JP2004528330A - アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するためのPPARα〜γリガンドまたはアゴニストの使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法を包含する。この方法は、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。本発明はまた、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法を包含する。この方法は、斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。
Description
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核受容体スーパー遺伝子ファミリーに属する転写因子である。α、δおよびγと名付けられた3つの異なるPPARが報告されている。そのそれぞれは別個の遺伝子によってコードされている。様々なPPARが、異なる組織分布パターンおよび代謝機能によって特徴づけられている。
【0003】
アテローム性動脈硬化斑は、動脈を流れる血液の流れを物理的に遮断し得る。しかし、アテローム性動脈硬化斑が病的状態および死亡を生じさせる主要機構には、血流の突然かつ劇的な低下を伴う動脈内における閉塞性凝塊の形成がかかわっている。凝塊は、アテローム性動脈硬化斑の血栓形成性内部が流れている血液に露出したときに生じる。これは、斑の破裂時に生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚い繊維性キャップを有する斑は、物理的に強く、破裂に対して抵抗性があり、そして健康に対する危険性が低いことが理解されている。対照的に、薄い繊維性キャップまたは不完全な繊維性キャップを有する斑(傷つきやすい斑)は破裂しやすく、健康に対する危険性が大きい。破裂に対して斑の安定性を高めることが本発明の1つの目的である。
【0005】
アテローム性動脈硬化斑の繊維性キャップは、コラーゲンおよびエラスチンなどの細胞外マトリックスタンパク質から構成される。これらのタンパク質は、斑内部の刺激されたマクロファージにより分泌されるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)などのプロテアーゼによって分解される。最近の研究により、PPARγアゴニストが培養マクロファージにおいてMMP−9の発現を減少させることが示されている(Nature、391:79、1998;Am.J.Pathol.、153:17、1998)。MMP−9の発現を抑制する改善された手段を提供することが本発明の1つの目的である。本発明者らは、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストの組合せが、いずれかの薬剤の個々よりも大きいMMP−9発現抑制をもたらすことを見出している。PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与するか、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与するか、またはPPARα剤をPPARγ剤と併せて投与することによって、MMP−9の発現を低下させ、かつ斑の安定性を増大させることが本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法を包含する。この方法は、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。本発明はまた、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大化を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法を包含する。この方法は、斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいはPPARαと選択的に結合する化合物を、PPARγと選択的に結合する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。
【0008】
PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、すなわち、「二重リガンド」は、下記に記載されるヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、50%最大力価濃度(IC50またはKI)の違いが30倍未満であるそのような化合物として定義される。この定義に含まれない、PPARαおよび/またはPPARγに結合する他の化合物はすべて、本明細書のために、PPARαまたはPPARγのいずれかと選択的に結合する化合物であると見なされる。
【0009】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与することを包含する。
【0010】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、20倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有するそのような方法を包含する。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、10倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、5倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、2倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。
【0011】
本発明の別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が経口投与により活性であるそのような方法を包含する。本明細書のために、経口投与により活性である化合物により、その化合物の経口摂取後に治療応答をもたらす化合物が意味される。
【0012】
本発明の別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が長い作用持続期間を有するそのような方法を包含する。本明細書のために、長い作用持続期間を有する化合物により、約1時間に等しいか、または約1時間を超える半減期を有する化合物が意味される。
【0013】
アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために使用され得る本発明の化合物は、PPAR作動作用に関して、またはPPAR受容体に結合し、それにより、優れたPPARリガンドである他の化合物を部分的に置換することに関して定義されるPPARα活性およびPPARγ活性の両方を有する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合してPPARαを活性化する化合物を、PPARγと選択的に結合してPPARγを活性化する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。
【0015】
PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物、すなわち、「二重PPARα/PPARγアゴニスト」は、著しいPPARα作動作用およびPPARγ作動作用の両方、ならびに下記に記載される細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、30倍未満の違いを有する50%最大力価濃度(EC50)を示すそのような化合物として定義される。著しいPPARα作動作用およびPPARγ作動作用の両方を示す化合物は、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、(ヒトPPARγについて)ロシグリタゾンの最大作用の≧50%と、(ヒトPPARαについて)フェノフィブラートの最大作用の≧50%とを両方の受容体に対して示すそのような化合物である。本明細書のために「二重PPARα/PPARγアゴニスト」と見なされるのは、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、30倍未満の違いを有する50%最大力価濃度(EC50)をも示すこれらの化合物である。
【0016】
ヒトPPARγについてロシグリタゾンの最大作用の≧50%を示すが、上記に記載される30倍の活性化差に含まれない化合物は、PPARγと選択的に結合して、PPARγを活性化する化合物であると見なされる。ロシグリタゾンはそのような化合物の一例である。同様に、ヒトPPARαについてフェノフィブラートの最大作用の≧50%を示すが、上記に記載される30倍の活性化差に含まれない化合物は、PPARαと選択的に結合して、PPARαを活性化する化合物であると見なされる。フェノフィブラートそのような化合物の一例である。
【0017】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与することを包含する。
【0018】
本発明のこの実施態様には、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、20倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、10倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、5倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、2倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。
【0019】
本発明のこの実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物が経口投与により活性である上記方法が包含される。本発明のこの実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が長い作用持続期間を有する上記方法が包含される。
