JP2005010252A - 感光性樹脂組成物、これを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】現像液中に界面活性剤やアルカリ金属塩などの添加剤を加えることなく水現像でき、画像再現性の良好な、特に微細な画像を形成することができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版を提供する。
【解決手段】(A)水分散性ラテックス、(B)エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマー、(C)結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%である非カルボキシル化ニトリルゴム、(D)カルボキシル化ニトリルゴム、(E)ブタジエンゴム、および(F)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)水分散性ラテックス、(B)エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマー、(C)結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%である非カルボキシル化ニトリルゴム、(D)カルボキシル化ニトリルゴム、(E)ブタジエンゴム、および(F)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版に関するものであり、特に水現像可能なフレキソ版用感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フィルム、ラベル、封筒、段ボール、紙袋などへの印刷材料として、感光性フレキソ印刷版が使用されている。従来、フレキソ印刷版は柔軟性を発現させるために、主成分としてエラストマー性バインダーを含有しており、このエラストマー性バインダーとしては多くの場合ゴムが用いられる。したがって、フレキソ印刷用版材の現像には、ゴム成分を溶解、あるいは膨潤させうるトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いて現像するタイプのものが主流である。
【0003】
しかしながら、近年、環境への悪影響等の点から、トリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることのない、水現像可能な感光性フレキソ印刷版原版が望まれており、これまでにいくつかの提案がなされている。
【0004】
例えば、カルボキシル基含有ポリマーが金属塩あるいはアンモニウム塩を形成したものを含有する感光性樹脂層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、組成物が液状であったり、十分な水性インキ耐性が得られなかったり、印刷時の機械的強度が不足するなどの問題がある。
【0006】
また、カルボキシル基含有水分散ラテックス重合体やマイクロゲル粒子がアンモニウムと塩構造を形成させ、水現像性と耐水性を両立する方法が提案されている(例えば、特許文献6〜8参照)。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、フレキソ印刷に耐えうる十分な耐刷性がなかったり、内部架橋した粒子を含有するために、現像時にゲル粒子が粒子の状態で残存もしくは脱離し、水現像後のレリーフエッジに凹凸があり、そのために微少なレリーフの再現性が低下するといった問題が存在している。
【0008】
また、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよびモノマーを混合することで海島構造を形成させ、海成分に水現像性を、島成分に水性インキ耐性を持たせることで、水系現像液で現像できるフレキソ版が提案されている(例えば、特許文献9参照)。
【0009】
しかし、この方法では、現像液に界面活性剤を添加する必要があるという問題、海島の構造が粗く、光硬化の際に光の散乱によるかぶりが生じ、微細な構造や抜き文字の再現に適さないという問題がある。
【0010】
さらに、親水性エラストマー、重合可能な二重結合を有する疎水性ポリマーおよびモノマーが海島構造を形成している感光層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0011】
しかしながら、この方法では、現像液に界面活性剤を添加する必要があるという問題、疎水性ポリマーとして安価な汎用ゴムを用いず、高価な機能性ゴムを用いており、版材の価格が高くなるという問題がある。
【0012】
さらにまた、結合アクリロニトリル量が10%〜30%の非カルボキシル化ニトリルゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、モノマー、光重合性開始剤からなる均一構造の感光層を用いる方法が提案されているが(例えば、特許文献11参照)、この方法では、現像によってポリマーを現像液中に分散するために、現像液が水とアルコールの混合溶媒に水酸化ナトリウムなどアルカリ添加する必要があり、現像廃液は回収するか、特別な処理をする必要がある。
【0013】
さらにまた、カルボキシル化ニトリルゴム、非カルボキシル化ニトリルゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、水分散ラテックス、および親水性モノマーが海島構造を形成している感光層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献12参照)。
【0014】
しかし、この方法では、水現像性と耐水性の両立がはかられているが、島成分に微細な分散がなされていない部分があり、微細な網点画像のレリーフを形成する部分で現像が不均一になるという問題がある。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4275142号明細書(特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献2】
米国特許第4272608号明細書(特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献3】
特開昭51−63903号公報(第1−2頁)
【0018】
【特許文献4】
特開昭53−10648号公報(第1−2頁)
【0019】
【特許文献5】
特開昭61−22339号公報(第1−2頁)
【0020】
【特許文献6】
米国特許第5348844号明細書(特許請求の範囲)
【0021】
【特許文献7】
米国特許第5350661号明細書(特許請求の範囲)
【0022】
【特許文献8】
米国特許第5229434号明細書(特許請求の範囲)
【0023】
【特許文献9】
特開平3−171139号公報(第1−2頁)
【0024】
【特許文献10】
特開平9−80743号公報(第1−2頁)
【0025】
【特許文献11】
米国特許第4517279号明細書(特許請求の範囲)
【0026】
【特許文献12】
特開2000−155417号公報(第1−2頁)
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、界面活性剤やアルカリ金属塩などの添加剤を加えることなく、水で現像が可能で、画像再現性の良好な感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版を提案することを課題とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の、いわゆる低ニトリルの非カルボキシル化ニトリルゴムを用いることによって、従来困難であった島成分の微細な分散が可能となり、微細な網点画像を再現できることを見出した。
【0029】
本発明は上記課題を解決するために主として次の構成を有する。すなわち、
(1)(A)水分散性ラテックス、(B)エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマー、(C)結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%である非カルボキシル化ニトリルゴム、(D)カルボキシル化ニトリルゴム、(E)ブタジエンゴム、および(F)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【0030】
(2)支持体上に前記(1)に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層が形成されてなる感光性フレキソ印刷版原版。
【0031】
(3)前記(2)に記載の感光性フレキソ印刷版原版を露光、次いで現像してなるフレキソ印刷版である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を以下の実施の形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明における、(A)水分散性ラテックスは、「水分散ラテックス」からその大部分を占める水を除いて得られる重合体そのものであり、「水分散ラテックス」は重合体粒子を分散質として水中に分散したものである。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物を構成する(A)成分である水分散性ラテックスは、「水分散ラテックス」中に粒子の電気的反発力により分散しており、この電荷は乳化剤、保護コロイド、ポリマなどの電離や吸着により引き起こされているものである。「水分散ラテックス」は水を蒸発すると、水分散性ラテックスとなり、連続皮膜を形成する性質を有するものである。水分散性ラテックスでも、粒子中の架橋密度の高いものでは、連続皮膜を形成しにくいことから、内部架橋していないものまたは粒子中の架橋密度の低いものが好ましく用いられる。
【0035】
