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JP2005197175A - 正極、負極、電解質および電池 - Google Patents

正極、負極、電解質および電池 Download PDF

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JP2005197175A JP2004004405A JP2004004405A JP2005197175A JP 2005197175 A JP2005197175 A JP 2005197175A JP 2004004405 A JP2004004405 A JP 2004004405A JP 2004004405 A JP2004004405 A JP 2004004405A JP 2005197175 A JP2005197175 A JP 2005197175A
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lithium
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nitrate
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Toshikazu Yasuda
壽和 安田
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Sony Corp
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Abstract

【課題】 初期充電保存時またはサイクルによる容量劣化を抑制することができる電池、並びにそれに用いる正極、負極および電解質を提供する。
【解決手段】 正極12と負極14とが電解質が含浸されたセパレータ15を介して積層されている。負極14の容量は、Liの吸蔵・離脱による容量成分と、Liの析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和で表される。正極12には正極活物質に加えて硝酸塩が添加されており、この硝酸塩が電解質に溶解して負極14の表面に被膜14Cを形成する。これにより、負極14の表面に析出したLi金属が電解質などと反応して、容量が劣化してしまうことを抑制することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、正極、負極、電解質およびそれらを用いた電池に関する。
近年、携帯電話,PDA(personal digital assistant;個人用携帯型情報端末機器)あるいはノート型コンピュータに代表される携帯型電子機器の小型化および軽量化が精力的に進められ、その一環として、それらの駆動電源である電池、特に二次電池のエネルギー密度の向上が強く望まれている。
高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、例えば、負極に炭素材料などのリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池では、負極材料中に吸蔵されたリチウムが必ずイオン状態であるように設計されるため、エネルギー密度は負極材料中に吸蔵することが可能なリチウムイオン数に大きく依存する。よって、リチウムイオン二次電池では、リチウムイオンの吸蔵量を高めることによりエネルギー密度を更に向上させることができると考えられる。しかし、現在リチウムイオンを最も効率的に吸蔵および離脱することが可能な材料とされている黒鉛の吸蔵量は、1g当たりの電気量換算で372mAhと理論的に限界があり、最近では精力的な開発活動により、その限界値まで高められつつある。
高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、また、負極にリチウム金属を用い、負極反応にリチウム金属の析出および溶解反応のみを利用したリチウム金属二次電池がある。リチウム金属二次電池は、リチウム金属の理論電気化学当量が2054mAh/cm3 と大きく、リチウムイオン二次電池で用いられる黒鉛の2.5倍にも相当するので、リチウムイオン二次電池を上回る高いエネルギー密度を得られるものと期待されている。これまでも、多くの研究者等によりリチウム金属二次電池の実用化に関する研究開発がなされてきた(例えば、非特許文献1参照。) 。
更に、近年では、負極にリチウムを吸蔵および離脱することが可能な材料を用い、その表面にリチウム金属を析出させることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含むようにした二次電池も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
国際公開第WO 01/22519 A1号パンフレット リチウム バッテリーズ(Lithium Batteries ),ジェーン ポール ガバノ(Jean-Paul Gabano)編, アカデミック・プレス(Academic Press), 1983, ロンドン(London), ニューヨーク(New York)
しかしながら、リチウム金属二次電池は、初期充電をした後の保存時における放電容量の劣化、および充放電を繰り返した際の放電容量の劣化が大きいという問題があった。また、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な材料にリチウム金属を析出させるようにした二次電池でも、リチウム金属二次電池よりは劣化が小さいものの、リチウムイオン二次電池に比べると劣化が大きいという問題があった。この容量劣化は、負極においてリチウム金属の析出・溶解反応を利用していることに基づいており、負極に析出したリチウム金属が電解質と反応して失活してしまうことによるものと考えられる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、初期充電保存時またはサイクルによる容量劣化を抑制することができる電池、並びにそれに用いる正極、負極および電解質を提供することにある。
本発明による正極は、正極活物質と、硝酸塩とを含むものである。
本発明による負極は、表面に硝酸塩を含む被膜を有するものである。
本発明による電解質は、硝酸イオンを含むものである。
本発明による第1の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極は、正極活物質と、硝酸塩とを含むものである。
本発明による第2の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、表面に硝酸塩を含む被膜を有するものである。
本発明による第3の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、電解質は、硝酸イオンを含むものである。