【0020】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法であって、斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合する化合物を、PPARγと選択的に結合する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与することを含む上記方法である。
【0021】
本発明の別の実施態様は、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合してPPARαを活性化する化合物を、PPARγと選択的に結合してPPARγを活性化する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法である。この実施態様には、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を投与することを含む方法が包含される。
【0022】
本明細書のために、「併せて投与する」により、1つの化合物を、それについて一般に使用されている経路によって、そしてそれについて一般に使用されている量で、別の化合物と同時または連続的に投与することが意味される。化合物が、併せて投与されるとして示されるとき、2つの薬物を含有する単位投薬形態にある医薬組成物が好ましい。
【0023】
本明細書のために、「PPARα剤」は、上記に定義されたように、PPARαと選択的に結合するか、またはPPARαと結合して、PPARαを活性化する化合物を意味する。「PPARγ剤」は、PPARγと選択的に結合するか、またはPPARγと結合して、PPARγを活性化する化合物を意味する。
【0024】
PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物の例、ならびに選択的なPPARα剤および選択的なPPARγ剤の例が、下記の特許および公開された出願明細書において見出される:国際特許出願公開WO97/28115(1997年8月7日公開);同WO00/78312(2000年12月28日公開);同WO00/78313(2000年12月28日公開);米国特許第5,847,008号(1998年12月8日特許付与);米国特許第5,859,051号(1999年1月12日特許付与);米国特許第6,008,237号(1999年12月28日特許付与);米国特許第6,090,836号(2000年7月18日特許付与);米国特許第6,090,839号(2000年7月18日特許付与);米国特許第6,160,000号(2000年12月12日特許付与);および米国特許第6,200,998号(2001年3月13日特許付与)。これらはすべて、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【0025】
有用性
本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために、そしてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるために有用である。急性冠状動脈症候群の突然かつ予測できない発症の原因となる最も重要な機構は、血栓症を伴う環状動脈斑の破裂である。斑破裂の危険性は、斑のサイズではなく、斑の組成に依存する。
【0026】
病理解剖学的研究により、コラーゲンの分解が、破裂に対する斑の易損性を決定する主要な因子の1つとして同定されている。マクロファージはアテローム性動脈硬化の多くの局面に影響を及ぼしている。マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)を分泌することによって、マクロファージは斑の易損性に対して直接的な影響を及ぼしている。マクロファージ由来MMP−9は斑内のマトリックス分解を増大させ、それにより斑を破裂しやすくしている。MMP−9の産生は、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストを一緒に投薬するか、またはPPARα/γ剤を投薬することによって阻害することができる。
【0027】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物、あるいは選択的なPPARα剤と選択的なPPARγ剤との組合せを、有効成分またはその医薬適合性の塩として含み、そしてまた、医薬適合性のキャリアおよび必要な場合には他の治療成分をも含有することができる。用語「医薬適合性の塩」は、無機の塩基もしくは酸または有機の塩基もしくは酸を含む医薬適合性の非毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。
【0028】
用語「組成物」は、医薬組成物の場合のように、有効成分(1つまたは複数)と、キャリアを構成する不活性な成分(1つまたは複数)とを含む製造物、ならびに、これらの成分のいずれか2つ以上の組合せまたは複合体化または集成化から、あるいはこれらの成分の1つまたは複数を分離することから、あるいはこれらの成分の1つまたは複数の、他の様々なタイプの反応または相互作用から、直接的または間接的にもたらされる任意の製造物を包含することが意図される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および医薬適合性のキャリアを混合することによって作製されるいずれの組成物も包含する。
【0029】
本発明の組成物には、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下投与、筋肉内投与および静脈内投与を含む)、眼(目)投与、肺投与(鼻吸入または口内吸入)または鼻投与に好適な組成物が含まれるが、任意の特定の場合における最も好適な経路は、処置されている状態の性質および重篤度に、そして有効成分の性質に依存する。この組成物は、好都合には単位投薬形態物で提供することができ、そして薬学の分野で広く知られている方法のいずれかによって調製することができる。
【0030】
実際の使用では、本発明の化合物は、従来の医薬配合技術に従って、医薬キャリアと十分に混合された有効成分として組み合わせることができる。キャリアは、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む))のために所望される、調製形態に依存する広範囲の様々な形態を取ることができる。経口投薬形態用の組成物を調製する際には、通常の医薬媒体のいずれかを用いることができる。例えば、経口用の液体調製物(例えば、懸濁物、エリキシル剤および溶液剤など)の場合には、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤などを用いることができる;あるいは、経口用の固体調製物(例えば、粉末剤、ハードカプセルおよびソフトカプセルならびに錠剤など)の場合には、キャリア(デンプン、糖、微結晶セルロースなど)、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などを用いることができる。固体の経口用調製物の方が液体の調製物よりも好ましい。
【0031】
その投与が容易であるために、錠剤およびカプセルが最も好都合な経口投薬単位形態であり、そのような場合、明らかではあるが、固体の医薬キャリアが用いられる。所望する場合には、錠剤を標準的な水性技術または非水性技術によってコーティングすることができる。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1パーセントの活性な化合物を含有しなければならない。これらの組成物における活性な化合物の割合は、当然のことではあるが、変化させることができ、好都合には、単位物の約2重量パーセントから約60重量パーセントの間にすることができる。そのような治療的に有用な組成物における活性な化合物の量は、効果的な投薬量が得られるような量である。活性な化合物はまた、例えば、液体の滴剤またはスプレーとして鼻腔内に投与することができる。
【0032】
錠剤、ピル、カプセルなどはまた、トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;および、スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤を含有することができる。投薬単位形態がカプセルである場合、カプセルは、上記タイプの物質に加えて、脂肪油などの液体キャリアを含有することができる。
【0033】
様々な他の物質を、コーティング剤として、または投薬単位物の物理的形態を修飾するために存在させることができる。例えば、錠剤をシェラックまたは糖またはその両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、そしてチェリー香料またはオレンジ香料などの矯味矯臭剤を含有することができる。
【0034】
本発明の組成物はまた非経口投与することができる。本発明の活性な化合物の溶液または懸濁物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水において調製することができる。分散物はまた、グリセロール、液体のポリエチレングリコール、およびオイルにおけるそれらの混合物において調製することができる。通常の貯蔵条件および使用条件のもとでは、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。
【0035】
注射使用のために好適な医薬形態物には、無菌の水溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物をその場で調製するための無菌の粉末剤が含まれる。すべての場合において、医薬形態物は無菌でなければならず、そして容易にシリンジを通過することができる程度に流動性でなければならない。医薬形態物は、製造および貯蔵の条件のもとで安定でなければならず、そして細菌および菌類などの微生物の混入作用から防止されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコール)を含有する溶媒または分散媒体、それらの好適な混合物、および植物油であり得る。
【0036】
塩
