JP2005090422A - 燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

【課題】 アーマチュアプレート等の部品の摩耗があっても弁体のリフト量を長期間に亘って一定に保持できるようにすること。
【解決手段】 ノズルニードル３２に与えられる背圧をオン、オフするための弁機構を電磁アクチュエータ５によって制御して燃料の噴射の開始、終了を制御するようにした燃料噴射弁１において、電磁アクチュエータ５のアーマチュアボルト５１を、経時変化により軸方向に伸長する材料とした。アーマチュアボルト５１の材料は、一定の残留オーステナイトのある材料、例えば、熱処理を施したＳＵＪ２等に準じる材料を用いることができる。この種の素材を用いてアーマチュアボルト５１を製作し、焼入れ後の焼戻し温度を管理することにより、常温での長期間放置によりアーマチュアボルト５１はその軸方向に伸びを生じ、部品の摩耗によるボール５２のリフト量の変化を補償することができる。
【選択図】 図２

Description

本発明は、内燃機関の気筒内に燃料を噴射供給するための電磁アクチュエータを用いた燃料噴射弁に関する。

コモンレールシステムにおける如く、内燃機関の気筒内へ燃料を直接噴射供給するための燃料噴射弁として、例えば特許文献１に開示されている型式の燃料噴射弁が公知である。この燃料噴射弁は、電磁アクチュエータを通電させることによって噴射弁本体内の制御室を燃料低圧部に連通させ、これによりバルブピストンの背圧を除去してノズルニードルをリフトさせて燃料噴射を開始させ、所定の時間経過後に電磁アクチュエータの通電を停止させて制御室と燃料低圧部との間の連通状態を解除し、バルブピストンに所定の背圧を作用させてノズルニードルを押し下げ、これにより燃料噴射を終了させるように構成されている。

上述の如き構成の燃料噴射弁に用いられている燃料噴射制御用の電磁アクチュエータにあっては、通電のオン、オフに応じて制御室と燃料低圧部との連通状態の制御のための弁体を駆動するアーマチュアプレートのリフト量が一定であることが必要である。これは、アーマチュアプレートのリフト量が変化すると、弁体のリフト量（ストローク量）も変化し、燃料噴射量の変化を生じさせ、内燃機関の性能が変化し、ひいては騒音の増加や排気エミッションの悪化等も生じさせることになるからである。
特開平７−３１０６２１号公報

しかしながら、電磁アクチュエータにより開閉される制御室内の高圧燃料の圧力は極めて高いため、制御室と燃料低圧部との間の連通状態を制御する場合にアーマチュアプレートとアーマチュアストッパとの間に生じる力は大きく、長期間の使用による両部品の摩耗によりアーマチュアプレートのリフト量が大きくなり、この結果、弁体のリフト量も大きくなって電磁アクチュエータが開弁するときに制御室から燃料低圧部へ燃料が逃げやすくなり、燃料噴射量が増大する傾向を生じる。このため、電磁アクチュエータの制御によって予定した燃料の噴射制御を実現することができなくなり、ひいては内燃機関の状態の変化を引き起こすことになる。

本発明の目的は、従来技術における上述の問題を解決することができるようにした、燃料噴射弁を提供することにある。

本発明は、アーマチュアプレートに一体または別体に設けられるアーマチュアボルト部材の素材と熱処理温度とを管理することによって、アーマチュアボルト部材を経年変化により伸長させ、これにより部品の摩耗によるアーマチュアプレートのリフト量の変化を補償するようにしたものである。

請求項１の発明によれば、ノズルニードルに与えられる背圧をオン、オフするための弁機構を電磁アクチュエータによって制御して燃料の噴射の開始、終了を制御するようにした燃料噴射弁において、前記電磁アクチュエータのアーマチュアボルト部材が、経時変化により軸方向に伸長する材料から成ることを特徴とする燃料噴射弁が提案される。

