、本発明において、前記塗布層において、前記塗布液の塗布時の膜厚が1〜10μmであることが好ましい。このような膜厚の塗布が行なえれば、光学フィルムとして好ましい。
なお、光学フィルムとは、光学補償フィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の各種の機能を有するフィルムをも含むものである。
以上説明したように、本発明によれば、塗布後3秒以内に、又は、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、塗布層が上面となるように支持体が反転されるので、有機溶媒の蒸発ガスが下方に流れ落ちる程度は少なく、その結果乾燥ムラが抑えられる。
以下、添付図面に従って本発明に係る塗布液の塗布乾燥方法、装置、及び光学フィルムの好ましい実施の形態について詳説する。図1は、本発明に係る塗布液の塗布乾燥方法、及び装置が適用される光学補償フィルムの製造ラインを説明する説明図である。図2は、この製造ラインのうち、塗布手段と乾燥手段の一例を示す要部断面図である。
光学補償フィルムの製造ラインは、図1に示されるように、送り出し機66から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ16が送り出されるようになっている。ウエブ16はガイドローラ68によってガイドされてラビング処理装置70に送りこまれようになっている。ラビングローラ72は、ポリマー層にラビング処理を施すべく設けられている。ラビングローラ72の下流には除塵機74が設けられており、ウエブ16の表面に付着した塵を取り除くことができるようになっている。
除塵機74の下流にはグラビア塗布装置10が設けられており、ディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ16に塗布できるようになっている。この下流には、乾燥ゾーン76、後段乾燥ゾーン176、加熱ゾーン78が順次設けられており、ウエブ16上に液晶層が形成できるようになっている。更に、この下流には紫外線ランプ80が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーを形成できるようになっている。そして、この下流に設けられた巻取り機82により、ポリマーが形成されたウエブ16が巻き取られるようになっている。
図2に示されるように、グラビア塗布装置10は、上流ガイドローラ17(図1参照)及び下流ガイドローラ18でガイドされて走行するウエブ16に対して、回転駆動されるグラビアローラ12とバックアップローラ13とでウエブ16を挟んで塗布液を塗布する装置、すなわち、ダイレクトグラビアコータである。
グラビアローラ12、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、ウエブ16の幅と略同一の長さを有する。
グラビアローラ12は、図2の矢印に示されるように反時計回りに回転駆動される。この回転方向は、ウエブ16の走行方向に対して順転方向となる。なお、図2とは逆の逆転(時計回り)の駆動による塗布も、塗布条件によっては採用できる。
グラビアローラ12の駆動方法は、インバータモータによるダイレクト駆動(軸直結)であるが、各種モータと減速機(ギアヘッド)との組み合わせ、各種モータよりタイミングベルト等の巻き掛け伝達手段による方法であってもよい。
グラビアローラ12表面のセル(cell)形状は、公知のピラミッド型、格子型及び斜線型等のいずれであってもよい。すなわち、塗布速度、塗布液の粘度、塗布層厚等により適宜のセルを選択すればよい。
グラビアローラ12の下方には、液受けパン14が設けられており、この液受けパン14には塗布液が満たされている。そして、グラビアローラ12の約下半分は塗布液に浸漬されている。この構成により、グラビアローラ12表面のセルに塗布液が供給されることとなる。
上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、グラビアローラ12と平行な状態で支持されている。そして、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、両端部分を軸受部材(ボール軸受等)により回動自在に支持され、駆動機構を付されない構成のものが好ましい。
ウエブ16は、下流ガイドローラ18に巻き掛けられて、反転され、塗布面が上面となる。すなわち、ウエブ16が水平面に対して角度θをなしている。この角度θは、既述したように、0〜45度の範囲が好ましい。
下流ガイドローラ18右上方には、乾燥ゾーン76(乾燥手段)が設けられている。この乾燥ゾーン76は、ウエブ16がその内部を通過できる断面矩形状のトンネル状体である乾燥ゾーン本体76Aと、乾燥ゾーン本体76Aの内部に、その略全面に多数の貫通孔を有する板状部材である整風部材77がウエブ16の塗布層に対向するように配置されている構成のものである。
すなわち、下流ガイドローラ18でガイドされ、右上方に向かって搬送されるウエブ16が乾燥ゾーン本体76Aの内部において、整風部材77と所定の間隔Gを隔てて走行できる構成となっている。
このように、ウエブ16が下流ガイドローラ18でガイドされ、右上方に向かって搬送されることにより、塗布液の塗布時には下面であった塗布層が、乾燥ゾーン76内を通過する際には上面となる。そして、ウエブ16がグラビア塗布装置10(より正確には、グラビアローラ12)を通過してから3秒以内、又は、ウエブ16がグラビア塗布装置10を通過してから塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか短い時間以内にウエブ16の塗布層が上面となるように下流ガイドローラ18の配置をする必要がある。
このうち、前者である「3秒以内」の場合は、ウエブ16の搬送速度より下流ガイドローラ18の配置が決定できる。一方、後者である「塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となる」の場合は、塗布液の組成等により変化し、3秒より長くなる場合もあれば、3秒より短くなる場合もある。
図3は、図1の乾燥ゾーン76の3−3線断面図を示すものである。乾燥ゾーン76には、乾燥ゾーン本体76Aと整風板77とが備えられている。乾燥ゾーン本体76Aは、ウエブ16を通す通路室76Bと、蒸発した溶媒ガスを排気する排気室76Cとを備えている。また、整風板77は、通路室76Bと排気室76Cとを仕切るように設けられている。
排気室76Cには、排気パイプ84と吸気パイプ85とが取り付けられ、その吸気パイプ85により排気室76C内に空気(その他のガスであっても良い)が送られる。また、吸気パイプ85と排気パイプ84とは、ウエブ16の幅方向に反対側に取り付けられており、ウエブ16の幅方向に空気が流れ、空気流76Dが形成される。
整風板77の開口率、材料などは特に限定されないが、50%以下の開口率である金網やパンチングメタルなどが好ましく、開口率が20%〜40%であることがより好ましい。具体的には、300メッシュで開口率30%の金網を用いることができる。また、ウエブ16に形成された塗布層の表面との間隔Gが10mmになるように整風板77が取り付けられている。なお、この間隔Gは、3〜30mmの範囲が好ましく採用できる。
更に、ウエブ16の裏面(塗布層が形成されていない面)及びサイドからの不必要な風の流れを抑制するためにシール部材である下蓋86及びサイドシール87、88を取り付けている。なお、整風板77には、開口率を調整するために金網を用いているが、本発明においては金網に限らずパンチメタル等で開口率を決定することも可能である。
