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JP2005177354A - 眼調節機能測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 乱視眼の影響を補正して、調節機能の評価を正確に行うこと。
【解決手段】 被検眼眼底に測定光束を投影する投影光学系と眼底からの反射光束を受光素子に受光する受光光学系とを含む屈折力測定光学系と、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動可能な固視標呈示光学系と、固視標を複数の位置で停止させた状態で特定の経線方向についての屈折力の経時変化を前記受光素子の出力に基づいて検出する屈折力検出手段と、被検眼の乱視状態を検出する乱視検出手段と、乱視情報に基づいて屈折力検出手段による屈折力情報を補正する乱視補正手段と、補正後の屈折力情報を基に被検眼の調節機能状態を求める眼調節機能解析手段と、を備える。乱視補正手段は、特定の経線方向について検出された屈折力情報を所定の演算式により補正する手段、または屈折力測定光学系の投影光学系又は受光光学系に設けられた乱視補正光学系を乱視情報に基づいて駆動する手段である。
【選択図】 図4


Description

本発明は、被検眼の調節機能を他覚的に測定する眼調節機能測定装置に関する。
眼科医院等においては、一般的に、眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定装置を使用し、これにより得られた他覚屈折力値を基にして自覚値検査を行い、遠用処方度数を決定している。しかし、眼に調節緊張がある被検者においては、近くを見る場合に頭痛や肩こり等の眼精疲労を生じる傾向にある。このため、眼屈折力測定光学系を使用して調節機能を測定する方法及び装置が、下記特許文献1及び非特許文献1にて提案されている。これらの方法及び装置においては、調節緊張の程度と調節微動の高周波成分の出現頻度にある種の相関があることに着目し、固視標(刺激視標)を遠方から0.5Dステップ毎に近方へ順次移動させ、8箇所の各位置で固視標が停止状態にあるときの屈折力データの経時変化をそれぞれ20秒間サンプリングし、サンプリングした屈折力の経時変化について所定の高周波成分の出現頻度を求めることにより、被検眼の調節機能を他覚的に測定している。その測定結果は、固視標位置、調節反応量(屈折力変化)及び調節微動の高周波成分出現頻度が一つのグラフで表現されている。
特開平2003−70740号公報 鈴木説子、他2名「調節微動の高周波成分による調節機能の評価」、視覚の科学、日本眼光学学会、2001年9月、第22巻、第3号、p.93−97
ところで、上記の調節機能測定では屈折力の経時変化からその高周波成分の出現頻度を求めるので、屈折力の経時変化は0.1秒以下の十分に短い周期でサンプリングする必要がある。これに対しては、ある特定の経線方向(例えば、水平経線方向)のみの屈折力を検出することで対応できる。
しかし、被検眼が乱視眼であり、その乱視軸が測定経線方向と異なる場合、ある特定の経線方向のみの屈折力を検出する方法では、その屈折力情報が乱視分のずれを持つことにより、調節反応量のグラフが強めの方向にオフセットされてしまい、調節機能状態の評価を誤ってしまう問題がある。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、乱視眼の影響を補正して、調節機能の評価を正確に行える眼調節機能測定装置を提供することを技術課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 