本発明の正極によれば、硝酸塩を含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、硝酸塩が電解質に溶けだして負極の表面に被膜を形成することができる。よって、負極における副反応を抑制することができ、初期充電保存時または充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。
本発明の負極によれば、硝酸塩を含む被膜を有するようにしたので、負極における副反応を抑制することができる。よって、本発明による電池によれば、初期充電保存時または充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。
本発明の電解質によれば、硝酸イオンを含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、硝酸イオンが反応することにより負極の表面に被膜を形成することができる。よって、負極における副反応を抑制することができ、初期充電保存時または充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。
特に、本発明の正極、負極あるいは電解質を、負極の容量が軽金属の析出および溶解による容量成分を含む電池に用いるようにすれば、負極に析出した軽金属が電解質などと反応して失活してしまうことを抑制することができ、より高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆるコイン型といわれるものであり、外装缶11の内部に収容された円板状の正極12と外装カップ13の内部に収容された円板状の負極14とが、電解質を含浸させたセパレータ15を介して積層されたものである。外装缶11および外装カップ13の周縁部は絶縁性のガスケット16を介してかしめることにより密閉されている。
外装缶11は、例えば、ステンレスを母材とし内側をアルミニウム(Al)でコーティングしたものにより構成されている。外装カップ13は、例えば、ステンレスにより構成されている。
正極12は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体12Aの片面に正極活物質層12Bが設けられた構成を有している。正極集電体12Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層12Bは、例えば、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウムリン酸化物,リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式Lix MO2 で表されるリチウム複合酸化物あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的には、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),鉄(Fe),アルミニウム,バナジウム(V)およびチタン(Ti)のうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。また、他にも、スピネル型結晶構造を有するLiMn2 4 、あるいはオリビン型結晶構造を有するLiFePO4 なども高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
正極活物質層12Bは、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。
正極活物質層12Bは、更に、硝酸塩を含んでいることが好ましい。硝酸塩が電解質に溶解して負極14の表面に被膜を形成することにより、負極14における副反応を抑制することができるからである。硝酸塩の種類は限定されないが、正極12および負極14において電極反応に関係する軽金属の硝酸塩を用いることが好ましい。例えば、本実施の形態に係る二次電池であれば、電極反応にリチウムを用いているので、硝酸リチウム(LiNO3 )が好ましい。溶解により発生したリチウムイオンも電極反応に利用することができる上、他の軽金属イオンの場合、リチウムを吸蔵および離脱する負極材料中に、他の軽金属イオンがトラップされ、出て来れず、その分リチウムイオンが吸蔵および離脱するサイトが減少する等の電池反応に弊害を与える可能性がないからである。
負極14は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体14Aの片面に負極活物質層14Bが設けられた構成を有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層14Bは、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極活物質層12Bと同様の結着剤を含んでいてもよい。なお、本明細書において軽金属の吸蔵・離脱というのは、軽金属イオンがそのイオン性を失うことなく電気化学的に吸蔵・離脱されることを言う。これは、吸蔵された軽金属が完全なイオン状態で存在する場合のみならず、完全なイオン状態とは言えない状態で存在する場合も含む。これらに該当する場合としては、例えば、黒鉛に対する軽金属イオンの電気化学的なインタカレーション反応による吸蔵が挙げられる。また、金属間化合物を含む合金への軽金属の吸蔵、あるいは合金の形成による軽金属の吸蔵も挙げることができる。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料が挙げられる。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。
黒鉛としては、例えば、真密度が2.10g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3 以上のものであればより好ましい。なお、このような真密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ましく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内であればより好ましい。
黒鉛は、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。人造黒鉛であれば、例えば、有機材料を炭化して高温熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。高温熱処理は、例えば、必要に応じて窒素(N2 )などの不活性ガス気流中において300℃〜700℃で炭化し、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1500℃まで昇温してこの温度を0時間〜30時間程度保持し仮焼すると共に、2000℃以上、好ましくは2500℃以上に加熱し、この温度を適宜の時間保持することにより行う。