アーマチュアボルト部材の材料は、一定の残留オーステナイトのある材料、例えば、熱処理を施したＳＵＪ２等に準じる材料を用いることができる。この種の素材を用いてアーマチュアボルト部材を作成し、焼入れしたアーマチュアボルト部材の焼戻し温度の管理によって、常温での長期間放置によりアーマチュアボルト部材をその軸方向に伸びを生じさせるようにすることができる。これは、残留オーステナイトが徐々にマルテンサイトへ変化して膨張し、内部圧力が増大することにより軸方向への寸法の伸びが生じるからである。この軸方向への経年変形の大きさは熱処理温度（焼戻し温度）に依存する。したがって、電磁アクチュエータのアーマチュアプレートその他の部品が使用により摩耗して弁体のリフト量を変化させることになるが、この弁体のリフト量の変化を補償するような軸方向伸長変化が得られるように、アーマチュアボルト部材の熱処理温度（焼戻し温度）を選ぶことが望ましい。これにより、アーマチュアプレートその他の部品の摩耗に拘らず、弁体のリフト量を長期間に亘って一定に保持することが可能となる。

本発明によれば、アーマチュアプレートその他の部品の摩耗に拘らず、弁体のリフト量を長期間に亘って一定に保持することが可能となり、燃料噴射弁を長期間に亘って安定に動作させることができる。

以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。

図１は、本発明による燃料噴射弁の実施の形態の一例を示す断面図である。符号１で示されるのは、ディーゼル内燃機関に燃料を噴射供給するためのコモンレールシステムに用いられる燃料噴射弁である。燃料噴射弁１は、図示しないディーゼル内燃機関の気筒に組み付けられ、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料を気筒内に所要のタイミングで所要の量だけ直接噴射供給するためのものであり、ノズルホルダ２の先端に、ノズル３をリテイニングナット４によって固定して成り、ノズルホルダ２の後端に電磁アクチュエータ５が設けられている。

ノズルホルダ２はその軸方向に案内孔２１が形成されている中空体２２を有し、案内孔２１内にはプレッシャーピン２３が案内孔２１によって軸方向に運動可能なように配設されている。中空体２２のばね室２４には弾発ばね２５が収容されており、弾発ばね２５によって後述するノズルニードル３２が噴孔３５の方向に向けて弾発付勢されている。符号２６で示されるのは、図示しないコモンレールからの高圧燃料をノズル３に送給するための中空体２２内に設けられた通路である。

ノズル３はノズルボディー３１とノズルニードル３２とを有し、ノズルボディー３１内に同軸に形成された貫通孔３３によって、ノズルニードル３２がその軸方向に運動可能なように支持、案内されている。ノズルニードル３２の先端部３２Ａは、貫通孔３３と整列してノズルボディー３１内に設けられているシリンダ部３４内に延びており、ノズルニードル３２の先端は噴孔３５を開閉する弁体として働く構成となっている。

したがって、ノズルニードル３２が噴孔３５を閉じる位置に保持されている場合には、燃料噴射弁１からは燃料が噴射されない。一方、ノズルニードル３２が後退し、ノズルニードル３２が噴孔３５を開く位置に保持されている場合には、燃料噴射弁１から燃料が噴射される。

ノズルボディー３１内には、通路２６からの高圧燃料が通路３６を介して導入され該高圧燃料を留めておく油だまり３７が形成されている。一方、ノズルニードル３２には油だまり３７内の高圧燃料の圧力によってノズルニードル３２を噴孔３５から離反させる方向に力を作用させるためのテーパ部３８が形成されている。

中空体２２の後端部には、案内孔２１と同軸で中空体２２の軸方向に延びているドレーン室４１を下向きに形成しているヘッド４２が形成されている。ヘッド４２には、半径方向の供給伝導路４３及び軸方向のドレーン伝導路４４と連通している制御室４５が形成されている。供給伝導路４３は中空体２２内の半径方向伝導路４６経由で取入具４７と連通しており、制御室４５の底部はプレッシャーピン２３の上部表面で形成されている。

