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JP2005276612A - 非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法 Download PDF

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JP2005276612A JP2004087990A JP2004087990A JP2005276612A JP 2005276612 A JP2005276612 A JP 2005276612A JP 2004087990 A JP2004087990 A JP 2004087990A JP 2004087990 A JP2004087990 A JP 2004087990A JP 2005276612 A JP2005276612 A JP 2005276612A
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Abstract

【課題】初期放電特性や、サイクル特性の向上を図りつつ、放電容量を増大させることができ、且つ、放電電位を高くすることができる非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】正極活物質を含む正極1と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極2と、非水電解質4とを備えた非水電解質電池において、上記正極活物質には、初期充電前の組成が組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、正極活物質を含む非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法に関し、特に、放電容量の増大と、放電電位の向上とを図ることができる非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法に関する。
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
上記非水電解質二次電池は、通常、リチウム含有遷移金属複合酸化物からなる正極と、リチウム金属やリチウム合金やリチウムの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネート等の有機溶媒にLiBFやLiPF等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解質とが用いられている。このような電池では、充放電に伴い、リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行う。
ここで、上記移動情報端末の多機能化による消費電力の増加に伴って、さらに高いエネルギー密度の非水電解質二次電池が要望されるようになってきている。ところが、上記従来構造の非水電解質二次電池では、正極に使用されているコバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム遷移金属複合酸化物は質量が大きく、しかも反応電子数も少ないということに起因して、単位質量当たりの容量を充分に高めることが難しく、更なる電池の高エネルギー密度化を達成するのは困難であった。このため、高容量で高エネルギー密度な正極の材料の開発が必要不可欠となっている。
このようなことを考慮して、近年、正極材料に二硫化鉄(FeS)を用いた非水電解質二次電池の研究が行われている(例えば、下記特許文献1参照)。この二硫化鉄は800mAh/gの大きな理論容量を有していることから、次世代二次電池の有望な正極材料の1つとして注目されている。
特開2003−22808号公報
上記二硫化鉄を用いた電池における放電反応は下記(化1)(化2)に示すように2段階で起こる。尚、下記(化1)の反応は2.0V(vs.Li/Li)付近で生じ、下記(化2)の反応は1.4V(vs.Li/Li)付近で生じる。
FeS+2Li→LiFeS(化1)
LiFeS+2Li→2LiS+Fe(化2)
ここで、上記二硫化鉄は上述の如く高容量であり、しかも優れた高率放電性能と低温特性とを有するので、一次電池として実用化されている。しかしながら、二硫化鉄を二次電池の正極活物質として用いると、上記(化2)の如く、LiSとFeとの2相に分離する。このように2相に分離すると、再度リチウムを離脱させてもLiFeSに復帰し難いため、サイクル特性が著しく低下する。
そこで、本願発明者らは、LiSとFeSとを1:1の割合で混合し、メカニカルミリング処理することでLiFeSを作製するという発明を先に提案した。このメカニカルミリング処理法は、遊星ボールミル等を用いて機械的エネルギーを試料に加えることで、化学反応を起こしやすくし、熱処理による合成では得られないような準安定な非晶質材料を得ることができる方法である。このメカニカルミリング処理法は合金の合成方法として研究されてきたが、最近、硫化物系の固体電解質の合成方法としても利用されており、本発明者らは正極活物質の作製にも応用しうることに想到したものである。そして、このメカニカルミリング処理法で作製したLiFeSは、LiSとFeSとを1:1の割合で混合し、熱処理することによりに得たLiFeSと比べて非晶質であると考えられるため、初期放電特性や、サイクル特性に優れているということを見出した。
