そして、この金属製の遮光シェード4に金属製のサブリフレクターを一体化する方法としては、それぞれ別体に構成した遮光シェードとサブリフレクターを溶接やカシメにより一体化する方法が考えられる。しかし、遮光シェードとサブリフレクターをそれぞれを別々に成形した後に一体化する場合は、それだけ工程数が多くなるし、遮光シェードおよびサブリフレクターのそれぞれの精度を得るための両者間の位置合わせが非常に面倒である。
それならば、両者をそれぞれ展開したシェード形成領域とサブリフレクター形成領域とを連続するように切り抜いた所定形状の金属板をプレスと曲げと溶接により所定形状に成形するようにすれば、工程数も少なくて済むことから、サブリフレクター付き遮光シェードの構成が簡単になると考えた。
しかし、この方法では、シェード形成領域に対しサブリフレクター形成領域を屈曲させる際に、すでにプレスにより所定曲面をもつように成形されているサブリフレクター形成領域にまで、サブリフレクタ−形成領域を屈曲させる際の変形が及んで、サブリフレクターが所望の面形状とならず、所望の配光を得られないという問題が発生した。これは、シェード形成領域とサブリフレクター形成領域とが連続し、しかも両領域の境界幅が大きいため、両領域をその境界において屈曲させる際の曲げ応力が両領域の境界だけに作用するのではなくサブリフレクター形成領域にまで作用して、サブリフレクター形成領域が変形すると解される。
そこで発明者は、両領域を屈曲させるための負荷を作用させた場合に、両領域の境界に応力が集中する構造であれば、境界では屈曲変形するがサブリフレクター形成領域には変形が生じないと考えた。そして、シェード形成領域とサブリフレクター形成領域とを幅狭の連結片を介して連続する形態に前記金属板を構成したところ、有効であることが確かめられたので、本発明を提案するに至ったものである。
本発明は、前記従来技術の問題点および発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、成形容易な高精度のサブリフレクター一体型遮光シェードを備えた、配光量増大に有効な自動車用前照灯を提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1に係る自動車用前照灯においては、光源であるバルブと、前記バルブの後方に配置され、前記バルブから出射した光を前方に反射するメインリフレクターと、該メインリフレクターに支持されて前記バルブに沿って配設され、前記メインリフレクターの非有効反射面に向かう光を遮光する外形略円筒型の遮光シェードと、前記バルブの前方に配置され、バルブから出射した光を前記メインリフレクターに向けて反射するサブリフレクターとを備えた自動車用前照灯であって、前記遮光シェードとサブリフレクターとを、それぞれを展開したシェード形成領域とサブリフレクター形成領域とが幅狭な連結片を介し単一平面状に連続するように切り抜いた所定形状の金属板をプレスと曲げと溶接により成形したサブリフレクター一体型遮光シェードで構成するようにした。
(作用)メインリフレクターでの反射光によって第1の配光パターンが形成され、サブリフレクターで反射され、さらにメインリフレクターで反射された光によって、第1の配光パターンを補う第2の配光パターンが形成される。
サブリフレクター一体型遮光シェードは、それぞれ展開したシェード形成領域とサブリフレクター形成領域とを連続するように切り抜いた所定形状の金属板をプレスと曲げと溶接により成形することで構成されており、遮光シェードとサブリフレクターをそれぞれを別々に成形した後に一体化する構造に比べて、製造に要す工程数が少なくて済む。
また、シェード形成領域とサブリフレクター形成領域をその境界において屈曲させるための負荷を金属板に作用させると、その境界を形成している幅狭な連結片に曲げ応力が集中して連結片がスムーズに屈曲変形するので、サブリフレクター一体型遮光シェードを成形する際に、サブリフレクター形成領域に不測の変形を発生させることなくスムーズに成形できるので、サブリフレクターはプレスにより成形された所定の面形状を確保できる。