出発原料となる有機材料としては、石炭あるいはピッチを用いることができる。ピッチには、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、アスファルトなどを蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合することにより得られるもの、木材還流時に生成されるもの、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラートまたは3,5−ジメチルフェノール樹脂がある。これらの石炭あるいはピッチは、炭化の途中最高400℃程度において液体として存在し、その温度で保持されることで芳香環同士が縮合・多環化し、積層配向した状態となり、そののち約500℃以上で固体の炭素前駆体、すなわちセミコークスとなる(液相炭素化過程)。
有機材料としては、また、ナフタレン,フェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセンなどの縮合多環炭化水素化合物あるいはその誘導体(例えば、上述した化合物のカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸イミド)、またはそれらの混合物を用いることができる。更に、アセナフチレン,インドール,イソインドール,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナントリジンなどの縮合複素環化合物あるいはその誘導体、またはそれらの混合物を用いることもできる。
なお、粉砕は、炭化,仮焼の前後、あるいは黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行ってもよい。これらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。但し、嵩密度および破壊強度の高い黒鉛粉末を得るには、原料を成型したのち熱処理を行い、得られた黒鉛化成型体を粉砕・分級することが好ましい。
例えば、黒鉛化成型体を作製する場合には、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤となるバインダーピッチとを混合して成型したのち、この成型体を1000℃以下の低温で熱処理する焼成工程と、焼成体に溶融させたバインダーピッチを含浸させるピッチ含浸工程とを数回繰り返してから、高温で熱処理する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過程で炭化し、黒鉛化される。ちなみに、この場合には、フィラー(コークス)とバインダーピッチとを原料にしているので多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれる硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生することから、その通り路に微小な空孔が形成される。よって、この空孔により、リチウムの吸蔵・離脱反応が進行し易しくなると共に、工業的に処理効率が高いという利点もある。なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、焼結性を有するフィラーを用いてもよい。この場合には、バインダーピッチの使用は不要である。
難黒鉛化性炭素としては、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm3 未満であると共に、空気中での示差熱分析(differential thermal analysis ;DTA)において700℃以上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
このような難黒鉛化性炭素は、例えば、有機材料を1200℃程度で熱処理し、粉砕・分級することにより得られる。熱処理は、例えば、必要に応じて300℃〜700℃で炭化した(固相炭素化過程)のち、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1300℃まで昇温し、この温度を0〜30時間程度保持することにより行う。粉砕は、炭化の前後、あるいは昇温過程の間で行ってもよい。
出発原料となる有機材料としては、例えば、フルフリルアルコールあるいはフルフラールの重合体,共重合体、またはこれらの高分子と他の樹脂との共重合体であるフラン樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂,アクリル樹脂,ハロゲン化ビニル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアセチレンあるいはポリパラフェニレンなどの共役系樹脂、セルロースあるいはその誘導体、コーヒー豆類、竹類、キトサンを含む甲殻類、バクテリアを利用したバイオセルロース類を用いることもできる。更に、水素原子(H)と炭素原子(C)との原子数比H/Cが例えば0.6〜0.8である石油ピッチに酸素(O)を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)させた化合物を用いることもできる。
この化合物における酸素の含有率は3%以上であることが好ましく、5%以上であればより好ましい。酸素の含有率は炭素材料の結晶構造に影響を与え、これ以上の含有率において難黒鉛化性炭素の物性を高めることができ、負極14の容量を向上させることができるからである。ちなみに、石油ピッチは、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、またはアスファルトなどを、蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出あるいは化学重縮合することにより得られる。また、酸化架橋形成方法としては、例えば、硝酸,硫酸,次亜塩素酸あるいはこれらの混酸などの水溶液と石油ピッチとを反応させる湿式法、空気あるいは酸素などの酸化性ガスと石油ピッチとを反応させる乾式法、または硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化第二鉄などの固体試薬と石油ピッチとを反応させる方法を用いることができる。
なお、出発原料となる有機材料はこれらに限定されず、酸素架橋処理などにより固相炭化過程を経て難黒鉛化性炭素となり得る有機材料であれば、他の有機材料でもよい。
難黒鉛化性炭素としては、上述した有機材料を出発原料として製造されるものの他、特開平3−137010号公報に記載されているリン(P)と酸素と炭素とを主成分とする化合物も、上述した物性パラメータを示すので好ましい。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得ることができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れた充放電サイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