しかしながら、上記メカニカルミリング処理法で作製したLiFeSであっても、充放電時にリチウムを2モル以上挿入、離脱させると、前記FeSの場合と同様、化2に示すような反応が生じる。このため、リチウムの挿入、離脱量を2モル以下となるように規制しなければならず、実際に取り出すことができる容量は理論容量(800mAh/g)の半分程度しかない。加えて、硫化物イオンは電気陰性度が小さく、陰イオン性が低いため、放電電位が2.0V程度と低くなるという課題も有していた。したがって、改良の余地がある。
そこで本発明は、上記課題を考慮したものであって、初期放電特性や、サイクル特性の向上を図りつつ、放電容量を増大させることができ、且つ、放電電位を高くすることができる非水電解質電池用正極及びその製造方法、並びに、この正極を用いた電池及びその製造方法の提供を目的としている。
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、正極活物質を含む非水電解質用正極において、上記正極活物質には、初期充電前の組成が組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていることを特徴とする。
上記構成の如く、組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていれば、酸素の原子量は硫黄の原子量に比べて小さいので、理論容量密度が高くなる。具体的には、以下に示す通りである。即ち、例えば、LiFeSとLiFeO(LiMOにおいて、MはFeであり、X=2、Y=2)とを比較した場合、硫黄の原子量は32、酸素の原子量は16であることから、両者の分子量は、それぞれ133.8,101.6となり、LiFeOのほうが分子量が小さくなる。したがって、両者とも2モルのリチウムを取り出すことができるとすると、理論容量密度はLiFeSが401mAh/g、LiFeOが528mAh/gとなるからである。
また、正極中のLiZ(上記LiFeS、LiFeOである場合、ZはFeSまたはFeOである)の放電電位は、アニオン種であるZにより決定されるが、一般に、Zの陰イオン性が高いほど高電位を示す。そして、酸素イオンは硫化物イオンに比べて電気陰性度が大きく、陰イオン性が高いために、正極活物質としてリチウム含有複合酸化物を用いた方が高電位となることが期待できる。
尚、上述のことはFeに代えて、Co、Ni等その他の遷移金属を用いた場合も同様である。
加えて、Xの値とYの値を上記のように規制するのは、以下に示す理由による。即ち、Xの値が1.5未満の場合には、得ることができる容量密度が現行用いられている正極活物質(LiFeS)よりも小さくなってしまうという理由による。また、Yの値が0.75以下の場合には、放電電位が低くなると共に、エネルギー密度が小さくなる一方、Yの値が4を超えるものは遷移金属の酸化数からみて作製が困難であるという理由による。
請求項2記載の発明は請求項1記載の発明において、LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物においてX≒2、Y≒2であることを特徴とする。
X≒2の場合には、約2モルのリチウムを取り出してもLiOとMとの2相に分離することもないので、サイクル特性が低下することがなく、且つ、約2モルのリチウムを取り出すことができるので、容量密度が増大する。
請求項3記載の発明は請求項1又は2記載の発明において、初期充電前の正極活物質が非晶質部分を含むことを特徴とする。
正極活物質として、従来から用いられている結晶性のものを用いた場合には、当初結晶性を有するものが、充放電を繰り返すにしたがって非晶質化する。このように、非晶質化するのに充放電を繰り返さなければならないため、1サイクル目から2サイクル目の間で放電容量の減少が大きく、しかもサイクル特性も悪くなる。
これに対して、上記構成の如く、初期充電前の正極活物質が非晶質部分を含んでいれば、1サイクル目から2サイクル目の間で放電容量の減少が小さく、しかもサイクル特性も向上する。
請求項4記載の発明は請求項1〜3記載の発明において、LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物のMが、Fe、Ni,Coからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項5記載の発明は、MO(Y−X/2)〔Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4、2Y>X〕と、(X/2)LiOとを、モル比1:1の割合で混合した後、メカニカルミリング処理することにより、組成式LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物を作製するステップを含むことを特徴とする。
上記方法であれば、請求項1記載の発明を容易に作製することができる。
請求項6記載の発明は請求項5記載の発明において、上記MO(Y−X/2)と、(X/2)LiOとにおいて、X≒2、Y≒2であることを特徴とする。
上記方法であれば、請求項2記載の発明を容易に作製することができる。
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項7記載の発明は、正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備えた非水電解質電池において、上記正極活物質には、初期充電前の組成が組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていることを特徴とする。
上記構成であれば、請求項1記載の発明と同様の作用効果を奏する。
請求項8記載の発明は請求項7記載の発明において、上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物においてX≒2、Y≒2であることを特徴とする。
