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JP2005257604A - 齲蝕リスクの簡易判定方法および齲蝕リスクの判定用具 - Google Patents

齲蝕リスクの簡易判定方法および齲蝕リスクの判定用具 Download PDF

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広一郎 平田
Fumio Ukaji
文緒 宇梶
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尚広 羽生
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Abstract

【課題】 被験者の齲蝕リスクを、迅速、簡便、且つ安価に判定する方法を提供する。
【解決手段】 一定の圧力において、所定量の唾液を濾材を通過させるに必要な時間を調べるなどの方法で、唾液の濾過性を評価し、該濾過性から被験者の齲蝕リスクを判定する。唾液中のミュータンスレンサ球菌数が多いほど、唾液中の沈殿(主として歯垢)量が多いほど、並びに唾液の粘性が高いほど齲蝕リスクが高くなり、同時にこれらの因子は唾液の濾過性を低下させる方向に作用する。従って齲蝕リスクの高い唾液は濾過性も悪くなるため、該濾過性を評価することにより、簡便、且つ迅速に判定でき、また特殊な装置も必要としない。
【選択図】 図2

Description

本発明は、齲蝕リスクの判定方法および齲蝕リスクの判定用具に関する。
近年、ヒトの口腔内の齲蝕リスクを判定し、齲蝕を予防しようとする試みがなされている。齲蝕リスクの判定は、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、ラクトバチラス菌数、唾液分泌量や唾液粘性や唾液緩衝能といった唾液の性状、歯垢の付着量、食事回数やフッ化物の使用状況といった生活習慣等の各検査項目をそれぞれ調べることで行われている(例えば非特許文献1参照)。上記の各項目の中で、特にミュータンスレンサ球菌数は齲蝕リスクと密接に関係していると言われており、齲蝕リスクの判定にはミュータンスレンサ球菌数の測定が重視されている。
上記の各項目を調べる方法として、以下のような方法が開発されている。ミュータンスレンサ球菌数やラクトバチラス菌数の測定は、選択培地を使用した培養法により実施されており、例えばミュータンスレンサ球菌数の測定では、選択培地としてミチス・サリバリウス・バシトラシン固体培地等が使用されている。唾液分泌量の測定は、一定時間に分泌される唾液を計量カップ等に採取することで実施されている。唾液緩衝能の測定は、一定量の酸と一定量の唾液を混合後のpHを、pH指示薬の色調変化を調べる方法で実施されている。唾液粘性、歯垢の付着量、食事回数やフッ化物の使用状況といった生活習慣等は、歯科医の視診や患者への問診等で実施されている。なお、唾液の分泌量が少ない場合、その唾液の粘性は高く、また緩衝能が低い傾向があると言われている。
一部の歯科医院では、上記の各検査項目を全て検査し、患者の口腔内の齲蝕リスクの総和を一定レベル以下に押さえ込む方法により齲蝕を予防する試みがなされており、一定の成果を挙げている(例えば非特許文献1参照)。
唾液の複数の物性を簡便且つ安価に検査する方法が提示されている。該方法では、支持体に対する唾液の浸透度を測定することで、唾液の量、粘性、口腔粘膜の乾燥度及び湿潤度を測定できる(例えば特許文献1参照)。
クリニカル カリオロジー、 熊谷崇著、 医歯薬出版株式会社 1996年 77頁 特開2000−329763号公報
しかしながら、上記の各検査項目の全てに渡って検査する方法は、検査に長時間を要し、また種々の検査キットや装置を併用し実施するため、歯科医や患者の時間的、費用的負担が大きい問題を有していた。例えば、ミュータンスレンサ球菌数の測定に用いる培養法では、培養に長時間(2日間程度)を要し、また高額な培養器を必要とした。また、唾液粘性を粘度計で測定する、或いは唾液沈殿(歯垢)量を遠心分離した沈殿の湿重量で測定する方法では、装置が高額であり、また測定操作が煩雑なため、繁忙な歯科医院の臨床現場にて実施することが困難であった。そのため、簡便且つ安価に齲蝕リスクを判定できる方法が望まれている。
