JP2005270109A - 選択方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化のための方法を提供する。
【解決手段】ペプチドの切断を触媒する分子を選択する方法であって、(a)宿主細胞集団における異なる推定上の分子、および該分子から進化した分子による出発ペプチドの切断により形成された生成ペプチドと結合する認識配列を含む選択分子を発現させ、(b)該集団中の少なくとも1つのレプリケーターおよび/または細胞が少なくとも1回の複製サイクルを受け、かつ該多数の推定上の分子がペプチドの切断を触媒する該分子へと進化するように、宿主細胞の該集団に突然変異誘発および選択条件を課して、レプリケーターまたは宿主を選択し、(c)細胞および/またはレプリケーターの増殖の増加をモニタリングして、ペプチドの切断を触媒する該分子を発現する宿主細胞を同定する、各ステップを含んでなる上記方法。
【選択図】なし
【解決手段】ペプチドの切断を触媒する分子を選択する方法であって、(a)宿主細胞集団における異なる推定上の分子、および該分子から進化した分子による出発ペプチドの切断により形成された生成ペプチドと結合する認識配列を含む選択分子を発現させ、(b)該集団中の少なくとも1つのレプリケーターおよび/または細胞が少なくとも1回の複製サイクルを受け、かつ該多数の推定上の分子がペプチドの切断を触媒する該分子へと進化するように、宿主細胞の該集団に突然変異誘発および選択条件を課して、レプリケーターまたは宿主を選択し、(c)細胞および/またはレプリケーターの増殖の増加をモニタリングして、ペプチドの切断を触媒する該分子を発現する宿主細胞を同定する、各ステップを含んでなる上記方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、遺伝子組換え技法および選択を用いて、対象基質との間で所望の相互作用を行なう新規分子を発現する遺伝子を単離し、創製し、または該遺伝子の進化を方向づける合理的方法に広く関わる。
より詳しくは、本発明は、反応物、触媒、酵素の補因子、リプレッサー、エンハンサー、ホルモンおよびバインダーとして工業用品および治療用品の多様な基質に用いられる、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、脂質および多糖類などの有機、無機、および生体分子を含む新規分子を単離し、創製し、または進化させる方法に関する。
さらに詳細には、本発明は、下記のものを発現する宿主細胞および/またはウイルスを、選択条件または進化的選択条件に付して目的の新規分子を発現する遺伝子を持つ宿主もしくはウイルスまたはそれらの変異体を選択する方法に関する:
− 対象基質またはその類似体と機能的に関連している、宿主またはウイルス用の調節された増殖因子、および
− 対象基質またはその類似体と相互作用を行なって該増殖因子の活性を変化させる可能性のある推定上の1新規分子の多数コピー、または多様な推定上の複数新規分子。
− 対象基質またはその類似体と機能的に関連している、宿主またはウイルス用の調節された増殖因子、および
− 対象基質またはその類似体と相互作用を行なって該増殖因子の活性を変化させる可能性のある推定上の1新規分子の多数コピー、または多様な推定上の複数新規分子。
本発明の方法は、広範囲な興味深い特性を有する分子、例えば種々の工業用、研究用、または治療用に使用される触媒、プロテアーゼ、結合ペプチド、酵素の補因子、エンハンサー、リプレッサー、およびホルモン等を合理的に創製するのに使用できる。
本出願では、数個の刊行物が、アラビア数字をふって括弧内で参照されている。これら参照文献の完全な引用は、明細書の終り、請求範囲の直前にある。参照文献は、本発明の属する技術の現状および本発明のある側面について、より詳しく記述している。
一般的には、新規な特性を有する分子を得る方法は3つある。第1の方法、例えばタンパク質工学は、一般的なタイプの分子の公知の特性、および所望の特性を最も持っていそうな分子のコンフォメーションを明らかにしようとする理論的モデルに依存する。いかなるモデルも、適切な分子を再現できる形で設計するのに充分に一般的または正確には実証されていない。
第2の方法はスクリーニングである。スクリーニングは、ある与えられた特性に関して、分子の多数の組み合わせを試験することを要求する。スクリーニング技術の現状と、莫大な数の異なった組み合わせは、この技術の有用性を制限する。例えば、20アミノ酸からなるペプチド配列は、2020の異なった組合わせをもつ。異なる組合わせのかなりの長さのペプチドを産生するバクテリアをスクリーニングするには、それぞれ、だいたい千個のコロニーをいれた何10億ものペトリ皿が必要となろう。このように大きな集団をスクリーニングにして、たとえあるにしても所望の特性を有するほんの数個のものを見つけ出すのは極めて非効率的である。スクリーニング技術はこのような課題の現実的な遂行には不十分である。
第3の方法は、特異的な、一般化ができない方法で自然選択を採用する。例えば、もしある単細胞生物が重大な代謝経路におけるある酵素を欠いているとすると、変異株を用いて欠けている酵素と同一の機能を有する分子を選択しようと試みることができる。しかし、この技術は、該生物のゲノムにコードされている反応およびその細胞内で補足されるかもしれない反応によって制限される。さらに、異なった補足実験のそれぞれについて、新しい変異株が必要となる。
先行技術
生物を選択する方法は当技術分野では公知である。これらの方法には、例えば細胞増殖に必須の分子を発現する生物を選択するため、宿主細胞を必須栄養素の不在下で親株が活用できない有機化合物で培養したり、または毒性類似物の存在下で培養することが含まれる。このような技術は原始的である。なぜなら、必須栄養素の不在下での増殖は、いかなる特定タイプの反応についても、また基質内のいかなる特定標的領域についても、研究者が合理的に分子選択手順を設計するのを可能にするものではない。ある必須栄養素の不在下における増殖に基づく選択圧は、それによって増殖優位性または不利性が付与される合理的に規定された選択圧が何ら課せられず、それゆえ広範囲な機能を有する種々の分子を発現することによって生き残る宿主が選択される可能性があるという点で、粗雑である。このことは、特定の所望の能力を有する分子を単離または創製する宿主の能力を減少させるので、このような方法の有用性を制限する。
先行技術
生物を選択する方法は当技術分野では公知である。これらの方法には、例えば細胞増殖に必須の分子を発現する生物を選択するため、宿主細胞を必須栄養素の不在下で親株が活用できない有機化合物で培養したり、または毒性類似物の存在下で培養することが含まれる。このような技術は原始的である。なぜなら、必須栄養素の不在下での増殖は、いかなる特定タイプの反応についても、また基質内のいかなる特定標的領域についても、研究者が合理的に分子選択手順を設計するのを可能にするものではない。ある必須栄養素の不在下における増殖に基づく選択圧は、それによって増殖優位性または不利性が付与される合理的に規定された選択圧が何ら課せられず、それゆえ広範囲な機能を有する種々の分子を発現することによって生き残る宿主が選択される可能性があるという点で、粗雑である。このことは、特定の所望の能力を有する分子を単離または創製する宿主の能力を減少させるので、このような方法の有用性を制限する。
例えば、親株が活用できない有機化合物での増殖は限定されている。なぜなら、その有機化合物を活用できるという能力だけに基づいて宿主が選択されるからである。その有機化合物の利用は、多数の異なる反応のいずれによってでも達成可能なものである。そこには特定基質内の標的領域との特異的な反応が可能な分子を、単離し、創製し、またはその進化を方向づける合理的な方法は存在しない。
Dubeら,Biochemistry,Vol.28,No.14,July 11,1989は、DNAを活性部位でランダムなヌクレオチド配列と置換することによる、β−ラクタマーゼをコードする遺伝子のリモデリングについて開示している。オリゴヌクレオチド置換は活性にとって重大なあるコドンを保存するが、百万以上のアミノ酸置換をコードする、化学的に合成されたランダム配列の塩基対を含有する。大腸菌(E.coli)の集団に、これらのランダム挿入配列を有するプラスミドを感染させ、カルベニシリンおよびこれに関連した類似体の存在下でインキュベートした。E.coli宿主をカルベニシリン耐性にする7種類の新活性部位変異株が選択され、各変異株は異なるアミノ酸をコードするマルチヌクレオチド置換を含有していた。各変異株は、温度感受性のβ−ラクタマーゼ活性を示した。Dubeらは、このように、あるクラスの酵素のすでに公知の機能を高めることに限定されている。
組換え技法と選択によって新規分子ならびにDNAおよびRNA配列を作製する方法が1985年6月17日に出願されたKauffmanら, U.K.特許出願No.GB 2183661Aに開示されている。突然変異させた遺伝子を宿主細胞に導入し、この突然変異遺伝子がクローン化されるように変化させた宿主を増殖させ、それによって該遺伝子によって発現されるタンパク質の産生を促進する。変化させた宿主細胞をスクリーニングおよび/または選択して所望の特性を有する新規タンパク質を産生する宿主細胞の株を同定し、同定した株を増殖させて所望の特性を有する新規分子を産生させる。Kauffmanらの教示する技法は、Dubeらのものと同様、あるクラスの分子の公知機能を変化させる方法に限定されている。
Schatzら, Cell, Vol.53, pp.107-115 (1988) は、リコンビナーゼ(recombinase)活性が知られているある酵素をコードする遺伝子を発現可能な繊維芽細胞系の同定方法を開示している。この方法は、広く分離した遺伝子断片を一緒につなぎ合わせて完全な可変領域を形成する体細胞組換え方法に基づいている。[この可変領域は、V(可変)断片,J(参加)断片およびある場合にはD(変化)断片から秩序だった高度に規則的な方法で組み立てられる。]繊維芽にV(D)J再編成を行なう能力を安定的に付与するため、遺伝子導入が用いられている。
リコンビナーゼ遺伝子、すなわちV(D)J組換えにおいてある役割を果す酵素を発現する遺伝子をコードする遺伝子ライブラリーからなる、レトロウイルスに基づくDNA組換え基質を、リコンビナーゼ認識配列が側面に位置した増殖因子を発現する遺伝子を有する宿主細胞にトランスフェクトした。最初は増殖因子を発現する遺伝子は転写も翻訳もされなかった。しかし、リコンビナーゼとリコンビナーゼ認識配列の相互作用によりリコンビナーゼ活性が発現されると、増殖因子の転写および翻訳は活性化された。
Bockら, Nature, Vol.355,pp.564-567 (1992)は、新規機能を有するDNA分子を選択する試みを報告している。確率論的に作製された、特定の標的分子を結合することのできるオリゴヌクレオチドであるアプタマー(aptamer)を無細胞選択法で選択した。核酸結合機能が全く知られていないタンパク質であるヒトトロンビンを結合するアプタマーについて、一本鎖DNAをスクリーニングすることができる。実際に無細胞スクリーニング方法を構成するこれらの過程は、スクリーニングおよびサブ集団のあるメンバーの増幅を含む。その他のメンバーは捨てられる。
Curtiss のPCT 出願No. WO89/03427は、組換え遺伝子を宿主細胞の中で発現させる方法および技法を開示している。Curtiss は、遺伝子的に安定した集団の中で維持されているゆえに所望の遺伝子産物を発現する、遺伝子工学的に処理された細胞を開示している。その遺伝子工学的に処理された細胞は以下の特徴を有する:
(1)細胞壁の成長に必須な酵素をコードする遺伝子の欠失、すなわち、必須な細胞壁構造成分の生合成における1段階で触媒作用をすることができない;
(2)第1の組換え遺伝子は、細胞壁の成長に必須な酵素の機能的置換物である酵素をコードしている;そして
(3)第2の組換え遺伝子は、上記第1の組換え遺伝子と物理的に結合している所望のポリペプチドをコードしている。
第1の組換え遺伝子の喪失は、この遺伝子が発現する産物の無い環境に細胞が置かれた時、溶菌を引き起こし、またこの第1の組換え遺伝子が無い環境で培養された細胞に溶菌を引き起こす。
(1)細胞壁の成長に必須な酵素をコードする遺伝子の欠失、すなわち、必須な細胞壁構造成分の生合成における1段階で触媒作用をすることができない;
(2)第1の組換え遺伝子は、細胞壁の成長に必須な酵素の機能的置換物である酵素をコードしている;そして
(3)第2の組換え遺伝子は、上記第1の組換え遺伝子と物理的に結合している所望のポリペプチドをコードしている。
第1の組換え遺伝子の喪失は、この遺伝子が発現する産物の無い環境に細胞が置かれた時、溶菌を引き起こし、またこの第1の組換え遺伝子が無い環境で培養された細胞に溶菌を引き起こす。
Baumら,Proc. Natl. Acad. Sci., (USA), Vol.87, pp.10023-10027(1990)は、種々のプロテアーゼによる切断相互作用をモニターする方法に関するものである。プロテアーゼ切断部位、例えばデカペプチドヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ認識配列をE.coliのβ−ガラクトシダーゼの特定部位に挿入することにより融合構築体を創製する。切断部位の挿入にも関わらずその酵素活性を保持しているこれら構築体遺伝子を、野生型および変異体HIVプロテアーゼをそれぞれコードするプラスミド中にサブクローニングする。融合構築体は、in vivo 実験においてもin vitro実験においても、野生型HIVプロテアーゼによって切断されるが、変異体HIVプロテアーゼによっては切断されないことが分かった。
HIVプロテアーゼによる切断の結果、変化したβ−ガラクトシダーゼは不活性化される。切断反応は、HIVプロテアーゼの公知のインヒビターであるペプスタチンAによって阻害される。ポリオプロテアーゼ切断部位を用いて類似構築体が開発され、これはポリオプロテアーゼによって切断された。
Paolettiら, 米国特許第4,769,330号は、ワクシニア変異株を作製するために、特にワクシニアのゲノムに外来DNAを導入することによってワクシニアのゲノムを変化させる方法を開示している。DNA配列および中間体としてこの方法に関与した変化していない微生物および遺伝子的に変化した微生物が開示されており、また細胞および宿主動物をワクシニア変異株に感染させ、外来DNAとこれによってコードされるタンパク質を増幅する方法も開示されている。この参照文献は、ウイルスと宿主細胞微生物の両方を変化させるのに用いる公知の組換え技法の代表的なものである。
Murphy, 米国特許第5,080,898号は、毒素分子類似体の作製における組換えDNA技法の使用、および医学的障害を治療するための該類似体分子の使用に関する。その毒素分子は、それがペプチドであろうとなかろうと、いかなる特異的結合リガンドとも、どの毒素分子にとってもあらかじめ定まっている同一のある位置で結合できる。
Andersonら, 米国特許第4,403,035号は、ハイブリッドDNAタンパク質複合体をウイルスベクター内にパッケージし、次にこの遺伝情報をハイブリッドウイルスから感染しやすい微生物に導入することによる遺伝子情報の送達および導入方法を開示している。導入が望まれる機能または能力を有する生物を選択し、そのDNAを単離/精製し切断して、所望の機能を制御する外来遺伝子を分離して、導入またはクローン化できるようにする。これらの外来DNAをウイルスのDNAに挿入する。こうして得たハイブリッドDNAタンパク質を、ウイルスキャプシド前駆体構造の資源、すなわちプロヘッド(prohead)、およびハイブリッドDNAをキャプシドで包む伝染性ハイブリッドウイルスを組み立てるために必要な付加的ウイルス構造タンパク質およびパッケージングタンパク質と共に無細胞in vitro培地に導入する。
ウイルスキャプシド前駆体構造、および付加的ウイルス構造タンパク質とパッケージングタンパク質が、感受性のある微生物をウイルスキャプシド前駆体構造を産生できるが最低1個のパッケージングタンパク質も産生しない第1のウイルス変異株で感染させ、また適合性の微生物を付加的ウイルス構造タンパク質とパッケージングタンパク質を産生できるがキャプシド前駆体構造を産生しない第2のウイルス変異株によって感染させることよって産生される。次に、感染した細胞を混合し、溶菌して、ハイブリッドDNAタンパク質のin vitroパッケージングのためのウイルス成分資源を提供する。
次に、ハイブリッドウイルスを、このウイルスに対して適合性の微生物に感染させ、感染細胞が外来遺伝子の所望される機能および該遺伝子そのものを核酸として連続的に再生産するようにプログラムする。
Dulbecco, 米国特許第4,593,002号は、DNA断片をウイルスのDNA遺伝子に組み込む方法を開示している。DNA断片は、特定の医学的用途または商業的用途をもつタンパク質をコードしている。もとのタンパク質の小断片で所望の機能を示すものを同定し、そのタンパク質断片をコードするヌクレオチド塩基配列を有するDNA断片を生物または化学的合成物から単離/精製する。単離/精製したDNA断片は、挿入されたDNA断片がウイルス表面タンパク質の外来部分として発現するように、またタンパク質断片の機能もウイルスの複製にとって重要ないかなるウイルスタンパク質の機能も損なわれないように、ウイルスのDNAゲノムに挿入する。
先行技術の方法はいずれも、選択した対象基質に対して特異的な機能を有する新規分子の単離、創製または方向づけられた進化による創製のための選択プロセスを採用した合理的な方法を提供するものではない。スクリーニング法は生得的に効率が悪く、無駄が多く、時間がかかる。先行技術が開示する原始的な選択方法は、例えばバインダーとしてまたは触媒として特定の認識配列に対して高度な特異性を有する分子の創製を可能とはしない。それらの方法は、限定された特性の限定された数の分子を創製するだけである。さらに、先行技術参照文献のどれも、適用性において普遍的な方法は教示していない。先行技術には、各々が対象基質に対して合理的に設計された活性を有する異なる分子を発現する複数遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化のための方法はない。
よって、対象基質との相互作用が可能な新規分子を創製することが本発明の第1の目的である。
また、本発明の関連目的は、反応物、触媒、酵素の補因子、リプレッサー、エンハンサー、ホルモンおよび基質のバインダーとして使用する新規分子を、先行技術のタンパク質工学、スクリーニングおよび選択法に比較的多く伴なう時間のロス、努力、失敗を避けながら創製することである。
本発明のもう1つの目的は、広範囲な対象基質に対して新機能または改善された公知機能を有するまだ知られていない分子の生
産に、選択プロセスと遺伝子組換え技法を利用することである。
産に、選択プロセスと遺伝子組換え技法を利用することである。
さらに本発明のもう1つの関連目的は、新規分子を発現する遺伝子を、新規分子の相互作用的特異性をその特異的対象基質に適合させることによって既存の遺伝子プールから単離することである。
さらに、本発明のもう1つの関連目的は、対象基質と相互作用を有する新規分子を、対象基質の認識配列を組み込んだ特異的発現性分子を用いる選択に基づく方法の合理的な設計によって創製することである。
さらに、本発明のもう1つの関連目的は、目的の新規分子を発現する遺伝子の選択にあたって、細胞およびウイルスゲノムの迅速な複製を利用することである。
さらに、本発明のもう1つの目的は、細胞系およびウイルス系に対する進化圧を制御および管理して、対象基質との間でこれまで知られていない物理的および/または化学的相互作用を行なう目的の新規分子を発現する遺伝子を創製し進化させることである。
本発明は、対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化のための合理的な方法に広く関わる。この方法は、新規分子をコードする宿主または宿主中のレプリケーターの選択を含み、この選択は該新規分子と該宿主によって発現される選択分子の所望の相互作用によってもたらされる細胞またはレプリケーターの増殖に基づくものである。この方法は、細胞増殖因子および/またはレプリケーター(例えばウイルス)増殖因子、および該増殖因子と機能的に関連している対象基質またはその類似体を含有する宿主細胞の集団中に、推定上の新規分子の多数コピーまたは多様な異なる推定上の新規分子を発現させ、この宿主細胞集団に選択条件を課して、対象基質またはその類似体と相互作用して該増殖因子の活性を変える新規分子を発現している宿主またはレプリケーターを選択することによって実行される。
本発明はまた、本発明に使用する変化させた宿主細胞、変化させたレプリケーター、本発明の方法を実施するために使用するある種の選択分子、本発明の方法によって産生される遺伝子および新規分子、および本発明を実施するのに有効なシステムおよびキットに関する。
宿主選択法
対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化は、下記のステップによって実行することができる:
− 宿主細胞の集団中に、推定上の新規分子の多数コピーまたは多様な推定上の新規分子を発現させ;
− 増殖因子、対象基質に対応する認識配列を有し該増殖因子と機能的に関連している対象基質またはその類似体、および随意選択により増殖因子調節部分を加えるかまたは発現させ;
− 宿主細胞集団に選択条件を課して、該認識配列と相互作用を行ない増殖因子の活性を変化させる新規分子を発現できる遺伝子を持つ宿主を選択する。
宿主選択法
対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化は、下記のステップによって実行することができる:
− 宿主細胞の集団中に、推定上の新規分子の多数コピーまたは多様な推定上の新規分子を発現させ;
− 増殖因子、対象基質に対応する認識配列を有し該増殖因子と機能的に関連している対象基質またはその類似体、および随意選択により増殖因子調節部分を加えるかまたは発現させ;
− 宿主細胞集団に選択条件を課して、該認識配列と相互作用を行ない増殖因子の活性を変化させる新規分子を発現できる遺伝子を持つ宿主を選択する。
推定上の新規分子を発現させる順序、および増殖因子、対象基質またはその類似体、ならびに調節部分の発現および/または付加における相互間の順序および推定上の新規分子の発現に比較しての順序、およびこのような過程のいずれについても選択プロセスのタイミングは、選択事項である。ある実施形態においては、後の選択にそなえて所望の宿主株またはレプリケーター株を開発するために、増殖因子、認識配列または調節部分、あるいはこれらを組み込んだ選択分子を発現するように宿主またはレプリケーターを変化させる前に、宿主またはレプリケーターの集団に選択条件を課する方が有利なことがある。
本発明の方法は、下記のようにして実行することができる:
− 推定上の新規分子の多数コピーを発現可能な遺伝子の同種集団、または多様な異なる推定上の新規分子あるいは進化上の可能性を有する分子を発現可能な遺伝子の異種集団を、細胞増殖因子および、対象基質に対応して該増殖因子と機能的に関連している認識配列を発現するように人工的にそのゲノムを変化させた宿主細胞の集団に導入し;
− 選択条件を課して(例えば、宿主細胞集団を選択条件下で培養またはインキュベートする)、認識配列と相互作用して増殖因子の活性を変える新規分子を発現することのできる遺伝子を持つ宿主を選択し;
− 目的の遺伝子を選択した細胞集団から単離/精製する。
この目的遺伝子は、次に、付加的な多量の新規分子を発現させるのに使用することができる。
− 推定上の新規分子の多数コピーを発現可能な遺伝子の同種集団、または多様な異なる推定上の新規分子あるいは進化上の可能性を有する分子を発現可能な遺伝子の異種集団を、細胞増殖因子および、対象基質に対応して該増殖因子と機能的に関連している認識配列を発現するように人工的にそのゲノムを変化させた宿主細胞の集団に導入し;
− 選択条件を課して(例えば、宿主細胞集団を選択条件下で培養またはインキュベートする)、認識配列と相互作用して増殖因子の活性を変える新規分子を発現することのできる遺伝子を持つ宿主を選択し;
− 目的の遺伝子を選択した細胞集団から単離/精製する。
この目的遺伝子は、次に、付加的な多量の新規分子を発現させるのに使用することができる。