請求項2においては、請求項1に記載の自動車用前照灯において、前記サブリフレクターの略中央部には孔を設け、前記バルブの前端部が該孔を貫通して前方に延出するように、前記サブリフレクターを配置するように構成した。
(作用)バルブの前方に配置するサブリフレクターをバルブの中心に接近させて設けることで、サブリフレクター(の反射面)の立体角が大きくなって、サブリフレクターの面積が小さくてもサブリフレクターによる大きな反射光量を確保できる。また、バルブから出射しメインリフレクターの有効反射面で反射されて配光に寄与する光は、サブリフレクターの小型化により、その遮光量が減少する。
請求項3においては、請求項1または2に記載の自動車用前照灯において、前記金属板のシェード形成領域を、全体が左右に延びる平面視矩形状に形成し、その長手方向一端側には、前記メインリフレクターの有効反射面に対応する開口を形成するとともに、その長手方向他端側の前記開口非形成領域に連結片を介して前記サブリフレクター形成領域を連成するように構成した。
(作用)シェード形成領域とサブリフレクター形成領域とを連成(連結)する連結片は、シェード形成領域の開口非形成側に形成されて、シェード形成領域に対しサブリフレクター形成領域を屈曲させる際の変形がシェード形成領域に及ばない。即ち、シェード形成領域の開口形成側では、開口が形成されることでその断面係数が低下(弾性強度が低下)しており、ここ(開口形成側)に連結片(サブリフレクター形成領域)が連成されていると、連結片を屈曲変形させる際の曲げ応力によりシェード形成領域が変形する惧れがあるのに対し、シェード形成領域の開口非形成側では、開口が形成されておらず、開口形成側に比べてその断面係数が高い(弾性強度が高い)ため、連結片を屈曲変形させる際の曲げ応力によりシェード形成領域が変形することがない。
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用前照灯において、前記サブリフレクター形成領域の外周縁に係止片を突設し、一方、前記シェード形成領域の外側縁に、前記連結片が屈曲変形した際に前記係止片が係合できる切り欠きを設けるように構成した。
(作用)連結片を屈曲変形させただけでは、シェード形成領域に対しサブリフレクター形成領域を正確に位置決めできないとか、成形した製品(サブリフレクター一体型遮光シェード)の剛性強度が不足する惧れがあるが、連結片が屈曲変形した際にサブリフレクター形成領域外周縁の係止片がシェード形成領域外側縁の切り欠きに係合することで、シェード形成領域に対し屈曲したサブリフレクター形成領域が周方向および軸方向に位置決めされるとともに、サブリフレクター一体型遮光シェードの剛性強度も高くなる。
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用前照灯において、前記サブリフレクターに、段差部を境界とする複数の曲面を設け、前記連結片を、該段差部延在方向に対しオフセットする位置に設けるようにした。
(作用)サブリフレクターには、段差部を境界とする複数の反射曲面が設けられて、配光スクリーン上の所定領域における配光量をアップするように構成されており、サブリフレクターに設けられた段差部形成位置の断面係数(剛性強度)は、段差部非形成位置に比べると高い。そして、連結片が段差部延在方向に重なると、サブリフレクター形成領域に複数の曲面を形成するプレス成形の際に連結片にも段差部の変形の影響を受けた部位が形成され、その後、連結片を屈曲変形させる際にスムーズに屈曲させることができず、連結片周辺のシェード形成領域やサブリフレクター形成領域を変形させてしまう惧れがある。しかるに、連結片はサブリフレクター形成領域に設けた段差部延在方向と重ならないので、サブリフレクター形成領域をプレス成形する際に連結片に段差部の影響となる変形が顕在化することはなく、その後、連結片をスムーズに屈曲変形させることができる。