上記の唾液の複数の物性を簡便且つ安価に検査する方法では、支持体に対する唾液の浸透度を測定することで、唾液の量、粘性、口腔粘膜の乾燥度及び湿潤度を測定できる。しかしながら、該方法では唾液中のミュータンスレンサ球菌数や沈殿物(主に歯垢)の多寡が考慮されておらず、より確度の高い齲蝕リスク判定手法の開発が求められていた。
以上のことから、齲蝕リスクを簡便且つ安価に判定できる齲蝕リスクの判定方法が望まれていた。特に、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、唾液中の沈殿(主として歯垢)量、並びに唾液の粘性といった唾液の性状は、齲蝕の発生や進行に密接に関係していると考えられ、これらの唾液の性状を簡便且つ安価に判定できる方法が望まれていた。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を続けてきた。その結果、唾液を濾過した際の濾過性が、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、唾液中の沈殿(主として歯垢)量、並びに唾液の粘性と相関することを見出した。すなわち、唾液を濾過した際の濾過性を調べるという至極簡便な方法により、齲蝕リスクを判定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、唾液の濾過性を評価することによる齲蝕リスクの簡易判定方法である。また、他の発明は、唾液供給室と唾液排出口とが濾材を介して連通しており、唾液供給室の上流に加圧手段を備えた濾過装置からなる、齲蝕リスク判定用具である。
本発明の齲蝕リスクの判定方法により、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、並びに唾液中の沈殿量や唾液の粘性を迅速、簡便、且つ安価に評価することができる。これにより、被験者の齲蝕リスクを迅速、簡便、且つ安価に判定することができる。
本発明の齲蝕リスクの判定方法は、唾液の濾過性を評価することにより実施する。
本発明で用いる唾液は、その採取方法は特に限定されず、従来公知の刺激唾液や無刺激唾液を採取する方法を使用できる。一定時間パラフィンやガムを噛み、分泌した刺激唾液を容器に吐出し採取する方法では、パラフィンやガムを噛むことで歯面の歯垢が剥がれ唾液中に回収されるので、該方法で得られた唾液の濾過性を調べる場合は、歯面の歯垢量を加味した齲蝕リスク判定ができる。また、該方法では、一定時間パラフィンやガムを噛むため唾液がよく攪拌され、均質な唾液の採取が可能となる。これらのことから、一定時間パラフィンやガムを噛み分泌した刺激唾液を容器に吐出し採取する方法は、齲蝕リスクをより正確に判定できるので好適である。
本発明では、採取した唾液を濾材で濾過し、その際の濾過性を調べる。本発明において、濾過性とは、唾液の濾過の容易さを表す指標のことである。このような濾過性としては、所定量の唾液の濾過に要す時間(濾過時間)、単位濾材当りの唾液の濾過可能量、或いは唾液を濾過した際の濾過圧を例示できる。濾過性が高いとは濾過が容易であることを意味し、この時、濾過時間は短く、濾過可能量は多く、濾過圧は低くなる。濾過性が低いとは濾過が困難なことを意味し、この時、濾過時間は長く、濾過可能量は少なく、濾過圧は高くなる。
唾液の濾過時間は、例えば所定量(面積または体積)の濾材を使用し、所定量の唾液を所定の濾過圧下で濾過した場合に要した時間を測定することで調べることができる。濾過可能量は、例えば所定量の濾材を使用し唾液を濾過した場合に、濾過圧が所定値になる、或いは濾材が目詰まりするまでに濾過した唾液の量を測定することで調べることができる。濾過圧は、例えば所定量の濾材を使用し唾液を濾過した際に、加圧手段に加えた荷重や力を測定する、或いは加圧時の圧力を測定することで調べることができる。
