JP2005024659A - 硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布後に優れたダレ止め効果が得られるだけでなく、乾燥塗膜の指触乾燥性にも優れ、且つ、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】硬化性組成物は、飽和脂肪酸(A)、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)、及び光重合開始剤(E)を含有する。好適な態様においては、上記飽和脂肪酸は室温で固形である。具体的な好適な態様によれば、さらに希釈溶剤(F)を含有し、あるいはさらにエポキシ樹脂(G)を含有し、あるいはさらに硬化触媒(H)を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】硬化性組成物は、飽和脂肪酸(A)、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)、及び光重合開始剤(E)を含有する。好適な態様においては、上記飽和脂肪酸は室温で固形である。具体的な好適な態様によれば、さらに希釈溶剤(F)を含有し、あるいはさらにエポキシ樹脂(G)を含有し、あるいはさらに硬化触媒(H)を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の製造等に用いられる硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、増粘性及び仮乾燥後の指触乾燥性に優れ、かつ、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、及び電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、プリント配線板のレジストとして用いられる組成物には、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の組成物が主流になっている。
このようなアルカリ現像型の硬化性組成物としては、カルボキシル基含有硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂、及び親水性シリカ、疎水性シリカ、有機ベントナイトなどの増粘剤からなる組成物などが一般的に用いられている。例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応物に酸無水物を付加した硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献1参照)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸とp−ヒドロキシフェネチルアルコールの反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献2参照)、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで酸無水物を付加した硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献3参照)、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシドとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献4参照)等が挙げられる。
【0003】
しかし、これらの硬化性組成物を用いた場合、組成物の基材への塗布後のダレ性はなくなるが、増粘剤が、親水性シリカの場合には、形成された硬化皮膜は耐水性や電気絶縁性が低下し、一方、疎水性シリカの場合には、組成物中に気泡が含まれ、泡だらけの塗膜が得られ易くなり、また、指触乾燥性を悪くするという問題がある。また、増粘剤が有機ベントナイトの場合には、電気絶縁性が極端に低下する等の問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−243869号公報(特許請求の範囲、第16頁左上欄4〜15行)
【特許文献2】
特開平11−288091号公報(特許請求の範囲、段落番号[0028])
【特許文献3】
特開平5−32746号公報(特許請求の範囲、段落番号[0076]〜[0082])
【特許文献4】
国際公開第02/024774号公報(特許請求の範囲、第17頁12〜20行)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、上記欠点を解消し得る方法として、ウレアウレタン(例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−410)を増粘剤として使用することが考えられるが、得られる硬化性組成物は、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与えるものの、指触乾燥性が充分ではない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の様な実情に鑑みなされたものであり、塗布後に優れたダレ止め効果が得られるだけでなく、塗膜の指触乾燥性にも優れ、且つ、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、飽和脂肪酸(A)、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)、及び光重合開始剤(E)を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様においては、上記飽和脂肪酸(A)は、室温で固形である。
本発明のより具体的な好適な態様によれば、さらに希釈溶剤(F)を含有し、あるいはさらにエポキシ樹脂(G)を含有し、あるいはさらに硬化触媒(H)を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートを総称し、他の類似の表現についても同様である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、増粘剤として働く飽和脂肪酸(A)と、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)とを組み合わせて用いた場合、ダレ止め剤及び指触乾燥性向上剤として優れた効果を発揮するだけでなく、これを1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)及び光重合開始剤(E)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに希釈溶剤(F)、エポキシ樹脂(G)、硬化触媒(H)を含有する硬化性組成物から得られる硬化物は、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などに優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
飽和脂肪酸は、疎水基と親水基を併せ持ち、増粘剤として使用できることが従来から知られている(例えば、特開昭61−9467号公報では、透明電極形成用インキの増粘剤として、飽和脂肪酸が使用されている。)が、本発明の組成物中に含まれる飽和脂肪酸は、ダレ止め剤として働くだけでなく、疎水基の存在が、指触乾燥性を向上させ、さらに、親水基、即ちカルボキシル基が、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して硬化させる働きを兼ね備えている。それ故、得られる硬化物は、親水基がつぶれ、疎水基のみとなり、優れた耐水性を有することになる。さらに、飽和脂肪酸と共に、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物を併用することにより、ダレ止め性及び指触乾燥性をより一層向上させることができる。
従って、増粘剤としての飽和脂肪酸(A)とアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)を、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)及び光重合開始剤(E)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに希釈溶剤(F)、エポキシ樹脂(G)、硬化触媒(H)を含有する硬化性組成物は、優れたダレ止め性及び指触乾燥性を示すと共に、その塗膜の光及び/又は熱硬化により、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などに優れた硬化物が得られるものである。
【0010】
以下、本発明の硬化性組成物について詳細に説明する。