請求項6においては、請求項4に記載の自動車用前照灯において、前記遮光シェードの前端部に、前記サブリフレクター側の係止片を前記遮光シェード側の切り欠きに係合した形態に当接保持する金属製の遮光キャップを前記サブリフレクターを覆うように溶接固定した。
(作用)シェード形成領域外側縁の切り欠きに係合したサブリフレクター形成領域外周縁の係止片は、サブリフレクターを覆うように遮光シェードに溶接固定された遮光キャップの周縁部によって、前記切り欠きに押し付けられた形態に固定保持されるので、遮光シェードに対するサブリフレクターの位置決めが確実かつ正確となり、サブリフレクター一体型遮光シェードの剛性強度も一層高くなる。
請求項1に係る自動車用前照灯によれば、メインリフレクターで形成される第1の配光パターンをサブリフレクターとメインリフレクターで協働して形成される第2の配光パターンが補うので、前照灯全体の配光量がアップし、視認性の良好な前照灯が得られ、高齢ドライバーのみならず一般ドライバーにとっても安全走行が確保される。
また、サブリフレクター一体型遮光シェードの構成が簡潔で、その製造も容易で、しかも設計値通りのサブリフレクターを構成できるので、光量の増加した適正な配光を低価格で実現できる。
請求項2によれば、サブリフレクターでの反射光量が増加するとともに、メインリフレクターの有効反射面での反射光量のサブリフレクターによる遮光損失量が低減するので、光量が大巾にアップした配光を形成できる。
請求項3によれば、設計値通りのサブリフレクターおよび遮光シェードを構成できるので、光量がアップしたグレア光のない適正な配光を形成できる。
請求項4によれば、遮光シェードに対し屈曲されたサブリフレクターが正確に位置決めされた設計値通りのサブリフレクター一体型遮光シェードを構成できるので、光量がアップしたグレア光のないより適正な配光を形成できる。
請求項5によれば、光量がアップした適正な配光を形成する上で有効な複数の反射曲面をもつようにサブリフレクターを設計した場合でも、サブリフレクター一体型遮光シェードの製造は容易で、しかも設計値通りのサブリフレクターを構成できるので、配光量が大幅にアップした適正な配光をもつ自動車用前照灯を低価格で提供できる。
請求項6によれば、遮光シェードに対し屈曲したサブリフレクターを正確に位置決めした剛性強度の高い設計値通りのサブリフレクター一体型遮光シェードを構成できるので、光量がアップしたグレア光のないより適正な配光を長期にわたり形成できる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
図1〜図8は、本発明の第1の実施例を示し、図1は本発明の第1の実施例である自動車用ヘッドランプの縦断面図、図2は同ヘッドランプの水平断面図、図3は要部であるシェードユニットの側面図、図4は同シェードユニットの分解斜視図、図5はサブリフレクター一体型遮光シェードを構成する所定形状に切り欠かれた金属板の平面図、図6は同金属板をプレス成形,ロール成形および曲げ成形してサブリフレクター一体型遮光シェードを成形する状態を説明する説明図、図7は配光スクリーン上における同ヘッドランプの配光パターンを示す図、図8はメインリフレクレーおよびサブリフレクターの反射面の正反射率を示す図である。
本実施例におけるヘッドランプは、図1,2に示されるように、容器状の合成樹脂製ランプボディ10の前面開口部に透明な前面カバー14が組み付けられて灯室Sが画成され、この灯室S内に、すれ違いビーム形成用の光源ユニットUが収容されている。この光源ユニットUは、図示しないエイミング機構によって上下左右方向に傾動調整可能に設けられており、エイミング機構を操作することで、ランプの光軸(光源ユニットUの光軸)Lは上下左右方向に傾動する。また、ヘッドランプは、平面及び側面のいずれの側から見ても曲率の小さな流線型に形成された車体前端コーナ部の流線型8に倣った形状に形成されており、ランプボディ10の前面開口部および前面カバー14、即ち灯室Sの前面が車体の前方から側方にかけて三次元的に大きく回り込んだ流線型に形成されている。