本発明においては、上記濾過性を評価することにより、齲蝕リスクを判定するものである。即ち、ミュータンスレンサ球菌数が多いほど、沈殿物が多いほど、唾液の粘性が高いほど(同時に緩衝能も低くなる傾向がある)、唾液の濾過性が劣るものとなり、よって齲蝕リスクも高いものとなるから、該濾過性を評価するのみで一度に総合的な齲蝕リスクを判定することができる。
例えば、ミュータンスレンサ球菌数のみを測定する方法では、例え、沈殿物が多く、また唾液の粘性が高くてもミュータンスレンサ球菌数が少ない場合には齲蝕リスクが小さいと判定されてしまうが、本発明によればこのような問題がほとんどなく、優れた判定方法である。
本発明において評価する濾過性に影響を与える第一の因子はミュータンスレンサ球菌数である。齲蝕の発生や進行には、齲蝕の攻撃因子である口腔内のミュータンスレンサ球菌が密接に関与していると考えられており、該ミュータンスレンサ球菌数が多いほど、齲蝕リスクが高い。
ここで、ミュータンスレンサ球菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans、血清型c、e、f)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus、血清型d、g)、ストレプトコッカス・クリセタス(Streptococcus cricetus、血清型a)、ストレプトコッカス・ラッタス(Streptococcus rattus、血清型b)、ストレプトコッカス・フェルス(Streptococcus ferus、血清型c)、ストレプトコッカス・マカカ(Streptococcus macacae、血清型c)、ストレプトコッカス・ドウネイ(Streptococcus downey、血清型h)として、血清学、遺伝学的に異なる7種の型に分類されている。ヒトの口腔には主としてストレプトコッカス・ミュータンスとストレプトコッカス・ソブリヌスが存在する。これらの菌は、Pacタンパク質等の菌体表層タンパク質を介し歯面に付着し、粘着性・不溶性グルカンを産生し齲蝕原性プラーク(歯垢)を形成する。齲蝕原性プラーク中のミュータンスレンサ球菌を始めとする種々の菌が産生する酸により歯の脱灰が進み、齲蝕が発生・進行する。すなわち、ミュータンスレンサ球菌は、齲蝕の攻撃因子として作用する。また、口腔内のミュータンスレンサ球菌数が高い場合は、齲蝕原性プラーク(歯垢)が形成されやすい。
本発明において評価する濾過性に影響を与える第二及び第三の因子は唾液中の沈殿物と、唾液の粘性である。
齲蝕の防御因子である唾液の作用としては、歯面に付着したミュータンスレンサ球菌を洗い流す作用(洗浄作用)と、齲蝕原性プラーク(歯垢)中の種々の菌が産生する酸を中和する作用(緩衝作用)が挙げられる。
唾液の粘性が高い場合は、口腔内の唾液の流動性が低くなり、上記の洗浄作用や緩衝作用が歯面に及び難くなる。歯面に齲蝕原性プラーク(歯垢)量が多くミュータンスレンサ球菌数が高い場合は、該プラークに阻まれ緩衝作用が歯面に及び難くなり、また、該菌が粘着性・不溶性グルカンを産生するので唾液の粘性が益々高くなるという悪循環に陥る。即ち、歯垢などの唾液中の沈殿物の量が多いほど、また唾液の粘性が高いほど齲蝕リスクは高いものとなる。なお、唾液の粘性が高いことによる洗浄作用や緩衝作用の低下は、唾液分泌量や唾液緩衝能の低さをも反映していると考えられる。
以上のように、ミュータンスレンサ球菌数が多いほど、不溶性の沈殿物が多いほど、また唾液の粘性が高いほど齲蝕リスクが高いものであり、さらにこれら因子はいずれも濾過性を低下させる方向に作用する。即ち、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、沈殿物(主として歯垢)の量、及び唾液の粘性が高値の場合は、口腔内の齲蝕リスクが高い状態と言え、このような場合は唾液の濾過性が低くなり、逆に、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、沈殿物(主として歯垢)の量、及び唾液の粘性が低値の場合は、口腔内の齲蝕リスクが低い状態と言え、このような場合は唾液の濾過性が高くなるから、唾液の濾過性を評価することにより、齲蝕リスクを判定できる。