上記構成であれば、請求項2記載の発明と同様の作用効果を奏する。
請求項9記載の発明は請求項7又は8記載の発明において、初期充電前の上記正極活物質が非晶質部分を含むことを特徴とする。
上記構成であれば、請求項3記載の発明と同様の作用効果を奏する。
請求項10記載の発明は請求項7〜9記載の発明において、上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物のMが、Fe、Ni,Coからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
請求項11記載の発明は請求項7〜10記載の発明において、上記負極活物質として炭素材料又はケイ素材料を用いることを特徴とする。
負極活物質としては、黒鉛等の炭素材料やケイ素材料を用いることができるが、本出願人の先の出願である特開2001−266851号公報及び特開2002−083594号公報に示したように、高いエネルギー密度の非水電解質電池を得るためには、容量の大きなケイ素材料を用いることが望ましい。但し、金属リチウム、リチウム合金を排除するものではなく、これらを負極活物質として用いることもできる。
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項12記載の発明は、MO(Y−X/2)〔Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4、2Y>X〕と、(X/2)LiOとを、モル比1:1の割合で混合した後、メカニカルミリング処理することにより、組成式LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物を作製する第1ステップと、上記リチウム含有複合酸化物を含む正極と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とにより電池を作製する第2ステップと、を備えたことを特徴とする。
上記方法であれば、請求項7記載の発明を容易に作製することができる。
請求項13記載の発明は請求項12記載の発明において、上記MO(Y−X/2)と、(X/2)LiOとにおいて、X≒2、Y≒2であることを特徴とする。
上記方法であれば、請求項8記載の発明を容易に作製することができる。
ここで、上述のような非水電解質電池用正極及びこの正極を用いた電池において、正極にはバインダーを添加するのが望ましく、このバインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエンラバー、カルボキシメチルセルロースから選択される少なくとも一種を用いることができる。
但し、電極に添加するバインダーの量が少な過ぎると、正極での結着力が小さくなる一方、バインダーの量が多過ぎると、正極に含まれる活物質の割合が少なくなって高エネルギー密度化を図ることができない。そのため、正極活物質含有層に閉めるバインダーの割合は、0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲内となるように規制するのが望ましい。
リチウム・鉄複合酸化物は導電性を有するので、導電剤は添加しなくても正極内における導電性はある程度確保できるが、正極の導電性をより高めるには、炭素材料等の導電剤を添加するのが望ましい。但し、その添加量が多すぎると正極活物質含有層における正極活物質の割合が減少するため高エネルギー密度の極板を得ることができない。したがって、正極活物質含有層に対する導電剤の割合は、0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%に規制するのが望ましい。
また、本明の非水溶媒としては、通常の電池用非水溶媒として用いられる、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類等を使用することができる。
上記環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられ、また、これらの水酸基の一部又は全部がフッ素化されているものも用いることが可能で、例えば、トリフルオロプロピレンカーボネート、フルオロエチルカーボネート等が挙げられる。
上記鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等が挙げられ、また、これらの水素の一部又は全部がフッ素化されているものも用いることが可能である。
上記エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ―ブチロラクトン等が挙げられる。
上記環状エーテルとしては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等が挙げられる。
上記鎖状エーテルとしては、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等が挙げられる。
上記ニトリル類としては、アセトニトリル等が挙げられ、上記アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
本発明で用いる電解質としては、一般に非水電解質電池に用いられる電解質を用いることができ、例えば、LiBF、LiPF,LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(下記化3参照)等が挙げられる。これらの電解液は一種で使用してもよく、また、2種以上組み合わせて使用してもよい。尚、この電解質は、前記非水溶媒に0.1〜1.5モル/リットル、好ましくは0.5〜1.5モル/リットルの濃度で溶解させるのが望ましい。