具体的には、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどのラテックス重合体やこれら重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。この中でも分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散性ラテックスが、硬度の点から好ましく用いられる。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
【0036】
これらラテックスの平均粒径は0.05μm〜1μmであることが好ましい。ここで、平均粒径は動的光散乱を用いて測定することができる。例えば、LPA−3000/LPA−3100+LP510(大塚電子(株)製)を用いて測定することができる。
【0037】
(A)水分散性ラテックスは水現像性およびゴム弾性を両立する成分であるが、形態保持性に劣る。その含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜50重量%が好ましい。5重量%以上とすることで水現像性向上とゴム弾性付与の効果が得られ、50重量%以下とすることで十分な形態保持性が得られる。
【0038】
本発明の(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーは、光重合開始剤の存在下で光硬化可能であるとともに、(A)成分の水分散性ラテックスが凝集することを防止する働きも有する。つまり、(A)成分の粒子表面に(B)成分の皮膜を形成することで粒子同士の凝集を防止することを意図するものである。したがって、(A)成分が、(B)成分中に分散した形態を有することが好ましい。このような形態を有することで、(A)成分の水分散性ラテックスが融着することなく組成物中に存在できる。
【0039】
このような(A)成分が凝集することを防止する働きを持つものとして、本発明においては(B)成分としてエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーを用いるものである。本発明における、エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーは、分子構造中に次のような構造を有するエチレン性不飽和結合を有する化合物である。
【0040】
(B)成分としては、モノマー構造中にポリアルキレングリコールを有するもの、カルボキシル基を含有するもの、水酸基を含有するもの、リン酸基を含有するものが挙げられる。
【0041】
具体的には、ポリアルキレングリコールを有するモノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシペンタエチレングリコール(メタ)アクリレートなどフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、その他としてポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0042】
水酸基を有するモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
カルボキシル基を有するモノマーとして、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
リン酸基を有するモノマーとして、2−(メタ)アクリロイルオキシアシッドホスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシ)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロリルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
【0045】
(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーと、以後述べる(C)〜(E)のゴム成分の屈折率が大きく逸脱すると、感光性組成物中で光の散乱が生じ、光のかぶりが原因でシャープな画像を形成することが難しくなる。よって、各成分の屈折率の差を少なくすることが好ましい。ポリマー成分である(C)〜(E)に比べて、モノマー成分である(B)は一般的に屈折率が低いので、屈折率を向上させる構造、例えば芳香族環を有するモノマーが好ましい。これら(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーの589nm(ナトリウムのD線)における屈折率は、1.49〜1.55が好ましく、1.50〜1.53がより好ましい。
【0046】
これら(B)成分の含有量は全感光性樹脂組成物に対して、10〜40重量%が好ましい。10重量%以上とすることで架橋密度が不足することなく画像再現性が満足するものが得られ、40重量%以下とすることでレリーフが脆くなることがなく、組成物中から経時で(B)成分が分離してくることもない。
【0047】
本発明における(C)〜(E)成分はゴム成分である。
【0048】
(C)成分のゴムとしては、結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の非カルボキシル化ニトリルゴムを用いる。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体で、汎用ゴムとして多種市販されており、その結合アクリロニトリル量により低ニトリル(25%未満)、中ニトリル(25%以上31%未満)、中高ニトリル(31%以上36%未満)、高ニトリル(36%以上43%未満)、極高ニトリル(43%以上)に分類される。これらのうち結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%のものが使用できる。ニトリルゴムの結合アクリロニトリル量を測定する方法としては、(1)ニトリルゴムを濃硫酸で分解させた後、水酸化ナトリウムを添加し、発生したアンモニアを定量することによって算出する方法、(2)結合アクリロニトリル量が既知のニトリルゴムを数種用意してガスクロマトグラフィーにより検量線を予め作成しておき、ガスクロマトグラフのピーク位置から検出する方法が挙げられる。
【0049】
(D)成分のゴムとしては、カルボキシル化ニトリルゴムを用いる。カルボキシル化ニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルに第3成分としてカルボキシル基含有モノマーを加えて共重合することによって得られる。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、マレイン酸、フマル酸などがある。カルボキシル化ニトリルゴムも汎用ゴムとして多種市販されているので、それらのものが使用できる。
【0050】
(E)成分のゴムとしては、ブタジエンゴムを用いる。これも汎用ゴムとして多種市販されているものが使用できる。
【0051】
(C)〜(E)のゴム成分の合計の含有量は、全感光性樹脂組成物に対して20〜80重量%が好ましい。20重量%以上とすることで印刷版の耐水性が良好であり、また反発弾性率が低下して、印刷品質が低下する恐れがない。80重量%以下とすることで、水現像性が得られるので好ましい。
【0052】
これら(A)〜(E)成分からなる樹脂組成物は、それぞれの極性の違いから不均一系の海島構造、あるいは海海構造を形成する。極性が高く粘度の低い(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーおよびエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーに分散している(A)成分の水分散性ラテックスは海相を形成する。これに対して、極性が低く粘度の高い(C)〜(E)成分のゴムは島成分を形成することが多い。(C)成分と(E)成分は、相溶して単一の島相を形成しても良いし、別々に島相を形成しても良く、親水性モノマーと相溶して海相を形成しても良い。カルボキシル基を有するニトリルゴムである(D)成分は、その極性の高さから親水性モノマーの(B)成分とともに海成分を形成するか、もしくは同じくニトリルゴムである(C)成分とともに島成分を形成する。
【0053】
本発明では、親水性の高い海相により水現像を発現させ、疎水性の高い島相により水性インキ耐性を発現させている。微細な画像のレリーフを形成するには島相成分が一様に分散している方が好ましい。「一様に」とは、樹脂組成物のある部分を局所的に、具体的には2μm四方の断面を形態観察した際に、複数種の相が観察できる状態のことである。島成分が一様に分散していないと、すなわち単一の相が大きな部分を占めると、局所的な水現像ができず、微細な画像を再現できないとか、再現された微細な画像が局所的に水性インキ耐性が不足、つまり水性インキで画像レリーフが膨潤し、局所的に画像が太るといった問題が生じる。よって、(C)〜(E)成分のゴムは内部架橋していないものが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、親水性モノマーを主成分とする海相中にゴム成分を主成分とする小さな島相が分散している海島構造、あるいはモノマーを主成分とする海相と、モノマーとゴムとが相溶した海相がほとんどを占め、お互いに細かく分散している海海構造を形成する。海島構造を形成する場合は島相の8割以上が粒径2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。海海構造を形成する場合は、2μm四方に複数の海相が存在する形態が好ましい。
【0055】
(C)成分の非カルボキシル化ニトリルゴムはニトリル基の存在から比較的極性があり、(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーとの親和性が発現し、(B)成分の親水性モノマーの一部が(C)成分中に溶解する場合もある。この親和性により、経時で(B)成分の親水性モノマーが感光性樹脂組成物から分離する、いわゆる「しみだし」現象を抑制することもできる。
【0056】