本発明において、使用する濾材の形状や量(面積や体積)等は特に限定されず、使用する唾液の量に応じて、濾過性の測定が容易なように適宜選択すればよい。使用する唾液の量は、再現性良く濾過性を測定する観点から0.05ml以上が好ましく、また、必要最小限の濾材を使用し短時間に濾過性を測定する観点から10ml以下が好ましい。刺激唾液の分泌速度は通常0.04〜6ml/分であり、幼児を含め唾液の採取が困難な被験者も存在するので、同一の測定方法を多くの被験者に適用できるよう、使用する唾液量は0.25〜2mlであることが特に好ましい。
本発明において使用する濾材の孔径は、使用する唾液や濾材の材質や濾材の量に応じて濾過性の測定が容易なように適宜選択すればよい。濾材の孔径が小さすぎる場合は、唾液や濾材の使用量にもよるが、濾過時間が長くなりすぎる、濾過可能量が少なくなりすぎる、濾過圧が高くなりすぎる、或いは目詰まりを生じ測定自体が困難になる場合がある。一方、濾材の孔径が大きすぎる場合は、濾過時間が短くなりすぎる、濾過可能量が多くなりすぎる、或いは濾過圧が低くなりすぎる為、濾過性の測定が困難になる場合がある。適度な濾過時間、濾過可能量、或いは濾過圧の下で濾過性を測定できることから、濾材の孔径は0.6〜4μm、特に0.8〜2μmであることが好ましい。
なお、上記濾材の孔径は、粒径が既知の粒子を含む検液を濾材で自然濾過した場合に、該濾材が保持できる最小の粒子の径で規定する値である。このような粒径が既知の粒子としては、金属水酸化物や沈殿シリカ等のゼラチン状沈殿物、燐モリブデン酸アンモニウムやシュウ酸カルシウムや硫酸鉛や硫酸バリウム等の結晶状沈殿物、赤血球や血小板等の血液細胞、大腸菌等のバクテリアや酵母等の微生物、各種コロイド類、花粉、胞子、タバコの煙等を例示できる。該濾材が保持できるとは、検液に含まれる粒径が既知の粒子の98%以上を該濾材が保持することを指す。
本発明において、濾材の材質としては、唾液を濾過可能な材質のものであれば、従来公知の材質からなる濾材が制限なく使用できる。このような濾材の材質としては、ガラス繊維;ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等のプラスチック類;セルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース等のセルロース類等を例示できる。
本発明で使用する濾材としては、上記のような材質からなる従来公知のメンブレンフィルターやデプスフィルターを使用することができる。このようなメンブレンフィルターとしては、上記のセルロース類やプラスチック類からなる多孔質のフィルム状フィルターが使用できる。また、デプスフィルターとしてはセルロース繊維濾紙、シリカ繊維濾紙、ガラス繊維濾紙等を例示できる。また、ガラス繊維濾紙や濾紙の細片、または活性炭等の粒子をカートリッジ等に詰めて作製した、或いは複数の濾材を積層して作製した集合体も本発明の濾材として使用することができる。
メンブレンフィルターを使用した場合は、該濾材の表層が目詰まりした時点で濾過が困難となるのに対し、デプスフィルターや上記の集合体を使用した場合は、該濾材の全体積を使用し濾過を行うことから、同一の孔径の濾材を使用した場合は、デプスフィルターや上記の集合体を使用した方が単位面積当りに濾過できる唾液の量が多くなる傾向がある。使用する濾材の面積を必要以上に大きくしない為に、デプスフィルターや上記の集合体を使用することが好ましい。濾過装置の作製が容易であることから、デプスフィルターを使用することが好ましく、特にガラス繊維濾紙を使用した場合は、同一の孔径の場合に単位面積当りの唾液の濾過可能量が高い傾向にあるので特に好適である。
本発明の齲蝕リスク判定方法における濾過性の評価方法は特に限定されるものではないが、極めて簡潔かつ迅速に行え、大型の装置などを必要としない点で、唾液供給室と唾液排出口とが濾材を介して連通しており、唾液供給室の上流に加圧手段を備えた濾過装置からなる齲蝕リスク判定用具を使用し実施することが好適である。
該濾過装置に関して、以下で図面を使用し説明する。図1は、本発明で使用する濾過装置の一実施態様を示した斜視図である。