被検眼眼底に測定光束を投影する投影光学系と眼底からの反射光束を受光素子に受光する受光光学系とを含む屈折力測定光学系と、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動可能な固視標呈示光学系と、固視標を複数の位置で停止させた状態で特定の経線方向についての屈折力の経時変化を前記受光素子の出力に基づいて検出する屈折力検出手段と、被検眼の乱視状態を検出する乱視検出手段と、該検出された乱視情報に基づいて前記屈折力検出手段による屈折力情報を補正する乱視補正手段と、該補正後の屈折力情報を基に被検眼の調節機能状態を求める眼調節機能解析手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の乱視補正手段は、特定の経線方向について検出された屈折力情報を所定の演算式により補正する手段であることを特徴とする。
(3) (1)の乱視補正手段は、前記屈折力測定光学系の投影光学系又は受光光学系に設けられた乱視補正光学系と、前記乱視検出手段により検出された乱視情報に基づいて前記乱視補正光学系を駆動する手段と、を備えることを特徴とする。
(4) (1)の眼調節機能測定装置において、前記屈折力検出手段により検出する測定経線方向における屈折力測定の阻害要因の有無を検出する手段と、屈折力測定の阻害要因が検出されたときに測定経線方向を変更する手段と、を設けたことを特徴とする。
(5) (1)の眼調節機能測定装置において、固視標の呈示位置から換算される屈折力と前記屈折力検出手段により検出された屈折力との差を演算し、その差が所定値以上に大きいときは、再測定を促す手段を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、乱視による測定結果の誤差を抑え、調節機能の評価を正確に行える。
以下、本発明の最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る眼調節機能測定装置の外観図である。測定装置は、基台1と、基台1に取り付けられた顔支持ユニット2と、基台1上に移動可能に設けられた移動台3と、移動台3に移動可能に設けられ、後述する光学系を収納する測定部4を備える。測定部4は、移動台3に設けられたXYZ駆動部6により、被検眼Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。駆動部6は、X,Y,Zの方向毎に設けられたスライド機構、モータ等から構成される。移動台3は、ジョイスティック5の操作により、基台1上をX方向及びZ方向に移動され、回転ノブ5aを回転操作することにより、XYZ駆動部6のY駆動によりY方向に移動される。移動台3には被検眼Eの観察像や測定結果等の各種の情報を表示するモニタ7、測定モード切換スイッチ等が配置されたスイッチ部8が設けられている。
図2は光学系の概略構成図である。眼屈折力測定光学系10は、投光光学系10aと受光光学系10bを持つ。11は赤外領域に波長を持つ2個の測定用光源であり、光軸を中心に回転可動に配置されている。12は集光レンズ、13は被検眼Eの眼底と共役な位置に配置されるべく移動可能な測定用ターゲット板、14は投影レンズである。光源11〜投影レンズ14により投影光学系10aが構成される。15a及び15bはビームスプリッタである。17は対物レンズ、31はビームスプリッタ、16はミラー、18、19はリレーレンズ、20は被検眼Eの角膜と共役な位置に配置されている帯状の角膜反射除去マスク、21はターゲット板13とともに移動する移動レンズ、22は結像レンズである。23は測定用受光素子であり、測定用受光素子23は測定用光源11及び角膜反射除去マスク20と同期して光軸を中心に回動する。対物レンズ10〜受光素子23により受光光学系10bが構成される。なお、角膜反射除去マスク20には角膜や前眼部からの反射光が入射する2つの受光素子20aが設けられており、その受光素子20aの出力信号により被検眼の瞬きの有無、測定経線方向における阻害要因の有無が検出される。