そして、光源ユニットUは、前面側に表面アルミ蒸着処理が施されて、所定の有効反射面22が形成されたメインリフレクター20に、光源である放電バルブ30と、前端側が閉塞された外形略円筒型のシェードユニットU1とを装着一体化した構造で、メインリフレクター20の後頂部に設けられたバルブ挿着孔13に後方からバルブ30が挿着されることで、有効反射面22の前方にアークチューブ32が延出するとともに、リフレクター20に支持されたシェードユニットU1がアークチューブ32を取り囲むように配設された形態となっている。
放電バルブ30は、自動車用ヘッドランプの光源として用いられる型式名D2SやD2Rと称される放電バルブで、絶縁性プラグ31の前方に石英ガラス等からなるアークチューブ32が延出する構造で、アークチューブ32の長手方向ほぼ中央位置には、一対の電極が対設され、Hg,NaI,ScI3等の発光物質が希ガスとともに封入された放電発光部である密閉ガラス球33が設けられている。そして、リフレクター20に放電バルブ30を挿着した状態において、アークチューブ32の放電軸は、ランプの光軸(メインリフレクター20の光軸)Lに一致した形態となっている。なお、符号36は、放電バルブ30(の対向電極間)に高電圧を印加して放電を開始させる点灯回路と放電バルブ30(の対向電極間)に安定した放電を継続させるためのバラスト回路とを一体化した点灯回路・バラスト回路ユニットで、この点灯回路・バラスト回路ユニット36からランプボディ10内に導出した出力コード37は、コネクタ38を介して放電バルブ30の後端部に接続されている。
メインリフレクター20の有効反射面22は、発光部であるアークチューブ32を取り囲むようにリフレクター20の内側の略上半分の領域に設けられているが、前記したように灯室S(前面カバー14)が側方に大きく回り込む構成であるため、ランプボディ10の内側の沿って延在するメインリフレクター20は、図2に示すように、バルブ挿着孔13よりも車両幅方向外側の有効反射面22bの左右長さが車両幅方向内側の有効反射面22aの左方長さよりも短く(有効反射面22bの左右幅が有効反射面22aの左右幅よりも小さく)なって、メインリフレクターの反射光学系において十分な立体角をとりにくい構造となっているが、本実施例では、次のような構造にすることで、立体角が十分とれないことによる配光量不足を補うとともに、従来のヘッドランプの配光量よりも大きな配光量が得られて、車両前方から側方にかけてのドライバーの視認性の改善が図られている。
即ち、第1に、有効反射面22(22a,22b)が、曲率の異なる複数の反射面が連続または集合する、配光制御用の自由曲面または複合反射面で形成されて、有効反射面22で反射された光は車両前方から側方にかけて広範囲に拡散されて、ヘッドランプの現行配光規格に近い配光が得られる。詳しくは、バルブ30の放電部である密閉ガラス球33の発光(放電中心Cから放射状に出射する光)のうち、後述する筒型の遮光シェード42で遮光されなかった光が、メインリフレクター20の有効反射面22(22a,22b)に導かれ、ここで図1,2符号L1に示すように車両前方から側方に拡散反射されて、カットラインC.L.をもつすれ違いビーム用の第1の配光パターンP1が形成される(図7参照)。
第2に、図1,2に示すように、表面アルミ蒸着処理されたサブリフレクター50が発光部の前方に配置されており、このサブリフレクター50がバルブ30の放電部である密閉ガラス球33から斜め前方に向かう光(放電中心Cから斜め前方に向かう光)の大半をメインリフレクター20のバルブ挿着孔13の真下に設けられた有効サブ反射面22cに向けて反射する。アークチューブ32を取り囲む遮光シェード42の平坦な底面42aには、略矩形状の開口部43が設けられているので、サブリフレクター40で反射された光は、この開口部43を通過することで有効サブ反射面22cに導かれ、有効サブ反射面22cで反射されることで、メインリフレクター20で形成される配光(第1の配光パターンP1)を補う、左右方向および車両手前に大きく拡散した配光(第2の配光パターンP2)が形成される(図7参照)。