さらに、(C)成分の結合アクリロニトリル量を27重量%〜40重量%とすることで、各成分のより微細な分散が可能となり、微細な網点画像のレリーフを形成できることが分かった。(C)成分の結合アクリロニトリル量が多くなると、極性の低い(E)成分のブタジエンゴムとの親和性が低下すること、および(C)成分の分子間力が強くなり他成分との分散が行われにくくなることから、両成分との微細な分散を妨げることになる。
【0057】
(C)成分の結合アクリロニトリル量は27重量%〜40重量%が好ましく、27重量%〜35重量%がより好ましい。結合アクリロニトリル量を27重量%以上とすることで、(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーとの親和性が発現し、経時によるしみだしを抑制することができるからで、40重量%以下とすることで(E)成分のブタジエンゴムと親和性が得られ、各成分の微細な分散が可能となるからである。
【0058】
(C)成分の結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の非カルボキシル化ニトリルゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜45重量%が好ましい。5重量%以上とすることで親水性モノマーとの親和性が得られ、45重量%以下とすることで架橋密度が不足することなく画像再現性が満足するものが得られる。
【0059】
(D)成分のカルボキシル化ニトリルゴムは、(B)成分と(C)成分のどちらに相溶していてもよいが、親水性のカルボキシル基の作用で、極性の異なる親水性モノマーと他のゴムとのつなぎの役割をする。しかし、(D)成分のカルボキシル化ゴムは分子間力が他のゴムに比べて強い。本来ゴムは水現像性を有さないが、(D)成分が(B)成分と海相を形成する場合は、分子間に(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーが配置され、(D)成分の分子間力を遮断することによって水現像が可能となる。(D)成分をあまりにも大量に添加すると、水現像性が低下するという問題があるため、(D)成分のカルボキシル化ニトリルゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、0.5〜10重量%が好ましい。0.5重量%以上とすることで親水性モノマーとゴム成分のつなぎの効果が得られ、10重量%以下とすることで水現像性の低下が避けられる。
【0060】
(E)成分のブタジエンゴムは、高い柔軟性と水性インキ耐性を有する。ただ分子間力が低くて脆いという性質があり、細かく分散させることが可能で、海島分散により高い水現像性を発現させることができる。
【0061】
(E)成分のブタジエンゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜40重量%が好ましい。5重量%以上とすることで水現像性が良好になり、かつ十分な水性インキ耐性が得られる。40重量%以下とすることでレリーフが脆くなることが避けられる。
【0062】
また、本発明の感光性樹脂組成物中には(F)成分として光重合開始剤を加えるものである。光重合開始剤としては、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば全て使用できる。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などである。光重合開始剤の配合量としては、全感光性樹脂組成物に対して0.1〜50重量%の範囲が好ましい。0.1重量%以上とすることで、開始効率が減少することなく、画像再現が良好である。50重量%以下とすることで感度が高すぎることなくて、露光時間のコントロールが容易となるので好ましい。
【0063】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、疎水性モノマーを加えることもできる。疎水性モノマとは、一般に強い極性を有する官能基をモノマー中に持たないモノマーであり、水やエタノールへの溶解性の低いモノマーである。
【0064】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0065】
これら疎水性モノマーを加える場合その含有量は、全感光性樹脂組成物に対して20重量%以下が好ましい。20重量%以下とすることで、水現像性が優れ、良好なレリーフを得ることができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物には、可塑剤を加えることもできる。この可塑剤としては、一般的に版材を柔軟化する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、(B)成分であるモノマー成分や(C)〜(E)成分であるポリマー成分と相溶性が良好なものが好ましい。より好ましくは、室温で液状のポリエン化合物やエステル結合を有する化合物である。室温で液状のポリエン化合物としては、液状のポリブタジエン、ポリイソプレン、されにそれらの末端基あるいは側鎖を変性したマレイン化物、エポキシ化物などがある。エステル結合を有する化合物としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、セバシン酸エステル、アジピン酸エステル、分子量1000〜3000のポリエステルなどが挙げられる。
【0067】
これら可塑剤成分を加える場合には、光架橋前の固形版としての強度を十分ななものとする観点から、全感光性樹脂組成物に対して10重量%以下が好ましい。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物の熱安定性を上げるために、公知の重合禁止剤を添加することもできる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。これらの配合量は、全感光性樹脂組成物に対して、0.001〜5重量%の範囲で使用することが一般的である。
【0069】
また、他の成分として、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
【0070】
これら感光性樹脂組成物の形態は電子顕微鏡により観察できる。感光性樹脂組成物に紫外線を照射して光硬化した後に、厚み約200μmの薄膜切片にして、必要であればオスミウム染色やリンタングステン染色を行い、透過型電子顕微鏡を使用して感光性樹脂組成物の形態を観察することができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法としては、予め(A)成分である水分散性ラテックスと、(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーを混合したものを用意しておくのが好ましい。この混合物は「水分散ラテックス」と(B)成分とを混合し、乾燥機で脱水させることによって得られる。このようにすることで、(A)成分に(B)成分が吸着された状態になり、(A)成分の融着を防止することができる。
【0072】
上記(A)成分と(B)成分の混合物に(C)〜(F)成分を混練することにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0073】
混練設備としては、2軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられるが特に限定するものではない。
【0074】
この感光性樹脂組成物を用いて、接着剤を塗布した支持体に、押出機により溶融押し出しし、粘着防止層を塗布したカバーフィルムを感光性樹脂層上に密着させることで感光性フレキソ印刷版原版を得ることができる。また、支持体とカバーフィルムの間に感光性樹脂組成物を挟み込み、加熱プレスなどで必要な厚さまで押さえ込むことによっても感光性フレキソ印刷版原版を得ることができる。支持体としてはスチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが好ましく使用される。
【0075】
感光性樹脂層の厚みは0.1〜10mmの厚さに形成することが好ましい。層厚を0.1mm以上とすることで、フレキソ印刷版として用いるのに必要なレリーフ深度が得られ、10mm以下とすることで、印刷版の重量が抑えられ、取り扱いに実用上の不備が生じることがない。
【0076】
このようにして得られた感光性フレキソ印刷版原版に印刷用のレリーフ像を形成するためには、まず支持体側より、通常波長300〜400nmの光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯により紫外線を照射し、その後、カバーフィルムを剥離した感光性樹脂層上にネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ紫外線照射し、光重合によって光硬化を行わせる。
【0077】
次に、未重合部分を水使用のスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機により溶出させることにより支持体上にレリーフ像を形成することができる。これを乾燥後、活性光線処理してフレキソ印刷版を得ることができる。
【0078】
現像液として水道水を用いることができるが、粉石鹸などの界面活性剤を含有した水を用いても良い。現像液中に界面活性剤を添加することによって、現像速度を向上させたり、フレキソ現像カスの凝固を防止する効果が得られることがある。現像カスが凝固すると、現像ブラシにまとわりつき、現像カスの性状によってはブラシの手入れに労力を要する場合がある。界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウムや炭酸塩など汎用の石鹸成分が好適に使用される。界面活性剤を添加する場合、その添加量は現像液の全重量に対して、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜3重量%がより好ましい。
【0079】