用語「医薬適合性の塩」は、無機の塩基もしくは酸または有機の塩基もしくは酸を含む医薬適合性の非毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。無機塩基に由来する塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。固体形態の塩は、2つ以上の結晶構造で存在してもよく、そしてまた水和物の形態であってもよい。医薬適合性の有機非毒性塩基に由来する塩には、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)の塩、環状アミンの塩、塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミンなどの塩が含まれる。
【0037】
本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機酸および有機酸を含む医薬適合性の非毒性の酸から調製することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸およびp−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましい酸は、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化するすることができる化合物に対する参照はまた、その医薬適合性の塩を含むことを意味することを理解しなければならない。同様に、選択的なPPARα剤または選択的なPPARγ剤である化合物に対する参照は、その医薬適合性の塩を含むことを意味する。
【0039】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含有してもよく、従って、ラセミ体およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物ならびに個々のジアステレオマーとして存在し得る。本発明は、そのような異性体形態のすべてを含むことが意図される。
【0040】
本発明によって包含される化合物は、オレフィン性二重結合を含有してもよく、従って、別途示されない限り、E型およびZ型の両方の幾何異性体を含むことが意図される。
【0041】
本発明によって包含される化合物は、水素の結合点が異なって存在してもよく、これらは互変異性体と呼ばれる。そのような例として、ケト−エノール互変異性体として知られているケトンおよびそのエノール形態を挙げることができる。個々の互変異性体ならびにその混合物は、式IIおよび式IIaの化合物とともに包含される。
【0042】
本発明によって包含される化合物は、例えば、好適な溶媒(例えば、メタノールまたは酢酸エチルまたはその混合物)から分別結晶することによってエナンチオマーのジアステレオマー対に分割することができる。そのようにして得られたエナンチオマー対は、従来の手段によって、例えば、光学活性な酸を分割剤として使用することによって、個々の立体異性体に分割することができる。
【0043】
あるいは、本発明の化合物の任意のエナンチオマーは、立体配置が知られている光学的に純粋な出発物質または試薬を使用して立体特異的な合成によって得ることができる。
【0044】
投与および用量範囲
任意の好適な投与経路を、アテローム性動脈硬化斑を防止するための、本発明の化合物の効果的な投薬量を哺乳動物(特にヒト)に与えるために用いることができる。例えば、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与、眼投与、肺投与および鼻投与などを用いることができる。投薬形態物には、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁物、溶液剤、カプセル、クリーム、軟膏およびエアロゾルなどが含まれる。好ましくは、本発明の化合物は経口投与される。
【0045】
用いられる有効成分の効果的な投薬量は、用いられた特定の化合物、投与様式、処置されている状態、および処置されている状態の重篤度に依存して変化させることができる。そのような投薬量は当業者によって容易に確認することができる。
【0046】
アテローム性動脈硬化斑を防止するとき、一般に満足すべき結果が、本発明の化合物を動物体重1キログラムあたり約0.1ミリグラムから約100ミリグラムの1日投薬量で投与するときに得られ、この場合、1日投薬量は、好ましくは、単回1日用量として、または1日に2回から6回の分割された用量で、または持続放出形態で与えられる。ほとんどの大型哺乳動物の場合、1日の総投薬量は約1.0ミリグラムから約1000ミリグラムであり、好ましくは約1ミリグラムから約50ミリグラムである。70kgの成人の場合、1日の総用量は、一般には約7ミリグラムから約350ミリグラムである。この投薬法は、最適な治療応答を得るために調節することができる。
【0047】
好ましい投薬量範囲は1mg/日未満から100mg/日を超えるが、適切な用量が、心筋梗塞またはTIAの危険性を有する患者に投与される。
【0048】
生物学的アッセイ
標準化された細胞系のGAL4キメラ受容体トランス活性化アッセイ(細胞系のトランス活性化アッセイ)
下記のアッセイはまた、Berger J.Leibowitz MD、Doebber TW、Elbrecht A、Zhang B、Zhou G、Biswas C、Cullinan CA、Hayes NS、Li Y、Tanen M、Ventre J、Wu MS、Berger GD、Mosley R、Marquis R、Santini C、Sahoo SP、Tolman RL、Smith RG、Moller DE、「新規なペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)およびPPARδのリガンドは異なる生物学的作用をもたらす」、1999、J.Biol.Chem.、274:6718〜6725に記載される(これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0049】
発現構築物が、ヒトPPARγまたはヒトPPARαのリガンド結合ドメインをコードするcDNA配列を哺乳動物発現ベクターpcDNA3内の酵母GAL4転写因子のDNA結合ドメインの近傍に挿入して、pcDNA3−hPPARγ/GAL4およびpcDNA3−hPPARα/GAL4をそれぞれ作製することによって調製される。GAL4応答性レポーター構築物のpUAS(5X)−tk−lucは、チミジンキナーゼの最小プロモーターの近傍に配置された5コピーのGAL4応答エレメントと、ルシフェラーゼのレポーター遺伝子とを含有する。トランスフェクションのコントロールベクターpCMV−lacZは、ガラクトシダーゼZ遺伝子をサイトメガロウイルスプロモーターの制御下に含有する。COS−1細胞を、10%活性炭ストリップ処理ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、100ユニット/mlのペニシリンGおよび100μg/mlの硫酸ストレプマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース)に、96ウエルプレートにおいて1.2X104細胞/ウエルで、10%CO2の加湿雰囲気中、37℃で播種する。24時間後、トランスフェクションを、製造者の説明書に従ってリポフェクタミン(Gibco−BRL、Gaithersburg、MD)を用いて行う。トランスフェクション混合物は、0.00075μgのPPARγ/GAL4発現ベクターまたはPPARα/GAL4発現ベクター、0.045μgのレポーターベクターpUAS(5X)−tk−luc、およびトランスフェクション効率の内部コントロールとしての0.0002μgのpCMV−lacZを含有する。化合物は、トランスフェクションされた細胞と0.1nMから50uMまでの8濃度から12濃度の範囲にわたって48時間インキュベーションすることによって特徴づけられる。細胞溶解物を、洗浄細胞から、製造者の説明書に従ってレポーター溶解緩衝液(Promega)を使用して調製する。細胞抽出物におけるルシフェラーゼ活性を、ML3000ルミノメーター(Dynatech Laboratories)において、ルシフェラーゼアッセイ緩衝液(Promega)を使用して測定する。β−ガラクトシダーゼ活性を、HollonsおよびYoshimura(Anal.Biochem.、182、411〜418、1989)により記載されるようにβ−D−ガラクトピラノシド(Calbiochem−Novabiochem、LaJolla、CA)を使用して測定する。ロシグリタゾンをヒトPPARγ活性に対する標準品として使用することができる。hPPARγ/GAL4アッセイにおけるロシグリタゾンに対するEC50値は、通常、20nMから40nMの範囲である。フェノフィブラートをPPARα活性に対する標準品として使用することができる。hPPARα/GAL4アッセイにおけるフェノフィブラートに対するEC50値は、通常、5uMから20nMの範囲である。同様に、全長のPPARγまたはPPARαを関連するレポーター遺伝子と一緒にいくつかの哺乳動物(または酵母)細胞タイプの1つに同時トランスフェクションすることを伴う方法を、PPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性の両方を有する化合物を同定するための代わりの方法として用いることができる。
【0050】
無細胞系の活性化補助因子会合アッセイ
このアッセイでは、PPARγ(もしくはその単離されたリガンド結合ドメイン)またはPPARα(もしくはその単離されたリガンド結合ドメイン)と、Creb結合タンパク質(CBP)またはステロイド受容体活性化補助因子(SRC−1)などの活性化補助因子分子である(もしくはそのような分子に由来する)タンパク質(もしくはタンパク質の一部分)との会合を促進する化合物の能力が測定され、そしてこのアッセイを使用して、PPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性の両方を有する化合物を同定することができる。このアッセイは、Zhou G、Cummings R、Li Y、Mitra S、Wilkinson H、Elbrecht A、Hermes JD、Schaeffer JM、Smith RG、Moller DE、「核受容体は活性化補助因子に対して異なる親和性を有する:蛍光共鳴エネルギー転移による特徴づけ」、Mol.Endocrinol.、1998、12:1594〜1604に記載される(これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0051】
ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγアッセイ
細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイにおいて化合物のアゴニスト活性を測定する別の方法は、化合物が、PPARγおよびPPARαの両方に結合することによってリガンドとして機能し得ることを明らかにすることである。hPPARαに対して、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、50%最大力価濃度(IC50またはKI)の違いが30倍未満(好ましくは10倍未満)である化合物は、二重リガンドであると見なすことができる。これらのアッセイのために、下記に記載される方法を用いることができる(これらはまた、Berger J.Leibowitz MD、Doebber TW、Elbrecht A、Zhang B、Zhou G、Biswas C、Cullinan CA、Hayes NS、Li Y、Tanen M、Ventre J、Wu MS、Berger GD、Mosley R、Marquis R、Santini C、Sahoo SP、Tolman RL、Smith RG、Moller DE、「新規なペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)およびPPARδのリガンドは異なる生物学的作用をもたらす」、1999、J.Biol.Chem.、274:6718〜6725に記載される:これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0052】
ヒトPPARγ2およびヒトPPARαをGST融合タンパク質として大腸菌において
発現させた。PPARγ2に対する全長のヒトcDNAをpGEX−2T発現ベクター(Pharmacia)にサブクローン化した。PPARαに対する全長のヒトcDNAをpGEX−KT発現ベクター(Pharmacia)にサブクローン化した。それぞれのプラスミドを含有する大腸菌を増殖させ、誘導し、そして遠心分離によって集めた。再懸濁されたペレットをフレンチプレスで破砕し、細胞片を12,000Xgでの遠心分離によって除いた。組換えヒトPPAR受容体をグルタチオンセファロースでのアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。カラムに加え、1回洗浄した後、受容体を、グルタチオンを用いて溶出した。グリセロール(10%)を受容体の安定化のために加え、そして小分け物を−80℃で保存した。
【0053】
それぞれのアッセイについて、受容体の一部を、0.1%の脱脂乾燥乳および10nMの[3H2]L−746,962(21Ci/mmol)を含有するTEGM(10mMのTris(pH7.2)、1mMのEDTA、10%のグリセロール、7μL/100mlのβ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸Na、1mMのジチオスレイトール、5μg/mLのアプロチニン、2μg/mLのロイペプチン、2μg/mLのベンズアミジン、および0.5mMのPMSF)において、±試験化合物のもとでインキュベーションした。アッセイ物を150μLの最終容量において4℃で約16時間インキュベーションした。結合していないリガンドを、100μLのデキストラン/ゼラチンコーティング活性炭とともに氷上で10分間インキュベーションすることによって除いた。4℃で3000rpmでの10分間の遠心分離を行った後、50μLの上清画分をTopcountで計数した。このアッセイにおいて、L−746,962に対するKDは約1nMである。
【0054】
ヒトPPARα結合アッセイについては、受容体の一部を、0.1%の脱脂乾燥乳および5.0nMの[3H2]L−783483を含有するTEGM(10mMのTris(pH7.2)、1mMのEDTA、10%のグリセロール、7μL/100mlのβ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸Na、1mMのジチオスレイトール、5μg/mLのアプロチニン、2μg/mLのロイペプチン、2μg/mLのベンズアミド、および0.5mMのPMSF)において、±試験化合物のもとでインキュベーションした。アッセイ物を150μLの最終容量において4℃で約16時間インキュベーションした。結合していないリガンドを、100μLのデキストラン/ゼラチンコーティング活性炭とともに氷上で約10分間インキュベーションすることによって除いた。4℃で3000rpmでの10分間の遠心分離を行った後、50μLの上清画分をTopcountで計数した。
【0055】
細胞増殖アッセイ
このアッセイでは、AQueous細胞増殖アッセイキット(Promega、Madison、WI)を使用して、MTSテトラゾリウムをホルマザンに変換する細胞の能力が測定される。この変換は、代謝活性な細胞におけるデヒドロゲナーゼ酵素により産生されるNADPHまたはNADHによっておそらくは達成される。このアッセイは、Shuら、Biochemical and Biophysical Research Communications、第267巻、345頁〜349頁(2000)に記載される。
【0056】
MMP−9のELISA
このアッセイは、リポ多糖(LPS)の刺激に応答して培養ヒト単球性THP−1から分泌されるMMP−9の量を測定するために使用される。このアッセイは、Shuら、Biochemical and Biophysical Research Communications、第267巻、345頁〜349頁(2000)に記載される。培養されたTHP−1細胞を、37℃で2時間、PPARαアゴニストおよび/またはPPARγアゴニストで処理した。その後、細胞を細菌LPS(1ng/ml)で刺激した。37℃で48時間インキュベーションした後、培養上清を回収した。培地中に分泌されたMMP−9を、MMP−9に対して特異的な抗体を使用するELISAにより測定した。
【0057】
PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストを一緒に投薬するか、または二重PPARα/γ剤を投薬することにより、PPARα剤またはPPARγ剤のいずれかの単独と比較した場合、MMP−9分泌における予想外に優れた低下がもたらされる。
【0058】
本発明が、そのいくつかの特定の実施態様を参照して記載および例示されているが、当業者は、手法およびプロトコルの様々な適合化、変化、改変、置換、欠失または付加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する。例えば、本明細書中上記に示されるような特定の投薬量とは異なる効果的な投薬量が、上記に示された本発明の化合物を用いて適用症のいずれかについて処置されている哺乳動物の応答性における変化の結果として適用され得ることがある。同様に、観測される特定の薬理学的応答は、選択された特定の化合物、または医薬キャリアが存在するかどうか、ならびに用いられた配合物タイプおよび投与様式に従って、そしてそれらに依存して変化し得る。従って、結果におけるそのような予期される様々な変化または相違が、本発明の目的および実施に従って予想される。従って、本発明は下記の請求項の範囲によって規定されること、そしてそのような請求項は、合理的であるほどに広く解釈されることが意図される。
【0001】
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核受容体スーパー遺伝子ファミリーに属する転写因子である。α、δおよびγと名付けられた3つの異なるPPARが報告されている。そのそれぞれは別個の遺伝子によってコードされている。様々なPPARが、異なる組織分布パターンおよび代謝機能によって特徴づけられている。
【0003】
アテローム性動脈硬化斑は、動脈を流れる血液の流れを物理的に遮断し得る。しかし、アテローム性動脈硬化斑が病的状態および死亡を生じさせる主要機構には、血流の突然かつ劇的な低下を伴う動脈内における閉塞性凝塊の形成がかかわっている。凝塊は、アテローム性動脈硬化斑の血栓形成性内部が流れている血液に露出したときに生じる。これは、斑の破裂時に生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚い繊維性キャップを有する斑は、物理的に強く、破裂に対して抵抗性があり、そして健康に対する危険性が低いことが理解されている。対照的に、薄い繊維性キャップまたは不完全な繊維性キャップを有する斑(傷つきやすい斑)は破裂しやすく、健康に対する危険性が大きい。破裂に対して斑の安定性を高めることが本発明の1つの目的である。
【0005】
アテローム性動脈硬化斑の繊維性キャップは、コラーゲンおよびエラスチンなどの細胞外マトリックスタンパク質から構成される。これらのタンパク質は、斑内部の刺激されたマクロファージにより分泌されるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)などのプロテアーゼによって分解される。最近の研究により、PPARγアゴニストが培養マクロファージにおいてMMP−9の発現を減少させることが示されている(Nature、391:79、1998;Am.J.Pathol.、153:17、1998)。MMP−9の発現を抑制する改善された手段を提供することが本発明の1つの目的である。本発明者らは、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストの組合せが、いずれかの薬剤の個々よりも大きいMMP−9発現抑制をもたらすことを見出している。PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与するか、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与するか、またはPPARα剤をPPARγ剤と併せて投与することによって、MMP−9の発現を低下させ、かつ斑の安定性を増大させることが本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法を包含する。この方法は、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。本発明はまた、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大化を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法を包含する。この方法は、斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいは選択的なPPARα剤を選択的なPPARγ剤と併せて、前記患者に投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与するか、あるいはPPARαと選択的に結合する化合物を、PPARγと選択的に結合する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。