増殖因子と認識配列は、個別の分子または分子グループとして存在してもよいし、または両者を組み込んだ分子中に一緒に存在してもよい。宿主細胞、例えばE.coliは、外部から増殖因子および/または認識配列を加えて変化させてもよいし、または増殖因子および/または認識配列を宿主細胞に発現させてもよい。宿主細胞集団に選択条件を課することによって、認識配列と所望の相互作用を行ない、それによって増殖因子の活性に影響を及ぼす新規分子を発現することのできる遺伝子またはその変異体を持つ宿主の選択が可能である。
レプリケーター選択法
対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化は、次のようにして実行することも可能である。すなわち、レプリケーター(例えばウイルス)がコードする推定上の新規分子の多数コピーまたは多様な異なる推定上の新規分子を、レプリケーター用の増殖因子および対象基質に対応する認識配列を組み込んだ該増殖因子と機能的に関連している対象基質またはその類似体、および随意選択による増殖因子調節部分を含有または発現する宿主細胞の集団中で発現させ、宿主細胞集団に選択条件を課して、該認識配列と相互作用を行ない、増殖因子の活性を変化させる、新規分子を発現できるレプリケーター、例えばウイルス、を選択する。
レプリケーター選択法
対象基質と所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化は、次のようにして実行することも可能である。すなわち、レプリケーター(例えばウイルス)がコードする推定上の新規分子の多数コピーまたは多様な異なる推定上の新規分子を、レプリケーター用の増殖因子および対象基質に対応する認識配列を組み込んだ該増殖因子と機能的に関連している対象基質またはその類似体、および随意選択による増殖因子調節部分を含有または発現する宿主細胞の集団中で発現させ、宿主細胞集団に選択条件を課して、該認識配列と相互作用を行ない、増殖因子の活性を変化させる、新規分子を発現できるレプリケーター、例えばウイルス、を選択する。
これらの方法は、例えば、ウイルスなどのレプリケーターを、人工的にゲノムを変化させて該ウイルス用の増殖因子および対象基質に対応し該増殖因子と機能的に関連している認識配列を発現するようにした宿主細胞の集団に導入し、該宿主細胞集団を培養またはインキュベートして認識配列と相互作用して増殖因子の活性を変える新規分子を発現することのできるウイルスを選択し、目的の遺伝子を単離/精製することにより実施できる。宿主選択方法と同様、この方法においても、上記の過程における数個の成分の発現および/または付加の順序、および選択条件を課する時期に比較しての発現および/または付加の順序は選択事項である。
このような方法においては、推定上の新規分子の多数コピーを発現する同種ウイルス集団、またはその各々が異なる推定上の新規分子を発現しうる多様な変異遺伝子を含有する異種ウイルス集団を、該ウイルスの増殖および/または複製に必要な機能を弱めた増殖因子および上述の認識配列を含有する変化させた宿主細胞集団に導入する。認識配列と相互作用を行ない、それによって増殖因子の活性を強める新規分子を発現するウイルスは宿主内で複製されるであろう。所望の相互作用をもたない新規分子を発現するウイルスは複製されないであろう。次に、宿主細胞を選択条件下でインキュベートまたは培養して、目的の新規分子を発現する
ウイルス集団を選択することができる。
ウイルス集団を選択することができる。
望ましい方法においては、宿主細胞のゲノムを人工的に変化させて、増殖因子および対象基質に対応し機能的に増殖因子と関連している認識配列を含む分子または複数の分子を発現させる。次に宿主細胞集団を、宿主細胞の組換え型ゲノムによって発現される選択分子と相互作用ができる分子の多数コピー、またはそのような多様な相異なる分子を発現できるゲノムをもつレプリケーター(例えばウイルス)に感染させる。認識配列と相互作用をして増殖因子の機能を変えるこれらの新規分子は、この選り抜きの新規分子を発現するウイルスに選択的増殖優位性を付与する。次に、宿主細胞集団を培養またはインキュベートして、所望のウイルスの増幅した集団を得ることができる。
宿主選択の場合と同様、宿主細胞のゲノムは、増殖因子および認識配列を個別の分子としてまたはそれらの物理的または化学的な連合または組み合わせとして発現するよう、人工的に変えられる。認識配列は対象基質を表わし、レプリケーターの増殖因子と機能的に関連している。望ましくは、宿主細胞のゲノムを遺伝子組換え技法によって変えて、選択分子、すなわち増殖因子と認識配列の両方を含む融合タンパク質または欠失タンパク質を発現させるのがよい。増殖因子および認識配列は増殖因子の活性を調節する選択部分を伴なっていてもよい。この選択部分は独立した分子であることもあるし、それ自身が増殖因子および認識配列を含む選択分子(例えば融合タンパク質や欠失タンパク質)の一部であることもある。
獲得される新規分子は、できごとのカスケードを通して作用することがある。すなわち、この分子は認識配列と相互作用を行なって所望の効果を引き起こすかもしれないし、またはその相互作用が中間段階のいずれかでできごとのカスケードをスタートさせ、それが最終的に増殖因子の活性に影響を及ぼすかもしれない。そのカスケードにおける各分子は、宿主細胞中の天然の基質または工学的に処理された基質、または外部から供給された基質、またはそれ自体が新規分子でありうる。
本発明の宿主選択法およびレプリケーター選択法は、広範囲な新規分子、例えばプロテアーゼ認識配列と所望の相互作用が可能な新規プロテアーゼ等の創製に用いることができる。プロテアーゼ以外の分子も作製可能である。例えば、特にグリコシル化(またはリン酸化、等)に敏感で、かつ認識配列の挿入を許す、増殖にとって重要な細胞タンパク質の周辺で部位特異的グリコシル化(またはリン酸化、等)の可能な酵素を創製できる。
普遍的選択方法は、事実上任意の化合物の形成を細胞の増殖に結びつける。例えば、A+B→Cという反応(Xに触媒される)において、たとえCが細胞の増殖に何ら直接的または間接的影響を及ぼさなくても、Cの生成を細胞の増殖に結びつけ、推定上の新規化合物の集団からその反応(反応型がなんであろうと)を触媒できるもの、基質として作用できるもの、または産物Cそれ自体として作用できるもの、つまり何らかの方法でCの生成に寄与するように働けるものを選択することができる。
本発明は従来技術に比べ有意な利点を提供する。本発明はスクリーニングに優る固有の効率向上を提供し、重荷を実験者ではなく実験システムに負わせる。選択においては、環境条件が集団のどのメンバーが増殖しうるかを決定する。選択手順と条件を適切に定めることにより、所望の特性を有するクローンを巨大な集団から得ることが可能である。本発明の選択手順は、その各々が与えられた認識配列と相互作用について高度に特異的である莫大な新規分子を得るのに使用できるという利点を有する。対照的に、原始的選択方法は粗雑で経験主義的である。
発明定義の詳細な説明
ここで用いている用語・表現のいくつかは、以下のように定義される:
「単離」という用語は、既存の遺伝子プールから天然に存在するある遺伝子をもってくることを意味する。
発明定義の詳細な説明
ここで用いている用語・表現のいくつかは、以下のように定義される:
「単離」という用語は、既存の遺伝子プールから天然に存在するある遺伝子をもってくることを意味する。
「創製」という用語は、天然には存在しない、新規分子をコードする遺伝子を産することを意味する。
「方向づけられた進化」および「方向づけられた進化による創製」という表現は、天然には存在しない、新規分子をコードする遺伝子を、合理的に設計した選択条件および選択圧のもとで遺伝子を突然変異させて産することを意味する。
「新しい機能の新規分子」という表現は、これまでに知られていない構造かつ/または配列かつ/または物理・化学的特性を有し、またこれまでに知られていないまたは実現されていない反応型(例えばリン酸化、タンパク質分解、結合等)および/または特異性を有する分子をすべて包含する。
「機能的に増殖された新規分子」という表現は、これまでに知られていない構造かつ/または配列かつ/または物理・化学的特性を有する分子で、その機能すなわちリン酸化、タンパク質分解、結合などの反応型の組み合わせは公知であるか実現されているが、公知機能の程度において異なっている分子を包含する。
「新規分子」という用語は、これまでに知られていない構造かつ/または配列かつ/または物理・化学的特性を有する任意の分子、または新しい機能を有する新規分子、または機能的に強化された新規分子を含み、ここには核酸、タンパク質、オリゴヌクレオチド、糖類、脂質、ペプチド、およびこれらの置換または修飾されたもの等の有機、無機および生体分子が含まれる。
「推定上の新規分子」、「推定上の機能的に増殖された新規分子」または「新しい機能を有する推定上の新規分子」という表現は、公知であろうとなかろうと、当業者が本発明の方法による単離、創製または方向づけられた進化の候補と考える任意の分子を意味する。
「対象基質」という用語は、公知であろうとなかろうと、その上で化学的および/または物理的相互作用が起こることが所望されている任意の天然に存在する分子または合成分子を含む。対象基質は、例えばタンパク質、オリゴヌクレオチド、脂質および多糖類等の有機または無機分子、または生体分子からなってもよい。対象基質は、例えば酵素反応、ペプチド、ポリペプチド、および種々のタンパク質の公知の基質である化合物で、新規分子によって反応を起こされ、切断され、繋ぎ合わされ、修飾または置換され、または結合されるものを含む。
「対象基質の類似体」という用語は、その分子を対象基質の機能的類似体とする認識配列を含有する分子またはその1部を意味する。
「遺伝子」という用語は、その最も広い、一般的に理解されている意味で使われており、発現可能な任意の核酸、例えばオリゴヌクレオチド(DNA、RNA,等)を含み、さらに遺伝子の組み合わせまたはセットをも含む。
「ゲノム」という用語は、染色体遺伝子、プラスミド、トランスポゾンおよびウイルスDNAを含む、発現され得る遺伝子の単相の1セットすべてを言う。
「発現」という用語は、一般的に理解されている科学的な意味を有し、オリゴヌクレオチドの複製、転写、翻訳および逆転写を含む。
「宿主による発現」という表現は、宿主ゲノムの任意の部分による発現を意味する。
「相互作用」および「相互作用が可能な」という表現は、化学反応、触媒作用または物理的結合を含む任意の分子間および/または分子内作用を広く包含する。本発明の方法によって創製される新規分子は、例えば異性化、付加、置換、合成および崩壊、等を含む任意の反応において、認識配列と反応可能であってもよい。他の興味ある「相互作用」には、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、(脱)水酸化、(脱)アデニル化、(脱)アシル化、(脱)アセチル化および立体異性化が含まれる。このような反応は、新規分子と認識配列の間の相互作用に限定されることもあるし、またはそれぞれ新規分子および/もしくは認識配列からの、ならびに/または、それぞれ宿主細胞もしくは培地からの原子もしくは分子の付加もしくは欠失を含むこともある。相互作用は触媒作用をも含み、ここでは新規分子は認識配列に触媒的に作用して特にタンパク質分解、エステル分解、加水分解、立体異性化をもたらすか、または上記の反応のうちいずれかをもたらす。相互作用という用語はまた、抗体と抗原との間にみられるような結合相互作用または結合によって誘導されるアロステリック効果も包含する。
「宿主細胞」という用語は、単細胞、多細胞、原核または真核の生きている生物を含み、例えば酵母、COS細胞、CHO細胞またはハイブリドーマ細胞等があげられる。
ここで使用する「増殖因子」という用語は、宿主細胞またはレプリケーターに増殖優位性または不利性を付与する分子である。典型的な増殖因子には、栄養素、栄養素の代謝に必要な酵素、結合および構造タンパク質、および複製、代謝、必須構造成分の形成および維持、または細胞および細胞下増殖に関与するタンパク質が含まれる。
「認識配列」という用語は、その最も普遍的な化学的意味で用いられており、任意の化学的原子、結合、分子、分子下グループ、これらのいずれかの組み合わせ、またはこれらの任意の物理的もしくは電気的状態または配置を意味する。例えばアミノ酸配列があげられる。認識配列は独立した分子であってもよいし、または増殖因子および/または選択部分を包含する複合分子の分子下部分であってもよい。認識配列は、増殖因子および/または選択部分と直接または間接に何らかの機能的相互作用を有することが不可欠である。例えば、新規分子と認識配列の間で所望の相互作用が起こると、増殖因子の機能が影響を受け、細胞またはレプリケーターの増殖に(積極的または否定的)衝撃を与えるというような相互作用である。認識配列および/または選択部分の機能および/または構造は、結合していてもよく、また認識配列および
/または増殖因子の機能および/または構造も結合していてよい。
以下にさらに述べるように、融合または欠失タンパク質は本発明の選択方法に特に有用であり、単一分子に全ての3つの機能が結合されている実施形態を示す。
/または増殖因子の機能および/または構造も結合していてよい。
以下にさらに述べるように、融合または欠失タンパク質は本発明の選択方法に特に有用であり、単一分子に全ての3つの機能が結合されている実施形態を示す。
認識配列の修正は、多数の新規分子の選択を可能とする。例えば、対象基質である大きいタンパク質は、その機能を失う事なく一続きのアミノ酸の挿入または置換に耐えることができるかもしれない(29)。このようなタンパク質には、所望の特異性をもつ多数のプロテアーゼを得るために、異なった複数の潜在的タンパク質分解認識配列を挿入することが可能である。
また、認識配列は対象基質に対応することが不可欠である。例えば認識配列は、それについてはタンパク質分解酵素が知られていない、または十分なタンパク質分解酵素が存在しないタンパク質由来のアミノ酸配列でありうる。このアミノ酸配列またはその類似体を認識配列として本発明の方法に基づいて組込むと、そのアミノ酸配列のタンパク質分解に対して特異性および/または高い代謝回転を有する新規分子が創製される。
「選択部分」または「調節部分」という用語は、増殖因子と物理的または化学的に連合して、直接または間接に、該増殖因子の機能を高めるか、または低下させる任意の分子をさす。選択部分は、例えば、立体障害およびコンフォメーションの変化によって、細胞またはウイルスの増殖に必要な酵素を不活性化したりまたはその機能を損なう大きなタンパク質であってもよい。
「選択分子」または「普遍的選択分子」という用語は、増殖因子、認識配列、および随意選択により調節部分を組み込んだ分子をさす。
「人工的選択分子」という用語は、天然のまたは合成した増殖因子に固有のものではない認識配列を有する、考案された選択分子を意味する。
「レプリケーター」という用語は、複製可能な細胞下の存在をさす。例えば、レプリカーゼ、マイコプラズマ等に対する認識配列を有するプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、RNA分子のような自己複製オリゴヌクレオチド、等である。レプリケーター発現とは、レプリケーターによって宿主および/またはレプリケーター成分を介して行なわれた発現をさす。
「選択」、「選択条件」および「選択圧」という用語は、親株式会社には利用できない化合物のため必須栄養素が存在しないときにおいて、温度、光、pH塔、種々の特殊な環境条件中の毒素の存在下において、または混合培養物の存在下において、宿主細胞集団をその全メンバーではなくあるメンバーだけを生き残らせ複製させるようなものとして、増殖させる周知の手順ならびに新規な手順をさす。
「ヌクレオチド」は、5種類の塩基、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルに1個の糖、デオキシリボースまたはリボース、およびリン酸塩が1個ついたものである。
「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2個のヌクレオチドによって形成される配列で、また「ポリヌクレオチド」は長いオリゴヌクレオチドで、RNAかDNAであり修飾塩基を含む場合と含まない場合がある。当技術分野ではオリゴヌクレオチドという用語は一般に比較的短い核酸鎖を表すのに使用され、他方ポリヌクレオチドという用語は一般にDNAまたはRNA染色体またはその断片を含む比較的長い核酸鎖を表すのに使用されているが、ここではこれらの用語の使用に、長さによる限定はなく、特に明記したところ以外は長さの記載はない。
「核酸」という用語は、DNAまたはRNAゲノムまたはそれらの断片を含む任意の長さのポリヌクレオチドをさし、上記のように修飾塩基を含む場合と含まない場合がある。
「単離/精製」という用語は、単離、精製または抽出の技法をさし、これらの用語が通常使用されているのと同じように、遺伝子または分子を細胞および/またはレプリケーターおよび/または培地から回収する方法を言う。
「突然変異誘発」という用語は、例えば放射線照射、化学的処理、低忠実度の複製などによって、遺伝子の同種集団を創製する技法をさす。
図面の説明
図1Aおよび1Bは、新規分子をコードする遺伝子の創製、または該遺伝子の方向づけられた進化のための本発明の宿主選択方法の実施形態を図示したものである。
図面の説明
図1Aおよび1Bは、新規分子をコードする遺伝子の創製、または該遺伝子の方向づけられた進化のための本発明の宿主選択方法の実施形態を図示したものである。
図2A、2Bおよび2Cは、新規分子をコードする遺伝子の創製、または該遺伝子の方向づけられた進化のための本発明のウイルスレプリケーターの実施形態を図示したものである。
図3Aおよび3Bは、結合相互作用に基づく新規ヒドロキシラーゼの創製、または該ヒドロキシラーゼの方向づけられた進化のための本発明のさらなる実施形態を図示したものである。
図4Aおよび4Bは、本発明の無細胞の実施形態を図示したものである。
図1Aおよび1Bにおいて、参照番号10は染色体12を有する宿主細胞(E.coli)を表す。宿主細胞を別途記載するように工学的に処理して、ある必須増殖因子を発現する能力を欠く欠失変異株14を作製する。E.coli欠失変異株14を、さらに工学的に処理して、参照番号16に示すように、弱く調節された宿主細胞用の上記必須増殖因子および認識配列を組み込んだ選択分子をコードさせる。
参照番号18はプラスミドを表わし、これを参照番号20に示すようにT7バクテリオファージの複製起点と低忠実度のT7複製機構をコードするよう工学的に処理する。プラスミド20をさらに工学的に処理して、推定上の複数新規分子を発現する複数遺伝子の異種集団をコードするようにする。このようにして工学的に作製したプラスミドは参照番号22で示される。
プラスミド22を形質転換された欠損変異株宿主16に導入し、これを参照番号24に示すように適切な環境で栄養素の豊富な非制限培地で培養する。欠失変異株宿主16によって発現される選択分子との間で所望の機能的相互作用を行なう新規分子を発現するプラスミドは、参照番号26で示される。
インキュベーター24により栄養素の豊富な非制限培地で培養すると、プラスミド22およびプラスミド26を含有する宿主細胞16の集団が増殖する。形質変換された宿主細胞の集団は参照番号30で示される。
培養した宿主細胞の集団を、次にケモスタットに入れ栄養素制限培地中で選択する。これは、選択分子と相互作用を行ない、かつ増殖因子を強めるという所望の機能を有する新規分子をコードするプラスミド26を含有している形質転換宿主細胞16に、増殖優位性を付与する。選択された宿主細胞集団を参照番号32で示す。図から分かるように、上記した所望の機能を有する新規分子をコードするプラスミドを含有する細胞は、選択的増殖優位性を有していた。
次にプラスミド26を、選択された細胞集団32から単離/精製する。新規分子の遺伝子をクローン化し、配列決定を行ない、機能的特徴づけを行う。
図2A、2Bおよび2Cについては、参照番号50は機能的T7バクテリオファージ遺伝子を含有するプラスミドを表わす。プラスミド50を、染色体54を有するE.coli宿主細胞52に導入する。形質転換された宿主を参照番号56で示す。
野性型T7バクテリオファージを参照番号58で示す。レプリケーターの増殖または複製に必須な増殖因子をコードしていない欠失変異株バクテリオファージの集団60を工学的に処理して、推定上の複数新規分子をコードするようにさせる。
T7欠失変異株の異種集団を、この欠失変異株の機能を補う形質変換宿主細胞56に導入し、これら欠失変異株の集団をインキュベートする。欠失変異株の集団を参照番号62で示す。上記集団内のT7変異株の1つで、所望の相互作用が可能な新規分子を発現する遺伝子を有するものを参照番号64で示す。
参照番号66は、ファージ60および64からは欠失している増殖因子を含有する選択分子、認識配列、および調節部分を発現する遺伝子を有するプラスミドを表わす。このプラスミド66を、染色体70を有するE.coli宿主細胞68に導入し、参照番号72で示される形質変換E.coli宿主細胞の第2集団を形成させる。
その欠失を補ってくれる形質変換E.coli宿主細胞の第1集団の中で増殖したT7欠失変異株集団を、次に、選択分子を発現する第2集団の細胞に感染させる。感染段階は参照番号74で示され、また感染した宿主細胞第2集団のインキュベーションは参照番号76で示される。ウイルスの複製は、所望の機能を有する新規分子が発現されている宿主細胞でのみ起る。この過程はバッチ操作によって実施することも可能であるし、また図示するように形質転換宿主細胞第2集団に溶菌が観察されるまで変異株T7バクテリオファージを連続して投入することもできる。インキュベートされた形質転換宿主細胞第2集団における溶菌は、参照番号78で示す。図から分かるように、所望の機能を有する新規分子をコードするT7欠失変異株64の集団は、参照番号80が示すように実質的に増幅されている。
所望の新規分子を発現するウイルス集団は拡大し、溶菌の結果他の細胞に感染する。T7は新たに培地に加えない。この拡大および他の細胞への感染は参照番号82で示される。多重感染は、所望の新規分子を持つウイルス粒子を、それを持たないウイルス粒子とともに一層増大させる。これは参照番号84で示される。
選択され増幅された、所望の機能を有する新規分子をコードするウイルス集団(参照番号86)は、培養した宿主細胞から単離/精製し、次に選択分子を発現する低希釈の細胞上で培養する。これは、所望の機能を有する新規分子をコードする遺伝子を持つ個々のウイルスクローンを切り離す。この単離/精製を参照番号88に示す。
図3Aおよび3Bに示す方法は、一般式Rで示される基質に対して部位特異的なヒドロキシラーゼ、すなわちRをR−OHに転換することのできるヒドロキシラーゼの創製またはその方向づけられた進化のための方法である。参照番号110は、細胞壁112、細胞周辺腔114、細胞質116および細菌染色体118を有する宿主細胞(E.coli)を表す。細胞110はその細胞周辺腔に基質Rと、参照番号120で示される化合物R−OHに対して特異的な抗体を含有し、この抗体には調節された増殖因子122が結合している。細胞周辺腔114にはまた、抗体122の結合コンフォメーション特異性プロテアーゼ124が存在する。
宿主細胞110の集団を、ヒドロキシラーゼの異種集団をコードする、低忠実度複製機構で複製されるプラスミドで形質変換する。感染の段階は参照番号126で一般的に示される。参照番号128で示される感染した宿主細胞は、細胞質116に多数のプラスミド130を含有する。これらのプラスミドは細胞周辺腔114中にヒドロキシラーゼの異種集団を発現する。基質Rに対して所望の部位特異性ヒドロキシラーゼ活性を有するヒドロキシラーゼは参照番号132で示され、所望でないヒドロキシラーゼは参照番号134で示されている。
次に、形質転換宿主細胞の集団を選択条件のもとでインキュベートし、所望のヒドロキシラーゼを選択するか、またはそれの進化を方向づける。この段階は参照番号136で一般的に示される。形質転換宿主細胞の選択された集団は水酸化された基質R,すなわち参照番号138に示される化合物R−OHを含有する。続いて、参照番号140に示すように、抗体120がこの化合物R−OHに結合する。抗体140の結合コンフォメーションに特異的なプロテアーゼ124は、調節された増殖因子122を抗体140から切断し、切断された抗体142と形質転換宿主細胞128に増殖優位性を付与する、強められた増殖因子144を残す。