本発明の乾燥方法によれば、塗布層中の有機溶媒が蒸発したガス(通常は、気化した溶媒が高濃度に含まれている)gは、整風板77の孔77Aを通過して、塗膜面に対して整風板77の反対側を通る排気室76Cの乾燥風76Dによりウエブ16の幅方向に均一に排気パイプ84から排気され、乾燥ゾーン76外に排出される。このため、塗膜層の表面に乾燥風が触れることが無く、塗膜層にムラが発生することが抑制される。
なお、本発明に用いられる乾燥ゾーン76は、図示した形態に限定されるものではない。また、この乾燥ゾーン76は、図2の、ウエブ16が下流ガイドローラ18に巻き掛けられて、反転され、塗布面が上面となる構成と組み合わされず、単独で採用された場合であっても、顕著な効果が得られることが確認されている。
更に、乾燥ゾーン76には、整風板77が設けられていれば、図3に示される空気流76Dが形成される場合であっても、整風板77を介してエアが吸引される場合であっても、整風板77を介してエアが吹き出される場合であっても、エアの流れを積極的に形成しない場合であっても、効果が得られることが確認されている。
また、図1においては図示されていないが、乾燥ゾーン76には、ウエブ16にグラビア塗布装置10で塗布液を塗布した直後にカバーを設置し、新鮮な塗布室の空調風が乾燥装置10に入り込まないような構成とすることが重要である。
図1及び図2に示された乾燥ゾーン76は、ウエブ16の走行方向に仕切りのない一体物であるが、ウエブ16の走行方向に仕切りを設け分割される構成とすることも可能である。このように分割されたゾーン毎に、排気パイプ84と吸気パイプ85とを取り付け、その吸気パイプ85により排気室76C内の空気の流れを制御することにより、それぞれのゾーンに対応させて、塗布層中の溶媒が蒸発したガスを均一に排気することができ、塗布層を均一に乾燥することが可能となる。なお、ゾーンに分割する場合、2〜10の乾燥ゾーンから構成している状態が好ましい。
本実施の形態において、グラビア塗布装置10は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設置するとよい。その際、清浄度はクラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
上述したグラビア塗布装置10は、特に薄層塗布に有効であるので、たとえば、ウエット塗布量が10ml/m2 以下の薄層塗布を行う光学補償フィルムの製造ラインに好適に適用できる。
本発明において、同時に塗布される塗布液の塗布層の数は単層に限定されるものではなく、必要に応じて同時多層塗布方法にも適用できる。
なお、塗布液の塗布方法としては、上述したグラビア塗布装置10以外に、バーコータ(「ロッドコータ」とも称され、メイヤーバーコータをも含む)、他のグラビアコータ(グラビアキスコータ、マイクログラビアコータ等)、ロールコータ(トランスファロールコータ、リバースロールコータ等)、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、カーテンコータ、ディップコータ、スピンコータ、スプレーコータ又はスライドホッパ等が採用できる。
次に、本発明に係るグラビア塗工装置を使用して製造される光学フィルムについて説明する。
本発明に使用するウエブ16としては、光透過率が80%以上であるポリマーフィルムを用いることが好ましい。ポリマーフィルムとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。ポリマーの例には、セルロース系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー(たとえば、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア、ゼオネックス(いずれも、日本ゼオン(株)製))及びポリメチルメタクリレートが含まれる、セルロース系ポリマーが好ましく、セルロースエステルがより好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルが更に好ましい。
この低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロース及びトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
一般に、セルロースアセテートの2、3、6の水酸基は、全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が、2、3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上40%以下アシル基で置換されていることが好ましく、更には31%以上、特に32%以上であることが好ましい。更にセルロースアセテートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。
6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。
本発明のセルロースアセテートとして、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載されている合成例1、段落番号0048〜0049に記載されている合成例2、そして段落番号0051〜0052に記載されている合成例3の合成方法により得られたセルロースアセテートを用いることができる。
ポリマーフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用する。
ポリマーフィルムとしてセルロースアセテートフィルムを用いる場合、芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することが更に好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることが更に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1、3、5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1、3、5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環及び1、3、5−トリアジン環が更に好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1、3、5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることが更に好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、更に置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル及び2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。
アルケニル基の例には、ビニル、アリル及び1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニル及び1−ヘキシニルが含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイル及びブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。
アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシ及びメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノが含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ及びオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル及びエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド及びn−オクタンスルホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及び2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル及びジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル及びジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ及びモルホリノが含まれる。レターデーション上昇剤の分子量は、300〜800であることが好ましい
レターデーション上昇剤の具体例としては、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、PCT/JP00/02619号明細書等に記載されている。
レターデーション上昇剤の具体例としては、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、PCT/JP00/02619号明細書等に記載されている。
以下、ポリマーフィルムとしてセルロースアセテートフィルムを用いる場合について具体的に説明する。ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフィルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることが更に好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
なお、技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造したセルロースアシレートフィルムから、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0°C以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。
有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。溶液は、常温(0〜40°C)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40°C以上であり、好ましくは60〜200°Cであり、更に好ましくは80〜110°Cである。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。たとえば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
本発明のセルロースアセート溶液(ドープ)の調製は、冷却溶解法に従い実施され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40°C)で有機溶媒中にセルロースアセートを撹拌しながら徐々に添加される。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。
たとえば、主溶媒中にセルロースアセテートを添加した後に、他の溶媒(たとえばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアセテートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアセテートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。更に、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物は−100〜−10°C(好ましくは−80〜−10°C、更に好ましくは−50〜−20°C、最も好ましくは−50〜−30°C)に冷却される。冷却は、たとえば、ドライアイス・メタノール浴(−75°C)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20°C)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場合は、冷却に伴いセルロースアセテート溶液の粘度が上がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するために効率よい溶解釜とすることが必要である。
また、本発明のセルロースアセテート溶液は膨潤させたあと、所定の冷却温度にした冷却装置を短時間移送することにより達成できる。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000°C/秒が理論的な上限であり、1000°C/秒が技術的な上限であり、そして100°C/秒が実用的な上限である。
なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。更に、これを0〜200°C(好ましくは0〜150°C、更に好ましくは0〜120°C、最も好ましくは0〜50°C)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33°C近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。
したがって、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10°C程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフィルムを製造する。またドープに、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%、より好ましくは18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10°C以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、更に100から160°Cまで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明では得られたセルロースアセテート溶液を、ウエブ16としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアセテート液を流延してもよい。複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、ウエブ16の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、たとえば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号、などに記載の方法が適応できる。