まず、本発明の硬化性組成物中に含まれる飽和脂肪酸(A)としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸、ヘプタデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などが挙げられるが、特にこれらに限られるものではなく、複数併用して使用できる。飽和脂肪酸の中でも好ましいものは、室温で固形の飽和脂肪酸である。
【0011】
また、前記(B)成分のうち、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物としては、ポリアミノアミドの高分子量カルボン酸塩(具体的には、Anti−Terra−204(ビックケミー・ジャパン(株)製))、ポリカルボン酸のアマイド(具体的には、BYK405(ビックケミー・ジャパン(株)製))、ポリカルボン酸のアルキルアンモニウム塩(具体的には、Anti−Terra−203(ビックケミー・ジャパン(株)製))、不飽和脂肪酸のアルキロールアミン塩(具体的には、Anti−Terra−206(ビックケミー・ジャパン(株)製))などが挙げられ、また尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物としては、ウレアウレタン(具体的には、BYK410(ビックケミー・ジャパン(株)製))などが挙げられるが、特にこれらに限られるものではなく、複数併用して使用できる。これら(B)成分は、前記飽和脂肪酸(A)と予め混合した状態で用いてもよく、あるいは各成分と一括して混合してもよい。
【0012】
前記(A)成分の飽和脂肪酸と、(B)成分のアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物との配合比率(質量比)は、(A)成分:(B)成分=5:95〜95:5が好ましい。この範囲外の比率では、ダレ止め効果及び指触乾燥性の両方を充分に満足させ難くなる。そして、飽和脂肪酸(A)とアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)の合計使用量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部(固形分として、以下同様)に対して0.5質量部以上、30質量部以下、好ましくは1質量部以上、10質量部以下の割合が望ましい。0.5質量部未満の場合、ダレ止め効果及び指触乾燥性が得にくいので好ましくない。一方、30質量部より多い場合、基材に対して離型効果が働く恐れがある。
【0013】
次に、本発明において用いる1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)としては、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物の他、1分子中にカルボキシル基及び不飽和基を有する化合物を使用することができ、また、これらを併用することもできる。
【0014】
1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)のビニル共重合体、メタクリル酸とコハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1A)のビニル共重合体などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのカルボキシル基を有する樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
1分子中に1個以上のカルボキシル基及び不飽和基を有する樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸の反応生成物に酸無水物を付加した硬化性樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂とジメチロールプロピオン酸とアクリル酸の反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂(特開平6−324490号公報参照)、ノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸とp−ヒドロキシフェネチルアルコールの反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られたアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで酸無水物を付加した硬化性樹脂、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)のビニル共重合体にエポキシシクロヘキサンメタノールのアクリル酸エステル(例えば、ダイセル化学(株)製サイクロマーA200)を反応させて得られるビニル共重合体(特開平8−41150号公報参照)、メタクリル酸とコハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1A)のビニル共重合体にエポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200)を反応させて得られるビニル共重合体(特開平8−259624号公報参照)などが挙げられが、これらに限られるものではない。これらのカルボキシル基及び不飽和基を有する樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)の酸価は、好ましくは20mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以上、120mgKOH/g以下である。上記化合物の酸価が20mgKOH/gよりも低い場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、200mgKOH/gよりも高くなると、現像時に、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまうので好ましくない。
【0017】
前記感光性(メタ)アクリレート化合物(D)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これら感光性(メタ)アクリレート化合物(D)の使用目的は、組成物の光反応性を上げることにある。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、組成物の光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。感光性(メタ)アクリレート化合物(D)の配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して100質量部以下の割合が好ましい。
【0018】
前記光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1− オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。そして、その使用量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0. 5〜25質量部の割合が好ましい。
【0019】
前記希釈溶剤(F)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられ、これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。これら希釈溶剤の使用目的は、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。希釈溶剤(F)の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0020】