次に、形質転換宿主細胞128の選択された集団をインキュベートし、DNAを単離/精製する。所望のヒドロキシラーゼをコードするDNAをクローン化し、所望のヒドロキシラーゼを発現させ、特性づけを行なう。
詳細な説明
本発明の好ましい態様を本発明のいくつかの特別な特徴に関して以下にさらに記載する。
I. 選択分子とその成分部分
選択分子は、選択圧を導いて所望の遺伝子を得るために使われる。選択分子は、増殖因子と認識配列、及び任意に調節部分を含む。ある種のものは、カセットのような形態中の認識配列を利用することによって複数の異なる新しい遺伝子を選択するために使うことができる。一旦、所望の成分の合理的な立体配置が確立されると、選択分子の変異を防ぐステップが取られる。これにより新しい分子の群について一定のターゲットが提供され、選択または進化的なプロセスを導くのに貢献する。
A. 増殖因子
増殖因子は、細胞またはレプリケーターに増殖の利点または不利な点を与えることができる全ての因子である。増殖因子は、炭素源、窒素源、エネルギー源、ホスフェート源、無機イオン、核酸、アミノ酸等のような栄養素;抗生物質、複製に必須の酵素の阻害剤、界面活性剤等のような毒素;細胞またはレプリケーターの増殖にとって不可欠な酵素または細胞の増殖に利点または不利な点を与える酵素、例えばポリメラーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、タンパク質の生合成における反応を触媒する酵素等;その機能が触媒的でない分子であって、むしろ構造的であるかあるいはその分子の結合能を基本とする分子、例えばアクチン、脂質、ヌクレオソーム、レセプター、ホルモン、サイクリックAMP等;及び水、無機イオン、NADPH 、コエンザイムA等のような補酵素あるいは補因子を含む。
B. 認識配列
認識配列は、新規な分子と相互に作用する分子または分子の部分である。そのままで、認識配列はアミノ酸または核酸の配列のように様々の異なる構造をとり得る。この配列は、単独の配列または関連した複数の配列の種類を表してもよい。認識配列は、種々の分子の特別なコンフォメーションまたはコンフォメーションの種類であってもよく、例えば、タンパク質、無機分子、脂質、オリゴサッカリド等の特定の三次元構造であってもよい。さらに、認識配列は前記のものの類似体であってもよい。
詳細な説明
本発明の好ましい態様を本発明のいくつかの特別な特徴に関して以下にさらに記載する。
I. 選択分子とその成分部分
選択分子は、選択圧を導いて所望の遺伝子を得るために使われる。選択分子は、増殖因子と認識配列、及び任意に調節部分を含む。ある種のものは、カセットのような形態中の認識配列を利用することによって複数の異なる新しい遺伝子を選択するために使うことができる。一旦、所望の成分の合理的な立体配置が確立されると、選択分子の変異を防ぐステップが取られる。これにより新しい分子の群について一定のターゲットが提供され、選択または進化的なプロセスを導くのに貢献する。
A. 増殖因子
増殖因子は、細胞またはレプリケーターに増殖の利点または不利な点を与えることができる全ての因子である。増殖因子は、炭素源、窒素源、エネルギー源、ホスフェート源、無機イオン、核酸、アミノ酸等のような栄養素;抗生物質、複製に必須の酵素の阻害剤、界面活性剤等のような毒素;細胞またはレプリケーターの増殖にとって不可欠な酵素または細胞の増殖に利点または不利な点を与える酵素、例えばポリメラーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、タンパク質の生合成における反応を触媒する酵素等;その機能が触媒的でない分子であって、むしろ構造的であるかあるいはその分子の結合能を基本とする分子、例えばアクチン、脂質、ヌクレオソーム、レセプター、ホルモン、サイクリックAMP等;及び水、無機イオン、NADPH 、コエンザイムA等のような補酵素あるいは補因子を含む。
B. 認識配列
認識配列は、新規な分子と相互に作用する分子または分子の部分である。そのままで、認識配列はアミノ酸または核酸の配列のように様々の異なる構造をとり得る。この配列は、単独の配列または関連した複数の配列の種類を表してもよい。認識配列は、種々の分子の特別なコンフォメーションまたはコンフォメーションの種類であってもよく、例えば、タンパク質、無機分子、脂質、オリゴサッカリド等の特定の三次元構造であってもよい。さらに、認識配列は前記のものの類似体であってもよい。
さらに、選択系によっては、潜在的な認識配列は非常に特異的な領域、コンフォメーション、配列等に限定されていてもよく、あるいは潜在的な認識配列の広範なセットであってもよい。例えば、複数の選択分子に共通の特定の複数の重複した配列を使用し、それと所望の新規な分子が相互に作用して増殖を変調するようにし、真の認識配列はそれらの選択分子のすべてに共通な特定の配列に限定されていてもよい。一方、唯一つの選択分子を使用するかまたはすべてに共通な大きい領域を有する複数の選択分子を使用することによって、潜在的な認識配列を、一つの選択分子または複数の選択分子に共通の大きな領域中の種々の領域、コンフォメーション、配列等としてもよい。従って、認識配列は領域、コンフォメーション、配列等に高度に特異的であってもよく、あるいはより広範なものではあるがやはり規定された領域、コンフォメーション、配列等のセットに特異的であってもよい。
C. 調節部分
本発明の核心は、増殖因子の活性の変調の概念である。生物学的活性を変調する多くの方法があり、自然は数多くの先例を提供してきた。活性の変調は、アロステリックに誘導される四次的変化のように複雑で込み入ったものから、単純な存在/不存在系、例えば発現/分解系に至るメカニズムを通して行われ得る。実際、多くの生体分子の発現の抑制/活性化は、それ自体、その活性が種々のメカニズムを介して変調され得る分子によって媒介されるものである。
C. 調節部分
本発明の核心は、増殖因子の活性の変調の概念である。生物学的活性を変調する多くの方法があり、自然は数多くの先例を提供してきた。活性の変調は、アロステリックに誘導される四次的変化のように複雑で込み入ったものから、単純な存在/不存在系、例えば発現/分解系に至るメカニズムを通して行われ得る。実際、多くの生体分子の発現の抑制/活性化は、それ自体、その活性が種々のメカニズムを介して変調され得る分子によって媒介されるものである。
細菌タンパク質に対する化学修飾の表は(2) の73頁に示されている。表中に示されるようにいくつかの修飾は適当なアセンブリーに組み入れられており、その他の修飾はそうではないが、いずれの場合もそのような修飾は機能の変調を起こすことができる。
ある場合においては、機能的な有用性の変調は単に分子の適当/不適当な局在化を通して媒介され得る。分子は、それらが特別な位置に指向される場合だけ機能して、増殖上の利点または不利な点を提供することができる。例えば、澱粉は典型的には細菌によっては吸収されない巨大分子であり、従ってその分解に必要な酵素、例えばアミラーゼを分泌することが必要であり、それによりそれは利用可能なエネルギー形態に変換され得る。従って、細菌が澱粉制限培地中で増殖する場合、細菌中のアミラーゼの生産及び保持はその機能的有用性をダウン−モジュレーションする(down-modulate) 。アミラーゼが細菌に増殖上の利点を与えることができるのは、アミラーゼが分泌されているときだけである。アミラーゼの本来の酵素的な能力は細菌の内部にあっても外部にあっても同じであり得るが、それが細胞内部で標的化されるときは、それが細胞外部で標的化される場合と比較して、その機能的有用性は劇的にダウン−モジュレーションされる。
シグナルペプチドの切断を介して行われるタンパク質の局在化ターゲティングは、本発明の範囲内で分子ターゲティングを介する機能的有用性の変調を使用する一つの方法である。この場合、特異的なエンドプロテアーゼ触媒活性に対する選択が選ばれる。
酵素の機能的有用性は、その反応を触媒する能力を変化させることによっても変調させることができる。このような変調は示差的局在化(differential localization)(即ち、許容される局所環境対許容されない局所環境) により行うことができるが、これは前記のメカニズムである必要はない。変調された分子の具体的な例としては、チモーゲン、マルチサブユニット機能性複合体の形成/解離、RNAウイルスポリタンパク質鎖、アロステリック相互作用、一般的な立体障害(共有結合的及び非共有結合的)、及びリン酸化、メチル化、アセチル化、アデニル化及びウリデニル化等の種々の化学的修飾がある((2), 73頁、315)。
チモーゲンは、酵素活性の変調を起こす天然のタンパク質融合物の例である。チモーゲンは、限定されたタンパク質加水分解を介してその活性状態に変換されるタンパク質の一つの種類である((3),54頁) 。自然は、例えばトリプシンのようなある種の酵素の活性を、そのアミノ末端において付加的な「リーダー」ペプチド配列を有するこれらの酵素を発現することにより、ダウン−モジュレーションするメカニズムを発展させてきた。余分なペプチド配列を有することにより、酵素は不活性なチモーゲン状態になる。この配列の切断により、チモーゲンはその酵素的に活性な状態に変換される。チモーゲンの全体の反応速度は、「対応する酵素の反応速度よりも約105-106倍低い」((3), 54頁)。
従って、単に酵素の末端の一方にペプチド配列を付加するだけで、ある種の酵素の機能をダウン−モジュレーションすることが可能である。例えば、この性質は、本発明の範囲内で、所望の性質を有するエンドプロテアーゼを選択するのに使用できる。
マルチサブユニット酵素の形成あるいは解離は、それを通して変調が起こり得るもう一つの方法である。マルチサブユニット酵素の形成または解離における活性の変調については種々のメカニズムが係わり得る。2つのメカニズムが例示できる。
トリプトファンシンテターゼは、α−β−α−βテトラマー中の2つの異なるサブユニット、α及びβからなる。このテトラマーは2つのαサブユニットとβ−βサブユニットに解離し得、それぞれが酵素的活性を示すが、独立したサブユニットはテトラマーホロ酵素よりも非常に効率が低い。ホロ酵素の効率の増加の一因は、α及びβ活性部位の間にトンネルが形成されることであると考えられている(4) 。この酵素の三次元結晶構造の決定により、このトンネルがα触媒反応の中間体生成物を直接βサブユニット活性部位へ送ることにより、その溶媒へのロスを防止し、それにより効率を増加させていることが明らかになった。
アスパルテートトランスカルバモイラーゼに関しては、ホロ酵素の形成における活性の変調は異なるメカニズムを通じて起こる。アスパルテートトランスカルバモイラーゼホロ酵素においては、活性部位は触媒サブユニットの対向面に形成される。アスパルテートトランスカルバモイラーゼ及びトリプトファンシンテターゼの両者において、異なるサブユニットの適当な特異的な相互作用が、ホロ酵素の効率的な活性に臨界的な意義を有している。従って、適当な特異的なサブユニット相互作用を立体的に妨害することは、触媒活性をダウン−モジュレーションさせることになる。このような複合体は、本発明の範囲内で種々の分子を選択するのに使用し得る。
それを通じて機能の変調が起こり得るメカニズムのその他の例としては、RNAウイルスポリタンパク質、アロステリック効果、及び一般的な共有結合及び非共有結合立体障害がある。HIVウイルスは、非機能的ポリタンパク質構築物を発現するRNAウイルスのよく研究された例である。HIVウイルスにおいては、「gag, pol及びenv ポリタンパク質はプロセシングを受け、それぞれウイルス構造タンパク質p17 、p24 及びp15 --逆転写酵素及びインテグラーゼ--及び2つのエンベロープタンパク質gp41及びgp120 を生成する」(5)。前記ポリタンパク質の適当な切断はウイルスの複製に必須であり、不活性変異体HIVプロテアーゼを有するビリオンは非感染性である(5) 。これは、その活性をダウン−モジュレーションするタンパク質の融合体のもう1つの例である。従って、適当な複製のために配列依存性のエンドプロテアーゼを要求する組換体ウイルスを構築することが可能である。
ある種の酵素阻害剤は、共有結合立体障害あるいは修飾を通した機能のダウン−モジュレーションのよい例である。活性部位の触媒的に重要なアミノ酸において酵素の活性部位に不可逆的に結合する自殺基質は、酵素的活性部位を立体的にブロックする共有結合修飾の例である。自殺基質の例は、キモトリプシンに対するTPCKである(6)。このタイプの変調は、本発明の実施形態において、触媒的に活性な部位に共有結合により結合するかあるいは非活性触媒部位から部分を切断してそれによりそれを触媒的に活性なものに変換することのできる化合物の選択に使用し得る。
また、多くのリプレッサー分子を含む非共有結合的な立体障害の例もある。ラムダリプレッサーは興味のあるものである。というのは、これは自身の発現をアップ−モジュレーションさせながら、例えばcro のような他のファージ遺伝子の発現を同時にダウン−モジュレーションさせるからである。これは、それが非共有結合的にDNA配列に結合し、これらの配列とRNAポリメラーゼとの相互作用を立体的に妨害し、それによりRNAポリメラーゼがcro 遺伝子に向かって転写するのを妨げると同時に、RNAポリメラーゼを刺激して反対方向に転写させることにより達成される。このように、リプレッサー分子は立体障害を起こすことができ、特定のDNA−RNAポリメラーゼ相互作用を妨害してDNA配列の機能をダウン−モジュレーションするものである。
結合分子は対象となる種々の基質の活性を改変するその能力に基づいて作成できるので、非共有結合化合物の選択は可能性と利点を与えるものである。
アロステリック効果は、ある種の生物学的系においてそれを通して変調が実施されるもう1つの方法である。アスパルテートトランスカルバモイラーゼはよく特性化されたアロステリック酵素である。触媒サブユニットと相互作用するのは制御ドメインである。CTPあるいはUTPに結合する際、制御サブユニットは、触媒活性をダウン−モジュレーションするホロ酵素における4次構造変化を誘導することができる。それに対し、その制御サブユニットへのATPの結合は、触媒活性をアップ−モジュレーションすることができる(7) 。本発明の方法を使用することにより、結合して変調的な4次あるいは3次変化を起こすことができる分子を選択することができる。
さらに、種々の化学的修飾、例えばリン酸化、メチル化、アセチル化、アデニル化及びウリデニル化等を、機能を変調させるために実施することができる。このような修飾が多くの重要な細胞成分の制御において重要な役割を果たすことが知られている。参考文献((2), 73頁) は、このような修飾を受ける種々の細菌酵素を挙げている。さらに、ヒトの疾病に関連する多くのタンパク質もそのような化学的修飾を受ける。例えば、多くの癌遺伝子はリン酸化によって修飾され、リン酸化あるいは脱リン酸化を通して他のタンパク質を修飾することが見い出されている。例えばリン酸化により、増殖因子の活性を変化させる能力に基づいて分子を選択する能力は重要である。
D. 好ましい選択分子
(1) 融合または欠失分子
増殖因子、選択部分及び認識配列を導入する融合タンパク質は好ましい選択分子である。融合物は実質的にどのような分子間のものでもよく、2つの分子あるいは多数の分子の間の融合物を含み得る。融合物は、タンパク質−タンパク質の融合物及びタンパク質−生体分子の融合物を含み得る。分子は生物学的もしくは化学的分子、あるいはイオンであってもよい。糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪酸、小さい有機分子、金属イオン、例えばMg、及び前記のものの種々の誘導体及び前駆体が考えられる。その他の融合物としては、中でも、タンパク質−核酸、タンパク質−リボ核酸、タンパク質−脂質、タンパク質−オリゴサッカリド、核酸−小分子、小分子−タンパク質−脂質、核酸−小分子−脂質等であり得る。
D. 好ましい選択分子
(1) 融合または欠失分子
増殖因子、選択部分及び認識配列を導入する融合タンパク質は好ましい選択分子である。融合物は実質的にどのような分子間のものでもよく、2つの分子あるいは多数の分子の間の融合物を含み得る。融合物は、タンパク質−タンパク質の融合物及びタンパク質−生体分子の融合物を含み得る。分子は生物学的もしくは化学的分子、あるいはイオンであってもよい。糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪酸、小さい有機分子、金属イオン、例えばMg、及び前記のものの種々の誘導体及び前駆体が考えられる。その他の融合物としては、中でも、タンパク質−核酸、タンパク質−リボ核酸、タンパク質−脂質、タンパク質−オリゴサッカリド、核酸−小分子、小分子−タンパク質−脂質、核酸−小分子−脂質等であり得る。
プロテアーゼが得るべき分子である場合、代謝的に重要な酵素、即ち増殖因子の、所望のペプチド認識配列及び嵩高いタンパク質、即ち調節部分との融合構築物を作製することができる。嵩高いタンパク質とともにペプチド認識配列によって生起された立体障害及び/またはコンホメーション変化により、代謝的に重要な酵素は不活性化され、あるいは機能的に損なわれる。しかし、得るべきプロテアーゼの存在下においては、認識配列は切断され酵素の機能はアップ−モジュレーションされる。
サブユニットの態様及びα−βタイプの相補性態様は、融合構築物のまた別の変形である。サブユニットの態様は、ある種の分子の複雑なマルチサブユニット特性を利用するものである。ある場合においては、分子はモノマーとしては非機能的であるが、分子の同一のあるいは異なる群を含むマルチサブユニット複合体においては機能を獲得するものである。1つの分子は、もう1つの分子から異なるサブユニットのいくつとでも融合することができる。活性なマルチサブユニット形態における、微妙で複雑であることが多いサブユニットの相互作用により、融合物を構築することによって誘導された機能における変調はかなり強力なものとなりやすい。
α−βタイプの相補性態様は概念的に同様なものである。ある種の機能的分子はフラグメント化され、それらのフラグメント自体では機能しないことが知られている。しかしそのフラグメントは、再結合して機能を再び獲得し得る。これらのフラグメントが融合物中に導入されれば、これらの結合は妨げられるので、これらの融合物は本発明の方法において有用である。
「逆」サブユニットの態様も、融合体構築物を作製するのに使用することができる。この場合、マルチサブユニット複合体は機能を欠き、サブユニット自体は機能を有する。例えば、その1つの末端に余分な配列が付加されていることにより機能が損なわれているタンパク質を使用して、非機能的なそのようなタンパク質のマルチサブユニットストリングを作製することが可能である。タンパク質の間のリンカー配列を適当に設計することにより、所望の特異性のプロテアーゼが得られる。
厳格な選択条件下においては、材料の効率的な利用という点におけるごくわずかな利点は示差的選択を生起し得る。宿主細胞群の1のメンバーが余分なタンパク質を生産したとすると、不必要にアミノ酸プールが消費され、その増殖に不利をもたらすことになる。逆サブユニット融合物分子のそれぞれのサブユニット部分が利用されていることから、新規なプロテアーゼを産生する宿主細胞中の浪費的なタンパク質合成は排除されているので、逆サブユニット法は効率的であり得る。
これらの融合タンパク質は多くの異なる立体配置を取り得、活性であっても不活性であってもよく、アップ−モジュレーションされてもダウン−モジュレーションされてもよい。これらはタンパク質基あるいはその他の基、例えば内部または両末端において付加または欠失されたリン酸あるいはメチル基のような基を有していてもよい。例えば、タンパク質増殖因子に対し、タンパク質配列をその内部またはその1つ、もしくは両末端に付加してその機能を高くまたは低く調節し、及び/または選択分子に特定の所望の認識配列を与えることができる。
異なる基を複数付加することができる。例えば、大きな立体障害を起こす調節基、認識配列、増殖因子、認識配列、大きな立体障害を起こす調節基の順に結合してなるマルチタンパク質融合物を使用することができる。
あるいは、変調された増殖因子を構築するのに欠失を利用することができる。例えば、その存在が増殖因子の適正な機能に対して重要な領域を有するタンパク質増殖因子を、この領域を欠く切断あるいは欠失した形態で変調された増殖因子として使用することができる。もう1つの例においては、その活性形態においてリン酸化されているタンパク質を、その非リン酸化状態で変調された増殖因子として使用することができる。両方の場合において、変調された増殖因子に部分を導入する正常な分子を選択することができる。
(2) アロステリックプラットフォーム
その結合能に基づいて新規な分子を得るために使用される選択分子は多くの方法で設計され得る。単純な結合に基づいた選択分子は、新規な分子の選択分子上の認識配列への結合に基づいて変調されたその機能を有し得る。例えば、新規な分子は酵素に基づく選択分子の活性部位を結合し及び/または立体的に阻害することができる。
(2) アロステリックプラットフォーム
その結合能に基づいて新規な分子を得るために使用される選択分子は多くの方法で設計され得る。単純な結合に基づいた選択分子は、新規な分子の選択分子上の認識配列への結合に基づいて変調されたその機能を有し得る。例えば、新規な分子は酵素に基づく選択分子の活性部位を結合し及び/または立体的に阻害することができる。
結合したときにコンホメーションの変化を受ける選択分子はアロステリックプラットフォームと指称することができる。増殖因子の機能はアロステリックなやり方で変調することができる。従って、もし認識配列が共有結合によりあるいは非共有結合により結合するようになれば、増殖部分の機能は変化する。認識配列上の結合ドメインを変化させて種々のリガンドの広範なアレイの選択に適応させることができる。アロステリックプラットフォームは1つの分子であっても、多くの分子であってもよく、本発明の方法のいずれにも使用することができる。
例えば、アロステリックプラットフォームの1つの部分が新規な分子を結合するためのレセプターとして働き、もう1つの部分がアロステリックプラットフォームを増殖因子に結合する働きをするようにすることができる。新規な分子を第1の部分に結合する際に、増殖因子におけるアロステリック変化が機能のアップ−モジュレーションあるいはダウン−モジュレーションをもたらすことになる。そして機能の変化は、その他の部分に記載した方法により新規な分子を得るために使用することができる。
得るべき新規な分子は実際に選択分子を結合する必要はなく、また選択されるべき新規な分子の機能が結合である必要もない。例えば、結合に基づいた選択分子は、実質的にあらゆる触媒活性を有する新規な分子の選択に使用することができる。所望の新規な分子により触媒された反応の生成物を認識する結合に基づいた選択分子を使用することにより、その新規な分子はそれ自体が選択分子と相互作用することなく選択されることができる。
II. 選択方法
A. 総論
本発明の単離、製造及び方向付けられた進化方法に使用される選択技術はこれまで当分野で使用されてきたいずれのものでもよく、また新たな環境、条件、手順及び選択圧を使用するものであってもよい。増殖因子、認識配列、調節部分あるいは選択分子を発現する遺伝子の変異を制限するように努力し、当初の所望の認識配列に特異的な新規な分子をコードする遺伝子が得られるようにしなければならない。
II. 選択方法
A. 総論
本発明の単離、製造及び方向付けられた進化方法に使用される選択技術はこれまで当分野で使用されてきたいずれのものでもよく、また新たな環境、条件、手順及び選択圧を使用するものであってもよい。増殖因子、認識配列、調節部分あるいは選択分子を発現する遺伝子の変異を制限するように努力し、当初の所望の認識配列に特異的な新規な分子をコードする遺伝子が得られるようにしなければならない。
これは本発明の単離、製造及び方向付けられた進化方法においてもあてはまる。方向付けられた進化においては、例えば放射線や変異源性の化学物質のような外部的な影響に暴露するか、あるいは推定上の新規な分子群に進化の方向を与える合理的に設計された選択条件を与えることにより、進化力をもった遺伝子を変異させて新規な分子をコードさせるのが望ましい。このような方法は他の部分により十分に記載されている。