また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、たとえば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号、に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号に記載の高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルム流延方法でもよい。
或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口によりウエブ16に成型したフィルムを剥ぎ取り、ウエブ16面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、たとえば特公昭44−20235号に記載されている方法である。流延するセルロースアセテート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアセテート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアセテート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。
更に本発明のセルロースアセテート溶液は、他の機能層(たとえば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアセテート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアセテート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアセテート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時にウエブ16上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアセテート溶液を用いることにより乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
セルロースアセテートフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。
フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが更に好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
セルロースアセテートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることが更に好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を超えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
次に、ポリマーフィルムの延伸処理について説明する。作製されたセルロースアセテートフィルム(ポリマーフィルム)は、更に延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%であることが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、40〜140μmであることが好ましく、70〜120μmであることが更に好ましい。また、この延伸処理の条件を調整することにより、光学補償フィルムの遅相軸の角度の標準偏差を小さくすることができる。
延伸処理の方法に特に限定はないが、その例としてテンターによる延伸方法が挙げられる。上記のソルベントキャスト法により作製したフィルムに、テンターを用いて横延伸を実施する際に、延伸後のフィルムの状態を制御することにより、フィルム遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。具体的には、テンターを用いてレターデーション値を調整する延伸処理を行い、そして延伸直後のポリマーフィルムをその状態のまま、フィルムのガラス転移温度近傍で保持することにより、遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。
この保持の際のフィルムの温度をガラス転移温度よりも低い温度で行うと、標準偏差が大きくなってしまう。また、別の例としては、ロール間にて縦延伸を行う際に、ロール間距離を広くすると遅相軸の標準偏差を小さくできる。
次に、ポリマーフィルムの表面処理について説明する。ポリマーフィルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、ポリマーフィルムを表面処理することが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。酸処理またはアルカリ処理、すなわちポリマーフィルムに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
次に、配向膜について説明する。配向膜は、光学異方性層のディスコティック液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。疎水性基は光学異方性層のディスコティック液晶性分子と親和性があるため、疎水性基をポリビニルアルコールに導入することにより、ディスコティック液晶性分子を均一に配向させることができる。
疎水性基は、ポリビニルアルコールの主鎖末端または側鎖に結合させる。疎水性基は、炭素原子数が6以上の脂肪族基(好ましくはアルキル基またはアルケニル基)または芳香族基が好ましい。ポリビニルアルコールの主鎖末端に疎水性基を結合させる場合は、疎水性基と主鎖末端との間に連結基を導入することが好ましい。連結基の例には、−S−、−C(CN)R1 −、−NR2 −、−CS−及びそれらの組み合わせが含まれる。上記R1 及びR2 は、それぞれ、水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基(好ましくは、炭素原子数が1〜6のアルキル基)である。
ポリビニルアルコールの側鎖に疎水性基を導入する場合は、ポリビニルアルコールの酢酸ビニル単位のアセチル基(−CO−CH3 )の一部を、炭素原子数が7以上のアシル基(−CO−R3 )に置き換えればよい。R3 は、炭素原子数が6以上の脂肪族基または芳香族基である。市販の変性ポリビニルアルコール(例、MP103、MP203、R1130、クラレ(株)製)を用いてもよい。配向膜に用いる(変性)ポリビニルアルコールのケン化度は、80%以上であることが好ましい。(変性)ポリビニルアルコールの重合度は、200以上であることが好ましい。
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。長さ及び太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。なお、光学異方性層のディスコティック液晶性分子を配向膜を用いて配向後、配向膜を除去しても、ディスコティック液晶性分子の配向状態を保つことができる。すなわち、配向膜は、ディスコティック液晶性分子を配向するため楕円偏光板の製造において必須であるが、製造された光学補償フィルムにおいては必須ではない。
配向膜を透明ウエブ16と光学異方性層との間に設ける場合は、更に下塗り層(接着層)を透明ウエブ16と配向膜との間に設けることが好ましい。また面状安定化の為に、クエン酸エステルを必要に応じ添加してもよい。