30は固視標呈示光学系を表す。32は光軸上を移動可能な第1リレーレンズであり、その移動量は被検眼の球面屈折力と比例関係にある。33は第2リレーレンズ、34は第2リレーレンズ33の焦点位置に配置されている固視標(刺激視標)、35は集光レンズ、36は照明ランプである。固視標34は、例えば、風景チャートや放射状のラインが描かれたバースト視標である。第1リレーレンズ32は光軸上を移動することによって固視標34の呈示位置(呈示距離)を光学的に変化させる。眼屈折力の測定時には、第1リレーレンズ32の移動により被検眼の調節除去の雲霧を行う。固視標34の呈示位置の変更は、固視標34、集光レンズ35、照明ランプ36をセットで光軸方向に移動する構成であっても良い。
40は視軸方向からXY方向のアライメント指標を角膜に投影するXY指標投影光学系を示す。41は赤外光の光を出射する点光源である。点光源41を出射した光束は、ビームスプリッタ42で反射した後、ビームスプリッタ31を介して、対物レンズ17により平行光束となり、ビームスプリッタ15aで反射し、測定光軸に沿って被検眼Eの正面から指標を投影する。
80はZ方向のアライメント指標を角膜に投影するZ指標投影光学系である。Z指標投影光学系80は、被検眼Eに対向する測定光軸L1を中心に対称に配置された2組の視標投影光学系80a,80bと、この視標投影光学系80a,80bの外側に光軸L1を中心に対称に配置された2組の視標投影光学系80c,80dを備える。視標投影光学系80a,80bは赤外の点光源81a,81bにより構成され、それぞれの投影光軸は測定光軸L1に対して所定の角度で交わるように配置されている。この視標投影光学系80a,80bは、被検眼Eに対して有限遠の視標を投影する。視標投影光学系80c,80dは、赤外の点光源81c,81dとコリメーティングレンズ82c,82dとにより構成され、それぞれの投影光軸は測定光軸L1に対して所定の角度で交わるように配置されている。この視標投影光学系80c,80dは、被検眼Eに対して無限遠に視標を投影する。
45は観察光学系を示す。図示無き照明光源により照明された被検眼前眼部像及び指標投影光学系40及び80により投影された各指標像はビームスプリッタ15bで反射された後、対物レンズ46、ミラー47を介してCCDカメラ48に撮像される。また、観察光学系45は被検眼Eに投影されたアライメント指標像を検出する検出光学系を兼ねる。
図3は装置の制御系の概略構成図である。CCDカメラ48からの映像信号は、画像処理部51に入力され、モニタ7に出力される。50は制御部であり、XYZ駆動部6、受光素子23、スイッチ部8、測定用光源11及び受光素子23を駆動するモータ56、測定用ターゲット板13及びレンズ21を移動するモータ57、第1リレーレンズ32を移動するモータ58、ターゲット板13の移動位置を検出するポテンショメータ60、メモリ62、音発生器63、等が接続されている。制御部50はこれらの各構成部を制御すると共に、受光素子23やポテンショメータ60からの検出信号を基に眼屈折力を演算し、また、後述する調節機能状態を解析する機能を有する。
以上のような構成を備える装置において、調節機能測定の動作を説明する(図4のフローチャート参照)。人の眼は、静止した視標を固視しているときに、自覚的には静止屈折状態にあると認識されているが、経時的に他覚的な屈折力の観察を行うと、調節微動と呼ばれる正弦波様の揺れが認められる。調節微動の高周波成分は水晶体屈折力の振動に起因し、毛様体筋の活動状態を示すと考えられる。毛様体筋に掛かる負荷が大きくなると、調節微動の高周波成分の出現頻度も増加する。調節微動高周波成分の出現頻度(以下、HFC)を調べることにより、被検眼の調節緊張の程度を類推することができる。また、調節反応量(屈折力変化)を見ることにより、調節反応の異常、調節力の強さの程度を評価することができる。