第3に、メインリフレクター20およびサブリフレクター50の反射面が、アルミ蒸着膜の上にSi系酸化膜とTi系酸化膜が積層する多層膜で構成されて、高い反射率が得られるようになっている。図8は、本実施例に示す反射面(アルミ蒸着膜の上にSi系酸化膜とTi系酸化膜が積層する多層膜を成膜した反射面)の正反射率をアルミ蒸着膜のみ成膜した反射面と比較して示す図で、この図からわかるように、アルミ蒸着膜のみ成膜した反射面では最大89%の正反射率しか得られないのに対し、本実施例の反射面では、最大95%という正反射率が得られ、それだけランプとしての配光の光束が増加する。
シェードユニットU1は、後で詳細に説明するが、所定の形状に切り抜かれた金属板をプレスと曲げと溶接により所定形状に成形することで構成されたサブリフレクター一体型遮光シェード本体(以下、本体という)40と、本体40の前端部に溶接により固定一体化された遮光キャップ60で構成されている。図3符号66は、遮光キャップ60を本体40の前端部に固定一体化するためのスポット溶接点を示す。
本体40は、主として、底面が平坦で、中央部上方に開口する全体が略円筒型の遮光シェード42と、遮光シェード42の前端部に連成された連結片48を屈曲させることで、遮光シェード42の前端側開口部を覆うように立設されたサブリフレクター50で構成され、遮光シェード42の後端側には、本体40をメインリフレクター20に固定一体化するための2本の脚47が延出形成されている。
遮光シェード42は、外形略矩形状の金属板をロール成形により略円筒型にして金属板側縁部の突合せ部をスポット溶接により固定したものである。図3,4における符号42bはスポット溶接点を示す。遮光シェード42に設けられている上方開口部44は、メインリフレクター20の有効反射面22(22a,22b)に対応する大きさで、アークチューブ32の放電部である密閉ガラス球33の発光のうち、この上方開口部44を通過した光は、メインリフレクター20の有効反射面22(22a,22b)に正確に導かれて、第1の配光パターンP1の形成に寄与する。
遮光シェード42の底面42aに設けられている開口部43は、メインリフレクター20の有効サブ反射面22cに対応して設けられており、密閉ガラス球33の発光のうち、サブリフレクターで反射された光は、この開口43を通過することでメインリフレクター20の有効反射面22cに正確に導かれて、第2の配光パターンP2の形成に寄与する。特に、サブリフレクター50は、放射状に延びる段差52によって4個の反射面53a〜53d(図5,6参照)に画成されており、メインリフレクター20の有効サブ反射面22cと協働して、最適な第2の配光パターンP2を形成する。
また、サブリフレクター50は、連結片48位置で屈曲させることで筒型の遮光シェード42に対し立設されており、サブリフレクター50を屈曲させる曲げ工程では、所定の曲面に成形したサブリフレクター50を遮光シェード42に対し屈曲させることになるが、サブリフレクター50と遮光シェード42間の境界である連結片48は幅狭で、しかもこの連結片48には剛性強度を高めるべく作用するサブリフレクター50側の段差52が延在しておらず、サブリフレクター50を屈曲させる際に連結片48に曲げ応力が集中して、サブリフレクター50の面形状を変形させることなく連結片48位置においてスムーズに屈曲させることができる。図5に示す符号48aは屈曲位置を示す。
また、連結片48は、遮光シェード40において開口44が形成されて断面係数の低下している領域ではなく、断面係数の低下していない開口44非形成領域に設けられているので、サブリフレクター50を連結片48位置で屈曲させる際に遮光シェード42側を変形させることもない。
また、サブリフレクター50の中央部には、放電バルブ30の前端部の横断面に対応する長孔56が設けられ、この長孔56を貫通してバルブ前端部を前方に延出させることで、サブリフレクター50でバルブ中心Cに接近するように配置されており、これにより、コンパクトなサブリフレクター50であっても大きな立体角を持つこととなって、サブリフレクター50により大きな反射光量が確保されるとともに、第1の配光パターンP1の形成に寄与する光がサブリフレクター50で極力遮光されない構成となっている。