次に、光学異方性層について説明する。光学異方性層はディスコティック液晶性分子から形成する。ディスコティック液晶性分子は、一般に、光学的に負の一軸性を有する。本発明の光学補償フィルムにおいては、ディスコティック液晶性分子は、図2に示したように、円盤面と透明ウエブ16面とのなす角が、光学異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。
ディスコティック液晶性分子は、光軸方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。光学異方性層は、上記の配向膜によってディスコティック液晶性分子を配向させ、その配向状態のディスコティック液晶性分子を固定することによって形成することが好ましい。ディスコティック液晶性分子は、重合反応により固定することが好ましい。
なお、光学異方性層には、レターデーション値が0となる方向が存在しない。言い換えると、光学異方性層のレターデーションの最小値は、0を超える値である。具体的には、光学異方性層は、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が10〜100nmの範囲にあり、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が40〜250nmの範囲にあり、そして、ディスコティック液晶性分子の平均傾斜角が20〜50゜であることが好ましい。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(n2+n3)/2−n1}×d
式(I)において、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり、そして、dは、光学異方性層の厚さである。式(II)において、n1は、光学異方性層を屈折率楕円体で近似した場合の屈折率主値の最小値であり、n2及びn3は、光学異方性層の他の屈折率主値であり、そして、dは、光学異方性層の厚さである。
(II) Rth={(n2+n3)/2−n1}×d
式(I)において、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり、そして、dは、光学異方性層の厚さである。式(II)において、n1は、光学異方性層を屈折率楕円体で近似した場合の屈折率主値の最小値であり、n2及びn3は、光学異方性層の他の屈折率主値であり、そして、dは、光学異方性層の厚さである。
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Co mm., page 1794 (1985) ;J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。したがって、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式(III )で表わされる化合物であることが好ましい。
(III ) D(−L−Q)n
式(III )において、Dは、円盤状コアであり、Lは、二価の連結基であり、Qは、重合性基であり、そして、nは、4〜12の整数である。
式(III )において、Dは、円盤状コアであり、Lは、二価の連結基であり、Qは、重合性基であり、そして、nは、4〜12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−及び−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが更に好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及び−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)またはエポキシ基(Q8)であることが好ましく、不飽和重合性基であることが更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。式(III )において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
光学異方性層は、ディスコティック液晶性分子及び必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することにより形成できる。光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることが更に好ましい。
配向させたディスコティック液晶性分子を、配向状態を維持して固定する。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2 であることが好ましく、100〜800mJ/cm2 であることが更に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。また面状安定化の為に、クエン酸エステルを必要に応じ添加してもよい。
次に、図1に示される光学補償フィルムの製造ラインを使用した光学フィルムの製造方法について説明する。先ず、送り出し機66から、予め配向膜形成用のポリマー層が形成された、厚さが40〜300μmのウエブ16が送り出される。ウエブ16はガイドローラ68によってガイドされてラビング処理装置70に送りこまれ、ラビングローラ72によってポリマー層がラビング処理される。次に、除塵機74により、ウエブ16の表面に付着した塵が取り除かれる。そして、グラビア塗布装置10によりディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ16に塗布される。
そして、ウエブ16が下流ガイドローラ18でガイドされ、右上方に向かって搬送されることにより、塗布液の塗布時には下面であった塗布層が、乾燥ゾーン76内を通過する際には上面となる。その際、ウエブ16がグラビア塗布装置10(より正確には、グラビアローラ12)を通過してから3秒以内、又は、ウエブ16がグラビア塗布装置10を通過してから塗布液に対する有機溶媒の含有量が50%未満となるまで、のいずれか短い時間以内にウエブ16の塗布層が上面となるようにされる。
このように、塗布後3秒以内に、又は、ウエブ16がグラビア塗布装置10を通過してから塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、塗布層が上面となるようにウエブ16が反転されるので、有機溶媒の蒸発ガスが下方に流れ落ちる程度は少なく、その結果乾燥ムラが抑えられる。
この後に、乾燥ゾーン76、後段乾燥ゾーン176、加熱ゾーン78を経て、液晶層が形成される。更に紫外線ランプ80により液晶層を照射し、液晶を架橋させることにより、所望のポリマーが形成される。そして、このポリマーが形成されたウエブ16は巻取り機82により巻き取られる。
有機溶媒を用いた塗布液を塗布した直後の乾燥では、種々の不均一に起因する溶媒の蒸発速度の分布(ゆらぎ)によって、塗布層温度及び濃度の分布から表面張力の分布が発生し、その結果、塗布層内で流動が起きムラとなる。
そこで塗布してから塗布層の流動が停止するまでの乾燥初期の間、乾燥ゾーン76において、外部からのランダムな風の流入を阻止するとともに、塗布層近傍の溶媒濃度を常に一定に保ち、蒸発してくる溶媒ガスを均一に排除することが必要であり、既述の構成の乾燥ゾーン76が設けられる。
以上、本発明に係る塗布液の塗布乾燥方法、装置、及び光学フィルムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態では、塗布液の塗布乾燥方法、装置の用途として光学フィルムが採用されているが、これ以外の各種の塗布にも適用できる。
(実施例1)