測定に際しては、まず、通常の遠用屈折力測定を実行する(ステップS−1)。検者は、モニタ7に表示される前眼部像とレチクルNを観察しながら、ジョイスティック5及び回転ノブ5aを操作し、移動台3及び測定部4をXYZ方向に移動して粗くアライメントする。図3に示すように、XY指標投影光学系40によるアライメント指標像M1と、Z指標投影光学系による4つのアライメント指標像Ma〜Mdが現われるようになると、自動アライメント及び追尾が行われるようになる。指標像M1及び指標像Ma〜Mdは画像処理部51により検出処理される。制御部50は、アライメント指標像の内の中央に位置する指標像M1の検出結果を基に、適正位置に対するXY方向のアライメント状態を判定する。また、制御部50は、指標像Ma〜Mdの検出結果を基にZ方向のアライメント状態を判定する。
Z方向のアライメント状態の判定は、視標投影光学系80c,80dによる無限遠指標像Mc,Mdの像間隔と視標投影光学系80a,80bによる有限遠指標像Ma,Mbの像間隔とを比較することにより行う。無限遠視標の投影では、作動距離(Z方向)が変化しても、その像間隔(像高さ)ほどんど変化しない。一方、有限遠視標の投影では、作動距離(Z方向)の変化に伴ってその像間隔(像高さ)が変化する。この特性を利用してZ方向のアライメント状態が判定できる(特開平6−46999号参照)。
制御部50は各方向のアライメント状態の判定結果に基づきXYZ駆動部6を駆動制御し、測定部4を各方向に移動する。XYZの各方向のアライメント状態が共に所定の許容範囲に入れば、トリガ信号を自動的に発して測定を実行する。
測定用光源11を出射した測定光は、集光レンズ12、ターゲット板13、投影レンズ14、ビームスプリッタ15a及び15bを経て被検眼Eの角膜近傍に集光した後、眼底に到達する。正常眼の場合、眼底で反射したターゲット像はビームスプリッタ15aで反射し、対物レンズ17、ビームスプリッタ31を通過後、ミラー16でもう一度反射され、リレーレンズ18,19及びレンズ21を通過し、結像レンズ22によって受光素子23上で結像する。被検眼に屈折異常がある場合は、受光素子23で受光した眼底反射光の受信信号に基づき、モータ57を駆動して移動レンズ21とともにターゲット板13を被検眼Eの眼底と共役な位置にくるように移動させる。
次に、モータ58の駆動により第1リレーレンズ32を移動して固視標34と被検眼Eの眼底とを共役な位置においた後、被検眼の調節を除去すべく、さらに適当なディオプタ分だけ雲霧が掛かるように第1リレーレンズ32を移動させる。被検眼Eに雲霧の掛かった状態で、測定用光源11、角膜反射除去マスク20、及び受光素子23を光軸回りに180度回転させる。回転中、受光素子23からの信号によりターゲット板13及び移動レンズ21が移動し、その移動量をポテンショメータ60が検出して各経線方向の屈折力を求める。制御部50は、この屈折力に所定の処理を施すことによって被検眼のS(球面屈度数)、C(乱視度数)、A(乱視軸角度)の他覚屈折力値を得る。雲霧状態での他覚屈折力値S,C,Aはメモリ62に記憶される。
遠用屈折力測定の終了後、引き続き調節緊張測定に移行する(ステップS2〜S6)。調節緊張測定では、まず、遠用屈折力測定で得られたS値の位置(被検眼の遠点位置と見なすことができる)を基準に、+0.5D分だけ遠方位置に固視標34が移動される。この固視標位置で、所定時間T(例えば、20秒)における屈折力データの経時変化がサンプリングされる。このとき、測定用光源11及び測定受光素子23を位置させる測定経線方向は、ある一つの方向(例えば、水平経線方向)に設定しておくことにより、屈折力データの経時変化のサンプリングを0.1秒以下の短い時間で検出できる。2.3Hzまでの高周波成分を対象とする場合には、約80msecの間隔でサンプリングすれば、2.3Hzの1周期中に5回検出することになるので、HFCの解析が可能になる。より高周波成分を解析する場合には、サンプリング間隔をより短くする。例えば、20msecにすれば、10Hzまでの高周波成分も可能になる。
なお、測定経線方向は、通常は水平経線方向に設定しておくと有利である。90°方向であると、瞼や睫毛の影響で測定エラーや測定誤差の要因となりやすいためである。