【0008】
PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、すなわち、「二重リガンド」は、下記に記載されるヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、50%最大力価濃度(IC50またはKI)の違いが30倍未満であるそのような化合物として定義される。この定義に含まれない、PPARαおよび/またはPPARγに結合する他の化合物はすべて、本明細書のために、PPARαまたはPPARγのいずれかと選択的に結合する化合物であると見なされる。
【0009】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与することを包含する。
【0010】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、20倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有するそのような方法を包含する。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、10倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、5倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、2倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する方法である。
【0011】
本発明の別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が経口投与により活性であるそのような方法を包含する。本明細書のために、経口投与により活性である化合物により、その化合物の経口摂取後に治療応答をもたらす化合物が意味される。
【0012】
本発明の別の実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が長い作用持続期間を有するそのような方法を包含する。本明細書のために、長い作用持続期間を有する化合物により、約1時間に等しいか、または約1時間を超える半減期を有する化合物が意味される。
【0013】
アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために使用され得る本発明の化合物は、PPAR作動作用に関して、またはPPAR受容体に結合し、それにより、優れたPPARリガンドである他の化合物を部分的に置換することに関して定義されるPPARα活性およびPPARγ活性の両方を有する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合してPPARαを活性化する化合物を、PPARγと選択的に結合してPPARγを活性化する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。
【0015】
PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物、すなわち、「二重PPARα/PPARγアゴニスト」は、著しいPPARα作動作用およびPPARγ作動作用の両方、ならびに下記に記載される細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、30倍未満の違いを有する50%最大力価濃度(EC50)を示すそのような化合物として定義される。著しいPPARα作動作用およびPPARγ作動作用の両方を示す化合物は、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、(ヒトPPARγについて)ロシグリタゾンの最大作用の≧50%と、(ヒトPPARαについて)フェノフィブラートの最大作用の≧50%とを両方の受容体に対して示すそのような化合物である。本明細書のために「二重PPARα/PPARγアゴニスト」と見なされるのは、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、30倍未満の違いを有する50%最大力価濃度(EC50)をも示すこれらの化合物である。
【0016】
ヒトPPARγについてロシグリタゾンの最大作用の≧50%を示すが、上記に記載される30倍の活性化差に含まれない化合物は、PPARγと選択的に結合して、PPARγを活性化する化合物であると見なされる。ロシグリタゾンはそのような化合物の一例である。同様に、ヒトPPARαについてフェノフィブラートの最大作用の≧50%を示すが、上記に記載される30倍の活性化差に含まれない化合物は、PPARαと選択的に結合して、PPARαを活性化する化合物であると見なされる。フェノフィブラートそのような化合物の一例である。
【0017】
本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与することを包含する。
【0018】
本発明のこの実施態様には、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、20倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、10倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、5倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。この実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、hPPARγの活性化について、hPPARαに対して、2倍未満の違いを示す50%最大力価濃度(EC50)を有する上記方法が包含される。
【0019】
本発明のこの実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物が経口投与により活性である上記方法が包含される。本発明のこの実施態様にはまた、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が長い作用持続期間を有する上記方法が包含される。
【0020】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法であって、斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合する化合物を、PPARγと選択的に結合する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法を包含する。本発明の1つの実施態様は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を前記患者に投与することを含む上記方法である。
【0021】
本発明の別の実施態様は、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法であって、アテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を前記患者に投与するか、またはPPARαと選択的に結合してPPARαを活性化する化合物を、PPARγと選択的に結合してPPARγを活性化する化合物と併せて、前記患者に投与することを含む方法である。この実施態様には、PPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物を投与することを含む方法が包含される。
【0022】
本明細書のために、「併せて投与する」により、1つの化合物を、それについて一般に使用されている経路によって、そしてそれについて一般に使用されている量で、別の化合物と同時または連続的に投与することが意味される。化合物が、併せて投与されるとして示されるとき、2つの薬物を含有する単位投薬形態にある医薬組成物が好ましい。
【0023】
本明細書のために、「PPARα剤」は、上記に定義されたように、PPARαと選択的に結合するか、またはPPARαと結合して、PPARαを活性化する化合物を意味する。「PPARγ剤」は、PPARγと選択的に結合するか、またはPPARγと結合して、PPARγを活性化する化合物を意味する。
【0024】
PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合して、それらを活性化することができる化合物の例、ならびに選択的なPPARα剤および選択的なPPARγ剤の例が、下記の特許および公開された出願明細書において見出される:国際特許出願公開WO97/28115(1997年8月7日公開);同WO00/78312(2000年12月28日公開);同WO00/78313(2000年12月28日公開);米国特許第5,847,008号(1998年12月8日特許付与);米国特許第5,859,051号(1999年1月12日特許付与);米国特許第6,008,237号(1999年12月28日特許付与);米国特許第6,090,836号(2000年7月18日特許付与);米国特許第6,090,839号(2000年7月18日特許付与);米国特許第6,160,000号(2000年12月12日特許付与);および米国特許第6,200,998号(2001年3月13日特許付与)。これらはすべて、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【0025】