電磁アクチュエータ５のアーマチュアボルト５１には、制御室４５と燃料低圧部との間の連通状態を制御する弁機構を構成する弁体として働くボール５２が固定されている。アーマチュアボルト５１は、図示しないバルブスプリングの力によってドレーン伝導路４４に向けて弾発付勢されており、ボール５２がドレーン伝導路４４の開口端に押し付けられドレーン伝導路４４を塞ぐように構成されている。

したがって、電磁アクチュエータ５が通電されていない場合には、ボール５２によってドレーン伝導路４４の開口端が塞がれており、これにより制御室４５は高圧燃料により満たされているので、プレッシャーピン２３によってノズルニードル３２が噴孔３５を閉じており、燃料噴射は行われない。電磁アクチュエータ５が通電されると、ボール５２がドレーン伝導路４４の開口端から離れ、制御室４５内の高圧燃料が燃料低圧部に逃げ、制御室４５内の圧力が降下するので燃料噴射が行われる。電磁アクチュエータ５の通電が切られると、ノズルニードル３２が再び噴孔３５を閉じる位置に戻されるため燃料噴射が終了する。

図２には電磁アクチュエータ５の要部が断面して詳細に示されている。電磁アクチュエータ５は、ケーシング５３内に、電磁石５４と、アーマチュアプレート５５と、アーマチュアボルト５１とが図示の如く収容されて成っている。電磁石５４は磁極５４Ａにソレノイドコイル５４Ｂを設けた公知の構成のものであり、ソレノイドコイル５４Ｂに励磁電流を供給することによりアーマチュアプレート５５を電磁吸引することができる構成となっている。

アーマチュアボルト５１は電磁石５４と同軸上に整列して配設されており、ケーシング５３に固定されている支持・案内部材５７によってその軸方向に運動可能なように支持、案内されている。アーマチュアボルト５１の一端側においては、ドレーン伝導路４４を閉ぐためのボール５２がボールホルダ５６を用いて固定されている。ボール５２は弁体として働く部材であり、アーマチュアボルト５１への取り付けは他の適宜の手段によって行うこともできる。

アーマチュアボルト５１の他端側にはヘッド部が形成されている。このヘッド部は、アーマチュアボルト５１の他端部にプレート部材５１Ａを螺着、溶接、或いは嵌め込み等の適宜の手段でしっかりと取り付けることにより形成されている。なお、アーマチュアボルト５１の他端側にヘッド部を一体形成する構成でもよいことは勿論である。

磁極５４Ａの中心部には円筒状の空間５８が形成されており、空間５８内にはばね部材５９とストッパ部材６０とが設けられている。ばね部材５９は、ここでは弾発コイルばねとなっており、弁体であるボール５２を弁閉鎖方向にばね付勢させておくための手段として空間５８の肩部５８Ａとプレート部材５１Ａとの間に設けられている。

ストッパ部材６０は空間５８内に嵌め込まれた耐摩耗性の高い金属性のスリーブ状の部材である。ストッパ部材６０は、ボール５２がドレーン伝導路４４を塞ぐ図１の位置状態にあるときに、ストッパ部材６０の下端面６０Ａとプレート部材５１Ａの上端面５１Ａａとの間に所定長さの間隙が生じるように設けられ、これにより、ボール５２のストローク、すなわちアーマチュアボルト５１のストロークがこの所定長さに制限される構成となっている。すなわち、ストッパ部材６０は、ボール５２の最大ストロークを制限するため、プレート部材５１Ａに対向して配置されたストッパ部材となっている。

アーマチュアプレート５５は、プレート部材５１Ａとボール５２との間に位置するようアーマチュアボルト５１に通されており、アーマチュアプレート５５はアーマチュアボルト５１上で軸方向に運動可能となっている。そして、支持・案内部材５７に取り付けられた座金６１とアーマチュアプレート５５との間には弾発コイルばね６２が設けられている。弾発コイルばね６２のばね力はばね部材５９のばね力よりも小さく、アーマチュアプレート５５をプレート部材５１Ａの下端面５１Ａｂに対して圧接させておくために必要なばね力を有するものであり、ばね部材５９の作用を妨げることのない程度の小さなばね力のものである。