ネガティブあるいはポジティブな選択方法を使用することができる。ポジティブな選択においては、所望の機能を有する宿主あるいはレプリケーターの群のメンバーが選択可能な増殖の利点を有するものである。ネガティブな選択においてはこの逆となる。所望の機能を有する宿主あるいはレプリケーターの群のメンバーは選択可能な増殖の不利な点を有するものである。ネガティブな選択においては、対象の遺伝子が、選択分子あるいは認識配列と相互作用して増殖を阻害する分子を発現するものである。ある群のメンバーが増殖できるものである場合に、そのメンバーを殺すかさもなくば弱体化する化合物、例えばある種の抗生物質をその群に投与することができる。このような技術は、公知の循環的な方法により反復することができ、群の所望の非増殖性のメンバーを富化することができる。
選択条件は対象の特異的な選択特性に向けられたものであることが重要であり、また選択の手順が最適化されていることが重要である。例えば、選択圧を循環的なやり方でかけ、高い選択圧と低い選択圧の間で循環させるか、あるいは同一の特性を選択するのに異なる条件を使用するのが有益であるかもしれない。
種々の選択分子及び選択方法を種々の環境下で使用することができる。例えば、所望の性質を有する新規な分子をコードする遺伝子が、存在する遺伝子プール中に存在すると考えられる遺伝子単離方法の場合、1回での選択(one time selection)または1回での選択を反復すること(バッチ選択)が単離を達成するのに適当である。そのような環境下では、増殖に絶対的に不可欠であり、選択構築物に導入されたときに実質的にあるいは完全にその機能を失う(機能の最大の変調)増殖因子を使用するのが望ましい。所望の新規な分子あるいはそれに極めて密接に関連した新規な分子は、存在する不均一な群の中に存在していると考えられ、ただ1つあるいは非常に小さい数の関連するクローンが選択されることから、非常に厳しい選択圧が系にかけられる。
所望の新規な分子が群の中に存在すると考えられず、進化させられる必要がある場合には、多くの世代選択法が使用される。ある場合においては、増殖に絶対的に不可欠であるが、その機能は部分的にのみ変調されたものである増殖因子、あるいは、絶対的に不可欠ではないが増殖上の利点を与え、完全に変調され得る増殖因子を使用するのが望ましい。これにより増殖が得られ、その間新規な分子を発現する遺伝子は進化し、所望の新規な分子の性質に密接に関連した性質を有する分子が生成され、選択的増殖の利点が得られる。
このような異なる新規な分子の出発群について変化する選択分子設計を通した選択圧の厳しさの相違は、環境的条件の変更によっても生じる。例えば、同一の選択分子を使用した場合、単に培地、温度、pH等を変更するだけで異なるレベルの選択圧が生じる。
いくつかのそのような例においては、環境的条件の影響が選択分子の機能を補足し、これらの環境的条件を変化させることによって示差的選択圧が設定される。
いくつかのそのような例においては、環境的条件の影響が選択分子の機能を補足し、これらの環境的条件を変化させることによって示差的選択圧が設定される。
選択分子が選択の「リオスタット(可変抵抗)」として使用される別の方法は、選択分子の発現レベルを変更することを含む。誘導可能なプロモーターを介して単に選択分子の発現レベルを上昇させることは、ある場合においてはバックグラウンドを増大させ、従って選択圧を低下させ得る。
単離、製造及び方向付けられた進化の態様に共通な本発明の2つの重要な技術は、宿主細胞変異の制御と重複した選択分子の使用である。
(1) 望ましくない変異の制限
新規な分子との相互作用について一定のターゲットを維持するために、増殖因子及び/または認識配列及び/または調節部分及び/または選択分子の発現の忠実度に影響を与える宿主細胞変異を制御することは重要である。所望の新規な分子についての選択を複雑にし得るバックグラウンド変異、例えば選択システム全体中におけるDNA中の変異を制限することも重要である。選択分子またはその成分を発現する遺伝子の有用でない変異は、新規な分子の所望の相互作用以外の手段、例えば新規なプロテアーゼによるタンパク質分解切断を介して増殖因子の機能を与えるものを含む。このような変異は、中でも、嵩高い基の効果を打ち消す融合物の増殖因子部分の変異、嵩高い基が増殖因子の機能を変調するのに無効になるような嵩高い基の変異、即ち望ましくないように変調された増殖因子の発現を可能とする増殖因子についての配列をコードする遺伝子の転位あるいは組み換え、増殖因子の前にプロモーターを生成するような変異(点変異及び挿入)、即ち使用できないような方法で成分部分を単離しそれにより増殖因子を遊離させるような選択分子の翻訳後または転写後の修飾の能力の発展、及び別経路あるいは増殖因子と同じ機能を果たす変異分子を生成する変異を含む。
(1) 望ましくない変異の制限
新規な分子との相互作用について一定のターゲットを維持するために、増殖因子及び/または認識配列及び/または調節部分及び/または選択分子の発現の忠実度に影響を与える宿主細胞変異を制御することは重要である。所望の新規な分子についての選択を複雑にし得るバックグラウンド変異、例えば選択システム全体中におけるDNA中の変異を制限することも重要である。選択分子またはその成分を発現する遺伝子の有用でない変異は、新規な分子の所望の相互作用以外の手段、例えば新規なプロテアーゼによるタンパク質分解切断を介して増殖因子の機能を与えるものを含む。このような変異は、中でも、嵩高い基の効果を打ち消す融合物の増殖因子部分の変異、嵩高い基が増殖因子の機能を変調するのに無効になるような嵩高い基の変異、即ち望ましくないように変調された増殖因子の発現を可能とする増殖因子についての配列をコードする遺伝子の転位あるいは組み換え、増殖因子の前にプロモーターを生成するような変異(点変異及び挿入)、即ち使用できないような方法で成分部分を単離しそれにより増殖因子を遊離させるような選択分子の翻訳後または転写後の修飾の能力の発展、及び別経路あるいは増殖因子と同じ機能を果たす変異分子を生成する変異を含む。
重要なのは、所望の新規な分子を生成するのに必要な特異的な変異及び全体の変異の数及び速度と比較した、有用ではない種の増加を与える特異的な挿入または欠失を導く特異的な変異の数と速度及び全体の変異の数と速度である。方向付けられた進化においては、有用な新規な分子を発現する遺伝子を生成するのに必要な特異的な変異の数ができるだけ少なく、変異速度が有用性のない変異体の上昇を与える変異の数及び変異の速度に対して妥当に高いことが重要である。もし有用性のない遺伝子変異を生成する可能性が有用な遺伝子変異を生成する可能性の100 倍であるとすると、実験を100 回行うことにより有用な新規な分子を発現する遺伝子を得ることはなお可能であるが、これは理想からかけはなれている。
ある種の遺伝子については、欠失率は10-4まで高くてもよい。これは中でも特定の遺伝子配列と周囲の配列、及び結果としての2次構造に依存している。欠失変異の強力な高い可能性は、有用でない変異体の上昇を与える機会を妨げる注意深い設計を必要とする。これらの機会は、遺伝子配列及び2次構造(いずれも構築物中及び局所的なもの)の適当な選択により、あるいは相同組み換えの頻度を1000分の1に減じることができる Rec A- あるいは同様の変異により最小にすることができる。
さらに、高い忠実度の抗変異誘発遺伝子複製機構を変異の頻度を減ずるのに使用することができる。ある種のポリメラーゼが変異されそれにより野性型のポリメラーゼよりも高い忠実度で複製し得ることが知られている。このようなポリメラーゼは、複製の間のエラー率を減じるのに使用できる。変異は、複製の数を低く保ち、あるいは細胞サイクルが抑制されれば、それ以上の複製が防止され、それにより制御することができる。
ある態様においては、選択分子をコードする遺伝子を区別することにより、選択分子を進化的にリセットすることが単純化される。例えば、選択分子が宿主細胞内にコードされ、新規な分子がレプリケーターによりコードされていれば、レプリケーター中にコードされた遺伝子を進化させる選択手順が可能である。この進化された群は、その後最初の出発培養物からの宿主細胞の新たな群を使用する選択手順に使用することができる。それについて変異が望ましくない、宿主細胞によりコードされる選択系の成分は進化的にリセットされ、その間新規な分子群の進化的進歩は維持され、静的な選択環境中で継続され得る。
(2) 多数の重複した選択分子の使用
新規な分子を発現する遺伝子の、望ましくない変異体に対する選択を強化するもう1つの方法は、多数の重複した選択分子の同時の使用を介することである。そのような系においては、単一の望ましくない変異体は、他の選択分子の存在のために、望ましくない選択を起こさない。適当な新規な分子の発現は全ての選択分子に影響を与え、有用な選択が起こることを可能とする。
(2) 多数の重複した選択分子の使用
新規な分子を発現する遺伝子の、望ましくない変異体に対する選択を強化するもう1つの方法は、多数の重複した選択分子の同時の使用を介することである。そのような系においては、単一の望ましくない変異体は、他の選択分子の存在のために、望ましくない選択を起こさない。適当な新規な分子の発現は全ての選択分子に影響を与え、有用な選択が起こることを可能とする。
例えば、一連の異なるタンパク質−タンパク質−タンパク質融合物であってそれぞれが同じタンパク質分解切断部位及び異なるが必須の増殖因子を有するものを生成する。その融合物から1つの増殖因子を遊離させその機能を変化させる変異は、他の選択分子が影響されないことから、望ましくない選択を起こさず、辺縁選択(marginal selection)を生じることになる。もし適当なタンパク質分解特性を有する新規な分子が生成されれば、タンパク質分解切断部位のそれぞれが切断され、それぞれの増殖因子がそのそれぞれの融合物から遊離され、選択が起こる。
重複のレベルも選択圧を変調するのに使用される。重複の異なるレベルを介して、所与の種の生産に必要な切断の総数を変化させることができる。例えば、7種の異なる増殖因子を7つの異なる重複選択分子に複合体化すると、これらの7種の成分の3種を使用した場合よりも多くの切断が必要となる。
さらに重要なことは、成分のタイプである。例えば、バクテリオファージの複製過程におけるある種の成分は、触媒的であり、その仕事を達成するのに比較的少ない総コピー数しか必要としない。他の成分は触媒的ではなく、より多くの切断を要する。このような成分の例は、ビリオンの機能に関連する構造遺伝子である、頭部及び尾部タンパク質である。もし頭部及び尾部タンパク質が選択分子に複合化されると、組み立てられたウイルスコートの各タンパク質が切断されなければならないことから、膨大な数の切断が必要となるであろう。このタイプの選択構築物は、かなりの量のウイルス子孫を生産するためにより高い回転が必要なため、新規な分子により高い負担をかけることになるであろう。
製造及び特に方向付けられた進化の態様に共通な、本発明の2つの重要な点は、選択分子をコードする遺伝子と推定上の新規な分子をコードする遺伝子を区別し後者の制御された変異を実施すること、及び推定上の新規な分子を発現する遺伝子についていくつかの進化的出発点を使用することである。
(3) 選択分子をコードする遺伝子および推定上の新規分子をコードする遺伝子の分離、ならびに推定上の新規分子をコードする遺伝子の制御された突然変異の実施
推定上の新規分子をコードする遺伝子および選択分子をコードする遺伝子がそれぞれ異なる複製系(これらは異なる突然変異率を有する)により複製されるように、例えば、時間もしくは空間において、または異なる認識配列により両者を分離する選択方法をとることが望ましい。これは、潜在的な新規分子の遺伝子プールが増大された速度で発達または進化することを可能にする。新規分子をコードし得る遺伝子を進化させながら、選択分子の安定性は維持される。
推定上の新規分子をコードする遺伝子および選択分子をコードする遺伝子がそれぞれ異なる複製系(これらは異なる突然変異率を有する)により複製されるように、例えば、時間もしくは空間において、または異なる認識配列により両者を分離する選択方法をとることが望ましい。これは、潜在的な新規分子の遺伝子プールが増大された速度で発達または進化することを可能にする。新規分子をコードし得る遺伝子を進化させながら、選択分子の安定性は維持される。
推定上の新規分子をコードする遺伝子は、初期には1個の遺伝子であって、これを所望の機能を有する新規分子を発現する遺伝子に突然変異させ、進化させてもよく、または、遺伝子集団を所望の機能を有する分子を発現する遺伝子が得られるように突然変異させ、進化させることもできる。出発の分子集団は構造上またはそれ以外の点で最終的に獲得される新規分子に関連していてもよく、また関連していなくてもよい。
本発明の方法は、低忠実度複製機構を利用することにより、また異なる型のコード物質を使用することにより、そして突然変異率を調節する種々のプロセス条件を採用することにより行い得る。また、推定上の新規分子および選択分子またはそれらの成分を発現する遺伝子に示差的に作用する配列修復機構が利用し得る。また、異なる環境条件、例えば、温度、圧力、pH、イオンおよび基質濃度効果、等を適用することが、これらの目的を達成するのに利用し得る。また、調節された突然変異率は、或る種のコード物質、例えば、染色体中の公知の“ホットスポット”(そこでは突然変異率がその他の場所よりも高い)を使用することにより作り出すことができる。
異なる突然変異率および/または同様に異なる複製機構を有する物理的に別個のコード配列が使用される。これらは、特に、宿主染色体DNA 、プラスミドDNA (環状または自己複製性の短い配列)、ウイルス(DNA およびRNA の両方)、短い自己複製性のRNA 配列またはプラスミド、およびミトコンドリアDNA を含む。これらおよびその他のコード配列が、選択分子および推定上の新規分子をコードするのにあらゆる組み合わせで使用し得る。これらの異なるコード運搬体が、異なる特定の複製起点を有する異なる複製機構を使用することにより異なる突然変異率で複製し得る。
示差的突然変異率が生じ得る別法は、複製タイミングおよびターンオーバー(代謝回転)によるものである。例えば、複製が選択分子をコードする配列でよりも新規分子をコードする配列において速い速度で起こる場合(両方とも、同じ忠実度の複製機構を使用する)、新規分子の集団は多数の突然変異を発現するであろう。加えて、異なる複製機構への異なる成分の合成のタイミングが異なる突然変異率を生じるのに使用し得る。例えば、E.coli染色体は制御された様式で複製され、そして或る種のタンパク質、例えば、DnaAが複製開始に必要とされることが知られている。それ故、異なる突然変異率を有する2種のDNA ポリメラーゼが誘導性プロモーターまたはサイクル的に活性化されるプロモーターにより制御されるような系をもつことが可能である。ポリメラーゼおよびDnaA型タンパク質の合成にあたっては、高い忠実度のポリメラーゼが、例えば、宿主染色体上で選択分子を複製し、そして低い忠実度のポリメラーゼがウイルス染色体上で新規分子を複製するようにタイミングを調節できる。或る実施形態においては、このような系は同じ複製起点を有し得る。
(4) 進化開始点の数および遺伝子集団の突然変異
幾つかの異なる方法が、新規分子を発現する遺伝子の集団を創製するのに使用し得る。ゼロの進化開始点、一つの進化開始点または複数の進化開始点が使用し得る。
幾つかの異なる方法が、新規分子を発現する遺伝子の集団を創製するのに使用し得る。ゼロの進化開始点、一つの進化開始点または複数の進化開始点が使用し得る。
進化開始点をもたないように設計された選択系は、宿主に導入された選択分子のみに基いて対象の遺伝子を選択するのに使用できる。このような方法は、選択系の成分内の天然に存在する遺伝子、例えば、宿主細胞またはレプリケーター由来の遺伝子を選択する。この方法において、進化開始点として使用される一種以上の特定の分子を導入するのではなく、宿主またはレプリケーター内で固有の進化ポテンシャルを引き出す。ゼロの進化開始点を使用する別法は、全部または一部確率的に生成される分子で、こうして、従来知られていない分子の集団を導入することを含む。この場合、これらの確率的に生成された分子の進化ポテンシャルは、新規分子を発現する遺伝子の生産に利用される。
一つの進化開始点を使用する方法の二つの例は、外来遺伝子を選択して、その遺伝子の進化ポテンシャルに基いて宿主またはレプリケーターに導入する場合、および遺伝子をその遺伝子の亜種のメンバー、例えば、その密接に関連する変異体と一緒に選択する場合である。
最後に、複数の進化開始点を使用し得る。この場合は、多数の遺伝子がそれらの進化ポテンシャルに基いて選択される。これらの遺伝子はその亜種を多様化するように突然変異誘発し得る。これは、異種であるが、同時に、所望の進化ポテンシャルに基いて高度に集中された合理的に設計された集団である新規な遺伝子集団の創製を可能にする。
例として、特定の反応型および特異性を有する触媒の開発において、所望の触媒を生じる最高の進化ポテンシャルをもつと思われる進化開始点が選択される。既に所望の触媒の特性に似た特性を有する分子、例えば、所望の触媒に似た認識配列に対する特異性を有する一種以上の分子を発現する遺伝子が選択される。また、所望の触媒の反応型と同じまたは類似の反応型(例えば、タンパク質分解、ヒドロキシル化、等)の一種以上の分子が選択される。進化開始点の型の合理的な選択を行うことにより、遺伝子集団に関する大きな進化ポテンシャル、ひいては、所望の遺伝子に到達する短い進化的距離が得られ、即ち、所望の遺伝子に到達するのに必要とされる突然変異が少なくなる。適当な進化開始点は、酵素、抗体、触媒抗体、T細胞レセプターおよびMHC 分子である。 突然変異の異なる方法が存在し、単独で、または互いに組み合わせて使用し得る。一つの方法は、突然変異誘発化合物または化学突然変異誘発剤またはUV照射といった条件の使用である。また、部位特異的突然変異誘発技術が使用し得る。部位特異的突然変異誘発の方法が(1) に記載されている。集団内の突然変異の数を増大させるその他の方法は、低忠実度複製機構の使用および高い複製率を含む。
その他の技術において、DNA の短い確率的配列が酵素の活性部位のコード領域付近に導入でき、そしてその集団を薬品および/またはUV照射にさらす。次に、この集団を高頻度で低忠実度複製機構により複製すると高度に異種の集団が迅速に得られる。
その他の例において、新規分子がウイルスゲノム上にコードされ、そしてこのようなウイルスの大きな集団が一種以上の突然変異誘発剤または突然変異誘発条件にかけられ、これらの例として、試験管内の化学的突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、組換え、転位、UVまたは光誘発突然変異、PCR が介在する突然変異、確率的に発生される突然変異(英国特許明細書第2183661A号に記載されているような突然変異)、低忠実度の複製および高い複製頻度が挙げられるが、これらに限定されない。その結果、ウイルス集団は多数の異なる新規分子をコードする。
その他の例において、非溶解ファージ、例えば、新規分子をコードするM13 が低忠実度のポリメラーゼで複製させられるが、一方、DnaAが産生されない。低忠実度のポリメラーゼの発現が停止され、そして高忠実度のポリメラーゼおよびDnaAが活性化され、そして融合体をコードするE.coli染色体が同様に複製される。このプロセスが、新規分子集団中の高い突然変異率を連続して促進するようにサイクル的に繰り返される。
(5) 方向づけられた進化を促進するための選択圧の他の調節方法
また、新規分子の集団をコードする遺伝子を高い選択条件と低い選択条件の間、または更には選択条件と遺伝子の進化を促進することを許す条件の間でサイクルすることが有益である。例えば、修飾ウイルスがE.coliの2種の株、即ち、高い選択圧株と低い選択圧株の間でサイクルしてインキュベートされ、その結果、辺縁増殖が低い特異性または低いターンオーバー新規分子の産生により高い選択圧株中で生じる場合、その集団が低い選択圧株中で増加され、突然変異誘発され、次に再度高い選択圧を受ける。このサイクルが繰り返されて所望の特異性に対する新規分子集団の進化を促進する。
また、新規分子の集団をコードする遺伝子を高い選択条件と低い選択条件の間、または更には選択条件と遺伝子の進化を促進することを許す条件の間でサイクルすることが有益である。例えば、修飾ウイルスがE.coliの2種の株、即ち、高い選択圧株と低い選択圧株の間でサイクルしてインキュベートされ、その結果、辺縁増殖が低い特異性または低いターンオーバー新規分子の産生により高い選択圧株中で生じる場合、その集団が低い選択圧株中で増加され、突然変異誘発され、次に再度高い選択圧を受ける。このサイクルが繰り返されて所望の特異性に対する新規分子集団の進化を促進する。
高い選択圧株の安定性および選択分子の突然変異率に応じて、連続系または半連続系が発生する。連続系では、修飾ウイルスが低い選択圧株中で連続的に生産される。遊離ウイルス粒子が回収され、突然変異誘発され、そして低忠実度の複製だけで生じ得るレベルを越えて新規分子の集団の異質性を増大するように、一部が低い選択圧インキュベーション室へ再度導入される。残部が高い選択圧株でインキュベートされる。低い選択圧株インキュベーション室は新しいバクテリアで周期的に接種され、またはそのウイルスの複製率に対するその株の複製率がバクテリア集団を維持するのに充分であるようにその条件が調節される。
ウイルスの複製に必須の増殖因子がダウンモジュレーションされる或る実施形態において、連続系中の高い選択圧バクテリアは、或る程度の所望の特異性を有する新規分子が産生されるまで補給される必要はないであろう。これは、選択分子を開裂する能力がない新規分子をコードする遺伝子を有する修飾ウイルスの感染が不成功であるからである。それは、選択構築物が開裂され、そして感染が溶解サイクルにより進行するという機能がウイルス複製機構中で再度獲得される場合のみである。所望の分子の幾つかの能力を有する新規分子が一旦産生されると、ウイルス増殖が促進される。選択が、インキュベーション室への新しい高い選択圧バクテリアを連続的に添加することにより所望の特異性、反応型およびターンオーバー速度に関して続けられる。添加された高い選択圧バクテリアが最初の高い選択圧バクテリアのアリコートから直接増殖され、その結果、バクテリア集団が進化的にリセットされる。また、選択方法は非溶解ファージを使用し得る。
方向づけられた進化に関して、新規分子の集団は、所望の新規分子の特性に最も類似の特性、例えば、活性、特異性、ターンオーバー、等を有する分子、例えば、プロテアーゼの配列をベースとしている。或る実施形態において、新規分子をコードする遺伝子集団が単一源から誘導し得るので、突然変異誘発および低忠実度複製が安定な異種集団を発生するのに重要である。加えて、選択圧は、所望の新規分子をコードする遺伝子の進化を助けるのに調節可能であり、かつ/またはサイクル的であり得る。方向づけられた進化を促進するのに重要なその他の技術は、その集団をコードする遺伝子の複製の合計数を増加し、そしてミューテーター低忠実度ポリメラーゼを使用することにより新規分子の集団の異質性を増大することである。
例えば、新規分子の進化開始点は、その系に有害ではない特定の配列を認識する特別なプロテアーゼであってもよい。しかしながら、或る実施形態において、複数の新規分子の開始点を有することが有利である。こうして、同じファミリーまたは異なるファミリーの幾つかの異なるプロテアーゼが最初に修飾ウイルス中にコードされてもよい。複数の新規分子の開始点が使用される場合には、所望の触媒活性もしくは特異性、またはその両方に近似する開始点が組み込まれてもよい。
B.宿主選択方法
(1) 正の選択
正の細胞選択は種々の方法で生じ得る。一つの例において、増殖の利益を細胞に与える細胞増殖因子が機能的にダウンモジュレーションされる。ダウンモジュレーションされた細胞増殖因子が選択分子中で複合体化され、その結果、所望の新規分子の産生後に、増殖因子が機能的にアップモジュレーションされる。こうして、所望の新規分子の選択が正の細胞選択により生じる。
(1) 正の選択
正の細胞選択は種々の方法で生じ得る。一つの例において、増殖の利益を細胞に与える細胞増殖因子が機能的にダウンモジュレーションされる。ダウンモジュレーションされた細胞増殖因子が選択分子中で複合体化され、その結果、所望の新規分子の産生後に、増殖因子が機能的にアップモジュレーションされる。こうして、所望の新規分子の選択が正の細胞選択により生じる。