図1に示される光学フィルムの製造ラインを使用して各種の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。ただし、図1と相違し、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用しなかった(後段乾燥ゾーン176のみ)。また、塗布手段として、グラビア塗布装置10に代えてバーコータを使用した。このバーコータは、直径が10mmの軸に太さ75μm のワイヤーを巻いたバーを備えるものである。
図1に示される光学フィルムの製造ラインを使用して各種の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。ただし、図1と相違し、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用しなかった(後段乾燥ゾーン176のみ)。また、塗布手段として、グラビア塗布装置10に代えてバーコータを使用した。このバーコータは、直径が10mmの軸に太さ75μm のワイヤーを巻いたバーを備えるものである。
ウエブ16として、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を使用した。
防眩層用の塗布液は、次のように調整した。ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)75g、粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7401、JSR(株)製)240gを、104gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に溶解した。
得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバファインケミカルズ(株)製)10gを加え、攪拌溶解した後に、20重量%の含フッ素オリゴマーのメチルエチルケトン溶液からなるフッ素界面活性剤(メガファックF−176PF、大日本インキ(株)製)0.93gを添加した(なお、この溶液を塗布、紫外線硬化させて得られた塗布膜の屈折率は1.65であった。)。
更に、この溶液に個数平均粒径2.0μm、屈折率1.61の架橋ポリスチレン粒子(SX−200HS、綜研化学(株)製)20gを、160gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散し、孔径10μm、3μm、1μmのポリプロピレン製フィルタ(それぞれPPE−10、PPE−03、PPE−01、いずれも富士写真フイルム(株)製)にて濾過して得られた分散液29gを添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して防眩層用の塗布液として調製した。
この塗布液の粘度は0.007N・s/m2 であり、表面張力は0.033N/mであり、固形分と溶媒の質量比は50/50であった。
ウエブ16を走行速度10m/分で走行させながら、バーコータにより上記の塗布液をハードコート層上に、塗布液量がウエブ16の面積1m2 当り5mlになるように塗布した。この際、バーコータと図1の下流ガイドローラ18との距離を調整し、ウエブ16がバーコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を変化させた。なお、水平面に対する角度θは、30度とした。
ウエブ16がバーコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を1〜10秒まで変化させ、5種類の試料を製造した。各試料において、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率(残存率)を測定した。この含有率は、以下に説明する1)〜6)の手順でなされる絶乾法により行った。
1)ウエブ16が下流ガイドローラ18に巻き掛けられ、ウエブ16の塗布層が上面となった状態で、塗布膜をへらを使用して速やかに掻き取る。
2)掻き取った塗布膜を速やかにガラス製の密閉容器に入れ、蓋をして密閉する。
3)ガラス製の密閉容器の重量を測定し、予め測定済みの風体重量を差し引いて、掻き取った塗布膜の重量を得る。
4)ガラス製の密閉容器の蓋を開け、105°Cにセットしたオーブンに入れて1時間乾燥させる。
5)ガラス製の密閉容器の重量を測定し、風体重量を差し引いて、乾燥後の塗布膜の重量を得る。
6)上記の3)と5)より、有機溶媒の含有率(残存率)を算出する。
また、各試料において、塗布膜のムラ状態を目視による官能検査で判定した。
以上の製造条件及び評価結果を図4の表に纏める。
塗布層が上面となるまでの時間が10秒であるNo1は、有機溶媒の残存率が20%であり、塗布膜のムラを生じていた。塗布層が上面となるまでの時間が5秒であるNo2は、有機溶媒の残存率が30%であり、塗布膜のムラを生じていた。
塗布層が上面となるまでの時間が3秒であるNo3は、有機溶媒の残存率が40%であり、塗布膜に若干のムラを生じていた。
塗布層が上面となるまでの時間が2秒であるNo4は、有機溶媒の残存率が60%であり、塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。塗布層が上面となるまでの時間が1秒であるNo5は、有機溶媒の残存率が正確には測定できなかった。この試料に塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。
以上の結果より、塗布後3秒以内、又は、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、塗布層が上面となるようにウエブ16が反転されている試料No4及びNo5の塗布膜が良好であり、これ以外の試料の塗布膜が不良となることが確認された。
なお、試料No3は、塗布後3秒で塗布層が上面となるようにウエブ16が反転されているが、このとき有機溶媒の含有率が既に50%未満となっていることより上記の結果(塗布膜に若干のムラを生じていた)となったと考えられる。
(実施例2)
実施例1と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用せず(後段乾燥ゾーン176のみ)、塗布手段としてバーコータを使用した。ウエブ16の材質及びハードコート層も実施例1と同一とした。
(実施例2)
実施例1と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用せず(後段乾燥ゾーン176のみ)、塗布手段としてバーコータを使用した。ウエブ16の材質及びハードコート層も実施例1と同一とした。
実施例1と相違する点は、塗布液を変化させたことである。この低屈折率層用の塗布液は、次のように調整した。
屈折率が1.42であり、熱架橋性含フッ素ポリマーの6重量%のメチルエチルケトン溶液(JN−7228、JSR(株)製)93gに、MEK−ST(平均粒径10nm〜20nm、固形分濃度30重量%のSiO2 ゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)8g、メチルエチルケトン94g及びシクロヘキサノン6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルタ(PPE−01)で濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