前記エポキシ樹脂(G)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル(株)製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル(株)製のD.E.R.542、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル(株)製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−50S、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにヒダントイン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、1,5−ジヒドロキシナフタレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基に、エピハロヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂(国際公開第01/024774号公報参照)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらエポキシ樹脂は単独で又は2種以上を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、熱硬化することにより、レジストの密着性、耐熱性等の特性を向上させる。その配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して10質量部以上、70質量部以下の割合で充分であり、好ましくは15質量部以上、60質量部以下の割合である。エポキシ樹脂(G)の配合量が上記範囲未満の場合、硬化膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、また、はんだ耐熱性や耐無電解めっき性も低くなり易い。一方、上記範囲を超えると、塗膜の現像性や硬化膜の耐無電解めっき性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる。
【0021】
硬化触媒(H)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド;ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを用いることができる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT3503X、U−CAT3502X(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、熱硬化特性を向上させるためであれば、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂の硬化触媒、もしくはエポキシ基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれらの化合物を前記硬化触媒と併用する。上記硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上、15.0質量部以下の割合である。
【0022】
本発明の硬化性組成物には、得られる硬化物の特性を低下させない程度において、無機増粘剤を用いることができる。
無機増粘剤としては、例えば、日本アエロジル社製の#50、#200、#380などの親水性シリカ、日本アエロジル社製の#R974、#R972などの疎水性シリカ、ウイルバー・エリス社製のオルベン、ベントン38などの有機ベントナイトなどが挙げられる。これら無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上、10.0質量部以下の割合である。
【0023】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーを単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させる目的で用いられる。無機フィラーの配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部当り10質量部以上、300質量部以下、好ましくは30質量部以上、200質量部以下の割合が適当である。
【0024】
本発明の硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して、通常1質量部以上、200質量部以下、好ましくは5質量部以上、50質量部以下である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、組成物の難燃性、はんだ耐熱性及び電気絶縁性が、高度にバランスされて好適である。
また、本発明の硬化性組成物の引火性の低下のために、また増粘性を高めるために、水を添加することもできる。
【0026】
このように、飽和脂肪酸と、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物と共に、カルボキシル基含有化合物、感光性(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、希釈溶剤、エポキシ樹脂、硬化触媒もしくは硬化促進剤、さらに必要により他の添加剤等が配合された硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で光硬化及び/又は熱硬化させることにより、容易に硬化物を得ることができる。例えば、上記硬化性組成物をロールを用いて均一になるまで充分に混合し、用途に応じて所望の基材に、例えばスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の公知の塗工方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、ダレを生ずることもなく指触乾燥性に優れた塗膜を形成できる。また、本発明の硬化性組成物はその僅かな離型効果を利用してレジスト用ドライフィルムを形成することもでき、その場合にはそのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線により露光して光硬化させる。次いで、約100℃〜200℃で加熱硬化させることにより、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を得ることができる。プリント配線板のソルダーレジスト形成の場合には、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、又はレーザー光線により直接描画し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、加熱硬化させることにより、上記のような諸特性に優れたレジスト膜が得られる。上記現像に使用される希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等の水溶液が挙げられる。
【0027】
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0028】
合成例1
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、昭和高分子(株)製、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部及びトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基当量が182.2g/当量であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部及びトルエン252.9部を、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部及びトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形物の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0029】
合成例2
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、及びアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に、水酸基当量80g/当量の1,5−ジヒドロキシナフタレン224部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828、エポキシ当量189g/当量)1075部を仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65部を添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃に保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/当量のエポキシ化合物(1−a)を得た。次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920部、トルエン1690部、テトラメチルアンモニウムブロマイド70部を加え、撹拌下45℃まで昇温し、保持した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364部を60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とトルエンを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/当量の多核エポキシ樹脂(1−b)を得た。得られた多核エポキシ樹脂(1−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(1−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。