その後、0.5Dステップずつ固視標34が近方に順次移動されると共に、各位置においてそれぞれ所定時間Tにおける屈折値データの経時変化が同じようにサンプリングされる。固視標34の移動は合計8箇所の位置まで繰り返される。すなわち、遠点位置に相当する遠用測定でのS値を基準に+0.5D〜−3.0D間を0.5Dステップで8回測定される。各固視標位置でサンプリングされた屈折力データは、各固視標位置に対応付けらあれてメモリ62に記憶される。
なお、全経線方向の遠用屈折力測定において、調節緊張測定で実施する測定経線方向に白内障等の測定阻害要因がある場合は(ステップS−3)、その測定阻害要因を外した方向に測定経線方向を変更する(ステップS−6)。測定経線方向における測定阻害要因の有無は、角膜反射除去マスク20に設けられた受光素子20aの出力から検知される。測定経線方向に白内障等の測定阻害要因がある場合、その測定阻害要因で測定光源11からの測定光束が反射され、受光素子20aの出力レベルが高くなる。受光素子20aの出力レベルが基準レベルより低ければ、測定阻害要因が無いと判断される。測定経線方向の変更位置は、遠用屈折力測定時の受光素子20aの受光結果を基に制御部50が設定する他、検者がスイッチ部8のスイッチを使用して任意に設定することも可能である。
各固視標位置(8箇所)でサンプリングされた屈折力データがメモリ62に記憶されると、調節機能の解析が制御部50により実施される(ステップS−7)。制御部50は、この解析に先立って、先に得られた遠用屈折力測定にて被検眼に乱視がある場合には、上記でサンプリングされた屈折力データを次式により弱主経線方向の屈折力に補正する。DCORは補正後の屈折力、SHは測定経線方向でサンプリングした屈折力(球面度数)、CHOME及びAHOMEは遠用屈折力測定で得られた乱視度数及び乱視軸角度である。
Figure 2005177354
この乱視補正により、ある特定の経線方向の測定による屈折力データであっても、乱視を考慮した正確な解析・評価が可能になる。例えば、乱視軸角度が測定経線方向とずれた90°であった場合(乱視度数はマイナスとする)、固視標の呈示は遠方方向から測定開始を行うため、まず垂直方向に指標がクリアに見える。ここで、測定経線方向が水平方向(=0°)であった場合には、そのサンプリングされる屈折力は乱視分強く測定されることになる。すなわち、C=−2Dの被検眼の場合には、水平経線方向の屈折力が−2D分強く得られる。この屈折力をそのまま調節緊張の解析に使用すると、あたかも調節リード(過調節)があるように見えてしまい、正しい判定ができなくなる。これに対して、測定経線方向の屈折力を、上記の演算により弱主経線の屈折力に補正することにより、屈折力を正確に評価できる。
制御部50は、乱視補正の演算後の屈折力データを基にHFCを算出する。HFCの算出について簡単に説明する。まず、被検眼の瞬き検出によりチェックされた屈折力データを演算対象から除去する。瞬きによるデータの欠損、乱れは3次スプライン関数にて補正する。次に、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数分析を行い、パワースペクトルを求める。パワースペクトルの算出は、時間T(20秒間)の各区間を対象とする。各区間は、時間T内で一定時間(例えば、1秒)ずつずらして設定し、各区間内の時間はそれぞれ同一(例えば、8秒)とする。算出されたパワースペクトルを常用対数に変換して解析する。このパワースペクトルから高周波数成分1.0〜2.3Hzの区間の平均パワースペクトル(単位dB)を求め、調節微動高周波成分の出現頻度(HFC)として評価する。