中でも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,Si2 2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化物や、あるいはLiN3 などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
また、この二次電池では、充電の過程において、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よりも低い時点で負極14にリチウム金属が析出し始めるようになっている。つまり、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において負極14にリチウム金属が析出しており、負極14の容量は、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和で表される。従って、この二次電池では、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料とリチウム金属との両方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっている。
なお、過充電電圧というのは、電池が過充電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。具体的には、この二次電池では、例えば開回路電圧が4.2Vの時に完全充電となり、開回路電圧が0V以上4.2V以下の範囲内の一部においてリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出している。
これにより、この二次電池では、高いエネルギー密度を得ることができると共に、充放電サイクル特性および急速充電特性を向上させることができるようになっている。これは、負極14にリチウム金属を析出させるという点では負極にリチウム金属あるいはリチウム合金を用いた従来のリチウム二次電池と同様であるが、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウム金属を析出させるようにしたことにより、次のような利点が生じるためであると考えられる。
第1に、従来のリチウム二次電池ではリチウム金属を均一に析出させることが難しく、それが充放電サイクル特性を劣化させる原因となっていたが、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料は一般的に表面積が大きいので、この二次電池ではリチウム金属を均一に析出させることができることである。第2に、従来のリチウム二次電池ではリチウム金属の析出・溶解に伴う体積変化が大きく、それも充放電サイクル特性を劣化させる原因となっていたが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の粒子間の隙間にもリチウム金属が析出するので体積変化が少ないことである。第3に、従来のリチウム二次電池ではリチウム金属の析出・溶解量が多ければ多いほど上記の問題も大きくなるが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料によるリチウムの吸蔵・離脱も充放電容量に寄与するので、電池容量が大きいわりにはリチウム金属の析出・溶解量が小さいことである。第4に、従来のリチウム二次電池では急速充電を行うとリチウム金属がより不均一に析出してしまうので充放電サイクル特性が更に劣化してしまうが、この二次電池では充電初期においてはリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウムが吸蔵されるので急速充電が可能となることである。
これらの利点をより効果的に得るためには、例えば、開回路電圧が過充電電圧になる前の最大電圧時において負極14に析出するリチウム金属の最大析出容量は、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電容量能力の0.05倍以上3.0倍以下であることが好ましい。リチウム金属の析出量が多過ぎると従来のリチウム二次電池と同様の問題が生じてしまい、少な過ぎると充放電容量を十分に大きくすることができないからである。また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の放電容量能力は、150mAh/g以上であることが好ましい。リチウムの吸蔵・離脱能力が大きいほどリチウム金属の析出量は相対的に少なくなるからである。なお、負極材料の充電容量能力は、例えば、リチウム金属を対極として、この負極材料を負極活物質とした負極について0Vまで定電流・定電圧法で充電した時の電気量から求められる。負極材料の放電容量能力は、例えば、これに引き続き、定電流法で10時間以上かけて2.5Vまで放電した時の電気量から求められる。
負極14には、また、例えば負極活物質層14Bの表面に硝酸塩を含む被膜14Cが形成されている。この被膜14Cは、例えば、正極12に含まれる硝酸塩が電解質に溶解して負極14の表面において反応することにより、あるいは後述するように電解質に含まれる硝酸イオンが負極14の表面において反応することにより形成されたものである。この二次電池では、電極反応にリチウムを用いているので、被膜14Cには例えばリチウムと硝酸イオンとが反応して生成した硝酸リチウムが含まれている。
セパレータ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ15を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
このポリオレフィン製の多孔質膜は、例えば、溶融状態のポリオレフィン組成物に溶融状態で液状の低揮発性溶媒を混練し、均一なポリオレフィン組成物の高濃度溶液としたのち、これをダイスにより成型し、冷却してゲル状シートとし、延伸することにより得られる。
低揮発性溶媒としては、例えば、ノナン,デカン,デカリン,p−キシレン,ウンデカンあるいは流動パラフィンなどの低揮発性脂肪族または環式の炭化水素を用いることができる。ポリオレフィン組成物と低揮発性溶媒との配合割合は、両者の合計を100質量%として、ポリオレフィン組成物が10質量%以上80質量%以下、更には15質量%以上70質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィン組成物が少なすぎると、成型時にダイス出口で膨潤あるいはネックインが大きくなり、シート成形が困難となるからである。一方、ポリオレフィン組成物が多すぎると、均一な溶液を調製することが難しいからである。