この塗布液の粘度は0.004N・s/m2 であり、表面張力は0.029N/mであり、固形分と溶媒の質量比は33/67であった。
ウエブ16を走行速度10m/分で走行させながら、バーコータにより上記の塗布液をハードコート層上に、塗布液量がウエブ16の面積1m2 当り7.5mlになるように塗布した。この際、バーコータと図1の下流ガイドローラ18との距離を調整し、ウエブ16がバーコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を変化させた。なお、水平面に対する角度θは、30度とした。
ウエブ16がバーコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を1〜10秒まで変化させ、5種類の試料を製造した。各試料において、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率(残存率)を測定した。この含有率は、既述の絶乾法により行った。
同様に、各試料において、塗布膜のムラ状態を目視による官能検査で判定した。
以上の製造条件及び評価結果を図5の表に纏める。
塗布層が上面となるまでの時間が10秒であるNo1は、有機溶媒の残存率が30%であり、塗布膜のムラを生じていた。塗布層が上面となるまでの時間が5秒であるNo2は、有機溶媒の残存率が50%であり、塗布膜のムラを生じていた。
塗布層が上面となるまでの時間が3秒であるNo3は、有機溶媒の残存率が70%であり、塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。塗布層が上面となるまでの時間が2秒であるNo4は、有機溶媒の残存率が80%であり、塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。塗布層が上面となるまでの時間が1秒であるNo5は、有機溶媒の残存率が正確には測定できなかった。この試料に塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。
以上の結果より、塗布後3秒以内、又は、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、塗布層が上面となるようにウエブ16が反転されている試料No3、No4及びNo5の塗布膜が良好であり、これ以外の試料の塗布膜が不良となることが確認された。
なお、試料No2は、塗布層が上面となった際に有機溶媒の含有率が50%となっているが、このとき塗布後既に5秒経過していることより上記の結果(塗布膜にムラを生じていた)となったと考えられる。
(実施例3)
実施例2と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用しなかった(後段乾燥ゾーン176のみ)。また、塗布手段としてバーコータに代えてダイコータを使用した。ウエブ16の材質及びハードコート層も実施例1と同一とした。
(実施例3)
実施例2と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70及び乾燥ゾーン76は使用しなかった(後段乾燥ゾーン176のみ)。また、塗布手段としてバーコータに代えてダイコータを使用した。ウエブ16の材質及びハードコート層も実施例1と同一とした。
ダイコータで塗布する塗布液は、実施例2と同一に調整した。したがって、この塗布液の粘度は0.004N・s/m2 であり、表面張力は0.029N/mであり、固形分と溶媒の質量比は33/67であった。
ウエブ16を走行速度5m/分で走行させながら、ダイコータにより上記の塗布液をハードコート層上に、塗布液量がウエブ16の面積1m2 当り7.5mlになるように塗布した。この際、ダイコータを図1における下流ガイドローラ18と乾燥ゾーン76との間に設け、ウエブ16が反転された後に塗布を行った。また、ウエブ16の水平面に対する角度θを、30、45及び90度の3段階に変化させ、3種類の試料を製造した。
各試料において、塗布膜のムラ状態を目視による官能検査で判定した。
以上の製造条件及び評価結果を図6の表に纏める。
角度θを30度としたNo1、及び、角度θを45度としたNo2に塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。
角度θを90度としたNo3には、スジ状の塗布膜のムラを生じていた。
以上の結果より、ウエブ16の水平面に対する角度θを0〜45度とする塗布条件では塗布膜が良好であり、これ以外の角度θにおける試料の塗布膜が不良となることが確認された。
(実施例4)
実施例2と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70は使用しなかった。また、塗布手段としてバーコータに代えてリバースグラビアコータを使用した。更に、図1に示される乾燥ゾーン76を使用した。
(実施例4)
実施例2と略同一の条件で光学フィルム(防眩フィルム)の製造を行った。なお、ラビング処理装置70は使用しなかった。また、塗布手段としてバーコータに代えてリバースグラビアコータを使用した。更に、図1に示される乾燥ゾーン76を使用した。
この乾燥ゾーン76において、整風板77として300メッシュで開口率30%の金網を使用した。また、ウエブ16に形成された塗布層の表面との間隔Gが10mmになるように整風板77を取り付けた。また、図3に示されるように、吸気パイプ85により排気室76C内に空気が送られ、ウエブ16の幅方向に空気が流れ、約0.5m/秒の速度の空気流76Dが形成されるようにした。なお、風速は熱線風速計により測定した。
ウエブ16の材質及びハードコート層は実施例1と同一とした。
リバースグラビアコータで塗布する塗布液は、実施例2と同一に調整した。したがって、この塗布液の粘度は0.004N・s/m2 であり、表面張力は0.029N/mであり、固形分と溶媒の質量比は33/67であった。
ウエブ16を走行速度10m/分で走行させながら、リバースグラビアコータにより上記の塗布液をハードコート層上に、塗布液量がウエブ16の面積1m2 当り7.5mlになるように塗布した。この際、リバースグラビアコータと図1の下流ガイドローラ18との距離を調整し、ウエブ16がリバースグラビアコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を変化させた。なお、水平面に対する角度θは、30度とした。
ウエブ16がバーコータを通過してからウエブ16の塗布層が上面となるまでの時間を1〜3秒まで変化させ、3種類の試料を合計5ロール製造した。各試料において、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率(残存率)を測定した。この含有率は、既述の絶乾法により行った。
同様に、各試料において、塗布膜のムラ状態を目視による官能検査で判定した。
以上の製造条件及び評価結果を図7の表に纏める。
塗布層が上面となるまでの時間が3秒であるNo1は、有機溶媒の残存率が70%であり、塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。塗布層が上面となるまでの時間が2秒であるNo2及びNo4は、有機溶媒の残存率が80%であり、塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。塗布層が上面となるまでの時間が1秒であるNo3及びNo5は、有機溶媒の残存率が正確には測定できなかった。この試料に塗布膜のムラは見られず、良好な状態であった。