次に、多核エポキシ樹脂(1−b)277部を撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290部を加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸化、全酸化測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られたカルボキシル基含感光性樹脂は、不揮発分62%、固形物の酸価100mgKOH/gであった。
【0030】
実施例1〜4及び比較例1〜4
表1に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、各硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルーホールプリント配線基板に全面塗布し、次に、塗膜を70℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、後述の試験方法及び評価方法にて、ダレ性及び指触乾燥性を評価した。
次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて紫外線を照射(露光量600mJ/cm2)し、次いで1%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。得られた硬化皮膜を有する試験基板について、後述の試験方法及び評価方法にて、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、密着性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。また、銅スルーホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。
上記各試験の結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
上記表2中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0033】
(1)ダレ性:
乾燥後の塗膜表面のダレ性を評価した。
○:全くダレのないもの
△:僅かにダレのあるもの
×:ダレのあるもの
【0034】
(2)指触乾燥性:
乾燥後の塗膜表面の指触乾燥性を評価した。
○:全くベタ付きのないもの
△:僅かにベタ付きのあるもの
×:ベタ付きのあるもの
【0035】
(3)PCT耐性:
硬化皮膜のPCT耐性を、121℃、飽和水蒸気中50時間の条件にて以下の基準で評価した。
○:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化皮膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0036】
(4)はんだ耐熱性:
JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴への試験基板の10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を評価した。なお、ポストフラックス(ロジン系)としては、JIS C 6481に従ったフラックスを使用した。
○:外観変化なし
△:硬化皮膜の変色が認められるもの
×:硬化皮膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり
【0037】
(5)耐酸性:
試験基板を10容量%硫酸水溶液に20℃で30分間浸漬後取り出し、硬化皮膜の状態を以下の基準で評価した。
○:変化が認められないもの
△:僅かに変化しているもの
×:硬化皮膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの
【0038】
(6)耐アルカリ性:
試験基板を、10容量%硫酸水溶液を10容量%水酸化ナトリウム水溶液に代えた以外は耐酸性試験と同様に評価した。
【0039】
(7)密着性:
JIS D 0202の試験方法に従って前記試験基板の硬化皮膜に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテスト後の剥れの状能を以下の基準で評価した。
◎:100/100で全く剥れのないもの
○:100/100でクロスカット部が少し剥れたもの
△:50/100〜90/100
×:0/100〜50/100
【0040】
(8)無電解金めっき耐性:
後述する工程に従って前記試験基板に無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、レジスト皮膜の剥離状態を以下の基準で評価した。
○:外観変化もなく、レジスト皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、レジスト皮膜にわずかに剥れがある。
×:レジスト皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験でレジスト皮膜の剥れが大きい。
【0041】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:
試験基板を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、Metex
L−5Bの20Vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:
試験基板を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間、浸漬した。
4.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:
試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:
試験基板を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10Vol%水溶液)に7分間、浸漬した。
8.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:
試験基板を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20Vol%水溶液)に20分間、浸漬した。
10.酸浸漬:
試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:
試験基板を、95℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレス UP 15Vol%、シアン化金カリウム3Vol%の水溶液)に10分間、浸漬した。
13.水 洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:
試験基板を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。
このような工程を経て無電解金めっきした試験基板を得た。
【0042】
(9)電気絶縁性:
硬化皮膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度95%RH、印加電圧30V、100時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以下、銅のマイグレーションあり
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、塗装後に優れたダレ止め効果が得られるだけでなく、乾燥塗膜の指触乾燥性にも優れ、且つ、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物が提供される。
このような本発明の硬化性組成物を用いることにより、高温下に曝されても、基材からダレるといったようなこともなく、また乾燥塗膜がべとつくといったようなこともなく、しかも前記したような諸特性に優れた硬化物が得られるため、プリント配線板のソルダレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層の材料として適しているのみならず、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、フレキシブル配線基板用レジスト、カラーフィルター用レジスト、塗料などの用途にも期待できる。また、僅かな離型効果を利用してレジスト用ドライフィルムにも有効である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の製造等に用いられる硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、増粘性及び仮乾燥後の指触乾燥性に優れ、かつ、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、及び電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、プリント配線板のレジストとして用いられる組成物には、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の組成物が主流になっている。