ポリオレフィン組成物の高濃度溶液をダイスにより成型する際には、シートダイスの場合、ギャップは例えば0.1mm以上5mm以下とすることが好ましい。また、押し出し温度は140℃以上250℃以下、押し出し速度は2cm/分以上30cm/分以下とすることが好ましい。
冷却は、少なくともゲル化温度以下まで行う。冷却方法としては、冷風,冷却水,その他の冷却媒体に直接接触させる方法、または冷媒で冷却したロールに接触させる方法などを用いることができる。なお、ダイスから押し出したポリオレフィン組成物の高濃度溶液は、冷却前あるいは冷却中に1以上10以下、好ましくは1以上5以下の引取比で引き取ってもよい。引取比が大きすぎると、ネックインが大きくなり、また延伸する際に破断も起こしやすくなり、好ましくないからである。
ゲル状シートの延伸は、例えば、このゲル状シートを加熱し、テンター法、ロール法、圧延法あるいはこれらを組み合わせた方法により、二軸延伸で行うことが好ましい。その際、縦横同時延伸でも、逐次延伸のいずれでもよいが、特に、同時二次延伸が好ましい。延伸温度は、ポリオレフィン組成物の融点に10℃を加えた温度以下、更には結晶分散温度以上融点未満とすることが好ましい。延伸温度が高すぎると、樹脂の溶融により延伸による効果的な分子鎖配向ができず好ましくないからであり、延伸温度が低すぎると、樹脂の軟化が不十分となり、延伸の際に破膜しやすく、高倍率の延伸ができないからである。
なお、ゲル状シートを延伸したのち、延伸した膜を揮発溶剤で洗浄し、残留する低揮発性溶媒を除去することが好ましい。洗浄したのちは、延伸した膜を加熱あるいは送風により乾燥させ、洗浄溶媒を揮発させる。洗浄溶剤としては、例えば、ペンタン,ヘキサン,ヘブタンなどの炭化水素、塩化メチレン,四塩化炭素などの塩素系炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭素、またはジエチルエーテル,ジオキサンなどのエーテル類のように易揮発性のものを用いる。洗浄溶剤は用いた低揮発性溶媒に応じて選択され、単独あるいは混合して用いられる。洗浄は、揮発性溶剤に浸漬して抽出する方法、揮発性溶剤を振り掛ける方法、あるいはこれらを組み合わせた方法により行うことができる。この洗浄は、延伸した膜中の残留低揮発性溶媒がポリオレフィン組成物100質量部に対して1質量部未満となるまで行う。
セパレータ15に含浸されている電解質は、例えば有機溶剤などの非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含む液状のいわゆる電解液を含有している。非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステルあるいは鎖状炭酸エステルにより代表される化合物の1種または2種以上を混合したものが好ましい。具体的には、チレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、燐酸トリメチルおよびこれらの化合物の水酸基の一部または全部をフッ素基に置換したものなどが挙げられる。特に、優れた充放電容量特性および充放電サイクル特性を実現するためには、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの少なくとも1種を用いることが好ましい。
リチウム塩としては、例えば、LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiClO4 ,LiB(C6 5 4 ,LiCH3 SO3 ,LiCF3 SO3 ,LiN(CF3 SO2 2 ,LiN(C2 5 SO2 2 ,LiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 ),LiC(CF3 SO2 3 ,LiAlCl4 ,LiSiF6 ,LiClあるいはLiBrが挙げられ、いずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、LiPF6 は、高い導電率を得ることができ、酸化安定性にも優れているので好ましく、LiBF4 は、熱的安定性および酸化安定性に優れているので好ましい。また、LiCF3 SO3 は熱的安定性が高いので好ましく、LiClO4 は高い導電率が得られるので好ましい。更に、LiN(CF3 SO2 2 ,LiN(C2 5 SO2 2 ,LiC(CF3 SO2 3 およびLiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )は、比較的高い導電率を得ることができ、熱的安定性も高いので好ましい。更に、これらのうちの少なくとも2種を混合して用いれば、それらの効果を合わせて得ることができるのでより好ましい。
これらリチウム塩の含有量(濃度)は溶媒に対して0.5mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる虞があるからである。
この電解質は、更に、硝酸イオンを含有していることが好ましい。この硝酸イオンは例えば正極12に含まれる硝酸塩が溶解することにより生成したものでもよく、正極12とは別に電解質に添加されたものでもよい。これにより上述したように負極14の表面に被膜14Cを形成することができるからである。
なお、この電解質は電解液のみにより構成されていてもよいが、更に電解液を保持する高分子化合物を含有することによりゲル状とされていてもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが望ましい。電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量%〜50質量%程度が好ましい。
また、電解液を窒化リチウム,ヨウ化リチウムあるいは水酸化リチウムの多結晶、ヨウ化リチウムと三酸化二クロムとの混合物、またはヨウ化リチウムと硫化チリウムと亜硫化二リンとの混合物などを含む無機伝導体に保持させるようにしてもよく、高分子材料と無機伝導体との混合物に保持させるようにしてもよい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料と、導電剤と、結着剤と、硝酸塩とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体12Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型し、正極活物質層12Bが形成された正極集電体12Aを所定の形状に打ち抜くことにより正極12を作製する。
次いで、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層14Bを形成し、負極14を作製する。その際、正極活物質層12Bと負極活物質層14Bとの容量の割合を調整し、上述したように充電の途中で負極14にリチウム金属が析出するようにする。