現像廃液は、公知の下水処理用の凝集剤を用いることによって、現像カスを凝集、分離し、環境への負荷をさらに軽減することができる。本発明の感光性樹脂層は水に対する親和性の高い相(例えば海相)と水に対する親和性の低い相(例えば島相)とがサブマイクロメートルからマイクロメートルオーダーで分散した構造となっており、水現像した場合、水に対する親和性の低い相中の成分および水に対する親和性が高い相中の一部の成分は、水に溶解せず懸濁粒子となり、水に分散した状態になる。この懸濁粒子は概して水中で負に帯電することが多く、カウンターイオンの凝集剤を添加することによって、懸濁粒子がコロイドを形成してサイズが増加して、水に沈降あるいは水上に浮遊するようになり、水から容易に分離できるようになる。現像液に脂肪酸金属塩のような界面活性剤を添加している場合、脂肪酸金属塩と凝集剤が吸着性の高いコロイドを形成するため、現像廃液の固形分分離の効果は大きくなる。
【0080】
このような凝集剤として、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、石灰などの無機系凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子凝集剤が用いられる。現像廃液のへの凝集剤の添加量は現像廃液に対して0.1%〜5%重量%が好ましい。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0082】
<水分散性ラテックス/親水性ポリマー混合体の製造>
“ラックスター”DM811(大日本インキ化学(株)製、カルボキシ変性ブタジエンラテックス、固形分濃度:50.5%):43.6重量部(固形分で22重量部)と“Nipol”LX111NF(日本ゼオン(株)製、ブタジエンラテックス、固形分濃度:55%):14.5重量部(固形分で8重量部)、(B)成分である“ライトアクリレート”P400A(共栄社化学(株)製、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、589nmにおける屈折率:1.502):9重量部と“エポキシエステル”80MFSA(共栄社化学(株)製、グリセリンポリエーテルポリオールと無水コハク酸と2−ヒドロキシエチルアクリレートの重縮合物、589nmにおける屈折率:1.491):11重量部を混合して、120℃に加熱した乾燥機で6時間乾燥し、水分を蒸発させて水分散性ラテックス/親水性モノマー混合物−1を得た。
【0083】
<粘着防止層付きカバーフィルム−1の作成>
“ゴーセノール”KH−17(日本合成化学(株)製、鹸化度78〜82モル%の部分鹸化ポリ酢酸ビニル)を水/エタノール=40/60(重量比)の混合溶剤に固形分濃度:10重量%となるように80℃で溶解し、塗工原液−1を調製した。“EC−776”(住友スリーエム(株)製、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体/フェノール樹脂=1/1の混合液、固形分濃度:30%)をメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン=50/50(重量比)の混合溶剤に固形分濃度:5重量%となるように30℃で溶解し、塗工原液−2を調製した。膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、グラビアコーターで塗工原液−1を用いて乾燥膜厚1μmとなるように塗布、120℃で30秒間乾燥させた。この上にグラビアコーターで塗工原液−2を用いて乾燥膜厚0.2μmとなるように塗布、120℃で30秒間乾燥し、粘着防止層付きカバーフィルム−1を得た。
【0084】
<実施例1>
(C)成分である“Nipol”3350(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:29重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム):11重量部、(D)成分である“Nipol”1072(日本ゼオン(株)製、カルボキシル化ニトリルゴム):4重量部および(E)成分である“Nipol”BR1220L(日本ゼオン(株)製、ブタジエンゴム):18重量部を150℃に加熱した200mlの容量を持つラボニーダーミル((株)トーシン社製)で5分間混練した。この後、“プラストロジン”J(藤沢薬品工業(株)製、アミド系ゴム加工助剤):2重量部、“プロノン”204(日本油脂(株)製、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体):0.5重量部、アクリル酸ステアリルエステル:2重量部、(A)成分と(B)成分の混合体である水分散性ラテックス/親水性モノマー混合体−1:50重量部および(B)成分である“ライトエステル”BP−6EM(共栄社化学(株)製、ビスフェノールとトリエチレングリコールメタクリレートのジエステル化物、589nmにおける屈折率:1.526):8重量部をラボニーダーミル中に投入し、さらに120℃で10分間混練した。その後、(F)成分として“イルガキュア”651(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製):0.8重量部、紫外線吸収剤として“チヌビン”327(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製):0.02重量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル:0.1重量部を添加して5分間混練し、感光性樹脂組成物を得た。
【0085】
このようにして得られた感光性樹脂組成物を、125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに予めポリエステル系接着剤を塗布した基板と、粘着防止層付きカバーフィルム−1との間に挟み、110℃に加熱したプレス機で感光性樹脂層の厚みが1.5mmになるようにプレスし、感光性フレキソ印刷版原版を得た。
【0086】
この感光性フレキソ印刷版原版を支持体側から、“TL”K40W/10R(フィリィップス(PHILIPS)社製、ケミカル灯)を6本設置した“FTW350LII”(富士写真フィルム(株)製、露光ユニット付き現像装置)により2分間裏露光した。その後、カバーフィルムを剥がし、感光性樹脂層上に、画像再現性評価用ネガフィルム(例えば、150線3%網点、直径200μm独立点、幅50μm細線を持つ)を真空密着させ、同じケミカル灯でネガフィルム側から10分間露光した。
【0087】
露光終了後、ブラシ長20mmのナイロン−6,10製ブラシ束を備えたブラシ台が設置さた“JemFlex”JOW−A2−WFD(日本電子精機(株)製、フレキソ用洗い出し機)で現像行った。現像液には60℃の水を用いた。現像6分間で670μmのレリーフ像が形成された。版表面を水道水でリンスした後、60℃に加熱した乾燥機で水分を除去した。その後、活性光線で後露光を行い、フレキソ印刷版を得た。得られたフレキソ印刷版の画像を評価した結果、150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線が再現されていた。この印刷版を使用してフレキソ印刷機で水性インキを用いた印刷試験を行ったところ、ハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
<実施例2>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”1043(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:29重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現しており、印刷試験ではハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。
【0090】
<実施例3>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN302(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:27.5重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現しており、印刷試験ではハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。
【0091】
<比較例1>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN009(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:50重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現していた。印刷試験では網点部現像不良が見られた。フレキソ版の網点部(175線5%ハイライト)を光学顕微鏡で観察したところ、網点間に現像がなされていない部分が確認できた。
【0092】
<比較例2>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN101(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:42.5重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現していた。印刷試験では網点部現像不良が見られた。フレキソ版の網点部を光学顕微鏡で観察したところ、網点間に現像がなされていない部分が確認できた。
【0093】
<実施例4>
実施例1で得られた感光性フレキソ印刷版原版を、現像液として水の代わりに、粉末洗濯用石鹸(ニッサン石鹸(株)製)を1%含有する60℃の水を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。実施例1では水を用いることによって現像に6分要したが、界面活性剤含有水を用いることによって現像が5分で可能となった。この現像カス、石鹸成分および水からなる現像廃液に対して1重量%の無鉄硫酸バンド固形特号(JIS K1423に該当、住友化学工業(株)製)を添加し、40℃で2時間撹拌しながら処理したところ、白色の浮遊物と無色透明な水と分離できた。