有用性
本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために、そしてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるために有用である。急性冠状動脈症候群の突然かつ予測できない発症の原因となる最も重要な機構は、血栓症を伴う環状動脈斑の破裂である。斑破裂の危険性は、斑のサイズではなく、斑の組成に依存する。
【0026】
病理解剖学的研究により、コラーゲンの分解が、破裂に対する斑の易損性を決定する主要な因子の1つとして同定されている。マクロファージはアテローム性動脈硬化の多くの局面に影響を及ぼしている。マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)を分泌することによって、マクロファージは斑の易損性に対して直接的な影響を及ぼしている。マクロファージ由来MMP−9は斑内のマトリックス分解を増大させ、それにより斑を破裂しやすくしている。MMP−9の産生は、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストを一緒に投薬するか、またはPPARα/γ剤を投薬することによって阻害することができる。
【0027】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物、あるいは選択的なPPARα剤と選択的なPPARγ剤との組合せを、有効成分またはその医薬適合性の塩として含み、そしてまた、医薬適合性のキャリアおよび必要な場合には他の治療成分をも含有することができる。用語「医薬適合性の塩」は、無機の塩基もしくは酸または有機の塩基もしくは酸を含む医薬適合性の非毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。
【0028】
用語「組成物」は、医薬組成物の場合のように、有効成分(1つまたは複数)と、キャリアを構成する不活性な成分(1つまたは複数)とを含む製造物、ならびに、これらの成分のいずれか2つ以上の組合せまたは複合体化または集成化から、あるいはこれらの成分の1つまたは複数を分離することから、あるいはこれらの成分の1つまたは複数の、他の様々なタイプの反応または相互作用から、直接的または間接的にもたらされる任意の製造物を包含することが意図される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および医薬適合性のキャリアを混合することによって作製されるいずれの組成物も包含する。
【0029】
本発明の組成物には、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下投与、筋肉内投与および静脈内投与を含む)、眼(目)投与、肺投与(鼻吸入または口内吸入)または鼻投与に好適な組成物が含まれるが、任意の特定の場合における最も好適な経路は、処置されている状態の性質および重篤度に、そして有効成分の性質に依存する。この組成物は、好都合には単位投薬形態物で提供することができ、そして薬学の分野で広く知られている方法のいずれかによって調製することができる。
【0030】
実際の使用では、本発明の化合物は、従来の医薬配合技術に従って、医薬キャリアと十分に混合された有効成分として組み合わせることができる。キャリアは、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む))のために所望される、調製形態に依存する広範囲の様々な形態を取ることができる。経口投薬形態用の組成物を調製する際には、通常の医薬媒体のいずれかを用いることができる。例えば、経口用の液体調製物(例えば、懸濁物、エリキシル剤および溶液剤など)の場合には、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤などを用いることができる;あるいは、経口用の固体調製物(例えば、粉末剤、ハードカプセルおよびソフトカプセルならびに錠剤など)の場合には、キャリア(デンプン、糖、微結晶セルロースなど)、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などを用いることができる。固体の経口用調製物の方が液体の調製物よりも好ましい。
【0031】
その投与が容易であるために、錠剤およびカプセルが最も好都合な経口投薬単位形態であり、そのような場合、明らかではあるが、固体の医薬キャリアが用いられる。所望する場合には、錠剤を標準的な水性技術または非水性技術によってコーティングすることができる。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1パーセントの活性な化合物を含有しなければならない。これらの組成物における活性な化合物の割合は、当然のことではあるが、変化させることができ、好都合には、単位物の約2重量パーセントから約60重量パーセントの間にすることができる。そのような治療的に有用な組成物における活性な化合物の量は、効果的な投薬量が得られるような量である。活性な化合物はまた、例えば、液体の滴剤またはスプレーとして鼻腔内に投与することができる。
【0032】
錠剤、ピル、カプセルなどはまた、トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;および、スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤を含有することができる。投薬単位形態がカプセルである場合、カプセルは、上記タイプの物質に加えて、脂肪油などの液体キャリアを含有することができる。
【0033】
様々な他の物質を、コーティング剤として、または投薬単位物の物理的形態を修飾するために存在させることができる。例えば、錠剤をシェラックまたは糖またはその両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、そしてチェリー香料またはオレンジ香料などの矯味矯臭剤を含有することができる。
【0034】
本発明の組成物はまた非経口投与することができる。本発明の活性な化合物の溶液または懸濁物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水において調製することができる。分散物はまた、グリセロール、液体のポリエチレングリコール、およびオイルにおけるそれらの混合物において調製することができる。通常の貯蔵条件および使用条件のもとでは、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。
【0035】
注射使用のために好適な医薬形態物には、無菌の水溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物をその場で調製するための無菌の粉末剤が含まれる。すべての場合において、医薬形態物は無菌でなければならず、そして容易にシリンジを通過することができる程度に流動性でなければならない。医薬形態物は、製造および貯蔵の条件のもとで安定でなければならず、そして細菌および菌類などの微生物の混入作用から防止されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコール)を含有する溶媒または分散媒体、それらの好適な混合物、および植物油であり得る。
【0036】
塩
用語「医薬適合性の塩」は、無機の塩基もしくは酸または有機の塩基もしくは酸を含む医薬適合性の非毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。無機塩基に由来する塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。固体形態の塩は、2つ以上の結晶構造で存在してもよく、そしてまた水和物の形態であってもよい。医薬適合性の有機非毒性塩基に由来する塩には、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)の塩、環状アミンの塩、塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミンなどの塩が含まれる。
【0037】
本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機酸および有機酸を含む医薬適合性の非毒性の酸から調製することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸およびp−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましい酸は、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物、またはPPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化するすることができる化合物に対する参照はまた、その医薬適合性の塩を含むことを意味することを理解しなければならない。同様に、選択的なPPARα剤または選択的なPPARγ剤である化合物に対する参照は、その医薬適合性の塩を含むことを意味する。
【0039】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含有してもよく、従って、ラセミ体およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物ならびに個々のジアステレオマーとして存在し得る。本発明は、そのような異性体形態のすべてを含むことが意図される。
【0040】
本発明によって包含される化合物は、オレフィン性二重結合を含有してもよく、従って、別途示されない限り、E型およびZ型の両方の幾何異性体を含むことが意図される。
【0041】
本発明によって包含される化合物は、水素の結合点が異なって存在してもよく、これらは互変異性体と呼ばれる。そのような例として、ケト−エノール互変異性体として知られているケトンおよびそのエノール形態を挙げることができる。個々の互変異性体ならびにその混合物は、式IIおよび式IIaの化合物とともに包含される。
【0042】
本発明によって包含される化合物は、例えば、好適な溶媒(例えば、メタノールまたは酢酸エチルまたはその混合物)から分別結晶することによってエナンチオマーのジアステレオマー対に分割することができる。そのようにして得られたエナンチオマー対は、従来の手段によって、例えば、光学活性な酸を分割剤として使用することによって、個々の立体異性体に分割することができる。