このようなアルカリ現像型の硬化性組成物としては、カルボキシル基含有硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂、及び親水性シリカ、疎水性シリカ、有機ベントナイトなどの増粘剤からなる組成物などが一般的に用いられている。例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応物に酸無水物を付加した硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献1参照)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸とp−ヒドロキシフェネチルアルコールの反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献2参照)、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで酸無水物を付加した硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献3参照)、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシドとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー、エポキシ樹脂及び増粘剤などを含む組成物(特許文献4参照)等が挙げられる。
【0003】
しかし、これらの硬化性組成物を用いた場合、組成物の基材への塗布後のダレ性はなくなるが、増粘剤が、親水性シリカの場合には、形成された硬化皮膜は耐水性や電気絶縁性が低下し、一方、疎水性シリカの場合には、組成物中に気泡が含まれ、泡だらけの塗膜が得られ易くなり、また、指触乾燥性を悪くするという問題がある。また、増粘剤が有機ベントナイトの場合には、電気絶縁性が極端に低下する等の問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−243869号公報(特許請求の範囲、第16頁左上欄4〜15行)
【特許文献2】
特開平11−288091号公報(特許請求の範囲、段落番号[0028])
【特許文献3】
特開平5−32746号公報(特許請求の範囲、段落番号[0076]〜[0082])
【特許文献4】
国際公開第02/024774号公報(特許請求の範囲、第17頁12〜20行)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、上記欠点を解消し得る方法として、ウレアウレタン(例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−410)を増粘剤として使用することが考えられるが、得られる硬化性組成物は、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与えるものの、指触乾燥性が充分ではない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の様な実情に鑑みなされたものであり、塗布後に優れたダレ止め効果が得られるだけでなく、塗膜の指触乾燥性にも優れ、且つ、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、飽和脂肪酸(A)、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)、及び光重合開始剤(E)を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様においては、上記飽和脂肪酸(A)は、室温で固形である。
本発明のより具体的な好適な態様によれば、さらに希釈溶剤(F)を含有し、あるいはさらにエポキシ樹脂(G)を含有し、あるいはさらに硬化触媒(H)を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートを総称し、他の類似の表現についても同様である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、増粘剤として働く飽和脂肪酸(A)と、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)とを組み合わせて用いた場合、ダレ止め剤及び指触乾燥性向上剤として優れた効果を発揮するだけでなく、これを1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)及び光重合開始剤(E)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに希釈溶剤(F)、エポキシ樹脂(G)、硬化触媒(H)を含有する硬化性組成物から得られる硬化物は、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などに優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
飽和脂肪酸は、疎水基と親水基を併せ持ち、増粘剤として使用できることが従来から知られている(例えば、特開昭61−9467号公報では、透明電極形成用インキの増粘剤として、飽和脂肪酸が使用されている。)が、本発明の組成物中に含まれる飽和脂肪酸は、ダレ止め剤として働くだけでなく、疎水基の存在が、指触乾燥性を向上させ、さらに、親水基、即ちカルボキシル基が、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して硬化させる働きを兼ね備えている。それ故、得られる硬化物は、親水基がつぶれ、疎水基のみとなり、優れた耐水性を有することになる。さらに、飽和脂肪酸と共に、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物を併用することにより、ダレ止め性及び指触乾燥性をより一層向上させることができる。
従って、増粘剤としての飽和脂肪酸(A)とアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)を、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)及び光重合開始剤(E)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに希釈溶剤(F)、エポキシ樹脂(G)、硬化触媒(H)を含有する硬化性組成物は、優れたダレ止め性及び指触乾燥性を示すと共に、その塗膜の光及び/又は熱硬化により、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などに優れた硬化物が得られるものである。
【0010】
以下、本発明の硬化性組成物について詳細に説明する。
まず、本発明の硬化性組成物中に含まれる飽和脂肪酸(A)としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸、ヘプタデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などが挙げられるが、特にこれらに限られるものではなく、複数併用して使用できる。飽和脂肪酸の中でも好ましいものは、室温で固形の飽和脂肪酸である。
【0011】
また、前記(B)成分のうち、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物としては、ポリアミノアミドの高分子量カルボン酸塩(具体的には、Anti−Terra−204(ビックケミー・ジャパン(株)製))、ポリカルボン酸のアマイド(具体的には、BYK405(ビックケミー・ジャパン(株)製))、ポリカルボン酸のアルキルアンモニウム塩(具体的には、Anti−Terra−203(ビックケミー・ジャパン(株)製))、不飽和脂肪酸のアルキロールアミン塩(具体的には、Anti−Terra−206(ビックケミー・ジャパン(株)製))などが挙げられ、また尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物としては、ウレアウレタン(具体的には、BYK410(ビックケミー・ジャパン(株)製))などが挙げられるが、特にこれらに限られるものではなく、複数併用して使用できる。これら(B)成分は、前記飽和脂肪酸(A)と予め混合した状態で用いてもよく、あるいは各成分と一括して混合してもよい。