HFCが算出されると、図5のような調節緊張の測定結果がモニタ7に表示される(ステップS−8)。測定結果は、固視標(刺激視標)位置、調節反応量及びHFCの3要素を、カラーコードマップを用いた3次元グラフとしてグラフィック表示している。グラフは縦軸に調節反応量(屈折力D)を、横軸に固視標位置を取り、各固視標位置では所定時間T内の経過時間に対応する調節反応量の変化が棒グラフで表されている。HFCは、例として7段階に色分けしている。例えば、HFCが50未満は緑色で、70以上のときは赤色で表示し、その間を緑色から黄色を経由して赤に至るグラデーションで表示している。調節緊張の少ない被検眼は遠方視におけるHFCの値が低く、カラーコードマップでは緑色を呈する。これに対して、調節緊張が多い被検眼は、HFCの値が全体的に高くなり、カラーコードマップでは赤色を呈し、毛様体筋が緊張状態にあることが示される。
図5において、ラインFSは遠用屈折力測定で得られたS値を示し、各固視標位置における調節反応量と対応付けて表示されている。点線ラインFiは、各固視標位置を屈折力に換算した値を示す。ここで、制御部50はこの解析結果について次のことを判定する(ステップS−9)。各固視標位置に対して調節反応量は追随しているが(調節反応量が階段状に変化しているが)、各固視標位置の屈折力に対して調節反応量の差が大きいときは(例えば、1.0D以上の差があるときは)、乱視軸上でない方向を見ていた可能性がある。この場合には、遠用屈折力測定及び調節緊張測定を再測定する必要がある旨がモニタ7に表示される(ステップS−10)。
なお、上記では遠用屈折力測定時に得られた測定データの乱視検出結果を利用して調節緊測定時の屈折力を補正するものとしたが、被検眼に与える調節負荷量を変えることによって乱視の軸角度が変わる被検眼もあるので、固視標を8箇所の位置に変えるステップ毎に全方向の屈折力測定を行い、その結果に基づいて各固視標の位置で得られた調節緊張測定時の屈折力を補正するようにしても良い。この場合は、固視標を各指定位置に移動した始めの段階で全方向の屈折力測定を実行する。乱視の補正を、初めの遠用屈折力測定の結果を基にするか、調節緊張時の測定毎に得られた結果を基にするかは、スイッチ部8により選択可能とする。
図6は乱視補正光学系を設けた光学系の概略構成図であり、図2と同一要素に同一符号を付している。この図6において、眼屈折力測定光学系10の受光光学系10bと固視標呈示光学系30との共通光路(対物レンズ17とビームスプリッタ31との間)には、乱視補正光学系37が設けられている。乱視補正光学系37は、焦点距離が等しい2つの正の円柱レンズ37a,37bを持ち、両者は互いに独立して光軸を中心に同一方向又は反対方向に回転可能である。円柱レンズ37a,37bは制御部50により制御される駆動部38により回転駆動される。
上記の構成において、遠用屈折力測定時には乱視補正光学系37による乱視補正を行わず、前述のように通常の屈折力測定を実施し、S,C,Aの屈折力値を得る(乱視を検出する)。固視標を8箇所に移動して屈折力の経時変化を検出する調節緊張測定時には、制御部50は円柱レンズ37a,37bを回転させ、測定結果のC値を補正する乱視度数を作り出すと共にA値に応じてその軸角度を変えることにより、被検眼の乱視状態を補正する光学系を作る。これにより、調節緊張測定時に受光光学系10bの出力から得られる屈折力は、測定経線方向に拘わらず、被検眼の乱視分が補正されたものとなる。また、固視標呈示光学系30の固視標呈示においても、乱視補正光学系37により被検眼の乱視状態が矯正されるので、被検眼は乱視の軸角度によらず固視標を安定して見ることができる。なお、2枚の円柱レンズにより乱視(柱面)成分を作り出すときは、その生成に伴って発生する球面成分も補正する。
なお、先の例と同じく、調節緊張測定時に固視標を8箇所の指定位置に移動する毎に全経線方向の屈折力測定を実施し、その結果に基づいて乱視補正光学系37による補正を実施しても良い。この場合は、被検眼に与える調節負荷量を変えることによって乱視の軸角度が変わる被検眼に対して特に正確な補正状態とすることができる。
上記のように乱視補正光学系37を受光光学系10bと固視標光学系30の共通光路に設けると、装置の構成の簡素化が図られ、有利である。もちろん、乱視補正光学系37はそれぞれの専用光路に設けても良い。また、受光光学系10b側でなく、投影光学系10a側に乱視補正光学系37を設けても良い。この場合は、眼底に投影される視標光束が乱視に応じて補正された形になり、受光光学系10bの受光素子では乱視補正された信号が得られることになる。