【0094】
【発明の効果】
現像液中に界面活性剤やアルカリ金属塩などの添加剤を加えることなく水現像でき、画像再現性の良好な、特に微細な画像を形成することができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版に関するものであり、特に水現像可能なフレキソ版用感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フィルム、ラベル、封筒、段ボール、紙袋などへの印刷材料として、感光性フレキソ印刷版が使用されている。従来、フレキソ印刷版は柔軟性を発現させるために、主成分としてエラストマー性バインダーを含有しており、このエラストマー性バインダーとしては多くの場合ゴムが用いられる。したがって、フレキソ印刷用版材の現像には、ゴム成分を溶解、あるいは膨潤させうるトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いて現像するタイプのものが主流である。
【0003】
しかしながら、近年、環境への悪影響等の点から、トリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることのない、水現像可能な感光性フレキソ印刷版原版が望まれており、これまでにいくつかの提案がなされている。
【0004】
例えば、カルボキシル基含有ポリマーが金属塩あるいはアンモニウム塩を形成したものを含有する感光性樹脂層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、組成物が液状であったり、十分な水性インキ耐性が得られなかったり、印刷時の機械的強度が不足するなどの問題がある。
【0006】
また、カルボキシル基含有水分散ラテックス重合体やマイクロゲル粒子がアンモニウムと塩構造を形成させ、水現像性と耐水性を両立する方法が提案されている(例えば、特許文献6〜8参照)。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、フレキソ印刷に耐えうる十分な耐刷性がなかったり、内部架橋した粒子を含有するために、現像時にゲル粒子が粒子の状態で残存もしくは脱離し、水現像後のレリーフエッジに凹凸があり、そのために微少なレリーフの再現性が低下するといった問題が存在している。
【0008】
また、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよびモノマーを混合することで海島構造を形成させ、海成分に水現像性を、島成分に水性インキ耐性を持たせることで、水系現像液で現像できるフレキソ版が提案されている(例えば、特許文献9参照)。
【0009】
しかし、この方法では、現像液に界面活性剤を添加する必要があるという問題、海島の構造が粗く、光硬化の際に光の散乱によるかぶりが生じ、微細な構造や抜き文字の再現に適さないという問題がある。
【0010】
さらに、親水性エラストマー、重合可能な二重結合を有する疎水性ポリマーおよびモノマーが海島構造を形成している感光層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0011】
しかしながら、この方法では、現像液に界面活性剤を添加する必要があるという問題、疎水性ポリマーとして安価な汎用ゴムを用いず、高価な機能性ゴムを用いており、版材の価格が高くなるという問題がある。
【0012】
さらにまた、結合アクリロニトリル量が10%〜30%の非カルボキシル化ニトリルゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、モノマー、光重合性開始剤からなる均一構造の感光層を用いる方法が提案されているが(例えば、特許文献11参照)、この方法では、現像によってポリマーを現像液中に分散するために、現像液が水とアルコールの混合溶媒に水酸化ナトリウムなどアルカリ添加する必要があり、現像廃液は回収するか、特別な処理をする必要がある。
【0013】
さらにまた、カルボキシル化ニトリルゴム、非カルボキシル化ニトリルゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、水分散ラテックス、および親水性モノマーが海島構造を形成している感光層を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献12参照)。
【0014】
しかし、この方法では、水現像性と耐水性の両立がはかられているが、島成分に微細な分散がなされていない部分があり、微細な網点画像のレリーフを形成する部分で現像が不均一になるという問題がある。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4275142号明細書(特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献2】
米国特許第4272608号明細書(特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献3】
特開昭51−63903号公報(第1−2頁)
【0018】
【特許文献4】
特開昭53−10648号公報(第1−2頁)
【0019】
【特許文献5】
特開昭61−22339号公報(第1−2頁)
【0020】
【特許文献6】
米国特許第5348844号明細書(特許請求の範囲)
【0021】
【特許文献7】
米国特許第5350661号明細書(特許請求の範囲)
【0022】
【特許文献8】
米国特許第5229434号明細書(特許請求の範囲)
【0023】
【特許文献9】
特開平3−171139号公報(第1−2頁)
【0024】
【特許文献10】
特開平9−80743号公報(第1−2頁)
【0025】
【特許文献11】
米国特許第4517279号明細書(特許請求の範囲)
【0026】
【特許文献12】
特開2000−155417号公報(第1−2頁)
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、界面活性剤やアルカリ金属塩などの添加剤を加えることなく、水で現像が可能で、画像再現性の良好な感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版を提案することを課題とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の、いわゆる低ニトリルの非カルボキシル化ニトリルゴムを用いることによって、従来困難であった島成分の微細な分散が可能となり、微細な網点画像を再現できることを見出した。
【0029】
本発明は上記課題を解決するために主として次の構成を有する。すなわち、
(1)(A)水分散性ラテックス、(B)エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマー、(C)結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%である非カルボキシル化ニトリルゴム、(D)カルボキシル化ニトリルゴム、(E)ブタジエンゴム、および(F)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【0030】
(2)支持体上に前記(1)に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層が形成されてなる感光性フレキソ印刷版原版。
【0031】
(3)前記(2)に記載の感光性フレキソ印刷版原版を露光、次いで現像してなるフレキソ印刷版である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を以下の実施の形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明における、(A)水分散性ラテックスは、「水分散ラテックス」からその大部分を占める水を除いて得られる重合体そのものであり、「水分散ラテックス」は重合体粒子を分散質として水中に分散したものである。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物を構成する(A)成分である水分散性ラテックスは、「水分散ラテックス」中に粒子の電気的反発力により分散しており、この電荷は乳化剤、保護コロイド、ポリマなどの電離や吸着により引き起こされているものである。「水分散ラテックス」は水を蒸発すると、水分散性ラテックスとなり、連続皮膜を形成する性質を有するものである。水分散性ラテックスでも、粒子中の架橋密度の高いものでは、連続皮膜を形成しにくいことから、内部架橋していないものまたは粒子中の架橋密度の低いものが好ましく用いられる。
【0035】
具体的には、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどのラテックス重合体やこれら重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。この中でも分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散性ラテックスが、硬度の点から好ましく用いられる。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
【0036】
これらラテックスの平均粒径は0.05μm〜1μmであることが好ましい。ここで、平均粒径は動的光散乱を用いて測定することができる。例えば、LPA−3000/LPA−3100+LP510(大塚電子(株)製)を用いて測定することができる。
【0037】
(A)水分散性ラテックスは水現像性およびゴム弾性を両立する成分であるが、形態保持性に劣る。その含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜50重量%が好ましい。5重量%以上とすることで水現像性向上とゴム弾性付与の効果が得られ、50重量%以下とすることで十分な形態保持性が得られる。
【0038】