【0012】
前記(A)成分の飽和脂肪酸と、(B)成分のアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物との配合比率(質量比)は、(A)成分:(B)成分=5:95〜95:5が好ましい。この範囲外の比率では、ダレ止め効果及び指触乾燥性の両方を充分に満足させ難くなる。そして、飽和脂肪酸(A)とアミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物(B)の合計使用量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部(固形分として、以下同様)に対して0.5質量部以上、30質量部以下、好ましくは1質量部以上、10質量部以下の割合が望ましい。0.5質量部未満の場合、ダレ止め効果及び指触乾燥性が得にくいので好ましくない。一方、30質量部より多い場合、基材に対して離型効果が働く恐れがある。
【0013】
次に、本発明において用いる1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)としては、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物の他、1分子中にカルボキシル基及び不飽和基を有する化合物を使用することができ、また、これらを併用することもできる。
【0014】
1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)のビニル共重合体、メタクリル酸とコハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1A)のビニル共重合体などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのカルボキシル基を有する樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
1分子中に1個以上のカルボキシル基及び不飽和基を有する樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸の反応生成物に酸無水物を付加した硬化性樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂とジメチロールプロピオン酸とアクリル酸の反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂(特開平6−324490号公報参照)、ノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸とp−ヒドロキシフェネチルアルコールの反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる硬化性樹脂、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られたアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで酸無水物を付加した硬化性樹脂、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)のビニル共重合体にエポキシシクロヘキサンメタノールのアクリル酸エステル(例えば、ダイセル化学(株)製サイクロマーA200)を反応させて得られるビニル共重合体(特開平8−41150号公報参照)、メタクリル酸とコハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1A)のビニル共重合体にエポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200)を反応させて得られるビニル共重合体(特開平8−259624号公報参照)などが挙げられが、これらに限られるものではない。これらのカルボキシル基及び不飽和基を有する樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)の酸価は、好ましくは20mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以上、120mgKOH/g以下である。上記化合物の酸価が20mgKOH/gよりも低い場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、200mgKOH/gよりも高くなると、現像時に、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまうので好ましくない。
【0017】
前記感光性(メタ)アクリレート化合物(D)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これら感光性(メタ)アクリレート化合物(D)の使用目的は、組成物の光反応性を上げることにある。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、組成物の光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。感光性(メタ)アクリレート化合物(D)の配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して100質量部以下の割合が好ましい。
【0018】
前記光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1− オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。そして、その使用量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0. 5〜25質量部の割合が好ましい。
【0019】
前記希釈溶剤(F)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられ、これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。これら希釈溶剤の使用目的は、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)、感光性(メタ)アクリレート化合物(D)等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。希釈溶剤(F)の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0020】
前記エポキシ樹脂(G)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル(株)製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル(株)製のD.E.R.542、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル(株)製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−50S、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにヒダントイン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、1,5−ジヒドロキシナフタレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基に、エピハロヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂(国際公開第01/024774号公報参照)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらエポキシ樹脂は単独で又は2種以上を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、熱硬化することにより、レジストの密着性、耐熱性等の特性を向上させる。その配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して10質量部以上、70質量部以下の割合で充分であり、好ましくは15質量部以上、60質量部以下の割合である。エポキシ樹脂(G)の配合量が上記範囲未満の場合、硬化膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、また、はんだ耐熱性や耐無電解めっき性も低くなり易い。一方、上記範囲を超えると、塗膜の現像性や硬化膜の耐無電解めっき性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる。