また、遮光キャップ60は、本体40とは別にプレスにより成形されたもので、本体40を構成する遮光シェード42の前端側開口部を覆って、バルブ30のアークチューブ32からの直射光によるグレアの発生を抑制するとともに、本体40の前端部を隠すことで、前面カバー14を介して透けて見える灯室S内の見栄えと良好にする機能がある。
また、この遮光キャップ60は、その周縁部に対向して設けられた一対の延出片64が遮光シェード42に固定一体化されることで、遮光シェード42に対するサブリフレクター50の位置決めを確実かつ正確にするとともに、本体40の剛性強度も高めるという作用もある。
即ち、サブリフレクター50は、連結片48位置で屈曲されることで遮光シェード42に対し立設された形態に成形されているが、連結片48を挟んだサブリフレクター50の外周縁左右ほぼ対称位置に突設された一対の係止片54が遮光シェード42の外周縁に設けた切り欠き45に係合することで、サブリフレクター50は遮光シェード42に対し周方向および軸方向に正確に位置決めされている。また、遮光シェード42の外周縁に設けた切り欠き45aには、直角に折り曲げられて外方に延出し、遮光キャップ60の周縁部が当接する舌片状の突起45bが設けられている。そして、遮光キャップ60が遮光シェード42に溶接により固定一体化されると、遮光キャップ60の周縁部は、上方の突起45bと左右の係止片54,54の3点に当接して安定するとともに、サブリフレクター50側の係止片54は、遮光キャップ60の周縁部によって遮光シェード42側の切り欠き45内に押し付けられた形態に固定保持されるので、遮光シェード42に対するサブリフレクター50の位置決めが確実かつ正確となり、さらに本体40の剛性強度も高められたものとなる。
次に、図5,6を参照して本体40の製造工程を説明する。
まず、本体40(遮光シェード42とサブリフレクター50)を展開した、シェード形成領域42Aとサブリフレクター形成領域50Aとが幅狭な連結片48を介し単一平面状に連続するように切り抜かれた所定形状の金属板40Aを、切断プレスにより形成する。次に、プレスにより、サブリフレクター形成領域50Aに反射面となる複数の曲面53a〜53dを成形する。このとき、隣接する曲面53a〜53d間には、段差52が顕れる。なお、このサブリフレクター形成領域50Aへのプレス成形(複数の曲面53a〜53dの成形)は、切断プレスによる金属板40Aの切断工程の中で、同時に行ってもよい。
次に、図6矢印Aに示すように、金属板40Aのシェード形成領域42Aを曲げ成形(ロール成形)によりロール状に成形しながら、図6矢印Bに示すように、サブリフレクター形成領域50Aを曲げ成形により連結片48位置で屈曲させて、サブリフレクター形成領域50A側の係止片54をシェード形成領域42A側の切り欠き45に係合させるとともに、ロール状にしたシェード形成領域42Aの突合せ部42A1をスポット溶接により固定することで、本体40の成形工程が終了する。
サブリフレクター形成領域50Aを連結片48位置で屈曲させる工程では、幅狭な連結片48に曲げ応力が集中して連結片48がスムーズに屈曲変形する。即ち、サブリフレクター形成領域50Aに不測の変形を発生させることなくシェード形成領域42Aに対しサブリフレクター形成領域50Aを屈曲できるので、サブリフレクター形成領域50Aの曲面53a〜53dの面形状はそのまま維持される(サブリフレクター形成領域50Aを屈曲させる工程で、サブリフレクター形成領域50Aの面形状が変化することはない)。
また、サブリフレクター形成領域50Aを連結片48位置で屈曲させる工程では、シェード形成領域42Aがロール状に成形されると同時に、連結片48位置で屈曲されたサブリフレクター形成領域50A側の係止片54がロール状のシェード形成領域42A側の切り欠き45に係合して、サブリフレクター形成領域50Aがロール状のシェード形成領域42Aに対して位置決めされるので、サブリフレクター50の遮光シェード42に対する配置は正確なものとなる。