本発明によれば、初期放電特性や、サイクル特性の向上を図りつつ、放電容量を増大させることができ、且つ、放電電位を高くすることができるという優れた効果を奏する。
以下、この発明に係る非水電解質電池を、図1に基づいて説明する。なお、この発明における非水電解質電池は、下記の最良の形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
〔正極の作製〕
先ず、FeOとLiOとを1:1のモル比で混合し、遊星ボールミルを用いて300rpmで10時間メカニカルミリング処理を行うことにより、正極活物質である組成式LiFeO(X≒2、Y≒2)で表されるリチウム・鉄複合酸化物を作製した。
次に、上記リチウム・鉄複合酸化物を80質量%と、導電剤としてのアセチレンブラックを10質量%と、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンを10質量%とを混合した後、プレス成型を行い、更に真空雰囲気下50℃で乾燥することにより正極1を作製した。
〔負極の作製〕
リチウム金属板を所定のサイズに切り取ることにより、負極2を作製した。
〔非水電解質の調製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを30:70の体積比で混合した電解質に、リチウム塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0モル/リットルの割合で溶解させることにより非水電解質4を調製した。
〔試験セルの作製〕
図1に示すように、不活性雰囲気下において、作用極としての上記正極1と、対極としての負極2とを、セパレータ5を介して試験セル容器6内に配置し、試験セル容器6内に上記非水電解質4を注液することにより試験セルを作製した。尚、参照極3にはリチウム金属を用いた。
(実施例1)
実施例1の試験セルとしては、上記発明を実施するための最良の形態で説明した試験セルと同様にして作製したものを用いた。
このようにして作製したセルを、以下、本発明セルA1と称する。
(実施例2)
FeOの代わりにCoOを用いることにより、正極活物質である組成式LiCoO(X≒2、Y≒2)で表されるリチウム・コバルト複合酸化物を作製した他は、上記実施例1と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製したセルを、以下、本発明セルA2と称する。
(実施例3)
FeOの代わりにNiOを用いることにより、正極活物質である組成式LiNiO(X≒2、Y≒2)で表されるリチウム・ニッケル複合酸化物を作製した他は、上記実施例1と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製したセルを、以下、本発明セルA3と称する。
(比較例)
FeOとLiOとが1:1のモル比となるようにして両者を乳鉢で粉砕混合を行うことにより正極活物質を作製した他は、上記実施例1と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製したセルを、以下、比較セルXと称する。
(実験1)
上記本発明セルA1〜A3、及び比較セルXを、下記の充放電条件で充放電を行った。そして、本発明セルA1〜A3、及び比較セルXにおける1サイクル目における正極活物質1gあたりの放電容量(以下、初期放電容量密度と称する場合がある)と、平均放電電位(1サイクル目の放電における平均電位)とを調べたので、その結果を表1に示す。また、本発明セルA1、A2、A3における1サイクル目の充電特性と1サイクル目の放電特性とについても調べたので、その結果を図2(本発明セルA1)、図3(本発明セルA2)及び図4(本発明セルA3)に示す。尚、上記初期放電容量密度は、流した電流を正極活物質の重量で除することにより算出した。
・充放電条件
充電電流0.5mA/cmで、充電終止電位3.0V(Vs.Li/Li)まで充電するという条件。
放電電流0.5mA/cmで、放電終止電位1.5V(Vs.Li/Li)まで放電するという条件。
表1及び図2〜図4から明らかなように、比較セルXでは全く充放電できなかったのに対して、本発明セルA1〜A3では、それぞれ、初期放電容量密度が78mAh/g、69mAh/g、66mAh/gあることが認められた。このような結果となったのは、以下に示す理由によるものと考えられる。
即ち、比較セルXのようにFeOとLiOとを単に乳鉢で粉砕混合しただけでは、正極活物質としての役割を果たすことができないのに対して、本発明セルA1〜A3のようにFeO、CoO、或いは、NiOとLiOとをメカニカルミリング処理すると、機械的エネルギーが試料に加わるため、化学反応を起こしやすくなって、準安定な非晶質材料(組成式LiFeOに近い組成のリチウム・鉄複合酸化物、組成式LiCoOに近い組成のリチウム・コバルト複合酸化物、或いは、組成式LiNiOに近い組成のリチウム・ニッケル複合酸化物)を得ることができるという理由によるものと考えられる。
尚、組成式LiFeOで示される正極活物質の理論容量は520mAh/gである(LiCoO、LiNiOについても、これに近似した理論容量である)のに対して、本発明セルA1〜A3では初期放電容量密度が66〜78mAh/gしかないのは、未反応の出発原料(FeO、CoO、NiO及びLiO)が多量に残存しているという理由によるものと考えられる。
尚、このことを調べるべく、後述の実験2を行った。
加えて、表1から明らかなように、本発明セルA1〜A3では平均放電電位は、それぞれ、2.38V、2.32V、2.43V(vs.Li/LI)であり、LiFeSの2.01V(vs.Li/LI)よりも高くなっていることが認められる。
(実験2)