正極12および負極14を作製したのち、例えば、負極14、電解質を含浸させたセパレータ15および正極12を積層して、外装カップ13と外装缶11との中に入れ、それらをかしめる。その際、電解質に硝酸イオンを添加するようにしてもよい。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
この二次電池は次のように作用する。
この二次電池では、充電を行うと、正極活物質層12Bからリチウムイオンが離脱し、セパレータ15に含浸された電解液を介して、まず、負極活物質層14Bに含まれるリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において、充電容量がリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電容量能力を超え、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出し始める。そののち、充電を終了するまで負極14にはリチウム金属が析出し続ける。これにより、負極活物質層14Bの外観は、例えばリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料として黒鉛を用いる場合、黒色から黄金色、更には白銀色へと変化する。
次いで、放電を行うと、まず、負極14に析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、セパレータ15に含浸された電解液を介して、正極活物質層12Bに吸蔵される。更に放電を続けると、負極活物質層14B中のリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極活物質層12Bに吸蔵される。よって、この二次電池では、従来のいわゆるリチウム二次電池およびリチウムイオン二次電池の両方の特性、すなわち高いエネルギー密度および良好な充放電サイクル特性が得られる。
特に、本実施の形態では、正極12に含まれる硝酸塩が電解質に溶解することにより生成した硝酸イオン、あるいは電解質に添加された硝酸イオンが、充電の際に、負極14の表面でリチウムなどと反応し、負極14の表面に硝酸塩を含む被膜14Cを形成する。よって、負極14にリチウム金属を析出させた状態で保存しても、また、充放電サイクルを繰り返しても、負極14に析出したリチウム金属が電解質などと反応して失活してしまうことが抑制される。
このように本実施の形態によれば、正極12が硝酸塩を含有するようにしたので、または電解質が硝酸イオンを含有するようにしたので、負極14の表面に硝酸塩を含む被膜14Cを形成することができ、負極14に析出したリチウム金属が電解質などと反応して失活してしまうことを抑制することができる。よって、初期充電保存時および充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る二次電池は、負極活物質層14Bがリチウム金属により構成されていることを除き、第1の実施の形態と同様の構成を有している。また、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。よって、図1を参照し、対応する構成要素には同一の符号付してその詳細な説明を省略する。
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属を用いており、負極14の容量がリチウムの析出および溶解による容量成分により表される。負極活物質層14Bは、充放電により析出・溶解を繰り返すものであり、組み立て時からすでに負極集電体14Aに設けられていてもよいが、組み立て後に充電により形成されてもよい。また、負極集電体14Aは設けなくてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層12Bからリチウムイオンが離脱し、電解質を介して、負極14にリチウム金属となって析出する。放電を行うと、例えば、負極14からリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解質を介して正極活物質層12Bに吸蔵される。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、正極12が硝酸塩を含んでいるので、または、電解質が硝酸イオンを含んでいるので、負極14の表面に硝酸塩を含む被膜14Cが形成され、負極14に析出したリチウム金属が電解質などと反応して失活してしまうことが抑制される。
このように本実施の形態によれば、正極12が硝酸塩を含有するようにしたので、または電解質が硝酸イオンを含有するようにしたので、負極活物質としてリチウムを利用するいわゆるリチウム金属二次電池においても、負極14の表面に形成される被膜14Cにより、リチウム金属が電解質などと反応して失活してしまうことを抑制することができる。よって、初期充電保存時および充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1, 1−2)
負極の容量が、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和により表され、図1に示した構造を有する二次電池を作製した。ここでは、図1を参照し、図1に示した符号を用いて説明する。
まず、正極材料として平均粒径5μmのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を用い、このリチウム・コバルト複合酸化物97質量部と、導電剤である平均粒径1μmのグラファイト1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン2質量部と、硝酸リチウム5質量部とを混合して正極合剤を調製した。次いで、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、アルミニウム箔よりなる正極集電体12Aの片面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層12Bを形成し、正極12を作製した。その際、正極活物質層12Bの厚みあるいは塗布密度などを調節して、正極活物質層12Bの容量を2.0mAh/cm2 とした。
また、負極材料である平均粒径25μmのグラファイト92質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合して負極合剤を調製した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、銅箔よりなる負極集電体14Aの片面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極合剤層14Bを形成し、負極14を作製した。その際、負極活物質層14Bの厚みあるいは塗布密度などを調節して、負極活物質層14Bの容量を1.1mAh/cm2 とした。すなわち、負極活物質層14Bの容量を正極活物質層12Bの容量よりも小さくし、充電の途中で負極14にリチウム金属が析出して、負極14の容量がリチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和で表されるようにした。