この濾過装置は、唾液供給主室1と唾液排出口2とを備えている。また、濾材3は、濾材収納部4内に収納されており、前記唾液供給主室1は、接続部5により該濾材収納部4に接続されている。したがって、唾液供給主室1と唾液排出口2とは、該濾材3を介して互いに接続された構造をしている。この装置は、上記唾液排出口2と後述する唾液供給室1の上流に設けられる加圧手段への接続口以外には他に開口部はなく半密閉系である。
本発明において、唾液供給室は、濾材より上流に設けられた、唾液の一定量が貯留される空隙の全てをいう。したがって、濾材収納部4内において、濾材3の上部には、該濾材収納部に流入した唾液を一時的に貯留する小空間6が設けられているが、この小空間6も、本発明における唾液供給室の一部をなす。必要に応じて、該小空間6を供給する唾液全てが収納可能な容積とし、唾液供給主室1に相当する部材を設けなくても構わない。
唾液供給室1の上流には、シリンジ外筒7とプランジャー8で構成されたシリンジ9からなる加圧手段が設けられている。加圧手段は、装置内を加圧にする機能を有するものであれば従来公知の加圧手段が制限なく使用できる。このような加圧手段としては、シリンジ、スポイト、ゴム球等の各種手動器具や、加圧用ポンプ、ボンベ等の各種装置を使用することができる。上記の各種手動器具を加圧手段として使用する方法は、操作が簡便であり好適である。
唾液排出口2に濾過装置内部を装置外部に対して陰圧状態とすることができるような陰圧手段を設置することもできる。このような陰圧手段としては、シリンジ、スポイト、ゴム球等の各種手動器具や、真空ポンプ、アスピレーター等の各種装置を使用することができる。陰圧手段を使用する方法と比較して、加圧濾過の方がより効率的な濾過を可能にできるため好ましい。
濾材収納部4の形状や材質は特に限定されず、該形状は濾材3の形状に応じて適宜選択すればよい。加圧時の濾材3の変形や破損を防止する目的で、濾材3の上面又は下面には、放射状、格子状、点状等の各種パターン構造を有す板状構造体;ナイロンネット等の網目状材料;多孔性材料;ガラス繊維やポリプロピレン不織布等の繊維材料等を介在させても良い。また、濾材3の上面には、適当な測定レンジにて測定できるよう濾過性をコントロールする目的で、活性炭や濾紙粉末等の濾過助剤を添加することもできるし、或いはガラスフィルター、ポリプロピレン不織布等のプレフィルターを設置することもできる。
図2は、本発明で使用する濾過装置の別の態様を示した側面図である。この濾過装置は、濾材収納部4内において、濾材3の上下に空間がほとんど形成されておらず、この濾材収納部4の上面に直接、加圧手段であるシリンジ9の先端部が脱着可能に接続されたものであり、唾液供給室はシリンジ外筒7の内空部に形成される。このような装置は、構造が簡単であるので好適である。
勿論、濾過装置の形状は図1、図2に限定されない。
上記図1に示した構造の用具を用いた場合の本発明の齲蝕リスク判定方法は以下の通りである。即ち、まず、その唾液供給室1に唾液を供給する。この供給操作は、シリンジ9との接続部を唾液供給主室1から外した後、ピペット等の器具を使用して、唾液供給主室1に所定量の唾液を供給すること等により適宜行えばよい。次いで、この唾液を、濾過膜3まで下方に流し、自然濾過、又はシリンジ9において、プランジャー8を押して装置内を加圧すること等により、加圧手段を使用し加圧濾過する。この濾過時の唾液の濾過性を測定することで、齲蝕リスクの判定を簡便に実施できる。また図2に示した用具においては、シリンジ9におけるプランジャー8を外筒7からはずして行う以外は上記と同様である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
実施例1〔唾液の濾過性の測定と齲蝕リスクの判定〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のミュータンスレンサ球菌数の測定〕
異なる8人の被験者にガムを5分間噛ませ、分泌された唾液を滅菌容器に吐き出させることで回収した。