また、毒素が選択分子に組み込まれ、その結果、その機能が維持またはアップモジュレーションされる。機能的に維持またはアップモジュレーションされた毒素は選択分子中で複合体化され、その結果、所望の新規分子の産生後に、増殖因子が機能的にダウンモジュレーションされる。所望の新規分子の選択が、正の細胞選択により再度起こる。
このような正の細胞選択技術は、適当な培地を加えた簡単なインキュベーション室中で適正条件、等のもとでケモスタット、タービドスタットを含む種々の異なる装置中で行い得る。
(2) 負の選択
負の細胞選択は種々の方法で起こり得る。細胞に増殖の利益を与える細胞増殖因子は、選択分子中で複合体化される場合に維持またはアップモジュレーションされたその機能を有する。所望の新規分子の産生およびそれと選択分子の相互作用後に、増殖因子が機能的にダウンモジュレーションされる。こうして、所望の新規分子の選択が負の細胞選択により生じる。
負の細胞選択は種々の方法で起こり得る。細胞に増殖の利益を与える細胞増殖因子は、選択分子中で複合体化される場合に維持またはアップモジュレーションされたその機能を有する。所望の新規分子の産生およびそれと選択分子の相互作用後に、増殖因子が機能的にダウンモジュレーションされる。こうして、所望の新規分子の選択が負の細胞選択により生じる。
その他の例において、毒素が選択分子に組み込まれ、その結果、その機能がダウンモジュレーションされる。しかしながら、所望の新規分子の産生後に、毒素が機能的にアップモジュレーションされる。再度、所望の新規分子の選択が負の細胞選択により起こる。
負の細胞選択は、増殖している細胞を優先的に死滅させる抗生物質の如き分子の存在下での増殖の如き方法を使用して行われる。抗生物質を含む培地から抗生物質を含まない増殖培地に細胞をサイクルして通すことにより、増殖能のある細胞を選択し得る。
C.レプリケーター選択方法
(1) 正のレプリケーター選択
レプリケーター、例えば、ウイルスの正の選択を利用する本発明の実施形態において、単離、生成または進化させるべき遺伝子およびその遺伝子プールまたはその突然変異体がレプリケーターの集団内でコードされる。ウイルス集団は宿主細胞に感染するようにされる。新規分子を発現する遺伝子を有するウイルス粒子は優先的な増殖上の利点(溶解経路)または組み込み上の利点(溶原経路)を与えられる。ウイルス複製が選択可能な特性である場合、選択分子が、選択分子中で機能的にダウンモジュレーションされるウイルス複製に関与する必須タンパク質を使用してつくられてもよい。次に、新規分子をコードする遺伝子が、認識配列とのその相互作用および増殖因子のアップモジュレーションおよびその結果のウイルス複製に基いて得られる。
(1) 正のレプリケーター選択
レプリケーター、例えば、ウイルスの正の選択を利用する本発明の実施形態において、単離、生成または進化させるべき遺伝子およびその遺伝子プールまたはその突然変異体がレプリケーターの集団内でコードされる。ウイルス集団は宿主細胞に感染するようにされる。新規分子を発現する遺伝子を有するウイルス粒子は優先的な増殖上の利点(溶解経路)または組み込み上の利点(溶原経路)を与えられる。ウイルス複製が選択可能な特性である場合、選択分子が、選択分子中で機能的にダウンモジュレーションされるウイルス複製に関与する必須タンパク質を使用してつくられてもよい。次に、新規分子をコードする遺伝子が、認識配列とのその相互作用および増殖因子のアップモジュレーションおよびその結果のウイルス複製に基いて得られる。
正のウイルス選択は多くの固有の利点を与える。ウイルスは無数のコード配列の高度に効率のよいキャリヤーであり、そしてコード物質を物理的に分離するのに都合のよい方法を与える。加えて、一部のウイルスはそれら自体の複製機構および複製起点をコードするので、高忠実度および低忠実度の複製系が同時に働くようにできる(一つがウイルスに対して、もう一つが宿主に対して働く)。また、ウイルスはバクテリアよりも速い速度で複製する。これは宿主とウイルスの間の単位時間当たりの複製の数の大きな差を可能にし、これが突然変異の合計数の差を生じ得る。それ故、正の選択および変異性、即ち、新規分子をコードする集団における高い突然変異率、並びに均一性、即ち、選択分子をコードする集団における低い突然変異率を促進し、それにより非有益変異体の選択を最小にすることが可能である。
ウイルスの正の選択および宿主細胞の負の選択を利用する本発明の方法は、新規分子をコードする修飾バクテリオファージおよび選択分子をコードするE.coliの第一の修飾株を生じることにより行い得る。修飾ファージはその複製に必要な成分の全てをコードするとは限らない。修飾ファージ中でコードされないこれらの複製成分は、それらの機能を変調する選択分子中で第一の修飾E.coli株中でコードされる。
推定上の新規分子をコードする修飾ファージは、第一の株による選択の前にE.coliの第二の修飾株中で産生される。複製に重要な一種以上の成分を欠いている修飾バクテリオファージは典型的な宿主細胞の中で複製せず、かくして修飾ファージ中で欠如している一種以上の成分をコードし、それを産生する第二の株が形成されて、第一の株による選択のための修飾ファージの大集団を産生する。
選択圧は連続流または半連続流の細胞培養物中でウイルスに対してかけられてもよく、また通常のウイルスアッセイが行われてもよい。条件および/または希釈が適正である場合、細胞の負の選択も使用し得る。この場合、単離、創製または進化させるべき分子を発現する遺伝子を有するウイルスは、宿主細胞に選択上の不利を与え得る選択上の利点を宿主細胞内で有する。次に、負の選択につき記載された方法が感染細胞を選択するのに使用し得る。
(2) 宿主の正の選択による負のレプリケーターの選択
対象の遺伝子の選択は、レプリケーター増殖および/または複製の負の選択および/または宿主細胞増殖の正の選択により行い得る。溶解ウイルスは、選択分子中で複合体化される場合にウイルスに増殖上の利益を与えるが、所望の新規分子が発現され、そして選択分子と相互作用して増殖因子を放出する場合にウイルスに選択上の不利を与えるウイルス増殖因子をコードする宿主細胞と共に使用し得る。このような選択分子は、酵素の活性をダウンモジュレーションしない酵素内に挿入された認識配列を有するウイルス複製に必須の酵素であり得る。所望の新規分子との相互作用および認識配列の開裂後に、ウイルス複製酵素は機能的にダウンモジュレーションされるようになる。ウイルスは負に選択され、そして宿主細胞が正の選択を受ける。
対象の遺伝子の選択は、レプリケーター増殖および/または複製の負の選択および/または宿主細胞増殖の正の選択により行い得る。溶解ウイルスは、選択分子中で複合体化される場合にウイルスに増殖上の利益を与えるが、所望の新規分子が発現され、そして選択分子と相互作用して増殖因子を放出する場合にウイルスに選択上の不利を与えるウイルス増殖因子をコードする宿主細胞と共に使用し得る。このような選択分子は、酵素の活性をダウンモジュレーションしない酵素内に挿入された認識配列を有するウイルス複製に必須の酵素であり得る。所望の新規分子との相互作用および認識配列の開裂後に、ウイルス複製酵素は機能的にダウンモジュレーションされるようになる。ウイルスは負に選択され、そして宿主細胞が正の選択を受ける。
D. 多重レプリケーター方法
多重レプリケーターがまた同じ宿主内で使用されてもよく、即ち、選択方法の異なる成分がレプリケーターの異なる集団によりコードされてもよい。例えば、異なるレプリケーターは、推定上の新規分子の集団、認識配列、変調部分、選択分子、等の一つ以上をコードし得る。異なるウイルスおよびプラスミドが互いに組み合わされて使用されてもよく、新規分子をコードする遺伝子の異種集団を生じ得る。
多重レプリケーターがまた同じ宿主内で使用されてもよく、即ち、選択方法の異なる成分がレプリケーターの異なる集団によりコードされてもよい。例えば、異なるレプリケーターは、推定上の新規分子の集団、認識配列、変調部分、選択分子、等の一つ以上をコードし得る。異なるウイルスおよびプラスミドが互いに組み合わされて使用されてもよく、新規分子をコードする遺伝子の異種集団を生じ得る。
対象の基質との所望の相互作用が可能な新規分子をコードする遺伝子の単離、創製または方向づけられた進化のためのこのような方法は、
宿主細胞集団中のレプリケーターの一つ以上の集団において、推定上の新規分子1個の多数コピーまたは多数の推定上の新規分子、前記新規分子を発現する一つ以上のレプリケーター集団のための増殖因子、および前記増殖因子と機能的に関連する対象の基質またはその類似体、および、必要により、前記レプリケーター増殖因子の変調部分を発現させ、そして
選択条件を課して、例えば、宿主細胞の集団を選択条件下でインキュベートして、前記類似体と相互作用して前記増殖因子の活性を変更する新規分子を発現するレプリケーターを選択することを含む。
宿主細胞集団中のレプリケーターの一つ以上の集団において、推定上の新規分子1個の多数コピーまたは多数の推定上の新規分子、前記新規分子を発現する一つ以上のレプリケーター集団のための増殖因子、および前記増殖因子と機能的に関連する対象の基質またはその類似体、および、必要により、前記レプリケーター増殖因子の変調部分を発現させ、そして
選択条件を課して、例えば、宿主細胞の集団を選択条件下でインキュベートして、前記類似体と相互作用して前記増殖因子の活性を変更する新規分子を発現するレプリケーターを選択することを含む。
幾つかの成分の発現順序は、発現の相対的なタイミングおよび選択条件の賦課といった選択の問題である。また、本発明の別の実施形態におけるように、前記増殖因子、認識配列または変調部分の一つ以上を外因的に加えることも可能である。
E. 疾病細胞に基く選択
選択方法はまた疾病状態の細胞中で直接行い得る。例えば、癌細胞が選択分子をコードする宿主として使用でき、この選択分子が新規分子(これらは癌細胞の増殖を遅らせる)の選択を可能にする。例として、細胞周期の調節において重要な細胞酵素を不当にリン酸化し、こうして癌表現型をもたらす癌細胞が宿主として使用し得る。選択は、癌表現型を逆転できる新規分子について行われる。次に、こうして選択された新規分子が毒性または有害な副作用について癌細胞と同じ型の正常な細胞中で分析される。本発明の方法は、疾病状態を正常な表現型に逆転する分子を選択するように疾病状態の細胞内で使用し得る。
選択方法はまた疾病状態の細胞中で直接行い得る。例えば、癌細胞が選択分子をコードする宿主として使用でき、この選択分子が新規分子(これらは癌細胞の増殖を遅らせる)の選択を可能にする。例として、細胞周期の調節において重要な細胞酵素を不当にリン酸化し、こうして癌表現型をもたらす癌細胞が宿主として使用し得る。選択は、癌表現型を逆転できる新規分子について行われる。次に、こうして選択された新規分子が毒性または有害な副作用について癌細胞と同じ型の正常な細胞中で分析される。本発明の方法は、疾病状態を正常な表現型に逆転する分子を選択するように疾病状態の細胞内で使用し得る。
F. 新規分子の相互作用により生成された生産物の認識に基づく選択
抗体(またはそのフラグメント)は高度な特異性を有しており、分子構造の非常にわずかな相違を解明することができ、実際に分子を特異的に認識することが可能である。その他の結合分子として、T細胞レセプター、MHC 分子およびレクチンが挙げられる。
抗体(またはそのフラグメント)は高度な特異性を有しており、分子構造の非常にわずかな相違を解明することができ、実際に分子を特異的に認識することが可能である。その他の結合分子として、T細胞レセプター、MHC 分子およびレクチンが挙げられる。
高度に特異的な方法で抗原と結合する抗体の能力は良く実証されており、例えば、薬剤RHからROH への変換(8) のための部位特異的ヒドロキシラーゼの単離、創製または方向づけられた進化についての、本発明の方法を行うのに有利に使用し得る。有利な方法が図3に記載され、以下に詳述される。
まず、この例では、ヒドロキシル化された薬剤ROH に特異的なモノクローナル抗体を(9) のプロトコルのようなプロトコルにより産生し得るように、単離/精製または化学合成により少量の所望の生産物またはこの生産物の類似体を得ることが必要である。次に、抗体を(10)、(11)、および(12)の技術の延長により E.coli中でその機能的なコンホメーションで発現させる。この組換え抗体は、後記のように更に発達させてROH のその結合を細胞増殖に関連させる。
幾つかのクラスの抗体の重要な特性は、抗体の定常領域が結合後にコンホメーション変化を受けることである。このコンホメーションの変化は、例えば、IgM クラスの抗体で明らかである。フランク(Frank) らは、(13)の補遺における彼らの章に、“[抗原の]結合が抗体のコンホメーション変化を促進する”と述べている。このようなコンホメーション変化が(14)、(15)に更に記載され、そして(15)に準引用され、(16)および(17)に記載されている。加えて、コンホメーション変化は抗体の結合に寄与し得ることが知られている(18)。これらのコンホメーション変化は生産物の形成とその後の抗体結合を増殖変調に関連させるのに使用し得る。 増殖速度変調に対するこの抱き合わせ(tie in)は種々の異なる方法でつくることができる。タンパク質の機能が結合した定常領域のコンホメーション(即ち、結合または未結合)に基いて高度に変調されるようなタンパク質を使用し得る。または、好ましい例において、細胞増殖に対する抱き合わせは、機能が定常領域に共有結合されているか否かに基いて変調されるタンパク質の結合によるものである。このようなタンパク質は、マルチ−サブユニットホロ酵素においてのみ活性であるタンパク質、もしくは立体障害を受けていない場合にのみ活性であるペプチド配列、または大きな抗体に接近し得ない領域において活性である配列であってもよい。例はマルチ−サブユニットアスパルテートトランスカルバモイラーゼ、ピリミジンヌクレオチド合成に必須な遺伝子である。この酵素は12のポリペプチド鎖を含み、そしてその触媒活性がコンホメーション変化により変調される(19)。アスパルテートトランスカルバモイラーゼの如き酵素(これらは高度に複雑であり、かつその触媒活性がコンホメーションに対し高度に感受性である)が良好な候補である。何となれば、それらの機能は、それらのサブユニットが大きな抗体分子に複合体化される場合に変調し得るからである。加えて、アスパルテートトランスカルバモイラーゼにおいて、活性部位は二つのサブユニットの界面で形成される。組換え抗体の定常領域へのアスパルテートトランスカルバモイラーゼサブユニット遺伝子の連結方法が実施例Iに記載される。
所望の特異的にヒドロキシル化された薬剤ROH を産生し得る新規分子を得るために、ピリミジンヌクレオチド制限条件下の細胞選択が宿主株(これは有効な増殖のためにアスパルテートトランスカルバモイラーゼ機能を必要とし、かつ非特異的プロテアーゼを欠損している)中で行われる。抗体の定常領域からのアスパルテートトランスカルバモイラーゼの開裂は、抗体がROH と結合する時に起こる。これは、抗体がその抗原に結合される時に抗体の定常領域のコンホメーションに特異的なプロテアーゼの使用により達成される。特異的プロテアーゼは、本発明の技術を使用して開発される。アスパルテートトランスカルバモイラーゼが選択分子から開裂され、そして抗体が所望のヒドロキシラーゼにより触媒作用されたその抗原、即ち、薬剤、ROH に結合される時にその活性マルチ−サブユニット形態を形成させる。
結合により誘発されたコンホメーション変化は異なる方法でアプローチし得る。抗原グルーピングによる架橋または連結後の抗体の密な詰め込みがまたコンホメーション変化を生じ得る。密に詰め込まれた抗体の四次構造または三次構造を標的とし得る。抗体の密な詰め込みが通常起こらないような関連方法において、所望のエピトープ以外のエピトープに結合するが、所望のエピトープに空間上近いダミー抗体が使用し得る。こうして、所望のエピトープへの抗体の結合後に、抗体の密な詰め込みコンホメーション変化が起こるであろう。
新規分子の相互作用により生成された生産物の認識に基く本発明の実施形態は、とりわけ、新規なキナーゼ、ホスファターゼおよびメチラーゼまたはウリジニル化、アデニル化、ヒドロキシル化またはグリコシル化できる分子の選択を含む。
G. 推定上の新規分子の発現レベルの調節による新規分子の活性レベルの調節
新規分子の選択圧は、推定上の新規分子の発現のレベルを設定することにより調節し得る。所望の機能の酵素を開発しようとする場合、推定上の新規分子の発現のレベルを使用して新規分子の所望のターンオーバー速度を方向づけることができる。高いターンオーバー速度が選択される場合、推定上の新規分子の発現が低レベルで調節される。また、低いターンオーバー速度が所望される場合、推定上の新規分子の発現が高レベルで調節される。更に詳しくは、高いターンオーバー速度が所望される場合、いずれかの或る時点で系中に存在する新規分子の数(また、それらの合成の速度および分解の速度を考慮する)に関して、多数の新規分子反応イベントが選択性を与えるのに単位時間当たりに必要とされ
ることを確実にする選択分子が使用し得る。こうして、選択圧は、
いずれかの所定の時点で存在する推定上の新規分子の数を適当に設定することにより加えることができる。
新規分子の選択圧は、推定上の新規分子の発現のレベルを設定することにより調節し得る。所望の機能の酵素を開発しようとする場合、推定上の新規分子の発現のレベルを使用して新規分子の所望のターンオーバー速度を方向づけることができる。高いターンオーバー速度が選択される場合、推定上の新規分子の発現が低レベルで調節される。また、低いターンオーバー速度が所望される場合、推定上の新規分子の発現が高レベルで調節される。更に詳しくは、高いターンオーバー速度が所望される場合、いずれかの或る時点で系中に存在する新規分子の数(また、それらの合成の速度および分解の速度を考慮する)に関して、多数の新規分子反応イベントが選択性を与えるのに単位時間当たりに必要とされ
ることを確実にする選択分子が使用し得る。こうして、選択圧は、
いずれかの所定の時点で存在する推定上の新規分子の数を適当に設定することにより加えることができる。
H. 或る種のプロテアーゼの選択
本発明の宿主細胞またはレプリケーター選択方法は、治療上関心のある或る種の基質を開裂できる新規なプロテアーゼの進化を分離し、創製し、または方向づけるのに行い得る。
本発明の宿主細胞またはレプリケーター選択方法は、治療上関心のある或る種の基質を開裂できる新規なプロテアーゼの進化を分離し、創製し、または方向づけるのに行い得る。
このような認識配列の例はインフルエンザ赤血球凝集素のエピトープである。とりわけ、下記の配列が選択分子中にとり込まれ得る:
部位Aアミノ酸140-146 、
Lys-Arg-Gly-Pro-Gly-Ser-Gly または
Lys-Arg-Gly-Pro-Asp-Ser-Gly または
Lys-Arg-Gly-Pro-Asp-Asn-Gly 、または
部位Bアミノ酸187-196
Thr-Asp-Gln-Glu-Gln-Thr-Ser-Leu-Tyr-Val または
Thr-Asn-Gln-Glu-Gln-Thr-Ser-Leu-Tyr-Val または
Thr-Asn-Lys-Glu-Gln-Thr-Asn-Leu-Tyr-Val 、または
部位Cアミノ酸273-279
Pro-Ile-Asp-Thr-Cys-Ile-Ser または
Pro-Ile-Gly-Thr-Cys-Ile-Ser または
Pro-Ile-Asp-Thr-Cys-Ser-Ser 、または
アミノ酸52-54
Cys-Asn-Asn または
Cys-Asp-Asn または
Cys-Asn-Lys
部位Aアミノ酸140-146 、
Lys-Arg-Gly-Pro-Gly-Ser-Gly または
Lys-Arg-Gly-Pro-Asp-Ser-Gly または
Lys-Arg-Gly-Pro-Asp-Asn-Gly 、または
部位Bアミノ酸187-196
Thr-Asp-Gln-Glu-Gln-Thr-Ser-Leu-Tyr-Val または
Thr-Asn-Gln-Glu-Gln-Thr-Ser-Leu-Tyr-Val または
Thr-Asn-Lys-Glu-Gln-Thr-Asn-Leu-Tyr-Val 、または
部位Cアミノ酸273-279
Pro-Ile-Asp-Thr-Cys-Ile-Ser または
Pro-Ile-Gly-Thr-Cys-Ile-Ser または
Pro-Ile-Asp-Thr-Cys-Ser-Ser 、または
アミノ酸52-54
Cys-Asn-Asn または
Cys-Asp-Asn または
Cys-Asn-Lys
このような認識部位のその他の例はHIV gp120 の下記の部位である:
(a) 可変領域3、アミノ酸271-295
N-N-T-R-K-S-I-R-I-Q-R-G-P-G-R-A-F-V-T-I-G-K-I-G-N
(b) 保存ドメイン4、アミノ酸392-402
Q-F-I-N-M-W-Q-E-V-G-K
(c) 保存ドメイン5、アミノ酸452-474
E-L-Y-K-Y-K-V-V-K-I-E-P-L-G-V-A-P-T-K-A-K-R-R
(a) 可変領域3、アミノ酸271-295
N-N-T-R-K-S-I-R-I-Q-R-G-P-G-R-A-F-V-T-I-G-K-I-G-N
(b) 保存ドメイン4、アミノ酸392-402
Q-F-I-N-M-W-Q-E-V-G-K
(c) 保存ドメイン5、アミノ酸452-474
E-L-Y-K-Y-K-V-V-K-I-E-P-L-G-V-A-P-T-K-A-K-R-R
このような配列の変異体に対しプロテアーゼが産生し得る。また、このような配列の同じ基本コンホメーションを有する重複選択分子が、一般にそれらの全コンホメーションに特異的であるプロテアーゼを選択するのに使用し得る。
I. 認識配列と推定上の新規分子を発現する遺伝子の組み合わせの使用
認識配列と推定上の新規分子を発現する遺伝子の組み合わせが使用し得る。二つの異なる認識配列が、それらの進化開始点により区別される二つの推定上の新規分子集団を発現する遺伝子と一緒に選択分子の二つの重複組のそれぞれで使用し得る。新規分子が認識配列の一つと反応する第一の集団から得られ、そして新規分子がその他の認識配列と反応するその他の集団から得られる。 その他の例において、二つの密接に関係する認識配列、AおよびA’をとり込む選択分子が使用される。所望の新規分子による両認識配列との相互作用が、或る程度の選択性を与えるのに必要とされる。選択は同時に両方の認識配列に対する反応性につき行い得る。これは、AおよびA’に対し広い特異性を有する一つの分子の選択、または一つがAに対し特異性を有し、その他がA’に対し特異性を有する二つの分子の選択により起こり得る。それぞれの場合において、AおよびA’の両方に対する反応性が同時に選択される。同様の方法において、選択分子の一組がAを含み、そして他の組が重複選択分子中にA’を含む多重選択分子が使用し得る。
認識配列と推定上の新規分子を発現する遺伝子の組み合わせが使用し得る。二つの異なる認識配列が、それらの進化開始点により区別される二つの推定上の新規分子集団を発現する遺伝子と一緒に選択分子の二つの重複組のそれぞれで使用し得る。新規分子が認識配列の一つと反応する第一の集団から得られ、そして新規分子がその他の認識配列と反応するその他の集団から得られる。 その他の例において、二つの密接に関係する認識配列、AおよびA’をとり込む選択分子が使用される。所望の新規分子による両認識配列との相互作用が、或る程度の選択性を与えるのに必要とされる。選択は同時に両方の認識配列に対する反応性につき行い得る。これは、AおよびA’に対し広い特異性を有する一つの分子の選択、または一つがAに対し特異性を有し、その他がA’に対し特異性を有する二つの分子の選択により起こり得る。それぞれの場合において、AおよびA’の両方に対する反応性が同時に選択される。同様の方法において、選択分子の一組がAを含み、そして他の組が重複選択分子中にA’を含む多重選択分子が使用し得る。
J. 無細胞方法
本発明はまた無細胞方法で行い得る。無細胞方法の好ましい実施形態が図4Aおよび4Bに開示されている。
本発明はまた無細胞方法で行い得る。無細胞方法の好ましい実施形態が図4Aおよび4Bに開示されている。
図4Aおよび4Bを参照して、参照数字200 は推定上の新規分子の多数コピーまたは多数の異なる推定上の新規分子をコードするDNA を表す。DNA 200 が突然変異誘発を受け、それにより多数の異なる推定上の新規分子をコードするDNA の異種集団202 を形成する。集団202 が転写され、そして翻訳されて多数の異なる推定上の新規分子204 を発現する。参照数字206 は、その集団内の対象の新規分子を表す。