正極12および負極14を作製したのち、外装カップ13に負極14およびセパレータ15をこの順で置き、この上から電解液を注入し、正極12を入れた外装缶11を被せたのち、外装カップ13および外装缶11の周縁部をガスケット16を介してかしめることにより、コイン型の二次電池を作製した。電解液には、実施例1−1では、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを1:1の体積比で混合した溶媒に電解質塩としてLiPF6 を1.0mol/dm3 の含有量で溶解させたものを用い、実施例1−2ではエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを1:1の体積比で混合した溶媒に電解質塩としてLiPF6 を1.0mol/dm3 の含有量で溶解させたものを用いた。すなわち、実施例1−1と実施例1−2とで溶媒の種類を変化させた。セパレータ15には、厚み25μmのポリエチレン製のものを使用した。
また、実施例1−1, 1−2に対する比較例1−1, 1−2として、正極に硝酸塩を添加しないことを除き、他は実施例1−1, 1−2と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例1−1, 1−2および比較例1−1, 1−2の二次電池について、充放電試験を行い、1サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、および50サイクル目の放電容量を求めた。充放電試験では、23℃で負荷0.1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで15時間行い、充電後12時間放置したのち、負荷0.1Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行うという工程を1サイクルとし、2サイクル目以降も毎回充電後12時間放置を行なった。すなわち、1サイクル目の放電容量というのは、充電後の保存時における容量劣化を表している。なお、0.1Cとは初回容量を10時間で放電しきる電流値をいう。
表1,2および図2に得られた結果を示す。なお、表1,2および図2に示した相対容量というのは、比較例1−1の1サイクル目の放電容量を100として各放電容量を相対的に表したものである。また、サイクル容量維持率というのは、各電池における1サイクル目の放電容量に対する各サイクル目の放電容量の百分率、すなわち(各サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100である。
また、実施例1−1,1−2および比較例1−1,1−2の二次電池について、上述した条件で1サイクル充放電を行ったのち再度完全充電させたものを解体し、目視および 7Li核磁気共鳴分光法により、負極活物質層14Bにリチウム金属が析出しているか否かを調べた。更に、上述した条件で2サイクル充放電を行い、完全放電させたものを解体し、同様にして、負極活物質層14Bにリチウム金属が析出しているか否かを調べた。
その結果、実施例1−1,1−2および比較例1−1,1−2の二次電池では、完全充電状態においては負極活物質層14Bにリチウム金属の存在が認められ、完全放電状態においてはリチウム金属の存在が認められなかった。すなわち、負極14の容量は、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されることが確認された。
Figure 2005197175
Figure 2005197175
表1,2および図2に示したように、実施例1−1, 1−2によれば、比較例1−1,1−2に比べて、1サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、および50サイクル目のいずれについても、大きな放電容量を得ることができた。また、サイクル容量維持率も、実施例1−1,1−2によれば、比較例1−1,1−2に比べて著しく高くすることができた。
すなわち、負極14の容量が軽金属の吸蔵・離脱による容量成分と、軽金属の析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和により表される二次電池において、正極12に硝酸塩を含ませるようにすれば、初期充電をした後の保存時における容量劣化、および充放電サイクルを繰り返した際の容量劣化を抑制することができることが分かった。
(実施例2−1, 2−2)
負極14をリチウム金属板により形成したことを除き、他は実施例1−1,1−2と同様にして、負極14の容量が、リチウムの析出・溶解による容量成分からなるいわゆるリチウム金属二次電池を作製した。また、実施例2−1, 2−2に対する比較例2−1, 2−2として、正極に硝酸塩を添加しないことを除き、他の実施例2−1, 2−2と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例2−1, 2−2および比較例2−1, 2−2の二次電池について、実施例1−1, 2−2と同様にして充放電試験を行い、1サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、および50サイクル目の放電容量を求めた。表3,4および図3に得られた結果を示す。なお、表3,4および図2に示した相対容量というのは、表1に示した比較例1−1の1サイクル目の放電容量を100として各放電容量を相対的に表したものである。また、サイクル容量維持率というのは、各電池における1サイクル目の放電容量に対する各サイクル目の放電容量の百分率、すなわち(各サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100である。
Figure 2005197175
Figure 2005197175
表3,4および図3に示したように、実施例2−1, 2−2によれば、実施例1−1,1−2と同様に、比較例2−1,2−2に比べて、1サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、および50サイクル目のいずれについても、大きな放電容量を得ることができた。また、サイクル容量維持率も、実施例2−1,2−2によれば、比較例2−1,2−2に比べて著しく高くすることができた。
すなわち、いわゆるリチウム金属二次電池においても、正極12に硝酸塩を含ませるようにすれば、初期充電をした後の保存時における容量劣化、および充放電サイクルを繰り返した際の容量劣化を抑制することができることが分かった。