以上の結果より、塗布後3秒以内、又は、塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、塗布層が上面となるようにウエブ16が反転されている試料No1〜No5の全ての塗布膜が良好であることが確認された。また、同一条件の複数の試料の全ての塗布膜が良好であることより、乾燥ゾーン76を設けた効果が確認された。
10…グラビア塗布装置、12…グラビアローラ、13…バックアップローラ、14…液受けパン、16…ウエブ、17…上流ガイドローラ、18…下流ガイドローラ、66…送り出し機、68…ガイドローラ、70…ラビング処理装置、72…ラビングローラ、74…除塵機、76…乾燥ゾーン、77…整風部材、78…加熱ゾーン、80…紫外線ランプ、82…巻取り機、176…後段乾燥ゾーン
Claims (17)
- 走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段によって塗布し、該塗布液を乾燥手段によって乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法において、
前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内に、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、前記支持体の塗布層が上面となるように、前記支持体を走行させることを特徴とする塗布液の塗布乾燥方法。 - 走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段によって塗布し、該塗布液を乾燥手段によって乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法において、
前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、前記支持体の塗布層が上面となるように、前記支持体を走行させることを特徴とする塗布液の塗布乾燥方法。 - 前記支持体を、水平面に対して0〜45度の角度をなすようにして走行させる請求項1又は2に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 前記塗布手段が、バーコータ、グラビアコータ、ファウンテンコータ、及びロールコータのいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 前記乾燥手段を、前記支持体がその内部を通過する断面矩形状のトンネル状体とし、該トンネル状体内に、その略全面に多数の貫通孔を有する板状部材を前記支持体の塗布層に対向して配置する請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布手段によって塗布し、該塗布液を乾燥手段によって乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する塗布液の塗布乾燥方法において、
前記乾燥手段を、前記支持体がその内部を通過する断面矩形状のトンネル状体とし、該トンネル状体内に、その略全面に多数の貫通孔を有する板状部材を前記支持体の塗布層に対向して配置することを特徴とする塗布液の塗布乾燥方法。 - 前記板状部材の貫通孔を経由して前記有機溶媒のガスを前記乾燥手段の外部に排出させる請求項5又は6に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 前記板状部材の貫通孔より吸引して前記有機溶媒のガスを前記乾燥手段の外部に排出させる請求項7に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 前記板状部材と前記支持体との間隔を3〜30mmとする請求項5〜8のいずれか1項に記載の塗布液の塗布乾燥方法。
- 走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布する塗布手段と、
該塗布された塗布液を乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する乾燥手段と、
を備える塗布液の塗布乾燥装置において、
前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内に、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまでに、前記支持体の塗布層が上面となるような支持体の走行手段を有することを特徴とする塗布液の塗布乾燥装置。 - 走行する帯状可撓性の支持体に有機溶媒を含む塗布液を塗布する塗布手段と、
該塗布された塗布液を乾燥させ、前記支持体に塗布層を形成する乾燥手段と、
を備える塗布液の塗布乾燥装置において、
前記支持体が前記塗布手段を通過してから3秒以内、又は、前記支持体が前記塗布手段を通過してから前記塗布液の塗布時に含有される有機溶媒に対する該有機溶媒の含有率が50%未満となるまで、のいずれか早い時間内に、前記支持体の塗布層が上面となるような支持体の走行手段を有することを特徴とする塗布液の塗布乾燥装置。 - 前記走行手段は、前記支持体が水平面に対して0〜45度の角度をなすように構成されている請求項10又は11に記載の塗布液の塗布乾燥装置。
- 前記塗布手段が、バーコータ、グラビアコータ、ファウンテンコータ、及びロールコータのいずれかである請求項10〜12のいずれか1項に記載の塗布液の塗布乾燥装置。
- 前記乾燥手段は、前記支持体がその内部を通過する断面矩形状のトンネル状体であり、該トンネル状体内に、前記支持体の塗布層に対向配置されるとともに、その略全面に多数の貫通孔を有する板状部材を有する請求項10〜13のいずれか1項に記載の塗布液の塗布乾燥装置。
- 前記板状部材と前記支持体との間隔が3〜30mmとなっている請求項14に記載の塗布液の塗布乾燥装置。
- 前記請求項1〜9のいずれかに記載の塗布液の塗布乾燥方法を使用して前記支持体に塗布層を形成したことを特徴とする光学フィルム。
- 前記塗布層において、前記塗布液の塗布時の膜厚が1〜10μmである請求項16に記載の光学フィルム。
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JP2004093649A JP2005279339A (ja) | 2004-03-26 | 2004-03-26 | 塗布液の塗布乾燥方法、装置、及び光学フィルム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009125633A (ja) * | 2007-11-21 | 2009-06-11 | Toppan Printing Co Ltd | 塗布物の製造装置および製造方法 |
JP2011005390A (ja) * | 2009-06-24 | 2011-01-13 | Toyo Seikan Kaisha Ltd | 溶剤排気システム |
KR101220219B1 (ko) | 2010-10-05 | 2013-01-21 | 에코페라 주식회사 | 표면 미세 요철이 있는 유리기판에 적용되는 저반사 코팅 방법 |
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-
2004
- 2004-03-26 JP JP2004093649A patent/JP2005279339A/ja active Pending
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