参照数字208 は、増殖変調部分としてのアクチンおよび対象の基質であるかまたは対象の基質を表す認識配列を含む選択分子をコードするDNA を表す。DNA 集団208 は転写され、そして翻訳されて選択分子210 の集団を発現する。
次に、推定上の新規分子の集団204 はインキュベーター212 中で選択分子210 の集団とインキュベートされる。推定上の新規分子および選択分子のインキュベーションは、所望の新規分子 206 による選択分子内の認識部位の酵素的開裂を生じ、それによりアクチンモノマー214 を選択分子から放出する。その反応が完結した後、DNase 216 が反応混合物に添加され、そしてその混合物が、存在する場合の遊離アクチンがDNase を阻害することを可能にするのに充分な時間にわたってインキュベーター218 中でインキュベートされる。インキュベーター212 からの過剰のインキュベートされた混合物がDNase 216 に対して使用され、DNase の全部が阻害されるようにする。アクチンモノマーは参照数字220 で示されるようにDNase を阻害する。次に、アクチンが阻害された後に、異なる推定上の新規分子202 の集団をコードする突然変異DNA の異種集団が多数の異なる推定上の新規分子、アクチン系選択分子およびDNase のインキュベートされた混合物に添加され、そしてその混合物がインキュベーター218 中で更にインキュベートされる。所望の新規分子の存在が非分解DNA の存在により分析される。
DNA が単離/精製され、分配され、発現され、そして新規分子の所望の機能につき再度分析される。好ましい方法において、単離/精製されたDNA は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) により増幅され、そして増幅DNA がその方法の1回以上の反復にかけられて所望のDNA を選択する。
本発明は下記の実施例により更に説明される。
実施例I
人工チモーゲンおよびウイルスの正の選択の使用によるHIV gp 120 からのデカペプチド配列の新規な一種以上のプロテアーゼの生成
実施例Iは、gp120 からのデカペプチド認識配列に特異的な一種以上のエンドペプチダーゼをつくる方法を記載する。その方法は、タンパク質系選択分子をコードする遺伝子融合を使用する。ウイルス集団中にコードされた新規なプロテアーゼは、デカペプチド認識配列を切断し、それによりウイルス複製に必要なタンパク質を放出する。この実施例はウイルスの正の選択の代表である。簡素化された略図が図2A、2Bおよび2Cに示される。
人工チモーゲンおよびウイルスの正の選択の使用によるHIV gp 120 からのデカペプチド配列の新規な一種以上のプロテアーゼの生成
実施例Iは、gp120 からのデカペプチド認識配列に特異的な一種以上のエンドペプチダーゼをつくる方法を記載する。その方法は、タンパク質系選択分子をコードする遺伝子融合を使用する。ウイルス集団中にコードされた新規なプロテアーゼは、デカペプチド認識配列を切断し、それによりウイルス複製に必要なタンパク質を放出する。この実施例はウイルスの正の選択の代表である。簡素化された略図が図2A、2Bおよび2Cに示される。
バクテリオファージT7の宿主株であるE.coli Bを、T7欠失変異体を補足するようにプラスミドの導入により形質転換する。二種の異なる欠失変異体T7株をつくり、こうして二種の相当するE.coli相補形質転換体を、以下にリストされるように作製する。
1) E.coli形質転換体1(ET1) を、T7遺伝子gp1 (RNAポリメラーゼ) 、gp 4 (プライマーゼ/ヘリカーゼ)、および低忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 (DNAポリメラーゼ) の誘導発現のための配列を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。この形質転換宿主は、これらの遺伝子の誘導発現により、遺伝子gp 1、4、および5のT7欠失変異体(T7A) の増殖を可能にする。
2) E.coli形質転換体2(ET2) を、T7遺伝子gp1 、gp 4、低忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 、そして加えて遺伝子10A(主要ヘッドタンパク質)、13(内部ウイルス粒子タンパク質)、および18(DNA 成熟タンパク質)の誘導発現のための配列を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。この形質転換宿主は、これらの遺伝子の誘導発現により、遺伝子gp 1、4、5、10A 、13、および18のT7欠失変異体(T7B) の増殖を可能にする。
その他に、二種のE.coli選択形質転換体(EST1 およびEST2) を作製する。これらの形質転換細胞系は、これらの細胞中でコードされたT7遺伝子が遺伝子融合体として複合体形成される点でET1およびET2 とは異なる。加えて、これらの株をプロテアーゼ欠失(例えば、lon 、hfl 、またはhtpRの如き株)につき選択する(1)および(20)。これらの二種の形質転換体を、以下に記載する。
1) E.coli選択形質転換体1(EST1)を、T7遺伝子gp1 、gp 4、および低忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 の発現のための配列(これらの全ての配列はgp120 プロテアーゼ認識配列により連結された下記の表に概説されたようなそれらのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方に融合された変調部分(T4からのウイルス粒子構造コートタンパク質)を有する)を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。
2) E.coli選択形質転換体2(EST2)を、T7遺伝子gp1 、gp 4、低い忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 、そして加えて遺伝子10A(主要ヘッドタンパク質)、13(内部ウイルス粒子タンパク質)、および18(DNA 成熟タンパク質)の誘導発現のための配列(これらの全ての配列はgp120 プロテアーゼ認識配列により連結された下記の表に概説されたようなそれらのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方に融合された変調部分(T4からのウイルス粒子構造コートタンパク質)を有する)を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。
T7遺伝子 アミノ末端T4遺伝子 カルボキシ末端T4遺伝子
1 7 20
4 27 23
5 14 15
10A 18 12
13 17 24
18 3 hoc
T7遺伝子 アミノ末端T4遺伝子 カルボキシ末端T4遺伝子
1 7 20
4 27 23
5 14 15
10A 18 12
13 17 24
18 3 hoc
T7の完全配列が(21)に説明されている。T7配列からの情報を使用して、プライマーをプラスミドに挿入すべき遺伝子のPCR 媒介増幅のために化学合成する。それぞれの遺伝子のPCR プライマーの例を以下にリストし、数字は(21)に示されたT7 DNA 配列に相当する。
遺伝子 プライマーA プライマーB
1 3171-3185 5806-5820
4 11565-11579 13249-13263
5 14353-14367 16451-16465
10A 22966-22980 23987-24001
13 27306-27320 27706-27720
18 36552-36566 36805-36819
遺伝子 プライマーA プライマーB
1 3171-3185 5806-5820
4 11565-11579 13249-13263
5 14353-14367 16451-16465
10A 22966-22980 23987-24001
13 27306-27320 27706-27720
18 36552-36566 36805-36819
これらの遺伝子のそれぞれのPCR 増幅を(1) に記載された技術の如き通常の技術により行う。鋳型として使用されるT7野生型ファージおよびそれらのDNA を、(22)および(23)により記載されたようにして下記の方法により単離/精製する。
一旦増幅されたT7遺伝子をp-KK177-3 の如き誘導プロモーターを有するプラスミドベクター(そのベクターはtac プロモーターを使用する)につなぐ。tac プロモーターを、高レベルのlac リプレッサーを発現するE.coli株中でターン・オフする。そのプロモーターを1mMの最終濃度までのイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)の添加により誘導する。p-KK177-3 並びにtacプロモーターは(1) に説明されている。p-KK177-3 の如き誘導プロモーターを含むプラスミドへのPCR により増幅されたT7遺伝子の連結を、(1) に記載された通常の連結技術により行うことができる。次に、組換えプラスミドを使用して電気形質転換の如き技術により、または塩化カルシウムを使用することによりE.coli B株(これは高レベルのlac リプレッサーを発現する)を形質転換する。これらの技術に関するプロトコルが(1) に記載されている。
遺伝子融合が分子生物学において普通に使用されており、そしてβ−ガラクトシダーゼ融合タンパク質の構築のための種々の異なる方法が(24)に記載されている。これらの方法または先に言及した(1) に記載された方法を使用して、アミノ末端およびカルボキシ末端の両方に結合されたT4構造コートタンパク質遺伝子と共にT7遺伝子を含む適当につながれた選択分子を形成し、その結果、読み取り枠が構築物中に維持される。こうして、EST1およびEST2中のT7遺伝子のそれぞれを、融合タンパク質を早期に終止する終止コドンまたは読み取り枠をシフトする挿入または欠失塩基を含まないでコードする。T4 DNA配列が配置され、そして(25)に再現されたT4ゲノム地図を使用して単離/精製されてもよい。次に、必要とされる遺伝子を、先にT7遺伝子につき記載されたような連結操作に使用するためにPCR 増幅する。次に、融合体をコードするDNA 分子を、順に、tac プロモーターの制御下でpKK177-3プラスミドDNA につなぎ得る。
プロテアーゼ認識配列は、HIV ウイルスのgp120 の第四の一定の領域(contact region)のTrp397付近のデカペプチドである。このアミノ酸はCD4 へのgp120 の結合に非常に重要である。何となれば、この位置にあるgp120 の変異体はCD4 結合を終わらせるからである。(26)からのgp120 の配列から、所望のタンパク質分解認識配列、例えば、FINMWQEVGK(フェニルアラニン−イソロイシン−アスパラギン−メチオニン−トリプトファン−グルタミン−グルタミン酸−バリン−グリシン−リシン)を決定し得る。そのヌクレオチドをコードする配列を(27)から得る。そこには、5種の異なるHIV クローン(そのそれぞれがTrp397を有する)からのヌクレオチド配列が記載されている。
T7欠失変異体を生じるのに使用し得る少なくとも4つの異なる方法がある。これらの方法は、適当な場合に特異的制限酵素を使用すること、オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発によりユニークな制限部位をつくること、オリゴヌクレオチド媒介“ループ−アウト”突然変異誘発による欠失、および系統的欠失の発生を含む。これらの技術が(1) に概説されている。T7ウイルスゲノムを、(22)および(23)に先に記載されたようにして得る。次に、T7欠失変異体ゲノムを、(28)のプロトコルに従って試験管内でウイルス粒子に適当に詰め込む。
新規分子の初期集団は幾つかの既知のプロテアーゼをベースとしている。これは幾つかの異なる進化開始点(そこから所望の新規分子が生じ得る)を可能にする。プロテアーゼはHIV プロテアーゼ、ポリオ3Cプロテアーゼ、およびサブチリシンBPN'である。これらのプロテアーゼの配列をE.coliに導入し、そして機能的酵素またはチモーゲン状態(29)および(30)の機能性を持ちうる酵素として発現する。
大きく、かつ異種の推定上の新規分子集団を生じるために、それぞれのプロテアーゼ遺伝子を部位特異的突然変異誘発並びに試験管内の化学突然変異誘発にかける。部位特異的突然変異誘発の方法は(1) に示されている。また、試験管内の化学突然変異誘発の方法が(1) に示されている。
次に、突然変異誘発された新規分子を、先に説明した方法によりプロモーター、例えば、バクテリオファージラムダPRプロモーターまたはPLプロモーター(宿主中の使用に関して、これらは新規分子産生をダウンレギュレーションするラムダリプレッサーを発現しない)またはT7プロモーターにつなぐ。次に、プロモーター/新規分子集団を、上記の操作に従ってET1 宿主細胞中で増殖されたT7A欠失変異体集団につなぐ。この操作が一旦完結されると、異種T7A 欠失変異体集団が産生され、これは、それが新規分子の異種の突然変異誘発されたプールをコードするという事実により高度に異種である。この集団を、以下、T7A/新規分子と称する。
次に、T7A/新規分子集団をET1 宿主細胞上で増殖させ、そしてEST1宿主細胞に移入する。T7A/新規分子集団のEST1宿主細胞を静止非複製増殖期に保つ。gp120 デカペプチドプロテアーゼ認識配列を切断することによりgp1 、gp4 およびgp5 機能を回復する新規分子を産生できるT7A/新規分子ウイルス粒子のみが、次に、選択分子からのT4ウイルス粒子構造コートタンパク質群を遊離でき、こうしてこれらの宿主中の増殖を可能にする。T7A/新規分子を(31)に記載されたようにしてセルスタットを使用して連続様式で添加し、または半連続バッチ法でT7A/新規分子の反復アリコートをEST1宿主に添加する。ウイルス複製が一旦起こると、得られるウイルス粒子を回収し、そしてそれらのDNA を(22)および(23)に記載されたようにして単離/精製する。新規分子配列を、プライマーの認識配列が抑制的に突然変異されなかった場合にはPCR 増幅により、野生型の新規分子をコードするDNA とハイブリダイズできるT7/ 新規分子遺伝子のフラグメントの単離/精製により、または所望の機能を有する分子を発現できるフラグメントの単離/精製により得る。
次に、EST1中で増殖できるT7/ 新規分子ウイルス粒子からの新規分子をコードする配列を幾つかの発現系(1) のいずれか中で発現し、次にプロテアーゼを更に正確に機能的な特性決定することができる。更なる選択が必要である場合、EST1中で増殖できるT7A/新規分子ウイルス粒子からの新規分子の配列をT7B につなぐ。こうして、これらの操作は、T7A に代えてT7B を使用し、ET1 に代えてET2 を使用し、そしてEST1に代えてEST2を使用する以外は、前記と同様に行われる。
こうして、実施例Iの操作は、gp120 からのデカペプチド配列に特異的な新規なプロテアーゼの開発を可能にする。
実施例II
人工チモーゲンの使用によるβ−ガラクトシダーゼに対する一種以上の新規なプロテアーゼの創製
実施例IIは、β−ガラクトシダーゼのカルボキシ末端付近の認識配列に対し或る範囲の特異性を有する一種以上のエンドペプチダーゼの創製方法を記載する。その方法は、β−ガラクトシダーゼおよびT7遺伝子を伴う遺伝子融合体を使用する。その選択操作は、ウイルス複製に必要なT7生産物機能をアップモジュレーションするβ−ガラクトシダーゼを切断する新規分子(プロテアーゼ)に基いている。それ故、この実施例はウイルスの正の選択操作を示す。その操作が一般に図2A、2Bおよび2Cに示される。
人工チモーゲンの使用によるβ−ガラクトシダーゼに対する一種以上の新規なプロテアーゼの創製
実施例IIは、β−ガラクトシダーゼのカルボキシ末端付近の認識配列に対し或る範囲の特異性を有する一種以上のエンドペプチダーゼの創製方法を記載する。その方法は、β−ガラクトシダーゼおよびT7遺伝子を伴う遺伝子融合体を使用する。その選択操作は、ウイルス複製に必要なT7生産物機能をアップモジュレーションするβ−ガラクトシダーゼを切断する新規分子(プロテアーゼ)に基いている。それ故、この実施例はウイルスの正の選択操作を示す。その操作が一般に図2A、2Bおよび2Cに示される。
詳しくは、適正な読み取り枠中のβ−ガラクトシダーゼを、融合タンパク質を早期に終結する終止コドンを含まないEST1およびEST2中にコードされるT7遺伝子のそれぞれのアミノ末端につなぐ。次に、融合体をコードするDNA をtac プロモーターの制御下でpKK 177-3 プラスミドに挿入する。
バクテリオファージT7の宿主株であるE.coli Bを、T7欠失変異体を補足するようにT7遺伝子をコードするプラスミドの導入により形質転換する。これは、これらのT7欠失変異体の増殖および増幅を可能にする。2種の異なる欠失変異体T7株をつくり、こうして2種の相当するE.coli相補形質転換体を実施例Iに記載されたようにして産生する。加えて、使用したT7遺伝子のアミノ末端に融合されたβ−ガラクトシダーゼを含むEST1およびEST2である相当する選択株を、次に選択操作に使用する。
構築物中のT7遺伝子の機能を発揮するように十分なβ−ガラクトシダーゼを切断すること以外にはプロテアーゼに対する拘束がない。これに関して、所望の新規分子は“半特異的" である。しかしながら、プロテアーゼそれ自体は特別な認識配列に特異的であってもよい。当業者は、この技術がβ−ガラクトシダーゼ以外のタンパク質を用いて認識配列に特異性を有するプロテアーゼを開発するのに使用し得ることを認めるであろう。
1) E.coli形質転換体1(ET1) を、T7遺伝子gp1 (RNAポリメラーゼ) 、gp 4 (プライマーゼ/ヘリカーゼ)、および低い忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5(DNAポリメラーゼ) の誘導発現のための配列を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。この形質転換宿主は、これらの遺伝子の誘導発現により、遺伝子gp 1、4、および5のT7欠失変異体(T7A) の増殖を可能にする。
2) E.coli形質転換体2(ET2) を、T7遺伝子gp1 、gp 4、低い忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 、そして加えて遺伝子10A(主要ヘッドタンパク質)、13(内部ウイルス粒子タンパク質)、および18(DNA 成熟タンパク質)の誘導発現のための配列を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。この形質転換宿主は、これらの遺伝子の誘導発現により、遺伝子gp 1、4、5、10A 、13、および18のT7欠失変異体(T7B) の増殖を可能にする。
その他に、二種のE.coli選択形質転換体(EST1 およびEST2) を作製する。これらの形質転換細胞系は、これらの細胞中でコードされたT7遺伝子が遺伝子融合体として複合体形成される点でET1およびET2 とは異なる。加えて、これらの株をプロテアーゼ欠失(例えば、lon 、hfl 、またはhtpRの如き株)につき選択する(1)および(20)。これらの二種の形質転換体を、以下に記載する。
1) E.coli選択形質転換体1(EST1)を、T7遺伝子gp1 、gp 4、および低い忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 の配列(これらのそれぞれがβ−ガラクトシダーゼにつながれ、その結果、発現により、変調部分β−ガラクトシダーゼがそれらのアミノ末端に融合される)を有するE.coliプラスミドpKK177-3で形質転換する。
2) E.coli選択形質転換体2(EST2)を、T7遺伝子gp1 、gp 4、低い忠実度および低下した3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を有する変異体gp5 、そして加えて遺伝子10A(主要ヘッドタンパク質)、13(内部ウイルス粒子タンパク質)、および18(DNA 成熟タンパク質)の配列(これらのそれぞれがβ−ガラクトシダーゼにつながれ、その結果、発現により、変調部分β−ガラクトシダーゼがそれらのアミノ末端に融合される)を有するE.coliプラスミドpKK 177-3 で形質転換する。
T7の完全配列が(21)に説明されている。T7配列からの情報を使用して、プライマーをプラスミドに挿入すべき遺伝子のPCR 媒介増幅のために化学合成できる。それぞれの遺伝子のPCR プライマーの例を以下にリストし、数字は(21)に示されたT7 DNA配列に相当する。
遺伝子 プライマーA プライマーB
1 3171-3185 5806-5820
4 11565-11579 13249-13263
5 14353-14367 16451-16465
10A 22966-22980 23987-24001
13 27306-27320 27706-27720
18 36552-36566 36805-36819
1 3171-3185 5806-5820
4 11565-11579 13249-13263
5 14353-14367 16451-16465
10A 22966-22980 23987-24001
13 27306-27320 27706-27720
18 36552-36566 36805-36819
これらの遺伝子のそれぞれのPCR 増幅を(1) に記載された技術の如き通常の技術により行う。鋳型として使用されるT7野生型ファージおよびそれらのDNA を、(22)および(23)により記載されたようにして下記の方法により単離/精製してよい。
一旦増幅されたT7遺伝子をp-KK177-3 の如き誘導プロモーターでプラスミドベクター(そのベクターはtac プロモーターを使用する)につなぎ得る。tac プロモーターを、高レベルのlac リプレッサーを発現するE.coli株中でターン・オフする。そのプロモーターを1mMの最終濃度までのイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)の添加により誘導する。p-KK177-3 並びにtac プロモーターは(1) に説明されている。p-KK177-3 の如き誘導プロモーターを含むプラスミドへのPCR により増幅されたT7遺伝子の連結を、(1) に記載された通常の連結技術により行うことができる。次に、組換えプラスミドを使用して電気形質転換の如き技術により、または塩化カルシウムを使用することによりE.coli B株(これは高レベルのlac リプレッサーを発現する)を形質転換する。これらの技術に関するプロトコルが(1) に記載されている。 β−ガラクトシダーゼが分子生物学において普通に使用される遺伝子であり、そしてβ−ガラクトシダーゼ融合タンパク質の構築のための種々の異なる方法が(24)に記載されている。これらの方法または先に言及した(1) に記載された方法を使用して、適正な読み取り枠中で、T7遺伝子(これらは融合タンパク質を早期に終止する終止コドンを含まないでEST1およびEST2中にコードされる)のそれぞれのアミノ末端に適当につながれたβ−ガラクトシダーゼを生成するのに使用し得る。次に、融合体をコードするDNA分子を、順に、tac プロモーターの制御下でpKK177-3プラスミドDNA につなぎ得る。
T7欠失変異体を生じるのに使用し得る少なくとも4つの異なる方法がある。これらの方法は、適当な場合に特異的制限酵素を使用すること、オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発によりユニークな制限部位をつくること、オリゴヌクレオチド媒介“ループ−アウト”突然変異誘発による欠失、および系統的欠失の発生を含む。これらの技術が(1) に概説されている。T7ウイルスゲノムを、(22)および(23)に先に記載されたようにして得る。次に、T7欠失変異体ゲノムを、(28)のプロトコルに従って試験管内でウイルス粒子に適当に詰め込む。