本発明の(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーは、光重合開始剤の存在下で光硬化可能であるとともに、(A)成分の水分散性ラテックスが凝集することを防止する働きも有する。つまり、(A)成分の粒子表面に(B)成分の皮膜を形成することで粒子同士の凝集を防止することを意図するものである。したがって、(A)成分が、(B)成分中に分散した形態を有することが好ましい。このような形態を有することで、(A)成分の水分散性ラテックスが融着することなく組成物中に存在できる。
【0039】
このような(A)成分が凝集することを防止する働きを持つものとして、本発明においては(B)成分としてエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーを用いるものである。本発明における、エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーは、分子構造中に次のような構造を有するエチレン性不飽和結合を有する化合物である。
【0040】
(B)成分としては、モノマー構造中にポリアルキレングリコールを有するもの、カルボキシル基を含有するもの、水酸基を含有するもの、リン酸基を含有するものが挙げられる。
【0041】
具体的には、ポリアルキレングリコールを有するモノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシペンタエチレングリコール(メタ)アクリレートなどフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、その他としてポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0042】
水酸基を有するモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
カルボキシル基を有するモノマーとして、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
リン酸基を有するモノマーとして、2−(メタ)アクリロイルオキシアシッドホスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシ)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロリルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
【0045】
(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーと、以後述べる(C)〜(E)のゴム成分の屈折率が大きく逸脱すると、感光性組成物中で光の散乱が生じ、光のかぶりが原因でシャープな画像を形成することが難しくなる。よって、各成分の屈折率の差を少なくすることが好ましい。ポリマー成分である(C)〜(E)に比べて、モノマー成分である(B)は一般的に屈折率が低いので、屈折率を向上させる構造、例えば芳香族環を有するモノマーが好ましい。これら(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーの589nm(ナトリウムのD線)における屈折率は、1.49〜1.55が好ましく、1.50〜1.53がより好ましい。
【0046】
これら(B)成分の含有量は全感光性樹脂組成物に対して、10〜40重量%が好ましい。10重量%以上とすることで架橋密度が不足することなく画像再現性が満足するものが得られ、40重量%以下とすることでレリーフが脆くなることがなく、組成物中から経時で(B)成分が分離してくることもない。
【0047】
本発明における(C)〜(E)成分はゴム成分である。
【0048】
(C)成分のゴムとしては、結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の非カルボキシル化ニトリルゴムを用いる。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体で、汎用ゴムとして多種市販されており、その結合アクリロニトリル量により低ニトリル(25%未満)、中ニトリル(25%以上31%未満)、中高ニトリル(31%以上36%未満)、高ニトリル(36%以上43%未満)、極高ニトリル(43%以上)に分類される。これらのうち結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%のものが使用できる。ニトリルゴムの結合アクリロニトリル量を測定する方法としては、(1)ニトリルゴムを濃硫酸で分解させた後、水酸化ナトリウムを添加し、発生したアンモニアを定量することによって算出する方法、(2)結合アクリロニトリル量が既知のニトリルゴムを数種用意してガスクロマトグラフィーにより検量線を予め作成しておき、ガスクロマトグラフのピーク位置から検出する方法が挙げられる。
【0049】
(D)成分のゴムとしては、カルボキシル化ニトリルゴムを用いる。カルボキシル化ニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルに第3成分としてカルボキシル基含有モノマーを加えて共重合することによって得られる。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、マレイン酸、フマル酸などがある。カルボキシル化ニトリルゴムも汎用ゴムとして多種市販されているので、それらのものが使用できる。
【0050】
(E)成分のゴムとしては、ブタジエンゴムを用いる。これも汎用ゴムとして多種市販されているものが使用できる。
【0051】
(C)〜(E)のゴム成分の合計の含有量は、全感光性樹脂組成物に対して20〜80重量%が好ましい。20重量%以上とすることで印刷版の耐水性が良好であり、また反発弾性率が低下して、印刷品質が低下する恐れがない。80重量%以下とすることで、水現像性が得られるので好ましい。
【0052】
これら(A)〜(E)成分からなる樹脂組成物は、それぞれの極性の違いから不均一系の海島構造、あるいは海海構造を形成する。極性が高く粘度の低い(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーおよびエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーに分散している(A)成分の水分散性ラテックスは海相を形成する。これに対して、極性が低く粘度の高い(C)〜(E)成分のゴムは島成分を形成することが多い。(C)成分と(E)成分は、相溶して単一の島相を形成しても良いし、別々に島相を形成しても良く、親水性モノマーと相溶して海相を形成しても良い。カルボキシル基を有するニトリルゴムである(D)成分は、その極性の高さから親水性モノマーの(B)成分とともに海成分を形成するか、もしくは同じくニトリルゴムである(C)成分とともに島成分を形成する。
【0053】
本発明では、親水性の高い海相により水現像を発現させ、疎水性の高い島相により水性インキ耐性を発現させている。微細な画像のレリーフを形成するには島相成分が一様に分散している方が好ましい。「一様に」とは、樹脂組成物のある部分を局所的に、具体的には2μm四方の断面を形態観察した際に、複数種の相が観察できる状態のことである。島成分が一様に分散していないと、すなわち単一の相が大きな部分を占めると、局所的な水現像ができず、微細な画像を再現できないとか、再現された微細な画像が局所的に水性インキ耐性が不足、つまり水性インキで画像レリーフが膨潤し、局所的に画像が太るといった問題が生じる。よって、(C)〜(E)成分のゴムは内部架橋していないものが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、親水性モノマーを主成分とする海相中にゴム成分を主成分とする小さな島相が分散している海島構造、あるいはモノマーを主成分とする海相と、モノマーとゴムとが相溶した海相がほとんどを占め、お互いに細かく分散している海海構造を形成する。海島構造を形成する場合は島相の8割以上が粒径2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。海海構造を形成する場合は、2μm四方に複数の海相が存在する形態が好ましい。
【0055】
(C)成分の非カルボキシル化ニトリルゴムはニトリル基の存在から比較的極性があり、(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーとの親和性が発現し、(B)成分の親水性モノマーの一部が(C)成分中に溶解する場合もある。この親和性により、経時で(B)成分の親水性モノマーが感光性樹脂組成物から分離する、いわゆる「しみだし」現象を抑制することもできる。
【0056】
さらに、(C)成分の結合アクリロニトリル量を27重量%〜40重量%とすることで、各成分のより微細な分散が可能となり、微細な網点画像のレリーフを形成できることが分かった。(C)成分の結合アクリロニトリル量が多くなると、極性の低い(E)成分のブタジエンゴムとの親和性が低下すること、および(C)成分の分子間力が強くなり他成分との分散が行われにくくなることから、両成分との微細な分散を妨げることになる。
【0057】
(C)成分の結合アクリロニトリル量は27重量%〜40重量%が好ましく、27重量%〜35重量%がより好ましい。結合アクリロニトリル量を27重量%以上とすることで、(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーとの親和性が発現し、経時によるしみだしを抑制することができるからで、40重量%以下とすることで(E)成分のブタジエンゴムと親和性が得られ、各成分の微細な分散が可能となるからである。
【0058】
(C)成分の結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%の非カルボキシル化ニトリルゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜45重量%が好ましい。5重量%以上とすることで親水性モノマーとの親和性が得られ、45重量%以下とすることで架橋密度が不足することなく画像再現性が満足するものが得られる。