【0043】
あるいは、本発明の化合物の任意のエナンチオマーは、立体配置が知られている光学的に純粋な出発物質または試薬を使用して立体特異的な合成によって得ることができる。
【0044】
投与および用量範囲
任意の好適な投与経路を、アテローム性動脈硬化斑を防止するための、本発明の化合物の効果的な投薬量を哺乳動物(特にヒト)に与えるために用いることができる。例えば、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与、眼投与、肺投与および鼻投与などを用いることができる。投薬形態物には、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁物、溶液剤、カプセル、クリーム、軟膏およびエアロゾルなどが含まれる。好ましくは、本発明の化合物は経口投与される。
【0045】
用いられる有効成分の効果的な投薬量は、用いられた特定の化合物、投与様式、処置されている状態、および処置されている状態の重篤度に依存して変化させることができる。そのような投薬量は当業者によって容易に確認することができる。
【0046】
アテローム性動脈硬化斑を防止するとき、一般に満足すべき結果が、本発明の化合物を動物体重1キログラムあたり約0.1ミリグラムから約100ミリグラムの1日投薬量で投与するときに得られ、この場合、1日投薬量は、好ましくは、単回1日用量として、または1日に2回から6回の分割された用量で、または持続放出形態で与えられる。ほとんどの大型哺乳動物の場合、1日の総投薬量は約1.0ミリグラムから約1000ミリグラムであり、好ましくは約1ミリグラムから約50ミリグラムである。70kgの成人の場合、1日の総用量は、一般には約7ミリグラムから約350ミリグラムである。この投薬法は、最適な治療応答を得るために調節することができる。
【0047】
好ましい投薬量範囲は1mg/日未満から100mg/日を超えるが、適切な用量が、心筋梗塞またはTIAの危険性を有する患者に投与される。
【0048】
生物学的アッセイ
標準化された細胞系のGAL4キメラ受容体トランス活性化アッセイ(細胞系のトランス活性化アッセイ)
下記のアッセイはまた、Berger J.Leibowitz MD、Doebber TW、Elbrecht A、Zhang B、Zhou G、Biswas C、Cullinan CA、Hayes NS、Li Y、Tanen M、Ventre J、Wu MS、Berger GD、Mosley R、Marquis R、Santini C、Sahoo SP、Tolman RL、Smith RG、Moller DE、「新規なペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)およびPPARδのリガンドは異なる生物学的作用をもたらす」、1999、J.Biol.Chem.、274:6718〜6725に記載される(これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0049】
発現構築物が、ヒトPPARγまたはヒトPPARαのリガンド結合ドメインをコードするcDNA配列を哺乳動物発現ベクターpcDNA3内の酵母GAL4転写因子のDNA結合ドメインの近傍に挿入して、pcDNA3−hPPARγ/GAL4およびpcDNA3−hPPARα/GAL4をそれぞれ作製することによって調製される。GAL4応答性レポーター構築物のpUAS(5X)−tk−lucは、チミジンキナーゼの最小プロモーターの近傍に配置された5コピーのGAL4応答エレメントと、ルシフェラーゼのレポーター遺伝子とを含有する。トランスフェクションのコントロールベクターpCMV−lacZは、ガラクトシダーゼZ遺伝子をサイトメガロウイルスプロモーターの制御下に含有する。COS−1細胞を、10%活性炭ストリップ処理ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、100ユニット/mlのペニシリンGおよび100μg/mlの硫酸ストレプマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース)に、96ウエルプレートにおいて1.2X104細胞/ウエルで、10%CO2の加湿雰囲気中、37℃で播種する。24時間後、トランスフェクションを、製造者の説明書に従ってリポフェクタミン(Gibco−BRL、Gaithersburg、MD)を用いて行う。トランスフェクション混合物は、0.00075μgのPPARγ/GAL4発現ベクターまたはPPARα/GAL4発現ベクター、0.045μgのレポーターベクターpUAS(5X)−tk−luc、およびトランスフェクション効率の内部コントロールとしての0.0002μgのpCMV−lacZを含有する。化合物は、トランスフェクションされた細胞と0.1nMから50uMまでの8濃度から12濃度の範囲にわたって48時間インキュベーションすることによって特徴づけられる。細胞溶解物を、洗浄細胞から、製造者の説明書に従ってレポーター溶解緩衝液(Promega)を使用して調製する。細胞抽出物におけるルシフェラーゼ活性を、ML3000ルミノメーター(Dynatech Laboratories)において、ルシフェラーゼアッセイ緩衝液(Promega)を使用して測定する。β−ガラクトシダーゼ活性を、HollonsおよびYoshimura(Anal.Biochem.、182、411〜418、1989)により記載されるようにβ−D−ガラクトピラノシド(Calbiochem−Novabiochem、LaJolla、CA)を使用して測定する。ロシグリタゾンをヒトPPARγ活性に対する標準品として使用することができる。hPPARγ/GAL4アッセイにおけるロシグリタゾンに対するEC50値は、通常、20nMから40nMの範囲である。フェノフィブラートをPPARα活性に対する標準品として使用することができる。hPPARα/GAL4アッセイにおけるフェノフィブラートに対するEC50値は、通常、5uMから20nMの範囲である。同様に、全長のPPARγまたはPPARαを関連するレポーター遺伝子と一緒にいくつかの哺乳動物(または酵母)細胞タイプの1つに同時トランスフェクションすることを伴う方法を、PPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性の両方を有する化合物を同定するための代わりの方法として用いることができる。
【0050】
無細胞系の活性化補助因子会合アッセイ
このアッセイでは、PPARγ(もしくはその単離されたリガンド結合ドメイン)またはPPARα(もしくはその単離されたリガンド結合ドメイン)と、Creb結合タンパク質(CBP)またはステロイド受容体活性化補助因子(SRC−1)などの活性化補助因子分子である(もしくはそのような分子に由来する)タンパク質(もしくはタンパク質の一部分)との会合を促進する化合物の能力が測定され、そしてこのアッセイを使用して、PPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性の両方を有する化合物を同定することができる。このアッセイは、Zhou G、Cummings R、Li Y、Mitra S、Wilkinson H、Elbrecht A、Hermes JD、Schaeffer JM、Smith RG、Moller DE、「核受容体は活性化補助因子に対して異なる親和性を有する:蛍光共鳴エネルギー転移による特徴づけ」、Mol.Endocrinol.、1998、12:1594〜1604に記載される(これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0051】
ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγアッセイ
細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイにおいて化合物のアゴニスト活性を測定する別の方法は、化合物が、PPARγおよびPPARαの両方に結合することによってリガンドとして機能し得ることを明らかにすることである。hPPARαに対して、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、50%最大力価濃度(IC50またはKI)の違いが30倍未満(好ましくは10倍未満)である化合物は、二重リガンドであると見なすことができる。これらのアッセイのために、下記に記載される方法を用いることができる(これらはまた、Berger J.Leibowitz MD、Doebber TW、Elbrecht A、Zhang B、Zhou G、Biswas C、Cullinan CA、Hayes NS、Li Y、Tanen M、Ventre J、Wu MS、Berger GD、Mosley R、Marquis R、Santini C、Sahoo SP、Tolman RL、Smith RG、Moller DE、「新規なペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)およびPPARδのリガンドは異なる生物学的作用をもたらす」、1999、J.Biol.Chem.、274:6718〜6725に記載される:これはその全体が参照して本明細書中に組み込まれる)。
【0052】
ヒトPPARγ2およびヒトPPARαをGST融合タンパク質として大腸菌において
発現させた。PPARγ2に対する全長のヒトcDNAをpGEX−2T発現ベクター(Pharmacia)にサブクローン化した。PPARαに対する全長のヒトcDNAをpGEX−KT発現ベクター(Pharmacia)にサブクローン化した。それぞれのプラスミドを含有する大腸菌を増殖させ、誘導し、そして遠心分離によって集めた。再懸濁されたペレットをフレンチプレスで破砕し、細胞片を12,000Xgでの遠心分離によって除いた。組換えヒトPPAR受容体をグルタチオンセファロースでのアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。カラムに加え、1回洗浄した後、受容体を、グルタチオンを用いて溶出した。グリセロール(10%)を受容体の安定化のために加え、そして小分け物を−80℃で保存した。
【0053】