本発明セルA1に用いた正極活物質を、X線回折装置(XRD)を用いて調べたので、そのX線回折結果を図5に示す。
図5から明らかなように、LiOと酸化鉄とのピークが確認され、出発原料が多く残存していることがわかった。このため、上述の如く、実際の放電容量が理論容量より小さくなっているものと考えられる。但し、このような不都合は、メカニカルミリング処理の処理時間を長くしたり、メカニカルミリング処理終了後に焼成を行うことにより回避できるものと思われる。
また、LiOと酸化鉄とのピーク以外のピークは確認されず、それらのピーク強度が低いため、生成されたリチウム・鉄複合酸化物は非晶質になっているものと思われる。おそらく、下記化4に示すような反応により非晶質なリチウム・鉄複合酸化物が生成するものと考えられる。
FeO+LiO→LiFeO (化4)
尚、出発原料としてCoO又はNiOを用いた場合には、下記化5又は化6に示すような反応により非晶質なリチウム・コバルト複合酸化物又はリチウム・ニッケル複合酸化物が生成するものと考えられる。
CoO+LiO→LiCoO (化5)
NiO+LiO→LiNiO (化6)
(その他の事項)
上記実施例では、LiO以外の出発原料としてFeO、CoO、NiOを用いたが、これらに限定するものではなく、これら以外の遷移金属酸化物を用いることができることは勿論である。
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の駆動電源のみならず、電気自動車やハイブリッド自動車の車載用電源等の大型電池に適用することもできる。
本発明の最良の形態に係る試験セルの斜視図である。 本発明セルA1における1サイクル目の充電曲線と1サイクル目の放電曲線とを示すグラフである。 本発明セルA2における1サイクル目の充電曲線と1サイクル目の放電曲線とを示すグラフである。 本発明セルA3における1サイクル目の充電曲線と1サイクル目の放電曲線とを示すグラフである。 本発明セルA1に用いた正極活物質のX線回折グラフである。
符号の説明
1:正極
2:負極
4:非水電解質

Claims (13)

  1. 正極活物質を含む非水電解質電池用正極において、
    上記正極活物質には、初期充電前の組成が組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていることを特徴とする非水電解質電池用正極。
  2. 上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物においてX≒2、Y≒2である、請求項1記載の非水電解質電池用正極。
  3. 初期充電前の上記正極活物質が非晶質部分を含む、請求項1又は2記載の非水電解質電池用正極。
  4. 上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物のMが、Fe、Ni,Coからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3記載の非水電解質電池用正極。
  5. MO(Y−X/2)〔Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4、2Y>X〕と、(X/2)LiOとを、モル比1:1の割合で混合した後、メカニカルミリング処理することにより、組成式LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物を作製するステップを含むことを特徴とする非水電解質電池用正極の製造方法。
  6. 上記MO(Y−X/2)と、(X/2)LiOとにおいて、X≒2、Y≒2である、請求項5記載の非水電解質電池用正極の製造方法。
  7. 正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備えた非水電解質電池において、
    上記正極活物質には、初期充電前の組成が組成式LiMO(Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4)で表されるリチウム含有複合酸化物が含まれていることを特徴とする非水電解質電池。
  8. 上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物においてX≒2、Y≒2である、請求項7記載の非水電解質電池。
  9. 初期充電前の上記正極活物質が非晶質部分を含む、請求項7又は8記載の非水電解質電池。
  10. 上記LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物のMが、Fe、Ni,Coからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7〜9記載の非水電解質電池用正極。
  11. 上記負極活物質として炭素材料又はケイ素材料を用いる、請求項7〜10記載の非水電解質電池。
  12. MO(Y−X/2)〔Mは遷移金属であり、1.5≦X≦2、0.75<Y≦4、2Y>X〕と、(X/2)LiOとを、モル比1:1の割合で混合した後、メカニカルミリング処理することにより、組成式LiMOで表されるリチウム含有複合酸化物を作製する第1ステップと、
    上記リチウム含有複合酸化物を含む正極と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とにより電池を作製する第2ステップと、
    を備えたことを特徴とする非水電解質電池の製造方法。
  13. 上記MO(Y−X/2)と、(X/2)LiOとにおいて、X≒2、Y≒2である、請求項12記載の非水電解質電池の製造方法。
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