新規分子の集団は幾つかの既知のプロテアーゼをベースとしている。これは幾つかの異なる進化開始点(そこから所望の新規分子が生じ得る)を可能にする。使用されるプロテアーゼはHIV プロテアーゼ、ポリオ3Cプロテアーゼ、およびサブチリシンBPN'である。これらのプロテアーゼの配列をE.coliに導入し、そして機能的酵素または機能性を持ちうる酵素(29)および(30)として発現させる。
大きく、かつ異種の推定上の新規分子集団を生じるために、それぞれのプロテアーゼ遺伝子を部位特異的突然変異誘発並びに試験管内の化学突然変異誘発にかける。部位特異的突然変異誘発の方法および試験管内の化学突然変異誘発の方法が(1) に示されている。
次に、突然変異誘発された新規分子を、先に説明した方法を使用してプロモーター、例えば、バクテリオファージラムダPRプロモーターまたはPLプロモーター(宿主中の使用に関して、これらは新規分子産生をダウンレギュレーションするラムダリプレッサーを発現しない)またはT7プロモーターにつなぐ。次に、プロモーター/新規分子集団を、上記の操作に従ってET1 宿主細胞中で増殖されたT7A 欠失変異体集団につなぐ。この操作が一旦完結すると、異種T7A 欠失変異体集団(T7A/新規分子)を産生し、これは、それが新規分子の異種の突然変異誘発されたプールをコードするという事実により高度に異種である。
次に、T7A/新規分子集団をET1 宿主細胞上で増殖させ、そしてEST1宿主細胞に移入する。T7A/新規分子集団のEST1宿主細胞を静止非複製増殖期に保つ。選択分子からβ−ガラクトシダーゼ基を切断することによりgp1 、gp4 およびgp5 機能を回復する新規分子を産生できるT7A/新規分子ウイルス粒子のみが、これらの宿主中で増殖できる。T7A/新規分子ウイルス粒子を(31)に記載されたようにしてセルスタットを使用して連続様式で添加し、または半連続バッチ法でT7A/新規分子ウイルス粒子の反復アリコートをEST1宿主に添加する。ウイルス複製が一旦起こると、得られるウイルス粒子を回収し、そしてそれらのDNA を(22)および(23)に記載されたようにして単離/精製する。新規分子配列を、プライマーの認識配列が抑制的に突然変異されなかった場合にはPCR 増幅により、野生型の新規な分子をコードするDNA とハイブリダイズできるT7/ 新規分子遺伝子のフラグメントの単離/精製により、または所望の機能を有する分子を発現できるフラグメントの単離/精製により得る。次に、EST1中で増殖できるT7/ 新規分子ウイルス粒子からの新規分子をコードする配列を幾つかの発現系(1) のいずれか中で発現し、次にプロテアーゼを更に正確に機能的な特性決定することができる。更なる選択が必要である場合、EST1中で増殖できるT7/ 新規分子ウイルス粒子からの新規分子の配列をT7B につなぐ。こうして、これらの操作は、T7A に代えてT7B を使用し、ET1 に代えてET2 を使用し、そしてEST1に代えてEST2を使用する以外は、前記と同様に行う。
この操作は、β−ガラクトシダーゼのカルボキシ末端領域を切断するのに一般に特異的なプロテアーゼの開発を可能にする。
実施例III
インフルエンザ赤血球凝集素のエピトープに特異的な一種以上の新規なプロテアーゼを選択する方法
実施例III は、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)部位A(アミノ酸140 〜146)(32)からヘプタペプチド配列を特異的に切断するエンドペプチダーゼを創製する方法を記載する。その方法はT7遺伝子(その機能は融合中に複合体形成される場合にダウンモジュレーションされる)およびその他のバクテリオファージからの遺伝子を含む遺伝子融合体を使用する。選択操作は、インフルエンザHAヘプタペプチド認識配列を切断し、それによりウイルス複製に必要なT7生産物の機能をアップモジュレーションする新規分子 (エンドプロテアーゼ)に基いている。この実施例はウイルスの正の選択操作に相当する。その方法の簡素化された略図が図2A、2Bおよび2Cに見られる。
インフルエンザ赤血球凝集素のエピトープに特異的な一種以上の新規なプロテアーゼを選択する方法
実施例III は、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)部位A(アミノ酸140 〜146)(32)からヘプタペプチド配列を特異的に切断するエンドペプチダーゼを創製する方法を記載する。その方法はT7遺伝子(その機能は融合中に複合体形成される場合にダウンモジュレーションされる)およびその他のバクテリオファージからの遺伝子を含む遺伝子融合体を使用する。選択操作は、インフルエンザHAヘプタペプチド認識配列を切断し、それによりウイルス複製に必要なT7生産物の機能をアップモジュレーションする新規分子 (エンドプロテアーゼ)に基いている。この実施例はウイルスの正の選択操作に相当する。その方法の簡素化された略図が図2A、2Bおよび2Cに見られる。
ヘプタペプチド認識配列は、インフルエンザHA、AICHI/2/68のアミノ酸140 〜146 を含む。その配列はLys-Arg-Gly-Pro-Gly-Ser-Gly である。因子X認識配列(33)およびV8認識配列系(34)が使用されるような方法で使用される認識リンカーとしてヘプタペプチド配列をコードする2種の株EST1*およびEST2* を作製する。加えて、これらの株をプロテアーゼ欠失であるように選択する。これらの系において、特別なプロテアーゼに特異的な配列が、切断すべき二つの遺伝子の間に置かれる。EST1*およびEST2* の構築物は実施例Iに記載されたEST1およびEST2をベースとしているが、上記の特異的インフルエンザHAヘプタペプチド配列を含む。融合および新規分子集団を、先に記載されたようにして構築し、そして発現する。次に同様の選択プロトコルを続ける。
こうして、インフルエンザHAヘプタペプチドを切断できる新規分子の作製後に、T7遺伝子がそれらの構築物から放出される。ヘプタペプチド認識配列は融合体の全ての間の唯一共通の配列であるので、新規分子選択が、インフルエンザHAヘプタペプチドのみに特異的であるプロテアーゼに向けられる。EST1およびEST2につき実施例Iに記載されたようにして、第一の新規分子をEST1*につき選択し、続いてEST2* につき選択する。T7B 中に含まれる得られる新規分子を単離/精製し、そして特性決定する。当業者は、この技術がこの実施例に使用された配列以外の認識配列に特異性を有するプロテアーゼを開発するのに使用し得ることを認めるであろう。
実施例IV
抗体結合に基く新規なヒドロキシラーゼの創製方法
実施IVは、特定の部位で有機分子、Rをヒドロキシル化し得る分子を創製する方法を記載する。その方法はR-OHに特異的に結合し得る抗体の使用を採用する。その方法の工程の簡素化された略図が図3Aおよび3Bに見られる。
抗体結合に基く新規なヒドロキシラーゼの創製方法
実施IVは、特定の部位で有機分子、Rをヒドロキシル化し得る分子を創製する方法を記載する。その方法はR-OHに特異的に結合し得る抗体の使用を採用する。その方法の工程の簡素化された略図が図3Aおよび3Bに見られる。
抗体をそれらの定常部に結合されたアスパルテートトランスカルバモイラーゼの触媒サブユニットと融合中に複合体形成する。それらの抗原を結合することにより、抗体は配座変化を受ける。結合された抗体を、結合された抗体の配座を認識し得るエンドプロテアーゼ(本件出願のいずれかに記載された方法を使用して設計された)により切断する。放出されたアスパルテートトランスカルバモイラーゼ触媒サブユニットがマルチ−サブユニット複合体を形成し、こうしてアスパルテートトランスカルバモイラーゼ活性を機能的にアップモジュレーションし、こうして選択上の利点を細胞に与える。それ故、所望のヒドロキシ化を触媒作用し得る分子を選択し得る。
この実施例において、対象の反応は、(35)に示されているようなROH への薬剤RHの部位特異的ヒドロキシル化である。少量の所望の生成物、R-OH、またはこの生成物の類似体を単離または化学合成により生成し、その結果、ヒドロキシル化形態ROH に特異的なモノクローナル抗体が(36)のプロトコルの如きプロトコルにより作製し得る。所望の特異性を有する抗体の遺伝子を抗体のH鎖遺伝子の定常部にあるアスパルテートトランスカルバモイラーゼの触媒サブユニットの遺伝子につなぐ。次に、これらの構築物を、(10)、(11)、および(12)の技術の延長によりE.coli中でそれらの機能的配座で発現する。これらのE.coliを有効な増殖に関する機能的活性アスパルテートトランスカルバモイラーゼの要求につき選択し、そしてそれらをプロテアーゼ欠失であるように選択する。
新規分子集団はヒドロキシラーゼシトクロムp-450 をベースをする。その遺伝子を、先に記載された種々の技術により変異体ヒドロキシラーゼの異種集団をつくるように突然変異させる。次に、これらの遺伝子を低い忠実度のT7複製機構の制御下でプラスミドに挿入する。プラスミドを、抗体融合タンパク質を発現する細胞に移入する。得られる細胞をピリミジン制限培地中でケモスタット中で増殖させる。選択された細胞中でコードされたヒドロキシラーゼの遺伝子を単離/精製し、クローン化し、適当なヒドロキシラーゼの機能的特性を測定する。
当業者は、この技術がヒドロキシラーゼのように作用する能力以外の種々の機能的特性を有する分子を開発するのに使用し得ることを認めるであろう。加えて、当業者は、結合によりコンホメーション変化を受ける抗体以外の分子が種々の機構により組み合わせて増殖上の利点または欠点を与え得ることを認めるであろう。
実施例V
細胞の正の選択を使用する新規なエンドペプチダーゼの創製方法
実施例Vは、gp120 からのデカペプチド配列を特異的に切断するエンドペプチダーゼを創製する方法を記載する。略図が図1Aおよび1Bに見られる。
細胞の正の選択を使用する新規なエンドペプチダーゼの創製方法
実施例Vは、gp120 からのデカペプチド配列を特異的に切断するエンドペプチダーゼを創製する方法を記載する。略図が図1Aおよび1Bに見られる。
その方法は、その他のバクテリオファージからの種々の遺伝子と共に選択分子中で3種の細胞遺伝子、アスパルテートトランスカルバモイラーゼ、グルタミンシンテターゼ、およびトリプトファンシンテターゼ(これらの機能は融合中に複合体形成される場合にダウンモジュレーションされる)を伴う遺伝子融合を使用する。選択操作は、gp120 デカペプチド認識配列を切断し、こうして3種の細胞遺伝子の機能をアップモジュレーションし、それ故、所望の機能を有するエンドペプチダーゼを含む細胞に選択条件下で増殖上の利点を与える新規分子(エンドプロテアーゼ)に基いている。この実施例は正の細胞選択操作に相当する。
バクテリオファージT4のウイルス粒子コートタンパク質24および18の遺伝子を、実施例Iで使用されたgp120 からのプロテアーゼペプチド認識配列によりグルタミンシンテターゼのアミノ末端およびカルボキシ末端それぞれに融合する。同様に、ウイルス粒子コートタンパク質27および20をgp120 リンカーでトリプトファンシンテターゼのαサブユニットのアミノ末端およびカルボキシ末端それぞれに融合し、そしてT7の遺伝子12およびphiX174 からの遺伝子Fをgp120 リンカーでトリプトファンシンテターゼのβサブユニットのアミノ末端およびカルボキシ末端それぞれに融合する。最後に、バクテリオファージT4の遺伝子23および15からのタンパク質をgp120 リンカーでアスパルテートトランスカルバモイラーゼの触媒サブユニットのアミノ末端およびカルボキシ末端それぞれに融合し、そしてバクテリオファージT4の遺伝子27およびバクテリオファージT7の遺伝子16からのタンパク質をgp120 リンカーでアスパルテートトランスカルバモイラーゼの調節サブユニットのアミノ末端およびカルボキシ末端それぞれに融合する。アスパルテートトランスカルバモイラーゼは、カルバモイルホスフェートおよびアスパルテートからのN−カルバモイル−アスパルテートの生成を触媒作用する。
これらの構築物を適当なプロモーターで組み立てることができ、そして実施例Iに記載された連結技術を使用して発現でき、次にアスパルテートトランスカルバモイラーゼ遺伝子、グルタミンシンテターゼ遺伝子、およびトリプトファンシンテターゼ遺伝子の欠失変異体であるE.coliの株のE.coli染色体に組み入れる。更にこれらのE.coliを有効な増殖に関する機能的に活性なアスパルテートトランスカルバモイラーゼ、グルタミンシンテターゼ、およびトリプトファンシンテターゼの要求につき選択し、そしてまたプロテアーゼ欠失につき選択する。
次に、これらのE.coliを、グルタミン、トリプトファンおよびピリミジンに富む培地中で増殖させる。実施例Iからの3種のプロテアーゼをベースとする新規分子の遺伝子を前記のように突然変異させる。しかしながら、この実施例において、推定上の新規な分子を発現する遺伝子の得られる異種集団を(1) に記載された PUC ベクター(例えば、pUC18 、pUC 19、pUC118、およびpUC119) の如き高コピープラスミドにつなぎ、これは変異体低忠実度のT7複製機構の制御下にある。複製がT7複製機構の制御下にあるプラスミドが(37)に記載されている。
この実施例において、プラスミドはプラスミド1個につき多重の新規分子の遺伝子をコードするだけでなく、変異体遺伝子5 DNA ポリメラーゼによるT7複製(38)に必要とされる遺伝子をコードする。これにより、E.coli染色体の構築物をコードするDNA の集団とプラスミド上にコードされた推定上の新規な分子集団との間に突然変異率の差が生じることとなりうる。次に、選択を、(39)および(40)に記載されたようなケモスタット中でグルタミン、トリプトファンおよびピリミジン制限培地中で行う。次に、選択圧を、推定上の新規分子(これは、順に、所望の反応に関し高活性を有する変異体を得ることを助ける)をコードする遺伝子の異なる亜種につき選択するように、(41)に記載されたようにしてケモスタット(例えば、高選択圧につき培地中の低レベルのグルタミン、トリプトファンおよびピリミジン、また低選択圧につき培地中の高レベルのグルタミン、トリプトファンおよびピリミジン)中で高選択圧環境と低選択圧環境の間でサイクルする。
最後に、進化リセッティングを使用して経時にわたって選択分子構築物を更に安定化し得る。インキュベーション中に周期的に細胞を3種の異なる培地、即ち、グルタミンおよびトリプトファンを含むピリミジン制限培地(アスパルテートトランスカルバモイラーゼ機能を生じる突然変異に関するアッセイ)、ピリミジンおよびトリプトファンを含むグルタミン制限培地(グルタミンシンテターゼ機能を生じる突然変異に関するアッセイ)、およびピリミジンおよびグルタミンを含むトリプトファン制限培地(トリプトファンシンテターゼ機能を生じる突然変異に関するアッセイ)中で増殖するそれらの能力につき分析する。このような方法を使用して、有用でない変異体の発生を分析し得る。
選択分子変異体が生じることが見られるそれぞれの時点で、プラスミドを先の実施例に記載されたようにして単離/精製し、次に最初の選択分子をコードするE.coliのアリコートを形質転換するのに使用する。これは、新規分子集団の進化的進行を維持しつつ、選択分子構築物が進化的にリセットされることを可能にする。
次に、リセット集団をケモスタットに再度導入し得る。所望の特異性の新規分子が発現される場合、所望の新規分子をコードする遺伝子を有する細胞をケモスタット中で選択し、そして新規分子を有するプラスミドを、先に記載されたようにして単離/精製し得る。
次に、リセット集団をケモスタットに再度導入し得る。所望の特異性の新規分子が発現される場合、所望の新規分子をコードする遺伝子を有する細胞をケモスタット中で選択し、そして新規分子を有するプラスミドを、先に記載されたようにして単離/精製し得る。
アスパルテートトランスカルバモイラーゼ、グルタミンシンテターゼ、およびトリプトファンシンテターゼにより合成される化合物を合成でき、またはその化合物に対する必要を終わらせることができるその他の酵素または経路は、好ましくは欠失により、非機能的にされるべきである。例えば、グルタミン−ケト酸トランスアミナーゼの欠失変異体が使用されるべきである。何となれば、その酵素は2−ケト−グルタラメートからのグルタミン合成を触媒するからである。また、インドールピルベートまたはセリンからのトリプトファン合成の機構が存在すべきではない。選択に所望される宿主細胞は、グルタミン、トリプトファンおよびピリミジンが培地中に添加される場合にのみ有効に増殖するであろう。選択後に、対象のエンドプロテアーゼの遺伝子を、単離/精製し、クローン化し、そしてそれらの発現生産物を特性決定する。
当業者は、この技術が実施例に使用された認識配列以外の認識配列に対し特異性を有するプロテアーゼを開発するのに使用し得ることを認めるであろう。
実施例VI
陰性細胞選択を用いる新規エンドペプチダーゼの創製方法
実施例VIは、野生型HIVプロテアーゼよりも低い代謝回転速度でgp120由来のデカペプチド配列を特異的に開裂するエンドペプチダーゼの創製方法を記載する。この方法はデカペプチド認識配列をもつ組換えβ−ガラクトシダーゼを用いる。選択方法は、gp120デカペプチド認識配列を開裂してβ−ガラクトシダーゼ活性をダウンモジュレーションし、その結果所望のHIVプロテアーゼ活性をもつエンドペプチダーゼを含む細胞に選択条件下での増殖不利を与える新規分子(エンドペプチダーゼ)に基づく。本実施例は陰性細胞選択法を表す。
陰性細胞選択を用いる新規エンドペプチダーゼの創製方法
実施例VIは、野生型HIVプロテアーゼよりも低い代謝回転速度でgp120由来のデカペプチド配列を特異的に開裂するエンドペプチダーゼの創製方法を記載する。この方法はデカペプチド認識配列をもつ組換えβ−ガラクトシダーゼを用いる。選択方法は、gp120デカペプチド認識配列を開裂してβ−ガラクトシダーゼ活性をダウンモジュレーションし、その結果所望のHIVプロテアーゼ活性をもつエンドペプチダーゼを含む細胞に選択条件下での増殖不利を与える新規分子(エンドペプチダーゼ)に基づく。本実施例は陰性細胞選択法を表す。
プロテアーゼを酵素的に不活性にすることのできる、HIVプロテアーゼへの1つのアミノ酸変更が多く知られている〔(5)および(42)参照〕。これらの不活性ミスセンスHIVプロテアーゼのうちの1つまたはその混合物を突然変異させる。この実施例では、HIVプロテアーゼデカペプチド認識配列を含む酵素活性なβ−ガラクトシダーゼを使用するが、これは開裂によりβ−ガラクトシダーゼ分子を不活性にする(29)。
(29)のプロトコールに従い、細胞株を成育し、β−ガラクトシダーゼ構築物および突然変異不活性HIVプロテアーゼ(例えばAsp−29→Gly)をもつプラスミドを含む大腸菌MC1061株を生産する。まず、これらの方法を用いて、(5)または(42)に記載のHIVプロテアーゼ不活性突然変異体またはその2以上の組み合わせを含む株を作製する。次いでこれらの細胞系を成育してプラスミドの単離/精製を行う(1)。次いでプラスミドDNAを既に(1)に記載のように突然変異誘発に付すか、あるいは高い突然変異率をもつ大腸菌LE30 mutD株などの株中にプラスミドをトランスフェクションして突然変異誘発する(42)。
次に突然変異させたプラスミドを、所望のβ−ガラクトシダーゼ構築物(29)をもつ大腸菌MC1061株中にトランスフェクションする(1)。これらの細胞を次に(43)に記載する陰性細胞増殖で選択する。
当業者であれば、本実施例で使用した以外の認識配列への特異性をもつプロテアーゼを開発するのにもこの方法が使用できることが理解できよう。
実施例VII
陽性細胞選択を用いる新規エンドペプチダーゼの創製方法
実施例VIIは、野生型HIVプロテアーゼよりも低い代謝回転速度でgp120由来のデカペプチド配列を特異的に開裂するエンドペプチダーゼを得る方法を記載する。この方法はアスパラギン酸トランスカルバミラーゼの触媒サブユニットの融合タンパク質を用いる。選択方法は、gp120デカペプチド認識配列を開裂してアスパラギン酸トランスカルバミラーゼ活性をアップモジュレーションし、その結果所望のHIVプロテアーゼ活性をもつエンドペプチダーゼを含む細胞に選択条件下での増殖有利性を与える新規分子(エンドペプチダーゼ)に基づく。本実施例は陽性細胞選択法を表す。
陽性細胞選択を用いる新規エンドペプチダーゼの創製方法
実施例VIIは、野生型HIVプロテアーゼよりも低い代謝回転速度でgp120由来のデカペプチド配列を特異的に開裂するエンドペプチダーゼを得る方法を記載する。この方法はアスパラギン酸トランスカルバミラーゼの触媒サブユニットの融合タンパク質を用いる。選択方法は、gp120デカペプチド認識配列を開裂してアスパラギン酸トランスカルバミラーゼ活性をアップモジュレーションし、その結果所望のHIVプロテアーゼ活性をもつエンドペプチダーゼを含む細胞に選択条件下での増殖有利性を与える新規分子(エンドペプチダーゼ)に基づく。本実施例は陽性細胞選択法を表す。
前の実施例と同様に、酵素的に不活性で、かつあらかじめ(上記したように)突然変異誘発に付しておいた1つのアミノ酸変更によるHIVプロテアーゼ突然変異体の1または組み合わせから、HIVプロテアーゼ機能をもつ分子を得る。しかしながら、本実施例では、(29)に記載のHIVプロテアーゼ認識デカペプチドを介してそのアミノ末端に付着したβ−ガラクトシダーゼをもつアスパラギン酸トランスカルバミラーゼの触媒サブユニットと、HIVプロテアーゼ認識デカペプチドを介してそのカルボキシ末端に付着したバクテリオファージT7由来の遺伝子10(キャプシドタンパク質)との融合体を創製する(1)。
HIVミスセンス突然変異体の突然変異した集団を、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ触媒サブユニットの欠失突然変異体であり、前の実施例で記載した方法を用いて宿主染色体上に正しく配置された(promoted)アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ融合体を含む修飾MC1061細胞中にトランスフェクションする。さらに、これらの宿主細胞を、有効な増殖のための機能性アスパラギン酸トランスカルバミラーゼの要求性を用いて選択し、またプロテアーゼ欠失を用いて選択する。次いで、融合を開裂し、かつアスパラギン酸トランスカルバミラーゼ酵素活性を解放することのできる分子の発現の選択をケモスタット中で実施する(39)。当業者であれば、本実施例で使用した以外の認識配列への特異性をもつプロテアーゼを開発するのにもこの方法が使用できることが理解できよう。
実施例VIII
陰性細胞選択を用いる新規HIVプロテアーゼの創製方法
この実施例は実施例VIと類似である。しかしながら、本実施例では、酵素的に不活性なミスセンス突然変異体の代わりに野生型HIVプロテアーゼを出発点として用いる。さらに、HIVデカペプチド認識配列を以下の配列の1つに変更し、これらはそれぞれ別々に平行した選択に使用する。
陰性細胞選択を用いる新規HIVプロテアーゼの創製方法
この実施例は実施例VIと類似である。しかしながら、本実施例では、酵素的に不活性なミスセンス突然変異体の代わりに野生型HIVプロテアーゼを出発点として用いる。さらに、HIVデカペプチド認識配列を以下の配列の1つに変更し、これらはそれぞれ別々に平行した選択に使用する。
IN:インテグラーゼタンパク質
*:pol読み取り枠からのN−末端産物(p6*)には新しい名前がないが、これ以外は、HIVgag−polポリプロテイン中の開裂部位は新しい命名法(2)によって命名されている。CA+ とはC−末端で伸長したキャプシドタンパク質p25(24)を表す。◎
☆:Vmax/Kmの相対値は競合試験により決定した。各値は少なくとも3回の試験の平均であり、±20%の再現性がある。
*:pol読み取り枠からのN−末端産物(p6*)には新しい名前がないが、これ以外は、HIVgag−polポリプロテイン中の開裂部位は新しい命名法(2)によって命名されている。CA+ とはC−末端で伸長したキャプシドタンパク質p25(24)を表す。◎
☆:Vmax/Kmの相対値は競合試験により決定した。各値は少なくとも3回の試験の平均であり、±20%の再現性がある。