また、実施例1−1,1−2と実施例2−1,2−2との相対容量を比較して図4に示す。図4に示したように、実施例1−1,1−2よりも実施例2−1,2−2の方が初期容量は大きいものの、実施例1−1,1−2の方が実施例2−1,2−2よりもサイクル容量維持率が優れていることが分かる。すなわち、負極の容量が、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和により表される二次電池によれば、高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性も得ることができる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、正極12に硝酸塩を含む場合について説明したが、正極12に硝酸塩を含むと共に電解質に硝酸イオンを含んでいてもよいし、正極12に硝酸塩を含み電解質には硝酸イオンを含んでいなくてもよいし、逆に、正極12に硝酸塩を含まず電解質に硝酸イオンを含んでいてもよい。例えば、正極12に硝酸塩を添加しても、全てが溶解して正極12に硝酸塩が残っていない場合や、一部が溶解して一部が正極12に残り、電解質の硝酸イオンが全て被膜14Cの形成に用いられて電解質には硝酸イオンが残っていない場合などもあるからである。
また、正極12に添加した硝酸塩、または電解質に溶解したあるいは添加された硝酸イオンの全てが被膜14Cの形成に用いられ、正極12および電解質に残っていなくてもよい。
更に、上記実施の形態および実施例においては、被膜14Cが硝酸塩を含む場合について説明したが、形成される被膜14Cの組成は、電解質の組成などにより変化することもあるので、被膜14Cに硝酸塩が含まれない場合もある。
加えて、上記実施の形態および実施例においては、正極12に硝酸塩を添加する場合について説明したが、正極12に硝酸塩を添加すると共に電解質にも硝酸イオンを添加するようにしてもよいし、正極12のみに硝酸塩を添加するようにしてもよいし、電解質のみに硝酸イオンを添加するようにしてもよい。
更にまた、上記実施の形態および実施例においては、負極14の容量が、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容量成分とを含み、かつその和により表される二次電池、またはいわゆるリチウム金属二次電池について説明したが、本発明はいわゆるリチウムイオン二次電池についても適用することができる。但し、上述したように、負極14において軽金属の析出・溶解反応を利用する電池の方が、被膜14Cにより得られる効果、すなわち容量の劣化を抑制する効果が高いので好ましい。なお、いわゆるリチウムイオン二次電池は、第1の実施の形態で説明した二次電池において、負極にリチウム金属が析出しないように、正極活物質層と負極活物質層との容量の割合を調節することを除き、同様の構成を有している。
加えてまた、上記実施の形態および実施例においては、軽金属としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、軽金属を吸蔵および離脱することが可能な負極材料、正極材料、非水溶媒、あるいは電解質塩などは、その軽金属に応じて選択される。但し、軽金属としてリチウムまたはリチウムを含む合金を用いるようにすれば、現在実用化されているリチウムイオン二次電池との電圧互換性が高いので好ましい。なお、軽金属としてリチウムを含む合金を用いる場合には、電解質中にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出の際に合金を形成してもよく、また、負極にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出の際に合金を形成してもよい。
更にまた、上記実施の形態および実施例においては、コイン型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する円筒型、楕円型、多角形型あるいはラミネート型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、いわゆるボタン型,角型あるいは大型などの二次電池についても適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 実施例1−1, 1−2および比較例1−1, 2に係るサイクル数と相対容量との関係を表す特性図である。 実施例2−1, 2−2および比較例2−1, 2−2に係るサイクル数と相対容量との関係を表す特性図である。 実施例1−1, 1−2,2−1, 2−2に係るサイクル数と相対容量との関係を表す特性図である。
符号の説明
11…外装缶、12…正極、12A…正極集電体、12B…正極活物質層、13…外装カップ、14…負極、14A…負極集電体、14B…負極活物質層、14C…被膜、15…セパレータ、16…ガスケット。

Claims (16)

  1. 正極活物質と、硝酸塩とを含むことを特徴とする正極。
  2. 前記硝酸塩として硝酸リチウムを含むことを特徴とする請求項1記載の正極。
  3. 表面に硝酸塩を含む被膜を有することを特徴とする負極。
  4. 前記被膜は硝酸リチウムを含むことを特徴とする請求項3記載の負極。
  5. 硝酸イオンを含むことを特徴とする電解質。
  6. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記正極は、正極活物質と、硝酸塩とを含むことを特徴とする電池。
  7. 前記硝酸塩として硝酸リチウムを含むことを特徴とする請求項6記載の電池。
  8. 前記負極の容量は、軽金属の析出および溶解による容量成分を含むことを特徴とする請求項6記載の電池。
  9. 前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されることを特徴とする請求項6記載の電池。
  10. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記負極は、表面に硝酸塩を含む被膜を有することを特徴とする電池。
  11. 前記被膜は硝酸リチウムを含むことを特徴とする請求項10記載の電池。
  12. 前記負極の容量は、軽金属の析出および溶解による容量成分を含むことを特徴とする請求項10記載の電池。
  13. 前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されることを特徴とする請求項10記載の電池。
  14. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記電解質は、硝酸イオンを含むことを特徴とする電池。
  15. 前記負極の容量は、軽金属の析出および溶解による容量成分を含むことを特徴とする請求項14記載の電池。
  16. 前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されることを特徴とする請求項14記載の電池。
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