また、連結片48は、サブリフレクター形成領域50Aに顕在化している段差52の延在方向に対しオフセットする位置に設けられて、サブリフレクター形成領域50Aの屈曲工程が妨げられることがない。即ち、連結片48が段差52の延在方向と重なると、サブリフレクター形成領域50Aに複数の曲面を形成するプレス成形の際に連結片48にも段差52に連なる変形部が形成されて、連結片48の剛性強度が高くなる分、連結片48をスムーズに屈曲変形させにくく、サブリフレクタ−形成領域50Aを連結片48位置で屈曲させる際に、連結片48周辺のシェード形成領域42Aやサブリフレクター形成領域50Aを変形させてしまう惧れがある。しかし、本実施例では、連結片48はサブリフレクター形成領域50Aに顕在化した段差52の延在方向と重ならないので、連結片48に段差52形成の影響(変形部の出現による連結片48の剛性強度の増加)が顕れず、サブリフレクター形成領域50Aの曲面形状を変形させることなく連結片48位置でサブリフレクター形成領域50Aをスムーズに屈曲変形させることができる。
本体40の成形が終了後、本体40の前端部に遮光キャップ60を被せて延出片64を遮光シェード42にスポット溶接することで、シェードユニットU1として一体化できる。
次に、シェードユニットU1に対して行う表面処理について説明する。
まず、シェードユニットU1をクロムめっき槽に入れて、ユニットU1の表面全体にクロムめっきを行う。ついで、サブリフレクター50の内側以外の部位をマスキングしてサブリフレクター50の内側だけを露呈させた形態で、サブリフレクター50の内側にアルミ蒸着膜を形成し、さらにその上に多層酸化膜(Si系酸化膜とTi系酸化膜が積層する多層膜)を形成する。そして最後に、遮光シェード42の内周面以外の部位をマスキングして、遮光シェード42の内周面に黒塗装を施すことで、製品であるシェードユニットU1が出来上がる。
なお、前記した実施例では、メインリフレクター20およびサブリフレクター50の反射面の反射効率を上げる手段として、アルミ蒸着膜の上にSi系酸化膜とTi系酸化膜が積層する多層膜を形成する構成が示されていたが、基材表面に銀または銀合金をスパッタリングで成膜し、その上に耐熱性の確保(酸化防止)のためにトップコートを施すようにしてもよい。
すなわち、図9は、本発明の第2の実施例の要部であるメインリフレクターおよびサブリフレクタ−の正反射率を示す図で、図9におけるR1〜R3は、基材表面に銀をスパッタリングで成膜した上にトップコートを施した反射面のサンプル、R1’〜R3’は、基材表面に銀合金(Ndを0.4at%、Cuを0.6%at%含有)をスパッタリングで成膜した上にトップコートを施した反射面のサンプルである。この図からわかるように、アルミ蒸着膜のみ成膜した反射面では最大89%の反射率しか得られない(図8参照)のに対し、銀または銀合金をスパッタリングで成膜した構成では、いずれも92%以上の正反射率が得られる。
また、前記した第1,第2の実施例では、本体40に遮光キャップ60が設けられているが、必ずしも必要ではない。
また、前記した実施例では、放電バルブ30を光源とするヘッドランプについて本発明を説明したが、発光部であるフィラメントを備えたハロゲンバルブを光源とするヘッドランプにも適用できる。
また、前記した実施例では、前面カバー14が車体前方から側方に大きく回り込む3次元的流線型に形成されて、リフレクターの形状が制約されてメインリフレクター光学系における立体角が十分とれないヘッドランプについて説明したが、リフレクターの形状が制約されずメインリフレクター光学系における立体角が十分とれるヘッドランプについても同様に適用できる。
また、前記した実施例では、すれ違いビーム形成用の自動車用のヘッドランプについて本発明を説明したが、走行ビーム形成用のヘッドランプやフォグランプその他の自動車用の前照灯にも適用できる。