【0021】
硬化触媒(H)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド;ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを用いることができる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT3503X、U−CAT3502X(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、熱硬化特性を向上させるためであれば、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂の硬化触媒、もしくはエポキシ基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれらの化合物を前記硬化触媒と併用する。上記硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上、15.0質量部以下の割合である。
【0022】
本発明の硬化性組成物には、得られる硬化物の特性を低下させない程度において、無機増粘剤を用いることができる。
無機増粘剤としては、例えば、日本アエロジル社製の#50、#200、#380などの親水性シリカ、日本アエロジル社製の#R974、#R972などの疎水性シリカ、ウイルバー・エリス社製のオルベン、ベントン38などの有機ベントナイトなどが挙げられる。これら無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上、10.0質量部以下の割合である。
【0023】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーを単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させる目的で用いられる。無機フィラーの配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部当り10質量部以上、300質量部以下、好ましくは30質量部以上、200質量部以下の割合が適当である。
【0024】
本発明の硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物(C)100質量部に対して、通常1質量部以上、200質量部以下、好ましくは5質量部以上、50質量部以下である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、組成物の難燃性、はんだ耐熱性及び電気絶縁性が、高度にバランスされて好適である。
また、本発明の硬化性組成物の引火性の低下のために、また増粘性を高めるために、水を添加することもできる。
【0026】
このように、飽和脂肪酸と、アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物と共に、カルボキシル基含有化合物、感光性(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、希釈溶剤、エポキシ樹脂、硬化触媒もしくは硬化促進剤、さらに必要により他の添加剤等が配合された硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で光硬化及び/又は熱硬化させることにより、容易に硬化物を得ることができる。例えば、上記硬化性組成物をロールを用いて均一になるまで充分に混合し、用途に応じて所望の基材に、例えばスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の公知の塗工方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、ダレを生ずることもなく指触乾燥性に優れた塗膜を形成できる。また、本発明の硬化性組成物はその僅かな離型効果を利用してレジスト用ドライフィルムを形成することもでき、その場合にはそのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線により露光して光硬化させる。次いで、約100℃〜200℃で加熱硬化させることにより、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を得ることができる。プリント配線板のソルダーレジスト形成の場合には、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、又はレーザー光線により直接描画し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、加熱硬化させることにより、上記のような諸特性に優れたレジスト膜が得られる。上記現像に使用される希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等の水溶液が挙げられる。
【0027】
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0028】
合成例1
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、昭和高分子(株)製、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部及びトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基当量が182.2g/当量であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部及びトルエン252.9部を、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部及びトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形物の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0029】
合成例2
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、及びアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に、水酸基当量80g/当量の1,5−ジヒドロキシナフタレン224部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828、エポキシ当量189g/当量)1075部を仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65部を添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃に保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/当量のエポキシ化合物(1−a)を得た。次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920部、トルエン1690部、テトラメチルアンモニウムブロマイド70部を加え、撹拌下45℃まで昇温し、保持した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364部を60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とトルエンを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/当量の多核エポキシ樹脂(1−b)を得た。得られた多核エポキシ樹脂(1−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(1−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。
次に、多核エポキシ樹脂(1−b)277部を撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290部を加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸化、全酸化測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られたカルボキシル基含感光性樹脂は、不揮発分62%、固形物の酸価100mgKOH/gであった。
【0030】
実施例1〜4及び比較例1〜4
表1に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、各硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルーホールプリント配線基板に全面塗布し、次に、塗膜を70℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、後述の試験方法及び評価方法にて、ダレ性及び指触乾燥性を評価した。