それぞれのアッセイについて、受容体の一部を、0.1%の脱脂乾燥乳および10nMの[3H2]L−746,962(21Ci/mmol)を含有するTEGM(10mMのTris(pH7.2)、1mMのEDTA、10%のグリセロール、7μL/100mlのβ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸Na、1mMのジチオスレイトール、5μg/mLのアプロチニン、2μg/mLのロイペプチン、2μg/mLのベンズアミジン、および0.5mMのPMSF)において、±試験化合物のもとでインキュベーションした。アッセイ物を150μLの最終容量において4℃で約16時間インキュベーションした。結合していないリガンドを、100μLのデキストラン/ゼラチンコーティング活性炭とともに氷上で10分間インキュベーションすることによって除いた。4℃で3000rpmでの10分間の遠心分離を行った後、50μLの上清画分をTopcountで計数した。このアッセイにおいて、L−746,962に対するKDは約1nMである。
【0054】
ヒトPPARα結合アッセイについては、受容体の一部を、0.1%の脱脂乾燥乳および5.0nMの[3H2]L−783483を含有するTEGM(10mMのTris(pH7.2)、1mMのEDTA、10%のグリセロール、7μL/100mlのβ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸Na、1mMのジチオスレイトール、5μg/mLのアプロチニン、2μg/mLのロイペプチン、2μg/mLのベンズアミド、および0.5mMのPMSF)において、±試験化合物のもとでインキュベーションした。アッセイ物を150μLの最終容量において4℃で約16時間インキュベーションした。結合していないリガンドを、100μLのデキストラン/ゼラチンコーティング活性炭とともに氷上で約10分間インキュベーションすることによって除いた。4℃で3000rpmでの10分間の遠心分離を行った後、50μLの上清画分をTopcountで計数した。
【0055】
細胞増殖アッセイ
このアッセイでは、AQueous細胞増殖アッセイキット(Promega、Madison、WI)を使用して、MTSテトラゾリウムをホルマザンに変換する細胞の能力が測定される。この変換は、代謝活性な細胞におけるデヒドロゲナーゼ酵素により産生されるNADPHまたはNADHによっておそらくは達成される。このアッセイは、Shuら、Biochemical and Biophysical Research Communications、第267巻、345頁〜349頁(2000)に記載される。
【0056】
MMP−9のELISA
このアッセイは、リポ多糖(LPS)の刺激に応答して培養ヒト単球性THP−1から分泌されるMMP−9の量を測定するために使用される。このアッセイは、Shuら、Biochemical and Biophysical Research Communications、第267巻、345頁〜349頁(2000)に記載される。培養されたTHP−1細胞を、37℃で2時間、PPARαアゴニストおよび/またはPPARγアゴニストで処理した。その後、細胞を細菌LPS(1ng/ml)で刺激した。37℃で48時間インキュベーションした後、培養上清を回収した。培地中に分泌されたMMP−9を、MMP−9に対して特異的な抗体を使用するELISAにより測定した。
【0057】
PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストを一緒に投薬するか、または二重PPARα/γ剤を投薬することにより、PPARα剤またはPPARγ剤のいずれかの単独と比較した場合、MMP−9分泌における予想外に優れた低下がもたらされる。
【0058】
本発明が、そのいくつかの特定の実施態様を参照して記載および例示されているが、当業者は、手法およびプロトコルの様々な適合化、変化、改変、置換、欠失または付加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する。例えば、本明細書中上記に示されるような特定の投薬量とは異なる効果的な投薬量が、上記に示された本発明の化合物を用いて適用症のいずれかについて処置されている哺乳動物の応答性における変化の結果として適用され得ることがある。同様に、観測される特定の薬理学的応答は、選択された特定の化合物、または医薬キャリアが存在するかどうか、ならびに用いられた配合物タイプおよび投与様式に従って、そしてそれらに依存して変化し得る。従って、結果におけるそのような予期される様々な変化または相違が、本発明の目的および実施に従って予想される。従って、本発明は下記の請求項の範囲によって規定されること、そしてそのような請求項は、合理的であるほどに広く解釈されることが意図される。
Claims (20)
- アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を、またはPPARαと選択的に結合する化合物をPPARγと選択的に結合する化合物と併せて、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、20倍未満違う50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する、請求項2に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、10倍未満違う50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する、請求項2に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに結合することができる化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、5倍未満違う50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する、請求項2に記載の方法。
- 前記化合物が、ヒトPPARα結合アッセイおよびヒトPPARγ結合アッセイによって測定されたとき、hPPARγに結合する放射性リガンドの置換について、hPPARαに対して、2倍未満違う50%最大力価濃度(IC50またはKI)を有する、請求項2に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が経口投与により活性である、請求項2に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物が長い作用持続期間を有する、請求項2に記載の方法。
- 請求項1に記載のアテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を、または
PPARαに選択的に結合してそれを活性化することができる化合物を、PPARγに選択的に結合してそれを活性化することができる化合物と併せて、
アテローム性動脈硬化斑の破裂の防止を必要とする哺乳動物患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化斑の破裂を防止するための方法。 - 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与することを含む、請求項9に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、PPARγの活性化について、PPARαに対して、20倍未満違う50%最大力価濃度(EC50)を有する、請求項10に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、PPARγの活性化について、PPARαに対して、10倍未満違う50%最大力価濃度(EC50)を有する、請求項10に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、PPARγの活性化について、PPARαに対して、5倍未満違う50%最大力価濃度(EC50)を有する、請求項10に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、細胞系のトランス活性化アッセイまたは無細胞系系の活性化補助因子会合アッセイによって測定されたとき、PPARγの活性化について、PPARαに対して、2倍未満違う50%最大力価濃度(EC50)を有する、請求項10に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、経口投与により活性である、請求項10に記載の方法。
- 前記PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物が、長い作用持続期間を有する、請求項10に記載の方法。
- 斑の安定性を増大させるために有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を、またはPPARαと選択的に結合する化合物をPPARγと選択的に結合する化合物と併せて、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者においてアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるための方法。
- PPARαおよびPPARγに同時に結合することができる化合物を投与することを含む、請求項17に記載の方法。
- 請求項17に記載のアテローム性動脈硬化斑の安定性を増大させるために有効な有効な量の、PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を、または
PPARαに選択的に結合してそれを活性化することができる化合物を、PPARγに選択的に結合してそれを活性化することができる化合物と併せて、
アテローム性動脈硬化斑の安定性の増大を必要とする哺乳動物患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化斑の安定性をの増大させるための方法。 - PPARαおよびPPARγに同時に結合してそれらを活性化することができる化合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
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