また、乱視補正光学系37は固視標光学系30のみに配置し、屈折力データの補正は、先の例と同じく、測定後の演算でソフト的に処理する方法と組み合わせても良い。
また、屈折力測定光学系は上記のものに限らず、種々の方式のものが採用できる。例えば、瞳孔周辺から光束を入射させて眼底にリング光束を投影し、瞳孔中心からその反射光束を取り出して2次元の受光素子にリング像として受光させる方式のもの、あるいは、瞳孔中心部からスポット状の測定光束を投影し、眼底からの反射光束を瞳孔周辺から取り出して2次元の受光素子にリング像として受光させる方式のものがある。何れの方法においても、リング像の形状を解析することにより、S,C,Aの屈折力値を求めることができるが、リング像の全方向を画像解析してリング形状を求めると時間が掛かるため、0.1秒以下の時間で屈折力の経時変化をサンプリングすることは難しい。この場合には、リング像中心を基準とした水平経線方向というように、ある特定の方向のみの2座標を部分的に検出し、その間隔からその方向の屈折力を検出する。これにより、屈折力の経時変化を高速で検出可能になる。そして、前記の演算による乱視補正処理、又は乱視補正光学系を設けることにより、測定経線方向における乱視分の誤差を補正できる。
本発明に係る眼調節機能測定装置の外観図である。 光学系の概略構成図である。 制御系の概略構成図である。 調節機能測定を説明するフローチャート図である。 調節機能測定の測定結果の表示例である。 乱視補正光学系を設けた光学系の概略構成図である。
符号の説明
4 測定部
6 XYZ駆動部
7 モニタ
8 スイッチ部
10 眼屈折力測定光学系
10a 投光光学系
10b 受光光学系
23 受光素子
30 固視標呈示光学系
37 乱視補正光学系
38 駆動部
48 CCDカメラ
50 制御部
62 メモリ

Claims (5)

  1. 被検眼眼底に測定光束を投影する投影光学系と眼底からの反射光束を受光素子に受光する受光光学系とを含む屈折力測定光学系と、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動可能な固視標呈示光学系と、固視標を複数の位置で停止させた状態で特定の経線方向についての屈折力の経時変化を前記受光素子の出力に基づいて検出する屈折力検出手段と、被検眼の乱視状態を検出する乱視検出手段と、該検出された乱視情報に基づいて前記屈折力検出手段による屈折力情報を補正する乱視補正手段と、該補正後の屈折力情報を基に被検眼の調節機能状態を求める眼調節機能解析手段と、を備えることを特徴とする眼調節機能測定装置。
  2. 請求項1の乱視補正手段は、特定の経線方向について検出された屈折力情報を所定の演算式により補正する手段であることを特徴とする眼調節機能測定装置。
  3. 請求項1の乱視補正手段は、前記屈折力測定光学系の投影光学系又は受光光学系に設けられた乱視補正光学系と、前記乱視検出手段により検出された乱視情報に基づいて前記乱視補正光学系を駆動する手段と、を備えることを特徴とする眼調節機能測定装置。
  4. 請求項1の眼調節機能測定装置において、前記屈折力検出手段により検出する測定経線方向における屈折力測定の阻害要因の有無を検出する手段と、屈折力測定の阻害要因が検出されたときに測定経線方向を変更する手段と、を設けたことを特徴とする眼調節機能測定装置。
  5. 請求項1の眼調節機能測定装置において、固視標の呈示位置から換算される屈折力と前記屈折力検出手段により検出された屈折力との差を演算し、その差が所定値以上に大きいときは、再測定を促す手段を設けたことを特徴とする眼調節機能測定装置。

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