【0059】
(D)成分のカルボキシル化ニトリルゴムは、(B)成分と(C)成分のどちらに相溶していてもよいが、親水性のカルボキシル基の作用で、極性の異なる親水性モノマーと他のゴムとのつなぎの役割をする。しかし、(D)成分のカルボキシル化ゴムは分子間力が他のゴムに比べて強い。本来ゴムは水現像性を有さないが、(D)成分が(B)成分と海相を形成する場合は、分子間に(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーが配置され、(D)成分の分子間力を遮断することによって水現像が可能となる。(D)成分をあまりにも大量に添加すると、水現像性が低下するという問題があるため、(D)成分のカルボキシル化ニトリルゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、0.5〜10重量%が好ましい。0.5重量%以上とすることで親水性モノマーとゴム成分のつなぎの効果が得られ、10重量%以下とすることで水現像性の低下が避けられる。
【0060】
(E)成分のブタジエンゴムは、高い柔軟性と水性インキ耐性を有する。ただ分子間力が低くて脆いという性質があり、細かく分散させることが可能で、海島分散により高い水現像性を発現させることができる。
【0061】
(E)成分のブタジエンゴムの含有量は全感光性樹脂組成物に対して、5〜40重量%が好ましい。5重量%以上とすることで水現像性が良好になり、かつ十分な水性インキ耐性が得られる。40重量%以下とすることでレリーフが脆くなることが避けられる。
【0062】
また、本発明の感光性樹脂組成物中には(F)成分として光重合開始剤を加えるものである。光重合開始剤としては、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば全て使用できる。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などである。光重合開始剤の配合量としては、全感光性樹脂組成物に対して0.1〜50重量%の範囲が好ましい。0.1重量%以上とすることで、開始効率が減少することなく、画像再現が良好である。50重量%以下とすることで感度が高すぎることなくて、露光時間のコントロールが容易となるので好ましい。
【0063】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、疎水性モノマーを加えることもできる。疎水性モノマとは、一般に強い極性を有する官能基をモノマー中に持たないモノマーであり、水やエタノールへの溶解性の低いモノマーである。
【0064】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0065】
これら疎水性モノマーを加える場合その含有量は、全感光性樹脂組成物に対して20重量%以下が好ましい。20重量%以下とすることで、水現像性が優れ、良好なレリーフを得ることができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物には、可塑剤を加えることもできる。この可塑剤としては、一般的に版材を柔軟化する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、(B)成分であるモノマー成分や(C)〜(E)成分であるポリマー成分と相溶性が良好なものが好ましい。より好ましくは、室温で液状のポリエン化合物やエステル結合を有する化合物である。室温で液状のポリエン化合物としては、液状のポリブタジエン、ポリイソプレン、されにそれらの末端基あるいは側鎖を変性したマレイン化物、エポキシ化物などがある。エステル結合を有する化合物としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、セバシン酸エステル、アジピン酸エステル、分子量1000〜3000のポリエステルなどが挙げられる。
【0067】
これら可塑剤成分を加える場合には、光架橋前の固形版としての強度を十分ななものとする観点から、全感光性樹脂組成物に対して10重量%以下が好ましい。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物の熱安定性を上げるために、公知の重合禁止剤を添加することもできる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。これらの配合量は、全感光性樹脂組成物に対して、0.001〜5重量%の範囲で使用することが一般的である。
【0069】
また、他の成分として、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
【0070】
これら感光性樹脂組成物の形態は電子顕微鏡により観察できる。感光性樹脂組成物に紫外線を照射して光硬化した後に、厚み約200μmの薄膜切片にして、必要であればオスミウム染色やリンタングステン染色を行い、透過型電子顕微鏡を使用して感光性樹脂組成物の形態を観察することができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法としては、予め(A)成分である水分散性ラテックスと、(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する親水性モノマーを混合したものを用意しておくのが好ましい。この混合物は「水分散ラテックス」と(B)成分とを混合し、乾燥機で脱水させることによって得られる。このようにすることで、(A)成分に(B)成分が吸着された状態になり、(A)成分の融着を防止することができる。
【0072】
上記(A)成分と(B)成分の混合物に(C)〜(F)成分を混練することにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0073】
混練設備としては、2軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられるが特に限定するものではない。
【0074】
この感光性樹脂組成物を用いて、接着剤を塗布した支持体に、押出機により溶融押し出しし、粘着防止層を塗布したカバーフィルムを感光性樹脂層上に密着させることで感光性フレキソ印刷版原版を得ることができる。また、支持体とカバーフィルムの間に感光性樹脂組成物を挟み込み、加熱プレスなどで必要な厚さまで押さえ込むことによっても感光性フレキソ印刷版原版を得ることができる。支持体としてはスチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが好ましく使用される。
【0075】
感光性樹脂層の厚みは0.1〜10mmの厚さに形成することが好ましい。層厚を0.1mm以上とすることで、フレキソ印刷版として用いるのに必要なレリーフ深度が得られ、10mm以下とすることで、印刷版の重量が抑えられ、取り扱いに実用上の不備が生じることがない。
【0076】
このようにして得られた感光性フレキソ印刷版原版に印刷用のレリーフ像を形成するためには、まず支持体側より、通常波長300〜400nmの光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯により紫外線を照射し、その後、カバーフィルムを剥離した感光性樹脂層上にネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ紫外線照射し、光重合によって光硬化を行わせる。
【0077】
次に、未重合部分を水使用のスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機により溶出させることにより支持体上にレリーフ像を形成することができる。これを乾燥後、活性光線処理してフレキソ印刷版を得ることができる。
【0078】
現像液として水道水を用いることができるが、粉石鹸などの界面活性剤を含有した水を用いても良い。現像液中に界面活性剤を添加することによって、現像速度を向上させたり、フレキソ現像カスの凝固を防止する効果が得られることがある。現像カスが凝固すると、現像ブラシにまとわりつき、現像カスの性状によってはブラシの手入れに労力を要する場合がある。界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウムや炭酸塩など汎用の石鹸成分が好適に使用される。界面活性剤を添加する場合、その添加量は現像液の全重量に対して、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜3重量%がより好ましい。
【0079】
現像廃液は、公知の下水処理用の凝集剤を用いることによって、現像カスを凝集、分離し、環境への負荷をさらに軽減することができる。本発明の感光性樹脂層は水に対する親和性の高い相(例えば海相)と水に対する親和性の低い相(例えば島相)とがサブマイクロメートルからマイクロメートルオーダーで分散した構造となっており、水現像した場合、水に対する親和性の低い相中の成分および水に対する親和性が高い相中の一部の成分は、水に溶解せず懸濁粒子となり、水に分散した状態になる。この懸濁粒子は概して水中で負に帯電することが多く、カウンターイオンの凝集剤を添加することによって、懸濁粒子がコロイドを形成してサイズが増加して、水に沈降あるいは水上に浮遊するようになり、水から容易に分離できるようになる。現像液に脂肪酸金属塩のような界面活性剤を添加している場合、脂肪酸金属塩と凝集剤が吸着性の高いコロイドを形成するため、現像廃液の固形分分離の効果は大きくなる。
【0080】
このような凝集剤として、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、石灰などの無機系凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子凝集剤が用いられる。現像廃液のへの凝集剤の添加量は現像廃液に対して0.1%〜5%重量%が好ましい。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0082】
<水分散性ラテックス/親水性ポリマー混合体の製造>