次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて紫外線を照射(露光量600mJ/cm2)し、次いで1%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。得られた硬化皮膜を有する試験基板について、後述の試験方法及び評価方法にて、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、密着性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。また、銅スルーホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。
上記各試験の結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
上記表2中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0033】
(1)ダレ性:
乾燥後の塗膜表面のダレ性を評価した。
○:全くダレのないもの
△:僅かにダレのあるもの
×:ダレのあるもの
【0034】
(2)指触乾燥性:
乾燥後の塗膜表面の指触乾燥性を評価した。
○:全くベタ付きのないもの
△:僅かにベタ付きのあるもの
×:ベタ付きのあるもの
【0035】
(3)PCT耐性:
硬化皮膜のPCT耐性を、121℃、飽和水蒸気中50時間の条件にて以下の基準で評価した。
○:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化皮膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0036】
(4)はんだ耐熱性:
JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴への試験基板の10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を評価した。なお、ポストフラックス(ロジン系)としては、JIS C 6481に従ったフラックスを使用した。
○:外観変化なし
△:硬化皮膜の変色が認められるもの
×:硬化皮膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり
【0037】
(5)耐酸性:
試験基板を10容量%硫酸水溶液に20℃で30分間浸漬後取り出し、硬化皮膜の状態を以下の基準で評価した。
○:変化が認められないもの
△:僅かに変化しているもの
×:硬化皮膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの
【0038】
(6)耐アルカリ性:
試験基板を、10容量%硫酸水溶液を10容量%水酸化ナトリウム水溶液に代えた以外は耐酸性試験と同様に評価した。
【0039】
(7)密着性:
JIS D 0202の試験方法に従って前記試験基板の硬化皮膜に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテスト後の剥れの状能を以下の基準で評価した。
◎:100/100で全く剥れのないもの
○:100/100でクロスカット部が少し剥れたもの
△:50/100〜90/100
×:0/100〜50/100
【0040】
(8)無電解金めっき耐性:
後述する工程に従って前記試験基板に無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、レジスト皮膜の剥離状態を以下の基準で評価した。
○:外観変化もなく、レジスト皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、レジスト皮膜にわずかに剥れがある。
×:レジスト皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験でレジスト皮膜の剥れが大きい。
【0041】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:
試験基板を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、Metex
L−5Bの20Vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:
試験基板を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間、浸漬した。
4.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:
試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:
試験基板を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10Vol%水溶液)に7分間、浸漬した。
8.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:
試験基板を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20Vol%水溶液)に20分間、浸漬した。
10.酸浸漬:
試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:
試験基板を、95℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレス UP 15Vol%、シアン化金カリウム3Vol%の水溶液)に10分間、浸漬した。
13.水 洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:
試験基板を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。
このような工程を経て無電解金めっきした試験基板を得た。
【0042】
(9)電気絶縁性:
硬化皮膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度95%RH、印加電圧30V、100時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以下、銅のマイグレーションあり
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、塗装後に優れたダレ止め効果が得られるだけでなく、乾燥塗膜の指触乾燥性にも優れ、且つ、PCT耐性、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物が提供される。
このような本発明の硬化性組成物を用いることにより、高温下に曝されても、基材からダレるといったようなこともなく、また乾燥塗膜がべとつくといったようなこともなく、しかも前記したような諸特性に優れた硬化物が得られるため、プリント配線板のソルダレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層の材料として適しているのみならず、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、フレキシブル配線基板用レジスト、カラーフィルター用レジスト、塗料などの用途にも期待できる。また、僅かな離型効果を利用してレジスト用ドライフィルムにも有効である。
Claims (5)
- (A)飽和脂肪酸、(B)アミド基及びアミン塩のいずれか少なくとも1種を有する化合物及び/又は尿素結合、アミド結合及びウレタン結合のいずれか少なくとも1種の結合を有する化合物、(C)1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する化合物、(D)感光性(メタ)アクリレート化合物、及び(E)光重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
- 上記飽和脂肪酸が、室温で固形であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
- さらに(F)希釈溶剤を含有することを特徴とする請求項項1又は2に記載の硬化性組成物。
- さらに(G)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
- さらに(H)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
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