BI−P−140、BI−P−138、BI−P−144、BI−P−127およびBI−P−102の配列(配列セットA)は様々な速度でHIVプロテアーゼにより開裂されることが示されたが、開裂速度が検出できた場合には、すべてBI−P−136の速度よりもはるかに遅い速度である(44)。次いで配列セットA由来のデカペプチド認識配列を用いて陰性細胞選択を行った。5つの配列のうちの4つはHIVプロテアーゼの天然配列であるが、BI−P−136基質デカペプチドの速度の何分の一かの速度で酵素によりプロセシングされている。β−ガラクトシダーゼ中に挿入され〔(29)と類似の方法で〕HIVプロテアーゼを発現するこれら4つ配列を含む細胞を調製する。これら細胞は様々な程度で”漏れやすい(leaky)”栄養要求株と考えてもよい。β−ガラクトシダーゼがまず開裂され、その結果、これらの構築物をもつ細胞中で様々なレベルで不活化される。トリ肉腫−白血病ウイルス由来の認識配列である5番目の配列は、HIVプロテアーゼ(44)および(45)によって特異的に開裂されない。さらに、これらの株を、有効な増殖のための機能的β−ガラクトシダーゼの要求性、およびプロテアーゼ欠失を用いて選択する。各種濃度の抗生物質およびラクトースを用いて、陰性選択条件下で、各種基質デカペプチドに対する増加する代謝回転速度をもつHIVプロテアーゼ突然変異体が得られる。
より高い濃度のラクトースと抗生物質を用いると、ラクトースを用いてより漏れやすい栄養要求株が増殖でき、次いでペニシリンで殺されることにより、より厳密な陰性選択圧が得られる。これにより、対象の構築物にとってのより高い代謝回転速度をもつHIVプロテアーゼ突然変異体を選択する。選択された細胞からの突然変異プロテアーゼを次いで(29)に記載するインビトロ検定により性状決定する。所望の特異性をもつこれらの細胞性クローンを増殖し、所望の機能をコードするプラスミドを上記のように単離/精製する。
当業者であれば、本実施例で使用した以外の認識配列への特異性をもつプロテアーゼを開発するのにもこの方法が使用できることが理解できよう。
実施例IX
陽性細胞選択を用いる新規HIVプロテアーゼの創製方法
この実施例は実施例VIIと類似である。本実施例では、酵素的に不活性なミスセンス突然変異体の代わりに野生型HIVプロテアーゼを出発点として用いる。さらに、HIVデカペプチド認識配列を以下の配列(44)の1つに変更し、これらはそれぞれ別々に平行した選択に使用する。
陽性細胞選択を用いる新規HIVプロテアーゼの創製方法
この実施例は実施例VIIと類似である。本実施例では、酵素的に不活性なミスセンス突然変異体の代わりに野生型HIVプロテアーゼを出発点として用いる。さらに、HIVデカペプチド認識配列を以下の配列(44)の1つに変更し、これらはそれぞれ別々に平行した選択に使用する。
IN:インテグラーゼタンパク質
*:pol読み取り枠からのN−末端産物(p6*)には新しい名前がないが、これ以外は、HIVgag−polポリプロテイン中の開裂部位は新しい命名法(2)によって命名されている。CA+ とはC−末端で伸長したキャプシドタンパク質p25(24)を表す。◎
☆:Vmax/Kmの相対値は競合試験により決定した。各値は少なくとも3回の試験の平均であり、±20%の再現性がある。
*:pol読み取り枠からのN−末端産物(p6*)には新しい名前がないが、これ以外は、HIVgag−polポリプロテイン中の開裂部位は新しい命名法(2)によって命名されている。CA+ とはC−末端で伸長したキャプシドタンパク質p25(24)を表す。◎
☆:Vmax/Kmの相対値は競合試験により決定した。各値は少なくとも3回の試験の平均であり、±20%の再現性がある。
BI−P−140、BI−P−138、BI−P−144、BI−P−127およびBI−P−102の配列(配列セットA)は様々な速度でHIVプロテアーゼにより開裂されることが示されたが、開裂速度が検出できた場合には、すべてBI−P−136の速度よりもはるかに遅い速度である(44)。次いで、 ケモスタット中で各種希釈速度および選択圧において陽性細胞選択(既述)を行い、所望の代謝回転速度で融合構築物を開裂することによりアスパラギン酸トランスカルバミラーゼ酵素活性を解放することのできるプロテアーゼを発現する細胞を選択する。選択された細胞性クローン中の突然変異HIVプロテアーゼを次いで(29)に記載するインビトロ検定により性状決定する。所望の特異性をもつこれらの細胞性クローンを増殖し、所望の機能をコードするプラスミドを上記のように単離/精製する。
当業者であれば、本実施例で使用した以外の認識配列への特異性をもつプロテアーゼを生産するのにもこの方法が使用できることが理解できよう。
実施例X
無細胞選択
本実施例は、制御された無細胞環境において各工程をいかに実施するかを説明する。
無細胞選択
本実施例は、制御された無細胞環境において各工程をいかに実施するかを説明する。
使用したエンドペプチダーゼはAsn−25(5)および(42)などのHIVプロテアーゼのミスセンス突然変異体である。これらの酵素の遺伝子はプラスミド上でコードされ、化学突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、および低忠実度複製(例えばMutD株中での増殖)を含む先の実施例で記載した方法のいずれかを用いて突然変異させる。
突然変異誘発された酵素集団を上記したように大腸菌中で生産し、次いで単離/精製〔(1)で記載したような方法を用いる〕する。エンドペプチダーゼ集団を含むプラスミドを単離/精製する(1)。そのアミノ末端でHIVプロテアーゼ認識配列を有するβ−ガラクトシダーゼと連結し(29)、そのカルボキシ末端で同じHIVプロテアーゼ認識配列を介してT7の遺伝子10と連結したアクチンの融合タンパク質を発現するのにも同様のプロトコールを使用する。発現した融合構築体を上記のように単離/精製する。あるいは、推定上の新規分子とアクチン融合遺伝子を増幅して上記した発現PCRを用いて(48)に記載のように発現する。これによって生細胞の使用工程はあらゆる面で排除できる。
発現された推定上の新規分子タンパク質を、単離/精製されたアクチン融合タンパク質とともにインキュベートして、所望の機能をもつ新規分子プロテアーゼに認識配列を開裂させる。推定上の新規分子とアクチン融合のインキュベーションから得られる混合物を次いで単離/精製されたDNアーゼIの存在下に一緒にインキュベートする。DNアーゼはアクチンモノマーとの1:1複合体形成によって阻害されることが知られている(46、47)。HIVプロテアーゼ認識配列の正しく開裂された後は、アクチンモノマーは立体的に自由にDNアーゼI酵素と結合する。
次いで、推定上の新規分子集団をコードする単離/精製されたプラスミド(またはPCR DNA)を反応混合物に加えてインキュベートする。得られるDNAをインキュベーション混合物から(1)に記載の方法により単離/精製する。次いでDNAをゲル電気泳動により性状決定する。
推定上の新規分子をコードする未消化プラスミドに対応するDNAバンドを同定し、このバンド由来のDNAを単離/精製(1)して100の試料に等しく分割する。各試料を増幅し、推定上の新規分子を発現させ、その機能を前記のように検定してどの試料がDNアーゼIを阻害することのできる新規分子をコードするかを決定する。所望のクローンが得られて任意に増幅できるようになるまで、酵素活性をコードする試料をさらに分ける。この時点で新規分子は代謝回転速度などの各種属性によって性状決定される。
もしも新規分子の性状が所望のものであれば、さらに発展させなくともよい。もしも所望のものでない場合には、新規分子をさらに進化的に進展させる。これらの新規分子をコードするDNAを用いて、新規分子の遺伝子集団を再度突然変異させ、増幅し、そして発現タンパク質中の所望の機能を再度検定するという工程を繰り返す。このようにして、新規分子集団をコードするDNAは進化的進展を受けて、好ましい性状をもつ新規分子が得られる。
実施例XI
ケモスタット中で行うバッチ法による大腸菌中のアスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ASD)に基づく選択分子を用いる、M13ベクター中でコードされるインフルエンザヘマトグルチニン(HA)のエピトープに特異的な新規プロテアーゼの方向づけられた進化
アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ASD)は大腸菌中で、アスパルチル4−リン酸からのアスパラギン酸4−セミアルデヒドの産生を触媒する。この反応はNADPH依存であり、リン酸基を遊離する。アスパラギン酸4−セミアルデヒドの産生は、これからメチオニン、スレオニン、イソロイシン、およびリシンの4アミノ酸の前駆体が生じる分岐点である。したがって、もしも細胞中でASDが非機能的で、かつアスパラギン酸4−セミアルデヒドまたはアスパラギン酸4−セミアルデヒドの下流にある他の重要な代謝産物のいずれかを産生する代替経路が全くないように細胞が選択されるのであれば、該細胞は培地中に上記4アミノ酸を添加しなければ増殖できないであろう。さらに、細胞はプロテアーゼ欠失であるように選択される。
ケモスタット中で行うバッチ法による大腸菌中のアスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ASD)に基づく選択分子を用いる、M13ベクター中でコードされるインフルエンザヘマトグルチニン(HA)のエピトープに特異的な新規プロテアーゼの方向づけられた進化
アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ASD)は大腸菌中で、アスパルチル4−リン酸からのアスパラギン酸4−セミアルデヒドの産生を触媒する。この反応はNADPH依存であり、リン酸基を遊離する。アスパラギン酸4−セミアルデヒドの産生は、これからメチオニン、スレオニン、イソロイシン、およびリシンの4アミノ酸の前駆体が生じる分岐点である。したがって、もしも細胞中でASDが非機能的で、かつアスパラギン酸4−セミアルデヒドまたはアスパラギン酸4−セミアルデヒドの下流にある他の重要な代謝産物のいずれかを産生する代替経路が全くないように細胞が選択されるのであれば、該細胞は培地中に上記4アミノ酸を添加しなければ増殖できないであろう。さらに、細胞はプロテアーゼ欠失であるように選択される。
ASDに基づく選択構築物は融合タンパク質を創製することによって作製される。β−ガラクトシダーゼはASD配列の上流にコードされ、アスパラギンシンテターゼは下流にコードされる。β−ガラクトシダーゼおよびアスパラギンシンテターゼはインフルエンザHA部位B(32)由来のデカペプチド認識配列、Thr−Asp−Gln−Glu−Gln−Thr−Ser−Leu−Tyr−Valを介してASDと連結される。この融合タンパク質は、受容しうるバックグランドASD活性を与えることが示されている最強のプロモーターの制御下に、大腸菌染色体上でコードされる。利用可能な最大数の融合タンパク質の中で、低い代謝回転ではあるが正しいタンパク質分解特異性をもつ新規分子が選択有利性を有する。
この方法では、細胞およびレプリケーターのケモスタット中での増殖が可能であり、ここでは選択分子と推定上の新規分子のためのコーディング配列が分離されており、これによって別個の突然変異率が得られる。選択は共生関係にある細胞とレプリケーターの二重選択による。
新規分子の進化出発点は、特異配列を認識し、かつ系にとって有害でないプロテアーゼ、例えばX−glyおよびpro−X−gly−proで優勢に開裂するアクロモバクター・イオファガス(Achromobacter iophagus)およびクロストリジウム・ヒストリティシウム(Clostridium histolyticium)由来のコラゲナーゼであり、M13などのファージのゲノム中においてコードされる。新規分子をコードする多数のM13ファージを、エチルメタンスルホネート、ニトロソグアニジンや照射などの強い突然変異誘発剤に付す。突然変異誘発により異種一集団が得られ、次いでこれを4アミノ酸を含まない最小培地中にある選択構築物をコードする大腸菌とともにケモスタット中でインキュベートする。無作為突然変異誘発は、選択構築物に比較して新規分子集団の方に進化上の時間的優性を与える。また、M13ゲノムは大腸菌染色体よりも高速で複製し、さらに大腸菌染色体に比較してM13ゲノムの突然変異数も増加する。最大の活性をもつこれらM13分子を、その選択増殖有利性に基づいて得る。最適と思われる新規分子をコードする遺伝子を集団から単離/精製し、再度突然変異させ、反復可能なバッチ型法における融合タンパク質選択構築物をコードする大腸菌細胞の進化的リセット(reset)集団とともにインキュベートする。これにより、その集団を多数回新しくすることによって融合タンパク質を安定に保持しながら最適の新規分子を維持することが可能となる。
実施例XII
示差的突然変異率、重複および異種の当初集団を使用して、大腸菌中におけるコリスミ酸の合成に重要な酵素を含む選択構築物を用いる、M13ベクター中でコードされるHIV gp120由来の認識配列に特異的な新規プロテアーゼの方向づけられた進化
コリスミ酸は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンの生合成の分岐点である。その生成は、3−エノールピルビルシキミ酸5−ホスフェートに対するコリスミ酸シンターゼの酵素作用によって触媒される。コリスミ酸の生成は、3−デオキシ−7−ホスホ−D−アラビノヘプツロソン酸からの直線的で分岐しない経路を経る。コリスミ酸および3−デオキシ−7−ホスホ−D−アラビノヘプツロソン酸を含む経路には7つの化合物が含まれ、6つの異なる酵素によって触媒されており、そのうちの1つがコリスミ酸シンターゼである。
示差的突然変異率、重複および異種の当初集団を使用して、大腸菌中におけるコリスミ酸の合成に重要な酵素を含む選択構築物を用いる、M13ベクター中でコードされるHIV gp120由来の認識配列に特異的な新規プロテアーゼの方向づけられた進化
コリスミ酸は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンの生合成の分岐点である。その生成は、3−エノールピルビルシキミ酸5−ホスフェートに対するコリスミ酸シンターゼの酵素作用によって触媒される。コリスミ酸の生成は、3−デオキシ−7−ホスホ−D−アラビノヘプツロソン酸からの直線的で分岐しない経路を経る。コリスミ酸および3−デオキシ−7−ホスホ−D−アラビノヘプツロソン酸を含む経路には7つの化合物が含まれ、6つの異なる酵素によって触媒されており、そのうちの1つがコリスミ酸シンターゼである。
6つの酵素それぞれは、効率のよい増殖のためにはコリスミ酸を要求するように選択され、かつプロテアーゼ欠失であるように選択される株の大腸菌染色体上でコードされる異なるタンパク質融合選択構築物中で使用される。その両端に対象のタンパク質分解認識配列、HIV gp120由来の可変領域3のアミノ酸271−295(N−N−T−R−K−S−I−R−I−Q−R−G−P−G−R−A−F−V−T−I−G−K−I−G−N)が隣接する各酵素のコーディング配列を、β−ガラクトシダーゼ、3つのホスホ−2−3−デオキシヘプトネートアルドラーゼのうちの1つおよび他の実施例で記載するようなバクテリオファージからのタンパク質などの適当な嵩高い基の間に挟む。融合タンパク質は、受容できるバックグランド活性を与えることが知られている最強のプロモーターの制御下に大腸菌染色体上でコードされる。それぞれが非相同であり、かつ大腸菌染色体中の遺伝子と相同性をもたない変調部分を使用することが好ましい。変調分子は、コリスミ酸シンターゼを含む6つの酵素を有効にダウンモジュレーションするように選択する。これらの重複(redundant)選択分子は、すべての融合体にとって唯一共通な配列であるgp120由来の認識配列に特異的なプロテアーゼの進展をめざす。
生成される大腸菌細胞系は6つの融合に基づく選択構築物のすべてをコードするので、重複系を創製する。この系では、たとえ6つのタンパク質融合体のうちの5つが非有用な欠失を受けても、コリスミ酸の生合成が阻害される。さらに、この重複系は、いくつかのタンパク質における酵素機能のダウンモジュレーションが完全でなくとも作動する。各酵素は同じ経路中の反応を触媒するので、融合体中におけるそれぞれのダウンモジュレーションはコリスミ酸の産生に累積効果を及ぼす。
推定上の新規分子集団はM13ファージ中でコードされる。新規分子の進化的出発点は、HIVプロテアーゼサブチリシンBPN、ポリオ3Cプロテアーゼおよびアクロモバクター・イオファガスおよびクロストリジウム・ヒストリチィシウム由来のコラゲナーゼを含む。このようなファージの大集団を突然変異誘発に付して、推定上の新規分子集団に進化上の時間的優性を与える。
選択構築物および新規分子のための示差的突然変異率は、異なる複製起点およびそれに対応する複製機構を用いることにより創製される。選択構築物は天然の大腸菌ホロ酵素複合体によってのみ複製されるが、新規分子はT7 DNA複製機構によって複製される。
推定上の新規分子集団の複製がT7機構によって方向づけられるようなM13ファージを創製するために、二重複製機構を導入する。M13は環状1本鎖DNAゲノム上でコードされる。T7は線状2本鎖DNAファージである。しかしながら、その複製中にM13は2本鎖形で生産される。正常なM13起点は、ファージがその2本鎖形を得られるようにそのまま維持され、次いでT7複製系がM13ゲノム上で遺伝子を複製するよう目標を定める。
これを行うためには、突然変異低忠実度T7 DNAポリメラーゼを含む複製に必要なT7遺伝子をM13ゲノム、バクテリア染色体、またはプラスミドのいずれかから発現させる。これらの遺伝子は、低忠実度の修飾T7 DNAポリメラーゼ(遺伝子5)、T7 RNAポリメラーゼおよびT7ジャイレース(遺伝子4)を含む(38)。T7複製機構は、高いコピー数が得られるように強いプロモーターの制御下にある。M13ゲノムは多数のT7複製起点を含むので、いったんM13が2本鎖になると、T7複製機構の多数のコピーが、M13ゲノムの複製に関して大腸菌ホロ酵素(細胞内で非常に少数のコピーで存在する)とうまく競合する。推定上の新規分子(単数または複数)はT7複製オリジンの近くに位置しており、もしもバクテリアホロ酵素とT7
DNAポリメラーゼの両方が同じM13ゲノムを活発に複製するときには、低忠実度の修飾T7ポリメラーゼが新規分子を複製する可能性が増加する。
DNAポリメラーゼの両方が同じM13ゲノムを活発に複製するときには、低忠実度の修飾T7ポリメラーゼが新規分子を複製する可能性が増加する。
M13ゲノム上での推定上の新規分子配列のコピー数を増加することにより、示差的突然変異率もまた増強される。これらの配列は完全かも知れないし、また不完全かも知れない。例えば、完全な推定上の新規分子の多数のコピーは有利な相同組換えに導くであろう。さらに、短いDNA、特に触媒部位などの新規分子の重要な部分をコードするDNAがM13ゲノム中に無作為に導入され、重要な部分の周囲で小さい組換えの数が増加することもある。これらの小さい配列もまた、組換えの幾つかの分画中にランダム隣接配列をもたらす(これらはゲノム中に無作為に分布しているので)。
重複系および新規分子をコードする上記したM13の異種出発集団を含む大腸菌をケモスタット中で増殖させる。選択圧力は、ケモスタット環境、特にアミノ酸フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンの濃度と流速を調整することによって調節し、一定に保つか、あるいは定期的に循環させる。M13バクテリオファージの試料を定期的に取り出し、所望のタンパク分解活性をもつ新規分子を生産する能力を検定する。
実施例XIII
大腸菌由来のNR I のための新規キナーゼの方向づけられた進化
実施例XIIIは、大腸菌由来のNRIをリン酸化し、それによってNRIの機能を変調することのできるキナーゼを方向づけて進化させる方法を記載する(2)。進化出発点は低忠実度T7複製機構によって複製されるプラスミド上でコードされる。リン酸化されたNRIは選択系内での細胞増殖を許容し、したがってこれは陽性細胞選択の例である。
大腸菌由来のNR I のための新規キナーゼの方向づけられた進化
実施例XIIIは、大腸菌由来のNRIをリン酸化し、それによってNRIの機能を変調することのできるキナーゼを方向づけて進化させる方法を記載する(2)。進化出発点は低忠実度T7複製機構によって複製されるプラスミド上でコードされる。リン酸化されたNRIは選択系内での細胞増殖を許容し、したがってこれは陽性細胞選択の例である。
効率的な増殖のためのグルタミンシンテターゼの要求性から選択された大腸菌株を以下のように修飾して構築する。この株ではglnA−glnL−glnGオペロンが実質的に変更される。σ70によって認識されるプロモーターを除く。glnLおよびglnG遺伝子を除いてDNaAのための遺伝子で置換する。DNaA遺伝子の他のすべてのコピーを除く。NRIをコードするglnG遺伝子はσ70などの因子によって認識されσ54によって認識されないプロモーターの制御下におく。低忠実度のT7 DNAポリメラーゼをもつT7複製のために必要な遺伝子(38)を挿入し、正しくプロモートし、発現させる。プラスミドを構築し、低忠実度T7複製機構によって複製される株中に導入する。したがってpUC118に基づくプラスミドは、細胞性複製機構によって機能的に認識される複製起点の欠失体であり、その代わりにプロモーターφ1.1Aおよびφ1.1Bを含むT7複製の主要起点を含む。バクテリアキナーゼ、CheA、SpoIIJ、FrzE、DctB、およびAprZに基づく進化出発点の異種セットを突然変異させ、プラスミド中に挿入し、正しく発現させる。
次いで細胞をグルタミンおよび窒素制限培地中でインキュベートする。増殖できる細胞を選択する。この実施例では選択はカスケードをへて起こる。正しくリン酸化されたNRIは、上流DNA配列と結合することによってσ54により認識されるプロモーターglnApZへのエンハンサーとして作用することができる。増強されたglnApZプロモーターは次いでglnA(グルタミンシンテターゼ)およびDNaAの高レベル発現を可能にする。次いでこれらのタンパク質は細胞増殖および複製を可能にするカスケードを活性化する。
選択後に所望のキナーゼのための遺伝子を単離/精製し、クローン化し、そして発現産物の性状決定を行う。
当業者には、本実施例の認識配列以外の認識配列に特異的なキナーゼの開発に本方法が使用できることを理解できよう。
Claims (6)
- ペプチドの切断を触媒する分子を選択する方法であって、
(a)宿主細胞の集団において、
(i)1種の推定上の分子または多数の異なる推定上の分子、および
(ii)該推定上の分子から進化した分子による出発ペプチドの切断により形成された生成ペプチドと結合する認識配列を含む選択分子(ただし、該選択分子の認識配列による生成ペプチドの結合が増殖因子の活性を増加させ、それにより細胞および/またはレプリケーターの増殖を増大させる)、
を発現させ、
(b)該集団中の少なくとも1つのレプリケーターおよび/または細胞が少なくとも1回の分裂および/または複製サイクルを受け、かつ該多数の推定上の分子がペプチドの切断を触媒する該分子へと進化するように、宿主細胞の該集団に突然変異誘発および選択条件を課して、レプリケーターまたは宿主を選択し、ただし、ペプチドの切断を触媒する該進化した分子は出発ペプチドを生成ペプチドに変換するが、その際、該選択分子の認識配列による該生成ペプチドへの結合を伴い、該結合が増殖因子の活性を増加させて、細胞および/またはレプリケーターの増殖を増大させ、そして
(c)細胞および/またはレプリケーターの増殖の増加をモニタリングして、ペプチドの切断を触媒する該分子を発現する宿主細胞を同定する、
各ステップを含んでなる上記方法。 - 宿主細胞集団に対して突然変異誘発条件と選択条件を逐次的に課する、請求項1記載の方法。
- 推定上の分子が均一であり、そして/また、推定上の分子が触媒の活性を欠失している、請求項1記載の方法。
- ペプチドの切断を触媒する前記分子が推定上の分子より高い基質特異性および/または触媒活性を有する、請求項1記載の方法。
- ペプチドの切断を触媒する前記分子が推定上の分子より低い基質特異性および/または触媒活性を有する、請求項1記載の方法。
- 突然変異誘発条件が推定上の分子をコードする核酸に優先的に突然変異を起こす、請求項1記載の方法。
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