“ラックスター”DM811(大日本インキ化学(株)製、カルボキシ変性ブタジエンラテックス、固形分濃度:50.5%):43.6重量部(固形分で22重量部)と“Nipol”LX111NF(日本ゼオン(株)製、ブタジエンラテックス、固形分濃度:55%):14.5重量部(固形分で8重量部)、(B)成分である“ライトアクリレート”P400A(共栄社化学(株)製、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、589nmにおける屈折率:1.502):9重量部と“エポキシエステル”80MFSA(共栄社化学(株)製、グリセリンポリエーテルポリオールと無水コハク酸と2−ヒドロキシエチルアクリレートの重縮合物、589nmにおける屈折率:1.491):11重量部を混合して、120℃に加熱した乾燥機で6時間乾燥し、水分を蒸発させて水分散性ラテックス/親水性モノマー混合物−1を得た。
【0083】
<粘着防止層付きカバーフィルム−1の作成>
“ゴーセノール”KH−17(日本合成化学(株)製、鹸化度78〜82モル%の部分鹸化ポリ酢酸ビニル)を水/エタノール=40/60(重量比)の混合溶剤に固形分濃度:10重量%となるように80℃で溶解し、塗工原液−1を調製した。“EC−776”(住友スリーエム(株)製、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体/フェノール樹脂=1/1の混合液、固形分濃度:30%)をメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン=50/50(重量比)の混合溶剤に固形分濃度:5重量%となるように30℃で溶解し、塗工原液−2を調製した。膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、グラビアコーターで塗工原液−1を用いて乾燥膜厚1μmとなるように塗布、120℃で30秒間乾燥させた。この上にグラビアコーターで塗工原液−2を用いて乾燥膜厚0.2μmとなるように塗布、120℃で30秒間乾燥し、粘着防止層付きカバーフィルム−1を得た。
【0084】
<実施例1>
(C)成分である“Nipol”3350(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:29重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム):11重量部、(D)成分である“Nipol”1072(日本ゼオン(株)製、カルボキシル化ニトリルゴム):4重量部および(E)成分である“Nipol”BR1220L(日本ゼオン(株)製、ブタジエンゴム):18重量部を150℃に加熱した200mlの容量を持つラボニーダーミル((株)トーシン社製)で5分間混練した。この後、“プラストロジン”J(藤沢薬品工業(株)製、アミド系ゴム加工助剤):2重量部、“プロノン”204(日本油脂(株)製、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体):0.5重量部、アクリル酸ステアリルエステル:2重量部、(A)成分と(B)成分の混合体である水分散性ラテックス/親水性モノマー混合体−1:50重量部および(B)成分である“ライトエステル”BP−6EM(共栄社化学(株)製、ビスフェノールとトリエチレングリコールメタクリレートのジエステル化物、589nmにおける屈折率:1.526):8重量部をラボニーダーミル中に投入し、さらに120℃で10分間混練した。その後、(F)成分として“イルガキュア”651(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製):0.8重量部、紫外線吸収剤として“チヌビン”327(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製):0.02重量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル:0.1重量部を添加して5分間混練し、感光性樹脂組成物を得た。
【0085】
このようにして得られた感光性樹脂組成物を、125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに予めポリエステル系接着剤を塗布した基板と、粘着防止層付きカバーフィルム−1との間に挟み、110℃に加熱したプレス機で感光性樹脂層の厚みが1.5mmになるようにプレスし、感光性フレキソ印刷版原版を得た。
【0086】
この感光性フレキソ印刷版原版を支持体側から、“TL”K40W/10R(フィリィップス(PHILIPS)社製、ケミカル灯)を6本設置した“FTW350LII”(富士写真フィルム(株)製、露光ユニット付き現像装置)により2分間裏露光した。その後、カバーフィルムを剥がし、感光性樹脂層上に、画像再現性評価用ネガフィルム(例えば、150線3%網点、直径200μm独立点、幅50μm細線を持つ)を真空密着させ、同じケミカル灯でネガフィルム側から10分間露光した。
【0087】
露光終了後、ブラシ長20mmのナイロン−6,10製ブラシ束を備えたブラシ台が設置さた“JemFlex”JOW−A2−WFD(日本電子精機(株)製、フレキソ用洗い出し機)で現像行った。現像液には60℃の水を用いた。現像6分間で670μmのレリーフ像が形成された。版表面を水道水でリンスした後、60℃に加熱した乾燥機で水分を除去した。その後、活性光線で後露光を行い、フレキソ印刷版を得た。得られたフレキソ印刷版の画像を評価した結果、150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線が再現されていた。この印刷版を使用してフレキソ印刷機で水性インキを用いた印刷試験を行ったところ、ハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
<実施例2>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”1043(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:29重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現しており、印刷試験ではハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。
【0090】
<実施例3>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN302(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:27.5重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現しており、印刷試験ではハイライト部からシャドー部までくっきり再現した、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの印刷物を得た。
【0091】
<比較例1>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN009(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:50重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現していた。印刷試験では網点部現像不良が見られた。フレキソ版の網点部(175線5%ハイライト)を光学顕微鏡で観察したところ、網点間に現像がなされていない部分が確認できた。
【0092】
<比較例2>
実施例1において、(C)成分として“Nipol”3350のかわりに“Nipol”DN101(日本ゼオン(株)製、結合アクリロニトリル量:42.5重量%の非カルボキシル化ニトリルゴム)を用いた以外は実施例1と全て同様に感光性フレキソ印刷版原版を作成し、実施例1と同様の評価を行った。150線の3%網点、150μm径独立点、40μm幅細線を再現していた。印刷試験では網点部現像不良が見られた。フレキソ版の網点部を光学顕微鏡で観察したところ、網点間に現像がなされていない部分が確認できた。
【0093】
<実施例4>
実施例1で得られた感光性フレキソ印刷版原版を、現像液として水の代わりに、粉末洗濯用石鹸(ニッサン石鹸(株)製)を1%含有する60℃の水を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。実施例1では水を用いることによって現像に6分要したが、界面活性剤含有水を用いることによって現像が5分で可能となった。この現像カス、石鹸成分および水からなる現像廃液に対して1重量%の無鉄硫酸バンド固形特号(JIS K1423に該当、住友化学工業(株)製)を添加し、40℃で2時間撹拌しながら処理したところ、白色の浮遊物と無色透明な水と分離できた。
【0094】
【発明の効果】
現像液中に界面活性剤やアルカリ金属塩などの添加剤を加えることなく水現像でき、画像再現性の良好な、特に微細な画像を形成することができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた感光性フレキソ印刷版原版およびフレキソ印刷版を提供できる。
Claims (3)
- (A)水分散性ラテックス、(B)エチレン性不飽和結合を有する親水性モノマー、(C)結合アクリロニトリル量が27重量%〜40重量%である非カルボキシル化ニトリルゴム、(D)カルボキシル化ニトリルゴム、(E)ブタジエンゴム、および(F)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 支持体上に請求項1に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層が形成されてなることを特徴とする感光性フレキソ印刷版原版。
- 請求項2に記載の感光性フレキソ印刷版原版を露光し、次いで現像してなることを特徴とするフレキソ印刷版。
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