得られた唾液の0.5mlを分取し、40W、10秒間超音波処理した後、適宜希釈して、50μlをミチス・サリバリウス・バシトラシン(以下、「MSB」と表記することもある。)固体培地上に添加し、37℃、嫌気条件下、48時間培養した。MSB固体培地上に生じるコロニー数を計数し、唾液の希釈率から、ミュータンスレンサ球菌数を個/mlとして算出した。
また、得られた唾液の0.5mlを分取し、10000r.p.m、2分間遠心し、上清を除去し、唾液由来の沈殿(主として歯垢成分)を回収し、その湿重量を測定した。
また、唾液を回収した滅菌容器を揺すり、唾液の粘性を、サラサラ、普通、ネバネバの3段階に目視で判定した。
(2)〔濾過装置を使用した濾過性の測定〕
濾材としてガラス繊維濾紙GA−100(東洋濾紙株式会社、保留粒子径1.0μm)を使用し、有効濾過面積が1.1cm(濾材の有効濾過面の径1.2cm)のシリンジフィルター10を試作し、シリンジ9(テルモ社、2.5ml)をセットし、図2の構造の濾過装置を作製した。
プランジャー8を濾過装置より引き抜き、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlをシリンジ外筒7内に添加し、プランジャー8を装着後、該プランジャー8を所定の指圧下で押し下げ、シリンジ9内を加圧(約2気圧)することで唾液を濾過した。0.5mlの唾液の全量を濾過するのに要した濾過時間を測定した。
(3)〔齲蝕リスクの判定〕
実施例1(1)の8人の被験者を、唾液中のミュータンスレンサ球菌濃度が1×10個/ml未満、1×10個/ml以上で5×10個/ml未満、5×10個/ml以上で1×10個/ml未満、1×10個/ml以上のように4段階に分類し、それぞれ0、1、2、3とスコア付けした(SMスコア)。
実施例1(1)の8人の被験者を、唾液由来の沈殿の湿重量が20mg/0.5ml未満、30mg/0.5ml未満、30mg/0.5ml以上のように3段階に分類し、それぞれ0、1、2とスコア付けした(沈殿スコア)。
実施例1(1)の8人の被験者を、唾液の粘性がサラサラ、普通、ネバネバの各々を、それぞれ0、1、2とスコア付けした(粘性スコア)。
各被験者の齲蝕リスクスコアを、ミュータンスレンサ球菌スコアと唾液沈殿スコアと唾液粘性スコアの総和として算出した。
実施例1(2)で得られた濾過時間の測定結果と、実施例1(1)で得られた唾液中のミュータンスレンサ球菌数、唾液中の沈殿の湿重量、及び唾液の粘性とを比較した。結果を表1に示す。
実施例1(2)で得られた濾過時間の測定結果と、実施例1(3)で得られた齲蝕リスクスコアとを比較した。結果を表2に示す。
Figure 2005257604
Figure 2005257604
表2に示したように、齲蝕リスクスコアと良く相関する唾液濾過時間の測定結果が得られた。本発明の齲蝕リスクの判定方法を使用することで、唾液中のミュータンスレンサ球菌数、唾液中の沈殿の量、及び唾液の粘性を反映した齲蝕リスクを、迅速(唾液の濾過に要する時間は30秒以内)、簡便、且つ安価に判定できた。
本図は、本発明に使用する濾過装置の一態様の該略図である。 本図は、本発明に使用する濾過装置の一態様の該略図である。
符号の説明
1・・・唾液供給主室
2・・・唾液排出口
3・・・濾材
4・・・濾材収納部
5・・・接続部
6・・・小空間
7・・・シリンジ外筒
8・・・プランジャー
9・・・シリンジ
10・・・シリンジフィルター

Claims (4)

  1. 唾液の濾過性を評価することによる齲蝕リスクの簡易判定方法。
  2. 濾過性の評価を、孔径0.8μm〜2μmの濾材の透過性により評価することを特徴とする、請求項1に記載の齲蝕リスクの簡易判定方法。
  3. 濾過性の評価を、ガラス繊維濾紙からなる濾材で行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の齲蝕リスクの簡易判定方法。
  4. 唾液供給室と唾液排出口とが濾材を介して連通しており、唾液供給室の上流に加圧手段を備えた濾過装置からなる、請求項1〜3に記載の齲蝕リスクの簡易判定方法に用いる齲蝕リスク判定用具。
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