アーマチュアプレート５５が上述の如く運動するため、アーマチュアボルト５１を介してアーマチュアプレート５５に取り付けられているボール５２もアーマチュアプレート５５の運動に従って運動する。すなわち、ボール５２は、ドレーン伝導路４４を塞ぐ位置から、アーマチュアプレート５５がストッパ部材６０の下端面６０Ａに当接する位置（最大リフト位置）の間を運動する。したがって、アーマチュアプレート５５とストッパ部材６０との当接により摩耗が生じると、ボール５２の最大リフト位置が大きくなるように変化し、一般には燃料噴射量が増大する傾向となる。これは、最大リフト位置が大きくなることにより、弁機構の開閉のためのボール５２の移動距離が大きくなり、ソレノイドコイル５４Ｂへの通電のオン、オフに従って弁機構が完全に開閉するまでの応答時間が長くなるためである。

アーマチュアプレート５５及びストッパ部材６０の摩耗により生じる上述の不具合を改善するため、アーマチュアボルト５１は、常温での長期間放置により、その軸方向に伸長する材料から作られている。すなわち、アーマチュアボルト５１は鋼材を用いて作られているが、残留オーステナイトを有しており、所定の温度で焼入れ処理されている。

残留オーステナイトのある鋼材を焼入れ処理すると、焼入れ後、残留オーステナイトが徐々にマルランサイトへ変化して膨張し、アーマチュアボルト５１の内部圧力が増大することによりアーマチュアボルト５１の軸方向への寸法の伸びが生じる。この軸方向への経年変形の大きさは焼入れ後の焼戻し温度に依存している。したがって、電磁アクチュエータ５のアーマチュアプレート５５その他の部品が使用により摩耗して生じるボール５２のリフト量の変化を補償するような軸方向伸長変化が得られるように、アーマチュアボルト５１の焼戻し温度が選ばれており、これにより、アーマチュアプレートその他の部品の摩耗に拘らず、弁体のリフト量を長期間に亘って一定に保持できるようになっている。

上記実施の形態では、アーマチュアプレート５５とアーマチュアボルト５１とを別体とし、アーマチュアボルト５１の他端部にアーマチュアプレート５５をねじ止めする構成の場合について、そのアーマチュアボルト部材であるアーマチュアボルト５１についての焼入れ後の焼戻し温度を管理することにより、アーマチュアボルト５１を経時変化により軸方向に伸縮させるようにした場合を説明した。しかし、本発明は、アーマチュアプレート５５とアーマチュアボルト５１とを別体とし、アーマチュアボルト５１の他端部にアーマチュアプレート５５をねじ止めする構成の場合に限定されるものではなく、アーマチュアプレート５５とアーマチュアボルト５１とが一体に構成されている場合、そのアーマチュアボルト部材についての焼入れ後の焼戻し温度を管理することにより、当該アーマチュアボルト部材を経時変化により軸方向に伸縮させられるようにする構成であってもよい。

本発明による燃料噴射弁の実施の形態の一例を示す断面図。 図１に示した電磁アクチュエータの断面図。

符号の説明

１ 燃料噴射弁
２ ノズルホルダ
３ ノズル
５ 電磁アクチュエータ
６ マグネットユニット
５１ アーマチュアボルト
５２ ボール
５５ アーマチュアプレート
６０ ストッパ部材

Claims (1)

1. ノズルニードルに与えられる背圧をオン、オフするための弁機構を電磁アクチュエータによって制御して燃料の噴射の開始、終了を制御するようにした燃料噴射弁において、前記電磁アクチュエータのアーマチュアボルト部材が、経時変化により軸方向に伸長する材料から成ることを特徴とする燃料噴射弁。

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